説明

髪色保持のためのチオマーを含む化粧用組成物

約5%〜約50%の範囲で反応性チオール基を有するチオール化ポリマーを含む化粧用ヘアトリートメント組成物が提供される。さらに、カラーリング処理した毛髪の色保持を引き延ばす方法も提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒトの毛髪を処理するための組成物、特に、カラーリング処理した髪の色保持を引き延ばす染毛後のトリートメント組成物に関する。具体的には、本発明は、チオール化ポリマー(チオマー)を含む化粧用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘアカラー製品は消費者に人気があるが、そうした製品は時間の経過とともに髪に損傷を与える傾向がある。消費者はいつでも、本来の長持ちする色(退色抵抗性)とヘアダメージ抵抗性を保証するトリートメント製品を探し求めている。さらに、こうした製品がヘアカラー製品による損傷をも補修し、かつまた、UV曝露、ブラッシング、コーミング、ヘアドライヤーからの熱などによる髪への損傷をも補修できるならば、望ましいだろう。消費者はまた、毛髪を強化する製品を歓迎するだろう。
【0003】
毛幹は2〜3層で構成されている:すなわちキューティクル(毛表皮)、コルテックス(毛皮質)、および時にはメデュラ(毛髄質)である。キューティクルは最も外側の層である。それは、もはや死滅した扁平な細胞が重なり合ってできている。キューティクルは毛幹の内部を損傷から保護している。コルテックスはキューティクルの下にある。コルテックスは、髪にその強さや弾力を与える長いよじれたタンパク質またはケラチンでできている。髪が引き伸ばされると、これらの長いタンパク質がまっすぐになり、髪が解放されると、そのタンパク質が再び巻き戻される。自然な髪にその色を付与する色素はこれらのタンパク質と結合しており、外側のキューティクルによって保護されている。コーミング、ブラッシング、および太陽、大気汚染、風、水などの環境要因はキューティクルに損傷を与え、コルテックスの繊維を擦り切れさせて、枝毛を起こすことがある。コルテックスは、枝毛を取り除くように、それ自体を修復することができないので、傷んだ髪はカットするしかない。一部の毛髪(特に太い毛髪)の中心部には、柔らかいスポンジ状のメデュラが含まれる。
【0004】
自然で健康な髪、すなわち、カラーリング処理または他の方法で損傷を受けていない髪は、18-メチルエイコサン酸つまり18-MEAからなる分枝脂肪酸(「f層」)によってさらに保護されている。この脂肪酸はキューティクルの表面に共有結合されており、天然の潤滑系またはコンディショニング系としての働きがある。この天然の保護成分は疎水性(すなわち、撥水性)であり、毛髪の滑らかな質感に貢献している。滑らかな毛髪によって反射された光はその毛髪を艶やかに見せる。f層はキューティクルを損傷から保護する役目をしているが、そうした損傷は、環境要因、例えば太陽、風および大気汚染、または機械的ストレス、例えばコーミングおよびブラッシング、または熱、例えば毛髪のブロー乾燥からの熱、によって引き起こされる可能性がある。キューティクルが損傷を受けると、その細胞は平らにならない。粗くなったキューティクルの表面は髪を艶がなく不健康に見せる。損傷を受けた髪はまた、からみ合った状態になって、ブラッシングや他の方法で管理するのが難しくなる。
【0005】
髪にパーマをかけること、髪をストレートにすること、またはカラーリングすることも、キューティクルを傷める可能性がある。ヘアカラー剤の使用者であれば理解しているように、染毛プロセスは彼らの髪の感触や動きを変化させる。その毛髪は粗くなり、潤いと光沢がなくなり、そして色は時間の経過とともに褪せていく。こうした変化の理由は、染毛が毛髪の生物学を変更することにある。毛髪に含まれるタンパク質、脂質および色素が化学的変化を受ける。髪の表面に塗布される従来の酸化型永久染毛剤に特有の過酸化水素、アンモニアおよび高いpHの組合せは、毛髪の天然色素を脱色して、染料前駆体とカプラー(色の形成につながる)を導入する。しかしながら、染毛プロセスの望ましくない副作用は、保護f層の一部が取り除かれることであり、これは毛髪表面のさらなる酸化と毛髪繊維の不可逆的な物理化学的変化をまねくことがある。天然の潤滑層が劣化するため、毛髪は、疎水性つまり水をはじく代わりに、親水性つまり水を好むようになる。繰り返される毛髪のカラーリングは完全にf層の消失に至ることさえある。保護されていない毛髪はその後、機械的ストレスおよび熱から、例えば毛髪のコーミング、ブラッシングおよびブロー乾燥から、キューティクルに損傷を受けやすくなり、パサつき、ゴワゴワ、ザラザラした感じがしたり、もつれをほぐすのが難しかったりする。毛髪が、f層の損失やキューティクルへの損傷が原因で、水をはじかなくなるため、水がキューティクルの中にしみ込み、色を洗い流して、カラーリング処理した毛髪の色を褪せさせる。髪はくすんだように見え、管理しやすくするためにより頻繁なおよび/またはより強烈なコンディショニングが必要となる。それにもかかわらず、そうしたコンディショニングトリートメントの効果は一時的である。なぜなら、コンディショナーはシャンプーごとに洗い流されて、再塗布する必要があるからである。
【0006】
チオマーの構造は既存の製品で使用されるポリマーの構造とは異なっている。なぜなら、チオマーは、直鎖もしくは分枝鎖チオール基、またはチオール基を含む置換基を含有するポリマー骨格(陽イオン性、非イオン性、陰イオン性またはシリコーンであり得る)で構成されるからである。
【発明の概要】
【0007】
毛髪上に耐水性および耐摩擦性フィルムを形成して、毛髪の疎水性、滑らかさ、管理容易性および輝きを回復させる化粧用トリートメント組成物のニーズが存在している。そうしたトリートメント組成物は、使用しても安全でなければならず、また、損傷からの保護を提供し、かつ染毛プロセス後の髪の色保持を引き延ばす必要がある。こうした効果は長期的に、すなわち度々シャンプーしても、維持されねばならない。本発明者らは、驚いたことに、そして予期せざることに、チオール化ポリマーを含有する組成物が、既存のコンディショニング製品と比べて、これらの結果をより良く達成することを見いだした。
【0008】
本発明は、約3%超から約50%までの範囲のチオール化度を有する(すなわち、約3%超から約50%までの反応性チオール基を有する)少なくとも1種のチオール化ポリマーを、化粧上または皮膚科学上許容されるビヒクル中に含有する化粧用ヘアトリートメント組成物を提供する。好ましくは、チオール化度は、約5%〜約50%の範囲、さらに好ましくは約10%〜約30%の反応性チオール基の範囲である。
【0009】
本発明はさらに、傷んだ髪のキューティクルを補修またはリサーフェイス(resurface)し、したがって、髪の疎水性、滑らかさ、管理容易性および輝きのうち1つ以上を回復させるための毛髪の処理方法を提供し、この方法は、そのような処理を必要とする毛髪に、約3%超から約50%までの反応性チオール基を有する少なくとも1種のチオール化ポリマーを、化粧上または皮膚科学上許容されるビヒクル中に含有する化粧用組成物を塗布すること、および所望の効果を得るのに十分な時間にわたり該組成物を毛髪上でそのままにしておくこと、を含む。好ましくは、少なくとも1種のチオール化ポリマーは、約5%〜約50%の範囲で、さらに好ましくは約10%〜約30%の範囲で、反応性チオール基を有する。
【0010】
本発明はまた、カラーリング処理した髪の色保持を引き延ばす方法を提供し、その方法は、色保持の延長を必要とする毛髪に、約3%超から約50%までの反応性チオール基を有する少なくとも1種のチオール化ポリマーを、化粧上または皮膚科学上許容されるビヒクル中に含有する組成物を塗布すること、および所望の効果を得るのに十分な時間にわたり該組成物を毛髪上でそのままにしておくこと、を含む。好ましくは、チオール化度は約5%〜約50%の範囲、さらに好ましくは約10%〜約30%の範囲である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の組成物および方法の作用機序を示す模式図である。
【図2】毛髪表面のSEM画像のセットである。
【図3】毛髪表面のSEM画像のセットである。
【図4】毛髪表面上のジスルフィド結合の量を示す棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
発明の詳細な説明
従来の永久染毛のプロセスは、色を浸透させてコルテックス(毛皮質)全体に分布させるようにするものである。しかし、染料の溶解性と、染毛による経時的なキューティクルへの損傷度(f層の損失を含む)は、色が、特にシャンプーの結果として、コルテックスからしみ出るのを促進する。その結果、染毛をほぼ4〜6週間ごとに繰り返さなければならず、キューティクルをさらに傷めることになる。
【0013】
利用可能なコンディショニング製品は、よくても、毛幹の一時的なコンディショニングを提供し、髪が一時的により滑らかで健康的に見えて感じるように、髪の摩擦抵抗を短期間回復させる。しかし、こうした製品は退色を止めることはできない。色はコルテックスからキューティクルを通って流失し続け、カラーリングした髪の色の退色をもたらす。さらに、利用可能なコンディショニング製品は一般的に疎水性であるにもかかわらず、それらは毛幹の疎水性を回復させることができない。その理由は、その製品自体が疎水性であるため、親水性の髪、すなわち、キューティクルへの損傷および/またはf層の損失のためその疎水性を失っている髪に、それらが結合できないからである。髪から色が洗い流され続けて、結果的に髪色の退色が生じる。
【0014】
チオール化ポリマーは、粘膜付着性ドラッグデリバリーの分野および組織工学の応用分野で有望なツールとして使用されることが知られている。これらのポリマーの自己架橋性と、チオールドメインに対するその親和性の観点から、本発明者らは、チオール化ポリマーを、化学的変化を受けた髪の色保護におけるそれらの潜在的有効性について検討した。
【0015】
毛髪のコルテックスの主要なタンパク質成分はケラチンである。毛髪ケラチンは約7.6%のシステイン残基の含有量により特徴づけられる。システインはチオール(スルフヒドリルまたはS-H)側鎖をもつ疎水性のアミノ酸である。チオールは酸化されやすく、ジスルフィド誘導体であるシスチンを与えるが、このシスチンは多くのタンパク質において重要な構造的役割(すなわち、フォールディングおよび安定性)を果たしている。アミノ酸シスチンはヒト毛髪ケラチン中に約5%存在する。図1に示すように、チオール化ポリマーは、自己酸化により大気条件下で約5〜10%のそのチオール基を介して部分的に自己架橋して、ジスルフィド結合を形成する。本発明の組成物が毛髪に塗布されると、ポリマーの残りの90〜95%のチオール基が、カラーリングしたまたは傷ついた髪の露出したケラチンのシステインおよびシスチンドメインと反応して、追加のジスルフィド結合を形成する。どのような特定の理論によっても束縛されることを望まないが、本発明者らは次のように考えている:耐水性を有するフィルム(それゆえに、ポリマーが塗布されている毛髪表面)を与えるのは、チオール化ポリマーのジスルフィド結合を介した毛髪表面への架橋と、結果的に生じる毛髪表面上の利用可能な反応性チオール基の数の減少であり、本質的にその架橋によって湿った毛髪上にゲルフィルムが形成されることになる。いったん水が毛髪から蒸発してしまうと、チオール化ポリマーフィルムは耐水性である;すなわち、水分子と水素結合できる反応性チオール基の数が最小化されているので、水に容易に溶解しない。こうして、チオマーは、毛髪に共有結合されて容易には溶媒和されない疎水性の保護層を形成する。水はそれほど自由にはフィルムを通って毛幹に浸透しないので、数回のシャンプー後でさえ、例えば2〜10回のシャンプー後、さらに30、40または50回ものシャンプー後でさえ、色は容易に洗い流されることがない。
【0016】
本発明は、傷んだ髪のキューティクルを補修してリサーフェイスするだけでなく、新たな髪色を閉じ込める、ユニークなコンディショニングおよびカラーロッキング(color-locking)の画期的技術を提供することを目標とする。本発明は、これらの目標を、少なくとも1種のチオール化ポリマーを含むヘアトリートメントのための化粧用組成物を提供することによって達成する。本明細書中で用いる「チオール化ポリマー」および「チオマー」とは、約3%超から約50%までの範囲のチオール化度を有するポリマーまたはコポリマーを意味する;すなわち、そのポリマーは約3%超から約50%までの範囲で反応性チオール基を有する。反応性チオール基はポリマーの末端基またはペンダント基の形であってよい。好ましくは、チオール化度は約5%〜約50%の範囲、さらに好ましくは約10%〜約30%の範囲である。
【0017】
本発明の組成物および方法において有用なチオール化ポリマーは、もともと疎水性であるか、またはそれらを疎水性にするように処理できるものである。本発明の好ましい実施形態では、トリートメント組成物は、少なくとも1種のチオール化ポリマーと少なくとも1種の他のポリマーとのブレンドを含み、他のポリマーはもともと疎水性であるか、またはそのポリマーを疎水性にするように処理される。本発明のさらに好ましい実施形態では、トリートメント組成物は、少なくとも2種のチオール化ポリマー、および場合により少なくとも1種の他のポリマーまたはブロックコポリマー、を含み、他のポリマーまたはコポリマーは疎水性であるか、そのポリマーまたはコポリマーを疎水性にするように処理される。
【0018】
本発明で用いるのに適したチオール化ポリマーは、陰イオン性、陽イオン性もしくは非イオン性の、またはシリコーンの、直鎖状もしくは分枝鎖状ホモポリマー、疎水性ブロックポリマーまたは両親媒性ブロックコポリマーであって、約3%超から約50%までの範囲で、好ましくは約5%〜約50%の範囲で、最も好ましくは約10%〜約30%の範囲で、反応性チオール基を有し、かつ単独またはポリマー類を含む組成物のいずれかで毛髪に塗布したとき柔軟性のフィルムを形成することができるポリマーであり得る。ポリマーの反応性チオール基は、毛髪のキューティクルに共有結合した保護層を形成するために、毛髪のキューティクルに架橋して、システインドメイン(傷んでない髪と比較して、傷んだ髪に実質的に多く存在する)とジスルフィド結合を形成する能力をもつべきである。結果として生じる毛髪上のフィルムは、水/湿気がコルテックスに浸透して色を洗い流し、それゆえ髪が退色するのを阻止する(好ましくは予防する)ために、強い耐水性、界面活性剤抵抗性、および耐摩耗性を示すべきである。
【0019】
チオール化ポリマーは、油/水、シリコーン/水、水/油、および水/シリコーン型エマルション、または水性製剤を含めて、さまざまな毛髪化粧品製剤と混和可能なものである。適当な組成物は水溶液、セラム、ジェル、ローション、ムース、クリームなどの形態をとることができる。本発明の組成物は、染毛後のトリートメント・リーブオン製品、例えばリーブオン・コンディショニング製品の形をとることができる。さらに、シャンプー、ヘアダイ製品、マスク、ヘアスタイリング製品、あるいはヘアダイ製品、コンディショニング製品、および/またはスタイリング製品を含むキットなども考えられる。
【0020】
本発明の組成物中で用いるのに好ましいポリマーは、限定するものではないが、以下のポリマーが挙げられる:
1. 直鎖状または分枝鎖状のホモポリマーであって、反応性チオール基を約3%超から約50%までの範囲で、好ましくは約5%〜約50%の範囲で、より好ましくは約10%〜約30%の範囲で有するもの。そのようなホモポリマーとしては、限定するものではないが、以下が挙げられる:ポリスチレン、ポリエステル、ポリフルオロエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリウレタン、ポリイミド、シリコーン、疎水性修飾ポリアクリレート、例えば、疎水性修飾ヒアルロン酸、疎水性修飾セルロース、疎水性修飾デンプン、疎水性修飾多糖類、疎水性修飾ポリビニルピロリドン、疎水性修飾ポリビニルアルコールなど。修飾ヒアルロン酸の例は、Amerchol社からBiocare HA-24(商標)として入手可能な陽イオン性ヒドロキシエチルセルロースで修飾されたヒアルロン酸、またはGlycosan Biosystems社からGlycosil(商標)として入手可能なカルボキシメチルヒアルロン酸である。本発明の好ましい実施形態において、ホモポリマーは疎水性シリコーン骨格を含む。本発明の一実施形態では、ホモポリマーはシリコーンホモポリマーであり、より具体的には、一般構造:
【化1】

【0021】
を有するシリコーンメルカプトポリマーであり、上記構造において、Aおよび各Rは、独立して、C1-30直鎖状または分枝鎖状の飽和または不飽和アルキル、フェニル、アリール、トリアルキルシロキシであり、そしてaおよびbはそれぞれ約20〜50であり、a:bの比は約4:1から1:4の範囲である。本発明の好ましい実施形態では、a:bの比が約1:1である。ASiRR-がアルキルシロキシ、好ましくはメチルシロキシ・エンドキャップ単位、特にトリメチルシロキシであり、そして各RがC1-22アルキル、フェニル、最も好ましくはメチルまたはフェニルの場合が好適である。
【0022】
本発明の組成物および方法で用いるためのシリコーンメルカプトポリマーの非限定的例は、Gransil M-SH Fluidとして入手可能なジメチコン/メルカプトプロピルメチコンコポリマー、およびGransil PM-SH Fluidとして入手可能なジメチコン/メルカプトプロピルメチコンコポリマー(および)フェニルトリメチコンであり、両方ともGrant Industries社から入手することができる。
【0023】
ジメチコン/メルカプトプロピルメチコンコポリマーは、次の一般構造:
【化2】

【0024】
を有し、上記構造において、aおよびbのそれぞれは約20〜約50の範囲の数であり、そしてa:bの比は好ましくは約4:1から1:4の範囲、例えば約1:1である。
【0025】
ジメチコン/メルカプトプロピルメチコンコポリマー(および)フェニルトリメチコンは次の一般構造:
【化3】

【0026】
を有し、上記構造において、aおよびbのそれぞれは約20〜約50の範囲の数であり、そしてa:bの比は好ましくは約4:1から1:4の範囲、例えば約1:1である。
【0027】
2. 疎水性ブロックと親水性ブロックの骨格を含む、グラジエントコポリマーなどの、直鎖状または分枝鎖状の両親媒性ブロックコポリマーであって、反応性チオール基を約3重量%超から約50重量%までの範囲で、好ましくは約5重量%〜約50重量%の範囲で、より好ましくは約10重量%〜約30重量%の範囲で有するもの。反応性チオール基はコポリマーの親水性末端または親水性ブロックに結合させることができる。両親媒性ブロックコポリマー中で用いるのに適した疎水性ホモポリマーには、上で挙げたものが含まれるが、それらに限定されない。ブロックコポリマー中で用いるのに適した親水性ブロックの非限定的例としては、ポリビニルピロリドン、ヒアルロン酸、ポリアクリレート、ポリ塩化ビニル、多糖類、セルロースなどが挙げられる。そのようなブロックコポリマーの例としては、限定するものではないが、以下が挙げられる:ISP社からAllianz OPT(商標)として入手可能なC12-22メタクリレーツ/アクリレーツコポリマー;Sensient Cosmetic Technologies社からCovacryl P12(商標)として入手可能な疎水性アクリレーツコポリマー;およびISP社からStyleze W-17(商標)およびStyleze W-20(商標)として入手可能なポリクオタニウム-55ビニルピロリドン/ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド/メタクリロイルアミノプロピルラウリルジメチルアンモニウムクロリド。
【0028】
3. ポリマーブレンドは、限定するものではないが、上記のチオール化ホモポリマーまたはブロックコポリマーのいずれかの1種以上を、少なくとも1種の他の疎水性ポリマーとブレンドした混合物を含むことができる。そのような疎水性ポリマーの例として、疎水性修飾ヒアルロン酸、疎水性修飾セルロース、疎水性修飾デンプン、疎水性修飾多糖類、疎水性修飾ポリビニルピロリドン、疎水性修飾ポリビニルアルコールなどを使用することができる。本発明の一実施形態では、そうしたブレンドは、約25%の反応性チオール基を有する直鎖状チオール化ヒアルロン酸ポリマーとブレンドした、疎水性修飾アクリレート、シリコーン、またはヒドロキシエチルセルロースブロックコポリマーを含む。特に好ましいブレンドは少なくとも1種のメルカプトシリコーンポリマーを含み、その非限定的例としては以下が挙げられる:
1. 50重量%のGransil M-SH fluid(ジメチコン/メルカプトプロピルメチコンコポリマー(11%の反応性チオールペンダント基))
20重量%のDC 7-4405(ジメチコンシリレート/イソドデカンフィルム形成剤)
10重量%のCovacryl P-12(疎水性修飾アクリレートポリマー)
5重量%のFucogel II BPC(多糖)
5重量%のLipidure PMB pH10(ポリクオタニウム-51)
10重量%のビニルカプロラクタム/エチルアミノプロピルエチルアミンコポリマー
【0029】
2. 50重量%のGransil PM-SH fluid(ジメチコン/メルカプトプロピルメチコンコポリマー(および)フェニルトリメチコン(11%の反応性チオールペンダント基))
20重量%のDC 7-4405(ジメチコンシリレート/イソドデカンフィルム形成剤)
10重量%のCovacryl P-12(疎水性修飾アクリレートポリマー)
5重量%のFucogel II BPC(多糖)
5重量%のLipidure PMB pH10(ポリクオタニウム-51)
10重量%のビニルカプロラクタム/エチルアミノプロピルエチルアミンコポリマー
【0030】
3. 50重量%のGransil M-SH fluid(ジメチコン/メルカプトプロピルメチコンコポリマー(11%の反応性チオールペンダント基))
20重量%のDC 7-4405(ジメチコンシリレート/イソドデカンフィルム形成剤)
10重量%のCovacryl P-12(疎水性修飾アクリレートポリマー)
2重量%のFucogel II BPC(多糖)
2.5重量%のAquaflex XL-30(ポリイミド-1)
5重量%のLipidure PMB pH10(ポリクオタニウム-51)
10重量%のビニルカプロラクタム/エチルアミノプロピルエチルアミンコポリマー
【0031】
4. 40重量%のGransil PM-SH fluid(ジメチコン/メルカプトプロピルメチコンコポリマー(および)フェニルトリメチコン(11%の反応性チオールペンダント基))
20重量%のDC 7-4405(ジメチコンシリレート/イソドデカンフィルム形成剤)
19.5重量%のAquaflex XL-30(ポリイミド-1)
5重量%のビニルカプロラクタム/エチルアミノプロピルエチルアミンコポリマー
【0032】
5. 40重量%のGransil PM-SH fluid(ジメチコン/メルカプトプロピルメチコンコポリマー(および)フェニルトリメチコン(11%の反応性チオールペンダント基))
20重量%のDC 7-4405(ジメチコンシリレート/イソドデカンフィルム形成剤)
19.5重量%のAquastyle 3000(ポリビニルアミド-1)
5重量%のビニルカプロラクタム/エチルアミノプロピルエチルアミンコポリマー
【0033】
6. 30重量%のGransil PM-SH fluid(ジメチコン/メルカプトプロピルメチコンコポリマー(および)フェニルトリメチコン(11%の反応性チオールペンダント基))
20重量%のDC 7-4405(ジメチコンシリレート/イソドデカンフィルム形成剤)
19.5重量%のAquaflex XL-30(ポリイミド-1)
5重量%のビニルカプロラクタム/エチルアミノプロピルエチルアミンコポリマー
【0034】
7. 30重量%のGransil PM-SH fluid(ジメチコン/メルカプトプロピルメチコンコポリマー(および)フェニルトリメチコン(11%の反応性チオールペンダント基))
20重量%のDC 7-4405(ジメチコンシリレート/イソドデカンフィルム形成剤)
19.5重量%のAquastyle 3000(ポリビニルアミド-1)
5重量%のビニルカプロラクタム/エチルアミノプロピルエチルアミンコポリマー
【0035】
8. 25重量%のGransil M-SH fluid(ジメチコン/メルカプトプロピルメチコンコポリマー(11%の反応性チオールペンダント基))
25重量%のGransil PM-SH fluid(ジメチコン/メルカプトプロピルメチコンコポリマー(および)フェニルトリメチコン(11%の反応性チオールペンダント基))
50重量%のDC7-4405(ジメチコンシリレート/イソドデカンフィルム形成剤)
【0036】
少なくとも1種のチオール化ポリマーまたは少なくとも1種のチオール化ポリマーを含むポリマーブレンドは、本発明の組成物中に、組成物の全重量基準で、約5重量%〜約50重量%の範囲の量(その中間の任意の量を含む)で存在することができ、例えば、約5重量%、約20重量%、約30重量%、約40重量%、約50重量%であり得る。少なくとも1種のチオール化ポリマーを含むポリマーブレンド中の少なくとも1種のチオール化ポリマーの全重量は、ポリマーブレンドの全重量基準で、約30重量%〜約80重量%の範囲(その中間の任意の量を含む)、より好ましくは約30重量%〜約50重量%の範囲であり得る。
【0037】
特に好ましい実施形態において、本発明の組成物は、チオール化ポリマーの髪への付着を促進することによって、また、その製品に柔軟性/剛性の望ましいバランスを与えることによってチオール化ポリマーの性能を高めるために、1種以上のスタイリング/固定剤を含む。本発明の組成物中で用いるのに適したスタイリング/固定剤としては、限定するものではないが、以下が挙げられる:フィルム形成剤、例えば、水溶性アクリレーツコポリマー、例えばエチルアクリレート/メチルメタクリレート/メタクリル酸コポリマー、例えばSensient Cosmetic Technologies社から入手可能なCovacryl A15(登録商標)およびCovacryl E14(登録商標)、ビニルカプロラクタム/エチルアミノプロピルエチルアミンコポリマー(Styleze(商標)CC-10、Copolymer 845、Copolymer 937またはCopolymer 958として入手可能)、ビニルカプロラクタム/ビニルピロリドン/ジメチルアミノプロピルエチルアミンコポリマー(Gaffix VC-713、Advantage SまたはAdvantage Plusとして入手可能)、アクリレーツ/C12-22アルキルメタクリレートコポリマー(Allianz OPTとして入手可能);シリコーン油、例えばDow Corning DC7-4405;ポリイミド、例えばISP社からAquaflex(登録商標)XL-30として入手可能なポリイミド-1、Aquaflex FX-64として入手可能なイミド化イソブチレン/無水マレイン酸、Styleze W-17として入手可能なポリクオタニウム-55、Gafquat 734またはGafquat 755Nとして入手可能なポリクオタニウム-11、Luviquat Styleとして入手可能なポリクオタニウム-16、UCARE JR-400として入手可能なポリクオタニウム-10など。このようなスタイリング/固定剤は、本発明の組成物中に、組成物の全重量基準で、約0.1重量%〜約50重量%、例えば約2重量%〜約40重量%の範囲の量で存在することができる。
【0038】
本発明の組成物はさらに、以下の成分を含むことができる:保湿剤および/またはコンディショニング剤、例えばパンテチン、パンテニルエチルエーテル、Fucogel(登録商標)として入手可能なビオポリサッカリドガム-1、Lipidure(登録商標)として入手可能なポリクオタニウム-51、グリセリン、ポリクオタニウム-7、水分散性多糖類、例えばグリコサミノグリカン、グルコアミノグリカン、グリコアミノグリカン、エステル類、例えばクエン酸トリカプリリルなど。このような成分は、本発明の組成物中に、組成物の全重量基準で、約0.1重量%〜約25重量%、より好ましくは約0.5重量%〜約10重量%、の範囲の量で存在することができる。
【0039】
本発明の組成物中に存在し得る他の化合物としては、限定するものではないが、以下が挙げられる:溶液のpHを調整するためのバッファーおよび塩;防腐剤および抗菌剤、例えばD-D Chemco社から入手可能なBotanistat PF-64;酸化防止剤、例えばビタミンC、リポソーム内に封入されたDNA修復エキス、例えばRoxisomes(登録商標)(シロイヌナズナエキス/レシチン/水/フェノキシエタノール)、Ultrasomes(登録商標)(ミクロコッカス溶解液);ビタミン類、例えばビタミンAまたはビタミンE;栄養素、必須および非必須の両方、例えばアミノ酸およびミネラル;ならびに紫外線や汚染などの外界からの刺激および有害物質から保護する化合物。1種以上の保湿剤を本組成物中に含めることが望ましいかもしれない。存在する場合、そうした保湿剤は、組成物の全重量基準で、約0.001〜25%、好ましくは約0.005〜20%、さらに好ましくは0.1〜15%の範囲であり得る。適当な保湿剤の例には、グリコール類、糖類などが含まれる。適当なグリコール類はモノマーまたはポリマーの形であり、ポリエチレンおよびポリプロピレングリコール、例えば4〜200の繰り返しエチレンオキシド単位を有するポリエチレングリコールであるPEG 4-200、ならびにC1-6アルキレングリコール、例えばプロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコールなどが挙げられる。適当な糖類(そのうちの一部は多価アルコールでもある)もまた適当な保湿剤である。そのような糖類の例としては、グルコース、フルクトース、ハチミツ、水添ハチミツ、イノシトール、マルトース、マンニトール、マルチトール、ソルビトール、スクロース、キシリトール、キシロースなどが挙げられる。さらに、尿素も適している。本発明の組成物中で用いる保湿剤は、C1-6、好ましくはC2-4アルキレングリコール、例えばブチレングリコールであり得る。本発明の組成物中で用いる好適な保湿剤はグリセリンである。
【0040】
本発明の組成物は好ましくは、ベヘントリモニウムメトサルフェート(methyl sulfate)、ステアラルコニウムクロリド、ポリクオタニウム-10などを含めて、1種以上の帯電防止剤をさらに含むことができる。本発明の組成物に有用なコンディショニング剤には、セテアリルアルコール/ベヘントリモニウムクロリド、クエン酸トリカプリリル、グルコン酸ナトリウム、ヒドロキシプロピルデンプンリン酸などの1種以上が含まれる。こうした他の化合物は、組成物の全重量基準で、約0.0001〜約40%の範囲で存在し得る。
【0041】
本発明の組成物は、限定するものではないが、以下のような、オイルおよびエキスを含めて、1種以上の植物成分または活性剤を含むことができる:Helianthus annuus(ヒマワリ)種子油、Macadamia ternifolia(マカダミアナッツ)種子油、Foeniculum vulgare(フェンネル)種子エキス、Aspalathus linearis(ルイボス)葉エキス、Simmondsia chinensis(ホホバ)種子油、Ricinus communis(トウゴマ)種子油など。こうした物質は、本発明の組成物中に、組成物の全重量基準で、約0.0001〜約40%の範囲の量で存在し得る。
【0042】
エマルションである場合、本発明の組成物は、組成物の全重量基準で、約0.1〜95%、好ましくは約0.5〜約90%、さらに好ましくは約1〜85%の水を含む、油中水型、水中油型、水中シリコーン型、またはシリコーン中水型のエマルションであり得る。水性の溶液、懸濁液またはジェルの形である場合、本組成物は、組成物の全重量基準で、約10〜約99%の水を含むことができ、残りの成分は1種以上の活性剤である。
【0043】
本発明の組成物がエマルションである場合、その組成物は油相を含むことになる。油性成分は皮膚の保湿および保護特性にとって望ましいものである。適当なオイルには、シリコーン、エステル、植物油が含まれるが、ここに挙げたものに限定されない。オイルは揮発性または不揮発性であってよく、室温で注入可能な液体の形であることが好ましい。用語「揮発性」は、オイルが測定可能な蒸気圧または20℃で少なくとも約2mmの水銀蒸気圧をもつことを意味する。用語「不揮発性」は、オイルが20℃で約2mmより低い水銀蒸気圧をもつことを意味する。
【0044】
環状シリコーンは本組成物中で使用することができる揮発性シリコーンの1種である。そのようなシリコーンは次の一般式:
【化4】

【0045】
を有し、ここで、n=3〜6、好ましくは4、5または6である。
【0046】
さらに、直鎖状の揮発性シリコーンも適しており、例えば、それらは次の一般式:
(CH3)3-Si-O-[Si-(CH3)2-O]n-Si(CH3)3
を有し、ここで、n=0、1、2、3、4または5、好ましくは0、1、2、3または4である。
【0047】
環状および直鎖状の揮発性シリコーンは、Dow Corning社およびGeneral Electric社を含めて、さまざまな商業的供給源から入手可能である。Dow Corning社の直鎖状揮発性シリコーンは、Dow Corning 244、245、344、345および200 fluidの商標名で販売されている。これらのfluidsには、ヘキサメチルジシロキサン(粘度0.65センチストークス(cstと略記する))、オクタメチルトリシロキサン(1.0cst)、デカメチルテトラシロキサン(1.5cst)、ドデカメチルペンタシロキサン(2cst)、およびこれらの混合物が含まれる(すべての粘度測定は25℃で行う)。好ましい環状揮発性シリコーンは、DC 345 FluidとしてDow Corning社から入手可能なシクロペンタシロキサンである。適当な分枝状の揮発性シリコーンには、アルキルトリメチコン、例えばメチルトリメチコンが含まれ、この分枝状揮発性シリコーンは次の一般式:
【化5】

【0048】
を有する。メチルトリメチコンは信越シリコーンからTMF-1.5(25℃で1.5cstの粘度を有する)という商標名で購入することができる。
【0049】
不揮発性シリコーン油(水可溶性および水不溶性の両方)もまた本組成物中で用いるのに適している。そのようなシリコーンは、25℃で約5超から800,000cstまで、好ましくは20〜200,000cstの範囲の粘度をもつことが好ましい。適当な水不溶性シリコーンには、アモジメチコンのようなアミン官能性シリコーンが含まれる。
【0050】
例えば、そのような不揮発性シリコーンは次の一般式:
【化6】

【0051】
を有し、上記式中、RおよびR'は、それぞれ独立して、C1-30直鎖状または分枝鎖状、飽和または不飽和のアルキル、フェニルまたはアリール、トリアルキルシロキシであり、xおよびyは、それぞれ独立して、1〜1,000,000であり(ただし、xまたはyの少なくとも1つが存在することを条件とする)、そしてAはアルキルシロキシエンドキャップ単位である。好適であるのは、Aがメチルシロキシエンドキャップ単位、特にトリメチルシロキシであり、RおよびR'がそれぞれ独立してC1-30直鎖または分枝鎖アルキル、フェニルまたはトリメチルシロキシ、より好ましくはC1-22アルキル、フェニルまたはトリメチルシロキシ、最も好ましくはメチル、フェニルまたはトリメチルシロキシである場合であり、結果として生じるシリコーンはジメチコン、フェニルジメチコン、ジフェニルジメチコン、フェニルトリメチコン、またはトリメチルシロキシフェニルジメチコンである。その他の例には、少なくとも一方のRが脂肪アルキル(C12、C14、C16、C18、C20またはC22)で、他方のRがメチルであり、Aがトリメチルシロキシエンドキャップ単位である、セチルジメチコンなどのアルキルジメチコンが含まれ、そのようなアルキルジメチコンは室温で注入可能な液体であることを条件とする。ジメチコンはDow Corning社からDC 200/100 cs fluidとして購入することができる。好適なものは、ジメチコノールとMQシリケート樹脂との溶媒(例えばイソドデカン)中での重縮合により得られるフィルム形成性ポリマーであり、DC社からDC7-4405 low tack(登録商標)という商標名で入手可能である。
【0052】
各種の不揮発性オイルもまた、本発明の組成物中での使用に適している。不揮発性オイルは一般に25℃で約5〜10センチストークスの粘度を有し、そして粘度は25℃で最大約1,000,000センチポイズまでさまざまであり得る。不揮発性オイルの例としてはエステルおよび炭化水素油が含まれるが、これらに限定されない。適当なエステルはモノ-、ジ-およびトリエステルである。本組成物は、前記のグループから選択される1種以上のエステル、またはそれらの混合物を含むことができる。
【0053】
モノエステルは、式R-COOH(ここで、Rは炭素原子数2〜45の直鎖もしくは分枝鎖の飽和もしくは不飽和アルキル、またはフェニルである)を有するモノカルボン酸と、式R-OH(ここで、Rは炭素原子数2〜30の直鎖もしくは分枝鎖の飽和もしくは不飽和アルキル、またはフェニルである)を有するアルコールとの反応により形成されるエステルとして定義される。アルコールと酸の両方が1個以上のヒドロキシル基で置換されてもよい。酸またはアルコールのいずれか一方または両方が「脂肪」酸または「脂肪」アルコールであってもよく、直鎖または分枝鎖の、飽和または不飽和の形で約6〜30個の炭素原子、より好ましくは12、14、16、18または22個の炭素原子を有する。本発明の組成物中で使用できるモノエステル油の例としては、以下が挙げられる:ラウリン酸ヘキシル、イソステアリン酸ブチル、イソステアリン酸ヘキサデシル、パルミチン酸セチル、ネオペンタン酸イソステアリル、ヘプタン酸ステアリル、イソノナン酸イソステアリル、乳酸ステアリル、オクタン酸ステアリル、ステアリン酸ステアリル、イソノナン酸イソノニルなど。
【0054】
適当なジエステルは、ジカルボン酸と脂肪族もしくは芳香族アルコールとの、または少なくとも2個の置換ヒドロキシル基をもつ脂肪族もしくは芳香族アルコールとモノカルボン酸との、反応生成物である。ジカルボン酸は2〜30個の炭素原子を含むことができ、直鎖もしくは分枝鎖、飽和もしくは不飽和の形であってよい。ジカルボン酸が1個以上のヒドロキシル基で置換されてもよい。脂肪族もしくは芳香族アルコールも2〜30個の炭素原子を含むことができ、直鎖もしくは分枝鎖、飽和もしくは不飽和の形であってよい。好ましくは、酸またはアルコールの1つ以上が脂肪酸または脂肪アルコールであり、すなわち、12〜22個の炭素原子を含む。ジカルボン酸はまたαヒドロキシ酸であってもよい。エステルは二量体または三量体の形であり得る。本発明の組成物中で使用できるジエステル油の例としては、以下が挙げられる:リンゴ酸ジイソステアリル、ジオクタン酸ネオペンチルグリコール、セバシン酸ジブチル、ダイマージリノール酸ジセテアリル、アジピン酸ジセチル、アジピン酸ジイソセチル、アジピン酸ジイソノニル、ダイマージリノール酸ジイソステアリル、フマル酸ジイソステアリル、リンゴ酸ジイソステアリル、リンゴ酸ジオクチルなど。
【0055】
適当なトリエステルは、トリカルボン酸と脂肪族もしくは芳香族アルコールとの反応生成物、または3個以上の置換ヒドロキシル基をもつ脂肪族もしくは芳香族アルコールとモノカルボン酸との反応生成物を含む。上記のモノ-およびジエステルと同様に、酸およびアルコールは2〜30個の炭素原子を含み、飽和もしくは不飽和の直鎖もしくは分枝鎖であってよく、また、1個以上のヒドロキシル基で置換されてもよい。好ましくは、酸またはアルコールの1つ以上が12〜22個の炭素原子を含む脂肪酸または脂肪アルコールである。トリエステルの例としては、以下が挙げられる:アラキドン酸、クエン酸またはベヘン酸のエステル、例えばトリアラキジン、クエン酸トリブチル、クエン酸トリイソステアリル、クエン酸トリC12-13アルキル、トリカプリリン、クエン酸トリカプリリル、ベヘン酸トリデシル、クエン酸トリオクチルドデシル、ベヘン酸トリデシル;またはヤシ油脂肪酸トリデシル(tridecyl cocoate)、イソノナン酸トリデシルなど。
【0056】
本組成物で用いるのに適したエステルはさらに、C.T.F.A. Cosmetic Ingredient Dictionary and Handbook, 第11版, 2006に「エステル」の分類の下で記載されており、そのテキスト全体を参照により本明細書に組み入れる。1種以上の不揮発性炭化水素油を本組成物中に配合することが望ましい場合がある。適当な不揮発性炭化水素油には、パラフィン系炭化水素およびオレフィン、好ましくは約20個より多い炭素原子をもつもの、が含まれる。そのような炭化水素油の例としては、以下が挙げられる:C24-28オレフィン、C30-45オレフィン、C20-40イソパラフィン、水添ポリイソブテン、ポリイソブテン、ポリデセン、水添ポリデセン、ミネラルオイル、ペンタヒドロスクワレン、スクワレン、スクワラン、およびこれらの混合物。好ましい実施形態において、そのような炭化水素は約300〜1000ダルトンの分子量を有する。
【0057】
本発明の組成物中で使用できる界面活性剤には、シリコーン系界面活性剤および有機非イオン性界面活性剤が含まれる。使用する場合、界面活性剤は、組成物の全重量に基づいて、約0.1〜約80%の範囲、好ましくは約1〜約50%の範囲、さらに好ましくは約5〜約40%の範囲で存在する。
【0058】
適当なシリコーン系界面活性剤には、両親媒性の性質を備えた、例えば親水基と親油基を含む、ポリオルガノシロキサンポリマーが含まれる。こうしたシリコーン系界面活性剤は室温で液体または固体であり得る。
【0059】
使用できる1つのタイプのシリコーン系界面活性剤は一般的にジメチコンコポリオールまたはアルキルジメチコンコポリオールと呼ばれている。この界面活性剤は約2〜18の親水性/親油性バランス(HLB)を有する油中水型または水中油型界面活性剤である。好ましくは、シリコーン系界面活性剤は約2〜12、好ましくは約2〜10、最も好ましくは約4〜6のHLBを有する非イオン性界面活性剤である。用語「親水基」は、オルガノシロキサンポリマー骨格に置換されたとき、そのポリマーの置換部分に親水性を付与する基を意味する。親水性を付与しうる基の例はヒドロキシ-ポリエチレンオキシ、ヒドロキシル、カルボン酸、およびそれらの混合物である。用語「親油基」は、オルガノシロキサンポリマー骨格に置換されたとき、そのポリマーの置換部分に親油性を付与する有機基を意味する。親油性を付与しうる有機基の例は、C1-40直鎖もしくは分枝鎖アルキル、フルオロ、アリール、アリールオキシ、C1-40ヒドロカルビルアシル、ヒドロキシ-ポリプロピレンオキシ、またはこれらの混合物である。
【0060】
適当なシリコーン系界面活性剤の1つのタイプは、次の一般式:
【化7】

【0061】
を有し、上記式中、pは0〜40であり(この範囲は、2、3、4、13、14、15、16、17、18など、その間のすべての数および部分範囲を含む)、PEは(-C2H4O)a-(-C3H6O)b-H(ここで、aは0〜25、bは0〜25であるが、aとbの両方が同時に0であることはない)であり、xおよびyはそれぞれ独立して0〜100万の範囲であるが、それらは両方が同時に0であることはない。好ましい実施形態では、x、y、z、aおよびbは、ポリマーの分子量が約5,000〜約500,000、さらに好ましくは約10,000〜100,000の範囲になるようなものであり、最も好ましくは約50,000になるようなものであり、そのポリマーは総称的にジメチコンコポリオールと呼ばれる。シリコーン系界面活性剤の1つのタイプは、長鎖アルキルがセチルまたはラウリルであるようなpである場合であり、その界面活性剤は、総称的に、それぞれセチルジメチコンコポリオールまたはラウリルジメチコンコポリオールと呼ばれる。
【0062】
場合によっては、ポリマー中の繰り返しエチレンオキシドまたはプロピレンオキシド単位の数が特定されることもあり、例えば、PEG-15/PPG-10ジメチコンとも呼ばれるジメチコンコポリオールは、シロキサン骨格上に15個のエチレングリコール単位と10個のプロピレングリコール単位を含む置換基を有するジメチコンをさす。さらに、上記の一般構造中の1個以上のメチル基を、より長鎖のアルキル(例えば、エチル、プロピル、ブチルなど)またはエーテル(例えば、メチルエーテル、エチルエーテル、プロピルエーテル、ブチルエーテルなど)で置換することも可能である。
【0063】
シリコーン系界面活性剤の例は以下のものである:Dow Corning社から販売される商標名Dow Corning 3225C Formulation Aid (CTFA名:シクロテトラシロキサン(および)シクロペンタシロキサン(および)PEG/PPG-18ジメチコン);または5225C Formulation Aid (CTFA名:シクロペンタシロキサン(および)PEG/PPG-18/18ジメチコン);またはDow Coming 190 Surfactant (CTFA名:PEG/PPG-18/18ジメチコン);またはDow Corning 193 Fluid、Dow Corning 5200 (CTFA名:ラウリルPEG/PPG-18/18メチコン);またはGoldschmidt社から販売されるAbil EM 90 (CTFA名:セチルPEG/PPG-14/14ジメチコン);またはGoldschmidt社から販売されるAbil EM 97 (CTFA名:ビス-セチルPEG/PPG-14/14ジメチコン);またはAbil WE 09 (CTFA名:イソステアリン酸ポリグリセリル-4とラウリン酸ヘキシルの混合物中のセチルPEG/PPG-10/1ジメチコン);または信越シリコーンから販売されるKF-6011 (CTFA名:PEG-11メチルエーテルジメチコン);または信越シリコーンから販売されるKF-6012 (CTFA名:PEG/PPG-20/22ブチルエーテルジメチコン);または信越シリコーンから販売されるKF-6013 (CTFA名:PEG-9ジメチコン);または信越シリコーンから販売されるKF-6015 (CTFA名:PEG-3ジメチコン);または信越シリコーンから販売されるKF-6016 (CTFA名:PEG-9メチルエーテルジメチコン);または信越シリコーンから販売されるKF-6017 (CTFA名:PEG-10ジメチコン);または信越シリコーンから販売されるKF-6038 (CTFA名:ラウリルPEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン)。
【0064】
さらに、乳化エラストマーとも呼ばれることが多い、さまざまなタイプの架橋シリコーン系界面活性剤も適している。それらは一般に「シリコーンエラストマー」に関して上述したように調製されるが、そのシリコーンエラストマーはポリオキシアルキレン化基などの少なくとも1つの親水性部分を含む。一般的に、こうしたポリオキシアルキレン化シリコーンエラストマーは架橋オルガノポリシロキサンであり、これらは、ケイ素に結合した少なくとも1個の水素を含むジオルガノポリシロキサンと少なくとも2個のエチレン性不飽和基を含むポリオキシアルキレンとの架橋付加反応によって得ることができる。少なくとも一実施形態において、ポリオキシアルキレン化架橋オルガノポリシロキサンは、ケイ素にそれぞれ結合した少なくとも2個の水素を含むジオルガノポリシロキサンと少なくとも2個のエチレン性不飽和基を含むポリオキシアルキレンとの、場合により白金触媒の存在下での、架橋付加反応(crosslinking addition reaction)によって得られ、こうした架橋付加反応は、例えば、米国特許第5,236,986号および米国特許第5,412,004号、米国特許第5,837,793号および米国特許第5,811,487号に記載されており、それらの内容を参照により本明細書に組み入れる。
【0065】
本発明の少なくとも一実施形態で使用できるポリオキシアルキレン化シリコーンエラストマーとしては、以下が挙げられる:信越シリコーンから販売される商品名KSG-21、KSG-20、KSG-30、KSG-31、KSG-32、KSG-33;KSG-210 (ジメチコン中に分散されたジメチコン/PEG-10/15クロスポリマー);KSG-310 (PEG-15ラウリルジメチコンクロスポリマー);KSG-320 (イソドデカン中に分散されたPEG-15ラウリルジメチコンクロスポリマー);KSG-330 (トリエチルヘキサノイン中に分散された前記クロスポリマー);KSG-340 (PEG-10ラウリルジメチコンクロスポリマーとPEG-15ラウリルジメチコンクロスポリマーの混合物)。
【0066】
また、ポリグリセロール化シリコーンエラストマーも適しており、例えば、PCT/WO 2004/024798(その全内容を参照により本明細書に組み入れる)に開示されるものである。そのようなエラストマーとしては、以下が挙げられる:信越のKSGシリーズ、例えば、ジメチコン中に分散されたジメチコン/ポリグリセリン-3クロスポリマーであるKSG-710;またはイソドデカン、ジメチコン、トリエチルヘキサノインなどの各種溶媒中に分散されたラウリルジメチコン/ポリグリセリン-3クロスポリマーである、信越のKSG-810、KSG-820、KSG-830またはKSG-840という商標名で販売されるもの。さらに、Dow Corning社から9010およびDC9011という商標名で販売されるシリコーンも適している。1つの好ましい架橋シリコーンエラストマー乳化剤はジメチコン/PEG-10/15クロスポリマーであり、これはその弾性主鎖に起因するすぐれた審美性を提供するだけでなく、界面活性の性質をも提供する。
【0067】
本組成物は1種以上の非イオン性有機界面活性剤を含むことができる。適当な非イオン性界面活性剤には、アルコールとアルキレンオキシド(通常はエチレンまたはプロピレンオキシド)との反応により形成されるアルコキシル化アルコール、つまりエーテルが含まれる。好ましくは、アルコールは6〜30個の炭素原子を有する脂肪アルコールである。そうした成分の例としては、以下が挙げられる:Steareth 2-100、これはステアリルアルコールとエチレンオキシドとの反応により形成され、エチレンオキシド単位の数が2〜100の範囲である;Beheneth 5-30、これはベヘニルアルコールとエチレンオキシドとの反応により形成され、この場合の繰り返しエチレンオキシド単位の数は5〜30である;Ceteareth 2-100、これはセチルおよびステアリルアルコールの混合物とエチレンオキシドとの反応により形成され、この分子の繰り返しエチレンオキシド単位の数は2〜100である;Ceteth 1-45、これはセチルアルコールとエチレンオキシドとの反応により形成され、繰り返しエチレンオキシド単位の数が1〜45である。
【0068】
他のアルコキシル化アルコールは、脂肪酸および一価、二価または多価アルコールとアルキレンオキシドとの反応により形成される。例えば、C6-30脂肪カルボン酸および多価アルコール(グルコース、ガラクトース、メチルグルコースなどの単糖類である)とアルコキシル化アルコールとの反応生成物。例としては、以下が挙げられる:グリセリル脂肪酸エステルと反応させた高分子アルキレングリコール、例えばオレイン酸PEGグリセリル、ステアリン酸PEGグリセリル;またはポリヒドロキシアルカン酸PEG、例えばジポリヒドロキシステアリン酸PEG、ここで、繰り返しエチレングリコール単位の数は3〜1000の範囲である。
【0069】
さらに、非イオン性界面活性剤として適するものは、カルボン酸とアルキレンオキシドとの、または高分子エーテルとの、反応により形成されるものである。結果として生じる生成物は、次の一般式:
【化8】

【0070】
を有し、上記式中、RCOはカルボン酸エステル基であり、Xは水素または低級アルキルであり、nは重合アルコキシ基の数である。ジエステルの場合には、2個のRCO-基が同一である必要はない。好ましくは、RはC6-30直鎖または分枝鎖の飽和または不飽和アルキルであり、そしてnが1〜100である。
【0071】
モノマー、ホモポリマー、またはブロックコポリマーのエーテルも非イオン性界面活性剤として適している。一般的に、そうしたエーテルは、単量体アルキレンオキシド(通常はエチレンまたはプロピレンオキシド)の重合により形成される。この種の高分子エーテルは、次の一般式:
【化9】

【0072】
を有し、上記式中、XはHまたは低級アルキルであり、nは繰り返しモノマー単位の数であって、1〜500の範囲である。
【0073】
他の適当な非イオン性界面活性剤には、アルコキシル化ソルビタンおよびアルコキシル化ソルビタン誘導体が含まれる。例えば、ソルビタンのアルコキシル化、特にエトキシル化は、ポリアルコキシル化ソルビタン誘導体を提供する。ポリアルコキシル化ソルビタンのエステル化は、ポリソルベートのようなソルビタンエステルを提供する。例えば、ポリアルコキシル化ソルビタンはC6-30、好ましくはC12-22脂肪酸を用いて、エステル化することができる。そうした成分の例としては、以下が挙げられる:Polysorbates 20-85、具体的にはPolysorbate 80、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレエート、ソルビタンパルミテート、ソルビタンセスキイソステアレート、ソルビタンステアレートなど。
【0074】
以下の実施例は、本発明の範囲をいかなる場合も制限する意図はなく、本発明の態様およびその使用を説明するために提示される。
【実施例1】
【0075】
リーブオン組成物
材料 重量パーセント
*チオール化ヒアルロン酸 1.5
クエン酸(1%水溶液) pHを3.5に調整するため
水 適量を加えて100とする
*25%の反応性チオール基;分子量 150,000ダルトン。
【実施例2】
【0076】
疎水性/親水性解析
毛髪繊維の湿性質(疎水性/親水性)は、毛髪繊維表面の水接触角を測定することによって判定した。染色していないバージン灰色毛(virgin grey hair)を対照として使用した。
【0077】
接触角測定の手順
1. 毛髪見本を次のように染色した:
- 灰色毛の15〜20g見本を、市販のヘアカラー剤1を用いてパッケージの指示に従って染色した;
- ヘアカラー剤を毛髪見本上で室温にて25分間発色させた;
- その毛髪見本をシンクで、水が完全に透明になるまで、水道の流水により洗浄した;
- 毛髪見本を30分風乾させた;
- サンプルごとに1本の毛を繊維ホルダーに装着し、濾過蒸留水を満たした50μlマイクロシリンジとガラス製注水針を用いるOCA 20デバイスのサンプルステージ上に配置した。約10ナノリットルの水滴を毛髪表面に分配した;
- サンプル表面への水滴の配置手順を、自動ビデオ録画機能を用いて記録した。合計60秒の画像を、5画像/サンプルの記録速度を用いてとらえた。接触角はマニュアルフィッティングを用いて各画像について自動的に計算した。
【0078】
2. 染色毛髪見本を次のようにコンディショニングした:
- 2.5〜3g(長さ20〜25cm、幅1cm)の染色毛髪見本(上記のステップ1から)はペーパータオルで湿り気を拭き取った;
- 1〜1.2gの試験材料9(下記の表2参照)を毛髪見本全体に手で十分に塗り付け、1〜2分間固化させた(つまりフィルムを形成させた);
- その毛髪見本をシンクで、水が完全に透明になるまで水道の流水により洗浄した;
- 毛髪見本はペーパータオルで湿り気を拭き取り、とかして10分間ブロー乾燥させた。
【0079】
各サンプルの4回の初期接触角測定の平均値を表1に示す。
【表1】

【0080】
1市販カラー剤1の成分:水、PEG-4アブラナ種子油脂肪酸アミド、変性アルコール(Alcohol Denat)、グリセリルラウリルエーテル、デセス-3、プロピレングリコール、ラウレス-5カルボン酸、エタノールアミン、ジプロピレングリコール、ヘキシレングリコール、水酸化アンモニウム、ポリクオタニウム-6、4-アミノ-2-ヒドロキシトルエン、オレイルアルコール、パルファム/香料、p-アミノフェノール、チオ乳酸アンモニウム、p-フェニレンジアミン、エリソルビン酸、EDTA、ポリクオタニウム-24、2-メチル-5-ヒドロキシ-エチルアミノフェノール、6-ヒドロキシインドール、レソルシノール。
【0081】
2市販コンディショナー1の成分:セテアリルアルコール/ベヘントリモニウムメトサルフェート、ジメチコンシリレート/イソドデカン、ステアラルコニウムクロリド、セテアリルアルコール/ベヘントリモニウムクロリド、セチルアルコール、Helianthus Annuus(ヒマワリ)種子油、クエン酸トリカプリリル、精製水、ポリクオタニウム-10、ヒドロキシプロピルデンプンリン酸、グリセリン、グルコン酸ナトリウム、マカデミアナッツ脂肪酸エチル、Helianthus Annuus(ヒマワリ)種子エキス、精製水(Aqua Purifita)/Foeniculum Vulgare(フェンネル)種子エキス、水(Water/Aqua/Eau)/コムギアミノ酸/加水分解ブラジルナッツタンパク、水(Water/Aqua/Eau)/コムギアミノ酸/塩化ナトリウム/ヒドロキシプロピルトリモニウム加水分解コムギタンパク/加水分解ブラジルナッツタンパク、トコフェロール、フェノキシエタノール、Aspalathus Linearis(ルイボス)葉エキス/マルトデキストリン、Simmondsia Chinensis(ホホバ)種子油。
【0082】
3市販シャンプー1の成分:水、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウレス硫酸ナトリウム、塩化ナトリウム、ジステアリン酸グリコール、コカミドプロピルベタイン、ジメチコン、クエン酸、コカミドMEA、クエン酸ナトリウム、香料、キシレンスルホン酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、グアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド、EDTA四ナトリウム、パンテノール、パンテニルエチルエーテル、メチルクロロイソチアゾリノン、メチルイソチアゾリノン。
【0083】
表1に示した結果は、自然な毛髪(染色していない毛髪)が疎水性(水接触角103.7±2.2度)であるのに対して、従来の染毛剤で処理した毛髪は親水性(水接触角65±1.2度)であることを実証しており、染毛プロセスは毛髪のキューティクルに損傷を与えることが示される。染色した毛髪を従来のヘアコンディショナーで処理すると、毛髪の疎水性が部分的に回復する。接触角の結果からは、染色した毛髪を、カラーロックコンディショニング技術を含む本発明の組成物で処理すると、染色毛髪の表面が補修されて、毛髪の自然な疎水特性(水接触角127±2.1度)を回復することが示され、さらに、本発明の組成物で処理した毛髪を40回洗浄した(シャンプー/コーミング/ブロー乾燥のサイクル)後でさえ、疎水性が維持されることが示される。
【実施例3】
【0084】
毛髪上のチオール化ポリマーフィルムの持続性
染色毛髪の見本上のポリマーフィルムの持続性を、シャンプーによる洗浄、コーミングおよびブロー乾燥の関数として測定するために、重量分析を用いた。本発明者らは、次の特性を有するチオール化ポリマー系は毛髪上ですぐれた持続性(洗浄耐性)を示すという仮説をたてた:
- 多数回の洗浄(シャンプー/コーミング/ブロー乾燥のサイクル)(最大40+)に耐えるための毛髪への最大結合;
- 多数回の洗浄(シャンプー/コーミング/ブロー乾燥のサイクル)後に染色毛髪の表面に残存する95〜100%の残留ポリマーフィルム;
- ロックインしている髪色、すなわち、多数回(最大40+)のシャンプー/コーミング/ブロー乾燥のサイクル後でさえ、同じく残っている髪色。
【0085】
手順
1. 2〜3gの染色毛髪(本明細書の実施例2の手順に従って染色した)の11個の見本を、Sartorious 1615 MPマイクロバランスを使って量り分けた;
2. 試験材料(下記の表2参照)を各染色毛髪見本の表面に塗り付け、その毛髪をブロー乾燥させた;
3. 各染色毛髪見本の表面上の試験材料の重さを、Sartorious 1615 MPマイクロバランスを使って測定した: Wt.(試験材料)=Wt.(試験材料+毛髪)−Wt.(毛髪);
4. 試験材料で処理した各染色毛髪見本を市販シャンプー1で洗浄し、ブロードライヤーで乾かした。各シャンプー/コーミング/ブロー乾燥サイクルの後に、毛髪の重さを量りなおした;
5. 40回のシャンプー/コーミング/ブロー乾燥サイクルの後に、試験材料で処理した染色毛髪の最終的な重さを測定した: Wt.(40回洗浄後に残留する試験材料)=Wt.(最初の、試験材料で処理した染色毛髪)−Wt.(40回洗浄後の、試験材料で処理した染色毛髪)。
【0086】
結果を以下の表3に示す。
【表2】


【0087】
1 市販コンディショナー2の成分:セテアリルアルコール/ベヘントリモニウムメトサルフェート、ジメチコンシリレート/イソドデカン、ステアラルコニウムクロリド、セテアリルアルコール/ベヘントリモニウムクロリド、セチルアルコール、Helianthus Annuus(ヒマワリ)種子油、クエン酸トリカプリリル、精製水、ポリクオタニウム-10、ヒドロキシプロピルデンプンリン酸、グリセリン、グルコン酸ナトリウム、マカデミアナッツ脂肪酸エチル、Helianthus Annuus(ヒマワリ)種子エキス、精製水(Aqua Purifita)/Foeniculum Vulgare(フェンネル)種子エキス、水(Water/Aqua/Eau)/コムギアミノ酸/加水分解ブラジルナッツタンパク、水(Water/Aqua/Eau)/コムギアミノ酸/塩化ナトリウム/ヒドロキシプロピルトリモニウム加水分解コムギタンパク/加水分解ブラジルナッツタンパク、トコフェロール、フェノキシエタノール、Aspalathus Linearis(ルイボス)葉エキス/マルトデキストリン、Simmondsia Chinensis(ホホバ)種子油。
【表3】

【0088】
表3は、多数回のシャンプー/コーミング/ブロー乾燥サイクル後に毛髪のキューティクルに結合された試験材料の持続性(洗浄耐性)を実証している。驚いたことに、最大100%の試験材料が最大40回のシャンプー/コーミング/ブロー乾燥サイクル後でさえキューティクルに結合したままである。40回のシャンプー/コーミング/ブロー乾燥サイクル後の最強の洗浄耐性(100%)は試験材料9〜11によって示された。本発明者らは次のように理論づける:毛髪のキューティクル上に疎水性フィルムを形成して維持し、それゆえにフィルムの完全性を保持する試験材料の能力は、試験材料中のポリマー類の相溶性(すなわち、水素結合を介するなどの、ポリマー同士の凝集力)に依存する。試験材料が異なる疎水度/親水度を有するポリマーのブレンドを含む場合など、凝集力が弱い場合には、ポリマーは毛髪表面上でバラバラに分離して、洗い流されやすくなると考えられる。一方、凝集力が強く(すなわち、ポリマー類が相溶性であり)、かつ試験材料が親水性というよりも全体的に高い疎水性を示す場合には、毛髪表面上のフィルムの完全性がより長く維持され、度重なる洗浄後にも毛髪表面上のフィルムの密着性が強いままであると考えられる。特によく機能した試験材料9〜11は、すべてが相溶性でありかつ疎水性であるシリコーンポリマー類のブレンドを含む。注目すべき点は、わずか3%の反応性チオール基を有するチオール化ポリマーを含む試験材料1が機能しなかっただけでなく、より高い割合(例えば11%)の反応性チオール基を有するチオール化ポリマーを含む試験材料も機能しなかったことである。チオール化シリコーン以外のチオール化ポリマー、例えば限定するものではないが、少なくとも1種のチオール化された疎水性修飾アクリレーツポリマーもまた、場合により少なくとも1種の他の相溶性の疎水性または疎水性修飾ポリマーとの組み合わせで、すぐれた洗浄耐性を示すフィルムを毛髪に提供すると予想される。
【実施例4】
【0089】
走査型電子顕微鏡(SEM)解析
毛髪繊維表面の表面形態/トポグラフィーのSEM解析を用いて、毛髪繊維表面に本発明のチオール化ポリマー含有組成物によって形成されたフィルムの均一性、完全性および密着性を観察した。図2に示すように、サンプルAは、滑らかな表面を示す(バージン灰色の)染色していない毛髪のSEM画像である。サンプルBは、市販ヘアカラー剤1で染めた毛髪の傷ついた表面のSEM画像である。サンプルCは、市販ヘアカラー剤1で染めてから市販コンディショナー1で処理した毛髪の傷ついた表面のSEM画像である。サンプルDは、市販ヘアカラー剤1で染色し、次に試験材料11で処理し、その後40回の洗浄(市販シャンプー1を使用)、コーミングおよびブロー乾燥のサイクルに供した毛髪の表面のSEM画像である。図2のSEM画像は、本発明の組成物が毛髪表面への強い接着を有するフィルムを提供することを示しており(サンプルD)、40回のシャンプー/コーミング/ブロー乾燥のサイクル後に、本発明の組成物で処理した毛髪は染色毛髪の傷ついたキューティクルを補修する(すなわち、サンプルDの毛髪のキューティクルはサンプルAの未処理毛髪のキューティクルのように滑らかである)ことを実証している。
【0090】
図3のSEM画像を参照すると、サンプルAは、市販ヘアカラー剤1で染めてから試験材料9で処理した1本のバージン灰色毛の画像である。サンプルBは、毛髪をよじって結び目にしたときのサンプルAの毛髪の画像である。サンプルCは、市販ヘアカラー剤1で染色して試験材料9で処理し、40回の洗浄/コーミング/ブロー乾燥のサイクルに供した1本のバージン灰色毛の画像である。サンプルDは、毛髪をよじって結び目にしたときのサンプルCの毛髪の画像である。これらの画像から、本発明によるポリマーフィルムは、シャンプーで洗う前(サンプルAおよびB)だけでなく40回のシャンプー/コーミング/ブロー乾燥のサイクル後(サンプルCおよびD)にも、毛髪表面への強い接着を示すことが明らかである。
【0091】
SEM画像は、染色してから本発明の組成物で処理した毛髪の表面が、40回の洗浄/コーミング/ブロー乾燥サイクルの前と後に、未処理毛髪の表面と同じくらい滑らかであることを示している。本発明に従って処理された染色毛髪の目視観察からは、キューティクルの滑らかさが髪の輝きを増すことに関係していることが示される。
【実施例5】
【0092】
髪色保持の解析
本発明のカラーロック技術の色保持(DE)効果は、次の手順に従って測定した:
A. ヘアカラー剤の塗布
- バージン灰色毛の15〜20g見本を、市販ヘアカラー剤1を用いてパッケージの指示に従って染色した;
- その毛髪見本をシンクで、水が完全に透明になるまで水道の流水により洗浄した。
【0093】
B. 試験材料の塗布
- 上記Aから得られた、2.5〜3g(長さ20〜25cm、幅1cm)の髪色見本はペーパータオルで湿り気を拭き取った;
- 1〜1.2gの試験材料を毛髪見本全体に手で十分に塗り付け、1〜2分間固化させた(フィルムを形成させた);
- 次に毛髪見本を、水が完全に透明になるまで水道の流水で洗浄し、ペーパータオルで湿り気を拭き取り、その後とかして10分間ブロー乾燥させた。
【0094】
C. DE測定の手順
比色計ソフトウェアOptiview ProPalette 5.2.10.を備えたGretagMacneth社製のSpectrolino 8mm分光光度計装置を髪色保持(DE)の測定のために使用した。Hunter L,a,bパラメーターの色の読取り値は、Leneta Black Paperテンプレート上のD65光源の設定により得られた。すべてのDE測定のために1cm2テンプレートを使用した。
【0095】
L,a,b色空間は、非線形に圧縮された色空間の座標に基づいた、明度のための次元Lと補色次元のaおよびbをもつ補色空間として定義される。3つの座標は以下を表す:色の明度L(L=0は黒を生じ、L=100は白の拡散色を示す;白の反射色はさらに高い可能性がある)、赤と緑の間の位置a値(負のa値は緑を示す一方で、正のa値は赤を示す)、および黄色と青の間の位置b値(負のb値は青を示す一方で、正のb値は黄色を示す)。色の違いを次の式に従って測定した:DE = ((Lx-Ly)2 + (ax-ay)2 + (bx-by)2)1/2;ここでxは40回のシャンプー後を意味し、yは40回のシャンプー前を意味する。より低いDE値はより大きな色保持を示している。
【0096】
対照のDE測定について
1. 市販ヘアカラー剤1で染色した、乾いた毛髪の2.5〜3g見本を、水道の流水で湿らせた;
2. 対照見本の一方の面で5つのL,a,b測定値を得て、対照見本の他方の面で5つのL,a,b測定値を得た。したがって、10のDE値を記録して、平均DE値をエラーバー付きで報告した。対照見本では(髪色が均一に形成されたため)すべてのL,a,b値が非常に類似していることが観測された。
【0097】
洗浄前の試験材料のDE測定について
1. 市販ヘアカラー剤1をパッケージの指示に従って用いて染色した、乾いた毛髪の2.5〜3g見本を、水道の流水で湿らせた;
2. 1〜1.2gの試験材料を毛髪見本全体に手で十分に塗り付け、1〜2分間固化させた(フィルムを形成させた);
3. 染色して試験材料で処理した毛髪見本を、水道の流水により、その水が完全に透明になるまでシンクで洗浄し、次にペーパータオルで湿り気を拭き取り、その後とかして10分間ブロー乾燥させた;
4. 試験材料で処理した毛髪見本の一方の面で5つのL,a,b測定値を得て、染色して試験材料で処理した毛髪見本の他方の面で5つのL,a,b測定値を得た。したがって、10のDE値を記録して、平均DE値をエラーバー付きで報告した。
【0098】
洗浄(40回)後の試験材料のDE測定について
1. 染色して試験材料で処理した毛髪見本を市販シャンプー1で洗浄し、水道の流水により、その水が完全に透明になるまで十分にすすぎ、その後ペーパータオルで湿り気を拭き取り、とかして10分間ブロー乾燥させた;
2. その毛髪見本の一方の面で5つのL,a,b測定値を得て、毛髪見本の他方の面で5つのL,a,b測定値を得た。したがって、10のDE値を記録して、平均DE値をエラーバー付きで報告した。
【0099】
髪色保持(DE)の結果を以下の表4に示す。
【表4】

【0100】
1 市販コンディショナー3:水、ステアリルアルコール、シクロペンタシロキサン、セチルアルコール、ステアラミドプロピルジメチルアミン、イミダゾリジニル尿素、ジメチコン、シクロヘキサシロキサン、アスパラギン酸、DMDMヒダントイン、クオタニウム18、香料(パルファム)、クエン酸、イソステアラミドプロピルエチルジモニウムエトサルフェート、ブチルフェニルメチルプロピオノール、リモネン、EDTA二ナトリウム、アミルシンナマール、PEG-9、リナロール、ゲラニオール、ヘキシルシンナマール、Camellia Sinensis(チャノキ)葉エキス、Helianthus Annuus(ヒマワリ)種子油、グリセリン、ポリソルベート20、加水分解ケラチン、Rosmarinus Officinalis(ローズマリー)葉エキス、トコフェリル酢酸、パンテノール、アスコルビン酸、ナイアシンアミド、ビオチン。
【0101】
表4に示すように、本発明のカラーロック技術を用いると、髪色保持(DE)値が13.762±3.523(市販ヘアカラー剤1を用いて染色した毛髪)から0.989±0.44(市販ヘアカラー剤1を用いて染色してから試験材料10で処理した毛髪)に、および2.014±0.85(市販ヘアカラー剤1を用いて染色してから試験材料11で処理した毛髪)に改善された。さらに、市販シャンプー1で40回洗浄した後に、本発明のカラーロック技術を含む試験材料で処理した毛髪は、市販コンディショナー1、2および3のいずれかで処理した毛髪より実質的により大きく(より低いDE値に)色を保持した。このことはまた、カラーロック技術を用いることによって、髪色がそのままであり続け、すなわち、市販シャンプーで40回洗浄した後でさえも退色しないことを示している。
【実施例6】
【0102】
X線光電子分光(XPS)分析
XPSは、毛髪に付着した本発明の組成物の均一性を評価するために用いられた。XPSは材料内に存在する元素の元素組成、実験式、化学状態および電子状態を測定する定量的な分光技術である。この分析では、XPSを用いて、毛髪繊維の表面から検出された電子の結合エネルギー値を測定した。XPSは、サンプルの毛髪表面の元素組成(C、H、O、N、S、Siなど)の均一性だけでなく、染色毛髪表面上のカラーロック技術フィルムの均一性をも定量的に検出する。
【0103】
実験手順
1. XPS(X線光電子分光)測定は、Ultra Axis(商標)分光計(製造元:Kratos Analytical社、英国マンチェスター)で実施した;
2. サンプルに単色エネルギーAl Kα1,2線(1486.6eV)を照射し、そのスペクトルを144W(12kV×12mA)の出力で取得した;
3. 285eV(C1sフォトライン)の結合エネルギーの脂肪族炭素(C-C、C-H)を用いて帯電を測定した;
4. スペクトル分解能−すなわち、PETからのエステル炭素の半値全幅(FWHM)−は元素スペクトルについての0.68eVより良好であった;
5. 元素濃度は原子%で示される;しかし、この方法では水素とヘリウムが検出されない。
【表5】

【0104】
表5に示すように、サンプル4および5では、バージン灰色毛のそれを上回るSi含有量の大幅な増加が、シリコーン含有試験材料10または11による処理のために検出された。シリコーンポリマーの大部分が40回の洗浄後でさえ毛髪表面に結合したままであることは注目に値する。このことは、シリコーンポリマーが毛髪表面に非常に強く結合していることを間接的に示し、共有結合を示唆している。
【実施例7】
【0105】
ジスルフィド結合の比色分析
ジスルフィド結合の存在によって示される毛髪のシスチン含有量は、シスチンとジチオスレイトール(DTT)から誘導される酸化DTT(λmax=280nm)の量を測定することによって定量した。
【0106】
手順
1. 15〜20mgの毛髪サンプルを、Sartorious 1615 MPマイクロバランスを使って量り分けた。毛髪サンプルをつぎのように処理した:
a. 未処理(バージン灰色毛);
b. 市販ヘアカラー剤1でパッケージの指示に従って染色した;
c. 市販ヘアカラー剤1で染色してから市販コンディショナー1で処理した;
d. 市販ヘアカラー剤1で染色してから試験材料10で処理し、その後水道の流水ですすぎ、ブロードライヤーで10分乾燥した;
e. 市販ヘアカラー剤1で染色してから試験材料11で処理した;
2. 各毛髪サンプルを再び量りなおした;
3. 各毛髪サンプルを水:エタノール(1:1)の溶液中で15分間2回超音波処理した;
4. 各毛髪サンプルを24時間風乾させた;
5. 100mLのDI水中の1.54gのジチオスレイトール(DTT)の混合液を調製した;
6. 各毛髪サンプルを、1.3mLのDTT-水溶液を含むポリプロピレンチューブ中に浸漬し、毛髪/DTT-水の混合物を含むチューブを60℃のオーブン内で16時間インキュベートした;
7. 各上清溶液を水で希釈し、その溶液200μLをUVプレートのウェルに分配して波長280nmでDTTの吸光度を測定した。波長280nmでの吸光度ピークは、DTTとシスチンから誘導される酸化DTTの量の直接測定である。(そのピークが高いほど、毛髪中のシスチン(S-S)結合が多い);
8. 各サンプルの毛髪シスチン(S-S)含有量は酸化型グルタチオン標準曲線溶液を用いて計算した。
【0107】
図4に示した結果は、未処理毛髪の表面が100%のS-S結合の値であるとみなして、染色毛髪の表面は80%のS-S結合を保持し、また、染色してから本発明のカラーロック組成物でさらに処理した毛髪は95%のS-S結合の存在を示した、ことを実証している。このことは、カラーロック技術(試験材料10)が染色毛髪の表面のS-S結合を再形成させて、染色毛髪の傷ついた表面を補修する、ことを示している。
【実施例8】
【0108】
フィルム接着/厚さの解析
原子間力顕微鏡法(AFM)およびマイクロインデンテーション(Micro-indentation)技術を用いて、染色毛髪表面上のカラーロック技術によるフィルム形成特性の表面形状だけでなく、厚さ、接着強度、柔軟性/剛性を測定した。
【0109】
原子間力顕微鏡法の手順
1. サンプルは両面粘着テープでサファイア基板に取り付けることによって準備した。テープをサファイア基板の2箇所に取り付けて、毛髪繊維をその2つの領域にわたって置いた;
2. 測定位置は2つのテープ領域の間とした。その間隔は、荷重をかけたとき繊維が安定していて滑ったり動いたりしないように、十分であるとわかった;
3. サファイア基板に直接接触する繊維は毛髪繊維の剛性接触を提供する。AFM力分光法はサンプルとサファイア参照材料に対して実施された;
4. AFM探針を材料(毛髪繊維または参照基板のいずれか)の表面に着地させることによって繊維に接触させる。測定を繊維の頂端に位置づけた;
5. カンチレバーの変位は、カンチレバービームの変形を誘導するために、また、探針先端と材料の接触の際に力を発生するために、増加する;
6. 荷重を増加させかつ材料を貫通するように変位を増加させた;
7. 荷重曲線の傾きが表面の見かけ剛性のために解析される。
【0110】
マイクロインデンテーション法の手順
1. 毛髪繊維の表面上のコーティング厚さの測定は、Berkovichダイヤモンドプローブチップを備えた計装化マイクロインデンテーション(MicroMaterials MicroTest)を用いて実施した;
2. サンプルは、材料セクションで説明したように、両面粘着テープを用いて研磨アルミニウムサンプルスタブ表面に取り付けた。インデンテーション試験の前に、荷重、変位および顕微鏡位置の較正を行った;
3. 機器は、適正な動作を確認するために、研磨石英ガラスサンプルを用いて較正した。繊維を取り付けたサンプルスタブを機器に置き、in situ光学顕微鏡を用いて個々の繊維を位置づけた;
4. 計装化インデンテーションは、一貫した接触面積とするために毛髪繊維の頂端で実施した。2つのエッジ間のキューティクルの中心を、繊維軸に沿った測定の空間的位置とした;
5. 深さ制御インデンテーションを5〜15μmの深さ範囲で実施した;
6. 機器は先端変位と常用荷重の同時リアルタイム測定を記録する;
7. 各毛髪繊維サンプルの常用荷重対先端変位を測定した。
【0111】
結果は次のとおりである:
マイクロインデンテーションの結果(示さず)は、市販ヘアカラー剤1で染色した毛髪上におよそ8〜9ミクロンのカラーロック技術フィルム厚みを示す。同様のフィルム厚みが市販コンディショナー2についても測定された。このことは、本発明のカラーロックポリマー系が市販コンディショナー2基剤と相溶性であること、すなわち、それが(諸成分を一緒に密閉して)染色毛髪上に連続した均一なフィルムを形成し、粘性を増加させることなく毛髪上によく広がること、を示している。
【0112】
さらに、染色毛髪上のカラーロックフィルムは、市販コンディショナー2のそれよりも剛性である(すなわち、より硬めで、柔軟性に乏しい)。その上、カラーロックフィルムは、市販コンディショナー2のそれよりも染色毛髪への高い接着強度を示す。より強い接着は、40回の洗浄/コーミング/ブロー乾燥のサイクル後でさえも高い髪色保持をもたらす。
【0113】
AFM画像解析(示さず)は、カラーロックフィルムの表面形状が対照バージン毛のように滑らかで均一であること、さらにカラーロック技術フィルムが市販コンディショナー2単独のそれよりも滑らかで均一であることを実証する。染色した(それ以上の処置が施されていない)毛髪の表面は最も不均一な表面を呈する。
【0114】
これらの分析の結果は、カラーロック技術が染色毛髪の表面を補修することを示している。こうした結果は走査型電子顕微鏡解析の結果と一致する。
【実施例9】
【0115】
ヘアコンディショナー(試験材料10)

【0116】
上記のヘアコンディショナーは次のように調製した:
1. 相2および3の成分を主ケトルに加えて、透明かつ均質に成るまで室温で混合した;
2. 相1の混合物の温度を82〜85℃に上げた;
3. 相1の成分を別のケトルに加えて、透明になるまで混合
しながら、温度を82〜85℃に上げた;
4. 相1の混合物を主ケトル内の混合物に加えて、混合しながら温度を徐々に下げた;
5. 混合を続け、60℃で、相4の成分を加えた;
6. 混合を続け、40℃で、相5の成分を1成分ずつ加えた;
7. 温度を30℃にさらに下げながら、混合を続けた;
8. 30℃で、相6の成分を1成分ずつ加えて、均質になるまで混合した;
9. バッチ温度が25〜30℃に達したとき、そのバッチを4000rpmで5分間混合した(Silverson)。
【実施例10】
【0117】
ヘアコンディショナー

【0118】
上記のヘアコンディショナーは実施例9と同様に調製した。
【0119】
上述は本発明の特定の好ましい実施形態に関するものであり、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、本明細書中で多くの修正または変更をなし得ることが理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
約3%超から約50%までの反応性チオール基を有する少なくとも1種のチオール化ポリマーまたは該少なくとも1種のチオール化ポリマーを含むポリマーブレンドを、化粧上または皮膚科学上許容されるビヒクル中に含有する化粧用ヘアトリートメント組成物。
【請求項2】
少なくとも1種のチオール化ポリマーが約5%〜約50%の範囲で反応性チオール基を有する、請求項1記載の化粧用ヘアトリートメント組成物。
【請求項3】
少なくとも1種のチオール化ポリマーが約10%〜約30%の範囲で反応性チオール基を有する、請求項1記載の化粧用ヘアトリートメント組成物。
【請求項4】
少なくとも1種のチオール化ポリマーまたは該少なくとも1種のチオール化ポリマーを含むポリマーブレンドが組成物中に、全組成物の重量基準で、約2重量%〜約50重量%の範囲の量で存在する、請求項1記載の化粧用ヘアトリートメント組成物。
【請求項5】
少なくとも1種のチオール化ポリマーがポリマーブレンド中に、ポリマーブレンドの全重量基準で、約30重量%〜約80重量%の範囲の量で存在する、請求項1記載の化粧用ヘアトリートメント組成物。
【請求項6】
少なくとも1種のチオール化ポリマーがポリマーブレンド中に、ポリマーブレンドの全重量基準で、約30重量%〜約50重量%の範囲の量で存在する、請求項5記載の化粧用ヘアトリートメント組成物。
【請求項7】
チオール化ポリマーが、ポリスチレン、ポリエステル、ポリフルオロエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリウレタン、ポリイミド、シリコーン、疎水性修飾ポリアクリレート、疎水性修飾ヒアルロン酸、疎水性修飾セルロース、疎水性修飾デンプン、疎水性修飾多糖、疎水性修飾ポリビニルピロリドン、疎水性修飾ポリビニルアルコール、およびこれらの混合物からなる群より選択されるホモポリマーである、請求項1記載の化粧用ヘアトリートメント組成物。
【請求項8】
少なくとも1種のチオール化ポリマーがメルカプトシリコーンポリマーである、請求項7記載の化粧用ヘアトリートメント組成物。
【請求項9】
メルカプトシリコーンポリマーがジメチコン/メルカプトプロピルメチコンコポリマー、ジメチコン/メルカプトプロピルメチコンコポリマー(および)フェニルトリメチコン、またはこれらの混合物を含む、請求項8記載の化粧用ヘアトリートメント組成物。
【請求項10】
少なくとも1種のチオール化ポリマーが疎水性ブロックと親水性ブロックを有する両親媒性ブロックポリマーであり、その疎水性ブロックがポリスチレン、ポリエステル、ポリフルオロエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリウレタン、ポリイミド、シリコーン、疎水性修飾ポリアクリレート、疎水性修飾ヒアルロン酸、疎水性修飾セルロース、疎水性修飾デンプン、疎水性修飾多糖、疎水性修飾ポリビニルピロリドン、疎水性修飾ポリビニルアルコール、およびこれらの混合物からなる群より選択され、その親水性ブロックがポリビニルピロリドン、ヒアルロン酸、ポリアクリレート、ポリ塩化ビニル、多糖、セルロース、およびこれらの混合物からなる群より選択される、請求項1記載の化粧用ヘアトリートメント組成物。
【請求項11】
ポリマーブレンドが、シリコーン、疎水性修飾アクリレーツポリマー、多糖、ポリイミド、ポリビニルイミド、およびこれらの混合物からなる群より選択される少なくとも1種のフィルム形成性ポリマーを含む、請求項1記載の化粧用ヘアトリートメント組成物。
【請求項12】
ポリマーブレンドがジメチコン/メルカプトプロピルメチコンコポリマー、ジメチコン/メルカプトプロピルメチコンコポリマー(および)フェニルトリメチコン、およびジメチコンシリレート/イソドデカンを含む、請求項1記載の化粧用ヘアトリートメント組成物。
【請求項13】
化粧用活性剤、モイスチャライザー、保湿剤、コンディショニング剤、帯電防止剤、スタイリング/固定剤、オイル、乳化剤および増粘剤からなる群より選択される少なくとも1種のさらなる成分を含む、請求項1記載の化粧用ヘアトリートメント組成物。
【請求項14】
油/水エマルション、シリコーン/水エマルション、水/油エマルション、水/シリコーンエマルション、または水性製剤の形態である、請求項1記載の化粧用ヘアトリートメント組成物。
【請求項15】
溶液、セラム、ジェル、ローション、ムース、またはクリームの形態である、請求項1記載の化粧用ヘアトリートメント組成物。
【請求項16】
カラーリング処理した毛髪の色保持を引き延ばす方法であって、色保持の延長を必要とする毛髪に、約5%〜約50%の反応性チオール基を有する少なくとも1種のチオール化ポリマー、または該少なくとも1種のチオール化ポリマーを含むポリマーブレンドを、化粧上または皮膚科学上許容されるビヒクル中に含有する組成物を塗布すること、およびカラーリング処理した毛髪中に色を閉じ込めるのに十分な時間にわたり該組成物を毛髪上でそのままにしておくこと、を含む方法。
【請求項17】
少なくとも1種のチオール化ポリマーが約10%〜約30%の範囲で反応性チオール基を有する、請求項16記載の方法。
【請求項18】
少なくとも1種のチオール化ポリマーまたは該少なくとも1種のチオール化ポリマーを含むポリマーブレンドが組成物中に、全組成物の重量基準で、約5重量%〜約50重量%の範囲の量で存在する、請求項16記載の方法。
【請求項19】
少なくとも1種のチオール化ポリマーが、ジメチコン/メルカプトプロピルメチコンコポリマー、ジメチコン/メルカプトプロピルメチコンコポリマー(および)フェニルトリメチコン、またはこれらの混合物を含むホモポリマーである、請求項16記載の方法。
【請求項20】
疎水性、滑らかさ、管理容易性および輝きのうち1つ以上を回復させるための毛髪の処理方法であって、そのような処理を必要とする毛髪に、約5%〜約50%の反応性チオール基を有する少なくとも1種のチオール化ポリマー、または該少なくとも1種のチオール化ポリマーを含むポリマーブレンドを、化粧上または皮膚科学上許容されるビヒクル中に含有する化粧用組成物を塗布すること、および所望の効果を得るのに十分な時間にわたり該組成物を毛髪上でそのままにしておくこと、を含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2013−504578(P2013−504578A)
【公表日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−528866(P2012−528866)
【出願日】平成22年9月8日(2010.9.8)
【国際出願番号】PCT/US2010/048057
【国際公開番号】WO2011/031706
【国際公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(598100128)イーエルシー マネージメント エルエルシー (112)
【Fターム(参考)】