説明

魚の寄生虫の体内侵入を治療するためのカユプテおよびベイラム抽出物の使用

本発明は、観賞魚の寄生虫の体内侵入を防ぐまたは観賞魚の寄生虫を除去するのに使用するためのカユプテと植物のベイラムからの抽出物の組合せに関する。カユプテと植物のベイラムからの抽出物の組合せが魚に投与される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、観賞魚の寄生虫の体内侵入を防ぐまたは観賞魚の寄生虫を除去するのに使用するためのカユプテと植物のベイラム(Pimenta racemosa)からの抽出物との組合せに関する。カユプテと植物のベイラムからの抽出物との組合せが、魚に投与される。
【背景技術】
【0002】
養殖漁業における魚の寄生虫は、閉じ込められた状況下で養殖されるほぼ全ての魚の種類に生じるので、深刻な問題である。これらの病気の多くは治療が容易ではなく、莫大な経済的損失をもたらす。これらの寄生虫の中でも、ギロダクチルス(gyrodactylids)が広く分布している。ギロダクチルス症に対する従来の治療法としては、ホルマリンおよびマラカイトグリーンなどの化学物質が挙げられる。しかしながら、これらのほとんどは、(1)部分的にしか効率的でなく;(2)宿主、環境および/またはヒトにとって毒性であり;(3)耐性のためにもはや効果的ではなく;(4)大規模で利用するのが難しい。
【0003】
観賞魚の産業において、ギロダクチルスは90%の死亡率を引き起こし得、食用魚業界において、寄生虫症は、経済的に重大な病気の蔓延の原因となり、そのため、莫大な経済的損失をもたらし得る。これはいくつかの要因が組み合わさった結果である:(1)個々の魚間のギロダクチルスの感染率が高く、ストレスの溜まる環境のために魚が病原体に感染しやすい、養殖場や水族館の閉じ込められた状況;(2)ギロダクチルスのライフサイクル中に特定の感染段階のないこと;および(3)短い世代回転(ある種については25℃で>24時間)。それに加え、ギロダクチルスは、ライフサイクル中に単為生殖的に、無性生殖的にまたは生殖的に、繁殖すると考えられ、このため、それらは単一の個体から異常発生の個体群へと劇的に個体群の大きさを増加させることができる。その結果、これらの病原体の治療法に大きな関心が寄せられている。
【0004】
研究施設、養殖漁業および観賞魚を趣味とする人の市場においてギロダクチルス感染を治療するために、数多くの化合物が既に使用されてきた。しかしながら、わずかな研究しか、同じ方法論を使用して化合物を比較しておらず、治療法の大半には様々な関連問題があるので、これらの治療法の中で最良のものを選択することは難しい。例えば、ホルムアルデヒドは、G.salarisを実験的に除去するのには100%効果的であることが分かったが、現場条件下では、ギロダクチルスを完全には全滅させない。さらに、あるイトヨ(Gasterosteus aculeatus)の個体群において、この治療法は10%しか効果的ではない。それでもホルムアルデヒドは、その幅広い駆虫特性のために、ヒト発癌性物質として分類されているにもかかわらず、養殖漁業において一般に用いられている。ホルムアルデヒドのような駆虫治療法として広く使用されているマラカイトグリーンにも、変異原性影響および発癌性作用が知られているが、Gyrodactylus spp.に対する有効性は評価されていない。マラカイトグリーンは、魚肉中に保持されるので、欧州(欧州理事会規則2377/90号)および北米(米国食品医薬品局およびカナダ食品検査庁)における食用魚の生産において、今日では禁止されている。無差別なATPase阻害物質であるロテノンについて、人間の健康に対する潜在的にマイナスの影響が知られており、この物質は、潜在的な宿主を全て殺すことよって、G.salarisを抑制するためにノルウェイ国において使用されてきた。これは、部分的にしか効果的ではなく、アルミニウム水溶液などの代替物質が試験されている。しかしながら、水系全体のうまい処置には、大西洋サケにとって毒性であるレベルを超えずに、特定の濃度を維持する必要があるので、ノルウェイ国における現場試行は問題である。
【0005】
有効性とヒトの健康問題に加え、現在のギロダクチルス治療法に関連する主な問題は、宿主に対する毒性である。ホルムアルデヒドなどのより広く使用されている化合物は、宿主のエラ構造および表皮を著しく変化させてしまうかもしれない。例えば、亜鉛への曝露により、最初は宿主の粘液産生が刺激されるが、次いで、亜鉛が枯渇すると、魚が微生物感染症に感染しやすくなる。これらの魚を、十分な回復期間なく実験的感染にその後使用した場合、魚は感染に対して異常な応答を示すかもしない。エラ機能との直接的な干渉および水質の低下を通じての間接的な干渉のために、宿主の呼吸問題も、ギロダクチルス治療法の一般的な副作用である。多くの場合における毒性は、投与量依存性であるが、温度、pH、塩度、送達機構、品種および特に多数の治療法を使用する場合の曝露時間などの要因の内の1つまたは組合せによって影響を受けるであろう。
【0006】
ギロダクチルス治療法は、経口(食物により)または局所(水への添加)のいずれかで施される。両方の方法とも通常は、薬物投与の制御の欠如を補うために過剰に多い投与量での施用につながり(Scholz 1999)、これにより、環境汚染が生じてしまう。ある種の薬物(例えば、ピペラジン、Fugotenil(登録商標)およびNeguvon(登録商標))の経口投与により、宿主の食物消費が減少し得、これにより、効き目のために食物の単位量当たりで必要な投薬量が増加する。さらに、溶液として部分的にしか効果的ではない化合物(例えば、トリクロルホン)が経口で投与されたら、それほど効果的ではないであろう。その上、それぞれ、有機リン殺虫剤の亜リン酸ジメチルおよびトリクロルホンに対するギロダクチルスの耐性について、駆虫に対する寄生虫の耐性の増加が報告されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
魚の寄生虫の治療において高く一貫した効き目が必要とされており、そうでなければ、残りの寄生虫が増殖し、問題が継続してしまう。
【0008】
小魚(カダヤシ科の魚などの)では、どのような化学物質も介入しない、寄生虫の手作業の除去が効果的であり得る。しかしながら、より大きい魚では、スクリーニング前の化学物質の治療が、手作業の寄生虫の除去に対する唯一の現実的な解決策であろう。
【0009】
したがって、魚への寄生虫を防ぐおよび/または治療するために、従来技術における公知の問題を克服することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様は、観賞魚の寄生虫の体内侵入を防ぐまたは観賞魚の寄生虫を除去するのに使用するためのカユプテおよび植物のベイラムからの抽出物の組合せに関する。
【0011】
カユプテおよび植物のベイラムからの抽出物は公知である。植物のベイラムからの抽出物は公知である。
【0012】
ベイラムの活性成分は、ピメンタ属、より詳しくはベイ(bay)の植物からの抽出物である。ここに用いたように、「ベイラム抽出物」という用語は、ピメンタ属およびベイラム種の抽出物を意味する。「ベイラム抽出物」は、本発明の組成物および方法の活性成分を広く称するために使用される。
【0013】
ここに用いたように、ウェストインディアンベイ油、またはMyrcia、またはベイラムの木の油と呼ばれることもある「ベイ(bay)」は、Pimenta racemosa(mill.)J.W.Moore(異名P.acris Kostel)(フトモモ科)の木から得られる物質であり、この木は、西インド諸島原産であり、ベネズエラ、プエルトリコおよびカリブ諸島で栽培されている。ベイは多数の成分を含有しており、そのほとんどはテルペノイドであり、主成分は、ユージノール(約56%まで)、カビコール(約22%まで)およびミルセン(約21%まで)である。より少量の他の成分としては、1,8−シネオール、リモネン、イソユージノール、リナロール、メチルユージノール(3,4−ジメトキシアリルベンゼン)、エストラゴール(メチルカビコール)およびα−テルピネオールが挙げられる。
【0014】
ベイには、アニス香、レモン香および丁子香の亜種を含むいくつかの亜種がある。これらの亜種の中での違いとしては、上述した成分の異なる比率が挙げられ、例えば、アニス香の亜種は、主成分としてユージノール(約43%)およびメチルカビコール(約32%)を含有し、レモン香の亜種は主にシトラール(約80%超)を含有する。
【0015】
一般に使用される国内のスパイスが文献において「ベイ」と称されることもあるが、このスパイスは、スウィートベイ(月桂樹(Laurus nobilis))であり、本発明に使用されるウェストインディアンベイではない。
【0016】
本発明に使用される活性成分は、ピメンタ属のベイラム種、ウェストインディアンベイ油の抽出物に通常、天然に見つかる成分の複雑な混合物であって、そのような供給源から分留され分離される単一成分、例えば、ユージノールではないことに留意することが重要である。ウェストインディアンベイ油は、ベネズエラ、プエルトリコおよびカリブ諸島において商業規模の量で生産されている。本発明に使用されるピメンタ抽出物は、天然由来食物および整髪油および抽出物の供給メーカーから容易に入手できる。本発明のピメンタ抽出物は、一般に、ベイラムの植物の新しい葉と小枝の水蒸気蒸留(蒸気蒸留)の公知の技法によって生産される。
【0017】
市販形態のベイが現在好ましいが、下記のビヒクルが、治療すべき水生動物の住みかとなる水中へのピメンタ抽出物の投与に適合し、治療されている水生動物や水中に存在する他の有益な水生生物に悪影響を与えないという条件で、他の形態のピメンタ抽出物、例えば、液体(溶媒または別の油)中のピメンタ抽出物、水性混合物中のピメンタ抽出物、水性エマルション中のピメンタ抽出物、固体担体または物質上に吸着したまたはその中に吸収されたピメンタ抽出物、または他のビヒクルと結合したピメンタ抽出物を使用してもよい。
【0018】
カユプテまたはカユプテ油(CAS:8008-98-8)が公知である。この物質は、Melaleuca cajeputの木、Melaleuca leucardendronおよびMelaleucaの他の種(フトモモ科)の葉から得られる。カユプテ油は多数の成分を含有しており、そのほとんどがテルペノイドであり、主成分の1つが1,8−シネオール(約30%)である。本発明において、カユプテはカユプテ油であることが好ましい。カユプテ油は、Melaleuca種の新しい葉と小枝の水蒸気蒸留(蒸気蒸留)の公知の技法によって一般に生産される。本発明のカユプテは、カユプテ油中に見られる成分の複雑な混合物であって、他の成分から分留され分離された単一成分ではない。カユプテ油は、東南アジアにおいて商業規模の量で生産され、天然由来食物、整髪油および抽出物の供給メーカーから容易に入手できる。
【0019】
商業的入手性の観点から、カユプテ油が好ましい。他の形態のカユプテを使用してもよい(例えば、非油抽出物または固体担体または基体上に吸着したまたはその中に吸収されたカユプテ)。
【0020】
カユプテおよびベイラム抽出物は、魚を収容している水中に直接導入しても差し支えない。しかしながら、両方とも水中に比較的不溶性である。それゆえ、高速混合または高剪断混合を使用しなければ(通常、傷害を避けるために治療されている水生動物が存在しない状況で局部領域において)、両方の油の水性混合物または分散液を使用することが好ましい。
【0021】
水性カユプテ含有および/またはベイラム抽出物含有組成物が、比較的安定なエマルションを提供するために、水中にこれらの成分を乳化するのに十分な量で乳化剤を含有することが好ましい。好ましい乳化剤(界面活性剤と呼ばれることもある)は、治療されている水生動物にとって非毒性であり、かつ無害であるものである。これらの例としては、広く入手できる食品用乳化剤が挙げられる。
【0022】
非イオン性乳化剤が特に好ましく、Crovol(商標)PK−70非イオン性乳化剤(米国、ニュージャージー州、パーシッパニー所在のCroda Inc.)が、水溶性である非常に好ましい非イオン性乳化剤である。
【0023】
水中にカユプテおよび/またはベイラム抽出物を乳化させるために使用される乳化剤の量は、一般に、重要ではない。乳化剤の濃度は、約0.01%から約20%、より好ましくは約0.1%から約5%に及んでよく、全てのパーセントは体積による。通常は液体ではない乳化剤または界面活性剤について、今述べた数値濃度を使用してよく、パーセントは、水性エマルションの体積に基づく質量である。
【0024】
乳化剤以外の、消泡剤、酸化防止剤、防腐剤、着色剤などの他の補助剤を使用してもよい。補助剤は、一般に、水性カユプテ含有および/またはベイラム含有組成物中に少量、すなわち、約5体積%未満、好ましくは1体積%未満で存在する。そのような補助剤の全ては、治療されている魚および他の水生動物、並びに治療されている水生動物と共に水中に存在する、様々な種類の無脊椎動物や植物などの他の有益な水性生物にとって無害であり、かつ非毒性であるべきである。
【0025】
特に好ましい安定な乳化水性組成物は以下のとおりである:
カユプテおよび/またはベイラム抽出物 1体積%
乳化剤 1体積%
消泡剤 0.2体積%
脱イオン水 97.8体積%
【0026】
乳化剤が「Crovol」PK−70非イオン性乳化剤(Croda Inc.)であることが好ましく、消泡剤がFG−10消泡剤(米国、ミシガン州、ミッドランド所在のDow-Chemical Corp.)であることが好ましく、後者は、そうしなければ乳化剤によって生じる発泡を調節するように働く。この組成物は、水相からのカユプテ油の分離に対して安定化された水性エマルションを生成するために、脱イオン水中でカユプテおよび/またはベイラム抽出物、乳化剤および消泡剤を激しく混合することによって、調製されるであろう。そのような混合は、機械式ミキサによって行っても、手動の振盪によって行ってもよい。
【0027】
カユプテおよび/またはベイラム抽出物を、例えば、1体積%で、含有する水性混合物は、乳化剤および消泡剤を使用せずに調製して差し支えないが、そのような水性混合物は、水相全体に亘りカユプテ油を均一に分散させるために、使用前に激しく振盪する(1〜5分間)かまたは機械的に撹拌しなければならない。
【0028】
乳化したカユプテは、Aquarium Pharmaceuticalsから1%の活性成分を含む油(Melafix(登録商標))として販売されている。
【0029】
カユプテまたはベイラムからの抽出物のどのような水性混合物または分散液を、魚を収容している(または収容することになっている)水に、その水中における混合物または分散のさらなる混合を確実にする様式で加えることが好ましい。このことは、濾過ポンプまたはエアレータによる水の曝気によるか、もしくはカユプテまたはベイラムの抽出物が加えられた後の水の穏やかな混合によるものであって差し支えない。あるいは、魚の生息場所に加える前に、必要に応じて水との、カユプテ、またはベイラムの抽出物(任意の形態の)の激しい振盪が有益であり得る。激しい振盪は、ある程度の水または全ての水と共に行われてもよく、これにより、魚が生息する水が提供される。
【0030】
植物のベイラムからの油は、ベイ油(CAS:8006-78-8)として知られており、Aquarium Pharmaceuticalsから1%の活性成分を含む油(Pimafix(登録商標))としても販売されている。
【0031】
カユプテ油はMelaleuca leucardendra種からのものであることが好ましい。
【0032】
カユプテおよびベイラム抽出物は、公知であり、魚の生息場所に含ませることも知られている(それぞれ、国際公開第98/00025号および同第02/069989号の各パンフレット参照、その各々の内容を全てここに引用する)。しかしながら、魚への寄生虫(感染/体内侵入)を治療するまたは防ぐためにこれらの成分を組み合わせることは、新規であり、意外なことに有益である。
【0033】
本発明は、観賞魚への寄生虫の体内侵入を防ぐこと、または観賞魚の寄生虫を除去することに関する。観賞魚は、水槽中に保持される魚および池の魚(すなわち、趣味として保持される魚)としてここでは定義され、食物や釣りなどのスポーツのために保持される魚は含まない。
【0034】
本発明によれば、カユプテおよびベイラム抽出物は、同時、順次または連続の投与のためである。カユプテおよびベイラム抽出物は、どの順序で加えても差し支えない。カユプテおよびベイラム抽出物は、別々に、または一緒に(すなわち、別個の容器または同じ容器から)加えてもよい。これら2つの活性剤は、使用上の注意と共に、それらが物理的に連結された別個の容器(2つの容器に分割された単一ユニットもしくは1つのパウチまたは箱の中にある2つの容器)内に保持されているキットの形態にあってもよい。
【0035】
本発明によれば、カユプテおよびベイラム抽出物の使用は、生息場所に魚を生息させる前に、魚の生息場所に加えるためのものであってよい。カユプテおよびベイラム抽出物(各々または両方)は、水の添加前、水と共に、水の添加後に加えてもよい。
【0036】
カユプテおよびベイラム抽出物の各々は、製品の0.1〜15%、好ましくは0.5〜3%、より好ましくは0.8〜1.5%の範囲、最も好ましくは約1%で存在するのが好ましい(魚が存在している/することになる水に加える前に)。組み合わされた活性成分は、魚が見つけられているまたは見つけられる水中に、好ましくは10ガロン(約38リットル)当たり毎日約0.001mlから約1mlまたは0.4から3ml/380リットル、より好ましくは0.8から2ml/380リットルの範囲、最も好ましくは約1ml/380リットルで存在する。これらの量を毎日、水に加えてもよい。組み合わされた活性成分は、どちらにも50%までの変動で、約1:1の比率で使用されることが好ましい。
【0037】
カユプテおよびベイラム抽出物は、どの期間に使用しても差し支えなく、連続して使用しても差し支えない。それらは、詳しくは、魚の寄生虫を治療するために、3日から9日の期間に亘り使用してよい。カユプテおよびベイラム抽出物の各々は、魚の生息場所にどの頻度で、例えば、一日一回、加えてもよい。
【0038】
この寄生虫は、魚の外面(皮、ひれおよびエラ)に現れるどのようなものであってもよく、外部寄生虫と分類される。本発明にしたがって防がれ、治療される寄生虫としては、ハダムシギロダクチルスsppおよびエラムシダクチロギルスsppなどの単生類寄生虫、ウオノカイセンチュウ(Ichthyophthirius multifiliis)、トリコディナ(Trichodina)、イクチオボド(Ichthyobodo)(コスチア(Costia)科)、キロドネラ(Chilodonella)およびプレイストフォラ(Pleistophora)などの原生動物門の寄生虫、渦鞭毛藻類Picinoodinium(オオディニウム(Oodinium)科)、水生甲殻類寄生虫のLernaea(イカリムシ)およびチョウモドキ(Argulus)、二生類寄生虫クリノストマム(Clinostomum)、PosthodiplostomumおよびDiplostomumの幼生期、並びにスピロヌクレウス(Spironucleus)およびヘキサミタ(Hexamita)を含む内部寄生虫の虫が挙げられる。
【0039】
本発明が関連する特定の観賞魚としては、グッピー(Poecilia reticulata)、全ての他の胎生種(カダヤシ目、すなわち、ソードテール、プラティおよびモーリー)および以下の分類目;コイ目(すなわち、キンギョ、コイ、ダニオ)、カラシン目(すなわち、テトラ、ハチェットフィッシュ)、ナマズ目(ナマズ)、トウゴロウイワシ目(ニシキベラ)、およびスズキ目(すなわち、グーラミ、ベタ、ディスカス・シクリッド、エンゼルフィッシュ、カクレクマノミ)が挙げられる。本発明は、屋外の「庭」池に保持できる全ての観賞魚、すなわち、コイ(すなわち、錦鯉、鏡鯉、草魚)、コイ科の食用淡水魚の黄金色の変種(orfe)およびテンチに関する。
【0040】
本発明の第2の態様は、カユプテおよびベイラム抽出物の組合せを魚に投与することによって、観賞魚の寄生虫の体内侵入を防ぐまたは観賞魚の寄生虫を除去する方法に関する。
【0041】
本発明は、カユプテおよびベイラム抽出物の予防的使用と治療的使用の両方に関する。それゆえ、運送用コンテナ内で輸送されるべき魚は、魚の寄生虫の存在を減少させるために、前もって、または運送中に治療してもよい。本発明による魚の生息場所の例としては、貯蔵タンク、水族館、プール、小さな池または魚用水槽が挙げられる。
【0042】
第1の態様の全ての好ましい特徴が、第2の態様にも適用される。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】グッピー(Poecilia reticulata)へのギロダクチルス属turnbulliに対する薬草治療法の効き目のグラフである。囲みの中のプロットは、中央値を有する第1と第3の四分位を示しており、横棒は中央値であり、縦棒は信頼上限である。
【実施例】
【0044】
本発明を以下の非限定的実施例を参照して説明する。
【0045】
薬草治療法
材料および方法
動物と化合物の供給源
グッピー(P.reticulata)は、カーディフ大学の同種繁殖された観賞魚から得た。それらのグッピーに、生きた食べ物(ミジンコおよびアルテミアspp.)とAquarian(登録商標)フィッシュフレークの混合物を少なくとも一日二回給餌し、12時間暗所:12時間明所のサイクルで、25±1℃に維持した。1997年にノッティンガムのペットショップのグッピーから単離した、研究室に維持されたG.turnbulliのGt3株を使用した。5種類の化合物を試験した:0.5mg/lの二硫化アリル(Sigma Aldrich、カタログ番号W202800);132μl/lの「Melafix」および「Pimafix」(API Aquarium Pharmaceuticalsにより市販されており、製造業者の使用説明書にしたがって使用した);0.15mg/lのレバミゾール(Norbrook(登録商標)から得たLevacide(登録商標))および132μl/lのPolyaqua(登録商標)(Kordon(登録商標))。
【0046】
実験
全ての実験において、治療を受けた感染対照と、治療を受けなかった死亡率対照(未感染魚)を含んだ。D1(1日目)とD8(8日目)に、寄生虫の数および宿主上の位置を、実体顕微鏡と冷光照明を使用して、0.02%のMS222で麻酔した魚をスクリーニングすることによって記録した。
【0047】
最初の実験において、供給業者から購入した、自然獲得した多種寄生虫感染を有する134匹の魚を、11個のコンテナ内に個別に保持し、7日間に亘り毎日水を交換した後、「Melafix」、「Pimafix」、「Melafix」/「Pimafix」または「Polyaqua」のいずれかで治療した。第2の実験において、各々が2〜200のG.turnbulliに感染した一群のグッピー(n=115)を、実験1におけるように維持し、そのグッピーに、二硫化アリル、「Pimafix」、「Melafix」または「Pimafix」/「Melafix」の組合せのいずれかの治療を施した。
【0048】
第3の実験において、各々がG.turnbulliの10〜40の個体に感染した幼生グッピー(n=30)を、空気を供給したが、タンクに装飾を施していない5リットルの水槽中に3匹の魚の群で一緒に維持し、二硫化アリル、レバミゾール、「Melafix」および/または「Pimafix」で治療した。全ての治療は、7日間に亘り毎日施した。レバミゾールは、他の全ての化合物よりも生分解性ではないので、実験期間に亘りレバミゾールの濃度の上昇を避けるために、2番目のレバミゾール治療では毎日水を交換した。
【0049】
動物の運命
実験の終りに、寄生虫にまだ感染していた魚は、レバミゾールの治療を受けた。次いで、全ての魚を、毎週二回水を交換しながら、個々の瓶内に維持し、7日間隔で3回スクリーニングした。3回に亘り魚が感染無しであると一旦スクリーニングされたら、繁殖用水槽に戻すか、観賞魚が趣味の人に寄付した。
【0050】
統計分析
全ての実験における治療の効き目を、以下の式を使用して評価した:
t<L0について、Et=(L0−Lt)/L0、および
t≧L0について、ΔEt=0
ここで、L0=治療の開始時の寄生虫の量
t=治療の終了時の寄生虫の量、および
t=時間tでの治療の効き目
【0051】
正規性に関するアンダーソン・ダーリング検定および異質性に関するバートレット検定は、全てのデータセットにおいて、それぞれ、データの非正規分布および分散の不均一性を示した。データ変換は失敗であり、それゆえ、ノンパラメトリックのクラスカル・ワオリス検定および前後関係即因果の推論の(post hoc)マン・ホイットニー検定(ボンフェローニ補正を行う)を使用して、治療の効き目を比較した。全てのデータは、Minitabバージョン15で分析した。
【0052】
結果
宿主死亡率
実験1における宿主の死亡率は、カーディフ大学に到着した際の魚の全体の健康が悪かったために、極めて高かった(表1)。実験2において、二硫化アリルは、対照と比べて、宿主死亡率を15%増加させたようであり、実験3では、魚を「Melafix」およびレバミゾール(上昇する濃度)で治療した場合に、死亡率が高くなった(表1)。今のところ、実験3の結果は、実験の反復数が少ないために、決定的ではない。
【表1】

【0053】
実験1(多重寄生虫、1種類の魚、低投与量、7日間の治療)
「Melafix」は、寄生虫の負荷量が増加するのを防いだようであった。併用治療「Melafix」/「Pimafix」は、感染した魚の羅漢率を著しく減少させた(表2)。
【表2】

【0054】
実験2(1種類の寄生虫、1種類の魚、低投与量、7日間の治療)
「Melafix」の効き目は非常にばらつきがあったが、「Melafix」/「Pimafix」の組合せで使用した場合、極めて効果的であった(クラスカル・ワオリス:H=72.05;DF=5;p<0.001)。二硫化アリルおよび「Pimafix」は効果的ではなかった(図1;表3)
【表3】

【0055】
結論
抗寄生虫治療法として市販されていないけれども、「Melafix」/「Pimafix」の組合せは、グッピーのギロダクチルスturnbulli感染を除去する上で最も効果的な治療法であった。「Melafix」単独は、効き目において大きいばらつきを示し、これは、新たな伝染病を生じさせるのに、一回のギロダクチルスが十分であるので、望ましくない。「Pimafix」は効果的ではない。二硫化アリルは、注意深く施したときのみに、効果的である(高投与量に10分間の曝露、その後、低投与量に1時間の曝露)。このことは、レバミゾールに使用した適用プロトコルと類似であり、特に、魚にとってレバミゾールはより毒性であるので、この治療法の代替法として使用して差し支えない。しかしながら、二硫化アリルは、水族館の慣例として使用されている適用により類似の、低投与量で施用したときに効果的ではない。毎日水を交換しない限り、7日間に亘りレバミゾールの適用は、魚にとって毒性が強すぎ(0.15〜1.05mg/l)、0.15mg/lのみでは、寄生虫を除去するのには効果的ではなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
観賞魚の寄生虫の体内侵入を防ぐまたは観賞魚の寄生虫を除去するのに使用するためのカユプテおよびベイラム抽出物の組合せ。
【請求項2】
前記カユプテおよびベイラム抽出物が、同時、その後または連続の投与のためであることを特徴とする請求項1記載の組合せ。
【請求項3】
前記使用が、生息場所に観賞魚を生息させる前に、観賞魚の生息場所に加えるためのものであることを特徴とする請求項1記載の組合せ。
【請求項4】
前記カユプテおよびベイラム抽出物の各々が、0.5〜3%の範囲で存在する活性成分を有することを特徴とする請求項1から3いずれか1項記載の組合せ。
【請求項5】
前記活性成分の組合せが、水10ガロン(約38L)当たり0.001mlから1mlの範囲で、観賞魚を収容している水中に存在することを特徴とする請求項4記載の組合せ。
【請求項6】
前記カユプテが、水中のカユプテ油の水性混合物の形態にあることを特徴とする請求項1から5いずれか1項記載の組合せ。
【請求項7】
前記カユプテおよびベイラム抽出物の各々が、一日一度、観賞魚の生息場所に加えられることを特徴とする請求項1から6いずれか1項記載の組合せ。
【請求項8】
前記寄生虫が水生寄生虫であることを特徴とする請求項1から7いずれか1項記載の組合せ。
【請求項9】
前記観賞魚が、グッピー、錦鯉、鏡鯉、草魚、コイ科の食用淡水魚の黄金色の変種(orfe)またはテンチであることを特徴とする請求項1から8いずれか1項記載の組合せ。
【請求項10】
カユプテおよびベイラム抽出物の組合せを観賞魚に投与することによって、観賞魚の寄生虫の体内侵入を防ぐまたは観賞魚の寄生虫を除去する方法。

【図1】
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【公表番号】特表2013−500736(P2013−500736A)
【公表日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−523355(P2012−523355)
【出願日】平成22年8月9日(2010.8.9)
【国際出願番号】PCT/EP2010/061543
【国際公開番号】WO2011/015668
【国際公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(390037914)マース インコーポレーテッド (80)
【氏名又は名称原語表記】MARS INCORPORATED
【Fターム(参考)】