説明

魚介類の脱臭処理液および魚介類の加工方法

【課題】生醤油を主成分とする魚介類の脱臭処理液を提供し、当該脱臭処理液に、鮮度低下した魚介類を一定時間浸漬することにより、魚介類の生臭さや魚臭さを除去する脱臭処理液および、漁獲後の鮮度が低下して二級品に取り扱われる魚介類を対象とし、その生臭さ、魚臭さを生じた魚介類の臭みを取り去り、風味や香味の良い美味しく食べられる魚介類の処理方法を提供する。
【解決手段】大豆から醤油を作る製造過程で生じる生醤油を主成分とする脱臭処理液に鮮度低下した魚介類を一定時間浸漬することによって、通常の鮮度の良いときの臭みのない魚介類。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚介類の脱臭処理に関する。魚介類は鮮度が低下するに従い生ずる臭気を処理し、魚介類の風味や香味を失うことなく美味しく食べられる魚介類を提供することにある。
【背景技術】
【0002】
魚介類は、漁獲後の鮮度がよいときは臭いがなく風味や香味があり美味しい。その為に漁獲後はすばやく氷蔵又は冷蔵又は冷凍で低温処理される。しかし、時間の経過とともに鮮度が低下し、臭気が発生し、いわゆる、生臭さが生じるようになる。従来、魚介類の味付け加工処理には、醤油漬け、味醂漬け、味噌漬け、西京漬けなどの漬け魚、くさやの干物、味醂干しなど乾物類などがある。これらが対象とする魚介類は鮮度が良いものであることが求められる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、対象とする魚介類は、漁獲後の鮮度が良い一級品はもちろんであるが、鮮度が低下して二級品に取り扱われる魚介類を対象とし、その生臭さ、魚臭さを生じた魚介類の臭みを取り去り、通常の鮮度の良いときの臭みのない風味や香味の良い美味しく食べられる魚介類が得られることを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、大豆から醤油を作る製造過程で生じる生醤油に着眼し、魚臭さ、生臭さを生じた魚介類を生醤油を主成分とする処理液に一定時間浸漬することによって、通常の鮮度の良いときの臭みのない魚介類が得られることを見出したものである。
【0005】
本発明は、魚臭さ、生臭さを生じた魚介類から矯臭の目的で生醤油を主成分とする脱臭処理液を見出したものである。
市販品の醤油は、通常、調味料として使用されている。醤油は、原料大豆から加工処理工程で生ずる生醤油を火入れし、おり引きしたあと一定の規格に合わすために食塩、アミノ酸液など用いて適宜調整されたものであるので酵素がかなり失活している。生醤油は酵素が生かされた状態にあり、保存性が悪いので市販されにくい。本発明は、この生醤油の酵素作用により魚介類の臭いが減少されることを見出し、また、好ましい風味や香りがえられることを見出したものである。本発明に使用する生醤油は冷蔵または冷凍で保存する。
【0006】
また、本発明は、生醤油に黒酢と木酢液を混ぜて魚介類を処理したところ、これらの相乗作用により魚介類の臭いがさらに減少され、好ましい風味や香りが得られることがわかり、生醤油と黒酢と木酢液からなる脱臭処理液を見出したものである。
【0007】
また、本発明は、魚介類を請求項1または請求項2記載の脱臭処理液に、低温で一定時間浸漬し、水洗冷却して液切り後、冷凍し、包装することを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、魚介類を請求項1または請求項2記載の脱臭処理液に、低温で一定時間浸漬し、水洗冷却して液切り後、加熱し、冷凍し、包装することを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、魚介類を請求項1または請求項2記載の脱臭処理液に、低温で浸漬時間が3〜12時間であることを特徴とする魚肉の脱臭処理方法に係るものである。浸漬時間は、魚介類の形状によって適宜決められる。
【0010】
また、本発明は、魚肉を請求項1または請求項2記載の脱臭処理液に、低温で3〜12時間浸漬し、水洗冷却して液切り後の加熱が75〜100℃であること、好ましくは80〜90℃であることを特徴とする魚介類の脱臭処理方法に係るものである。加熱時間は、魚介類の形状によって適宜決められる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によって得られた魚介類は、風味、香味とも良好の効果を奏し得る。
漁獲後の鮮度低下したものは、食用よりは餌料に使われるか、廃棄されているが、本発明を使用し、加工処理することにより食用化が可能になった。
【0012】
また、本発明品は、鮮度低下した魚介類を有効に活用し、ハンバーグ、つみれ等の練り製品、フライ等冷凍食品、煮物、焼き物などにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を実施する形態を詳細に説明する。
【0014】
本発明が対象とする魚介類の内、魚肉のフィレーの加工処理例を説明する。
▲1▼大豆から得られる生醤油を1部、水9部の割合で希釈し、容器に入れて用意する。
▲2▼冷凍いわしを予め前処理してフィレーを得る。当該いわしの鮮度は官能的に判断して生臭さがし、やや油焼け臭がする状態である。
▲3▼▲2▼を▲1▼に浸漬する。浸漬時間は6時間とした。浸漬時間はフィレーの大小によって適宜調整する。
▲4▼浸漬後、液切りしたフィレーをそのまま焼いて食べた。5人の専門パネラーによる臭いの判定では、▲2▼で生じていた臭みはなく風味・香味もよい結果が得られた。
▲5▼また、液切りしたフィレーを切断し、味付けした粉にまぶし、パン粉漬けして冷凍した。冷凍品をそのまま油で揚げて食べたところ、▲2▼で生じていた臭みはなく風味・香味もよい結果が得られた。
【0015】
▲1▼大豆から得られる生醤油:黒酢:木酢液を8:1:1の割合で混ぜ合わせた処理液を作り、その処理液1部、水9部の割合で希釈し、容器に入れて用意する。
▲2▼冷凍サンマを予め前処理して背開き得る。当該サンマの鮮度は官能的に判断して生臭さがし、やや油焼け臭がする状態である。
▲3▼▲2▼を▲1▼に浸漬する。浸漬時間は10時間とした。浸漬時間は対象原料の状態によって適宜調整する。
▲4▼浸漬後、液切りした背開きをそのまま焼いて食べる。5人の専門パネラーによる臭いの判定では、生醤油単独に浸漬するよりは、さらに▲2▼で生じていた臭みはなく風味・香味もよい結果が得られた。
【0016】
▲1▼大豆から得られる生醤油:黒酢:水を1:1:8の割合で希釈し、容器に入れて用意する。
▲2▼冷凍いわしを予め前処理してフィレーを得る。当該いわしの鮮度は官能的に判断して生臭さがし、やや油焼け臭がする状態である。
▲3▼▲2▼を▲1▼に浸漬する。浸漬時間は3時間とした。浸漬後、液切りしたフィレーを−20℃で冷凍し、1か月保存した。その後冷凍品を解凍し、そのまま焼いて食べた。5人の専門パネラーによる臭いの判定では、▲2▼で生じていた臭みはなく風味・香味もよい結果が得られた。
▲4▼また、液切りしたフィレーを切断し、味付けした粉にまぶし、パン粉漬けして冷凍した。冷凍品をそのまま油で揚げて食べたところ、▲2▼で生じていた臭みはなく風味・香味もよい結果が得られた。
【0017】
▲1▼大豆から得られる生醤油:黒酢:木酢液を7:2:1の割合で混ぜ合わせた処理液を作り、その処理液1部、水9部の割合で希釈し、容器に入れて用意する。
▲2▼冷凍サンマを予め前処理してドレスにした。当該サンマの鮮度は官能的に判断して生臭さがし、やや油焼け臭がする状態である。
▲3▼▲2▼を▲1▼に浸漬する。浸漬時間は5時間とした。浸漬時間は対象原料の状態によって適宜調整する。
▲4▼浸漬後、液切りしたサンマを85℃で加熱し、冷却した後−20℃で冷凍した。1か月冷凍保存したサンマを解凍し、包装したまま温めてから食べた。5人の専門パネラーによる臭いの判定では、生醤油単独に浸漬するよりは、さらに▲2▼で生じていた臭みはなく風味・香味もよい結果が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明によって得られた魚介類は、風味、香味とも良好の効果を得られたので、漁獲後の鮮度低下し、食用よりは餌料に使われるか、廃棄されている魚介類は、本発明を使用し、加工処理することにより食用化が可能になった。その結果、資源を無駄にすることもなく有効活用に結びつけることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生醤油を主成分とする脱臭処理液。
【請求項2】
生醤油と黒酢と木酢液とからなる脱臭処理液。
【請求項3】
魚介類を請求項1または請求項2記載の脱臭処理液に、低温で一定時間浸漬し、水洗冷却して液切り後、冷凍し、包装することを特徴とする魚介類の脱臭処理方法。
【請求項4】
魚介類を請求項1または請求項2記載の脱臭処理液に、低温で一定時間浸漬し、水洗冷却して液切り後、加熱し、冷凍し、包装することを特徴とする魚介類の脱臭処理方法。
【請求項5】
浸漬時間が3〜12時間であることを特徴とする請求項3または請求項4記載の魚介類の脱臭処理方法。
【請求項6】
加熱が75〜100℃であること、好ましくは80〜90℃であることを特徴とする請求項4記載の魚介類の脱臭処理方法。