説明

魚網用抗菌剤組成物

【課題】 有害重金属を含まず、十分満足できる抗菌性を示し、かつ、長期間にわたって海水中でも効果が持続する漁網用抗菌剤組成物を提供する。
【解決手段】 一般式(1)で表される第4級アンモニウム塩(A)およびエマルジョン樹脂(B)を含有することを特徴とする漁網用抗菌剤組成物である。
【化1】


[式中、R、RおよびRはそれぞれ独立に炭素数1〜24のアルキル基または炭素数2〜24のアルケニル基;Rは炭素数6〜24のアルキル基もしくはアルケニル基、炭素数7〜24のアリールアルキル基または炭素数8〜22のアリールアルケニル基;fは1または2の整数;Xf−はf価の対イオンであり、ハロゲンイオン、ヒドロキシルイオン、硫酸イオン等からなる群から選ばれる1種以上である。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚網用抗菌剤組成物に関する。さらに詳しくは、魚網および漁網付属具に使用されるロープなどに水生生物が付着するのを防止し、しかもその効果が長時間においても持続される漁網用抗菌剤組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
魚網および魚網付属具などは海水に長期間浸漬された状態で放置または運用されるため、種々の真菌や藻類の影響を受けやすい。これらから保守をするために多大な費用と労力が要されているのが現状である。これら水生生物の付着を防止するために、従来から有機錫系の防汚剤が使用されていたが、これらには毒性があり、また蓄積性も高いので、食用の養殖生物に使用される場合の人体への影響、および防汚剤を直接取り扱う作業者への影響が危惧される。
【0003】
そこで、有機錫のような有害重金属を含まないような抗菌性素材として、銀メッキした繊維を用いたもの(特許文献1)、チオシアン酸化合物を用いたもの(特許文献2)、グアニジン系化合物を用いたもの(特許文献3)が提案された。しかしながら、これらは十分満足できる抗菌性が得られなかったり、海水中での持続性が十分ではないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−35173号公報
【特許文献2】特開平11−106304号公報
【特許文献3】特開2003−226845号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、有機錫のような有害重金属を含まず、十分満足できる抗菌性を示し、かつ、長期間にわたって海水中でも効果が持続する漁網用抗菌剤組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記の目的を達成するべく検討を行った結果、本発明に到達した。すなわち、本発明は、一般式(1)で表される第4級アンモニウム塩(A)およびエマルジョン樹脂(B)を含有することを特徴とする漁網用抗菌剤組成物である。
【0007】
【化1】

【0008】
式中、R、RおよびRはそれぞれ独立に炭素数1〜24のアルキル基または炭素数2〜24のアルケニル基;Rは炭素数6〜24のアルキル基もしくはアルケニル基、炭素数7〜24のアリールアルキル基または炭素数8〜22のアリールアルケニル基;fは1または2の整数;Xf−はf価の対イオンであり、ハロゲンイオン、ヒドロキシルイオン、硫酸イオン、リン酸イオン、硝酸イオン、カルボン酸イオン、スルホン酸イオン、アルキル硫酸エステルイオン、アルキルリン酸エステルイオンおよび超強酸イオンからなる群から選ばれる1種以上である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の漁網用抗菌剤組成物は、十分な抗菌性を示し、かつ、長期間にわたって海水中でも抗菌効果が持続する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の漁網用抗菌剤組成物は、一般式(1)で示される第4級アンモニウム塩(A)[以下において、単に(A)と表記することがある]およびエマルジョン樹脂(B)[以下において、単に(B)と表記することがある]を必須成分として含有する。必須成分のうち第4級アンモニウム塩(A)は抗菌性およびその海水中での持続性の観点から含有するものである。以下、第4級アンモニウム塩(A)を表す一般式(1)について説明する。
【0011】
【化2】

【0012】
式中、R、RおよびRはそれぞれ独立に炭素数1〜24、好ましくは炭素数1〜18のアルキル基、または炭素数2〜24、好ましくは炭素数2〜18のアルケニル基である。Rは炭素数6〜24、好ましくは炭素数10〜24のアルキル基もしくはアルケニル基、又は炭素数7〜24のアリールアルキル基もしくは炭素数8〜24のアリールアルケニル基である。
【0013】
、RおよびRにおける炭素数1〜24のアルキル基としては、直鎖もしくは分岐のアルキル基、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、オクチル基、ドデシル基、テトラデシル基、オクタデシル基およびエイコシル基などが挙げられる。また、炭素数2〜24のアルケニル基としては、直鎖もしくは分岐のアルケニル基、例えば、エテニル基、プロペニル基、ブテニル基、オクテニル基、ドデセニル基およびオレイル基などが挙げられる。
【0014】
における炭素数6〜24のアルキル基及びアルケニル基としては上記のアルキル基及びアルケニル基のうちの炭素数6〜24のものが挙げられる。また、炭素数7〜24のアリールアルキル基としては、ベンジル基およびフェネチル基等が挙げられ、炭素数8〜24のアリールアルケニル基としてはシンナモイル基等が挙げられる。
【0015】
一般式(1)における第4級アンモニウムカチオン部分の具体例としては、R〜Rのそれぞれの炭素数の範囲と種類に従って分類すると、以下のカチオンが挙げられる。
【0016】
(1)R〜Rが全て炭素数1〜2で、Rは炭素数8〜24のアルキル基のもの;
トリメチルドデシルアンモニウムカチオン、トリメチルテトラデシルアンモニウムカチオン、トリメチルヘキサデシルアンモニウムカチオン、トリメチルオクタデシルアンモニウムカチオン、トリメチルヤシ油アルキルアンモニウムカチオン、トリメチル−2−エチルヘキシルアンモニウムカチオン、ジメチルエチルドデシルアンモニウムカチオン、ジメチルエチルテトラデシルアンモニウムカチオン、ジメチルエチルヘキサデシルアンモニウムカチオン、ジメチルエチルオクタデシルアンモニウムカチオン、ジメチルエチルヤシ油アルキルアンモニウムカチオン、メチルジエチルドデシルアンモニウムカチオン、メチルジエチルテトラデシルアンモニウムカチオン、メチルジエチルヘキサデシルアンモニウムカチオン、メチルジエチルオクタデシルアンモニウムカチオン、メチルジエチルヤシ油アルキルアンモニウムカチオンおよびメチルジエチル−2−エチルヘキシルアンモニウムカチオン;
(2)RおよびRが炭素数1〜2のアルキル基、Rが炭素数8〜18のアルキル基、Rがベンジル基のもの;
ジメチルデシルベンジルアンモニウム、ジメチルドデシルベンジルアンモニウム、ジメチルテトラデシルベンジルアンモニウム、ジメチルヘキサデシルベンジルアンモニウムおよびジメチルヤシ油アルキルベンジルアンモニウムカチオン;
(3)RおよびRが炭素数1〜2のアルキル基、RおよびRが炭素数8〜14のアルキル基のもの;
ジメチルジオクチルアンモニウム、ジメチルオクチルデシルアンモニウム、ジメチルジデシルアンモニウム、ジメチルデシルドデシルアンモニウム、ジメチルジドデシルアンモニウム、ジメチルジテトラデシルアンモニウム、メチルエチルジデシルアンモニウムおよびジエチルジデシルアンモニウムカチオン。
【0017】
これらの第4級アンモニウムカチオンのうち、抗菌性とその持続性の観点から好ましいのは、トリメチルヘキサデシルアンモニウム、ジデシルジメチルアンモニウム、ジメチルドデシルベンジルアンモニウム、ジメチルテトラデシルベンジルアンモニウムカチオンおよびこれらのうちの2種以上の併用である。
【0018】
一般式(1)における対イオンXf−としては、ハロゲンイオン(Cl、Br、Iなど)、ヒドロキシルイオン(OH)、硫酸イオン(SO2−)、リン酸イオン(PO3−)、硝酸イオン(NO)、カルボン酸イオン(RCOO)、スルホン酸イオン(R−SO)、アルキル硫酸エステルイオン(R−SO)、アルキルリン酸エステルイオンおよび超強酸イオンから選ばれる1種以上が挙げられる。なお、本発明においては、硫酸イオンとして硫酸水素イオン(HPO)、並びにリン酸イオンとしてHPO2−およびHPOも含まれる。
【0019】
カルボン酸イオンを形成するカルボン酸としては、1価または2価のカルボン酸が挙げられる。
【0020】
1価カルボン酸としては、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、カプリル酸、2−エチルヘキサン酸、ノナン酸、ドデカン酸、テトラデカン酸、ステアリン酸およびオレイン酸等の炭素数1〜18の脂肪族1価カルボン酸、並びに安息香酸、エチル安息香酸、桂皮酸およびt−ブチル安息香酸などの炭素数7〜18の芳香族1価カルボン酸が挙げられる。
【0021】
2価カルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸およびアゼライン酸などの炭素数2〜10の脂肪族2価飽和カルボン酸;マレイン酸およびイタコン酸などの炭素数4〜18の脂肪族2価不飽和カルボン酸;並びにフタル酸、イソフタル酸およびテレフタル酸などの炭素数8〜20の芳香族2価カルボン酸;が挙げられる。なお。2価カルボン酸の場合、第4級アンモニウム塩(A)はモノ塩でもジ塩でも、もしくはそれらの混合物であってもよい。
【0022】
スルホン酸イオンを形成するスルホン酸としてはp−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸およびp−フェノールスルホン酸などの芳香族1価スルホン酸などが挙げられる。
【0023】
アルキル硫酸エステルイオンを形成する硫酸エステルとしては、メチル硫酸エステル、エチル硫酸エステル、プロピル硫酸エステル、オクチル硫酸エステル、2−エチルヘキシル硫酸エステル、デシル硫酸エステル、ドデシル硫酸エステル、テトラデシル硫酸エステルおよびステアリル硫酸エステル等の炭素数1〜24、抗菌性および樹脂エマルジョン(B)との相溶性の観点から好ましくは炭素数1もしくは2のアルキル硫酸エステルが挙げられる。
【0024】
アルキルリン酸エステルイオンを形成するリン酸エステルとしては、オクチル燐酸エステル、2−エチルヘキシル燐酸エステル、デシル燐酸エステル、ドデシル燐酸エステルおよびステアリル燐酸エステル等の炭素数1〜24のアルキル燐酸エステル挙げられる。
【0025】
超強酸イオンを構成する超強酸は、100%硫酸より強い酸強度を有する酸(「超強酸・超強塩基」田部浩三、野依良治著、講談社サイエンティフィック刊、p1参照)であり、Hammettの酸度関数(H)が100%硫酸の−11.93未満のものであり、Xf−とプロトンが結合した超強酸Xf−・fHの第1解離段階でのHammett酸度関数(H)が−12以下である超強酸である。これらの超強酸としては、プロトン酸およびプロトン酸/ルイス酸の組み合わせからなる酸が挙げられる。プロトン酸の具体例としては、トリフルオロメタンスルホン酸(H=−14.10)、およびペンタフルオロエタンスルホン酸(H=−14.00)などが挙げられる。プロトン酸/ルイス酸の組み合わせに用いられるプロトン酸としては、ハロゲン化水素(フッ化水素、塩化水素、臭化水素およびヨウ化水素など)が挙げられ、ルイス酸としては三フッ化硼素、五フッ化リン、五フッ化アンチモン、五フッ化砒素および五フッ化タウリンなどが挙げられる。プロトン酸/ルイス酸の組み合わせは任意であるが、組み合わせて得られる超強酸の具体例としては、四フッ化硼素酸、六フッ化リン酸、塩化フッ化硼素酸、六フッ化アンチモン酸、六フッ化砒酸および六フッ化タウリンなどが挙げられる。上記の超強酸のうち、抗菌性およびその持続性の観点から、好ましいのはトリフルオロメタンスルホン酸、四フッ化硼素酸および六フッ化リン酸である。
【0026】
f価の対イオンのうち好ましいのは、抗菌性の観点から超強酸イオンおよびアルキル硫酸エステルイオン(さらに炭素数1もしくは2のアルキル硫酸エステルイオン)であり、特に好ましいのは、後述の樹脂エマルジョン(B)との相溶性および抗菌性の持続性の観点から超強酸イオンである。
【0027】
第4級アンモニウム塩(A)の製造方法は、公知の方法でよく、例えば対イオンがハロゲンイオンの場合は、3級アミンとハロゲン化アルキルを反応させて得られる。また、対イオンがアルキル硫酸エステルイオンの場合は、3級アミンとジアルキル硫酸とを反応させて得られる。また、対イオンがカルボン酸イオンまたは超強酸イオンの場合は以下の様にして得られる。
【0028】
3級アミンと同当量以上(好ましくは1.1〜5.0当量)の炭酸ジアルキルエステル(アルキル基の炭素数1〜5)を溶媒(例えば、メタノール)の存在下(3級アミンの重量に基づいて10〜1,000重量%)又は非存在下に、反応温度80〜200℃、好ましくは100〜150℃で反応させて第4級アンモニウム炭酸アルキル塩を製造し、さらにカルボン酸又は超強酸を添加(第4級アンモニウム炭酸アルキル塩の当量に基づいて1.0〜1.2当量)し、30〜80℃で1〜3時間撹拌して塩交換する。溶媒を80〜120℃で減圧留去して、目的の第4級アンモニウム塩を得る。
【0029】
また、対イオンが超強酸イオンの場合は、以下の方法も例示できる。第4級アンモニウムクロライド塩の水溶液(濃度20〜70重量%)に超強酸のアルカリ金属(ナトリウム、カリウムなど)塩を加え、室温で約2時間撹拌混合し、さらに70〜80℃で約1時間攪拌後、静置して分液した下層(水層)を除去し、上層中の水分を減圧下に除去して、目的物を得る。
【0030】
対イオンが超強酸イオンである第4級アンモニウム塩の製造方法のうち、遊離塩素含量低減および工程の簡略性の観点から、好ましいのは第4級アンモニウム炭酸アルキル塩を経由する方法である。
【0031】
本発明における第4級アンモニウム塩(A)は、通常は液体または固体であり、固体の場合の融点は通常30〜100℃であり、好ましくは40〜80℃である。
【0032】
本発明の漁網用抗菌剤組成物を構成する他の必須成分であるエマルジョン樹脂(B)について説明する。本発明におけるエマルジョン樹脂(B)とは、エマルジョンを構成する樹脂成分自体であり、エマルジョン状態で第4級アンモニウム塩(A)と混合されるものであり、漁網用抗菌剤組成物に粘着性能と各種基材に対する接着および固着性能を付与することを目的として組成物に加えられるものであって、本発明が目的とする漁網用抗菌剤組成物を得ることができる限り、特に制限されるものではない。
【0033】
エマルジョン樹脂(B)としては、ウレタン系エマルジョン樹脂、アクリル系エマルジョン樹脂、スチレン/アクリル共重合エマルジョン樹脂、酢酸ビニル系エマルジョン樹脂、およびゴム系エマルジョン樹脂などが挙げられる。これらは1種で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0034】
また、エマルジョン樹脂(B)としては、アニオン系エマルジョン樹脂(B1)、カチオン系エマルジョン樹脂(B2)およびノニオン系エマルジョン樹脂(B3)に分類される。
【0035】
なお、エマルジョン樹脂(B)のイオン性と第4級アンモニウム塩(A)の対イオンの種類には、好ましい組み合わせがある。
【0036】
例えば、第4級アンモニウム塩(A)の対イオンがハロゲンイオン、ヒドロキシルイオン、硫酸イオン、リン酸イオン、硝酸イオン、カルボン酸イオン、スルホン酸イオンまたはアルキルリン酸エステルイオンの場合には、エマルジョン樹脂(B)との相溶性の観点および抗菌性の持続性の観点から、好ましくはカチオン系エマルジョン樹脂(B2)およびノニオン系エマルジョン樹脂(B3)である。上記の相溶性とは、第4級アンモニウム塩(A)とエマルジョン樹脂(B)のエマルジョンを混合した場合のエマルジョン状態が破壊されずに安定であることをいう。
【0037】
また、第4級アンモニウム塩(A)の対イオンが超強酸イオンまたは硫酸アルキルエステルイオンの場合は、いずれのイオン性のエマルジョン樹脂であっても(A)との相溶性に優れているので、エマルジョン樹脂のイオン性の選択性がない。また、(A)の対イオンが超強酸イオン以外の場合は容易に水に溶解するが、超強酸イオンの場合は、(A)は水へはほとんど溶けない(例えばジメチルジn−デシルアンモニウムトリフルオロメタンスルホン酸塩の水への溶解性は10ppm以下)ため、水中での長期間の抗菌性を発揮することができる。
【0038】
また、エマルジョン樹脂(B)のうち、漁網に塗布して乾燥硬化させた場合に樹脂が柔軟で漁網の屈曲に対応しやすいという観点から、好ましいのはウレタンエマルジョン樹脂であり、特に好ましいのは、(A)の対イオンが超強酸イオンや硫酸エステルイオンである場合に相溶性に優れているという観点からアニオン系ウレタンエマルジョン樹脂である。
【0039】
なお、第4級アンモニウム塩(A)の対イオンが超強酸イオン以外の場合の(A)は、水溶性が大きいが、本願発明のようにウレタン系エマルジョン樹脂と組み合わせることにより、原因は不明であるが、その塗膜からの溶出速度は非常に遅くなり、海水中でも長期間にわたって抗菌性を発揮することが本発明においてわかった。
【0040】
アニオン系エマルジョン樹脂(B1)としては、アニオン系ウレタンエマルジョン樹脂、アニオン系アクリルエマルジョン樹脂、アニオン系ポリエステルエマルジョン樹脂、アニオン系ゴム系エマルジョン樹脂およびアニオン系酢酸ビニルエマルジョン樹脂などが挙げられる。
【0041】
アニオン系ウレタンエマルジョン樹脂としては、ポリオールとポリイソシアネート化合物に基づくウレタン樹脂の主鎖および/またはアニオン基(例えば、カルボキシル基、スルホン酸基およびそれらの塩の形態の官能基等)を有するウレタン樹脂であって、エマルジョンの形態を有するものが挙げられる。
【0042】
ここで、ポリオールとして、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリオレフィンポリオール、ポリアクリル酸エステル系ポリオールおよびひまし油誘導体を例示できる。
【0043】
ポリエステルポリオールとしては、例えば、ポリエチレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリエチレンブチレンアジペート、ポリヘキサメチレンイソフタレートアジペート、ポリエチレンスクシネート、ポリブチレンスクシネート、ポリエチレンセバケート、ポリブチレンセバケート、ポリ−ε−カプロラクトンジオール、ポリ−3−メチルペンタンアジペート、1,6−ヘキサンジオールとダイマー酸の重縮合物、1,6−ヘキサンジオールとアジピン酸とダイマー酸の共重縮合物、ノナンジオールとダイマー酸の重縮合物、エチレングリコールとダイマー酸の重縮合物、およびエチレングリコールとアジピン酸とダイマー酸の共重縮合物を例示できる。
【0044】
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとのランダム共重合体およびブロック共重合体、並びにエチレンオキサイドとブチレンオキサイドとのランダム共重合体およびブロック共重合体を例示できる。
【0045】
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、ポリテトラメチレンカーボネートジオール、ポリヘキサメチレンカーボネートジオール、ポリ−1,4−シクロヘキサンジメレンカーボネートジオール、およびポリヘキサメチレン−1,4−シクロヘキサンジメレンカーボネートジオールを例示できる。
【0046】
ポリブタジエンポリオールとしては、例えば、ポリブタジエン骨格(1,2付加体および1,4付加体)を有するホモポリマーから成るポリオール、ブタジエン、スチレンおよびアクリロニトリルなど重合したポリブタジエン系コポリマーから成るポリオール、並びにそれらの水素添加物を例示できる。ポリオレフィンポリオールとしては、例えば、ポリヒドロキシポリマーを例示できる。
【0047】
ポリアクリル酸エステル系ポリオールとしては、例えば、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)などのアクリルモノマーをアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレンなどと共重合することによって得られるアクリルポリオール、ポリアクリル酸エステルポリオールおよびポリメタクリル酸エステルポリオールなどを例示できる。ひまし油誘導体としては、例えば、精製ひまし油、脱水ひまし油、重合脱水ひまし油およびひまし油ポリオールを例示できる。これらのポリオールは単独でまたは組み合わせて使用することができる。
【0048】
また、ポリイソシアネート化合物として、例えば、エチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートおよび1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート化合物;水素添加4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、イソフォロンジイソシアネートおよびノルボルナンジイソシアネートなどの脂環式ジイソシアネート化合物;4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネートおよびナフタレンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート;などを例示できる。これらのポリイソシアネート化合物は単独でまたは組み合わせて使用することができる。
【0049】
アニオン系ウレタンエマルジョン樹脂を得るためには、更に、上述のイソシアネート化合物のイソシアネート基と反応し得る活性水素を有する官能基を二つ以上有し、アニオン基を有する化合物が用いられる。アニオン基として例えば、カルボキシル基、スルホン酸基およびそれらの塩の形態の官能基を例示することができる。
【0050】
アニオン基を有する化合物としては、例えば、3,4−ジアミノブタンスルホン酸、3,6−ジアミノ−2−トルエンスルホン酸、2,6−ジアミノベンゼンスルホン酸、およびN−(2−アミノエチル)−2−アミノエチルスルホン酸などのスルホン酸基含有化合物、並びに2,2−ジメチロール乳酸、2,2−ジメチロールプロピオン酸、および2,2−ジメチロール吉草酸などのカルボキシル基含有化合物を例示できる。アニオン基を有する化合物は、単独でまたは組み合わせて使用することができる。アニオン基を有する化合物の含有量は、ポリウレタン樹脂の重量に基づいて好ましくは0.1重量%以上、さらに好ましくは0.5〜30重量%である。
【0051】
本発明に係るアニオン系ポリウレタンエマルジョン樹脂は、上述のポリオール、ポリイソシアネート化合物およびアニオン基を有する化合物を適宜組み合わせ、必要に応じて他のモノマー、鎖長延長剤および触媒などを用い、常套の方法を用いて得ることができる。即ち、上述のポリオール、ポリイソシアネート化合物およびアニオン基を有する化合物を、アセトン、メチルエチルケトンまたはイソプロパノールなどの親水性の揮発性溶剤の存在下で反応させてウレタン樹脂を合成する。得られたウレタン樹脂から、アセトン法、プレポリマーミキシング法、ケチミン法またはホットメルトディスパージョン法などの公知の方法を用いて、アニオン系ウレタンエマルジョン樹脂を得ることができる。通常は平均粒子径0.001〜1.0μm程度のアニオン系ウレタンエマルジョン樹脂が得られる。アニオン系ウレタンエマルジョン樹脂の製造方法の具体例としては、特公昭42−24192号公報に記載の方法も挙げられる。
【0052】
アニオン系ウレタンエマルジョン樹脂からなるエマルジョンとしては市販のものを使用してもよい。そのようなエマルジョンとして、例えば、住化バイエルウレタン(株)製のディスパコールU54(商品名)およびディスパコールU53(商品名)、大日本インキ化学工業(株)製のハイドランHW112(商品名)およびハイドランHW333(商品名)、並びに三洋化成工業(株)製のユープレンUXA3004(商品名)、ユープレンUXA3005(商品名)およびユーコートUWS−145(商品名)を例示できる。
【0053】
アニオン系アクリルエマルジョン樹脂としては、常法で製造されるものが使用できる。例えば、分散安定剤の水溶液中で非イオン性アクリル系単量体と少量のアニオン性基含有ビニル単量体を公知の重合用触媒を用いてエマルジョン重合することによって得られる。分散安定剤としては、例えばポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルなどのノニオン系界面活性剤およびポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル硫酸エステル塩などのアニオン系界面活性剤などが用いられる。
【0054】
エマルジョン重合に使用されるアニオン性基含有ビニル単量体としては、カルボキシ基を有するビニル単量体[(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸およびフマル酸など]、スルホン酸基含有ビニル単量体(ビニルスルホン酸およびアリルスルホン酸など)およびリン酸基含有ビニル単量体などが挙げられる。アニオン性基含有ビニル単量体の含有量は全てのビニル単量体の重量のうちの通常0.1〜20重量%である。
【0055】
エマルジョン重合に使用される非イオン性アクリル系単量体としては、炭素数1〜14の脂肪族アルコールの(メタ)アクリレ−ト、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ミリスチル(メタ)アクリレート、および直鎖もしくは分岐の天然もしくは合成(オキソ法、チーグラー法など)アルコールの(メタ)アクリレート;脂環式アルコールの(メタ)アクリレート例えばシクロヘキシル(メタ)アクリレートなど;並びに芳香族アルコールの(メタ)アクリレート例えばベンジル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0056】
また、官能基を有する非イオン性アクリル系単量体として、ヒドロキシル基を有するビニル単量体[ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートおよびヒドロキシルプロピル(メタ)アクリレートなど];アミド基を有するビニル単量体[(メタ)アクリルアミドなど];エポキシ基を有するビニル単量体[グリシジル(メタ)アクリレートなど];メチロール基を有するビニル単量体[N−メチロールアクリルアミドなど]などを併用してもよい。
【0057】
これらのうち好ましいものは、炭素数1〜10の脂肪族アルコールの(メタ)アクリレートであり、特に好ましいものは、炭素数1〜8の脂肪族アルールの(メタ)アクリレートである。これら2種以上併用してもよい。
【0058】
また、アクリル系単量体以外の単量体、例えば芳香族単量体(スチレンおよびビニルトルエンなど);アリル基有する単量体(酢酸アリルなど);ニトリル基を有する単量体[(メタ)アクリロニトリルなど];ハロゲン含有のビニルまたはビニリデン系単量体(塩化ビニルおよび塩化ビニリデンなど];ビニルエステル系単量体(酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニルおよびバーサテイク酸ビニルなど);ビニルエーテル系単量体(ビニルエチルエーテル、ビニルプロピルエーテルおよびビニルイソブチルエーテルなど)を併用してもよい。
【0059】
アニオン系ポリエステルエマルジョン樹脂としては、通常のポリエステル形成方法、たとえばポリオール類とポリカルボン酸もしくはそのエステル形成性誘導体(例えば酸無水物および低級アルキルエステルなど)をエステル化またはエステル交換させることにより製造でき、ポリオール類の少なくとも一部として前述のアニオン性ウレタンエマルジョン樹脂で例示したアニオン基を有する化合物のうちの活性水素原子含有基として水酸基を有するもの(スルホン酸ジオールなど)を併用してポリエステル化した後、自己乳化することにより製造することができる。また、ポリカルボン酸類としてカルボキシル基以外のアニオン性基を有するポリカルボン酸[例えばスルホイソフタル酸(塩)およびそのエステル形成性誘導体]などを併用することにより製造することもができる。エステル化またはエステル交換は、通常100〜250℃の反応温度で、必要により触媒および/または溶剤を用いて行うことができる。触媒および溶剤としてはポリエステル化反応に通常用いられるものが使用できる。触媒としては例えばジブチル錫ジラウレート、オクチル酸錫、p−トルエンスルホン酸およびナフテン酸リチウムなど;溶剤としては例えば芳香族炭化水素類およびケトン類が挙げられる。
【0060】
アニオン系ゴム系エマルジョン樹脂としては、例えば、ブタジエンラッテクス、クロロプレンラテックス、イソプレンラテックス、ブタジエンやイソプレンなどとスチレンやアクリロニトリル等とを共重合した共重合樹脂ラッテクスなどにおいて、単量体の一部としてカルボキシル基を有する単量体、例えばアクリル酸などを使用したエマルジョン樹脂が挙げられる。
【0061】
アニオン系酢酸ビニルエマルジョン樹脂としては、エチレン、バーサティック酸ビニルエステル、エチレン性不飽和カルボン酸、塩化ビニルおよび(メタ)アクリル酸アルキルエステル等と酢酸ビニルとを共重合した酢酸ビニル共重合エマルジョン樹脂などが挙げられる。これらは、1種で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。エチレン酢酸ビニル共重合系エマルジョン樹脂の製法の一例は、例えば西独特許1127085号(1962)および特開昭38−8988号公報などに見られ、官能基としてカルボキシル基を有するものが好ましい。
【0062】
エマルジョン樹脂(B)のうちカチオン系エマルジョン樹脂(B2)としては、カチオン系ウレタンエマルジョン樹脂およびカチオン系アクリルエマルジョン樹脂などが挙げられる。
【0063】
カチオン系ウレタンエマルジョン樹脂としては、前述のアニオン系ウレタンエマルジョン樹脂において例示したアニオン基を有する化合物の代わりに、カチオン基を有する化合物をしようすることで得ることができる。カチオン基を有する化合物としては、4級アンモニウム塩基含有ジオール、3級アミノ基含有ジオールおよびその塩(カルボン酸塩など)が挙げられ;アルキル(炭素数1〜8)ジアルカノール(炭素数2〜4)アミン(N−メチルジエタノールアミンなど)およびジアルキル(炭素数1〜6)アルカノール(炭素数2〜4)アミン(N,N−ジメチルエタノールアミンなど)、並びにこれらの酸類[有機酸例えば炭素数1〜8のカルボン酸(酢酸など)、スルホン酸(トルエンスルホン酸など);無機酸例えば塩酸、硫酸およびリン酸など)]による中和物および4級化剤[炭素数1〜8のアルキル基もしくはベンジル基を有する、硫酸エステル、炭酸エステルおよびハライドなど
(例えば硫酸ジメチル、炭酸ジメチル、メチルクロライドおよびベンジルクロライドなど)]による4級化物が挙げられる。カチオン系ウレタンエマルジョン樹脂は特公昭43−9076号公報に記載のものも挙げられる。
【0064】
カチオン系アクリルエマルジョン樹脂としては、前述のアニオン系アクリルエマルジョン樹脂において例示したアニオン性基含有ビニル単量体の代わりに、カチオン性基含有ビニル単量体使用することで得ることができる。カチオン性基含有ビニル単量体としては、アミノエチル(メタ)アクリレート、アミノプロピル(メタ)アクリレート、N−アミノエチル(メタ)アクリルアミドおよびこれらのモノアルキル(炭素数1〜6)置換体並びにモノ(メタ)アリルアミンなどの1級もしくは2級アミノ基含有モノマー;ジアルキル(炭素数1〜4)アミノアルキル(炭素数1〜8)(メタ)アクリレートおよび(メタ)アクリルアミド[ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートおよびジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレートなど]、並びにモルホリノエチル(メタ)アクリレートなどの3級アミノ基含有モノマー;塩化トリメチルアミノエチル(メタ)アクリレートおよび塩化ジメチルジアリルなどの3級アミノ基含有モノマーの第4級アンモニウム塩などが挙げられる。
【0065】
ノニオン系エマルジョン樹脂(B3)としては、ノニオン系ウレタンエマルジョン樹脂、ノニオン系ポリエステルエマルジョン樹脂、ノニオン系エポキシエマルジョン樹脂およびノニオン系酢酸ビニル系エマルジョン樹脂などが挙げられる。
【0066】
ノニオン系ウレタンエマルジョン樹脂としては、前述のアニオン基を有する化合物の代わりに親水性のポリエチレングリコールおよびポリエチレンプロピレングリコール(平均分子量100〜3,000)などを用いて、乳化剤として各種の界面活性剤を使用してエマルジョン化して得られる。上記親水性化合物を使用する場合の割合は、ウレタン樹脂の重量に基づいて通常3〜30%
を使用する。
【0067】
エマルジョン樹脂(B)を含有するエマルジョンの固形分濃度(樹脂濃度)は特に制限されるものではなく、通常1〜60重量%、好ましくは10〜60重量%である。
【0068】
本発明の漁網用抗菌剤組成物において、上記第4級アンモニウム塩(A)およびエマルジョン樹脂(B)の固形分比率(A)/(B)は、通常0.005〜0.2、抗菌性と海水中での抗菌性の持続性の観点から、好ましくは0.01〜0.1である。
【0069】
また、漁網用抗菌剤組成物の固形分濃度は、通常1〜64重量%、好ましくは10〜60重量%である。
【0070】
本発明の漁網用抗菌剤組成物は、上記必須成分だけで十分な抗菌効果を発揮するが、必要に応じて公知の抗菌剤を含有していてもよい。そのような抗菌剤としては、ポリヘキサメチレンリン酸グアニジン、メチレンビスチオシアネート、3−ヨード−2−プロピニルブチルカーバメイト、ジヨードメチル−p−トリルスルホン、1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン、2−メチルチオ−4−ターシャリーブチルアミノ−6−シクロプロピルアミノ−S−チアジン、2−(4−チオシアノメチルチオ)ベンゾチアゾール、2,3,5,6−テトラクロロ−4−(メチルスルフォニル)ピリジン、3−(3,4−ジクロロフェニル)−1,1−ジメチルウレア、2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、テトラクロロイソフタロニトリル、N−(フルオロジクロロメチルチオ)−フタルイミド、N−ジクロロフルオロメチルチオ−N’,N’−ジメチル−N−p−トリルスルファミド、α〔2−(4−クロロフェニル)エチル〕−α−(1,1−ジメチルエチル)−1H−1,2,4−トリアゾール−1−エタノール、N,N−ジメチル−N’−フェニル−(フルオロジクロロメチルチオ)−スルファミド、ジンク(2−ピリジルチオ−1−オキサイド)、カッパー(2−ピリジルチオ−1−オキサイド)、酸化チタン、酸化亜鉛および銀系化合物などから選ばれる、少なくとも一種以上の化合物が挙げられる。これらの公知の抗菌剤の含有量は第4級アンモニウム塩(A)に対して0〜30重量%、好ましくは0〜20重量%である。
【0071】
本発明の漁網用抗菌剤組成物は、上記必須成分だけで十分に製剤化することができるが、必要に応じて、乳化や分散などの目的で更に乳化剤や分散剤を添加してもよい。このような添加剤としては、各種の界面活性剤が使用でき、界面活性剤としては、ノニオン型、カチオン型、アニオン型および両性イオン型など、以下に記載する代表的なものを使用することができる。ただし、以下の例示のみに限定されるものではない。
【0072】
ノニオン型(ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステルおよびソルビタンアルキルエステルなど)、カチオン型(アルキルアミン類など)、アニオン型(高級アルコール硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩および高級アルコールリン酸エステル塩など)および両性イオン型(ラウリルアミノプロピオン酸メチルおよびステアリルジメチルベタインなど)が使用できる。これらの添加剤は樹脂エマルジョン(B)の固形分重量に対して好ましくは5重量%以下の添加量である。
【0073】
また、これらの他に、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、アラビアゴム、ゼラチン、カゼインおよびアルギン酸ソーダなどの各種補助剤が使用できる。これらの補助剤はエマルジョン樹脂(B)の固形分重量に対して好ましくは8重量%以下の添加量である。
【0074】
本発明の漁網用抗菌剤組成物は、上記の第4級アンモニウム塩(A)、エマルジョン樹脂(B)を含有するエマルジョン、および必要によりその他の成分を室温で通常の配合方法で攪拌混合して製造することができる。配合の順序は特に限定されないが、エマルジョンの中に(A)を攪拌しながら添加する方法が作業性の観点から好ましい。
【0075】
本発明の漁網用抗菌剤組成物は、通常は室温でエマルジョン状であり、固形分濃度は通常1〜64重量%、好ましくは10〜60%である。また、漁網用抗菌剤組成物の粘度は25℃で通常150mPa・s〜450mPa・sである。
【0076】
本発明の漁網用抗菌剤組成物の漁網などの基材への塗布方法としては、浸漬塗装、吹き付け塗装または練り込み塗装などの種々の塗装方法を適用することができるが、好ましくは浸漬塗装である。第4級アンモニウム塩(A)としての付着量は、魚網重量の5〜20重量%の範囲で調整することが好ましい。
【0077】
漁網用抗菌剤組成物を塗布した後に、乾燥および固着させる条件としては、エマルジョン樹脂(B)の乾燥硬化条件を適用することが好ましい。例えば、ウレタンエマルジョン樹脂の場合は通常25〜150℃で1〜3時間、アクリルエマルジョン樹脂の場合は通常25〜160℃で1〜3時間が好ましい。
【実施例】
【0078】
以下、製造例および実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。以下において、部は重量部を示す。
【0079】
[超強酸アニオンを対イオンとする第4級アンモニウム塩の製造例]
製造例1
加熱冷却装置、攪拌機および滴下ロートを備えたガラス製反応容器に、メタノール56部、メチルジn−デシルアミン163部(0.52モル)、および炭酸ジメチル144部(1.6モル)を仕込み、120℃で20時間反応させた後、メタノールと炭酸ジメチルの一部を留去してジメチルジn−デシルアンモニウムメチルカーボネートの83%メタノール溶液250部(0.52モル)を得た。この溶液250部に、室温でトリフルオロメタンスルホン酸79.5部(0.53モル)を加えて2時間攪拌した。この反応溶液に粒状苛性カリを添加して中和(pH:6〜8)し、析出する塩を濾過後、濾液のメタノールを留去し、減圧乾燥(減圧度950hpa、105℃×3時間)して120℃で溶融状態にして取り出し、有効成分約100%の常温で固体のジメチルジn−デシルアンモニウムトリフルオロメタンスルホン酸塩(A−1)250部を得た。(A−1)の重量に基づく遊離塩素含量は10ppm以下であった。
【0080】
[アルキル硫酸エステルイオンを対イオンとする第4級アンモニウム塩の製造例]
加熱冷却装置、攪拌機および滴下ロートを備えたガラス製反応容器に、水690部、ジメチルヘキサデシルアミン204部(0.76モル)、および硫酸ジメチル95部(0.76モル)を仕込み、120℃で20時間反応させた後、水を留去してトリメチルヘキサデシルアンモニウムのメチル硫酸塩(A−2)の90%溶液330部(0.83モル)を得た。(A−2)の重量に基づく遊離塩素含量は10ppm以下であった。
【0081】
表1に示した配合割合で、実施例1〜4および比較例1〜3の漁網用抗菌剤組成物を調製した。なお、エマルジョン樹脂(B)のエマルジョンとしては下記の市販品を使用した。
(B−1):「ユーコート UWS−145」(商品名)(三洋化成工業株式会社製、アニオン系ウレタン樹脂エマルジョン、固形分35重量%)
【0082】
<抗菌性のテーブル評価法>
実施例1〜4および比較例1〜3の魚網用抗菌剤組成物について、下記の試験条件で抗菌性のテーブル評価を行なった。
(試料作製)
実施例1〜4および比較例1〜3の魚網用抗菌剤組成物をスライドガラス(縦7.5cm×横2.5cm)上に1〜2滴垂らし、縦4.3cm×横2.5cmの薄膜を作製する。その後、室温で1時間、150℃で3時間乾燥させたものを海水浸漬前試料とする。福井県小浜市小浜港埠頭で8月に採取した海水70mLが入った100mLのビーカー中に上記と同様にして作成した海水浸漬前試料を浸漬させ、1週間放置後、とりだし、自然乾燥させたものを海水浸漬後試料とする。このとき、抗菌剤を除いた(エマルジョン樹脂のみ)の試料も上記と同様に作製し、それをブランク試料とする。
【0083】
<抗菌性評価>
本発明の抗菌性評価はJIS Z−2801(抗菌加工製品−抗菌性試験方法・抗菌効果)に従って評価した。即ち、黒コウジカビをポテトデキストロース寒天培地で培養し、普通ブイヨン培地を生理食塩水で500倍希釈し、菌数2.5×10〜1.0×10 cfu/mlになるように調整した。試料およびブランク試料を滅菌シャーレ上に採取し、前述の試験菌液をそれぞれの試料に0.175mL滴下し、2.0cm×3.5cmにカットしたストマッカーフィルムを載せる。それらを温度25±2℃、湿度90%以上の条件で24時間触菌した。触菌後、滅菌シャーレに入った試料に生理食塩水10mLを加え、試料を洗い出す。洗い出し液1mLを適宜希釈する。その希釈液をポテトデキストロース寒天培地に50μL塗抹し、25±2℃、1週間培養し、寒天培地上のカビ数を測定し、下記式により抗菌活性値を算出した。結果を表1に示す。
【0084】
(生菌数の計算)
カビ数=カビ数 × 希釈倍率 × 10(洗い出しに用いた生理食塩水)
(判定基準)
静菌活性値 =Mb−Mc
Mb=ブランク試料の1週間培養後のカビ数の常用対数値
Mc=試料の1週間培養後のカビ数の常用対数値
【0085】
<フィールドテスト>
実施例1〜4および比較例1〜3の魚網用抗菌剤組成物について、下記の試験条件で抗菌性および長期間の抗菌持続性のフィールド評価を行なった。
【0086】
各実施例および比較例の漁網用抗菌剤組成物を、漁網(ナイロン製、300デニール、10節)に浸漬塗布した。抗菌剤成分に換算した付着量はいずれも漁網重量の6重量%であった。充分に自然乾燥させた後、80℃の乾燥器内で1時間乾燥硬化させた漁網を、50cm×50cmの鉄枠に固定し、福井県小浜市小浜港沖合で深度3mの海水中に垂直に浸漬した。4月上旬から試験を開始し、2ヶ月毎に引き上げて海洋生物の付着状況を6ヶ月間にわたって観察した。結果を表1に示す。表1中の「付着割合」とは、漁網の面積当たりにスライム、アオサ、イガイおよびフジツボなどが付着した面積%を表す。
【0087】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明の魚網用抗菌剤組成物は、有害重金属を含まず、十分満足できる抗菌性を示し、かつ、長期間にわたって海水中でも効果が持続するので、魚網および漁網付属具などに使用される漁網用抗菌剤組成物として有用である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)で表される第4級アンモニウム塩(A)およびエマルジョン樹脂(B)を含有することを特徴とする漁網用抗菌剤組成物。
【化1】

[式中、R、RおよびRはそれぞれ独立に炭素数1〜24のアルキル基または炭素数2〜24のアルケニル基;Rは炭素数6〜24のアルキル基もしくはアルケニル基、炭素数7〜24のアリールアルキル基または炭素数8〜22のアリールアルケニル基;fは1または2の整数;Xf−はf価の対イオンであり、ハロゲンイオン、ヒドロキシルイオン、硫酸イオン、リン酸イオン、硝酸イオン、カルボン酸イオン、スルホン酸イオン、アルキル硫酸エステルイオン、アルキルリン酸エステルイオンおよび超強酸イオンからなる群から選ばれる1種以上である。]
【請求項2】
前記対イオンが超強酸イオンであって、該超強酸が−12以下のHammett酸度関数(H)を有する超強酸である請求項1記載の魚網用抗菌剤組成物。
【請求項3】
前記超強酸がプロトン酸またはプロトン酸とルイス酸との組み合わせである請求項1または2記載の魚網用抗菌剤組成物。
【請求項4】
前記対イオンが炭素数1もしくは2のアルキル硫酸エステルイオンである請求項1記載の魚網用抗菌剤組成物。
【請求項5】
前記エマルジョン樹脂(B)がウレタンエマルジョン樹脂(B1)である請求項1〜4いずれか記載の魚網用抗菌剤組成物。
【請求項6】
前記ウレタンエマルジョン樹脂(B1)がアニオン系ウレタンエマルジョン樹脂である請求項5記載の魚網用抗菌剤組成物。


【公開番号】特開2012−126647(P2012−126647A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−276562(P2010−276562)
【出願日】平成22年12月13日(2010.12.13)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】