説明

鱗茎菜類調製機

【課題】確実に鱗茎菜類の根を掴んで揃えることが可能であると同時に、より効果的に、実部に付着する荒皮等を剥ぎ取ることのできる根揃え手段としての「根伸ばし部」が具備される鱗茎菜類調製機を提供する。
【解決手段】鱗茎菜類(玉葱6)を搬送する搬送部と、玉葱6の根および葉を切断する切断部と、切断部の手前において根を挟んで引き伸ばす根伸ばし部4とを具備する鱗茎菜類調製機であって、根伸ばし部4は一対のローラー26R・26Lを具備し、ローラー26R・26Lの外周部表面に、接線方向に沿って複数の羽根材41・41・・・を、一端を自由端として設け、かつ、該羽根材41・41・・・の厚み方向には部分的に複数のスリットを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、収穫した玉葱等の鱗茎菜類に対して、予め設定された長さに根、および、葉を切断する鱗茎菜類調製機の技術に関する。より詳しくは、切断工程前に鱗茎菜類の根を引き伸ばしたり、本体部(実部)に付着する余分な表皮や絡み付いた根の残骸を引き剥がして、該鱗茎菜類の状態を整える根伸ばし部についての技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、玉葱に代表される鱗茎菜類では、商品として出荷される前に根、および、葉を予め決められた長さに切り揃え、また、本体部(実部)に付着する荒皮等を剥ぎ取って綺麗に調製する必要があり、この作業を自動的におこなう鱗茎菜類調製機が知られている。
前記鱗茎菜類調製機は根の切断状態を良好に保つべく、根伸ばし部における様々な機構が提案されており、たとえば、一対のローラーによって根を挟み、引き千切るものや、表面にブラシを設けた一対のロールブラシを用いて根を扱き下ろして回転刃で切断するもの等がある。
【0003】
しかし、これらの構造からなる根伸ばし部が設けられる根切断部では、鱗茎菜類の根の切断状態を良好に保つことが困難であった。
すなわち、根伸ばし部の構造として一対のローラーによって根を挟み、引き千切るタイプのものでは、根の引張強度の違いによって切断位置がばらつくこととなり、また、一対のロールブラシと回転刃を用いて根を扱いた後に切断するタイプのものでは、構造上回転刃の位置が鱗茎菜類下面から下方に離れた物となるため、幾分の切残しが生じることとなる。
【0004】
このような課題を解決するべく、「特許文献1」では鱗茎菜類の根を根元部分で正確に切断可能な技術が公開されている。
【特許文献1】特許第3378560号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記「特許文献1」では、根伸ばし部の構造として、テーパ状からなる一対のローラーを鱗茎菜類の搬送方向に沿って、かつ、上流側から下流側へ向かって断面積が小さくなるように配設し、根切断用の回転刃を、その回転域の一部が前記ローラーと鱗茎菜類との間に入り込んだ状態となるように設けることにより、鱗茎菜類の根の切断面を良好に保つことができる。
すなわち、一対のローラーの間に挟まれた鱗茎菜類の根は、該両ローラーの回転駆動によって下方に扱き下ろされ、この状態のまま該ローラーの上端部に近接する回転刃によって切断されるため、根元から切断部までの距離はほぼ回転刃の厚み分となり、良好な根切断面を保つことができる。
【0006】
しかし、前記ローラーの表面部には確実に根を掴むために、柔毛部の長いブラシが設けられており、該ブラシが時としてローラーの回転中に絡み合って変形してしまい、その結果、機能を十分果たせず、鱗茎菜類の根の扱き作用が低下することがあった。また、前記ブラシ部の奥深くまで根が絡み付き、そのまま引き千切られることによって、前記ローラーの表面部に残り、メンテナンス性を悪化させる原因にもなっていた。
さらに、上述のとおり、根は一対のローラーの間に挟まれながら効率良く下方へ扱き下ろされるが、その後、下方へ伸ばされた根を保持する機能が十分に発揮できず、回転刃に到達する際には再び元の状態に戻っている根も混在しており、根切断部が不揃いとなることがあった。
【0007】
このような問題点を踏まえ、本発明においては、確実に鱗茎菜類の根を掴んで揃えることが可能であると同時に、より効果的に、実部に付着する荒皮等を剥ぎ取ることのできる根揃え手段としての「根伸ばし部」が具備される鱗茎菜類調製機を提供することが課題である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0009】
即ち、請求項1においては、鱗茎菜類を搬送する搬送部と、該鱗茎菜類の根および葉を切断する切断部と、該切断部の手前において根を挟んで引き伸ばす根伸ばし部と、を具備する鱗茎菜類調製機であって、前記根伸ばし部は一対のローラーを具備し、該ローラーの外周部表面に、接線方向に沿って複数の羽根材を、一端を自由端として設け、かつ、該羽根材の厚み方向には部分的に複数のスリットを設けるものである。
【0010】
請求項2においては、前記羽根材は布状部材と、前記ローラーの軸方向に沿って、複数のスリットを接線方向に設けた発泡性部材と、からなり、前記布状部材を、発泡性部材の表面部、或いは、裏面部に貼設したものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0012】
請求項1においては、ローラーの外周部に、接線方向に沿って複数の羽根材を、一端を自由端として設けることにより、前記ローラーが一回転するうちに、羽根材は接線方向に延出される状態と、ローラー該周部表面に巻き取られる状態とを交互に繰り返すことが可能になる。
すなわち、羽根材が接線方向に延出される状態では、鱗茎菜類の本体部を確実に包み込み、本体表面に付着する余分な表皮や絡み付く根の残骸等を捕まえることができる。そして、ローラーの回転と共に羽根材が該ローラー表面に巻き取られることで、余分な表皮や根の残骸等を確実に引き離すことができる。
また、前記羽根材の厚み方向に対して、部分的に複数のスリットを設けることにより、鱗茎菜類の根は絡み付いて引きちぎられること無く、効率良く下方へ扱き下ろされることになる。
【0013】
請求項2においては、前記羽根材に発泡部材を用いて、十分な剛性と柔軟性を持たせたこにより、鱗茎菜類は本体部を複数の羽根材で包み込まれながら、根を下方に引き伸ばしつつ、ローラー軸方向に搬送されることになり、前記本体部に余分な表皮や根の残骸等の付着を伴うことなく、確実な状態で切断部に送ることができる。
また、前記発泡部材はローラーの軸方向に沿って接線方向に複数のスリットを設け、同時にその表面部、或いは、裏面部に布上部材を貼付することにより、複数の羽根材はそれぞれ連結され、一連となって動作することとなり、搬送される鱗茎菜類の実部を効果的に包み込み、余分な表皮や絡み付いた根の残骸を引き剥がすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に、発明の実施の形態を説明する。
図1は本発明の一実施例に係る鱗茎菜類調製機の全体的な構成を示した正面図である。
図2は同じく側面図である。
図3は同じく図1に示す矢印Aから見た断面側面図である。
図4は同じく図1に示す矢印Bから見た断面平面図である。
図5は本発明における根切断部近傍を示した側面図である。
図6は同じく下方から見上げた斜視図である。
図7は本発明における根伸ばし部を示した正面図である。
図8は同じく平面図である。
図9はローラーの動作を示した正面図である。
【0015】
[鱗茎菜類調製機1全体構成]
まず、本実施例における鱗茎菜類調製機1の全体構成について図1乃至図6を用いて説明する。なお、図2乃至図6の矢印Cで表される方向は鱗茎菜類が搬送される方向を示し、便宜上矢印Cの方向を前方として左右方向を決定する。
また、本実施例では鱗茎菜類として玉葱を選定して以下説明するが、これに限定されるものではなく、ネギ、大蒜等であってもよい。
【0016】
鱗茎菜類調製機1は鱗茎菜類、例えば玉葱6の調製をおこなう本体部55と、該本体部55の下部に設けられるサポートフレーム部56と、により構成される。
本体部55は玉葱6を搬送する搬送部2と、該玉葱6の根および葉を切断する切断部3と、該切断部3の上流部において根を挟んで引き伸ばす根伸ばし部4等と、から構成されており、これら構成要素2・3・4等が略直方体形状のカバー57にて覆われている。
【0017】
カバー57は側面視において、その上面は前後一側(本実施例では前側)が水平に形成され、他側(本実施例では後側)が前後略中央部から斜上方向へと延出されており、後述する搬送部2の形状に合わせて形成されている。
また、カバー57の前面部および後面部には、略中央上部において矩形形状の搬送孔57aが設けられており、該前後の搬送孔57a間を搬送通路として形成されて、玉葱6が前部の搬送孔57aから本体部55に投入される。該搬送孔57aの上部中央には玉葱の葉部を通過させる搬送溝が形成されている。
【0018】
本体部55の後部(下流側)には、正面視にて左右一端を斜下方に傾斜したプレート50が設けられており、その両端部において、カバー57の側面部の内面と固設されている。
また、カバー57の側面部において、前記プレート50が固設された付近には排出孔54が設けられており、該排出孔54より、根および葉が切断された玉葱6が外部に搬出される。
【0019】
サポートフレーム部56は正面視にて略逆「Uの字」に屈曲させた2本のパイプ状の脚部材56a・56aを、前記本体部55の前後端下部に固設し、前記脚部材56a・56a間を繋ぎ材等によって連結して構成されている。脚部材56a・56aの下端部には、移動用の車輪58・58・58・58が設けられており、また、前側(上流側)の脚部材56aの上部には正面視にて逆「Uの字」、側面視にて「Lの字」に屈曲した取っ手59が配設されている。このような構成により、鱗茎菜類調製機1は任意に移動可能である。
【0020】
[搬送部2]
搬送部2は弾性部材からなる無端状の搬送用ベルト7と、該搬送用ベルト7に動力を伝達する動力伝達機構12等により構成される。前記搬送用ベルト7・7は左右両側に隣接して並設させ、該搬送用ベルト7・7の間に葉を挟み込むことで玉葱6を保持し、搬送する構成となっている。
【0021】
搬送用ベルト7は鱗茎菜類調製機1の略左右中央上部に設けられ、下流側、すなわち、図3に示す矢印C側へ向かって一旦水平方向に延出され、該鱗茎菜類調製機1の略前後中央部において、アイドラー11を介して斜め上方へと伸びている。
すなわち、鱗茎菜類調製機1の上流側の上部(図中の左側)には駆動軸9が直立して設けられ、下流側の上部(図中の右側)には、該駆動軸9に比べて幾分高い位置にて、従動軸10が斜め方向(斜面)に立設して設けられている。このような位置に配設される駆動軸9、従動軸10、および、アイドラー11を介して、搬送用ベルト7は側面視にて「へ」の字に掛架されている。
【0022】
駆動軸9の上部には搬送用ベルト7を巻回するための搬送用プーリー9aが設けられており、下部には駆動を伝達するための駆動用プーリー9bが設けられている。
ここで、鱗茎菜類調製機1の下流部の略上下中央には動力伝達機構12が設けられており、該動力伝達機構12は上下方向に伝動軸12bを回転自在に支持し、該伝動軸12bの上部にプーリー12aを固設し、該プーリー12aと前記駆動用プーリー9bとの間に駆動用ベルト8が巻回されている。
【0023】
なお、本実施例においては駆動用ベルト8としてVベルトを想定しているが、これに限定されるものではなく、例えば、タイミングベルトや駆動チェーンを用いてもよく、また、複数のギヤを介した伝達機構を構成してもよい。
【0024】
さらに、前記伝動軸12bの下部にはスプロケット12cが固設されており、該スプロケット12cと後述する減速機構22の第二シャフト24上に固設したスプロケットとの間にチェーンを巻回して動力を伝達可能とし、更に伝動軸等を介して駆動モータ13と連動連結されている。
【0025】
このような構造により、それぞれ独立した動力伝達機構12・12を介して搬送用ベルト7・7が互いに逆方向に回転されて、上述のとおり玉葱6を搬送する。
そしてこの搬送時において、玉葱6は搬送用ベルト7・7によって葉部が挟持されながら、後述の根伸ばし部4によって根を下方に、それぞれ伸ばされ、その後根が切断された後は、搬送用ベルト7・7によって斜め上方に懸吊しながら搬送されるため、葉は玉葱6の自重により伸ばされ、その結果、正確な位置にて葉が切断されることとなる。
【0026】
その後、上述のとおり、葉を切断された玉葱6の本体部(実部)は、プレート50の上面部に落下し、該プレート50の傾斜角により転がり落ちて、カバー57の側面部に設けられた排出孔54を通して外部に排出される。
【0027】
[切断部3]
切断部3は玉葱6の根を切断する根切断部16と、葉を切断する葉切断部17と、により構成される。すなわち、切断部3は後述する根伸ばし部4の出口付近から下流部に向かって根切断部16と葉切断部17が順に配設されており、玉葱6は搬送用ベルト7によって搬送されながら、自動的に根、および、葉が切断される。
【0028】
[根切断部16]
根切断部16は回転刃18や、固定刃19等により形成されており、後述する根伸ばし部4に具備されるローラー26R・26Lの後部上方に設けられる。
すなわち、図4において、玉葱6搬送方向右側(図4における下側)におけるローラー26Rの下流側端部上方には回転刃18が側面視にて水平に設けられており、かつ、玉葱6の搬送方向左側(図4における上側)におけるローラー26Lの下流側端部上方には、前記回転刃18の下方と一部オーバーラップする固定刃19が側面視にて斜下方に向けて設けられている。
【0029】
ここで、図5、および、図6に示すように、固定刃19は一端部の片側側面に刃形状を具備する略板部材から形成されており、他端部において、支持部材27とボルト等により固設される。
該支持部材27は正面視にて上部に水平面を有する逆L字形状の屈曲部材であり、該水平面の先端部において前記固定刃19が固設される。また、該支持部材27の垂直面の上部には貫通孔が穿孔されており、該貫通孔に前記本体部55に固設されるブラケット39に設けられる揺動軸40が挿入されて、支持部材27及び固定刃19が上下揺動可能に枢支されている。
【0030】
支持部材27の垂直面において下方先端部には、階段状に屈曲した丸棒材49の一端部が溶接等により固着されており、搬送方向側へと延出されている。
また、前記ブラケット39の下面には、L字形状に屈曲し、前記丸棒材49と同じく搬送方向へと延出される支持部材61が固着されており、該支持部材61の先端部に設けられる貫通孔に調整ボルト62が挿入されて、ナットにより上下位置調整可能に組み付けられている。
前記調整ボルト62の先端部には貫通孔63が穿孔されており、該貫通孔63に引張バネ64の一端が係止され、また、前記丸棒材49の延出方向先端部に引張バネ64の他端が係止され、前記調整ボルト62の先端部とが、引張バネ64を介して連結されている。
【0031】
このようにして根切断部16を構成したことにより、前述のとおり、固定刃19は側面視にて回転刃18の下方と一部オーバーラップし、その後、搬送方向に向かって斜下方に配置されるが、固定刃19と回転刃18との接触部の面圧力は、調整ボルト62のねじ込み量を調整して、引張バネ64のバネ力を変化させることにより、任意に変更することができる。
このため、固定刃18の取付けを、単にブラケット39にボルト等にて固設させた場合と比べて、常に引張バネ64のバネ力により、均等な接触面圧を保つことができ、たとえ、固定刃19(あるいは、回転刃18)の接触部が長期間の使用により摩耗したとしても、常に一定の面圧力によって接触し、隙間が発生しないため、玉葱6の根の切残しが発生しないのである。
【0032】
また、両刃18・19の接触部に発生する面圧力は、引張バネ64の復元力(バネ力)によるものなので、状況に応じて柔軟に力の強弱を変化させ、常に適切な面圧力で前記両刃18・19を接触させることとなり、接触部の摩耗の進行を遅らせ、固定刃19(あるいは回転刃18)の交換時期を延ばすことができる。
【0033】
さらに、本実施例における回転刃18の下面は、中心部に向かって緩やかに下方に窄められる円錐形状を有しているため、固定刃19とは平面部により接触し、刃面が直接当たらないようになっている。
【0034】
固定刃19の右側面部の上流側は、平面視にて外側(図4における上側)に向かって緩やかに傾斜されており、また、回転刃18は前記固定刃19に対して徐々に外形線が接近していくように配置されるため、平面視において、両刃18・19からなる間隙部は下流方向へ窄まる形となり、搬送されてくる玉葱6の根を容易に両刃の間隙部に導くことが可能となっている。
【0035】
回転刃18の駆動軸20の下部にはスプロケット21が固設され、減速機構22を介して、駆動モータ13と連動連結されている。
ここで減速機構22は、駆動モータ13の上方に出力軸と平行に配置される第一シャフト23と、その後方に直立して設けられる第二シャフト24と、各軸上に固設したスプロケットや歯車等により構成されており、駆動モータ13によって発生した駆動力は、該減速機構22を介して、回転刃18や搬送装置等に伝達される。
【0036】
すなわち、前記第一シャフト23の上流側端部上には、スプロケット25が固設され、前記駆動モータ13より前方へ突出した出力軸上には出力スプロケット14が固設され、ローラー26R・26Lの前端上にはそれぞれスプロケット44・44が固設されて、これらスプロケットに駆動チェーン15が巻回されて駆動可能としている。また、第一シャフト23の下流側端部には、かさ歯車28が設けられており、第二シャフト24の略上下中央部に設けられるかさ歯車29と噛合することにより、動力伝達する構成としている。
【0037】
第二シャフト24の上下端部には、上部スプロケット30、および、下部スプロケット31が設けられており、該下部スプロケット31と前記スプロケット21が駆動チェーン33を介して動力が伝達され、駆動モータ13による駆動力が回転刃18に伝達される。
【0038】
なお、前記上部スプロケット30は後述のとおり、駆動チェーン32等を介して葉切断部17の回転刃34と連結されており、これら回転刃18・34は同調して回転される。
【0039】
[葉切断部17]
葉切断部17には回転刃34が具備されており、該回転刃34の上方においてシャフト35を共有してスプロケット36が設けられている。前記回転刃34は平面視において、前記根切断部16の回転刃18に対して下流側方向に、一直線上に設けられており、また側面視において、搬送用ベルト7が斜め上方に進行を変えてから幾分上がった高さにて、水平に設けられている。
【0040】
スプロケット36は途中複数のアイドラー37・38を介して、駆動チェーン32によって前記第二シャフト24に設けられる上部スプロケット30と連結されており、上述のごとく、駆動モータ13によって発生した駆動力が、該減速機構22を介して、回転刃34に伝達される。
【0041】
[根伸ばし部4]
次に本実施例における根伸ばし部4について図4、および、図7乃至図9を用いて説明する。なお、図4、図8、および、図9においては、矢印Cの方向、すなわち、玉葱6の搬送方向を前方向として左右方向を決定し、また、図7においては、向かって右側(各図面上の左側)を便宜上右側として、部材符号にR(右側)、および、L(左側)を付して表現する。
【0042】
根伸ばし部4は玉葱6の搬送方向に沿って配設され、かつ、前後水平方向に並設された、左右2本のローラー26R・26Lと、該ローラー26R・26Lに付設される羽根材41R・41L等により構成される。
【0043】
ローラー26は、軸心部に貫通孔26aを穿孔した筒状部材から形成されており、該貫通孔26aにローラー支持部材60が挿嵌されて、支持部材42に組付けられる。
ローラー支持部材60は貫通孔26aの内径寸法と略同程度の外形寸法を有するパイプから形成され、該ローラー支持部材60の一端部(前側)は、支持部材42に固設されるベアリング部43に挿入されて回転自在に支持される。また、ローラー支持部材60の前記一端部のさらに先端部ではスプロケット44の軸心部に挿入されてボルトで一体的に固定できるようにしている。そして、図1に示すように、駆動モータ13の出力スプロケット14、および、減速機構22のスプロケット25に駆動チェーン15が巻回されて駆動できるようにしている。
【0044】
ここで、隣接して設けられる各ローラー26R・26Lにおいて、前記先端部に固着されるスプロケット44・44は、「たすき掛け」、すなわち、互いに相反する回転方向となるように駆動チェーン15が巻回されており、駆動モータ13の駆動力が伝達されると、各ローラー26R・26Lは互いに隣接する側へ入り込むように回転される。また、減速機構22のスプロケット25がともに連結されているため、各ローラー26R・26Lの回転の際は、前記切断部3の各回転刃18・34も回転する。
【0045】
このように、ローラー26はローラー支持部材60を介して、支持部材42によって回動自在に支持される片持ち支持構造を有しており、外周部表面には、複数の羽根材41・41が接線方向に沿って、一端を自由端として設けられている。
【0046】
羽根材41は略長方形形状にカットされた布状部材41aと、該布状部材41aと略同形状の弾性を有する発泡性部材41bとを重ね合わせた二段構造を有しており、一方の端部がローラー26の外周面に固定され、他方の端部が自由端として接線方向に伸びて設けられている。
【0047】
ここで、発泡性部材41bにはローラー26の軸方向に所定間隔ごとに、複数のスリット41c・41c・・・が軸と直角方向に設けられており、前記発泡性部材41bの表面部、すなわち、玉葱6の根と接触する作用面側に布状部材41aが貼付されている。
また、前記スリット41cは発泡性部材41bの厚み方向において、該発泡性部材41bの裏面部に設けられ、ローラー26の接線方向外側から該ローラー26との固着部近傍に渡り、部分的に形成されている。
【0048】
このように、発泡性部材41bに複数のスリット41c・41c・・・を設けることで、ローラー26の軸心方向に向かっての屈曲性が増し、効果的に2枚の羽根材41R・41Lを用いて玉葱6の実部を包み込み、かつ、根を挟み込むことができる。
また、ローラー26の軸方向に沿って、単に複数の羽根材を短冊状に設けた場合と異なり、作用面にはスリット41cによる切れ込みが現れないため、玉葱6の根が羽根材に絡み付き、引きちぎられる心配もない。
【0049】
なお、布状部材41aが発泡性部材41bに貼付される側は、本実施例の如く該発泡性部材41bの「表面部」に限定されるものではなく、「裏面部」であってもよいが、この場合、スリット41c・41c・・・は発泡性部材41bの表面部に複数設けられることになる。
そして、このような構造を有することにより、上述した本実施例と同様、発泡性部材41bのローラー26の軸心方向に向かっての屈曲性が増し、効果的に2枚の羽根材41R・41Lを用いて玉葱6の実部を包み込み、かつ、根を挟み込むことができる。
【0050】
また、2枚の羽根材41R・41Lが玉葱6を包み込んで屈曲される際は、互いに外側に向かって膨らむように弓なりになるため、発泡性部材41bの表面部に設けられる複数のスリット41c・41c・・・は切れ込み溝を塞ぐ形に屈曲される。
その結果、上述した本実施例と同様、ローラー26の軸方向に沿って、単に複数の羽根材を短冊状に設けた場合と異なり、玉葱6の根が羽根材に絡み付き、引きちぎられる心配もない。
【0051】
なお、羽根材41に関しては本実施例に示すとおり、布状部材41aと発泡性部材41bとの二段構造に限定されるものではなく、例えば、表面部を毛羽立たせることにより、発泡性部材41bのみで構成してもよく、或いは、厚みを持たせて弾性機能を具備させた布状部材41aのみで構成しても良い。
【0052】
前記布状部材41aは、表面を毛羽立たせた起毛布地により形成されており、後述のとおり、玉葱6の根を扱く場合には確実に該根を掴み、かつ、絡み付いた場合には、容易に取り除くことができる。
【0053】
なお、本実施例においては、一本のローラー26に対して2枚の羽根材41・41が設けられているが、その枚数及び取付位置は限定するものではなく、外周に等角度毎に配置することが望ましい。そこで、本実施例では、正面視においてそれぞれ直径方向上に固着されている。
【0054】
また、各羽根材41・41は、布状部材41aが外側に面するように設けられ、かつ、ローラー26と固着される固定端側に対して、該ローラー26の反回転方向に向かって自由端側が開放されるようにして、設けられている。すなわち、図7において、ローラー26Lでは回転方向が反時計回りになるため、各羽根材41・41の自由端側は時計回りに放たれ、また、ローラー26Rでは回転方向が時計回りになるため、各羽根材41・41の自由端側は反時計回りに放たれるようにして固着されている。
【0055】
ローラー26の自由端側の先端部において、上述のローラー支持部材60と同軸上に先端ローラー46が配置されて、該先端ローラー46とローラー26の軸心部にボルトが挿入されて、前記スプロケット44とともに螺子止めされている。但し、支持部材60上に前記各ローラー46・26を外嵌して、ナットやピン等で固定しても良く固定方法は限定せず、一体的に取り外せる構成であればよい。
【0056】
先端ローラー46は、ローラー26に比べて若干大きな直径を有する円柱部材から構成されており、前記ローラー26と同軸状に組み付けられている。
そして、前記先端ローラー46の先端部上方には、根切断部16に具備される固定刃19や回転刃18の端部が配設されている。
【0057】
このような構成を有することにより、先端ローラー46、および、ローラー26は、組付け用のボルトを外すことで容易に脱着可能となり、それに付随して、劣化した羽根材41の交換作業を簡略化することができる。
すなわち、根伸ばし部4に設けられる羽根材41は消耗品であって、一定期間使用すると劣化が進み、新品と交換する必要があったが、従来より、前記羽根材41が固着されるローラー26は両持ちで組み付けられ、着脱困難な構造となっていた。
そのため、羽根材41を新品と交換するには熟練の技術が必要となり、非常に困難な交換作業を余儀なく行なうか、或いは、両面テープ等を用いて前記羽根材41をローラー26に貼付させ、交換作業を容易にしたとしても、固着力の耐久性に問題が残った。
このような課題を踏まえた上で、上述のとおり、ボルト等を外すことで容易にローラー26の着脱作業を行なえる構造とすることで、熟練の技術を必要せず、交換作業の工数を減らすことで経済的に有効であり、また、固着力の低下を気にせず、確実に羽根材41をローラー26に貼付することが可能となる。
【0058】
二本のローラー26R・26Lは、同一平面上において先端ローラー46・46の側面が隣接するように配置されており、前記両ローラー26R・26Lの間には、幾分の隙間が設けられている。そして、前記隙間には各ローラー26に設けられた羽根材41・41が重なり合いながら圧縮さることとなり、各ローラー26R・26Lは互いに、相手側のローラー26の羽根材41が障壁となって、回転動作を妨げられることもない。
【0059】
また、羽根材41の長さはローラー26の外周長と比べて略同一か、幾分長く設定されているため、前記ローラー26に巻き取られた羽根材41の先端部は、取付け端部とオーバーラップすることとなり、前記隙間には、常に両ローラー26R・26Lに設けられた羽根材41・41が重なり合いながら圧接することになる。
【0060】
このような構成により、根伸ばし部4は根切断部16の上流部に配設されており、上流側(図8の上側)より搬送されてきた玉葱6の根は、まず、左右両側の羽根材41R・41Lの間隙部に挟まれ、下方向に扱かれながら下流側(図8の下側)に搬送されることによって揃えられ、かつ、同時に玉葱6の本体表面に付着する余分な表皮や絡み付く根の残骸等が引き離されるのである。
【0061】
すなわち、図9において、(イ)に示すとおり、羽根材41は投入された玉葱6の本体部を確実に包み込み、ローラー26の回転により、羽根材41は下方向へと移動されながら前記本体部に付着した余分な表皮や根の残骸等が引き離される。
そして、(ロ)に示すとおり、玉葱6の本体部を滑りぬけた羽根材41は、その後、根を掴んで、下方向へと引き伸ばしていく。
【0062】
なお、本実施例においては、両ローラー26R・26Lの間隙部に位置する羽根材41・41は互いに対峙して設けられているが、これに限定されるものではない。
すなわち、本実施例では上述のとおり、各ローラー26R・26Lの外周面上に対峙して、2枚の羽根材41R・41Lが十分な長さを有して設けられているため、前記ローラー26R・26Lの間隙部では常に両羽根材41R・41Lが重なり合いながら圧縮さることとなるが、例えば、羽根材41の厚みを大きく取り、かつ、該羽根材41の長さを短くして、前記ローラー26R・26Lの間隙部に、それぞれの該羽根材41R・41Lが「互い違い」に挟み込まれるように配置してもよい。
【0063】
また、羽根材41のローラー26への取付け方法においても、本実施例のように、ローラー26の主軸に対して直角方向に設けることに限定されるものではなく、例えば、ローラー26との固着個所から、下流側へ向かって緩やかに螺旋形状を描いて巻き付くように、羽根材41を設けてもよい。
【0064】
このような構成からなる両羽根材41R・41Lを通過した後は、両先端ローラー46R・46Lの間隙部に挟まれることによって、玉葱6の根は揃えられた状態を確実に保持され、根切断部16へと搬送されていく。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の一実施例に係る鱗茎菜類調製機の全体的な構成を示した正面図。
【図2】同じく側面図。
【図3】同じく図1に示す矢印Aから見た断面側面図。
【図4】同じく図1に示す矢印Bから見た断面平面図。
【図5】本発明における根切断部近傍を示した側面図。
【図6】同じく下方から見上げた斜視図。
【図7】本発明における根伸ばし部を示した正面図。
【図8】同じく平面図。
【図9】ローラーの動作を示した正面図。
【符号の説明】
【0066】
1 鱗型菜類調製機
2 搬送部
3 切断部
4 根伸ばし部
6 玉葱
26R ローラー
26L ローラー
41 羽根材
41R 羽根材
41L 羽根材
41a 布状部材
41b 発泡性部材
41c スリット
42 支持部材
43 ベアリング部
44 スプロケット
46R 先端ローラー
46L 先端ローラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鱗茎菜類を搬送する搬送部と、該鱗茎菜類の根および葉を切断する切断部と、該切断部の手前において根を挟んで引き伸ばす根伸ばし部と、を具備する鱗茎菜類調製機であって、前記根伸ばし部は一対のローラーを具備し、該ローラーの外周部表面に、接線方向に沿って複数の羽根材を、一端を自由端として設け、かつ、該羽根材の厚み方向には部分的に複数のスリットを設けることを特徴とする鱗茎菜類調製機。
【請求項2】
前記羽根材は布状部材と、前記ローラーの軸方向に沿って、複数のスリットを接線方向に設けた発泡性部材と、からなり、前記布状部材を、発泡性部材の表面部、或いは、裏面部に貼設したことを特徴とする、請求項1に記載の鱗茎菜類調製機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−113561(P2008−113561A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−296968(P2006−296968)
【出願日】平成18年10月31日(2006.10.31)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】