鳥類から得られた抗体のクローニング方法
本発明は、特定の表面抗原マーカーに富む鳥類細胞の集団からの配列をコードするVH及びVLの同種ペアを接続する手順に関する。この接続手順は、増幅に関連して目的のヌクレオチド配列を接続することができる多重分子増幅手順(多重PCR)を含む。この方法は、特に、同種ペアライブラリーとともに、ニワトリ又は他の鳥からの配列をコードする抗体可変領域のコンビナトリアルライブラリーの作製に有利である。本発明は、キメラヒト/鳥類抗体を作製する方法、及びこのような方法により作製されるライブラリーを発現する方法をも提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の表面抗原マーカーに富む鳥類から得られた細胞の集団からの配列をコードする抗体重鎖及び軽鎖の同種ペアを接続する方法に関する。その方法は、増幅、特にポリメラーゼ連鎖反応(多重PCR)に関連して目的のヌクレオチド配列を接続することができる多重分子増幅手順を含む。その方法は、特に、免疫グロブリンからの配列をコードする可変領域の同種ペアライブラリーのほか、コンビナトリアルライブラリーをも生成するのに有利である。本発明は、キメラヒト/鳥類抗体の生成、及びこのような方法により生成されたライブラリーの発現のための方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
WO2005/042774は、目的のヌクレオチド配列、特に、抗体重鎖可変領域及び軽鎖可変領域(VH及びVL)の同種ペアをコードする配列を接続するための多重分子手順を使用する方法を開示する。目的の配列は、好ましくは、限界希釈法又は他の細胞分離技術に続いて、単離単一細胞から増幅され、接続される。この文献は、リンパ球含有細胞集団を富化し、特に多重分子増幅手順に適した細胞、例えば、形質細胞を産生する/コードする抗体の集団を得るさまざまな方法を開示する。
【0003】
WO2008/104184は、表面抗原CD43及びCD138又はMHCII及びB220を富化する単離単一細胞の集団において実行される多重増幅手順を用いる、マウス又は他のげっ歯類からの配列をコードする免疫グロブリンのライブラリーを生成する方法を開示する。
【0004】
これらの文献に説明された方法は、一般的には、Symplex(商標)技術と呼ばれ、特に、ヒト細胞又はマウス若しくは他のげっ歯類の細胞から得られた配列をコードする可変領域の同種ペアのライブラリーの産生に適している。しかしながら、これらの文献は、ニワトリ又は他の鳥の細胞からの同種ペアのライブラリー又はコンビナトリアルライブラリーの産生の問題に取り組んでいない。一方ではヒト、他方ではニワトリ又は他の鳥の間の系統発生学的相異を考えると、このアプローチは、鳥類抗体、もしくは、好ましくは、キメラヒト/鳥類抗体を産生する目的のために、興味深い。これは、様々なヒト疾患及び病状の処置のための治療抗体が、しばしば、マウスから産生され、しかし、マウスとヒトは、比較的に、近接に関連した種であるから、ヒト疾患及び病状におけるヒト抗原に対する最適な抗体がマウス又は他の哺乳動物種において産生されることができないかもしれないヒト疾患及び病状があるかもしれないという事実による。これは、特に、癌又は自己免疫疾患の処置を目的とするヒト自己抗原を標的とする抗体にあてはまるかもしれない。このような場合には、ニワトリや他の鳥などのヒトから系統発生学的に遠い種から目的の抗体を単離することができることが有利でありうる。本発明は、究極的には、新規で有用な抗体処置を特定することができるようにするために、ヒト治療法として使用するための潜在的な目的抗体を産生する鳥類細胞をいかにして単離するかという問題に取り組む。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、鳥からの配列をコードする免疫グロブリンのライブラリーを作製する方法、及びヒト定常領域及び鳥類可変領域を含むキメラ抗体をコードするベクターのライブラリーを作製する方法に焦点を合わせる。本発明の方法は、比較的少ない段階を含み、ハイスループットスクリーニング及びクローニングに適している。
【0006】
最初の側面において、本発明は、接続された可変領域をコードする配列を含む同種ペアのライブラリーを製造する方法であって、
a) 鳥類起源のドナーからのリンパ球含有細胞分画の提供、
b) 前記細胞分画から細胞を個別に複数の容器に分配することによる、単離単一細胞の集団の取得(ここで、少なくとも該細胞の亜集団は、免疫グロブリン遺伝子、及び所望により任意の鳥類B細胞マーカー抗原を発現する)、及び
c) 多重分子増幅手順において単離単一細胞又は同系細胞の集団由来のテンプレートを用いて目的のヌクレオチド配列を増幅し、そして増幅された目的のヌクレオチド配列の接続を達成することによる、前記単離単一細胞の集団に含まれる可変領域をコードする配列の増幅及びそれらの接続の達成
を含む方法に関する。
【0007】
この方法は、抗体又は抗体断片の同種ペアのライブラリーを提供する。
【0008】
本発明の別の側面は、複数の目的の非隣接ヌクレオチド配列をランダムに接続する方法であって、
a)多重分子増幅手順において遺伝的に多様な細胞の集団由来のテンプレートを用いた、目的のヌクレオチド配列の増幅(ここで、前記遺伝的に多様な細胞は、鳥類起源のドナーからのリンパ球含有細胞分画に由来し、少なくとも該細胞の亜集団は、免疫グロブリン遺伝子、及び所望により任意の鳥類B細胞マーカー抗原を発現する)、及び
b)段階a)において増幅された目的のヌクレオチド配列の接続の達成
を含む方法に関する。
【0009】
この方法は、ランダムに結合された重鎖及び軽鎖可変領域をコードするドメインのコンビナトリアルライブラリーを提供する。
【0010】
免疫グロブリンを発現する本発明の細胞の亜集団は、次のいずれかによって特に特徴づけられてもよく、次のいずれかを評価され及び/又は次のいずれかを富化していてもよい。
・ IgYの発現(IgY+)、
・ IgYの発現、及びCD3陰性(IgY+ CD3−)、
・ IgYの発現、Bu−1の非又は低発現、及びCD3陰性(IgY+ Bu−1− CD3−)、
・ Bu−1の発現、及びIgYの発現(Bu−1+ IgY+)、
・ Bu−1の発現、IgYの発現、及びCD3陰性(Bu−1+ IgY+ CD3−)、
・ Bu−1の発現、及び単球マーカーの非発現(Bu−1+、単球−)、
・ Bu−1の発現、及びIgMの非又は低発現レベル(Bu−1+ IgM−)、又は
・ Bu−1の発現、及びBAFFの発現(Bu−1+ BAFF+)。
【0011】
細胞の亜集団は、特に、鳥類免疫グロブリンIgYの発現により特徴づけられる。IgYのような免疫グロブリン遺伝子を発現する細胞の亜集団も検出可能なレベルの少なくとも1つの鳥類B細胞マーカー抗原を発現するであろうことが想定されうるように、この亜集団は、任意の1又は複数の鳥類B細胞マーカー抗原の発現及び/又は発現の欠損によって、さらに特徴づけられてもよい。亜集団は、このように、発現、所望により、任意の1又は複数の鳥類B細胞マーカー抗原の検出できるレベルの特定の発現のレベルに関して、及び/又は任意の1又は複数の鳥類B細胞マーカー抗原の発現の欠損に関して、定義されてもよく、ここで、鳥類B細胞マーカー抗原は、1又は複数のBu−1、CD3、IgM又はBAFFを例えば含んでもよい。特定の実施態様において、亜集団は、IgYの発現によって、及びCD3陰性(CD3−;すなわち、CD3の発現がない又は無視できる)であることによって、特徴付けられる。さらに特定の実施態様において、亜集団は、IgYの発現によって、Bu−1の非又は低発現によって、及びCD3陰性であることによって、特徴づけられる。
【0012】
他の目的のマーカー抗原は、例えば、CD19、CD20、CD27、CD38、又はCD45のようなヒトB細胞のマーカーの鳥類オーソログ;またはMHCII、B220、CD43、又はCD138のようなネズミB細胞マーカーの鳥類オーソログ;またはこれらのマーカーの組み合わせをも含んでもよい。本明細書において提供される実験的データは、IgYの発現に基づきニワトリ由来の脾細胞から単離された細胞集団が、任意にBu−1及び/又はCD3などの表面抗原の発現又は発現欠損の分離と組み合わされて、抗体をコードする配列の多重分子増幅方法を用いたクローニングのための良好な出発材料を提供することを確立する。本発明の方法は、IgYのオーソログおよび任意に他の鳥類B細胞マーカー抗原を発現する他の種に容易に適用することができる。この方法は、特に、他の鳥類種、例えば、アヒル、ガチョウ、ハト又は七面鳥に適用することができる。
【0013】
さらに、本発明の方法は、一度、特定の抗体が、選択されたら、それが、クローニングされ、その配列が決定され、そして、それが容易に組換え抗体の産生のための適当な発現ベクターに輸送することができるような、発現、輸送、ディスプレイ又はシャトルベクターなどのベクターに容易に配列及び/又は挿入することができるポリヌクレオチドのライブラリーを提供する。
【0014】
本明細書において開示されたプロトコルによって分離された細胞は、潜在的には、ピコモルの範囲における親和性を有する高親和性抗体の原料を提供することができるであろうことが予想される。ハイブリドーマからのモノクローナル抗体は、ピコモルの範囲における親和性を有さないかもしれず、その場合には、このような親和性に達するために合成的に親和性が成熟していることが必要であろう。
【0015】
1つの実施態様において、これらの方法は、さらに、多重分子増幅の前に、リンパ球含有細胞の集団が、鳥類免疫グロブリン遺伝子、特に、IgYの発現によって、及び所望により、以下に説明する基準に従う1又は複数の鳥類B細胞表面マーカー、好ましくは、CD3及び/又はBu−1の発現(存在又は不存在、又は特定の発現レベル)によって定義される細胞を含むことを評価すること、例えば、集団が、検出可能なレベルのIgY及び/又はBu−1を発現する細胞を含むことを評価することを含む。また、この方法は、IgYの発現、並びに鳥B細胞表面マーカー、好ましくは、上で説明したようなCD3及び/またはBu−1の1又は組み合わせの発現及び/又は発現欠損に関して定義されるリンパ球集団のための前記リンパ球含有細胞分画の富化を多重分子増幅前に含んでよく、例えば、IgYを発現し、Bu−1及び/又はCD3などの発現または発現欠損によって特徴づけられる細胞の富化を含んでもよい。特定の実施態様において、集団は、IgYを発現する細胞について評価され、及び/又は富化される。別の特定の実施態様において、集団は、IgYを発現し、CD3陰性である、又はIgY及びBu−1を発現する、又はIgYを発現し、非又は低レベルのBu−1を発現する細胞について評価し、及び/又は富化してもよい。
【0016】
好ましくは、この方法は、多重分子増幅の前に、免疫グロブリン遺伝子及び鳥類B細胞抗原を発現する単一細胞の、前記リンパ球含有集団からの単離をさらに含む。好ましい実施態様において、単離単一細胞又は細胞の亜集団は、陽性若しくは陰性、又はリンパ球含有細胞分画と比較した高、中間、若しくは低としてのIgY、Bu−1、及び/又はCD3の発現プロファイルによって(すなわち、上で説明した基準に従って)特徴づけられる。好ましい実施態様において、単離単一細胞又は細胞の亜集団は、IgY+及び/又はBu−1+であり、好ましくは、IgY+であり、例えば、CD3−/Bu−1−/IgY+である。富化又は単離は、好ましくは、フローサイトメトリー、特に蛍光活性化細胞分離(FACS)などの自動分離手順を含む。代わりに、分離は、磁気ビーズ細胞分離(MACS)を用いて実行してもよい。
【0017】
さらなる側面において、本発明は、ヒト定常領域及び非ヒト可変領域を有するキメラ抗体をコードするベクターを作製するための方法であって、
a) 鳥類起源のドナーからのリンパ球含有細胞分画の提供、
b) 前記細胞分画から細胞を個別に複数の容器に分配することによる、単離単一細胞の集団の取得、
c) 多重分子増幅手順において単離単一細胞又は同系細胞の集団由来のテンプレートを用いて単離単一細胞の集団に含まれる可変領域をコードする核酸を増幅し、そして増幅された重鎖及び軽鎖の可変領域をコードする核酸の接続を達成することによる、前記核酸の増幅及びそれらの接続の達成;
d) ヒト定常領域への増幅された可変領域の接続の達成;及び
e) ベクターへの取得された核酸の挿入、
を含む方法に関する。
【0018】
好ましくは、鳥種は、ニワトリである。本発明の方法が、ニワトリ/メンドリ由来の細胞に適用される限りにおいて、この方法は、ニワトリSymplex(商標)又はchSymplex(商標)と名づけられる。
【0019】
本発明のこの側面によって、キメラヒト/鳥類抗体のライブラリーの作製のための新規の方法が提供される。これは、多重分子増幅と、ヒト重鎖及び軽鎖定常ドメインのライゲーション及び/又はスプライシングを用いたベクターバックボーンへの次のクローニングとを組み合わせることによって可能になる。伝統的には、キメラヒト/鳥類抗体を産生する方法においては、キメラ化は、ハイブリドーマが確立され、スクリーニングされ、コードする配列がクローニングされた後の最終段階であった。キメラ化は、抗体の結合特異性及び/又は親和性に影響するかもしれず、したがって、ヒト/ニワトリ抗体へキメラ化された場合には、良好なモノクローナルニワトリ抗体がその効能を失うであろうリスクがある。
【0020】
キメラ抗体の抗体レパートリーを直接的に産生する方法の条件によって、スクリーニングは、前臨床及び臨床開発の前に修正する必要がないかもしれない生成物において実行することができる。
【0021】
定常ヒト領域は、分子増幅段階において提供することができ、あるいは、分子増幅に続いて可変領域がクローニングされるベクターバックボーンの部分として提供することができる。好ましい実施態様において、この方法は、順にニワトリVH鎖、リンカー、ニワトリVL鎖、及びヒト定常軽鎖を含むコンストラクトを増幅することができるプライマーセットとともに、可変軽鎖への接続を提供することができるオーバーラップを有するヒト定常軽鎖をコードするポリヌクレオチド、又はその断片をPCR混合物に添加するさらなる増幅段階を含む。
【0022】
別の実施態様において、この方法は、順にヒト定常重鎖、ニワトリVH鎖、リンカー、及びニワトリVL鎖を含むコンストラクトを増幅することができるプライマーセットとともに、可変重鎖への接続を提供することができるオーバーラップを有するヒト定常重鎖をコードするポリヌクレオチド、又はその断片をPCR混合物に添加するさらなる増幅段階を含む。
【0023】
したがって、それぞれの抗体メンバーが、鳥類免疫グロブリン可変領域をコードする配列、及びヒト免疫グロブリン重鎖及び軽鎖定常領域からなる、キメラ抗体をコードするベクターのライブラリーも提供される。
【0024】
好ましくは、ベクターは、抗原特異性のための次のスクリーニングのために、ライブラリーの抗体メンバーの発現を可能とする発現ベクターである。より好ましくは、発現ベクターは、哺乳動物発現のためのものである。ライブラリーのベクターは、本発明の方法によって得てもよい。
【0025】
1つの実施態様において、軽鎖定常領域は、ヒトラムダ又はカッパ定常領域である。
【0026】
鳥類配列は、任意の鳥類起源のドナーからであってよく、ここで、そのための配列情報は適切なプライマーの設計を可能とするために得ることができ、そのための適切な細胞分離技術は、可変領域配列の同種ペアを連結するための単一細胞多重分子増幅のための抗体を産生又はコードする細胞の分離を可能とする。
【0027】
好ましくは、抗体の可変領域は、同種ペアである。
【0028】
別の側面において、本発明は、本発明によるライブラリーから選択される特定の標的に対して所望の結合特異性を示す抗体をコードするサブライブラリーに関する。
【0029】
さらなる側面において、本発明は、ウェルの大多数において、鳥類ドナーからのリンパ球含有細胞分画からの1つの細胞(ここで、前記細胞は、IgY及び/又はBu−1抗原を含む免疫グロブリン遺伝子を発現する)、並びにmRNAの逆転写を実行するために必要な、及び可変重鎖及び軽鎖をコードする領域を増幅するために必要な緩衝液及び試薬を含む、多重プレートを提供する。
【0030】
さらなる側面において、本発明は、鳥起源免疫グロブリン可変領域をコードする配列のライブラリーを製造する方法であって、
a) 鳥類起源のドナーからのリンパ球含有細胞分画の提供、
b) 前記細胞分画から細胞を個別に複数の容器に分配することによる、単離単一細胞の集団の取得(ここで、少なくとも該細胞の亜集団は、免疫グロブリン遺伝子、例えば、IgY、及び所望により少なくとも1つの鳥類B細胞マーカー抗原を発現する)、及び
c) 多重分子増幅手順において単離単一細胞又は同系細胞の集団由来のテンプレートを用いて目的のヌクレオチド配列を増幅することによる、前記単離単一細胞の集団に含まれる可変領域をコードする配列の増幅
を含む方法を提供する。
【0031】
この方法によって、鳥起源免疫グロブリン可変領域をコードする配列のライブラリーは、本明細書において一般的に説明したように、鳥類免疫グロブリン遺伝子を発現する細胞の亜集団から取得されてもよい。この方法は、同種ペアのライブラリー、すなわち、鳥起源抗体又はその断片のライブラリーを取得するように、重鎖及び軽鎖可変領域をコードする配列の接続を達成するさらなる段階を含んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】ニワトリ可変領域の多重RT−PCR及びネスト増幅の原理。次のプライマー略称を用いる:CH−HCrev:ニワトリIgY重鎖定常領域アンチセンスプライマー、CH−VH: ニワトリ重鎖可変領域5’センスプライマー、CH−VL:ニワトリ軽鎖可変領域5’センスプライマー、CH−LCrev:ニワトリ軽鎖定常領域アンチセンスプライマー、CH−JH:ニワトリ重鎖J−領域アンチセンスプライマー、CH−JL:ニワトリ軽鎖J−領域アンチセンスプライマー。
【図2】ヒト重鎖及び軽鎖定常領域を重複伸長PCRによって付加し、ベクターバックボーンにクローニングし、哺乳動物プロモーターリーダー断片を付加する原理。ヒト重鎖及び軽鎖定常領域は、適当なJ領域のための重複を有して、増幅される。次のプライマー略称を用いる:hCHC−R:ヒトIgG1定常領域3’アンチセンスプライマー、hL−R: ヒトラムダ定常領域3’アンチセンスプライマー。
【図3】脾細胞のこの集団のうち、3つのゲートが設定された。(1)Bu−1+CD3−細胞(左上)、(2)中間集団、P2(Bu−1低CD3−/低)、(3)Bu−1−CD3−細胞(左下)。図3〜9は、様々な表面マーカー(Bu−1、CD3、IgY、及びTT特異的IgY)で染色したニワトリ脾細胞のドットプロットを示す。ニワトリを破傷風トキソイドで免疫付与し、不完全フロインドアジュバント(IFA)中のTTでの3度目の追加免疫の10日後に脾臓を採取した。実施例1を参照のこと。
【図4】Bu−1+CD3−細胞のうち、追加のIgY+ゲートが含まれた。
【図5】Bu−1+CD3−IgY+細胞のうち、TT+細胞がゲートされた。
【図6】Bu−1−CD3−細胞のうち、追加のIgY+ゲートが含まれた。
【図7】Bu−1−CD3−IgY+細胞のうち、TT+細胞がゲートされた。
【図8】中間集団のうち、P2、新たなゲートが、IgY+細胞(P3)として定義された。
【図9】Bu−1低CD3−/低IgY+細胞(P3)のうち、TT+細胞がゲートされた。
【図10】図10は、実施例4から予測される電気泳動の移動度を有する21のSymplex反応生成物を含むアガロースゲルを示し、そこでは、キメラニワトリヒト抗破傷風トキソイド抗体レパートリーがクローニングされた。サイズマーカー(500、1000、1500など。塩基対バンド)も示す。
【図11】図11は、精製ニワトリVH−VL、ヒトラムダ軽鎖定常領域およびヒトIgG1重鎖定常領域をコードする配列の混合物において実行された重複伸長PCR後の反応生成物(約2kb重複バンド)を示す。
【図12】図12は、Symplex PCRによって、破傷風トキソイドで免疫付与されたニワトリからの脾臓B細胞から単離された抗体からランダムに選択された10のクローンからのVH領域のアラインメントを示す。隣接フレームワークおよびヒトHC定常領域の短い広がりを有するCDR3領域を示す。示す配列は、上から下へ、配列番号13〜配列番号22の部分配列である。
【図13】図13及び14は、5つの破傷風トキソイド特異的クローンのVH(図13)及びVL(図14)のCDR3領域のアラインメントを示す。図13:VH CDR3 アラインメント;配列は、上から下へ、配列番号23〜27の配列である。
【図14】図14:VL CDR3 アラインメント;配列は、上から下へ、配列番号28〜32の配列である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明は、鳥からの抗体ベクターの収集を提供するための、WO2005/042774に開示される一般的な増幅および接続方法を用いるためのさらなる可能性を提供する。これらの改善は、ハイスループット形式における使用に適した可変領域の同種ペアを有するヒト/鳥類キメラ抗体をコードする配列のクローニングを可能にする。これは、増幅および接続プロセスのための新たな出発材料を提供し、可変領域の同種ペアを有するキメラヒト/鳥類抗体のライブラリーの作製のための方法を提供することによって達成される。
【0034】
本発明の1つの側面は、多重分子増幅手順において、単離単一細胞、同系細胞の集団または遺伝的に多様な細胞の集団由来のテンプレートを用いて、関連する鳥類ヌクレオチド配列を増幅し、続いて、増幅された配列の接続を達成することによって、重鎖および軽鎖可変領域配列を連結する方法である。
【0035】
定義
用語「同種ペア」は、単一細胞の中に含まれる、あるいは単一細胞に由来する目的の非隣接核酸の原初のペアを表す。好ましい実施態様において、同種ペアは、ともに結合タンパク質可変ドメインをコードし、同一の細胞に由来する2つの可変領域をコードする配列を含む。このように、完全結合タンパク質、またはその安定的断片のいずれかとして発現された場合、それらは、この細胞から原始的に発現した結合タンパク質の結合親和性および特異性を保存する。同種ペアは、例えば、同一の細胞からの可変軽鎖をコードする配列と結合した抗体可変重鎖をコードする配列、あるいは同一の細胞からのβ鎖をコードする配列と結合したT細胞受容体α鎖をコードする配列でありうる。同種ペアのライブラリーは、このような同種ペアの収集物である。
【0036】
用語「同系細胞集団」は、遺伝的に同一の細胞の集団を表す。特に、単離単一細胞のクローン性増殖によって生成された同系細胞集団は、本発明における関心の対象である。
【0037】
用語「単離単一細胞」は、細胞の集団から物理的に分けられた細胞をいい、「単一の容器における単一の細胞」に対応する。複数の容器のなかで個別に細胞集団を分配する場合、単離単一細胞の集団が得られる。「テンプレート源」と題するセクションに特定されるように、単一細胞の集団とみなされるためには、単一細胞を有する容器の比率は、必ずしも100%でなければならないわけではない。
【0038】
細胞の表面上の抗原マーカーの発現レベルの文脈における用語「高」、「中間」および「低」は、任意の所与の分析または分離手順における分析された細胞の全部の集団と比較した、細胞の小集合の相対的蛍光強度に基づく相対的測定である。細胞の「陰性」集団は、しばしば、下の蛍光強度によって、約103平均蛍光ユニットと定義される。「低」として指定される細胞集団の分画は、陰性集団に類似してよいが、「中間」細胞集団のちょうど下であってもよい。ここで、中間集団は、低細胞集団よりも高いが、最高の蛍光強度(これは、しばしば、約104平均蛍光ユニットを超える)を与える細胞分画よりも少ない蛍光強度を有する。高、中間、低または陰性の定義は、個別の分析に関連し、ここで引用される平均蛍光ユニット値は、典型的であるが必ずしも限定的ではない典型値であることは強調されるべきである。これは、FACSなどのフローサイトメトリー技術の当業者によって理解され、その当業者は、任意の特定のフローサイトメトリー手順の結果を容易に明らかにすることができるであろう。
【0039】
増幅に関して、用語「連結」又は「接続」は、目的の核酸配列をコードする増幅された核酸配列を、単一の部分に結合することをいう。同種ペアに関連して、単一部分は、可変ドメインをコードする核酸配列、例えば、抗体軽鎖可変領域と結合した抗体重鎖可変領域をコードする配列を含み、ここで、2つの可変領域をコードする配列は、同一の細胞に由来する。接続は、増幅と同時に、あるいは、増幅に続く別異の段階としてのいずれかで達成されうる。部分の形式または機能に関しては、必要な条件はなく、それは、直線、円状、単鎖または二本鎖でありうる。目的の核酸配列の1つが、所望ならば部分から単離されてもよいように、接続は、必ずしも永続的ではない。可変領域をコードする配列の1つは、たとえば、同種ペア部分から単離されてよい。しかしながら、同種ペアを構成する原初の可変領域が他の可変領域とスクランブルされないかぎり、それらは、互いに単一部分に連結されないかもしれないが、それらは、いまだに同種ペアとみなされる。接続は、好ましくは、ヌクレオチドリン酸ジエステル接続である。しかしながら、接続は、異なる化学的交差連結手順によっても得られうる。
【0040】
用語「多重分子増幅」は、2又はそれ以上の標的配列を、同一の反応において同時に増幅することをいう。適した増幅方法は、ポリメラーゼ鎖反応(PCR)、リガーゼ鎖反応(LCR)(Wu and Wallace,1989,Genomics 4,560−9)、ストランド置換増幅(SDA)技術(Walker et al.,1992,Nucl.Acids Res. 20, 1691−6)、自立配列複製(Guatelli et al.,1990,Proc.Nat.Acad.Sci.USA,87,1874−8)、および核酸ベース配列増幅(NASBA)(Compton J.,1991,Nature 350,91−2)を含む。最後の2つの増幅方法は、等温転写に基づく等温反応を含み、単鎖RNA(ssRNA)および二本鎖DNA(dsDNA)の両方を生成する。
【0041】
用語「多重PCR」は、同一の反応において1を超えるプライマーセット(例えば、同一のPCR反応における、重鎖可変領域の増幅に適合した1つのプライマーセットと、鳥類軽鎖可変領域の増幅に適合した1つのプライマーセット)を含むことにより、2またはそれ以上の標的配列が同時に増幅されるPCRの変形を表す。
【0042】
用語「多重RT−PCR」は、逆転写(RT)段階が先行する多重PCR反応をいう。多重RT−PCRは、多重PCRの前に別異のRT段階を有する2段階過程として、またはRTと多重PCRの両方のための全ての成分が単一の容器において組み合わされた単一段階過程としてのいずれかで実行されうる。
【0043】
用語「多重重複伸長PCR」および「多重重複伸長RT−PCR」は、標的配列を増幅するために多重重複伸長プライマーミックスを利用して、これにより同時増幅および標的配列の接続を可能として、多重PCRまたは多重RT−PCRが実行されることを暗示する。
【0044】
用語「複数の容器」は、細胞の集団からの単一細胞の物理的分離を可能とする任意の物体(または物体の収集物)を表す。これは、チューブ、マルチウェルプレート(例えば、96−ウェル、384−ウェル、マイクロタイタープレート、または他のマルチウェルプレート)、アレイ、マイクロアレイ、マイウロチップ、ゲル、またはゲルマトリックスでありうる。好ましくは、物体は、PCR増幅に適用できる。用語「チューブ」または「容器」は、本明細書においては、同意で用いられうる。
【0045】
本明細書において、用語「ポリクローナルタンパク質」又は「ポリクローナル性」は、異なる、しかしながら同種であり、好ましくは、免疫グロブリンスーパーファミリーから選ばれるタンパク質分子を含むタンパク質組成物を意味する。このように、それぞれのタンパク質分子は、組成物の別の分子と同種であるが、ポリクローナルタンパク質の個別のメンバーの間のアミノ酸配列における相異により特徴づけられる少なくとも1つの可変ポリペプチド部分配列も含む。このようなポリクローナルタンパク質の知られた例には、抗体または免疫グロブリン分子、T細胞受容体およびB細胞受容体が含まれる。ポリクローナルタンパク質は、所望の標的に対する共有した結合活性などのような共通の特徴によって定義されたタンパク質分子の定義された部分、例えば、所望の標的抗原に対する結合特異性を示すポリクローナル抗体で構成されてもよい。
【0046】
本明細書において、用語「免疫グロブリン」及び「抗体」は、同意味に用いられうる。
【0047】
本明細書において用語「遺伝的に多様な細胞の集団」は、個別の細胞が互いにゲノムレベルで異なる細胞集団を意味する。このような遺伝的に多様な細胞の集団は、例えば、ドナーに起源がある細胞、あるいは、このような細胞の分画(例えば、Bリンパ球又はTリンパ球含有細胞分画)の集団であってよい。
【0048】
用語「プライマーペア」は、目的のヌクレオチド領域の増幅を開始することができる2つのプライマーを表し、他方、用語「プライマーセット」は、互いに目的のヌクレオチド配列の増幅を開始することができる2又はそれ以上のプライマーを表す。プライマーセットは、このように、少なくとも1つのプライマーペアを含むが、2を超えるプライマーを含んでもよく、しばしば多重プライマーペアを含むであろう。本発明のプライマーセットは、可変領域をコードする配列を含むヌクレオチド配列のファミリーを開始するように設計されてもよい。異なるファミリーの例は、抗体カッパ軽鎖、ラムダ軽鎖および重鎖可変領域である。可変領域をコードする配列を含むヌクレオチド配列のファミリーの増幅のためのプライマーセットは、しばしば、いくつかのプライマーが変性したプライマーでありうる複数のプライマーを構成する。
【0049】
用語「配列同一性」は、2つの配列の最短の長さについての2つの核酸配列の間の同一性の度合を示すパーセンテージとして表現される。これは、(Nref − Ndif)×100%/Nrefとして計算することができ、ここで、Nrefは、配列の短い方における残基の数であり、Ndifは、2つの配列の間で一致を最適に配列したNref長における非同一残基の全体数である。例えば、DNA配列AGTCAGTCは、配列TAaTCAaTC(Ndif=2、Nref=8)(下線は、最適なアラインメントを示し、小文字のaは、8のうちの2つの非同一残基を表す)と、75%の配列同一性を有するであろう。
【0050】
接続に関しての用語「ランダムに」又は「ランダム」は、同一細胞に由来するわけではないヌクレオチド配列の接続を意味する。もし、目的のヌクレオチド配列が、可変領域をコードする配列であるならば、これは、連結された配列のコンビナトリアルライブラリーをもたらすであろう。他方、もし、目的のヌクレオチド配列が、多様でない異種タンパク質をコードするならば、ランダムに連結された配列は、単一細胞から連結された配列に類似するように見えるであろう。
【0051】
逆転者の文脈において用語「単離単一細胞に由来するテンプレート」は、このような単離細胞のなかの核酸に関する。核酸は、例えば、mRNA又は他のRNA、あるいはゲノム又は他のDNAの形式でありうる。核酸は、細胞から単離されるか、あるいは無傷である又は溶解した細胞の他の内容物に関係するかのいずれかでありうる。
【0052】
用語「Bu−1」は、特異的ニワトリ表面抗原を意味し、類義語として、chB6及びBu1も知られる。2つの異なる高度に同種のニワトリBu−1タンパク質が知られている。これらは、Bu−1a(Uniprot accession No.Q90746)及びBu−1b(Uniprot accession No.Q90747)と呼ばれる。いずれも、全長335のアミノ酸残基を有し、2つの配列は、ほんのわずかの残基を除き、同一である。本明細書においては、用語「Bu−1」は、Bu−1a及びBu−1bのいずれをもカバーすることが意図されている。
【0053】
用語「IgY」は、ニワトリにおける主要な血清免疫グロブリンを意味し、同義語として、ニワトリIgGも知られる。
【0054】
用語「BAFF」は、B細胞活性化因子を意味し、同義語として、BlyS、TALL−1、THANK及びzTNF4も知られる。
【0055】
本明細書において、用語「鳥類」及び「鳥」は、同意味に用いることができ、また、例えば、ニワトリ、アヒル、ガチョウ、ハト、及び七面鳥を含むことが意図されている。本発明において用いられる好ましい鳥は、ニワトリである。
【0056】
本明細書において用語「ニワトリ」は、一般的には、セキショクヤケイ種のメンバー、特に家畜化されたニワトリである部分種ニワトリを意味し、メンドリおよびオンドリの両方、すなわち、メスおよびオスの両方を含むことが意図される。
【0057】
「chVH」などの用語において用いられる場合、文字「ch」は、ニワトリ由来の配列を意味する。
【0058】
本明細書において用語「オーソログ」は、共通の祖先から進化した2又はそれ以上の種における遺伝子を意味する。例えば、ヒトB細胞マーカーのオーソログをコードする鳥類遺伝子は、一般的には、オーソログのヒト遺伝子によりコードされるタンパク質と同一の又は類似する機能を有するタンパク質をコードするであろう。
【0059】
用語「高温開始ポリメラーゼ」は、逆転写のために用いられる温度で不活性である、または非常に低い活性を有するポリメラーゼを表す。このようなポリメラーゼは、機能的になるように、高温(90〜95℃)によって活性化させる必要がある。これは、逆転写反応でのポリメラーゼの干渉を阻害するので、例えば、単一段階RT−PCR過程において利点である。
【0060】
目的の配列
本発明に従い連結してもよい目的のヌクレオチド配列は、その発現産物がタンパク質又はタンパク質の部分である異なるサブユニット又はドメインをコードする配列から選択することができる。特に、コードされるタンパク質又はその部分は、異種タンパク質、すなわち少なくとも2つの非同一サブユニットを含むタンパク質である。このようなタンパク質が属するいくつかのクラスは、例えば、酵素、インヒビター、構造タンパク質、毒素、チャネルタンパク質、Gタンパク質、受容体タンパク質、免疫グロブリンスーパーファミリータンパク質、輸送タンパク質などである。このような異種タンパク質をコードするヌクレオチド配列は、非隣接であり、これは、それらが、例えば、異なる遺伝子、あるいは異なるmRNA分子に由来することを意味する。しかしながら、本発明の文脈において使用される非隣接は、同一のタンパク質のドメインをコードするヌクレオチド配列をも意味してもよく、ここで、ドメインは、目的でないヌクレオチド配列によって分離される。
【0061】
本発明の1つの実施態様において、目的のヌクレオチド配列は、免疫グロブリン(抗体)又はB細胞受容体などの免疫グロブリンスーパーファミリーからの可変領域をコードする配列を含む。免疫グロブリンからの可変領域をコードする配列は、特に興味深い。このような可変領域をコードする配列は、完全長抗体だけでなくその断片、例えば、Fabs、Fvs、scFvs、又は可変領域をコードする配列の断片の組み合わせ、例えば、相補性決定領域(CDRs)、結合遺伝子又はV遺伝子又はこれらの組み合わせを含む。一般的には、本発明は、可変領域をコードする配列およびその断片の任意の組み合わせに適用することができる。例えば、本発明は、抗体重鎖および軽鎖の可変ドメインの接続を可能とし、これにより、Fv又はscFvをコードする配列を産生し、あるいは、例えば、重鎖可変領域+定常領域ドメインCH1+ヒンジ領域の部分への完全軽鎖の接続を可能とし、これによりFab、Fab’又はF(ab)2を産生する。さらに、重鎖定常領域ドメインの任意の領域を可変重鎖に付加することが可能であり、これにより、完全長抗体をコードする配列又は切断された抗体をコードする配列が産生される。本発明の1つの側面において、非ヒト、鳥由来可変配列が、ヒト定常領域に連結され、キメラヒト/鳥類抗体が産生される。
【0062】
テンプレート源
本発明は、単離単一細胞(それぞれの個別の細胞は、単一ウェル又は他の容器に位置する)、同系細胞の集団、又は単一容器に分けられなかった遺伝的に多様な細胞集団に由来するヌクレオチド配列の接続を可能にする。
【0063】
目的の核酸配列スクランブル、すなわち、異なる細胞に由来する配列の接続を避けるため、本発明の好ましい特徴は、単離単一細胞又は同系細胞の集団をテンプレート源として使用することである。これは、目的が可変領域をコードする同種ペア又はCDRをコードする配列を得ることである、抗体可変領域をコードする配列の場合には特に重要である。
【0064】
好ましくは、本発明は、Bリンパ球などのリンパ球、形質細胞及び/又はこれらの細胞系列の様々な発生段階を含む細胞分画からの単一細胞又は単一細胞の集団において実行される。免疫グロブリンスーパーファミリーからの結合タンパク質を発現する他の細胞集団も、単一細胞を得るために使用してよい。ハイブリドーマ細胞などの細胞株、Bリンパ球系列の細胞株、又は免疫応答に参加するウイルス不死化細胞株若しくはドナー起源細胞も、本発明において使用してよい。ドナー起源リンパ球含有細胞分画は、このような細胞が豊富である自然組織又は体液、例えば、血液、骨髄、リンパ節、脾臓組織、扁桃組織、ファブリーキウス嚢において、あるいは、腫瘍又は炎症組織浸潤における及びその周囲の浸潤から得てもよい。好ましくは、脾臓組織、血液、ファブリーキウス嚢又は骨髄が用いられる。ドナーは、所望の標的に関して、未感作又は高度免疫の鳥のいずれかでありうる。特に好ましい実施形態において、ドナーは、癌又は炎症疾患、例えば、EGFR又はTNFαに関係するヒトタンパク質などのヒト自己抗原で免疫付与されたニワトリ又は他の鳥である。
【0065】
ドナーは、ヒト抗体可変重鎖及び軽鎖に由来する、あるいはそれと顕著に類似性がある免疫グロブリンを産生することができるヒト免疫グロブリン配列を有するトランスジェニック鳥、好ましくは、トランスジェニックニワトリであってもよい。特異的標的に対するヒト抗体は、標準的な免疫付与技術を用いる所望の抗原でのこのようなトランスジェニック鳥の免疫付与によって得ることができる。これは、ヒトにより密接に関係する例えばマウス又は他の動物を用いて抗体を産生することが困難である又は不可能である標的に対する抗体をコードするライブラリーの産生を可能にする。このアプローチは、例えば、自然ヒト抗体応答がない又はごくわずかな応答しかないヒト抗原の場合に特に有用であると想定される。
【0066】
ニワトリ、特に、トランスジェニックニワトリ、又は他の鳥のドナーとしての使用は、それらがマウス又は他の哺乳動物からの抗体応答と比較して代替ヒト応答を提供する点において有利であると期待される。ニワトリ/鳥およびヒトの間の遠位系統発生的関係は、鳥よりもヒトにより密接に関係する種、例えば、マウス、ラット、又は非ヒト霊長目において、配列相同性のために免疫原性でないであろうエピトープに対する抗体応答を可能にする。ニワトリ抗体応答によって得ることができることを意図する拡張した多様性は、治療的潜在的可能性とともに同定された抗体の頻度が増大し、さらにヒト及びマウス抗原オーソログの間で交差反応性である抗体の同定が可能となり、それが、マウス疾患モデルにおける前臨床研究を促進しうるという潜在的可能性を有する。
【0067】
1つの実施態様において、リンパ球含有細胞分画は、ドナーから得られた全血、骨髄、単核細胞又は白血球を含む。単核細胞は、血液、骨髄、リンパ節、脾臓、ファブリーキウス嚢、腫瘍細胞の周囲の浸潤、又は炎症性浸潤から単離することができる。単核細胞は、密度遠心分離技術、例えば、フィコール比重によって単離することができる。もし、単核細胞が組織からなる試料から単離されるならば、その組織は、密度遠心分離が実行される前に分解される。分解は、例えば、グラインディング、電気穿孔などの機械的方法、及び/又は酵素処理などの化学的方法によって実行することができる。例えば骨髄又はリンパ球を含む組織の生の調製物も用いることができる。このような調製物は、単一細胞分配を促進するために、例えば、上で説明したように分解することが必要であろう。
【0068】
好ましい実施態様において、リンパ球含有細胞分画、例えば、全血、単核細胞、白血球又は骨髄は、Bリンパ球系列からの細胞などのリンパ球集団に関して富化されている。Bリンパ球の富化は、Bu−1などの系列特異的細胞表面マーカータンパク質、またはIgYなどの他の鳥類B細胞系列特異的マーカーを利用する、磁気ビーズ細胞分離(MACS)又は蛍光活性化細胞分離(FACS)を使用することによって例えば実行される。あるいは、既知のヒト又はネズミB細胞マーカーのニワトリオーソログを用いてもよい。
【0069】
本発明の好ましい特徴は、細胞を個別に複数の容器のうちに分配する前に、さらに形質細胞を得るために富化したBリンパ球を分離することである。形質細胞の単離は、一般的には、IgY、CD3、Bu−1、IgM、単核白血球マーカー及びBAFFなどの表面マーカーの発現プロファイルを利用するMACS分離又はFACS分離によって実行される。上で説明したように、細胞の分離及び選別は、1又は複数のこれらのマーカーの発現の不存在又は存在、例えば、それらを選別又は単離したリンパ球含有細胞集団と比較して発現を低い、中間又は高いと特徴づけることに基づく。他の形質細胞特異的表面マーカー又はその組み合わせ、例えば、CD138、CD43、CD19又はMHC−IIのニワトリオーソログも、利用することができる。マーカーの正確な選択は、例えば、脾臓、ファブリーキウス嚢、扁桃腺、血液、又は骨髄などの形質細胞源のほか、細胞を単離する種に依存する。
【0070】
上で説明したように、本発明における使用に好ましいマーカーは、IgYであり、好ましい実施態様において、選択される細胞は、IgY+である。IgY+細胞に基づくさらに特定の実施態様において、選択される細胞は、IgY+、CD3−であってもよく、それらは、IgY+、Bu−1−、CD3−であってもよい。これに代えてあるいはこれに加えて、細胞は、Bu−1の発現(又は発現の欠如)に部分的に基づき選択されてもよい。Bu−1発現に基づく特定の実施態様は、Bu−1+ IgY+;Bu−1+ IgY+ CD3−;Bu−1+ 単核白血球−;Bu−1+ IgM−;又はBu−1+ BAFF+である細胞の選別である。
【0071】
形質細胞は、これらの源の任意のものから得られた非富化リンパ球含有細胞集団から得ることもできる。血液から単離された形質細胞は、ときに、早期形質細胞又は形質芽球と呼ばれる。本発明の文脈において、これらの細胞も、「形質細胞」であるとみなされる。他のBリンパ球細胞と比較して、高頻度の形質細胞が、所望の抗原に対する後天性免疫性を反映する抗原特異的抗体を産生し、その大半の細胞が、体細胞超変異を経由し、そのために高親和性抗体をコードするので、形質細胞は、免疫グロブリンをコードする配列の同種ペアの単離が要求される。さらに、単一形質細胞を用いるときに逆転写手順がより効率的であるように、形質細胞におけるmRNAレベルは、残りのBリンパ球集団と比較して高められる。形質細胞単離の代替手段として、IgYなどの細胞表面マーカー、又はヒトCD27B細胞表面マーカーのニワトリオーソログの発現レベルを利用して、リンパ球含有細胞分画から記憶B細胞を単離してもよい。
【0072】
1つの実施態様において、富化Bリンパ球は、細胞を複数の容器のうちに分配する前に、抗原特異性によって選択してもよい。抗原特異性Bリンパ球の単離は、富化Bリンパ球を所望の抗原(抗原は複数でもよい)に接触させ、表面露出免疫グロブリンへの抗原の結合を可能とし、続いて、結合物を単離することによって実行される。これは、例えば、所望の抗原(抗原は複数でもよい)のビオチニル化、これに続く適切な細胞分離技術によって行うことができる。形質細胞のほか、Bリンパ球、非富化単核細胞、白血球、全血、骨髄又は組織調製物は、所望ならば、抗原特異性に関する単離を受けうる。
【0073】
特定の表面マーカーを発現する細胞の分離、すなわち陽性選択の代わりとして、特定のマーカーを発現しない細胞を細胞の組成物から欠失させ、実際にマーカーを発現する細胞を残すことがありうる。
【0074】
所望ならば、上で説明した任意の単離細胞分画(例えば、Bリンパ球、形質細胞、記憶細胞)を不死化してもよい。不死化は、例えば、細胞分配の前に実行してもよい。これに代えて、単離単一細胞は、逆転写の前に不死化及び拡大してもよい。
【0075】
1つの実施態様において、所望の細胞集団(例えば、ハイブリドーマ細胞、Bリンパ球系列の細胞株、全血細胞、骨髄細胞、単核細胞、白血球、Bリンパ球、形質細胞、抗原特異的Bリンパ球、記憶B細胞)は、単離単一細胞の集団を得るために、複数の容器に個別に分配される。この単一細胞の単離は、単一容器が単一細胞を含有するという方法での、あるいは、マイクロアレイ、チップ、又はゲルマトリックスが単離単一細胞を引き起こす様式で充填される方法での、細胞集団からの細胞の物理的分離を意味する。細胞は、限界希釈法による単一容器のアレイなどの多重容器に直接に分配してもよい。本発明に利用される単一容器は、好ましくは、PCRに適したもの(例えば、PCRチューブ、及び96ウェル又は384ウェルPCRプレート、又はより大きい容器のアレイ)である。しかしながら、他の容器を用いてもよい。単一細胞を多数の数の単一容器(例えば、384ウェルプレート)に分配する場合、単一細胞の集団が得られる。このような分配は、例えば、単一分量を、平均的に0.5又は0.3細胞の細胞濃度を包含する単一容器に分注し、これにより、主に単一細胞又はそれ以下の細胞を含む容器を得ることによって実行してもよい。限界器釈放による細胞分配は、統計に基づく事象であるので、ある容器の分画は、空であり、主要な分画は、単一細胞を含有し、少数の分画は、2又はそれ以上の細胞を含有するであろう。2又はそれ以上の細胞が容器に存在する場合には、可変領域をコードする配列のある種のスクランブリングが、容器に存在する細胞の間で起こるかもしれない。しかしながら、これはマイナーな事象であるので、これは、本発明の全般的な有用性に影響を与えないであろう。さらに、所望の結合親和性及び特異性を有さない可変領域をコードする配列の組み合わせは、大抵、選別されないであろうし、それゆえ、これらはおそらくスクリーニングプロセスの間で除去されるであろう。それゆえ、スクランブリングのマイナーな事象は、本発明の最終ライブラリーに顕著に影響を与えないであろう。
【0076】
限界希釈による細胞分配の代替手段として、例えば、FACS装置又は正確に単一容器に単一細胞を分注するようプログラムすることができるロボットなどのような細胞分離装置を用いる手段がある。これらの代替手段は、より面倒でなく、単一細胞の単一容器への分配を均一に得ることについてより効率的であるので、好ましい。
【0077】
上で説明した富化、分離及び単離手順は、大多数の細胞が無傷のままであるように実行される。富化及び分離の間の細胞の破壊は、可変領域をコードする配列のスクランブリングを引き起こすかもしれない。しかしながら、破壊の頻度は、低いと予想されるので、このことは、問題であると予想されない。単一容器への分配の前の細胞の洗浄及び可能なRNA分解酵素処理は、一連の過程の間で漏れた任意のRNAを除去するであろう。
【0078】
さらに、単一容器の集団における単一細胞の集団を得るためにいかに細胞を分配するかの上の説明を考慮する場合、上で説明したように、全ての容器が単一細胞を含むことは必須ではない。むしろ、本発明は、単一細胞を含有する容器が大多数であり、1より多い細胞を含有する容器が比較的少数の割合しかないこと(例えば、2又はそれ以上の細胞を有する容器の数が、好ましくは、分配する細胞全体量の25%より下であり、より好ましくは、10%より下、例えば、5%より下である)に依存することは、当業者には明白であろう。
【0079】
好ましい実施態様において、逆転写(RT)は、複数の容器の間で個別に分配された細胞に由来するテンプレートを用いて実行される。
【0080】
単一細胞のそれらの単一容器への最終分配が実行された場合、単一細胞は、逆転写の前に同系細胞の集団を得るために拡大してもよい。この過程は、テンプレートとして用いられるべきより多くのmRNAを産出し、これは、もし稀有な標的が増幅され連結されるならば、重要であるかもしれない。しかしながら、細胞は、拡大の間、標的遺伝子に関する遺伝的同一性を残すべきである。単離細胞又は同系細胞の集団は、逆転写のためのテンプレートが分解されない限り、無傷のままであるか、溶解しているかのいずれかであることができる。好ましくは、細胞は、続く逆転写及びPCR増幅を容易にするために、溶解している。
【0081】
異なる実施態様において、単一細胞に分離されなかったが、細胞のプールとして互いに残っている遺伝的に多様な細胞集団に由来するテンプレートにおいて、ライゲーションによる接続又は組換えに続く多重重複伸長RT−PCR又は多重RT−PCRが利用されてもよい。この方法は、コンビナトリアルライブラリーの産生のために用いてもよい。このような取り組みは、単一細胞の分配を必要としないであろう。しかしながら、この取り組みに用いてもよい細胞は、単一細胞についての取り組みのために説明したもの、例えば、分離したBリンパ球の集団(プール)と同一である。ライゲーションによる接続又はこのような細胞集団における組換えに続く単一段階多重重複伸長RT−PCR又は単一段階多重RT−PCRを実行する場合、反応の前に細胞を溶解することが好ましく、所望ならば、全体のRNA又はmRNAを溶解物から単離してもよい。
【0082】
本発明の単一段階多重重複伸長RT−PCRの感度は、非常に低い量(例えば、単一細胞の溶解物に対応するテンプレートの量)でのテンプレートの使用を可能にする。
【0083】
増幅及び接続
本発明は、1より多いプライマーセット(例えば、可変領域をコードする配列を増幅するために必要な全てのプライマー)を同一の反応に含めることによって、2又はそれ以上の標的配列を同一の容器において同時に増幅する変形PCRを利用する。一般的に、この取り組みは、多重ポリメラーゼ鎖反応(多重PCR)として知られる。本発明に従い多重PCRによって増幅される標的配列は、例えば、増幅プロセスにきわめて密接に接近して、重複伸長PCRによって、連結される。特に、抗体可変領域をコードする配列の同種ペアは、このプロセスによって連結される。
【0084】
本発明の1つの実施態様は、多重プライマーミックスが重複伸長PCR手順において機能し、同時増幅及び目的のヌクレオチド配列の接続を引き起こすように設計することができるという事実を利用する。この多重重複伸長PCR技術は、目的のヌクレオチド配列、特に、接続した可変領域をコードする配列の同種ペアの単離及び接続に必要な反応の数を減らすことに役立つ。
【0085】
本発明の他の実施態様は、多重重複伸長PCRによる接続の代替手段として、ライゲーションによる又は組換えによる接続を適用する。このような手順において、接続は、多重PCR増幅と同時には実行されないが、増幅の前の分離段階として、実行される。しかしながら、それでも接続は、多重PCRが実行されるものと同一の容器において実行することができる。
【0086】
多重重複伸長PCRは、それぞれのプライマーセットの少なくとも1つのプライマーが、重複伸長尾部を備えている、2又はそれ以上のプライマーセット(多重プライマーミックス)の存在を必要とする。重複伸長尾部は、増幅の間にそれぞれのプライマーセットによって産生された生成物の接続を可能とする。多重重複伸長PCRは、連結されるべき配列が、同一の容器において同時に産生され、これにより、中間精製なしに増幅の間で標的配列の即時の接続を提供するという点で、従来の重複伸長PCRとは異なる。
【0087】
好ましい実施態様において、逆転写(RT)段階は、単離単一細胞又は同系細胞の集団に由来するテンプレートを利用する多重PCR又は多重重複伸長PCR増幅に先行する。
【0088】
好ましい実施態様において、本発明は、単離単一細胞又は同系細胞の集団に由来するヌクレオチド配列を、多重PCR増幅のためのテンプレートとして使用する。好ましくは、単一細胞からのRNAは、多重PCRの前にcDNAに逆転写される。ある種の目的の核酸配列の増幅のために、mRNAの代替物としてゲノムDNAを用いてもよい。単離単一細胞、あるいは単離単一細胞のクローン性増殖に由来する同系細胞の集団をテンプレート源として使用することにより、細胞集団の中の異なる細胞に由来するヌクレオチド配列のスクランブリングを避けることが可能である。目的が目的の配列の原初の組成物を保持することである場合に、これは重要である。特に抗体可変領域をコードする配列の同種ペアの創出のために、単離単一細胞又は同系細胞の集団をテンプレート源として使用することが、本発明の重要な特徴である。
【0089】
加えて、本発明は、目的の核酸配列の連結したライブラリー、特にコンビナトリアルライブラリーおよび可変領域の同種ペアのライブラリーの作製を促進する。
【0090】
本明細書の別の場所で説明したように、本発明の1つの実施態様は、鳥類ドナーからリンパ球含有細胞分画(ここで、任意に前記細胞分画からの特定のリンパ球集団に富んでいてもよく、または、特定のリンパ球集団は、前記細胞分画から単離される)を提供し、細胞を個別に複数の容器のうちで、リンパ球含有細胞分画または富化細胞分画から分配することによって単離単一細胞集団を得ることによって、連結した可変領域をコードする配列を含む同種ペアのライブラリーを作製する方法を包含する。単離単一細胞の集団に含まれる可変領域をコードする配列の多重分子増幅(例えば、多重RT−PCR増幅)が実行され、可変領域をコードする配列のペアの接続が達成され、ここで、可変領域配列の個別のペアは、集団からの単一細胞に由来する。この技術は、2つの任意の段階を含んでもよい。最初の段階において、個別の単離単一細胞は、多重RT−PCR増幅を実行する前に同系細胞の集団に拡大され、それにより、同系細胞の多様な集団(容器ごとに同系細胞の1つの集団)を含有する複数の容器が得られる。2番目の任意の段階は、連結された可変領域をコードする配列の追加の増幅を実行することを包含する。
【0091】
本明細書の別の場所で説明したように、本発明の別の実施態様は、多重PCR又は多重RT−PCR増幅手順において、単離単一細胞又は同系細胞の集団に由来するテンプレートを使用して、目的のヌクレオチド配列を増幅し、増幅された目的のヌクレオチド配列の接続を達成することによる、目的の複数の非隣接ヌクレオチド配列の接続を包含する。この方法は、連結された生成物の追加の増幅を実行する任意の段階含んでもよい。
【0092】
好ましい実施態様において、免疫グロブリン軽鎖可変領域をコードする配列を含む前記同種ペアのライブラリーの個別のメンバーは、同一の細胞に由来する免疫グロブリン重鎖可変領域をコードする配列に結合する。
【0093】
本発明の多重RT−PCR増幅は、逆転写(RT)が多重PCR増幅(又はそれに代えて多重分子増幅)から分けて実行される2段階プロセスとして、あるいは、RT及び多重PCR増幅段階が単一の容器において同一のプライマーで実行される単一段階プロセスとしてのいずれかとして、実行することができる。
【0094】
逆転写(RT)は、逆転写酵素活性を有する酵素で実行され、単離単一細胞からの全体のRNA、mRNA若しくは標的特異的RNAからのcDNAの産生を引き起こす。逆転写のために利用することができるプライマーは、例えば、目的のヌクレオチド配列に特異的である、オリゴ−dTプライマー、ランダムヘキサマー、ランダムデカマー、他のランダムプライマー、又はプライマーである。
【0095】
2段階多重RT−PCR増幅手順は、RT段階において産生されるcDNAが、1より多い容器に分配されることを可能にし、増幅を始める前のテンプレート分画の保存が可能になる。さらに、1より多い容器へのcDNAの分配は、同一のテンプレートに由来する核酸の1より多い多重PCR増幅の実行を可能とする。これは、増大した数の別異の反応を伴うが、所望ならば、これにより多重プライマーミックスの複雑さの減少が可能となる。
【0096】
単一段階多重RT−PCR手順において、逆転写及び多重PCR増幅は、同一の容器において実行される。逆転写及び多重PCRのいずれをも実行するために必要な全ての成分が最初に容器に加えられ、反応が実行される。一般的には、いったん反応が開始した場合には、追加の成分を添加する必要がない。単一段階多重RT−PCR増幅の利点は、本発明の連結したヌクレオチド配列の産生に必要な段階の数が少ないことである。これは、同一の反応が複数の容器において行われる必要がある、多重RT−PCRを単一細胞のアレイにおいて実行する場合に特に有用である。単一段階多重RT−PCRは、多重PCR増幅に逆転写のためのプライマーとしても必要な、多重プライマーミックスに存在するリバースプライマーを利用することによって実行される。一般的には、単一段階多重RT−PCRに必要な組成物は、核酸テンプレート、逆転写酵素活性を有する酵素、DNAポリメラーゼ活性を有する酵素、デオキシヌクレオシド三リン酸ミックス(dATP、dCTP、dGTP及びdTTPを含むdNTPミックス)、及び多重プライマーミックスを含む。核酸テンプレートは、好ましくは、精製した形である、細胞の溶解物としてである、あるいはいまだに無傷細胞の中にある、のいずれかである単離単一細胞に由来する全体RNA、又はmRNAである。一般的には、反応混合物の組成物の抽出物は、それぞれの多重プライマーミックスを本発明で用いるようにある種の最適化を必要とする。これは、2段階及び単一段階多重RT−PCR手順のいずれにもあてはまる。
【0097】
ある種の単一段階多重RT−PCR反応のために、反応の間で追加の成分を添加すること、例えば、RT段階に続いてポリメラーゼを添加することが利点でありうる。他の成分は、例えば、異なるプライマー組成物を有する可能性がある、dNTPミックス又は多重プライマーミックスでありうる。これは、所望の連結生成物を得るのに必要なチューブの数を制限するので、一般的には、単一段階多重RT−PCRと同一の利点を有する、1チューブ多重RT−PCRとみなすことができる。
【0098】
多重RT−PCR手順によって増幅されるべき目的のヌクレオチド配列は、多重重複伸長RT−PCR、異なる多重プライマーミックスを用いるライゲーション又は組換えなどのいくつかの方法によって互いに連結することができる。好ましくは、多重RT−PCR増幅及び接続プロセスは、単一段階又は2段階プロセスである。しかしながら、接続プロセスは、例えば、PCR、ライゲーション又は組換えのいずれかで目的の核酸配列を連結するために入れ物断片を使用する多重段階プロセスとして実行されてもよい。このような入れ物断片は、シス要素、プロモーター要素、又は関連するコード配列又は認識配列を含んでもよい。好ましい実施態様において、接続は、多重RT−PCR増幅と同一の容器において実行される。
【0099】
1つの実施態様において、目的の複数の非隣接ヌクレオチド配列の接続は、多重増幅伸長プライマーミックスを利用する多重PCR増幅に関連して、実行される。これは、標的配列の増幅及び接続の組み合わせをもたらす。一般的には、多重重複伸長PCRに必要な組成物は、核酸テンプレート、DNAポリメラーゼ活性を有する酵素、デオキシヌクレオシド三リン酸ミックス(dATP、dCTP、dGTP及びdTTPを含むdNTPミックス)、及び多重重複伸長プライマーミックスを含む。
【0100】
本発明の特定の実施態様において、目的の複数の非隣接ヌクレオチド配列の接続は、単離単一細胞又は同系細胞の集団に由来するテンプレートを使用し、連結した生成物の付加的分子増幅を実行する段階を任意に有してもよい多重重複伸長RT−PCRによって実行される。好ましくは、多重重複伸長RT−PCRは、単一段階/1チューブ反応として実行される。
【0101】
本発明の多重重複伸長プライマーミックスは、少なくとも2つの可変領域をコードする配列の増幅及び接続、例えば、カッパ又はラムダ軽鎖可変領域ファミリーを有する免疫グロブリン重鎖可変領域ファミリーからの増幅及び接続を開始することができる少なくとも2つのプライマーセットを含む。
【0102】
別の実施態様において、多重RT−PCRによって増幅される目的の複数のヌクレオチド配列は、ライゲーションによって連結される。これを達成するために、多重RT−PCRのために用いられる多重プライマーミックスは、増幅された標的配列が適切な制限酵素で切断され、ライゲーションによる共有結合的接続が実行されることができるように設計される(プライマー設計は、「プライマー混合物及び設計」の節において説明される)。このような多重プライマーミックスでの多重RT−PCR増幅に続いて、標的配列の互換性のある末端を形成するのに必要な制限酵素が、リガーゼとともに混合物に加えられる。PCR生成物の精製を実行してもよいが、精製は、この段階の前には必要がない。組み合わされた制限酵素切断及びライゲーションのための反応温度は、およそ0と40℃の間である。しかしながら、もし、多重PCR反応からのポリメラーゼがいまだ混合物において存在するならば、室温より低いインキュベーション温度が好ましく、もっとも好ましくは、4と16℃の間の温度である。
【0103】
別の実施態様において、多重RT−PCRによって増幅された目的の複数のヌクレオチド配列は、組換えによって連結される。このアプローチにおいては、増幅された標的配列は、同一の組換え部位を用いて連結することができる。接続は、そして、組換えを促進するリコンビナーゼを添加することによって実行される。適切なリコンビナーゼシステムは、例えば、様々なFRT部位を有するFlpリコンビナーゼ、様々なlox部位を有するCreリコンビナーゼ、attP部位及びattB部位の間の組換えを実行するインテグラーゼΦC31、βリコンビナーゼ6システム、及びGin−Gixシステムである。組換えによる接続は、2つの抗体をコードするヌクレオチド配列(VLを連結したVH)について実証されてきた(Chapal, N. et al. 1997 BioTechniques 23, 518−524)。
【0104】
好ましい実施態様において、目的のヌクレオチド配列は、可変領域をコードする配列を含み、接続が、可変領域をコードする配列の同種ペアを創出する。このような同種ペアは、可変領域に加えて1又は複数の定常領域をコードする配列を含んでもよい。後者の場合においては、定常領域は、ヒト由来であってもよく、鳥類由来の可変領域同種ペア、又は可変領域は、トランスジェニックニワトリ、又は他のトランスジェニック鳥に由来するヒト配列であってもよい。本発明の文脈において、トランスジェニックニワトリに由来するこのようなヒト配列は、「鳥由来」であるとみなされる。
【0105】
より好ましくは、目的のヌクレオチド配列は、免疫グロブリン可変領域をコードする配列を含み、接続が、軽鎖可変領域及び重鎖可変領域をコードする配列の同種ペアを創出する。このような同種ペアは、可変領域に加えて1又は複数の定常領域をコードする配列を含んでもよく、例えば、上で説明したような全血、単核細胞、又は白血球などのリンパ球含有細胞分画から富化されたBリンパ球系列の細胞から単離されてもよい。
【0106】
別の実施態様において、本発明は、テンプレート源としての遺伝的に多様な細胞の集団を用いる多重RT−PCRを利用する。抗体などの結合タンパク質からの可変領域をコードする配列と同様に、異種タンパク質をコードする配列の大多数は、細胞どうし異ならない。このように、このような非可変異種タンパク質をコードする配列のクローニングのために本発明を利用する場合、最初の単一細胞の単離を実行する必要がない。
【0107】
この実施態様において、目的の複数の非隣接ヌクレオチド配列は、遺伝的に多様な細胞の集団に由来するテンプレートを使用して目的のヌクレオチド配列多重RT−PCR増幅を実行し、増幅された目的のヌクレオチド配列の接続を達成することを含む方法によって、ランダムに連結される。さらに、この方法は、連結された生成物の付加的な増幅を実行する任意の段階含んでもよい。単一細胞アプローチと同様に、接続は、増幅のための多重重複伸長プライマーミックスを利用すること、あるいは代わりにライゲーション又は組換えをすることのいずれかで実行されうる。好ましくは、細胞の集団に由来するテンプレートは、厳密に細胞のなかに含まれるわけではない。細胞の集団は、例えば、溶解されてもよい。
【0108】
変異結合タンパク質を発現する細胞の集団におけるランダム接続のプロセスを適用することにより、可変領域をコードする配列のコンビナトリアルライブラリーの簡易な産生が可能となる。好ましくは、細胞の集団は、可変領域結合タンパク質を発現する細胞、例えば、Bリンパ球、脾細胞、ファブリーキウス嚢から単離された細胞、ハイブリドーマ細胞、形質細胞、形質芽球、又はこれらの細胞の混合物を構成する。
【0109】
上で言及した実施態様における細胞の集団は、例えば、追加の精製なしに、透過処理又は溶解することができ、あるいは、テンプレート核酸は、標準的な手順によって、細胞から単離することができる。単一段階多重RT−PCR手順が好ましい。しかしながら、この実施態様において、2段階手順を用いてもよい。
【0110】
特異性、感受性、及び多重RT−PCR接続プロセスの産生量を増大させる効率的な方法は、ライゲーション又は組換えによる接続の前の、あるいは多重重複伸長RT−PCRの前の多重RT−PCRから得られた連結されたヌクレオチド配列の付加的分子増幅を実行することによる。この付加的増幅は、好ましくは、目的の連結された核酸配列の増幅に適合したプライマーミックスを利用するPCR増幅で実行される。利用されるプライマーミックスは、多重プライマーミックス又は多重重複伸長プライマーミックスの外側プライマー(これは、連結された可変領域をコードする配列のセンス鎖の最も外側の5’末端及び3’末端にアニールし、それにより、完全な連結生成物の増幅を可能にするプライマーを意味する)であってもよい。外側プライマーは、重複伸長尾部を含まない多重重複伸長プライマー混合物プライマーとして説明することもできる。これに代えて、ネスト又は準ネストプライマーセットは、連結されたヌクレオチド配列の付加的増幅に利用することができる。このようなネストPCRは、特に、方法の特異性の増大のほか、連結された生成物の量の増大に役立つ。本発明にとって、準ネストPCR(プライマー混合物及び設計と題された節に説明するように)は、ネストPCRと同様に機能すると考えられる。このように、好ましくは、ネストPCR又は準ネストPCRを用いて、多重重複伸長RT−PCRからの連結された生成物、又はライゲーション又は組換えによって連結された生成物の付加的PCR増幅を実行することは、本発明にとって必要ではないけれども、望ましい。
【0111】
付加的増幅は、直接的に多重重複伸長RT−PCR、ライゲーション又は組換えの分画、又は、その完全な反応生成物を用いること、あるいは、例えば、連結した生成物のアガロースゲル電気泳動を実行し、連結された可変領域をコードする配列の予想されたサイズに対応する断片を切除することによって、これらの反応のいずれかから部分的に精製された連結された生成物を用いることのいずれかによって実行することができる。最初の反応において連結されなかったかもしれない個別の標的配列の接続に役立つであろうから、多重重複伸長RT−PCRによって連結された生成物にとって、付加的増幅は、好ましくは、多重重複伸長RT−PCR反応からの分画において直接的に実行される。
【0112】
プライマー混合物及び設計
本発明のプライマー混合物は、2つずつでプライマーセットを形成し、少なくとも2つの異なる目的の標的配列の増幅をすることができる少なくとも4つのプライマーを含む。プライマーセットは、遺伝子ファミリー変異体を増幅するように設計した1又は複数のプライマーペアを含む。このようなプライマーペア又はプライマーセットの2又はそれを超える混合物は、多重プライマーミックスを構成する。ニワトリにおける抗体多様性は、遺伝子変換を通して達成され、このプロセスによって、重鎖(HC)及び軽鎖(LC)可変領域の上流の偽遺伝子が、組換えによって単一VH及びVL遺伝子に挿入される配列のドナーとして機能する。これは、全ての可変領域が、原理的には、VHのための単一のプライマーペア、及びVLのための単一のプライマーペアによって増幅されることを意味する。好ましい実施態様において、単一のVH及びVL5’プライマーは、多重反応において1又は複数の3’定常領域プライマーとともに用いられ、他方、ネストPCR反応は、単一JHプライマー及び単一JLプライマーで実行される。好ましくは、多重プライマーミックスは、少なくとも、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20のプライマーペアを含み、例えば、少なくとも、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140又は150のプライマーペアを含む。特に、可変領域をコードする配列の増幅にとって、多重プライマーミックスのなかの個別のプライマーセットは、2を超えるプライマーペアを含んでもよい。好ましくは、個別のプライマーセットは、少なくとも、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20、25、30、35、45、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、220、240、260、280又は300のプライマーを含む。好ましくは、多重プライマーミックスにおけるプライマーの全体数は、少なくとも、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20、25、30、35、45、50、60、70、80、90、100、125、150又は200であり、最大で225、250、275、300、325、350、375又は400プライマーである。
【0113】
本発明の全てのプライマーは、遺伝子特異的領域を含み、プライマーのいくつかは、付加的に、プライマーの5’末端にプライマー尾部、すなわち、遺伝子特異的プライマー部分の3’末端に融合される5’非コード配列を備えている。このようなプライマー尾部は、約6〜50ヌクレオチド長であるが、所望ならば、より長くてもよい。増幅により、プライマー尾部は、標的配列に付加される。
【0114】
本発明のプライマー尾部は、例えば、ライゲーションによる接続に適合した尾部、組換えによる接続に適合した尾部、又は重複伸長尾部のようなクローニング尾部及び接続尾部である。
【0115】
クローニング尾部は、6〜29ヌクレオチド長、あるいは、それ以上であってもよく、連結された生成物の適当なベクターへの挿入に有用である制限酵素部位及び/又は組換え部位を含んでもよい。
【0116】
ライゲーションによる接続を可能にするため、多重プライマーミックスのプライマーセットは、第一のプライマーセットの1部分(フォワード又はリバースプライマー(これは複数でもよい))が、切断に応じて第二のプライマーセットの1部分の接続尾部に位置する制限酵素部位と適合するであろう制限酵素部位を含有する接続尾部を備えるように設計される。2を超える標的配列の接続のために、第2プライマーセットの第2部分は、切断に応じて第3のプライマーセットの1の部分に位置する制限酵素部位に適合するであろう制限酵素部位を備える。第2プライマーセットに位置するこの第2の制限酵素部位は、第1のプライマーセットのそれと非適合であるべきである。かなりの数の標的配列が、このようにプライマーセットを設計することによって連結することができる。低頻度を有する、あるいは標的配列において生じない制限酵素部位が選択されるべきである。さらに、ライゲーションの部位が用いられる特定の制限酵素に切断耐性になるように、適合する制限酵素部位は、同一でないことが好ましい。同一の標的配列の間の接続は、制限酵素によって切断することができるであろうから、これは、第1の標的配列及び第2の標的配列の接続に向けた反応を推進するであろう。制限酵素部位の適したペアは、例えば、SpeIとXbaI(あるいはNheI又はAvrIIは、これらの1又は両方と代替することができる)、NcoIとBspHI、EcoRIとMfeI、又は、PstIとNsiIである。接続のために、SpeIは、例えば、第1の標的配列に位置することができ、XbaIは、第2の標的配列に位置することができ、NcoIは、第2の標的配列における他の末端に、BspHIは、第3の標的配列に位置するなどとすることができる。もし、制限酵素が同一の緩衝液において機能するならば、さらに手順を簡略化するために有利である。
【0117】
組換えによる接続を可能にするために、多重プライマーミックスのプライマーセットは、例えば、Chapal et al.(1997 BioTechniques 23,518−524)に例示されるように設計することができ、参照により、これは本明細書に取り込まれる。
【0118】
多重PCR増幅と同一の段階における目的のヌクレオチド配列の接続を可能にするために、重複伸長PCRに適合した尾部が多重プライマーミックスのそれぞれのプライマーセットの少なくとも1つのプライマーに付加され、これにより、多重重複伸長プライマーミックスが産生される。
【0119】
重複伸長尾部は、典型的には、8〜75ヌクレオチド長の範囲であり、より長く、それに続くプロモーター、リボソーム結合部位、終止配列、又はscFvにおけるようなリンカー配列などの制御要素の挿入を可能とする制限酵素部位又は組換え部位を含有してもよい。重複伸長尾部は、所望ならば、終止コドンを含んでもよい。一般的には、WO2005/042774の図1において説明されるように、3つのタイプの重複伸長尾部がある。タイプIにおいては、2つのプライマーセットの重複伸長尾部は、お互いだけで重複する。2つの重複伸長尾部のヌクレオチドは、全てお互いに相補的である必要がない。1つの実施態様において、相補的ヌクレオチドは、重複伸長尾部の60〜85%の間を意味する。タイプII重複伸長尾部においては、4〜6の5’ヌクレオチドが、隣接標的配列の遺伝子特異的領域に相補的である。タイプIII重複伸長尾部においては、全体の重複が、隣接標的配列に相補的である。制御要素及び同類のものが、後に連結された標的配列の間に挿入されるべき場合には、タイプI及びII重複伸長尾部が、好ましい。もし、標的配列が、scFvで見られるような確定したリンカーによって連結されるべきであるならば、タイプII重複伸長尾部が好ましい。もし、標的配列が、互いにインフレームで連結されるべきであるならば、タイプIII重複伸長尾部が好ましい。
【0120】
重複伸長尾部の設計は、長さ、相対的なGC含有量(GC%)、制限酵素部位の存在、パリンドローム、溶融温度、連結される遺伝子特異的部分などの配列の特徴に依存する。重複伸長尾部の長さは、8及び75ヌクレオチド長の間であるべきであり、好ましくは、重複伸長尾部は、15〜40ヌクレオチド長である。より好ましくは、重複伸長尾部は、22〜28ヌクレオチド長である。非常に長い重複伸長尾部(50〜75ヌクレオチド)の使用は、それぞれのプライマーセットによって産生された生成物の接続に有利に働きうる。しかしながら、非常に長い重複伸長尾部を使用するときには、重複伸長尾部の長さと遺伝子特異的領域の間の割合は、おそらく、適合されている必要があるであろう。GC%選択は、重複伸長尾部の長さに依存する。より短い尾部は、それらが相補的であるより短い広がりを有するので、それらは、長い尾部よりも、相互作用を強めるためのより高度のGC%を必要とする。プライマー設計の他の原理が、同様に、順守されるべきであり、例えば、プライマー二量化及びヘアピン形成は、最小限に抑えられるべきであり、偽プライミングも同様である。さらに、TaqDNAポリメラーゼが、しばしば、新たに合成されたDNA鎖の3’末端にアデノシン(A)を付加することが知られており、これは、重複伸長尾部が3’非テンプレートA付加を提供することを可能にすることによる重複伸長尾部設計に取り入れられうる。
【0121】
接続尾部(例えば、重複伸長尾部、又はライゲーション又は組換えによる接続に適合した尾部)を有するプライマーの選択は、標的配列の接続の順序及び方向を特徴づける。それが、プライマーセットのフォワードプライマー(複数も可)若しくはリバースプライマー(複数も可)であるかどうか、場合によっては、接続尾部を備えたフォワード及びリバースプライマーの両方であるかどうかは、本発明にとって、重要ではない。しかしながら、最終生成物における標的配列の順序及び方向が、ひょっとしたら、例えば、プロモーター及び終止配列などの制御要素の挿入、あるいは個別の標的配列のインフレーム接続と関連性があるので、これには、いまだ一定の考慮が与えられるべきである。
【0122】
目的の2つのヌクレオチド配列の接続のために、接続尾部は、それぞれの標的配列のPCR増幅に用いられるそれぞれのプライマーセットのリバースプライマー(複数も可)又はフォワードプライマー(複数も可)のいずれかに付加されてもよい。
【0123】
現開示は、それぞれのセットのニワトリVH及びニワトリVLフォワードプライマーへの重複伸長尾部、及びライゲーションによる接続に適合した尾部の付加を例示する。これは、5’から5’(頭部から頭部及び双方向性)である生成物の連結方向をもたらす。しかしながら、接続尾部は、それぞれのセットのリバースプライマーに付加することができる。これは、3’から3’(尾部から尾部及び双方向性)である生成物の連結方向をもたらす。3番目の選択肢は、第1のプライマーセットのリバースプライマー(複数も可)、及び第2のプライマーセットのフォワードプライマー(複数も可)に(逆もまた同様である)接続尾部を付加することである。これは、3’から5’への方向性(頭部から尾部及び一方向性)をもたらす。
【0124】
目的の2を超えるヌクレオチド配列を連結する場合、いくつかのプライマーセットは、1つの尾部が、先立つリバースプライマーセットの尾部に相補的であり、他方の尾部が、次のプライマーセットのプライマーの1つと相補的であるように、フォワード及びリバースプライマーの両方のうえに接続尾部を有するべきである。この原理は、2つの他の標的配列の間で連結されるべき標的配列を増幅する全てのプライマーセットに、あてはまる。
【0125】
遺伝子特異的プライマー部分の設計は、一般的には、プライマー二量化、ヘアピン形成、及び非特異的アニーリングの最小化などの既知のプライマー設計ルールを順守するべきである。さらに、可能ならば、3’塩基としての多重G又はCヌクレオチドは、避けられるべきである。プライマーセットにおける遺伝子特異的領域の溶融温度(Tm)は、好ましくは、プラス/マイナス5℃でそれぞれ等しくあるべきである。本発明において、45℃と75℃の間のTm値が望ましく、約60℃のTm値が、大抵の適用において最適である。有利なことに、最初のプライマー設計は、この課題のために開発されたコンピュータープログラムによって支援されうる。しかしながら、プライマー設計は、一般的には、実験室の試験及び所定の最適化を必要とする。これは、例えば、サイズ、制限酵素断片長多型(RFLP)、及びプライマーセットを用いて得られた増幅生成物の配列を分析することによって行ってもよい。可変領域を有する配列を増幅する場合、またはタンパク質の特定のクラスに属する新たなファミリーメンバーを探索する場合には、プライマーの内の縮重位置の使用は、有用なアプローチである。縮重位置の数も、最適化を必要とするかもしれない。
【0126】
本発明の1つの特徴は、増幅を開始し、少なくとも2つの目的のヌクレオチド配列の接続を促進することができる少なくとも2つのプライマーセットからなるプライマーミックスである。本発明のプライマーミックスは、例えば、酵素、インヒビター、構造タンパク質、細胞毒素、チャネルタンパク質、Gタンパク質、受容体タンパク質、免疫グロブリンスーパーファミリータンパク質、輸送タンパク質などの、好ましくは、免疫グロブリンのクラスに所属する異種タンパク質からの少なくとも2つのサブユニット又はドメインの増幅を開始することができる。
【0127】
本発明のさらなる特徴は、プライマーセットを含む多重重複伸長プライマーミックスを使用することであり、ここで、それぞれのプライマーセットの少なくとも1つのプライマーセットメンバーは、第2プライマーセットのプライマーセットメンバーの重複伸長尾部にハイブリダイズすることができる重複伸長尾部を含む。
【0128】
重複伸長尾部は、隣接している生成物に相補的である尾部を有するプライマーセットから生じるそれぞれの個別の生成物を備えることによって、多重重複伸長PCR増幅の間での目的のヌクレオチド配列の即座の接続を可能とする。しかしながら、これは、接続が最初のPCR増幅の間に必ず起こることを意味しない。反応設定に依存して、実際の接続の大多数は、最初のPCR増幅の外側プライマーでの付加的増幅の間で実行されてもよい(多重PCR増幅)。
【0129】
単一プライマーは、重鎖及び軽鎖可変領域の5’末端に用いることができる。重鎖及び軽鎖定常領域に相補的である単一プライマーは、3’プライマーとして用いることができる。あるいは、軽鎖結合領域プライマーは、定常領域プライマーの代わりにリバースプライマーとして用いてもよい。あるいは、可変軽鎖及び重鎖のリーダー配列に先立つUTR領域においてアニールするフォワードプライマーを用いてもよい。
【0130】
本発明の1つの実施態様は、可変領域をコードする配列に先立つリーダーをコードする配列の3’末端においてアニールするプライマー、及び可変領域をコードする配列の増幅のためのその使用を含む。
【0131】
1つの実施態様において、多重重複伸長PCRに使用され、おそらく逆転写段階にも使用される多重重複伸長プライマーミックスは、以下を含む。
a) 免疫グロブリン軽鎖領域をコードする配列のセンス鎖に相補的である、少なくとも1つのニワトリ軽鎖定常領域プライマー、又は1つのニワトリ軽鎖J領域プライマー
b) 免疫グロブリン軽鎖可変領域をコードする配列、又は軽鎖可変領域リーダー配列のアンチセンス鎖に相補的であり、a)におけるプライマー(複数でも可)とプライマーセットを形成することができる、1つの軽鎖V領域プライマー
c) 少なくとも1つのニワトリ重鎖定常領域プライマー、mRNAの3’非コード領域に相補的である1つのニワトリ重鎖プライマー、又は免疫グロブリン重鎖ドメインをコードする配列のセンス鎖に相補的である1つの重鎖J領域プライマー、及び
d) 免疫グロブリン重鎖可変領域をコードする配列、又は重鎖可変領域リーダー配列のアンチセンス鎖に相補的であり、c)におけるプライマー(複数でも可)とプライマーセットを形成することができる1つのニワトリ重鎖V領域プライマー。
【0132】
さらなる実施態様において、免疫グロブリン軽鎖V領域及び重鎖V領域プライマーは、好ましくは、相補的重複伸長尾部の形式において、接続尾部を有する。これは、頭部から頭部の様式で連結した可変領域をコードする配列を産生する。頭部から尾部の様式における可変領域をコードする配列の接続のために、好ましくは、相補的重複伸長尾部の様式で、ニワトリ軽鎖定常領域、あるいはニワトリ軽鎖J領域及びニワトリ重鎖V領域のプライマーのいずれか、又はその両方が、接続尾部を含み、あるいは、ニワトリ軽鎖V領域プライマー、及びmRNAの3’非コード領域に相補的であるニワトリ重鎖プライマー、重鎖定常領域に相補的であるニワトリ重鎖プライマー、又はニワトリ重鎖J領域プライマーに相補的であるプライマーが、あるいは両方が、接続尾部を含む。尾部から尾部の様式における可変領域をコードする配列の接続のためには、ニワトリ軽鎖定常又はJ領域に相補的であるプライマー、及びニワトリ重鎖定常又はJ領域プライマーに相補的であるプライマーが、接続尾部を、好ましくは、相補的重複伸長尾部の様式で含む。
【0133】
本発明は、ライゲーション又は組換えによる、又は多重重複伸長RT−PCRによる接続の前の多重RT−PCRから得られた連結された生成物の追加的PCR増幅のためのプライマーをも包含する。この付加的PCR増幅は、連結された標的配列の増幅に適合したプライマーミックスを用いて実行することができる。このようなプライマーミックスは、多重プライマーミックス又は多重重複伸長プライマーミックスの外側プライマーを含んでもよく、これは、連結されたヌクレオチド配列のセンス鎖の最外部5’末端及び3’末端にアニールするプライマーを意味し、それにより選択的に完全な連結された生成物の増幅を可能とする。この過程は、一般的には、ライゲーション又は組換えによる接続の前の多重RT−PCR、あるいは多重重複伸長RT−PCRから得られた連結された生成物の量の増大に役立つ。
【0134】
代わりに、第一の多重RT−PCR又は多重重複伸長RT−PCR反応において用いられる外側プライマーに比べてネスト化したプライマーセットは、接続したヌクレオチド配列の付加的増幅のために用いることができる。このようなプライマーセットは、ネストプライマーセットと呼ばれる。ネストプライマーの設計は、一般的には、それらが、多重RT−PCR又は多重重複伸長RT−PCRにおいて用いられる外側プライマーのアニーリング位置の3’に部分的に又は全体的に開始することを除いて、前に説明した遺伝子特異的プライマーのためのものと同一の設計ルールを順守する。ネストPCRから生じる生成物は、したがって、ライゲーション若しくは組換えによる、又は多重重複伸長RT−PCRによる接続の前の多重RT−PCRにより得られた連結された生成物よりも短くてもよい。連結した生成物の量が増大することに加えて、ネストPCRは、さらに、特に、多重重複伸長RT−PCR技術の全体的な特異性の増大に役立つ。しかしながら、追加的増幅を実行する場合に、前に説明した全ての多重プライマーミックス/多重重複伸長プライマーミックスが、ネストプライマーセットとの組み合わせに適しているわけではないことは留意すべきである。このような場合においては、多重プライマーミックス/多重重複伸長プライマーミックスの外側プライマーが、追加的増幅のために用いることができ、あるいは、準ネストPCRを用いることができる。
【0135】
1つの実施態様において、JL及びJHプライマーの混合物は、連結された免疫グロブリン可変領域をコードする配列の追加的増幅のためのネストプライマーとして使用される。
【0136】
本発明のネストプライマーセットは、第1の多重プライマーミックス/多重重複伸長プライマーミックスからの1又は複数のリバース(又はフォワード)外側プライマー(複数も可)、及び第一の多重プライマーミックス/多重重複伸長プライマーミックスのフォワード(又はリバース)外側プライマー(複数も可)アニーリング位置の3’で開始する第2のネストプライマーを含むこともできる。付加的PCR増幅のためのこのようなプライマーセットの使用は、一般的には、準ネストPCRとして知られている。準ネストPCRは、例えば、もし、(例えば、可変領域配列に)特異的な1つの領域においてネストプライマーを設計することが難しいならば、適用することができる。なぜならば、このようなプライマーは、相補性決定領域(CDRs)においてアニールしなければならないであろうからである。さらに、準ネストPCRは、例えば、クローニング目的のために、連結された配列の1つの末端を無傷にしておくことが望ましい場合に、用いることができる。
【0137】
多重重複伸長PCRの最適化
2段階及び1段階手順の両方の多重重複伸長PCR段階のパラメーターは、さまざまなパラメーター(例えば、Henegariu, O. et al.1997.BioTechniques 23,504−511; Markoulatos,P.et al.2002.J.Clin.Lab.Anal.16,47−51を参照のこと)に最適化することができる。外側及び内側プライマーの割合は、このような反応において、重要性が低いけれども、一般的には、同一の最適化パラメーターが、多重RT−PCRに適用される。
a. プライマー濃度
重複伸長尾部を有するプライマー(例えば、VH及びVLプライマー)の濃度は、好ましくは、重複伸長尾部を持たない外側プライマー(例えば、JH及び軽鎖プライマー)の濃度より低い。
【0138】
もし、例えば、高いGC%の結果、標的配列の1つが、他のものよりも低効率で増幅するならば、増幅効果を均一にすることが可能であるかもしれない。これは、低効率での増幅を仲介する高濃度のプライマーセットを用いること、あるいは他のプライマーの濃度を下げることによって行ってもよい。例えば、重鎖可変領域をコードする配列は、高いGC%を有し、そのため、軽鎖可変領域よりも低い増幅効率を有しがちである。これは、VHプライマーよりも低濃度で、VLプライマーを用いることを指し示す。
【0139】
さらに、多数のプライマーを用いる場合、全体のプライマー濃度も、問題となるかもしれない。上限は、滴定実験によって実験的に決定してもよい。他のシステムにとっては、約2.4μMの高さまでであるけれども、Applied BiosystemsからのAmpliTaq Gold(登録商標)PCRシステムにとっては、上限は、1.1μM全体オリゴヌクレオチド濃度であると見出された。全体オリゴヌクレオチド濃度のこのような上限は、それぞれのプライマーの最大濃度に影響を与える。もし、個別のプライマー濃度が、低すぎるならば、PCR感度が乏しくなりがちである。
【0140】
オリゴヌクレオチドプライマーが等しいことは、多重重複伸長PCRにとって重要であると見出されてきた。HPLC精製オリゴヌクレオチドは、最良の結果を生み出してきた。
【0141】
b. PCRサイクル条件:
サイクル条件は、好ましくは、30〜80PCRサイクルを有し、次のとおりである。
【0142】
単一段階多重重複伸長RT−PCRのために、次の段階が、上で説明した増幅サイクルの前のサイクリングプログラムに組み込まれる。
【0143】
これらの全てのパラメーターを最適化することが可能である。特に、アニーリング温度が重要である。このように、最適なアニーリング温度及び時間のほか、伸長及び変性時間を特定するために、最初は、最終プライマーミックスを構成すべき全ての個別のプライマーセットが、別異に試験されるべきである。これは、これらのパラメーターを多重重複伸長プライマーミックスに最適化することができる手段についてのよい知見を与えるであろう。
【0144】
例えば低プライマー濃度又はテンプレート濃度による乏しいPCR感受性の問題は、多数の熱サイクル(すなわち、約35と80サイクルの間、好ましくは、約40サイクル)を用いることによって乗り越えることができる。さらに、より長い伸長時間(すなわち、通常の1分の伸長時間に対して、約1.5〜5分×EPLの伸長時間)は、多重重複伸長PCR過程を改善することができる。
【0145】
c. アジュバントの使用
多重PCR反応は、DNAを弛緩させてテンプレート変性をより容易にするDMSO、グリセロール、ホルムアミド又はベタインのようなPCR添加物を使用することによって、顕著に改善することができる。
【0146】
d.dNTP及びMgCl2
デオキシヌクレオシド三リン酸(dNTP)品質及び濃度は、多重重複伸長PCRにとって、重要である。最善のdNTP濃度は、それぞれのdNTP(dATP、dCTP、dGTP及びdTTP)につき200と400μMの間であり、これを超えると、増幅は、急激に阻害される。より低いdNTP濃度(それぞれのdNTPにつき100μM)は、PCR増幅を達成するのに十分である。dNTPストックは、解凍/冷凍サイクルに敏感である。このような3〜5のサイクルの後、多重PCRは、しばしば、十分に働かなくなる。このような問題を避けるため、dNTPの少量アリコートを作ることができ、−20℃で冷凍保存することができる。
【0147】
大半のDNAポリメラーゼは、マグネシウム依存性酵素であるので、Mg2+濃度の最適化は重要である。DNAポリメラーゼに加えて、テンプレートDNAプライマー及びdNTPが、Mg2+に結合する。したがって、最適なMg2+濃度は、dNTP濃度、テンプレートDNA、及びサンプル緩衝液組成物に依存するであろう。もし、プライマー及び/又はテンプレートDNA緩衝液が、EDTA又はEGTAなどのようなキレート剤を含有するならば、見かけのMg2+最適条件は、変わるかもしれない。過剰量のMg2+濃度は、DNA二重鎖を安定化し、DNAの完全な変性を抑え、収量が減少する。過剰量のMg2+は、誤ったテンプレート部位へのプライマーの偽アニーリングをも安定化することができ、これにより、特異性が減少する。他方で、不十分なMg2+濃度は、生成物の量を減少させる。
【0148】
dNTPとMgCl2の間の良好なバランスは、およそ、200〜400μMdNTP(それぞれ)に対して、1.5〜3mMMgCl2である。
【0149】
e.PCR緩衝液組成物
一般的には、KClベースの緩衝液は、多重重複伸長PCRに十分である。しかしながら、(NH4)2SO4、MgSO4、Tris−Cl、あるいはこれらの組み合わせなどの他の成分をベースとする緩衝液も、多重重複伸長PCRで機能するように最適化されてもよい。より短い生成物の増幅に関与するプライマーペアが、より高い塩濃度(例えば、80〜100mM KCl)でより良く機能する一方で、より長い生成物の増幅に関与するプライマーペアは、より低い塩濃度で(例えば、20〜50mM KCl)より良く機能する。1Xの代わりに2Xへ緩衝液濃度を上昇させることにより、多重反応の効率が改善するかもしれない。
【0150】
f.DNAポリメラーゼ
本発明は、Taqポリメラーゼにより例示される。その代わりに、例えば、Pfu、Phusion、Pwo、Tgo、Tth、Vent又はDeep−ventを含む、他のタイプの熱耐性DNAポリメラーゼを用いても良い。3’から5’エキソヌクレアーゼ活性を持たない又は持つポリメラーゼを、単独で、又はそれぞれを組み合わせてのいずれかで用いてもよい。
【0151】
ベクター及びライブラリー
本発明による目的のヌクレオチド配列の接続は、免疫グロブリンの変領域をコードする連結されたヌクレオチド配列を含むヌクレオチド部分を創出する。さらに、このような連結された核酸配列のライブラリー、特に、ヒト定常領域(重鎖及び軽鎖)配列に連結した又は接合した非ヒト可変領域をコードする配列のライブラリー、又はヒト定常領域配列に連結された、トランスジェニックニワトリ又は他のトランスジェニック鳥に由来するヒト可変領域をコードする配列のライブラリーが、本発明の方法によって作製される。
【0152】
1つの実施態様において、本発明の方法によって作製される、目的の連結されたヌクレオチド配列を含む部分、あるいは、このような目的の連結されたヌクレオチド配列のライブラリーは、適切なベクターに挿入される。ライブラリーは、コンビナトリアルライブラリーであってもよく、より好ましくは、可変領域をコードする配列の同種ペアのライブラリーであってもよい。外側プライマー、ネストプライマー又は準ネストプライマーにより産生される制限酵素部位は、好ましくは、選択のベクターの適切な制限酵素部位に適合するように設計される。もし、準ネスト、ネストプライマー、又は外側プライマーの1つが、適切な組換え部位を備えており、選択のベクターがそれを同様に含むならば、目的の連結された核酸配列は、組換えによってベクターに挿入することもできる。
【0153】
本発明の多重RT−PCR接続方法の1つによって創出された生成物のキャリアとして用いることができるベクターに制限はない。選択のベクターは、例えば、細菌、酵母、他の菌類、昆虫細胞、植物細胞、または哺乳動物細胞を含む細胞における増幅及び発現に適したものであってもよい。このようなベクターは、さらなるクローニング段階、ベクターシステムの間のシャトル、ベクターへ挿入された生成物のディスプレイ、挿入された生成物の発現、及び/又は宿主細胞のゲノムへの融合を促進するために用いてもよい。
【0154】
クローニング及びシャトルベクターは、好ましくは、細菌のベクターである。しかしながら、他のタイプのベクターも、クローニング及びシャトル手順に用いてもよい。
【0155】
ディスプレイベクターは、例えば、fd、M13、又はf1線維状バクテリオファージのクラスに由来するファージベクター又はプラスミドベクターでありうる。このようなベクターは、例えば、線維状バクテリオファージの表面における結合タンパク質、又はその断片を含むタンパク質のディスプレイを促進することができる。リボソーム、DNA、酵母細胞、又は哺乳動物細胞におけるディスプレイに適したディスプレイベクターも、本技術分野において知られている。これらは、例えば、ウイルスベクター又はキメラタンパク質をコードするベクターを含む。
【0156】
発現ベクターは、全ての言及した種類に存在し、任意の所与の条件に適切なベクターは、発現されるべきタンパク質に依存する。いくつかの発現ベクターは、加えて、ランダム融合、又は適当な組換え部位を利用する部位特異的融合のいずれかによって、宿主細胞のゲノムに融合することができる。発現ベクターは、連結した生成物がこれらの配列にインフレームで挿入される場合に、より大きいタンパク質、例えば、完全長モノクローナル抗体の適切な宿主細胞における発現を可能とする付加的なコード配列を提供するように設計されてもよい。このインフレーム挿入は、線維状バクテリオファージ又は細胞の表面においてディスプレイされるキメラタンパク質の発現を促進してもよい。バクテリオファージディスプレイシステムにおいて、目的の連結されたヌクレオチド配列は、pIII又はpVIIIなどの外被タンパク質をコードする配列にインフレームで挿入されてもよい(Barbas,C.F. et al.1991.Proc.Natl.Acad.Sci.USA88,7978−7982;Kang,A.S.et al.1991.Proc.Natl.Acad.Sci.USA88,4363−4366)。
【0157】
1つの実施態様において、目的の連結されたヌクレオチド配列の個別の部分は、1又は複数のヒト免疫グロブリン定常ドメイン、好ましくは、ヒト軽鎖及び重鎖定常領域の両方をコードする配列(複数でも可)を含むベクターに挿入された、鳥類由来の軽鎖可変領域をコードする配列に接続した、鳥類由来の免疫グロブリン重鎖可変領域をコードする配列を含む。挿入は、連結された重鎖可変領域及び/又は軽鎖可変領域をコードする配列が、定常領域をコードする配列にインフレームで挿入されるように設計される。このような挿入により、例えば、FabまたはF(ab’)2発現ベクター、完全長抗体発現ベクター、又は完全長抗体の断片をコードする発現ベクターを産生することができる。好ましくは、このようなベクターは、発現に適した発現ベクター(例えば、E.coli、ファージミド又は哺乳動物ベクター)であり、定常領域重鎖をコードする配列は、ヒト免疫グロブリンクラスIgGl、IgG2、IgG3、IgG4、IgM、IgA1、IgA2、IgD、又はIgEから選択され、それにより、Fab又は完全長組換え抗体の発現が可能となる。定常重鎖をコードする配列に加えて、ベクターは、ヒトラムダ又はカッパ鎖から選ばれる定常軽鎖をコードする配列を含んでもよい。これらの場合において連結されたヌクレオチド配列は、鳥類種からの免疫グロブリン可変領域をコードする配列(Fv’s)のみをコードするので、これは、キメラ抗体の産生において好ましい。
【0158】
代わりの実施態様において、ヒト定常領域をコードする配列(複数でも可)は、鳥類配列と重複を有するヒト定常領域をコードする配列、及び可変領域及び定常領域の両方のインフレームでの増幅を確実にする適当なプライマーを容器に添加することによって、分子増幅手順の段階において鳥類可変領域に接合又は連結される。このようにして、ヒト定常カッパ又はラムダ鎖及び/又はヒト定常重鎖が、付加されてもよい。この手順を使用することにより、コード配列のうちに制限酵素部位を提供する必要がなく、これは利点である。
【0159】
1つの実施態様において、二重プロモーターカセット、重鎖及び軽鎖の同時発現を指揮することができる二重プロモーターカセット、例えば、双方向性二重プロモーターカセットが、発現コンストラクトに挿入されてもよい。二重プロモーターカセットは、さらに、重鎖及び軽鎖のためのシグナルペプチドをコードする核酸配列を含んでもよい。発現ベクターバックボーンは、キメラ鳥類/ヒト抗体を産生するために、ヒト定常軽鎖をコードする配列又はその断片及び/又はヒト定常重鎖をコードする配列又はその断片を含んでもよい。
【0160】
本発明の同種ペアのライブラリーは、2つの異なるアプローチによってベクターに導入されてもよい。最初のアプローチにおいて、単一の同種ペアが、適切なベクターに個別に挿入される。ベクターのこのライブラリーは、次に別異に保存されるか、プールされるかのいずれかでもよい。第2のアプローチにおいて、全ての同種ペアは、ベクター挿入の前にプールされ、続いて、適切なベクターへの集団挿入が行われ、プールされたベクターのライブラリーが産生される。このようなベクターのライブラリーは、高度に多様な可変領域をコードする配列のペアを含む。
【0161】
1つの実施態様において、本発明は、連結された可変領域をコードする配列の同種ペアを有する抗体のライブラリーを提供する。好ましくは、ライブラリーの個別の抗体は、1つの鳥類種およびヒト定常領域からの重鎖可変領域をコードする配列と結合した免疫グロブリン軽鎖可変領域をコードする配列を含む。さらなる実施態様は、本明細書を通して説明されたような可変領域をコードする配列の同種ペアの親ライブラリーから選ばれるサブライブラリーである。本明細書の好ましい実施態様は、ヒト免疫グロブリンクラスIgA1、IgA2、IgD、IgE、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、又はIgMから選ばれる完全長キメラ免疫グロブリンの同種ペアをコードするライブラリー又はサブライブラリーである。ライブラリーは、少なくとも、5、10、20、50、100、1000、104、105又は106の異なる同種ペア抗体を含んでもよい。
本発明のさらなる実施態様において、連結された可変領域をコードする配列の同種ペアの前記ライブラリーは、本明細書に説明する段階を含む方法によって得ることができる。このライブラリーも、親ライブラリーと呼ばれる。
【0162】
スクリーニング及び選択
本発明の方法の1つを用いて、ドナーから単離された連結された可変領域をコードする配列のペアの親ライブラリーは、特に、コンビナトリアルライブラリーにおいて、いくつかは無関係である(すなわち、所望の標的への結合でない)多様な結合タンパク質を示すことが予想される。したがって、本発明は、特定の標的に対する結合特異性の多様なサブセットをコードするサブライブラリーの富化及びスクリーニングを包含する。
【0163】
同種ペアのライブラリーにとって、ライブラリーの多様性は、ごく少ない数のランダムに連結された可変領域を有する、ドナー原料に存在する多様性を表すことが予想される。このように、富化段階は、同種ペアからなるライブラリーにおける標的特異的結合親和性のスクリーニングの前には必要ではないかもしれない。
【0164】
さらなる実施態様において、連結された可変領域をコードする配列のペアのライブラリーを作製する方法は、さらに、所望の標的特異性を有する結合タンパク質をコードする連結された可変領域配列のペアのサブセットを選択することによってサブライブラリーを作製することを含む。連結された可変領域をコードする配列のこのような選択物も、標的特異的同種ペアのライブラリーと呼ばれる。
【0165】
好ましい実施態様において、可変領域をコードする配列の標的特異的同種ペアのライブラリーは、発現ベクターに移される。発現ベクターは、スクリーニングに用いられる細胞のタイプに応じて、哺乳動物発現ベクター、昆虫細胞発現ベクター、酵母発現ベクター、菌類発現ベクター、植物発現ベクター、又は細菌発現ベクターであってもよい。好ましくは、発現ベクターは、哺乳動物である。
【0166】
免疫学的アッセイは、一般的には、標的特異的免疫グロブリン可変領域をコードする配列の選択に適している。このようなアッセイは、本技術分野においてよく知られており、例えば、FMAT、FLISA、ELISPOT、ELISA、メンブレンアッセイ(例えば、ウェスタンブロット)、フィルターアレイ又はFACSを構成する。アッセイは、免疫グロブリン可変領域をコードする配列から産生されるポリペプチドを利用する直接的な手段において実行することができ、あるいはその代わりに、免疫学的検定が、ファージディスプレイ、リボソームディスプレイ、細菌表面ディスプレイ、酵母ディスプレイ、真核ウイルスディスプレイ、RNAディスプレイ、又は共有結合性ディスプレイ(FitzGerald,K.,2000.Drug Discov. Today 5,253−258において概説される)などの富化方法と組み合わせて、又はそれに続けて実行することができる。同種Fab発現ライブラリーと同種完全長抗体発現ライブラリーの両方が、スクリーニングを受けることができ、これにより、陽性クローンのサブライブラリーが産生される。このようなスクリーニングアッセイ及び富化手順も、Fv若しくはscFv断片、又は連結された可変領域のコンビナトリアルライブラリーに適している。
【0167】
免疫学的スクリーニングに加えて、本発明の特有の特徴は、様々なタイプの機能的なスクリーニングの使用を可能にし、所望の特性を有する抗体分泌クローンの選択ができることである。このようなスクリーニングアッセイは、増殖分析、ウイルス不活性化アッセイ、細胞破壊アッセイなどを含むが、これらに限定されない。好ましくは、機能的なアッセイは、本発明の発現ベクターが導入された細胞からの上清を用いるハイスループット様式において実行される。
【0168】
好ましい実施態様において、可変領域をコードする配列の標的特異的同種ペア又はコンビナトリアルペアのサブライブラリーの選択は、ハイスループットスクリーニングアッセイを使用することによって実行される。ハイスループットスクリーニングアッセイは、ELISAアッセイ、準自動的な又は完全に自動的な装置で実行される機能的アッセイを含むが、これらに限定されない。
【0169】
抗原結合クローンの同種ペア又はコンビナトリアルペアのサブライブラリーが適当な技術によって選択された場合、連結された免疫グロブリン軽鎖可変領域及び重鎖可変領域をコードする配列のDNA配列決定による付加的な分析を実行することができる。このようなDNA配列決定は、ライブラリー多様性及びCDR領域のうちの成熟性についての情報を提供し、これにより、繰り返しのクローンを除外して、広い多様性を有する一連のクローンを選択することが可能となる。DNA配列決定は、単離過程の間で導入された変異も明らかにするであろう。
【0170】
変異は、TaqDNAポリメラーゼによって作製されるかもしれず、それらは、定常領域をコードする配列において最も容易に同定され、容易に除外することができる。しかしながら、Taq導入変異は、可変領域をコードする配列にも存在するであろうが、ここにおいて、それらは、可変領域をコードする配列におけるランダム変異の結果でもある自然的に生じた体細胞変異から区別することができる。変異は、非システマティックであり、独自の方法で特定のペアにしか影響を与えないことを考慮すると、このような変化を無視するのが、合理的であるようである。
【0171】
さらなる実施態様において、連結された免疫グロブリン軽鎖可変領域及び重鎖可変領域をコードする配列の、標的特異的であり、おそらくは配列が分析されたペアのサブライブラリーは、哺乳動物発現ベクターに移行される。このような移行は、前の節で説明した任意のベクターに実行することができ、それにより、完全長組換え抗体の発現が可能となる。もし、スクリーニングが哺乳動物同種完全長抗体発現ライブラリーで実行されるならば、このような移行は必要ないかもしれない。
【0172】
宿主細胞及び発現
本発明のライブラリーは、目的の連結した核酸配列からコードされたタンパク質、特に、可変領域含有タンパク質又はその断片の発現及び産生に適したベクターに移行することができる。このようなベクターは、ベクター及びライブラリーの節において説明されており、例えば、選択の種の完全長抗体、Fab断片、Fv断片、scFv、膜結合又は可溶性TcR又はTcR断片の発現を提供する。
【0173】
本発明の1つの特徴は、宿主細胞への、連結された可変領域をコードする配列の同種ペアのベクターのライブラリー又はサブライブラリー、又は連結された可変領域をコードする配列の同種ペアをコードする単一クローンの、増幅及び/又は発現のための導入である。宿主細胞は、細菌、酵母、他の菌類、昆虫細胞、植物細胞、又は哺乳動物細胞から選ぶことができる。発現目的のためには、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、COS細胞、BHK細胞、骨髄腫細胞(例えば、Sp2/0細胞、NS0)、NIH 3T3、線維芽細胞、又はHeLa細胞、HEK 293細胞、PER.C6細胞などの不死化ヒト細胞などの哺乳動物細胞が好ましい。
【0174】
宿主細胞へのベクターへの導入は、リポフェクション、マイクロインジェクション、リポソーム融合、RBCゴースト融合、プロトプラスト融合、ウイルス感染などの様々な化学方法、リン酸カルシウム沈殿、電気穿孔などを含む、本技術分野における当業者に知られている数多くの形質転換又はトランスフェクション方法によって達成してもよい。モノクローナル完全長抗体、Fab断片、Fv断片、及びscFv断片の産生は、よく知られている。
【0175】
組換えポリクローナル抗体又は他の組換えポリクローナルタンパク質の作製のための製造技術は、WO2004/061104及びWO2008/145133に説明されている。WO2004/061104に説明されている技術は、例えば、抗体重鎖及び軽鎖の同種ペアをコードする核酸配列の部位特異的融合による製造細胞株として適した細胞の収集物の創出に関する。WO2008/145133は、宿主細胞への目的の個別の遺伝子のランダム融合、好ましくは、それに続く所望の特性を有する単一細胞のクローニングに基づく組換えポリクローナル抗体又は他のポリクローナルタンパク質の製造のための異なるアプローチを説明する。それぞれがポリクローナルタンパク質の個別のメンバーを産生する個別の細胞株は、次に、ポリクローナルタンパク質の産生のためのポリクローナル製造細胞株を作製するために混合される。WO2004/061104の部位特異的融合アプローチと比較して、WO2008/145133のランダム融合アプローチは、より優れた柔軟性を提供し、より高度のタンパク質発現レベルをもたらすことができる。しかしながら、いずれのアプローチも、経時に及びバッチ間で均一な増殖率及び発現レベルを有し、単一のバッチにおいてポリクローナル抗体の安定的な産生を可能とすると見出されてきた点で、有利である。
【0176】
ポリクローナル製造細胞株の産生、及びそのような細胞株からの組換えポリクローナルタンパク質の製造は、より一般的に、例えば、WO2004/061104に説明されるように、いくつかの異なるトランスフェクション及び製造戦略によって得ることができる。
【0177】
1つの方法は、細胞ごとに単一の融合部位での宿主細胞株のトランスフェクションのための単一の組成物に互いに混合されたベクターのライブラリーを用いることである。この方法は、バルクトランスフェクション又はバルクでのトランスフェクションと呼ばれる。一般的には、ベクター及び宿主細胞設計は、偏らずに増殖しうるポリクローナル細胞株が適当な選択に基づき得られるであろうことを確実にするであろう。ポリクローナル細胞株の冷凍ストックは、組換えポリクローナルタンパク質の製造の開始の前に産生されるであろう。
【0178】
もう1つの方法は、組成物において約5〜50の個別のライブラリーのベクターを含有する、分画に分けられたベクターのライブラリーをトランスフェクションのために使用することである。好ましくは、ライブラリーの分画は、10〜20の個別のベクターを構成する。それぞれの組成物は、次に、宿主細胞のアリコートにトランスフェクトされる。この方法は、準バルクトランスフェクションと呼ばれる。トランスフェクトされるアリコートの数は、ライブラリーのサイズ、及びそれぞれの分画における個別のベクターの数に依存するであろう。もし、ライブラリーが、例えば、100の異なる同種ペアを構成し、それらが、組成物において20の異なるメンバーを含有する分画に分けられるならば、宿主細胞の5のアリコートは、元のライブラリーの異なる分画を構成するライブラリー組成物でトランスフェクトされることが必要であろう。宿主細胞のアリコートは、部位特異的融合のために選択される。好ましくは、異なるアリコートが、別々に選択される。しかしながら、それらは、選択の前にプールすることもできる。アリコートは、それらのクローンの多様性について分析することができ、十分な多様性を有するもののみが、ポリクローナル同種ペアライブラリーのストックの産生に用いられるであろう。製造のための所望のポリクローナル細胞株を得るために、アリコートは、冷凍ストックを産生する前に、それらが冷凍ストックから回収された後すぐ、又は短い増殖及び時間適応の後、混合することができる。任意に、細胞のアリコートは、産生を通して分けたままにされ、ポリクローナルタンパク質組成物は、産生の前の細胞のアリコートよりはむしろ、それぞれのアリコートの生成物を組み合わせることによって集められる。
【0179】
第3の方法は、同種ペアのライブラリーを構成する個別のベクターを用いて宿主細胞が別々にトランスフェクトされるハイスループット方法である。この方法は、個別トランスフェクションと呼ばれる。個別にトランスフェクトされた宿主細胞は、好ましくは、別々に部位特異的融合のために選択される。選択に基づき産生された個別の細胞クローンは、増殖時間に関して分析してもよく、好ましくは、類似の増殖率を有するものは、ポリクローナル同種ペアライブラリーストックの作製に用いられる。個別の細胞クローンは、冷凍ストックを作製する前に、それらが冷凍ストックから回収されたすぐ後に、又は短い増殖及び時間適応の後、所望のポリクローナル細胞株を得るために混合することができる。このアプローチは、トランスフェクション、融合及び選択の間の任意のありうる残余配列バイアスを除去してもよい。代わりに、個別にトランスフェクトされた宿主細胞は、選択が実行される前に、混合され、これにより、トランスフェクションによる配列バイアスを制御することが可能となるであろう。
【0180】
上で説明した製造戦略に共有した特徴は、組換えポリクローナルタンパク質を構成する全ての個別の同種ペアが、1つのバイオリアクター、又は限られた数のバイオリアクターにおいて創出されうることである。唯一の違いは、ポリクローナル製造細胞株を構成する細胞の収集物を作製することを選択する段階である。
【0181】
1つの実施態様において、本発明は、可変領域をコードする配列の連結されたペアの同種ライブラリー又はサブライブラリーを含む宿主細胞の集団を提供する。さらなる実施態様において、宿主細胞の集団は、ライゲーション又は組換えによる接続の前の多重RT−PCR増幅、又は同種ペアを連結するための本発明の多重重複伸長RT−PCR技術を利用して単離単一リンパ球細胞の集団から得られたライブラリーを含む。
【0182】
別の実施態様において、本発明は、可変領域をコードする配列の連結されたペアのコンビナトリアルライブラリー又はサブライブラリーを含む宿主細胞の集団を提供する。本発明による宿主細胞の集団は、細胞を形質転換/トランスフェクトしたライブラリーの多様性に対応して、細胞の様々な集団を包含するであろう。好ましくは、細胞の集団のそれぞれの細胞は、同種ペアの全体のライブラリーの1つの同種ペアを構成するのみであり、同種ペアのライブラリーの個別のメンバーが、宿主細胞の集団から発現する個別のメンバーの全数の50%、より好ましくは、25%、もっとも好ましくは、10%を上回らない。
【0183】
宿主細胞は、好ましくは哺乳動物細胞である。
【0184】
集団の個別の細胞は、異なる多様性の可変領域をコードする配列を含むので、上で説明した宿主細胞の集団は、組換えポリクローナル結合タンパク質の発現のために、利用することができる。
【0185】
1つの実施態様において、本発明は、連結された可変領域をコードする配列の様々な同種ペアをコードするベクターのライブラリー(このようなライブラリーは本発明の方法によって得ることができる)を含む宿主細胞の集団から発現した組換えポリクローナルタンパク質を提供する。典型的には、本発明の組換えポリクローナルタンパク質は、異なる同種ペアからなる、少なくとも、2、5、10、20又は50のタンパク質を含む。
【0186】
本発明は、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域をコードする配列の多様な同種ペアをコードするベクターのライブラリーを含む宿主細胞の集団からの組換えポリクローナル抗体の発現を可能とする。
【0187】
本発明の方法によって得られる宿主細胞は、モノクローナルタンパク質、特に、軽鎖可変領域及び重鎖可変領域の同種ペアを含むモノクローナル抗体の産生のために用いてもよい。好ましくは、このようなモノクローナル産生細胞株は、ハイブリドーマ細胞株ではない。このようなモノクローナル抗体は、目的の複数の非隣接ヌクレオチド配列を連結する方法に次の段階を追加することによって産生することができる。a)前記連結された核酸配列のベクターへの挿入、b)宿主細胞への前記ベクターの導入、c)発現に適した条件下での前記宿主細胞の培養、及びd)前記宿主細胞に挿入されたベクターから発現したタンパク質生成物の取得。好ましくは、宿主細胞に導入されるベクターは、可変領域をコードする配列の個別の同種ペアをコードする。
【0188】
本発明の適用
診断、処置及び予防における組換えモノクローナル抗体の使用が、よく知られている。本発明により産生される組換えモノクローナル及びポリクローナル抗体は、既存の技術により産生された抗体生成物と同様に用いることができるであろう。特に、有効成分としてポリクローナル組換え抗体を(ここで、特に、ポリクローナル組換え抗体は、可変領域をコードする配列の同種ペアを含む)、少なくとも1つの医薬的に許容される賦形剤と組み合わせて含む医薬組成物は、本発明の手段によって作製することができる。ポリクローナル組換え抗体組成物は、所定の疾患標的に特異的又は反応性であることができ、このようにして、組成物は、ヒト、家畜、ペットなどの哺乳動物における、腫瘍、感染症、炎症性疾患、アレルギー、ぜんそく及び他の呼吸器疾患、自己免疫疾患、免疫性機能不全、心血管疾患、中枢神経系疾患、代謝内分泌疾患、移植拒絶反応、不要な妊娠などの疾患の処置、改善、又は予防に用いることができる。
【0189】
本願において引用された全ての特許及び非特許文献は、参照により、本明細書にそのまま組み込まれる。
【実施例】
【0190】
次の実施例において本発明をさらに説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0191】
実施例1
この実施例は、リンパ球特異的細胞表面マーカーの組み合わせを用いる蛍光活性化細胞分離(FACS)を用いる細胞分離及び蛍光色素接合抗体染色による、ニワトリまたはメンドリ(ここでは、今後、単にニワトリ(Gallus gallus;Isa Warren strain)と呼ぶ)からの抗体産生B細胞の単離のための異なるゲート及び分離戦略を実証する。Bu−1は、よく知られた抗体産生細胞への成熟の間にB細胞上に存在する特異的ニワトリB細胞表面抗原であり、形質細胞への分化の間に失われる(Rothwell et al.(1996)Vet.Immunology Immunopathology 55:225−34)。さらに、抗体分泌細胞が、細胞表面におけるIgYの存在に基づき検出された。IgYの細胞表面存在が形質細胞への分化の間に失われるという事実にもかかわらず、この抗体発現の直接マーカーは、哺乳動物IgG発現システムに観察されるように、IgYの膜濃度が単一細胞分離を可能とするという仮定に基づく分離戦略に含まれる(Wiberg et al.(2006)Biotechnol.Bioeng.94(2):396−405)。T細胞細胞は検出され、CD3抗原の存在によって、分離された集団から除去された。この研究において使用されたニワトリは、破傷風トキソイド(TT)抗原で免疫付与した。それゆえ、ビオチニル化破傷風トキソイドも、TT特異的細胞の上昇した集団を染色し選別するために、蛍光色素標識ストレプトアビジンとの組み合わせにおいて使用された。ELISpotアッセイによって、抗体産生B細胞および特異的抗TT抗体産生細胞の両方について、選別されたB細胞集団をアッセイした。細胞集団の由来として用いられた脾臓は、大半の分化B細胞を含み、そのため、高含有量の抗体分泌細胞を含んでいた(Mansikka et al.,1989,Scand.J.Immunol.29(3):325−331))。
【0192】
免疫付与:
6つの23週齢メスニワトリであるLohmann Brown Lite株を、完全フロインドアジュバント(CFA)中の0.5mg破傷風トキソイド(TT)の皮下投与し、第一次免疫付与の14、21および28日後に、不完全フロインドアジュバント中の0.5mgTTで繰り返し追加免疫をすることによって免疫付与した。免疫付与したニワトリからの脾臓を、最後の追加免疫付与の2、7および10日後に取り出し、脾細胞を直ちに、回収した。
【0193】
ニワトリ脾細胞の精製:
ニワトリを安楽死させ、脾臓を直ちに回収した。脾臓を、一時的に1% ペニシリン/ストレプトマイシン(P/S)(Invitrogen,CA,US)を有する10mlの4℃RPMI1640(Invitrogen,CA,US)中に保存し、氷上に放置した。脾臓組織を50mlチューブ中の70μm細胞ろ過器(BD Falcon(商標)352350)に移した。ろ過器を通して細胞を柔らかくするために10ml 注射器プランジャーの背部を用い、手順の間、4℃の完全培地(10%ウシ胎仔血清(FCS)および1%P/Sを有するRPMI 1640)で一定間隔ろ過器をすすいだ。懸濁液中の細胞を、300xg、4℃、5分間での遠心分離によって、採取し、続いて、50ml 4℃ FACS緩衝液(リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中の2%FCS)における懸濁によって洗浄し、前に説明したように遠心分離した。最後に、細胞を4℃のFACS緩衝液に希釈し、FACSに用い、あるいは冷凍培地(10%DMSO、90%ウシ胎仔血清)中に−140℃で保存する前に、50μmFACSフィルター(BD340603)に通した。
【0194】
抗体産生B細胞を同定するための関連マーカーでの脾細胞の染色:
下のリストに示される50μlのそれぞれのネズミ抗ニワトリ抗体を、1ml 4℃FACS緩衝液中の1x108細胞に加え、暗室で、20分間、4℃でインキュベートし、第一次染色の後に、二度洗浄し、第二次染色の後に三度洗浄した。
第一次染色:
Bu−1−FITC(Southern Biotech 8395−02)
CD3−PECy5(Abcam ab25537)
IgY−PE(Southern Biotech 8320−09)
ビオチン化破傷風トキソイド
第二次染色:
ストレプトアビジン−APC−CY7
【0195】
上で挙げた抗体で抗マウスIgκCompBeads(BD 51−90−9001229)を埋め合わせるFACSAria(商標)細胞分離装置において、サンプルを分析した。様々な分離ゲートを設定することによって抗体産生B細胞集団を同定し、その後、ELIspotアッセイ(実施例2)において、そして、Symplex(商標)PCR反応(実施例3)のためのテンプレートとして、分離集団を試験した。
適用された分離ゲートは、次のとおりである:
1. Bu−1+ CD3−
2. Bu−1+ CD3− IgY+
3. Bu−1+ CD3− IgY+ TT+
4. 中間集団、P2
5. P2 IgY+ (P3)
6. P2 IgY+ TT+ (P4)
7. Bu−1− CD3−
8. Bu−1− CD3− IgY+
9. Bu−1− CD3− IgY+ TT+
分離ゲート1−3を図3に示す。分離ゲート4−9をそれぞれ図4−9に示す。
【0196】
実施例2
この例は、IgY−特異的及びTT−特異的 ELISpotアッセイを用いることにより、実施例1における分離B細胞集団の間から抗体産生B細胞集団を同定することができることを実証する。
【0197】
溶液:
洗浄緩衝液 (1xPBS,0.05% Tween):
ブロッキング緩衝液: (RPMI,2% スキムミルク)
完全 RPMI: (RPMI,10% 不活性化FCS,1%P/S)
【0198】
ELISpotアッセイ:
PBS中に希釈したいずれも10μg/mlの100μlの抗IgY抗体 (Abcam ab 6872)または破傷風トキソイドでPVDF底プレート(Multiscreen−HTS,Millipore,MSIP S45 10)を被覆し、4℃で一晩インキュベートした。陰性コントロールとして、PBSのみで被覆したウェルを用いた。プレートをPBSで3回洗浄し、続いて、200μlのブロッキング緩衝液で、4℃で少なくとも2時間ブロックした。そして、緩衝液を取り除き、50μl完全RPMIに取り替えた。
【0199】
集団1、4及び7(実施例1)からの10000の細胞を、2通りにELISpotプレートのIgY、TT又はPBS被覆ウェルに分離した。集団2、5及び8からの2000のIgY陽性細胞、並びに集団3、6及び9からの500のTT陽性細胞を、同様にELISpotウェルに分離した。ELISpotプレートを抗体分泌を可能とする標準的細胞インキュベート条件で一晩放置した。一晩インキュベートしたのち、細胞と非結合抗体を除去するために、プレートを6回洗浄した。そのうち3回は、洗浄緩衝液で、3回は、PBSで行った。分泌及び捕捉IgYまたはTT特異的IgYを検出するために、ブロッキング緩衝液中に10,000倍希釈した100μl/ウェル セイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)接合抗IgY抗体(Abcam ab6877)を添加し、続いて、37℃で1時間インキュベートした。洗浄手順を繰り返し、その後、0.1M 酢酸ナトリウム0.1M酢酸pH5.1中の0.015%H2O2及び0.3 mg/mlの3−アミノ−9−エチルカルバゾールからなる100μlの新たに作った発色基質を加えた。4分の進行ののち、H2Oで洗浄することにより、反応を止めた。実体顕微鏡を用いてスポットの数を測定した。結果を表1に示す。
【0200】
【表1】
【0201】
ELISpotアッセイのデータから、抗体産生細胞の頻度は、Bu−1− CD3−IgY+細胞で最適であることが結論づけることができる。単一細胞Symplex PCR反応からの結果は、この知見を裏付ける。
【0202】
実施例3:キメラ ニワトリ−ヒト抗破傷風トキソイド抗体レパートリーのクローニング
【0203】
実施例1に説明したニワトリ脾臓B細胞集団P2及びP3を、上で説明したように、単一細胞分離した。Symplex(商標)PCRにおける使用のために、細胞を直接、10μl緩衝液(Qiagen OneStep RT−PCRキット)を含む4つの96ウェルPCRプレートに分離し、RT−PCR反応を実行するまで−80°Cで保存した。
【0204】
ニワトリSymplex PCR増幅を、4つの96ウェルプレートのうえで行った。反応の基本的原理は以下のとおり(図1及び図2):
・まず、特異的な定常領域プライマーによって重鎖及び軽鎖cDNA合成が開始するRT反応を行う。
・次に、重複伸長によって結合したVH及びVLの形成を促進する相補的突出を備えたVH及びVL5’領域プライマーを用いて、多重PCR反応を実行する。3’プライマーは、重鎖及び軽鎖配列の定常領域に位置する。
・ヒトラムダ軽鎖及びIgG1重鎖定常領域の重複伸長による後の追加のための突出を備えたJH及びJLプライマーを用いて接合したVH及びVKのみを増幅するネストPCR反応を実行する。Symplex(商標)PCR生成物は、CDRのサイズに依存する約700のヌクレオチドからなる。
・ヒトIgG1及びラムダ定常領域は、重複伸長により付加される。
・最終生成物は、5’末端が5’末端に接合しリンカーで連結された、ヒトIgG1定常領域に結合したニワトリVH、及びヒトラムダ定常領域に結合したニワトリVLからなる。リンカー領域は、哺乳動物細胞プロモーターリーダー断片の挿入のための制限酵素サイトを含み、隣接サイトがクローニングを促進する。
・連結したキメラLC−HC断片が、ベクターバックボーンへクローニングされ、哺乳動物細胞プロモーターリーダー断片が挿入される。
【0205】
組み合わされた多重 RT−PCR反応のために、表2に示されるプライマーセットを用いて、基本的には使用説明書に従いQiagen OneStep RT−PCRキットを用いた。分離した細胞とともにPCRプレートを氷上で解凍した。酵素、反応緩衝液、dNTP及びプライマーを添加して、20μlの全反応量を得た。多重PCR反応のためのサイクリング条件は、以下のとおり。
【0206】
【表2】
【0207】
基本的には使用説明書に従いFastStartポリメラーゼ(Roche)及び試薬用いて、表3に示すプライマーセットを用いてネストPCRを実行した。全量20μlにおけるネスト反応あたり1μlの多重Symplex PCR生成物を、テンプレートとして用いた。反応条件は、以下のとおり。
【0208】
【表3】
【0209】
最後に、10μlのそれぞれの最終反応性生物を、1%アガロースゲルで分析した。図10は、予想された電気泳動の移動度を持つ21の反応生成物を用いた96ウェルプレートからの例を示す。全部で90のバンドが、4つのプレートで生じた。同様の分析を様々なゲートで定義された実施例1で記載するB細胞の全ての集団からの96の単一細胞において実行した。それぞれの亜集団からのVH及びVL重複生成物を生じるSymplex(商標)PCR反応の数を、上の表1に示す。
【0210】
4つの96ウェルPCRプレートにおける全てのウェルからのアリコートをプールして、700bp VH−VLバンドを、1%アガロースゲルで精製した。ヒトラムダ軽鎖及びIgG1重鎖定常領域を重複伸長PCRによって付加した。
・ プライマーhCHC−F及びhCHC−R(表4)を用いてPhusion(登録商標)ポリメラーゼ(Finnzymes)を用いて、抗体発現プラスミドからヒトIgG1定常重鎖領域cDNA断片(発現を改善するように最適化したコドン)を増幅した。hCHC−Fプライマーは、ネスト反応に用いられるプライマーCH−JHに相補的な5’部位を含む。プライマーhCHC−Rは、重複バンドのクローニングに用いられる隣接PacIサイトを導入する。約1000kbの定常領域断片を1%アガロースゲル上で精製した。
・ プライマーhL−F及びhL−R(表4)及び抗体発現プラスミドをテンプレートとして用いてヒトラムダ軽鎖定常領域断片を増幅した。hL−Fプライマーは、ネスト反応に用いられるプライマーCH−JLに相補的な5’部分を含む。hL−Rプライマーは、重複バンドのクローニング用いられる隣接NotIサイトを導入する。約350kb定常領域断片を、1%アガロースゲル上で精製した。
・ 精製VH−VL、ヒトラムダ及びヒトIgG1定常領域バンドを混合し(それぞれ、25:12.5:25ng)、重複伸長PCRを、プライマーhCHC−R及びhL−R(表4)を用いるPhusion(登録商標)ポリメラーゼを用いて実行した。(約2kbの重複バンドを有する)反応生成物を図11に示す。
【0211】
【表4】
【0212】
断片をNotI及びPacIで消化し、ライゲーションによって、3’を重鎖に連結したIRES−DHFR(内部リボソーム侵入部位−ジヒドロ葉酸還元酵素)及びLC及びHC−IRES−DHFRのための適当なポリアデニル化シグナルを有するプラスミドに挿入した。E.coli TOP10(Invitrogen)コンピテント細胞を電気穿孔し、100μg/mlカルベニシリンを有する大型(35x35cm)LB−アガープレートに形質転換体を蒔いた。結果として生じたコロニーを、プレートから削り落とし、Maxi−Prep kit(Compact Prep,Qiagen)を用いたDNAの精製に細菌ペレットを用いた。分離細胞からの抗体レパートリーを表す精製DNAを、AscI及びNheIで消化し、哺乳動物細胞における発現のための領域をコードするシグナル配列を有する双方向性プロモーター断片を、ライゲーションによって挿入した。ライゲーションミックスを用いて電気穿孔によってE.coli TOP10細胞を形質転換し、上記のLB−アガープレート上に蒔いた。
【0213】
実施例5:クローニングされたレパートリーにおける特異的抗破傷風トキソイド抗体の発現及びスクリーニング
【0214】
100μg/mlカルベニシリンを有するLB 培養液を含む5つの96深ウェルプレートの単一ウェルに実施例4からの単一E.coliコロニーを採取し、シェーカーインキュベーターにおいて37℃で一晩培養した。96Turbo Miniprep Kit(Qiagen)を用いて5つのプレートからDNAを調製し、VH−LC挿入物の存在をコロニーPCRによって検証した。FreeStyle(商標)293細胞発現システム(Invitrogen)を用いて、一時的なトランスフェクションを実行した。FreeStyle(商標)培地における100μlの細胞(106/ml)を5つの96ウェルプレートに蒔いた。5つの96ウェルプレートからのミニプレップDNAで細胞をトランスフェクトした。1μl 293fectin(商標)(Invitrogen)を52μlOptiMEM(登録商標)培地(Invitrogen)中に希釈した。平均0.75μgのミニプレップ精製プラスミドDNAを添加し、混合物を20分間インキュベートした。ウェルごとに7μlの混合物を添加し、96ウェルプレートを5%CO2で37℃で振盪(150rpm)して4日間インキュベートした。
【0215】
Maxisorp(商標)(Nunc)プレートを5μg/ml濃度の破傷風トキソイド (State serum Institute,Copenhagen)で一晩被覆した。プレートをスキムミルクでブロッキングして、ウェルへの添加の前に、一時的トランスフェクションからの抗体含有上清を緩衝液(Tween−20含有PBS、及びスキムミルク)に1:5に希釈した。ペルオキシダーゼ接合ヤギ抗ラムダ軽鎖抗体(Serotec)でのインキュベーションによって抗体の結合を検出し、TMB Plus(KemEnTec)を用いるペルオキシダーゼ反応及びA450を測定した。
【0216】
2倍バックグラウンドの任意のカットオフ値を用いて、11の上清が、抗破傷風反応性に陽性であると考えることができた。これをさらに実証するために、破傷風トキソイド被覆プレートを用いる上で説明した新たなELISAにおいて11の上清の7つを試験した。陰性対照として、スキムミルクでブロッキングしたのみの非被覆プレートに対して同じ7つの上清を並行して試験した。結果を表5に示す。破傷風トキソイド被覆ウェルへの明らかな結合があるが、他方、非被覆ウェルへの結合はない。
【0217】
【表5】
【0218】
単一の96ウェルプレートにおける全ウェルからの上清について、ヒトFcに対する捕捉抗体及びヒトラムダ鎖に対するペルオキシダーゼ接合検出抗体を用いるELISAにおいてIgGの存在を試験した。10倍バックグラウンドのカットオフ値を用いて、80%を超えるウェルが、IgGラムダ反応性を含み、このことにより、ニワトリヒトキメラ抗体の発現が確認された。
【0219】
実施例6:配列分析
【0220】
実施例5におけるプレート1からの12の抗体クローンをランダムに選択し、VHおよびVL領域を配列決定した。全体的に、配列決定されたプラスミドの遺伝子構造は、意図されたように、プロモーター断片越しに頭部から頭部で位置しているニワトリ由来VH及びVLを有し、正確に追加されたヒト定常領域を有しているようである。図12は、これらのクローンの10のヒトHC定常領域、及び隣接フレームワークの短い広がりを有するVH CDR3領域のアラインメントを示す。アラインメントは、高度の多様性があることを表す。同様の結果は、ニワトリVL領域についても得られたが、これもまた、高度の多様性を示す(データは示さない)。
【0221】
付属の配列表における配列番号13から22は、それぞれ、図12において上から下へ示される10配列を含む全長VH配列である。配列番号13〜22は、AscIサイト(シグナルペプチドをコードする配列の最後の部分)とXhoIサイト(ニワトリVHとヒトIgG1定常領域cDNAを連結する)の間のそれぞれの配列を含む。
【0222】
実施例5からの7つの破傷風トキソイド陽性クローンを配列決定し、そのうち5つが、信頼できる配列データを与えた。VH及びVLのDNA配列を、次の結果とともに配列した。
・ 3つの抗体(図13において上から下へ1、2及び5番目)のVH領域は、1つのヌクレオチドの相異を除いて、同一であったが、他方、残りの2つは、非常に異なった。
・ 3つの抗体(図14において上から下へ1、2及び3番目)のVL領域は、2ヌクレオチド塩基を除き、大半の配列(フレームワーク、CDR1及びCDR2)において同一であり、これは、PCR導入変異のためでありえ、他方、1つのクローン(図14において上から1番目)は、他の2つとCDR3配列において異なり、このことは、遺伝子変換によるこの領域におけるさらなる分化を示す。残りのクローン(図14において上から下へ4および5番目)のVL領域は、VH領域と同様に、非常に異なった。
【0223】
ELISA及び配列分析の組み合わせは、クローニング後の90Symplex PCRバンドが、少なくとも3つの完全に異なる破傷風特異的抗体を与えることを示し、これにより、本発明の方法が抗原特異的ニワトリ由来抗体の同定に適していることが確認された。
【0224】
実施例7:結論
【0225】
まとめると、実施例1〜6は、われわれが、抗体分泌B細胞を富化し単一細胞分離されたB細胞集団の産生のためのFACSベースの方法を確立したこと、および発現抗体遺伝子が、本明細書によって説明したchSymplex(商標)PCR技術によって単一細胞から除去されうることを実証する。ニワトリBリンパ球(CD3−)の集団は、細胞表面におけるBu−1及びIgYの量に基づき、亜集団に分けることができ、これにより、IgY及びTT特異的ELIspotアッセイの両方で得られた結果によって実証したように、抗体分泌細胞の顕著な富化が可能となる。ELIspotの結果は、表1に示すように、さらに陽性Symplex(商標)PCR反応の増大した頻度の相関関係によって支持された。さらに、TT特異的抗体が90のSymplex PCR生成物からなるパイロット規模抗体レパートリーから同定されたという事実は、抗原特異的ニワトリ抗体の単離が、本発明の方法によって容易に達成されることを実証する。
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の表面抗原マーカーに富む鳥類から得られた細胞の集団からの配列をコードする抗体重鎖及び軽鎖の同種ペアを接続する方法に関する。その方法は、増幅、特にポリメラーゼ連鎖反応(多重PCR)に関連して目的のヌクレオチド配列を接続することができる多重分子増幅手順を含む。その方法は、特に、免疫グロブリンからの配列をコードする可変領域の同種ペアライブラリーのほか、コンビナトリアルライブラリーをも生成するのに有利である。本発明は、キメラヒト/鳥類抗体の生成、及びこのような方法により生成されたライブラリーの発現のための方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
WO2005/042774は、目的のヌクレオチド配列、特に、抗体重鎖可変領域及び軽鎖可変領域(VH及びVL)の同種ペアをコードする配列を接続するための多重分子手順を使用する方法を開示する。目的の配列は、好ましくは、限界希釈法又は他の細胞分離技術に続いて、単離単一細胞から増幅され、接続される。この文献は、リンパ球含有細胞集団を富化し、特に多重分子増幅手順に適した細胞、例えば、形質細胞を産生する/コードする抗体の集団を得るさまざまな方法を開示する。
【0003】
WO2008/104184は、表面抗原CD43及びCD138又はMHCII及びB220を富化する単離単一細胞の集団において実行される多重増幅手順を用いる、マウス又は他のげっ歯類からの配列をコードする免疫グロブリンのライブラリーを生成する方法を開示する。
【0004】
これらの文献に説明された方法は、一般的には、Symplex(商標)技術と呼ばれ、特に、ヒト細胞又はマウス若しくは他のげっ歯類の細胞から得られた配列をコードする可変領域の同種ペアのライブラリーの産生に適している。しかしながら、これらの文献は、ニワトリ又は他の鳥の細胞からの同種ペアのライブラリー又はコンビナトリアルライブラリーの産生の問題に取り組んでいない。一方ではヒト、他方ではニワトリ又は他の鳥の間の系統発生学的相異を考えると、このアプローチは、鳥類抗体、もしくは、好ましくは、キメラヒト/鳥類抗体を産生する目的のために、興味深い。これは、様々なヒト疾患及び病状の処置のための治療抗体が、しばしば、マウスから産生され、しかし、マウスとヒトは、比較的に、近接に関連した種であるから、ヒト疾患及び病状におけるヒト抗原に対する最適な抗体がマウス又は他の哺乳動物種において産生されることができないかもしれないヒト疾患及び病状があるかもしれないという事実による。これは、特に、癌又は自己免疫疾患の処置を目的とするヒト自己抗原を標的とする抗体にあてはまるかもしれない。このような場合には、ニワトリや他の鳥などのヒトから系統発生学的に遠い種から目的の抗体を単離することができることが有利でありうる。本発明は、究極的には、新規で有用な抗体処置を特定することができるようにするために、ヒト治療法として使用するための潜在的な目的抗体を産生する鳥類細胞をいかにして単離するかという問題に取り組む。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、鳥からの配列をコードする免疫グロブリンのライブラリーを作製する方法、及びヒト定常領域及び鳥類可変領域を含むキメラ抗体をコードするベクターのライブラリーを作製する方法に焦点を合わせる。本発明の方法は、比較的少ない段階を含み、ハイスループットスクリーニング及びクローニングに適している。
【0006】
最初の側面において、本発明は、接続された可変領域をコードする配列を含む同種ペアのライブラリーを製造する方法であって、
a) 鳥類起源のドナーからのリンパ球含有細胞分画の提供、
b) 前記細胞分画から細胞を個別に複数の容器に分配することによる、単離単一細胞の集団の取得(ここで、少なくとも該細胞の亜集団は、免疫グロブリン遺伝子、及び所望により任意の鳥類B細胞マーカー抗原を発現する)、及び
c) 多重分子増幅手順において単離単一細胞又は同系細胞の集団由来のテンプレートを用いて目的のヌクレオチド配列を増幅し、そして増幅された目的のヌクレオチド配列の接続を達成することによる、前記単離単一細胞の集団に含まれる可変領域をコードする配列の増幅及びそれらの接続の達成
を含む方法に関する。
【0007】
この方法は、抗体又は抗体断片の同種ペアのライブラリーを提供する。
【0008】
本発明の別の側面は、複数の目的の非隣接ヌクレオチド配列をランダムに接続する方法であって、
a)多重分子増幅手順において遺伝的に多様な細胞の集団由来のテンプレートを用いた、目的のヌクレオチド配列の増幅(ここで、前記遺伝的に多様な細胞は、鳥類起源のドナーからのリンパ球含有細胞分画に由来し、少なくとも該細胞の亜集団は、免疫グロブリン遺伝子、及び所望により任意の鳥類B細胞マーカー抗原を発現する)、及び
b)段階a)において増幅された目的のヌクレオチド配列の接続の達成
を含む方法に関する。
【0009】
この方法は、ランダムに結合された重鎖及び軽鎖可変領域をコードするドメインのコンビナトリアルライブラリーを提供する。
【0010】
免疫グロブリンを発現する本発明の細胞の亜集団は、次のいずれかによって特に特徴づけられてもよく、次のいずれかを評価され及び/又は次のいずれかを富化していてもよい。
・ IgYの発現(IgY+)、
・ IgYの発現、及びCD3陰性(IgY+ CD3−)、
・ IgYの発現、Bu−1の非又は低発現、及びCD3陰性(IgY+ Bu−1− CD3−)、
・ Bu−1の発現、及びIgYの発現(Bu−1+ IgY+)、
・ Bu−1の発現、IgYの発現、及びCD3陰性(Bu−1+ IgY+ CD3−)、
・ Bu−1の発現、及び単球マーカーの非発現(Bu−1+、単球−)、
・ Bu−1の発現、及びIgMの非又は低発現レベル(Bu−1+ IgM−)、又は
・ Bu−1の発現、及びBAFFの発現(Bu−1+ BAFF+)。
【0011】
細胞の亜集団は、特に、鳥類免疫グロブリンIgYの発現により特徴づけられる。IgYのような免疫グロブリン遺伝子を発現する細胞の亜集団も検出可能なレベルの少なくとも1つの鳥類B細胞マーカー抗原を発現するであろうことが想定されうるように、この亜集団は、任意の1又は複数の鳥類B細胞マーカー抗原の発現及び/又は発現の欠損によって、さらに特徴づけられてもよい。亜集団は、このように、発現、所望により、任意の1又は複数の鳥類B細胞マーカー抗原の検出できるレベルの特定の発現のレベルに関して、及び/又は任意の1又は複数の鳥類B細胞マーカー抗原の発現の欠損に関して、定義されてもよく、ここで、鳥類B細胞マーカー抗原は、1又は複数のBu−1、CD3、IgM又はBAFFを例えば含んでもよい。特定の実施態様において、亜集団は、IgYの発現によって、及びCD3陰性(CD3−;すなわち、CD3の発現がない又は無視できる)であることによって、特徴付けられる。さらに特定の実施態様において、亜集団は、IgYの発現によって、Bu−1の非又は低発現によって、及びCD3陰性であることによって、特徴づけられる。
【0012】
他の目的のマーカー抗原は、例えば、CD19、CD20、CD27、CD38、又はCD45のようなヒトB細胞のマーカーの鳥類オーソログ;またはMHCII、B220、CD43、又はCD138のようなネズミB細胞マーカーの鳥類オーソログ;またはこれらのマーカーの組み合わせをも含んでもよい。本明細書において提供される実験的データは、IgYの発現に基づきニワトリ由来の脾細胞から単離された細胞集団が、任意にBu−1及び/又はCD3などの表面抗原の発現又は発現欠損の分離と組み合わされて、抗体をコードする配列の多重分子増幅方法を用いたクローニングのための良好な出発材料を提供することを確立する。本発明の方法は、IgYのオーソログおよび任意に他の鳥類B細胞マーカー抗原を発現する他の種に容易に適用することができる。この方法は、特に、他の鳥類種、例えば、アヒル、ガチョウ、ハト又は七面鳥に適用することができる。
【0013】
さらに、本発明の方法は、一度、特定の抗体が、選択されたら、それが、クローニングされ、その配列が決定され、そして、それが容易に組換え抗体の産生のための適当な発現ベクターに輸送することができるような、発現、輸送、ディスプレイ又はシャトルベクターなどのベクターに容易に配列及び/又は挿入することができるポリヌクレオチドのライブラリーを提供する。
【0014】
本明細書において開示されたプロトコルによって分離された細胞は、潜在的には、ピコモルの範囲における親和性を有する高親和性抗体の原料を提供することができるであろうことが予想される。ハイブリドーマからのモノクローナル抗体は、ピコモルの範囲における親和性を有さないかもしれず、その場合には、このような親和性に達するために合成的に親和性が成熟していることが必要であろう。
【0015】
1つの実施態様において、これらの方法は、さらに、多重分子増幅の前に、リンパ球含有細胞の集団が、鳥類免疫グロブリン遺伝子、特に、IgYの発現によって、及び所望により、以下に説明する基準に従う1又は複数の鳥類B細胞表面マーカー、好ましくは、CD3及び/又はBu−1の発現(存在又は不存在、又は特定の発現レベル)によって定義される細胞を含むことを評価すること、例えば、集団が、検出可能なレベルのIgY及び/又はBu−1を発現する細胞を含むことを評価することを含む。また、この方法は、IgYの発現、並びに鳥B細胞表面マーカー、好ましくは、上で説明したようなCD3及び/またはBu−1の1又は組み合わせの発現及び/又は発現欠損に関して定義されるリンパ球集団のための前記リンパ球含有細胞分画の富化を多重分子増幅前に含んでよく、例えば、IgYを発現し、Bu−1及び/又はCD3などの発現または発現欠損によって特徴づけられる細胞の富化を含んでもよい。特定の実施態様において、集団は、IgYを発現する細胞について評価され、及び/又は富化される。別の特定の実施態様において、集団は、IgYを発現し、CD3陰性である、又はIgY及びBu−1を発現する、又はIgYを発現し、非又は低レベルのBu−1を発現する細胞について評価し、及び/又は富化してもよい。
【0016】
好ましくは、この方法は、多重分子増幅の前に、免疫グロブリン遺伝子及び鳥類B細胞抗原を発現する単一細胞の、前記リンパ球含有集団からの単離をさらに含む。好ましい実施態様において、単離単一細胞又は細胞の亜集団は、陽性若しくは陰性、又はリンパ球含有細胞分画と比較した高、中間、若しくは低としてのIgY、Bu−1、及び/又はCD3の発現プロファイルによって(すなわち、上で説明した基準に従って)特徴づけられる。好ましい実施態様において、単離単一細胞又は細胞の亜集団は、IgY+及び/又はBu−1+であり、好ましくは、IgY+であり、例えば、CD3−/Bu−1−/IgY+である。富化又は単離は、好ましくは、フローサイトメトリー、特に蛍光活性化細胞分離(FACS)などの自動分離手順を含む。代わりに、分離は、磁気ビーズ細胞分離(MACS)を用いて実行してもよい。
【0017】
さらなる側面において、本発明は、ヒト定常領域及び非ヒト可変領域を有するキメラ抗体をコードするベクターを作製するための方法であって、
a) 鳥類起源のドナーからのリンパ球含有細胞分画の提供、
b) 前記細胞分画から細胞を個別に複数の容器に分配することによる、単離単一細胞の集団の取得、
c) 多重分子増幅手順において単離単一細胞又は同系細胞の集団由来のテンプレートを用いて単離単一細胞の集団に含まれる可変領域をコードする核酸を増幅し、そして増幅された重鎖及び軽鎖の可変領域をコードする核酸の接続を達成することによる、前記核酸の増幅及びそれらの接続の達成;
d) ヒト定常領域への増幅された可変領域の接続の達成;及び
e) ベクターへの取得された核酸の挿入、
を含む方法に関する。
【0018】
好ましくは、鳥種は、ニワトリである。本発明の方法が、ニワトリ/メンドリ由来の細胞に適用される限りにおいて、この方法は、ニワトリSymplex(商標)又はchSymplex(商標)と名づけられる。
【0019】
本発明のこの側面によって、キメラヒト/鳥類抗体のライブラリーの作製のための新規の方法が提供される。これは、多重分子増幅と、ヒト重鎖及び軽鎖定常ドメインのライゲーション及び/又はスプライシングを用いたベクターバックボーンへの次のクローニングとを組み合わせることによって可能になる。伝統的には、キメラヒト/鳥類抗体を産生する方法においては、キメラ化は、ハイブリドーマが確立され、スクリーニングされ、コードする配列がクローニングされた後の最終段階であった。キメラ化は、抗体の結合特異性及び/又は親和性に影響するかもしれず、したがって、ヒト/ニワトリ抗体へキメラ化された場合には、良好なモノクローナルニワトリ抗体がその効能を失うであろうリスクがある。
【0020】
キメラ抗体の抗体レパートリーを直接的に産生する方法の条件によって、スクリーニングは、前臨床及び臨床開発の前に修正する必要がないかもしれない生成物において実行することができる。
【0021】
定常ヒト領域は、分子増幅段階において提供することができ、あるいは、分子増幅に続いて可変領域がクローニングされるベクターバックボーンの部分として提供することができる。好ましい実施態様において、この方法は、順にニワトリVH鎖、リンカー、ニワトリVL鎖、及びヒト定常軽鎖を含むコンストラクトを増幅することができるプライマーセットとともに、可変軽鎖への接続を提供することができるオーバーラップを有するヒト定常軽鎖をコードするポリヌクレオチド、又はその断片をPCR混合物に添加するさらなる増幅段階を含む。
【0022】
別の実施態様において、この方法は、順にヒト定常重鎖、ニワトリVH鎖、リンカー、及びニワトリVL鎖を含むコンストラクトを増幅することができるプライマーセットとともに、可変重鎖への接続を提供することができるオーバーラップを有するヒト定常重鎖をコードするポリヌクレオチド、又はその断片をPCR混合物に添加するさらなる増幅段階を含む。
【0023】
したがって、それぞれの抗体メンバーが、鳥類免疫グロブリン可変領域をコードする配列、及びヒト免疫グロブリン重鎖及び軽鎖定常領域からなる、キメラ抗体をコードするベクターのライブラリーも提供される。
【0024】
好ましくは、ベクターは、抗原特異性のための次のスクリーニングのために、ライブラリーの抗体メンバーの発現を可能とする発現ベクターである。より好ましくは、発現ベクターは、哺乳動物発現のためのものである。ライブラリーのベクターは、本発明の方法によって得てもよい。
【0025】
1つの実施態様において、軽鎖定常領域は、ヒトラムダ又はカッパ定常領域である。
【0026】
鳥類配列は、任意の鳥類起源のドナーからであってよく、ここで、そのための配列情報は適切なプライマーの設計を可能とするために得ることができ、そのための適切な細胞分離技術は、可変領域配列の同種ペアを連結するための単一細胞多重分子増幅のための抗体を産生又はコードする細胞の分離を可能とする。
【0027】
好ましくは、抗体の可変領域は、同種ペアである。
【0028】
別の側面において、本発明は、本発明によるライブラリーから選択される特定の標的に対して所望の結合特異性を示す抗体をコードするサブライブラリーに関する。
【0029】
さらなる側面において、本発明は、ウェルの大多数において、鳥類ドナーからのリンパ球含有細胞分画からの1つの細胞(ここで、前記細胞は、IgY及び/又はBu−1抗原を含む免疫グロブリン遺伝子を発現する)、並びにmRNAの逆転写を実行するために必要な、及び可変重鎖及び軽鎖をコードする領域を増幅するために必要な緩衝液及び試薬を含む、多重プレートを提供する。
【0030】
さらなる側面において、本発明は、鳥起源免疫グロブリン可変領域をコードする配列のライブラリーを製造する方法であって、
a) 鳥類起源のドナーからのリンパ球含有細胞分画の提供、
b) 前記細胞分画から細胞を個別に複数の容器に分配することによる、単離単一細胞の集団の取得(ここで、少なくとも該細胞の亜集団は、免疫グロブリン遺伝子、例えば、IgY、及び所望により少なくとも1つの鳥類B細胞マーカー抗原を発現する)、及び
c) 多重分子増幅手順において単離単一細胞又は同系細胞の集団由来のテンプレートを用いて目的のヌクレオチド配列を増幅することによる、前記単離単一細胞の集団に含まれる可変領域をコードする配列の増幅
を含む方法を提供する。
【0031】
この方法によって、鳥起源免疫グロブリン可変領域をコードする配列のライブラリーは、本明細書において一般的に説明したように、鳥類免疫グロブリン遺伝子を発現する細胞の亜集団から取得されてもよい。この方法は、同種ペアのライブラリー、すなわち、鳥起源抗体又はその断片のライブラリーを取得するように、重鎖及び軽鎖可変領域をコードする配列の接続を達成するさらなる段階を含んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】ニワトリ可変領域の多重RT−PCR及びネスト増幅の原理。次のプライマー略称を用いる:CH−HCrev:ニワトリIgY重鎖定常領域アンチセンスプライマー、CH−VH: ニワトリ重鎖可変領域5’センスプライマー、CH−VL:ニワトリ軽鎖可変領域5’センスプライマー、CH−LCrev:ニワトリ軽鎖定常領域アンチセンスプライマー、CH−JH:ニワトリ重鎖J−領域アンチセンスプライマー、CH−JL:ニワトリ軽鎖J−領域アンチセンスプライマー。
【図2】ヒト重鎖及び軽鎖定常領域を重複伸長PCRによって付加し、ベクターバックボーンにクローニングし、哺乳動物プロモーターリーダー断片を付加する原理。ヒト重鎖及び軽鎖定常領域は、適当なJ領域のための重複を有して、増幅される。次のプライマー略称を用いる:hCHC−R:ヒトIgG1定常領域3’アンチセンスプライマー、hL−R: ヒトラムダ定常領域3’アンチセンスプライマー。
【図3】脾細胞のこの集団のうち、3つのゲートが設定された。(1)Bu−1+CD3−細胞(左上)、(2)中間集団、P2(Bu−1低CD3−/低)、(3)Bu−1−CD3−細胞(左下)。図3〜9は、様々な表面マーカー(Bu−1、CD3、IgY、及びTT特異的IgY)で染色したニワトリ脾細胞のドットプロットを示す。ニワトリを破傷風トキソイドで免疫付与し、不完全フロインドアジュバント(IFA)中のTTでの3度目の追加免疫の10日後に脾臓を採取した。実施例1を参照のこと。
【図4】Bu−1+CD3−細胞のうち、追加のIgY+ゲートが含まれた。
【図5】Bu−1+CD3−IgY+細胞のうち、TT+細胞がゲートされた。
【図6】Bu−1−CD3−細胞のうち、追加のIgY+ゲートが含まれた。
【図7】Bu−1−CD3−IgY+細胞のうち、TT+細胞がゲートされた。
【図8】中間集団のうち、P2、新たなゲートが、IgY+細胞(P3)として定義された。
【図9】Bu−1低CD3−/低IgY+細胞(P3)のうち、TT+細胞がゲートされた。
【図10】図10は、実施例4から予測される電気泳動の移動度を有する21のSymplex反応生成物を含むアガロースゲルを示し、そこでは、キメラニワトリヒト抗破傷風トキソイド抗体レパートリーがクローニングされた。サイズマーカー(500、1000、1500など。塩基対バンド)も示す。
【図11】図11は、精製ニワトリVH−VL、ヒトラムダ軽鎖定常領域およびヒトIgG1重鎖定常領域をコードする配列の混合物において実行された重複伸長PCR後の反応生成物(約2kb重複バンド)を示す。
【図12】図12は、Symplex PCRによって、破傷風トキソイドで免疫付与されたニワトリからの脾臓B細胞から単離された抗体からランダムに選択された10のクローンからのVH領域のアラインメントを示す。隣接フレームワークおよびヒトHC定常領域の短い広がりを有するCDR3領域を示す。示す配列は、上から下へ、配列番号13〜配列番号22の部分配列である。
【図13】図13及び14は、5つの破傷風トキソイド特異的クローンのVH(図13)及びVL(図14)のCDR3領域のアラインメントを示す。図13:VH CDR3 アラインメント;配列は、上から下へ、配列番号23〜27の配列である。
【図14】図14:VL CDR3 アラインメント;配列は、上から下へ、配列番号28〜32の配列である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明は、鳥からの抗体ベクターの収集を提供するための、WO2005/042774に開示される一般的な増幅および接続方法を用いるためのさらなる可能性を提供する。これらの改善は、ハイスループット形式における使用に適した可変領域の同種ペアを有するヒト/鳥類キメラ抗体をコードする配列のクローニングを可能にする。これは、増幅および接続プロセスのための新たな出発材料を提供し、可変領域の同種ペアを有するキメラヒト/鳥類抗体のライブラリーの作製のための方法を提供することによって達成される。
【0034】
本発明の1つの側面は、多重分子増幅手順において、単離単一細胞、同系細胞の集団または遺伝的に多様な細胞の集団由来のテンプレートを用いて、関連する鳥類ヌクレオチド配列を増幅し、続いて、増幅された配列の接続を達成することによって、重鎖および軽鎖可変領域配列を連結する方法である。
【0035】
定義
用語「同種ペア」は、単一細胞の中に含まれる、あるいは単一細胞に由来する目的の非隣接核酸の原初のペアを表す。好ましい実施態様において、同種ペアは、ともに結合タンパク質可変ドメインをコードし、同一の細胞に由来する2つの可変領域をコードする配列を含む。このように、完全結合タンパク質、またはその安定的断片のいずれかとして発現された場合、それらは、この細胞から原始的に発現した結合タンパク質の結合親和性および特異性を保存する。同種ペアは、例えば、同一の細胞からの可変軽鎖をコードする配列と結合した抗体可変重鎖をコードする配列、あるいは同一の細胞からのβ鎖をコードする配列と結合したT細胞受容体α鎖をコードする配列でありうる。同種ペアのライブラリーは、このような同種ペアの収集物である。
【0036】
用語「同系細胞集団」は、遺伝的に同一の細胞の集団を表す。特に、単離単一細胞のクローン性増殖によって生成された同系細胞集団は、本発明における関心の対象である。
【0037】
用語「単離単一細胞」は、細胞の集団から物理的に分けられた細胞をいい、「単一の容器における単一の細胞」に対応する。複数の容器のなかで個別に細胞集団を分配する場合、単離単一細胞の集団が得られる。「テンプレート源」と題するセクションに特定されるように、単一細胞の集団とみなされるためには、単一細胞を有する容器の比率は、必ずしも100%でなければならないわけではない。
【0038】
細胞の表面上の抗原マーカーの発現レベルの文脈における用語「高」、「中間」および「低」は、任意の所与の分析または分離手順における分析された細胞の全部の集団と比較した、細胞の小集合の相対的蛍光強度に基づく相対的測定である。細胞の「陰性」集団は、しばしば、下の蛍光強度によって、約103平均蛍光ユニットと定義される。「低」として指定される細胞集団の分画は、陰性集団に類似してよいが、「中間」細胞集団のちょうど下であってもよい。ここで、中間集団は、低細胞集団よりも高いが、最高の蛍光強度(これは、しばしば、約104平均蛍光ユニットを超える)を与える細胞分画よりも少ない蛍光強度を有する。高、中間、低または陰性の定義は、個別の分析に関連し、ここで引用される平均蛍光ユニット値は、典型的であるが必ずしも限定的ではない典型値であることは強調されるべきである。これは、FACSなどのフローサイトメトリー技術の当業者によって理解され、その当業者は、任意の特定のフローサイトメトリー手順の結果を容易に明らかにすることができるであろう。
【0039】
増幅に関して、用語「連結」又は「接続」は、目的の核酸配列をコードする増幅された核酸配列を、単一の部分に結合することをいう。同種ペアに関連して、単一部分は、可変ドメインをコードする核酸配列、例えば、抗体軽鎖可変領域と結合した抗体重鎖可変領域をコードする配列を含み、ここで、2つの可変領域をコードする配列は、同一の細胞に由来する。接続は、増幅と同時に、あるいは、増幅に続く別異の段階としてのいずれかで達成されうる。部分の形式または機能に関しては、必要な条件はなく、それは、直線、円状、単鎖または二本鎖でありうる。目的の核酸配列の1つが、所望ならば部分から単離されてもよいように、接続は、必ずしも永続的ではない。可変領域をコードする配列の1つは、たとえば、同種ペア部分から単離されてよい。しかしながら、同種ペアを構成する原初の可変領域が他の可変領域とスクランブルされないかぎり、それらは、互いに単一部分に連結されないかもしれないが、それらは、いまだに同種ペアとみなされる。接続は、好ましくは、ヌクレオチドリン酸ジエステル接続である。しかしながら、接続は、異なる化学的交差連結手順によっても得られうる。
【0040】
用語「多重分子増幅」は、2又はそれ以上の標的配列を、同一の反応において同時に増幅することをいう。適した増幅方法は、ポリメラーゼ鎖反応(PCR)、リガーゼ鎖反応(LCR)(Wu and Wallace,1989,Genomics 4,560−9)、ストランド置換増幅(SDA)技術(Walker et al.,1992,Nucl.Acids Res. 20, 1691−6)、自立配列複製(Guatelli et al.,1990,Proc.Nat.Acad.Sci.USA,87,1874−8)、および核酸ベース配列増幅(NASBA)(Compton J.,1991,Nature 350,91−2)を含む。最後の2つの増幅方法は、等温転写に基づく等温反応を含み、単鎖RNA(ssRNA)および二本鎖DNA(dsDNA)の両方を生成する。
【0041】
用語「多重PCR」は、同一の反応において1を超えるプライマーセット(例えば、同一のPCR反応における、重鎖可変領域の増幅に適合した1つのプライマーセットと、鳥類軽鎖可変領域の増幅に適合した1つのプライマーセット)を含むことにより、2またはそれ以上の標的配列が同時に増幅されるPCRの変形を表す。
【0042】
用語「多重RT−PCR」は、逆転写(RT)段階が先行する多重PCR反応をいう。多重RT−PCRは、多重PCRの前に別異のRT段階を有する2段階過程として、またはRTと多重PCRの両方のための全ての成分が単一の容器において組み合わされた単一段階過程としてのいずれかで実行されうる。
【0043】
用語「多重重複伸長PCR」および「多重重複伸長RT−PCR」は、標的配列を増幅するために多重重複伸長プライマーミックスを利用して、これにより同時増幅および標的配列の接続を可能として、多重PCRまたは多重RT−PCRが実行されることを暗示する。
【0044】
用語「複数の容器」は、細胞の集団からの単一細胞の物理的分離を可能とする任意の物体(または物体の収集物)を表す。これは、チューブ、マルチウェルプレート(例えば、96−ウェル、384−ウェル、マイクロタイタープレート、または他のマルチウェルプレート)、アレイ、マイクロアレイ、マイウロチップ、ゲル、またはゲルマトリックスでありうる。好ましくは、物体は、PCR増幅に適用できる。用語「チューブ」または「容器」は、本明細書においては、同意で用いられうる。
【0045】
本明細書において、用語「ポリクローナルタンパク質」又は「ポリクローナル性」は、異なる、しかしながら同種であり、好ましくは、免疫グロブリンスーパーファミリーから選ばれるタンパク質分子を含むタンパク質組成物を意味する。このように、それぞれのタンパク質分子は、組成物の別の分子と同種であるが、ポリクローナルタンパク質の個別のメンバーの間のアミノ酸配列における相異により特徴づけられる少なくとも1つの可変ポリペプチド部分配列も含む。このようなポリクローナルタンパク質の知られた例には、抗体または免疫グロブリン分子、T細胞受容体およびB細胞受容体が含まれる。ポリクローナルタンパク質は、所望の標的に対する共有した結合活性などのような共通の特徴によって定義されたタンパク質分子の定義された部分、例えば、所望の標的抗原に対する結合特異性を示すポリクローナル抗体で構成されてもよい。
【0046】
本明細書において、用語「免疫グロブリン」及び「抗体」は、同意味に用いられうる。
【0047】
本明細書において用語「遺伝的に多様な細胞の集団」は、個別の細胞が互いにゲノムレベルで異なる細胞集団を意味する。このような遺伝的に多様な細胞の集団は、例えば、ドナーに起源がある細胞、あるいは、このような細胞の分画(例えば、Bリンパ球又はTリンパ球含有細胞分画)の集団であってよい。
【0048】
用語「プライマーペア」は、目的のヌクレオチド領域の増幅を開始することができる2つのプライマーを表し、他方、用語「プライマーセット」は、互いに目的のヌクレオチド配列の増幅を開始することができる2又はそれ以上のプライマーを表す。プライマーセットは、このように、少なくとも1つのプライマーペアを含むが、2を超えるプライマーを含んでもよく、しばしば多重プライマーペアを含むであろう。本発明のプライマーセットは、可変領域をコードする配列を含むヌクレオチド配列のファミリーを開始するように設計されてもよい。異なるファミリーの例は、抗体カッパ軽鎖、ラムダ軽鎖および重鎖可変領域である。可変領域をコードする配列を含むヌクレオチド配列のファミリーの増幅のためのプライマーセットは、しばしば、いくつかのプライマーが変性したプライマーでありうる複数のプライマーを構成する。
【0049】
用語「配列同一性」は、2つの配列の最短の長さについての2つの核酸配列の間の同一性の度合を示すパーセンテージとして表現される。これは、(Nref − Ndif)×100%/Nrefとして計算することができ、ここで、Nrefは、配列の短い方における残基の数であり、Ndifは、2つの配列の間で一致を最適に配列したNref長における非同一残基の全体数である。例えば、DNA配列AGTCAGTCは、配列TAaTCAaTC(Ndif=2、Nref=8)(下線は、最適なアラインメントを示し、小文字のaは、8のうちの2つの非同一残基を表す)と、75%の配列同一性を有するであろう。
【0050】
接続に関しての用語「ランダムに」又は「ランダム」は、同一細胞に由来するわけではないヌクレオチド配列の接続を意味する。もし、目的のヌクレオチド配列が、可変領域をコードする配列であるならば、これは、連結された配列のコンビナトリアルライブラリーをもたらすであろう。他方、もし、目的のヌクレオチド配列が、多様でない異種タンパク質をコードするならば、ランダムに連結された配列は、単一細胞から連結された配列に類似するように見えるであろう。
【0051】
逆転者の文脈において用語「単離単一細胞に由来するテンプレート」は、このような単離細胞のなかの核酸に関する。核酸は、例えば、mRNA又は他のRNA、あるいはゲノム又は他のDNAの形式でありうる。核酸は、細胞から単離されるか、あるいは無傷である又は溶解した細胞の他の内容物に関係するかのいずれかでありうる。
【0052】
用語「Bu−1」は、特異的ニワトリ表面抗原を意味し、類義語として、chB6及びBu1も知られる。2つの異なる高度に同種のニワトリBu−1タンパク質が知られている。これらは、Bu−1a(Uniprot accession No.Q90746)及びBu−1b(Uniprot accession No.Q90747)と呼ばれる。いずれも、全長335のアミノ酸残基を有し、2つの配列は、ほんのわずかの残基を除き、同一である。本明細書においては、用語「Bu−1」は、Bu−1a及びBu−1bのいずれをもカバーすることが意図されている。
【0053】
用語「IgY」は、ニワトリにおける主要な血清免疫グロブリンを意味し、同義語として、ニワトリIgGも知られる。
【0054】
用語「BAFF」は、B細胞活性化因子を意味し、同義語として、BlyS、TALL−1、THANK及びzTNF4も知られる。
【0055】
本明細書において、用語「鳥類」及び「鳥」は、同意味に用いることができ、また、例えば、ニワトリ、アヒル、ガチョウ、ハト、及び七面鳥を含むことが意図されている。本発明において用いられる好ましい鳥は、ニワトリである。
【0056】
本明細書において用語「ニワトリ」は、一般的には、セキショクヤケイ種のメンバー、特に家畜化されたニワトリである部分種ニワトリを意味し、メンドリおよびオンドリの両方、すなわち、メスおよびオスの両方を含むことが意図される。
【0057】
「chVH」などの用語において用いられる場合、文字「ch」は、ニワトリ由来の配列を意味する。
【0058】
本明細書において用語「オーソログ」は、共通の祖先から進化した2又はそれ以上の種における遺伝子を意味する。例えば、ヒトB細胞マーカーのオーソログをコードする鳥類遺伝子は、一般的には、オーソログのヒト遺伝子によりコードされるタンパク質と同一の又は類似する機能を有するタンパク質をコードするであろう。
【0059】
用語「高温開始ポリメラーゼ」は、逆転写のために用いられる温度で不活性である、または非常に低い活性を有するポリメラーゼを表す。このようなポリメラーゼは、機能的になるように、高温(90〜95℃)によって活性化させる必要がある。これは、逆転写反応でのポリメラーゼの干渉を阻害するので、例えば、単一段階RT−PCR過程において利点である。
【0060】
目的の配列
本発明に従い連結してもよい目的のヌクレオチド配列は、その発現産物がタンパク質又はタンパク質の部分である異なるサブユニット又はドメインをコードする配列から選択することができる。特に、コードされるタンパク質又はその部分は、異種タンパク質、すなわち少なくとも2つの非同一サブユニットを含むタンパク質である。このようなタンパク質が属するいくつかのクラスは、例えば、酵素、インヒビター、構造タンパク質、毒素、チャネルタンパク質、Gタンパク質、受容体タンパク質、免疫グロブリンスーパーファミリータンパク質、輸送タンパク質などである。このような異種タンパク質をコードするヌクレオチド配列は、非隣接であり、これは、それらが、例えば、異なる遺伝子、あるいは異なるmRNA分子に由来することを意味する。しかしながら、本発明の文脈において使用される非隣接は、同一のタンパク質のドメインをコードするヌクレオチド配列をも意味してもよく、ここで、ドメインは、目的でないヌクレオチド配列によって分離される。
【0061】
本発明の1つの実施態様において、目的のヌクレオチド配列は、免疫グロブリン(抗体)又はB細胞受容体などの免疫グロブリンスーパーファミリーからの可変領域をコードする配列を含む。免疫グロブリンからの可変領域をコードする配列は、特に興味深い。このような可変領域をコードする配列は、完全長抗体だけでなくその断片、例えば、Fabs、Fvs、scFvs、又は可変領域をコードする配列の断片の組み合わせ、例えば、相補性決定領域(CDRs)、結合遺伝子又はV遺伝子又はこれらの組み合わせを含む。一般的には、本発明は、可変領域をコードする配列およびその断片の任意の組み合わせに適用することができる。例えば、本発明は、抗体重鎖および軽鎖の可変ドメインの接続を可能とし、これにより、Fv又はscFvをコードする配列を産生し、あるいは、例えば、重鎖可変領域+定常領域ドメインCH1+ヒンジ領域の部分への完全軽鎖の接続を可能とし、これによりFab、Fab’又はF(ab)2を産生する。さらに、重鎖定常領域ドメインの任意の領域を可変重鎖に付加することが可能であり、これにより、完全長抗体をコードする配列又は切断された抗体をコードする配列が産生される。本発明の1つの側面において、非ヒト、鳥由来可変配列が、ヒト定常領域に連結され、キメラヒト/鳥類抗体が産生される。
【0062】
テンプレート源
本発明は、単離単一細胞(それぞれの個別の細胞は、単一ウェル又は他の容器に位置する)、同系細胞の集団、又は単一容器に分けられなかった遺伝的に多様な細胞集団に由来するヌクレオチド配列の接続を可能にする。
【0063】
目的の核酸配列スクランブル、すなわち、異なる細胞に由来する配列の接続を避けるため、本発明の好ましい特徴は、単離単一細胞又は同系細胞の集団をテンプレート源として使用することである。これは、目的が可変領域をコードする同種ペア又はCDRをコードする配列を得ることである、抗体可変領域をコードする配列の場合には特に重要である。
【0064】
好ましくは、本発明は、Bリンパ球などのリンパ球、形質細胞及び/又はこれらの細胞系列の様々な発生段階を含む細胞分画からの単一細胞又は単一細胞の集団において実行される。免疫グロブリンスーパーファミリーからの結合タンパク質を発現する他の細胞集団も、単一細胞を得るために使用してよい。ハイブリドーマ細胞などの細胞株、Bリンパ球系列の細胞株、又は免疫応答に参加するウイルス不死化細胞株若しくはドナー起源細胞も、本発明において使用してよい。ドナー起源リンパ球含有細胞分画は、このような細胞が豊富である自然組織又は体液、例えば、血液、骨髄、リンパ節、脾臓組織、扁桃組織、ファブリーキウス嚢において、あるいは、腫瘍又は炎症組織浸潤における及びその周囲の浸潤から得てもよい。好ましくは、脾臓組織、血液、ファブリーキウス嚢又は骨髄が用いられる。ドナーは、所望の標的に関して、未感作又は高度免疫の鳥のいずれかでありうる。特に好ましい実施形態において、ドナーは、癌又は炎症疾患、例えば、EGFR又はTNFαに関係するヒトタンパク質などのヒト自己抗原で免疫付与されたニワトリ又は他の鳥である。
【0065】
ドナーは、ヒト抗体可変重鎖及び軽鎖に由来する、あるいはそれと顕著に類似性がある免疫グロブリンを産生することができるヒト免疫グロブリン配列を有するトランスジェニック鳥、好ましくは、トランスジェニックニワトリであってもよい。特異的標的に対するヒト抗体は、標準的な免疫付与技術を用いる所望の抗原でのこのようなトランスジェニック鳥の免疫付与によって得ることができる。これは、ヒトにより密接に関係する例えばマウス又は他の動物を用いて抗体を産生することが困難である又は不可能である標的に対する抗体をコードするライブラリーの産生を可能にする。このアプローチは、例えば、自然ヒト抗体応答がない又はごくわずかな応答しかないヒト抗原の場合に特に有用であると想定される。
【0066】
ニワトリ、特に、トランスジェニックニワトリ、又は他の鳥のドナーとしての使用は、それらがマウス又は他の哺乳動物からの抗体応答と比較して代替ヒト応答を提供する点において有利であると期待される。ニワトリ/鳥およびヒトの間の遠位系統発生的関係は、鳥よりもヒトにより密接に関係する種、例えば、マウス、ラット、又は非ヒト霊長目において、配列相同性のために免疫原性でないであろうエピトープに対する抗体応答を可能にする。ニワトリ抗体応答によって得ることができることを意図する拡張した多様性は、治療的潜在的可能性とともに同定された抗体の頻度が増大し、さらにヒト及びマウス抗原オーソログの間で交差反応性である抗体の同定が可能となり、それが、マウス疾患モデルにおける前臨床研究を促進しうるという潜在的可能性を有する。
【0067】
1つの実施態様において、リンパ球含有細胞分画は、ドナーから得られた全血、骨髄、単核細胞又は白血球を含む。単核細胞は、血液、骨髄、リンパ節、脾臓、ファブリーキウス嚢、腫瘍細胞の周囲の浸潤、又は炎症性浸潤から単離することができる。単核細胞は、密度遠心分離技術、例えば、フィコール比重によって単離することができる。もし、単核細胞が組織からなる試料から単離されるならば、その組織は、密度遠心分離が実行される前に分解される。分解は、例えば、グラインディング、電気穿孔などの機械的方法、及び/又は酵素処理などの化学的方法によって実行することができる。例えば骨髄又はリンパ球を含む組織の生の調製物も用いることができる。このような調製物は、単一細胞分配を促進するために、例えば、上で説明したように分解することが必要であろう。
【0068】
好ましい実施態様において、リンパ球含有細胞分画、例えば、全血、単核細胞、白血球又は骨髄は、Bリンパ球系列からの細胞などのリンパ球集団に関して富化されている。Bリンパ球の富化は、Bu−1などの系列特異的細胞表面マーカータンパク質、またはIgYなどの他の鳥類B細胞系列特異的マーカーを利用する、磁気ビーズ細胞分離(MACS)又は蛍光活性化細胞分離(FACS)を使用することによって例えば実行される。あるいは、既知のヒト又はネズミB細胞マーカーのニワトリオーソログを用いてもよい。
【0069】
本発明の好ましい特徴は、細胞を個別に複数の容器のうちに分配する前に、さらに形質細胞を得るために富化したBリンパ球を分離することである。形質細胞の単離は、一般的には、IgY、CD3、Bu−1、IgM、単核白血球マーカー及びBAFFなどの表面マーカーの発現プロファイルを利用するMACS分離又はFACS分離によって実行される。上で説明したように、細胞の分離及び選別は、1又は複数のこれらのマーカーの発現の不存在又は存在、例えば、それらを選別又は単離したリンパ球含有細胞集団と比較して発現を低い、中間又は高いと特徴づけることに基づく。他の形質細胞特異的表面マーカー又はその組み合わせ、例えば、CD138、CD43、CD19又はMHC−IIのニワトリオーソログも、利用することができる。マーカーの正確な選択は、例えば、脾臓、ファブリーキウス嚢、扁桃腺、血液、又は骨髄などの形質細胞源のほか、細胞を単離する種に依存する。
【0070】
上で説明したように、本発明における使用に好ましいマーカーは、IgYであり、好ましい実施態様において、選択される細胞は、IgY+である。IgY+細胞に基づくさらに特定の実施態様において、選択される細胞は、IgY+、CD3−であってもよく、それらは、IgY+、Bu−1−、CD3−であってもよい。これに代えてあるいはこれに加えて、細胞は、Bu−1の発現(又は発現の欠如)に部分的に基づき選択されてもよい。Bu−1発現に基づく特定の実施態様は、Bu−1+ IgY+;Bu−1+ IgY+ CD3−;Bu−1+ 単核白血球−;Bu−1+ IgM−;又はBu−1+ BAFF+である細胞の選別である。
【0071】
形質細胞は、これらの源の任意のものから得られた非富化リンパ球含有細胞集団から得ることもできる。血液から単離された形質細胞は、ときに、早期形質細胞又は形質芽球と呼ばれる。本発明の文脈において、これらの細胞も、「形質細胞」であるとみなされる。他のBリンパ球細胞と比較して、高頻度の形質細胞が、所望の抗原に対する後天性免疫性を反映する抗原特異的抗体を産生し、その大半の細胞が、体細胞超変異を経由し、そのために高親和性抗体をコードするので、形質細胞は、免疫グロブリンをコードする配列の同種ペアの単離が要求される。さらに、単一形質細胞を用いるときに逆転写手順がより効率的であるように、形質細胞におけるmRNAレベルは、残りのBリンパ球集団と比較して高められる。形質細胞単離の代替手段として、IgYなどの細胞表面マーカー、又はヒトCD27B細胞表面マーカーのニワトリオーソログの発現レベルを利用して、リンパ球含有細胞分画から記憶B細胞を単離してもよい。
【0072】
1つの実施態様において、富化Bリンパ球は、細胞を複数の容器のうちに分配する前に、抗原特異性によって選択してもよい。抗原特異性Bリンパ球の単離は、富化Bリンパ球を所望の抗原(抗原は複数でもよい)に接触させ、表面露出免疫グロブリンへの抗原の結合を可能とし、続いて、結合物を単離することによって実行される。これは、例えば、所望の抗原(抗原は複数でもよい)のビオチニル化、これに続く適切な細胞分離技術によって行うことができる。形質細胞のほか、Bリンパ球、非富化単核細胞、白血球、全血、骨髄又は組織調製物は、所望ならば、抗原特異性に関する単離を受けうる。
【0073】
特定の表面マーカーを発現する細胞の分離、すなわち陽性選択の代わりとして、特定のマーカーを発現しない細胞を細胞の組成物から欠失させ、実際にマーカーを発現する細胞を残すことがありうる。
【0074】
所望ならば、上で説明した任意の単離細胞分画(例えば、Bリンパ球、形質細胞、記憶細胞)を不死化してもよい。不死化は、例えば、細胞分配の前に実行してもよい。これに代えて、単離単一細胞は、逆転写の前に不死化及び拡大してもよい。
【0075】
1つの実施態様において、所望の細胞集団(例えば、ハイブリドーマ細胞、Bリンパ球系列の細胞株、全血細胞、骨髄細胞、単核細胞、白血球、Bリンパ球、形質細胞、抗原特異的Bリンパ球、記憶B細胞)は、単離単一細胞の集団を得るために、複数の容器に個別に分配される。この単一細胞の単離は、単一容器が単一細胞を含有するという方法での、あるいは、マイクロアレイ、チップ、又はゲルマトリックスが単離単一細胞を引き起こす様式で充填される方法での、細胞集団からの細胞の物理的分離を意味する。細胞は、限界希釈法による単一容器のアレイなどの多重容器に直接に分配してもよい。本発明に利用される単一容器は、好ましくは、PCRに適したもの(例えば、PCRチューブ、及び96ウェル又は384ウェルPCRプレート、又はより大きい容器のアレイ)である。しかしながら、他の容器を用いてもよい。単一細胞を多数の数の単一容器(例えば、384ウェルプレート)に分配する場合、単一細胞の集団が得られる。このような分配は、例えば、単一分量を、平均的に0.5又は0.3細胞の細胞濃度を包含する単一容器に分注し、これにより、主に単一細胞又はそれ以下の細胞を含む容器を得ることによって実行してもよい。限界器釈放による細胞分配は、統計に基づく事象であるので、ある容器の分画は、空であり、主要な分画は、単一細胞を含有し、少数の分画は、2又はそれ以上の細胞を含有するであろう。2又はそれ以上の細胞が容器に存在する場合には、可変領域をコードする配列のある種のスクランブリングが、容器に存在する細胞の間で起こるかもしれない。しかしながら、これはマイナーな事象であるので、これは、本発明の全般的な有用性に影響を与えないであろう。さらに、所望の結合親和性及び特異性を有さない可変領域をコードする配列の組み合わせは、大抵、選別されないであろうし、それゆえ、これらはおそらくスクリーニングプロセスの間で除去されるであろう。それゆえ、スクランブリングのマイナーな事象は、本発明の最終ライブラリーに顕著に影響を与えないであろう。
【0076】
限界希釈による細胞分配の代替手段として、例えば、FACS装置又は正確に単一容器に単一細胞を分注するようプログラムすることができるロボットなどのような細胞分離装置を用いる手段がある。これらの代替手段は、より面倒でなく、単一細胞の単一容器への分配を均一に得ることについてより効率的であるので、好ましい。
【0077】
上で説明した富化、分離及び単離手順は、大多数の細胞が無傷のままであるように実行される。富化及び分離の間の細胞の破壊は、可変領域をコードする配列のスクランブリングを引き起こすかもしれない。しかしながら、破壊の頻度は、低いと予想されるので、このことは、問題であると予想されない。単一容器への分配の前の細胞の洗浄及び可能なRNA分解酵素処理は、一連の過程の間で漏れた任意のRNAを除去するであろう。
【0078】
さらに、単一容器の集団における単一細胞の集団を得るためにいかに細胞を分配するかの上の説明を考慮する場合、上で説明したように、全ての容器が単一細胞を含むことは必須ではない。むしろ、本発明は、単一細胞を含有する容器が大多数であり、1より多い細胞を含有する容器が比較的少数の割合しかないこと(例えば、2又はそれ以上の細胞を有する容器の数が、好ましくは、分配する細胞全体量の25%より下であり、より好ましくは、10%より下、例えば、5%より下である)に依存することは、当業者には明白であろう。
【0079】
好ましい実施態様において、逆転写(RT)は、複数の容器の間で個別に分配された細胞に由来するテンプレートを用いて実行される。
【0080】
単一細胞のそれらの単一容器への最終分配が実行された場合、単一細胞は、逆転写の前に同系細胞の集団を得るために拡大してもよい。この過程は、テンプレートとして用いられるべきより多くのmRNAを産出し、これは、もし稀有な標的が増幅され連結されるならば、重要であるかもしれない。しかしながら、細胞は、拡大の間、標的遺伝子に関する遺伝的同一性を残すべきである。単離細胞又は同系細胞の集団は、逆転写のためのテンプレートが分解されない限り、無傷のままであるか、溶解しているかのいずれかであることができる。好ましくは、細胞は、続く逆転写及びPCR増幅を容易にするために、溶解している。
【0081】
異なる実施態様において、単一細胞に分離されなかったが、細胞のプールとして互いに残っている遺伝的に多様な細胞集団に由来するテンプレートにおいて、ライゲーションによる接続又は組換えに続く多重重複伸長RT−PCR又は多重RT−PCRが利用されてもよい。この方法は、コンビナトリアルライブラリーの産生のために用いてもよい。このような取り組みは、単一細胞の分配を必要としないであろう。しかしながら、この取り組みに用いてもよい細胞は、単一細胞についての取り組みのために説明したもの、例えば、分離したBリンパ球の集団(プール)と同一である。ライゲーションによる接続又はこのような細胞集団における組換えに続く単一段階多重重複伸長RT−PCR又は単一段階多重RT−PCRを実行する場合、反応の前に細胞を溶解することが好ましく、所望ならば、全体のRNA又はmRNAを溶解物から単離してもよい。
【0082】
本発明の単一段階多重重複伸長RT−PCRの感度は、非常に低い量(例えば、単一細胞の溶解物に対応するテンプレートの量)でのテンプレートの使用を可能にする。
【0083】
増幅及び接続
本発明は、1より多いプライマーセット(例えば、可変領域をコードする配列を増幅するために必要な全てのプライマー)を同一の反応に含めることによって、2又はそれ以上の標的配列を同一の容器において同時に増幅する変形PCRを利用する。一般的に、この取り組みは、多重ポリメラーゼ鎖反応(多重PCR)として知られる。本発明に従い多重PCRによって増幅される標的配列は、例えば、増幅プロセスにきわめて密接に接近して、重複伸長PCRによって、連結される。特に、抗体可変領域をコードする配列の同種ペアは、このプロセスによって連結される。
【0084】
本発明の1つの実施態様は、多重プライマーミックスが重複伸長PCR手順において機能し、同時増幅及び目的のヌクレオチド配列の接続を引き起こすように設計することができるという事実を利用する。この多重重複伸長PCR技術は、目的のヌクレオチド配列、特に、接続した可変領域をコードする配列の同種ペアの単離及び接続に必要な反応の数を減らすことに役立つ。
【0085】
本発明の他の実施態様は、多重重複伸長PCRによる接続の代替手段として、ライゲーションによる又は組換えによる接続を適用する。このような手順において、接続は、多重PCR増幅と同時には実行されないが、増幅の前の分離段階として、実行される。しかしながら、それでも接続は、多重PCRが実行されるものと同一の容器において実行することができる。
【0086】
多重重複伸長PCRは、それぞれのプライマーセットの少なくとも1つのプライマーが、重複伸長尾部を備えている、2又はそれ以上のプライマーセット(多重プライマーミックス)の存在を必要とする。重複伸長尾部は、増幅の間にそれぞれのプライマーセットによって産生された生成物の接続を可能とする。多重重複伸長PCRは、連結されるべき配列が、同一の容器において同時に産生され、これにより、中間精製なしに増幅の間で標的配列の即時の接続を提供するという点で、従来の重複伸長PCRとは異なる。
【0087】
好ましい実施態様において、逆転写(RT)段階は、単離単一細胞又は同系細胞の集団に由来するテンプレートを利用する多重PCR又は多重重複伸長PCR増幅に先行する。
【0088】
好ましい実施態様において、本発明は、単離単一細胞又は同系細胞の集団に由来するヌクレオチド配列を、多重PCR増幅のためのテンプレートとして使用する。好ましくは、単一細胞からのRNAは、多重PCRの前にcDNAに逆転写される。ある種の目的の核酸配列の増幅のために、mRNAの代替物としてゲノムDNAを用いてもよい。単離単一細胞、あるいは単離単一細胞のクローン性増殖に由来する同系細胞の集団をテンプレート源として使用することにより、細胞集団の中の異なる細胞に由来するヌクレオチド配列のスクランブリングを避けることが可能である。目的が目的の配列の原初の組成物を保持することである場合に、これは重要である。特に抗体可変領域をコードする配列の同種ペアの創出のために、単離単一細胞又は同系細胞の集団をテンプレート源として使用することが、本発明の重要な特徴である。
【0089】
加えて、本発明は、目的の核酸配列の連結したライブラリー、特にコンビナトリアルライブラリーおよび可変領域の同種ペアのライブラリーの作製を促進する。
【0090】
本明細書の別の場所で説明したように、本発明の1つの実施態様は、鳥類ドナーからリンパ球含有細胞分画(ここで、任意に前記細胞分画からの特定のリンパ球集団に富んでいてもよく、または、特定のリンパ球集団は、前記細胞分画から単離される)を提供し、細胞を個別に複数の容器のうちで、リンパ球含有細胞分画または富化細胞分画から分配することによって単離単一細胞集団を得ることによって、連結した可変領域をコードする配列を含む同種ペアのライブラリーを作製する方法を包含する。単離単一細胞の集団に含まれる可変領域をコードする配列の多重分子増幅(例えば、多重RT−PCR増幅)が実行され、可変領域をコードする配列のペアの接続が達成され、ここで、可変領域配列の個別のペアは、集団からの単一細胞に由来する。この技術は、2つの任意の段階を含んでもよい。最初の段階において、個別の単離単一細胞は、多重RT−PCR増幅を実行する前に同系細胞の集団に拡大され、それにより、同系細胞の多様な集団(容器ごとに同系細胞の1つの集団)を含有する複数の容器が得られる。2番目の任意の段階は、連結された可変領域をコードする配列の追加の増幅を実行することを包含する。
【0091】
本明細書の別の場所で説明したように、本発明の別の実施態様は、多重PCR又は多重RT−PCR増幅手順において、単離単一細胞又は同系細胞の集団に由来するテンプレートを使用して、目的のヌクレオチド配列を増幅し、増幅された目的のヌクレオチド配列の接続を達成することによる、目的の複数の非隣接ヌクレオチド配列の接続を包含する。この方法は、連結された生成物の追加の増幅を実行する任意の段階含んでもよい。
【0092】
好ましい実施態様において、免疫グロブリン軽鎖可変領域をコードする配列を含む前記同種ペアのライブラリーの個別のメンバーは、同一の細胞に由来する免疫グロブリン重鎖可変領域をコードする配列に結合する。
【0093】
本発明の多重RT−PCR増幅は、逆転写(RT)が多重PCR増幅(又はそれに代えて多重分子増幅)から分けて実行される2段階プロセスとして、あるいは、RT及び多重PCR増幅段階が単一の容器において同一のプライマーで実行される単一段階プロセスとしてのいずれかとして、実行することができる。
【0094】
逆転写(RT)は、逆転写酵素活性を有する酵素で実行され、単離単一細胞からの全体のRNA、mRNA若しくは標的特異的RNAからのcDNAの産生を引き起こす。逆転写のために利用することができるプライマーは、例えば、目的のヌクレオチド配列に特異的である、オリゴ−dTプライマー、ランダムヘキサマー、ランダムデカマー、他のランダムプライマー、又はプライマーである。
【0095】
2段階多重RT−PCR増幅手順は、RT段階において産生されるcDNAが、1より多い容器に分配されることを可能にし、増幅を始める前のテンプレート分画の保存が可能になる。さらに、1より多い容器へのcDNAの分配は、同一のテンプレートに由来する核酸の1より多い多重PCR増幅の実行を可能とする。これは、増大した数の別異の反応を伴うが、所望ならば、これにより多重プライマーミックスの複雑さの減少が可能となる。
【0096】
単一段階多重RT−PCR手順において、逆転写及び多重PCR増幅は、同一の容器において実行される。逆転写及び多重PCRのいずれをも実行するために必要な全ての成分が最初に容器に加えられ、反応が実行される。一般的には、いったん反応が開始した場合には、追加の成分を添加する必要がない。単一段階多重RT−PCR増幅の利点は、本発明の連結したヌクレオチド配列の産生に必要な段階の数が少ないことである。これは、同一の反応が複数の容器において行われる必要がある、多重RT−PCRを単一細胞のアレイにおいて実行する場合に特に有用である。単一段階多重RT−PCRは、多重PCR増幅に逆転写のためのプライマーとしても必要な、多重プライマーミックスに存在するリバースプライマーを利用することによって実行される。一般的には、単一段階多重RT−PCRに必要な組成物は、核酸テンプレート、逆転写酵素活性を有する酵素、DNAポリメラーゼ活性を有する酵素、デオキシヌクレオシド三リン酸ミックス(dATP、dCTP、dGTP及びdTTPを含むdNTPミックス)、及び多重プライマーミックスを含む。核酸テンプレートは、好ましくは、精製した形である、細胞の溶解物としてである、あるいはいまだに無傷細胞の中にある、のいずれかである単離単一細胞に由来する全体RNA、又はmRNAである。一般的には、反応混合物の組成物の抽出物は、それぞれの多重プライマーミックスを本発明で用いるようにある種の最適化を必要とする。これは、2段階及び単一段階多重RT−PCR手順のいずれにもあてはまる。
【0097】
ある種の単一段階多重RT−PCR反応のために、反応の間で追加の成分を添加すること、例えば、RT段階に続いてポリメラーゼを添加することが利点でありうる。他の成分は、例えば、異なるプライマー組成物を有する可能性がある、dNTPミックス又は多重プライマーミックスでありうる。これは、所望の連結生成物を得るのに必要なチューブの数を制限するので、一般的には、単一段階多重RT−PCRと同一の利点を有する、1チューブ多重RT−PCRとみなすことができる。
【0098】
多重RT−PCR手順によって増幅されるべき目的のヌクレオチド配列は、多重重複伸長RT−PCR、異なる多重プライマーミックスを用いるライゲーション又は組換えなどのいくつかの方法によって互いに連結することができる。好ましくは、多重RT−PCR増幅及び接続プロセスは、単一段階又は2段階プロセスである。しかしながら、接続プロセスは、例えば、PCR、ライゲーション又は組換えのいずれかで目的の核酸配列を連結するために入れ物断片を使用する多重段階プロセスとして実行されてもよい。このような入れ物断片は、シス要素、プロモーター要素、又は関連するコード配列又は認識配列を含んでもよい。好ましい実施態様において、接続は、多重RT−PCR増幅と同一の容器において実行される。
【0099】
1つの実施態様において、目的の複数の非隣接ヌクレオチド配列の接続は、多重増幅伸長プライマーミックスを利用する多重PCR増幅に関連して、実行される。これは、標的配列の増幅及び接続の組み合わせをもたらす。一般的には、多重重複伸長PCRに必要な組成物は、核酸テンプレート、DNAポリメラーゼ活性を有する酵素、デオキシヌクレオシド三リン酸ミックス(dATP、dCTP、dGTP及びdTTPを含むdNTPミックス)、及び多重重複伸長プライマーミックスを含む。
【0100】
本発明の特定の実施態様において、目的の複数の非隣接ヌクレオチド配列の接続は、単離単一細胞又は同系細胞の集団に由来するテンプレートを使用し、連結した生成物の付加的分子増幅を実行する段階を任意に有してもよい多重重複伸長RT−PCRによって実行される。好ましくは、多重重複伸長RT−PCRは、単一段階/1チューブ反応として実行される。
【0101】
本発明の多重重複伸長プライマーミックスは、少なくとも2つの可変領域をコードする配列の増幅及び接続、例えば、カッパ又はラムダ軽鎖可変領域ファミリーを有する免疫グロブリン重鎖可変領域ファミリーからの増幅及び接続を開始することができる少なくとも2つのプライマーセットを含む。
【0102】
別の実施態様において、多重RT−PCRによって増幅される目的の複数のヌクレオチド配列は、ライゲーションによって連結される。これを達成するために、多重RT−PCRのために用いられる多重プライマーミックスは、増幅された標的配列が適切な制限酵素で切断され、ライゲーションによる共有結合的接続が実行されることができるように設計される(プライマー設計は、「プライマー混合物及び設計」の節において説明される)。このような多重プライマーミックスでの多重RT−PCR増幅に続いて、標的配列の互換性のある末端を形成するのに必要な制限酵素が、リガーゼとともに混合物に加えられる。PCR生成物の精製を実行してもよいが、精製は、この段階の前には必要がない。組み合わされた制限酵素切断及びライゲーションのための反応温度は、およそ0と40℃の間である。しかしながら、もし、多重PCR反応からのポリメラーゼがいまだ混合物において存在するならば、室温より低いインキュベーション温度が好ましく、もっとも好ましくは、4と16℃の間の温度である。
【0103】
別の実施態様において、多重RT−PCRによって増幅された目的の複数のヌクレオチド配列は、組換えによって連結される。このアプローチにおいては、増幅された標的配列は、同一の組換え部位を用いて連結することができる。接続は、そして、組換えを促進するリコンビナーゼを添加することによって実行される。適切なリコンビナーゼシステムは、例えば、様々なFRT部位を有するFlpリコンビナーゼ、様々なlox部位を有するCreリコンビナーゼ、attP部位及びattB部位の間の組換えを実行するインテグラーゼΦC31、βリコンビナーゼ6システム、及びGin−Gixシステムである。組換えによる接続は、2つの抗体をコードするヌクレオチド配列(VLを連結したVH)について実証されてきた(Chapal, N. et al. 1997 BioTechniques 23, 518−524)。
【0104】
好ましい実施態様において、目的のヌクレオチド配列は、可変領域をコードする配列を含み、接続が、可変領域をコードする配列の同種ペアを創出する。このような同種ペアは、可変領域に加えて1又は複数の定常領域をコードする配列を含んでもよい。後者の場合においては、定常領域は、ヒト由来であってもよく、鳥類由来の可変領域同種ペア、又は可変領域は、トランスジェニックニワトリ、又は他のトランスジェニック鳥に由来するヒト配列であってもよい。本発明の文脈において、トランスジェニックニワトリに由来するこのようなヒト配列は、「鳥由来」であるとみなされる。
【0105】
より好ましくは、目的のヌクレオチド配列は、免疫グロブリン可変領域をコードする配列を含み、接続が、軽鎖可変領域及び重鎖可変領域をコードする配列の同種ペアを創出する。このような同種ペアは、可変領域に加えて1又は複数の定常領域をコードする配列を含んでもよく、例えば、上で説明したような全血、単核細胞、又は白血球などのリンパ球含有細胞分画から富化されたBリンパ球系列の細胞から単離されてもよい。
【0106】
別の実施態様において、本発明は、テンプレート源としての遺伝的に多様な細胞の集団を用いる多重RT−PCRを利用する。抗体などの結合タンパク質からの可変領域をコードする配列と同様に、異種タンパク質をコードする配列の大多数は、細胞どうし異ならない。このように、このような非可変異種タンパク質をコードする配列のクローニングのために本発明を利用する場合、最初の単一細胞の単離を実行する必要がない。
【0107】
この実施態様において、目的の複数の非隣接ヌクレオチド配列は、遺伝的に多様な細胞の集団に由来するテンプレートを使用して目的のヌクレオチド配列多重RT−PCR増幅を実行し、増幅された目的のヌクレオチド配列の接続を達成することを含む方法によって、ランダムに連結される。さらに、この方法は、連結された生成物の付加的な増幅を実行する任意の段階含んでもよい。単一細胞アプローチと同様に、接続は、増幅のための多重重複伸長プライマーミックスを利用すること、あるいは代わりにライゲーション又は組換えをすることのいずれかで実行されうる。好ましくは、細胞の集団に由来するテンプレートは、厳密に細胞のなかに含まれるわけではない。細胞の集団は、例えば、溶解されてもよい。
【0108】
変異結合タンパク質を発現する細胞の集団におけるランダム接続のプロセスを適用することにより、可変領域をコードする配列のコンビナトリアルライブラリーの簡易な産生が可能となる。好ましくは、細胞の集団は、可変領域結合タンパク質を発現する細胞、例えば、Bリンパ球、脾細胞、ファブリーキウス嚢から単離された細胞、ハイブリドーマ細胞、形質細胞、形質芽球、又はこれらの細胞の混合物を構成する。
【0109】
上で言及した実施態様における細胞の集団は、例えば、追加の精製なしに、透過処理又は溶解することができ、あるいは、テンプレート核酸は、標準的な手順によって、細胞から単離することができる。単一段階多重RT−PCR手順が好ましい。しかしながら、この実施態様において、2段階手順を用いてもよい。
【0110】
特異性、感受性、及び多重RT−PCR接続プロセスの産生量を増大させる効率的な方法は、ライゲーション又は組換えによる接続の前の、あるいは多重重複伸長RT−PCRの前の多重RT−PCRから得られた連結されたヌクレオチド配列の付加的分子増幅を実行することによる。この付加的増幅は、好ましくは、目的の連結された核酸配列の増幅に適合したプライマーミックスを利用するPCR増幅で実行される。利用されるプライマーミックスは、多重プライマーミックス又は多重重複伸長プライマーミックスの外側プライマー(これは、連結された可変領域をコードする配列のセンス鎖の最も外側の5’末端及び3’末端にアニールし、それにより、完全な連結生成物の増幅を可能にするプライマーを意味する)であってもよい。外側プライマーは、重複伸長尾部を含まない多重重複伸長プライマー混合物プライマーとして説明することもできる。これに代えて、ネスト又は準ネストプライマーセットは、連結されたヌクレオチド配列の付加的増幅に利用することができる。このようなネストPCRは、特に、方法の特異性の増大のほか、連結された生成物の量の増大に役立つ。本発明にとって、準ネストPCR(プライマー混合物及び設計と題された節に説明するように)は、ネストPCRと同様に機能すると考えられる。このように、好ましくは、ネストPCR又は準ネストPCRを用いて、多重重複伸長RT−PCRからの連結された生成物、又はライゲーション又は組換えによって連結された生成物の付加的PCR増幅を実行することは、本発明にとって必要ではないけれども、望ましい。
【0111】
付加的増幅は、直接的に多重重複伸長RT−PCR、ライゲーション又は組換えの分画、又は、その完全な反応生成物を用いること、あるいは、例えば、連結した生成物のアガロースゲル電気泳動を実行し、連結された可変領域をコードする配列の予想されたサイズに対応する断片を切除することによって、これらの反応のいずれかから部分的に精製された連結された生成物を用いることのいずれかによって実行することができる。最初の反応において連結されなかったかもしれない個別の標的配列の接続に役立つであろうから、多重重複伸長RT−PCRによって連結された生成物にとって、付加的増幅は、好ましくは、多重重複伸長RT−PCR反応からの分画において直接的に実行される。
【0112】
プライマー混合物及び設計
本発明のプライマー混合物は、2つずつでプライマーセットを形成し、少なくとも2つの異なる目的の標的配列の増幅をすることができる少なくとも4つのプライマーを含む。プライマーセットは、遺伝子ファミリー変異体を増幅するように設計した1又は複数のプライマーペアを含む。このようなプライマーペア又はプライマーセットの2又はそれを超える混合物は、多重プライマーミックスを構成する。ニワトリにおける抗体多様性は、遺伝子変換を通して達成され、このプロセスによって、重鎖(HC)及び軽鎖(LC)可変領域の上流の偽遺伝子が、組換えによって単一VH及びVL遺伝子に挿入される配列のドナーとして機能する。これは、全ての可変領域が、原理的には、VHのための単一のプライマーペア、及びVLのための単一のプライマーペアによって増幅されることを意味する。好ましい実施態様において、単一のVH及びVL5’プライマーは、多重反応において1又は複数の3’定常領域プライマーとともに用いられ、他方、ネストPCR反応は、単一JHプライマー及び単一JLプライマーで実行される。好ましくは、多重プライマーミックスは、少なくとも、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20のプライマーペアを含み、例えば、少なくとも、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140又は150のプライマーペアを含む。特に、可変領域をコードする配列の増幅にとって、多重プライマーミックスのなかの個別のプライマーセットは、2を超えるプライマーペアを含んでもよい。好ましくは、個別のプライマーセットは、少なくとも、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20、25、30、35、45、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、220、240、260、280又は300のプライマーを含む。好ましくは、多重プライマーミックスにおけるプライマーの全体数は、少なくとも、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20、25、30、35、45、50、60、70、80、90、100、125、150又は200であり、最大で225、250、275、300、325、350、375又は400プライマーである。
【0113】
本発明の全てのプライマーは、遺伝子特異的領域を含み、プライマーのいくつかは、付加的に、プライマーの5’末端にプライマー尾部、すなわち、遺伝子特異的プライマー部分の3’末端に融合される5’非コード配列を備えている。このようなプライマー尾部は、約6〜50ヌクレオチド長であるが、所望ならば、より長くてもよい。増幅により、プライマー尾部は、標的配列に付加される。
【0114】
本発明のプライマー尾部は、例えば、ライゲーションによる接続に適合した尾部、組換えによる接続に適合した尾部、又は重複伸長尾部のようなクローニング尾部及び接続尾部である。
【0115】
クローニング尾部は、6〜29ヌクレオチド長、あるいは、それ以上であってもよく、連結された生成物の適当なベクターへの挿入に有用である制限酵素部位及び/又は組換え部位を含んでもよい。
【0116】
ライゲーションによる接続を可能にするため、多重プライマーミックスのプライマーセットは、第一のプライマーセットの1部分(フォワード又はリバースプライマー(これは複数でもよい))が、切断に応じて第二のプライマーセットの1部分の接続尾部に位置する制限酵素部位と適合するであろう制限酵素部位を含有する接続尾部を備えるように設計される。2を超える標的配列の接続のために、第2プライマーセットの第2部分は、切断に応じて第3のプライマーセットの1の部分に位置する制限酵素部位に適合するであろう制限酵素部位を備える。第2プライマーセットに位置するこの第2の制限酵素部位は、第1のプライマーセットのそれと非適合であるべきである。かなりの数の標的配列が、このようにプライマーセットを設計することによって連結することができる。低頻度を有する、あるいは標的配列において生じない制限酵素部位が選択されるべきである。さらに、ライゲーションの部位が用いられる特定の制限酵素に切断耐性になるように、適合する制限酵素部位は、同一でないことが好ましい。同一の標的配列の間の接続は、制限酵素によって切断することができるであろうから、これは、第1の標的配列及び第2の標的配列の接続に向けた反応を推進するであろう。制限酵素部位の適したペアは、例えば、SpeIとXbaI(あるいはNheI又はAvrIIは、これらの1又は両方と代替することができる)、NcoIとBspHI、EcoRIとMfeI、又は、PstIとNsiIである。接続のために、SpeIは、例えば、第1の標的配列に位置することができ、XbaIは、第2の標的配列に位置することができ、NcoIは、第2の標的配列における他の末端に、BspHIは、第3の標的配列に位置するなどとすることができる。もし、制限酵素が同一の緩衝液において機能するならば、さらに手順を簡略化するために有利である。
【0117】
組換えによる接続を可能にするために、多重プライマーミックスのプライマーセットは、例えば、Chapal et al.(1997 BioTechniques 23,518−524)に例示されるように設計することができ、参照により、これは本明細書に取り込まれる。
【0118】
多重PCR増幅と同一の段階における目的のヌクレオチド配列の接続を可能にするために、重複伸長PCRに適合した尾部が多重プライマーミックスのそれぞれのプライマーセットの少なくとも1つのプライマーに付加され、これにより、多重重複伸長プライマーミックスが産生される。
【0119】
重複伸長尾部は、典型的には、8〜75ヌクレオチド長の範囲であり、より長く、それに続くプロモーター、リボソーム結合部位、終止配列、又はscFvにおけるようなリンカー配列などの制御要素の挿入を可能とする制限酵素部位又は組換え部位を含有してもよい。重複伸長尾部は、所望ならば、終止コドンを含んでもよい。一般的には、WO2005/042774の図1において説明されるように、3つのタイプの重複伸長尾部がある。タイプIにおいては、2つのプライマーセットの重複伸長尾部は、お互いだけで重複する。2つの重複伸長尾部のヌクレオチドは、全てお互いに相補的である必要がない。1つの実施態様において、相補的ヌクレオチドは、重複伸長尾部の60〜85%の間を意味する。タイプII重複伸長尾部においては、4〜6の5’ヌクレオチドが、隣接標的配列の遺伝子特異的領域に相補的である。タイプIII重複伸長尾部においては、全体の重複が、隣接標的配列に相補的である。制御要素及び同類のものが、後に連結された標的配列の間に挿入されるべき場合には、タイプI及びII重複伸長尾部が、好ましい。もし、標的配列が、scFvで見られるような確定したリンカーによって連結されるべきであるならば、タイプII重複伸長尾部が好ましい。もし、標的配列が、互いにインフレームで連結されるべきであるならば、タイプIII重複伸長尾部が好ましい。
【0120】
重複伸長尾部の設計は、長さ、相対的なGC含有量(GC%)、制限酵素部位の存在、パリンドローム、溶融温度、連結される遺伝子特異的部分などの配列の特徴に依存する。重複伸長尾部の長さは、8及び75ヌクレオチド長の間であるべきであり、好ましくは、重複伸長尾部は、15〜40ヌクレオチド長である。より好ましくは、重複伸長尾部は、22〜28ヌクレオチド長である。非常に長い重複伸長尾部(50〜75ヌクレオチド)の使用は、それぞれのプライマーセットによって産生された生成物の接続に有利に働きうる。しかしながら、非常に長い重複伸長尾部を使用するときには、重複伸長尾部の長さと遺伝子特異的領域の間の割合は、おそらく、適合されている必要があるであろう。GC%選択は、重複伸長尾部の長さに依存する。より短い尾部は、それらが相補的であるより短い広がりを有するので、それらは、長い尾部よりも、相互作用を強めるためのより高度のGC%を必要とする。プライマー設計の他の原理が、同様に、順守されるべきであり、例えば、プライマー二量化及びヘアピン形成は、最小限に抑えられるべきであり、偽プライミングも同様である。さらに、TaqDNAポリメラーゼが、しばしば、新たに合成されたDNA鎖の3’末端にアデノシン(A)を付加することが知られており、これは、重複伸長尾部が3’非テンプレートA付加を提供することを可能にすることによる重複伸長尾部設計に取り入れられうる。
【0121】
接続尾部(例えば、重複伸長尾部、又はライゲーション又は組換えによる接続に適合した尾部)を有するプライマーの選択は、標的配列の接続の順序及び方向を特徴づける。それが、プライマーセットのフォワードプライマー(複数も可)若しくはリバースプライマー(複数も可)であるかどうか、場合によっては、接続尾部を備えたフォワード及びリバースプライマーの両方であるかどうかは、本発明にとって、重要ではない。しかしながら、最終生成物における標的配列の順序及び方向が、ひょっとしたら、例えば、プロモーター及び終止配列などの制御要素の挿入、あるいは個別の標的配列のインフレーム接続と関連性があるので、これには、いまだ一定の考慮が与えられるべきである。
【0122】
目的の2つのヌクレオチド配列の接続のために、接続尾部は、それぞれの標的配列のPCR増幅に用いられるそれぞれのプライマーセットのリバースプライマー(複数も可)又はフォワードプライマー(複数も可)のいずれかに付加されてもよい。
【0123】
現開示は、それぞれのセットのニワトリVH及びニワトリVLフォワードプライマーへの重複伸長尾部、及びライゲーションによる接続に適合した尾部の付加を例示する。これは、5’から5’(頭部から頭部及び双方向性)である生成物の連結方向をもたらす。しかしながら、接続尾部は、それぞれのセットのリバースプライマーに付加することができる。これは、3’から3’(尾部から尾部及び双方向性)である生成物の連結方向をもたらす。3番目の選択肢は、第1のプライマーセットのリバースプライマー(複数も可)、及び第2のプライマーセットのフォワードプライマー(複数も可)に(逆もまた同様である)接続尾部を付加することである。これは、3’から5’への方向性(頭部から尾部及び一方向性)をもたらす。
【0124】
目的の2を超えるヌクレオチド配列を連結する場合、いくつかのプライマーセットは、1つの尾部が、先立つリバースプライマーセットの尾部に相補的であり、他方の尾部が、次のプライマーセットのプライマーの1つと相補的であるように、フォワード及びリバースプライマーの両方のうえに接続尾部を有するべきである。この原理は、2つの他の標的配列の間で連結されるべき標的配列を増幅する全てのプライマーセットに、あてはまる。
【0125】
遺伝子特異的プライマー部分の設計は、一般的には、プライマー二量化、ヘアピン形成、及び非特異的アニーリングの最小化などの既知のプライマー設計ルールを順守するべきである。さらに、可能ならば、3’塩基としての多重G又はCヌクレオチドは、避けられるべきである。プライマーセットにおける遺伝子特異的領域の溶融温度(Tm)は、好ましくは、プラス/マイナス5℃でそれぞれ等しくあるべきである。本発明において、45℃と75℃の間のTm値が望ましく、約60℃のTm値が、大抵の適用において最適である。有利なことに、最初のプライマー設計は、この課題のために開発されたコンピュータープログラムによって支援されうる。しかしながら、プライマー設計は、一般的には、実験室の試験及び所定の最適化を必要とする。これは、例えば、サイズ、制限酵素断片長多型(RFLP)、及びプライマーセットを用いて得られた増幅生成物の配列を分析することによって行ってもよい。可変領域を有する配列を増幅する場合、またはタンパク質の特定のクラスに属する新たなファミリーメンバーを探索する場合には、プライマーの内の縮重位置の使用は、有用なアプローチである。縮重位置の数も、最適化を必要とするかもしれない。
【0126】
本発明の1つの特徴は、増幅を開始し、少なくとも2つの目的のヌクレオチド配列の接続を促進することができる少なくとも2つのプライマーセットからなるプライマーミックスである。本発明のプライマーミックスは、例えば、酵素、インヒビター、構造タンパク質、細胞毒素、チャネルタンパク質、Gタンパク質、受容体タンパク質、免疫グロブリンスーパーファミリータンパク質、輸送タンパク質などの、好ましくは、免疫グロブリンのクラスに所属する異種タンパク質からの少なくとも2つのサブユニット又はドメインの増幅を開始することができる。
【0127】
本発明のさらなる特徴は、プライマーセットを含む多重重複伸長プライマーミックスを使用することであり、ここで、それぞれのプライマーセットの少なくとも1つのプライマーセットメンバーは、第2プライマーセットのプライマーセットメンバーの重複伸長尾部にハイブリダイズすることができる重複伸長尾部を含む。
【0128】
重複伸長尾部は、隣接している生成物に相補的である尾部を有するプライマーセットから生じるそれぞれの個別の生成物を備えることによって、多重重複伸長PCR増幅の間での目的のヌクレオチド配列の即座の接続を可能とする。しかしながら、これは、接続が最初のPCR増幅の間に必ず起こることを意味しない。反応設定に依存して、実際の接続の大多数は、最初のPCR増幅の外側プライマーでの付加的増幅の間で実行されてもよい(多重PCR増幅)。
【0129】
単一プライマーは、重鎖及び軽鎖可変領域の5’末端に用いることができる。重鎖及び軽鎖定常領域に相補的である単一プライマーは、3’プライマーとして用いることができる。あるいは、軽鎖結合領域プライマーは、定常領域プライマーの代わりにリバースプライマーとして用いてもよい。あるいは、可変軽鎖及び重鎖のリーダー配列に先立つUTR領域においてアニールするフォワードプライマーを用いてもよい。
【0130】
本発明の1つの実施態様は、可変領域をコードする配列に先立つリーダーをコードする配列の3’末端においてアニールするプライマー、及び可変領域をコードする配列の増幅のためのその使用を含む。
【0131】
1つの実施態様において、多重重複伸長PCRに使用され、おそらく逆転写段階にも使用される多重重複伸長プライマーミックスは、以下を含む。
a) 免疫グロブリン軽鎖領域をコードする配列のセンス鎖に相補的である、少なくとも1つのニワトリ軽鎖定常領域プライマー、又は1つのニワトリ軽鎖J領域プライマー
b) 免疫グロブリン軽鎖可変領域をコードする配列、又は軽鎖可変領域リーダー配列のアンチセンス鎖に相補的であり、a)におけるプライマー(複数でも可)とプライマーセットを形成することができる、1つの軽鎖V領域プライマー
c) 少なくとも1つのニワトリ重鎖定常領域プライマー、mRNAの3’非コード領域に相補的である1つのニワトリ重鎖プライマー、又は免疫グロブリン重鎖ドメインをコードする配列のセンス鎖に相補的である1つの重鎖J領域プライマー、及び
d) 免疫グロブリン重鎖可変領域をコードする配列、又は重鎖可変領域リーダー配列のアンチセンス鎖に相補的であり、c)におけるプライマー(複数でも可)とプライマーセットを形成することができる1つのニワトリ重鎖V領域プライマー。
【0132】
さらなる実施態様において、免疫グロブリン軽鎖V領域及び重鎖V領域プライマーは、好ましくは、相補的重複伸長尾部の形式において、接続尾部を有する。これは、頭部から頭部の様式で連結した可変領域をコードする配列を産生する。頭部から尾部の様式における可変領域をコードする配列の接続のために、好ましくは、相補的重複伸長尾部の様式で、ニワトリ軽鎖定常領域、あるいはニワトリ軽鎖J領域及びニワトリ重鎖V領域のプライマーのいずれか、又はその両方が、接続尾部を含み、あるいは、ニワトリ軽鎖V領域プライマー、及びmRNAの3’非コード領域に相補的であるニワトリ重鎖プライマー、重鎖定常領域に相補的であるニワトリ重鎖プライマー、又はニワトリ重鎖J領域プライマーに相補的であるプライマーが、あるいは両方が、接続尾部を含む。尾部から尾部の様式における可変領域をコードする配列の接続のためには、ニワトリ軽鎖定常又はJ領域に相補的であるプライマー、及びニワトリ重鎖定常又はJ領域プライマーに相補的であるプライマーが、接続尾部を、好ましくは、相補的重複伸長尾部の様式で含む。
【0133】
本発明は、ライゲーション又は組換えによる、又は多重重複伸長RT−PCRによる接続の前の多重RT−PCRから得られた連結された生成物の追加的PCR増幅のためのプライマーをも包含する。この付加的PCR増幅は、連結された標的配列の増幅に適合したプライマーミックスを用いて実行することができる。このようなプライマーミックスは、多重プライマーミックス又は多重重複伸長プライマーミックスの外側プライマーを含んでもよく、これは、連結されたヌクレオチド配列のセンス鎖の最外部5’末端及び3’末端にアニールするプライマーを意味し、それにより選択的に完全な連結された生成物の増幅を可能とする。この過程は、一般的には、ライゲーション又は組換えによる接続の前の多重RT−PCR、あるいは多重重複伸長RT−PCRから得られた連結された生成物の量の増大に役立つ。
【0134】
代わりに、第一の多重RT−PCR又は多重重複伸長RT−PCR反応において用いられる外側プライマーに比べてネスト化したプライマーセットは、接続したヌクレオチド配列の付加的増幅のために用いることができる。このようなプライマーセットは、ネストプライマーセットと呼ばれる。ネストプライマーの設計は、一般的には、それらが、多重RT−PCR又は多重重複伸長RT−PCRにおいて用いられる外側プライマーのアニーリング位置の3’に部分的に又は全体的に開始することを除いて、前に説明した遺伝子特異的プライマーのためのものと同一の設計ルールを順守する。ネストPCRから生じる生成物は、したがって、ライゲーション若しくは組換えによる、又は多重重複伸長RT−PCRによる接続の前の多重RT−PCRにより得られた連結された生成物よりも短くてもよい。連結した生成物の量が増大することに加えて、ネストPCRは、さらに、特に、多重重複伸長RT−PCR技術の全体的な特異性の増大に役立つ。しかしながら、追加的増幅を実行する場合に、前に説明した全ての多重プライマーミックス/多重重複伸長プライマーミックスが、ネストプライマーセットとの組み合わせに適しているわけではないことは留意すべきである。このような場合においては、多重プライマーミックス/多重重複伸長プライマーミックスの外側プライマーが、追加的増幅のために用いることができ、あるいは、準ネストPCRを用いることができる。
【0135】
1つの実施態様において、JL及びJHプライマーの混合物は、連結された免疫グロブリン可変領域をコードする配列の追加的増幅のためのネストプライマーとして使用される。
【0136】
本発明のネストプライマーセットは、第1の多重プライマーミックス/多重重複伸長プライマーミックスからの1又は複数のリバース(又はフォワード)外側プライマー(複数も可)、及び第一の多重プライマーミックス/多重重複伸長プライマーミックスのフォワード(又はリバース)外側プライマー(複数も可)アニーリング位置の3’で開始する第2のネストプライマーを含むこともできる。付加的PCR増幅のためのこのようなプライマーセットの使用は、一般的には、準ネストPCRとして知られている。準ネストPCRは、例えば、もし、(例えば、可変領域配列に)特異的な1つの領域においてネストプライマーを設計することが難しいならば、適用することができる。なぜならば、このようなプライマーは、相補性決定領域(CDRs)においてアニールしなければならないであろうからである。さらに、準ネストPCRは、例えば、クローニング目的のために、連結された配列の1つの末端を無傷にしておくことが望ましい場合に、用いることができる。
【0137】
多重重複伸長PCRの最適化
2段階及び1段階手順の両方の多重重複伸長PCR段階のパラメーターは、さまざまなパラメーター(例えば、Henegariu, O. et al.1997.BioTechniques 23,504−511; Markoulatos,P.et al.2002.J.Clin.Lab.Anal.16,47−51を参照のこと)に最適化することができる。外側及び内側プライマーの割合は、このような反応において、重要性が低いけれども、一般的には、同一の最適化パラメーターが、多重RT−PCRに適用される。
a. プライマー濃度
重複伸長尾部を有するプライマー(例えば、VH及びVLプライマー)の濃度は、好ましくは、重複伸長尾部を持たない外側プライマー(例えば、JH及び軽鎖プライマー)の濃度より低い。
【0138】
もし、例えば、高いGC%の結果、標的配列の1つが、他のものよりも低効率で増幅するならば、増幅効果を均一にすることが可能であるかもしれない。これは、低効率での増幅を仲介する高濃度のプライマーセットを用いること、あるいは他のプライマーの濃度を下げることによって行ってもよい。例えば、重鎖可変領域をコードする配列は、高いGC%を有し、そのため、軽鎖可変領域よりも低い増幅効率を有しがちである。これは、VHプライマーよりも低濃度で、VLプライマーを用いることを指し示す。
【0139】
さらに、多数のプライマーを用いる場合、全体のプライマー濃度も、問題となるかもしれない。上限は、滴定実験によって実験的に決定してもよい。他のシステムにとっては、約2.4μMの高さまでであるけれども、Applied BiosystemsからのAmpliTaq Gold(登録商標)PCRシステムにとっては、上限は、1.1μM全体オリゴヌクレオチド濃度であると見出された。全体オリゴヌクレオチド濃度のこのような上限は、それぞれのプライマーの最大濃度に影響を与える。もし、個別のプライマー濃度が、低すぎるならば、PCR感度が乏しくなりがちである。
【0140】
オリゴヌクレオチドプライマーが等しいことは、多重重複伸長PCRにとって重要であると見出されてきた。HPLC精製オリゴヌクレオチドは、最良の結果を生み出してきた。
【0141】
b. PCRサイクル条件:
サイクル条件は、好ましくは、30〜80PCRサイクルを有し、次のとおりである。
【0142】
単一段階多重重複伸長RT−PCRのために、次の段階が、上で説明した増幅サイクルの前のサイクリングプログラムに組み込まれる。
【0143】
これらの全てのパラメーターを最適化することが可能である。特に、アニーリング温度が重要である。このように、最適なアニーリング温度及び時間のほか、伸長及び変性時間を特定するために、最初は、最終プライマーミックスを構成すべき全ての個別のプライマーセットが、別異に試験されるべきである。これは、これらのパラメーターを多重重複伸長プライマーミックスに最適化することができる手段についてのよい知見を与えるであろう。
【0144】
例えば低プライマー濃度又はテンプレート濃度による乏しいPCR感受性の問題は、多数の熱サイクル(すなわち、約35と80サイクルの間、好ましくは、約40サイクル)を用いることによって乗り越えることができる。さらに、より長い伸長時間(すなわち、通常の1分の伸長時間に対して、約1.5〜5分×EPLの伸長時間)は、多重重複伸長PCR過程を改善することができる。
【0145】
c. アジュバントの使用
多重PCR反応は、DNAを弛緩させてテンプレート変性をより容易にするDMSO、グリセロール、ホルムアミド又はベタインのようなPCR添加物を使用することによって、顕著に改善することができる。
【0146】
d.dNTP及びMgCl2
デオキシヌクレオシド三リン酸(dNTP)品質及び濃度は、多重重複伸長PCRにとって、重要である。最善のdNTP濃度は、それぞれのdNTP(dATP、dCTP、dGTP及びdTTP)につき200と400μMの間であり、これを超えると、増幅は、急激に阻害される。より低いdNTP濃度(それぞれのdNTPにつき100μM)は、PCR増幅を達成するのに十分である。dNTPストックは、解凍/冷凍サイクルに敏感である。このような3〜5のサイクルの後、多重PCRは、しばしば、十分に働かなくなる。このような問題を避けるため、dNTPの少量アリコートを作ることができ、−20℃で冷凍保存することができる。
【0147】
大半のDNAポリメラーゼは、マグネシウム依存性酵素であるので、Mg2+濃度の最適化は重要である。DNAポリメラーゼに加えて、テンプレートDNAプライマー及びdNTPが、Mg2+に結合する。したがって、最適なMg2+濃度は、dNTP濃度、テンプレートDNA、及びサンプル緩衝液組成物に依存するであろう。もし、プライマー及び/又はテンプレートDNA緩衝液が、EDTA又はEGTAなどのようなキレート剤を含有するならば、見かけのMg2+最適条件は、変わるかもしれない。過剰量のMg2+濃度は、DNA二重鎖を安定化し、DNAの完全な変性を抑え、収量が減少する。過剰量のMg2+は、誤ったテンプレート部位へのプライマーの偽アニーリングをも安定化することができ、これにより、特異性が減少する。他方で、不十分なMg2+濃度は、生成物の量を減少させる。
【0148】
dNTPとMgCl2の間の良好なバランスは、およそ、200〜400μMdNTP(それぞれ)に対して、1.5〜3mMMgCl2である。
【0149】
e.PCR緩衝液組成物
一般的には、KClベースの緩衝液は、多重重複伸長PCRに十分である。しかしながら、(NH4)2SO4、MgSO4、Tris−Cl、あるいはこれらの組み合わせなどの他の成分をベースとする緩衝液も、多重重複伸長PCRで機能するように最適化されてもよい。より短い生成物の増幅に関与するプライマーペアが、より高い塩濃度(例えば、80〜100mM KCl)でより良く機能する一方で、より長い生成物の増幅に関与するプライマーペアは、より低い塩濃度で(例えば、20〜50mM KCl)より良く機能する。1Xの代わりに2Xへ緩衝液濃度を上昇させることにより、多重反応の効率が改善するかもしれない。
【0150】
f.DNAポリメラーゼ
本発明は、Taqポリメラーゼにより例示される。その代わりに、例えば、Pfu、Phusion、Pwo、Tgo、Tth、Vent又はDeep−ventを含む、他のタイプの熱耐性DNAポリメラーゼを用いても良い。3’から5’エキソヌクレアーゼ活性を持たない又は持つポリメラーゼを、単独で、又はそれぞれを組み合わせてのいずれかで用いてもよい。
【0151】
ベクター及びライブラリー
本発明による目的のヌクレオチド配列の接続は、免疫グロブリンの変領域をコードする連結されたヌクレオチド配列を含むヌクレオチド部分を創出する。さらに、このような連結された核酸配列のライブラリー、特に、ヒト定常領域(重鎖及び軽鎖)配列に連結した又は接合した非ヒト可変領域をコードする配列のライブラリー、又はヒト定常領域配列に連結された、トランスジェニックニワトリ又は他のトランスジェニック鳥に由来するヒト可変領域をコードする配列のライブラリーが、本発明の方法によって作製される。
【0152】
1つの実施態様において、本発明の方法によって作製される、目的の連結されたヌクレオチド配列を含む部分、あるいは、このような目的の連結されたヌクレオチド配列のライブラリーは、適切なベクターに挿入される。ライブラリーは、コンビナトリアルライブラリーであってもよく、より好ましくは、可変領域をコードする配列の同種ペアのライブラリーであってもよい。外側プライマー、ネストプライマー又は準ネストプライマーにより産生される制限酵素部位は、好ましくは、選択のベクターの適切な制限酵素部位に適合するように設計される。もし、準ネスト、ネストプライマー、又は外側プライマーの1つが、適切な組換え部位を備えており、選択のベクターがそれを同様に含むならば、目的の連結された核酸配列は、組換えによってベクターに挿入することもできる。
【0153】
本発明の多重RT−PCR接続方法の1つによって創出された生成物のキャリアとして用いることができるベクターに制限はない。選択のベクターは、例えば、細菌、酵母、他の菌類、昆虫細胞、植物細胞、または哺乳動物細胞を含む細胞における増幅及び発現に適したものであってもよい。このようなベクターは、さらなるクローニング段階、ベクターシステムの間のシャトル、ベクターへ挿入された生成物のディスプレイ、挿入された生成物の発現、及び/又は宿主細胞のゲノムへの融合を促進するために用いてもよい。
【0154】
クローニング及びシャトルベクターは、好ましくは、細菌のベクターである。しかしながら、他のタイプのベクターも、クローニング及びシャトル手順に用いてもよい。
【0155】
ディスプレイベクターは、例えば、fd、M13、又はf1線維状バクテリオファージのクラスに由来するファージベクター又はプラスミドベクターでありうる。このようなベクターは、例えば、線維状バクテリオファージの表面における結合タンパク質、又はその断片を含むタンパク質のディスプレイを促進することができる。リボソーム、DNA、酵母細胞、又は哺乳動物細胞におけるディスプレイに適したディスプレイベクターも、本技術分野において知られている。これらは、例えば、ウイルスベクター又はキメラタンパク質をコードするベクターを含む。
【0156】
発現ベクターは、全ての言及した種類に存在し、任意の所与の条件に適切なベクターは、発現されるべきタンパク質に依存する。いくつかの発現ベクターは、加えて、ランダム融合、又は適当な組換え部位を利用する部位特異的融合のいずれかによって、宿主細胞のゲノムに融合することができる。発現ベクターは、連結した生成物がこれらの配列にインフレームで挿入される場合に、より大きいタンパク質、例えば、完全長モノクローナル抗体の適切な宿主細胞における発現を可能とする付加的なコード配列を提供するように設計されてもよい。このインフレーム挿入は、線維状バクテリオファージ又は細胞の表面においてディスプレイされるキメラタンパク質の発現を促進してもよい。バクテリオファージディスプレイシステムにおいて、目的の連結されたヌクレオチド配列は、pIII又はpVIIIなどの外被タンパク質をコードする配列にインフレームで挿入されてもよい(Barbas,C.F. et al.1991.Proc.Natl.Acad.Sci.USA88,7978−7982;Kang,A.S.et al.1991.Proc.Natl.Acad.Sci.USA88,4363−4366)。
【0157】
1つの実施態様において、目的の連結されたヌクレオチド配列の個別の部分は、1又は複数のヒト免疫グロブリン定常ドメイン、好ましくは、ヒト軽鎖及び重鎖定常領域の両方をコードする配列(複数でも可)を含むベクターに挿入された、鳥類由来の軽鎖可変領域をコードする配列に接続した、鳥類由来の免疫グロブリン重鎖可変領域をコードする配列を含む。挿入は、連結された重鎖可変領域及び/又は軽鎖可変領域をコードする配列が、定常領域をコードする配列にインフレームで挿入されるように設計される。このような挿入により、例えば、FabまたはF(ab’)2発現ベクター、完全長抗体発現ベクター、又は完全長抗体の断片をコードする発現ベクターを産生することができる。好ましくは、このようなベクターは、発現に適した発現ベクター(例えば、E.coli、ファージミド又は哺乳動物ベクター)であり、定常領域重鎖をコードする配列は、ヒト免疫グロブリンクラスIgGl、IgG2、IgG3、IgG4、IgM、IgA1、IgA2、IgD、又はIgEから選択され、それにより、Fab又は完全長組換え抗体の発現が可能となる。定常重鎖をコードする配列に加えて、ベクターは、ヒトラムダ又はカッパ鎖から選ばれる定常軽鎖をコードする配列を含んでもよい。これらの場合において連結されたヌクレオチド配列は、鳥類種からの免疫グロブリン可変領域をコードする配列(Fv’s)のみをコードするので、これは、キメラ抗体の産生において好ましい。
【0158】
代わりの実施態様において、ヒト定常領域をコードする配列(複数でも可)は、鳥類配列と重複を有するヒト定常領域をコードする配列、及び可変領域及び定常領域の両方のインフレームでの増幅を確実にする適当なプライマーを容器に添加することによって、分子増幅手順の段階において鳥類可変領域に接合又は連結される。このようにして、ヒト定常カッパ又はラムダ鎖及び/又はヒト定常重鎖が、付加されてもよい。この手順を使用することにより、コード配列のうちに制限酵素部位を提供する必要がなく、これは利点である。
【0159】
1つの実施態様において、二重プロモーターカセット、重鎖及び軽鎖の同時発現を指揮することができる二重プロモーターカセット、例えば、双方向性二重プロモーターカセットが、発現コンストラクトに挿入されてもよい。二重プロモーターカセットは、さらに、重鎖及び軽鎖のためのシグナルペプチドをコードする核酸配列を含んでもよい。発現ベクターバックボーンは、キメラ鳥類/ヒト抗体を産生するために、ヒト定常軽鎖をコードする配列又はその断片及び/又はヒト定常重鎖をコードする配列又はその断片を含んでもよい。
【0160】
本発明の同種ペアのライブラリーは、2つの異なるアプローチによってベクターに導入されてもよい。最初のアプローチにおいて、単一の同種ペアが、適切なベクターに個別に挿入される。ベクターのこのライブラリーは、次に別異に保存されるか、プールされるかのいずれかでもよい。第2のアプローチにおいて、全ての同種ペアは、ベクター挿入の前にプールされ、続いて、適切なベクターへの集団挿入が行われ、プールされたベクターのライブラリーが産生される。このようなベクターのライブラリーは、高度に多様な可変領域をコードする配列のペアを含む。
【0161】
1つの実施態様において、本発明は、連結された可変領域をコードする配列の同種ペアを有する抗体のライブラリーを提供する。好ましくは、ライブラリーの個別の抗体は、1つの鳥類種およびヒト定常領域からの重鎖可変領域をコードする配列と結合した免疫グロブリン軽鎖可変領域をコードする配列を含む。さらなる実施態様は、本明細書を通して説明されたような可変領域をコードする配列の同種ペアの親ライブラリーから選ばれるサブライブラリーである。本明細書の好ましい実施態様は、ヒト免疫グロブリンクラスIgA1、IgA2、IgD、IgE、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、又はIgMから選ばれる完全長キメラ免疫グロブリンの同種ペアをコードするライブラリー又はサブライブラリーである。ライブラリーは、少なくとも、5、10、20、50、100、1000、104、105又は106の異なる同種ペア抗体を含んでもよい。
本発明のさらなる実施態様において、連結された可変領域をコードする配列の同種ペアの前記ライブラリーは、本明細書に説明する段階を含む方法によって得ることができる。このライブラリーも、親ライブラリーと呼ばれる。
【0162】
スクリーニング及び選択
本発明の方法の1つを用いて、ドナーから単離された連結された可変領域をコードする配列のペアの親ライブラリーは、特に、コンビナトリアルライブラリーにおいて、いくつかは無関係である(すなわち、所望の標的への結合でない)多様な結合タンパク質を示すことが予想される。したがって、本発明は、特定の標的に対する結合特異性の多様なサブセットをコードするサブライブラリーの富化及びスクリーニングを包含する。
【0163】
同種ペアのライブラリーにとって、ライブラリーの多様性は、ごく少ない数のランダムに連結された可変領域を有する、ドナー原料に存在する多様性を表すことが予想される。このように、富化段階は、同種ペアからなるライブラリーにおける標的特異的結合親和性のスクリーニングの前には必要ではないかもしれない。
【0164】
さらなる実施態様において、連結された可変領域をコードする配列のペアのライブラリーを作製する方法は、さらに、所望の標的特異性を有する結合タンパク質をコードする連結された可変領域配列のペアのサブセットを選択することによってサブライブラリーを作製することを含む。連結された可変領域をコードする配列のこのような選択物も、標的特異的同種ペアのライブラリーと呼ばれる。
【0165】
好ましい実施態様において、可変領域をコードする配列の標的特異的同種ペアのライブラリーは、発現ベクターに移される。発現ベクターは、スクリーニングに用いられる細胞のタイプに応じて、哺乳動物発現ベクター、昆虫細胞発現ベクター、酵母発現ベクター、菌類発現ベクター、植物発現ベクター、又は細菌発現ベクターであってもよい。好ましくは、発現ベクターは、哺乳動物である。
【0166】
免疫学的アッセイは、一般的には、標的特異的免疫グロブリン可変領域をコードする配列の選択に適している。このようなアッセイは、本技術分野においてよく知られており、例えば、FMAT、FLISA、ELISPOT、ELISA、メンブレンアッセイ(例えば、ウェスタンブロット)、フィルターアレイ又はFACSを構成する。アッセイは、免疫グロブリン可変領域をコードする配列から産生されるポリペプチドを利用する直接的な手段において実行することができ、あるいはその代わりに、免疫学的検定が、ファージディスプレイ、リボソームディスプレイ、細菌表面ディスプレイ、酵母ディスプレイ、真核ウイルスディスプレイ、RNAディスプレイ、又は共有結合性ディスプレイ(FitzGerald,K.,2000.Drug Discov. Today 5,253−258において概説される)などの富化方法と組み合わせて、又はそれに続けて実行することができる。同種Fab発現ライブラリーと同種完全長抗体発現ライブラリーの両方が、スクリーニングを受けることができ、これにより、陽性クローンのサブライブラリーが産生される。このようなスクリーニングアッセイ及び富化手順も、Fv若しくはscFv断片、又は連結された可変領域のコンビナトリアルライブラリーに適している。
【0167】
免疫学的スクリーニングに加えて、本発明の特有の特徴は、様々なタイプの機能的なスクリーニングの使用を可能にし、所望の特性を有する抗体分泌クローンの選択ができることである。このようなスクリーニングアッセイは、増殖分析、ウイルス不活性化アッセイ、細胞破壊アッセイなどを含むが、これらに限定されない。好ましくは、機能的なアッセイは、本発明の発現ベクターが導入された細胞からの上清を用いるハイスループット様式において実行される。
【0168】
好ましい実施態様において、可変領域をコードする配列の標的特異的同種ペア又はコンビナトリアルペアのサブライブラリーの選択は、ハイスループットスクリーニングアッセイを使用することによって実行される。ハイスループットスクリーニングアッセイは、ELISAアッセイ、準自動的な又は完全に自動的な装置で実行される機能的アッセイを含むが、これらに限定されない。
【0169】
抗原結合クローンの同種ペア又はコンビナトリアルペアのサブライブラリーが適当な技術によって選択された場合、連結された免疫グロブリン軽鎖可変領域及び重鎖可変領域をコードする配列のDNA配列決定による付加的な分析を実行することができる。このようなDNA配列決定は、ライブラリー多様性及びCDR領域のうちの成熟性についての情報を提供し、これにより、繰り返しのクローンを除外して、広い多様性を有する一連のクローンを選択することが可能となる。DNA配列決定は、単離過程の間で導入された変異も明らかにするであろう。
【0170】
変異は、TaqDNAポリメラーゼによって作製されるかもしれず、それらは、定常領域をコードする配列において最も容易に同定され、容易に除外することができる。しかしながら、Taq導入変異は、可変領域をコードする配列にも存在するであろうが、ここにおいて、それらは、可変領域をコードする配列におけるランダム変異の結果でもある自然的に生じた体細胞変異から区別することができる。変異は、非システマティックであり、独自の方法で特定のペアにしか影響を与えないことを考慮すると、このような変化を無視するのが、合理的であるようである。
【0171】
さらなる実施態様において、連結された免疫グロブリン軽鎖可変領域及び重鎖可変領域をコードする配列の、標的特異的であり、おそらくは配列が分析されたペアのサブライブラリーは、哺乳動物発現ベクターに移行される。このような移行は、前の節で説明した任意のベクターに実行することができ、それにより、完全長組換え抗体の発現が可能となる。もし、スクリーニングが哺乳動物同種完全長抗体発現ライブラリーで実行されるならば、このような移行は必要ないかもしれない。
【0172】
宿主細胞及び発現
本発明のライブラリーは、目的の連結した核酸配列からコードされたタンパク質、特に、可変領域含有タンパク質又はその断片の発現及び産生に適したベクターに移行することができる。このようなベクターは、ベクター及びライブラリーの節において説明されており、例えば、選択の種の完全長抗体、Fab断片、Fv断片、scFv、膜結合又は可溶性TcR又はTcR断片の発現を提供する。
【0173】
本発明の1つの特徴は、宿主細胞への、連結された可変領域をコードする配列の同種ペアのベクターのライブラリー又はサブライブラリー、又は連結された可変領域をコードする配列の同種ペアをコードする単一クローンの、増幅及び/又は発現のための導入である。宿主細胞は、細菌、酵母、他の菌類、昆虫細胞、植物細胞、又は哺乳動物細胞から選ぶことができる。発現目的のためには、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、COS細胞、BHK細胞、骨髄腫細胞(例えば、Sp2/0細胞、NS0)、NIH 3T3、線維芽細胞、又はHeLa細胞、HEK 293細胞、PER.C6細胞などの不死化ヒト細胞などの哺乳動物細胞が好ましい。
【0174】
宿主細胞へのベクターへの導入は、リポフェクション、マイクロインジェクション、リポソーム融合、RBCゴースト融合、プロトプラスト融合、ウイルス感染などの様々な化学方法、リン酸カルシウム沈殿、電気穿孔などを含む、本技術分野における当業者に知られている数多くの形質転換又はトランスフェクション方法によって達成してもよい。モノクローナル完全長抗体、Fab断片、Fv断片、及びscFv断片の産生は、よく知られている。
【0175】
組換えポリクローナル抗体又は他の組換えポリクローナルタンパク質の作製のための製造技術は、WO2004/061104及びWO2008/145133に説明されている。WO2004/061104に説明されている技術は、例えば、抗体重鎖及び軽鎖の同種ペアをコードする核酸配列の部位特異的融合による製造細胞株として適した細胞の収集物の創出に関する。WO2008/145133は、宿主細胞への目的の個別の遺伝子のランダム融合、好ましくは、それに続く所望の特性を有する単一細胞のクローニングに基づく組換えポリクローナル抗体又は他のポリクローナルタンパク質の製造のための異なるアプローチを説明する。それぞれがポリクローナルタンパク質の個別のメンバーを産生する個別の細胞株は、次に、ポリクローナルタンパク質の産生のためのポリクローナル製造細胞株を作製するために混合される。WO2004/061104の部位特異的融合アプローチと比較して、WO2008/145133のランダム融合アプローチは、より優れた柔軟性を提供し、より高度のタンパク質発現レベルをもたらすことができる。しかしながら、いずれのアプローチも、経時に及びバッチ間で均一な増殖率及び発現レベルを有し、単一のバッチにおいてポリクローナル抗体の安定的な産生を可能とすると見出されてきた点で、有利である。
【0176】
ポリクローナル製造細胞株の産生、及びそのような細胞株からの組換えポリクローナルタンパク質の製造は、より一般的に、例えば、WO2004/061104に説明されるように、いくつかの異なるトランスフェクション及び製造戦略によって得ることができる。
【0177】
1つの方法は、細胞ごとに単一の融合部位での宿主細胞株のトランスフェクションのための単一の組成物に互いに混合されたベクターのライブラリーを用いることである。この方法は、バルクトランスフェクション又はバルクでのトランスフェクションと呼ばれる。一般的には、ベクター及び宿主細胞設計は、偏らずに増殖しうるポリクローナル細胞株が適当な選択に基づき得られるであろうことを確実にするであろう。ポリクローナル細胞株の冷凍ストックは、組換えポリクローナルタンパク質の製造の開始の前に産生されるであろう。
【0178】
もう1つの方法は、組成物において約5〜50の個別のライブラリーのベクターを含有する、分画に分けられたベクターのライブラリーをトランスフェクションのために使用することである。好ましくは、ライブラリーの分画は、10〜20の個別のベクターを構成する。それぞれの組成物は、次に、宿主細胞のアリコートにトランスフェクトされる。この方法は、準バルクトランスフェクションと呼ばれる。トランスフェクトされるアリコートの数は、ライブラリーのサイズ、及びそれぞれの分画における個別のベクターの数に依存するであろう。もし、ライブラリーが、例えば、100の異なる同種ペアを構成し、それらが、組成物において20の異なるメンバーを含有する分画に分けられるならば、宿主細胞の5のアリコートは、元のライブラリーの異なる分画を構成するライブラリー組成物でトランスフェクトされることが必要であろう。宿主細胞のアリコートは、部位特異的融合のために選択される。好ましくは、異なるアリコートが、別々に選択される。しかしながら、それらは、選択の前にプールすることもできる。アリコートは、それらのクローンの多様性について分析することができ、十分な多様性を有するもののみが、ポリクローナル同種ペアライブラリーのストックの産生に用いられるであろう。製造のための所望のポリクローナル細胞株を得るために、アリコートは、冷凍ストックを産生する前に、それらが冷凍ストックから回収された後すぐ、又は短い増殖及び時間適応の後、混合することができる。任意に、細胞のアリコートは、産生を通して分けたままにされ、ポリクローナルタンパク質組成物は、産生の前の細胞のアリコートよりはむしろ、それぞれのアリコートの生成物を組み合わせることによって集められる。
【0179】
第3の方法は、同種ペアのライブラリーを構成する個別のベクターを用いて宿主細胞が別々にトランスフェクトされるハイスループット方法である。この方法は、個別トランスフェクションと呼ばれる。個別にトランスフェクトされた宿主細胞は、好ましくは、別々に部位特異的融合のために選択される。選択に基づき産生された個別の細胞クローンは、増殖時間に関して分析してもよく、好ましくは、類似の増殖率を有するものは、ポリクローナル同種ペアライブラリーストックの作製に用いられる。個別の細胞クローンは、冷凍ストックを作製する前に、それらが冷凍ストックから回収されたすぐ後に、又は短い増殖及び時間適応の後、所望のポリクローナル細胞株を得るために混合することができる。このアプローチは、トランスフェクション、融合及び選択の間の任意のありうる残余配列バイアスを除去してもよい。代わりに、個別にトランスフェクトされた宿主細胞は、選択が実行される前に、混合され、これにより、トランスフェクションによる配列バイアスを制御することが可能となるであろう。
【0180】
上で説明した製造戦略に共有した特徴は、組換えポリクローナルタンパク質を構成する全ての個別の同種ペアが、1つのバイオリアクター、又は限られた数のバイオリアクターにおいて創出されうることである。唯一の違いは、ポリクローナル製造細胞株を構成する細胞の収集物を作製することを選択する段階である。
【0181】
1つの実施態様において、本発明は、可変領域をコードする配列の連結されたペアの同種ライブラリー又はサブライブラリーを含む宿主細胞の集団を提供する。さらなる実施態様において、宿主細胞の集団は、ライゲーション又は組換えによる接続の前の多重RT−PCR増幅、又は同種ペアを連結するための本発明の多重重複伸長RT−PCR技術を利用して単離単一リンパ球細胞の集団から得られたライブラリーを含む。
【0182】
別の実施態様において、本発明は、可変領域をコードする配列の連結されたペアのコンビナトリアルライブラリー又はサブライブラリーを含む宿主細胞の集団を提供する。本発明による宿主細胞の集団は、細胞を形質転換/トランスフェクトしたライブラリーの多様性に対応して、細胞の様々な集団を包含するであろう。好ましくは、細胞の集団のそれぞれの細胞は、同種ペアの全体のライブラリーの1つの同種ペアを構成するのみであり、同種ペアのライブラリーの個別のメンバーが、宿主細胞の集団から発現する個別のメンバーの全数の50%、より好ましくは、25%、もっとも好ましくは、10%を上回らない。
【0183】
宿主細胞は、好ましくは哺乳動物細胞である。
【0184】
集団の個別の細胞は、異なる多様性の可変領域をコードする配列を含むので、上で説明した宿主細胞の集団は、組換えポリクローナル結合タンパク質の発現のために、利用することができる。
【0185】
1つの実施態様において、本発明は、連結された可変領域をコードする配列の様々な同種ペアをコードするベクターのライブラリー(このようなライブラリーは本発明の方法によって得ることができる)を含む宿主細胞の集団から発現した組換えポリクローナルタンパク質を提供する。典型的には、本発明の組換えポリクローナルタンパク質は、異なる同種ペアからなる、少なくとも、2、5、10、20又は50のタンパク質を含む。
【0186】
本発明は、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域をコードする配列の多様な同種ペアをコードするベクターのライブラリーを含む宿主細胞の集団からの組換えポリクローナル抗体の発現を可能とする。
【0187】
本発明の方法によって得られる宿主細胞は、モノクローナルタンパク質、特に、軽鎖可変領域及び重鎖可変領域の同種ペアを含むモノクローナル抗体の産生のために用いてもよい。好ましくは、このようなモノクローナル産生細胞株は、ハイブリドーマ細胞株ではない。このようなモノクローナル抗体は、目的の複数の非隣接ヌクレオチド配列を連結する方法に次の段階を追加することによって産生することができる。a)前記連結された核酸配列のベクターへの挿入、b)宿主細胞への前記ベクターの導入、c)発現に適した条件下での前記宿主細胞の培養、及びd)前記宿主細胞に挿入されたベクターから発現したタンパク質生成物の取得。好ましくは、宿主細胞に導入されるベクターは、可変領域をコードする配列の個別の同種ペアをコードする。
【0188】
本発明の適用
診断、処置及び予防における組換えモノクローナル抗体の使用が、よく知られている。本発明により産生される組換えモノクローナル及びポリクローナル抗体は、既存の技術により産生された抗体生成物と同様に用いることができるであろう。特に、有効成分としてポリクローナル組換え抗体を(ここで、特に、ポリクローナル組換え抗体は、可変領域をコードする配列の同種ペアを含む)、少なくとも1つの医薬的に許容される賦形剤と組み合わせて含む医薬組成物は、本発明の手段によって作製することができる。ポリクローナル組換え抗体組成物は、所定の疾患標的に特異的又は反応性であることができ、このようにして、組成物は、ヒト、家畜、ペットなどの哺乳動物における、腫瘍、感染症、炎症性疾患、アレルギー、ぜんそく及び他の呼吸器疾患、自己免疫疾患、免疫性機能不全、心血管疾患、中枢神経系疾患、代謝内分泌疾患、移植拒絶反応、不要な妊娠などの疾患の処置、改善、又は予防に用いることができる。
【0189】
本願において引用された全ての特許及び非特許文献は、参照により、本明細書にそのまま組み込まれる。
【実施例】
【0190】
次の実施例において本発明をさらに説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0191】
実施例1
この実施例は、リンパ球特異的細胞表面マーカーの組み合わせを用いる蛍光活性化細胞分離(FACS)を用いる細胞分離及び蛍光色素接合抗体染色による、ニワトリまたはメンドリ(ここでは、今後、単にニワトリ(Gallus gallus;Isa Warren strain)と呼ぶ)からの抗体産生B細胞の単離のための異なるゲート及び分離戦略を実証する。Bu−1は、よく知られた抗体産生細胞への成熟の間にB細胞上に存在する特異的ニワトリB細胞表面抗原であり、形質細胞への分化の間に失われる(Rothwell et al.(1996)Vet.Immunology Immunopathology 55:225−34)。さらに、抗体分泌細胞が、細胞表面におけるIgYの存在に基づき検出された。IgYの細胞表面存在が形質細胞への分化の間に失われるという事実にもかかわらず、この抗体発現の直接マーカーは、哺乳動物IgG発現システムに観察されるように、IgYの膜濃度が単一細胞分離を可能とするという仮定に基づく分離戦略に含まれる(Wiberg et al.(2006)Biotechnol.Bioeng.94(2):396−405)。T細胞細胞は検出され、CD3抗原の存在によって、分離された集団から除去された。この研究において使用されたニワトリは、破傷風トキソイド(TT)抗原で免疫付与した。それゆえ、ビオチニル化破傷風トキソイドも、TT特異的細胞の上昇した集団を染色し選別するために、蛍光色素標識ストレプトアビジンとの組み合わせにおいて使用された。ELISpotアッセイによって、抗体産生B細胞および特異的抗TT抗体産生細胞の両方について、選別されたB細胞集団をアッセイした。細胞集団の由来として用いられた脾臓は、大半の分化B細胞を含み、そのため、高含有量の抗体分泌細胞を含んでいた(Mansikka et al.,1989,Scand.J.Immunol.29(3):325−331))。
【0192】
免疫付与:
6つの23週齢メスニワトリであるLohmann Brown Lite株を、完全フロインドアジュバント(CFA)中の0.5mg破傷風トキソイド(TT)の皮下投与し、第一次免疫付与の14、21および28日後に、不完全フロインドアジュバント中の0.5mgTTで繰り返し追加免疫をすることによって免疫付与した。免疫付与したニワトリからの脾臓を、最後の追加免疫付与の2、7および10日後に取り出し、脾細胞を直ちに、回収した。
【0193】
ニワトリ脾細胞の精製:
ニワトリを安楽死させ、脾臓を直ちに回収した。脾臓を、一時的に1% ペニシリン/ストレプトマイシン(P/S)(Invitrogen,CA,US)を有する10mlの4℃RPMI1640(Invitrogen,CA,US)中に保存し、氷上に放置した。脾臓組織を50mlチューブ中の70μm細胞ろ過器(BD Falcon(商標)352350)に移した。ろ過器を通して細胞を柔らかくするために10ml 注射器プランジャーの背部を用い、手順の間、4℃の完全培地(10%ウシ胎仔血清(FCS)および1%P/Sを有するRPMI 1640)で一定間隔ろ過器をすすいだ。懸濁液中の細胞を、300xg、4℃、5分間での遠心分離によって、採取し、続いて、50ml 4℃ FACS緩衝液(リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中の2%FCS)における懸濁によって洗浄し、前に説明したように遠心分離した。最後に、細胞を4℃のFACS緩衝液に希釈し、FACSに用い、あるいは冷凍培地(10%DMSO、90%ウシ胎仔血清)中に−140℃で保存する前に、50μmFACSフィルター(BD340603)に通した。
【0194】
抗体産生B細胞を同定するための関連マーカーでの脾細胞の染色:
下のリストに示される50μlのそれぞれのネズミ抗ニワトリ抗体を、1ml 4℃FACS緩衝液中の1x108細胞に加え、暗室で、20分間、4℃でインキュベートし、第一次染色の後に、二度洗浄し、第二次染色の後に三度洗浄した。
第一次染色:
Bu−1−FITC(Southern Biotech 8395−02)
CD3−PECy5(Abcam ab25537)
IgY−PE(Southern Biotech 8320−09)
ビオチン化破傷風トキソイド
第二次染色:
ストレプトアビジン−APC−CY7
【0195】
上で挙げた抗体で抗マウスIgκCompBeads(BD 51−90−9001229)を埋め合わせるFACSAria(商標)細胞分離装置において、サンプルを分析した。様々な分離ゲートを設定することによって抗体産生B細胞集団を同定し、その後、ELIspotアッセイ(実施例2)において、そして、Symplex(商標)PCR反応(実施例3)のためのテンプレートとして、分離集団を試験した。
適用された分離ゲートは、次のとおりである:
1. Bu−1+ CD3−
2. Bu−1+ CD3− IgY+
3. Bu−1+ CD3− IgY+ TT+
4. 中間集団、P2
5. P2 IgY+ (P3)
6. P2 IgY+ TT+ (P4)
7. Bu−1− CD3−
8. Bu−1− CD3− IgY+
9. Bu−1− CD3− IgY+ TT+
分離ゲート1−3を図3に示す。分離ゲート4−9をそれぞれ図4−9に示す。
【0196】
実施例2
この例は、IgY−特異的及びTT−特異的 ELISpotアッセイを用いることにより、実施例1における分離B細胞集団の間から抗体産生B細胞集団を同定することができることを実証する。
【0197】
溶液:
洗浄緩衝液 (1xPBS,0.05% Tween):
ブロッキング緩衝液: (RPMI,2% スキムミルク)
完全 RPMI: (RPMI,10% 不活性化FCS,1%P/S)
【0198】
ELISpotアッセイ:
PBS中に希釈したいずれも10μg/mlの100μlの抗IgY抗体 (Abcam ab 6872)または破傷風トキソイドでPVDF底プレート(Multiscreen−HTS,Millipore,MSIP S45 10)を被覆し、4℃で一晩インキュベートした。陰性コントロールとして、PBSのみで被覆したウェルを用いた。プレートをPBSで3回洗浄し、続いて、200μlのブロッキング緩衝液で、4℃で少なくとも2時間ブロックした。そして、緩衝液を取り除き、50μl完全RPMIに取り替えた。
【0199】
集団1、4及び7(実施例1)からの10000の細胞を、2通りにELISpotプレートのIgY、TT又はPBS被覆ウェルに分離した。集団2、5及び8からの2000のIgY陽性細胞、並びに集団3、6及び9からの500のTT陽性細胞を、同様にELISpotウェルに分離した。ELISpotプレートを抗体分泌を可能とする標準的細胞インキュベート条件で一晩放置した。一晩インキュベートしたのち、細胞と非結合抗体を除去するために、プレートを6回洗浄した。そのうち3回は、洗浄緩衝液で、3回は、PBSで行った。分泌及び捕捉IgYまたはTT特異的IgYを検出するために、ブロッキング緩衝液中に10,000倍希釈した100μl/ウェル セイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)接合抗IgY抗体(Abcam ab6877)を添加し、続いて、37℃で1時間インキュベートした。洗浄手順を繰り返し、その後、0.1M 酢酸ナトリウム0.1M酢酸pH5.1中の0.015%H2O2及び0.3 mg/mlの3−アミノ−9−エチルカルバゾールからなる100μlの新たに作った発色基質を加えた。4分の進行ののち、H2Oで洗浄することにより、反応を止めた。実体顕微鏡を用いてスポットの数を測定した。結果を表1に示す。
【0200】
【表1】
【0201】
ELISpotアッセイのデータから、抗体産生細胞の頻度は、Bu−1− CD3−IgY+細胞で最適であることが結論づけることができる。単一細胞Symplex PCR反応からの結果は、この知見を裏付ける。
【0202】
実施例3:キメラ ニワトリ−ヒト抗破傷風トキソイド抗体レパートリーのクローニング
【0203】
実施例1に説明したニワトリ脾臓B細胞集団P2及びP3を、上で説明したように、単一細胞分離した。Symplex(商標)PCRにおける使用のために、細胞を直接、10μl緩衝液(Qiagen OneStep RT−PCRキット)を含む4つの96ウェルPCRプレートに分離し、RT−PCR反応を実行するまで−80°Cで保存した。
【0204】
ニワトリSymplex PCR増幅を、4つの96ウェルプレートのうえで行った。反応の基本的原理は以下のとおり(図1及び図2):
・まず、特異的な定常領域プライマーによって重鎖及び軽鎖cDNA合成が開始するRT反応を行う。
・次に、重複伸長によって結合したVH及びVLの形成を促進する相補的突出を備えたVH及びVL5’領域プライマーを用いて、多重PCR反応を実行する。3’プライマーは、重鎖及び軽鎖配列の定常領域に位置する。
・ヒトラムダ軽鎖及びIgG1重鎖定常領域の重複伸長による後の追加のための突出を備えたJH及びJLプライマーを用いて接合したVH及びVKのみを増幅するネストPCR反応を実行する。Symplex(商標)PCR生成物は、CDRのサイズに依存する約700のヌクレオチドからなる。
・ヒトIgG1及びラムダ定常領域は、重複伸長により付加される。
・最終生成物は、5’末端が5’末端に接合しリンカーで連結された、ヒトIgG1定常領域に結合したニワトリVH、及びヒトラムダ定常領域に結合したニワトリVLからなる。リンカー領域は、哺乳動物細胞プロモーターリーダー断片の挿入のための制限酵素サイトを含み、隣接サイトがクローニングを促進する。
・連結したキメラLC−HC断片が、ベクターバックボーンへクローニングされ、哺乳動物細胞プロモーターリーダー断片が挿入される。
【0205】
組み合わされた多重 RT−PCR反応のために、表2に示されるプライマーセットを用いて、基本的には使用説明書に従いQiagen OneStep RT−PCRキットを用いた。分離した細胞とともにPCRプレートを氷上で解凍した。酵素、反応緩衝液、dNTP及びプライマーを添加して、20μlの全反応量を得た。多重PCR反応のためのサイクリング条件は、以下のとおり。
【0206】
【表2】
【0207】
基本的には使用説明書に従いFastStartポリメラーゼ(Roche)及び試薬用いて、表3に示すプライマーセットを用いてネストPCRを実行した。全量20μlにおけるネスト反応あたり1μlの多重Symplex PCR生成物を、テンプレートとして用いた。反応条件は、以下のとおり。
【0208】
【表3】
【0209】
最後に、10μlのそれぞれの最終反応性生物を、1%アガロースゲルで分析した。図10は、予想された電気泳動の移動度を持つ21の反応生成物を用いた96ウェルプレートからの例を示す。全部で90のバンドが、4つのプレートで生じた。同様の分析を様々なゲートで定義された実施例1で記載するB細胞の全ての集団からの96の単一細胞において実行した。それぞれの亜集団からのVH及びVL重複生成物を生じるSymplex(商標)PCR反応の数を、上の表1に示す。
【0210】
4つの96ウェルPCRプレートにおける全てのウェルからのアリコートをプールして、700bp VH−VLバンドを、1%アガロースゲルで精製した。ヒトラムダ軽鎖及びIgG1重鎖定常領域を重複伸長PCRによって付加した。
・ プライマーhCHC−F及びhCHC−R(表4)を用いてPhusion(登録商標)ポリメラーゼ(Finnzymes)を用いて、抗体発現プラスミドからヒトIgG1定常重鎖領域cDNA断片(発現を改善するように最適化したコドン)を増幅した。hCHC−Fプライマーは、ネスト反応に用いられるプライマーCH−JHに相補的な5’部位を含む。プライマーhCHC−Rは、重複バンドのクローニングに用いられる隣接PacIサイトを導入する。約1000kbの定常領域断片を1%アガロースゲル上で精製した。
・ プライマーhL−F及びhL−R(表4)及び抗体発現プラスミドをテンプレートとして用いてヒトラムダ軽鎖定常領域断片を増幅した。hL−Fプライマーは、ネスト反応に用いられるプライマーCH−JLに相補的な5’部分を含む。hL−Rプライマーは、重複バンドのクローニング用いられる隣接NotIサイトを導入する。約350kb定常領域断片を、1%アガロースゲル上で精製した。
・ 精製VH−VL、ヒトラムダ及びヒトIgG1定常領域バンドを混合し(それぞれ、25:12.5:25ng)、重複伸長PCRを、プライマーhCHC−R及びhL−R(表4)を用いるPhusion(登録商標)ポリメラーゼを用いて実行した。(約2kbの重複バンドを有する)反応生成物を図11に示す。
【0211】
【表4】
【0212】
断片をNotI及びPacIで消化し、ライゲーションによって、3’を重鎖に連結したIRES−DHFR(内部リボソーム侵入部位−ジヒドロ葉酸還元酵素)及びLC及びHC−IRES−DHFRのための適当なポリアデニル化シグナルを有するプラスミドに挿入した。E.coli TOP10(Invitrogen)コンピテント細胞を電気穿孔し、100μg/mlカルベニシリンを有する大型(35x35cm)LB−アガープレートに形質転換体を蒔いた。結果として生じたコロニーを、プレートから削り落とし、Maxi−Prep kit(Compact Prep,Qiagen)を用いたDNAの精製に細菌ペレットを用いた。分離細胞からの抗体レパートリーを表す精製DNAを、AscI及びNheIで消化し、哺乳動物細胞における発現のための領域をコードするシグナル配列を有する双方向性プロモーター断片を、ライゲーションによって挿入した。ライゲーションミックスを用いて電気穿孔によってE.coli TOP10細胞を形質転換し、上記のLB−アガープレート上に蒔いた。
【0213】
実施例5:クローニングされたレパートリーにおける特異的抗破傷風トキソイド抗体の発現及びスクリーニング
【0214】
100μg/mlカルベニシリンを有するLB 培養液を含む5つの96深ウェルプレートの単一ウェルに実施例4からの単一E.coliコロニーを採取し、シェーカーインキュベーターにおいて37℃で一晩培養した。96Turbo Miniprep Kit(Qiagen)を用いて5つのプレートからDNAを調製し、VH−LC挿入物の存在をコロニーPCRによって検証した。FreeStyle(商標)293細胞発現システム(Invitrogen)を用いて、一時的なトランスフェクションを実行した。FreeStyle(商標)培地における100μlの細胞(106/ml)を5つの96ウェルプレートに蒔いた。5つの96ウェルプレートからのミニプレップDNAで細胞をトランスフェクトした。1μl 293fectin(商標)(Invitrogen)を52μlOptiMEM(登録商標)培地(Invitrogen)中に希釈した。平均0.75μgのミニプレップ精製プラスミドDNAを添加し、混合物を20分間インキュベートした。ウェルごとに7μlの混合物を添加し、96ウェルプレートを5%CO2で37℃で振盪(150rpm)して4日間インキュベートした。
【0215】
Maxisorp(商標)(Nunc)プレートを5μg/ml濃度の破傷風トキソイド (State serum Institute,Copenhagen)で一晩被覆した。プレートをスキムミルクでブロッキングして、ウェルへの添加の前に、一時的トランスフェクションからの抗体含有上清を緩衝液(Tween−20含有PBS、及びスキムミルク)に1:5に希釈した。ペルオキシダーゼ接合ヤギ抗ラムダ軽鎖抗体(Serotec)でのインキュベーションによって抗体の結合を検出し、TMB Plus(KemEnTec)を用いるペルオキシダーゼ反応及びA450を測定した。
【0216】
2倍バックグラウンドの任意のカットオフ値を用いて、11の上清が、抗破傷風反応性に陽性であると考えることができた。これをさらに実証するために、破傷風トキソイド被覆プレートを用いる上で説明した新たなELISAにおいて11の上清の7つを試験した。陰性対照として、スキムミルクでブロッキングしたのみの非被覆プレートに対して同じ7つの上清を並行して試験した。結果を表5に示す。破傷風トキソイド被覆ウェルへの明らかな結合があるが、他方、非被覆ウェルへの結合はない。
【0217】
【表5】
【0218】
単一の96ウェルプレートにおける全ウェルからの上清について、ヒトFcに対する捕捉抗体及びヒトラムダ鎖に対するペルオキシダーゼ接合検出抗体を用いるELISAにおいてIgGの存在を試験した。10倍バックグラウンドのカットオフ値を用いて、80%を超えるウェルが、IgGラムダ反応性を含み、このことにより、ニワトリヒトキメラ抗体の発現が確認された。
【0219】
実施例6:配列分析
【0220】
実施例5におけるプレート1からの12の抗体クローンをランダムに選択し、VHおよびVL領域を配列決定した。全体的に、配列決定されたプラスミドの遺伝子構造は、意図されたように、プロモーター断片越しに頭部から頭部で位置しているニワトリ由来VH及びVLを有し、正確に追加されたヒト定常領域を有しているようである。図12は、これらのクローンの10のヒトHC定常領域、及び隣接フレームワークの短い広がりを有するVH CDR3領域のアラインメントを示す。アラインメントは、高度の多様性があることを表す。同様の結果は、ニワトリVL領域についても得られたが、これもまた、高度の多様性を示す(データは示さない)。
【0221】
付属の配列表における配列番号13から22は、それぞれ、図12において上から下へ示される10配列を含む全長VH配列である。配列番号13〜22は、AscIサイト(シグナルペプチドをコードする配列の最後の部分)とXhoIサイト(ニワトリVHとヒトIgG1定常領域cDNAを連結する)の間のそれぞれの配列を含む。
【0222】
実施例5からの7つの破傷風トキソイド陽性クローンを配列決定し、そのうち5つが、信頼できる配列データを与えた。VH及びVLのDNA配列を、次の結果とともに配列した。
・ 3つの抗体(図13において上から下へ1、2及び5番目)のVH領域は、1つのヌクレオチドの相異を除いて、同一であったが、他方、残りの2つは、非常に異なった。
・ 3つの抗体(図14において上から下へ1、2及び3番目)のVL領域は、2ヌクレオチド塩基を除き、大半の配列(フレームワーク、CDR1及びCDR2)において同一であり、これは、PCR導入変異のためでありえ、他方、1つのクローン(図14において上から1番目)は、他の2つとCDR3配列において異なり、このことは、遺伝子変換によるこの領域におけるさらなる分化を示す。残りのクローン(図14において上から下へ4および5番目)のVL領域は、VH領域と同様に、非常に異なった。
【0223】
ELISA及び配列分析の組み合わせは、クローニング後の90Symplex PCRバンドが、少なくとも3つの完全に異なる破傷風特異的抗体を与えることを示し、これにより、本発明の方法が抗原特異的ニワトリ由来抗体の同定に適していることが確認された。
【0224】
実施例7:結論
【0225】
まとめると、実施例1〜6は、われわれが、抗体分泌B細胞を富化し単一細胞分離されたB細胞集団の産生のためのFACSベースの方法を確立したこと、および発現抗体遺伝子が、本明細書によって説明したchSymplex(商標)PCR技術によって単一細胞から除去されうることを実証する。ニワトリBリンパ球(CD3−)の集団は、細胞表面におけるBu−1及びIgYの量に基づき、亜集団に分けることができ、これにより、IgY及びTT特異的ELIspotアッセイの両方で得られた結果によって実証したように、抗体分泌細胞の顕著な富化が可能となる。ELIspotの結果は、表1に示すように、さらに陽性Symplex(商標)PCR反応の増大した頻度の相関関係によって支持された。さらに、TT特異的抗体が90のSymplex PCR生成物からなるパイロット規模抗体レパートリーから同定されたという事実は、抗原特異的ニワトリ抗体の単離が、本発明の方法によって容易に達成されることを実証する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
接続された可変領域をコードする配列を含む同種ペアのライブラリーを製造する方法であって、
a) 鳥類起源のドナーからのリンパ球含有細胞分画の提供、
b) 前記細胞分画から細胞を個別に複数の容器に分配することによる、単離単一細胞の集団の取得(ここで、少なくとも該細胞の亜集団は、免疫グロブリン遺伝子、及び所望により任意の鳥類B細胞マーカー抗原を発現する)、及び
c) 多重分子増幅手順において単離単一細胞又は同系細胞の集団由来のテンプレートを用いて目的のヌクレオチド配列を増幅し、そして増幅された目的のヌクレオチド配列の接続を達成することによる、前記単離単一細胞の集団に含まれる可変領域をコードする配列の増幅及びそれらの接続の達成
を含む方法。
【請求項2】
細胞の亜集団が、以下のいずれかによって特徴づけられる、請求項1に記載の方法。
・IgYの発現(IgY+)、
・IgYの発現、及びCD3陰性(IgY+ CD3−)、
・IgYの発現、Bu−1の非又は低発現、及びCD3陰性(IgY+ Bu−1− CD3−)、
・Bu−1及びIgYの発現(Bu−1+ IgY+)、
・Bu−1及びIgYの発現、並びにCD3陰性(Bu−1+ IgY+ CD3−)、
・Bu−1の発現、及び単球マーカーの非発現(Bu−1+、単球−)、
・Bu−1の発現、及びIgMの非又は低発現レベル(Bu−1+ IgM−)、又は
・Bu−1及びBAFFの発現(Bu−1+ BAFF+)。
【請求項3】
細胞の亜集団がIgY+である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
細胞の亜集団が、IgY+ CD3−、例えば、IgY+ CD3− Bu−1−である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
増幅及び接続を実行する前に、単一細胞の集団における個別の単離単一細胞を同系細胞の集団に拡大する、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
リンパ球含有細胞分画が、脾細胞、全血、骨髄、単核細胞、又は白血球、好ましくは、脾細胞又は骨髄、より好ましくは脾細胞を含む、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
リンパ球含有細胞分画又はBリンパ球系列が、形質細胞、形質芽球又は記憶B細胞に富む、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
目的のヌクレオチド配列が、免疫グロブリン可変領域をコードする配列を含み、そして接続が、重鎖可変領域をコードする配列に結合した軽鎖可変領域をコードする配列の同種ペアを創出する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
複数の目的の非隣接ヌクレオチド配列をランダムに接続する方法であって、
a)多重分子増幅手順において遺伝的に多様な細胞の集団由来のテンプレートを用いた、目的のヌクレオチド配列の増幅(ここで、前記遺伝的に多様な細胞は、鳥類起源のドナーからのリンパ球含有細胞分画に由来し、少なくとも該細胞の亜集団は、免疫グロブリン遺伝子、及び所望により任意の鳥類B細胞マーカー抗原を発現する)、及び
b)段階a)において増幅された目的のヌクレオチド配列の接続の達成
を含む方法。
【請求項10】
細胞の集団が、次のいずれかによって特徴づけられる、請求項9に記載の方法。
・IgYの発現(IgY+)、
・IgYの発現、及びCD3陰性(IgY+ CD3−)、
・IgYの発現、Bu−1の非又は低発現、及びCD3陰性(IgY+ Bu−1− CD3−)、
・Bu−1及びIgYの発現(Bu−1+ IgY+)、
・Bu−1及びIgYの発現、並びにCD3陰性(Bu−1+ IgY+ CD3−)、
・Bu−1の発現、及び単球マーカーの非発現(Bu−1+、単球−)、
・Bu−1の発現、及びIgMの非又は低発現レベル(Bu−1+ IgM−)、又は
・Bu−1 及びBAFFの発現(Bu−1+ BAFF+)。
【請求項11】
細胞の亜集団が、IgY+、好ましくは、IgY+ CD3−、例えば、IgY+ CD3− Bu−1−である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
細胞の集団が、溶解している、請求項9〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
目的のヌクレオチド配列が可変領域をコードする配列を含み、そして接続が可変領域をコードする配列のペアのコンビナトリアルライブラリーを作製する、請求項9〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
目的のヌクレオチド配列が免疫グロブリン可変領域をコードする配列を含み、そして接続が軽鎖可変領域と重鎖可変領域をコードする配列のペアのコンビナトリアルライブラリーを作製する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
多重分子増幅の前に、リンパ球含有細胞の集団が、検出可能なレベルのIgY、所望により、検出可能なレベルのIgY及びBu−1を発現する細胞を含むことを評価することをさらに含む、請求項1〜14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
多重分子増幅の前に、IgYを発現する、所望により、IgY及びBu−1を発現するリンパ球集団のためにリンパ球含有細胞分画を富化することをさらに含む、請求項1〜15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
多重分子増幅の前に、リンパ球含有集団から、免疫グロブリン遺伝子、好ましくは、IgY、所望により、IgY及びBu−1を発現する細胞を単離することをさらに含む、請求項1〜16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
富化又は単離が、自動分離手順を含む、請求項1〜17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
自動分離手順が、MACS又はFACSである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
鳥類が、ニワトリである、請求項1〜19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
鳥類が、アヒル、ガチョウ、ハト又は七面鳥である、請求項1〜19のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
ニワトリが、トランスジェニックであり、ヒト免疫グロブリン配列を発現する、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
多重分子増幅手順が、多重RT−PCR増幅である、請求項1〜22のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
多重RT−PCR増幅が、多重PCR増幅の前に、別個の逆転写(RT)段階を含む2段階プロセスである、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
多重RT−PCR増幅が、逆転写(RT)及び多重PCR増幅の両方を実行するのに必要な全ての成分を単一の容器に最初に添加することを含む単一段階において実行される、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
目的のヌクレオチド配列の接続が、多重分子増幅と同一の容器において実行される、請求項1〜25のいずれかに記載の方法。
【請求項27】
目的のヌクレオチド配列の接続が、多重重複伸長プライマーミックスを利用する多重PCR増幅に関連して達成される、請求項23〜26のいずれかに記載の方法。
【請求項28】
目的のヌクレオチド配列の接続が、ライゲーションにより達成される、請求項1〜26のいずれかに記載の方法。
【請求項29】
接続された目的の核酸配列の増幅に適したプライマーミックスを利用する付加的分子増幅が実行される、請求項1〜28のいずれかに記載の方法。
【請求項30】
接続されたヌクレオチド配列又は同種ペアのライブラリーをベクターに挿入することをさらに含む、請求項1〜29のいずれかに記載の方法。
【請求項31】
ベクターが、クローニングベクター、シャトルベクター、ディスプレイベクター及び発現ベクターから選択される、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
接続されたヌクレオチド配列または同種ペアのライブラリーの個別のメンバーが、軽鎖可変領域をコードする配列と結合した免疫グロブリン重鎖可変領域をコードする配列を含み、前記配列が、1又は複数の免疫グロブリン定常ドメインまたはその断片をコードする配列を含むベクターにインフレームで挿入されている、請求項30または31に記載の方法。
【請求項33】
所望の標的特異性を有する結合タンパク質をコードする連結された可変領域配列の同種ペアのサブセットを選択し、それにより、可変領域をコードする配列の標的特異的同種ペアのライブラリーを作製することによってサブライブラリーを製造することをさらに含む、請求項30〜32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
同種ペア又は可変領域をコードする配列の標的特異的同種ペアのライブラリーを哺乳動物発現ベクターに転写することをさらに含む、請求項32又は33に記載の方法。
【請求項35】
哺乳動物発現ベクターが、ヒト免疫グロブリンクラスIgA1、IgA2、IgD、IgE、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgM、カッパ軽鎖及びラムダ軽鎖から選ばれる1又は複数の定常領域ドメインをコードする、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
a)接続されたヌクレオチド配列の部分をコードするベクターの宿主細胞への導入
b)発現に適合した条件下での前記宿主細胞の培養、及び
c)前記宿主細胞に挿入されたベクターから発現したタンパク質生成物の取得
の段階をさらに含む、請求項30〜35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
タンパク質生成物が、重鎖可変領域に結合した軽鎖可変領域の同種ペアを含む抗体である、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
大多数のウェルにおいて、
・鳥類ドナーからのリンパ球含有細胞分画に由来する1つの細胞(ここで、前記細胞は、IgY及び/又はBu−1抗原を含む免疫グロブリン遺伝子を発現する)、及び、
・mRNAの逆転写を実行するために、及び重鎖及び軽鎖可変コード領域を増幅するために必要な緩衝液及び試薬、
を含む多重ウェルプレート。
【請求項39】
ヒト定常領域及び非ヒト可変領域を有するキメラ抗体をコードするベクターを作製する方法であって、
a) 鳥類起源のドナーからのリンパ球含有細胞分画の提供;
b) 前記細胞分画から細胞を個別に複数の容器に分配することによる、単離単一細胞の集団の取得;
c) 多重分子増幅手順において単離単一細胞又は同系細胞の集団由来のテンプレートを用いて単離単一細胞の集団に含まれる可変領域をコードする核酸を増幅し、そして増幅された重鎖及び軽鎖の可変領域をコードする核酸の接続を達成することによる、前記核酸の増幅及びそれらの接続の達成;
d) ヒト定常領域への増幅された可変領域の接続の達成;及び
e) ベクターへの取得された核酸の挿入
を含む方法。
【請求項40】
ドナーが、ヒト抗体可変重鎖及び軽鎖に由来するか又はそれと顕著な類似性を有する免疫グロブリンを産生することができるヒト免疫グロブリン配列を有するトランスジェニックのニワトリである、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
多重分子増幅手順が、多重RT−PCR増幅である、請求項30または40に記載の方法。
【請求項42】
多重RT−PCR増幅が、多重PCR増幅の前に、別個の逆転写(RT)段階を含む2段階プロセスである、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
多重RT−PCR増幅が、逆転写(RT)及び多重PCR増幅の両方を実行するのに必要な全ての成分を単一の容器に最初に添加することを含む単一段階において実行される、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
目的のヌクレオチド配列の接続が、多重分子増幅と同一の容器において実行される、請求項39〜43のいずれかに記載の方法。
【請求項45】
目的のヌクレオチド配列の接続が、多重重複伸長プライマーミックスを利用する多重PCR増幅に関連して達成される、請求項41〜44のいずれかに記載の方法。
【請求項46】
目的のヌクレオチド配列の接続が、ライゲーションにより達成される、請求項39〜44のいずれかに記載の方法。
【請求項47】
接続された目的の核酸配列の増幅に適したプライマーミックスを利用する付加的分子増幅が実行される、請求項39〜46のいずれかに記載の方法。
【請求項48】
PCR生成物が、発現ベクターに挿入される、請求項41に記載の方法。
【請求項49】
二重プロモーターカセットが発現コンストラクトに挿入され、二重プロモーターカセットが重鎖及び軽鎖の同時発現を指揮することができ、好ましくは、二重プロモーターカセットが双方向性である、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
二重プロモーターカセットがさらに二重シグナルペプチドをコードする核酸配列を含む、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
発現ベクターが、ヒト定常軽鎖をコードする配列若しくはその断片及び/又はヒト定常重鎖をコードする配列若しくはその断片を含むバックボーンを含む、請求項48に記載の方法。
【請求項52】
順にニワトリVH鎖、リンカー、ニワトリVL鎖、及びヒト定常軽鎖を含むコンストラクトを増幅することができるプライマーセットとともに、可変軽鎖への接続を提供することができるオーバーラップを有するヒト定常軽鎖をコードするポリヌクレオチド又はその断片をPCR混合物に添加するさらなる増幅段階を含む、請求項39〜51のいずれか1項に記載の方法。
【請求項53】
順にヒト定常重鎖、ニワトリVH鎖、リンカー、及びニワトリVL鎖を含むコンストラクトを増幅することができるプライマーセットとともに、可変重鎖への接続を提供することができるオーバーラップを有するヒト定常重鎖をコードするポリヌクレオチド又はその断片をPCR混合物に添加するさらなる増幅段階を含む、請求項39〜51のいずれか1項に記載の方法。
【請求項54】
それぞれのキメラ抗体が、ニワトリ免疫グロブリン可変領域をコードする配列及びヒト免疫グロブリン重鎖及び軽鎖定常領域からなる、キメラ抗体をコードするベクターのライブラリー。
【請求項55】
ベクターが請求項1〜37又は39〜53のいずれかに記載の方法により得られる、請求項54に記載のライブラリー。
【請求項56】
ニワトリ免疫グロブリン可変領域をコードする配列が、ヒト抗体可変重鎖及び軽鎖に由来するか又はそれと顕著な類似性を有する免疫グロブリンを産生することができるヒト免疫グロブリン配列を有するトランスジェニックニワトリに由来する、請求項54に記載のライブラリー。
【請求項57】
軽鎖定常領域がカッパ又はラムダ定常領域である、請求項54に記載のライブラリー。
【請求項58】
ベクターが発現ベクターである、請求項54に記載のライブラリー。
【請求項59】
可変領域が可変重鎖及び軽鎖の同種ペアである、請求項54に記載のライブラリー。
【請求項60】
ヒト免疫グロブリン定常領域がヒト免疫グロブリンクラスIgA1、IgA2、IgD、IgE、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4及びIgMから選ばれる、請求項54に記載のライブラリー。
【請求項61】
定常領域が、IgG1及びIgG2から選ばれる、請求項60に記載のライブラリー。
【請求項62】
請求項54〜61のいずれかに記載のライブラリーから選ばれる、特定の標的に対して所望の結合特異性を示す抗体をコードするサブライブラリー。
【請求項63】
鳥起源免疫グロブリン可変領域をコードする配列のライブラリーを製造する方法であって、
a)鳥類起源のドナーからのリンパ球含有細胞分画の提供、
b)前記細胞分画から細胞を個別に複数の容器に分配することによる、単離単一細胞の集団の取得(ここで、少なくとも該細胞の亜集団は、免疫グロブリン遺伝子、例えばIgY、及び所望により少なくとも1つの鳥類B細胞マーカー抗原を発現する)、及び
c)多重分子増幅手順において単離単一細胞又は同系細胞の集団由来のテンプレートを用いて目的のヌクレオチド配列を増幅することによる、前記単離単一細胞の集団に含まれる可変領域をコードする配列の増幅
を含む方法。
【請求項64】
同種ペアのライブラリーを得るように、さらに、重鎖及び軽鎖可変領域をコードする配列の接続を達成することを含む、請求項63に記載の方法。
【請求項1】
接続された可変領域をコードする配列を含む同種ペアのライブラリーを製造する方法であって、
a) 鳥類起源のドナーからのリンパ球含有細胞分画の提供、
b) 前記細胞分画から細胞を個別に複数の容器に分配することによる、単離単一細胞の集団の取得(ここで、少なくとも該細胞の亜集団は、免疫グロブリン遺伝子、及び所望により任意の鳥類B細胞マーカー抗原を発現する)、及び
c) 多重分子増幅手順において単離単一細胞又は同系細胞の集団由来のテンプレートを用いて目的のヌクレオチド配列を増幅し、そして増幅された目的のヌクレオチド配列の接続を達成することによる、前記単離単一細胞の集団に含まれる可変領域をコードする配列の増幅及びそれらの接続の達成
を含む方法。
【請求項2】
細胞の亜集団が、以下のいずれかによって特徴づけられる、請求項1に記載の方法。
・IgYの発現(IgY+)、
・IgYの発現、及びCD3陰性(IgY+ CD3−)、
・IgYの発現、Bu−1の非又は低発現、及びCD3陰性(IgY+ Bu−1− CD3−)、
・Bu−1及びIgYの発現(Bu−1+ IgY+)、
・Bu−1及びIgYの発現、並びにCD3陰性(Bu−1+ IgY+ CD3−)、
・Bu−1の発現、及び単球マーカーの非発現(Bu−1+、単球−)、
・Bu−1の発現、及びIgMの非又は低発現レベル(Bu−1+ IgM−)、又は
・Bu−1及びBAFFの発現(Bu−1+ BAFF+)。
【請求項3】
細胞の亜集団がIgY+である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
細胞の亜集団が、IgY+ CD3−、例えば、IgY+ CD3− Bu−1−である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
増幅及び接続を実行する前に、単一細胞の集団における個別の単離単一細胞を同系細胞の集団に拡大する、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
リンパ球含有細胞分画が、脾細胞、全血、骨髄、単核細胞、又は白血球、好ましくは、脾細胞又は骨髄、より好ましくは脾細胞を含む、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
リンパ球含有細胞分画又はBリンパ球系列が、形質細胞、形質芽球又は記憶B細胞に富む、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
目的のヌクレオチド配列が、免疫グロブリン可変領域をコードする配列を含み、そして接続が、重鎖可変領域をコードする配列に結合した軽鎖可変領域をコードする配列の同種ペアを創出する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
複数の目的の非隣接ヌクレオチド配列をランダムに接続する方法であって、
a)多重分子増幅手順において遺伝的に多様な細胞の集団由来のテンプレートを用いた、目的のヌクレオチド配列の増幅(ここで、前記遺伝的に多様な細胞は、鳥類起源のドナーからのリンパ球含有細胞分画に由来し、少なくとも該細胞の亜集団は、免疫グロブリン遺伝子、及び所望により任意の鳥類B細胞マーカー抗原を発現する)、及び
b)段階a)において増幅された目的のヌクレオチド配列の接続の達成
を含む方法。
【請求項10】
細胞の集団が、次のいずれかによって特徴づけられる、請求項9に記載の方法。
・IgYの発現(IgY+)、
・IgYの発現、及びCD3陰性(IgY+ CD3−)、
・IgYの発現、Bu−1の非又は低発現、及びCD3陰性(IgY+ Bu−1− CD3−)、
・Bu−1及びIgYの発現(Bu−1+ IgY+)、
・Bu−1及びIgYの発現、並びにCD3陰性(Bu−1+ IgY+ CD3−)、
・Bu−1の発現、及び単球マーカーの非発現(Bu−1+、単球−)、
・Bu−1の発現、及びIgMの非又は低発現レベル(Bu−1+ IgM−)、又は
・Bu−1 及びBAFFの発現(Bu−1+ BAFF+)。
【請求項11】
細胞の亜集団が、IgY+、好ましくは、IgY+ CD3−、例えば、IgY+ CD3− Bu−1−である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
細胞の集団が、溶解している、請求項9〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
目的のヌクレオチド配列が可変領域をコードする配列を含み、そして接続が可変領域をコードする配列のペアのコンビナトリアルライブラリーを作製する、請求項9〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
目的のヌクレオチド配列が免疫グロブリン可変領域をコードする配列を含み、そして接続が軽鎖可変領域と重鎖可変領域をコードする配列のペアのコンビナトリアルライブラリーを作製する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
多重分子増幅の前に、リンパ球含有細胞の集団が、検出可能なレベルのIgY、所望により、検出可能なレベルのIgY及びBu−1を発現する細胞を含むことを評価することをさらに含む、請求項1〜14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
多重分子増幅の前に、IgYを発現する、所望により、IgY及びBu−1を発現するリンパ球集団のためにリンパ球含有細胞分画を富化することをさらに含む、請求項1〜15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
多重分子増幅の前に、リンパ球含有集団から、免疫グロブリン遺伝子、好ましくは、IgY、所望により、IgY及びBu−1を発現する細胞を単離することをさらに含む、請求項1〜16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
富化又は単離が、自動分離手順を含む、請求項1〜17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
自動分離手順が、MACS又はFACSである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
鳥類が、ニワトリである、請求項1〜19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
鳥類が、アヒル、ガチョウ、ハト又は七面鳥である、請求項1〜19のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
ニワトリが、トランスジェニックであり、ヒト免疫グロブリン配列を発現する、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
多重分子増幅手順が、多重RT−PCR増幅である、請求項1〜22のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
多重RT−PCR増幅が、多重PCR増幅の前に、別個の逆転写(RT)段階を含む2段階プロセスである、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
多重RT−PCR増幅が、逆転写(RT)及び多重PCR増幅の両方を実行するのに必要な全ての成分を単一の容器に最初に添加することを含む単一段階において実行される、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
目的のヌクレオチド配列の接続が、多重分子増幅と同一の容器において実行される、請求項1〜25のいずれかに記載の方法。
【請求項27】
目的のヌクレオチド配列の接続が、多重重複伸長プライマーミックスを利用する多重PCR増幅に関連して達成される、請求項23〜26のいずれかに記載の方法。
【請求項28】
目的のヌクレオチド配列の接続が、ライゲーションにより達成される、請求項1〜26のいずれかに記載の方法。
【請求項29】
接続された目的の核酸配列の増幅に適したプライマーミックスを利用する付加的分子増幅が実行される、請求項1〜28のいずれかに記載の方法。
【請求項30】
接続されたヌクレオチド配列又は同種ペアのライブラリーをベクターに挿入することをさらに含む、請求項1〜29のいずれかに記載の方法。
【請求項31】
ベクターが、クローニングベクター、シャトルベクター、ディスプレイベクター及び発現ベクターから選択される、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
接続されたヌクレオチド配列または同種ペアのライブラリーの個別のメンバーが、軽鎖可変領域をコードする配列と結合した免疫グロブリン重鎖可変領域をコードする配列を含み、前記配列が、1又は複数の免疫グロブリン定常ドメインまたはその断片をコードする配列を含むベクターにインフレームで挿入されている、請求項30または31に記載の方法。
【請求項33】
所望の標的特異性を有する結合タンパク質をコードする連結された可変領域配列の同種ペアのサブセットを選択し、それにより、可変領域をコードする配列の標的特異的同種ペアのライブラリーを作製することによってサブライブラリーを製造することをさらに含む、請求項30〜32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
同種ペア又は可変領域をコードする配列の標的特異的同種ペアのライブラリーを哺乳動物発現ベクターに転写することをさらに含む、請求項32又は33に記載の方法。
【請求項35】
哺乳動物発現ベクターが、ヒト免疫グロブリンクラスIgA1、IgA2、IgD、IgE、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgM、カッパ軽鎖及びラムダ軽鎖から選ばれる1又は複数の定常領域ドメインをコードする、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
a)接続されたヌクレオチド配列の部分をコードするベクターの宿主細胞への導入
b)発現に適合した条件下での前記宿主細胞の培養、及び
c)前記宿主細胞に挿入されたベクターから発現したタンパク質生成物の取得
の段階をさらに含む、請求項30〜35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
タンパク質生成物が、重鎖可変領域に結合した軽鎖可変領域の同種ペアを含む抗体である、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
大多数のウェルにおいて、
・鳥類ドナーからのリンパ球含有細胞分画に由来する1つの細胞(ここで、前記細胞は、IgY及び/又はBu−1抗原を含む免疫グロブリン遺伝子を発現する)、及び、
・mRNAの逆転写を実行するために、及び重鎖及び軽鎖可変コード領域を増幅するために必要な緩衝液及び試薬、
を含む多重ウェルプレート。
【請求項39】
ヒト定常領域及び非ヒト可変領域を有するキメラ抗体をコードするベクターを作製する方法であって、
a) 鳥類起源のドナーからのリンパ球含有細胞分画の提供;
b) 前記細胞分画から細胞を個別に複数の容器に分配することによる、単離単一細胞の集団の取得;
c) 多重分子増幅手順において単離単一細胞又は同系細胞の集団由来のテンプレートを用いて単離単一細胞の集団に含まれる可変領域をコードする核酸を増幅し、そして増幅された重鎖及び軽鎖の可変領域をコードする核酸の接続を達成することによる、前記核酸の増幅及びそれらの接続の達成;
d) ヒト定常領域への増幅された可変領域の接続の達成;及び
e) ベクターへの取得された核酸の挿入
を含む方法。
【請求項40】
ドナーが、ヒト抗体可変重鎖及び軽鎖に由来するか又はそれと顕著な類似性を有する免疫グロブリンを産生することができるヒト免疫グロブリン配列を有するトランスジェニックのニワトリである、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
多重分子増幅手順が、多重RT−PCR増幅である、請求項30または40に記載の方法。
【請求項42】
多重RT−PCR増幅が、多重PCR増幅の前に、別個の逆転写(RT)段階を含む2段階プロセスである、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
多重RT−PCR増幅が、逆転写(RT)及び多重PCR増幅の両方を実行するのに必要な全ての成分を単一の容器に最初に添加することを含む単一段階において実行される、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
目的のヌクレオチド配列の接続が、多重分子増幅と同一の容器において実行される、請求項39〜43のいずれかに記載の方法。
【請求項45】
目的のヌクレオチド配列の接続が、多重重複伸長プライマーミックスを利用する多重PCR増幅に関連して達成される、請求項41〜44のいずれかに記載の方法。
【請求項46】
目的のヌクレオチド配列の接続が、ライゲーションにより達成される、請求項39〜44のいずれかに記載の方法。
【請求項47】
接続された目的の核酸配列の増幅に適したプライマーミックスを利用する付加的分子増幅が実行される、請求項39〜46のいずれかに記載の方法。
【請求項48】
PCR生成物が、発現ベクターに挿入される、請求項41に記載の方法。
【請求項49】
二重プロモーターカセットが発現コンストラクトに挿入され、二重プロモーターカセットが重鎖及び軽鎖の同時発現を指揮することができ、好ましくは、二重プロモーターカセットが双方向性である、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
二重プロモーターカセットがさらに二重シグナルペプチドをコードする核酸配列を含む、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
発現ベクターが、ヒト定常軽鎖をコードする配列若しくはその断片及び/又はヒト定常重鎖をコードする配列若しくはその断片を含むバックボーンを含む、請求項48に記載の方法。
【請求項52】
順にニワトリVH鎖、リンカー、ニワトリVL鎖、及びヒト定常軽鎖を含むコンストラクトを増幅することができるプライマーセットとともに、可変軽鎖への接続を提供することができるオーバーラップを有するヒト定常軽鎖をコードするポリヌクレオチド又はその断片をPCR混合物に添加するさらなる増幅段階を含む、請求項39〜51のいずれか1項に記載の方法。
【請求項53】
順にヒト定常重鎖、ニワトリVH鎖、リンカー、及びニワトリVL鎖を含むコンストラクトを増幅することができるプライマーセットとともに、可変重鎖への接続を提供することができるオーバーラップを有するヒト定常重鎖をコードするポリヌクレオチド又はその断片をPCR混合物に添加するさらなる増幅段階を含む、請求項39〜51のいずれか1項に記載の方法。
【請求項54】
それぞれのキメラ抗体が、ニワトリ免疫グロブリン可変領域をコードする配列及びヒト免疫グロブリン重鎖及び軽鎖定常領域からなる、キメラ抗体をコードするベクターのライブラリー。
【請求項55】
ベクターが請求項1〜37又は39〜53のいずれかに記載の方法により得られる、請求項54に記載のライブラリー。
【請求項56】
ニワトリ免疫グロブリン可変領域をコードする配列が、ヒト抗体可変重鎖及び軽鎖に由来するか又はそれと顕著な類似性を有する免疫グロブリンを産生することができるヒト免疫グロブリン配列を有するトランスジェニックニワトリに由来する、請求項54に記載のライブラリー。
【請求項57】
軽鎖定常領域がカッパ又はラムダ定常領域である、請求項54に記載のライブラリー。
【請求項58】
ベクターが発現ベクターである、請求項54に記載のライブラリー。
【請求項59】
可変領域が可変重鎖及び軽鎖の同種ペアである、請求項54に記載のライブラリー。
【請求項60】
ヒト免疫グロブリン定常領域がヒト免疫グロブリンクラスIgA1、IgA2、IgD、IgE、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4及びIgMから選ばれる、請求項54に記載のライブラリー。
【請求項61】
定常領域が、IgG1及びIgG2から選ばれる、請求項60に記載のライブラリー。
【請求項62】
請求項54〜61のいずれかに記載のライブラリーから選ばれる、特定の標的に対して所望の結合特異性を示す抗体をコードするサブライブラリー。
【請求項63】
鳥起源免疫グロブリン可変領域をコードする配列のライブラリーを製造する方法であって、
a)鳥類起源のドナーからのリンパ球含有細胞分画の提供、
b)前記細胞分画から細胞を個別に複数の容器に分配することによる、単離単一細胞の集団の取得(ここで、少なくとも該細胞の亜集団は、免疫グロブリン遺伝子、例えばIgY、及び所望により少なくとも1つの鳥類B細胞マーカー抗原を発現する)、及び
c)多重分子増幅手順において単離単一細胞又は同系細胞の集団由来のテンプレートを用いて目的のヌクレオチド配列を増幅することによる、前記単離単一細胞の集団に含まれる可変領域をコードする配列の増幅
を含む方法。
【請求項64】
同種ペアのライブラリーを得るように、さらに、重鎖及び軽鎖可変領域をコードする配列の接続を達成することを含む、請求項63に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公表番号】特表2012−500634(P2012−500634A)
【公表日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−524188(P2011−524188)
【出願日】平成21年8月28日(2009.8.28)
【国際出願番号】PCT/DK2009/050219
【国際公開番号】WO2010/022738
【国際公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【出願人】(505257682)シムフォゲン・アクティーゼルスカブ (24)
【氏名又は名称原語表記】SYMPHOGEN A/S
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年8月28日(2009.8.28)
【国際出願番号】PCT/DK2009/050219
【国際公開番号】WO2010/022738
【国際公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【出願人】(505257682)シムフォゲン・アクティーゼルスカブ (24)
【氏名又は名称原語表記】SYMPHOGEN A/S
【Fターム(参考)】
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