説明

鶏肉のドラムスティック部位を用いたフライドチキンの製造方法

【課題】簡単な下処理で、肉の厚みがあるドラムスティック部位でも、加熱調理時間を短縮でき、かつ衣付きが良く、美味なフライドチキンが得られる、鶏肉のドラムスティック部位を用いたフライドチキンの製造方法を提供すること。
【解決手段】鶏肉のドラムスティック部位1を用いたフライドチキンの製造方法において、ドラムスティック部位1の基端部2の骨4の周囲の腱及び靱帯を切断し、ドラムスティック部位1の基端部2から先端部3方向へ、先端部3付近の肉はそのまま残し、それ以外の部分の肉6を骨4の周囲から剥がしつつ、皮5と肉6を反転させながら骨4に沿って捲くり上げた後、衣付けし、油で揚げることを特徴とする鶏肉のドラムスティック部位を用いたフライドチキンの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鶏肉のドラムスティック部位(下脚)を用いたフライドチキンの製造方法に関する。詳しくは、簡単な下処理で、肉の厚みがあるドラムスティック部位でも、加熱調理時間を短縮でき、かつ衣付きが良く、美味なフライドチキンが得られるフライドチキンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フライドチキンは、鶏肉を骨付きのまま適当な大きさに切断し、から揚げ粉をまぶして衣付けし、油で揚げたものであり、従来より、鶏肉の各部位を用いてフライドチキンが製造されている。
鶏肉は、各部位によって肉の厚みが異なる上、肉の外表面が皮で覆われているため、部位によって適切な加熱調理時間(油ちょう時間)が異なっている。特に、ドラムスティック部位は、他の部位と比較して肉の厚みがあり且つ肉の外周囲が皮で覆われているため、火通りが悪く、加熱調理時間が長い。
また、ドラムスティック部位は、肉の外周囲が皮で覆われているため、衣の付着が悪く、美味しいフライドチキンを作り難いとの問題がある。
しかし、従来、特にその対策は採られておらず、ドラムスティック部位を用いてフライドチキンを製造する場合、ドラムスティック部位をそのまま用いて、他の部位と同様の方法によりフライドチキンを製造している(非特許文献1および2参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】「図解チキンデリカ(とり惣菜)専科」ミートジャーナル社(昭和62年)p272〜273
【非特許文献2】「らくらく洋食」集英社(1996年)p92〜93
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ドラムスティック部位の加熱調理時間の短縮や衣の付着性を向上させるために、ドラムスティック部位をカットして大きさや厚みを調整したり、切り込みを入れることが考えられるが、カットして大きさや厚みを調整した場合には、手間がかかる上、歩留りが悪く、しかも肉の旨味が逃げてしまうなどの問題があり、また切り込みを入れた場合には、火通りにムラが出てしまい、従来の問題の解決には至っていない。
従って、本発明の目的は、簡単な下処理で、肉の厚みがあるドラムスティック部位でも、加熱調理時間を短縮でき、かつ衣付きが良く、美味なフライドチキンが得られる、鶏肉のドラムスティック部位を用いたフライドチキンの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記目的を達成すべく種々検討した結果、ドラムスティック部位に特定の下処理を施すことにより、すなわち、ドラムスティック部位の基端部から先端部方向へ、皮と肉を反転させながら骨に沿って肉を捲くり上げることにより、肉の厚みが厚くなるにもかかわらず、意外にも、火通りがよくなり、加熱調理時間が短縮され、しかも皮と肉を反転させたことによって衣付きが良くなり、美味なフライドチキンが得られることを知見し、本発明に到達した。
【0006】
即ち、本発明は、鶏肉のドラムスティック部位を用いたフライドチキンの製造方法において、ドラムスティック部位の基端部の骨の周囲の腱及び靱帯を切断し、ドラムスティック部位の基端部から先端部方向へ、先端部付近の肉はそのまま残し、それ以外の部分の肉を骨の周囲から剥がしつつ、皮と肉を反転させながら骨に沿って捲くり上げた後、衣付けし、油で揚げることを特徴とする鶏肉のドラムスティック部位を用いたフライドチキンの製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明のフライドチキンの製造方法によれば、簡単な下処理で、肉の厚みがあるドラムスティック部位でも、加熱調理時間を短縮でき、かつ衣付きが良く、ドラムスティック部位を用いた美味なフライドチキンが得られる。また、ドラムスティック部位の基端部から先端部方向へ、皮と肉を反転させながら骨に沿って肉を捲くり上げているため、ボリューム感のあるフライドチキンが得られ、また骨の部分を手に持って食しやすく、さらに肉をカット(切除)していないので歩留りもよい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明におけるドラムスティック部位の下処理の手順を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の鶏肉のドラムスティック部位を用いたフライドチキンの製造方法を、図面を参照しながら好ましい実施形態について説明する。
図1(a)は下処理前の鶏肉のドラムスティック部位を示し、図1(b)はドラムスティック部位の基端部の骨の周囲の腱及び靱帯を切断した直後の状態を示し、図1(c)および図1(d)は皮と肉を反転させながら骨に沿って捲くり上げていく過程を示し、図1(e)は下処理が終了したドラムスティック部位の状態を示す。
【0010】
本発明で用いられる鶏肉のドラムスティック部位は、鶏の脚(モモ)の骨付きの下脚部分である。鶏によってドラムスティック部位の大きさは多少異なるが、ドラムスティック部位の大きさが制限されるものではなく、また鶏の種類や産地なども制限されない。
【0011】
本発明では、鶏肉のドラムスティック部位を、以下のように下処理することが必要である。
まず、図1(a)に示す鶏肉のドラムスティック部位1を、図1(b)に示すように、その基端部(上脚側)2の骨4の周囲の腱及び靱帯を切断する。切断方法は制限されるものではなく、例えば、包丁や調理バサミなどを用いて切断すればよい。
【0012】
次に、図1(c)および図1(d)に示すように、ドラムスティック部位1の基端部2から先端部3方向へ、肉6を骨4の周囲から剥がしつつ、皮5と肉6を反転させながら骨4に沿って捲くり上げていく。
この捲くり上げの程度は、図1(e)に示すように、少なくとも捲くり上げた肉6でドラムスティック部位の先端部3が隠れるまで捲くり上げることが好ましく、より好ましくは、ドラムスティック部位の基端部2から先端部3の長さに対して50〜90%、特に60〜80%の範囲まで肉を骨に沿って捲くり上げることが好ましい。
捲くり上げ部分が少な過ぎると、加熱調理時間を充分短縮できず、かつ衣付きが悪く不均一で、美味なフライドチキンが得られない。また過度に捲くり上げると、加熱調理時間を短縮できるが、肉がグラグラとして形状が不安定で食べ難い。
【0013】
次いで、上記のようにして下処理を施した図1(e)に示すドラムスティック部位を、衣付けし、油で揚げることにより、本発明に係るフライドチキンを得ることができる。
衣付けに用いられるから揚げ粉は、特に制限されるものではなく、従来使用されているから揚げ粉を用いることができ、また衣付けの方法および油ちょうの方法も、特に制限されるものではなく、従来のフライドチキンの製造における場合と同様にして行うことができる。
加熱調理時間(油ちょう時間)は、従来のドラムスティック部位を用いたフライドチキンの製造における加熱調理時間より短縮することができ、ドラムスティック部位の大きさや肉の厚みなどにより一概には言えないが、通常、従来の一般的な油ちょう温度である160〜180℃において、3〜10分間、好ましくは4〜6分間油ちょうするとよい。
【実施例】
【0014】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって何ら制限されるものではない。
【0015】
実施例1〜3
鶏肉のドラムスティック部位を、図1に示す手順に従って下処理した。捲くり上げの程度は、ドラムスティック部位の基端部から先端部の長さに対して、実施例1では50%、実施例2では70%、実施例3では90%まで肉を骨に沿って捲くり上げた。
このようにして下処理を施したドラムスティック部位を、常法に従って、衣付けし、165℃の油で5分間揚げて、フライドチキンをそれぞれ得た。
得られた各フライドチキンについて、火通り(加熱ムラ)、食感、ボリューム感を下記の評価基準に従って評価した。また、下処理したドラムスティック部位の衣付けの際の、衣の付着性を下記の評価基準に従って評価した。それらの結果を表1に示した。なお、食感およびボリューム感については、各フライドチキンをパネラー5名に試食させ、その平均点を示した。
【0016】
火通り(加熱ムラ)の評価基準
◎:肉の加熱が均一で、肉質がジューシー
○:肉の加熱がやや不均一で、肉質が硬い部分がある
△:肉は加熱されているが、一部に骨の血液が赤く染み出る
×:加熱が不十分で骨の血液が赤く染み出る
【0017】
食感の評価基準
5:衣がサクサクと歯切れよく、肉は柔らかい
4:3と5の中間の評価
3:衣のサクみが普通で、やや歯切れが悪い
2:1と3の中間の評価
1:衣のサクみが無く、歯切れが悪い
【0018】
ボリューム感の評価基準
5:形状が優れ、ボリューム感がある
4:3と5の中間の評価
3:形状、ボリュームともに普通
2:1と3の中間の評価
1:形状が崩れ、ボリュームがない。
【0019】
衣の付着性の評価基準
◎:満遍なく均一に付着し、揚げ色が均一
○:ほぼ均一に付着し、揚げ色がほぼ均一
△:衣が不均一で、揚げ色が不均一
×:衣が不均一で、付着が悪く剥がれる
【0020】
比較例1
鶏肉のドラムスティック部位を下処理しない以外は、実施例1〜3と同様にして、フライドチキンを得た。
得られたフライドチキンについて、火通り(加熱ムラ)、食感、ボリューム感を実施例1〜3と同様にして評価した。また、ドラムスティック部位の衣付けの際の、衣の付着性を実施例1〜3と同様にして評価した。それらの結果を表1に示した。
【0021】
【表1】

【符号の説明】
【0022】
1 ドラムスティック部位
2 ドラムスティック部位の基端部
3 ドラムスティック部位の先端部
4 骨
5 皮
6 肉

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鶏肉のドラムスティック部位を用いたフライドチキンの製造方法において、ドラムスティック部位の基端部の骨の周囲の腱及び靱帯を切断し、ドラムスティック部位の基端部から先端部方向へ、先端部付近の肉はそのまま残し、それ以外の部分の肉を骨の周囲から剥がしつつ、皮と肉を反転させながら骨に沿って捲くり上げた後、衣付けし、油で揚げることを特徴とする鶏肉のドラムスティック部位を用いたフライドチキンの製造方法。
【請求項2】
ドラムスティック部位の基端部から先端部の長さに対して50〜90%の範囲まで肉を骨に沿って捲くり上げる請求項1記載のフライドチキンの製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−239729(P2011−239729A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−114846(P2010−114846)
【出願日】平成22年5月19日(2010.5.19)
【出願人】(398012306)日清フーズ株式会社 (139)
【Fターム(参考)】