説明

鶏肉を原料とする食肉加工食品

【課題】鶏肉を利用したソーセージ、ハンバーグなどの鶏肉加工食品を製造する。
【解決手段】鶏肉、鶏皮、および結着材を原料とする鶏肉加工食品であって、鶏肉の挽肉に対して、鶏肉の挽肉の粒径と同じかまたはその値よりも大きい粒径を有する鶏皮を混合したことにより食感を調整したことを特徴とする鶏肉加工食品。
【効果】品質の劣る部位をも含んだ鶏肉を100%使用して、含有栄養素および食感に優れた鶏肉加工食品を製造し提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は鶏肉を原料とした食肉加工品に関し、鶏肉の各部位を適宜混合した挽肉を原料とすることにより、鶏肉の有する欠点を改善するとともに新しい食感を有する鶏肉ソーセージやハンバーグ類からなる加工食品を提供するものである。本発明は鶏肉の品質が劣る部位を含めて大部分の鶏肉を経済的に利用すること、および、100%鶏肉を使用することを可能とするとともに、優れた食感を有するソーセージ類を提供することができるものであり、鶏肉加工技術分野において新しい技術を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
食肉の加工品としては、ハム、ソーセージ、ハンバーグ類が最もよく知られ家庭においても多量に消費されている。その原料としては豚肉が用いられることが多いが、鶏肉を使用したハム、ソーセージ、ハンバーグ類も市販され、その製造技術については数多くの提案がなされている。それらのなかで具体例を挙げると、鶏肉に粘着剤および食塩を添加し、5℃冷蔵庫中で2〜3日間漬け込んだ後、調味料、香辛料を加え混連してケーシングに充填して60〜90℃で燻煙し、湯煮もしくは蒸煮してハムまたはソーセージとする方法(特許文献1)や、硬くてスジの多い低級部位を含む鳥獣肉、例えば、牛、豚、鳥等の食肉の硬くてスジが多い部位、あるいは老廃牛、廃鶏から得られた挽肉にアルカリ性バチルス属由来のエラスターゼ等のプロテアーゼを作用させた後、酵素の加熱失活を行ったものを利用した挽肉加工食品とすることによりスジ由来の異物感が低下し、結着力の優れた挽肉加工品の製造方法が提案されている(特許文献2)。
【0003】
また、鶏肉スリミを中性食塩溶液などにより溶出液中のタンパク含量を測定し、未変性の塩溶性タンパク含有率を求めると共に、その値が60%以上と判定された鶏肉スリミを用いることにより、しなやかな弾力と良好な食感を有する鶏肉ソーセージの製造方法が提案されている(特許文献3)。
チキンハムは鶏肉本来の臭みや余分な脂肪が抜けず、風味が出ないという欠点があり、安価ではあるが生産量・消費量共に少なかったことを克服するために、 鶏肉のモモ肉が60%、胸肉が40%の割合の原料肉の余分な脂身を削ぎとり、味付け液に浸し塩漬する。肉が崩れないようにまとめて形づくり裏面を鶏肉の皮でまんべんなく覆う。皮が足りない部分には補いながら作った肉の塊をネットに入れ安定させ、リテーナに入れ燻煙をかける。その後オーブンで115度から120度で焼き、冷却して真空包装し、殺菌槽で熱水により85度で15分間殺菌を行うチキンハムの製造方法が提案されている(特許文献4)。
【0004】
比較的入手し易い鶏肉のなかで特に食肉としては品質の落ちる胸肉を原料としてハムのような口当たりを得る食品の製造にあたり、鳥の肉を塩分添加による熟成処理と、ガス炎又は電熱を熱源とする遠赤外線加熱により肉の表面温度を80〜300℃、その内部温度を65〜70℃とし、肉の表裏両面で合わせて5〜20分間焼き上げる加熱処理することが提案されている(特許文献5)。
また、鶏肉ハムの食感、風味を向上させるに際に、鳥肉の皮を剥ぎ、脂分を除去して所定の大きさに切断する前処理工程と、この処理した鳥肉に調味料を添加し混合し、容器に入れて6〜7日間寝かせ熟成させる塩漬工程と、塩漬した鳥肉の一部に調味料とコラーゲンおよび澱粉を加えてミンチとし、これを混練してペースト状のツナギ材とするツナギ材加工工程と、前記塩漬工程で熟成した鳥肉に、前記ツナギ材加工工程で得たペースト状のツナギ材を加えて練り合わせハム原料とするハム原料加工工程と、このハム原料を、ケーシングに詰める充填工程と、このケーシングに充填したハム原料を、乾燥・燻煙する乾燥・燻煙工程と、その後これを蒸煮または湯煮する蒸煮・湯煮工程より成る鳥肉を主原料とするプレスハムの製造方法が提案されている(特許文献6)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭47−14356号公報
【特許文献2】特開平7−111881号公報
【特許文献3】特開平05−256845号公報
【特許文献4】特開平6−292536号公報
【特許文献5】特開2001−292734号公報
【特許文献6】特開2008−289441号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のハム、ソーセージなどは主に豚肉を原料として作られていたが、豚肉の生産、供給には手数や時間がかかるという問題があった。短時間で生産できて比較的容易にかつ速やかに生産、供給できる鶏肉では、豚肉に比べて、胸肉のような、食肉としては品質の落ちる部分を大量に伴うという問題があった。すなわち、鳥肉中にはスジが多く、また、硬くてそのままでは喫食しがたい低級部位の肉が存在する。このようなスジが多い低級の肉から得られた挽肉を原料としてハンバーグ、ソーセージなどの挽肉加工品を製造すると異物感が生じるためその利用が制限されていた。そこで、比較的手軽に入手し易い鶏肉、特に食肉としては品質の落ちる胸肉、モモ肉さらに他の部分の鶏肉を原料として、従来のソーセージのような様々な口当たり、噛み心地、食べ心地及び風味などを有する鶏肉加工製品の出現が望まれていた。さらに、健康上の理由から脂質が少なくカロリー数の少ない鶏肉加工品が求められていた。また、鶏卵用の鶏は、産卵率の低下により廃棄処分となるがこの産卵用の鶏は品質が低いためにその後の有効利用率も低かった。そこで、このような鶏肉でも美味しく、保存性も向上する大きな付加価値を付けることによって鶏肉の有効利用を図ることが求められていた。
【0007】
本発明は、このような従来技術の問題点に鑑み、主として鶏肉を主原料とする加工食品を提供するものであり、本発明者は、鶏肉の如何なる部位を使用しても従来のソーセージとは食感が異なり、しかもカロリー数の少ない鶏肉加工食品を提供すべく鋭意研究の結果、鶏肉と鶏皮を特定の割合とし、鶏皮を粗粒状とすることにより、優れた食感および味を有する鶏肉加工食品を製造することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、主に鶏肉を使用して、従来の鶏肉ソーセージやハンバーグとは異なる食感を有し、カロリー数の少ない製品を提供することを目的とするものである。また、本発明は従来用途が制約されていた鶏肉を有効に利用して、優れた味を有する鶏肉加工食品を提供することを目的とするものである。また、本発明は、これまで利用価値の低かった胸肉や廃棄処分となる鶏の有効利用を図ること、および鶏肉のみを原料とするまたは鶏肉以外の肉類をも混合した食肉加工品を製造し提供することを目的とするものである。また、本発明はしなやかな弾力と良好でぷりぷり感のある食感を有する鶏肉ソーセージの製造を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための本発明は、以下の技術的手段から構成される。
(1)鶏肉、鶏皮、および結着材を原料とする鶏肉加工食品であって、鶏肉の挽肉の粒径と同一またはその値よりも大きい粒径を有する鶏皮を混合したことにより食感を調整したことを特徴とする鶏肉加工食品。
(2)鶏肉が、モモ肉または胸肉から選ばれる上記(1)に記載の鶏肉加工食品。
(3)鶏皮の粒径が2〜7mmである上記(1)または(2)に記載の鶏肉加工食品。
(4)上記鶏肉加工品の原料が重量比で、鶏肉:皮が、80:20から50:50の範囲から選ばれる上記(1)から(3)のいずれかに記載の鶏肉加工食品。
(5)上記結着材として澱粉を含む上記(1)から(4)のいずれかに記載の鶏肉加工食品。
(6)上記澱粉が、ジャガイモ澱粉である上記(5)に記載の鶏肉加工食品。
(7)上記鶏肉加工食品が、ソーセージまたはハンバーグである上記(1)から(6)のいずれかに記載の鶏肉加工食品。
【発明の効果】
【0009】
本発明により次のような効果が奏される。
(1)鶏肉の食肉としては品質の落ちる胸肉や安価な鶏皮を含め全て部位を原料として使用することができるとともに、従来の鶏肉ソーセージやハンバーグの鶏肉加工食品とは、口当たり、噛み心地、食べ心地および風味が異なる鶏肉加工製品を製造し提供することができる。
(2)粗粒の鶏皮の使用によりプリプリ、コリコリ感のある食感を付与することができる。
(3)高タンパク質、低脂質、低カロリーの鶏肉加工食品を製造し提供することができる。
(4)鶏肉のすべての部分を効率よく利用できる。
(5)品質の劣る廃鳥の鶏肉部分を多量に使用しても美味で食感の異なる加工食品を提供することが可能となる。
(6)鶏卵用の廃鶏の有効利用が促進される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に本発明について詳細に説明する。
食肉加工食品としては、ハム、ソーセージ、ハンバーグなど種々の製品が知られているが、鶏肉は加熱により身が引き締まるかパサついた状態になるため、焼き鳥、ローストチキンなどのような用途が主要なものであった。また、鶏の種類または部位によっては食肉としては品質の落ちる部分を大量に含むことがあるためその使用は限られていた。本発明は、このような従来知られている鶏肉の有する欠点を簡便な手法により解消するものであり、鶏肉の挽肉と結着材の混合物に粒径の大きい鶏皮を混入することにより従来品とは異なるコリコリした食感を有する鶏肉加工食品に係るものである。ただし、本発明における粒径とは、粒子の直径のことを意味するものとする。
【0011】
本発明の食肉加工食品は、基本的には従来のソーセージ、ハンバーグなどの公知の製法の適用により製造される。
例えば、食肉加工製品としてのソーセージの一般的製造方法は、主原料として肉、脂身を原料とし、種類によっては血や内臓も使い、肉は豚、牛、仔牛が多く使用されるが、その他に仔羊、鳥類、狩猟獣が使われている。肉、脂身、内臓は細かく刻むか、または肉挽き器で挽肉(すり身)とする。さらに香辛料や調味料を混ぜて調味してできたソーセージの中身を羊、豚、または牛の腸、膀胱、胃に詰める。工場で生産されるソーセージの場合は本物の腸などではなく人工的な代用物を使用することが多い。これ以後の処理はソーセージの種類によって異なり、湯中での加熱、焼くことによる加熱する種類や、加熱を行わないで風乾したり燻煙したりする種類がある。本発明の食肉加工食品はいずれの製法によっても製造される。
【0012】
[鶏肉の種類・部位と特性]
本発明で使用する鶏肉は、採卵用鶏、肉用鶏のどちらでも使用できる。採卵用の鶏では、通常、産卵ピークを過ぎて産卵率が減少した鶏を食肉の対象となすことができる。また、産卵率が低い鶏が選ばれる。鶏の体重からすると約1.7Kg以上から約2.0Kgの範囲のものが利用されることが多い。肉用鶏の中では、体重が約2.0Kg以上となったものを対象とすることが好ましい。
鶏肉は、モモ肉、ムネ肉、ささみ、手羽先、皮が主に調理用として知られている。鶏肉は一般に、日齢が進むほど水分がやや少なくなり、肉が硬くなる。また同じ鶏肉でも胸肉とモモ肉では成分が異なる。若鶏の胸肉(皮なし)は、タンパク質22.9%、脂質2.4%であるのに対して、モモ肉(皮なし)は、タンパク質18%、脂質7.4%であり、モモ肉は脂肪が多いために味が濃く、胸肉は脂肪が少ないために味が淡白とみられているが、肉そのものの呈味成分(イノシン酸やアミノ酸)は胸肉のほうがむしろ多い。
【0013】
鶏肉についてさらに説明すると、(1)モモ肉は、適度な脂肪分にコクのある味が特徴であり、煮物や唐揚げ、照り焼きなどに使用される。(2)胸肉は、高タンパク、低脂肪、低価格と三拍子そろったあっさり風味の部位であるが、サラダや、蒸し鶏、チキンカツ、唐揚げなど、色々な料理に使用されるがモモ肉よりも品質が落ちると評価されている。(3)ささみは、鶏肉の中でもっとも脂肪が少なく、高タンパクな部位であり、タンパク質が一番多く含まれ、脂肪が少ないためエネルギーが低く、肉質は柔らかで、あっさりと淡白な味がして白身の肉で最高の品質といわれている。サラダや、フライ、塩焼きにしても美味である。煮物、揚げ物にもよく合うとされている。(4)手羽先、手羽中、手羽元の肉は少量であるが、ゼラチン質、脂肪が多く、味にコクがある。色は白くて柔らかい肉質。手羽元より手羽さきのほうがより濃厚な味がする。(5)皮は、脂肪の量がたいへん多く柔らかであり、むねのかわ1枚の重量は約25gで、モモの皮1枚は約50gある。皮の下の肉との間の部分には黄色い脂肪がついているがこれを除いて調理する。皮は鶏肉のほかの部位に比べて安価で経済的である。
【0014】
鶏肉は上記のように味、調理後の組織、性状や栄養素の含有量が相違する種類に分別されて販売ないし調理、消費が行なわれている。鶏肉を使用したハムやソーセージ類に関する技術はいくつか見受けられるが、その製造には、酵素処理、熟成処理や、幾つもの特定の温度による加熱処理など複雑な工程を必要としたり、鶏肉の品質を判別して良品のみ使用するなどを必要とし簡便な製造方法はいまだ提供されることはなかった。また、鶏肉ソーセージの食感に注目する技術は見いだせなかった。
本発明は、鶏肉の挽肉と、挽き肉よりも粒径が大きい鶏皮を原料とすることにより、美味で独特の食感と風味を有する加工食品を提供するものである。本発明における挽き肉にはすり身をも含むものである。
【0015】
[鶏肉と結着材の配合]
本発明は、鶏肉の各種部位の中で、モモ肉や胸肉および鶏皮からなる挽肉を原料とした食肉加工食品であり、鶏肉の主要部分を余すことなく使用することができる。本発明の加工食品の鶏肉原料は、鶏肉:鶏皮を重量比で80:20から50:50の範囲から選ばれ、好ましくは75:25から60:40の範囲から選ばれた混合物からなる。さらに、結着材を重量比で鶏肉100に対し1〜7、好ましくは2〜5を含むものである。
鶏モモ肉は加工食品に鶏肉としての旨味を付与し、鶏胸肉は鶏肉の食感とあっさり味を付与し、鶏皮は挽肉全体にうまみとコリコリした独特の食感を付与することができる。上記の配合範囲を外れると本発明の所期の目的を達成することはできない。結着材としては、澱粉、小麦粉、コーンミール、植物性蛋白、乳蛋白、卵蛋白等の結着剤を使用することも可能であり、またこれら従来の結着剤を前記グルコマンナンに混合して用いることも可能である。澱粉類としては、コーンスターチ、ジャガイモ澱粉、片栗粉などが用いられる。結着材の混合量が上記範囲より少ないと鶏肉が一体となり難くパサパサした食品となり、多すぎると鶏肉成分の含有量が低下して鶏肉製品としての風味、食感が薄れるので好ましくない。
【0016】
[鶏肉の挽肉化および鶏皮の粒化]
鶏皮の粒径(直径)によって食感が大きく相違するが、本発明では、鶏肉の挽肉の粒径と同一またはその値よりも大きい粒径を有する鶏皮を使用する。粒径が約2〜10mmの範囲の鶏皮を製造して試験したところ、特にコリコリ、またはプリプリと称される食感は鶏皮の粒径により大きく影響されるが、こうした食感を得るには粒径を2〜7mm、さらに好ましくは3〜6mmの範囲とする。また、鶏皮を20〜50重量%含む鶏肉とすることが好ましい。粗粒状の鶏皮の製造にはカッター、チョッパーなどの従来器具が使用される。鶏モモ肉と鶏胸肉の挽肉の製造には、従来のソーセージまたはハンバーグを製造する技術が適用されるが、その粒径は鶏皮と同一かそれよりも小さくされる。
【0017】
[ソーセージの製造]
日本ではJASによりソーセージの規格が定められている。規格では、原材料や調理法やケーシング(腸もしくはフィルムの皮)によっていくつかの名称が付けられている。一般に多く目にするのはケーシングによる区別で、羊の腸に詰めた(もしくは直径20mm未満の)物を「ウィンナーソーセージ」、豚の腸に詰めた(もしくは直径20mm以上36mm未満の)物を「フランクフルトソーセージ」、牛の腸に詰めた(もしくは直径36mm以上の)物を「ボロニアソーセージ」としている。また製品の水分量が55%以下の物を「セミドライソーセージ」35%以下の物を「ドライソーセージ」としている。ケーシングや水分量によらず、魚肉及び鯨肉の原材料に占める重量の割合が15%以上になると、これら「ソーセージ」の規格を外れ、魚肉及び鯨肉が15%以上50%未満なら「混合ソーセージ」、50%以上なら「魚肉ソーセージ」の規格に分類される。
このようにソーセージには、多くの種類があり、それぞれ原料や製造方法に若干の違いがあるが、本発明の鶏肉加工食品としてのソーセージはその種類、製造方法を特に限定されるものではない。
【0018】
すなわち、本発明のソーセージの製造工程は、従来の公知の方法により行うことができる。例えば、所定の比率に計量した鶏モモ肉、鶏胸肉および鶏皮の混合物を塩せきし、この工程が終了した後に、鶏モモ肉、鶏胸肉をミンチ状に挽き、カッティング工程へと移る。ミンチ状にした塩せき肉は、カッターに移され、香辛料や結着剤を加えながら、さらに細かく練り上げる。この際に肉温が上がりすぎると、たんぱく質が熱変性を起こして、ソーセージとしてまとまりが悪くなり、脂肪分離の原因ともなるので温度管理には細心の注意が必要である。練り上げた鶏肉には鶏皮の粗粒を混合し、次いで、充てん機を使ってケーシングに充てんし、充てんしたソーセージは炭火で乾燥した後、燻煙工程に入る。楢や桜のチップを使い、火加減や発煙量を調節しながら燻煙することによって、美しく、香りの良いソーセージになる。そのあと流水で冷却する事により、さらに肉が締まった弾力性のあるソーセージに仕上がる。また、本発明には燻煙をしないソーセージの製法をも適用できる。
【0019】
[本発明の鶏肉ソーセージの栄養素の分析値]
本発明により製造した鶏肉ソーセージの脂質、カロリー数、タンパク質、炭水化物を計測したところ次の表1の結果を得た。本発明の鶏肉ソーセージは、他社の鶏肉ソーセージと比較して、脂質含有量は低く、エネルギー量は約20%低下していることが明らかとなった。また、本発明の鶏肉ソーセージは、他社の豚肉を主原料とするソーセージと比較して、高タンパク質であり、低脂質、低カロリーであるため健康管理に最適な鶏肉加工食品であることが明らかとなった。
【0020】
【表1】

【0021】
[ハンバーグ]
ハンバーグ またはハンバーグステーキは、一般に、挽肉に肉の粘りを出すための塩とタマネギなどの野菜類のみじん切りと胡椒などの香辛料を加え、パン粉を混ぜ、こね合わせたものを楕円形や円形などに整形して焼いた料理であり、本発明の食肉加工食品には鶏肉を使用したハンバーグを含む。ハンバーグでは、鶏肉および鶏皮の粒径はソーセージよりも大きくても差し支えない。
【0022】
次に、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0023】
97重量%の鶏肉と香辛料および調味料など3重量%を含む挽肉よりなるソーセージを製造した。鶏モモ肉、鶏胸肉および鶏皮を重量比で10:50:40になるように計量した。鶏モモ肉と鶏胸肉からなるすり身を作製し、これに4mmの粒径(直径)に粉砕した鶏皮を混合して、直径13mmのケーシング中に押し出した。この未加工肉製品を、J型フックコンベヤに引掛け燻煙および加熱処理して鶏肉ソーセージを製造した。
【実施例2】
【0024】
鶏モモ肉、鶏胸肉、鶏皮を重量比で5:60:35の割合で使用した。鶏モモ肉、鶏胸肉はすり身とした。このすり身を50.0重量部、ジャガイモ澱粉を1.5重量部、食塩を1.9重量部、砂糖を1.3重量部、調味料を0.6重量部、ソルビン酸カリウム0.2重量部、リン酸ナトリウムを0.1重量部、および水30重量部の配合組成としてソーセージを製造した。まず、鶏モモ肉と鶏胸肉のすり身をスピードカッターで荒削りし、次いで食塩を加えて塩ずりした。これに調味料、澱粉、水などの残りの材料を加えて肉糊とした。鶏皮は5mmの粒径に粉砕して混合した後、塩化ビニリデンフィルムのチューブに詰めて120℃で12分間レトルト処理して鶏肉ソーセージを製造した。
【実施例3】
【0025】
実施例2と同様にして、鶏モモ肉または鶏胸肉のみを使用してソーセージを製造した。
鶏モモ肉のみを使用したソーセージの味は良好であったが若干パサパサした食感があった。また、鶏胸肉のみを使用したソーセージは、モモ肉よりも味が落ち、パサパサした感触が強く感じられソーセージとしての風味に欠ける製品であった。
一方、本発明のソーセージは、味、食感、風味において、豚肉を使用したソーセージと比較して遜色はなく、コリコリ感と鶏肉としての風味を有する優れたソーセージであった。
【実施例4】
【0026】
主原料として、鶏胸肉70重量部、鶏皮30重量部、水15重量部と、副原料として、食塩1.5重量部、砂糖1.0重量部、グルタミン酸ソーダ0.5重量部、香辛料0.03重量部、重合リン酸0.3重量部、亜硝酸ナトリウム0.02重量部、アスコルビン酸ナトリウム0.2重量部、ソルビン酸0.1重量部、フマル酸0.1重量部を用意した。
【0027】
鶏肉の主原料である鶏胸肉はミンチ処理し、水、食塩、重合リン酸塩、亜硝酸ナトリウム及びアスコルビン酸ナトリウムを混合し、バキュームカッターで高速で5分間カッティングし、次いで、砂糖、グルタミン酸ナトリウム、香辛料、ソルビン酸及びフマル酸を添加し、バキュームカッターで高速で5分間カッティングしてすり身を得た。得られたすり身に、6mmの粒径に粉砕した鶏皮を混合し、この混合物を羊腸ケーシングに充填し、60℃で60分間乾燥し、70℃で20分間スモーク処理し、次いで75℃で60分間蒸煮して、ウィンナーソーセージを得た。このウィンナーソーセージは優れたジューシー感とコリコリ感を有するとともに十分なる旨味を示した。
【実施例5】
【0028】
鶏胸肉50重量部、氷水10重量部、亜硝酸ナトリウム0.02重量部、アスコルビン酸0.1重量部、食塩1.5重量部、および重合リン酸塩0.3重量部をこの順番で高速カッターに投入し、2分間4000rpmでカッティングした。次に、増粘剤としてジャガイモ澱粉1.5重量部、調味料(砂糖、グルタミン酸ナトリウム、香辛料等)2重量部、ソルビン酸0.1重量部および氷水10重量部を高速カッターに投入し、1分間でカッティングした。その後、卵白5重量部を投入し、1分間カッティングした。さらに、高速カッターを駆動させながら氷水10重量部を投入し、3分間カッティングした。
次に、鶏胸肉75重量部に対して粒径5mmに切断した鶏皮が25重量部となるように、カッティング終了後の鶏肉と混合し、脱気を行わずに充填機を経てソーセージエマルジョンをケーシングに充填した。以後は通常のウインナーと同じく充填、成形、加熱工程(約80℃)を実施して最終製品である本発明の食肉製品であるウインナーソーセージを製造した。
【実施例6】
【0029】
鶏モモ肉、鶏胸肉、鶏皮を重量比で5:60:35の割合で配合した原料鶏肉を用意した。鶏モモ肉、鶏胸肉および鶏皮の混合物を5mmの直径の粒状となるように機械でカットした。このカット肉を50.0重量部、ジャガイモ澱粉を1.5重量部、食塩を1.9重量部、砂糖を1.3重量部、調味料を0.6重量部、ソルビン酸カリウム0.2重量部、リン酸ナトリウムを0.1重量部、および水30重量部の配合組成としてソーセージを製造した。
【実施例7】
【0030】
本実施例ではチキンハンバーグを製造した。鶏モモ肉30重量部、鶏胸肉50重量部、粉末状大豆たん白1重量部を加え混合した後に食塩0.8重量部を加えミキサーで粘りがでるまで塩ずりした。さらに、粒径3mmの鶏皮20重量部、調味料2.2重量部を加えて混合し、次いで、玉ねぎ20重量部、パン粉6重量部、ジャガイモ澱粉4重量部を加え混合して生地を得た。この生地を1個80gの楕円形に成型し、230℃のオーブンで6分間焼成してチキンハンバーグを調製した。
風味評価を熟練したパネラー9名により行なったところ、明らかに鶏臭さが解消され良好であり、また、パサツキがなく、舌触り、味ともに良好な鶏肉ハンバーグが得られた。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、鶏肉から大量に生成する比較的品質の劣る食肉部を含めて処理することにより鶏肉が100%の優れた加工食品を製造し提供することができる加工技術に関するものであり、本発明により、従来の鶏肉ソーセージに独特の食感を与えるとともに、これまで大量に消費する調理方法を見出すことができなかった品質の劣る食肉部分を含んだ鶏肉をまとめて調理し、食感、味共に優れた鶏肉加工食品を製造することができる。本発明により、廃採卵鶏から得られる多量の老鶏肉を食肉加工食品として広く流通され得る製品に加工することができるため、食肉資源の有効利用を簡便な技術によって達成する。また、安価で味風味に優れた食肉加工食品を提供することが可能となり、タンパク質源の供給により健康増進にも貢献するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鶏肉、鶏皮、および結着材を原料とする鶏肉加工食品であって、鶏肉の挽肉に対して、鶏肉の挽肉の粒径と同一またはその値よりも大きい粒径を有する鶏皮を混合したことにより食感を調整したことを特徴とする鶏肉加工食品。
【請求項2】
鶏肉が、モモ肉または胸肉から選ばれる請求項1に記載の鶏肉加工食品。
【請求項3】
鶏皮の粒径が2〜7mmである請求項1または2に記載の鶏肉加工食品。
【請求項4】
鶏肉加工品の原料が重量比で、鶏肉:鶏皮が、80:20から50:50の範囲から選ばれる請求項1から3のいずれかに記載の鶏肉加工食品。
【請求項5】
結着材として澱粉を含む請求項1から4のいずれかに記載の鶏肉加工食品。
【請求項6】
澱粉が、ジャガイモ澱粉である請求項5に記載の鶏肉加工食品。
【請求項7】
鶏肉加工食品が、ソーセージまたはハンバーグである請求項1から6のいずれかに記載の鶏肉加工食品。

【公開番号】特開2012−66(P2012−66A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−139197(P2010−139197)
【出願日】平成22年6月18日(2010.6.18)
【出願人】(510135544)有限会社白鳥農場 (2)
【Fターム(参考)】