説明

麺類に対するほぐれ改良剤の自動処理方法

【課題】濃縮タイプのほぐれ改良剤を使用する麺類の製造現場において、手作業によるほぐれ改良剤の希釈混合の操作を自動化(省力化)し、生産効率を向上し、ほぐれ改良剤の保管スペースを最小化しかつ残包装資材を減量化し得る、麺類に対するほぐれ改良剤の自動処理方法を提供することを課題とする。
【解決手段】茹でまたは蒸し、冷却後の麺類に、その場で液状のほぐれ改良剤を所定量の水で希釈混合してほぐれ改良剤希釈液を調製し、連続して前記ほぐれ改良剤希釈液を塗布することを特徴とする麺類に対するほぐれ改良剤の自動処理方法により、上記の課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、麺類に対するほぐれ改良剤の自動処理方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、濃縮タイプのほぐれ改良剤を使用する麺類の製造現場において、ほぐれ改良剤を水で希釈混合する作業を自動化して大幅に省力化し得る、麺類に対するほぐれ改良剤の自動処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、生活スタイルの変化に伴い、未調理もしくは電子レンジなどでの加熱調理のみで、または熱湯を注ぐだけで食することができるインスタント食品がコンビニエンスストアやスーパーなどで大量に販売され、消費されている。そして、このようなインスタント食品の中でも、麺類は、種類やメニューが多彩で、簡便に食することができることなどから、様々な形態の麺類が大量に製造されている。
【0003】
麺類、特に茹で麺や蒸し麺の製造現場では、効率よく大量の麺類を製造するだけでなく、出荷された麺類が消費されるまでその品質を保持できるように様々な工夫がなされている。
例えば、麺類は、麺線表面の離水および糊化された澱粉の粘着性により麺線が互いに付着し、全体が塊状に固着してほぐれが悪くなることから、これを防止するために、茹でまたは蒸し、冷却後の麺類にほぐれ改良剤や食用油脂を塗布する方法が採られている。
【0004】
麺類のほぐれ改良剤には、製造現場において所定の濃度に水で希釈混合して麺類に塗布する濃縮タイプのほぐれ改良剤と、予め所定の濃度に水で希釈混合され、製造現場において麺類にそのまま塗布するストレートタイプのほぐれ改良剤とがある。
ストレートタイプのほぐれ改良剤は、製造現場において水で希釈混合する操作を必要としないことから、コンビニエンスストアやスーパー向けに麺類を大量に製造する現場で多用されている。
【0005】
図2は、現在多くの麺類の製造現場で用いられている、ほぐれ改良剤の塗布(噴霧)システムのフロー概略図である。
このフローによれば、貯留タンク1に貯留されたストレートタイプのほぐれ改良剤が定量ポンプ9で一定水量に調整されて噴霧ノズル4に供給され、エア(Air)系のエアが電磁弁3に供給され、電磁弁の開閉により、噴射ノズルからほぐれ改良剤が麺類に噴霧される。図中、図番2はバルブを示す。また、貯留タンク1に貯留されたほぐれ改良剤は羽根付き撹拌機により撹拌されている。
【0006】
しかしながら、ストレートタイプのほぐれ改良剤は、希釈混合の操作が不要であるという長所がある反面、濃縮タイプのほぐれ改良剤に比べて多量に必要であり、貯留タンク1にほぐれ改良剤を頻繁に投入する操作が必要になり、手作業による負担が多くなる。また、多量のほぐれ改良剤の保管スペースが必要になり、かつ多量の包装資材が残るという短所がある。このような残包装資材の処分(リサイクル、リユース、廃棄処理など)には、多大の労力や費用を要する。
【0007】
そこで、上記の噴霧システムに濃縮タイプのほぐれ改良剤を適用し、貯留タンク1内で濃縮タイプのほぐれ改良剤を所定の水で希釈混合することが考えられる。
しかしながら、上記の保管スペースや残包装資材の問題が解決できたとしても、製造現場においてほぐれ改良剤を所定の濃度に水で希釈混合する操作が必要となるという問題に逆戻りする。また、手作業による希釈混合の操作が多くなる分、衛生上の問題が発生する頻度が高くなる。
【0008】
上記のような理由から、コンビニエンスストアやスーパー向けに麺類を大量に製造する現場では、これまで濃縮タイプのほぐれ改良剤が敬遠されてきたが、麺類の生産性をより高め、省力化するために、濃縮タイプのほぐれ改良剤の長所を生かしつつ、その短所を克服し得る方法が工業的に強く求められている。
【0009】
特許第3287832号公報(特許文献1)および特許第3260136号公報(特許文献2)には、それぞれ茹麺のほぐし方法および茹麺のほぐし装置について記載されている。しかしながら、これらの先行技術は、茹麺にほぐれ改良剤を均一に噴霧するための方法および装置に関する技術であり、濃縮タイプのほぐれ改良剤を自動的に希釈混合・噴霧する方法については記載も示唆もない。
【0010】
また、特開2005−21068号公報(特許文献3)には、種麹を液体に懸濁して種麹希釈液を調製し、これを穀類の表面に定量的に霧状に噴霧して付着させる、種麹の散布方法が記載されている。しかしながら、この先行技術は、酵素工業や食品醸造工業の技術であり、しかも噴霧対象物の種麹を自動的に希釈混合・噴霧する方法については記載も示唆もない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許第3287832号公報
【特許文献2】特許第3260136号公報
【特許文献3】特開2005−21068号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記のような従来技術の有する問題点を解決し、濃縮タイプのほぐれ改良剤を使用する麺類の製造現場において、手作業によるほぐれ改良剤の希釈混合の操作を自動化(省力化)し、生産効率を向上し、ほぐれ改良剤の保管スペースを最小化しかつ残包装資材を減量化し得る、麺類に対するほぐれ改良剤の自動処理方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の発明者は、麺類へのほぐれ改良剤の塗布方法について鋭意研究を行なった結果、麺類の製造現場で液状のほぐれ改良剤を所定量の水で希釈混合してほぐれ改良剤希釈液を調製し、連続してほぐれ改良剤希釈液を塗布することにより、上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0014】
かくして、本発明によれば、茹でまたは蒸し、冷却後の麺類に、その場で液状のほぐれ改良剤を所定量の水で希釈混合してほぐれ改良剤希釈液を調製し、連続して前記ほぐれ改良剤希釈液を塗布することを特徴とする麺類に対するほぐれ改良剤の自動処理方法が提供される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、濃縮タイプのほぐれ改良剤を使用する麺類の製造現場において、手作業によるほぐれ改良剤の希釈混合の操作を自動化(省力化)し、生産効率を向上し、ほぐれ改良剤の保管スペースを最小化しかつ残包装資材を減量化し得る、麺類に対するほぐれ改良剤の自動処理方法を提供することができる。
【0016】
また、本発明によれば、濃縮タイプのほぐれ改良剤を使用するので、麺類の製造現場へのほぐれ改良剤の運送コストを抑えることもできる。
さらに、本発明によれば、ほぐれ改良剤の希釈混合の操作を自動化して、手作業の頻度が減少し、生産時間のロスが短縮されるので、麺類の製造スピードが向上するだけでなく、衛生上の問題が発生する頻度が低下する。
【0017】
また、希釈混合が、スタティックミキサーを用いた液状のほぐれ改良剤と水との混合であることにより、動力源を必要とせずに両者を効率的に希釈混合でき、上記の効果がさらに発揮される。
【0018】
さらに、液状のほぐれ改良剤が、大豆由来の水溶性ヘミセルロース、増粘安定剤および乳化剤から選択される少なくとも1種を含有する組成物であることにより、特に液剤100重量部中に、増粘安定剤としての0.5〜15重量部のアラビアガムおよび0.5〜10重量部のガティガムならびに乳化剤としての0.5〜10重量部のグリセリン脂肪酸エステルを有効成分として含み、かつ残部がエタノール、酢酸および酢酸ナトリウムから選択される少なくとも1種ならびに水である液状のほぐれ改良剤であることにより、上記の効果がさらに発揮され、かつより優れたほぐれ効果を麺類に付与することができる。
【0019】
また、希釈混合が、液状のほぐれ改良剤とその0.01〜15倍容量の水との混合であることにより、上記の効果がさらに発揮される。
また、塗布が、加圧したほぐれ改良剤希釈液の一流体ノズルから噴霧、または加圧したほぐれ改良剤希釈液および加圧エアの二流体からの噴霧により行われることにより、ほぐれ改良剤が効率的に麺類に塗布されるので、上記の効果がさらに発揮される。
【0020】
さらに、ほぐれ改良剤の自動処理方法が、水系に加圧水を供給する工程、貯留タンクに貯留された液状のほぐれ改良剤を、加圧水の水量に応じて定量ポンプで一定水量に調整して水系に注入する工程、加圧水と注入された液状のほぐれ改良剤とを希釈混合してほぐれ改良剤希釈液を調製する工程、ほぐれ改良剤希釈液をエアチャンバに供給する工程、エア系のエアをエアレギュレータで一定圧力に調整してエアチャンバに供給する工程、エアチャンバに供給されたエアとほぐれ改良剤希釈液との混合体を噴射ノズルに供給する工程、および別のエア系のエアを電磁弁に供給し、電磁弁を開閉することにより、噴射ノズルから混合体を麺類に噴霧する工程を含むことにより、ほぐれ改良剤が効率的に希釈混合され、かつ効率的に麺類に塗布されるので、上記の効果がさらに発揮される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に用いることができる、自動希釈混合装置を装備したほぐれ改良剤の噴霧システムのフロー概略図である。
【図2】従来のほぐれ改良剤の噴霧システムのフロー概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の麺類に対するほぐれ改良剤の自動処理方法(以下「自動処理方法」ともいう)は、茹でまたは蒸し、冷却後の麺類に、その場で液状のほぐれ改良剤を所定量の水で希釈混合してほぐれ改良剤希釈液を調製し、連続して前記ほぐれ改良剤希釈液を塗布することを特徴とする。
【0023】
本発明の自動処理方法に適用される麺類は、茹でまたは蒸し、冷却後の麺類であって、ほぐれ効果を必要とする麺類あれば特に限定されず、本発明の自動処理方法は、コンビニエンスストアやスーパー向けに大量に製造される麺類の製造に好適に用いられる。
【0024】
麺類の種類としては、例えば、中華麺、うどん、きしめん、素麺、冷や麦、そば、スパゲッティのように細長く成形した麺類、マカロニのように任意の形状に成形したものなどが挙げられ、本発明の自動処理方法は、冷やしうどんやそばのような調理麺や業務用蒸し焼きそばなどの麺類の製造に好適に用いられる。
【0025】
本発明の自動処理方法に適用される麺類は、上記のように茹で麺と蒸し麺とに大別され、これらの麺類は例えば次のようにして製造される。
茹で麺は、茹で、冷却(水切り)およびほぐれ改良剤噴霧などの工程により製造される。このような麺類としては、調理麺、冷凍麺、マカロニ・パスタおよびビーフンなどが挙げられる。茹で麺の中でも、LL麺は、茹で、酸浸漬、冷却(水切り)、ほぐれ改良剤噴霧および殺菌などの工程により製造される。
蒸し麺は、蒸し、冷却およびほぐれ改良剤噴霧などの工程により製造される。このような麺類としては、焼きそばおよび即席めん(ノンフライ麺、フライ麺)などが挙げられる。即席めんでは、ほぐれ改良剤噴霧後に、油揚げおよび熱風乾燥などの工程が付加される。
なお、麺類の冷却は、例えば、水冷(水洗)および空冷(冷風)などにより行われる。
【0026】
本発明の自動処理方法に適用される液状のほぐれ改良剤は、使用時に水での希釈を要する濃縮タイプの液状のほぐれ改良剤であれば特に限定されない。
水での希釈倍率は、ほぐれ改良剤の原液の濃度、塗布対象の麺類の種類や得ようとするほぐれ効果、麺類の製造時の季節などにより適宜設定すればよい。
例えば、液状のほぐれ改良剤としては、0.01〜15倍容量、好ましくは0.5〜12倍容量の水で希釈混合を要する、濃縮タイプの液状のほぐれ改良剤が好適に用いられる。
すなわち、本発明の自動処理方法における希釈混合は、液状のほぐれ改良剤とその0.01〜15倍容量の水との混合であるのが好ましい。
【0027】
本発明の自動処理方法における希釈混合は、液状のほぐれ改良剤と水とを均一に混合し得る手段であれば特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、スタティックミキサー、エジェクター、ノズルおよびその他配管径を制御して乱流を発生させ混合できるものなどを用いた方法が挙げられる。
これらの中でも、液状のほぐれ改良剤と水とを効率的に希釈混合し得るスタティックミキサーを用いた方法が特に好ましく、スタティックミキサーとしては、株式会社ノリタケカンパニーリミテド製の「N30シリーズ」などが挙げられる。
スタティックミキサーの大きさは処理液量などにより、そのエレメントの形状は、流体となるほぐれ改良剤と水の物性、流量、使用温度、圧力などにより適宜設定すればよい。
希釈に用いる水は、食品衛生上許容され得る水であればよく、一般の上水またはそれを濾過または精製した水であってもよい。
【0028】
本発明の自動処理方法に適用される液状のほぐれ改良剤は、麺類にほぐれ効果を付与し得る成分を含むものであれば特に限定されず、公知のほぐれ改良剤が挙げられる。
このようなほぐれ改良剤の中でも、ほぐれ効果の点で、大豆由来の水溶性ヘミセルロース、増粘安定剤および乳化剤から選択される少なくとも1種を含有する組成物であるのが好ましい。
上記のほぐれ改良剤の有効成分は、すべて食品衛生法上、食品原料として使用してもよいとされる食品素材または食品添加物である。
また、上記のほぐれ改良剤は、上記の有効成分の他にほぐれ効果を阻害しない範囲で、公知の麺類の添加剤を含んでいてもよい。
【0029】
本発明の自動処理方法に適用される液状のほぐれ改良剤としては、例えば、液剤100重量部中に、増粘安定剤としての0.5〜15重量部のアラビアガムおよび0.5〜10重量部のガティガムならびに乳化剤としての0.5〜10重量部のグリセリン脂肪酸エステルを有効成分として含み、かつ残部がエタノール、酢酸および酢酸ナトリウムから選択される少なくとも1種ならびに水である液状のほぐれ改良剤が、ほぐれ効果の点で好ましい。なお、グリセリン脂肪酸エステルの代わりに、ショ糖脂肪酸エステル、レシチン、ポリソルベート、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ステアロイル乳酸カルシウム、ショ糖酢酸イソ酪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルなどの公知の乳化剤を使用してもよい。
【0030】
アラビアガムの配合割合は、液剤100重量部中に好ましくは0.5〜13重量部、より好ましくは0.5〜10重量部であり、ガティガムの配合割合は、液剤100重量部中に好ましくは0.5〜9重量部、より好ましくは0.5〜7.5重量部である。
【0031】
グリセリン脂肪酸エステルは、例えば、食用油脂を分解して得られる炭素数12〜24の飽和または不飽和脂肪酸とグリセリンとのエステル化反応により得られ、モノ、ジおよびトリエステルがあるが、食品添加物としては、一般にモノエステル(モノグリセライド)が用いられ、少量添加で所望の効果が得られる高純度の蒸留品や反応品またはモノグリセリドが特に用いられる。
本発明では、ステアリン酸および/またはオレイン酸を主成分とするモノグリセライドを好適に用いることができる。
グリセリン脂肪酸エステルの配合割合は、液剤100重量部中に好ましくは0.5〜8重量部、より好ましくは0.5〜5重量部である。
【0032】
エタノール、酢酸および酢酸ナトリウムは、広範囲の微生物に対して殺静菌力を発揮し、ほぐれ改良剤の殺静菌および防腐を目的とする保存料として機能する。
エタノールとしては、通常、食品に用いられるエタノール、例えば、70%水溶液が用いられ、その配合割合は、防腐効果および経済性の点で、好ましくは液剤100重量部中にエタノールとして1〜7重量部、より好ましくは2〜6重量部である。
【0033】
酢酸としては、通常、食品に用いられる酢酸、例えば、90%酢酸が用いられ、その配合割合は、防腐効果、酢酸臭の防止および経済性の点で、好ましくは液剤100重量部中に酢酸として0.03〜2重量部、より好ましくは0.1〜1.6重量部である。
また、酢酸ナトリウムとしては、通常、食品に用いられる酢酸ナトリウム無水物が用いられ、その配合割合は、防腐効果、製剤安定性および経済性の点で、好ましくは液剤100重量部中に酢酸ナトリウムとして0.1〜5重量部、より好ましくは0.3〜4重量部である。
【0034】
上記のほぐれ改良剤は、クエン酸ナトリウムをさらに含み、かつpH3.5〜6.5(好ましくは3.5〜6)の範囲にあるのが好ましい。
クエン酸ナトリウムは、液剤のpH調整剤として機能し、pH調整により液剤の安定性をさらに向上させることができ、その配合割合は、液剤100重量部中に0.05〜3重量部程度、好ましくは0.05〜2重量部程度である。
【0035】
本発明の自動処理方法における塗布は、ほぐれ改良剤希釈液を均一かつ効率的に麺類に塗布し得る方法であれば特に限定されず、公知の方法を用いることができる。
例えば、茹でまたは蒸し、冷却後の麺類をほぐれ改良剤希釈液に浸漬する方法(浸漬法)、麺類にほぐれ改良剤希釈液を滴下する方法(滴下法)および噴霧する方法(噴霧法)などが挙げられる。
浸漬法は、大量の麺類を塗布処理するために大掛かりな設備を必要としかつほぐれ改良剤希釈液のロスが多いという短所を有する。また、滴下法は、麺の全体に塗布することができないという短所を有する。一方、噴霧法は、浸漬法のような短所を有さず、効率的に麺類にほぐれ改良剤希釈液を塗布できることから好ましい。
具体的には、本発明の自動処理方法における塗布は、加圧したほぐれ改良剤希釈液の一流体ノズルから噴霧、または加圧したほぐれ改良剤希釈液および加圧エアの二流体からの噴霧により行われるのが特に好ましい。
【0036】
麺類に対するほぐれ改良剤の塗布量は、ほぐれ改良剤の種類、塗布対象の麺類の種類や得ようとするほぐれ効果、麺類の製造時の季節などにより適宜設定すればよいが、通常、麺1kgに対して2〜100g程度である。
【0037】
本発明の自動処理方法は、
水系に加圧水を供給する工程、
貯留タンクに貯留された液状のほぐれ改良剤を、加圧水の水量に応じて定量ポンプで一定水量に調整して水系に注入する工程、
加圧水と注入された液状のほぐれ改良剤とを希釈混合してほぐれ改良剤希釈液を調製する工程、
ほぐれ改良剤希釈液をエアチャンバに供給する工程、
エア系のエアをエアレギュレータで一定圧力に調整してエアチャンバに供給する工程、
エアチャンバに供給されたエアとほぐれ改良剤希釈液との混合体を噴射ノズルに供給する工程、および
別のエア系のエアを電磁弁に供給し、電磁弁を開閉することにより、噴射ノズルから混合体を麺類に噴霧する工程
を含むのが好ましい。
【0038】
本発明の自動処理方法の一例を、図面を用いて説明するが。これにより本発明は限定されない。
図1は、本発明に用いることができる、自動希釈混合装置を装備したほぐれ改良剤の噴霧システムのフロー概略図である。
この噴霧システムのフローは、
水系に圧力調整弁10、流量計11および逆止弁12を介して加圧水を供給する工程、
貯留タンク1に貯留された液状のほぐれ改良剤を、バルブ2および背圧計8を介して、加圧水の水量に応じて定量ポンプ9で一定水量に調整して水系に注入する工程、
加圧水と注入された液状のほぐれ改良剤とをスタティックミキサー6で希釈混合してほぐれ改良剤希釈液を調製する工程、
ほぐれ改良剤希釈液をエアチャンバ5に供給する工程、
エア(Air)系のエアをエアレギュレータ(空気圧調整弁)13で一定圧力に調整してエアチャンバ5に供給する工程、
エアチャンバ5に供給されたエアおよびほぐれ改良剤希釈液の混合体を噴射ノズル4に供給する工程、および
別のエア(Air)系のエアを電磁弁3に供給し、電磁弁3を開閉することにより、噴射ノズル4から混合体を麺類に噴霧する工程
を含む。
図中、図番7は圧力計を示す。また、貯留タンク1に貯留された液状のほぐれ改良剤は羽根付き撹拌機により撹拌されている。
【0039】
上記の噴霧システムは、適宜、圧力計および流量計などで液体およびエア(空気)の状態をモニターし、圧力調整弁および定量ポンプなどの液体およびエア(空気)の圧力および流量を調整し、かつ噴霧条件を決めるエアー圧、電磁弁の開閉間隔および開放時間を調整し、電磁弁を開閉して噴射ノズルから必要な倍率に希釈した液状のほぐれ改良剤を麺類に噴霧する。これらの操作は、公知の技術を用いて一括してコントロールパネルで制御することができる。
【0040】
エア系および水系の圧力は、噴霧システムの規模、処理量、処理速度などにより適宜設定すればよく、例えば、エアチャンバ5に空気を供給するエア(空気)系の空気圧は0.005〜1MPa程度であり、スタティックミキサー6に希釈水を供給する水系の水圧は0.01〜2MPa程度であり、ほぐれ改良剤を供給する液圧は0.01〜2MPa程度である。
また、電磁弁3に空気を供給する別のエア(空気)系の空気圧は0.015〜1.5MPa程度である。
【実施例】
【0041】
本発明を調製例、実施例および比較例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0042】
(調製例1)
容量3リットルのステンレス製ビーカーに水道水73.1重量部を入れ、pH調整剤としてクエン酸ナトリウム1.5重量部を加えた。得られた水溶液を液温30〜40℃に加温し、かつ撹拌機(特殊機化工業株式会社製、型式:ホモミキサーM型)を用いて回転数3000〜7000rpmで攪拌しながら、アラビアガム(伊那食品工業株式会社製、製品名:アラビアガムA)8.4重量部およびガティガム(三栄源エフエフアイ株式会社製、製品名:ガティガムSD)7.2重量部の粉末混合物を35分間掛けて少量ずつ投入した。その後、混合溶液をさらに35分間攪拌した。得られた水溶液(増粘剤水溶液)の液温は約72℃であった。
次いで、得られた水溶液の液温を60〜65℃に調整し、グリセリン脂肪酸エステル(有機酸モノグリセライド、HLB値:6、理研ビタミン株式会社製、製品名:ポエムK−37V)4.8重量部を加え、上記の撹拌機を用いて回転数8000〜10000rpmで25分間攪拌した。
次いで、得られた乳化液の液温を室温(40℃以下)まで放冷し、70%エタノール水溶液5.0重量部を加え、上記の撹拌機を用いて回転数2000〜3000rpmで
10分間攪拌して総重量約1.5kgの乳化液(ほぐれ改良剤)を得た(20℃、pH:4.6)。
【0043】
実施例および比較例では、次の濃縮タイプおよびストレートタイプのほぐれ改良剤を用いた。それぞれ濃縮およびストレートと略称する。
(濃縮A):調製例1のほぐれ改良剤
(濃縮B):不二製油株式会社製、商品名:ソヤアップM800
(濃縮C):奥野製薬工業株式会社製、商品名:パラレルK26
(ストレートD):(濃縮A)の4倍の水希釈液
(ストレートE):(濃縮B)の約3倍の水希釈液
(ストレートF):(濃縮C)の3.5倍の水希釈液
【0044】
(実施例1〜5:ほぐれ改良剤噴霧システムによる作業効率確認試験)
冷やしうどんの製造現場において、図1に示す自動希釈混合装置を装備したほぐれ改良剤の噴霧システムを用いて、16万食(約200g/1食当り)の冷やしうどん茹麺に対してほぐれ改良剤のコーティング作業を実施した。
まず、容量100Lの貯留タンク1内に、表1に示すA〜Cの濃縮タイプのほぐれ改良剤50kgを投入した。次いで、表1に示すほぐれ改良剤の水による希釈倍率(倍)、1分間当りの噴霧頻度(回/分)および1食当りの噴霧量(g/食)で、自動希釈混合されたほぐれ改良剤が冷やしうどん茹麺に対して一斉に噴霧されるようにコントロールパネル設定を行ない、システムを稼動させた。
【0045】
具体的には、エアチャンバ5に空気を供給するエア(空気)系の空気圧をエアレギュレータ13により0.07MPaに設定し、スタティックミキサー6に希釈水としての上水を供給する水系の水圧を圧力調整弁10により0.2MPaに設定し、貯留タンク1から定量ポンプ9を介して水系にほぐれ改良剤を供給する液圧を0.15MPaに設定した。
また、電磁弁3に空気を供給する別のエア(空気)系の空気圧を0.15MPaに設定し、電磁弁3側から噴霧ノズル4に間欠的に空気を送り、希釈混合されたほぐれ改良剤をうどん茹麺に対して噴霧した。
並列になるように1列に12個配置された噴霧ノズル4から希釈混合されたほぐれ改良剤を、ベルトコンベアで移動するパケット皿上に盛られたうどん茹麺に対して噴霧した。
なお、うどん茹麺は、冷やしうどんの製造工程において、茹で、冷却後の麺である。
【0046】
自動希釈混合された濃縮タイプのほぐれ改良剤を、16万食の冷やしうどん茹麺の全てに噴霧するために掛かった時間(作業時間:時間)、ほぐれ改良剤の希釈混合などのために噴霧作業が中断した時間(中断時間:分)、ほぐれ改良剤を貯留タンクに投入した回数(投入回数:回)、ストレートタイプのほぐれ改良剤を用いた場合を100%とするほぐれ改良剤の保管スペースの割合(保管スペース:%)および作業終了後に廃棄対象として残ったほぐれ改良剤の残包装資材の重量(包装資材:kg)について計数または測定した。
各ほぐれ改良剤の荷姿仕様が異なるため、同一の資材に包装されているものと想定し、残包装資材の重量として換算した。
得られた結果を表1に示す。
【0047】
最終的に食品として包装された冷やしうどんのほぐれ性を評価したところ、図2に示す従来のほぐれ改良剤の噴霧システムを用いて、ストレートタイプのほぐれ改良剤を塗布した冷やしうどんと比較しても全く遜色ない、ほぐれ性を有していることが確認できた。
【0048】
(比較例1〜3:従来のほぐれ改良剤の噴霧システムによる作業効率の確認試験)
図2に示す従来のほぐれ改良剤の噴霧システムを用い、かつ容量100Lの貯留タンク1内に、表1に示すA〜Cの濃縮タイプのほぐれ改良剤20〜25kg程度を投入し、貯留タンク1内で3〜4倍に上水で希釈すること以外は、実施例1と同様の条件でシステムを稼動させた。
具体的には、電磁弁3に空気を供給するエア(空気)系の空気圧を0.15MPaに設定し、貯留タンク1から噴霧ノズル4に希釈混合されたほぐれ改良剤を供給する液圧を0.15MPaに設定した。
得られた結果を表1に示す。
【0049】
(比較例4〜6:従来のほぐれ改良剤の噴霧システムによる作業効率の確認試験)
貯留タンク1内に、表1に示すD〜Fのストレートタイプのほぐれ改良剤(10kg/箱荷姿)を投入すること以外は、比較例1〜3と同様の条件でシステムを稼動させた。
得られた結果を表1に示す。
【0050】
【表1】

【0051】
上記の実施例1〜5および比較例1〜6は、次の3群に分けられる。
実施例1〜5(本発明法)
図1に示す自動希釈混合装置を装備したほぐれ改良剤の噴霧システムおよび濃縮タイプのほぐれ改良剤を使用して、ほぐれ改良剤と水とを自動で希釈混合する方法
比較例1〜3(従来法A)
図2に示す従来のほぐれ改良剤の噴霧システムおよび濃縮タイプのほぐれ改良剤を使用し、ほぐれ改良剤と水とを手作業で希釈混合する方法
比較例4〜6(従来法B)
図2に示す従来のほぐれ改良剤の噴霧システムおよびストレートタイプのほぐれ改良剤を使用する方法
【0052】
表1の結果から次のことがわかる。
(1)従来法Aは、濃縮タイプのほぐれ改良剤と水とを手作業で希釈混合するために1回当り約10分で9〜13回の作業中断時間100〜160分を要し、本発明法および従来法Bと比較して作業効率が悪い。
(2)従来法Bは、ストレートタイプのほぐれ改良剤を使用するので、薬剤投入回数が80〜112回となり、本発明法および従来法Aの24〜38回の3〜5倍を要し、労力を要する。
また、従来法Bは、本発明法および従来法Aの4倍のほぐれ改良剤を使用するので、残包装資材の重量が50.0〜69.0kgとなり、本発明法および従来法Aの15.0〜23.0kgの3〜5倍を要する。
【0053】
(3)本発明法、従来法Aおよび従来法Bにおける噴霧終了までの作業時間は、それぞれ15〜22.8時間、16.7〜24.5時間および15.0〜22.5時間であり、使用したほぐれ改良剤によって変動があるが、本発明法は、従来法Aおよび従来法Bと大差がない。
しかしながら、本発明法は、従来法Aおよび従来法Bの短所を有さない。すなわち、希釈混合に要する作業中断がなく作業効率が良好で、薬剤投入回数が少なく労力を削減でき、残包装資材の重量を削減できる。
なお、実施例3および5における作業中断は、希釈混合ライン(スタティックミキサー)および噴霧ノズルでの目詰まりの除去および洗浄のための中断であり、希釈混合のために中断ではない。
【符号の説明】
【0054】
1 貯留タンク
2 バルブ
3 電磁弁
4 噴霧ノズル
5 エアチャンバ
6 スタティックミキサー
7 圧力計
8 背圧弁
9 定量ポンプ
10 圧力調整弁
11 流量計
12 逆止弁
13 エアレギュレータ(空気圧調整弁)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
茹でまたは蒸し、冷却後の麺類に、その場で液状のほぐれ改良剤を所定量の水で希釈混合してほぐれ改良剤希釈液を調製し、連続して前記ほぐれ改良剤希釈液を塗布することを特徴とする麺類に対するほぐれ改良剤の自動処理方法。
【請求項2】
前記希釈混合が、スタティックミキサーを用いた前記液状のほぐれ改良剤と水との混合である請求項1に記載の麺類に対するほぐれ改良剤の自動処理方法。
【請求項3】
前記液状のほぐれ改良剤が、大豆由来の水溶性ヘミセルロース、増粘安定剤および乳化剤から選択される少なくとも1種を含有する組成物である請求項1または2に記載の麺類に対するほぐれ改良剤の自動処理方法。
【請求項4】
前記液状のほぐれ改良剤が、液剤100重量部中に、増粘安定剤としての0.5〜15重量部のアラビアガムおよび0.5〜10重量部のガティガムならびに乳化剤としての0.5〜10重量部のグリセリン脂肪酸エステルを有効成分として含み、かつ残部がエタノール、酢酸および酢酸ナトリウムから選択される少なくとも1種ならびに水である液状のほぐれ改良剤である請求項1〜3のいずれか1つに記載の麺類に対するほぐれ改良剤の自動処理方法。
【請求項5】
前記希釈混合が、前記液状のほぐれ改良剤とその0.01〜15倍容量の水との混合である請求項1〜4のいずれか1つに記載の麺類に対するほぐれ改良剤の自動処理方法。
【請求項6】
前記塗布が、加圧した前記ほぐれ改良剤希釈液の一流体ノズルから噴霧、または加圧した前記ほぐれ改良剤希釈液および加圧エアの二流体からの噴霧により行われる請求項1〜5のいずれか1つに記載の麺類に対するほぐれ改良剤の自動処理方法。
【請求項7】
前記ほぐれ改良剤の自動処理方法が、
水系に加圧水を供給する工程、
貯留タンクに貯留された前記液状のほぐれ改良剤を、前記加圧水の水量に応じて定量ポンプで一定水量に調整して前記水系に注入する工程、
前記加圧水と前記注入された液状のほぐれ改良剤とを希釈混合してほぐれ改良剤希釈液を調製する工程、
前記ほぐれ改良剤希釈液をエアチャンバに供給する工程、
エア系のエアをエアレギュレータで一定圧力に調整して前記エアチャンバに供給する工程、
前記エアチャンバに供給されたエアと前記ほぐれ改良剤希釈液との混合体を噴射ノズルに供給する工程、および
別のエア系のエアを電磁弁に供給し、前記電磁弁を開閉することにより、前記噴射ノズルから前記混合体を前記麺類に噴霧する工程
を含む請求項1〜6のいずれか1つに記載の麺類に対するほぐれ改良剤の自動処理方法。

【図1】
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【図2】
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