説明

黄斑色素を含むキサントフィル組成物およびその調製方法

【課題】
【解決手段】キサントフィル/キサントフィルエステルを含む植物抽出物/含油樹脂に由来するトランス−ルテインと、ゼアキサンチン異性体、すなわち(R,R)−ゼアキサンチンおよび(R,S)−ゼアキサンチンとを含む黄斑色素を含有する、ヒトの食用に安全でありかつ栄養ケアおよびヘルスケアに有用であるキサントフィル組成物。当該組成物は、キサントフィル全体を少なくとも80重量%含み、トランス−ルテインとゼアキサンチン異性体との比が約4:1〜約6:1の範囲にあり、ゼアキサンチンの異性体の比が約80〜20:20〜80の範囲にある、キサントフィル組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、黄斑色素を含むキサントフィル組成物およびその調製方法に関する。本発明は、具体的には、トランス−ルテインおよびゼアキサンチン異性体からなる黄斑色素を含むキサントフィル組成物ならびにその調製方法に関する。本発明は、より具体的には、キサントフィル/キサントフィルエステルを含む植物抽出物/含油樹脂に由来するトランス−ルテインならびにゼアキサンチン異性体、すなわち(R,R)−ゼアキサンチンおよび(R,S)−ゼアキサンチンからなる黄斑色素を含む、ヒトの食用に安全でありかつ栄養素および保健用途に有用であるキサントフィル組成物に関する。より具体的には、本発明は、キサントフィル全体を少なくとも80重量%含み、キサントフィル/キサントフィルエステルを含む植物抽出物/含油樹脂に由来するトランス−ルテインの含有量は少なくとも80%であり、残部はゼアキサンチン異性体、すなわち(R,R)−ゼアキサンチンおよび(R,S)−ゼアキサンチンであり、ヒトの食用に安全でありかつ栄養素および保健用途に有用である、キサントフィル組成物に関する。
【0002】
本発明のキサントフィル組成物は、食品および飼料用途の添加物および/または着色剤として、栄養素用途および保健用途における成分として有用である。
【背景技術】
【0003】
黄斑は、眼球の水晶体の真後ろ、網膜の中央にある。黄斑は、ルテイン、(R,R)−ゼアキサンチン、および(R,S)−ゼアキサンチンなどのキサントフィルからなる黄色の小さな領域であり、したがって黄斑キサントフィルと呼ばれる。黄斑キサントフィルは、酸化的分解から網膜を保護する酸化防止剤として作用し、読む、書く、運転する、物をはっきりと見るのに必要な視力に役立つ。生涯にわたるゆっくりとかつ着実な黄斑の損傷は、加齢黄斑変性症(AMD)および白内障につながる場合がある。食事または栄養補助食品における黄斑キサントフィルは、健康な目の維持に役立つ場合がある。ルテインおよび(R,R)−ゼアキサンチンは果物および野菜に由来する場合がある一方で、(R,S)−ゼアキサンチンは、シーフードまたは栄養補助食品に由来するか、または体内におけるルテインの生物変換に由来する場合がある。様々なクラスの色素のうち、カロテノイドは、集光や、陸上植物における有害な光酸化からの保護などの様々な機能を有する、赤色、黄色、および橙色の天然に最も広く分布する色素である。
【0004】
特定のカロテノイドが、様々な果物や野菜、羽毛、卵黄、家禽の皮膚、甲殻類、および眼の黄斑部で確認されているが、マリーゴールドの花弁、トウモロコシ、および葉菜中に特に多量にある。食事性のカロテノイドとヒト血清および血漿に見られるカロテノイドとの相関性は、特定のカロテノイドの群のみがヒトの血流に入り、その効果を及ぼすことを示している。カロテノイドはそれぞれ個別の様式で、吸収、血漿輸送、および代謝される。
【0005】
カロテノイドは、可視スペクトルの400〜500nmの領域中の光を吸収する。この物性は、当該色素に対して特有の黄色/赤色を与える。分子の中央で通常は反転して対称性を有するカロテノイドは、イソプレン単位からなる共役骨格を含む。二重結合の周囲の幾何学的な配置の変化によって、多くのシス−およびトランス−異性体が存在する。哺乳類種はカロテノイドを合成しないので、果物、野菜、および卵黄などの食餌源からカロテノイドを摂取しなければならない。近年、カロテノイドが、重篤な健康障害の予防および/またはそれからの保護を含む、健康上の利点をいくつか有することが報告されている。
【0006】
カロテノイドは、2つのサブクラス、すなわち、キサントフィルまたはオキシ−カロテノイドと呼ばれる極性化合物とベータ−カロテン、リコピンなどの非極性炭化水素カロテンとに分類される非極性化合物である。当該サブクラスはいずれも、カロテノイドに特有の色を担う少なくとも9個の共役二重結合を有する。キサントフィルは、水酸基またはケト基などの極性基を持つ共役二重結合鎖の末端に環構造を有する。キサントフィルの例としては、ルテイン、ゼアキサンチン、カプサンシン、カンタキサンチン、ベータ−クリプトキサンチン、アスタキサンチンなどが挙げられる。天然着色料として、またヒトの健康におけるキサントフィルの役割についても、ルテイン、(R,R)−ゼアキサンチン、および(R,S)−ゼアキサンチンなどのキサントフィルは、近年、生医学、化学、栄養学分野における科学者および研究者の新たな注目を集めている。
【0007】
ルテインおよびゼアキサンチンは、それぞれ、黄色および橙〜黄色に寄与する。ルテインおよびゼアキサンチンは、遊離形態またエステル形態でも植物材料中に存在し得る。ルテインは、遊離形態で、ほうれん草、ケール、およびブロッコリーなどの緑色葉菜中に存在し;マンゴー、オレンジ、およびパパイヤなどの果物、レッドパプリカ、藻類、黄トウモロコシは、ルテインをエステル形態で含む。また、ルテインは、血流中や、人体、特に眼の黄斑、水晶体、および網膜における様々な組織中に存在する。
【0008】
ルテインは、ベータ−ε−カロテン3,3’−ジオールとして化学的に命名されている。ゼアキサンチンは、ベータ−カロテンに水酸基を2個付加することにより形成される。ヒドロキシの位置が3および3’−なので、ゼアキサンチンの化学名は、ベータ,ベータ−カロテン−3,3’−ジオールである。ゼアキサンチンの慣用名はトウモロコシ(zea mays)に由来し、これはこのカロテノイドが、トウモロコシ(Zea mays)中で最初に同定されたからである。
【0009】
左の環の二重結合の位置が右の環の二重結合の位置と同一ではないのでルテインは対称でないことがわかる。ルテインと比較して、もう一つの共役二重結合により、左右の環に関してゼアキサンチンは完全に対称である。
【0010】
キサントフィルは、光学(R−およびS−立体異性体)ならびに幾何異性体(トランス、E−およびシス、Z−)のいずれも示し得る。R−およびS−立体異性体の配座は、CDスペクトル実験およびキラルカラムHPLC研究に基づく一方で、シス−およびトランス−異性体の配座は、電子、赤外線、NMR、HPLC−MS、およびHPLC−NMRオンライン分光法研究に基づく。有機分子が、4種類の異なる原子または基が結合した炭素原子を有すると、その炭素原子はキラル炭素原子と呼ばれることが周知である。キラル炭素原子は、光学異性体の形成をもたらす2つの異なる空間的配置の原因である一方、ポリエン鎖の二重結合の数やメチル基の存在および立体障害の欠如により、トランス−およびシス−異性体の数が決定される。トランス−ゼアキサンチンの場合は、2個の末端環の3位および3’位の炭素原子が、いずれもキラル原子である。
【0011】
したがって、トランス−ゼアキサンチンは、炭素原子C3およびC3’に結合した第二水酸基の位置に基づいて、炭素原子C3およびC3’にて2個のキラル中心を有する。したがって、トランス−ゼアキサンチンには4つの立体異性体が存在し得る、すなわち(3R−3’R)−異性体、(3S−3’S)−異性体、および(3R−3’S)−または(3S−3’R)−異性体である。これらの異性体において(3R−3’S)−および(3S−3’R)−は同じである。したがって、トランス−ゼアキサンチンの3種類のキラル異性体が存在する。右回りに偏光の回転をもたらす異性体は、R−立体異性体と呼ばれ、左回りに偏光の回転をもたらす異性体は、S−立体異性体と呼ばれ、2つの正反対の効果を有する第3の異性体(R,S;光学的に不活性)は、メソ形のゼアキサンチンと呼ばれる。ルテイン、(R,R)−ゼアキサンチン、および(R,S)−メソゼアキサンチンの構造式を下記に示す。
【0012】
【化1】

【0013】
黄斑キサントフィルの化学構造
ルテインおよびゼアキサンチンの共役二重結合は、色素それぞれの特有の色に寄与し、また一重項酸素をクエンチするこれらの能力に影響を及ぼす。ゼアキサンチンは、もう一つの共役二重結合のために、ルテインよりも強い酸化防止剤であると考えられる。
【0014】
眼の黄斑色素は、主に3種類のキサントフィル色素(つまり黄斑キサントフィル)、すなわち(3R,3’R,6’R)−ルテイン、(3R,3’R)−ゼアキサンチン、および(3R、3’S)−ゼアキサンチンからなり、網膜の総カロテノイド含有量の36、18、および18%の順で占め、残り20%が、オキソ−ルテイン、エピ−ルテイン、およびε−,−ε−カロテン3,3’−ジオンなどの微量のカロテノイドからなる(J.T.Landrum and R.A.Bone,Lutein,Zeaxanthin and the Macular Pigment,「Arch.Biochem.Biophys.」,385,28〜40,2001)。
【0015】
これらのキサントフィル色素は、眼の組織の全体にわたって見られるが、窩と呼ばれる網膜における中央陥凹を含む網膜の黄斑部で最も高濃度で見られる。キサントフィル色素の濃度は、黄斑の中央に向かっておよび窩において漸進的に増加し、これらのキサントフィル色素の濃度は、他のヒト組織中よりも約1000倍高い(Landrumら,Analysis of Zeaxanthin Distribution within Individual Human Retinas,「Methods in Enzymology」,L.Packer(editor)213A,457〜467,Academic Press 1992)。窩は、錐体光受容体が最も高濃度に達する、黄斑内の比較的小さな領域である。キサントフィルの総量の約50%は、ゼアキサンチンがルテインと比べて2:1の割合で多い黄斑に集中している。(Handelmanら,Measurements of Carotenoids in Human and Monkey Retinas,in「Methods in Enzymology」,L.Packer(editor)213A,220〜230,Academic Press,NY,1992;Billstenら,Photophysical Properties of Xanthophylls in Carotene Proteins from Human Retina,「Photochemistry and Photobiology」,78,138〜145,2003)。網膜の窩の中央では、ゼアキサンチンは、(トランス−3R,3’R)−ゼアキサンチンと(トランス−3R,3’S)−ゼアキサンチンとの50:50混合物であり、少量の(3S,3’S)−ゼアキサンチンが含まれる(J.T.Landrum and R.A.Bone,Lutein,Zeaxanthin and The Macular Pigment,「Arch.Biochem.,Biophy.」,385,28〜40,2001)。
【0016】
窩は、適切な視覚機能(例えば、視力)にとって特に重要であり、疾患およびこの領域に対する損傷は法的盲をもたらすことが知られている。例えば、加齢黄斑変性症(AMD)は、網膜中の病理変化、網膜色素上皮(RPE)、および/または脈絡膜を特徴とし、網膜の黄斑部に選択的に影響を及ぼす。これは、米国では、65歳を超える人々における不可逆的視力喪失の主因であり、ほとんどの患者にとって利用可能な確立された治療法は存在しない。中心視力の喪失によって、顔の認識、読む、書く、または車の運転ができなくなる可能性があり、したがって個人が自立して生きる能力に著しく影響する。加齢性白内障および黄斑変性症に対する防御における、ルテインおよび異なる異性体形態のゼアキサンチンの食事摂取の役割を裏付ける多くの疫学的証拠がある。ヒト網膜中のルテインおよびゼアキサンチンの酸化生成物の検出は、食事由来のルテインおよびゼアキサンチンが黄斑部における抗酸化剤として作用し得るという仮説を裏付ける(Khachikら,Identification of Lutein and Zeaxanthin Oxidation Products in Human and Monkey Retinas,「Invest.Opthalmol.and Vis.Sci.」,38,1802〜1811,1997)。
【0017】
ヒトの食事で典型的に摂取される40〜50種類のカロテノイドのうち、ルテインおよびゼアキサンチンは、周辺網膜と比べて、網膜の黄斑部において最大で5倍高い濃度で沈着している。ゼアキサンチンは、中心窩領域に選択的に蓄積されるのに対して、ルテインは周中心窩領域に多い。
【0018】
細胞レベルでのキサントフィルの位置に関しては、キサントフィルは、キサントフィル結合タンパク質(XBP)と呼ばれる特異的なタンパク質に結合していることが報告されている。XBPは、血流からのルテインおよびゼアキサンチンの取り込み、ならびに網膜におけるルテインおよびゼアキサンチンの安定化に関与することが示唆されている。フェムト秒過渡吸収分光法によるキサントフィルおよびXBPの研究により、(3R,3’R)−ゼアキサンチンに比べて(3R,3’S)−ゼアキサンチン濃縮XBPがよりよい安定性を示した一方で、(3R,3’R)−ゼアキサンチンおよび(3R,3’S、メソ)−ゼアキサンチンというキサントフィルの光物理特性は一般的に同じである。メソ−ゼアキサンチンは、XBP(当該タンパク質は、フリーラジカルによる分解からキサントフィルを保護する)でよりよく結合される可能性がある。したがって、当該複合体は、遊離キサントフィルよりも良好な抗酸化剤であり得、酸化的損傷からの眼組織の保護の向上が促される。(Billstenら,Photophysical Properties of Xanthophylls in Caroteno proteins from Human Retina,「Photochemistry and Photobiology」,78,138〜145,2003)。
【0019】
次のいくつかの機能が黄斑色素に起因すると考えられている。カロテノイドの抗酸化特性による、眼に吸収された青色光からの光酸化の損傷効果の減少、視覚機能に対する光散乱および色収差の影響の減少、ならびに光化学反応の悪影響からの保護。
【0020】
ルテインの食事補給による黄斑色素の量の増加能が実証されている(Landrumら,Dietary Lutein Supplementation Increases Macular Pigment,「FASEB.J」,10,A242,1996)。白内障による視覚機能の低下およびAMDによる成人失明は、果物および野菜ならびにルテインと(R,R)−ゼアキサンチンとシーフードから得られる(よって菜食主義集団で不足する)(R,S)−ゼアキサンチンとを含む栄養補助食品を摂取することにより実質的に制御することができる。眼に存在する(R,S)−ゼアキサンチンは、ルテインに由来する代謝産物と考えられるが、(R,S)−ゼアキサンチンの食事補給は、現在、黄斑色素密度を向上させるために必要であると認識されている(Landrum and Bone,「Functional Foods and Nutraceuticals」,2001年9月1日)。同様に、この研究は、(R,R)−ゼアキサンチンが血液に入り、最終的に黄斑に入ることを示した(Breithauptら,Comparison of Plasma Responses in Human subjects after the Ingestion of (3R,3’R)−zeaxanthin Dipalmitate from Wolfberry (Lycium barbarum)and Non−esterified(3R,3’R)−zeaxanthin using Chiral HPLC,「Brit.J.Nutr.」91,707〜713,2004)。臨床試験におけるルテインおよびゼアキサンチンの栄養補助食品は、これらのカロテノイドの黄斑色素密度および血清濃度を上昇させることを示した(Boneら,Lutein and Zeaxanthin Dietary Supplements Raise Macular Pigment Density and Serum Concentrations of These Carotenoids in Humans,「J.Nutr.」,133,992〜998,2003)。
【0021】
・ルテインおよびゼアキサンチンの食事供給源
ルテインは、ほとんどの果物および野菜で見られる一般的なカロテノイドである一方で、(R,R)−異性体形態のゼアキサンチンは、ほとんどの果物および野菜で少量のみ存在する。ゼアキサンチンの食事供給源は、トウモロコシ、ネクタリン、オレンジ、パパイヤ、柿、および西洋カボチャなどの緑色や、特定の黄色/橙色の果物、ならびに野菜に限定される。良好なゼアキサンチン源であるトウガラシ(Capsicum annum)は、もう一つの広く使われる最も一般的な香辛料である。ナガバクコ(Lycium barbarum)、枸杞子、またはGou Qi Ziという植物は、中国の家庭料理で一般に用いられ、ゼアキサンチン(主にジパルミチン酸ゼアキサンチンとして)の含有量が高いことが示されている小さな赤いベリーであるが、ルテインはごく少量である。ナガバクコのドライフルーツは、多くの眼疾患の治療剤として中国の漢方医により処方される。フランスでは、ダンゴギク(Helenium autumnale)の花弁(blossom leafs)から単離したジパルミチン酸ルテイン(ヘレニエン)が、視覚障害の治療に使用されることが報告されている(Wolfgang Gau,Hans−Jurgen Ploschke and Christian Wunsche,Mass Spectrometric Identification of Xanthophylls Fatty Acid Esters From Marigold Flowers(Tagetes erecta)Obtained by HPLC and Craig Counter Current Distribution,「J.Chrom.」262,277〜284,1983)。
【0022】
上に既に記載したように、メソ−ゼアキサンチンの食事源は主に、エビ、魚、カメなどのシーフードからであり、そのため、菜食主義者集団には、メソ−ゼアキサンチンが乏しい。しかしながら、ヒトの眼における黄斑色素の沈着が増加するような網膜障害の治療およびAMDの治療もしくは予防用のメソ−ゼアキサンチン含有医薬組成物に付与された特許が存在する(Howardら,Meso−zeaxanthin Formulations for Treatment of Retinal Disorders,米国特許第6,329,432号,2001)。
【0023】
ルテインおよびゼアキサンチンは、果物、野菜、および花(マリーゴールド)においてトランス−異性体形態で天然に生じる。熱や光による処理条件により、少しの割合のトランス−異性体形態が、シス−異性体形態に変換される。したがって、ヒト血漿の幾何異性体組成分析のデータから証明されるように、好ましい生物学的に利用可能な形態はトランス異性体である(Khachikら,Isolation and Structure Elucidation of Geometric Isomers of Lutein,Zeaxanthin in Extracts of Human Plasma,「J.Chrom.」582,153〜156,1992)。この点に鑑み、栄養補助食品において(R,R)−、(R,S)−として、ルテインおよびゼアキサンチンのトランス−異性体形態を使用することが望ましい。
【0024】
現在まで、眼の網膜におけるメソ−ゼアキサンチンの形成、取り込み、および沈着のメカニズムについてはほとんど知られていない。Khachikらは、正常ヒト血漿試料20個において2〜3%の(3R,3’S、メソ)−ゼアキサンチンの存在を報告し、食事由来のルテインおよびゼアキサンチンからのその形成の代謝経路を提唱した。網膜におけるメソ−ゼアキサンチンの沈着が、血清を経由するか、または網膜内のルテイン/ゼアキサンチンから産生されるかは明らかではない(Khachikら,in a chapter on Dietary carotenoids and their metabolites as potentially useful chemo protective agents against cancer, in「Antioxidant food supplement in human health」,Eds.Packerら,Academic Press London,ページ203〜29,1999)。しかしながら、Breithauptらによると、各群が6人のボランティアのからなる2つの群を用いた単純盲検交差試験では、(3R,3’R)−ゼアキサンチン(エステルまたは遊離形態)の摂取後24時間で得られたヒト血漿にはメソ−ゼアキサンチンの存在が見られなかった。キラルLC−ApcI−MSが、プール血漿試料における検出に使用された(Breithauptら,Comparison of plasma responses in human subjects after the ingestion of 3R,3’R−zeaxanthin Dipalmitate from Wolfberry(Lycium barbarum)and Non−esterified 3R,3’R−zeaxanthin using Chiral HPLC,「Brit.J.Nutr.」91,707〜713,2004)。
【0025】
カロテノイドであるルテイン、ゼアキサンチン、およびメソ−ゼアキサンチンが生物にとって容易に生物利用可能であり、したがって黄斑色素量を増加させるという仮説を裏付ける証拠および理由がある。(Landrum and Bone,Meso−zeaxanthin−A Cutting Edge Carotenoid,Functional Foods and Nutraceuticals,2001年9月10日;Boneら.Macular Pigment Response to a Supplement Containing Meso−zeaxanthin,「Nutr.Metabol.」11.1〜8(2007);Boneら,Macular Pigment Response to a Xanthophyll Supplement of Lutein,Zeaxanthin and Meso−zeaxanthin.「Proc.Nutr.Soc.」,105A,(2006);Thurnhamら,Macular Zeaxanthin and Lutein − aReview of Dietary Sources and Bio−availability and Some Relationship with Macular Pigment Optical Density and Age−related Macular Disease,「Nutr.Res.Reviews,」20,163〜179(2007);Thurnhamら,A Supple mentation Study in Human Subjects with a Combination of meso−zeaxanthin,(3R,3’R)−Zeaxanthin and(3R,3’R,6’R)−Lutein,「Brit.J.Nutr.」99,1〜8,2008);E.E.Connollyら,Augmentation of macular pigment following supplementation with all three carotenoids:An exploratory study”「Current Eye Res.」,35,335〜351(2010))。
【0026】
今日では、白内障および黄斑変性の予防、抗酸化剤として、肺癌予防剤として、太陽光線からの有害な紫外光の吸収剤ならびに光誘起フリーラジカルおよび活性酸素種の失活剤などとしての使用のために、多量のトランス−ルテインおよび/またはゼアキサンチンを含むキサントフィル結晶に対する需要が高い。天然源から多数の製品が現在市販されており、ルテインまたは(R,R)−ゼアキサンチンを用いた工業用および商業用製品の形成が促進されている。しかしながら、我々が知る限り、必須の黄斑キサントフィルをすべて含み、特に少なくとも85%の高濃度のトランス−ルテインと残部が(R,R)−ゼアキサンチンおよび(R,S)−ゼアキサンチンを同等かまたはより高い割合で含む、同一の天然源(マリーゴールド花弁)に由来したキサントフィル組成物は、市販のルテインまたはゼアキサンチンとしては利用可能ではない。眼の健康維持におけるトランス−ルテイン、(R,R)−ゼアキサンチン、および(R,S)−ゼアキサンチンの予防機能の証拠は、栄養補助食品対血中濃度と黄斑色素密度との相関関係に基づいて見出されている(Boneら,Macular Pigment Response to a Supplement Containing Meso−zeaxanthin,Lutein and Zeaxanthin,「Nutr.Metabol.」11.1〜8(2007);Boneら,Macular Pigment Response to a Xanthophyll Supplement of Lutein,Zeaxanthin and Meso−zeaxanthin.「Proc.Nutr.Soc.」,105A,(2006);Thurnhamら,A Supplementation Study in Human Subjects with a Combination of Meso−zeaxanthin,(3R,3’R)−zeaxanthin and (3R,3’R,6’R)lutein,「Brit.J.Nutr.」99,1〜8(2008)。
【0027】
・従来技術:
眼の黄斑色素は、主に、網膜中では約2:1:1の割合でルテイン、(R,R)−ゼアキサンチン、および(R,S)−ゼアキサンチンからなる。これらの色素は、眼においてカロテノイド全体の72%に相当し、残部は他のカロテノイドである(Landrum and Bone,Lutein Zeaxanthin and the Macular Pigments,「Arch.Biochem..Biophys.」385,28〜40,2001)。食物中の主たるキサントフィル色素はルテインであり、果物および野菜に由来する。米国におけるルテインの平均摂取量は、1日当たり1〜3mgであり、これは約10〜20%の(R,R)−ゼアキサンチンを含む(E.Y.Chew and San Gio Vanni,“Lutein”in Encyclopedia of Dietary Supplements,ページ409〜420,2005 published by Marcel Dekker)。(R,S)−ゼアキサンチンは通常の食事中には見られないが、エビ、魚、およびカメなどの特定のシーフード中に存在する。(Maokaら,The First Isolation of Enantiomeric and Meso−zeaxanthin in 「Nature.Comp. Biochem.Physiol.」,83B,121〜124,1986)。近年、メキシコで、(R,R)−および(R,S)−ゼアキサンチンをいずれも含む鶏の飼料に由来する鶏卵の卵黄中に相当量のゼアキサンチン、すなわち(R,R)−および(R,S)−ゼアキサンチンが存在することが報告されている。(Thurnhamら,A Supplementation Study in Human Subjects with a Combination of Meso−zeaxanthin,(3R,3’R)−zeaxanthin and(3R,3’R,6’R)−lutein,「Brit.J.Nutr.」99,1〜8(2008))。過去5年間に、(R,S)−ゼアキサンチンを含む栄養補助食品は、米国市場で「Lutein Plus」および「LMZ3」という商標で、ヨーロッパでは「Lutein Plus」および「Macushield」として入手可能である。
【0028】
さらに、ヒトの眼における黄斑色素密度を増加させるため、ならびに黄斑の疾患および障害の治療または予防のための(R,S)−ゼアキサンチン含有医薬製剤が存在する(Howardら,Meso−zeaxanthin Formulations for Treatment of Retinal Disorders,米国特許番号第6,379,432号,2001)。ルテイン栄養補助食品は、主にルテインを80〜90%および少量のゼアキサンチンを含み、(R,S)−ゼアキサンチンは全く含まれない。配合サンプルのキサントフィル組成物、すなわちLutein Plusは、ルテイン50%、(R,R)−ゼアキサンチン13%、および(R,S)−ゼアキサンチン37%;ルテイン54%、(R,R)−ゼアキサンチン6%、および(R,S)−ゼアキサンチン40%からなる(Thurnhamら,A Supplementation Study in Human Subjects with a Combination of Meso−Zeaxanthin,(R,R)−zeaxanthin and Lutein,「Brit.J.Nutr.」99,1〜8(2008);Quantum Nutritionals,MI 48390,USA;ルテイン25%,(R,R)−ゼアキサンチン6%、および(R,S)−ゼアキサンチン68%;Boneら,Macular Pigment Response to a Supplement Containing Meso−zeaxanthin,Lutein and Zeaxanthin,「Nutri.Metabol」4,12,2007);メソ−ゼアキサンチン濃縮物、ルテイン5%、(R,R)−ゼアキサンチン5%、および(R,S)−ゼアキサンチン85%;鶏卵から凍結乾燥させた卵黄ルテイン34%、(R,R)−ゼアキサンチン12.80%、および(R,S)−ゼアキサンチン7.20%、および他のカロテノイド(Thurnham,Macular Zeaxanthin and Lutein−A Review of Dietary Sources and Bio−availability and Some Relations with MPOD and ARMD,「Nutri.Res.reviews」20,163〜179,2007)。純度が99%を超える純粋な(R,S)−ゼアキサンチン(Schlattererら,Quantification of(3R,3’R)−zeaxanthin in Plant Derived Food by diastereoisomeric dilution assay applying Chiral HPLC,「J.Chromatography A」,1137,216〜222,2006);(R,S)−ゼアキサンチン(合成)99%(Ernstら,米国特許第6,743,954号2004);キサントフィル組成物ルテイン3.53%、(R,R)−ゼアキサンチン5.77%、および(R,S)−ゼアキサンチン90.57%(Kumarら,米国特許出願公開第2007/0265351号)。最近では、ルテイン2mg、ゼアキサンチン0.5mg、および(R,S)−ゼアキサンチン0.5mgからなる栄養補助食品の組み合わせのコビードレット(cobeadlet)製剤が、黄斑変性プロセスの阻害および健康な視力の増進に関して報告されている(Lang,Composition and methods for inhibiting the progression of macular degeneration and promoting healthy vision,米国特許第7,267,830号,2007)。
【0029】
1946年という早い時期に、KarrerおよびJuckerは、ナトリウムエトキシドが触媒するルテインのゼアキサンチンへの異性化反応を報告している(P.Karrer and E.Jucker,「Helv.Chim.Acta」,30,266,1947)。後の1971〜72年に、Bucheckerらは、PMR分析に基づいてルテインにR−キラリティーを見出し、ルテインをR,R−ゼアキサンチンに異性化する試みは失敗に終わった(「Chimia」,25,192,1971;同26,134,1972)。Andrewesらは、(3R,3’R,6R)−ルテイン(光学的に活性)の異性化反応の立体化学的性質を報告し、これは(3R,3’S)−ゼアキサンチンをもたらし、CDスペクトル試験に基づくとトランス−異性体であり光学的に不活性であった(Isomerization of Epsilon−carotene to Beta−carotene and Lutein to Zeaxanthin,「Acta Chem.Scand.」,B28,139,1974)。上記の方法は、光学的に不活性の(3R,3’S、メソ)−ゼアキサンチンを10〜15%という低い収率で生じ、また食品および健康補助食品における使用には好ましくないベンゼンおよびDMSOを使用する。
【0030】
Rodriguezは、非水性媒体を用い、アルカリとプロピレングリコールとの混合物を加熱することによる、ゼアキサンチンエピマーの混合物を得るためのルテインの異性化方法を記載している。円偏光二色性スペクトルにより、ゼアキサンチンのメソ−異性体の形成が示されているが、メソ−ゼアキサンチン含有量を定量することや異性化物の組成物を提供する試みはなされなかった(米国特許番号第5,973,211号,1999)。我々の知識によると、これまで、キサントフィル全体を少なくとも80重量%含み、トランス−ルテイン含有量が多く(70〜80%)、残部が(R,R)−ゼアキサンチンおよび(R,S)−ゼアキサンチンである食品グレードのキサントフィル組成物は、これまで報告されていない。かかる組成物は、健康な視力の維持に役立つ理想的かつ必須の栄養補助食品を形成することになる。さらに、当該組成物は、この方法で用いられる試薬をサポートする要素や、同様の個々のキサントフィルの毒性学的安全性に関して利用可能な文献データに基づいて、安全であると考えられ得る(Krugerら,「Food&Chem..Toxicol.」,40,1535〜1549(2002);Chang,Thirteen week Toxicity of Meso−zeaxanthin in Han Wister Rats with a Four Week Recovery Gene Logic No.156704370(2006))。
【0031】
ヒトは、1日当たりルテインを1〜3mg摂取し、食物中のルテイン:ゼアキサンチンの比は、約5:1である(Petra A Thurmann,Wolfgang Schalch,Jean−Claude Aebischer,Ute Tenter and William Cohn,Plasma kinetics of lutein,zeaxanthin,and 3−dehydro−lutein after multiple oral doses of a lutein supplement,「American Journal of Clinical Nutrition」,Vol.82,No.1,88〜97,2005年7月;Nebeling LC,Forman MR,Graubard BI,Snyder RA.Changes in carotenoid in take in the United States:the 1987 and 1992 National Health Interview Surveys.「J Am Diet Assoc」,991〜6.1997;Le Marchand L,Hankin JH,Bach Fら.An ecological study of diet and lung cancer in the South Pacific.「Int J Cancer」;63:18〜23,1995.Mohamedshah F,Douglas JS,Amann MM,Heimbach JM.Dietary intakes of lutein+zeaxanthin and total carotenoids among Americans aged 50 and above.「FASEB J」,13:A554(abstr).,1999)。
【0032】
血漿のルテイン:ゼアキサンチンの比は、4または5:1である。(Emily Chew and John Paul SanGiovanni,in Encyclopedia of Dietary Supplements,Ed.Paul Coates,Marcel Dekker,,ページ409〜421,2005)
上に説明した状況のもとでは、すべての黄斑キサントフィルからなるキサントフィル濃縮物を、商業的に生産性のある方法から取得し、かつルテイン、(R,R)−ゼアキサンチン、および(R,S)−ゼアキサンチンに関してすでに市場に受け入れられているものと同じ天然源材料から作成することは、業界および栄養製品の調合者には望ましくかつ有用である。調製される製品は、通常の食事および血漿で見られるようにルテイン:ゼアキサンチンの比が5:1であるのがよい。そのように調製された製品はまた、視覚機能および市場の要求事項を踏まえた最小限の溶媒残留物ならびにルテインおよびゼアキサンチン異性体の仕様で、ヒトの食用に適した栄養補助食品の製造に関して安全な溶媒(GRAS)から作成されるのがよい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0033】
・本発明の目的:
したがって、本発明の主な目的は、キサントフィル/キサントフィルエステルを含む植物抽出物/含油樹脂に由来するトランス−ルテインならびにゼアキサンチン異性体、すなわち(R,R)−ゼアキサンチンおよび(R,S)−ゼアキサンチンからなる黄斑色素を含む、ヒトの食用に安全でありかつ栄養ケアおよびヘルスケアに有用であるキサントフィル組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0034】
本発明の別の目的は、キサントフィル全体を少なくとも80重量%含み、そのトランス−ルテインの含有量は少なくとも80重量%であり、残部はゼアキサンチン異性体、すなわち(R,R)−ゼアキサンチンおよび(R,S)−ゼアキサンチン(キサントフィル/キサントフィルエステルを含む植物抽出物/含油樹脂に由来する)であり、ヒトの食用に安全でありかつ栄養ケアおよびヘルスケアに有用である、キサントフィル組成物を提供することである。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明のさらに別の目的は、キサントフィル全体を少なくとも85重量%含み、そのトランス−ルテインの含有量は少なくとも85重量%であり、残部はゼアキサンチン異性体、すなわち(R,R)−ゼアキサンチンおよび(R,S)−ゼアキサンチン(キサントフィル/キサントフィルエステルを含む植物抽出物/含油樹脂に由来する)であり、ヒトの食用に安全でありかつ栄養ケアおよびヘルスケアに有用である、キサントフィル組成物を提供することである。
【0036】
本発明のさらに別の目的は、キサントフィル組成物を提供することであり、当該組成物は、キサントフィル全体を少なくとも85重量%含み、その少なくとも80重量%がトランス−ルテインであり、少なくとも6重量%が(R,R)−ゼアキサンチンであり、少なくとも6重量%が(R,S)−ゼアキサンチン(キサントフィル/キサントフィルエステルを含む植物抽出物/含油樹脂に由来する)であり、ヒトの食用に安全であり栄養ケアおよびヘルスケアに有用である。
【0037】
本発明のさらに別の目的は、キサントフィル組成物を提供することであり、当該組成物は、キサントフィル/キサントフィルエステルを含む植物抽出物/含油樹脂に由来するトランス−ルテインを少なくとも85重量%、(R,R)−ゼアキサンチンを少なくとも4重量%、および(R,S)−ゼアキサンチンを少なくとも5重量%含み、ヒトの食用に安全であり栄養ケアおよびヘルスケアに有用である。
【0038】
本発明のさらに別の目的は、キサントフィル組成物を提供することであり、当該組成物は、キサントフィル全体を少なくとも85重量%含み、その少なくとも80重量%がトランス−ルテインであり、残りの15重量%がゼアキサンチン異性体、すなわち(R,R)−ゼアキサンチンおよび(R,S)−ゼアキサンチン(キサントフィル/キサントフィルエステルを含む植物抽出物/含油樹脂に由来する)であり、ヒトの食用に安全であり栄養ケアおよびヘルスケアに有用である。
【0039】
本発明のさらに別の目的は、キサントフィル/キサントフィルエステルを含む植物抽出物/含油樹脂に由来するトランス−ルテインならびにゼアキサンチン異性体、すなわち(R,R)−ゼアキサンチンおよび(R,S)−ゼアキサンチンからなる黄斑色素を含む、ヒトの食用に安全でありかつ栄養ケアおよびヘルスケアに有用であるキサントフィル組成物の調製方法を提供することである。
【0040】
上に記載の目的は、次の我々の知見に基づいて本発明により達成された。
【0041】
a)植物抽出物/含油樹脂中に存在するキサントフィルエステルを脱エステル化形態に変換する鹸化工程は、ルテインの限定的な異性化と組み合わせることができ、トランス−ルテインをより多量に含み、残部がゼアキサンチン異性体、すなわち(R,R)−ゼアキサンチンおよび(R,S)−ゼアキサンチンならびに微量の他のカロテノイド(キサントフィル/キサントフィルエステルを含む植物抽出物/含油樹脂に由来する)である、ヒトの食用に安全であり栄養ケアおよびヘルスケアに有用であるキサントフィル組成物が製造される。
【0042】
b)鹸化工程では、水酸化カリウムまたは水酸化ナトリウムを、水を加えないで、1−プロパノールに溶解してもよい。
【0043】
c)鹸化/異性化の温度は、70〜100℃の間、好ましくは約95度であってもよく、鹸化期間は、1〜2時間であってもよい。
【0044】
d)必要であれば当該方法で用いた酢酸エチルを回収利用してもよい、これにより、当該方法が経済的になる。
【0045】
・本発明の概要:
したがって、本発明は、キサントフィル/キサントフィルエステルを含む植物抽出物/含油樹脂に由来するトランス−ルテインならびにゼアキサンチン異性体、すなわち(R,R)−ゼアキサンチンおよび(R,S)−ゼアキサンチンからなる黄斑色素を含む、ヒトの食用に安全でありかつ栄養ケアおよびヘルスケアに有用であり、キサントフィル全体を少なくとも80重量%含み、そのトランス−ルテインとゼアキサンチン異性体との比が4:1〜6:1の範囲にあり、ゼアキサンチンの異性体の比が80〜20:20〜80の範囲にある、キサントフィル組成物を提供することである。いくつかの実施形態では、トランス−ルテインとゼアキサンチン異性体との比は、約5:1である。
【0046】
本発明の別の実施形態によれば、キサントフィル組成物が提供され、当該組成物は、キサントフィル全体を少なくとも85重量%含み、そのトランス−ルテイン含有量は、少なくとも85%であり、トランス−ルテインとゼアキサンチン異性体との比は4:1〜6:1の範囲であり、ゼアキサンチンの異性体の比は80〜20:20〜80の範囲である。
【0047】
本発明のさらに別の実施形態によれば、キサントフィル組成物が提供され、当該組成物は、キサントフィル全体を少なくとも85重量%含み、その少なくとも80重量%がトランス−ルテインであり、少なくとも6重量%が(R,R)−ゼアキサンチンであり、かつ少なくとも6重量%が(R,S)−ゼアキサンチンである。
【0048】
本発明の別の実施形態によれば、キサントフィル組成物が提供され、当該組成物は、少なくとも85重量%のトランス−ルテイン、少なくとも4重量%の(R,R)−ゼアキサンチン、および少なくとも5重量%の(R,S)−ゼアキサンチンを含む。
【0049】
本発明のさらに別の実施形態によれば、キサントフィル組成物が提供され、当該組成物は、キサントフィル全体を少なくとも85重量%含み、その少なくとも80重量%がトランス−ルテインであり、残部15重量%がゼアキサンチン異性体、すなわち(R,R)−ゼアキサンチンおよび(R,S)−ゼアキサンチンである。
【0050】
本発明のさらに別の実施形態によれば、キサントフィル/キサントフィルエステルを含む植物抽出物/含油樹脂に由来するトランス−ルテインならびにゼアキサンチン異性体、すなわち(R,R)−ゼアキサンチンおよび(R,S)−ゼアキサンチンからなる黄斑色素を含む、ヒトの食用に安全でありかつ栄養ケアおよびヘルスケアに有用であるキサントフィル組成物の調製方法が提供され、当該方法は下記の工程を含む。
【0051】
(a)キサントフィルエステルを含む植物抽出物/含油樹脂中に存在するキサントフィルエステルを、アルカリと1−プロパノールとの比が重量/容積で1:0.5〜1:1の範囲にある1−プロパノールのアルカリ溶液と抽出物/含油樹脂とを混合することにより、同時に鹸化および部分的に異性化し、得られた塊状物を、70〜100℃の範囲の温度、好ましくは95℃で1〜5時間の範囲の期間加熱して、鹸化/異性化粗濃縮物を得ること、
(b)工程(a)で得られた鹸化/異性化粗濃縮物と水とを混合して(用いた濃縮物と水との比は、1:2〜1:3容積/容積である)、希釈化油性混合物を形成すること、
(c)工程(b)で得られた希釈化油性混合物を酢酸エチルで抽出し(用いた希釈化油性混合物と酢酸エチルとの比は、1:1.5〜1:2容積/容積である)、キサントフィル組成物を含む抽出物を得ること、
(d)工程(c)で得られた組成物を蒸発させて、酢酸エチルを除去すること、
(e)工程(d)で得られた組成物を、まず非極性溶媒次いで極性溶媒で洗浄し、ろ過して、精製すること、
(f)得られた組成物を真空下にて40〜45℃の範囲の温度で48〜72時間の範囲の期間乾燥させること、
(g)所望であれば、工程(c)で用いた酢酸エチルを従来の方法で回収し、必要であれば再利用すること、ならびに
(h)得られた組成物を不活性雰囲気中にて−20℃で保存すること。
【0052】
温度、期間、工程(a)におけるアルカリの量、工程(b)および(c)における比を調節することにより、本発明の所望の組成物を得ることができる。
【0053】
なお、本発明は、緑葉野菜、トウモロコシ、果物、およびマリーゴールドをキサントフィル含油樹脂源として使用することを想定している。しかしながら、大部分の果物では、多量の葉緑素および他の望ましくないカロテノイドに関連する遊離形態のゼアキサンチンと共にルテインが存在することを考慮すると、本発明によれば、緑葉野菜、トウモロコシ、果物の使用は可能であるが、上記の物質におけるルテインおよびゼアキサンチンの濃度が低いこと、そして複雑な精製工程がさらに必要となり、経済的でないことを考慮すると、本発明の組成物の調製の出発物質としてマリーゴールドが好ましい選択肢である。
【0054】
具体的には、トランス−ルテインおよびゼアキサンチン異性体を含むキサントフィル組成物の調製には、ヘキサン抽出により製造された市販の食品グレードのマリーゴールド含油樹脂を出発物質として使用することができる(Kumarら,Process for the Preparation of Xanthophylls Crystals,米国特許番号第6,743,953号,2004;Kumar,米国特許番号第6,737,535号,2004)。
【0055】
マリーゴールドの花(タゲテス種)が、主なカロテノイド成分としてルテインのモノエステルおよびジエステルを含むので、トランス−ルテイン用の最良の商業的供給源であると考えられる。ドライフラワー粉から得られるマリーゴールド抽出物/含油樹脂は、栽培品種の種類および抽出方法に応じて約20〜40%のルテインエステルを含む。ルテインに加えて、マリーゴールドはまた、5%の(R,R)−ゼアキサンチンと微量のアルファ−およびベータ−クリプトキサンチンおよびベータカロテンとを含む(Khachik,米国特許番号第5,382,714号,1995)。
【0056】
工程(a)で用いられるアルカリは、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムから選ばれてもよい。
【0057】
工程(d)で用いられる非極性溶媒は、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどから選ばれてもよい炭化水素溶媒であってもよく、好ましくはヘキサンである。工程(e)で用いられる極性溶媒は、低級脂肪族アルコールから選ばれてもよい。
【0058】
得られる組成物の保存に使用される不活性雰囲気は、維持された不活性ガス、例えば窒素であってもよい。
【0059】
・方法の詳細な説明
本発明では、キサントフィルエステルを含む抽出物は、アルカリが既に溶解されている1−プロパノールと混合される。アルカリと1−プロパノールとのおよび植物エキスとの比は、それぞれ、0.5〜1:0.5〜1.0および1.0である。混合物は、撹拌下で、90℃の温度まで加熱され、1〜5時間維持される。反応混合物中のキサントフィル全量は、分光光度分析により測定され(AOAC−16th Edition Method 970.64)、反応混合物のHPLC分析により、トランス−ルテインおよびゼアキサンチンの割合が得られる(Haddenら,「J.Agric.Food.Chem」,47,4189〜494,1999)。
【0060】
抽出物/含油樹脂の鹸化は、脂肪酸のアルカリ塩と共に、遊離形態のキサントフィルの遊離をもたらす。異性化反応は、マリーゴールド由来のルテインの一部を(R,S)−ゼアキサンチンに変換する。ゼアキサンチン異性体へのルテインの異性化は、アルカリ対溶媒比、温度、および継続時間などのプロセスパラメータを変化させることにより変更することができる。反応混合物中のキサントフィルの組成は、ヘキサン:アセトン:エタノール:トルエン(10:7:6:7v/v)中へ抽出され、次いでヘキサンおよび10%硫酸ナトリウム溶液を加え、HPLCにより上層を分析することにより解析される。
【0061】
所望の異性化度および典型的には約85%のトランス−ルテイン含有量を有するキサントフィル組成物を得た後、反応混合物は、水で希釈され、室温で十分に撹拌されて、脂肪酸、石鹸、および不純物に関連する遊離形態のキサントフィルを含む黄色の油層が得られる。
【0062】
この油層を分液漏斗へ移した後、酢酸エチルを加え、キサントフィルが抽出される。酢酸エチル層は、等容積の脱イオン水で2度洗浄される。したがって、脂肪酸および石鹸物質は、水の中へ除去され、次いでこの水は廃棄される。酢酸エチル抽出物は、減圧下で溶媒を留去することにより濃縮され、酢酸エチルおよび粗キサントフィル濃縮物が回収される。
【0063】
キサントフィル濃縮物組成物は、室温で1時間ヘキサンと共に撹拌され、次いでろ過されて、精製される。キサントフィルの塊状物はさらにエタノールで洗浄され、得られるオレンジ色の結晶は真空下で周囲温度にて72時間乾燥される。
【0064】
精製されたキサントフィル生成物の組成は、分光光度分析によりキサントフィル全体で約80〜90重量%からなることが示され、キサントフィルのカロテノイドの組成は、日立L6200ポンプおよび450nmにセットしたL−4250UV−Vis検出器を用いて、1mL/minの流速のアセトン:n−ヘキサン(1:9)で、ナカライテスク社、京都、日本のコスモシル5SL−11−カラム250 4.61内径5mを用いたHPLC分析により、トランス−ルテイン80〜85%および典型的にはゼアキサンチン異性体約15〜20%(場合によっては約11.5%とうい低い値)からなることが示される。Sumichiral OA−2000を用いたキラルHPLCにより、(R,R)−ゼアキサンチンおよび(R,S)−ゼアキサンチン(本明細書では、ゼアキサンチン異性体と総称する)の分離および定量が行われた。
【0065】
本発明の組成物は、少なくとも80重量%のルテインを含み、これはキサントフィル/キサントフィルエステルを含む植物抽出物/含油樹脂に由来し、その安全性は十分に確立されている(Kuzhuvelil Bhaskarannair Harikumarら,Toxicity Profile of Lutein and Lutein Ester Isolated From Marigold Flowers(Tagetes erecta),「International Journal of Toxicology」,Vol.27,No.1,1〜9(2008))。残る組成物は、ルテインと共に抽出される(R,R)−ゼアキサンチンからなり、その安全性は上記研究においてルテインと共に確立されている。組成物の残りの部分は、これもまたルテインから形成されるゼアキサンチンの(R,S)−異性体を含む。さらに、本発明の組成物の調製方法は、医薬品適正製造基準(cGMP)の条件下で行われる。この方法は、次のISO22000ガイドラインに沿って行われ、食品安全性は、下記に記載のように危害分析重要管理点(HACCP)を通じてモニタリングされる。
【0066】
したがって、本発明の組成物は、安全要件をすべて満たし、ヒトの食用に安全であると見なすことができる。前出の段落で説明したように、ゼアキサンチンの(R,S)−異性体は、黄斑中に存在し、身体中でルテインに対する酵素の作用により形成される。
【0067】
したがって、トランスルテイン、(R,R)−ゼアキサンチン、および(R,S)−ゼアキサンチンを含む本発明の組成物は、ヒトの食用に安全である。
【0068】
本発明の詳細を次の実施例に記載する。実施例は、本発明を例示するためのものであり、したがって本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例1】
【0069】
キサントフィル含有量(分光光度法による)が135.40g/kgであるマリーゴールド含油樹脂(100.3g)を、1−プロパノール50mlに溶解した水酸化カリウム50gと混合した。反応混合物を加熱し、95℃で2時間維持した。反応段階において、試料を、HPLCを用いたトランス−ルテインおよびゼアキサンチン含有量の分析のために採取した。反応塊状物を、室温で蒸留水500mlと共に撹拌した。混合物を分液漏斗に取り、等容量の酢酸エチルで抽出した。この操作を5回行った。酢酸エチル層を採取し、蒸留水で洗浄して、過剰なアルカリ、石鹸物質、および他の水溶性不純物を除去した。酢酸エチル層を減圧下で留去して、鹸化粗抽出物を72.10g得た。
【0070】
上記のように得たこの粗抽出物(72g)を、室温で1時間ヘキサン360mlと共に撹拌し、次いでろ過することにより精製した。26.20gの湿った析出物が得られ、これを室温で1時間エタノール262mlで洗浄し、次いでろ過した。得られたオレンジ色の結晶を周囲温度で72時間真空乾燥させ、窒素雰囲気下で保存した。
【0071】
キサントフィル組成物の収量は10.40gであり、キサントフィル含有量は83.29重量%であった(UV/Vis分光光度法により測定された)。生成物の組成は、HPLC分析により測定すると、トランス−ルテインが80.80%で、ゼアキサンチン異性体が19.2%であった。キラルHPLC分析(Sumichiral OA−2000カラム;溶媒としてn−ヘキサン:クロロホルム(48:8))により、(R,R)−ゼアキサンチンが46.3%で、(R,S)−ゼアキサンチンが53.7%であることが示された。
【実施例2】
【0072】
キサントフィル含有量(分光光度法による)が124.10g/kgであるマリーゴールド含油樹脂(50g)を、1−プロパノール25mlに溶解した水酸化カリウム25gと混合した。反応混合物を加熱し、95℃で1時間維持した。反応段階において、試料を、HPLCを用いたトランス−ルテインおよびゼアキサンチン含有量の分析のために採取した。得られた反応塊状物を、室温で蒸留水250mlと共に撹拌した。混合物を分液漏斗に取り、等容量の酢酸エチルで抽出した。この操作を5回繰り返した。酢酸エチル層を採取し、蒸留水で洗浄して、過剰なアルカリ、石鹸物質、および他の水溶性不純物を除去した。酢酸エチル層を減圧下で留去して、鹸化粗抽出物を30gm得た。
【0073】
この粗抽出物(30g)を、室温で1時間ヘキサン150mlと共に撹拌し、次いでろ過することにより精製した。9gの析出物が得られ、これを室温で1時間エタノール90mlで洗浄し、次いでろ過した。得られたオレンジ色の結晶を周囲温度で72時間真空乾燥させ、窒素雰囲気中で保存した。
【0074】
キサントフィル組成物の収量は4.30gであり、キサントフィル含有量は82.59重量%であった(UV/Vis分光光度法により測定された)。生成物の組成は、HPLC分析により測定すると、トランス−ルテインが83.32%で、ゼアキサンチン異性体が15.32%であった。
【実施例3】
【0075】
キサントフィル含有量(分光光度法による)が160.07g/kgであるマリーゴールド含油樹脂(50g)を、1−プロパノール25mlに溶解した水酸化カリウム25gと混合した。反応混合物を加熱し、95℃で2時間維持した。反応段階において、試料を、HPLCを用いたトランス−ルテインおよびゼアキサンチン含有量の分析のために採取した。得られた反応塊状物を、室温で蒸留水250mlと共に撹拌した。混合物を分液漏斗に取り、等容量の酢酸エチルで抽出した。この操作を5回繰り返した。酢酸エチル層を採取し、蒸留水で洗浄して、過剰なアルカリ、石鹸物質、および他の水溶性不純物を除去した。酢酸エチル層を減圧下で留去して、鹸化粗抽出物を36g得た。
【0076】
得られた粗抽出物(36.90g)を、室温で1時間ヘキサン185mlと共に撹拌し、次いでろ過することにより精製した。10.33gの析出物が得られ、これを室温で1時間エタノール103mlで洗浄し、次いでろ過した。得られたオレンジ色の結晶を周囲温度で72時間真空乾燥させ、窒素雰囲気中で保存した。
【0077】
キサントフィル組成物の収量は7.02gであり、キサントフィル含有量は85.59重量%であった(UV/Vis分光光度法により測定された)。生成物の組成は、HPLC分析により測定すると、トランス−ルテインが86.50%で、ゼアキサンチン異性体が13.2%であった。
【実施例4】
【0078】
キサントフィル含有量(分光光度法による)が132.2g/kgであるマリーゴールド含油樹脂(52g)を、1−プロパノール26mlに溶解した水酸化カリウム26gと混合した。反応混合物を加熱し、95℃で1時間維持した。反応段階において、試料を、HPLCを用いたトランス−ルテインおよびゼアキサンチン含有量の分析のために採取した。得られた反応塊状物を、室温で蒸留水250mlと共に撹拌した。混合物を分液漏斗に取り、等容量の酢酸エチルで抽出した。この操作を5回繰り返した。酢酸エチル層を採取し、蒸留水で洗浄して、過剰なアルカリ、石鹸物質、および他の水溶性不純物を除去した。酢酸エチル層を減圧下で留去して、鹸化粗抽出物を30.30g得た。
【0079】
得られた粗抽出物(30.30g)を、室温で1時間ヘキサン150mlと共に撹拌し、次いでろ過することにより精製した。得られた析出物(8.00g)を室温で1時間エタノール80mlで洗浄し、次いでろ過した。得られたオレンジ色の結晶を周囲温度で72時間真空乾燥させ、窒素雰囲気中で保存した。
【0080】
キサントフィル組成物の収量は4.40gであり、キサントフィル含有量は81.50重量%であった(UV/Vis分光光度法により測定された)。生成物の組成は、HPLC分析により測定すると、トランス−ルテインが86.64%、ゼアキサンチン異性体が11.49%、かつ微量の他のカロテノイドであった。
【0081】
・発明の利点
1.キサントフィル組成物は、
(a)トランス−ルテイン、(R,R)−ゼアキサンチン、および(R,S)−ゼアキサンチンなどの黄斑色素を特定の比で含み、
(b)キサントフィル全体で少なくとも80%含み、その少なくとも80%がトランス−ルテインであり、残りの15〜20%が典型的にはゼアキサンチン異性体、それぞれ(R、R)−および(R,S)−ゼアキサンチンである。
【0082】
2.キサントフィル組成物は、GRAS試薬の使用により、安全性規制事項を満たしており、ヒトの食用に安全であり、栄養ケアおよびヘルスケアに有用である。
【0083】
3.キサントフィル組成物は、眼の健康維持に役立ち得る必須黄斑色素をすべて含む単一源の栄養補助食品である。
【0084】
4.今日、多くの調合者は、マリーゴールド抽出生成物のほとんどに典型的であるルテイン:ゼアキサンチン異性体比が20:1を超える有効成分形態を必要とする。最終製品におけるゼアキサンチンの割合を向上させるために、ルテイン源に加えて、追加のゼアキサンチン供給源を組み込まなければならない。本発明では、3種類のキサントフィルがすべて存在するので、追加の供給源を加える必要性は全くない。
【0085】
5.同様に、黄斑カロテノイドの3種類の形態すべて、すなわち網膜の黄斑における保護的な役割を果たすことが分かっている3種類の色素(すなわち、ルテイン、(R,R)−ゼアキサンチン、(R,S)−ゼアキサンチン)すべてを探す調合者もいる。現在、1つの供給源から3種類のカロテノイドをすべて得るのは難しいので、調合者は、多くの場合、3種類の黄斑色素すべてを有するバランスがとれた製剤を調製するためには、3種類の異なる成分を用いる必要がある。トランスルテインと2種類のゼアキサンチン異性体である(R、R)−ゼアキサンチンおよび(R、S)−ゼアキサンチンとを含む組成物を有することが所望される。しかしながら、調合者は、3種類の所望のキサントフィルを得るために、1種類を超える供給源からの複数の成分を使用する必要があった。本発明の製剤は、この欠点を克服している。
【0086】
6.ルテイン:ゼアキサンチン異性体が、黄斑色素中のルテイン:ゼアキサンチン異性体の比と一致する、5:1の比(さらに、(R,R)−ゼアキサンチンと(R,S)−ゼアキサンチンとが1:1の比)である成分を探す調合者もいる。
【0087】
7.被験者4000人に行われたAREDSII(加齢性眼疾患研究)研究は、高用量の黄斑キサントフィル(すなわち、ルテインおよびゼアキサンチン)の経口補給(ルテイン:ゼアキサンチン比が5:1(ルテイン10mg:ゼアキサンチン2mg)である補給を含む)の効果を評価した。https://web.emmes.com/study/areds2/resources/areds2_mop.pdfを参照されたい。5:1の比でルテインおよびゼアキサンチンを提供することができる単一成分は、AREDSII実験の結果を熱望している調合者にとって非常に有益であり得ることが期待される。現在、この目的は複数の成分を用いることにより達成され、複数の在庫品を持つことによりコスト、労力、および処理が増える。
【0088】
8.上記キサントフィル組成物は、単一源からの、必要な比率のルテイン:ゼアキサンチンまたはルテイン:(R,R)−ゼアキサンチン:(R,S)−ゼアキサンチンを有する標準組成物の開発を可能にする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キサントフィル/キサントフィルエステルを含む植物抽出物/含油樹脂に由来するトランス−ルテインならびにゼアキサンチン異性体、すなわち(R,R)−ゼアキサンチンおよび(R,S)−ゼアキサンチンからなる黄斑色素を含むキサントフィル組成物であって、ヒトの食用に安全でありかつ栄養ケアおよびヘルスケアに有用であり、キサントフィル全体を少なくとも80重量%含み、そのトランス−ルテインとゼアキサンチン異性体との比が約4:1〜約6:1の範囲にあり、ゼアキサンチンの異性体の比が80〜20:20〜80の範囲にある、キサントフィル組成物。
【請求項2】
キサントフィル全体を少なくとも85重量%含み、そのトランス−ルテイン含有量が少なくとも85%である、請求項1に記載のキサントフィル組成物。
【請求項3】
キサントフィル全体を少なくとも85重量%含み、その少なくとも80重量%がトランス−ルテインであり、少なくとも6重量%が(R,R)−ゼアキサンチンであり、かつ少なくとも6重量%が(R,S)−ゼアキサンチンである、請求項1および2のいずれか一項に記載のキサントフィル組成物。
【請求項4】
少なくとも85重量%のトランス−ルテインと、少なくとも4重量%の(R,R)−ゼアキサンチンと、少なくとも5重量%の(R,S)−ゼアキサンチンとを含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載のキサントフィル組成物。
【請求項5】
キサントフィル全体を少なくとも85重量%含み、その少なくとも80重量%がトランス−ルテインであり、残りの15重量%がゼアキサンチン異性体、すなわち(R,R)−ゼアキサンチンおよび(R,S)−ゼアキサンチンである、請求項1〜4のいずれか一項に記載のキサントフィル組成物。
【請求項6】
キサントフィル/キサントフィルエステルを含む植物抽出物/含油樹脂に由来するトランス−ルテインならびにゼアキサンチン異性体、すなわち(R,R)−ゼアキサンチンおよび(R,S)−ゼアキサンチンからなる黄斑色素を含む、ヒトの食用に安全でありかつ栄養ケアおよびヘルスケアに有用であるキサントフィル組成物の調製方法であって、
(a)キサントフィルエステルを含む植物抽出物/含油樹脂中に存在するキサントフィルエステルを、アルカリと1−プロパノールとの比が重量/容積で1:0.5〜1:1の範囲にある1−プロパノールのアルカリ溶液と抽出物/含油樹脂とを混合して、同時に鹸化および部分的に異性化し、得られた塊状物を70〜100℃の範囲の温度、好ましくは95℃で、1〜5時間の範囲の期間加熱して、鹸化/異性化粗濃縮物を得ること、
(b)工程(a)で得られた鹸化/異性化粗濃縮物と水とを混合して(用いた濃縮物と水との比は、1:2〜1:3容積/容積である)、希釈化油性混合物を形成すること、
(c)工程(b)で得られた希釈化油性混合物を酢酸エチルで抽出し(用いた希釈化油性混合物と酢酸エチルとの比は、1:1.5〜1:2容積/容積である)、キサントフィル組成物を含む抽出物を得ること、
(d)工程(c)で得られた組成物を蒸発させて、酢酸エチルを除去すること、
(e)工程(d)で得られた組成物を、まず非極性溶媒次いで極性溶媒で洗浄し、ろ過して、精製すること、
(f)得られた組成物を真空下で40〜45℃の範囲の温度で48〜72時間の範囲の期間乾燥させること、
(g)所望であれば、工程(c)で用いた酢酸エチルを従来の方法で回収し、必要であれば再利用すること、ならびに
(h)得られた組成物を不活性雰囲気中にて−20℃で保存すること、を含む調製方法。
【請求項7】
使用するキサントフィルエステルを含む植物抽出物/含油樹脂が、マリーゴールドの花に由来する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
工程(e)で使用される非極性溶媒が、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどから選ばれる炭化水素溶媒から選ばれ、好ましくはヘキサンであり、使用される極性溶媒が、低級脂肪族アルコールから選ばれる、請求項6および7のいずれか一項に記載の方法。

【公表番号】特表2013−503844(P2013−503844A)
【公表日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−527401(P2012−527401)
【出願日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際出願番号】PCT/IB2010/002188
【国際公開番号】WO2011/027209
【国際公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(512053082)オムニアクティブ ヘルス テクノロジーズ リミテッド (1)
【Fターム(参考)】