説明

黒色チタン酸窒化物粉末とその製造方法および用途

【課題】高い黒色度と遮光性を有すると共に比表面積の大きく、塗液化したときに長期分散性に優れており、顔料の沈降を生じ難く、ブラックマトリックス材料として好適な黒色チタン酸窒化物粉末とその製造方法等を提供する。
【解決手段】酸化チタン粉末を水または有機溶剤に溶解した高分子バインダーを用いて造粒し、その造粒粉体を高温のアンモニアガスに接触させて還元処理することによって製造され、酸素量3〜13%、窒素量18〜25%、炭素量0.3〜10.0%、残りがTiであり、比表面積25m2/g以上、黒色度(L値)8.5以上、および比重4.2以下であることを特徴とする黒色チタン酸窒化物粉末とその製造方法等。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い黒色度と遮光性を有すると共に比表面積の大きい黒色チタン酸窒化物粉末に関する。本発明の黒色チタン酸窒化物粉末は黒色顔料として好適であり、塗液化したときに長期分散性に優れており、顔料の沈降を生じ難く、ブラックマトリックス材料として優れた特性を有する。
【背景技術】
【0002】
黒色顔料粉末として、カーボンブラック、酸化鉄、低次酸化チタン、酸窒化チタン粉末などが知られている。カーボンブラックは黒色度、着色度とも優れており高い導電性を有しているが、嵩が大きいため、取り扱いが難しく、また樹脂とのなじみが良くない。また極微量ではあるが原料起因の発ガン性物質、3,4−ベンズピレンを伴うため、その安全性が問題となっている。
【0003】
酸化鉄は磁性による凝集があり、分散性に劣る。耐熱性も低く、大気中150℃付近で茶色のγ-Fe2O3に酸化され、黒色度が低下する。低次酸化チタンは二酸化チタン粉末をチタン粉末またはH2ガスによって1000℃以上の温度で還元して得られる粉末であり、Ti3O5、Ti2O3など多種の構造を持つ低次酸化チタン混合物である。低次酸化チタンは高温での還元反応を行うため焼結して粒子が大きくなり、顔料用としては不適な粗大粒子(1.0μm以上)になってしまう。
【0004】
一方、特許1758344号公報に記載されているチタンブラックと称される酸窒化チタン(チタン酸窒化物)は、二酸化チタンをアンモニアによって還元して得られる化合物であり、半導電性を示す青みを帯びた黒色を示す黒色顔料である。この酸窒化チタンは有害物質を含まないため、飲食品用プラスチックス、化粧品などの原料として最適である。また、近年、黒色顔料を樹脂に分散させ、フォトリソ法などでパターニングすることによって液晶カラーフィルターのブラックマトリックス(樹脂BMと云う)として応用する例が多い。この酸窒化チタンは高い隠蔽性や高絶縁性などのブラックマトリックス用黒色顔料としての優れた性質を有しており、今後さらなる応用が期待される。
【特許文献1】特許1758344号公報(特公平3−51645号公報)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のアンモニア還元による黒色酸窒化チタンの製造方法では、水素ガスによる還元ほどではないものの高温での窒化還元反応によって酸化チタンの焼結反応が生じ、微粒子化が困難である。また、酸窒化チタン単体では比重が4.5g/ml以上となり、ブラックマトリックス用レジスト液のように塗液化した場合、長期保管すると顔料分の沈降が発生し、液中の上部と下部との濃度差が顕著になる問題があった。
【0006】
また、上記特許文献1の実施例8〜9には、比表面積の大きな酸窒化チタン粉末(比表面積39〜48m2/g)が記載されているが、これは比表面積の大きな二酸化チタン粉末(TCA微粒子:比表面積150m2/g)を原料としており、しかも生成される酸窒化チタン粉末の比表面積は原料の二酸化チタン粉末よりも大幅に低下している。また、原料酸化チタンの黒色化反応の際に、未反応酸化チタンに起因する酸素分が残存するため、塗膜にしたときの遮光性能が劣り、樹脂ブラックマトリックスとしての性能は十分ではない。さらに原料の酸化チタン粉末の還元反応時間を長くし、強制的に還元を進めようとすると、焼結によって比表面積が急激に低下し、高還元度と高比表面積を両立させることは困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、原料の二酸化チタン粉末を還元処理する際に、高分子バインダーを使用した造粒処理を行ってアンモニア還元することによって、焼結反応が抑制されることを見出した。本発明はかかる知見に基づいて従来の上記問題を解決したものであり、原料の二酸化チタン粉末よりも比表面積の大きい黒色チタン酸窒化物粉末とその製造方法を提供する。
【0008】
本発明は以下の黒色チタン酸窒化物粉末とその製造方法に関する。
〔1〕酸素量3〜13%、窒素量18〜25%、炭素量0.3〜10.0%、残りがTiであり、比表面積25m2/g以上、黒色度(L値)8.5以上、および比重4.2以下であることを特徴とする黒色チタン酸窒化物粉末。
〔2〕酸化チタン粉末の還元処理によって製造され、比表面積10m2/g未満の原料酸化チタン粉末に対して3倍以上の比表面積を有し、比表面積10m2/g以上の原料酸化チタン粉末に対して1.5倍以上の比表面積を有する上記[1]に記載する黒色チタン酸窒化物粉末。
〔3〕上記[1]または上記[2]のチタン酸窒化物粉末からなる黒色顔料
〔4〕上記[3]の黒色顔料を含有し、顔料濃度80%においてOD値4.3以上であることを特徴とする黒色インキ。
〔5〕製造直後のL値に対して6週間経過したときのL値の差が1.0以下である上記[4]に記載する黒色インキ。
〔6〕酸化チタン粉末を水または有機溶剤に溶解した高分子バインダーを用いて造粒し、その造粒粉体を高温のアンモニアガスに接触させて、酸素量3〜13%、窒素量18〜25%、炭素量0.3〜10.0%、残りがTiであり、比表面積25m2/g以上、黒色度(L値)8.5以上、および比重4.2以下になるように還元処理することを特徴とする黒色チタン酸窒化物粉末の製造方法。
〔7〕造粒バインダーがポリビニルアルコール系、セルロース系、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン、澱粉、グリセリン、尿素樹脂から選ばれる一種類または二種類以上である請求項6に記載する製造方法。
〔8〕造粒バインダーの添加量が原料の二酸化チタン粉末量に対して0.5〜20.0%である請求項6または請求項7に記載する製造方法。
〔9〕造粒粉体の粒子径が0.01mm〜5.0mmである請求項6〜請求項8の何れかに記載する製造方法。
〔10〕還元工程において、5℃/min以上の昇温速度で、非酸化雰囲気下、700℃〜1200℃の高温下でアンモニアガスに接触させて還元処理する請求項6〜請求項9の何れかに記載する製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明のチタン酸窒化物粉末は、高分子バインダーを使用した造粒処理に起因する微量の炭素を含み、また高分子バインダーを使用した造粒処によって還元処理時の焼結が抑制されるので、25m2/g以上の大きな比表面積を有する。具体的には、例えば本発明のチタン酸窒化物粉末は原料の二酸化チタン粉末よりも約1.2倍以上比表面積を有する。
【0010】
本発明のチタン酸窒化物粉末は、還元反応が十分に進行し、またカーボンを含むので黒色度(L値)が高く、8.5以上好ましくは9.0以上であり、塗膜を形成したときにブラックマトリックスに要求される遮光性も向上する。
【0011】
また、本発明のチタン酸窒化物粉末は一次粒子径が小さく、さらに従来よりも比重が小さく4.2以下であるので、塗液化したときに顔料分が沈降し難く、例えば、黒色インキを製造したときに、その黒色度が長期間殆ど変化せず、安定である。
【0012】
例えば、本発明の黒色顔料を含有する顔料濃度80%の黒色インキにおいて、OD値4.3以上であって、製造直後のL値に対して6週間経過したときのL値の差が1.0以下であり、黒色度の変化が極めて少なく、長期間安定である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を実施形態に基づいて具体的に説明する。特に示す場合を除いて%は質量%である。
〔チタン酸窒化物粉末〕
本発明のチタン酸窒化物粉末は、酸素量3〜13%、窒素量18〜25%、炭素量0.3〜10.0%、残りがTiであり、比表面積25m2/g以上、黒色度(L値)8.5以上、および比重4.2以下であることを特徴とする黒色チタン酸窒化物粉末である。
【0014】
本発明のチタン酸窒化物粉末は酸化チタン粉末の還元処理によって製造される。具体的には、原料の酸化チタン粉末を水または有機溶剤に溶解した高分子バインダーを用いて造粒し、この造粒粉体を高温のアンモニアガスに接触させて還元処理して製造される。
【0015】
本発明のチタン酸窒化物粉末は、造粒バインダーに起因する炭素を0.3〜10.0%含有する。この炭素含有量が0.3%より少ないと比表面積が十分に向上しない。一方、造粒バインダーの添加量が多く、炭素含有量が10.0%を上回ると、黒色インキを製造したときにOD値(光学濃度)が低下する傾向がある。
【0016】
本発明のチタン酸窒化物粉末の酸素含有量3〜13%、窒素含有量18〜25%である。酸素含有量が13%より多いと相対的に窒素含有量が18%より少なくなり、還元処理が不十分になり黒色度(L値)が低下する。一方、酸素含有量が3%より少ないと窒素含有量が25%より多くなり、この場合にも黒色度(L値)が低下する。
【0017】
本発明のチタン酸窒化物粉末は、還元処理時の焼結が抑制されるので、比表面積が大きく、比表面積25m2/g以上であり、原料の二酸化チタン粉末よりも大きな比表面積を有する。具体的には、比表面積10m2/g未満の原料酸化チタン粉末に対して3倍以上の比表面積を有し、比表面積10m2/g以上の原料酸化チタン粉末に対して1.5倍以上の比表面積を有する。
【0018】
例えば、実施例1〜5、および実施例9〜10に示すように、比表面積8m2/gの二酸化チタン粉末を原料として製造されるチタン酸窒化物の比表面積は25〜47m2/gであり、原料に対して約3倍〜約6倍の比表面積を有するチタン酸窒化物粉末が製造される。また実施例6〜8に示すように、比表面積30〜50m2/gの二酸化チタン粉末を原料として製造されるチタン酸窒化物の比表面積は48〜80m2/gであり、原料に対して約1.2倍〜2.7倍の比表面積を有するチタン酸窒化物粉末が製造される。
【0019】
本発明のチタン酸窒化物粉末は、焼結による凝集が少ないので焼結後の一次粒子径が小さく、黒色インキを製造したときに黒色顔料が均一に分散し、高いOD値を有することができる。具体的には、顔料濃度80%の黒色インキにおいて、OD値4.3以上である。
【0020】
また、本発明のチタン酸窒化物からなる黒色粉末は比重が小さく4.2以下である。一方、従来のチタン酸窒化物による黒色粉末は比重が約4.6〜4.7であり、本発明の黒色粉末は従来のものより比重が小さい。従って、塗液化したときに粉末分が沈降し難く、塗液が分離せず粉末が長期間安定に分散した状態を保つことができる。
【0021】
例えば、実施例1〜10に示すように、顔料濃度80%の黒色インキについて、これを10万倍に希釈したインキ液の透過光のL値を測定すると、製造直後のL値(L1)に対して6週間経過したときのL値(L2)の差〔L1−L2〕は何れも1.0以下であり、実施例1〜10ではこのL値の差は0.5以下であり、本発明のチタン酸窒化物粉末を用いた黒色インクは6週間経過後も黒色度(L値)は殆ど変わらない。
【0022】
〔製造方法〕
本発明のチタン酸窒化物粉末は、酸化チタン粉末を水または有機溶剤に溶解した高分子バインダーを用いて造粒し、その造粒粉体を高温のアンモニアガスに接触させて還元処理することによって製造することができる。
【0023】
高分子造粒バインダーは、ポリビニルアルコール系、セルロース系、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン、澱粉、グリセリン、尿素樹脂から選ばれる一種類または二種類以上を用いることができる。
【0024】
造粒バインダーの添加量は原料の二酸化チタン粉末量に対して0.5〜20.0%が適当である。この添加量が0.5%より少ないと生成されるチタン酸窒化物粉末の比表面積が十分に大きくならず、また、黒色インキを製造したときに黒色度(L値)の長期安定性が低下する。一方、造粒バインダーの添加量が20.0%より多いと、黒色インキを製造したときにOD値(光学濃度)が低下する傾向がある。
【0025】
原料の酸化チタン粉末は一般的な顔料用酸化チタンを使用しても良く、また比表面積50m2/g以上の微粒子酸化チタンを使用しても良い。微粒子酸化チタンを使用した場合はより高い比表面積をもつ黒色複合顔料が生成されるが原料が高価である。一方、本発明の製造方法によれば、低コストの顔料用酸化チタンを使用した場合でも、高い比表面積を有する酸窒化チタンを得ることができる。
【0026】
造粒は攪拌造粒、転動造粒などが一般的であるが、流動層、スプレードライヤを使用しても良い。特に攪拌造粒やスプレードライヤを用いた造粒法によれば、好ましい造粒粒子径の嵩高い造粒粉を得ることができる。
【0027】
造粒体の粒径は0.01mm〜5.0mmが好ましく、0.05mm〜2.0mmの粒径がより好ましい。造粒体の粒径が0.01mmより小さいとバインダーと原料酸化チタン粉末が不均一であり、焼結反応が進む。一方、造粒体の粒径が5.0mmより多いとアンモニアガスとの接触面積が少なくなり、還元反応が進み難くなり、黒色化が不十分になる。
【0028】
還元反応時の昇温速度は5℃/min以上が好ましく、7℃/min以上がより好ましい。昇温速度が高いと有機高分子の分解が急速に進み、空間容積の大きい造粒粉末となるので還元効率が高くなる。一方、昇温速度が上記範囲より低いと高分子の分解が緩やかであり、造粒粉末の密度が高すぎて反応効率が悪くなる。
【0029】
還元反応は、非酸化雰囲気下、例えば、窒素ガス雰囲気下、700℃〜1200℃で、アンモニアガスと接触させて行う。還元温度が上記範囲より低いと、還元反応が不十分になる。一方、還元温度が上記範囲より高いと焼結反応が進み粒子が大きくなる。
【実施例】
【0030】
以下に本発明の実施例を比較例と共に示す。なお、粉体の比表面積、比重、L値、OD値は下記方法によって測定した。
〔比表面積〕比表面積測定装置(柴田科学社製SA-1100)を用いて測定した。
〔比重〕ウルトラピクノメータ(セイシン企業社製MAT-7000)を用いて測定した。
〔L値〕チタン酸窒化物粉末のL値は、L、a、b系色度に基づき、日本電色社製色度計(SE-2000)を用い、粉末の反射光L値を測定した。黒色インキのL値はPGM-Acにて10万倍に希釈したインキ液の透過光のL値をカラーコンピューター(日本電色社製品:SE-2000)で測定した。
〔OD値〕インキのOD値は、OD(光学濃度)=−log(透過光/入射光)によって定義され、通常膜厚1μm当たりで評価される。マクベス社の測定装置(D200)を用いて測定した。
【0031】
〔実施例1〕
比表面積8m2/g(平均粒径0.2μm)の顔料用酸化チタンに対し、ポリビニルアルコールを上記酸化チタンの5%となるように水に溶解して添加しながら攪拌造粒を行った。このとき造粒粉体の平均径は0.6mmであった。この造粒粉体を石英製反応容器に充填し、窒素雰囲気にて、7℃/minの昇温速度で、950℃まで昇温した後、アンモニアガスを所定時間流して還元処理を行い、窒化還元された黒色粉末を得た。得られた粉末の物性値を表1に示す。この黒色粉末を循環式横型ビーズミル(メディア:ジルコニア)に入れ、アミン系分散剤を添加して、PGM−Ac溶剤中での分散処理を行った後、アクリル樹脂(分子量15000)を添加し、顔料:樹脂=8:2の黒色インキを作製した。作製した黒色インキの物性値を表1に示す。1μm辺りのOD値を測定したところ5.6と非常に高い値を示した。このインキをPGM-Acにて10万倍に希釈して透過光のL値をカラーコンピューター(日本電色社製品:SE-2000)により測定したところ25.5であった。また、作製した黒色インキについて、三週間後、六週間後の沈降性を確認したところL値はそれぞれ25.3、25.5であり、製造直後のL値(L1)に対して6週間経過したときのL値(L2)の差〔L1−L2〕はゼロであり、顔料の沈降は認められなかった。
【0032】
〔実施例2〜10〕
実施例1と同様な方法で、バインダーの種類、バインダー添加量、造粒粒子径、昇温速度を変えて黒色粉末を作製し、得られた粉末を用いて黒色インクを調製し、この黒色インキについて、実施例1と同様に評価した。この結果を表1に示す。表1に示すように、黒色インキのOD値は4.3〜5.4であり、比較例1より高く、比較例2より格段に高い。また、製造直後のL値に対する6週間経過したときのL値の差は何れも0〜0.4であり、L値の変動が格段に少ない。
【0033】
〔比較例1〕
比表面積8m2/gの酸化チタン粉末を造粒せずに、その他は実施例1と同様にしてアンモニアにて還元処理し、黒色粉末を得た。黒色粉末の製造条件および粉末物性を表2に示した。この黒色粉末の比重は4.7であり、実施例1〜10の粉末より比重が大きい。製造した黒色粉末を用い、実施例1と同様にして黒色インキを作製した。インキ物性を表2に示す。この黒色インキのOD値は4.1であった。また、作製した黒色インキの沈降性試験を実施したところ、作製直後のL値は25.9であったが、三週間経過後には30.4となり、六週間後にはさらに34.8に低下し、製造直後のL値に対する6週間経過したときのL値の差は8.9であり、L値の変動が大きい。
【0034】
〔比較例2〕
比表面積50m2/gの酸化チタン粉末を用いた以外は比較例1と同様にして黒色粉末を製造した。黒色粉末の製造条件と粉末物性を表2に示す。この黒色粉末の比表面積は原料の二酸化チタン粉末よりも小さい。製造した黒色粉末を用いて黒色インキを作製した。作製した黒色インキの沈降性は良好であったが、OD値は2.5と低く、樹脂BMに使用するには不十分であった。また、製造直後のL値に対する6週間経過したときのL値の差は1.1であり、L値の変動が実施例1〜10よりも大きい。
【0035】
〔比較例3〜5〕
表2に示す製造条件で黒色粉末を製造した。これらはポリビニルアルコールを用いて造粒したものであるが、黒色粉末の炭素量が本発明の範囲を外れる例である。製造した黒色粉末を用いて黒色インキを作製した。黒色粉末の製造条件および粉末物性、インキ物性を表2に示す。何れもインキのOD値が低く、L値の変動が大きい。
【0036】
【表1】

【0037】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素量3〜13%、窒素量18〜25%、炭素量0.3〜10.0%、残りがTiであり、比表面積25m2/g以上、黒色度(L値)8.5以上、および比重4.2以下であることを特徴とする黒色チタン酸窒化物粉末。
【請求項2】
酸化チタン粉末の還元処理によって製造され、比表面積10m2/g未満の原料酸化チタン粉末に対して3倍以上の比表面積を有し、比表面積10m2/g以上の原料酸化チタン粉末に対して1.5倍以上の比表面積を有する請求項1に記載する黒色チタン酸窒化物粉末。
【請求項3】
請求項1または請求項2のチタン酸窒化物粉末からなる黒色顔料
【請求項4】
請求項3の黒色顔料を含有し、顔料濃度80%においてOD値4.3以上であることを特徴とする黒色インキ。
【請求項5】
製造直後のL値に対して6週間経過したときのL値の差が1.0以下である請求項4に記載する黒色インキ。
【請求項6】
酸化チタン粉末を水または有機溶剤に溶解した高分子バインダーを用いて造粒し、その造粒粉体を高温のアンモニアガスに接触させて、酸素量3〜13%、窒素量18〜25%、炭素量0.3〜10.0%、残りがTiであり、比表面積25m2/g以上、黒色度(L値)8.5以上、および比重4.2以下になるように還元処理することを特徴とする黒色チタン酸窒化物粉末の製造方法。
【請求項7】
造粒バインダーがポリビニルアルコール系、セルロース系、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン、澱粉、グリセリン、尿素樹脂から選ばれる一種類または二種類以上である請求項6に記載する製造方法。
【請求項8】
造粒バインダーの添加量が原料の二酸化チタン粉末量に対して0.5〜20.0%である請求項6または請求項7に記載する製造方法。
【請求項9】
造粒粉体の粒子径が0.01mm〜5.0mmである請求項6〜請求項8の何れかに記載する製造方法。
【請求項10】
還元工程において、5℃/min以上の昇温速度で、非酸化雰囲気下、700℃〜1200℃の高温下でアンモニアガスに接触させて還元処理する請求項6〜請求項9の何れかに記載する製造方法。

【公開番号】特開2010−30841(P2010−30841A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−195546(P2008−195546)
【出願日】平成20年7月29日(2008.7.29)
【出願人】(000006264)三菱マテリアル株式会社 (4,417)
【出願人】(597065282)三菱マテリアル電子化成株式会社 (151)
【Fターム(参考)】