説明

黒酢粉状物およびその製造方法、並びに該黒酢粉状物を含有する食品

【課題】有用黒酢成分が過剰に希釈されることなく黒酢本来の風味を保ち、吸湿性が低く、塊状になり難く、安定性に優れた黒酢粉状物を提供する。
【解決手段】黒酢乾燥物及び焙煎した米粉末を含有し、前記焙煎した米粉末の含有量が、黒酢固形分100重量部当たり30重量部以上100重量部以下である黒酢粉状物。
該黒酢粉状物は、黒酢濃縮物に焙煎した米粉末を、黒酢固形分100重量部当たり30重量部以上100重量部以下となるように添加した後、熱風乾燥を行うことで好適に製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、黒酢粉状物およびその製造方法に関する。更に詳しくは、焙煎した米粉末を含む黒酢粉状物およびその製造方法、並びに該黒酢粉状物を含有する食品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
玄米を主原料とする黒酢は、栄養素としてアミノ酸、有機酸、ビタミン、ミネラル等を有し、特に必須アミノ酸をバランスよく含んでおり栄養的に優れていることから、古来より食用のみならず、漢方薬としても用いられてきた。
黒酢の伝統的な製法では、容器にこうじと米と水を入れて種酢を加え、和紙で密封し、戸外で太陽熱による自然発酵をさせる方法がとられてきた。この方法では、酢になるには約半年、味がまろやかになるまでには1〜3年の年月を要する。
【0003】
黒酢は、上述のように栄養的に優れるが、特有の発酵臭や酸味を有することから、そのまま飲料として接収することは困難であった。
これに対し、黒酢を乾燥し、粉末状や顆粒状にした黒酢粉状物は、黒酢を飲用するのに好適である。また、黒酢粉状物は水分がない分嵩張らず運搬及び使用上便利である。
【0004】
黒酢を固形化する方法として、例えば、特許文献1には、黒酢そのものを凍結乾固させ健康食品とする方法が開示されている。しかしながら、単純に凍結乾燥するだけでは、黒酢特有の発酵臭が除去できない。また、充分に水分量を低減させることも困難であるため、得られる黒酢乾燥物はペースト状となり、流動性が悪いため、その使用用途は限定的となる。
【0005】
一方、黒酢乾燥物の流動性を良くするために、黒酢乾燥物に米粉末を添加した黒酢粉状物が開示されている。
例えば、特許文献2には、加圧力(通常10気圧)下に加熱しその圧力を一気に解放することにより水分を一瞬の内に蒸散させる、いわゆる「膨化」させた米粉を添加することにより、黒酢粉末を得る方法が開示されている。しかしながら、この方法では米粉を膨化させるために特殊な膨化機が必要となるため、コストが高くなり、また、作業の危険性が高いなど実用上も問題である。また、膨化米粉はその強度が低く、品質的に満足できるものではない。
また、特許文献3には、黒酢固形分に対して1.5倍量以上(黒酢固形分100重量部に対して、150重量部以上)の米粉を添加後、凍結乾燥する方法が開示されている。この方法では、黒酢本来の風味を損なうことなく、分散性に優れた粉末状の黒酢粉状物を得ることができるとされているが、1.5倍量以上の米粉を必要とし、これ以下だとペースト状となり良好な粉末とならない。また、有用黒酢成分が薄められるため、黒酢の風味が損なわれないとは言い難い。また、多量の米粉を含むため、保存安定性に問題を生じるおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭62−120320号公報
【特許文献2】特許3276989号公報
【特許文献3】特許3720028号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように従来の製造方法で得られる黒酢粉状物は、その風味や安定性などの面から必ずしも満足できるものではなく、また、その製造方法においてもより経済的且つ効果的な改善技術が求められている。
かかる状況下、本発明の目的は、有用黒酢成分が過剰に希釈されることなく黒酢本来の風味を保ち、吸湿性が低く、塊状になり難く、安定性に優れた黒酢粉状物及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、焙煎という簡単な処理を施すことにより、黒酢に添加する米粉の量が従来に比し少量であっても、従来の黒酢粉状物と同等以上に風味がよく、分散性、安定性等の特性に優れた黒酢粉状物を製造できることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は、以下の発明に係るものである。
<1> 黒酢乾燥物及び焙煎した米粉末を含有し、前記焙煎した米粉末の含有量が、黒酢固形分100重量部当たり30重量部以上100重量部以下である黒酢粉状物。
<2> 前記<1>に記載の黒酢粉状物を含有してなる食品。
<3> 黒酢に焙煎した米粉末を、黒酢固形分100重量部当たり30重量部以上100重量部以下となるように添加した後、乾燥処理を行う黒酢粉状物の製造方法。
<4> 前記黒酢が、黒酢濃縮物である前記<3>記載の黒酢粉状物の製造方法。
<5> 前記乾燥処理が、熱風乾燥である前記<3>又は<4>記載の黒酢粉状物の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、黒酢本来の風味を損なうことなく、黒酢本来の風味を保ち、吸湿性が低く、塊状になり難く、安定性に優れた黒酢粉状物を得ることができる。また、この黒酢粉状物は食品一般への分散性に優れ、広く各種飲食品に配合して利用することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、黒酢乾燥物及び焙煎した米粉末を含有し、前記焙煎した米粉末の含有量が、黒酢固形分100重量部当たり30重量部以上100重量部以下である黒酢粉状物に関する。
【0012】
本発明の黒酢粉状物は、焙煎した米粉を含有することに特徴がある。
従来において、粉末の流動性や分散性に優れた黒酢粉状物を得るためには、焙煎を行っていない米粉では、充分な流動性を得るために、黒酢固形分に対して多量の米粉(黒酢固形分100重量部に対して、150重量部以上)を必要としていたが、焙煎した米粉を使用することにより、黒酢固形分100重量部当たり30重量部以上100重量部以下で十分な流動性を得ることができるのに加え、黒酢本来の風味を保ちつつ、酢独特の刺激臭を和らげ、吸湿性が低く、塊状になり難く、安定性に優れた黒酢粉状物となる。
焙煎という簡単な処理によりこのような効果が得られることについての詳細は現段階では完全には明らかではないが、加熱により水分が蒸散とともに米粉中の澱粉がアルファ化する結果、水分が蒸散した通り道が細孔となったり、表面が改質されるなどの変化が、上記効果に寄与している可能性がある。
以下、各成分について詳細に説明する。
【0013】
本発明において、「黒酢」とは、2003年JAS「食酢品質表示基準」により規定された、1リットルあたり180g以上の原料を使用し、熟成によって自然に褐色したもの(着色度0.3以上)であることという基準を満たす製品であればよい。
すなわち、従来の伝統的な醸造法「壺づくり」でつくられる黒酢だけでなく、連続法と呼ばれる発酵方法によって、比較的短時間に(24〜48時間程度)に造られる黒酢も含まれる。
なお、連続法で造られた黒酢は一般にアミノ酸の含有量などが低いことが多いため、濃縮したものを使用することが好ましい。
【0014】
黒酢の原料としては、米(玄米、白米等)及び水を基本とするが、小麦、大麦、玄麦、ヒエ、アワ、キビ、大豆、酵母、こうじ、たね酢等を添加することもある。
本発明は、これら黒酢の製法等に限定されるものではなく一般的に黒酢として市販されているものを用いることができる。
【0015】
本発明で使用する米粉の原料としては、粘り気の少ないうるち米と粘り気の多いもち米のどちらも使用することができるが、通常、うるち米である。また、完全に精米されたものだけでなく、玄米、米胚芽等を原料としてもよい。米粉の粒度は、特に限定はないが、黒酢粉状物の流動性を保つという観点から、通常、80メッシュ以下である。米粉の粒度が、80メッシュを超えると吸湿が激しくなり原料が固まって塊になる傾向にある。
【0016】
本発明の黒酢粉状物において、原料の一つである米粉には焙煎が行われる。ここで、「焙煎」とは対象物を水分を加えず乾煎りすることである。具体的には、所定の容器に所定量の米粉を入れ、外部から水分は加えず、容器の外から通常、80〜140℃、好適には90〜120℃で加熱することで、焙煎を行うことができる。
焙煎することにより、米粉内の澱粉をアルファ化されると共に、米粉に含まれる余分な水分を蒸散させ、消化しやすい性質に変えたり、香ばしい風味を付けることができる。
なお、「焙煎」は、米粉を加熱する処理方法としての「膨化」、すなわち、加圧力(通常10気圧)下に加熱しその圧力を一気に解放することにより水分を一瞬の内に蒸散させる方法とは、加熱する点で似てはいるが具体的な処理法は異なる。すなわち、「焙煎」は、「膨化」と比較すると、特別な加圧装置も要らずより簡便な方法である。
【0017】
本発明の黒酢粉状物において、焙煎した米粉の添加量は、黒酢固形分100重量部当たり30重量部以上100重量部以下であり、好適には30重量部以上80重量部であり、より好適には、40重量部以上60重量部以下である。なお、黒酢固形分とは、黒酢が完全に乾燥した場合の無水状態の黒酢乾燥物を意味する。
焙煎した米粉の添加量が、黒酢固形分100重量部当たり30重量部未満であると、焙煎した米粉を添加した効果が十分に認められず、黒酢粉状物は酢の刺激臭が残存し、吸湿性を十分に抑制できず、ペースト状になる。一方で、黒酢固形分100重量部を超えても、流動性向上に変化はなく、逆に黒酢の有効成分が希釈されるため好ましくない。
【0018】
本発明の黒酢粉状物は、必要に応じて他の添加剤を含有していてもよい。他の添加剤の添加量は、本発明の効果を損なわない範囲において任意である。
他の添加剤としては、保存料、着色料、賦形剤、吸湿剤、栄養剤等が挙げられるがこれらに限定されない。
安全性の観点からは、特に天然物由来の成分が好ましく、例えば、タピオカ澱粉、馬鈴薯澱粉、甘藷澱粉等の澱粉類、片栗粉、葛粉、蕨粉、きな粉、大豆粉、小豆粉、黍粉、粟粉、稗粉、そば粉、粉末やまのいも、小麦粉、メリケン粉、小麦胚芽、ふすま、コーンスターチ、モチトウモロコシ、分岐デキストリン、マルトース、デキストリン、α−、βまたはγ−サイクロデキストリン、結晶セルロース、水溶性食物繊維、ビール酵母、パン酵母、コエンザイムQ10、コラーゲン、コンドロイチン硫酸、乳糖、キシリトール等が挙げられる。また、精米処理の際に生ずる米糠なども使用可能である。
また、このような添加剤や前記米の種類を適当に選択することにより、でき上がる黒酢粉状物を所望の風味や香り,味などを適宜調整することができる。
【0019】
本発明の黒酢粉状物は、黒酢に焙煎した米粉末を、黒酢固形分100重量部当たり30重量部以上100重量部以下(好適には30重量部以上80重量部、より好適には40重量部以上60重量部以下)となるように添加した後、乾燥処理を行うことで得ることができる。上述した通り、「黒酢固形分」とは黒酢が完全に乾燥した場合の無水状態の黒酢乾燥物を意味する。
なお、本発明の製造方法において、液状の黒酢を完全に乾燥させて、基準となる無水状態の黒酢乾燥物の重量を測定し、得られた無水状態の黒酢乾燥物の重量から逆算して、製造に供する液状の黒酢の量を決定する。
【0020】
米粉の焙煎は、具体的には、所定の容器に所定量の米粉を入れ、外部から水分は加えず、容器の外から通常、80〜140℃、好適には90〜120℃で加熱することで行うことができる。
この焙煎によって、香ばしさが付加されると共に、雑菌の繁殖が抑制される。一方で、焙煎時間が長すぎると、有効成分が熱劣化するため、通常、1〜3時間程度で行われる。
【0021】
焙煎した米粉の黒酢への添加の方法としては、液体の黒酢に直接焙煎した米粉を入れることもできるが、黒酢を濃縮させて黒酢濃縮物とした後に添加するのが好ましく、特に蒸発残分が10重量%以上となるまで濃縮させた後添加することが好ましい。
具体的には、(1)黒酢の濃縮前の醸造酢液に添加し均一に分散させる、(2)黒酢の濃縮の途中で添加し均一に分散させる、(3)黒酢の濃縮終了時の醸造酢スラリーに添加しよく混練する、(4)黒酢の濃縮の途中で少しずつ分割添加し均一に分散させる、など方法を取ることができる。
【0022】
黒酢の濃縮は、加熱濃縮、減圧濃縮のいずれでもよいが、黒酢の有効成分の熱劣化を避ける観点から、減圧濃縮が好ましい。なお、減圧濃縮の場合には、細菌が死滅しないため、減圧濃縮後に得られるスラリー状の黒酢濃縮物を加熱して滅菌処理を行うことが好ましい。
【0023】
次いで、得られたスラリー状の黒酢濃縮物を乾燥することにより所望の黒酢粉状物を得ることができる。
黒酢濃縮物の乾燥方法は、通常行われ得る乾燥方法、例えば常圧、減圧乾燥、加熱乾燥のいずれでもよく、何れの方法でも目的とする黒酢粉状物を得ることができる。
一方で、従来の米粉を含有する黒酢粉状物では、加熱乾燥を行うと、含有される米粉が変質し、品質が低下するという問題があった。これに対し、本発明の黒酢粉状物に含有される米粉は、焙煎処理によって事前に加熱されているため、加熱乾燥を行っても米粉がさらに変質することがない。
加熱乾燥の中でも、製品の着色、香気成分の生成、抗酸化性成分の生成等に関わるメイラード反応を短時間で行えると共に、生産性も高い、熱風乾燥が好適である。
熱風乾燥の条件は、目的とする黒酢粉状物が得られる条件であればよく、乾燥に供される黒酢濃縮物の量にもよるが、通常、温度70〜90℃、乾燥時間は24時間程度である。
【0024】
なお、得られた黒酢粉状物は、必要に応じて、粉砕処理をおこなってもよい。充分な流動性を確保するという点では、1mm以下程度まで粉砕することが好ましい。
【0025】
本発明により得られる黒酢粉状物は、そのまま粉末状として用いることもできるし、顆粒状、ソフトカプセル状、ハードカプセル状、グミ状、ガム状、キャンディー状、丸剤、錠剤状、棒状、板状、液状、クリーム状、軟膏状、シート状等の剤型・形態をとることができる。
【0026】
以上に述べた本発明の黒酢粉状物は、特に酢独特の刺激臭が少なく、しかも、適度に焙煎されていて快い芳香を有しており、極めて嗜好性に富んでおり、飲食適性に優れている。
【0027】
本発明の黒酢粉状物は、食品として使用することができる。なお、本発明において、「食品」とは人間が口から接種するものであればよく、飲食品のみならず、健康食品、調味料等も含まれる。
本発明の黒酢粉状物は、食品として、そのまま飲食品、健康食品、調味料としても利用でき、さらに各種食品に含有させて使用することができる。黒酢粉状物の食品に対する配合量は特に規定されるものではなく、食品の種類、品質、期待される作用の程度によって若干異なるが、通常、食品全量中、黒酢固形分に換算して0.01質量%以上、より健康機能効果を発揮させるには1.0質量%以上が好ましい。
【0028】
食品としては、口腔用組成物(ガム、キャンデー等)やかまぼこ、ちくわ等の加工水産ねり製品、ソーセージ、ハム等の畜産製品、洋菓子類、和菓子類、生めん、中華めん、ゆでめん、ソバ等のめん類、ソース、味噌、醤油、タレ、砂糖、ハチミツ、粉末あめ、水あめ等の調味料、カレー粉、からし粉、コショウ粉等の香辛料、マヨネーズ、ジャム、マーマレード、チョコレート、漬物、そう菜、ふりかけ、又は各種野菜・果実の缶詰・瓶詰等加工野菜・果実類、チーズ、バター、ヨーグルト等乳製品、みそ汁、スープ、果実ジュース、野菜ジュース、乳清飲料、清涼飲料、酒類等の飲料、その他、カプセル、錠剤形及びシロップ状のサプリメントなど健康食品が挙げられるが、これに限定されず、一般的な飲食品類、健康食品、調味料等への使用が可能である。また、保健機能食品、医薬部外品、医薬品等への使用も可能である。
【0029】
なお、本発明において得られる黒酢粉状物、更にこれを含有してなる食品は、黒酢本来の効果及び風味を損なわない範囲内で、食品類に使用される任意の成分、機能性食品成分や食品添加剤を含有していてもよい。
【実施例】
【0030】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を変更しない限り以下の実施例に限定されるものではない。
【0031】
以下の原料を使用した。
黒酢:仙台味噌醤油株式会社製(3〜4ヶ月熟成)
米粉:うるち米、仙台味噌醤油株式会社にて製粉
【0032】
(実施例1)
黒酢100kgを蒸発残分が10%となるまで減圧濃縮し、95℃にて3時間滅菌処理を行った。この黒酢濃縮物13.1kg(黒酢固形物1.31kg相当)に対して95℃で2時間焙煎した米粉0.39kg(黒酢固形分100重量部に対して30重量部に相当)を添加し、次いで熱風乾燥処理(棚乾燥、80℃、24時間)を起こった。
次いで、得られた固形物を、粉砕機にて1mm以下の微粉末に粉砕し、実施例1の黒酢粉状物約1.7kgを得た。評価結果を表1に示す。得られた黒酢粉状物は、流動性がよく、酸独特の刺激臭はそれほど感じられず、芳香性豊かだった。
【0033】
(実施例2)
95℃で2時間焙煎した米粉の添加量を、0.66kg(黒酢固形分100重量部に対して50重量部に相当)にした以外は実施例1と同様に処理し、実施例2の黒酢粉状物約2.0kgを得た。評価結果を表1に示す。得られた黒酢粉状物は、流動性がよく、酸独特の刺激臭はそれほど感じられず、芳香性豊かだった。
【0034】
(実施例3)
95℃で2時間焙煎した米粉の添加量を、1.05kg(黒酢固形分100重量部に対して80重量部に相当)にした以外は実施例1と同様に処理し、実施例3の黒酢粉状物約2.4kgを得た。評価結果を表1に示す。得られた黒酢粉状物は、流動性がよく、酸独特の刺激臭はそれほど感じられず、芳香性豊かだった。
【0035】
(実施例4)
95℃で2時間焙煎した米粉の添加量を、1.18kg(黒酢固形分100重量部に対して90重量部に相当)にした以外は実施例1と同様に処理し、実施例4の黒酢粉状物約1.6kgを得た。評価結果を表1に示す。得られた黒酢粉状物は、流動性がよく、酸独特の刺激臭はそれほど感じられず、芳香性豊かだった。なお、色は実施例3と比較して若干薄かった。
【0036】
(比較例1)
焙煎していない米粉を0.66kg(黒酢固形分100重量部に対して50重量部に相当)を添加する以外は実施例1と同様に処理した。評価結果を表1に示す。得られた固形物は、酸独特の刺激臭の強く、粘度の高いスラリー状であった。
【0037】
(比較例2)
95℃で2時間焙煎した米粉の添加量を、0.26kg(黒酢固形分100重量部に対して20重量部に相当)にした以外は実施例1と同様に処理し、比較例2の黒酢粉状物約1.6kgを得た。評価結果を表1に示す。比較例2の黒酢粉状物は、吸湿性が高く、スラリー状となり、流動性が悪かった。また、酸独特の刺激臭が確認された。
【0038】
(比較例3)
95℃で2時間焙煎した米粉の添加量を、1.44kg(黒酢固形分100重量部に対して110重量部に相当)にした以外は実施例1と同様に処理し、比較例3の黒酢粉状物約2.9kgを得た。評価結果を表1に示す。比較例3の黒酢粉状物は、芳香性豊かで、流動性が高かったが、吸湿性が高く、スラリー状となった。
【0039】
(比較例4)
95℃で2時間焙煎した米粉末2.62kg(黒酢固形分100重量部に対して200重量部に相当)を添加する以外は実施例1と同様に処理した。酸臭のある粉砕困難な塊、約2.6kgを得た。評価結果を表1に示す。
【0040】

【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明によれば、有用黒酢成分が過剰に希釈されることなく黒酢本来の風味を保ち、吸湿性が低く、塊状になり難く、安定性に優れた黒酢粉状物を提供される。該黒酢粉状物は食品一般への分散性に優れ、広く各種飲食品に配合して利用することが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
黒酢乾燥物及び焙煎した米粉末を含有し、前記焙煎した米粉末の含有量が、黒酢固形分100重量部当たり30重量部以上100重量部以下であることを特徴とする黒酢粉状物。
【請求項2】
請求項1に記載の黒酢粉状物を含有してなることを特徴とする食品。
【請求項3】
黒酢に焙煎した米粉末を、黒酢固形分100重量部当たり30重量部以上100重量部以下となるように添加した後、乾燥処理を行うことを特徴とする黒酢粉状物の製造方法。
【請求項4】
前記黒酢が、黒酢濃縮物である請求項3記載の黒酢粉状物の製造方法。
【請求項5】
前記乾燥処理が、熱風乾燥である請求項3または4記載の黒酢粉状物の製造方法。

【公開番号】特開2012−135229(P2012−135229A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−288211(P2010−288211)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(503172770)株式会社えがお (1)
【Fターム(参考)】