説明

鼻孔挿入具

【課題】皮膚に貼り付けることなく装着でき、しかも、匂いの強さ又は効能の強さを調節可能な鼻孔挿入具を提供する。
【解決手段】鼻孔挿入具Aは、鼻孔への挿入方向両端が開口した筒状の挿入具本体1の内部に一対のフィルター部材2が離間して設けられ、フィルター部材2の間に芳香部材3又は薬剤が配置され通気路16内において3層構造となっている。また、挿入具本体1は、弾性を有する非吸水性部材により形成されており、例えば、シリコンやエラストマー等が好適に用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鼻孔内に挿入して使用する鼻孔挿入具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、精神安定効果や集中力を向上させる効果、ぼけの予防効果などが、匂いによる効果として期待できることが知られている。そしてこれらの効果を得るべく、匂いを利用したものとして、例えば特許文献1に示されるものが知られている。
【0003】
この特許文献1に示されるものは、絆創膏に芳香機能を付与したものであり、身体の一部に貼着することで匂いを携行することができる。この芳香付絆創膏には芳香液が含浸させてあり、この含浸させた芳香液が揮発することで匂いが放出するようになっている。
【0004】
このような芳香液が含浸した絆創膏は、鼻の下方に貼り着けられて、匂いを直接的に鼻孔内に取り込もうとするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−206867号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、このような絆創膏は、鼻の下方に貼り付けられて使用されるため、長期間の使用により貼着部分の皮膚に悪影響を与えたり、また、取り外し時に粘着力により皮膚を傷めたりするおそれがある。
【0007】
さらに、芳香液が含浸した絆創膏を鼻の下方に貼り付けると、揮発した気体を直接吸込むことになるため、匂いが強過ぎてしまう場合がある。このため、含浸させる芳香液の濃度を所定の割合にあらかじめ希釈しておく必要があるが、一旦、原液のまま芳香液を含浸させてしまうと、その後に匂いの強さを調整するのは困難であった。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、皮膚に貼り付けることなく装着でき、しかも、効能の強さを調節可能な鼻孔挿入具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明の鼻孔挿入具は以下の構成とする。
【0010】
すなわち、本発明の鼻孔挿入具は、鼻孔への挿入方向両端が開口した筒状の挿入具本体1の内部にフィルター部材2が離間して設けられ、フィルター部材2の間に芳香部材3又は薬剤が配置されて成る。
【0011】
このような構成の鼻孔挿入具Aを鼻孔内に挿入すると、一端の開口端が鼻孔内に位置すると共に、他端の開口端が鼻孔外方に臨む。この状態で鼻孔内に空気を取り込むと、芳香部材3又は薬剤とフィルター部材2とを介して、空気が取り込まれる。このとき、芳香が付与された空気又は薬剤が乗った空気はフィルター部材2を通過して鼻孔内に取り込まれるが、その強さはフィルター部材2により弱められる。ここで本発明の鼻孔挿入具Aは、一端の開口端が鼻孔内に位置しているので、該開口端から出た空気が直接的に鼻孔内の粘膜に届く。つまり、鼻孔挿入具Aを介して鼻孔内に取り込まれることで芳香が付与され又は薬剤が乗った空気を、フィルター部材2により調整された状態のまま、嗅覚に届かせることができるようになる。
【0012】
しかも、フィルター部材2が芳香部材3の両側にあり、多層とされているため、花粉や細菌が鼻孔内に入ることを有効に防止することも可能となる。
【0013】
また、本発明の前記挿入具本体1の鼻孔外方側の開口端面は、鼻孔に挿入した場合に鼻孔周縁と略面一状態となるように傾斜して成るのが好ましい。
【0014】
鼻の下面は鼻孔挿入方向に直角な面に対して傾斜しているため、挿入具本体1が単に筒状であるだけであれば、その下端の一部が露出してしまうが、本発明の前記挿入具本体1の鼻孔外方側の開口端面11は、鼻孔に挿入した場合に鼻孔周縁と略面一状態となるように傾斜しているため、使用時に目立たないものとすることができる。
【0015】
また、本発明の前記挿入具本体1の鼻孔外方側の開口端面11には、鼻孔に挿入した場合に鼻孔の前方側の周縁に沿った形状の凹縁15が形成されているのが好ましい。
【0016】
このように構成したことで、より一層、使用時に目立たないものとすることができる。
【発明の効果】
【0017】
本願発明によれば、皮膚に貼り付けることなく装着でき、しかも、匂いの強さや効能の強さを調節可能な鼻孔挿入具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態の正面図である。
【図2】本実施形態の挿入具本体の斜視図であり(a)は斜め上方からの図(b)は斜め下方からの図である。
【図3】本実施形態の側断面図であり(a)は全体の側断面図(b)は芳香部材の一部破断図である。
【図4】本実施形態の鼻孔挿入具の使用状態を説明する図であり(a)は装着時の顔の正面図(b)は鼻周辺の拡大図である。
【図5】図4(b)の断面詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について添付図面に基づいて説明する。
【0020】
本実施形態の鼻孔挿入具Aは、図3に示されるように、長手方向の両端に通気開口13を有し且つ両通気開口13,13を連通した通気路16を内部に有した筒状の挿入具本体1と、通気路16内に通気方向に離間して設けられた一対のフィルター部材2と、フィルター部材2間に保持された芳香部材3とを備えている。
【0021】
挿入具本体1は、弾性を有する非吸水性部材により形成されており、例えば、シリコンやエラストマー等が好適に用いられる。挿入具本体1は、図2に示されるように、円錐台形状となっており、小径側の端面12aが蓋となる有蓋筒形状となっている。小径側の端面12aには、複数の小孔13aが穿設されており、この小孔13aが通気開口13とされている。つまり、挿入具本体1は、両端に通気開口13を有していると共に、この両通気開口13,13は内部の通気路16により連通している。この挿入具本体1が鼻孔内に挿入された状態では、小径側の端部が鼻孔奥側に臨み、大径側の端部が鼻孔外方側に臨む。
【0022】
挿入具本体1の大径側の端面11a(すなわち鼻孔外方側に臨む開口端面11)は、図1や図3に示されるように、傾斜端面14となっている。この傾斜端面14は、鼻孔挿入具Aを鼻孔内に挿入した場合に、鼻下面の鼻孔周縁と略面一状態となるように形成されている。また、図2に示されるように、挿入具本体1の大径側の開口端部の内周面には、端面からやや上方に位置する部位に、周方向の一部分を切り欠いた係止突部17が突設されている。この係止突部17によりフィルター部材2が抜け止めされる。またこの切り欠いた部分は、後述の固定部材4が挿通されるようになっている。さらに、この切り欠いた部分に対応する側方には、固定部材4の嵌入突起44が嵌入する固定孔19が穿設されている。
【0023】
フィルター部材2は、複数の不織布を重ね合わせて構成されており、通気路16内において通気方向への空気の移動を許容する。フィルター部材2は、平面視略円形とされており、通気路16を閉塞するように設置される。本実施形態のフィルター部材2は、1対設けられており、通気方向に離間して配設されている。
【0024】
芳香部材3は、図3(b)に示されるように、ハーブや植物などの芳香を放つ固形状(詳しくは粒状)の芳香物31を、通気性を有する布により包んで成る。この芳香部材3は、例えば、2枚の不織布間に芳香物31を位置させ、芳香物31の周囲の不織布の重合部分を熱溶着することで形成されている。なお、芳香部材3は、不織布により袋状にしなくてもよく、固形状の芳香物31をそのまま用いてもよい。
【0025】
本実施形態の鼻孔挿入具Aは、図3(a)に示されるように、一対のフィルター部材2,2の間に芳香部材3が位置するように配置して構成されており、通気方向に沿って順に、フィルター部材2・芳香部材3・フィルター部材2と配され、通気路16内において3層構造となっている。
【0026】
また、挿入具本体1の大径側の開口端面11aには、図1及び図2に示されるように、その一部に、切欠部18が設けられており、その切欠部18の切断面が凹縁15とされている。この凹縁15は、図4に示されるように、鼻孔挿入具Aを鼻孔内に挿入した場合に、鼻孔の前方側にある窪みBの周縁に沿うような形状になっている。
【0027】
本実施形態の鼻孔挿入具Aは左右の鼻孔にそれぞれ挿入される。各鼻孔挿入具Aは、図4(b)に示されるように、固定部材4により鼻孔周縁に固定される。
【0028】
固定部材4は、樹脂により形成されており、図4(b)に示されるように、全体として略U字形状となっている。固定部材4は対向する一対の挟持片41を備えており、この挟持片41は、先端側に位置する嵌入突起44と、鼻孔内側面を直接挟圧する押圧突起43とを有している。各挟持片41は、互いに離れる方向に引っ張られると連結片42が撓み、これらは弾性的に離間する。このとき連結片42には復元力が働くため、その復元力を利用することで、固定部材4は、図5に示されるように、一方の挟持片41の嵌入突起44を挿入具本体1の固定孔19に嵌入し且つ押圧突起43を鼻孔内側面に押圧させ、他方の挟持片41でも同様にさせる。つまり、両挟持片41,41によって、両鼻孔間の鼻孔内側面を挟持するようにして、鼻孔内に挿入された鼻孔挿入具Aを鼻孔周縁に固定する。また、固定部材4は先端がフィルター当接部45となっており、このフィルター当接部45においてもフィルターの抜け止めを図ることができる。
【0029】
なお、本実施形態の固定部材4は、顔側方側の鼻孔周縁に、それぞれの鼻孔挿入具Aに対応するように取り付けられていてもよいし、上記のように顔中央側の鼻孔周縁に取り付けられて2つの鼻孔挿入具Aを1つの固定部材4によって同時に取り付けられてもよく、特に限定されない。また固定部材4は、肌の色と同じ色にすれば、目立たないようにできて好ましい。
【0030】
このような構成の鼻孔挿入具Aを鼻孔内に挿入すると、図4に示されるように、一端の開口端12が鼻孔内に位置すると共に、他端の開口端11が鼻孔外方に臨む。この状態で鼻孔内に空気を取り込むと、芳香部材3とフィルター部材2とを介して、空気が取り込まれる。このとき、芳香が付与された空気は、フィルター部材2を通過して鼻孔内に取り込まれるが、匂いの強さがフィルター部材2を通過させることにより弱められる。ここで本実施形態の鼻孔挿入具Aは一端の開口端12が鼻孔内に位置しているので、該開口端12から出た匂いが直接的に鼻孔内の粘膜に届く。つまり、鼻孔挿入具Aを介して鼻孔内に取り込まれた空気は、フィルター部材2により調整された匂いの強さの状態で鼻の粘膜に届き、心地よい匂いを嗅覚に訴える。
【0031】
そしてこの匂いによる刺激は、嗅覚刺激として脳に伝達され、視床下部等に影響を与え、身体諸器官に反応を引き起こす。これにより、匂いの種類によって、精神安定効果、集中力を向上させる効果、ぼけの予防効果などが発揮され得る。
【0032】
しかも、本実施形態のフィルター部材2は、複数の不織布を重ね合わせることで、フィルターを構成しており、不織布の枚数を変えるだけでフィルター厚さを調整可能である。このため芳香部材3から発する匂いが、強過ぎると感じられる場合にはフィルター厚さを厚くしたり、弱いと感じられる場合にはフィルター厚さを薄くしたりすることが容易にできる。
【0033】
また、フィルター部材2が全体として2層とされているため、花粉や細菌が鼻孔内に入ることを有効に防止することも可能となる。その上、フィルター部材2は、芳香部材3を挟むように配置されているので、仮に芳香部材3が粉状のものであって袋内に収容されていなくても、芳香部材3を挿入具本体1内に保持することが可能となる。
【0034】
ところで、芳香源に芳香液を用いた場合には、液を揮発させて匂いを発生させることになる。すなわち、スポンジ等に含浸した液体は揮発により早期に乾いてしまうこともあるため、リラックス効果を得る場合等のように長時間に亘って匂いを受け続けようとした場合には、匂いの発生が持続しないこともある。しかし、本実施形態の芳香部材3は、固形状の芳香物31を利用しているため、匂いが長期間持続する。
【0035】
さらに、本実施形態の鼻孔挿入具Aは、鼻孔内壁に接する部分が非吸水性を有する挿入具本体1であるため、長時間使用しても鼻水を吸水してしまうこともなく、形が崩れてしまうこともない。
【0036】
ここで、図4に示されるように、鼻の下面は鼻孔挿入方向に直角な面に対して傾斜している(符号C参照)。そのため、挿入具本体1が単に円筒形状(両端面が略平行なもの)であれば、その下端の一部が鼻孔から露出してしまうが、本実施形態の挿入具本体1の鼻孔外方側の開口端面11は、鼻孔に挿入した場合に鼻孔周縁と略面一状態となるように傾斜しているため、使用時に目立たないものとすることができる。
【0037】
さらに言えば、一般的に鼻孔は、図4(a)に示されるように、前方側の周縁に窪みBがある。このため、その窪みBから鼻孔挿入具Aの一部が露出してしまい使用時の見栄えが悪い。そこで本実施形態の挿入具本体1の鼻孔外方側の開口端面11には、鼻孔に挿入した場合に鼻孔の前方側の周縁に沿うような凹縁15が形成されているため、その凹縁15と鼻孔の前方の周縁とが、正面から見て略一致する。このため、使用時において、より一層目立たないものとすることができる。
【0038】
また、本実施形態の固定部材4は、嵌入突起44が固定孔19に嵌入することで挿入具本体1と連結しているため、固定部材4を鼻から離れる方向に引っ張るだけで、2つの挿入具本体1を同時に引き抜くことができる。
【0039】
なお、本実施形態の芳香部材3は、ハーブや植物などの芳香を放つ固形状の芳香物31により構成されていたが、例えば、エッセンシャルオイル(essential oil)をスポンジ等に含浸させて芳香部材3を構成し、アロマテラピーの効果を得るようにしてもよい。また、芳香部材3にニコチンを含有させ、禁煙補助薬として使用することも可能である。
【0040】
また、本実施形態の芳香部材3を薬剤に置き換えることもできる。本実施形態の芳香部材3を薬剤に置き換えると、薬剤の香気の強さを所望の強さに調整しながら、摂取し続けることができる。つまり、薬剤による効果をフィルター部材によりコントロールすることが可能である。薬剤は、例えば、鼻の粘膜の炎症を抑えるための薬剤や、鼻づまりを解消するための薬剤、蓄膿症の症状を抑制する薬剤、風邪の症状を抑制する薬剤等を用いることが可能である。薬剤として、綿材や不織布やスポンジ等の保持部材に薬効を有する液体を含浸したものを用いてもよい。
【0041】
また、本実施形態の鼻孔挿入具Aは、鼻孔に挿入して使用するため、匂いが周囲に漏れることもないし、装着しながら飲食することも可能である。
【0042】
さらに、本実施形態の開口端面11に設けられた凹縁15は、切欠部18の切断面により構成されていたが、本発明の凹縁15は、例えば、鼻孔外方側の端部の外周面に径内方向に凹む凹没部を形成し、挿入具本体1の外周面と凹没部との境界を凹縁15としたものであってもよい。
【0043】
また、本実施形態の鼻孔内に位置する側の通気開口13は複数の小孔13aにより構成されていたが、本発明は挿入具本体1の両端が開口していればよく、本実施形態の構成に限定されない。例えば、鼻孔内側の端面を通気路16と同じ断面積で開口させ、その開口を網状の蓋によって閉塞した構成のものであってもよい。
【0044】
本実施形態の鼻孔挿入具Aは両方の鼻孔に挿入するものであったが、本発明の鼻孔挿入具Aは、一方の鼻孔にのみ挿入して使用されるものであってもよい。また、固定部材4を用いず、挿入具本体1の弾性と鼻孔周縁の弾性により、鼻孔内に保持されるものであってもよい。
【0045】
また、本実施形態の鼻孔挿入具Aは、一対の挿入具本体1が相互に固定部材4により連結されるように、それぞれが別体の構成となっていたが、本発明の鼻孔挿入具は、一対の挿入具本体1と固定部材4とが一体となったものであってもよいものとする。
【符号の説明】
【0046】
1 挿入具本体
13 通気開口
13a 小孔
14 傾斜端面
15 凹縁
16 通気路
17 係止突部
18 切欠部
2 フィルター部材
3 芳香部材
31 芳香物
4 固定部材
A 鼻孔挿入具
B 鼻孔の窪み
C 鼻下面の傾斜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鼻孔への挿入方向両端が開口した筒状の挿入具本体の内部にフィルター部材が離間して設けられ、フィルター部材の間に芳香部材又は薬剤が配置されたことを特徴とする鼻孔挿入具。
【請求項2】
前記挿入具本体の鼻孔外方側の開口端面は、鼻孔に挿入した場合に鼻孔周縁と略面一状態となるように傾斜して成る請求項1記載の鼻孔挿入具。
【請求項3】
前記挿入具本体の鼻孔外方側の開口端面には、鼻孔に挿入した場合に鼻孔の前方側の周縁に沿った形状の凹縁が形成されている請求項1又は請求項2のいずれかに記載の鼻孔挿入具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−130843(P2011−130843A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−291253(P2009−291253)
【出願日】平成21年12月22日(2009.12.22)
【出願人】(502099131)
【Fターム(参考)】