説明

(メタ)アクリル酸エステルの製造方法及び樹脂組成物

【課題】濾過速度が速く、かつ低イオン性に優れる(メタ)アクリル酸エステルの製造方法を提供すること。
【解決手段】アルコールと低級(メタ)アクリル酸エステルとを、チタンテトラアルコキシドを触媒としてエステル交換反応させ、当該エステル交換反応後の反応液に脱水能力のある無機物及び高分子凝集剤を添加した後に水を加える工程を含む(メタ)アクリル酸エステルの製造方法である。すなわち、交換反応後の反応液に脱水能力のある無機物と高分子凝集剤を添加した後に水を加え、生成する触媒の加水分解物を凝集させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(メタ)アクリル酸エステルの製造方法及び樹脂組成物に関する。さらに詳しくは、例えば、活性エネルギー線の照射によって硬化するレジスト、塗料、被覆材料、粘着剤、接着剤、光学材料などの希釈剤、または樹脂組成物として好適に使用しうる(メタ)アクリル酸エステルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(メタ)アクリル酸エステルの製造法については種々の方法が提案されている。例えば、(1)酸触媒の存在下にメタクリル酸と相当するアルコールとを反応させ生成する水を系外に除去する方法(脱水反応)、(2)低級メタクリル酸メチルと相当するアルコールとを反応させ生成する低級アルコールを除去する方法(エステル交換反応)などが一般的である。
【0003】
(1)の脱水反応による方法は、反応後に触媒の硫酸やパラトルエンスルホン酸等の強酸及び過剰のメタクリル酸を除去するため、中和・水洗による多量の廃水が生じ、また工程も長くなるという欠点がある。
【0004】
(2)のエステル交換反応による方法は、(1)の方法に比べると廃水は少ないが、通常触媒に使用されるチタンアルコキシドを除去するため加水分解により不溶化濾過することが一般的であり、触媒の加水分解物の濾過性が悪く工程が長い欠点があった。
【0005】
従来、上記(2)のチタンアルコキシドを用いたエステル交換法のプロセスの改良が検討されており、例えば、水でチタンアルコキシドを加水分解した後、活性炭を加えて凝集させて濾別する方法が提案されている(特許文献1参照)。
【0006】
しかし、この方法でも水分を含んだ水酸化チタンが生成するため、濾過性は十分改良されていない。
【0007】
また非水溶性アクリレートを製造する際は水分、使用溶剤の濃縮工程で、加水分解により生成する水酸化チタンに含まれる水が脱水され、水酸化チタンが細かく分散し、ろ過性を著しく悪化させるという問題点があった。
【0008】
さらに、チタン以外の金属、例えばアルカリ金属や錫、鉛等の塩を触媒に使用する方法が数多く提案されているが(特許文献2参照)、アルカリ金属塩を触媒に用いた場合は副生成物の生成が避けられないこと、また他の金属は毒性やコスト、蒸留工程が必須になる等の問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特公昭57-24775号公報
【特許文献2】特開2006−28080号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、前記従来技術に鑑みてなされたものであり、以下の目的を達成することを課題とする。すなわち、本発明の目的は、アルコールと低級(メタ)アクリル酸エステルとを、チタンテトラアルコキシドを触媒としてエステル交換反応により、該アルコールのメタクリル酸エステルを製造するに際し、反応完了液に触媒として用いたチタンテトラアルコキシドを加水分解させ不溶化した触媒を迅速に濾別により除去でき、低イオン性に優れる(メタ)アクリル酸エステルの製造方法を提供することにある。
【0011】
なお、本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」又は「メタアクリル」を意味する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するための手段は以下の通りである。
【0013】
(1)アルコールと低級(メタ)アクリル酸エステルとを、チタンテトラアルコキシドを触媒としてエステル交換反応させ、当該エステル交換反応後の反応液に脱水能力のある無機物及び高分子凝集剤を添加した後に水を加える工程を含むことを特徴とする(メタ)アクリル酸エステルの製造方法。
【0014】
(2)脱水能力のある無機物が硫酸マグネシウムである前記(1)に記載の(メタ)アクリル酸エステルの製造方法。
【0015】
(3)高分子凝集剤がカチオン性である前記(1)または(2)に記載の(メタ)アクリル酸エステルの製造方法。
【0016】
(4)エステル交換反応によって製造する(メタ)アクリル酸エステルの全イオン成分が10ppm以下である前記(1)〜(3)のいずれかに記載の(メタ)アクリル酸エステルの製造方法。
【0017】
(5)前記(1)〜(4)のいずれかに記載の製造方法によって得られた(メタ)アクリル酸エステルを含む樹脂組成物。
【発明の効果】
【0018】
本発明の製造方法によれば、脱水能力のある無機物及び高分子凝集剤を添加することで不溶化した触媒を凝集させ、(メタ)アクリル酸エステルをフィルターによる濾過によって迅速に濾別することができるので、生産性を高めることができるのみならず、より低イオン性に優れる(メタ)アクリル酸エステルを提供することができる。
【0019】
また、本発明の製造方法により得られる高品質な(メタ)アクリル酸エステルを含む樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<(メタ)アクリル酸エステルの製造方法>
本発明の(メタ)アクリル酸エステルの製造方法は、アルコールと低級(メタ)アクリル酸エステルとを、チタンテトラアルコキシドを触媒としてエステル交換反応させ、当該エステル交換反応後の反応液に脱水能力のある無機物及び高分子凝集剤を添加した後に水を加える工程を含むことを特徴としている。
【0021】
以下に、本発明の(メタ)アクリル酸エステルの製造方法について詳述する。
【0022】
本発明の製造方法において、チタンテトラアルコキシドを触媒として用いたエステル交換反応によるエステル化の方法としては、一般的に行われているアルコールと、低級(メタ)アクリル酸エステルとを、チタンテトラアルコキシド、及び必要に応じて重合防止剤の存在下で反応させ、生成する低級アルコールを系外に除去することにより行うことができる。
【0023】
[低級(メタ)アクリル酸エステル]
本発明において(メタ)アクリル酸エステルの原料として用いる低級(メタ)アクリル酸エステルとしては、特に限定されるものでは無いが、具体的にはアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル等が挙げられる。つまり、本願でいう低級(メタ)アクリル酸エステルとは、(メタ)アクリル酸部分以外の部分(アルコール由来の部分)の炭素数が4以下のものをいう。
【0024】
[アルコール]
本発明においてエステルの原料として用いるアルコールとしては、特に限定されるものではないが、具体的にはn−ブタノール、イソブタノール、2−エチルヘキサノール、イソデシルアルコール、ラウリルアルコール、トリデシルアルコール、ステアリルアルコール、シクロヘキサノール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ベンジルアルコール、フェノキシエタノール、ジメチルアミノエタノール、ジエチルアミノエタノール、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル、ポリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ポリプロピレングリコールモノアルキルエーテル、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールとのブロック共重合体ジオール、ポリテトラメチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、デカンジオール、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物、トリメチロールエタンエチレンオキサイド付加物、トリメチロールプロパンエチレンオキサイド付加物、トリシクロ[5.2.1.02.6 ]デセノール、トリシクロ[5.2.1.02.6 ]デカノール、トリシクロ[5.2.1.02.6 ]デセニルオキシエタノール、トリシクロ[5.2.1.02.6 ]デカニルオキシエタノール、トリシクロ[5.2.1.02.6 ]デセニルオキシプロパノール、トリシクロ[5.2.1.02.6 ]デカニルオキシプロパノール、ポリエチレングリコールモノトリシクロ[5.2.1.02.6 ]デセニルエーテル、ポリエチレングリコールモノトリシクロ[5.2.1.02.6 ]デカニルエーテル、ポリプロピレングリコールモノトリシクロ[5.2.1.02.6 ]デセニルエーテル、ポリプロピレングリコールモノトリシクロ[5.2.1.02.6 ]デカニルエーテル等が挙げられる。
【0025】
本発明では、低級(メタ)アクリル酸エステルのエステル部が、アルコールのOH基に対して当量比で2倍以上になるように配合することが好ましく、2倍〜5倍になるように配合することがより好ましい。
【0026】
低級(メタ)アクリル酸エステルが少なすぎると反応速度が低下し、多すぎても反応速度に対する利点はなくかえって経済性に劣る場合がある。
【0027】
[チタンテトラアルコキシド]
触媒として用いるチタンテトラアルコキシドとしては、チタンテトラメトキシド、チタンテトラエトキシド、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラn−プロポキシド、チタンテトラn−ブトキシド、テトラキス(2−エチルヘキシルオキシ)チタン、テトラステアリルオキシチタン等が挙げられるが、取り扱い上の安定性と触媒としての活性との点からは、チタンテトライソプロポキシド及びチタンテトラn−ブトキシドが好ましい。
【0028】
触媒の使用量は、低級(メタ)アクリル酸エステルとアルコールの合計量に対して通常0.01〜5.0重量%の範囲とすることが好ましく、0.1〜3.0重量%がより好ましく、0.5〜1.5重量%がさらに好ましい。
【0029】
0.01重量%未満であると反応の進行が遅くなり、5.0重量%を超えても、特に反応速度に対して利点はなく、不経済である。
【0030】
チタンテトラアルコキシドは、水分や湿気で徐々に失活するため、反応系内の水分は少なく制御することが好ましく、反応中を通して反応液中の水分を500ppm以下に保つことが好ましい。
【0031】
例えば、アルコールと低級(メタ)アクリル酸エステルとを仕込んだ後、混合物をリフラックスさせ、水分を低級(メタ)アクリル酸エステルとの共沸混合物として系外に除去し、内容物の水分が500ppm以下になったところで触媒のチタンテトラアルコキシドを添加して反応させることにより、比較的容易に水分を管理することが可能である。
【0032】
[重合防止剤]
反応に際しては、公知の重合防止剤を添加・併用することが可能である。かかる公知の重合防止剤としては、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、BHT(t−ブチルヒドロキシトルエン)、2,4−ジメチル−6−t−ブチルフェノール等のフェノール類、フェノチアジン、ジブチルジチオカルバミン酸銅等の銅塩、酢酸マンガン等のマンガン塩、ニトロ化合物、ニトロソ化合物、4−ヒドロキシ2,2,6,6−テトラメチルピペリジノオキシル等のN−オキシル化合物等があげられる。これらの重合防止剤の使用量は、(メタ)アクリル酸エステルに対して通常10〜10,000ppm程度である。10ppm未満であると重合防止効果が十分でなく、10,000ppmを超えると得られた(メタ)アクリル酸エステルの反応性が劣ってしまう場合がある。また、必要により分子状酸素を反応液に導入しながら反応させてもよい。
【0033】
分子状酸素としては、例えば空気が好適に使用可能である。分子状酸素の使用量(流量)としては、反応器の形状や攪拌動力などによっても影響を受けるが、アルコール1モルに対して5〜500ml/min(空気として25〜2,500ml/min)の流量で使用することができる。
【0034】
なお、上述の水分管理のため、空気等を吹き込むときは乾燥空気を用いることが好ましい。
【0035】
[溶媒]
また、エステル交換反応に際しては、反応に関与しない不活性なものであれば、適宜溶媒として使用することもできる。例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、シクロヘキサン等の炭化水素類やジオキサン等のエーテル類などを挙げることができる。エステル交換反応は、常圧又は減圧下において60〜130℃で行うのが好ましい。
【0036】
また、エステル交換反応の形態としては、低級(メタ)アクリル酸エステルとアルコールをエステル交換反応により(メタ)アクリル酸エステルを製造する当業者間で一般的に知られている方法を採用することが出来る。
【0037】
この方法では、アルコールの転換率を高めるため、副生する低級アルコールと原料の低級(メタ)アクリル酸エステル又は上述したような溶媒を共沸蒸留することにより、副生する低級アルコールを系外に留去しながら合成を行うのが好ましい。このため、反応装置としては、精留塔の付いた回分式反応槽が使用される。
【0038】
反応の進行は必要により反応器内の反応液の組成分析(ガスクロマトグラフィー、液クロマトグラフィー、滴定分析等)、または留出する低級アルコール量などによって確認することができる。所望の反応率になったところで、加熱を終了し冷却することによって反応を終了することができる。
【0039】
反応終了後、脱水能力のある無機物と高分子凝集剤を添加した後に水を加え、触媒として用いたチタンテトラアルコキシドを加水分解により不溶化させ、迅速に不溶化した触媒を濾別により除去することができる。
【0040】
[脱水能力のある無機物]
本発明で用いる脱水能力のある無機物は、以下に限定されるものではないが、具体的には硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、酸化マグネシウム、塩化バリウム、酸化リン、ハイドロタルサイトなどが挙げられ、中でも、脱水能力が高く、かつ失活触媒の凝集効果が高いことによる濾過性向上の点で硫酸マグネシウムが好ましい。これらは、単独で又は組み合わせて用いることができる。
【0041】
本発明で用いる脱水能力のある無機物の粒子径は1〜100μmが好ましい。1μm未満ではフィルターへの詰まりが起きやすくなり、ろ過速度が悪化する。100μmより大きいと接触面積が低下し、添加した効果が少なくなる。
【0042】
[高分子凝集剤]
本発明で用いる高分子凝集剤は、特に限定されるものではないが、具体的には、液性はアニオン性、カチオン性、ノニオン性、両性、形状では粉末、液体、エマルジョン、種別ではポリアクリルエステル系、アクリルアマイド系など工業的に一般に入手できるものが挙げられる。中でも、脱水能力が高く、かつ失活触媒の凝集効果が高いことによる濾過性向上の点でカチオン性のものが好ましく、具体的にはカチオン性ポリアクリルアミドが好ましい。これらは、単独で又は組み合わせて用いることができる。
【0043】
無機物及び高分子凝集剤の使用量は、それぞれ生成物に対し0.01〜10.0重量%の範囲にすることが好ましく、0.05〜5.0重量%であることがより好ましく、0.1〜1.0重量%であることがさらに好ましい。0.01重量%未満であると、失活触媒の凝集効果が得られず、また、10.0重量%を超えると脱水能力のある無機物及び高分子凝集剤が生成物である(メタ)アクリル酸エステルに残存混入し製品の品質に不都合を生じる。あるいは、過剰の脱水能力のある無機物が原因となる濾過速度の低下が生じる。
【0044】
脱水能力のある無機物及び高分子凝集剤による処理は、(メタ)アクリル酸エステルの反応液に脱水能力のある無機物、高分子凝集剤を加え、攪拌等によってよく混合し、必要により加熱することによって行われる。処理温度は50℃〜100℃の範囲が好ましい。50℃より低いと、その後水を加え加水分解を引き起こす際に触媒が十分に不溶化せず、100℃より高いとエステルの重合等の不都合が生じやすい。
【0045】
また、処理時間としては10分〜2時間の範囲で行われるが、好ましくは30分〜1時間の範囲である。10分より短いと失活触媒の凝集効果が得られず、2時間より長くても特に利点はない。
【0046】
次いで、脱水能力のある無機物及び高分子凝集剤による処理後、水を加える。当該水の添加量は、生成物に対して5〜20重量%が好ましい。5重量%未満であると触媒が十分に不溶化できず、20重量%を超えるとその後の工程が長期化する。また、水を添加後に攪拌するが、攪拌は50〜100℃の下、30〜60分間行うことが好ましい。
【0047】
エステル交換反応後の反応液を上述の脱水能力のある無機物及び高分子凝集剤で処理後、未反応の低級(メタ)アクリル酸エステルを減圧加熱下に除去し、濾過により不溶化した触媒の除去を行うが、いずれを先に行っても構わない。
【0048】
すなわち、反応終了後、上述の脱水能力のある無機物及び高分子凝集剤で処理後、未反応の低級(メタ)アクリル酸エステルを減圧加熱下に除去後、濾過により不溶化した触媒を除去してもよいし、反応終了後、上述の脱水能力のある無機物及び高分子凝集剤で処理後、濾過により不溶化した触媒を除去した後に未反応の低級(メタ)アクリル酸エステルを減圧加熱下に除去してもよいし、反応終了後、未反応の低級(メタ)アクリル酸エステルを減圧加熱下に除去後、上述の脱水能力のある無機物及び高分子凝集剤で処理後、濾過により不溶化した触媒を除去してもよい。
【0049】
濾過の方法としては、減圧吸引濾過、加圧濾過、常圧自然濾過などのいずれの方法でもよい。
【0050】
濾過の際には濾過助剤を使用することができる。濾過助剤としては、ケイソウ土、ハイドロタルサイト、活性炭などが使用され、これらを併用することもできる。使用量は(メタ)アクリル酸エステルに対し、0.05〜5.0重量%の範囲とすることが好ましい。濾過助剤の添加時期は濾過の際の他、濾過の前の濃縮工程で配合することもできる。
【0051】
本発明によるこれらの製造工程により、アルコールと低級(メタ)アクリル酸エステルとを、チタンテトラアルコキシドを触媒としてエステル交換反応により該アルコールの(メタ)アクリル酸エステルを製造するに際し、触媒として用いたチタンテトラアルコキシドを加水分解させ不溶化した触媒を迅速に濾別により除去でき、低イオン性に優れる(メタ)アクリル酸エステルを製造することができる。したがって、本発明の製造方法は、低イオン性に優れる(メタ)アクリル酸エステルを効率よく提供することができるという利点を有する。
【0052】
具体的には、本発明の製造方法は、全イオン成分を10ppm以下の(メタ)アクリル酸エステルを製造することができる。
【0053】
<樹脂組成物>
本発明の樹脂組成物は、既述の本発明の(メタ)アクリル酸エステルの製造方法で得られた(メタ)アクリル酸エステルを含み、該(メタ)アクリル酸エステルが上記ように高品質を有することから、活性エネルギー線の照射によって硬化するレジスト、塗料、被覆材料、粘着剤、接着剤、光学用途等の希釈剤、ポリマ合成材料として好適に使用することができる。
【実施例】
【0054】
次に、本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例のみに限定されるものではない。
【0055】
[実施例1]
攪拌機、温度計、空気導入管及び精留塔(15段)を取り付けた1リットルのフラスコに、2,2-ビス(4-ポリオキシエチレン−オキシフェニル)プロパン235g(0.65モル)、メタクリル酸メチル160g(1.6モル)、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.0675g、を仕込み、乾燥空気を50ml/minの速度で吹き込みながら加熱攪拌し、系内の水分をメタクリル酸メチルと共に留出させた。
【0056】
系内の水分をカール−フィッシャー法で分析し、250ppmとなったところでチタンテトライソプロポキシド1.1g(0.0039モル)を仕込み、エステル交換反応させた。
【0057】
はじめ、反応混合物を加熱還流し、精留塔の塔頂温度はメタクリル酸メチルの沸点である100℃付近であったが、反応の進行と共に、メタノールとメタクリル酸メチルの共沸混合物の沸点に近づいたので、塔頂温度が64〜66℃の範囲になるように還流比を調節してメタノールをメタクリル酸メチルとの共沸物として留去しながら反応を行った。
【0058】
反応開始後、2.5時間経過した頃から塔頂温度が上昇し始め約90℃まで上昇したのでそれに合わせて還流比を徐々に大きくし、最終的には15にして反応を続けた。
【0059】
反応開始後、4時間目の反応液をガスクロ分析したところ、原料の2,2-ビス(4-ポリオキシエチレン−オキシフェニル)プロパンが目的化合物である2,2-ビス(4-ポリオキシエチレン−オキシフェニル)プロパンメタクリレートに対して0.7%(面積%)となったので反応を終了した。
【0060】
反応液をロータリーエバポレーターに移し、残存メタクリル酸メチルが全体の0.5重量%になるまで浴温80℃で減圧下にメタクリル酸メチルを留去した。
【0061】
回収したメタクリル酸メチルは純度99.9%以上で水分含有量が100ppm以下であり、そのまま再使用できる品質のものであった。
【0062】
得られた反応液100gを、攪拌機、温度計、空気導入管、及び精留塔(5段)を取り付けた0.5リットルフラスコに取り、70℃に加温した。加温完了後、凝集剤1(脱水能力のある無機物)としてMN-00(硫酸マグネシウム;下記表1参照)を0.6g、及び凝集剤2(高分子凝集剤)としてP―3801(下記表1参照)を0.4g加え、70℃で10分攪拌し、17%食塩水0.7g及び純水5.5gを加えさらに30分攪拌し、触媒を不溶化した。
【表1】

【0063】

引き続き不溶化触媒を含む反応液をロータリーエバポレーターに移し、残存水分量が全体の1000ppm以下になるまで浴温80℃で減圧下に水分を留去した。
【0064】
次に、ケイソウ土(昭和化学工業社製ラジオライト900;以下も同じ)を厚み約5mm敷き詰めた直径60mm、孔径4ミクロンの濾紙を用いて、減圧吸引濾過を行ない、濾過時間と濾過重量を測定した。濾過に要した時間は158秒、濾過重量は88.1gであり、1秒あたりの濾過量は0.56gであり、得られた濾液のイオン量は6.02ppmであった。なお、イオン量は、以下の示す方法により陰イオンと陽イオンとを測定し、それらを合計することで得た。
【0065】
陰イオン測定方法は、日本ダイオネクス製 ICS-2000を使用し、陰イオン用カラム:IonPac AS18、ガードカラム:IonPac AG18、溶離液:23mM KOH(1.00 ml/min)、注入量:25.0μlで行った。陽イオン測定方法は、日本ダイオネクス製 ICS-1500を使用し、陽イオン用カラム:IonPac CS12A 、ガードカラム:IonPac CG12A 、溶離液:220mM メタンスルホン酸(1.00 ml/min)、注入量:25.0μlで行った。
【0066】
[比較例1]
実施例1と全く同様に得られた反応液100gを、攪拌機、温度計、空気導入管、及び精留塔(5段)を取り付けた0.5リットルフラスコに取り、70℃に加温した。加温完了後、17%食塩水0.7g及び純水5.5gを加えさらに30分攪拌し、触媒を不溶化した。
【0067】
引き続き不溶化触媒を含む反応液をロータリーエバポレーターに移し、残存水分量が全体の1000ppm以下になるまで浴温80℃で減圧下に水分を留去した。
【0068】
次に、ケイソウ土(昭和化学工業社製ラジオライト900;以下も同じ)を厚み約5mm敷き詰めた直径60mm、孔径4ミクロンの濾紙を用いて、減圧吸引濾過を行ない、濾過時間と濾過重量を測定した。濾過に要した時間は330秒、濾過重量は82.1gであり、1秒あたりの濾過量は0.25gであり、得られた濾液のイオン量は17.28ppmであった。
【0069】
[実施例2、比較例2及び3]
実施例1同様の装置、条件で、表2記載の凝集剤に置き換え、濾過重量を測定した。評価結果を表2に示した。
【表2】

【0070】

評価:濾過性: 濾過量0.28(g/秒)以上を良とし、イオン量:7ppm以下を良とする。そして、濾過性、イオン量双方を満たす場合を○とし、どちらか片方を満たす場合を△とし、どちらも満たさない場合を×とした。
【0071】
表2より、凝集剤1及び2を併用した実施例1及び2では、濾過性及びイオン量においてともに満足できる結果が得られたのに対し、凝集剤1及び2のうち両方又はいずれか一方を使用しなかった比較例1〜3は、濾過性及びイオン量の双方を同時に満足できる結果が得られなかったことが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルコールと低級(メタ)アクリル酸エステルとを、チタンテトラアルコキシドを触媒としてエステル交換反応させ、当該エステル交換反応後の反応液に脱水能力のある無機物及び高分子凝集剤を添加した後に水を加える工程を含むことを特徴とする(メタ)アクリル酸エステルの製造方法。
【請求項2】
脱水能力のある無機物が硫酸マグネシウムである請求項1に記載の(メタ)アクリル酸エステルの製造方法。
【請求項3】
高分子凝集剤がカチオン性である請求項1または2に記載の(メタ)アクリル酸エステルの製造方法。
【請求項4】
エステル交換反応によって製造する(メタ)アクリル酸エステルの全イオン成分が10ppm以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載の(メタ)アクリル酸エステルの製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法によって得られた(メタ)アクリル酸エステルを含む樹脂組成物。

【公開番号】特開2011−37762(P2011−37762A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−186458(P2009−186458)
【出願日】平成21年8月11日(2009.8.11)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】