説明

(+)−オピエートの生成のためのプロセスおよび化合物

本発明は、一般に(+)−オピエートの生成に有用なプロセスおよび中間化合物を提供する。本発明一つ以上の化合物から得られる(+)オピエートの非限定的な例には、(+)−ノルオキシモルホン、(+)−ナルトレキソン、(+)−ナロキソン、(+)−N−シクロプロピルメチルノルヒドロコドン、(+)−N−シクロプロイルメチルノルヒドロモルホン、(+)−N−アリルノルヒドロコドン、(+)−N−アリルノルヒドロモルホン、(+)−ノルオキシコドン、(+)−ナルトレキソール、(+)−ナロキソール、および(+)−3−O−メチル−ナルトレキソンが含まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連する出願への相互参照)
本願は、2007年12月17日に出願された米国仮特許出願第61/014,094号からの優先権を主張する。米国仮特許出願第61/014,094号は、その全体が本明細書中に参考として援用される。
(発明の分野)
本発明は、一般に(+)−オピエートの生成に有用なプロセスおよび中間化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
モルヒネおよび他の天然オピエートは、鎮痛剤として何十年も使用されている。しかし、天然のオピエートは有害な副作用を有し、習慣性でありうることが周知である。最近、非天然オピエート、または(+)オピエートエナンチオマーが、その(−)対応物と異なることの多い重要な生理活性を有することが示されている。これらの化合物に考えられる利益を調査するために、(+)オピエート化合物を調製するプロセスへの必要性が従来技術に存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明の一態様は、式(I)を含む化合物を含み、
【化1】

式中、
は、水素、および{−}OCORからなる群より選択され;
は、水素、ヒドロカルビル、および置換ヒドロカルビルからなる群より選択され;
は、水素、{−}OCOR、{−}OCR、およびエーテル含有環の一部を形成する結合より選択されるが、Rがエーテル含有環を形成する結合である場合には、化合物(I)は(+)エナンチオマーであるという条件であり;
は、{−}ORおよび水素からなる群より選択され;
およびRは、ヒドロカルビルおよび置換ヒドロカルビルからなる群より独立して選択され;
は、水素、ヒドロカルビル、および置換ヒドロカルビルからなる群より選択され;
およびRは、水素、ヒドロキシ、ヒドロカルビル、および置換ヒドロカルビルからなる群より独立して選択され、または、RおよびRが一緒にカルボニル基を形成し;
10およびR11は、水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、およびハロゲンからなる群より独立して選択され;
【化2】

は、単結合または二重結合である。
【0004】
本発明の別の態様は、以下の反応スキームによる、化合物(Ib)の調製のためのプロセスを提供する。
【化3】

式中、
Rは、ヒドロカルビル、および置換ヒドロカルビルより選択され;
は、水素および{−}OCORからなる群より選択され;
は、水素、{−}OCOR、および{−}OCRからなる群より選択され;
およびRは、ヒドロカルビルおよび置換ヒドロカルビルからなる群より独立して選択され;
およびRは、水素、ヒドロキシル、ヒドロカルビル、および置換ヒドロカルビルからなる群より独立して選択され、または、RおよびRが一緒にカルボニル基を形成し;
12およびR13は、水素、ヒドロカルビル、および置換ヒドロカルビルからなる群より独立して選択され、または、R12およびR13が一緒にカルボニル基を形成し;
10、R11、およびR14は、水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、およびハロゲンからなる群より独立して選択され;
15は、水素であり;
Xは、ハロゲンである。
【0005】
本発明の追加的な繰り返し(iteration)は、以下の反応スキームによる、化合物(Ib)の調製のためのプロセスを提供する。
【化4】

式中、
Rは、ヒドロカルビル、および置換ヒドロカルビルより選択され;
は、水素および{−}OCORからなる群より選択され;
は、水素、{−}OCOR、および{−}OCRからなる群より選択され;
およびRは、ヒドロカルビルおよび置換ヒドロカルビルからなる群より独立して選択され;
およびRは、水素、ヒドロキシル、ヒドロカルビル、および置換ヒドロカルビルからなる群より独立して選択され、または、RおよびRが一緒にカルボニル基を形成し;
12およびR13は、水素、ヒドロカルビル、および置換ヒドロカルビルからなる群より独立して選択され、または、R12およびR13が一緒にカルボニル基を形成し;
10、R11、およびR14は、水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、およびハロゲンからなる群より独立して選択され;
15は、水素であり;
Xは、ハロゲンである。
【0006】
本発明の他の態様および繰り返しは、以下により詳細に説明される。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明は、(+)オピエートを生成するためのプロセスおよび化合物を提供する。特に、本発明の化合物は、(+)オピエートの調製において中間体として使用されうる。
【0008】
I.本発明の化合物
本発明の一態様は、(+)オピエートの調製において中間体として使用されうる化合物を含む。例えば、本発明は、式(I)を含む化合物を提供し、
【化5】

式中、
は、水素、および{−}OCORからなる群より選択され;
は、水素、ヒドロカルビル、および置換ヒドロカルビルからなる群より選択され;
は、水素、{−}OCOR、{−}OCR、およびエーテル含有環の一部を形成する結合より選択されるが、Rがエーテル含有環を形成する結合である場合には、化合物(I)は(+)エナンチオマーであるという条件であり;
は、{−}ORおよび水素からなる群より選択され;
およびRは、ヒドロカルビルおよび置換ヒドロカルビルからなる群より独立して選択され;
は、水素、ヒドロカルビル、および置換ヒドロカルビルからなる群より選択され;
およびRは、水素、ヒドロキシル、ヒドロカルビル、および置換ヒドロカルビルからなる群より独立して選択され、または、RおよびRが一緒にカルボニル基を形成し;
10およびR11は、水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、およびハロゲンからなる群より独立して選択され;
【化6】

は、単結合または二重結合である。
【0009】
式(I)を有する化合物の一実施形態において、RおよびRは、1〜8の炭素原子を有するアルキル基、アリール基、CHCHCl−{−}、CH=CH−{−}、および{−}CH−アリール基を含む群より独立して選択される。さらなる実施形態においては、アリール基は、ベンゼンまたは置換ベンゼンでありうる。
【0010】
本明細書に記載の化合物は、偏光の回転に関して(−)または(+)立体化学配置を有しうる。特に、各キラル中心が、RまたはS配置を有しうる。考察を容易にするために、本明細書に参照される核モルフィナン構造の環原子は、以下のように番号付けされる:
【化7】

【0011】
炭素13、14、および9は、キラル中心である。したがって、上に詳述される構造(I)を有する本発明の化合物の配置、または以下に詳述される(Ia)、(Ib)、または(Ic)は、C15およびC16原子がいずれも分子のアルファ面または分子のベータ面のいずれかにあるという条件で、C(13)、C(14)、およびC(9)に関してRRR、RRS、RSR、RSS、SRR、SRS、SSR、またはSSSでありうる。この文脈において、いくつかの実施形態では、C(13)、C(14)、およびC(9)炭素の立体化学は、本発明の範囲を逸脱することなく変化し得、変化する。例えば、立体化学は、C15およびC16原子がいずれも分子のアルファ面または分子のベータ面のいずれかにあるという条件で、表Aに列挙される組み合わせでありうる。ある実施形態では、式(I)、(Ia)、または(Ib)の化合物は、(+)または(−)エナンチオマーでありうる。
【化8】

【0012】
本発明は、式(Ia)を含む化合物も含み、
【化9】

式中、
は、水素、{−}OCOR、および{−}OCRからなる群より選択され;
およびRは、ヒドロカルビルおよび置換ヒドロカルビルからなる群より独立して選択され;
およびRは、水素、ヒドロキシル、ヒドロカルビル、および置換ヒドロカルビルからなる群より独立して選択され、または、RおよびRが一緒にカルボニル基を形成し;
12およびR13は、水素、ヒドロカルビル、および置換ヒドロカルビルからなる群より独立して選択され、または、R12およびR13が一緒にカルボニル基を形成し;
10、R11、およびR14は、水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、およびハロゲンからなる群より独立して選択される。
【0013】
式(Ia)を有する化合物の一実施形態において、Rは、{−}OCORであり;RおよびRは、1〜8の炭素原子を有するアルキル基、アリール基、CHCHCl−{−}、CH=CH−{−}、および{−}CH−アリール基を含む群より独立して選択される。さらなる実施形態においては、アリール基は、ベンゼンまたは置換ベンゼンでありうる。
【0014】
式(Ia)を有する化合物の別の実施形態において、Rは、{−}OCRであり;RおよびRは、1〜8の炭素原子を有するアルキル基、アリール基、および{−}CH−アリール基からなる群より独立して選択される。さらなる実施形態においては、アリール基は、ベンゼンまたは置換ベンゼンでありうる。
【0015】
式(Ia)を有する化合物のさらに別の実施形態において、Rは、水素であり;Rは、1〜8の炭素原子を有するアルキル基、アリール基、および{−}CH−アリール基からなる群より選択される。さらなる実施形態においては、アリール基は、ベンゼンまたは置換ベンゼンでありうる。
【0016】
式(Ia)を有する化合物のさらに別の実施形態において、R、R、R10、R11、R12、R13、およびR14は、水素である。
【0017】
式(Ia)を有する化合物のいくつかの実施形態において、C13、C14、およびC9炭素の立体化学は、本発明の範囲を逸脱することなく変化し得、変化する。例えば、立体化学は、表Aに列挙される組み合わせでありうる。ある実施形態では、式(Ia)の化合物は、(+)または(−)エナンチオマーでありうる。
【0018】
さらに、本発明は、式(Ib)を含む化合物を含み、
【化10】

式中、
は、水素、および{−}OCORからなる群より選択され;
は、水素、{−}OCOR、および{−}OCRからなる群より選択され;
およびRは、ヒドロカルビルおよび置換ヒドロカルビルからなる群より独立して選択され;
およびRは、水素、ヒドロキシル、ヒドロカルビル、および置換ヒドロカルビルからなる群より独立して選択され、または、RおよびRが一緒にカルボニル基を形成し;
12およびR13は、水素、ヒドロカルビル、および置換ヒドロカルビルからなる群より独立して選択され、または、R12およびR13が一緒にカルボニル基を形成し;
10、R11、R14、およびR15は、水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、およびハロゲンからなる群より独立して選択され、または、R14およびR15が一緒にカルボニル基を形成する。
【0019】
式(Ib)を有する化合物の一実施形態において、Rは、水素であり;Rは、{−}OCORであり、Rは、1〜8の炭素原子を有するアルキル基、アリール基、CHCHCl−{−}、CH=CH−{−}、および{−}CH−アリール基からなる群より独立して選択される。さらなる実施形態においては、アリール基は、ベンゼンまたは置換ベンゼンでありうる。
【0020】
式(Ib)を有する化合物の別の実施形態において、Rは、水素であり;Rは、{−}OCRであり;Rは、1〜8の炭素原子を有するアルキル基、アリール基、および{−}CH−アリール基からなる群より独立して選択される。さらなる実施形態においては、アリール基は、ベンゼンまたは置換ベンゼンでありうる。
【0021】
式(Ib)を有する化合物のさらに別の実施形態において、Rは、{−}OCORであり;Rは、{−}OCORであり;RおよびRは、1〜8の炭素原子を有するアルキル基、アリール基、および{−}CH−アリール基からなる群より独立して選択される。さらなる実施形態においては、アリール基は、ベンゼンまたは置換ベンゼンでありうる。
【0022】
式(Ib)を有する化合物のさらに別の実施形態において、Rは、{−}OCRであり;Rは、{−}OCORであり;RおよびRは、1〜8の炭素原子を有するアルキル基、アリール基、および{−}CH−アリール基からなる群より独立して選択される。さらなる実施形態においては、アリール基は、ベンゼンまたは置換ベンゼンでありうる。
【0023】
式(Ib)を有する化合物の別の実施形態において、RおよびRは、水素である。
【0024】
式(Ib)を有する化合物のさらに別の実施形態において、R、R、R10、R11、R12、R13、R14およびR15は、水素である。
【0025】
式(Ib)を有する化合物のいくつかの実施形態において、C13、C14およびC9炭素の立体化学は、本発明の範囲を逸脱することなく変化し得、変化する。例えば、立体化学は、C15およびC16原子がいずれも分子のアルファ面または分子のベータ面のいずれかにあるという条件で、表Aに列挙される組み合わせでありうる。ある実施形態では、式(Ib)の化合物は、(+)または(−)エナンチオマーでありうる。
【0026】
本発明は、式(Ic)の(+)エナンチオマーを含む化合物をさらに含み、
【化11】

式中、
は、水素、および{−}OCORからなる群より選択され;
は、水素、およびメチルからなる群より選択され;
は、ヒドロカルビルおよび置換ヒドロカルビルからなる群より選択され;
およびRは、水素、ヒドロキシル、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビルからなる群より独立して選択され、または、RおよびRが一緒にカルボニル基を形成し;
16およびR17は、水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビルからなる群より独立して選択され、または、R16およびR17が一緒にカルボニル基を形成し;
10、R11、R14およびR15は、水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、およびハロゲンからなる群より独立して選択され、または、R14およびR15が一緒にカルボニル基を形成する。
【0027】
式(Ic)を有する化合物の一実施形態において、RおよびRは、水素であり;Rは、1〜8の炭素原子を有するアルキル基、アリール基、CHCHCl−{−}、CH=CH−{−}、および{−}CH−アリール基からなる群より選択される。さらなる実施形態においては、アリール基は、ベンゼンまたは置換ベンゼンでありうる。
【0028】
式(Ic)を有する化合物の別の実施形態において、Rは、水素であり;Rは、メチルであり;Rは、1〜8の炭素原子を有するアルキル基、アリール基、および{−}CH−アリール基からなる群より選択される。さらなる実施形態においては、アリール基は、ベンゼンまたは置換ベンゼンでありうる。
【0029】
式(Ic)を有する化合物のさらに別の実施形態において、Rは、{−}OCORであり;Rは、メチルであり;Rは、1〜8の炭素原子を有するアルキル基、アリール基、および{−}CH−アリール基からなる群より選択される。さらなる実施形態においては、アリール基は、ベンゼンまたは置換ベンゼンでありうる。
【0030】
式(Ic)を有する化合物のさらに別の実施形態において、Rは、{−}OCORであり;Rは、水素であり;Rは、1〜8の炭素原子を有するアルキル基、アリール基、および{−}CH−アリール基からなる群より選択される。さらなる実施形態においては、アリール基は、ベンゼンまたは置換ベンゼンでありうる。
【0031】
式(Ic)を有する化合物の別の実施形態において、R、R、R10、R11、R14、R15、R16およびR17は、水素である。
【0032】
式(Ic)を有する化合物のいくつかの実施形態において、C(5)、C(13)、C(14)、およびC(9)炭素の立体化学は、本発明の範囲を逸脱することなく変化し得、変化する。例えば、立体化学は、C15およびC16原子がいずれも分子のアルファ面または分子のベータ面のいずれかにあるという条件で、表Bに列挙される組み合わせでありうる。
【化12】

【化13】

【0033】
本発明は、式(I)、(Ia)、(Ib)、および(Ic)を有する上記の化合物のいずれかの塩類も含む。例示的な塩類には、限定されるものではないが、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、硫酸塩、メタンスルホン酸塩(methansulfonate)、酢酸塩、蟻酸塩、酒石酸、マレイン酸、リンゴ酸、クエン酸塩、イソクエン酸塩、琥珀酸塩、乳酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、ピルビン酸塩、シュウ酸塩、フマル酸塩、プロピオン酸塩、アスパラギン酸塩、グルタミン酸塩、安息香酸塩、弗化メチル、塩化メチル、臭化メチル、沃化メチルなどが含まれる。
【0034】
II.式(Ib)の化合物の調製のためのプロセス
本発明の別の態様は、式(Ib)を含む化合物の調製のためのプロセスを含む。一実施形態においては、本発明は、以下に示される反応スキーム1により、式(Ib)を含む化合物を調製するためのプロセスを提供する。別の実施形態においては、本発明は、以下に示される反応スキーム2により、式(Ib)を含む化合物を調製するためのプロセスを提供する。上述の実施形態の各々においては、以下のセクションIIIにさらに詳細に説明されるように、式(Ib)を含む化合物が、式(Ic)を含む化合物を調製するためのプロセスにおいて使用されうる。
【0035】
(a)反応スキーム1による化合物(Ib)の調製
例示の目的で、反応スキーム1は、本発明の一態様による、化合物(II)からの式(Ib)の化合物の生成を示す:
【化14】

【0036】
一般に、反応スキーム1により式(Ib)の化合物を調製するためのプロセスには、二つのステップが含まれる。プロセスのステップAにおいては、式(II)を含む化合物またはその塩が、プロトン受容体の存在下でROCOXと接触させられて、式(Ia)を含む化合物が形成される。プロセスのステップBにおいては、式(Ia)を含む化合物が還元されて、式(Ib)を含む化合物が形成される。
【0037】
式(II)を含む化合物は、公知技術の方法を用いて調製されてよく、または、いくつかの実施形態においては、購入されてもよい。
【0038】
i.式(Ia)を含む化合物の調製
プロセスのステップAにおいては、プロトン受容体の存在下で、化合物(II)またはその塩が、Rがヒドロカルビルまたは置換ヒドロカルビルであり、Xがハロゲンである、ROCOXと接触させられて、式(Ia)を含む化合物が形成され、
式中、Rは、{−}OCORであり;
およびRは、ヒドロカルビルおよび置換ヒドロカルビルからなる群より独立して選択され;
およびRは、水素、ヒドロキシル、ヒドロカルビル、および置換ヒドロカルビルからなる群より独立して選択され、または、RおよびRが一緒にカルボニル基を形成し;
12およびR13は、水素、ヒドロカルビル、および置換ヒドロカルビルからなる群より独立して選択され、または、R12およびR13が一緒にカルボニル基を形成し;
10、R11、およびR14は、水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、およびハロゲンからなる群より独立して選択される。
【0039】
ステップAの一実施形態において、Rは、1〜8の炭素原子を有するアルキル基、アリール基、CHCHCl−{−}、CH=CH−{−}、および{−}CH−アリール基からなる群より選択され;Xは、塩素である。
【0040】
ステップAのいくつかの実施形態においては、溶媒の存在下で反応が行われる。ある実施形態では、溶媒は、非プロトン性溶媒である。非プロトン性溶媒の非限定的な例には、エーテル溶媒、アセトン、アセトニトリル、ベンゼン、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N−ジメチルプロピオンアミド、1,3−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2(1H)−ピリミジノン(DMPU)、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI)、1,2−ジメトキシエタン(DME)、ジメチルアセトアミド(DMAC)、N−メチルピロリジノン(NMP)、酢酸エチル、蟻酸エチル、エチル−メチルケトン、イソブチルメチルケトン、n−プロピル酢酸、N−ホルムアミド、ヘキサメチルホスホルアミド、メチルアセテート、N−メチルアセトアミド、N−メチルホルムアミド、塩化メチレン、ニトロベンゼン、ニトロメタン、プロピオニトリル、スルホラン、テトラメチル尿素、テトラヒドロフラン(THF)、メチルテトラヒドロフラン、トルエン、クロロベンゼン、トリクロロメタンが含まれる。一つの例示的な実施形態において、非プロトン性溶媒は、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、トルエン、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、n−プロピル酢酸、アセトニトリル、THF、およびメチルブチルエーテルを含む群より選択されうる。
【0041】
一般に、非プロトン性溶媒の化合物(II)に対する比が、約0.5:1〜約10:1(g/g)でありうる。いくつかの実施形態においては、比が、約1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、または10:1でありうる。
【0042】
ステップAにおいて利用される特定のプロトン受容体の選択は、変化し得、変化する。一般に、プロトン受容体は、約7〜約13の間、好ましくは約8〜約10の間のpKaを有する。使用できる代表的なプロトン受容体には、ホウ酸塩類(例えばNaBO等)、二−および三−塩基性リン酸塩類(例えばNaHPOおよびNaPO等)、重炭酸塩類(例えばNaHCO、KHCO、その混合物など)、水酸化物塩類(例えばNaOH、KOH、その混合物など)、炭酸塩類(例えばNaCO、KCO、その混合物など)、有機塩基類(例えばピリジン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N−メチルモルホリン、N,N−ジメチルアミノピリジン、およびその混合物)、有機バッファー(例えばN−(2−アセトアミド)−2−アミノエタンスルホン酸(ACES)、N−(2−アセトアミド)−イミノ二酢酸(ADA)、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)グリシン(BICINE)、3−(シクロヘキシルアミノ)−1−プロパンスルホン酸(CAPS)、2−(シクロヘキシルアミノ)エタンスルホン酸(CHES)、4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンプロパンスルホン酸(EPPS)、4−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−1−エタンスルホン酸(HEPES)、2−(4−モルホリニル)エタンスルホン酸(MES)、4−モルホリンプロパンスルホン酸(MOPS)、1,4−ピペラジンジエタンスルホン酸(PIPES)、[(2−ヒドロキシ−1,1−ビス(ヒドロキシメチル)エチル)アミノ]−1−プロパンスルホン酸(TAPS)、2−[(2−ヒドロキシ−1,1−ビス(ヒドロキシメチル)エチル)アミノ]エタンスルホン酸(TES)、その塩類および/または混合物など)、およびその組み合わせが含まれるがこれに限定されない。プロトン受容体が有機バッファーである場合には、有機バッファーはヒドロキシ置換された窒素原子を欠くのが好ましい。この置換基は、ハロホルメート反応物との反応と競合しうるからである。一つの例示的な実施形態において、プロトン受容体は、NaHCO、KHCO、LiHCO、NaCO、KCO、LiCO、およびその組み合わせからなる群より選択されうる。
【0043】
熟練の技術者には当然のことながら、ステップAにおいて使用される様々な反応物の量は、本発明の範囲を逸脱することなく変化し得、変化する。一実施形態において、化合物(II)対ROCOX対プロトン受容体のモル比は、約1:3:1〜約1:12:12である。別の実施形態においては、化合物(II)対ROCOX対プロトン受容体のモル比は、約1:3:1である。
【0044】
反応時間、温度、およびpH等、ステップAの反応条件も、本発明の範囲を逸脱することなく変化しうる。非限定的な例として、pHは一般に塩基性であり、反応時間は約3時間〜約15時間の範囲でありうる。典型的に、反応は、約45℃〜約120℃の範囲の温度で行われる。例えば、反応は、約45℃、約50℃、約55℃、約60℃、約65℃、約70℃、約75℃、約80℃、約85℃、約90℃、95℃、約100℃、約105℃、約110℃、約115℃、または約120℃の温度で行われうる。例示的実施形態においては、反応は、約45℃〜約70℃の範囲の温度で行われる。反応は、好ましくは周囲圧力下で、好ましくは不活性雰囲気(例えば窒素またはアルゴン)中で行われる。
【0045】
熟練の技術者には当然のことながら、化合物(Ia)の収率および純度は、使用する反応条件により変化し得、変化する。収率は、一般に約70%〜約95%の範囲となる。いくつかの実施形態においては、収率は、70%、75%、80%、85%、90%、または95%でありうる。
【0046】
ある実施形態では、プロセスは、MgSO、KSO、NaSO、CaO、およびモレキュラーシーブ等の水乾燥用試薬の存在下で行われる。
【0047】
プロセスのさらに別の実施形態においては、式(II)または(Ia)を有する化合物のR、R、R10、R11、R12、R13、およびR14は、水素である。
【0048】
プロセスのいくつかの実施形態においては、化合物(II)および(Ia)のC(13)、C(14)、およびC(9)炭素の立体化学は、本発明の範囲を逸脱することなく変化し得、変化する。例えば、立体化学は、C15およびC16原子がいずれも分子のアルファ面または分子のベータ面のいずれかにあるという条件で、表Aに列挙される組み合わせでありうる。ある実施形態では、式(II)または(Ia)の化合物は、(+)または(−)エナンチオマーでありうる。
【0049】
ステップAのさらなる実施形態においては、化合物(II)のC(4)上のヒドロキシル基は、保護されうる。C(4)ヒドロキシル基を保護する方法は、公知技術であり、化合物(Ia)を生じる反応の前または後に実行されうる。したがって、いくつかの実施形態においては、Rは、{−}OCRまたは{−}OCOR等、ヒドロキシル保護基であり得、Rは、ヒドロカルビル、または置換ヒドロカルビルからなる群より選択されうる。他の適切なヒドロキシル保護基には、エーテル(例えばアリル、トリフェニルメチル(トリチルまたはTr)、ベンジル、p−メトキシベンジル(PMB)、p−メトキシフェニル(PMP))、アセタール(例えばメトキシメチル(MOM)、β−メトキシエトキシメチル(MEM)、テトラヒドロピラニル(THP)、エトキシエチル(EE)、メチルチオメチル(MTM)、2−メトキシ−2−プロピル(MOP)、2−トリメチルシリルエトキシメチル(SEM))、エステル(例えば安息香酸エステル(Bz)、アリルカーボネート、2,2,2−トリクロロエチルカーボネート(Troc)、2−トリメチルシリルエチルカーボネート)、シリルエーテル(例えばトリメチルシリル(TMS)、トリエチルシリル(TES)、トリイソプロピルシリル(TIPS)、トリフェニルシリル(TPS)、t−ブチルジメチルシリル(TBDMS)、t−ブチルジフェニルシリル(TBDPS)などを含む。ヒドロキシ基の様々な保護基およびその合成は、T.W.GreeneおよびP.G.M.Wutsによる“Protective Groups in Organic Synthesis,”John Wiley & Sons,1999に見られる。
【0050】
ii.式(Ib)を含む化合物の調製
プロセスのステップBには、式(Ia)を有する化合物を還元して、式(Ib)を含む化合物を形成するステップが含まれる。式(Ib)中、
は、水素、および{−}OCORからなる群より選択され;
は、水素、{−}OCOR、および{−}OCRからなる群より選択され;
およびRは、ヒドロカルビルおよび置換ヒドロカルビルからなる群より独立して選択され;
およびRは、水素、ヒドロキシル、ヒドロカルビル、および置換ヒドロカルビルからなる群より独立して選択され、または、RおよびRが一緒にカルボニル基を形成し;
12およびR13は、水素、ヒドロカルビル、および置換ヒドロカルビルからなる群より独立して選択され、または、R12およびR13が一緒にカルボニル基を形成し;
10、R11、R14およびR15は、水素、ハロゲン、ヒドロカルビル、および置換ヒドロカルビルからなる群より独立して選択され、または、R14およびR15が一緒にカルボニル基を形成する。
【0051】
ステップBの一実施形態においては、RおよびRは、1〜8の炭素原子を有するアルキル基、アリール基、CHCHCl−{−}、CH=CH−{−}、および{−}CH−アリール基からなる群より独立して選択される。
【0052】
例えば化学還元、触媒還元などを含めて、様々な還元アプローチがステップBの還元反応に用いられうる。水素による触媒還元法に用いられる代表的な還元剤には、例えば、白金触媒(例えば白金黒、コロイド状白金、酸化白金、白金プレート、白金海綿、白金線など)、パラジウム触媒(例えばパラジウム黒、炭酸バリウム上のパラジウム、硫酸バリウム上のパラジウム、コロイド状パラジウム、炭素上のパラジウム、炭素上の水酸化パラジウム、酸化パラジウム、パラジウム海綿など)、ニッケル触媒(例えば酸化ニッケル、ラネーニッケル、還元ニッケルなど)、コバルト触媒(例えばラネーコバルト、還元コバルトなど)、鉄触媒(例えばラネー鉄、還元鉄、ウルマン鉄など)およびその他等、一般に使用される触媒が含まれる。例示的実施形態では、化合物(Ia)が、触媒還元(例えば、Pd/C触媒水素移動反応)を用いて還元される。好ましい触媒には、Pd/C、Pt/C、Ru/C、およびRh/Cからなる群より選択される遷移金属触媒が含まれる。n一実施形態、化合物(Ia)の遷移金属触媒に対するモル比は、約1:0.0005〜約1:0.05である。別の実施形態においては、比は、約1:0.0008〜約1:0.0015である。
【0053】
ステップBのある実施形態においては、アルコールを含む溶媒の存在下で反応が行われる。アルコールを含む溶媒の選択、および利用される量は、本発明の範囲を逸脱することなく変化し得、変化する。例えば、適切なアルコール類には、例えばメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、t−ブチルアルコール、n−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、およびその組み合わせが含まれる。一実施形態においては、アルコールを含む溶媒は、メタノールを含む溶媒である。一般に、メタノールを含む溶媒の、化合物(Ia)に対する比は、約0.5:1〜約2.0:1(g/g)である。
【0054】
圧力、温度、および反応時間等、プロセスのステップBの反応条件も、本発明の範囲を逸脱することなく変化しうる。例えば、触媒が還元のために用いられる場合には、加圧水素の存在下で反応が行われる。典型的には、水素圧力は、約0〜約500PSIの間でありうる。いくつかの実施形態においては、水素圧力は、約20、約40、約60、約80、約100、約120、約140、約160、約180、約200、約220、約240、約260、約280、約300、約320、約340、約360、約380、約400、約420、約440、約460、約480、または約500PSIでありうる。例示的実施形態では、水素圧力は、約30〜約60PSIの間でありうる。
【0055】
さらに、反応は、約20℃〜約120℃の範囲の温度で行われうる。例えば、約20℃、約25℃、約30℃、約40℃、約45℃、約50℃、約55℃、約60℃、約65℃、約70℃、約75℃、約80℃、約85℃、約90℃、約95℃、約100℃、約105℃、約110℃、約115℃、または約120℃の温度で反応が行われうる。例示的実施形態では、約45℃〜約60℃の範囲の温度で反応が行われる。
【0056】
熟練の技術者には当然のことながら、化合物(Ib)の収率および純度は、使用する反応条件により変化し得、変化する。一般に、化合物(Ib)の収率は、約70%〜約95%でありうる。いくつかの実施形態においては、収率は、約70%、75%、80%、85%、90%、または95%である。
【0057】
プロセスのさらに別の実施形態においては、式(II)または(Ia)を有する化合物のR、R、R10、R11、R12、R13、R14およびR15は、水素でありうる。
【0058】
プロセスのいくつかの実施形態においては、化合物(Ia)および(Ib)のC(13)、C(14)、およびC(9)炭素の立体化学は、本発明の範囲を逸脱することなく変化し得、変化する。例えば、立体化学は、C15およびC16原子がいずれも分子のアルファ面または分子のベータ面のいずれかにあるという条件で、表Aに列挙される組み合わせでありうる。ある実施形態では、式(Ia)および(Ib)の化合物は、(+)または(−)エナンチオマーでありうる。
【0059】
プロセスのさらなる実施形態においては、化合物(Ia)または(Ib)のC(4)上の酸素は、保護されうる。C(4)ヒドロキシル基を保護する方法は、公知技術であり、上述されており、化合物(Ib)を生じる反応の前または後に実行されうる。したがって、いくつかの実施形態においては、Rは{−}OCRまたは{−}OCOR等、ヒドロキシル保護基であり得、Rはヒドロカルビル、または置換ヒドロカルビルからなる群より選択されうる。
【0060】
一実施形態においては、化合物(Ia)のRは、{−}OCORであり、式中Rは{−}CH−アリールである。別の実施形態においては、化合物(Ib)のRは、水素であり;Rは水素である。
【0061】
(b)反応スキーム2による化合物(Ib)の調製
例示の目的で、反応スキーム2は、本発明の一態様による、化合物(II)からの化合物(Ib)の生成を示す:
【化15】

【0062】
一般に、反応スキーム2により式(Ib)の化合物を調製するためのプロセスには、二つのステップが含まれる。プロセスのステップAには、化合物(II)を還元して、式(IIa)を含む化合物を形成する、ステップが含まれる。プロセスのステップBには、化合物(IIa)をプロトン受容体およびROCOXと接触させて、式(Ib)の化合物を形成するステップが含まれ、Rはヒドロカルビルまたは置換ヒドロカルビルであり;Xはハロゲンである。
【0063】
i.式(IIa)を含む化合物の調製
反応スキーム2のステップAにおいては、化合物(II)がプロトン供与体の存在下で還元されて、化合物(IIa)が形成され、式中、
およびRは、水素、ヒドロキシル、ヒドロカルビル、および置換ヒドロカルビルからなる群より独立して選択され、または、RおよびRが一緒にカルボニル基を形成し;
12およびR13は、水素、ヒドロカルビル、および置換ヒドロカルビルからなる群より独立して選択され、または、R12およびR13が一緒にカルボニル基を形成し;
10、R11、R14およびR15は、水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、およびハロゲンからなる群より独立して選択され、または、R14およびR15が一緒にカルボニル基を形成する。
【0064】
ステップAにおいては、化合物(II)が、還元スキーム1のステップBにつき記載される任意の還元法により還元されうる。例示的実施形態では、プロトン供与体の存在下で、遷移金属触媒により還元が行われる。遷移金属触媒およびプロトン供与体の選択、および利用される量は、本発明の範囲を逸脱することなく変化し得、変化する。遷移金属触媒の非限定的な例には、Pd/C、Pt/C、Ru/C、およびRh/Cが含まれうる。
【0065】
プロトン供与体は、一般に約6未満のPKaを有する。この特性を有する適当なプロトン供与体には、HOAc、HCOH、MeSOH、ポリHPO、HPO、HSO、HCl、HBr、HI、CFSOH、およびトルエンスルホン酸が含まれるがこれに限定されない。通常、化合物(II)対プロトン供与体対遷移金属触媒のモル比は、約1:0.5:0.0005〜約1:10:0.05である。いくつかの実施形態においては、比は、約1:0.5:0.0008〜約1:2.0:0.015である。
【0066】
ステップAの様々な実施形態においては、アルコールを含む溶媒の存在下で反応が行われる。適切なアルコールを含む溶媒は、反応スキーム1に記載のとおりである。いくつかの例示的実施形態では、アルコールを含む溶媒は、メタノールを含む溶媒である。都合のよいことに、メタノールを含む溶媒および水の混合物において反応が行われる場合には、反応混合物が濾過され、塩基性化された後に、産物化合物(IIa)が固体として単離されうる。メタノールを含む溶媒の選択、および利用される量は、本発明の範囲を逸脱することなく変化し得、変化する。一実施形態において、メタノールを含む溶媒の、化合物(II)に対する比は、約0.5:1〜約2.0:1(g/g)である。
【0067】
圧力、温度、および反応時間等、プロセスのステップAの反応条件も、本発明の範囲を逸脱することなく変化しうる。例えば、水素圧力は、約0〜約500PSIの間でありうる。一実施形態においては、水素圧力は、約20、約40、約60、約80、約100、約120、約140、約160、約180、約200、約220、約240、約260、約280、約300、約320、約340、約360、約380、約400、約420、約440、約460、約480、または約500PSIでありうる。例示的実施形態では、水素圧力は、約30〜約60PSIの間である。
【0068】
さらに、反応は、約20℃〜約120℃の範囲の温度で行われうる。例えば、約20℃、約25℃、約30℃、約40℃、約45℃、約50℃、約55℃、約60℃、約65℃、約70℃、約75℃、約80℃、約85℃、約90℃、約95℃、約100℃、約105℃、約110℃、約115℃、または約120℃の温度で反応が行われうる。例示的実施形態では、約45℃〜約60℃の範囲の温度で反応が行われる。
【0069】
熟練の技術者には当然のことながら、化合物(IIa)の収率は、使用する反応条件により変化し得、変化する。一般に、化合物(IIa)の収率は、約90%〜約95%である。
【0070】
プロセスのさらに別の実施形態においては、式(II)または(IIa)を有する化合物のR、R、R10、R11、R12、R13、R14およびR15は、水素でありうる。
【0071】
プロセスのいくつかの実施形態においては、化合物(II)および(IIa)のC(13)、C(14)、およびC(9)炭素の立体化学は、本発明の範囲を逸脱することなく変化し得、変化する。例えば、立体化学は、C15およびC16原子がいずれも分子のアルファ面または分子のベータ面のいずれかにあるという条件で、表Aに列挙される組み合わせでありうる。ある実施形態では、式(II)または(IIa)の化合物は、(+)または(−)エナンチオマーでありうる。
【0072】
プロセスのさらなる実施形態においては、化合物(II)または(IIa)のC(4)上のヒドロキシルは、保護されうる。C(4)ヒドロキシル基を保護する方法は、公知技術であり、化合物(IIa)を生じる反応の前または後に実行されうる。いくつかの実施形態においては、ヒドロキシル保護基は、{−}OCRまたは{−}OCORであり得、Rは、ヒドロカルビル、または置換ヒドロカルビルからなる群より選択されうる。
【0073】
ii.式(Ib)を含む化合物の調製
プロセスのステップBには、化合物(IIa)をプロトン受容体およびROCOXと接触させて、化合物(Ib)を形成するステップが含まれ、Rはヒドロカルビルまたは置換ヒドロカルビルであり;Xはハロゲンである。化合物(Ib)において、
は、水素、および{−}OCORからなる群より選択され;
は、水素および{−}OCORからなる群より選択され;
およびRは、ヒドロカルビルおよび置換ヒドロカルビルからなる群より独立して選択され;
およびRは、水素、ヒドロキシル、ヒドロカルビル、および置換ヒドロカルビルからなる群より独立して選択され、または、RおよびRが一緒にカルボニル基を形成し;
12およびR13は、水素、ヒドロカルビル、および置換ヒドロカルビルからなる群より独立して選択され、または、R12およびR13が一緒にカルボニル基を形成し;
10、R11、R14、およびR15は、水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、およびハロゲンからなる群より独立して選択され、または、R14およびR15が一緒にカルボニル基を形成する。
【0074】
ステップBの一実施形態において、RおよびRは、1〜8の炭素原子を有するアルキル基、アリール基、CHCHCl−{−}、CH=CH−{−}、および{−}CH−アリール基からなる群より独立して選択され、Xは塩素である。
【0075】
ステップBのいくつかの実施形態においては、溶媒の存在下で反応が行われる。ある実施形態では、溶媒は、非プロトン性溶媒である。適切な非プロトン性溶媒は、反応スキーム1につき記載されるとおりである。一般に、非プロトン性溶媒の化合物(IIa)に対する比が、約0:1〜約10:1(g/g)でありうる。いくつかの実施形態においては、比が、約1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、または10:1でありうる。
【0076】
利用される特定のプロトン受容体の選択は、変化し得、変化する。適切なプロトン受容体は、反応スキーム1において記載されるとおりである。
【0077】
熟練の技術者には当然のことながら、ステップBにおいて使用される様々な反応物の量は、本発明の範囲を逸脱することなく変化し得、変化する。一実施形態においては、化合物(IIa)対ROCOX対プロトン受容体のモル比は、約1:2:1〜約1:20:20である。別の実施形態においては、比は、約1:3:3〜約1:6:6である。
【0078】
反応時間、温度、およびpH等、ステップBの反応条件も、本発明の範囲を逸脱することなく変化しうる。非限定的な例として、pHは一般に塩基性であり、反応時間は約3時間〜約15時間の範囲でありうる。典型的に、反応は、約45℃〜約120℃の範囲の温度で行われる。例えば、反応は、約45℃、約50℃、約55℃、約60℃、約65℃、約70℃、約75℃、約80℃、約85℃、約90℃、95℃、約100℃、約105℃、約110℃、約115℃、または約120℃の温度で行われうる。例示的実施形態においては、反応は、約45℃〜約70℃の範囲の温度で行われる。反応は、好ましくは周囲圧力下で、好ましくは不活性雰囲気(例えば窒素またはアルゴン)中で行われる。
【0079】
熟練の技術者には当然のことながら、化合物(Ib)の収率および純度は、使用する反応条件により変化し得、変化する。収率は、一般に約70%〜約95%の範囲となる。いくつかの実施形態においては、収率は、約70%、75%、80%、85%、90%、または95%である。
【0080】
プロセスのさらに別の実施形態においては、式(IIa)または(Ib)を有する化合物のR、R、R10、R11、R12、R13、R14およびR15は、水素でありうる。
【0081】
プロセスのいくつかの実施形態においては、化合物(IIa)および(Ib)のC(13)、C(14)、およびC(9)炭素の立体化学は、本発明の範囲を逸脱することなく変化し得、変化する。例えば、立体化学は、C15およびC16原子がいずれも分子のアルファ面または分子のベータ面のいずれかにあるという条件で、表Aに列挙される組み合わせでありうる。ある実施形態では、式(IIa)または(Ib)の化合物は、(+)または(−)エナンチオマーでありうる。
【0082】
プロセスのさらなる実施形態においては、化合物(IIa)または(Ib)のC(4)上のヒドロキシルは、保護されうる。C(4)ヒドロキシル基を保護する方法は、公知技術であり、化合物(Ib)を生じる反応の前または後に実行されうる。いくつかの実施形態においては、ヒドロキシル保護基は、{−}OCRまたは{−}OCORであり得、Rは、ヒドロカルビルまたは置換ヒドロカルビルからなる群より選択されうる。
【0083】
III.式(Ic)の化合物の調製のためのプロセス
本発明の別の態様は、式(Ic)を含む化合物の調製のためのプロセスを含む。一実施形態においては、式(Ic)を含む化合物は、式(Ib)を含む化合物から調製され、式(Ib)を含む化合物は、反応スキーム1に従って化合物(II)から調製されたものである。あるいは、式(Ic)を含む化合物は、式(Ib)を含む化合物から調製され、式(Ib)を含む化合物は、反応スキーム2に従って化合物(II)から調製されたものである。
【0084】
(Ic)を含む化合物を調製するための上述の実施形態の各々において、プロセスは、式(Ib)を含む化合物を、プロトン供与体およびスカベンジャーと接触させて、式(Ic)を含む化合物を形成する、ステップを含む。
【化16】

式中、
は、水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、および{−}OCORからなる群より選択され;
は、水素およびヒドロカルビルからなる群より選択され;
は、水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、{−}OCOR、および{−}OCRからなる群より選択され;
およびRは、ヒドロカルビルおよび置換ヒドロカルビルからなる群より独立して選択され;
およびRは、水素、ヒドロキシル、ヒドロカルビル、および置換ヒドロカルビルからなる群より独立して選択され、または、RおよびRが一緒にカルボニル基を形成し;
12、R13、R16およびR17は、水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビルからなる群より独立して選択され、または、R16およびR17が一緒にカルボニル基を形成し;
10、R11、R14、およびR15は、水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、およびハロゲンからなる群より独立して選択され、または、R14およびR15が一緒にカルボニル基を形成する。
【0085】
プロセスの一実施形態においては、RおよびRは、1〜8の炭素原子を有するアルキル基、アリール基、CHCHCl−{−}、CH=CH−{−}、および{−}CH−アリール基からなる群より独立して選択される。
【0086】
プロセスにおいて使用される特定のプロトン受容体の選択は、変化し得、変化する。適切なプロトン受容体は、反応スキーム1および2において記載されている。
【0087】
アルコールスカベンジャーの選択は、本発明の範囲を逸脱することなく変化し得、変化する。例示的実施形態では、アルコールスカベンジャーは、メタノールスカベンジャーである。メタノールスカベンジャーの好適な例には、P、POCl、POBr、PCl、PBr、SOCl、SOBr、MeSOCl、(MeSOO、SO、(CFSOOおよび(CFCO)Oが含まれうる。
【0088】
熟練の技術者には当然のことながら、プロセスにおいて使用される様々な反応物の量は、本発明の範囲を逸脱することなく変化し得、変化する。一実施形態においては、化合物(Ib)対スカベンジャー対プロトン供与体のモル比は、約1:0.5:2〜約1:2:20である。別の実施形態においては、比は、約1:1:3〜約1:1:5である。
【0089】
プロセスのいくつかの実施形態においては、溶媒の存在下で反応が行われる。ある実施形態では、溶媒は、非プロトン性溶媒である。適切な非プロトン性溶媒は、反応スキーム1および2につき上述されるとおりである。一実施形態においては、非プロトン性溶媒の化合物(Ib)に対する比が、約0:1〜約10:1(g/g)である。別の実施形態においては、比が、約1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、または10:1である。
【0090】
反応時間、およびpH等、プロセスの反応条件も、本発明の範囲を逸脱することなく変化しうる。非限定的な例として、反応は、約0℃〜約100℃の範囲の温度で行われうる。例えば、反応は、約5℃、約10℃、約15℃、約20℃、約25℃、約30℃、約35℃、約40℃、約45℃、約50℃、約55℃、約60℃、約65℃、約70℃、約75℃、約80℃、約85℃、約90℃、約95℃、または約100℃の温度で行われうる。例示的実施形態においては、反応は、約25℃〜約70℃の範囲の温度で行われうる。反応は、好ましくは周囲圧力下で、好ましくは不活性雰囲気(例えば窒素またはアルゴン)中で行われる。
【0091】
熟練の技術者には当然のことながら、化合物(Ic)の収率および純度は、使用する反応条件により変化し得、変化する。収率は、一般に約20%〜約80%の範囲となる。いくつかの実施形態においては、収率は、約20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、または80%でありうる。
【0092】
プロセスのさらに別の実施形態において、式(Ib)または(Ic)を有する化合物のR、R、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16およびR17は、水素でありうる。
【0093】
プロセスのいくつかの実施形態においては、化合物(Ib)のC(13)、C(14)、およびC(9)炭素の立体化学は、本発明の範囲を逸脱することなく変化し得、変化する。例えば、立体化学は、C15およびC16原子がいずれも分子のアルファ面または分子のベータ面のいずれかにあるという条件で、表Aに列挙される組み合わせでありうる。ある実施形態では、式(Ib)の化合物は、(+)または(−)エナンチオマーでありうる。さらに、化合物(Ic)のC(5)、(13)、C(14)、およびC(9)炭素の立体化学は、本発明の範囲を逸脱することなく変化し得、変化する。例えば、立体化学は、C15およびC16原子がいずれも分子のアルファ面または分子のベータ面のいずれかにあるという条件で、表Bに列挙される組み合わせでありうる。ある実施形態では、化合物(Ic)は、(+)または(−)エナンチオマーでありうる。
【0094】
プロセスのさらなる実施形態においては、化合物(Ib)のC(4)上のヒドロキシルは、保護されうる。C(4)ヒドロキシル基を保護する方法は、公知技術であり、化合物(Ic)を生じる反応の前に実行されうる。いくつかの実施形態においては、ヒドロキシル保護基は、{−}OCRまたは{−}OCORであり得、Rは、ヒドロカルビル、または置換ヒドロカルビルからなる群より選択されうる。
【0095】
IV.化合物(Ic)からの化合物を調製するためのプロセス
本発明のさらなる態様は、さらなるプロセスにおいて一つ以上の(+)−オピエートを生成するために使用されうる、化合物(Ic)からの化合物を調製するためのプロセスを含む。一実施形態においては、(+)−ノルヒドロコドンが、化合物(Ic)から調製される。別の実施形態においては、(+)−ノルヒドロモルホンが、化合物(Ic)から調製される。例えば、(+)−ノルヒドロコドンおよび(+)−ノルヒドロモルホンの両者が、一つ以上の(+)−オピエートを生成するためのさらなるプロセスで使用されうる。例えば、CH=CHCH−{−}またはシクロプロピルCH−{−}によりN−置換された化合物が生成されうる。
【0096】
(a)(Ic)からの(+)−ノルヒドロコドンの調製
以下の反応スキームに従って化合物(Ic)をプロトン供与体と接触させることにより、(+)−ノルヒドロコドンが調製されうる:
【化17】

式中、
は、ヒドロカルビル、または置換ヒドロカルビルを含む群より選択される。
【0097】
プロトン供与体の選択は、試薬および反応条件により変化し得、変化する。適切なプロトン供与体は、反応スキーム1および2に記載のとおりである。例示的な一実施形態においては、プロトン供与体は、MeSOH、ポリHPO、HPO、HSO、HCl、HBr、CFSOH、およびトルエンスルホン酸からなる群より選択される。
【0098】
いくつかの実施形態においては、プロトン性溶媒の存在下で反応が行われる。例えば、プロトン性溶媒は、水、1〜8の炭素原子を有するアルコール、および式RCOHを有する有機溶媒からなる群より選択されればよく、式中Rはヒドロカルビルである。一般に、プロトン性溶媒の化合物(Ic)に対する比は、約1:1〜約5:1(g/g)でありうる。一実施形態においては、比は、約2:1〜約3:1(g/g)である。
【0099】
熟練の技術者には当然のことながら、(+)ノルヒドロコドンの調製のための、化合物(Ic)のプロトン供与体に対する比は、本発明の範囲を逸脱することなく変化し得、変化する。典型的に、化合物(Ic)のプロトン供与体に対するモル比は、約1:2〜約1:10である。いくつかの実施形態においては、比は、約1:2、1:3、1:4、1:5、1:6、1:7、1:8、1:9、または1:10である。
【0100】
プロセスの反応条件も、本発明の範囲を逸脱することなく変化しうる。非限定的な例として、反応は、約80℃〜約150℃の範囲の温度で行われうる。例えば、反応は、約80℃、約85℃、約90℃、約95℃、約100℃、約105℃、約110℃、約115℃、約120℃、約125℃、約130℃、約135℃、約140℃、約145℃、または約150℃の温度で行われうる。例示的実施形態においては、約95℃〜約110℃の範囲の温度で反応が行われる。反応は、好ましくは周囲圧力下で、好ましくは不活性雰囲気(例えば窒素またはアルゴン)中において実行される。
【0101】
熟練の技術者には当然のことながら、化合物(Ic)から生成される(+)−ノルヒドロコドンの収率および純度は、使用する反応条件により変化し得、変化する。収率は、一般に約70%〜約95%の範囲となる。いくつかの実施形態においては、収率は、約70%、75%、80%、85%、90%、または95%でありうる。
【0102】
別の実施形態においては、(+)−ノルヒドロコドンは、式(Ic)を含む化合物を調製するために上述されるように、(Ib)化合物をアルコールスカベンジャーおよびプロトン供与体で連続的に処置してから、化合物(Ic)をプロトン供与体で処置して、(+)−ノルヒドロコドンを形成することにより、式(Ib)を含む化合物から調製されうる。このような連続反応は、同じ反応器内において実行されうる。例えば一実施形態では、O−ROCO−N−ROCO−7,8−ジヒドロノルシノメニンを、POCl等のメタノールスカベンジャーにより、MeSOH等のプロトン供与体の存在下で処置することで、(Ic)化合物N−ROCO−ノルヒドロコドンが形成される。反応混合物への適切な量の水およびプロピオン酸等のプロトン性溶媒の添加の後、100℃で加熱することにより、(+)−ノルヒドロコドンが形成される。
【0103】
プロセスのいくつかの実施形態では、化合物(Ic)または(+)−ノルヒドロコドンのC(5)、C(13)、C(14)、およびC(9)炭素の立体化学は、本発明の範囲を逸脱することなく変化し得、変化する。例えば、立体化学は、C15およびC16原子がいずれも分子のアルファ面または分子のベータ面のいずれかにあるという条件で、表Bに列挙される組み合わせでありうる。
【0104】
(b)(+)−ノルヒドロモルホンの調製
(+)−ノルヒドロモルホンは、(+)−ノルヒドロコドンから調製されうる。典型的に、プロセスは、以下の反応スキームにより、(+)−ノルヒドロコドンをO−脱メチル化試薬と接触させるステップを含む。
【化18】

【0105】
O−脱メチル化薬剤の選択および量は、反応条件により変化し得、変化する。一実施形態において、O−脱メチル化試薬は、HBr、BBr、およびメチオニン/MeSOHからなる群より選択される。いくつかの実施形態において、(+)−ノルヒドロコドンのO−脱メチル化試薬に対するモル比は、約1:2〜約1:6である。他の実施形態においては、比は、約1:2.5〜約1:4である。
【0106】
プロセスの反応条件も、本発明の範囲を逸脱することなく変化し得、変化する。非限定的な例として、一実施形態においては、約0C〜約150℃の範囲の温度で反応が行われる。別の実施形態においては、O−脱メチル化試薬がBBrである場合には、約0℃〜約30℃の範囲の温度で、または、O−脱メチル化試薬がHBrまたはメチオニン/MeSOHである場合には、約90℃〜約120℃の範囲の温度で、反応が行われる。反応は、好ましくは周囲圧力下で、好ましくは不活性雰囲気(例えば窒素またはアルゴン)中において実行される。
【0107】
熟練の技術者には当然のことながら、(+)−ノルヒドロコドンから生成される(+)−ノルヒドロモルホンの収率および純度は、使用する反応条件により変化し得、変化する。収率は、一般に約60%〜約80%の範囲となる。いくつかの実施形態においては、収率は、約60%、65%、70%、75%、または80%でありうる。
【0108】
別の実施形態においては、(+)−ノルヒドロモルホンは、式(Ic)を含む化合物を調製するために上述されるように、(Ib)化合物をメタノールスカベンジャーおよびプロトン供与体で連続して処置してから、プロトン供与体を加えて(+)−ノルヒドロコドンを形成し、その後O−脱メチル化薬剤を加えて(+)ノルヒドロモルホンを形成することにより、式(Ib)を含む化合物から調製されうる。このような連続反応は、同じ反応器内において実行されうる。例えば、一実施形態では、O−ROCO−N−ROCO−7,8−ジヒドロノルシノメニンを、POCl等のメタノールスカベンジャーにより、MeSOH等のプロトン供与体の存在下で処置することで、(Ic)化合物N−ROCO−ノルヒドロコドンが形成される。反応混合物への適切な量の水およびプロピオン酸等のプロトン性溶媒の添加の後、100℃で加熱することにより、(+)−ノルヒドロコドンが形成される。反応混合物にメチオニンを添加後、100℃で加熱することにより、(+)−ノルヒドロモルホンが形成される。別の実施形態においては、O−ROCO−N−ROCO−7,8−ジヒドロノルシノメニンをメタノールスカベンジャーおよびBBr等のO−脱メチル化薬剤により、HBr等の酸の存在下で、クロロホルム中で処置することで、(Ic)化合物N−ROCO−ノルヒドロコドン、そしてN−ROCO−ノルヒドロモルホンが形成される。プロトン供与体溶液中での加熱により、(+)−ノルヒドロモルホンが形成される。
【0109】
(c)(+)−オピエートの調製
化合物(Ic)あるいは(+)−ノルヒドロコドンまたは(+)−ノルヒドロモルホンのいずれかを含むがこれに限定されない、本発明の一つ以上の化合物から様々な(+)−オピエートが得られる。本発明の一つ以上の化合物から得られる適切な(+)オピエートの非限定的な例には、(+)−ノルオキシモルホン、(+)−ナルトレキソン、(+)−ナロキソン、(+)−N−シクロプロピルメチルノルヒドロコドン、(+)−N−シクロプロイルメチルノルヒドロモルホン、(+)−N−アリルノルヒドロコドン、(+)−N−アリルノルヒドロモルホン、(+)−ノルオキシコドン、(+)−ナルトレキソール(6−アルファおよび6−ベータの両方を含む)、(+)−ナロキソール(6−アルファおよび6−ベータの両方を含む)および(+)−3−O−メチル−ナルトレキソンが含まれる。
【0110】
定義
本明細書において単独または別の基の一部として用いられるところの、「アシル」という用語は、有機カルボン酸の基COOHからのヒドロキシ基の除去により形成される部分、例えばRC(O)−を表し、式中、RはR、RO−、RN−、またはRS−であり、Rはヒドロカルビル、ヘテロ置換ヒドロカルビル、またはヘテロシクロであり、Rは水素、ヒドロカルビルまたは置換ヒドロカルビルである。
【0111】
本明細書において単独または別の基の一部として用いられるところの、「アシルオキシ」という用語は、酸素結合(O)により結合された上述のアシル基、例えばRC(O)O−を表し、式中、Rは「アシル」という用語に関して定義されるとおりである。
【0112】
本明細書で用いられるところの「アルコールスカベンジャー」という用語は、アルコールと反応すると同時に酸を放出できる、試薬である。
【0113】
本明細書で用いられるところの「アルキル」という用語は、好ましくは、主鎖に1〜8の炭素原子、および最高20の炭素原子を含む低級アルキルである基を表す。それらは、直鎖または分枝鎖または環式であり得、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、ヘキシルなどを含む。
【0114】
本明細書で用いられるところの「アルカリール」または「アルキルアリール」という用語は、好ましくは、トルイル、エチルフェニル、またはメチルナプチル(methylnapthyl)等の低級アルキル置換基を有するアリール基である基を表す。
【0115】
本明細書で用いられるところの「アルケニル」という用語は、好ましくは、主鎖に2〜8の炭素原子、および最高20の炭素原子を含む低級アルケニルである基を表す。それらは、直鎖または分枝鎖または環式であり得、エテニル、プロペニル、イソプロペニル、ブテニル、イソブテニル、ヘキセニルなどを含む。
【0116】
本明細書で用いられるところの「アルキニル」という用語は、好ましくは、主鎖に2〜8の炭素原子、および最高20の炭素原子を含む低級アルキニルである基を表す。それらは、直鎖または分枝鎖であり得、エチニル、プロピニル、ブチニル、イソブチニル、ヘキシニルなどを含む。
【0117】
本明細書で用いられるところの「アラルキル」という用語は、好ましくは、ベンジル、フェニルエチルまたは2−ナプチルメチル(napthylmethyl)等のアリール置換基を有する1〜8の炭素原子を含む低級アルキルである基を表す。
【0118】
本明細書において単独または別の基の一部として用いられるところの、「芳香族」という用語は、任意で置換された同素環式または複素環式の芳香族基を表す。これらの芳香族基は、好ましくは、環部分に6〜14の原子を含む、単環式、二環式、または三環式基である。「芳香族」という用語は、以下に定義される「アリール」および「ヘテロアリール」基が含まれる。
【0119】
本明細書において単独または別の基の一部として用いられるところの、「アリール」という用語は、任意で置換された同素環式の芳香族基、好ましくは、環部分に6〜12の炭素を含む単環式または二環式基、例えばフェニル、ビフェニル、ナフチル、置換フェニル、置換ビフェニルまたは置換ナフチル等を表す。フェニルおよび置換フェニルが、より好ましいアリールである。
【0120】
本明細書において単独または別の基の一部として用いられるところの、「ハロゲン」または「ハロ」という用語は、塩素、臭素、フッ素、およびヨウ素をさす。
【0121】
「ヘテロ原子」という用語は、炭素および水素以外の原子を意味するものとする。
【0122】
本明細書において単独または別の基の一部として用いられるところの、「ヘテロシクロ」または「複素環式」という用語は、少なくとも一つの環に少なくとも一つのヘテロ原子を有し、好ましくは各環に5つまたは6つの原子を有する、任意に置換された、完全飽和または不飽和、単環式または二環式、芳香族または非芳香族基を表す。ヘテロシクロ基は、好ましくは環に1つまたは2つの酸素原子および/または1〜4の窒素原子を有し、炭素またはヘテロ原子により分子の残部に結合される。典型的なヘテロシクロ基には、下記の複素環式芳香族化合物が含まれる。典型的な置換基には、以下の基の一つ以上が含まれる:ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ヒドロキシ、保護ヒドロキシ、アシル、アシルオキシ、アルコキシ、アルケノキシ、アルキノキシ、アリールオキシ、ハロゲン、アミド、アミノ、シアノ、ケタール、アセタール、エステルおよびエーテル。
【0123】
本明細書において単独または別の基の一部として用いられるところの、「ヘテロアリール」という用語は、少なくとも一つの環に少なくとも一つのヘテロ原子を有し、好ましくは各環に5つまたは6つの原子を有する、任意に置換された芳香族基を表す。ヘテロアリール基は、好ましくは環に1つまたは2つの酸素原子および/または1〜4つの窒素原子を有し、炭素により分子の残部に結合される。例示的なヘテロアリールには、フリル、ベンゾフリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、オキサジアゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンズオキサジアゾリル、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、ピリジル、ピリミジル、ピラジニル、ピリダジニル、インドリル、イソインドリル、インドリジニル、ベンズイミダゾリル、インダゾリル、ベンゾトリアゾリル、テトラゾロピリダジニル、カルバゾリル、プリニル、キノリニル、イソキノリニル、イミダゾピリジルなどが含まれる。例示的な置換基には、以下の基の一つ以上が含まれる:ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ヒドロキシ、保護ヒドロキシ、アシル、アシルオキシ、アルコキシ、アルケノキシ、アルキノキシ、アリールオキシ、ハロゲン、アミド、アミノ、シアノ、ケタール、アセタール、エステルおよびエーテル。
【0124】
本明細書で用いられるところの「炭化水素」および「ヒドロカルビル」という用語は、炭素および水素のみからなる有機化合物またはラジカルを表す。これらの部分には、アルキル、アルケニル、アルキニル、およびアリール部分が含まれる。これらの部分には、アルカリール、アルケナリールおよびアルキナリール等、他の脂肪族または環式炭化水素基により置換されたアルキル、アルケニル、アルキニル、およびアリール部分も含まれる。特に明記しない限り、これらの部分は、好ましくは1〜20の炭素原子を含む。
【0125】
本明細書に記載される「置換ヒドロカルビル」部分は、炭素鎖原子が窒素、酸素、シリコン、リン、ホウ素、硫黄、またはハロゲン原子等のヘテロ原子により置換される部分を含む、炭素以外の少なくとも一つの原子により置換されるヒドロカルビル部分である。これらの置換基には、ハロゲン、ヘテロシクロ、アルコキシ、アルケノキシ、アリールオキシ、ヒドロキシ、保護ヒドロキシ、アシル、アシルオキシ、ニトロ、アミノ、アミド、ニトロ、シアノ、ケタール、アセタール、エステルおよびエーテルが含まれる。
【0126】
本明細書で用いられるところの「ヒドロキシ保護基」という用語は、保護が用いられる反応の後に分子の残部を乱さずに除去されうる、遊離ヒドロキシ基(「保護ヒドロキシ」)を保護することが可能な基を表す。
【0127】
本発明の要素またはその好ましい実施形態(単数または複数)を紹介する際に、冠詞「a」、「an」、「the」、および「前記」は、要素が一つ以上あることを意味するものとする。「含む(comprising)」、「含む(including)」および「有する」という用語は、包括的であり、列挙された要素以外の追加的要素がありうることを意味する。
【0128】
本発明の範囲を逸脱することなく、上記の化合物、産物および方法に様々な変更がなされうるが、上述の説明および以下の実施例に含まれる全ての事柄は、例示的であり、制限を意味するものではないと解釈されるものとする。
【実施例】
【0129】
以下の実施例は、本発明の様々な繰り返しを示す。
(実施例1)
【0130】
反応スキーム2のステップAによる7,8−ジヒドロシノメニンの調製。
シノメニン.HCl.xH0が、メタノール(シノメニン1グラムあたり1.0mL)および水(シノメニン1グラムあたり3.0mL)に懸濁された。酢酸(HOAc)(シノメニン1グラムにつき0.086mL)および5%Pd/C(シノメニン1グラムあたり0.05g)が、加えられた。混合物が水素下(40psi)で撹拌され、水素の吸収が止まるまで(約4〜10時間)50℃に加熱された。反応混合物が中和、濾過、および乾燥されたあと、純粋な産物、7,8−ジヒドロシノメニンが、85%〜95%の収率で固体として得られた。
(実施例2)
【0131】
反応スキーム2のステップBによる式(Ib)を含む化合物の調製。
7,8−ジヒドロシノメニン(3.30g、10mmol)が、CHCl(15mL)に懸濁された。NaHCO(6g)およびMgSO(1.5g)が、加えられた。混合物が撹拌され、64℃に加熱された。混合物が、62℃〜66℃の温度で滴下された3〜4当量の1−クロロエチルクロロホルメート(EtOCOCl)と反応させられた。水(50mL)が加えられ、混合物が30分間撹拌されて、固体が全て溶解された。クロロホルム(15mL)が加えられ、有機層が分離され、水(50mL)中5%HOAcとともに0.5時間撹拌された。有機層が水(3×50mL)で洗浄され、水(50mL)中5%HOAcとともに2時間撹拌された。そして、これが減圧されて粘着物質が得られ、これがクロロホルムに再溶解され、再び減圧されて、O−EtOCO、N−EtOCO−7,8−ジヒドロノルシノメニンが>80%の純度で得られた。
【0132】
あるいは、7,8−ジヒドロシノメニンが、クロロホルムに溶解された。NaHCOおよびMgSOが、加えられた。混合物が、62℃〜66℃に加熱された。EtOCOClが、混合物にゆっくり滴下され、中間化合物が形成され、これが希釈酸または塩基で処理されて、O−EtOCO、NEtOCO−7,8ジヒドロノルシノメニンが得られた。
(実施例3)
【0133】
反応スキーム1のステップAによる式(Ia)を含む化合物の調製。
シノメニン(3.30g、10mmol)が、CHCl(15mL)に懸濁された。NaHCO(6g)が加えられ、混合物が撹拌された。それから、3〜12当量のEtOCOClが加えられ、溶液が62℃〜66℃の温度で1〜7時間インキュベートされた。水(50mL)が加えられ、混合物が30分間攪拌されて固体が全て溶解された。クロロホルム(15mL)が加えられ、有機層が分離され、水(2×30mL)中5%HOAcとともに撹拌された。そして、これが減圧されて粘着物質が得られ、これが酢酸イソプロピルに再溶解され、再び減圧されて、O−EtOCO、N−EtOCO−シノメニンが>80%の純度で得られた。
【0134】
別の例では、シノメニン(3.30g、10mmol)が、クロロホルム(15mL)に懸濁され、NaHCO(6g)およびMgSO(1.5g)と合わせられた。溶液が62℃に加熱され、撹拌された。それから、CHCl中で20mLに希釈されたCHCHClOCOCl(6×1.1mL)が滴下され、62℃で約20〜30時間まで撹拌された。水(50mL)が加えられ、混合物が1時間攪拌されて固体が全て溶解された。クロロホルムが加えられ、有機層が分離されて、水(3:1、50mL)中で1時間撹拌されて、CHCHClOCO−N−シノメニンが得られた。
(実施例4)
【0135】
反応スキーム1のステップBによる式(Ib)を含む化合物の調製。
酢酸イソプロピル中のO−(BzOCO)、N−(BzOCO)−7,8−ジヒドロノルシノメニンが、水素下(40psi)で、50℃で一晩撹拌されて、7,8−ジヒドロノルシノメニンが得られた。
(実施例5)
【0136】
式(Ic)を含む化合物の調製。
一例においては、O−(EtOCO)、N−(EtOCO)−7,8−ジヒドロノルシノメニンがクロロホルムに溶解され、2時間MgSO上で乾燥されてから、濾過された。CHCl(1.0mL)および1.0mLの(MeSOO、P、POBr、PBr、SOBr、POCl、またはSOClのいずれかが合わせられて、MeSOHに加えられた。混合物が、30分間室温で冷却された。濾過されたO−EtOCO、N−EtOCO−7,8−ジヒドロノルシノメニン(0.1mL)が加えられ、24時間室温でインキュベートされた。室温で30分または24時間後、あるいは70℃で1時間後に、0.1mLの試料が、MeOH/HO(2:1)中0.033N NaOHで希釈され、>12のpHで、10分間インキュベートされた。HOAc(0.1mL)が加えられ、溶液がHPLCで分析された。下表1に列挙されるコントロールおよび試料の組み合わせの中で、エントリ4、6、10、14、および16から、N−(EtOCO)−4,5−エポキシ−7,8−ジヒドロノルシノメニンの良い結果が得られた。
【表1】

【0137】
さらに別の例では、ジヒドロシノメニン(1.6g)が、クロロホルム(80mL)に溶解され、−50℃に冷却された。MeSOH(1.7mL)が加えられた。クロロホルム(10mL)中Br(0.54mg)の溶液が加えられた。混合物を、5分間0℃に暖まらせた。色が、明るくなった。水(80mL)中1N NaOHの溶液が、上記の反応混合物に加えられた。これが、15分間0℃で撹拌された。有機層が、1N NaOH(3×80mL)および水(2×80mL)で洗浄された。有機層が減圧乾燥されて、3.02gの固体が得られた。クロマトグラフィの後、4,5−エポキシ−ジヒドロシノメニンの純粋な産物が得られる。
(実施例6)
【0138】
式(Ic)を含む化合物からの(+)−ノルヒドロモルホンの調製。
MeSOH中、O−ROCO、N−ROCO−ジヒドロノルシノメニンと、POClにより、N−ROCO−ノルヒドロコドンが形成される。上記の反応混合物への適切な量の水およびプロピオン酸等のプロトン性溶媒の添加後、100℃で加熱することにより、(+)−ノルヒドロコドンが形成される。反応混合物へのメチオニンの添加後、100℃で加熱することにより、(+)−ノルヒドロモルホンが形成される。
(実施例7)
【0139】
式(Ic)を含む化合物からの(+)−ヒドロモルホンの調製。
O−ROCO、N−ROCO−7,8−ジヒドロノルシノメニンのBBrおよびHBrによるクロロホルム中の連続的な処理により、(+)−N−ROCO−ヒドロコドン、そして(+)−N−ROCO−ヒドロモルホンが形成され、これが、強酸性溶液中での加熱後、(+)−ノルヒドロモルホンにさらに転換されうる。
(実施例8)
【0140】
(+)−ノルヒドロコドンの合成。
(+)−ノルヒドロコドンが、以下のスキームに従って合成された:
【化19】

【0141】
(+)−ヒドロコドンおよび重炭酸ナトリウムが、100mL丸底フラスコ中で無水クロロホルム100mLに懸濁された。フラスコが窒素で覆われ、加熱還流された。1−クロロエチルクロロホルメートが、四回に分けて加えられた。還流2時間目で試料がとられ、分析された。別の試料が反応物からとられ、窒素流下で蒸発された。それから、これが5%HOAcの添加によりクエンチされた。クロロホルムが加えられ、水相が抽出された。クロロホルム相が、5%HOAcでもう一度洗浄されてから、硫酸ナトリウム上で乾燥された。溶液が蒸発され、透明な油がHPLCにより分析された。
【0142】
ブフナー漏斗を用いて溶液を濾過して重炭酸ナトリウムを除去することにより、反応物が濃縮された。濾過液が、ベージュ色の気泡に蒸発された。イソプロパノールまたはメタノールから気泡を再結晶する試みにより、半分オイルアウトした固体が得られた。溶媒が、明るい褐色の固体に蒸発された。固体が、一晩減圧下で乾燥されて、2.58gが得られた。固体の試料が、HPLCで分析された。
(実施例9)
【0143】
(+)−N−アリル−ヒドロコドンの合成。
(+)−N−アリル−ヒドロコドンが、以下のスキームに従って合成された:
【化20】

【0144】
(+)−ノルヒドロコドンが、250mL丸底フラスコ中でジメチルホルムアミドに溶解された。重炭酸ナトリウムが加えられた。最後に、臭化アリルが加えられた。フラスコが窒素で覆われ、3時間室温で撹拌された。試料がとられ、HPLCで分析された。約30%の出発物質が、なお残っていた。もう1.545mLの臭化アリルおよび4.58gの重炭酸ナトリウムが、反応物に加えられた。反応物を一晩室温で撹拌させた。別の試料が、HPLCにより分析された。反応混合物には出発物質が残っていなかった。100mLの水を加えて、反応物がエンチされた。溶液が、1時間撹拌された。溶媒が、減圧下で除去された。残留物が、DCMおよび水の間で再懸濁された。水層がDCMで二度抽出された。合わせられた有機抽出液が、飽和NaHCOおよび20%NaClで洗浄された。有機層が硫酸ナトリウム上で乾燥され、蒸発乾燥された。得られた茶色油が、減圧下で一晩乾燥された。試料が、HPLCで分析された。油が6.00g(85%)得られた。
(実施例10)
【0145】
ノルジヒドロシノメニンの合成。
ノルジヒドロシノメニンが、以下のスキームに従って合成された:
【化21】

【0146】
ジヒドロシノメニン(10.0g、30.3mmol)が、窒素ブランケット下で150mLの1,2−ジクロロエタンに溶解された。この溶液に、重炭酸ナトリウム(7.6g、90.5mmol)および無水MgSO(14.5g、120.7mmol)が加えられた。それから、得られた懸濁液が65℃に加熱され、1−クロロエチルコロホルメート(chloroethyl choroformate)(25.0g、175mmol)が10分間で慎重に滴下された。添加終了後、反応の進行がHPLCによりモニタされた。1.5時間後に反応が完了し、室温に冷却された。それから、懸濁液が濾過されて固体が除去され、等しい体積の1%蟻酸水溶液によりクエンチされた。得られた二相混合物が、室温で一晩よく撹拌された。それから溶液のpHが濃縮水酸化アンモニウムによりpH10に上げられた。相が分離され、水相がジクロロエタンによりもう一度抽出された。合わせられた有機相が、MgSO上で乾燥され、濾過され、蒸発されて、薄茶色気泡(2.8g)の産物が得られた。
(実施例11)
【0147】
N−シクロプロピルメチル−ジヒドロシノメニンの合成。
N−シクロプロピルメチル−ジヒドロシノメニンが、以下のスキームに従って調製された:
【化22】

【0148】
ノルジヒドロシノメニン(1.73g、5.5mmol)が、窒素雰囲気下で無水DMF(8.0mL)に溶解された。この溶液に、NaHCO(0.92g、10.9mmol)およびシクロプロピルメチルブロミド(688μL、7.1mmol)が加えられた。得られた溶液が、50℃で65時間撹拌された。HPLC分析により、反応が完了したことが明らかとなったため、反応物が20mLのHOの添加によりクエンチされた。それから、得られた溶液がジクロロメタン(3×30mL)で抽出され、合わせられた有機相は蒸発されて茶色っぽい油が得られた。残余のDMFのほとんどを除去するために、油がn−ヘプタン(100mL)で処理され、高真空下で、回転蒸発器で蒸発された。茶色の気泡が得られるまで、これが四回繰り返された。それから、粗生成物が、シリカゲルによるフラッシュクロマトグラフィ(2:1、クロロホルム:CMA;CMA=90:9:1、クロロホルム:メタノール:水酸化アンモニウム)により精製された。合わせられた画分が蒸発されて、オフホワイト固体の産物(0.546g)が得られた。m/z=372.30(M+H);H NMRおよび13C NMRは、所望の産物と整合した。2D−COESY NMRは、H−7およびH−14の間に相関がないことを示し、7位の立体化学がSであることを示唆した。
(実施例12)
【0149】
N−アリル−ジヒドロシノメニンの合成。
N−アリル−エイヒドロシノメニン(eihydrosinomenine)が、以下のスキームに従って調製された:
【化23】

【0150】
ノルジヒドロシノメニン(50mg、0.16mmol)が、窒素雰囲気下で5mL無水DMFに溶解された。それから、炭酸ナトリウム(27mg)を加え、反応物を10分間室温で撹拌させた。それから、臭化アリル(17μL、0.2mmol)が加えられ、反応の進行がHPLCによりモニタされた。16時間後に、反応物が10mL HOによりクエンチされ、得られた溶液がジクロロメタン(3×15mL)により抽出された。合わせられた有機相が蒸発され、茶色っぽい油が得られた。粗生成物が、分取逆相クロマトグラフィにより精製されて、オフホワイト固体の産物が得られた。MS:M+H=358.22。

化合物2、3および4の合成のための反応スキーム。
【化24】

(実施例13)
【0151】
4−ベンジル−ジヒドロシノメニン(化合物2)の合成
アセトニトリル(200mL)中ジヒドロシノメニン(10g、0.0302モル、1eq.)の混合物に、粉末KOH(6g、0.111モル、3.68eq.)が加えられ、得られた混合物が約30分間室温で撹拌されてから、臭化ベンジル(3.8mL、0.0317モル、1.05eq.)が加えられた。反応物は徐々にピンクから無色に変わり、多量の白降汞が形成された。15分間の撹拌後、200mL水が加えられ、産物が、ジクロロメタン(3×150mL)で抽出され、合わせられた有機相が、水(3×150mL)で洗浄され、無水硫酸マグネシウム上で乾燥された。乾燥した有機相を除去した後、the83%の純度の、13gの薄黄色固体があった。
(実施例14)
【0152】
4−ベンジル−N−フェノキシカルボニルジヒドロシノメニン(化合物3)の合成。
4−ベンジル−ジヒドロシノメニン(10g、0.024モル、1eq.)の冷却された混合物に、重炭酸ナトリウム(12g、0.0653モル、3eq.)およびアセトニトリル(65mL)が加えられた。反応フラスコが浴氷中に配置され、フェニルクロロホルメート(12.9mL、0.103モル、4.3eq.)が滴下された。得られた混合物が、6時間63℃(油浴温度)に徐々に加熱された。室温に冷却後、350mLの酢酸エチルが反応混合物に加えられた後、200mLの水が加えられた。有機相が分離され、水相が、酢酸エチル(2×100mL)で抽出された;合わせられた有機相は、3N NaOH水溶液(5×150mL)、水(200mL)で洗浄され、無水硫酸マグネシウム上で乾燥された。乾燥試薬を濾過した後、濾過液が蒸発されて揮発性物質が除去された。残留物が1:1EtOAc/ヘプタンによるシリカゲルクロマトグラフィでさらに精製され、95%の純度の3.3gの産物が得られた。LC−MS:M+1=528.13。
(実施例15)
【0153】
4−ベンジル−ノルジヒドロシノミネン(Nordihydrosinominene)(化合物4)の合成。
4−ベンジル−N−フェノキシカルボニル−ジヒドロシノメニン(1.0g、1.9ミリモル、1eq.)、ジメチルスルホキシド(1mL)、トルエン(4mL)、および水酸化カリウム(0.5g、8.7ミリモル、4.7eq.)の混合物が、4時間86℃(油浴)に加熱された。反応物が室温に冷却されたあと、100mLの酢酸エチルが反応物に加えられた。得られた混合物が、2N NaOH(5×50mL)および水(50mL)で洗浄された。有機相が、無水硫酸マグネシウム上で乾燥された。揮発性物質を除去した後に、0.6gの茶色油が得られた。粗製物質が、EtOAc/DCM/MeOH+1%EtNの混合物によるシリカゲルクロマトグラフィで精製され、92%の純度の0.2gの粘着性の薄茶色油が得られた。LC−MS:M+1=408.21。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)を含む化合物:
【化25】

(式中、
は、水素、および{−}OCORからなる群より選択され;
は、水素、ヒドロカルビル、および置換ヒドロカルビルからなる群より選択され;
は、水素、{−}OCOR、{−}OCR、およびエーテル含有環の一部を形成する結合より選択されるが、Rがエーテル含有環を形成する結合である場合には、化合物(I)は(+)エナンチオマーであるという条件であり;
は、{−}ORおよび水素からなる群より選択され;
およびRは、ヒドロカルビルおよび置換ヒドロカルビルからなる群より独立して選択され;
は、水素、ヒドロカルビル、および置換ヒドロカルビルからなる群より選択され;
およびRは、水素、ヒドロキシ、ヒドロカルビル、および置換ヒドロカルビルからなる群より独立して選択され、または、RおよびRが一緒にカルボニル基を形成し;
10およびR11は、水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、およびハロゲンからなる群より独立して選択され;そして
【化26】

は、単結合または二重結合である)。
【請求項2】
前記化合物が、式(Ia)を含む、請求項1に記載の化合物:
【化27】

(式中、
は、水素、{−}OCOR、および{−}OCRからなる群より選択され;
およびRは、ヒドロカルビルおよび置換ヒドロカルビルからなる群より独立して選択され;
およびRは、水素、ヒドロキシル、ヒドロカルビル、および置換ヒドロカルビルからなる群より独立して選択され、または、RおよびRが一緒にカルボニル基を形成し;
12およびR13は、水素、ヒドロカルビル、および置換ヒドロカルビルからなる群より独立して選択され、または、R12およびR13が一緒にカルボニル基を形成し;そして
10、R11、およびR14は、水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、およびハロゲンからなる群より独立して選択される)。
【請求項3】
前記化合物が、式(Ib)を含む、請求項1に記載の化合物:
【化28】

(式中、
は、水素、および{−}OCORからなる群より選択され;
は、水素、{−}OCOR、および{−}OCRからなる群より選択され;
およびRは、ヒドロカルビルおよび置換ヒドロカルビルからなる群より独立して選択され;
およびRは、水素、ヒドロキシル、ヒドロカルビル、および置換ヒドロカルビルからなる群より独立して選択され、またはRおよびRが一緒にカルボニル基を形成し;
12およびR13は、水素、ヒドロカルビル、および置換ヒドロカルビルからなる群より独立して選択され、または、R12およびR13が一緒にカルボニル基を形成し;
10、R11、R14およびR15は、水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、およびハロゲンからなる群より独立して選択され、または、R14およびR15が一緒にカルボニル基を形成する)。
【請求項4】
前記化合物が、式(Ic)の(+)エナンチオマーを含む、請求項1に記載の化合物:
【化29】

(式中、
は、水素、および{−}OCORからなる群より選択され;
は、水素、およびメチルからなる群より選択され;
は、ヒドロカルビルおよび置換ヒドロカルビルからなる群より選択され;
およびRは、水素、ヒドロキシル、ヒドロカルビル、および置換ヒドロカルビルからなる群より独立して選択され、または、RおよびRが一緒にカルボニル基を形成し;
16およびR17は、水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビルからなる群より独立して選択され、または、R16およびR17が一緒にカルボニル基を形成し;
10、R11、R14およびR15は、水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、およびハロゲンからなる群より独立して選択され、または、R14およびR15が一緒にカルボニル基を形成する)。
【請求項5】
C(15)およびC(16)原子が両方とも、分子のアルファ面または分子のベータ面のいずれかにあるという条件で、C(13)、C(14)、およびC(9)炭素の立体化学が、それぞれ、表AまたはBに列挙される組み合わせより選択される、請求項1〜4のいずれかに記載の化合物。
【請求項6】
以下の反応スキームによる、化合物(Ib)の調製のためのプロセス:
【化30】

(式中、
Rは、ヒドロカルビル、および置換ヒドロカルビルより選択され;
は、水素および{−}OCORからなる群より選択され;
は、水素、{−}OCOR、および{−}OCRからなる群より選択され;
およびRは、ヒドロカルビルおよび置換ヒドロカルビルからなる群より独立して選択され;
およびRは、水素、ヒドロキシル、ヒドロカルビル、および置換ヒドロカルビルからなる群より独立して選択され、または、RおよびRが一緒にカルボニル基を形成し;
12およびR13は、水素、ヒドロカルビル、および置換ヒドロカルビルからなる群より独立して選択され、または、R12およびR13が一緒にカルボニル基を形成し;
10、R11、およびR14は、水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、およびハロゲンからなる群より独立して選択され;
15は、水素であり;そして
Xは、ハロゲンである)。
【請求項7】
前記式(II)を含む化合物対ROCOX対プロトン受容体のモル比が、約1:3:1〜約1:12:12であり;前記プロトン受容体が、pHが7より大きい塩であり;前記ステップAの反応が、非プロトン性溶媒の存在下で;約45℃〜約120℃の範囲の温度で行われ;化合物(Ia)対遷移金属触媒のモル比が、約1:0.0005〜約1:0.005であり;前記ステップBの反応が、約0〜約500PSIの圧力を有する加圧水素下で行われ、前記ステップBの反応が、メタノールを含む溶媒の存在下で、約20℃〜約120℃の範囲の温度で行われる請求項6に記載のプロセス。
【請求項8】
以下の反応スキームによる、化合物(Ib)の調製のためのプロセス:
【化31】

(式中、
Rは、ヒドロカルビル、および置換ヒドロカルビルより選択され;
は、水素および{−}OCORからなる群より選択され;
は、水素、{−}OCOR、および{−}OCRからなる群より選択され;
およびRは、ヒドロカルビルおよび置換ヒドロカルビルからなる群より独立して選択され;
およびRは、水素、ヒドロキシル、ヒドロカルビル、および置換ヒドロカルビルからなる群より独立して選択され、または、RおよびRが一緒にカルボニル基を形成し;
12およびR13は、水素、ヒドロカルビル、および置換ヒドロカルビルからなる群より独立して選択され、または、R12およびR13が一緒にカルボニル基を形成し;
10、R11、およびR14は、水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、およびハロゲンからなる群より独立して選択され;
15は、水素であり;
Xは、ハロゲンである)。
【請求項9】
前記式(II)を含む化合物対プロトン供与体対遷移金属触媒のモル比が、約1:0.5:0.0005〜約1:10:0.05であり、前記ステップAの反応が、約0〜約500PSIの圧力を有する加圧水素下で行われ、前記ステップAの反応が、メタノールを含む溶媒の存在下で、約20℃〜約120℃の範囲の温度で行われ;前記式(IIa)を含む化合物対ROCOX対プロトン受容体のモル比が、約1:2:1〜約1:20:20であり、前記ステップBの反応が、非プロトン性溶媒の存在下で、約45℃〜約120℃の範囲の温度で行われる、請求項8に記載のプロセス。
【請求項10】
前記プロトン供与体が、HOAc、HCOH、HCl、およびHSOからなる群より選択され;前記遷移金属触媒が、Pd/C、Pt/C、Ru/C、およびRh/Cからなる群より選択され;前記プロトン受容体が、NaHCO、KHCO、LiHCO、NaCO、KCO、LiCO、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項8〜10のいずれかに記載のプロセス。
【請求項11】
R、RおよびRが、1〜8個の炭素原子を有するアルキル基、アリール基、CHCHCl−{−}、CH=CH−{−}、および{−}CH−アリール基からなる群より独立して選択され、Xが塩素である、請求項6〜10のいずれかに記載のプロセス。
【請求項12】
前記式(Ib)を含む化合物を、スカベンジャーおよびプロトン供与体と接触させて、式(Ic)を含む化合物を形成するステップをさらに含み:
【化32】

式中、
は、水素、および{−}OCORからなる群より選択され;
は、水素、およびメチルからなる群より選択され;
は、ヒドロカルビルおよび置換ヒドロカルビルからなる群より選択され;
およびRは、水素、ヒドロキシル、ヒドロカルビル、および置換ヒドロカルビルからなる群より独立して選択され、または、RおよびRが一緒にカルボニル基を形成し;
10、R11、R14およびR15は、水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、およびハロゲンからなる群より独立して選択され、または、R14およびR15が一緒にカルボニル基を形成し;
16およびR17は、水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビルからなる群より独立して選択され、または、R16およびR17が一緒にカルボニル基を形成し;そして
ここで前記スカベンジャーが、アルコールスカベンジャーであり;化合物(Ib)対スカベンジャー対プロトン供与体のモル比が、約1:0.5:2〜約1:2:20であり;前記反応が、非プロトン性溶媒の存在下で行われ;前記反応が、約0℃〜約100℃の範囲の温度で行われる、
請求項6〜11のいずれかに記載のプロセス。
【請求項13】
前記式(Ic)を含む化合物が(+)エナンチオマーであり;C(15)および前記C(16)原子が両方とも、分子のアルファ面または分子のベータ面のいずれかにあるという条件で、前記式(IIa)、(Ia)、または(Ib)を含む化合物の前記C(13)、C(14)、およびC(9)炭素の立体化学が、それぞれ、表AまたはBに列挙される組み合わせからなる群より選択される、請求項12に記載のプロセス。
【請求項14】
(+)−ノルヒドロコドンを形成するために、前記式(Ic)を含む化合物をプロトン供与体と接触させるステップをさらに含む、請求項12〜13のいずれかに記載のプロセス。
【請求項15】
(+)−ノルヒドロモルホンを形成するために、前記(+)−ノルヒドロコドンをO−脱メチル化薬剤と接触させるステップをさらに含む、請求項12〜14のいずれかに記載のプロセス。

【公表番号】特表2011−506602(P2011−506602A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−539459(P2010−539459)
【出願日】平成20年12月17日(2008.12.17)
【国際出願番号】PCT/US2008/013776
【国際公開番号】WO2009/078987
【国際公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【出願人】(595181003)マリンクロッド・インコーポレイテッド (203)
【氏名又は名称原語表記】Mallinckrodt INC.
【Fターム(参考)】