説明

(+)−6−ヒドロキシ−モルフィナンまたは(+)−6−アミノ−モルフィナン誘導体

本発明は、置換6−ヒドロキシまたは6−アミン基を含む(+)−モルフィナニウム化合物を提供する。本発明はまた、本発明の化合物を投与することによってミクログリア活性化を阻害する方法も提供する。本発明は一般に、置換(+)−6−ヒドロキシ−モルフィナンまたは置換(+)−6−アミン−モルフィナン、および置換(+)−6−ヒドロキシ−モルフィナンまたは置換(+)−6−アミン−モルフィナンを用いて中枢神経系におけるミクログリア活性化を阻害する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本出願は、2009年2月23日に出願された米国仮特許出願第61/154,449号からの優先権を主張し、その全体が本明細書により参照として援用される。
【0002】
(発明の分野)
本発明は一般に、置換(+)−6−ヒドロキシ−モルフィナンまたは置換(+)−6−アミン−モルフィナン、および置換(+)−6−ヒドロキシ−モルフィナンまたは置換(+)−6−アミン−モルフィナンを用いて中枢神経系におけるミクログリア活性化を阻害する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
ミクログリアは、中枢神経系において、第1の主要な能動的免疫防御形態としての機能を果たす。これらの細胞は、体細胞免疫系の単球または組織マクロファージと機能的に同等であると考えられる。ミクログリアは、脳損傷および炎症の部位に移動し、ここで分化して増殖すると長い間認識されてきた。したがって、ミクログリアの活性化は、多数の神経炎症性疾患または障害において主要な役割を果たすと思われる。さらに、ミクログリア活性化は、アヘン剤によって調節され、アヘン剤依存および耐性の発達に関係してきた。muアヘン剤受容体アンタゴニストである、(−)−ナロキソンおよび(−)−ナルトレキソンは、ミクログリア活性化に関与する炎症誘発経路を阻害することが示されている。しかし、ナロキソンおよびナルトレキソンの(+)鏡像光学異性体がミクログリア阻害活性を保持することが示されている点から、ミクログリア活性化の阻害は、非立体選択的である。したがって、(+)−モルフィナン化合物は、鎮咳剤として炎症性疾患を処置し、またはアヘン剤の乱用および依存の可能性を低減するのに有用であり得る。モルフィナン環の6位での置換により、官能基化されていない前駆体と比較して増大した活性を有するプロドラッグとして機能する化合物を得ることができる。したがって、6位に置換ヒドロキシまたはアミノ基を有する、鏡像光学異性体の一方である(+)−モルフィナン化合物が必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
(発明の要旨)
本発明は、置換(+)−6−ヒドロキシ−モルフィナンまたは置換(+)−6−アミン−モルフィナン、ならびに置換(+)−6−ヒドロキシ−モルフィナンまたは置換(+)−6−アミン−モルフィナンを用いてミクログリア活性化を阻害する方法を提供する。
【0005】
本発明の一態様は、式(II):
【0006】
【化1】

【0007】
[式中、
Aは、{−}ORおよび{−}NRからなる群から選択され、
は、ヒドロカルビルおよび置換ヒドロカルビルからなる群から選択され、
、R、R、およびRは、水素、ヒドロカルビル、および置換ヒドロカルビルからなる群から独立して選択され、
およびRは、水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ハロゲン、{−}OH、{−}NH、および{−}ORからなる群から独立して選択され、
は、ヒドロカルビルおよび置換ヒドロカルビルからなる群から選択され、
Yは、水素、ヒドロキシ、保護されたヒドロキシ、アルコキシ、およびアシルオキシからなる群から選択され、
Zは、ヒドロキシ、保護されたヒドロキシ、アルコキシ、およびアシルオキシからなる群から選択され、そして
7位の炭素原子と8位の炭素原子との間の破線は、単結合または二重結合を表す]を含む化合物またはその薬学的に許容される塩を包含する。
【0008】
本発明の別の態様は、式(I):
【0009】
【化2】

【0010】
[式中、
Aは、{−}ORおよび{−}NRからなる群から選択され、
は、ヒドロカルビルおよび置換ヒドロカルビルからなる群から選択され、
、R、R、およびRは、水素、ヒドロカルビル、および置換ヒドロカルビルからなる群から独立して選択され、
およびRは、水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ハロゲン、{−}OH、{−}NH、および{−}ORからなる群から独立して選択され、
は、ヒドロカルビルおよび置換ヒドロカルビルからなる群から選択され、
Yは、水素、ヒドロキシ、保護されたヒドロキシ、アルコキシ、およびアシルオキシからなる群から選択され、
Zは、ヒドロキシ、保護されたヒドロキシ、アルコキシ、およびアシルオキシからなる群から選択され、
Z’は、水素、ヒドロキシ、保護されたヒドロキシ、アルコキシ、およびアシルオキシからなる群から選択され、そして
7位の炭素原子と8位の炭素原子との間の破線は、単結合または二重結合を表す]
を含む化合物またはその薬学的に許容される塩を提供する。
【0011】
本発明の他の態様および反復を、以下に、より詳細に記載する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(発明の詳細な説明)
本発明は、置換(+)−6−ヒドロキシ−モルフィナンまたは置換(+)−6−アミン−モルフィナンを提供する。本発明の化合物は、天然に存在するアヘン剤アルカロイドの鏡像光学異性体である。置換(+)−6−ヒドロキシ−モルフィナンまたは置換(+)−6−アミノ−モルフィナンは、中枢神経系のグリア(すなわち、ミクログリアおよび星状細胞)に優先的に結合して、その活性化を阻害する。
【0013】
(I)置換(+)−6−ヒドロキシ−または6−アミノ−モルフィナン化合物
(a)式(II)を含む化合物
本発明の一態様は、式(II):
【0014】
【化3】

【0015】
[式中、
Aは、{−}ORおよび{−}NRからなる群から選択され、
は、ヒドロカルビルおよび置換ヒドロカルビルからなる群から選択され、
、R、R、およびRは、水素、ヒドロカルビル、および置換ヒドロカルビルからなる群から独立して選択され、
およびRは、水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ハロゲン、{−}OH、{−}NH、および{−}ORからなる群から独立して選択され、
は、ヒドロカルビルおよび置換ヒドロカルビルからなる群から選択され、
Yは、水素、ヒドロキシ、保護されたヒドロキシ、アルコキシ、およびアシルオキシからなる群から選択され、
Zは、ヒドロキシ、保護されたヒドロキシ、アルコキシ、およびアシルオキシからなる群から選択され、そして
7位の炭素原子と8位の炭素原子との間の破線は、単結合または二重結合を表す]
を含む化合物またはその薬学的に許容される塩を包含する。
【0016】
好ましい反復において、R、R、R、およびRは、それぞれ、水素である。
【0017】
本発明のこの態様の一実施形態において、上記化合物は、式(IIa):
【0018】
【化4】

【0019】
[式中、
A、R、R、およびR、Y、およびZは、式(II)を含む化合物について先に定義した通りである]
またはその薬学的に許容される塩を含む。
【0020】
代表的な式(IIa)を含む化合物またはそれらの薬学的に許容される塩として、(+)−ナルブフィンおよび(+)−ナルフラフィンが挙げられる。
【0021】
本発明のこの態様の別の実施形態において、上記化合物は、式(IIb):
【0022】
【化5】

【0023】
[式中、
A、R、R、およびR、Y、およびZは、式(II)を含む化合物について先に定義した通りである]
またはその薬学的に許容される塩を含む。
【0024】
ただし、式(II)、(IIa)または(IIb)を含む化合物についての各実施形態において、Aが、{−}OH、{−}O(CO)CH、{−}NH(CHOH、{−}NH(CO)CH、または{−}NHであるときは、Rがメチル以外である。
【0025】
ただし、式(II)、(IIa)または(IIb)を含む化合物についての各実施形態において、Aが、{−}OH、{−}NH(CHOH、または{−}NH(CO)CHであるときは、Rが{−}CH(CH)CH以外である。
【0026】
ただし、式(II)、(IIa)または(IIb)を含む化合物についての各実施形態において、Aが、{−}OH、{−}NCH(CO)CH(CH)(CH)O、{−}NH(CHOH、{−}NH(CO)CH、{−}NH、または{−}NHCHであるときは、Rが{−}CH(シクロプロパン)以外である。
【0027】
ただし、式(II)、(IIa)または(IIb)を含む化合物についての各実施形態において、Aが、{−}OHであるときは、Rが{−}CH(シクロブタン)以外である。
【0028】
(b)式(I)を含む化合物
本発明の別の態様は、式(II):
【0029】
【化6】

【0030】
[式中、
Aは、{−}ORおよび{−}NRからなる群から選択され、
は、ヒドロカルビルおよび置換ヒドロカルビルからなる群から選択され、
、R、R、およびRは、水素、ヒドロカルビル、および置換ヒドロカルビルからなる群から独立して選択され、
およびRは、水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ハロゲン、{−}OH、{−}NH、および{−}ORからなる群から独立して選択され、
は、ヒドロカルビルおよび置換ヒドロカルビルからなる群から選択され、
Yは、水素、ヒドロキシ、保護されたヒドロキシ、アルコキシ、およびアシルオキシからなる群から選択され、
Zは、ヒドロキシ、保護されたヒドロキシ、アルコキシ、およびアシルオキシからなる群から選択され、
Z’は、水素、ヒドロキシ、保護されたヒドロキシ、アルコキシ、およびアシルオキシからなる群から選択され、
7位の炭素原子と8位の炭素原子との間の破線は、単結合または二重結合を表す]
を含む化合物またはその薬学的に許容される塩を包含する。
【0031】
好ましい反復において、R、R、R、およびRは、水素である。
【0032】
本発明のこの態様の一実施形態において、上記化合物は、式(Ia):
【0033】
【化7】

【0034】
[式中、
、R、R、およびR、Y、Z、およびZ’は、式(I)を含む化合物について先に定義した通りである]
またはその薬学的に許容される塩を含む。
【0035】
本発明のこの態様のさらなる実施形態において、上記化合物は、式(Ib):
【0036】
【化8】

【0037】
[式中、
A、R、R、およびR、Y、Z、およびZ’は、式(I)を含む化合物について先に定義した通りである]
またはその薬学的に許容される塩を含む。
【0038】
上記実施形態の好ましい反復において、Rは、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルメチル、アルケニル、アルキニル、またはアリールである。より好ましい反復において、Rは、シクロプロピルメチル、シクロブチルメチル、アリル、プロパルギル、またはベンジルである。好ましくは、Aは、ヒドロキシ、アルコキシ、アシルオキシ、アミン、アルキル置換アミン、アミド、カルバミル(すなわち、{−}OCNH)、カーボネート、またはウレアである。Aがアルコキシである反復において、アルキル置換基は、好ましくは低級アルキルである。Aがアシルオキシ(すなわち、{−}OC(=O)R)である反復において、R置換基は、水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、または複素環である。Aがアミン(すなわち、{−}NR’R”)である反復において、R’は、水素、ヒドロカルビル、または置換ヒドロカルビルであり、そしてR”は、ヒドロカルビル、または置換ヒドロカルビルである。Aがアルキル置換アミンである反復において、アルキルは、好ましくは低級アルキルである。Aがアミド(すなわち、{−}NR’(=O)R”)である反復において、R置換基は、一般に、独立して水素、低級アルキル、置換低級アルキル、低級アルケニル、または置換低級アルケニルである。Aがカーボネート(すなわち、{−}OC(=O)Rまたは{−}NR’C(=O)R”)である反復において、R基は、独立して水素、ヒドロカルビル、または置換ヒドロカルビルである。Aがウレア(すなわち、{−}NR’C(=O)NHR”)である反復において、R基は、独立して水素、ヒドロカルビル、または置換ヒドロカルビルである。
【0039】
式(II)、(IIa)、(IIb)、(I)、(Ia)、(Ib)を含む各化合物、またはその薬学的に許容される塩は、偏光の回転に対して(+)配向を有する。より詳細には、各キラル中心は、R配置またはS配置を有する。特に、5位の炭素は、キラルであるとき、S配置を有し、13位の炭素は、R配置を有し、14位の炭素は、R配置を有し、そして9位の炭素は、S配置を有する。さらに、6位の炭素は、S配置またはR配置を含み得る。別の言い方をすると、5位の置換環は、存在するとき、ベータ位にあり、14位のY基は、アルファ位にある。
【0040】
式(II)、式(IIa)、式(IIb)、式(I)、式(Ia)または式(Ib)を含む化合物の薬学的に許容される塩としては、非限定的に、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、硫酸塩、メタンスルホン酸塩、酢酸塩、ギ酸塩、酒石酸、重酒石酸塩、ステアリン酸塩、フタル酸塩、ヨウ化水素酸塩、乳酸塩、一水塩(monohydrate)、ムチン酸塩、硝酸塩、リン酸塩、サリチル酸塩、フェニルプロピオン酸塩、イソ酪酸塩、次亜リン酸塩、マレイン酸、リンゴ酸、クエン酸塩、イソクエン酸塩、コハク酸塩、乳酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、ピルビン酸塩、シュウ酸塩、フマル酸塩、プロピオン酸塩、アスパラギン酸塩、グルタミン酸塩、安息香酸塩、およびテレフタル酸塩などが挙げられる。
【0041】
(II)ミクログリアの活性化を阻害する方法
本発明の別の態様は、被験体においてミクログリアの活性化を阻害する方法を提供する。本発明の方法は、上記被験体に、式(II)、式(IIa)、式(IIb)、式(I)、式(Ia)、式(Ib)を含む化合物、またはその薬学的に許容される塩を投与することを含む。式(II)、式(IIa)、式(IIb)、式(I)、式(Ia)、および式(Ib)を含む各化合物は、セクション(I)において先に詳述されている。
【0042】
上記化合物は、公知の方法に従って上記被験体に投与されてよい。典型的には、上記化合物は、経口で投与されるが、非経口または局所などの他の投与経路が用いられてもよい。上記被験体に投与される化合物の量は、化合物の種類、処置される状態、被験体、および具体的な投与様式に応じて変動し得る。当業者は、用量が、Goodman & Goldman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics、第10版(2001年)、Appendix II、475〜493頁、およびPhysicians’ Desk Referenceから、ガイダンスによって決定され得ることを認識する。
【0043】
定義
本明細書において記載されている化合物は、不斉中心を有する。非対称に置換された原子を含有する本発明の化合物は、光学活性型またはラセミ型で単離され得る。具体的な立体化学または異性型が具体的に示されていない限り、構造のすべてのキラル型、ジアステレオマー型、ラセミ型およびすべての幾何異性型が意図される。本発明の化合物を調製するのに用いられるすべての方法および上記方法において作製される中間体は、本発明の一部であると見なされる。
【0044】
用語「アシル」は、単独でまたは別の基の部分として本明細書において用いられるとき、有機カルボン酸のCOOH基からヒドロキシ基を除去することによって形成される部分、例えば、RC(O)−(ここで、Rは、R、RO−、RN−、またはRS−であり、Rは、ヒドロカルビル、ヘテロ置換ヒドロカルビル、または複素環であり、Rは、水素、ヒドロカルビルまたは置換ヒドロカルビルである)を示す。
【0045】
用語「アシルオキシ」は、単独でまたは別の基の部分として本明細書において用いられるとき、酸素連結(O)を介して結合した上記のようなアシル基、例えば、RC(O)O−(ここで、Rは、用語「アシル」に関連して定義されている通りである)を示す。
【0046】
用語「アルキル」は、本明細書において用いられるとき、主鎖中に1〜8個の炭素原子および最大で20個の炭素原子を含有する好ましくは低級アルキルである基を記載している。これらは、直鎖であっても分枝鎖であっても、あるいは環状であってもよく、そしてメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、およびヘキシルなどを含む。
【0047】
用語「アルケニル」は、本明細書において用いられるとき、主鎖中に2〜8個の炭素原子および最大で20個の炭素原子を含有する好ましくは低級アルケニルである基を記載している。これらは、直鎖であっても分枝鎖であっても、あるいは環状であってもよく、そしてエテニル、プロペニル、イソプロペニル、ブテニル、イソブテニル、およびヘキセニルなどを含む。
【0048】
用語「アルキニル」は、本明細書において用いられるとき、主鎖中に2〜8個の炭素原子および最大で20個の炭素原子を含有する好ましくは低級アルキニルである基を記載している。これらは、直鎖であっても分枝鎖であってもよく、そしてエチニル、プロピニル、ブチニル、イソブチニル、およびヘキシニルなどを含む。
【0049】
用語「芳香族」は、単独でまたは別の基の部分として本明細書において用いられるとき、場合により置換された単素環式芳香族基または複素環式芳香族基を示す。これらの芳香族基は、6〜14個の原子を環部分に含有する好ましくは単環式基、二環式基、または三環式基である。用語「芳香族」は、以下に定義する「アリール」基を包含する。
【0050】
用語「アリール」または「Ar」は、単独でまたは別の基の部分として本明細書において用いられるとき、場合により置換された単素環式芳香族基、好ましくは、6〜12個の炭素を環部分に含有する単環式基または二環式基、例えば、フェニル、ビフェニル、ナフチル、置換フェニル、置換ビフェニルまたは置換ナフチルを示す。フェニルは、好ましいアリールである。
【0051】
用語「ハロゲン」または「ハロ」は、単独でまたは別の基の部分として本明細書において用いられるとき、塩素、臭素、フッ素およびヨウ素を称する。
【0052】
用語「ヘテロ原子」は、炭素および水素以外の原子を称する。
【0053】
用語「複素環」または「複素環式」は、単独でまたは別の基の部分として本明細書において用いられるとき、少なくとも1個の環中に少なくとも1個のヘテロ原子、好ましくは各環中に5または6個の原子を有する、場合により置換された、完全に飽和または不飽和の、単環式または二環式の、芳香族または非芳香族基を示す。複素環基は、環中に1個もしくは2個の酸素原子および/または1〜4個の窒素原子を好ましくは有し、炭素またはヘテロ原子を介して分子の残り部分に結合する。例示的な複素環基として、以下に記載のようなヘテロ芳香族が挙げられる。例示的な置換基として、以下の基:ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ヒドロキシ、保護されたヒドロキシ、アシル、アシルオキシ、アルコキシ、アルケノキシ、アルキノキシ、アリールオキシ、ハロゲン、アミド、アミノ、シアノ、ケタール、アセタール、エステルおよびエーテルのうちの1種または複数種が挙げられる。
【0054】
用語「炭化水素」および「ヒドロカルビル」は、本明細書において用いられるとき、炭素および水素元素から専らなる有機化合物または基を記載している。これらの部分として、アルキル、アルケニル、アルキニル、およびアリール部分が挙げられる。これらの部分はまた、他の脂肪族炭化水素基または環式炭化水素基で置換されたアルキル、アルケニル、アルキニル、およびアリール部分、例えば、アルカリール、アルケンアリールおよびアルキンアリールも挙げられる。別途示さない限り、これらの部分は、1〜20個の炭素原子を好ましくは含む。
【0055】
用語「保護基」は、本明細書において用いられるとき、酸素原子を保護することが可能な基を示し、ここで、保護基は、保護が使用された反応の後に、分子の残り部分に支障を来すことなく、除去されてよい。例示的な保護基として、エーテル(例えば、アリル、トリフェニルメチル(トリチルまたはTr)、p−メトキシベンジル(PMB)、p−メトキシフェニル(PMP))、アセタール(例えば、メトキシメチル(MOM)、β−メトキシエトキシメチル(MEM)、テトラヒドロピラニル(THP)、エトキシエチル(EE)、メチルチオメチル(MTM)、2−メトキシ−2−プロピル(MOP)、2−トリメチルシリルエトキシメチル(SEM))、エステル(例えば、ベンゾエート(Bz)、アリルカーボネート、2,2,2−トリクロロエチルカーボネート(Troc)、2−トリメチルシリルエチルカーボネート)、シリルエーテル(例えば、トリメチルシリル(TMS)、トリエチルシリル(TES)、トリイソプロピルシリル(TIPS)、トリフェニルシリル(TPS)、t−ブチルジメチルシリル(TBDMS)、t−ブチルジフェニルシリル(TBDPS))などが挙げられる。種々の保護基およびその合成は、T.W. GreeneおよびP.G.M. Wuts、John Wiley & Sonsによる「Protective Groups in Organic Synthesis」(1999年)に見出すことができる。
【0056】
本明細書に記載されている「置換ヒドロカルビル」部分は、炭素以外の少なくとも1個の原子で置換されたヒドロカルビル部分であり、炭素鎖原子が、ヘテロ原子、例えば、窒素、酸素、ケイ素、リン、ホウ素またはハロゲン原子で置換されている部分も含む。好適な置換基として、ハロゲン、複素環、アルコキシ、アルケノキシ、アリールオキシ、ヒドロキシ、保護されたヒドロキシ、アシル、アシルオキシ、ニトロ、アミノ、アミド、ニトロ、シアノ、ケタール、アセタール、エステルおよびエーテルが挙げられる。
【0057】
冠詞「a」、「an」、「the」、および「said」は、本発明の要素または好ましい実施形態を導入するとき、1種または複数種の要素が存在することを意味することを意図している。用語「comprising(含む)」、「including(含む)」および「having(有する)」は、包含的であることを意図しており、列挙した要素以外の追加の要素が存在し得ることを意味している。
【0058】
本発明を詳細に記載したが、添付の特許請求の範囲に定義されている本発明の範囲から逸脱することなく、変更および変形が可能であることが明らかである。
【実施例】
【0059】
以下の実施例は、本発明の種々の実施形態を説明する。
【0060】
(実施例1)
(+)−ナルフラフィンの調製
以下の反応スキームは、(+)−ナルフラフィンの合成を示す:
【0061】
【化9】

【0062】
ステップA:(+)−ナルトレキソン(2.0g、0.006モル)、N−メチルベンジルアミン(1.07g、0.009モル)、p−トルエンスルホン酸一水和物(10mg)、およびトルエン(50mL)を、ディーンスタークトラップを備えたフラスコ内に導入してよい。この混合物を、水が共沸混合物として除去され得る12時間の間、加熱還流させてよい。ディーンスタークトラップを短行程蒸留装置と交換してよい。約半分の反応溶媒(約25mL)を蒸留によって除去してよい。室温に冷却する際、無水エタノール(25mL)、続いてNaCNBH(390mg、0.006モル)を導入してよい。この反応物を室温で6時間撹拌してよい。次いで、蒸留水(15mL)を添加してよい。室温で1時間撹拌した後、この混合物を酢酸エチルで抽出してよく(3×25mL)、この抽出物を合わせ、無水MgSO(約2g)で乾燥し、濾過し、蒸発乾固させてよい。残渣を100%EtOAc溶出によりSiOにてクロマトグラフィに付し、生成物を生成することができる(およそ1.57g)。
【0063】
ステップB:6α−N,N−メチルベンジル−(+)−ナルトレキサミン(1.57g、0.0035モル)を氷酢酸(20mL)に溶解させてよい。10%Pd/C、50%湿潤(20mg)を、この反応混合物を含有するParrボトルに添加してよい。大気を水素で置き換えた後、Parrボトルを水素ガスで40psiに加圧してよい。この反応物を振とうしながら室温で6時間インキュベートしてよい(Parrボトル中の水素を定期的に置き換える)。この反応をHPLCによって完了と見なした後、この内容物をセライトパッド(約1gのセライト)で濾過し、続いて、氷酢酸(5mL)でこのパッドを濯いでよい。この濾液を氷浴温度に冷却し、次いで29% NH/HOの滴下添加により中和して、沈澱が形成され得るpH9.3にしてよい。沈澱を濾過によって除去し、蒸留水(10mL)で洗浄し、次いで、真空下に24時間乾燥させてよく、これにより、生成物を生成することができる(およそ1.2g)。
【0064】
ステップC:丸底フラスコに3−フラニルアクリル酸(0.95g、0.007モル)、続いてジクロロメタン(10mL)および1滴のジメチルホルムアミドを添加してよい。塩化オキサリル(1.07g、0.008モル)を滴下添加してよい。この溶液を撹拌しながら室温まで加温し、この温度で2時間保持してよい。減圧下、粘稠な油(粗製塩化3−フラニルアクリロイル(3−furanylacryloyl chloride))が残存するまで溶媒を除去してよい。別個のフラスコに6α−N−メチル−(+)−ナルトレキサミン(1.2g、0.003モル)およびジクロロメタン(10mL)を添加してよい。溶液を氷浴温度に冷却した後、トリエチルアミン(1.02g、0.01モル)を添加してよい。次いで、前もって調製した粗製塩化3−フラニルアクリロイルのジクロロメタン(5mL)溶液を滴下添加してよい。氷浴を除去してよく、反応物を2時間撹拌してよい。蒸留水(10mL)を添加してよく、この混合物を1時間撹拌してよい。混合物を分液漏斗に移してよい。底部の有機層を分離してよく、この有機層中の揮発性溶媒を減圧下に蒸発させて、粘稠な油を生成してよい。この油にメタノール(10mL)、続いて10% NaOH/HO溶液(1.0mL)を添加してよい。この溶液を室温で1時間撹拌してよい。氷酢酸を用いてpHを4.2に調整してよい。NaHCO(2g)を含有する蒸留水(5mL)を添加してよい。この混合物を室温で1時間撹拌し、その後、クロロホルムで抽出してよい(3×25mL)。この抽出物を合わせ、無水MgSO(1g)で乾燥させてよい。水和したMgSOを濾過によって除去してよい。この溶媒を減圧下にこの濾液から除去すると、油を得ることができる。生成物(1.50g)を2.5% MeOH/CHCl溶出によるカラムクロマトグラフィによって単離してよい。
【0065】
(実施例2)
(+)−ナルブフィンの調製
以下の反応スキームは、(+)−ナルブフィンの合成を示す。
【0066】
【化10】

【0067】
(+)−ノルオキシモルホン(1.5g、0.005モル)をアセトニトリル(10mL)に溶解させてよい。次いで、シクロブタンカルボキシアルデヒド(0.88g、0.10モル)を添加し、この反応物を室温で1時間撹拌してよい。次いで、トリエチルアミン(2.64g、0.026モル)と>96%ギ酸(3.0g、0.065モル)とのアセトニトリル(10mL)中の混合物を添加してよい。次いで、ジクロロ(p−シメン)Ru(II)二量体(16mg)および(1S,2S)−(+)−パラ−トルエンスルホニル−1,2−ジフェニルエチレンジアミン(19mg)を添加してよい。この反応物を、この反応が完了とHPLCによって見なされるまで、室温で撹拌してよい。次いで、この反応混合物を蒸発させて、粘稠な油を形成してよい。アセトニトリル(10mL)を添加して反応物を室温で撹拌してよく、ここで、沈澱が形成し得る。この沈澱の濾過、およびアセトニトリル(5mL)による濯ぎにより、(+)−ナルブフィンを得ることができる(およそ1.43g)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(II):
【化11】


[式中、
Aは、{−}ORおよび{−}NRから選択され、
は、ヒドロカルビルおよび置換ヒドロカルビルから選択され、
、R、R、およびRは、水素、ヒドロカルビル、および置換ヒドロカルビルから独立して選択され、
およびRは、水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ハロゲン、{−}OH、{−}NH、および{−}ORから独立して選択され、
は、ヒドロカルビルおよび置換ヒドロカルビルから選択され、
Yは、水素、ヒドロキシ、保護されたヒドロキシ、アルコキシ、およびアシルオキシから選択され、
Zは、ヒドロキシ、保護されたヒドロキシ、アルコキシ、およびアシルオキシから選択され、そして
7位の炭素原子と8位の炭素原子との間の破線は、単結合または二重結合を表し、ただし、Aが、{−}OH、{−}O(CO)CH、{−}NH(CHOH、{−}NH(CO)CH、または{−}NHであるときは、Rがメチル以外であり、Aが、{−}OH、{−}NH(CHOH、または{−}NH(CO)CHであるときは、Rが{−}CH(CH)CH以外であり、Aが、{−}OH、{−}NCH(CO)CH(CH)(CH)O、{−}NH(CHOH、{−}NH(CO)CH、{−}NH、または{−}NHCHであるときは、Rが{−}CH(シクロプロパン)以外であり、Aが、{−}OHであるときは、Rが{−}CH(シクロブタン)以外である]
を含む化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項2】
式(IIa):
【化12】


[式中、
Aは、{−}OR、および{−}NRから選択され、
は、ヒドロカルビルおよび置換ヒドロカルビルから選択され、
およびRは、水素、ヒドロカルビル、および置換ヒドロカルビルから独立して選択され、
Yは、水素、ヒドロキシ、保護されたヒドロキシ、アルコキシ、およびアシルオキシから選択され、そして
Zは、ヒドロキシ、保護されたヒドロキシ、アルコキシ、およびアシルオキシから選択される]
またはその薬学的に許容される塩を含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
(+)−ナルブフィンおよび(+)−ナルフラフィンから選択される、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
式(IIb):
【化13】


[式中、
Aは、{−}ORおよび{−}NRから選択され、
は、ヒドロカルビルおよび置換ヒドロカルビルから選択され、
およびRは、水素、ヒドロカルビル、および置換ヒドロカルビルから独立して選択され、
Yは、水素、ヒドロキシ、保護されたヒドロキシ、アルコキシ、およびアシルオキシから選択され、そして
Zは、ヒドロキシ、保護されたヒドロキシ、アルコキシ、およびアシルオキシから選択される]
またはその薬学的に許容される塩を含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
が、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルメチル、アルケニル、アルキニル、およびアリールから選択される、請求項1から4のいずれかに記載の化合物。
【請求項6】
Aが、ヒドロキシ、アルコキシ、アシルオキシ、アミン、アルキル置換アミン、アミド、カルバミル、カーボネート、およびウレアから選択される、請求項1から5のいずれかに記載の化合物。
【請求項7】
(+)光学活性を有し、ここで、5位の炭素、13位の炭素、14位の炭素、および9位の炭素がそれぞれS配置、R配置、R配置、およびS配置を有し、そして6位の炭素がR配置またはS配置を有するか、または5位の置換環がベータ位にあり、そして14位のYがアルファ位にある、請求項1から6のいずれかに記載の化合物。
【請求項8】
式(I):
【化14】


[式中、
Aは、{−}ORおよび{−}NRから選択され、
は、ヒドロカルビルおよび置換ヒドロカルビルから選択され、
、R、R、およびRは、水素、ヒドロカルビル、および置換ヒドロカルビルから独立して選択され、
およびRは、水素、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ハロゲン、{−}OH、{−}NH、および{−}ORから独立して選択され、
は、ヒドロカルビルおよび置換ヒドロカルビルから選択され、
Yは、水素、ヒドロキシ、保護されたヒドロキシ、アルコキシ、およびアシルオキシから選択され、
Zは、ヒドロキシ、保護されたヒドロキシ、アルコキシ、およびアシルオキシから選択され、
Z’は、水素、ヒドロキシ、保護されたヒドロキシ、アルコキシ、およびアシルオキシから選択され、そして
7位の炭素原子と8位の炭素原子との間の破線は、単結合または二重結合を表す]
を含む化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項9】
式(Ia):
【化15】


[式中、
Aは、{−}ORおよび{−}NRから選択され、
は、ヒドロカルビルおよび置換ヒドロカルビルから選択され、
およびRは、水素、ヒドロカルビル、および置換ヒドロカルビルから独立して選択され、
Yは、水素、ヒドロキシ、保護されたヒドロキシ、アルコキシ、およびアシルオキシから選択され、
Zは、ヒドロキシ、保護されたヒドロキシ、アルコキシ、およびアシルオキシから選択され、そして
Z’は、水素、ヒドロキシ、保護されたヒドロキシ、アルコキシ、およびアシルオキシから選択される]
またはその薬学的に許容される塩を含む、請求項8に記載の化合物。
【請求項10】
式(Ib):
【化16】


[式中、
Aは、{−}ORおよび{−}NRから選択され、
は、ヒドロカルビルおよび置換ヒドロカルビルから選択され、
およびRは、水素、ヒドロカルビル、および置換ヒドロカルビルから独立して選択され、
Yは、水素、ヒドロキシ、保護されたヒドロキシ、アルコキシ、およびアシルオキシから選択され、
Zは、ヒドロキシ、保護されたヒドロキシ、アルコキシ、およびアシルオキシから選択され、そして
Z’は、水素、ヒドロキシ、保護されたヒドロキシ、アルコキシ、およびアシルオキシから選択される]
またはその薬学的に許容される塩を含む、請求項8に記載の化合物。
【請求項11】
が、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルメチル、アルケニル、アルキニル、およびアリールから選択される、請求項8から10のいずれかに記載の化合物。
【請求項12】
Aが、ヒドロキシ、アルコキシ、アシルオキシ、アミン、アルキル置換アミン、アミド、カルバミル、カーボネート、およびウレアから選択される、請求項8から11のいずれかに記載の化合物。
【請求項13】
(+)光学活性を有し、ここで、13位の炭素、14位の炭素、および9位の炭素がそれぞれR配置、R配置、およびS配置を有し、そして6位の炭素がR配置またはS配置を有する、請求項8から12のいずれかに記載の化合物。
【請求項14】
14位のYがアルファ位にある、請求項8から13のいずれかに記載の化合物。

【公表番号】特表2012−518652(P2012−518652A)
【公表日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−551283(P2011−551283)
【出願日】平成22年2月23日(2010.2.23)
【国際出願番号】PCT/US2010/024966
【国際公開番号】WO2010/096791
【国際公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(595181003)マリンクロッド インコーポレイテッド (203)
【Fターム(参考)】