説明

(1R,2S,5S)−6,6−ジメチル−3−アザビシクロ[3,1,0]ヘキサン−2−カルボキシレートまたはその塩の調製のためのプロセスおよび中間体

1つの実施形態では、本出願は、式(I)の化合物を作製するプロセスに関し;そして式(I)の化合物を作製するプロセス内で作製される中間体化合物に関する。ここで、Rは、アルキル、アリール、アラルキル、シクロアルキルおよびシクロアルキルアルキルからなる群より選択される。式(I)の化合物は、C型肝炎および関連する疾患を処置するために有用な、HCV NS3/NS4aセリンプロテアーゼのインヒビターである化合物の調製において使用される、重要な中間体である。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(優先権出願)
本特許出願は、米国仮出願第60/479,516号(2003年6月17日出願)からの優先権の利益を主張する。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、以下の式I:
【0003】
【化21】

の構造を有する、(1R,2S,5S)−6,6−ジメチル−3−アザビシクロ[3,1,0]ヘキサン−2−カルボキシレートまたはその塩の調製のためのプロセスおよび中間体に関する。
【背景技術】
【0004】
(発明の背景)
(1R,2S,5S)−6,6−ジメチル−3−アザビシクロ[3,1,0]ヘキサン−2−カルボン酸、メチルエステル塩酸塩が、米国特許出願第09/908,955号(2001年7月19日出願)および同第10/052,386号(2002年1月18日出願)に開示され、これらの特許出願は各々本明細書中で参考として援用される。
【0005】
式Iの化合物は、以下の式Z:
【0006】
【化22】

の構造を有するC型肝炎ウイルス(「HCV」)プロテアーゼインヒビターの調製において使用される重要な中間体である。
【0007】
式Zの化合物は、C型肝炎および関連する障害を処置するために有用である。具体的には、式Zの化合物は、HCV NS3/NS4aセリンプロテアーゼのインヒビターである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
1つ以上のC型肝炎の症状の処置または予防もしくは改善において有用な化合物を合成する方法に対する必要性が残っている。
【0009】
C型肝炎ウイルス(「HCV」)プロテアーゼインヒビターの重要性を考慮して、そのようなアンタゴニストを作製する、新しく、新規な方法は、いつでも興味がもたれる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(発明の要旨)
1つの実施形態では、本出願は、式I:
【0011】
【化23】

の化合物を作製するプロセスに関し、ここでRは、アルキル、アリール、アラルキル、シクロアルキルおよびシクロアルキルアルキルからなる群より選択される。
【0012】
本発明はまた、式Iの化合物を作製するプロセス内で作製される特定の中間体化合物に関する。
【0013】
式Iの化合物を作製するプロセスは、以下:
(1)キラルな試薬の存在下で、式IIの化合物をROHで脱対称化し、式IIIの化合物を得る工程であって:
【0014】
【化24】

ここで、Rがアルキル、アルケニル、アリール、アラルキル、アルキルアリール、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、シクロアルケニルおよびシクロアルケニルアルキルからなる群より選択される、工程;
(2)この式IIIの化合物をアミノ化し、式IV:
【0015】
【化25】

の化合物を得る工程;
(3)この式IVの化合物のアミド官能基およびエステル官能基を還元して、式V:
【0016】
【化26】

の化合物、またはその塩を得る工程;
(4)この式Vの化合物のアミノ基を保護して、式VI:
【0017】
【化27】

の化合物を得る工程であって、ここでPは、保護基を表す、工程;
(5)この式VIの化合物を酸化して、式VII:
【0018】
【化28】

化合物を得る工程;
(6)この式VIIの化合物にROHを付加させて、式VIII:
【0019】
【化29】

の化合物を得る工程であって、ここでRは、H、アルキル、アリール、アラルキル、シクロアルキル、またはシクロアルキルアルキルを表す、工程;
(7)この式VIIIの化合物をシアノ化して式IX:
【0020】
【化30】

の化合物を得る工程;
(8)MORまたはROHを用いて、この式IXの化合物を、式X:
【0021】
【化31】

の化合物に加水分解する工程であって、ここでMは、Li、Na、およびKからなる群より選択され、そしてRは、アルキル、アリール、アラルキル、およびシクロアルキルからなる群より選択される、工程;ならびに
(9)この式Xの化合物を脱保護して式I:
【0022】
【化32】

の化合物を得る工程、または必要に応じてこの化合物を、その塩として単離する工程を包含する。
【0023】
式Iの化合物を作製するための本発明のプロセスは、いくつかの利点を有する:本明細書中で開示されるプロセスは、立体化学の優れた制御を伴う高収率プロセスであり、いずれのクロマトグラフィーによる精製をも必要とはしない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
(発明の説明)
上で使用され、そして本明細書全体で使用される場合、以下の用語は、そうではないと示されない限り、以下の意味を有すると理解されるはずである。
【0025】
用語「アルキル」は、直鎖状または分枝状であり得、そしてその鎖の中に約1〜約20個の炭素原子を含む、脂肪族炭化水素基を意味する。好ましいアルキル基は、その鎖の中に約1〜約12個の炭素原子を含む。より好ましいアルキル基は、その鎖の中に約1〜約6個の炭素原子を含む。分枝状は、メチル、エチルまたはプロピルのような1つ以上の低級アルキル基が、直鎖状アルキル鎖に結合されることを意味する。「低級アルキル」は、直鎖状または分枝状であり得る鎖の中に、約1〜約6個の炭素原子を有する基を意味する。用語「置換アルキル」は、このアルキル基が、同じであってもまたは異なっていてもよい1つ以上の置換基で置換され得ることを意味し、各置換基は、ハロ、アルキル、アリール、シクロアルキル、シアノ、ヒドロキシ、アルコキシ、アルキルチオ、アミノ、−NH(アルキル)、−NH(シクロアルキル)、−N(アルキル)、カルボキシおよび−C(O)O−アルキルからなる群より独立に選択される。適切なアルキル基の非限定的な例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、ヘプチル、ノニル、デシル、フルオロメチル、トリフルオロメチルおよびシクロプロピルメチルが挙げられる。
【0026】
「アルケニル」は、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を含み、直鎖状または分枝状であり得、かつ鎖の中に約2〜約15個の炭素原子を含む脂肪族炭化水素基を意味する。好ましいアルケニル基は、鎖の中に約2〜約12個の炭素原子、そしてより好ましくは、鎖の中に約2〜約6個の炭素原子を有する。分枝状は、メチル、エチルまたはプロピルのような1つ以上の低級アルキル基が、直鎖状アルケニル鎖に結合されることを意味する。「低級アルケニル」は、直鎖状または分枝状であり得る鎖の中の約2〜約6個の炭素原子を意味する。用語「置換アルケニル」は、このアルケニル基が、同じであってもまたは異なっていてもよい1つ以上の置換基で置換され得ることを意味し、各置換基は、ハロ、アルキル、アリール、シクロアルキル、シアノおよびアルコキシからなる群より独立に選択される。適切なアルケニル基の非限定的な例としては、エテニル、プロペニル、n−ブテニル、3−メチルブタ−2−エニル、n−ペンテニル、オクテニル、およびデセニルが挙げられる。
【0027】
「アルキニル」は、少なくとも1つの炭素−炭素三重結合を含み、直鎖状または分枝状であり得、かつ鎖の中に約2〜約15個の炭素原子を含む、脂肪族炭化水素基を意味する。好ましいアルキニル基は、鎖の中に約2〜約12個の炭素原子;そしてより好ましくは、鎖の中に約2〜約4個の炭素原子を有する。分枝状は、メチル、エチルまたはプロピルのような1つ以上の低級アルキル基が、直鎖状アルキニル鎖に結合されることを意味する。「低級アルキニル」は、直鎖状または分枝状であり得る鎖の中の約2〜約6個の炭素原子を意味する。適切なアルキニル基の非限定的な例としては、エチニル、プロピニル、2−ブチニル、3−メチルブチニル、n−ペンチニルおよびデシニルが挙げられる。用語「置換アルキニル」は、このアルキニル基が、同じであってもまたは異なっていてもよい、1つ以上の置換基によって置換され得ることを意味し、各置換基は、アルキル、アリールおよびシクロアルキルからなる群より独立して選択される。
【0028】
「アリール」は、約6〜約14個の炭素原子、好ましくは約6〜約10個の炭素原子を含む、芳香族単環式環系または芳香族多環式環系を意味する。アリール基は、同じであってもまたは異なっていてもよく、そして本明細書で定義された通りである、1つ以上の「環系置換基」で必要に応じて置換され得る。適切なアリール基の非限定的な例としては、フェニルおよびナフチルが挙げられる。
【0029】
「ヘテロアリール」は、環原子の1つ以上が、(単独でか、または組合せで)例えば、窒素、酸素または硫黄のような炭素以外の元素である、約5〜約14個の環原子、好ましくは、約5〜約10個の環原子を含む芳香族単環式環系または芳香族多環式環系を意味する。好ましいヘテロアリールは、約5〜約6個の環原子を含む。この「ヘテロアリール」は、必要に応じて、同じであってもまたは異なっていてもよく、そして本明細書中で定義された通りである、1つ以上の「環系置換基」によって置換され得る。ヘテロアリールの根名称(root name)の前の接頭語アザ、オキサまたはチアは、それぞれ、少なくとも1個の窒素原子、酸素原子または硫黄原子が、環原子として存在することを意味する。ヘテロアリールの窒素原子は、必要に応じて、対応するN−酸化物に酸化され得る。適切なヘテロアリールの非限定的な例としては、ピリジル、ピラジニル、フラニル、チエニル、ピリミジニル、ピロリル、イソオキサゾリル、イソチアゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、ピラゾリル、フラザニル、ピロリル、ピラゾリル、トリアゾリル、1,2,4−チアジアゾリル、ピラジニル、ピリダジニル、キノキサリニル、フタラジニル、イミダゾ[1,2−a]ピリジニル、イミダゾ[2,1−b]チアゾリル、ベンゾフラザニル、インドリル、アザインドリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾチエニル、キノリニル、イミダゾリル、チエノピリジル、キナゾリニル、チエノピリミジル、ピロロピリジル、イミダゾピリジル、イソキノリニル、ベンゾアザインドリル、1,2,4−トリアジニル、ベンゾチアゾリルなどが挙げられる。
【0030】
「アラルキル」は、アリールおよびアルキルが、上で記載されたものである、アリール−アルキル基を意味する。好ましいアラルキルは、低級アルキル基を含む。適切なアラルキル基の非限定的な例としては、ベンジル、2−フェネチルおよびナフタレニルメチルが挙げられる。親部分への結合は、このアルキルを介してである。
【0031】
「アルキルアリール」は、アルキルおよびアリールが、上で記載された通りである、アルキル−アリール−基を意味する。好ましいアルキルアリールは、低級アルキル基を含む。適切なアルキルアリール基の非限定的な例としては、o−トリル、p−トリル、およびキシリルが挙げられる。親部分への結合は、そのアリールを介してである。
【0032】
「シクロアルキル」は、約3〜約10個の炭素原子、好ましくは約5〜約10個の炭素原子を含む、非芳香族単環式環系または非芳香族多環式環系を意味する。好ましいシクロアルキル環は、約5〜約7個の環原子を含む。シクロアルキルは、同じであってもまたは異なっていてもよく、上で定義された通りである、1つ以上の「環系置換基」で必要に応じて置換され得る。適切な単環式シクロアルキルの非限定的な例としては、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロへキシル、シクロヘプチルなどが挙げられる。適切な多環式シクロアルキルの非限定的な例としては、1−デカリン、ノルボルニル、アダマンチルなどが挙げられる。
【0033】
「ハロ」は、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、またはヨード基を意味する。好ましくは、フルオロ、クロロまたはブロモであり、そしてより好ましくは、フルオロおよびクロロである。
【0034】
「ハロゲン」とは、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素を意味する。好ましいのは、フッ素、塩素または臭素であり、そしてより好ましいのは、フッ素および塩素である。
【0035】
「環系置換基」は、例えば、環系上の利用可能な水素を置換する、芳香族環系または非芳香族環系に結合された置換基を意味する。環系置換基は、同じであってもまたは異なっていてもよく、各々は、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、アルキルアリール、アラルケニル、ヘテロアラルキル、アルキルヘテロアリール、ヘテロアラルケニル、ヒドロキシ、ヒドロキシアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アラルコキシ、アシル、アロイル、ハロ、ニトロ、シアノ、カルボキシ、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、アラルコキシカルボニル、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、ヘテロアリールスルホニル、アルキルスルフィニル、アリールスルフィニル、ヘテロアリールスルフィニル、アルキルチオ、アリールチオ、ヘテロアリールチオ、アラルキルチオ、ヘテロアラルキルチオ、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクリル、ヘテロシクレニル、YN−、YN−アルキル−、YNC(O)−およびYNSO−からなる群より独立して選択され、ここで、YおよびYは、同じであってもまたは異なっていてもよく、そして水素、アルキル、アリールおよびアラルキルからなる群より独立して選択される。
【0036】
「シクロアルケニル」とは、約3個〜約10個の炭素原子、好ましくは約5個〜10個の炭素原子を含み、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を含む非芳香族の単環式環系または非芳香族の多環式環系を意味する。好ましいシクロアルケニル環は、約5個〜約7個の環原子を含む。このシクロアルケニルは、必要に応じて1つ以上の「環系置換基」によって置換され得、その「環系置換基」は、同じであっても異なっていてもよく、上に定義されるとおりである。適切な単環式シクロアルケニルの非限定的な例としては、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロヘプテニルなどが挙げられる。適切な多環式シクロアルケニルの非限定的な例は、ノルボルニレニルである。
【0037】
「ヘテロシクレニル」は、環系の中の1つ以上の原子が、(単独または組み合わせで)例えば、窒素原子、酸素原子または硫黄原子のような、炭素以外の元素である、約3〜約10個の環原子、好ましくは約5〜約10個の環原子を含み、そして少なくとも1つの炭素−炭素二重結合または炭素−窒素二重結合を含む、非芳香族単環式環系または非芳香族多環式環系を意味する。環系の中に存在する、隣接した酸素原子および/または硫黄原子はない。好ましいヘテロシクレニルは、約5〜約6個の環原子を含む。ヘテロシクレニルの根名称の前の接頭語アザ、オキサまたはチアは、それぞれ、少なくとも1個の窒素原子、酸素原子または硫黄原子が、環原子として存在することを意味する。このヘテロシクレニルは、必要に応じて、上で定義された通りである、1つ以上の「環系置換基」によって置換され得る。ヘテロシクレニルの窒素原子または硫黄原子は、必要に応じて、対応するN−酸化物、S−酸化物、またはS,S−二酸化物へ酸化され得る。適切な単環式アザへテロシクレニル基の非限定的な例としては、1,2,3,4−テトラヒドロピリジン、1,2−ジヒドロピリジル、1,4−ジヒドロピリジル、1,2,3,6−テトラヒドロピリジン、1,4,5,6−テトラヒドロピリミジン、2−ピロリニル、3−ピロリニル、2−イミダゾリニル、2−ピラゾリニルなどが挙げられる。適切なオキサへテロシクレニル基の非限定的な例としては、3,4−ジヒドロ−2H−ピラン、ジヒドロフラニル、フルオロジヒドロフラニルなどが挙げられる。適切な多環式オキサへテロシクレニル基の非限定的な例は、7−オキサビシクロ[2.2.1]ヘプテニルである。適切な単環式チアへテロシクレニル環の非限定的な例としては、ジヒドロチオフェニル、ジヒドロチオピラニルなどが挙げられる。
【0038】
「ヘテロシクリル」は、環系の中の1つ以上の原子が、(単独または組み合わせの形で)例えば、窒素、酸素または硫黄のような、炭素以外の元素である、約3〜約10個の環原子、好ましくは約5〜約10個の環原子を含む、非芳香族飽和単環式環系または非芳香族飽和多環式環系を意味する。環系の中に存在する、隣接した酸素原子および/または硫黄原子はない。好ましいヘテロシクリルは、約5〜約6個の環原子を含む。ヘテロシクリルの根名称の前の接頭語アザ、オキサまたはチアは、それぞれ、少なくとも1個の窒素原子、酸素原子または硫黄原子が、環原子として存在することを意味する。このヘテロシクリルは、必要に応じて、同じであってもまたは異なっていてもよく、本明細書中で定義された通りである、1つ以上の「環系置換基」によって置換され得る。ヘテロシクリルの窒素原子または硫黄原子は、必要に応じて、対応するN−酸化物、S−酸化物、またはS,S−二酸化物へ酸化され得る。適切な単環式へテロシクリル環の非限定的な例としては、ピペリジル、ピロリジニル、ピぺラジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、チアゾリジニル、1,3−ジオキソラニル、1,4−ジオキサニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロチオフェニル、テトラヒドロチオピラニルなどが挙げられる。
【0039】
「アラルケニル」は、アリールおよびアルケニルが、上で記載された通りである、アリール−アルケニル−基を意味する。好ましいアラルケニルは、低級アルケニル基を含む。適切なアラルケニル基の非限定的な例としては、2−フェネテニル(phenethenyl)および2−ナフチルエテニルが挙げられる。親部分への結合は、そのアルケニルを介してである。
【0040】
「ヘテロアラルキル」は、ヘテロアリールおよびアルキルが、上で記載された通りである、ヘテロアリール−アルキル−基を意味する。好ましいヘテロアラルキルは、低級アルキル基を含む。適切なアラルキル基の非限定的な例としては、ピリジルメチル、2−(フラン−3−イル)エチルおよびキノリン−3−イルメチルが挙げられる。親部分への結合は、そのアルキルを介してである。
【0041】
「ヘテロアラルケニル」は、ヘテロアリールおよびアルケニルが、上で記載された通りである、ヘテロアリール−アルケニル−基を意味する。好ましいヘテロアラルケニルは、低級アルケニル基を含む。適切なヘテロアラルケニル基の非限定的な例としては、2−(ピリド−3−イル)エテニルおよび2−(キノリン−3−イル)エテニルが挙げられる。親部分への結合は、そのアルケニルを介してである。
【0042】
「ヒドロキシアルキル」は、アルキルが上で定義された通りである、HO−アルキル−基を意味する。好ましいヒドロキシアルキルは、低級アルキルを含む。適切なヒドロキシアルキル基の非限定的な例としては、ヒドロキシメチルおよび2−ヒドロキシエチルが挙げられる。
【0043】
「アシル」は、H−C(O)−基、アルキル−C(O)−基、アルケニル−C(O)−基、アルキニル−C(O)−基、シクロアルキル−C(O)−基、シクロアルケニル−C(O)−基、またはシクロアルキニル−C(O)−基を意味し、それらの種々の基は上に記載されるとおりである。親部分への結合は、そのカルボニルを介してである。好ましいアシルは、低級アルキルを含む。適切なアシル基の非限定的な例としては、ホルミル、アセチル、プロパノイル、2−メチルプロパノイル、ブタノイルおよびシクロヘキサノイルが挙げられる。
【0044】
「アロイル」は、アリール−C(O)−基を意味し、そのアリール基は、上に記載される通りである。上記親部分への結合は、そのカルボニルを介してである。適切な基の非限定的な例としては、ベンゾイルならびに1−ナフトイルおよび2−ナフトイルが挙げられる。
【0045】
「アルコキシ」は、アルキル−O−基を意味し、このアルキル基は上に記載される通りである。適切なアルコキシ基の非限定的な例としては、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシおよびヘプトキシが挙げられる。その親部分への結合は、そのエーテル酸素を介してである。
【0046】
「アリールオキシ」は、アリール−O−基を意味し、このアリール基は上に記載される通りである。適切なアリールオキシ基の非限定的な例としては、フェノキシおよびナフトキシが挙げられる。その親部分への結合は、そのエーテル酸素を介してである。
【0047】
「アラルキルオキシ」は、アラルキル−O−基を意味し、このアラルキル基は上に記載される通りである。適切なアラルキルオキシ基の非限定的な例としては、ベンジルオキシおよび1−ナフタレンメトキシまたは2−ナフタレンメトキシが挙げられる。その親部分への結合は、そのエーテル酸素を介してである。
【0048】
「アルキルアミノ」は、窒素上の水素原子の1つ以上が、上に規定されるようなアルキル基で置換されている−NHまたは−NH基を意味する。
【0049】
「アリールアミノ」は、窒素上の水素原子の1つ以上が、上に規定されるようなアリール基で置換されている−NHまたは−NH基を意味する。
【0050】
「アルキルチオ」は、アルキル−S−基を意味し、このアルキル基は上に記載された通りである。適切なアルキルチオ基の非限定的な例としては、メチルチオ、エチルチオ、i−プロピルチオおよびヘプチルチオが挙げられる。その親部分への結合は、その硫黄を介してである。
【0051】
「アリールチオ」は、アリール−S−基を意味し、このアリール基は上に記載された通りである。適切なアリールチオ基の非限定的な例としては、フェニルチオおよびナフチルチオが挙げられる。その親部分への結合は、その硫黄を介してである。
【0052】
「アラルキルチオ」は、アラルキル−S−基を意味し、このアラルキル基は上に記載された通りである。適切なアラルキルチオ基の非限定的な例としては、ベンジルチオが挙げられる。その親部分への結合は、その硫黄を介してである。
【0053】
「アルコキシカルボニル」は、アルキル−O−CO−基を意味する。適切なアルコキシカルボニル基の非限定的な例としては、メトキシカルボニルおよびエトキシカルボニルが挙げられる。その親部分への結合は、そのカルボニルを介してである。
【0054】
「アリールオキシカルボニル」は、アリール−O−CO−基を意味する。適切なアリールオキシカルボニル基の非限定的な例としては、フェノキシカルボニルおよびナフトキシカルボニルが挙げられる。その親部分への結合は、そのカルボニルを介してである。
【0055】
「アラルコキシカルボニル」は、アラルキル−O−C(O)−基を意味する。適切なアラルコキシカルボニル基の非限定的な例としては、ベンジルオキシカルボニルが挙げられる。その親部分への結合は、そのカルボニルを介してである。
【0056】
「アルキルスルホニル」は、アルキル−S(O)−基を意味する。好ましい基は、そのアルキル基が低級アルキルである、アルキルスルホニル基である。その親部分への結合は、そのスルホニルを介してである。
【0057】
「アルキルスルフィニル」は、アルキル−S(O)−基を意味する。好ましい基は、そのアルキル基が低級アルキルである、アルキルスルフィニル基である。その親部分への結合は、そのスルフィニルを介してである。
【0058】
「アリールスルホニル」は、アリール−S(O)−基を意味する。その親部分への結合は、そのスルホニルを介してである。
【0059】
「アルキルスルフィニル」は、アリール−S(O)−基を意味する。その親部分への結合は、そのスルフィニルを介してである。
【0060】
用語「必要に応じて置換された」とは、その特定の基、ラジカル、または部分での任意の置換を意味する。
【0061】
本明細書中で使用される場合、用語「組成物」は、その特定される成分を、その特定の量で含む生成物、およびその特定の量でのその特定される成分の組合せから、直接または間接的に生じる任意の生成物を含む生成物を包含することが意図される。
【0062】
「溶媒和物」は、本発明の化合物と1つ以上の溶媒分子との物理的会合を意味する。この物理的会合は、種々の程度のイオン結合および共有結合(水素結合を含む)を含む。特定の例では、例えば、1つ以上の溶媒分子が、その結晶固体の結晶格子に組み込まれている場合には、その溶媒和物は、単離可能である。「溶媒和物」は、溶液相の溶媒和物および単離可能溶媒和物の両方を包含する。適切な溶媒和物の非限定的な例としては、エタノレート、メタノレートなどが挙げられる。「水和物」は、その溶媒分子がHOである、溶媒和物である。
【0063】
1つの実施形態では、本発明は、式Iの化合物を調製するためのプロセスに関する。本発明のプロセスは、スキームIに模式的に記載される。
【0064】
【化33】

注記:スキームIでは、式IX(i)の化合物は、単離してもよく、式Xの化合物を作製するために直接使用してもよい。また、スキームIにおいて:
Mは、Li、K、Naなどのような金属を表し;
Pは、保護基を表す。適切な保護基の非限定的な例としては、Cbz(「Cbz」は、カルボベンジルオキシを表す)、2−クロロ−Cbz、2,4−ジクロロ−Cbzまたは4−ブロモ−Cbz、アリル、メトキシメチル、ベンジルオキシメチル、CYCO(ここでYはハロゲンである)、ベンジルオキシカルボニル、トリチル、ピバロイルオキシメチル、テトラヒドラニル、ベンジル、ジ(p−メトキシフェニル)メチル、トリフェニルメチル、(p−メトキシフェニル)ジフェニルメチル、ジフェニルホスフィニル、ベンゼンスルフェニル、メチルカルバメート、2−トリメチルシリルエチルカルバメート、1−メチル−1−フェニルエチルカルバメート、t−ブチルカルバメート(「t−Boc」)、シクロブチルカルバメート、1−メチルシクロブチルカルバメート、アダマンチルカルバメート、ビニルカルバメート、アリルカルバメート、シンナミルカルバメート、8−キノリルカルバメート、4,5−ジフェニル−3−オキサゾリン−2−オン、ベンジルカルバメート、9−アントリルメチルカルバメート、ジフェニルメチルカルバメートおよびS−ベンジルカルバメートのような試薬が挙げられる。好ましい保護基は、Cbzおよび2−クロロ−Cbzである。
【0065】
は、アルキル、アルケニル、アリール、アラルキル、アルキルアリール、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、シクロアルケニルまたはシクロアルケニルアルキルを表す。アルキル基の非限定的な例としては、メチル、エチル、トリフルオロエチル、トリクロロエチル、プロピルまたは分枝状アルキル基(例えば、イソプロピル基)が挙げられる。アルケニル基の非限定的な例としては、アリル、3−メチル−2−ブテニルまたはシンナミルが挙げられる。アリール基の非限定的な例としては、フェニルが挙げられ、そしてアラルキル基の非限定的な例としては、ベンジル、2−フェニルエチルまたはフェネチルが挙げられる。アルキルアリール基の非限定的な例としては、p−トリルが挙げられる。シクロアルキル基の非限定的な例としては、シクロヘキシル、シクロヘキシルなどが挙げられる。シクロアルキルアルキル基の非限定的な例としては、シクロヘキシルメチルなどが挙げられる。シクロアルケニル基の非限定的な例としては、2−シクロヘキセン−1−オールが挙げられる。シクロアルケニルアルキル基の非限定的な例としては、3−シクロヘキセン−1−メタノールが挙げられる。好ましい実施形態では、Rは、アルキルまたはアルケニルを、より好ましくはアルケニルを表す。別の好ましい実施形態では、Rは、以下の式:
【0066】
【化34】

により表されるアリルである。
【0067】
は、アルキル、アリール、アラルキル、シクロアルキルまたはシクロアルキルアルキルを表す。好ましくは、Rは、(C〜C)アルキルを、より好ましくは(C〜C)アルキルを、さらにより好ましくは(C〜C)アルキルを表す。
【0068】
は、アルキル、アリール、アラルキルまたはシクロアルキルを表す。好ましい実施形態では、Rは、(C〜C)アルキルを、好ましくは(C〜C)アルキルを、より好ましくは(C〜C)アルキルを表す。
【0069】
スキームIは、さらに以下のように記載され得る。
【0070】
(工程1:)
式IIの化合物は、適切な溶媒中でROHで表されるアルコールを付加させることにより、式IIIの化合物に変換され、そしてキラルな試薬の存在下で、式IIの化合物を脱対称化する。(「脱対称化」の議論については、例えば、A.C.Spiveyら,「Catalysis of the Asymmetric Desymmetrization of Cyclic Anhydrides by Nucleophilic Ring−Opening with Alcohols」,Angew.Chem.Int.Ed.,(2001),40(17),3131−3134を参照のこと。)このアルコールは、一般に、式IIIの化合物に対して、約0.2モル当量〜約10モル当量、好ましくは約1モル当量〜約5モル当量、より好ましくは約1モル当量〜約3モル当量で使用され得る。過剰のアルコールが使用され得る。そのアルコールはまた、溶媒として使用され得る。
【0071】
適切なキラルな試薬の非限定的な例としては、U.T.Bonrsheuerら,Hydrolyses in Organic Synthesis:Regio−and Stereoselective Biotransformations,Publishers:Wiley−VCH,Weinheim,(1999)に記載されるような、シンコナアルカロイドまたは酵素が挙げられる。別のキラルな試薬は、Seebachら、J.Org.Chem.,(1998),63,1190、およびChaplinら、Tetraheron,(1997),53,7539に開示されるジイソプロピルチタニウム TADDOL−エートのような、ジイソプロピルチタニウム TADDOL−エートであり得る。使用され得るシンコナアルカロイドの例としては、キニジン、シンコニン、エピシンコニジンまたはエピキニンが挙げられる。修飾キニジンはまた、米国特許出願第09/825,167号に記載されるように、使用され得る。
【0072】
使用され得る溶媒の非限定的な例としては、エーテル溶媒(例えば、ジエチルエーテル、THF、t−ブチルメチルエーテル、ジ−n−プロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、THP、ジメトキシエタン、ジグライムなど);脂肪族溶媒(例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタンなど);芳香族溶媒(例えば、トルエン、ベンゼン、キシレン、メシチレン、エチルベンゼン、クロロベンゼンなど);ケトン溶媒(例えば、アセトン、2−ブタノンなど);およびエステル溶媒(例えば、酢酸エチル、酢酸ジイソプロピルなど)、ならびにアセトニトリル、DMF、DMSOなどような他の溶媒、またはこれらの適切な混合物が挙げられる。好ましい溶媒は、芳香族溶媒であり、より好ましくはトルエンである。アルコールが工程1におけるROHと同じである場合には、このアルコールもまた、溶媒として使用され得る。
【0073】
工程1の反応は、約−78℃〜約80℃、好ましくは約−50℃〜約40℃、より好ましくは約−30℃〜約10℃の範囲の温度で、18時間またはその反応が完結するまで、実施され得る。
【0074】
好ましくは、式IIIの化合物は、第1級アミン、第2級アミンまたは第3級アミンを用いて塩へと変換される。好ましくは、これらの第1級アミン、第2級アミンまたは第3級アミンは、キラルである。より好ましいのは、(R)(+)−α−メチルベンジルアミンおよびエフェドリンのようなキラルな第1級アミンである。
【0075】
(工程2:)
工程1からの式IIIの化合物は、適切な溶媒中で、アンモニウムの供給源、カルボン酸活性化の供給源、および塩基で処理されて、式IVの化合物を与える。適切なアンモニウムの供給源の非限定的な例としては、水酸化アンモニウム、塩化アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、リン酸アンモニウムなどが挙げられ、好ましくは炭酸水素アンモニウムが挙げられる。このアンモニウムの供給源は、一般に、式IIIの化合物に対して、約0.5モル当量〜約10モル当量、好ましくは約1モル当量〜約4モル当量、より好ましくは約2.5モル当量〜約3モル当量で使用され得る。カルボン酸活性化剤の供給源の非限定的な例としては、ジ−tert−ブチル−ジカーボネート、クロロギ酸イソブチルなどが挙げられる。適切な塩基の非限定的な例としては、ピリジン、およびtert−アルキルアミン(例えば、トリエチルアミン、N−エチルモルホリンなど)が挙げられる。適切な溶媒の非限定的な例としては、アセトニトリル、THF、DMF、トルエン、酢酸エチル、塩化メチレンなど、またはこれらの適切な混合物が挙げられる。好ましくは、その溶媒は、DMFまたは塩化メチレンであり、より好ましくはTHFである。
【0076】
工程2の反応は、約−20℃〜約100℃、好ましくは約0℃〜約50℃、より好ましくは約10℃〜約30℃の範囲の温度で、12時間またはその反応が完結するまで、実施され得る。工程2で形成される式IVの化合物は、単離されてもよく、またはさらなる精製なしに、直接、次の工程で使用されてもよい。
【0077】
(工程3)
式IVの化合物のアミド官能性およびエステル官能性が還元され、式Vの化合物が与えられる。還元の方法は、包括還元(global reduction)または2段階還元を含む。包括還元の方法は、塩化トリメチルシリルの存在下での、水素化アルミニウムリチウム、ボランテトラヒドロフラン錯体、ボランジメチルスルフィド錯体、水素化ホウ素リチウムまたは水素化ホウ素ナトリウムのような還元剤の使用を包含し、好ましくは、水素化アルミニウムリチウムの使用を包含する。
【0078】
2段階還元の方法は、塩化トリメチルシリルの存在下で、アラン、水素化ホウ素リチウム、または水素化ホウ素ナトリウムのような還元剤を用いて、そのエステルをアルコールに還元する第1の工程を包含する。この第1の工程の後に、水素化アルミニウムリチウムまたは水素化トリアセトキシホウ素ナトリウム、好ましくは水素化アルミニウムリチウムを用いる、このアミドのアミンへの還元を包含する第2の工程が続く。非水性のワークアップ方法が、式Vの化合物を単離するために好ましい。包括還元または2段階還元における、使用され得る還元剤の量は、一般に、式IVの化合物に対して、約1モル当量〜約8モル当量、好ましくは約2モル当量〜約6モル当量、より好ましくは約3.5モル当量〜約5モル当量の範囲にわたる。式Vの化合物は、好ましくは、安息香酸塩、ショウノウ酸塩、ジベンゾイル酒石酸塩、フマル酸塩、または4−クロロ安息香酸塩のような塩として単離される。好ましい実施形態では、式Vの化合物は、以下の構造:
【0079】
【化35】

を有する安息香酸塩である。
【0080】
工程3の反応は、約30℃〜約65℃、好ましくは約40℃〜約65℃、より好ましくは約55℃〜約65℃の範囲の温度で、16時間またはその反応が完結するまで、実施され得る。
【0081】
(工程4:)
式Vの化合物のアミノ基は、保護基Pを用いて保護され、式VIの化合物を与える。適切な保護基は、上に述べられている。それらの保護基のための試薬は、一般に、式Vの化合物に対して、約0.9モル当量〜約1.8モル当量、好ましくは約0.9モル当量〜約1.3モル当量、より好ましくは約1モル当量〜約1.2モル当量で使用され得る。
【0082】
工程4の反応は、約−25℃〜約70℃、好ましくは約−5℃〜約50℃、より好ましくは約15℃〜約30℃の範囲の温度で、20分間〜90分間またはその反応が完結するまで、実施され得る。
【0083】
(工程5:)
工程4からの式VIの化合物は、以下に示すように、2相系で、次亜塩素酸ナトリウムまたは次亜塩素酸カルシウムを用いる、TEMPO媒介性酸化により酸化されて、式VII:
【0084】
【化36】

の化合物を形成する。
【0085】
好ましくは、1つ以上の触媒および塩基が、この酸化剤の添加の前に添加される。触媒、塩基および酸化剤の好ましい組合せとしては、それぞれ、ともに触媒としての2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシ(TEMPO)および金属臭化物(ここで、この金属臭化物の金属は、Na、K、Liなどであり得る)、塩基としての炭酸水素ナトリウム、および酸化剤としての次亜塩素酸ナトリウムまたは次亜塩素酸カルシウムが挙げられる。この酸化剤は、一般に、式Vの化合物に対して、約0.2モル当量〜約10モル当量、好ましくは約1モル当量〜約5モル当量、より好ましくは約1モル当量〜約1.5モル当量で使用され得る。適切な溶媒の非限定的な例としては、脂肪族溶媒(例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタンなど);芳香族溶媒(例えば、トルエン、ベンゼン、キシレン、メシチレン、エチルベンゼン、クロロベンゼンなど);エステル溶媒(例えば、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ジイソプロピルなど);他の溶媒(例えば、THFなど)、またはこれらの混合物が挙げられる。好ましい溶媒としては、エステル溶媒、より好ましくは酢酸イソプロピルまたは酢酸エチルが挙げられる。この反応混合物は、約30分間またはその反応が完結まで攪拌され、式VIIの化合物を与える。
【0086】
(工程6:)
OHが、次いで式VIIの化合物を含む、工程5からの溶液に添加され、式VIIIの化合物を与える。使用され得るROHの量は、式VIIの化合物に対して、約1モル当量〜約10モル当量、好ましくは約1モル当量〜約5モル当量、より好ましくは約1モル当量〜約3モル当量の範囲にわたり得る。ROHが低分子量アルコールであり、それが溶媒自体として使用される場合は、任意の過剰のROHが、使用され得る。式VIIの化合物は、ROHの添加の後、分子内環化を受け、式VIIIの化合物を与える。この分子内環化は、中性または酸性条件下で実施され得る。注意:アルコールの非存在下では、化合物VIIは、環化して化合物VIII(ここで、R=H)を与え、次いで水の脱離を伴ってそれ自身と部分的に反応し、様々な量のエーテル、例えば、以下:
【0087】
【化37】

を与える。
【0088】
好ましい実施形態では、式VIIの化合物は、分子内環化反応を触媒するための酸で処理され、式VIIIの化合物を与える。酸の非限定的な例としては、有機酸、無機酸、およびルイス酸が挙げられ、好ましくは有機酸または無機酸が挙げられる。適切な無機酸の非限定的な例としては、スルホン酸樹脂(例えば、Amberlyst 15、HSO、およびHPOが挙げられる。適切な有機酸の非限定的な例としては、ショウノウスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、トリフルオロ酢酸などが挙げられる。使用される酸の量は、式VIIの化合物に対して、約0.01モル当量〜約3モル当量、好ましくは約0.5モル当量〜約1.5モル当量、より好ましくは約0.9モル当量〜約1.1モル当量の範囲にわたり得る。任意の過剰の酸が、使用される。
【0089】
工程6の反応は、約10℃〜約80℃、好ましくは約20℃〜約40℃、より好ましくは約30℃〜約40℃の範囲の温度で、2時間〜16時間またはその反応が完結するまで、実施され得る。
【0090】
(工程7:)
工程6からの式VIIIの化合物は、適切な溶媒中で、例えばシアノトリメチルシリルまたはシアン化カリウムのような適切なシアン化物で処理することによりシアン化され、式IXの化合物を与える。使用され得るシアノトリメチルシリルまたはシアン化カリウムの量は、式VIIIの化合物に対して、約1モル当量〜約3モル当量、好ましくは約1.1モル当量〜約2当量、より好ましくは約1.2モル当量〜約1.4モル当量の範囲にわたり得る。適切な溶媒の非限定的な例としては、1,1,1−トリフルオロトルエン、THF、酢酸エチル、ヘプタン、トルエン、塩化メチレン、アセトニトリル、メチル tert−ブチルエーテルなど、またはこれらの混合物が挙げられる。好ましい溶媒としては、1,1,1−トリフルオロトルエンまたはTHFが挙げられる。好ましい実施形態では、この反応は、三フッ化ホウ素エーテル錯体、トリフルオロメタンスルホン酸、トリメチルシリルトリフラート、SnClなどのような触媒により触媒される。
【0091】
工程7の反応は、約−40℃〜約25℃、好ましくは約−30℃〜約0℃、より好ましくは約−25℃〜約−15℃の範囲の温度で、約1.5時間またはその反応が完結するまで実施され得る。
【0092】
(工程8(a):)
工程7からの式IXの化合物を含む溶液に、MORが添加され、式IX(i)のイミデート化合物が与えられる。MおよびRは、上に規定されている。使用され得るMORの量は、式IXの化合物に対して、約2モル当量〜約8モル当量、好ましくは約3モル当量〜約6当量、より好ましくは約4モル当量〜約5モル当量の範囲にわたる。
【0093】
工程8(a)の反応は、約−25℃〜約25℃、好ましくは約−20℃〜約10℃、より好ましくは約−15℃〜約−10℃の範囲の温度で、約2〜3時間またはその反応が完結するまで実施され得る。
【0094】
(工程8b:)
工程8(a)からの式IX(i)の化合物は、穏和な水性酸性条件に供され、式Xのエステル化合物を与える。好ましい実施形態では、式IX(i)の化合物は、穏和な水性酸性アルカノール分解(そのアルキルは、Rである)に供される。使用され得る酸の量は、式IX(i)の化合物に対して、約2モル当量〜約8モル当量、好ましくは約3モル当量〜約6モル当量、より好ましくは約4モル当量〜約5モル当量の範囲にわたり得る。
【0095】
工程8(b)の反応は、約−20℃〜約20℃、好ましくは約−15℃〜約15℃、より好ましくは約−5℃〜約−15℃の範囲の温度で、約9時間またはその反応が完結するまで実施され得る。
【0096】
(代替的工程8:)
式IXの化合物は、酸性水性ROHを用いて直接に加水分解され、式Xの化合物を与える。代替的工程8では、Rは、好ましくは(C〜C)アルキルを、より好ましくは(C〜C)アルキルを、さらにより好ましくは(C〜C)アルキルを表す。使用され得るROHの量は、式IXの化合物に対して、約2モル当量〜約8モル当量、好ましくは約3モル当量〜約6当量、より好ましくは約4モル当量〜約5モル当量の範囲にわたり得る。
【0097】
代替的工程8の反応は、約25℃〜約65℃、好ましくは約40℃〜約65℃、より好ましくは約45℃〜約55℃の範囲の温度で、10時間またはその反応が完結するまで、実施され得る。
【0098】
(工程9)
式Xの化合物は、30−180psi、好ましくは50−100psi、より好ましくは70−80psiの水素下で、Pd−Cの存在下にて、適切な溶媒中で脱保護され、式Iの化合物を与える。適切な溶媒の非限定的な例としては、メチルアルコール、エチルアルコールまたは1−ブタノールが挙げられる。酢酸は、触媒として使用され得る。使用される場合、酢酸は、一般に、式Iの化合物に対して、約0.2モル当量〜約10モル当量、好ましくは約1モル当量〜約5モル当量、より好ましくは約1モル当量〜約3モル当量で使用される。Cbz保護基は、好ましくは水素化分解により取り除かれ、Boc保護基は、好ましくはHClにより取り除かれる。工程9における反応は、約5℃〜約40℃、好ましくは約10〜約30℃、より好ましくは約15℃〜約25℃の範囲の温度で、約2時間、あるいはこの反応が完了するまで、実施される。
【0099】
式Iの化合物は、塩として単離され得る。式Iの化合物と塩を形成し得る酸の例としては、HCl、パラ−トルエンスルホン酸、4−クロロベンゼンスルホン酸および臭化水素が挙げられる。式Iの化合物の塩の好ましい塩は、以下の構造:
【0100】
【化38】

を有する。
【0101】
以下の非限定的な実施例が、本発明をさらに例示するために提供される。本開示に対して、多くの改変、バリエーション、変更が、材料、方法および反応条件のいずれにも実施され得ることは当業者に対し明らかである。全てのこのような改変、バリエーションおよび変更は、本発明の精神および範囲内であることが意図される。
【実施例】
【0102】
そうではないと記載しない限り、以下の略語は、以下の実施例において、決まった意味を有する。
mp = 融解点
MHz = メガヘルツ
Min = 分
NMR = 核磁気共鳴分光法
mL = ミリリットル
g = グラム
THF = テトラヒドロフラン
DMSO = ジメチルスルホキシド
MTBE = メチル「tert」−ブチルエーテル
h = 時間
IPA = イソプロピルアルコール
TEMPO = 2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシ
TMSCN = シアン化トリメチルシリル
eqまたはequiv = 当量
BF.EtO = 三フッ化ホウ素エーテル錯体
EtOAc = 酢酸エチル
NaOMe = ナトリウムメトキシド
MeOH = メタノール
(実施例1:式IIの化合物の調製)
(工程1.[3,3−ジメチル−1,2−シクロプロパンジカルボン酸]の調製)
工程1についての手順は、M.J.Milewskaら、Tetrahedron:Asymmetry((1996)、7、3169−3180))に基づいている。
【0103】
【化39】

20℃で、アセトン(600mL)中の菊酸エチル(163.1g)の溶液に、20℃において、過マンガン酸カリウム(KMnO)(472.7g)を9等分の固形物として添加した。KMnOの各々の添加後、生じる発熱を、次のKMnOの部分の添加前に、沈下させた。KMnOの添加の完了後、この反応混合物をさらに2時間攪拌し、次いで濾過した。この固形物ケーキをアセトン(450mL)で洗浄して、吸引乾燥した。乾燥した固形物を、亜硫酸ナトリウム(NaSO)(364.3g)と混合し、温度を65℃未満に維持しながら、その固体混合物をひとまとめに30%硫酸(HSO)(960mL)に添加した。酢酸エチル(EtOAc)(1000mL)を添加し、その混合物をセライトを通して濾過した。この層を、分離し、水層を、EtOAc(600mL)で洗浄した。合わせた有機溶液を、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、油状物(158.6g)に濃縮した。この油状物を、約30分間、85℃にて、45%水酸化ナトリウム溶液(NaOH)(240mL)および水(100mL)で処理した。この反応混合物を冷却し、30%硫酸(約300mL)でpH3に酸性化し、EtOAc(450mL)で3回さらに抽出した。合わせた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮してカロン酸(caronic acid)(162.6g)をシス異性体およびトランス異性体の混合物として得た。1H NMR(400MHz、CDOD);シス異性体 δ1.26(s,3H)、1.40(s,3H)、1.96(s,2H);トランス異性体 δ1.32(s,6H)、2.19(s、2H)。
【0104】
(スケールアップの目的のために改変された工程1についての代替手順)
アセトン(1200mL)の中菊酸エチル(200g)の溶液に、40〜45℃にて過マンガン酸カリウム(KMnO)(580g)を10等分の固形物として添加した。各々のKMnOの添加後、生じる発熱を、次のKMnOの添加前に、沈下させた。KMnOの添加の完了の際に、この反応混合物をさらに4時間攪拌した。この反応混合物を10℃に冷却後、水(1200mL)を添加した。得られたスラリーを、亜硫酸ナトリウム(600g)および水(600mL)の混合物に移し、400mLの水でリンスした。この反応混合物を、10℃に冷却し、その温度を30℃未満に維持しながら、98%の硫酸(400mL)を添加した。この層を分離し、その水層をメチルtert−ブチルエーテル(MTBE)(800mL)で抽出した。この有機溶液を合わせ、下にたまった任意の水を取り除いた。この有機溶液を大気圧下で約700mLに濃縮した。MTBE(800mL)を添加し、その混合物を再び700mLに濃縮した。この熱溶液を約50℃に冷却し、MTBE(800mL)を添加した。このMTBE溶液をさらに10℃に冷却し、温度を25℃未満に維持しながら、25%NaOH溶液(456mL)を添加した。この水層を分離し、次いで50℃に加熱した。2時間後、この混合物を5℃に冷却し、35% HCl溶液(約340mL)でpH2〜3に酸性化した。この水性混合物を、EtOAcで2回(1000mL+500mL)抽出した。このEtOAc層を、トルエンを添加した後で、大気圧下で約600mLまで濃縮した。減圧下で、この溶液をさらに600mLまで濃縮することにより、この生成物の沈殿を誘導した。この懸濁液を5℃に冷却し、濾過して、その濾過ケーキを100mLのトルエンで洗浄した。この湿った生成物を減圧下で乾燥し、100gのカロン酸をシス異性体およびトランス異性体の混合物として得た。
【0105】
(工程2.[3,3−ジメチル−1,2−シクロプロパンジカルボン酸無水物]の調製)
工程2についての手順Aは、M.J.Milewskaら、Tetrahedron:Asymmetry,(1996)、7,3169−3180に基いている。
【0106】
250mLの無水酢酸中の162.6gのカロン酸を含む混合物を約30分間加熱還流し、その後、その溶液を分別蒸留に供して、74.6gのカロン酸無水物を得た。H NMR(400MHz、CDCl)δ1.33(s,3H)、1.44(s,3H)、2.66(s,2H)。
【0107】
(スケールアップの目的のために改変された工程2についての手順B)
トルエン(35mL)中の工程1の生成物(カロン酸、10g)を含有する溶液に、10分間にわたってトリフルオロ酢酸無水物(17.9mL)を添加した。この混合物を加熱還流し、トリフルオロ酢酸および過剰のトリフルオロ酢酸無水物を同時に蒸留した。温度が100〜110℃に達したときに、さらにトルエン(20mL)を添加し、その反応混合物を加熱還流した。3時間後、この反応混合物を、約30mLに濃縮した。トルエン(70mL)を添加して、その反応混合物を再び約30mLに濃縮した。(内部基準としてp−ニトロメチル安息香酸を使用したH NMRによりアッセイする)式IIの化合物を含むこの溶液をさらに精製することなく実施例2の第一の工程において使用した。あるいは、式IIの化合物を、分別蒸留のような方法により精製し得る。
【0108】
(実施例2:式1の化合物の調製)
【0109】
【化40】

(工程1)
(手順A)
トルエン(約30mL)中の式IIの化合物(実施例1、工程2、手順Bにおいて10gのカロン酸より調製)を含有する溶液に、MTBE(110mL)およびキニジン(22.5g)を添加した。この混合物を、約−30℃に冷却した。温度を約−30℃に維持しながらアリルアルコール(6.5mL)を添加した。18時間後、この混合物を0℃に温め、2N HCl(69.5mL)を添加した。この層を分離し、この有機溶液を水(2×50mL)で洗浄し、次いで、ブライン(50mL)で1回洗浄した。その有機溶液を、減圧下で約20〜30mLに濃縮し、その溶液にMTBE(200mL)を添加した。この混合物を、還流し、MTBE(100mL)中の(R)(+)−α−メチルベンジルアミン(8.2g)を含有する溶液を、添加した。この混合物を、0℃に5時間にわたってゆっくりと冷却した。1時間後、その懸濁液を濾過し、回収した固形物をMTBE(2×30mL)で2回洗浄し、次いで減圧下で3時間、40℃で乾燥し、式IIIの化合物を固形物として得た。
【0110】
【化41】

(手順B)
式IIの化合物(10g)に、キニジン(23g)を添加し、次にトルエン(100mL)を添加した。得られたスラリーを、−30℃〜−25℃の間に冷却した。その温度を−30℃〜−25℃の間に維持しながら、アリルアルコール(7.3mL)を添加した。18時間後、この混合物を、20℃に温め、2N HCl(71.4mL)を添加した。この層を分離し、その水層をMTBE(40mL)で抽出した。合わせた有機溶液を、10%塩化ナトリウム溶液(2×50mL)で洗浄した。この有機溶液を、減圧下で、約25〜30mLに濃縮した。トルエン(100mL)を添加し、次にMTBE(30mL)を添加し、その混合物を65℃に加熱した。(R)(+)−α−メチルベンジルアミン(8.7g)を添加し、その混合物を、3時間にわたってゆっくりと50℃に冷却した。次いで、この混合物を、さらに3時間にわたって20℃に冷却し、さらに1時間後、その懸濁液を濾過した。回収した固形物を、MTBE(2×30mL)で2回洗浄し、次いで、減圧下で60℃にて、約12時間乾燥して式IIIの化合物を固形物として得た。
【0111】
(工程2)
MTBE(600mL)および2N HCl(470mL)中の式IIIの化合物(100g)を含有する混合物を、20〜25℃で約1時間攪拌した。その2相混合物を、静置させ、その水層を分離した。その有機層を、水(400mL+400mL)で2回洗浄した。この有機溶液を、約200mLに濃縮し、その溶液に800mLのテトラヒドロフラン(THF)を添加した。この溶液を、約200mLに濃縮し、次いで、200mLのTHFリンスとともに重炭酸アンモニウム(69g)に添加した。ピリジン(15mL)および(THF中の75% w/w溶液としての)ジ−tert−ブチル−ジカーボネート(100g)を添加した。12時間後、この反応混合物を約10℃に冷却し、その温度を25℃未満に維持しながら、水(500mL)を添加した。これに、トルエン(400mL)を添加した。その混合物を、全ての固形物が溶解するまで、攪拌した。その2相混合物を、静置し、下部の水層を取り除いた。その有機層を、まず1N HCl(200mL)で洗浄し、次いで、希重炭酸ナトリウム溶液で洗浄し(代表的には80mL)、その結果、その水層のpHは、6.0〜6.5の間であった。この有機溶液を、減圧下で60℃で、約200mLに濃縮し、その際にトルエン(600mL)を添加した。IVの化合物を含有するこの溶液を、約150mLにさらに濃縮し、さらに精製することなく次の工程に使用した。
【0112】
【化42】

(工程3)
(手順A:THF中の1M LAH溶液の使用)
約−12℃で、THF中の1M 水素化リチウムアルミニウム(1380g)に、98%硫酸(78g)を、その温度が、−15〜5℃の間に維持されるような速度で添加した。添加の完了後、トルエン中の式IVの化合物(100g)を含む溶液を、その温度を、−5℃〜5℃に維持しながら添加した。約2時間後、さらなる1M LAH溶液(920g)を添加し、その反応混合物を、1時間にわたってゆっくりと還流するまで加熱した。16時間の還流後、その反応混合物を−15℃に冷却し、水(147mL)を、その温度が−15℃〜5℃の間に維持されるように非常にゆっくりと添加した。25%のNaOH溶液(57.6g)を、その温度を−25℃未満に維持しながら添加した。これに水(290mL)を添加し、次に、MTBE(500mL)を添加した。この反応混合物を、少なくとも5時間攪拌した。その懸濁液を濾過し、その濾過ケーキをMTBE(250mL)で洗浄した。その有機濾液を、約200mLに濃縮した。MTBE(250mL)を添加した。次いで、その希釈溶液を、MTBE(600mL)中の安息香酸混合物(62g)に添加した。2時間後、生成した沈殿物を濾過した。回収した固形物を、MTBE(350mL)で洗浄し、減圧下で乾燥して、式Vの化合物(102g)を固形物として得た:mp:132℃;
【0113】
【化43】

(手順B:THF中の2〜2.4M LAH溶液の使用)
THF(692mL、3.0当量)中の2.2M LAH溶液に、無水THF(約400mL)を添加し、得られた溶液を約−15℃に冷却した。この溶液に、濃硫酸(42.3mL、1.5当量)を約1時間にわたって、その温度を5℃未満に維持しながら、ゆっくりと添加した。得られた懸濁液を、約−15℃に冷却し、トルエンとTHFとの混合物中の式IVの化合物の溶液(100g活性、1.0当量)を、反応温度を0℃未満に維持しながら、ゆっくりと添加した。その反応混合物を0℃に暖め、エステル基の還元を生じながら、少なくとも2時間攪拌した。この反応混合物に、2.2M LAH溶液(304mL、1.5当量)を添加し、得られた懸濁液を、ゆっくりと加熱還流した。この混合物を、約16時間にわたって、還流を維持し、その間に、アミド部分が還元された。この混合物を−15℃に冷却し、セライト固形物(100g)を、ゆっくりと添加した。生じたスラリーに、その温度を5℃未満に維持しながら、水(132mL)をゆっくりと添加した。これに、次に25%NaOH溶液(51.8mL)および水(261mL)を添加した。得られたスラリーを、周囲温度に温め、少なくとも5時間攪拌した。その無機塩を濾過し、その濾液を、大気圧下で約200mLの体積に濃縮した。次いで、その濃縮物を、MTBE(250mL)で希釈し、得られた混合物を、約5分間攪拌した。生じた溶液を、その温度を10℃未満に維持しながら、600mLのMTBE中の安息香酸の冷溶液(62g、1.0当量)にゆっくりと添加した。得られたスラリーを、10℃にて約2時間攪拌し、濾過した。この生成物を、減圧下で少なくとも約4時間、30〜40℃の間で乾燥し、式Vの化合物(102g、80%モル収率)を、結晶性の固形物として得た。
【0114】
(手順4)
EtOAc(500mL)(4×〜8×)中の工程3からの式Vの化合物(100g)の懸濁液に、水(500mL)中の炭酸カリウム(100g)(0.90〜1.3×)を添加し、次に、クロロ蟻酸ベンジル(74.3g、1.1当量)(0.90〜1.2当量)を添加した。その混合物を、15〜30℃にて、その反応が完了するまで(代表的には、20〜90分間)攪拌し、式VIの化合物を得た。
【0115】
(工程5)
工程4からの式VIの化合物を含有する溶液から、その水層を、分離し、その有機層を、水(500mL)(4×〜7×)で洗浄し、次いで、−10〜5℃に冷却した。水(300mL)中の重炭酸ナトリウム(20g)および臭化カリウム(2.4g)の溶液を、その有機層に添加し、次に、その温度を10℃未満に維持しながら、EtOAc(約0.03〜0.1×)中のTEMPO(0.6g)の溶液(0.6〜1.0g)を添加した。5%次亜塩素酸ナトリウム(6.56×、656mL、1.2当量)を、−10℃〜5℃の温度を維持しながら、45〜90分間にわたって添加した。次いで、その混合物を、その反応が完了するまで、さらに20〜90分攪拌し、式VIIの化合物を得た。
【0116】
(工程6)
工程5からの式VIIの化合物を含有する溶液に、チオ硫酸ナトリウムの水溶液を添加し、攪拌し、そしてその有機層および水層を分離した。その有機層を、20〜30℃に温め、水(500mL)(4×〜8×)で洗浄した。その有機層を、真空下で150mLに濃縮した。その減圧を、窒素で破り、そのバッチを、20〜30℃に冷却した。エチルアルコール(500mL)(4×〜8×)を、添加し、そのバッチを、真空下に置き、酢酸(約1当量)の存在下で約5〜15分間加熱還流した(40℃未満)。次いで、そのバッチを、150mLに濃縮した。THF(4×〜8×)を添加し、そのバッチを、減圧下、40℃未満にて加熱還流して、次いで150mLに濃縮した。150mLのTHFを用いた溶媒置換を、繰り返し、そのバッチ溶液を、減圧下で150mLに濃縮した。その水分含量は、0.1%未満であり、EtOH含量は、0.3%未満であった。必要な場合、さらにTHFを添加し、濃縮を、水分含量とEtOH含量の両方が、特定された値未満になるまで繰り返した。その生成物は、式VIIIの化合物であり、これを、さらに生成することなく次の工程において使用した。その生成物のモル収率は、65〜90%であった。
【0117】
【化44】

(工程7)
(手順A)
約10℃における1,1,1−トリフルオロトルエン(250.0g、0.96mol、1.0当量)の工程6からの式VIIIの化合物(RはHである)の溶液に、その温度を25℃未満に維持しながら、シアノトリメチルシリル(TMSCN)(142.9g、1.44mol、1.5当量)を、ゆっくりと添加した。その反応混合物をさらに約−35℃に冷却後、三フッ化ホウ素エーテル錯体(BF.EtO)(68.1g、0.48mol、0.5当量)を、反応温度を−30℃未満に維持しながら、ゆっくりと添加した。得られた混合物を、−35℃で約30分間攪拌し、その後、ゆっくりと周囲温度に温めて、1時間攪拌した。この混合物に、シリカゲル(500g)をゆっくりと添加し、次に、ヘプタン(2L)中の10%酢酸エチル溶液を添加し、得られたスラリーを少なくとも2時間攪拌した。次いで、その固形物を濾過し、その濾液を、真空下で最小容量に濃縮した。その濃縮物に、メチルアルコール(1.5L)を添加し、式IXの化合物を含む得られた溶液を、0℃に冷却した。
【0118】
(手順B)
工程6からの20gの式VIIIの化合物(Rはエチルである)(1当量)、および40mLのTHFを含む溶液に、約15℃にて、12mL(1.3当量)のTMSCNを添加した。その混合物を、−20〜−25℃に冷却し、次に、2.6ml(0.3当量)のBF.EtOを添加した。この温度において0.5時間後、その反応混合物を、約2時間にわたって約20℃まで温め、式XIの化合物を得た。
【0119】
(工程8(a))
工程7からの式IXの化合物を含む溶液に対し、40mLのMeOHを添加し、その溶液を、濃縮し、収率90〜96%の式IX(i)の化合物を油状物として得た。その油状物を、120mLのMeOHに再溶解し、−15℃に冷却し、その際に、MeOH中の38mLの30% ナトリウムメトキシド(NaOMe)(3.0当量)を、その温度を、−10〜−15℃の間に維持しながら、添加した。その反応混合物を、さらに、2〜3時間攪拌した。
【0120】
【化45】

(工程8(b))
23.4mL(4当量)の36.5% HClを、工程8(a)からの式IX(i)の化合物に添加し、そのpHを1〜3に下げた。この添加の間、その温度を、−5〜−15℃に維持した。必要な場合、反応媒体のpHが、1〜3の間であるように、さらにHClを添加した。その反応混合物を、−5℃〜−10℃で一晩攪拌した後、その混合物を、減圧下で濃縮して、減圧下、20〜25℃で約90mLにした。その濃縮混合物に、160mLのMTBEおよび80mLの水を添加した。その有機層および無機層を分離し、その有機溶液を、80mLの水で3回洗浄した。その有機溶液を、減圧下で濃縮し、次いで、溶媒をMeOHと交換した。式Xの化合物を含むそのMeOH溶液を、工程9の前に、必要に応じてチャコールで処理し、90〜96%収率の式Xの化合物を、油状物として得た。
【0121】
【化46】

(代替工程8)
塩化アセチル(手順Aより、410mL、5.76mol、6.0当量)を、その温度を25℃未満に維持しながら、工程7からの式IXの化合物を含む溶液にゆっくりと添加した。その反応混合物を、水(35mL、1.92mol、2.0当量)で処理し、得られた混合物を、50℃に温めて、少なくとも10時間攪拌した。得られた混合物を、真空下で、最小容量に濃縮し、その濃縮物を、MTBE(2L)に溶解した。その溶液を、水(500mL)で洗浄し、分離後に得られた水層を、MTBE(1L)で抽出した。その有機層を、合わせ、濃縮して油状物(HPLCにより、168g活性、58%モル収率)を得た。
【0122】
【化47】

(工程9)
(手順A)
メチルアルコール(600mL)中の式Xの化合物(100g活性)および10% Pd−C(50%ウェット)(10g)を含む混合物を、80psiの水素下で維持した。反応を完了した後、その触媒を濾過し、メチルアルコール(160mL)で洗浄した。その濾液を、減圧下で約150mLに濃縮し、その際に、イソプロパノール(IPA)(500mL)を添加した。その混合物を、もう一度減圧下で、約200mLに濃縮した。この濃縮の間、水分含量は、約0.3%であった(水分含量が、0.3%を超える場合、さらにIPAを添加し、その混合物をもう一度濃縮した)。その濃縮物を、0〜10℃の間に冷却し、次いで、その濃縮物に、IPA溶液(約50〜66mL)中の5〜6N HClを添加した。MTBE(1500mL)を、ゆっくりと添加し、生成物の沈殿を完了した。その懸濁液を、5〜15℃で約2時間攪拌した後、その懸濁液を濾過した。回収した固形物を濾過して、IPA(20mL)およびMTBE(200mL)の前もって混合し、前もって冷却した混合物で洗浄した。湿った固形物を、減圧下で乾燥して、式Iの化合物(47.5g;70%)を固形物として得た。
【0123】
【化48】

(手順B)
メチルアルコール(112mL)中の式Xの化合物(28g活性)、酢酸(28mL)および10% Pd−C(50%ウェット)(2.8g)を含む混合物を、70psiの水素下で維持した。反応が完了した後、その触媒を、濾過し、IPA(19.6mL)中の5〜6N HClを添加した。その混合物を、減圧下で濃縮した。IPA(150mL)を、添加し、その混合物を、再び濃縮した。これを、さらに一度繰り返し、得られた油状物を、IPA(60mL)に溶解した。10℃に冷却後、MTBE(450mL)を添加した。沈殿した固形物を、濾過し、減圧下で乾燥して、式Iの化合物(12.1g、64.5)を得た。
【0124】
上記のように、式Iの化合物は、前記の米国特許出願第09/908,955号および、同第10/052,386号)に記載されるとおりの式Zの化合物を調製するのに使用され得る。
【0125】
種々の改変が、本明細書中に開示される実施形態および実施例になされ得ることが理解される。従って、上記記載は、限定ではなく、単に好ましい実施形態の例示として考慮されるべきである。当業者は、本明細書に添付の特許請求の範囲および趣旨内で、種々の改変を想定する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化1】

の化合物またはその塩を作製するプロセスであって、該プロセスは、以下:
(1)キラルな試薬の存在下で、式IIの化合物をROHで脱対称化し、式IIIの化合物を得る工程であって:
【化2】

ここで、Rが、アルキル、アルケニル、アリール、アラルキル、アルキルアリール、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、シクロアルケニルおよびシクロアルケニルアルキルからなる群より選択される、工程;
(2)該式IIIの化合物をアミノ化し、式IV:
【化3】

の化合物を得る工程;
(3)該式IVの化合物のアミド官能基およびエステル官能基を還元して、式V:
【化4】

の化合物、またはその塩を得る工程;
(4)該式Vの化合物のアミノ基を保護して、式VI:
【化5】

の化合物を得る工程であって、ここでPは、保護基を表す、工程;
(5)該式VIの化合物を酸化して、式VII:
【化6】

の化合物を得る工程;
(6)該式VIIの化合物にROHを付加させて、式VIII:
【化7】

の化合物を得る工程であって、ここでRは、H、アルキル、アリール、アラルキル、シクロアルキル、またはシクロアルキルアルキルを表す、工程;
(7)該式VIIIの化合物をシアノ化して式IX:
【化8】

の化合物を得る工程;
(8)MORまたはROHを用いて、式IXの化合物を、式X:
【化9】

の化合物に加水分解する工程であって、ここでMは、Li、Na、およびKからなる群より選択され、そしてRは、アルキル、アリール、アラルキル、およびシクロアルキルからなる群より選択される、工程;ならびに
(9)該式Xの化合物を脱保護して式I:
【化10】

の化合物を得る工程、または必要に応じて該化合物をその塩として単離する工程を包含する、プロセス。
【請求項2】
が、メチル、エチル、トリフルオロエチル、トリクロロエチル、プロピル、イソプロピル、アリル、3−メチル−2−ブテニルおよびシンナミルからなる群より選択される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
が、アリルである、請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
Pが、Cbz−Cl、2−クロロ−Cbz−Cl、2,4−ジクロロ−Cbz−Cl、および4−ブロモ−Cbz−ClCbz−Clからなる群より選択される試薬からのCbz保護基を表す、請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
が、(C〜C)アルキルを表す、請求項1に記載のプロセス。
【請求項6】
が、(C〜C)アルキルを表す、請求項1に記載のプロセス。
【請求項7】
前記キラルな試薬が、シンコナアルカロイド、酵素、およびジイソプロポキシチタニウムTADDOL−エートからなる群より選択される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項8】
前記シンコナアルカロイドが、キニジン、修飾キニジン、シンコニン、エピシンコニジン、およびエピキニンからなる群より選択される、請求項7に記載のプロセス。
【請求項9】
前記シンコナアルカロイドがキニジンである、請求項8に記載のプロセス。
【請求項10】
第1級アミン、第2級アミンまたは第3級アミンを添加することにより、前記式IIIの化合物の塩を作製する工程をさらに包含する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項11】
前記第1級アミンが、R(+)−α−メチルベンジルアミンである、請求項10に記載のプロセス。
【請求項12】
工程2が、アンモニウムの供給源、カルボン酸活性化の供給源、および塩基を前記反応物に添加する工程を包含する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項13】
前記アンモニウムの供給源が、水酸化アンモニウム、塩化アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、およびリン酸アンモニウムからなる群より選択される、請求項12に記載のプロセス。
【請求項14】
前記カルボン酸活性化の供給源が、ジ−t−ブチル−ジカーボネートおよびクロロギ酸イソブチルからなる群より選択される、請求項12に記載のプロセス。
【請求項15】
前記塩基が、ピリジンである、請求項12に記載のプロセス。
【請求項16】
工程3の前記還元が、第1の段階および第2の段階を包含し、該第1の段階が、前記式Vの化合物の前記エステルを、トリメチリルシリルの存在下で、アラン、水素化ホウ素リチウム、および水素化ホウ素ナトリウムからなる群より選択される還元剤を用いて還元する工程を包含し、そして該第2の段階が、前記式Vの化合物の前記アミドを、水素化アルミニウムリチウムおよび水素化トリアセトキシホウ素ナトリウムからなる群より選択される還元剤を用いてアミンに還元する工程を包含する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項17】
工程3の前記式Vの化合物が、安息香酸塩、ショウノウ酸塩、ジベンゾイル酒石酸塩、フマル酸塩、および4−クロロ安息香酸塩からなる群より選択される塩として単離される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項18】
工程3の前記式Vの化合物が、以下の構造:
【化11】

を有する塩として単離される、請求項17に記載のプロセス。
【請求項19】
工程5の前記式VIの化合物の酸化が、TEMPO媒介性酸化を用いて実施される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項20】
工程6が、無機酸、有機酸、およびルイス酸からなる群より選択される酸を添加する工程をさらに包含する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項21】
工程7における前記式VIIIの化合物が、シアノトリメチルシリルまたはシアン化カリウムで処理される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項22】
工程7が、三フッ化ホウ素エーテル錯体、トリフルオロメタンスルホン酸、トリメチルシリルエステル、およびSnClからなる群より選択される触媒を添加する工程をさらに包含する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項23】
前記式Xの化合物が、適切な溶媒中で、30〜180psiの水素下、Pd−Cの存在下で脱保護され、式Iの化合物を与える、請求項1に記載のプロセス。
【請求項24】
工程9における前記式Iの化合物が、HCl塩、p−トルエンスルホン酸塩、4−クロロベンゼンスルホン酸塩、および臭化水素酸塩から群より選択される塩として単離される、請求項1のプロセス。
【請求項25】
工程9における前記式Iの化合物が、以下の構造:
【化12】

の塩として単離される、請求項24のプロセス。
【請求項26】
式:
【化13】

の化合物またはその塩。
【請求項27】
式:
【化14】

の化合物。
【請求項28】
式:
【化15】

の化合物。
【請求項29】
式:
【化16】

の化合物。
【請求項30】
式:
【化17】

の化合物。
【請求項31】
式:
【化18】

の化合物。
【請求項32】
式:
【化19】

の化合物。
【請求項33】
式:
【化20】

の化合物。


【公表番号】特表2007−520434(P2007−520434A)
【公表日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−517302(P2006−517302)
【出願日】平成16年6月15日(2004.6.15)
【国際出願番号】PCT/US2004/019135
【国際公開番号】WO2004/113295
【国際公開日】平成16年12月29日(2004.12.29)
【出願人】(596129215)シェーリング コーポレイション (785)
【氏名又は名称原語表記】Schering Corporation
【Fターム(参考)】