説明

(23S)−1α−ヒドロキシ−27−ノル−25−メチレンビタミンD3−26,23−ラクトンの結晶およびその製造方法

特定のX線粉末回折パターンまたは赤外分光パターンを示す(23S)−1α−ヒドロキシ−27−ノル−25−メチレンビタミンD−26,23−ラクトン(次式)の結晶。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、(23S)−1α−ヒドロキシ−27−ノル−25−メチレンビタミンD−26,23−ラクトンの結晶、それらの製造方法、およびそれらを含有する医薬組成物に関する。本発明の化合物は、ビタミンDレセプター結合能を有し、骨粗鬆症、悪性腫瘍、乾癬症、副甲状腺機能亢進症、炎症性呼吸器疾患、関節リューマチ、真性糖尿病、高血圧症、脱毛症、アクネ、皮膚炎、高カルシウム血症、または骨パジェット病(Paget’s disease of bone)等の治療薬として用いうる。
【背景技術】
一般的に、医薬原薬の製造において、原薬を結晶状態、さらには結晶形の特定された結晶状態で得ることは、非晶質体で得ることに比較して、原薬および医薬組成物の保存安定性や製造工程のコントロール等において有利である。下記式(1)で示される(23S)−1α−ヒドロキシ−27−ノル−25−メチレンビタミンD−26,23−ラクトンは、骨形成促進作用(国際公開第95/33716号パンフレット参照。)、好中球浸潤抑制作用(国際公開第00/24712号パンフレット参照。)、骨吸収抑制作用(国際公開第02/15894号パンフレット参照。)、副甲状腺ホルモン分泌抑制作用(国際公開第02/17911号パンフレット参照。)等を有することが報告されている。

しかし、上記明細書には該化合物の結晶に関しては何ら記載されておらず、そこで検討された(23S)−1α−ヒドロキシ−27−ノル−25−メチレンビタミンD−26,23−ラクトンは、いずれも非晶質体である。
【発明の開示】
本発明の目的は、(23S)−1α−ヒドロキシ−27−ノル−25−メチレンビタミンD−26,23−ラクトンの結晶およびその製造方法を提供することである。
また、本発明の目的は、(23S)−1α−ヒドロキシ−27−ノル−25−メチレンビタミンD−26,23−ラクトンの結晶を有効成分として含有する医薬組成物を提供することである。
本発明者らは、上記目的で研究した結果、該化合物を有機溶媒または有機溶媒と水の混合溶媒から晶析を行うことにより結晶が得られることを見出し、以下の発明に到達した。
すなわち、本発明は、以下の(1)ないし(14)のように整理することができる。
(1) 反射角度2θで表わして、ほぼ12.65°、15.05°、15.20°、16.85°、17.30°、17.50°、18.70°、および19.10°に特徴的なピークを有するX線粉末回折パターンを示す、(23S)−1α−ヒドロキシ−27−ノル−25−メチレンビタミンD−26,23−ラクトンの結晶。
(2) 赤外分光分析において、3482cm−1、2946cm−1、1744cm、1663cm−1、1433cm−1、1364cm−1、1281cm−1、1144cm−1、1038cm−1、957cm−1、897cm−1、816cm−1、741cm−1、627cm−1、および534cm−1に特徴的なピークを有する、(23S)−1α−ヒドロキシ−27−ノル−25−メチレンビタミンD−26,23−ラクトンの結晶。
(3) (23S)−1α−ヒドロキシ−27−ノル−25−メチレンビタミンD−26,23−ラクトンを有機溶媒に溶解して溶液を得、その溶液から結晶化させることにより得られる上記(1)または(2)に記載の結晶。
(4) (23S)−1α−ヒドロキシ−27−ノル−25−メチレンビタミンD−26,23−ラクトンを有機溶媒および水からなる混合溶媒に溶解して溶液を得、その溶液から結晶化させることにより得られる上記(1)または(2)に記載の結晶。
(5) 前記有機溶媒がメタノール、エタノール、アセトニトリル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、蟻酸メチル、蟻酸エチル、および酢酸からなる群から選ばれる1種または2種以上の有機溶媒である、上記(3)または(4)に記載の結晶。
(6) 上記(1)ないし(5)のいずれか1項に記載の(23S)−1α−ヒドロキシ−27−ノル−25−メチレンビタミンD−26,23−ラクトンの結晶を有効成分として含有する医薬組成物。
(7) 骨粗鬆症、悪性腫瘍、乾癬症、副甲状腺機能亢進症、炎症性呼吸器疾患、関節リューマチ、真性糖尿病、高血圧症、脱毛症、アクネ、皮膚炎、高カルシウム血症、または骨パジェット病(Paget’s disease of bone)の治療薬である上記(6)に記載の医薬組成物。
(8) (23S)−1α−ヒドロキシ−27−ノル−25−メチレンビタミンD−26,23−ラクトンを有機溶媒に溶解して溶液を得、その溶液から結晶化させることを特徴とする、上記(1)または(2)に記載の結晶の製造方法。
(9) (23S)−1α−ヒドロキシ−27−ノル−25−メチレンビタミンD−26,23−ラクトンを有機溶媒および水からなる混合溶媒に溶解して溶液を得、その溶液から結晶化させることを特徴とする、上記(1)または(2)に記載の結晶の製造方法。
(10) 前記有機溶媒がメタノール、エタノール、アセトニトリル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、蟻酸メチル、蟻酸エチル、および酢酸からなる群から選ばれる1種または2種以上の有機溶媒である、上記(8)または(9)に記載の製造方法。
(11) 前記有機溶媒がメタノール、エタノール、アセトニトリル、および酢酸からなる群から選ばれる1種または2種以上の有機溶媒である、上記(8)または(9)に記載の製造方法。
(12) 前記有機溶媒がアセトニトリルである、上記(8)または(9)に記載の製造方法。
(13) 前記有機溶媒がメタノールである、上記(8)または(9)に記載の製造方法。
(14) 前記有機溶媒がエタノールである、上記(8)または(9)に記載の製造方法。
【図面の簡単な説明】
図1は(23S)−1α−ヒドロキシ−27−ノル−25−メチレンビタミンD−26,23−ラクトンの非晶質のXRDパターンを示す図である。
図2は(23S)−1α−ヒドロキシ−27−ノル−25−メチレンビタミンD−26,23−ラクトンのメタノールと水の混合溶媒から結晶化したA晶のXRDパターンを示す図である。
図3は(23S)−1α−ヒドロキシ−27−ノル−25−メチレンビタミンD−26,23−ラクトンのエタノールと水の混合溶媒から結晶化したA晶のXRDパターンを示す図である。
図4は(23S)−1α−ヒドロキシ−27−ノル−25−メチレンビタミンD−26,23−ラクトンのアセトニトリルと水の混合溶媒から結晶化したA晶のXRDパターンを示す図である。
図5は(23S)−1α−ヒドロキシ−27−ノル−25−メチレンビタミンD−26,23−ラクトンのアセトニトリルから結晶化したA晶のXRDパターンを示す図である。
図6は(23S)−1α−ヒドロキシ−27−ノル−25−メチレンビタミンD−26,23−ラクトンの蟻酸エチルから結晶化したA晶のXRDパターンを示す図である。
図7は(23S)−1α−ヒドロキシ−27−ノル−25−メチレンビタミンD−26,23−ラクトンの酢酸エチルから結晶化したA晶のXRDパターンを示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
本発明の結晶は、反射角度2θで表わして、ほぼ12.65°、15.05°、15.20°、16.85°、17.30°、17.50°、18.70°、および19.10°に特徴的なピークを有するX線粉末回折(XRD)パターンを有することを特徴とする。なお、他の結晶と区別するために、この結晶をA晶とよぶ。
また、本発明の結晶は、(23S)−1α−ヒドロキシ−27−ノル−25−メチレンビタミンD−26,23−ラクトンを有機溶媒あるいは有機溶媒と水の混合溶媒に溶解し、その溶液から該化合物を結晶化させることにより製造することができる。かかる有機溶媒としては、メタノール、エタノール、アセトニトリル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、蟻酸メチル、蟻酸エチル、酢酸などを用いることができる。これらは単独で用いても、2種以上の混合溶媒で用いてもよい。これらの中でも好ましい有機溶媒としては、メタノール、エタノール、アセトニトリル、または酢酸を挙げることができる。特に好ましい有機溶媒系としては、有機溶媒単独系としてはアセトニトリル、メタノール、エタノールが、有機溶媒と水との混合溶媒系としてはメタノールと水、エタノールと水、アセトニトリルと水、酢酸と水の各系を挙げることができる。有機溶媒と水との混合溶媒系の場合、両者の量比は、有機溶媒:水=1:10から10:1が好ましい。
本発明の結晶の製造は、種々の方法で実施できるが、典型例は以下のようである。
有機溶媒から析出させる場合、(23S)−1α−ヒドロキシ−27−ノル−25−メチレンビタミンD−26,23−ラクトンを室温ないし有機溶媒の沸点の温度で溶媒に溶解し、その後−20℃ないし室温の温度に冷却し、静置し、析出した結晶をろ別して減圧下で乾燥する。
有機溶媒と水との混合溶媒から析出させる場合、(23S)−1α−ヒドロキシ−27−ノル−25−メチレンビタミンD−26,23−ラクトンを室温ないし有機溶媒の沸点の温度で有機溶媒に溶解し、放冷しながら水を加える。その後−20℃ないし室温の温度に冷却し、静置し、析出した結晶をろ別して減圧下で乾燥する。
なお、一般に、特定の結晶形の結晶を純粋に調製しようとしても、他の晶形または非晶質の混入を完全には排除できない場合がある。本発明の(23S)−1α−ヒドロキシ−27−ノル−25−メチレンビタミンD−26,23−ラクトンの結晶を調製する工程でもその可能性を完全には否定できない。本発明は実質的に純粋なA晶またはその製造方法なのであって、本発明には、こうした微量の混入物がある結晶またはその製造法も包含される。こうしたものでも、原薬および医薬組成物の保存安定性といった本発明の効果が奏されるからである。
このようにして得られる(23S)−1α−ヒドロキシ−27−ノル−25−メチレンビタミンD−26,23−ラクトンの結晶は、種々の晶形をとる可能性があるが、特に上述のA晶が好適である。この結晶は、実施例で述べるように、非晶質体に比較して保存安定性が飛躍的に向上することが明らかとなった。したがって、このような結晶は原薬および医薬組成物の保存安定性や製造工程のコントロール等において有利であり、医薬品製造上有用である。
なお、本発明に用いられる(23S)−1α−ヒドロキシ−27−ノル−25−メチレンビタミンD−26,23−ラクトンは、例えば、WO95/33716号明細書に記載の方法で製造することができる。
本発明の(23S)−1α−ヒドロキシ−27−ノル−25−メチレンビタミンD−26,23−ラクトンの結晶を有効成分として含有する医薬組成物は、骨形成促進作用、好中球浸潤抑制作用、骨吸収抑制作用、副甲状腺ホルモン分泌抑制作用等を有する。したがって、本発明の(23S)−1α−ヒドロキシ−27−ノル−25−メチレンビタミンD−26,23−ラクトンの結晶を含有する医薬組成物は、骨粗鬆症、悪性腫瘍、乾癬症、副甲状腺機能亢進症、炎症性呼吸器疾患、関節リューマチ、真性糖尿病、高血圧症、脱毛症、アクネ、皮膚炎、高カルシウム血症、または骨パジェット病等の治療に有効な治療剤とすることができる。
本発明の医薬組成物は、有効成分である(23S)−1α−ヒドロキシ−27−ノル−25−メチレンビタミンD−26,23−ラクトンの結晶と、以下に示すような担体を含有することができる。すなわち、製剤が錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤の場合、担体は、ラクトース、スターチ、炭酸カルシウム、結晶性セルロース、あるいはケイ酸などの賦形剤;カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、リン酸カルシウム、あるいはポリビニルピロリドン等の結合剤;アルギン酸ナトリウム、重ソウ、ラウリル硫酸ナトリウムやステアリン酸モノグリセライド等の崩壊剤;グリセリン等の潤滑剤;カオリン、コロイド状シリカ等の吸収剤;タルク、粒状ホウ酸などの潤滑剤などが挙げられる。製剤が液剤、懸濁剤、シロップ剤などの液体製剤の場合、担体は、例えばトリカプリリン、トリアセチン、ヨード化ケシ油脂肪酸エステル等のグリセロールエステル類;水;エタノール等のアルコール類;流動パラフィン、ココナッツ油、大豆油、ゴマ油、トウモロコシ油等の油性基剤などが挙げられる。製剤が静脈内、皮下、筋肉内投与製剤の場合、担体は、生理食塩水、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールまたはオリーブ油のような植物油、オレイン酸エチル、ヨード化ケシ油脂肪酸エステルのような注射しうる有機エステル類などが挙げられる。製剤が軟膏の場合、担体は、ヒマシ油、オリーブ油、ゴマ油、サフラワー油などの脂肪油;ラノリン;白色、黄色もしくは親水ワセリン;ロウ;オレイルアルコール、イソステアリルアルコール、オクチルイドデカノール、ヘキシルデカノールなどの高級アルコール類;グリセリン、ジグリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ソルビトール、1,3−ブタンジオールなどのグリコール類などが挙げられる。
本発明の有効成分の治療有効量は、投与経路、患者の年齢、性別、疾患の程度によって異なるが、通常0.001〜10000μg/日程度であり、投与回数は通常1−3回/日ないし1−3回/週であり、このような条件を満足するように医薬組成物を調製するのが好ましい。
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
<参考例1>
(23S)−1α−ヒドロキシ−27−ノル−25−メチレンビタミンD−26,23−ラクトンの非晶質の製造
WO95/33716号明細書に記載の方法で製造した(23S)−1α−ヒドロキシ−27−ノル−25−メチレンビタミンD−26,23−ラクトン6.8gを、以下条件でHPLC分取精製した。
カラム:100φ×500mm、C18
移動相:65%(MeOH/CHCN=3/5)/H
流量:300mL/分
検出:265nm
サンプル:6.8g/MeOH 40mL、10回に分けて注入、分取。
該化合物画分を減圧濃縮し、析出した固体をテフロンメンブランフィルター(2μm、親水性、ADVANTEC社製)でろ取し、−30℃の冷凍庫で1時間放置後、凍結乾燥器で12時間乾燥すると、該化合物の非晶質体が2.0g得られた。このサンプルのXRDパターンを図1に示す。なお、XRDの測定方法は下記のように行った。
サンプル調製:メノウ乳鉢で粉砕後、ガラス試料台に充填し測定に供した。
機器:RIGAKU ROTAFLEX RU300
X線ソース:Cu−Kα(λ=1.5418オングストローム)、50kV−200mA
スリット:DS1°−SS1°−RS0.15mm−Graphite
Monochrometer−0.45mm
メソッド:2θ−θスキャン、0.05ステップ/1秒、スキャン範囲5−50°
【実施例1】
(23S)−1α−ヒドロキシ−27−ノル−25−メチレンビタミンD−26,23−ラクトンのA晶の製造(メタノールと水の混合溶媒からの結晶化)
(23S)−1α−ヒドロキシ−27−ノル−25−メチレンビタミンD−26,23−ラクトン200mgを、メタノール500μLに55℃で溶解した。溶液を室温に放冷後、ゆっくり撹拌しながら水120μLを加え、室温で静置した。結晶析出後、15℃で2日間さらに静置した。析出した結晶をろ取し、室温減圧下で乾燥すると、(23S)−1α−ヒドロキシ−27−ノル−25−メチレンビタミンD−26,23−ラクトンのA晶が138mg得られた。この結晶のXRDパターンを図2に示す。なお、XRDの測定方法は参考例1記載と同じ方法で行った。
また、このA晶について赤外分光分析を行ったところ、3482cm−1、2946cm−1、1744cm−1、1663cm−1、1433cm−1、1364cm−1、1281cm−1、1144cm−1、1038cm−1、957cm−1、897cm−1、816cm−1、741cm−1、627cm−1、および534cm−1に特徴的なピークが認められた。
【実施例2】
(23S)−1α−ヒドロキシ−27−ノル−25−メチレンビタミンD−26,23−ラクトンのA晶の製造(エタノールと水の混合溶媒からの結晶化)
(23S)−1α−ヒドロキシ−27−ノル−25−メチレンビタミンD−26,23−ラクトン200mgを、エタノール500μLに60℃で溶解した。溶液を室温に放冷後、ゆっくり撹拌しながら水300μLを加え、室温で静置した。結晶析出後、15℃で2日間さらに静置した。析出した結晶をろ取し、室温減圧下で乾燥すると、(23S)−1α−ヒドロキシ−27−ノル−25−メチレンビタミンD−26,23−ラクトンのA晶が134mg得られた。この結晶のXRDパターンを図3に示す。なお、XRDの測定方法は参考例1記載と同じ方法で行った。
【実施例3】
(23S)−1α−ヒドロキシ−27−ノル−25−メチレンビタミンD−26,23−ラクトンのA晶の製造(アセトニトリルと水の混合溶媒からの結晶化)
(23S)−1α−ヒドロキシ−27−ノル−25−メチレンビタミンD−26,23−ラクトン200mgを、アセトニトリル300μLに加熱溶解した。溶液を25℃に冷却し、ゆっくり撹拌しながら水45μLを加え、室温で静置した。結晶析出後、20℃で2日間さら静置した。析出した結晶をろ取し、室温減圧下で乾燥すると、(23S)−1α−ヒドロキシ−27−ノル−25−メチレンビタミンD−26,23−ラクトンのA晶が80mg得られた。この結晶のXRDパターンを図4に示す。なお、XRDの測定方法は参考例1記載と同じ方法で行った。
【実施例4】
(23S)−1α−ヒドロキシ−27−ノル−25−メチレンビタミンD−26,23−ラクトンのA晶の製造(酢酸と水の混合溶媒からの結晶化)
(23S)−1α−ヒドロキシ−27−ノル−25−メチレンビタミンD−26,23−ラクトン200mgを、酢酸400μLに60℃で溶解した。溶液を室温に放冷後、ゆっくり撹拌しながら水300μLを加え、室温で静置した。結晶析出後、15℃で2日間さらに静置した。析出した結晶をろ取し、室温減圧下で乾燥すると、(23S)−1α−ヒドロキシ−27−ノル−25−メチレンビタミンD−26,23−ラクトンのA晶が94mg得られた。
【実施例5】
(23S)−1α−ヒドロキシ−27−ノル−25−メチレンビタミンD−26,23−ラクトンのA晶の製造(アセトニトリルからの結晶化)
(23S)−1α−ヒドロキシ−27−ノル−25−メチレンビタミンD−26,23−ラクトン200mgを、アセトニトリル300μLに加熱溶解した。溶液を25℃に冷却し、静置した。結晶析出後、20℃で2日間さらに静置した。析出した結晶をろ取し、室温減圧下で乾燥すると、(23S)−1α−ヒドロキシ−27−ノル−25−メチレンビタミンD−26,23−ラクトンのA晶が94mg得られた。この結晶のXRDパターンを図5に示す。なお、XRDの測定方法は参考例1記載と同じ方法で行った。
【実施例6】
(23S)−1α−ヒドロキシ−27−ノル−25−メチレンビタミンD−26,23−ラクトンのA晶の製造(蟻酸メチルからの結晶化)
(23S)−1α−ヒドロキシ−27−ノル−25−メチレンビタミンD−26,23−ラクトン100mgを蟻酸メチル150μLに加熱溶解した。溶液を25℃に冷却し、静置した。結晶析出後、20℃で2日間さらに静置した。析出した結晶をろ取し、室温減圧下で乾燥すると(23S)−1α−ヒドロキシ−27−ノル−25−メチレンビタミンD−26,23−ラクトンのA晶が90mg得られた。
【実施例7】
(23S)−1α−ヒドロキシ−27−ノル−25−メチレンビタミンD−26,23−ラクトンのA晶の製造(蟻酸エチルからの結晶化)
(23S)−1α−ヒドロキシ−27−ノル−25−メチレンビタミンD−26,23−ラクトン100mgを、蟻酸エチル100μLに加熱溶解した。溶液を25℃に冷却し、静置した。結晶析出後、20℃で2日間さらに静置した。析出した結晶をろ取し、室温減圧下で乾燥すると、(23S)−1α−ヒドロキシ−27−ノル−25−メチレンビタミンD−26,23−ラクトンのA晶が120mg得られた。この結晶のXRDパターンを図6に示す。なお、XRDの測定方法は参考例1記載と同じ方法で行った。
【実施例8】
(23S)−1α−ヒドロキシ−27−ノル−25−メチレンビタミンD−26,23−ラクトンのA晶の製造(酢酸メチルからの結晶化)
(23S)−1α−ヒドロキシ−27−ノル−25−メチレンビタミンD−26,23−ラクトン100mgを、酢酸メチル100μLに加熱溶解した。溶液を25℃に冷却し、静置した。結晶析出後、20℃で2日間さらに静置した。析出した結晶をろ取し、室温減圧下で乾燥すると、(23S)−1α−ヒドロキシ−27−ノル−25−メチレンビタミンD−26,23−ラクトンのA晶が100mg得られた。
【実施例9】
(23S)−1α−ヒドロキシ−27−ノル−25−メチレンビタミンD−26,23−ラクトンのA晶の製造(酢酸エチルからの結晶化)
(23S)−1α−ヒドロキシ−27−ノル−25−メチレンビタミンD−26,23−ラクトン100mgを、酢酸エチル150μLに加熱溶解した。溶液を25℃に冷却し、静置した。結晶析出後、20℃で2日間さらに静置した。析出した結晶をろ取し、室温減圧下で乾燥すると、(23S)−1α−ヒドロキシ−27−ノル−25−メチレンビタミンD−26,23−ラクトンのA晶が114mg得られた。この結晶のXRDパターンを図7に示す。なお、XRDの測定方法は参考例1記載と同じ方法で行った。
【実施例10】
(23S)−1α−ヒドロキシ−27−ノル−25−メチレンビタミンD−26,23−ラクトンのA晶の製造(酢酸イソプロピルからの結晶化)
(23S)−1α−ヒドロキシ−27−ノル−25−メチレンビタミンD−26,23−ラクトン100mgを、酢酸イソプロピル120μLに加熱溶解した。溶液を25℃に冷却し、静置した。結晶析出後、20℃で2日間さらに静置した。析出した結晶をろ取し、室温減圧下で乾燥すると、(23S)−1α−ヒドロキシ−27−ノル−25−メチレンビタミンD−26,23−ラクトンのA晶が110mg得られた。
【実施例11】
(23S)−1α−ヒドロキシ−27−ノル−25−メチレンビタミンD−26,23−ラクトンのA晶の製造(酢酸イソブチルからの結晶化)
(23S)−1α−ヒドロキシ−27−ノル−25−メチレンビタミンD−26,23−ラクトン100mgを、酢酸イソブチル150μLに加熱溶解した。溶液を25℃に冷却し、静置した。結晶析出後、20℃で2日間さらに静置した。析出した結晶をろ取し、室温減圧下で乾燥すると、(23S)−1α−ヒドロキシ−27−ノル−25−メチレンビタミンD−26,23−ラクトンのA晶が106mg得られた。
【実施例12】
(23S)−1α−ヒドロキシ−27−ノル−25−メチレンビタミンD−26,23−ラクトンの非晶質体とA晶の安定性試験
参考例1で得られた非晶質体、実施例1で得られたA晶(メタノールと水の混合溶媒から晶析したサンプル)、および実施例2で得られたA晶(エタノールと水の混合溶媒から晶析したサンプル)について、60℃、遮光下で7日間保存した。このサンプルをエタノールに溶解し、HPLC(A=95%水/アセトニトリル、B=95%アセトニトリル/水、B=63%、265nm検出)にてサンプル残存量を定量した。結果を次表に示す。なお、「残存量」とは初期サンプル量を100%としたときの相対量(%)を意味する。

この結果から、本発明の(23S)−1α−ヒドロキシ−27−ノル−25−メチレンビタミンD−26,23−ラクトンの結晶は、非晶質体に比較して保存安定性が飛躍的に向上することが明らかとなった。したがって、このような結晶は原薬および医薬組成物の保存安定性や製造工程のコントロール等において有利であり、医薬品製造上有用である。
産業上の利用分野
本発明の(23S)−1α−ヒドロキシ−27−ノル−25−メチレンビタミンD−26,23−ラクトンの結晶は、医薬品の有効成分として用いられる。そして、本発明の結晶を用いれば、原薬としても医薬組成物としても保存安定性の面で有利である。また、それらの製造工程のコントロールにおいても有利である。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
反射角度2θで表わして、ほぼ12.65°、15.05°、15.20°、16.85°、17.30°、17.50°、18.70°、および19.10°に特徴的なピークを有するX線粉末回折パターンを示す、(23S)−1α−ヒドロキシ−27−ノル−25−メチレンビタミンD−26,23−ラクトンの結晶。
【請求項2】
赤外分光分析において、3482cm−1、2946cm−1、1744cm−1、1663cm−1、1433cm−1、1364cm−1、1281cm−1、1144cm−1、1038cm−1、957cm−1、897cm−1、816cm−1、741cm−1、627cm−1、および534cm−1に特徴的なピークを有する、(23S)−1α−ヒドロキシ−27−ノル−25−メチレンビタミンD−26,23−ラクトンの結晶。
【請求項3】
(23S)−1α−ヒドロキシ−27−ノル−25−メチレンビタミンD−26,23−ラクトンを有機溶媒に溶解して溶液を得、その溶液から結晶化させることにより得られる請求項1または2に記載の結晶。
【請求項4】
(23S)−1α−ヒドロキシ−27−ノル−25−メチレンビタミンD−26,23−ラクトンを有機溶媒および水からなる混合溶媒に溶解して溶液を得、その溶液から結晶化させることにより得られる請求項1または2に記載の結晶。
【請求項5】
前記有機溶媒がメタノール、エタノール、アセトニトリル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、蟻酸メチル、蟻酸エチル、および酢酸からなる群から選ばれる1種または2種以上の有機溶媒である、請求項3または4に記載の結晶。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項に記載の(23S)−1α−ヒドロキシ−27−ノル−25−メチレンビタミンD−26,23−ラクトンの結晶を有効成分として含有する医薬組成物。
【請求項7】
骨粗鬆症、悪性腫瘍、乾癬症、副甲状腺機能亢進症、炎症性呼吸器疾患、関節リューマチ、真性糖尿病、高血圧症、脱毛症、アクネ、皮膚炎、高カルシウム血症、または骨パジェット病の治療薬である、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
(23S)−1α−ヒドロキシ−27−ノル−25−メチレンビタミンD−26,23−ラクトンを有機溶媒に溶解して溶液を得、その溶液から結晶化させることを特徴とする、請求項1または2に記載の結晶の製造方法。
【請求項9】
(23S)−1α−ヒドロキシ−27−ノル−25−メチレンビタミンD−26,23−ラクトンを有機溶媒および水からなる混合溶媒に溶解して溶液を得、その溶液から結晶化させることを特徴とする、請求項1または2に記載の結晶の製造方法。
【請求項10】
前記有機溶媒がメタノール、エタノール、アセトニトリル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、蟻酸メチル、蟻酸エチル、および酢酸からなる群から選ばれる1種または2種以上の有機溶媒である、請求項8または9に記載の製造方法。
【請求項11】
前記有機溶媒がメタノール、エタノール、アセトニトリル、および酢酸からなる群から選ばれる1種または2種以上の有機溶媒である、請求項8または9に記載の製造方法。
【請求項12】
前記有機溶媒がアセトニトリルである、請求項8または9に記載の製造方法。
【請求項13】
前記有機溶媒がメタノールである、請求項8または9に記載の製造方法。
【請求項14】
前記有機溶媒がエタノールである、請求項8または9に記載の製造方法。

【国際公開番号】WO2004/067526
【国際公開日】平成16年8月12日(2004.8.12)
【発行日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−504744(P2005−504744)
【国際出願番号】PCT/JP2004/000817
【国際出願日】平成16年1月29日(2004.1.29)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
テフロン
【出願人】(503369495)帝人ファーマ株式会社 (159)
【Fターム(参考)】