説明

(2S,5R)−5−エチニル−1−{N−(4−メチル−1−(4−カルボキシ−ピリジン−2−イル)ピペリジン−4−イル)グリシル}ピロリジン−2−カルボニトリルの合成

(2S,5R)−5−エチニル−1−{N−(4−メチル−1−(4−カルボキシ−ピリジン−2−イル)ピペリジン−4−イル)グリシル}ピロリジン−2−カルボニトリルおよびこれの塩の製造方法、ならびにその方法で使用される中間体が開示されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下記構造(式I)を有する(2S,5R)−5−エチニル−1−{N−(4−メチル−1−(4−カルボキシ−ピリジン−2−イル)ピペリジン−4−イル)グリシジル}ピロリジン−2−カルボニトリルもしくはこれの塩の製造方法、これの製造のための中間体および中間体の製造方法に関するものである。
【0002】
【化1】

【背景技術】
【0003】
(2S,5R)−5−エチニル−1−{N−(4−メチル−1−(4−カルボキシ−ピリジン−2−イル)ピペリジン−4−イル)グリシル}ピロリジン−2−カルボニトリル(式I)は、DPP−IVの阻害薬であると報告されている。その結果、それは、糖尿病、II型糖尿病、高血糖、症候群X、高インシュリン血症および肥満など(これらに限定されるものではない)のDPP−IVが介在する障害の治療において有用である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2004/0121964号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
米国特許出願公開第2004/0121964号明細書に開示の(2S,5R)−5−エチニル−1−{N−(4−メチル−1−(4−カルボキシ−ピリジン−2−イル)ピペリジン−4−イル)グリシル}ピロリジン−2−カルボニトリルのトリフルオロ酢酸塩を製造するのに用いられた合成経路を、下記図式1に示している。具体的には、その合成には、式(II)の酸とトリフェニルホスフィンおよびジフェニルホスホリルアジドとの反応があり、それによって式(III)のカーバーメートが得られ、それをHCl/ジオキサンで処理して、式(IV)のアミンを得る。2−フルオロイソニコチン酸(式(V))のベンゼンおよび2−メチル−プロパン−2−オール中溶液を還流し、それをN,N−ジメチルホルムアミドジ−tert−ブチルアセタールで処理して、式(VI)の保護酸を得る。式(VI)のフッ素原子の式(IV)のアミンによる置き換えが起こり、その後に高温で10%パラジウム/炭素の存在下にギ酸アンモニウムで処理することで、式(VIII)のアミンを得ている。リチウムビス(トリメチルシリル)アミドの存在下に(S)−(+)−2−ピロリジン−5−カルボン酸メチルをクロルギ酸メチルで処理することで、式(IX)の相当するメチルカーバーメートを得ている。式(IX)の化合物を水素化ホウ素トリエチルリチウムで還元した後、p−トルエンスルホン酸水和物の存在下にメタノールで処理することで、式(X)のエーテルを得ている。そのエーテルをビストリメチルシリルアセチレン、塩化スズ(IV)および塩化アルミニウムで処理した後、カラムクロマトグラフィーを用いてジアステレオマーを分離することで、所望の式(XI)のジアステレオマーを得ている。式(XI)の化合物をヨードトリメチルシランで処理することで、式(XII)の脱保護L−ピロリドネートを得ている。式(XII)の化合物をクロロアセチルクロライドと反応させることで、式(XIII)の1−クロロアセチル−L−プロリネートを得ている。式(XIII)の化合物を水酸化リチウムで加水分解することで、式(XIV)の酸を得ている。式(XIV)の酸を4−メチルモルホリンの存在下にクロルギ酸イソブチルで処理し、得られた中間体をアンモニアのジオキサン中溶液で処理して、式(XV)のアミドを得ている。式(XV)のアミドをイミダゾールおよびピリジンの存在下に塩化ホスホリルで脱水することで、式(XVI)の化合物を得ている。式(XVI)のクロライドを式(VIII)のアミンで置き換え、次にカラムクロマトグラフィーを用いて精製することで、式(XVII)の化合物を得ている。式(XVII)の化合物をジクロロメタン中にてトリフルオロ酢酸で処理することで、式(I)の化合物のトリフルオロ酢酸塩を得ている。
【0006】
【化2】

【0007】
上記の手順では、2種類のジアステレオマー中間体(XI)および(XIa)が生成し、所望のジアステレオマー(XI)を得るにはクロマトグラフィー精製が必要である。さらに、式(XVI)のクロライドの式(VIII)のアミンによる置き換えは、ジオキサン水溶液環境中室温で行っている。これら2つの操作の組み合わせにより、プロセスの全体的な収率は低くなっている。従って、上記で示した合成方法は、式(I)の化合物またはこれの塩の大量製造には適さない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、式(I)の(2S,5R)−5−エチニル−1−{N−(4−メチル−1−(4−カルボキシ−ピリジン−2−イル)ピペリジン−4−イル)グリシル}ピロリジン−2−カルボニトリルまたはこれの塩の新規な製造方法に関するものである。この方法では、単一のジアステレオマー中間体が形成され、クロマトグラフィー精製を行う必要がない。
【0009】
本発明の1態様は、下記式(I)の化合物もしくはこれの製薬上許容される塩の製造方法に関するものである。
【0010】
【化3】

【0011】
その方法には、下記の段階がある。
【0012】
(a)溶媒中にて、式(XVIII)の化合物(Xは、Cl、Br、I、メタンスルホネートもしくはp−トルエンスルホネートである。)を式(XIX)の化合物もしくはこれの塩(Pは酸保護基である。)、添加剤および塩基と反応させて、式(XX)の化合物を得る段階;
【0013】
【化4】

(b)場合により、式(XX)の化合物を酸で処理して、式(XX)の化合物の塩を得る段階;
(c)式(XX)の化合物もしくはこれの塩を脱保護して、式(I)の化合物を得る段階。
【0014】
式(I)の化合物は、当業界で公知の従来の技術を用いて酸付加塩に変換することができる。従って、本発明の別の態様は、式(I)の化合物の酸付加塩、特にはL−リンゴ酸塩の製造方法に関するものである。さらに本発明は、式(I)の化合物の製造方法内で製造されるある種の中間体化合物もしくはこれの塩に関するものである。さらに本発明は、それの各種中間体の製造方法および別途製造方法に関するものである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書で具体的に定義されていない用語は、開示内容および文脈を考慮して当業者がその用語に与えるものと考えられる意味を有する。
【0016】
上記でそして明細書を通じて使用される場合、下記の用語は、別段の断りがない限り、下記の意味を有するものと理解されるものとする。
【0017】
「C1−10アルキル」という用語は、それ自体もしくは他の基の一部として、1から10個の炭素原子を含む分岐および分岐していない炭化水素鎖を意味し、「C1−4アルキル」、「C1−5アルキル」および「C1−6アルキル」という用語は、それ自体もしくは他の基の一部として、それぞれ1から4個、1から5個および1から6個の炭素原子を含む分岐および分岐していない炭化水素鎖を意味する。アルキルの例には、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソ−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソ−ペンチル、ネオ−ペンチル、ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、およびn−デシルなどがあるが、これらに限定されるものではない。
【0018】
「C1−6アルコール」という用語は、1個もしくは2個の水素原子が−OH基によって置換されているC1−6アルキルを意味する。従って、「C1−4アルコール」という用語は、1個もしくは2個の水素原子がOH基によって置換されているC1−4アルキルを意味する。好ましいものは、1から4個の炭素原子を有するアルキル基である。例には、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソ−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、n−ペンタノール、イソペンタノール、ネオ−ペンタノールまたはヘキサノールなどがあるが、これらに限定されるものではない。別段の断りがない限り、プロパノール、ブタノール、ペンタノールおよびヘキサノールという用語は、対象となる基のあらゆる可能な異性体を含むものである。そこで例えば、プロパノールはn−プロパノールおよびイソプロパノールを含み、ブタノールはイソ−ブタノール、sec−ブタノールおよびtert−ブタノールを含む。
【0019】
「C1−6カルボン酸」という用語は、水素原子のうちの1個がCOOHによって置き換わっている本明細書で定義のC1−6アルキル基を意味する。C1−6カルボン酸の例には、酢酸、プロパン酸、ブタン酸、ペンタン酸およびヘキサン酸などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0020】
「C1−6アルコキシ」という用語は、それ自体でもしくは他の基とともに用いて、酸素原子を介して親分子部分に結合した本明細書で定義のC1−6アルキル基を意味する。アルコキシの代表例には、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、2−プロポキシ、ブトキシ、tert−ブトキシ、ペンチルオキシおよびヘキシルオキシなどがあるが、これらに限定されるものではない。
【0021】
本発明は、多くの実施形態を有する。1実施形態において本発明は、式(I)の(2S,5R)−5−エチニル−1−{N−(4−メチル−1−(4−カルボキシ−ピリジン−2−イル)ピペリジン−4−イル)グリシル}ピロリジン−2−カルボニトリルまたはこれの塩の新規な製造方法に関するものである。この方法では、単一のジアステレオマー中間体の形成が関与し、クロマトグラフィー精製の必要がない。
【0022】
本発明の別の実施形態は、下記式(I)の化合物もしくはこれの製薬上許容される塩の製造方法に関するものである。
【0023】
【化5】

【0024】
その方法には、下記の段階がある。
【0025】
(a)溶媒中にて、式(XVIII)の化合物(Xは、Cl、Br、I、メタンスルホネートもしくはp−トルエンスルホネートである。)を式(XIX)の化合物もしくはこれの塩(Pは酸保護基である。)、添加剤および塩基と反応させて、式(XX)の化合物を得る段階;
【0026】
【化6】

(b)場合により、式(XX)の化合物を酸で処理して、式(XX)の化合物の塩を得る段階;
(c)式(XX)の化合物もしくはこれの塩を脱保護して、式(I)の化合物を得る段階。
【0027】
式(I)の化合物は、当業界で公知の従来の技術を用いて酸付加塩に変換することができる。従って、本発明の別の態様は、式(I)の化合物の酸付加塩、特にはL−リンゴ酸塩の製造方法に関するものである。
【0028】
本発明の別の実施形態は、式(I)の化合物の製造方法内で製造されるある種の中間体化合物もしくはこれの塩に関するものである。従って本発明の別の実施形態は、Pが酸保護基である式(XIX)の化合物もしくはこれの塩、またはこれの塩の新規な製造方法に関するものである。
【0029】
その方法は、下記の段階を含む。
【0030】
(a)式(XXIII)の化合物(Pは酸保護基であり、XはF、Cl、Br、I、メタンスルホネートもしくはp−トルエンスルホネートである。)を式(XXII)のアミンもしくはこれの塩で処理して、式(XXIV)の化合物を得る段階;
【0031】
【化7】

ならびに
(b)式(XXIV)の化合物をハロゲン化試薬および塩基で処理して、式(XIX)の化合物を得る段階。
【0032】
【化8】

【0033】
本発明のさらに別の実施形態は、Pが酸保護基である式(XIX)の化合物もしくはこれの塩の別の製造方法に関するものである。
【0034】
その方法は、下記の段階を含む。
【0035】
(a)式(XXI)の化合物(Pはアミン保護基である。)をハロゲン化試薬および塩基で処理して、式(XXV)の化合物を得る段階;
【0036】
【化9】

(b)式(XXV)の化合物もしくはこれの塩の脱保護を行って、式(XXVI)の化合物もしくはこれの塩を得る段階;
【0037】
【化10】

(c)式(XXVII)もしくは(XXIII)の化合物(Pは酸保護基であり、XはF、Br、Cl、I、メタンスルホネートもしくはp−トルエンスルホネートであり、YはF、Br、ClもしくはIである。)を、式(XXVI)の化合物もしくはこれの塩で処理して、それぞれ式(XXVIII)もしくは(XIX)の化合物を得る段階;
【0038】
【化11】

(d)式(XXVIII)の化合物の脱ハロゲンを行って、式(XIX)の化合物を得る段階。
【0039】
【化12】

【0040】
本発明のさらに別の実施形態は、4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)の存在下に式(XXVIIa)の化合物をジ−tert−ブチルジカーボネートで処理することによる式(XXVIIb)の化合物(XはF、Cl、Br、I、メタンスルホネートもしくはp−トルエンスルホネートであり、YはH、F、Cl、BrもしくはIである。)の製造方法に関するものである。
【0041】
【化13】

【0042】
本発明の別の実施形態は、式(XVIII)の化合物(XはClもしくはBrである。)の製造方法に関するものである。
【0043】
その方法には、下記の段階がある。
【0044】
(a)式(XXIX)の化合物(Pはアミン保護基であり、Rは酸保護基である。)を、式(RSi−CCMgX(XはCl、BrもしくはIであり、RはC1−6アルキルである。)を有する試薬で処理して、式(XXX)の化合物を得る段階;
【0045】
【化14】

(b)式(XXX)の化合物を、酸および還元剤で処理して、式(XXXI)の化合物を得る段階;
【0046】
【化15】

(c)式(XXXI)の化合物を塩基で処理し、次に酸で処理することで式(XXXII)の化合物を得る段階;
【0047】
【化16】

(d)式(XXXII)の化合物をカップリング試薬および塩基の存在下にアンモニアで処理して、式(XXXIII)の化合物を得る段階;
【0048】
【化17】

(e)式(XXXIII)の化合物を脱水して、式(XXXIV)の化合物を得る段階;
【0049】
【化18】

(f)式(XXXIV)の化合物を脱保護して、式(XXXV)の化合物もしくはこれの塩を得る段階;
【0050】
【化19】

(g)式(XXXV)の化合物もしくはこれの塩を、式XCHCOY(XおよびYは独立にClもしくはBrである。)を有する試薬で処理して、式(XVIII)の化合物を得る段階。
【0051】
【化20】

【0052】
本発明のさらに別の実施形態は、式(XXXVI)の化合物もしくはこれの塩(Rは酸保護基であり、RはC1−6アルキルである。)の製造方法に関するものである。
【0053】
【化21】

【0054】
その方法には、下記の段階がある。
【0055】
(a)式(XXX)の化合物(Pはアミン保護基であり、Rは酸保護基であり、RはC1−6アルキルである。)の不斉還元によって、式(XXXVII)の化合物を得る段階;
【0056】
【化22】

(b)式(XXXVII)の化合物を活性化して、単離を行わずに式(XXXVIII)の化合物(Rはトリハロアセチル、メタンスルホニル、ベンゼンスルホニルもしくはp−トルエンスルホニルである。)を得る段階;
【0057】
【化23】

(c)式(XXXVIII)の化合物のアミン保護基を脱保護し、次に塩基で処理することで、式(XXXVI)の化合物もしくはこれの塩を得る段階。
【0058】
【化24】

【0059】
本発明のさらに別の実施形態は、式(XVIII)の化合物の別途製造方法に関するものである。
【0060】
その方法には、下記の段階がある。
【0061】
(a)式(XXXVI)の化合物もしくはこれの塩(Rは酸保護基であり、RはC1−6アルキルである。)を鹸化して、式(XXXIX)の化合物を得る段階;
【0062】
【化25】

(b)式(XXXIX)の化合物もしくはこれの塩を式XCHCOY(XおよびYは独立にClもしくはBrである。)を有する試薬で処理して、式(XL)の化合物を得る段階;
【0063】
【化26】

(c)式(XL)の化合物を、カップリング試薬および塩基の存在下にアンモニアで処理して、式(XLI)の化合物を得る段階;
【0064】
【化27】

ならびに
(d)式(XLI)の化合物を脱水して、式(XVIII)の化合物を得る段階。
【0065】
【化28】

【0066】
式(I)の最終化合物および本明細書で開示の方法で使用される中間体は、当業界で公知のいずれかの従来の技術を用いてそれの製薬上許容される塩に変換することができる。
【0067】
本明細書に記載のいずれの実施形態においても、反応条件および方法の反応手順での好適な時点での脱保護と適合できない化学官能基の保護は、本発明の範囲に含まれる。好適な保護基ならびにそのような好適な保護基を用いて各種の置換基を保護および脱保護する方法は、当業者には公知であり、その例は、グリーンらの著作(T. Greene and P. Wuts., Protective Groups in Chemical Synthesis (3rd ed), John Wiley & Sons, NY (1999);参照によってその全体が本明細書に組み込まれる。)に記載されている。
【0068】
本発明を実施する上で好適なアミン保護基の例には、アリル、メトキシメチル、ベンジルオキシメチル、CYCO(YはCl、Br、IもしくはFである。)、ベンジルオキシカルボニル、トリチル、ピバロイルオキシメチル、テトラヒドラニル、ベンジル、ジ(p−メトキシフェニル)メチル、トリフェニルメチル、(p−メトキシフェニル)ジフェニルメチル、ジフェニルホスフィニル、ベンゼンスルフェニル、メチルオキシカルボニル、2−トリメチルシリルエチルオキシカルボニル、1−メチル−1−フェニルエチルオキシカルボニル、tert−ブトキシカルボニル(Boc)、シクロブチルオキシカルボニル、1−メチルシクロブチルオキシカルボニル、アダマンチルオキシカルボニル、ビニルオキシカルボニル、アリルオキシカルボニル、シンナミルオキシカルボニル、4,5−ジフェニル−3−オキサリン−2−オン、ベンジルオキシカルボニル、9−アントリルメチルオキシカルボニル、ジフェニルメチルオキシカルボニルおよびS−ベンジルオキシカルボニルなどがある。
【0069】
好ましいアミン保護基には、メチルオキシカルボニル、2−トリメチルシリルエチルオキシカルボニル、1−メチル−1−フェニルエチルオキシカルボニル、tert−ブトキシカルボニル(Boc)、シクロブチルオキシカルボニル、1−メチルシクロブチルオキシカルボニル、アダマンチルオキシカルボニル、ビニルオキシカルボニル、アリルオキシカルボニル、シンナミルオキシカルボニル、4,5−ジフェニル−3−オキサリン−2−オン、ベンジルオキシカルボニル、9−アントリルメチルオキシカルボニル、ジフェニルメチルオキシカルボニルおよびS−ベンジルオキシカルボニルなどがあり、より好ましくはtert−ブトキシカルボニル(Boc)である。
【0070】
酸保護基の例には、C1−6アルキルエステル(置換されていないか例えばC1−6アルコキシ、C1−6アルキルチオ、C1−6アルコキシC1−6アルコキシ、ベンジルオキシ、トリハロもしくは(C1−6アルキル)シリルで置換されている)、アリルエステルおよびベンジル(置換されていないか2,4,6−トリメチル、p−ニトロ、o−ニトロ、p−ブロモ、p−メトキシ、2,6−ジメトキシで置換されている)エステルなどのエステルがある。好ましい酸保護基は、C1−6アルキルエステル、特にはtert−ブチル、メチルおよびエチルエステルである。
【0071】
酸保護基の脱離は、接触水素化、酸性もしくは塩基性加水分解によって行うことができる。水素化は、酸素を含まない条件下で、簡便には不活性ガス下で、好ましくは水素雰囲気下に行う。しかしながら、水素化用の水素が雰囲気ガス由来のものであることは、その反応には必須ではない。その水素は、好適な水素源から溶液中でイン・サイツで生成させることもできる。この種の水素源には、例えば、ギ酸アンモニウム、ギ酸および他のギ酸化合物、シクロヘキシルジエンなどのシクロジエン類、ならびに当業界で公知の他の水素源などがある。使用される触媒は、パラジウム/炭素、白金/炭素もしくはパラジウム/アルミナなどの金属触媒である。好ましくは、酸保護基の脱離は、酸性もしくは塩基性加水分解、特には塩基性加水分解によって行われる。
【0072】
本発明の方法の個々の段階について、本発明の他の態様とともに下記で詳細に説明する。本発明は、記載の多段階プロセスだけでなく、その多段階プロセスの個々の段階、そしてそのような工程段階で形成もしくは使用される各種の新規な中間体をも包含するものである。
【0073】
各個々の段階についての至適な反応条件および反応時間は、使用される特定の反応物および使用される反応物中に存在する置換基に応じて変動し得る。別段の断りがない限り、溶媒、温度および他の反応条件は、当業者が容易に選択することができる。具体的な手順は、合成例のセクションにある。代表的には、進行中の反応を、所望に応じて、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によってモニタリングすることができる。反応は、従来の方法で、例えば残留物から溶媒を除去することで後処理することができ、結晶化、蒸留、抽出、磨砕およびクロマトグラフィーなど(これらに限定されるものではない)の当業界で公知の方法に従ってさらに精製することができる。別段の記載がない限り、原料および試薬は、市販されているか、化学文献に記載の方法を用いて市販の材料から当業者が製造することができる。
【0074】
保護ガス雰囲気下、好ましくは窒素雰囲気もしくはアルゴン雰囲気またはそれらの混合物の雰囲気下に、ある種の反応工程を実施することが有利である場合がある。
【0075】
本発明による化合物は、下記の合成方法に従って製造することができ、可変要素R、R、R、R、PおよびPは上記の意味を有する。これらの方法は、本発明を説明するものであると理解すべきであり、いかなる形でも本発明の範囲を限定するものではない。
【0076】
使用する略称は、t−Bu:tert−ブチル;EDCI:1−エチル−3−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]−カルボジイミド塩酸塩、DBU:1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデク−7−エン、DMF:N,N−ジメチルホルムアミド、およびHOBT:1−ヒドロキシベンゾトリアゾール水和物である。
【0077】
【化29】

【0078】
図式2には、式(I)の化合物およびこれの塩の製造を示してある。
【0079】
段階(a)では、添加剤を加えてまたはそれを加えずに、式(XVIII)の化合物(XはCl、Br、I、メタンスルホネートもしくはp−トルエンスルホネートである。)と式(XIX)の化合物もしくはこれの塩(Pは酸保護基、塩基である。)を反応させることで、式(XX)の化合物を得る。
【0080】
がClであり、Pがtert−ブチルである同様の方法が、米国特許出願公開第2004/0121964号明細書に記載されている。
【0081】
方法段階(a)は、非プロトン性有機溶媒中、そして添加剤の存在下に反応を行うことで、引用の文献において溶媒系としてジオキサンおよび水を用い、添加剤を用いない場合と比較して改善されている。段階(a)は、式(XIX)の化合物もしくはこれの塩(Pは酸保護基(好ましくは、C1−6アルキルであり、より好ましくはtert−ブチルである)である。)および添加剤を溶媒中、約20℃から約80℃、好ましくは約30℃から約45℃、より好ましくは約35℃から約40℃の範囲の温度で混合することで行う。使用可能な好適な塩基の例には、有機塩基および無機塩基などがあるが、これらに限定されるものではない。好適な有機塩基は、トリ(C1−6アルキル)アミン類(例:トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリメチルアミンなど)、および3級環状アミン類(例えば、N−メチルモルホリン、DBU、1,5−ジアザビシクロ−[4.3.0]ノン−5−エンなど)、ピリジンおよびピコリン類などの3級アミンである。好適な無機塩基は、金属塩もしくは金属水酸化物(例:水酸化カリウム、ナトリウムもしくはリチウム)である。金属塩には、金属炭酸塩(例:ナトリウム、カリウム、バリウムおよびセシウムの炭酸塩)、金属炭酸水素塩(例:ナトリウム、カリウム、バリウムおよびセシウムの炭酸水素塩)および金属リン酸塩(例:ナトリウムおよびカリウムのリン酸塩)などがある。好ましくは、金属リン酸塩を用いる。さらに特に好ましいものは、リン酸カリウムである。さらに特に好ましいものは、粉砕リン酸カリウムである。使用される塩基は、式(XIX)の化合物に関して概して約1から約5モル当量、好ましくは約1から約2モル当量、より好ましくは約1から約1.5モル当量である。段階(a)で使用可能な溶媒の例には、アセトニトリル、ラクタム類(例:1−メチル−2−ピロリジノン)、ギ酸および脂肪族C1−6カルボン酸のN,N−ジメチルアミド(例:N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなど)、スルホキシド類(例:ジメチルスルホキシド)、エーテル類(例:テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、ジメトキシエタンなど)、脂肪族ケトン類(例:アセトン、メチルエチルケトンもしくはメチルイソブチルケトン)などの極性非プロトン性溶媒、ならびにこれらの混合物があるが、これらに限定されるものではない。特に好ましいものは、アセトニトリルおよび1−メチル−2−ピロリジノンなどのラクタム類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフランおよびジオキサンである。
【0082】
好適な添加剤の例には、ヨウ化カリウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化テトラブチルアンモニウムおよびヨウ化リチウムなどがあるが、これらに限定されるものではない。好ましい添加剤は、ヨウ化カリウムである。好ましくは、添加剤:(XIX)のモル比は、約1:10から約1:5、より好ましくは約1:10である。
【0083】
混合後、温度を約25℃から約45℃、好ましくは約30℃から約45℃、より好ましくは約35℃から約40℃に上げる。次に、式(XIX)の化合物に関して約1から1.5モル当量の式(XVIII)の化合物(XはCl、Br、I、メタンスルホネート、もしくはp−トルエンスルホネートである。)を加え、混合物を約4時間から約18時間または反応が完結するまで攪拌する。この期間後、式(XX)の化合物を単離する。適宜に、式(XX)の化合物を単離後、C1−6アルコール、好ましくはC1−4アルコール(例:メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノールなど)などの好適な溶媒中にて酸で処理することができ、溶液を約30℃から約70℃、好ましくは約60℃から約65℃の範囲の温度で、約10分から約1時間、好ましくは約15分から約30分攪拌した。次に、混合物を冷却して約20℃から約25℃とし、式(XX)の化合物の酸塩をろ過によって単離する。使用可能な酸の例には、酒石酸、D−酒石酸、L−酒石酸、リンゴ酸、D−リンゴ酸、L−リンゴ酸、マレイン酸、シュウ酸、S−マンデル酸およびコハク酸などがあるが、これらに限定されるものではない。好ましい酸は、D−酒石酸およびL−酒石酸、より好ましくはD−酒石酸である。
【0084】
図式2で示した方法の段階(b)では、式(XX)の化合物もしくはこれの塩を脱保護して、式(I)の化合物を得る。好ましい脱保護方法は、酸での処理によるものである。
【0085】
米国特許出願公開第2004/121964号明細書では、Pがtert−ブチルである式(XX)の化合物を、環境温度で塩化メチレン中にてトリフルオロ酢酸とともに攪拌し、反応完了後にジエチルエーテルで磨砕することで式(I)の化合物のトリフルオロ酢酸塩を単離することで脱保護している。
【0086】
段階(b)では、好適な溶媒中の式(XX)の化合物もしくはこれの塩に酸を加える。使用可能な酸の例には、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、塩化水素(気体または水、ジオキサン、メタノールおよび酢酸など(これらに限定されるものではない)の溶媒中)、硫酸、リン酸、トリフルオロ酢酸(TFA)、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸ピリジニウム塩などのスルホン酸のような無機もしくは有機酸、またはこれらの混合物などがあるが、こられに限定されるものではない。好ましい酸には、TFA、硫酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、塩酸およびリン酸、より好ましくはベンゼンスルホン酸およびリン酸などがある。酸を加えた後、混合物を約25℃から約85℃、好ましくは約45℃から約70℃、より好ましくは約60℃から約70℃の範囲の温度で、約4から12時間の期間にわたり、または反応が完結するまで攪拌して、式(I)の化合物の塩を得る。ほぼ室温まで冷却し、好適な塩基(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、リン酸水素カリウム、リン酸カリウムなど)でpHを中性範囲(例えば、約4.5から約7.5、好ましくは約6.5から約7.5)に調節した後に、濾過によって式(I)の化合物を単離する。
【0087】
好適な溶媒には、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、トルエン、メチルtert−ブチルエーテル、ジメトキシエタン、アルコール類(例えば、メタノール、n−プロパノール、イソプロパノールおよびエタノールもしくはこれらの混合物)、水または上記溶媒のうちのいずれかと水との混合物などがあるが、これらに限定されるものではない。使用される溶媒は、最も好ましくは水である。
【0088】
次に、好適な溶媒中の式(I)の化合物を酸で処理して、式(I)の化合物の酸付加塩を得る。使用可能な酸の例には、クエン酸、リンゴ酸、L−リンゴ酸、D−リンゴ酸、マレイン酸、酒石酸、D−酒石酸、L−酒石酸、シュウ酸、S−マンデル酸、コハク酸、酢酸、トリフルオロ酢酸など、またはこれらの混合物などがあるが、これらに限定されるものではない。好ましい酸には、マレイン酸、D−酒石酸、L−酒石酸、コハク酸、シュウ酸、S−マンデル酸およびL−リンゴ酸などがあり、好ましくはL−リンゴ酸である。式(I)の化合物のL−マレイン酸塩は結晶性であり、精製および単離が容易であることから大量合成に有用である。その反応は、式(I)の化合物の水溶液を好適な酸のC1−6アルコール(好ましくはメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノールおよびブタノール、より好ましくはメタノール、エタノールおよびイソプロパノールなどのC1−4アルコール)中溶液と混合することで実施し、その混合物を好ましくは約1時間から約2時間にわたり、または固体が溶解するまで約30℃から約80℃、好ましくは約50℃から約70℃、より好ましくは約65℃から約70℃の範囲の温度で加熱する。混合物を濃縮して水を除去し、固体を濾過によって単離する。
【0089】
【化30】

【0090】
図式3には、Pが酸保護基である式(XIX)の化合物またはこれの塩の製造を示してある。
【0091】
段階(a)では、式(XXIII)の化合物(XはCl、Br、F、I、メタンスルホネートもしくはp−トルエンスルホネートであり、Pは酸保護基である。)を、好適な溶媒中にて式(XXII)の化合物もしくはこれの塩で処理して、式(XXIV)の化合物を製造する。好ましい実施形態は、式(XXIII)の化合物(XはClであり、PはC1−6アルキルである。)の式(XXII)の化合物もしくはこれの塩との反応による、式(XXIV)の化合物の取得に関するものである。より好ましくは、Pはtert−ブチルである。
【0092】
適宜に、反応において、好適な塩基を用いて、反応の進行に連れて酸の生成を強め、それによって反応を促進する。式(XXII)の化合物の塩を用いる場合、塩基の存在も、塩をイン・サイツで遊離塩基に変換することで、他の反応物に対する窒素の利用性を高めることで、反応によって有利となり得る。
【0093】
従って、式(XXIII)の化合物、塩基((XXIII)の量に関して約1から約5モル当量、好ましくは約2から約4モル当量、より好ましくは約3.5から約4モル当量)および化合物(XXIII)に対して約1.5当量の式(XXII)の化合物もしくは式(XXII)の化合物の塩の好適な溶媒中の混合物を加熱して、約50℃から約150℃、好ましくは約80℃から約120℃、より好ましくは約95℃から約105℃の温度とすることで、式(XXIV)の化合物を得る。塩基の例としては、無機塩基および有機塩基があるが、これらに限定されるものではない。無機塩基には、金属炭酸塩(例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸リチウムなど)、金属炭酸水素塩(例えば炭酸水素ナトリウムもしくはカリウム)、金属リン酸塩(例:リン酸ナトリウム、リン酸カリウムなど)、金属tert−ブトキシド類(例:ナトリウムおよびカリウムtert−ブトキシド)および金属リン酸水素塩(例:リン酸水素ナトリウム、リン酸水素カリウムなど)などがあるが、これらに限定されるものではない。有機塩基には、3級アミン類(例えば、N−メチルモルホリン、DBU、分岐もしくは分岐していないC1−6アルキル基を有するトリアルキルアミン、例:ジイソプロピルエチルアミン、トリエチルアミンなど)、ピリジン、ピコリン類などがあるが、これらに限定されるものではない。好ましい塩基は、金属炭酸塩、金属炭酸水素塩、金属リン酸塩、金属tert−ブトキシド、金属リン酸水素塩、トリアルキルアミン類、ピリジンおよびN−メチルモルホリンであり、好ましくは炭酸カリウムなどの金属炭酸塩である。好適な溶媒の例には、例えばベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族溶媒、エーテル類(例:テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、ジメトキシエタン、ジオキサンなど)、ラクタム類(例えば、1−メチル−2−ピロリジノン)、ギ酸もしくは脂肪族C1−6カルボン酸のN,N−ジメチルアミド(例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなど)、スルホキシド類(例:ジメチルスルホキシド)、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどの脂肪族ケトン類ならびにこれらの混合物などがあるが、これらに限定されるものではない。好ましい溶媒は、エーテル類(好ましくはジオキサン)、芳香族溶媒(好ましくはトルエン)ジメチルスルホキシド類、ラクタム類(例えば、1−メチル−2−ピロリジノン)、エーテル類もしくは混合物であり、好ましくはトルエン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドンならびにジメチルスルホキシドおよびトルエンの混合物である。
【0094】
段階(b)では、式(XXIV)の化合物(Pは酸保護基(好ましくは、C1−6アルキル、より好ましくはtert−ブチル)である。)および少なくとも等モル量の塩基の好適な溶媒中混合物を、−10℃から約10℃、好ましくは約−5℃から約5℃、より好ましくは−5℃から約0℃の範囲の温度に維持し、それから好適なハロゲン化試薬を加える。混合物を、−10℃から約10℃、好ましくは約−5℃から約5℃、より好ましくは−5℃から約0℃の範囲の温度で、約5分から約60分の期間にわたり、または反応が完結するまで攪拌して、式(XIX)の化合物を得る。段階(b)で用いることができる好適な塩基には、金属水酸化物(例:水酸化ナトリウムもしくはカリウム)、および金属炭酸塩(例:炭酸ナトリウムもしくはカリウム)などがあるが、これらに限定されるものではない。好ましい塩基は金属水酸化物である。塩基は、固体でまたは水溶液として加えることができる。使用可能な好適な溶媒の例としては、エーテル類(例:テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、ジメトキシエタンなど)、アセトニトリル、脂肪族ケトン類(例:アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど)などの極性非プロトン性溶媒ならびにこれらの混合物などがあるが、これらに限定されるものではない。特に好ましいものは、アセトニトリルおよびテトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、ジメトキシエタンなどのエーテル溶媒である。より好ましいものはエーテル溶媒、好ましくはテトラヒドロフランである。水を、塩基の添加前に全ての溶媒に加えても良く、または塩基の水溶液として導入しても良い。有機溶媒と水の混和性に応じて、相間移動触媒を段階(b)で用いることができる。相間移動触媒の例には、テトラブチルアンモニウムハライド(すなわち、ヨウ化テトラブチルアンモニウム、臭化テトラブチルアンモニウム、フッ化テトラブチルアンモニウムおよび塩化テトラブチルアンモニウム)、塩化メチルトリカプリルアンモニウム、塩化トリエチルベンジルアンモニウム、硫酸水素テトラブチルアンモニウム、塩化メチルトリブチルアンモニウム、臭化テトラフェニルホスホニウム、臭化テトラブチルホスホニウム、PEG−500ジメチルエーテル、ブチルジグライム、およびジベンゾ−18−クラウン−6などがあるが、これらに限定されるものではない。好ましい相間移動触媒は、臭化テトラブチルアンモニウムである。ハロゲン化試薬の例としては、N−クロロコハク酸イミド、漂白剤、1,3−ジクロロ−5,5−ジメチルヒダントイン、臭素、次亜臭素酸ナトリウムおよび1,3−ジブロモ−5,5−ジメチルヒダントインなどがあるがこれらに限定されるものではなく、好ましくは1,3−ジブロモ−5,5−ジメチルヒダントインである。
【0095】
【化31】

【0096】
図式4には、式(XIX)の化合物もしくはこれの塩の別途製造を示してある。
【0097】
段階(a)では、式(XXI)の化合物(Pは、アミン保護基である。)を、図式3の段階(b)に記載の条件を用いて、好適な溶媒中にてハロゲン化試薬および塩基で処理する。反応においての塩基、ハロゲン化試薬および溶媒の好適な例は、前出の段落で記載の通りである。好ましい塩基は水酸化ナトリウムもしくは水酸化カリウムであり、固体でまたは水溶液として用いることができる。固体として加える場合、水を反応容器に別個に導入し、好ましくは選択溶媒と予め混合しておく。好ましい溶媒は、水と混和性のもの、例えばアセトニトリルもしくはテトラヒドロフラン、特にはアセトニトリルである。好ましいハロゲン化試薬は、1,3−ジブロモ−5,5−ジメチルヒダントインである。反応混合物を、約−10℃から約10℃の範囲の温度、好ましくは約−5℃から約5℃で攪拌する。
【0098】
段階(b)では、Pがアミン保護基である式(XXV)の化合物もしくはこれの塩を脱保護して、式(XXVI)の化合物もしくはこれの塩を得る。好ましくは、溶媒中のPがC1−6アルコキシカルボニル、特にはtert−ブトキシカルボニルである式(XXV)の化合物を、約25℃から約100℃、好ましくは約40℃から約80℃、より好ましくは約60℃から約70℃の範囲の温度で、約1時間の期間にわたり、または反応が完結するまで酸で処理して、式(XXVI)の化合物もしくはこれの塩を製造する。使用可能な酸の例には、塩化水素(気体でまたは水、ジオキサン、メタノールなど(これらに限定されるものではない)の溶媒中)、硫酸、リン酸、トリフルオロ酢酸(TFA)、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸などのアルキルスルホン酸またはこれらの混合物などがあるが、これらに限定されるものではない。好ましい酸は、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、塩化水素、メタンスルホン酸およびベンゼンスルホン酸であり、好ましくはp−トルエンスルホン酸である。段階(a)で使用可能な溶媒の例には、C1−6アルコール類、水およびこれらの混合物などのプロトン性溶媒があるが、これらに限定されるものではない。好ましくは、水もしくは分岐もしくは分岐していないC1−4アルコール類(例:メタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、エタノール、ブタノールおよびこれらの混合物)を前記プロトン性溶媒として用いる。用いられる溶媒は最も好ましくはメタノール、エタノール、イソプロパノールおよびこれらの混合物である。式(XXVI)の化合物は塩として単離することができ、所望に応じて、後処理中または単離後に、当業者には公知の技術を用い、適切な塩基(例えば、金属水酸化物、金属炭酸塩もしくは金属炭酸水素塩)で処理することで中性化学種に変換することができる。
【0099】
段階(c)では、XがF、I、Cl、Br、メタンスルホネートもしくはp−トルエンスルホネートであり、YがF、I、ClもしくはBrであり、Pが酸保護基(好ましくはC1−6アルキル、より好ましくはtert−ブチル)である式(XXVII)もしくは(XXIII)の化合物を、図式3の段階(a)に記載の反応条件を用い、溶媒中にて式(XXVI)の化合物もしくはこれの塩で処理して、それぞれ式(XXVIII)もしくは(XIX)の化合物を得る。段階(c)で使用可能な塩基および溶媒の好ましい例は、図式3の段階(a)に記載のものであるが、それらに限定されるものではない。
【0100】
段階(d)では、YがCl、Br、IもしくはFであり、Pが酸保護基(好ましくはC1−6アルキル、より好ましくはtert−ブチル)である式(XXVIII)の化合物の脱ハロゲン化を行って、式(XIX)の化合物を得る。これは、溶媒中、塩基および触媒の存在下もしくは非存在下に式(XXVIII)の化合物を水素と反応させることで行うことができる。塩基の存在は、反応の途中に生成する酸を吸収することで反応には有利である。従って、本発明の1実施形態は、溶媒中での式(XXVIII)の化合物と水素、塩基および触媒との反応による、式(XIX)の化合物の取得に関するものである。その混合物を、約25℃から約75℃、好ましくは約40℃から約50℃の範囲の温度で、約4時間の期間にわたり、または反応が完結するまで攪拌する。この段階に好適な触媒には、パラジウム/酸化アルミニウムおよびパラジウム/炭素などがあるが、これらに限定されるものではない。塩基の好適な例には金属リン酸塩(例:リン酸カリウム、リン酸ナトリウムなど)、金属リン酸水素塩(例:リン酸水素ナトリウムおよびカリウム)、トリアルキルアミン類(例:トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミンなど)、金属水酸化物(例:水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなど)、金属炭酸塩(例えば、炭酸カリウムもしくはナトリウム)および金属炭酸水素塩(例えば炭酸水素カリウムもしくはナトリウム)などがあるが、これらに限定されるものではない。好ましい塩基は、金属リン酸塩である。溶媒の好適な例は、テトラヒドロフラン、ジオキサンおよびN−メチルピロリドン、好ましくはN−メチルピロリドンである。好ましくは段階(d)は、N−メチルピロリドン中にて水素、パラジウム/酸化アルミニウムおよびリン酸カリウムの存在下に行う。
【0101】
【化32】

【0102】
図式5には、(XXVIIa)からの式(XXVIIb)の化合物(XはF、Cl、Br、I、メタンスルホネートもしくはp−トルエンスルホネートであり、YはH、F、Cl、BrもしくはIである。)の合成を示してある。
【0103】
その変換は、4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)の存在下に、溶媒中、塩基の存在下もしくは非存在下に、約20℃から約35℃の範囲の温度、好ましくはほぼ室温で、約10時間から約48時間の期間にわたり、または反応が完結するまで、式(XXVIIa)の化合物をジ−tert−ブチルジカーボネートで処理することで行って、式(XXVIIb)の化合物を得る。式(XXVIIa)の化合物に対するDMAPのモル比は、約0.1モル当量から約0.4モル当量、好ましくは0.2モル当量から約0.25モル当量である。塩基の好適な例には、3級アミン(例えば、N−メチルモルホリン、DBU、分岐もしくは分岐していないC1−6アルキル基を有するトリアルキルアミン、例えばジイソプロピルエチルアミン、トリエチルアミンなど)およびピコリン類のような有機塩基、金属水酸化物(例:水酸化ナトリウム、水酸化カリウムおよび水酸化リチウム)、金属炭酸塩(例:炭酸ナトリウム、炭酸セシウム、炭酸カリウム)ならびに金属リン酸塩(例:リン酸ナトリウム、リン酸カリウムなど)などの無機塩基などがあるが、これらに限定されるものではなく、好ましくはトリアルキルアミンである。好適な溶媒の例には、アセトニトリル、例えばベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族溶媒、エーテル類(例:テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、ジメトキシエタン、ジオキサンなど)、ラクタム類(例えば、1−メチル−2−ピロリジノン)、ギ酸もしくは脂肪族C1−6カルボン酸のN,N−ジメチルアミド(例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなど)、スルホキシド類(例:ジメチルスルホキシド)、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどの脂肪族ケトン類、ならびにこれらの混合物などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0104】
【化33】

【0105】
図式6には、XがClもしくはBrである式(XVIII)の化合物の合成を示してある。
【0106】
段階(a)では、第1の溶媒中のRが酸保護基、好ましくはC1−6アルキル、より好ましくはメチルもしくはエチルであり、Pがアミン保護基である式(XXIX)の化合物を、第2の溶媒中の式(RSi−CCMgXの試薬(XはCl、BrもしくはIであり、RはC1−6アルキルである。)に、約−20℃から約25℃、好ましくは約−10℃から約10℃、より好ましくは約−10℃から約0℃の範囲の温度で加える。反応混合物を約1時間から約3時間の期間にわたり、または反応が完結するまで攪拌して、式(XXX)の化合物を得る。段階(a)で使用される式(RSi−CCMgXの試薬は、約−20℃から約30℃、好ましくは−15℃から約15℃、より好ましくは−10℃から約0℃の温度で、第2の溶媒中にて、一般式(RSiCC(H)のアセチレンを式RMgXのグリニャル試薬(RはC1−10アルキル、フェニルまたはベンジルである。)と混合することでイン・サイツで発生させる。第1および第2の溶媒の例としては、ラクタム類(例:1−メチル−2−ピロリジノン)、ギ酸もしくはC1−6カルボン酸類のN,N−ジメチルアミド(例:N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなど)、スルホキシド類(例:ジメチルスルホキシド)、エーテル類(例:テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、ジメトキシエタンなど)ならびにこれらの混合物などの非プロトン性極性溶媒があるが、これらに限定されるものではない。特に好ましいものは、エーテル溶媒、好ましくはテトラヒドロフランである。第1および第2の溶媒は、同一でも異なっていても良く、好ましくは同一である。式(RSi−CCHのアセチレンの例には、エチニルトリメチルシラン、エチニルトリエチルシランおよびエチニルトリイソプロピルシラン、好ましくはエチニルトリメチルシランがあるが、これらに限定されるものではない。使用されるグリニャル試薬の例には、Rがエチル、イソプロピル、ヘキシル、オクチル、フェニル、シクロヘキシルおよびベンジルであり、XがCl、BrもしくはIであり、好ましくはRがエチル、イソプロピル、ヘキシルもしくはオクチルである式RMgXのうちの一つがあるが、これに限定されるものではない。より好ましいものは、テトラヒドロフラン中でのエチニルトリメチルシランおよびオクチルマグネシウムクロライドである。
【0107】
段階(b)では、酸および還元剤の存在下に、溶媒中、約−10℃から約40℃の範囲の温度、好ましくは約0℃から約25℃、より好ましくは約0℃から約10℃で式(XXX)の化合物を環化させて、式(XXXI)の化合物を得る。還元剤の例には、水素化ホウ素トリアセトキシナトリウム、水素化ホウ素シアノナトリウム、水素化ホウ素ピバロイルオキシナトリウム、トリエチルシランおよびトリフェニルシランなどがあるが、これらに限定されるものではなく、好ましくは水素化ホウ素トリアセトキシナトリウムである。段階(b)で使用される好適な酸は、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、塩酸、硫酸およびリン酸である。特に好ましいものは、トリフルオロ酢酸である。使用可能な溶媒の好適な例は、例えば酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸n−プロピル、酢酸n−ブチルなどのC1−6カルボン酸のエステル、またはこれらの混合物であり、好ましくは酢酸イソプロピルである。より好ましくは、式(XXX)の化合物および水素化ホウ素トリアセトキシナトリウムの酢酸イソプロピル中混合物を、約−10℃から約40℃の範囲の温度で、トリフルオロ酢酸で処理し、混合物を約−10℃から約25℃、好ましくは約10℃から約15℃の温度で攪拌する。
【0108】
段階(c)では、好ましくは約0℃から約50℃、好ましくは約10℃から約30℃、より好ましくは約20℃から約25℃の温度で、約15時間にわたって、または反応が完結するまで、塩基(固体もしくは水溶液として加える)で処理することで、溶媒の式(XXXI)の化合物を鹸化し、次に酸を加えて、式(XXXII)の化合物を得る。段階(c)に好適な塩基の例には、金属水酸化物(例:水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化バリウムなど)および金属炭酸塩(例:炭酸ナトリウム、炭酸カリウムおよび炭酸セシウム)があるが、これらに限定されるものではない。特に好ましい塩基には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムおよび水酸化リチウムなどの金属水酸化物などがある。使用可能な溶媒の例には、C1−6アルコール、好ましくはメタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、n−ブタノールなどの低級アルコール、またはこれらの混合物がある。特に好ましいものはエタノールである。水をアルコールに加えたり、塩基の水溶液として導入しても良い。式(XXXII)の化合物の塩を酸で処理することで、式(XXXII)の化合物が得られる。使用可能な好適な酸には、塩酸、リン酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸およびベンゼンスルホン酸などがあるが、これらに限定されるものではなく、好ましくは塩酸である。
【0109】
段階(d)では、溶媒中にてカップリング試薬および塩基の存在下に式(XXXII)の化合物をアンモニアで処理して、式(XXXIII)の化合物を得る。アンモニア水溶液が好ましいが、他の形で、気体もしくは液体アンモニア、またはアンモニアのテトラヒドロフラン、トルエン、ジオキサンもしくはイソプロパノールなどのC1−6アルコール系溶媒中溶液を用いることで、その反応を行うことが可能であることが想到される。段階(d)に好適なカップリング試薬の例にはクロルギ酸エステル、塩化チオニル、塩化オキサリルおよび他の当業者には公知のアミド結合形成に通常使用されるカップリング試薬(例:EDCI/HOBT)などがあるが、これらに限定されるものではない。特に好ましいものは、クロルギ酸フェニルおよび例えばクロルギ酸イソブチルおよびクロルギ酸エチルなどの式ClCOO(C1−6アルキル)のクロルギ酸エステルである。クロルギ酸イソブチルが特に好ましい。反応は、好適な塩基を用いることで促進される。好適な塩基には、アンモニア、ピリジン、ピコリンおよび3級アミン類(ジイソプロピルエチルアミン、トリエチルアミンなどのトリ(C1−6アルキル)アミン類およびN−メチルモルホリン、DBUなどの環状3級アミン類を含む)などの有機塩基、および金属炭酸水素塩(例:炭酸水素ナトリウムもしくはカリウム)、金属リン酸塩(例:リン酸ナトリウムもしくはカリウム)および金属炭酸塩(例:炭酸ナトリウム、カリウムもしくはセシウム)などの無機塩基などがある。特に好ましいものは、金属炭酸水素塩、金属リン酸塩、金属炭酸塩および有機塩基であり、好ましくは炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、ピリジン、トリ(C1−6アルキル)アミン類(例:トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミンなど)などの脂肪族3級アミン類および環状3級アミン類(例:N−メチルモルホリン、DBUなど)である。その方法で使用可能な溶媒の例には、ケトン類、エーテル類、C1−6カルボン酸のエステル類、ラクタム類およびスルホキシド類などの非プロトン性極性溶媒、好ましくはエステルおよびエーテル系溶媒、例えば酢酸エチル、酢酸イソプロピル、テトラヒドロフランなどがあるが、これらに限定されるものではない。その反応は、約1.2から約1.4モル当量の3級アミン(好ましくはN−メチルモルホリン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミンもしくはこれらの混合物)の存在下、約−20℃から約50℃の範囲の温度、好ましくは約−10℃から約10℃で、約30分から約90分の期間にわたり、または中間体の形成が完了するまで、溶媒(好ましくは酢酸イソプロピル、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン、もしくはメチルtert−ブチルエーテル)中の式(XXXII)の化合物を、約1から約2モル当量のグロルギ酸エステル(例:クロルギ酸イソブチル)、好ましくは約1.1から約1.3モル当量で処理することで行う。次に、約−10℃から約30℃、好ましくは約0℃から約25℃、より好ましくは約0℃から約15℃の範囲の温度で、約30分から約3時間にわたり、または反応が完結するまで、反応混合物をアンモニア(好ましくはアンモニア水もしくはアンモニアガス)で処理する。
【0110】
段階(e)では、式(XXXIII)の化合物の脱水を行って式(XXXIV)の化合物を得る。溶媒中、約−10℃から約25℃の範囲の温度、好ましくは約0℃から約15℃で、五酸化リン、塩化ホスホリル/ピリジンもしくは塩化チオニル/DMF、好ましくは塩化チオニル/DMFなどの脱水剤を用いてこれを行って、式(XXXIV)の化合物を生成することができる。好適な溶媒は、極性非プロトン性溶媒、好ましくはピリジン、エーテル溶媒(テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、メチルtert−ブチルエーテルなど)、エステル溶媒またはこれらの混合物である。特に好ましいものは、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、メチルtert−ブチルエーテル、酢酸イソプロピル、ピリジンまたはこれらの混合物である。
【0111】
段階(f)では、Pがアミン保護基(好ましくはC1−6アルコキシカルボニル、より好ましくはtert−ブトキシカルボキシル)である式(XXXIV)の化合物を脱保護して、式(XXXV)の化合物もしくはこれの塩を得る。これは、溶媒中、約10℃から約50℃の範囲の温度、好ましくは約20℃から約25℃で、酸で処理することで行うことができる。使用可能な酸の例には、塩化水素(気体または水、ジオキサン、メタノールなど(これらに限定されるものではない)の溶媒中)、硫酸、硝酸、リン酸、トリフルオロ酢酸(TFA)、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸およびベンゼンスルホン酸などがあるが、これらに限定されるものではない。好ましい酸は、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、塩化水素、メタンスルホン酸およびリン酸である。この段階に好適な溶媒には、プロトン性極性溶媒および極性非プロトン性溶媒、好ましくはアセトニトリル、テトラヒドロフランなどのエーテル類、イソプロパノール、メタノールおよびエタノールなどのC1−6アルコール類またはこれらの混合物などがある。反応完了後にイン・サイツで、約0℃から約25℃、好ましくは約10℃から約20℃の温度で約1モル当量の適切な塩基(例えば、トリアルキルアミン類、金属炭酸塩、金属水酸化物、金属リン酸塩および金属炭酸水素塩、金属炭酸塩、金属水酸化物、金属リン酸塩の金属部分)で反応混合物を塩基性とすることで、式(XXXV)の化合物を得る。式(XXXV)の化合物もしくはこれの塩は、単離してもしなくても良い。
【0112】
段階(g)では、溶媒中、約−10℃から約25℃、好ましくは約0℃から約10℃の温度で、段階(f)からの式(XXXV)の化合物もしくはこれの塩を、式XCHCOY(XおよびYは独立にClもしくはBrであり、好ましくはXおよびYはClである。)の試薬および塩基で処理して、式(XVIII)の化合物を得る。段階(g)に好適な塩基には、ピリジンまたはトリアルキルアミン(例:トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミンなど)などの3級アミン類および環状3級アミン(例:N−メチルモルホリン、DBUなど)などの有機塩基、金属炭酸水素塩(例:炭酸水素ナトリウムもしくはカリウム)、金属炭酸塩(例:炭酸ナトリウム、カリウム、もしくはセシウム)、金属水酸化物(例:水酸化ナトリウム、カリウムおよびリチウム)、金属リン酸塩(例:リン酸ナトリウムもしくはカリウム)もしくは金属リン酸水素塩(例:リン酸水素ナトリウムもしくはカリウム)、好ましくは金属水酸化物(例:水酸化リチウム、水酸化ナトリウムもしくは水酸化カリウム)およびジイソプロピルエチルアミンおよびトリエチルアミンなどのトリアルキルアミンなどがある。好適な溶媒には、例えばエーテル溶媒(例:テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル)、ケトン類(例:アセトン)、アセトニトリル、C1−6カルボン酸のエステル、ラクタム類、スルホキシド類およびギ酸もしくはC1−6カルボン酸のN,N−ジメチルアミドまたはこれらの混合物などの極性非プロトン性溶媒などがある。水を、テトラヒドロフラン、tert−ブチルメチルエーテルおよびトルエンなどの有機溶媒に加えても良い。好ましい溶媒は、エーテル系溶媒およびアセトニトリルである。式(XXXV)の化合物に関して約1から約1.5モル当量の塩基を用いる。式(XXXV)の化合物の塩を用いる場合は、約2から約2.5モル当量の塩基を加える。
【0113】
【化34】

【0114】
図式7には、式(XVIII)の化合物の製造のための別の合成経路を示してある。
【0115】
段階(a)では、式(XXX)の化合物(Rは酸保護基(好ましくは、例えばメチル、エチル、イソプロピル、tert−ブチルなどのC1−6アルキル)、RはC1−6アルキル(例えばメチル、エチル、イソプロピルなど)であり、Pはアミン保護基(好ましくは、例えばtert−ブトキシカルボニルなどのアルコキシカルボニル)である。)について、不斉還元を行って、式(XXXVII)の化合物を得る。不斉還元は、触媒存在下での不斉水素化もしくはキラル水素化物移動によって行うことができる。水素化は通常、酸素を含まない条件で、簡便には不活性ガス(例:アルゴン)下もしくは水素雰囲気下に行う。しかしながら、水素化のための水素が反応混合物を通る雰囲気ガス由来のものであることは、その反応には必須ではない。その水素は、好適な水素源から溶液でイン・サイツで生成させることもできる。この種の水素源には、例えばギ酸アンモニウム、ギ酸および他のギ酸化合物、Fe2+/Fe3+などの金属イオン存在下でのヒドラジン類、ならびにイソプロパノール、2−ブタノールおよび3−ペンタノールなどの2級C1−6アルコール類、好ましくは2級C1−6アルコール類、特にはイソプロパノールなどがある。水素源に用いられる2級アルコールは、反応に用いられる溶媒系でもある。その反応は共溶媒の存在下に行っても良い。好適な共溶媒の例には、トルエン、ベンゼンおよびキシレンなどの芳香族炭化水素、クロロホルム、四塩化炭素およびジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素、またはこれらの混合物などがあるが、これらに限定されるものではない。不斉水素化で使用される触媒は、市販の[(1S,2S)−N−(p−トルエンスルホニル)−1,2−ジフェニルエタンジアミン](p−シメン)ルテニウム(I)(CAS番号188444−42−0、関東化学、カタログ番号41067−65)である。この触媒は、文献(Angew. Chem. Int. Ed. Engl., 1997, 36, No.3, p.287)に記載の方法に従っても製造可能である。(XXX)に関して約0.001から約0.02モル当量の触媒を用い、好ましくは約0.001から約0.01、より詳細には0.001から約0.005である。反応時間は、通常は2時間からそれの完了までの12時間、好ましくは2時間から4時間である。不斉水素化を約20℃から約40℃、特には約20℃から約25℃の温度範囲で行うプロセスが好ましい。
【0116】
段階(a)は、キラル水素化物移動によっても行うことができる。キラル水素化物移動は、溶媒中でのキラル還元剤もしくは還元剤/キラル配位子による式(XXX)の化合物の処理によって行うことができる。溶媒の例には、エーテル系溶媒(好ましくはテトラヒドロフラン)もしくはトルエン、ベンゼン、キシレン(好ましくはトルエン)などの非極性溶媒などがあるが、これらに限定されるものではない。キラル還元剤の例には、(R)−アルピンボラン(9−ボラビシクロ[3.3.1]ノナン、9−(2,6,6−トリメチルビシクロ[3.1.1]ヘプト−3−イル)−、[1R−(1α,2β,3α,5α)])があるが、これに限定されるものではない。還元剤/キラル配位子の例には、カタコールボラン(catacholborane)/1−ブチル−3,3−ジフェニルヘキサヒドロピロロ[1,2−c][1,3,2]オキソアザボロール、水素化リチウムアルミニウム/(2R,3R)−4−ジメチルアミノ−3−メチル−1,2−ジフェニル−ブタン−2−オールおよびBINAL−H(1,1′ビナフタレン−2,2′−ジオールおよびエタノールの存在下での水素化リチウムアルミニウム)などがある。
【0117】
段階(b)は、活性化試薬での処理による式(XXXVII)の化合物のヒドロキシ部分の活性化を包含する。活性化剤の例には、無水トリハロ酢酸(無水トリフルオロ酢酸、無水トリブロモ酢酸もしくは無水トリクロロ酢酸など)および式RXの試薬(Rはトリハロアセチル(例:トリフルオロアセチル、トリブロモアセチルもしくはトリクロロアセチル)、メタンスルホニル、ベンゼンスルホニル、p−トルエンスルホニルであり、XはCl、BrもしくはIである。)などがあるが、これらに限定されるものではない。その反応は通常、有機塩基および無機塩基(これらに限定されるものではない)から選択される塩基の存在下に行われる。好適な有機塩基は、トリ(C1−6アルキル)アミン類(例:トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリメチルアミンなど)などの3級アミン類および3級環状アミン類(例えば、N−メチルモルホリン、DBU、1,5−ジアザビシクロ−[4.3.0]ノン−5−エン、1,8−ジアザビシクロ−[5.4.0]ウンデク−7−エンなど)、ピリジンおよびピコリン類である。好適な無機塩基は、金属炭酸塩(例:ナトリウム、カリウム、バリウムおよびセシウムの炭酸塩)、金属炭酸水素塩(例:ナトリウムおよびカリウムの炭酸水素塩)および金属リン酸塩(例:ナトリウムおよびカリウムのリン酸塩)などの金属塩である。本発明は、溶媒中にて約−10℃から約50℃、好ましくは約−10℃から約10℃の温度で、約10分から約2時間の期間にわたり、または反応完結まで式(XXXVII)の化合物、活性化試薬および塩基を反応させる段階を含む、単離を行わずに式(XXXVIII)の化合物を製造する方法を提供するものである。使用可能な好適な溶媒には、例えばクロロホルムもしくはジクロロメタンなどの塩素化炭化水素、エーテル類(例:テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテルなど)およびC1−6カルボン酸のエステル(例:酢酸イソプロピル、酢酸エチルなど)などがある。式(XXXVIII)の中間体化合物は単離せず、段階(c)の反応条件を行って、式(XXXVI)の化合物を得る。
【0118】
段階(c)では、約0℃から約50℃、好ましくは約20℃から約30℃の温度、より好ましくはほぼ室温で、約30分から約4時間の期間にわたり、代表的には約2時間にわたり、または反応が完結するまで酸で処理することで、中間体(XXXVIII)(Pはアミン保護基(好ましくは、アルコキシカルボニル、より詳細にはtert−ブトキシカルボニル)である。)を脱保護する。塩基で処理すると、形成された中間体アミンは環化して、式(XXXVI)の化合物を与える。その脱保護で使用可能な好適な酸には、塩化水素(気体またはジオキサン、水、酢酸もしくはメタノールなど(これらに限定されるものではない)の溶媒中)、硫酸、リン酸、トリフルオロ酢酸(TFA)、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸などのスルホン酸またはこれらの混合物、好ましくは塩化水素、TFA、硫酸、p−トルエンスルホン酸およびリン酸などがあるが、これらに限定されるものではない。(XXXVIII)の脱保護によって生成した中間体の酸塩を、濃縮後に好適な溶媒に再溶解させ、塩基で処理する。反応混合物を、約10分から約2時間の期間にわたり、または反応が完結するまで、代表的には約30分にわたり、約0℃から約35℃の温度で、代表的にはほぼ室温で攪拌して、式(XXXVI)の化合物を得る。好適な塩基には、金属炭酸塩(例:炭酸カリウム、ナトリウムもしくはバリウム)、金属炭酸水素塩(例:炭酸水素カリウムもしくはナトリウム)および金属リン酸塩(例:リン酸ナトリウムもしくはカリウム)などがあるが、これらに限定されるものではない。好適な溶媒には、エーテル類(例えばテトラヒドロフラン)、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドおよびジメチルスルホキシドなどがある。
【0119】
段階(d)では、式(XXXVI)の化合物もしくはこれの塩を、好適な無機塩基で処理することで鹸化して、式(XXXIX)の化合物を得る。そこで、約−10℃から約30℃の温度、好ましくは約0℃から約30℃の好適な溶媒中での式(XXXVI)の化合物に、好適な無機塩基を加え(固体としてもしくは水溶液として加える)、混合物を約10分から約2時間、または反応が完結するまで攪拌する。使用する塩基は、化合物(XXXVI)に関して約0.9から約1.5当量、好ましくは約1.0から約1.2当量である。(XXXVI)の塩をその反応で用いる場合、(XXXVI)に関して用いられる塩基の量は、約1.9から約2.5当量、好ましくは約2.0から約2.2当量である。段階(d)に好適な塩基の例には、金属水酸化物(例:水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化バリウムなど)および金属炭酸塩(例:炭酸ナトリウム、炭酸カリウムおよび炭酸セシウム)があるが、これらに限定されるものではない。特に好ましい塩基には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムおよび水酸化リチウムなどの金属水酸化物などがある。使用可能な溶媒の例には、エーテル類(例:テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテルなど)、またはアルコール類、好ましくはメタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、n−ブタノールなどの低級アルコール、またはこれらの混合物がある。水を、前記アルコールに加えたり、塩基の水溶液として導入しても良い。特に好ましい溶媒はテトラヒドロフランである。
【0120】
好適な溶媒中での式(XXXIX)の化合物もしくはこれの塩を、約−10℃から約10℃、好ましくは約−5℃から約5℃の温度範囲まで冷却し、約1当量の式XCHCOYの試薬(XおよびYは独立にClもしくはBrである。)を塩基の存在下に加え、約−10℃から約10℃、好ましくは約−5℃から約5℃で約30分から約3時間、または反応が完結するまで混合物を攪拌して、式(XL)の化合物を得る。その変換に好適な塩基および溶媒は、図式6の段階(g)に記載されている。
【0121】
図式6の段階(d)および(e)に記載の反応条件を用いて、式(XL)の化合物をそれぞれ式(XLI)および(XVIII)の化合物に変換する。
【0122】
以下、本発明について、ある種の好ましい実施形態(本発明の範囲を限定するものではない)との関連で説明する。逆に、本発明は、特許請求の範囲内に含まれ得るあらゆる代替物、改変および均等物を網羅するものである。反応条件、使用される試薬および合成経路の手順の適切な操作、反応条件と適合しない可能性がある化学官能基の保護および前記方法の反応手順における好適な箇所での脱保護などの通常の実験は、本発明の範囲に含まれるものである。
【0123】
実施例
【実施例1】
【0124】
(2S)−2−[(tert−ブトキシカルボニル)アミノ]−5−オキソ−7−(トリメチルシリル)ヘプト−6−イン酸メチル
オーバーヘッド攪拌機、N導入管および温度プローブを取り付けた2リットルの三頸ジャケット付き丸底フラスコに、オクチルマグネシウムクロライド(2.1M、248.3g、0.560mol)およびテトラヒドロフラン(1体積、102g)を入れ、その溶液を冷却して0℃(内部温度)とした。液面下で注射器によって約25分間かけて、トリメチルシリルアセチレン(57.5g、0.585mol)を加えた(Tmax=13℃)。溶液を0℃で1時間攪拌し、冷却して−10℃(内部温度)とした。(S)−1−tert−ブチル2−メチル5−オキソピロリジン−1,2−ジカルボキシレート(125g、0.509mmol)のテトラヒドロフラン(250g)中溶液を、液面下でbyロータリーポンプによって2時間の期間をかけて加えた。フラスコおよびポンプをテトラヒドロフラン約25gで洗い、それを反応フラスコに加えた。反応を、完了するまでHPLCによってモニタリングした。2リットルフラスコに、水(870g)およびNHCl(174g)を入れ、全ての固体が溶解するまで内容物を混合した。20%NHCl溶液(504g)の約1/2を除去した。酢酸イソプロピル(380g)をフラスコに加え、混合物を冷却して<5℃とした。反応溶液を酢酸イソプロピル/NHCl溶液に約20分間かけて加えた(Tmax=5℃)。浴を外し、混合物を昇温させて10℃より高くした。混合物を分液漏斗に移し、層を分離した。存在する灰色の半固体は有機層と一緒にした。水層を酢酸イソプロピル(328g)で抽出し、有機層を合わせた。有機層を残りの20%NHCl溶液および20%NaCl溶液(435mL)で洗浄した。有機層を濃縮し、酢酸イソプロピルで希釈し、それを合計で2回行った。混合物を濾過して、沈殿した塩を除去した。標題化合物の酢酸イソプロピル中溶液を、次の段階で直接用いた。
【実施例2】
【0125】
(5R)−1−(tert−ブトキシカルボニル)−5−プロプ−1−インイル−L−プロリン
オーバーヘッド攪拌機、N導入管、温度プローブおよび滴下漏斗を取り付けた2リットルの三頸ジャケット付き丸底フラスコに、水素化ホウ素トリアセトキシナトリウム(93.0g、0.44mol)、酢酸イソプロピル(100g)および実施例1から得られた酢酸イソプロピル中溶液(278重量%、410g、0.33mol)を入れた。得られた混合物を冷却して−10℃(内部温度)とした。トリフルオロ酢酸(170g、1.5mol)を、滴下漏斗によって2時間かけて滴下した。内部温度を10℃に調節し、HPLC分析で原料が完全に消費されていることが示されるまで(約15時間)、混合物を攪拌した。反応液を25%KHPO(KHPO250gを水750gに溶かすことで調製)750gに投入した。混合物のpHを20%KOH(KOH 100gを水400gに溶かすことで調製)を用いて6.6に調節した。層を分離した。有機層を25%KHPO(250g)および水(250g)で洗浄した。有機層を蒸留して酢酸イソプロピルを除去し、それをエタノールで追い出して、最終容量を約250mLとした。溶液を冷却して0℃とし、3.5M LiOH溶液(LiOH・HO 37gを水250gに溶かすことで調製)を、温度が20℃以下のままとなるように加えた。反応の進行を、エステルが残らなくなるまで(代表的には約2時間)HPLCによって追跡した。エタノールを減圧蒸留によって除去し、得られた水層をメチルtert−ブチルエーテル(190g)で抽出した。メチルtert−ブチルエーテル層を水(100g)で抽出し、廃棄した。合わせた水層を冷却して0℃とし、濃HClで中和してpH7とした。酢酸イソプロピル(220g)を加え、濃HClでpHを3に調節した。層を分離し、水層を酢酸イソプロピル(220g)で抽出した。合わせた有機層を水(100g)で洗浄した。有機溶液を減圧蒸留して総容量を約180mLとし、冷却して0℃とした。30分間かけて結晶を生成させた。ヘプタン(50g)を2時間かけて滴下し、得られた混合物を0℃で2時間攪拌した。混合物を濾過し、固体を冷1:1酢酸イソプロピル/ヘプタン(50mL)で洗浄し、真空乾燥して、標題化合物を得た。H NMR(400MHz、CDCl)δppm0.24(s、9H)1.45(s、9H)1.87−2.04(m、1H)2.11−2.28(m、1H)2.57−2.81(m、2H)3.75(s、3H)4.23−4.40(m、1H)4.99−5.14(m、1H)。
【実施例3】
【0126】
(2S,5R)−2−シアノ−5−エチニルピロリジン−1−カルボン酸tert−ブチル
段階A
オーバーヘッド攪拌機および熱電対を取り付けた2リットルのジャケット付きフラスコに、実施例2の生成物(100.2g、6.42mol)、酢酸イソプロピル(500mL)およびN−メチルモルホリン(57mL、0.522mol)を入れた。クロルギ酸イソブチル(65mL、0.502mol)を約15分かけて滴下し、得られた溶液を0℃で1時間攪拌した。反応液の一部をベンジルアミンに入れて反応停止し、HPLCによって分析して、混成無水物生成の進行を評価した。混成無水物生成は代表的には、この段階で完了していた。反応混合物を、冷(0℃)27%NHOH溶液に、反応停止液の内部温度が25℃以下に維持されるように加えた。反応フラスコを酢酸イソプロピル(25mL)で洗い、それを反応停止フラスコに加えた。混合物を26%NaCl溶液(300g、NaCl 80gを水220gに溶かすことで調製)で希釈し、層を分離した。水層を酢酸イソプロピル(100mL)で抽出した。合わせた有機層を20%KHPO(500gで2回)およびブライン(200g)で洗浄した。有機溶液を濃縮して総容量約170mLとした。
【0127】
段階B
オーバーヘッド攪拌機および熱電対を取り付けた清浄な2リットルのジャケット付きフラスコに、テトラヒドロフラン(500mL)およびN,N−ジメチルホルムアミド(77mL、1.0mol)を入れ、溶液を冷却して0℃とした。塩化チオニル(70mL、0.961mol)を、内部温度が15℃以下に維持されるように滴下した。溶液を0℃で1、5時間攪拌した。段階Aからのアミドの酢酸イソプロピル中溶液を、内部温度が25℃以下に維持されるように加え、得られた混合物を0℃で1時間攪拌した。反応溶液を、内部温度が25℃以下に維持されるよう冷(0℃)5M NaOH溶液に加えた。層を分離し、有機層を20%KHPO溶液(500g)および5%NaCl溶液(500g)で洗浄した。有機層を蒸留して総容量を約170mLとし、CHCN(500mL)で希釈した。有機層を蒸留して総容量を約170mLとし、次にCHCN(500mL)で希釈した。有機溶液を濾過して沈殿した塩を除去した。標題化合物を含む有機層を次の段階で直接用いた。
【実施例4】
【0128】
(2S,5R)−1−(クロロアセチル)−5−エチニルピロリジン−2−カルボニトリル
攪拌機、N導入管および温度プローブを取り付けた1リットルの三頸丸底フラスコに、CHCN(296.3g)中の溶液としての実施例3の生成物(40g、0.182mol)を入れた。追加のCHCN(58.1g)を加えて、総量を10倍体積とした。反応液の温度を25℃に調節した。p−トルエンスルホン酸(70.1g、0.363mol)を、内部温度を30℃以下に維持するように少量ずつ加えた。COガス発生が最初はかなり激しかった。COガスのための換気が必須であった。反応液を25℃で終夜攪拌したが、その間に反応液は不均一となった。原料の消失はHPLCによって追跡し、生成物の形成はGCによって追跡した。脱保護が完了した時点で、反応液を冷却して0℃とし、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(67.8mL、399.5mmol)を、内部温度が15℃以下になるようにゆっくり加えた。反応混合物を再度冷却して0℃とし、クロロアセチルクロライド(24.61g、217.9mmol)を、内部温度を15℃以下に維持するようにゆっくり加えた。反応液を0℃で混合し、1時間攪拌した。反応混合物を、酢酸イソプロピル(400mL)および1M KHPO(400mL)の冷溶液にゆっくり加えた。混合物を濃縮し、酢酸イソプロピル(800mL)および水(320mL)とともに蒸留して、全てのCHCNを除去した。酢酸イソプロピル/CHCN比をGCによって追跡した。CHCNが完全に除去されたら、層を分離した。水層を酢酸イソプロピルで抽出した(200mLで2回)。合わせた有機層を1M KHPO(200mL)で洗浄した。有機層を酢酸イソプロピルから繰り返し蒸留することで脱水し、混合物を濾過して、沈殿した塩を除去した。濾液を濃縮し、イソプロピルアルコールで希釈し、それを数回行った。溶液を濃縮して約90mLとし、固体が生成し始めるまで攪拌した。水(420mL)をゆっくり加え、混合物を室温で約1時間、0℃で約1時間攪拌した。固体を濾過によって回収し、冷イソプロピルアルコール/水(65mL)で洗浄し、真空乾燥機で40℃にて48時間乾燥して、オフホワイト固体27.66g(収率77.5%)を得た。H NMR(400MHz、CDCl)δppm2.23−2.52(m、4H)2.56(d、J=1.78Hz、1H)4.31(dd、J=12.9、66.82H)4.67−4.94(m、2H)。
【実施例5】
【0129】
2−クロロイソニコチン酸tert−ブチル
オーバーヘッド攪拌機、大気に通じているN導入管および熱電対を取り付けた1リットルのジャケット付き三頸丸底フラスコに、2−クロロイソニコチン酸(78.0g、495mmol)、ジ−tert−ブチルジカーボネート(230.1g、1054mmol)および1−メチル−2−ピロリジノン(179.3g)を入れた。1−メチル−2−ピロリジノン(60.0g)に溶かした4−ジメチルアミノピリジン(11.61g、95mmol)の溶液に、その混合物を入れ、温度を25±10℃に調節した。約17時間攪拌した後、塩化ナトリウム(30.0g)およびリン酸一カリウム(30.2g)の水(320.7g)中溶液を氷冷したものを加えることで、反応停止した。メチルtert−ブチルエーテル(278g)を加え、混合物を攪拌し、静置した。層を分離した。有機相を水で3回洗浄し(それぞれ約230から240g)、トルエン(239g)で希釈し、減圧下に蒸留して赤色油状物(150.8g、KF29.9ppmHO)を得た。H NMR(400MHz、CDCl)δppm1.60(s、9H)7.69−7.72(m、1H)7.79−7.81(m、1H)8.49(dd、J=5.08、0.69Hz、1H)。
【実施例6】
【0130】
2,6−ジクロロイソニコチン酸tert−ブチル
オーバーヘッド攪拌機および熱電対を取り付けた12リットルフラスコに、2,6−ジクロロイソニコチン酸(875g、4.56mol)および4−ジメチルアミノピリジン(110g、0.91mol)を入れ、次に1−メチル−2−ピロリジノン(2.4kg)を入れた。15分間攪拌して固体を溶かした後、ジ−tert−ブチルジカーボネート(2.03kg、9.6mol)を溶融物として入れた。水浴(25℃)をフラスコ周囲に配置して冷却し、温度を35℃以下に維持しながら、トリエチルアミン(450g、4.56mol)を15分間かけて加えた。反応は、ほぼ室温で19時間後に完結した。反応混合物をメチルtert−ブチルエーテル(6リットル)およびKHPO(840g、6.38mol)を含む水(8リットル)で希釈した。冷却して温度を<30℃とした後、水相を分離し、メチルtert−ブチルエーテル層をセライト(登録商標)床で濾過して、不溶物を除去した。メチルtert−ブチルエーテル層を水で洗浄した(6リットルで2回)。メチルtert−ブチルエーテル層に、ダルコ(Darco)−G60(85g)を入れ、その混合物を1時間攪拌し、セライト(登録商標)層で濾過した。有機層を減圧蒸留して総量を5リットルとした。メタノール(8リットル)の添加によって容量を維持しながら蒸留を続けた。メタノール中のスラリーを昇温させて50℃として固体を溶解させ、冷却して環境温度として結晶化させた。水(1.5リットル)を30分間かけて加えた。スラリーを濾過し、固体をメタノール(5.0リットル)および水(2.0リットル)の混合物で2回に分けて洗浄した。ケーキを真空乾燥して(50℃、窒素気流)、明褐色粉末970g(収率88%)を得た。H NMR(400MHz、CDCl)δppm1.59(s、9H)7.71(s、2H)。
【実施例7】
【0131】
1−tert−ブチル4−エチルピペリジン−1,4−ジカルボキシレート
オーバーヘッド攪拌機、滴下漏斗、N導入管、換気針および温度プローブを取り付けた1リットルの丸底フラスコに、ジ−tert−ジカーボネート(1978g、0.906mol)およびトルエン(170g)を入れ、冷却して15℃とした。イセニペコチン酸エチル(146.8g、0.924mol)を滴下漏斗に入れ、内部温度を30℃以下に維持しながら(添加時間30分、Tmax=25℃)前記反応混合物に加えた。滴下漏斗をトルエン(30g)で洗い、それを反応フラスコに加えた。反応液を1時間混合し、1M HPO溶液(水180gとHPO 20gから調製)で約1分間かけて反応停止した。層を分離した。有機相を塩基性ブライン溶液(水150g、NaOHペレット1.5gおよびNaCl 23gから調製)で洗浄した。そのトルエン溶液を次の段階で直接用いた。
【実施例8】
【0132】
1−tert−ブチル4−エチル4−メチルピペリジン−1,4−ジカルボキシレート
オーバーヘッド攪拌機、滴下漏斗、N導入管および温度プローブを取り付けた250mL丸底フラスコに、ジイソプロピルアミン(7.31g、71.5mmol)およびテトラヒドロフラン(22g)を入れ、冷却して−15℃(内部温度)より低くした。ヘキシルリチウム(2.25Mヘキサン中溶液:21.8g、68.5mmol)を注意深く滴下漏斗に入れた。内部温度を最高で−17℃としながら、ヘキシルリチウム溶液を、滴下漏斗で45分かけて加えた。反応液を、内部温度を約−15℃から0℃として1時間混合した。フラスコに別の滴下漏斗を取り付け、実施例7から得たトルエン溶液(15.01g、58.33mmol)を滴下漏斗で加え、次にテトラヒドロフラン4gを加えた。総添加時間は1時間45分であり、最高内部温度は−15℃であった。溶液を約−20℃で30分間攪拌した。フラスコに滴下漏斗を取り付け、それにヨウ化メチル(9.3g、64.64mmol)およびテトラヒドロフラン(3g)を入れ、この溶液を、内部温度を−15℃以下に維持しながら、前記反応混合物に30分かけて加えた。30分後、温度を10℃以下に維持しながら、反応液を冷(−5℃)2M HCl溶液(水31mLと濃HCl 8gから調製)に入れて反応停止した。反応フラスコをトルエン(10mL)で洗い、それを反応停止フラスコに加えた。混合物を分液漏斗に移し、層を分離した。有機層を17%NaCl溶液(NaCl 2.5gを水15gに溶かすことで調製)で洗った。そのテトラヒドロフラン/トルエン溶液を次の段階で直接用いた。
【実施例9】
【0133】
4−(アミノカルボニル)−4−メチルピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチル
導入管/温度プローブ、オーバーヘッド攪拌機および滴下漏斗を取り付けた500mLフラスコに、ナトリウムアミド(133g、327.3mmol)およびテトラヒドロフラン(110g)を入れ、昇温させて35℃とした。滴下漏斗によって、実施例8(35.57g、130.9mmol)のテトラヒドロフラン/トルエン中溶液をゆっくり入れた。滴下漏斗をテトラヒドロフラン(12g)で洗った。反応温度を50℃に調節し、反応液を3時間攪拌してから、HPLCサンプルを採取したところ、それは反応が完結していることを示していた。オーバーヘッド攪拌機および熱電対を取り付けた別のフラスコで、水(142g)、酢酸(31.5g)およびトルエン(54g)を入れた。得られた混合物を冷却して0℃とした。不均一反応混合物を、温度を25℃以下に維持しながら、酢酸/トルエン混合物に加えることで反応停止した。反応フラスコをトルエン(14g)および水(14g)で洗い、それらを反応停止フラスコに加えた。反応停止混合物のpHは6.04であった。混合物のpHを、50%NaOH溶液(1.1g)を用いて7.5に調節した。水層を1:1トルエン/テトラヒドロフラン(50g)で抽出した。有機層を合わせ、フリットガラスフィルターで濾過し、濃縮して総量を約75mLとした。残留物をトルエン(125g)で希釈し、濃縮して総量を約100mLとした。蒸留中に固体が生成していた。混合物を冷却して0℃とし、1時間攪拌した。混合物を濾過し、固体を冷トルエンで3回洗浄し、真空乾燥して、標題化合物を得た。HNMR(400MHz、CDCl)δppm1.23(s、3H)1.37−1.51(m、2H)1.44(s、9H)1.88−1.98(m、2H)3.19−3.32(m、2H)3.51−3.68(m、2H)5.56−5.76(m、2H)。
【実施例10】
【0134】
4−メチルピペリジン−4−カルボキサミド
500mL三頸丸底フラスコに、オーバーヘッド機械式パドル攪拌機、N導入管付き熱電対およ大気に対して換気されている還流冷却管を取り付けた。反応液に実施例9の生成物(45.68g、188.5mmol)、p−トルエンスルホン酸・1水和物(46.67g、245.3mmol、1.3当量)およびイソプロパノール(179.2g)を入れた。混合物を昇温させて80±10℃とした。45分後、反応溶液をゆっくり冷却させた。約78℃で、標題化合物のp−トルエンスルホネート塩が反応混合物から沈殿し始めた。混合物が70℃に達した時点で、ヘプタン(40.2g)を混合物に加え、それを約30分間攪拌した。混合物を約3時間かけて放冷して環境温度とした。得られた懸濁液を濾過し、リアクターおよびケーキを、イソプロパノール(90.2g)およびヘプタン(78.7g)の混合物で洗った。ケーキを、約55から60℃の温度で真空乾燥して(約100mmHg/N気流)、標題化合物のp−トルエンスルホネート塩を得た。HNMR(400MHz、DMSO−d)δppm1.11(s、3H)1.39−1.55(m、2H)2.08(d、J=14.55Hz、2H)2.28(s、3H)2.76−2.89(m、2H)3.07−3.19(m、2H)7.04(s、1H)7.09−7.14(m、2H)7.33(s、1H)7.45−7.51(m、2H)8.30(s、2H)。
【実施例11】
【0135】
2−[4−(アミノカルボニル)−4−メチルピペリジン−1−イル]イソニコチン酸tert−ブチル
500mLの三頸フラスコに、実施例10から得られた生成物(34.4g、109.4mmol)、KCO(325メッシュ、35.3g、255.1mmol)および実施例5のジメチルスルホキシド/トルエン中溶液(56.1重量%溶液27.8g、72.9mmol)を入れた。混合物を100℃で約36時間攪拌した。混合物を冷却して室温とし、水(220g)を最初はゆっくり加えた。水の添加によって、生成物が溶液から沈殿した。約1時間攪拌後、混合物を濾過し、固体を水で洗浄し、真空乾燥して、標題化合物を得た。H NMR(400MHz、CDCl)δppm1.28(s、3H)1.53−1.63(m、2H)1.58(s、9H)2.03−2.11(m、2H)3.42−3.51(m、2H)3.78−3.86(m、2H)5.41−5.69(m、2H)7.03(dd、J=5.08、1.24Hz、1H)7.18(s、1H)8.22(dd、J=5.15、0.75Hz、1H)。
【実施例12】
【0136】
4−メチルピペリジン−4−アミン
段階A
攪拌機および温度プローブを取り付けた3リットルの三頸フラスコに、実施例9の生成物(110.0g、0.454mol)、CHCN(260g)、および水(990g)を入れた。得られたスラリーを冷却して10℃とし、水酸化カリウム(130.6g、2.044mol)を加えたところ、発熱があって10℃から24℃となった。スラリーを冷却して1℃とし、1,3−ジブロモ−5,5−ジメチルヒダントイン(71.4g、0.250mol)を一気に加えたところ、発熱があって1℃から3℃となった。30分後、反応液を昇温させて23℃とした。1時間攪拌後、亜硫酸ナトリウム(5.5g、44mmol)を加え、反応液を15分間攪拌した。酢酸エチル(496g)を加え、反応液を冷却して11℃とした。KPO(110.0g、0.518mol)を加えたところ、軽い発熱があった。混合物を昇温させて23℃とし、分液漏斗に移し、層を分離した。有機層を25%塩化ナトリウム水溶液で1回洗浄した。有機層を蒸留して油状物を得て、それをメタノール(500mL)に溶かし、再度蒸留して油状物を得た。その油状物をメタノール(740mL)に溶かし、次の反応で用いるのに保持した。
【0137】
段階B
攪拌機および温度プローブを取り付けた2リットルの三頸フラスコに、p−トルエンスルホン酸・1水和物(197.0g、1.036mol)およびイソプロパノール(290g)を入れた。溶液を加熱して60℃とした。段階Aからのメタノール中溶液を30分かけて加え、その間に生成物が溶液から結晶化した。得られたスラリーを19時間攪拌し、冷却して0℃とし、1時間攪拌し、濾過した。湿ったケーキをイソプロパノール(145g)で2回洗浄し、湿ったケーキを50℃および20mmHgで24時間乾燥させて、標題化合物のジ−p−トルエンスルホン酸塩を得た(2段階で収率92.2%)。H NMR(400MHz、DMSO−d)δppm1.33(s、3H)1.77−1.91(m、4H)2.29(s、6H)3.03−3.14(m、2H)3.18−3.27(m、2H)3.33(brs、2H)7.08−7.15(m、4H)7.44−7.52(m、4H)8.04−8.43(brs、3H)。
【実施例13】
【0138】
2−(4−アミノ−4−メチルピペリジン−1−イル)−6−クロロイソニコチン酸tert−ブチル
オーバーヘッド攪拌機および窒素導入管を取り付けた500mLフラスコに、実施例6の生成物(10.0g、40.3mmol)および実施例12の生成物(19.4g、42.3mmol)と、次に1−メチル−2−ピロリジノン(40g)を入れた。十分に攪拌した反応混合物に、KPO(18.0g、84.6mmol)を加え、混合物を昇温させて80℃として16時間経過させた。追加量のKPO(0.92g、2.0mmol)を反応混合物に入れ、混合物をさらに6時間にわたって攪拌した。反応混合物を環境温度まで冷却後、メチルtert−ブチルエーテル(65mL)およびKPO(12.8g)の水(130mL)中溶液を加えた。混合および静置後に、3層が存在した。下の2層を分離し、メチルtert−ブチルエーテル(65mL)で抽出した。合わせたメチルtert−ブチルエーテル層をKPO(4.3g)の水(100mL)中溶液で洗浄した。メチルtert−ブチルエーテル層に、1−メチル−2−ピロリジノン(28mL)を加え、溶液を減圧下に濃縮して、メチルtert−ブチルエーテルを除去した。標題化合物の1−メチル−2−ピロリジノン溶液を次の段階で用いた。
【実施例14】
【0139】
2−(4−アミノ−4−メチルピペリジン−1−イル)イソニコチン酸tert−ブチル
方法A
攪拌機および温度プローブを取り付けた1リットルの三頸フラスコに、実施例11の生成物(49.00g、0.153mol)および臭化テトラブチルアンモニウム(TBAB、49.46g、0.153mol)を入れた。テトラヒドロフラン(132g)を加え、得られたスラリーを冷却して5℃とした。4M水酸化ナトリウム溶液(393g)を加え、スラリーを冷却して0℃より低い温度とした。1,3−ジブロモ−5,5−ジメチルヒダントイン(DBDMH、24.13g、0.0844mol)を15分間かけて4回に分けて加えたところ、発熱があって−2.2℃から1.6℃となった。反応液を90分間攪拌した。2リットルフラスコに、6M HCl(294g)、メチルtert−ブチルエーテル(91g)およびNaSO(19.6g)を入れ、溶液を冷却して10℃とした。反応混合物を反応停止溶液に加えたところ、それは発熱して20℃となり、二酸化炭素ガスが発生した。反応フラスコをメチルtert−ブチルエーテル(91g)で洗い、それを反応停止溶液に加えた。反応停止した反応溶液は、pH紙による測定で約3のpHを有していた。5分間攪拌後、4M水酸化ナトリウム(196g)を反応停止した反応溶液に入れたところ、発熱があって20℃となった。反応停止した反応溶液は、pH紙による測定で約12のpHを有していた。分液漏斗に移した後、層を分離し、水層をメチルtert−ブチルエーテルで逆抽出した。合わせた有機層をブライン−亜硫酸塩溶液(NaSO12.3g、NaCl 24.5gおよび水208gから調製)で洗浄した。合わせた有機層を蒸留して油状物を得て、それを1−メチル−2−ピロリジノン(1−メチル−2−ピロリジノン、75mL)中で再生し、蒸留してメチルtert−ブチルエーテルを除去した。生成物の1−メチル−2−ピロリジノン溶液は38.91gと定量された(収率87.3%)。
【0140】
方法B
パールの水素化容器に窒素雰囲気下で、5%Pd/Al(1.02g、10重量%負荷量)およびKPO(6.92g、1.05当量)を入れ、次に実施例13からの1−メチル−2−ピロリジノン中溶液(31重量%溶液31.4g、29.9mmol)を入れた。容器を密閉し、水素を吹き込み、振盪しながら昇温させて40℃とした。4時間後、容器に窒素を吹き込み、冷却して環境温度とし、濾過した。触媒および固体を1−メチル−2−ピロリジノンで洗った(10gで2回)。粗溶液を次の段階で用いた。
【実施例15】
【0141】
4−[2−[(2S,5R)−2−シアノ−5−エチニル−ピロリジン−1−イル]−2−オキソ−エチルアミノ]−4−メチル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2H−[1,2′]ビピリジニル−4′−カルボン酸tert−ブチルエステル・D−酒石酸塩
窒素導入管、温度プローブおよび攪拌機を取り付けた500mLフラスコに、実施例14の生成物の1−メチル−2−ピロリジノン中溶液(31.4重量%溶液56.4g、61mmol)を入れ、次に粉砕KPO(19.2g、90.8mmol)およびヨウ化カリウム(1.0g、6.1mmol)を入れた。スラリーを、窒素を10分間吹き込むことで脱気し、溶液を昇温させて35℃とした。実施例4の生成物(12.55g、63.8mmol)を1−メチル−2−ピロリジノン(20g)に溶かし、内部温度を35℃から40℃に維持しながら、30分間かけて少量ずつ加えた。4時間後、メチルtert−ブチルエーテル(263mL)および水(206mL)を入れ、相を分離した。メチルtert−ブチルエーテル層を、5重量%KHPO(208g)と次に水(206mL)の順で洗浄した。メチルtert−ブチルエーテル層をキュノ(Cuno)R53SPカーボンフィルターで濾過し、少量のメチルtert−ブチルエーテルで洗った。メチルtert−ブチルエーテルを蒸留して約160mLとした。蒸留を続けながら、イソプロパノール(395mL)を加えて溶媒レベルをほぼ160mLに維持した。得られたイソプロパノール溶液を昇温させて60℃とし、D−酒石酸(9.1g、60.6mmol)を入れ、溶液を60℃で15分間攪拌した。核形成が起こった後、スラリーを30分間かけて冷却して環境温度とし、濾過し、イソプロパノールで洗浄した(90mLで2回)。ケーキを、窒素を吹き込みながら50℃で真空乾燥して、標題化合物のD−酒石酸塩を得た。H NMR(400MHz、DMSO−d)δppm1.20(s、3H)1.53(s、9H)1.55−1.74(m、4H)2.07−2.16(m、1H)2.17−2.43(m、3H)3.33−3.45(m、2H)3.61(d、J=2.20Hz、1H)3.73−3.87(m、3H)4.12(s、2H)4.77(t、J=7.00Hz、1H)4.91−4.98(m、1H)6.94(dd、J=5.08、1.10Hz、1H)7.14(s、1H)8.21(d、J=5.08Hz、1H)。
【実施例16】
【0142】
4−[2−[(2S,5R)−2−シアノ−5−エチニル−ピロリジン−1−イル]−2−オキソ−エチルアミノ]−4−メチル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2H−[1,2′]ビピリジニル−4′−カルボン酸
オーバーヘッド攪拌機、プログラム可能なシリンジポンプ、N導入管および温度プローブを取り付けた1リットルの円筒形のジャケットを付けたフラスコに、実施例15の生成物(102.19g、0.170mol)、蒸留水(1022g)および85%リン酸(58.85g、0.509mol)を入れた。得られたスラリーを加熱して60℃とし、この温度に16時間保持することで、反応を完結させた。反応混合物は、それが標的温度に達するについて実際には透明となり、反応のほとんどの期間で均一のままであった。完了したら、反応液を冷却して室温とし、カーボンカートリッジ(キュノR53SP、0.9gカーボン/層、水200mLで洗っておいたもの)で濾過し、#1ワットマン(Whatman)濾紙で濾過した。水102mLでの洗浄を用いて、フィルター上での生成物損失を最小限とし、濾液と合わせた。
【0143】
透明濾液を中和することで、生成物を室温で両性イオンとして結晶化させた。水酸化ナトリウム溶液(501.85g溶液、8.77重量%NaOH)を、シリンジポンプを用いて30分間かけて加えて、pHを4.5から5.0に調節した。溶液を結晶化させ、添加を続けて6.0から7.0のpHとした。スラリーを冷却して10℃とし、1時間攪拌し、濾過し、2つの別々の水255mLずつで洗浄した。その手順によって白色固体100gを得て、それはHPLCによって純度60.9重量%であった(収率91%)。得られた両性イオンを、湿ったケーキとして次の段階に用いた。H NMR(400MHz、酢酸−d)δppm1.65(s、2H)2.09−2.22(m、2H)2.22−2.37(m、3H)2.37−2.54(m、3H)3.01(d、J=2.06Hz、1H)3.46(t、J=11.60Hz、2H)4.13−4.36(m、3H)4.38−4.53(m、1H)4.78−4.86(m、1H)4.86−4.94(m、1H)7.30(dd、J=6.17、0.96Hz、1H)7.64(s、1H)8.11(d、J=6.18Hz、1H)。
【実施例17】
【0144】
4−[2−[(2S,5R)−2−シアノ、5−エチニル−ピロリジン−1−イル]−2−オキソ−エチルアミノ]−4−メチル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2H−[1,2′]ビピリジニ−4′−カルボン酸L−リンゴ酸塩
1リットル丸底フラスコに、実施例16からの両性イオンケーキ(99.58g、60.9重量%、0.153mol)、蒸留水389g、エタノール315gおよびL−リンゴ酸23.19g(0.173mol)を入れた。スラリーを70℃水浴で加熱して溶解させた。得られた透明溶液を、#1ワットマン濾紙で濾過し、40℃に予め加熱してあり、オーバーヘッド攪拌機、蒸留/還流冷却管、N導入管および温度プローブを取り付けた1リットル円筒形ジャケット付きフラスコに移した。1:1エタノール/水溶液53.99gを用いて、丸底フラスコ、フィルターおよび濾過フラスコを洗い、生成物の濾液と合わせた。得られた透明溶液を2時間かけて冷却して20℃とし、終夜結晶化させた。薄いスラリーを減圧下に蒸留して(40℃で約77から87mmHg)、約450mLとし、さらいエタノールで2回の追い出しを行い、第1回の追い出しではエタノール421gを用いて容量を370mLとし、第2回の追い出しではエタノール425gを用いて容量を370mLとした。水(36.7g)およびエタノール(57.2g)を加えて、蒸留時のリアクター壁での生成物蓄積からの損失を最小とし、スラリーを加熱して40℃とし、2時間保持し、4時間かけて冷却して0℃とし、終夜保持した。生成物スラリーを濾過し、冷エタノール300mLで洗浄した。生成物を、減圧下に50℃で終夜乾燥させて、標題化合物のL−リンゴ酸塩を得た。H NMR(400MHz、DMSO−d)δppm1.26(s、3H)1.56−1.79(m、4H)1.96−2.17(m、1H)2.17−2.46(m、4H)2.56(dd、J=15.64、7.14Hz、1H)3.23−3.38(m、2H)3.51−3.75(m、2H)3.82−3.99(m、3H)4.08(dd、J=7.14、6.17Hz、1H)4.62−4.83(m、1H)4.91−5.26(m、1H)6.99(dd、J=5.01、1.03Hz、1H)7.20(s、1H)8.20(d、J=5.08Hz、1H)8.62−10.82(brm、4H)。
【実施例18】
【0145】
(2S,5S)2−tert−ブトキシカルボニルアミノ−5−ヒドロキシ−7−トリメチルシラニル−ヘプト−6−イン酸メチルエステル
50リットルフラスコに実施例1からの生成物(2.43kg、7.11mol)およびイソプロパノール(29リットル)を入れた。溶液に乾燥アルゴンガスを約50分間吹き込み、反応をアルゴン雰囲気で実施した。[(1S,2S)−N−(p−トルエンスルホニル)−1,2−ジフェニルエタンジアミン](p−シメン)ルテニウム(I)(関東化学カタログ番号41067−95、CAS番号188444−42−0、21.31g、0.036mol)を、陽圧アルゴン下に加えた。反応をHPLCによって追跡し、触媒の追加を行い(6時間目に21.31g、0.036molと8時間目に8.27g、0.014mol)、混合物を室温で終夜攪拌した。合計22時間後、反応は完了した。反応液を濃縮し、酢酸イソプロピルを加え、濃縮を続けて、アルコール溶媒を完全に交換した。最終溶液を蒸留して約9リットルとした。ヘプタン(20リットル)を加え、混合物を室温で30分、0℃で1時間攪拌した。固体を濾過によって回収し、固体を冷ヘプタンで洗浄し(4リットルで2回)、真空乾燥機で35から40℃にて乾燥した。その手順によって、白色固体2.27kg(収率91.5%)を得た。H NMR(400MHz、CDCl)δppm0.16(s、9H)1.44(s、9H)1.66−1.86(m、3H)1.93−2.06(m、1H)2.18(d、J=4.67Hz、1H)3.73(s、3H)4.29−4.43(m、2H)5.11(d、J=7.41Hz、1H)。13C NMR(101MHz、CDCl)δppm0.24、28.56、28.62、33.42、52.46、53.14、62.14、79.97、89.84、105.77、116.39、154.97、172.55。
【実施例19】
【0146】
(2S,5S)−5−トリメチルシラニルエチニル−ピロリジン−2−カルボン酸メチルエステル
オーバーヘッド攪拌機、熱電対および滴下漏斗を取り付けた100リットルフラスコに、実施例18からの生成物(2.1kg、6.08mol)、CHCl(32リットル)およびトリエチルアミン(0.92kg、9.12mol)を入れ、溶液を冷却して0℃とした。メタンスルホニルクロライド(0.77kg、6.69mol)を滴下漏斗により、反応の内部温度が5℃以下に保持されるように加えた。原料が消費されるまで、反応をHPLCによって追跡した。4M HCl/ジオキサン(23リットル、91.2mol)を滴下漏斗により、温度が10℃以下に維持されるように加えた。氷浴を外し、溶液を室温で2時間攪拌した。反応液を濃縮して約5リットルとした。ジオキサン(4リットル)を加え、溶液を濃縮して約4リットルとした。テトラヒドロフラン(27リットル)を加え、次に固体KCO(2.1kg、15.2mol)を加えた。30分間攪拌後、反応液を冷却して0℃とし、水(18リットル)を、温度が15℃以下に維持されるように加えた。20分後、層を分離した。水層をtert−ブチルメチルエーテル(12リットル)で抽出した。合わせた有機層は、生成物1.37kgを含んでおり(収率99.9%)、次の反応で直接用いた。
【実施例20】
【0147】
(2S,5S)−1−(2−クロロアセチル)−5−エチニル−ピロリジン−2−カルボン酸
実施例19からの生成物の溶液(合計で11.9kg、308.1g活性、1.37mol)を濃縮して約1240gとし、5リットルフラスコに移した。テトラヒドロフラン(1800mL)を加え、混合物を冷却して10℃より低くした。LiOH−HO(127g、3.03mol)を5分間かけて加えた。1時間後、混合物を冷却して0℃とし、クロロアセチルクロライド(339.8g、3.01mol)を約60分かけて加えた。1.5時間後、6M HClおよび25%NaCl水溶液の1/9混合物(1.8kg)および酢酸イソプロピル(1.9リットル)を加えることで反応停止した。層を分離し、有機層を6M HClおよび25%NaCl水溶液の1/9混合物(1.1kg)で洗浄した。合わせた水層を酢酸イソプロピルで抽出した(2リットルで2回)。合わせた有機層を酢酸イソプロピルから数回濃縮して乾固させ、次に総重量を約800gとした。濃縮中に固体が溶液から出てきていた。ヘプタン(200mL)をゆっくり加えると、それによって固体がさらに多く析出した。2から3時間攪拌後、混合物を濾過し、固体を1:1酢酸イソプロピル/ヘプタン(250mL)で洗浄し、真空乾燥機中にて40℃で乾燥させて白色固体255gを得た(収率86%)。生成物のH NMRスペクトラムでは、2種類の回転異性体が示された。回転異性体(a)が主要回転異性体であり、回転異性体(b)が少量の回転異性体であった。H NMR(400MHz、DMSO−d)δppm1.78−2.07(m、2H)2.08−2.30(m、2H)回転異性体b:3.13(d、J=2.20Hz、1H)回転異性体a:3.46(d、J=1.20Hz、1H)回転異性体b:4.09(d、J=14.13Hz、1H)回転異性体a:4.32(d、J=14.41Hz、1H)4.21(t、J=7.41Hz、7H)回転異性体b:4.40(d、J=14.00Hz、1H)回転異性体a:4.59(d、J=14.27Hz、1H)回転異性体b:4.61−4.67(m、1H)回転異性体a:4.77−4.85(m、1H)12.53−12.85(m、1H)。
【実施例21】
【0148】
(1S,5S)−1−(2−クロロアセチル)−5−エチニル−ピロリジン−2−カルボニトリル
段階A
オーバーヘッド攪拌機およびNラインおよび滴下漏斗を取り付けた5リットルフラスコに、実施例20からの生成物(200g、930mmol)およびテトラヒドロフラン(3リットル)を入れた。溶液を冷却して−10℃とし、N−メチルモルホリン(130mL、1163mmol)を一気に加えた。クロルギ酸イソブチル(148mL、1116mmol)を滴下漏斗によって20から30分間かけて加えた。1.5時間攪拌後、アンモニアガス(32g、1860mmol)を溶液に3時間かけて吹き込んだ。沈殿固体を濾過によって除去し、固体をテトラヒドロフランで洗浄した。濾液を定量したところ、生成物178g(収率90%)を含んでおり、それを次の段階で直接用いた。
【0149】
段階B
オーバーヘッド攪拌機およびNラインおよび滴下漏斗を取り付けた5リットルフラスコに、テトラヒドロフラン(800mL)およびN,N−ジメチルホルムアミド(172mL、2232mmol)を入れ、溶液を冷却して0℃とした。塩化チオニル(156mL、2139mmol)を約1時間かけて加え、得られた溶液を約2時間攪拌した。段階Aからのアミド溶液を約1時間かけて加え、混合物を30分間攪拌した。1M KHPO溶液(1500mL)、次にトルエン(1500mL)をゆっくり加えた。混合物を濃縮してテトラヒドロフランを除去し、得られた層を分離した。水層をトルエンで抽出した(1000mLで2回)。合わせた有機層を25%NaCl溶液で洗浄した(1600mLで2回、600mLで1回)。有機層を濾過し、濃縮して総重量を約400gとし、シードを加えた。室温で72時間攪拌後、ヘプタン(300mL)をゆっくり加え、混合物を2時間攪拌した。混合物を濾過し、固体を1:1トルエン/ヘプタン(200mL)で洗浄し、真空乾燥機で40℃にて終夜乾燥して、128.3gを得た(収率70%)。H NMR(400MHz、CDCl)δppm2.23−2.52(m、4H)2.56(d、J=1.78Hz、1H)4.31(dd、J=12.9、66.82H)4.67−4.94(m、2H)。
【0150】
以上の詳細な説明および添付の実施例が単に説明のためのものであって、専ら添付の特許請求に範囲およびそれらの均等物によって定義される本発明の範囲を限定するものと理解すべきではないことは明らかである。本発明の化学構造、置換基、誘導体、中間体、合成、製剤および/または使用方法に関係するものなどの(これらに限定されるものではない。)各種の変更および修正が、本発明の精神および範囲を逸脱しない限りにおいて可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)の化合物:
【化35】

もしくはこれの塩の製造方法において、
(a)溶媒中にて、式(XVIII)の化合物(Xは、Cl、Br、I、メタンスルホネートもしくはp−トルエンスルホネートである。)を式(XIX)の化合物もしくはこれの塩(Pは酸保護基である。)、添加剤および塩基で処理して、式(XX)の化合物を得る段階;
【化36】

(b)場合により、式(XX)の化合物を酸で処理して、式(XX)の化合物の塩を得る段階;
(c)式(XX)の化合物もしくはこれの塩を脱保護して、式(I)の化合物を得る段階
を有する方法。
【請求項2】
段階(a)で用いられる前記塩基が、トリ(C1−6アルキル)アミン、3級環状アミン、ピリジン、ピコリン、金属塩および金属水酸化物からなる群から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記塩基が、リン酸カリウムもしくはリン酸ナトリウムである請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記添加剤がヨウ化カリウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化リチウムおよびヨウ化テトラブチルアンモニウムからなる群から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項5】
リン酸カリウムおよびヨウ化カリウムを段階(a)で加える請求項1に記載の方法。
【請求項6】
段階(b)における前記酸が、D−酒石酸、マレイン酸、シュウ酸、S−マンデル酸、L−酒石酸、L−リンゴ酸およびコハク酸からなる群から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項7】
段階(b)における前記酸がD−酒石酸である請求項6に記載の方法。
【請求項8】
段階(b)における前記酸が、トリフルオロ酢酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、塩化水素およびリン酸からなる群から選択され、それを段階(c)で加える請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記酸がリン酸である請求項8に記載の方法。
【請求項10】
請求項1の方法に従って製造される(2S,5R)−5−エチニル−1−{N−(4−メチル−1−(4−カルボキシ−ピリジン−2−イル)ピペリジン−4−イル)グリシル}ピロリジン−2−カルボニトリル。
【請求項11】
(2S,5R)−5−エチニル−1−{N−(4−メチル−1−(4−カルボキシ−ピリジン−2−イル)ピペリジン−4−イル)グリシル}ピロリジン−2−カルボニトリルの水溶液をL−リンゴ酸のC1−6アルコール中溶液で処理することで製造される(2S,5R)−5−エチニル−1−{N−(4−メチル−1−(4−カルボキシ−ピリジン−2−イル)ピペリジン−4−イル)グリシル}ピロリジン−2−カルボニトリルL−リンゴ酸塩。
【請求項12】
(2S,5R)−5−エチニル−1−{N−(4−メチル−1−(4−カルボキシ−ピリジン−2−イル)ピペリジン−4−イル)グリシル}ピロリジン−2−カルボニトリルL−リンゴ酸塩。
【請求項13】
が酸保護基である式(XIX)の化合物:
【化37】

もしくはこれの塩の製造方法において、
(a)式(XXIII)の化合物(Pは酸保護基であり、XはF、Cl、Br、I、p−トルエンスルホネートもしくはメタンスルホネートである。)を式(XXII)のアミンもしくはこれの塩で処理して、式(XXIV)の化合物を得る段階;
【化38】

ならびに
(b)前記式(XXIV)の化合物をハロゲン化試薬および塩基で処理して、式(XIX)の化合物を得る段階
【化39】

を有する方法。
【請求項14】
段階(a)が、ナトリウムtert−ブトキシド、カリウムtert−ブトキシド、リチウムtert−ブトキシド、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸水素カリウム、トリアルキルアミン、ピリジンおよびN−メチルモルホリンからなる群から選択される塩基を加える段階をさらに有する請求項13に記載の方法。
【請求項15】
段階(b)での前記ハロゲン化試薬が1,3−ジブロモ−5,5−ジメチルヒダントインである請求項13に記載の方法。
【請求項16】
段階(b)での前記塩基が金属水酸化物である請求項13に記載の方法。
【請求項17】
段階(b)がさらに、相間移動触媒を投与する段階を有する請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記相間移動触媒がテトラブチルアンモニウムハライドである請求項17に記載の方法。
【請求項19】
が酸保護基である式(XIX)の化合物:
【化40】

もしくはこれの塩の製造方法において、
(a)式(XXI)の化合物(Pはアミン保護基である。)をハロゲン化試薬および塩基で処理して、式(XXV)の化合物を得る段階;
【化41】

(b)式(XXV)の化合物もしくはこれの塩の脱保護を行って、式(XXVI)の化合物もしくはこれの塩を得る段階;
【化42】

(c)式(XXVII)もしくは(XXIII)の化合物(Pは酸保護基であり、XはF、Br、Cl、I、メタンスルホネートもしくはp−トルエンスルホネートであり、YはF、I、ClもしくはBrである。)を、式(XXVI)の化合物もしくはこれの塩で処理して、それぞれ式(XXVIII)もしくは(XIX)の化合物を得る段階;
【化43】

(d)式(XXVIII)の化合物の脱ハロゲンを行って、式(XIX)の化合物を得る段階
【化44】

を有する方法。
【請求項20】
段階(a)での前記ハロゲン化試薬が1,3−ジブロモ−5,5−ジメチルヒダントインである請求項19に記載の方法。
【請求項21】
段階(a)での前記塩基が金属水酸化物である請求項19に記載の方法。
【請求項22】
段階(b)が、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、塩化水素、メタンスルホン酸およびベンゼンスルホン酸からなる群から選択される酸を加える段階を有する請求項19に記載の方法。
【請求項23】
段階(c)が、トリアルキルアミン、ピリジン、N−メチルモルホリン、金属水酸化物、金属炭酸塩、金属リン酸塩および金属リン酸水素塩からなる群から選択される塩基を加える段階をさらに有する請求項19に記載の方法。
【請求項24】
段階(d)が、式(XXVIII)の化合物を触媒の存在下に水素で処理する段階を有する請求項19に記載の方法。
【請求項25】
前記触媒が、パラジウム/酸化アルミニウムおよびパラジウム/炭素からなる群から選択される請求項24に記載の方法。
【請求項26】
塩基を加える段階をさらに有する請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記塩基がトリアルキルアミン、金属水酸化物、金属炭酸塩、金属リン酸塩、金属リン酸水素塩からなる群から選択される請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記触媒がパラジウム/酸化アルミニウムであり、前記塩基がリン酸ナトリウムまたはリン酸カリウムである請求項26に記載の方法。
【請求項29】
溶媒中で、4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)の存在下に式(XXVIIa)の化合物をジ−tert−ブチルジカーボネートで処理する段階を有する、式(XXVIIb)の化合物(XはF、Cl、Br、I、メタンスルホネートもしくはp−トルエンスルホネートであり、YはH、F、Cl、BrもしくはIである。)の製造方法。
【化45】

【請求項30】
塩基を加える段階をさらに含む請求項29に記載の方法。
【請求項31】
式(XVIII)の化合物(XはClもしくはBrである。):
【化46】

の製造方法において、
(a)式(XXIX)の化合物(Pはアミン保護基であり、Rは酸保護基である。)を、式(RSi−CCMgX(XはCl、BrもしくはIである。)を有する試薬で処理して、式(XXX)の化合物を得る段階;
【化47】

(b)式(XXX)の化合物を、溶媒中にて酸および還元剤で処理して、式(XXXI)の化合物を得る段階;
【化48】

(c)式(XXXI)の化合物を塩基で処理し、次に酸で処理することで式(XXXII)の化合物を得る段階;
【化49】

(d)式(XXXII)の化合物をカップリング試薬および塩基の存在下にアンモニアで処理して、式(XXXIII)の化合物を得る段階;
【化50】

(e)式(XXXIII)の化合物を脱水剤で処理して、式(XXXIV)の化合物を得る段階;
【化51】

(f)式(XXXIV)の化合物を脱保護して、式(XXXV)の化合物もしくはこれの塩を得る段階;
【化52】

(g)式(XXXV)の化合物もしくはこれの塩を、式XCHCOY(XおよびYは独立にClもしくはBrである。)を有する試薬で処理して、式(XVIII)の化合物を得る段階
【化53】

を有する方法。
【請求項32】
式(RSi−CCMgXを有する前記試薬を、溶媒中にて式(RSi−CC(H)(RはC1−6アルキルである。)のアセチレンおよび式RMgXのグリニャル試薬(RはC1−10アルキル、フェニルもしくはベンジルであり、XはCl、BrもしくはIである。)からイン・サイツで調製する請求項31に記載の方法。
【請求項33】
式(RSi−CC(H)の前記アセチレンが、エチニルトリメチルシラン、エチニルトリイソプロピルシランおよびエチニルトリエチルシランからなる群から選択される請求項32に記載の方法。
【請求項34】
がエチル、イソプロピル、ヘキシル、オクチル、フェニルもしくはベンジルである請求項32に記載の方法。
【請求項35】
式(RSi−CCMgXを有する前記試薬を、テトラヒドロフラン中にてエチニルトリメチルシランをオクチルマグネシウムクロライドで処理することでイン・サイツで調製する請求項32に記載の方法。
【請求項36】
段階(b)での前記酸がトリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、塩酸、硫酸およびリン酸からなる群から選択される請求項31に記載の方法。
【請求項37】
段階(b)での前記還元剤が、水素化ホウ素トリアセトキシナトリウム、水素化ホウ素ピバロイルオキシナトリウムおよびトリエチルシランからなる群から選択される請求項31に記載の方法。
【請求項38】
段階(d)での前記カップリング試薬が、クロルギ酸化合物、EDCI/HOBT、塩化チオニルクロライドおよびオキサリルクロライドからなる群から選択される請求項31に記載の方法。
【請求項39】
段階(d)での前記塩基が、金属炭酸水素塩、金属炭酸塩、金属リン酸塩、ピリジン、トリ(C1−6アルキル)アミンおよび環状3級アミンからなる群から選択される請求項31に記載の方法。
【請求項40】
段階(e)での前記脱水剤が、DMFおよび塩化チオニルの混合物である請求項31に記載の方法。
【請求項41】
段階(f)が、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、塩化水素、メタンスルホン酸およびリン酸からなる群から選択される酸を加える段階を有する請求項31に記載の方法。
【請求項42】
段階(g)がさらに、ピリジン、トリアルキルアミン、環状3級アミン、金属炭酸水素塩、金属炭酸塩、金属リン酸塩、金属リン酸水素塩および金属水酸化物からなる群から選択される塩基を加える段階を有する請求項31に記載の方法。
【請求項43】
がアミン保護基であり、RがCOOH、C(O)NHもしくはCNである式(XLII)の化合物。
【化54】

【請求項44】
がtert−ブトキシカルボニルである請求項43に記載の化合物。
【請求項45】
式(XXXI)の化合物(RおよびRはC1−6アルキルであり、Pはアミン保護基である。)の鹸化によって製造される、Pがアミン保護基である式(XXXII)の化合物。
【化55】

【請求項46】
がtert−ブトキシカルボニルである請求項45に記載の化合物。
【請求項47】
カップリング試薬および塩基の存在下に式(XXXII)の化合物をアンモニアと加熱することで製造される、Pがアミン保護基である式(XXXIII)の化合物。
【化56】

【請求項48】
がtert−ブトキシカルボニルである請求項47に記載の化合物。
【請求項49】
式(XXXIII)の化合物を脱水剤で処理することによって式(XXXIV)の化合物を得ることで製造される、Pがアミン保護基である式(XXXIV)の化合物。
【化57】

【請求項50】
がtert−ブトキシカルボニルである請求項49に記載の化合物。
【請求項51】
下記化合物:
【化58】

または該化合物の塩。
【請求項52】
式(XXXVI)の化合物:
【化59】

(Rは酸保護基であり、RはC1−6アルキルである。)の製造方法において、
(a)式(XXX)の化合物(Pはアミン保護基であり、Rは酸保護基であり、RはC1−6アルキルである。)の不斉還元によって、式(XXXVII)の化合物を得る段階;
【化60】

(b)式(XXXVII)の化合物を活性化して、単離を行わずに式(XXXVIII)の化合物(Rはトリハロアセチル、メタンスルホニル、ベンゼンスルホニルもしくはp−トルエンスルホニルである。)を得る段階;
【化61】

(c)式(XXXVIII)の化合物を脱保護および環化して、式(XXXVI)の化合物もしくはこれの塩を得る段階
【化62】

を有する方法。
【請求項53】
段階(a)における前記不斉還元が不斉水素化である請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記水素源としての2級C1−6アルコールおよび前記触媒としての[(1S,2S)−N−(p−トルエンスルホニル)−1,2−ジフェニルエタンジアミン](p−シメン)ルテニウム(I)を加える段階を有する請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記2級C1−6アルコールがイソプロパノールである請求項54に記載の方法。
【請求項56】
段階(b)が、無水トリハロ酢酸および式RXの試薬(XはCl、BrもしくはIであり、Rはトリハロアセチル、メタンスルホニル、ベンゼンスルホニルもしくはp−トルエンスルホニルである。)からなる群から選択される活性化剤、ならびに金属炭酸塩、金属炭酸水素塩、金属リン酸塩、トリ(C1−6アルキル)アミン、3級環状アミンおよびピリジンからなる群から選択される塩基を加える段階を有する請求項52に記載の方法。
【請求項57】
段階(b)および(c)を、式(XXXVIII)の化合物を単離せずに、容器中で順次行う請求項52に記載の方法。
【請求項58】
がC1−6アルキルであり、Pがアルキルオキシカルボニルである請求項52に記載の方法。
【請求項59】
がメチル、エチル、イソプロピルもしくはtert−ブチルであり、Pがtert−ブトキシカルボニルである請求項52に記載の方法。
【請求項60】
段階(c)が酸を添加する段階を含む請求項52に記載の方法。
【請求項61】
段階(c)がさらに、酸での処理後に塩基を加える段階を有する請求項52に記載の方法。
【請求項62】
請求項52の方法に従って製造される、式(XXXVI)の化合物
【化63】

(式中、Rは酸保護基であり、RはC1−6アルキルである。)。
【請求項63】
およびRが独立にC1−6アルキルである請求項62に記載の化合物。
【請求項64】
がメチル、エチル、イソプロピルもしくはtert−ブチルであり、Rがメチル、エチルもしくはイソプロピルである請求項62に記載の化合物。
【請求項65】
式(XVIII)の化合物:
【化64】

(XはClまたはBrである。)の製造方法において、
(a)式(XXXVI)の化合物もしくはこれの塩(Rは酸保護基であり、RはC1−6アルキルである。)を鹸化して、式(XXXIX)の化合物を得る段階;
【化65】

(b)式(XXXIX)の化合物もしくはこれの塩を式XCHCOY(XおよびYは独立にClもしくはBrである。)を有する試薬で処理して、式(XL)の化合物を得る段階;
【化66】

(c)式(XL)の化合物を、カップリング試薬および塩基の存在下にアンモニアで処理して、単離することなく式(XLI)の化合物を得る段階;
【化67】

ならびに
(d)式(XLI)の化合物を脱水して、式(XVIII)の化合物を得る段階
【化68】

を有する方法。
【請求項66】
段階(a)が、金属水酸化物および金属炭酸塩からなる群から選択される塩基を加える段階を有する請求項65に記載の方法。
【請求項67】
段階(b)がさらにピリジン、トリアルキルアミン、環状3級アミン、金属炭酸水素塩、金属炭酸塩、金属リン酸塩、金属リン酸水素塩および金属水酸化物からなる群から選択される塩基を加える段階を有する請求項65に記載の方法。
【請求項68】
段階(c)での前記カップリング試薬が、クロルギ酸化合物、EDCI/HOBT、塩化チオニルおよびオキサリルクロライドからなる群から選択される請求項65に記載の方法。
【請求項69】
段階(c)での前記塩基が、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、ピリジン、トリ(C1−6アルキル)アミンおよび環状3級アミンからなる群から選択される請求項65に記載の方法。
【請求項70】
段階(d)での前記脱水剤がDMFおよび塩化チオニルの混合物である請求項65に記載の方法。

【公表番号】特表2009−544621(P2009−544621A)
【公表日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−520991(P2009−520991)
【出願日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際出願番号】PCT/US2007/073850
【国際公開番号】WO2008/011499
【国際公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【出願人】(391008788)アボット・ラボラトリーズ (650)
【氏名又は名称原語表記】ABBOTT LABORATORIES
【Fターム(参考)】