説明

(S)−1−(3,5−ビス(トリフルオロメチル)−フェニル)エタン−1−オールの合成方法

本発明は、(S)−1−(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)エタン−1−オール(CAS♯30071−93−3)の新規の調製方法に関する。この化合物は、薬理活性を有する化合物の合成における中間体として有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一定の治療薬の製造における中間体として有用な、(S)−1−(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)エタン−1−オール(CAS♯30071−93−3)の調製方法に関する。特に、本発明は、医薬化合物の合成における中間体である(S)−1−(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)エタン−1−オールの調製方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
(S)−1−(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)エタン−1−オールの調製のための当分野で開示されている一般的な方法は、所望の生成物の比較的低く一定しない収率という結果をもたらす。このような方法のいくつかは、高価な遷移金属触媒の使用に依存している。従来の公知の方法とは対照的に、本発明は、比較的高収率および高い鏡像異性体純度で、(S)−1−(3,5−ビス(トリフルオロメチル)−フェニル)エタン−1−オールを調製するための効果的な方法論を提供する。
【0003】
(S)−1−(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)エタン−1−オールが治療薬の特に有用な種類のための重要な中間体であることを理解されたい。このように、そのスケールアップしやすく、遷移金属触媒の使用をせず、コスト効率がよくおよび容易に入手できる試薬を用い、従って大規模の製造に実際に適用することができる(S)−1−(3,5−ビス(トリフルオロ−メチル)フェニル)エタン−1−オールの調製方法の開発が必要である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、本発明は、非常に簡単で短時間で高効率の合成による(S)−1−(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)エタン−1−オールの調製方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(発明の概要)
本発明の新規の方法は、(S)−1−(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)エタン−1−オールの合成を含む。特に、本発明は、式:
【0006】
【化5】

の化合物の新規の調製方法に関する。
【0007】
この化合物は、薬理学的活性を有する化合物の合成における中間体である。特に、このような化合物は、例えば炎症性疾患、精神障害、および嘔吐の治療に有用なサブスタンスP(ニューロキニン−1)受容体拮抗薬である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
(発明の詳細な記載)
本発明は、式:
【0009】
【化6】

の(S)−1−(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)エタン−1−オールの調製方法を目的とする。
【0010】
(S)−1−(3,5−ビス(トリフルオロメチル)−フェニル)エタン−1−オールの調製のための一般的な方法は、以下の通りである。
【0011】
【化7】

【0012】
本発明のこの実施形態に従って、1−(3,5−ビス(トリフルオロメチル)−フェニル)エタン−1−オンをニコチンアデニンジヌクレオチド(NAD)またはニコチンアデニンジヌクレオチドリン酸(NADP)および補助因子リサイクリングシステムの存在下でアルコール脱水素酵素で処理することは、(S)−1−(3,5−ビス(トリフルオロメチル)−フェニル)エタン−1−オールを、当分野で開示されている方法よりもより高収率で、より高い鏡像異性体純度で、およびより効率的な経路において提供する。
【0013】
(S)−1−(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)エタン−1−オールの調製のための一般的な方法の1つの実施形態は以下の通りである。
【0014】
【化8】

【0015】
本発明のこの実施形態に従って、1−(3,5−ビス(トリフルオロメチル)−フェニル)エタン−1−オンをニコチンアデニンジヌクレオチド(NAD)、ならびにギ酸源およびギ酸脱水素酵素またはグルコース源およびグルコース脱水素酵素を含む補助因子リサイクリングシステムの存在下でアルコール脱水素酵素で処理することは、(S)−1−(3,5−ビス(トリフルオロメチル)−フェニル)エタン−1−オールを、当分野で開示されている方法よりもより高収率で、より高い鏡像異性体純度で、およびより効率的な経路で提供する。
【0016】
1つの実施形態において、本発明は、(S)−1−(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)エタン−1−オールの調製方法を目的とし、この方法は、1−(3,5−ビス(トリフルオロメチル)−フェニル)エタン−1−オンを、NADならびにギ酸源およびギ酸脱水素酵素の存在下においてアルコール脱水素酵素で処理して、(S)−1−(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)エタン−1−オールを生成することを含む。
【0017】
もう1つの実施形態において、本発明は、(S)−1−(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)エタン−1−オールの調製方法を目的とし、この方法は、1−(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)エタン−1−オンを、NADならびにグルコース源およびグルコース脱水素酵素の存在下においてアルコール脱水素酵素で処理して、(S)−1−(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)エタン−1−オールを生成することを含む。
【0018】
本発明の1つの特定の実施形態は、式:
【0019】
【化9】

の(S)−1−(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)エタン−1−オールの調製方法に関し、この方法は、式:
【0020】
【化10】

の1−(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)エタン−1−オンをニコチンアデニンジヌクレオチドおよび補助因子リサイクリングシステムの存在下においてアルコール脱水素酵素で処理し、式:
【0021】
【化11】

の(S)−1−(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)エタン−1−オールを生成することを含む。
【0022】
本発明のもう1つの実施形態は、式:
【0023】
【化12】

の(R)−1−(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)エタン−1−オールの調製方法に関し、この方法は式:
【0024】
【化13】

の1−(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)エタン−1−オンをニコチンアデニンジヌクレオチドおよび補助因子リサイクリングシステムの存在下でアルコール脱水素酵素で処理し、式:
【0025】
【化14】

の(R)−1−(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)エタン−1−オールを生成することを含む。
【0026】
本発明において、前記補助因子リサイクリングシステムは、ギ酸源およびギ酸脱水素酵素、またはグルコース源およびグルコース脱水素酵素を含むシステムを含む。
【0027】
本発明において、前記アルコール脱水素酵素は、ロドコッカス・エリスロポリス(Rhodococcus erythropolis)由来のアルコール脱水素酵素、カンジダ・パラプシローシス(Candida parapsilosis)由来のアルコール脱水素酵素、およびカンジダ・ボイジニー(Candida boidinii)由来のアルコール脱水素酵素から選択されたものを含む。本発明において、前記アルコール脱水素酵素は、約3から7KU/L(キロユニット/リットル)の濃度で存在することができる。本発明において、前記アルコール脱水素酵素は、約3KU/Lの濃度で存在することができる。キロユニット(KU)は、酵素活性を測定するための標準単位である。これらの酵素活性の標準単位は当業者に十分理解される。
【0028】
本発明において、前記ギ酸源は、ギ酸ナトリウムおよびギ酸から選択されるものを含む。本発明において、前記ギ酸源は、約500mMの濃度で存在することができる。
【0029】
本発明において、前記ギ酸脱水素酵素は、ギ酸脱水素酵素から選択されるものを含む。本発明において、前記ギ酸脱水素酵素は、約2.9から3.8KU/L(キロユニット/リットル)(または0.7から1g/L)の濃度で存在することができる。本発明において、前記ギ酸脱水素酵素は、約2.9KU/L(または0.7g/L)の濃度で存在することができる。
【0030】
本発明において、前記ニコチンアデニンジヌクレオチド(NAD)は、約0.7から1g/Lの濃度で存在することができる。本発明において、前記ニコチンアデニンジヌクレオチドは、約1g/Lの濃度で存在することができる。
【0031】
本発明において、前記グルコース源は、グルコースから選択されるものを含む。本発明において、前記グルコース源は、約450から600mMの濃度で存在することができる。
【0032】
本発明において、前記グルコース脱水素酵素は、グルコース脱水素酵素103(Biocatalytics社製)から選択されるものを含む。本発明において、前記グルコース脱水素酵素は、約2.1から4.2KU/L(キロユニット/リットル)(または0.035から0.7g/L)の濃度で存在することができる。
【0033】
本発明において、前記反応混合物は、例えばリン酸緩衝液などの水性緩衝液を含むことができる。本発明において、前記反応混合物はさらに、例えばヘプタン、ヘキサンまたはペンタンなどの有機溶媒を含むことができる。本発明の1つの実施形態において、前記反応混合物は、ヘプタンである有機溶媒をさらに含むことができる。本発明の1つの実施形態において、前記有機溶媒は0から5%v/vの濃度で存在することができる。
【0034】
本発明の1つの実施形態において、前記反応混合物のpHは、pH6から8の間で維持される。本発明の1つの実施形態において、前記反応混合物のpHは、pH6.5から7.5の間で維持される。本発明の1つの実施形態において、前記反応混合物のpHは、酸または塩基の添加などにより、pH6.8から7.3の間で維持される。
【0035】
本発明の1つの実施形態において、前記反応混合物の温度は、約26から33℃で維持される。本発明の1つのさらなる実施形態において、前記反応混合物の温度は、約30℃で維持される。
【0036】
便宜上、前記アルコール脱水素酵素、NAD、ならびにギ酸源およびギ酸脱水素酵素は、(S)−1−(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)エタン−1−オールとの反応の前に、インサイチュで共に接触させられ得る。同様に便宜上、前記アルコール脱水素酵素、NAD、ならびにグルコース源およびグルコース脱水素酵素は、(S)−1−(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)エタン−1−オールとの反応の前に、インサイチュで一緒に接触させられ得る。
【0037】
本発明により得られる(S)−1−(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)エタン−1−オールは、さらなる反応における出発物質として直接または精製した後に用いることができる。
【0038】
1つのさらなる実施形態において、本発明は、(S)−1−(3,5−ビス(トリフルオロメチル)−フェニル)エタン−1−オールの精製のための、または鏡像異性体純度を高めるための方法に関し、この方法は、反応混合物を、ヘプタンを含む溶媒で抽出すること、前記溶媒を濃縮すること、および(S)−1−(3,5−ビス(トリフルオロメチル)−フェニル)エタン−1−オールを結晶化することを含む。
【0039】
このさらなる実施形態の1つの態様において、ヘプタンを含む溶媒を用いる反応混合物の抽出は、約50から55℃の温度で実施される。
【0040】
このさらなる実施形態の別の態様において、ヘプタンを含み、さらにメタノール、エタノールまたは酢酸エチルを含む溶媒で、反応混合物は、抽出される。
【0041】
この別の態様内において、前記反応混合物は、ヘプタンおよびメタノールを含む溶媒で抽出される。例えば、メタノールは約10%(v/v)の濃度で存在してよい。
【0042】
この別の態様内において、前記反応混合物は、ヘプタンおよびエタノールを含む溶媒で抽出される。例えば、エタノールは、約5から10%(v/v)の濃度で存在してよい。
【0043】
この別の態様内において、前記反応混合物は、ヘプタンおよび酢酸エチルを含む溶媒で抽出される。例えば、酢酸エチルは、約5から10%(v/v)の濃度で存在してよい。
【0044】
このさらなる実施形態の1つの態様において、前記溶媒の濃縮は、真空蒸留により約40から45℃の温度で実施される。
【0045】
このさらなる実施形態の1つの態様において、(S)−1−(3,5−ビス(トリ−フルオロメチル)フェニル)エタン−1−オールの結晶化は、約45℃から約−10℃の間の温度で実施される。この別の態様内において、(S)−1−(3,5−ビス(トリ−フルオロメチル)フェニル)エタン−1−オールの種結晶が、濃縮した溶媒に加えられる。さらにこの別の態様内において、(S)−1−(3,5−ビス(トリ−フルオロメチル)フェニル)エタン−1−オールの種結晶は、0.5から1%種結晶グラム/基質グラムの濃度で存在する。
【0046】
この別の実施形態を反復して繰り返して、それぞれの続くサイクルで(S)−1−(3,5−ビス(トリフルオロメチル)−フェニル)エタン−1−オールの鏡像異性体純度をさらに高めることができることは、当業者により理解されるであろう。
【0047】
本発明のもう1つの態様は、90%より高い、95%より高い、98%より高い、99%より高い、99.5%(鏡像体過剰率)より高いまたは99.9%(鏡像体過剰率)より高い鏡像異性体純度(鏡像体過剰率)で存在する(S)−1−(3,5−ビス(トリフルオロ−メチル)フェニル)エタン−1−オールを目的とする。
【0048】
主題の方法のための出発材料および試薬は、市販で入手可能であるかまたは文献中で既知であるかまたは類似化合物について記載されている文献の方法に従って調製され得る(例えば、米国特許第6,255,545号、6,350,915号および6,814,895号を参照されたい)。3,5−ビス(トリフルオロメチル)ブロモベンゼン(CAS328−70−1)および1−(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)エタン−1−オン(CAS30071−93−3)は市販で入手可能である。前記反応を実施し、得られた反応生成物を精製する際に必要な技術は当業者に公知である。精製手順は、結晶化、蒸留、順相または逆相クロマトグラフィーを含む。
【0049】
以下の実施例は、さらなる説明のみを目的として提供されるものであり、開示される本発明を限定することを意図するものではない。
【実施例1】
【0050】
(S)−1−(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)エタン−1−オール
【0051】
【化15】

【0052】
酵素反応にはpH7.0の50mMのリン酸緩衝液を用いた。ギ酸ナトリウム(500mM)およびNAD(1g/L)をその緩衝液中に溶解し、次いで酵素(REアルコール脱水素酵素(3KU/L)およびギ酸脱水素酵素(0.7g/Lまたは2.88KU/L))を加えた。1−(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)エタン−1−オン(CAS30071−93−3)を単一溶液(100g/L)として反応物に加えた。2N硫酸を用いて、pHをpH7.0に調整した。反応を、30℃で28から40時間行った。通常40時間の反応で、鏡像体過剰率>99%で変換率>95%が得られた。
【0053】
生成物を、50℃で1/2容量のヘプタンによる2回の抽出により単離し、次いで1/4容量の水で洗浄し、蒸留により真空濃縮(40℃における2から3倍の体積濃縮)した。結晶化のために、その溶液を、45℃から35℃に冷却した(ヘプタン中アルコール濃度200g/L)。1%g/基質gでの(S)−1−(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)エタン−1−オールによる種結晶添加を35℃で完了し、次いで1時間熟成させ、−10℃に冷却した。結晶化の手順は、例えば残留ケトンなどの不純物を除去する。最終物質純度>99%を、鏡像体過剰率>99%で得た。
【実施例2】
【0054】
(S)−1−(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)エタン−1−オール(別法)
酵素反応には、pH7.0の50mMリン酸緩衝液を用いた。ギ酸ナトリウム(500mM)およびNAD(0.7から1g/L)をその緩衝液中に溶解し、次いで酵素(REアルコール脱水素酵素(3から7KU/L)、ギ酸脱水素酵素(0.7から1g/Lまたは2.9から3.74KU/L)およびヘプタン(0から5v/v%)を加えた。1−(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)エタン−1−オンを、単一溶液(10から110g/L)として反応物に加えた。pHを2N硫酸を用いてpH6.8から7.3の間に調整した。反応を、26から33℃で28から40時間行った。40時間の反応で、変換率>95%を、鏡像体過剰率>99%で得た。
【0055】
生成物を、50から55℃で1/2から1容量のヘプタンによる2回の抽出により単離し、次いで1/4から1容量の水で洗浄し、蒸留(40から55℃で)による真空濃縮で2から3倍の濃縮を行った。結晶化のために、その溶液を、45℃から35℃に冷却した(ヘプタン中アルコール濃度80g/Lから200g/L)。0.5から1%g/基質グラムでの(S)−1−(3,5−ビス(トリフルオロ−メチル)フェニル)エタン−1−オールの種結晶添加を35℃で完了し、次いで1時間熟成させ、−10℃に冷却した。結晶化の手順は、例えば残留ケトンなどの不純物を除去する(40%ケトン除去まで)。生成物を室温で十分減圧して乾燥させた。最終物質純度>99%を、鏡像体過剰率(EE)>99%で得た。
【0056】
1つの別の実施形態において、この方法を、ロドコッカス・エリスロポリス由来のアルコール脱水素酵素(ADH)をカンジダ・パラプシロシス由来のADHまたはカンジダ・ボイジニー由来のADHに置き換えることにより行うことができる。
【実施例3】
【0057】
【化16】

【0058】
(S)−1−(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)エタン−1−オール(別法)
酵素反応には、pH7.0の50mMリン酸緩衝液を用いる。グルコース(450から600mM)およびNAD(0.7から1g/L)をその緩衝液に溶解し、次いで酵素(REアルコール脱水素酵素(3から7KU/L)、グルコース脱水素酵素103(Biocatalytics社製)(0.035から0.7g/Lまたは2.1から4.2KU/L)およびヘプタン(0から5v/v%))を加えた。1−(3,5−ビス(トリフルオロメチル)−フェニル)エタン−1−オンを単一溶液(10から110g/L)として反応物に加えた。pHを2N硫酸を用いてpH6.8から7.3の間に調整した。反応を、26から33℃で20から30時間行った。20時間の反応で変換率>95%を、鏡像体過剰率>99%で得た。
【0059】
生成物を、25℃でエタノール15%またはメタノール10%または5から10%酢酸エチルを有する1/2容量のヘプタンによる3回の抽出により単離し、次いで1/4から1容量の水で洗浄し、蒸留(40から55℃で)による2から3倍の濃縮で真空濃縮を行った。結晶化のために、その溶液を、45℃から35℃に冷却した(ヘプタン中アルコール濃度80g/Lから200g/L)。0.5から1%g/基質グラムでの(S)−1−(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)−エタン−1−オールの種結晶添加を35℃で完了し、次いで1時間熟成させ、−10℃に冷却した。結晶化の手順は、例えば残留ケトンなどの不純物を除去する(20%ケトン除去まで)。生成物を室温、および完全真空で乾燥させた。鏡像体過剰率(EE)>99%で最終物質純度>99%が得られた。
【実施例4】
【0060】
【化17】

【0061】
(R)−1−(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)エタン−1−オール
(R)−1−(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)エタン−1−オールへの反応経路を上に示す。必要なNADPH補助因子のリサイクリングを、グルコース脱水素酵素をグルコースと共に用いて完成する。酵素反応には200mMのリン酸緩衝液(pH7)を500mMグルコースおよびNADP1から2g/Lと一緒に用いる。酸化還元酵素は、Biocatalytics Inc製のKRED101(10から20kU/L)である。グルコース脱水素酵素を用いてこの補助因子をリサイクルする。ケトンを溶液として反応物に加え、pHを2N硫酸によりpH7に調整する。反応時間は、30℃で約30から40時間であり、鏡像体過剰率は99%より高い。(R)−1−(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)エタン−1−オールを、上記の(S)アルコールの反応経路に対して記載したいずれかの方法で単離する。
【0062】
本発明をそのいくつかの特定の実施形態を参照しながら説明および例示してきたが、当業者は、方法および手順の種々の適応、変更、改変、代替、削除、または追加が、本発明の精神および範囲から逸脱することなしに可能であることを十分理解するであろう。例えば、本明細書中で上記のような特定の条件以外の反応条件は、試薬または方法論における多様性の結果として、上記の本発明の方法から化合物類を調製するために適用することができる。同様に、出発物質の特異的な反応性は、存在する特定の置換基または製造条件に従っておよび依存して変動してもよく、および結果におけるそのような予期される多様性または相違は、本発明の目的および実施に従って意図される。従って、本発明が上記の特許請求の範囲により規定され、およびそのような特許請求の範囲が合理的な範囲でできるだけ広く解釈されることを意図する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式:
【化1】

の化合物の調製方法であり、式:
【化2】

の1−(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)エタン−1−オンをニコチンアデニンジヌクレオチドおよび補助因子リサイクリングシステムの存在下でアルコール脱水素酵素で処理し、式:
【化3】

の化合物を生成することを含む、前記方法。
【請求項2】
アルコール脱水素酵素が、ロドコッカス・エリスロポリス(Rhodococcus erythropolis)由来のアルコール脱水素酵素、カンジダ・パラプシローシス(Candida parapsilosis)由来のアルコール脱水素酵素、およびカンジダ・ボイジニー(Candida boidinii)由来のアルコール脱水素酵素から選択される、請求項1の方法。
【請求項3】
アルコール脱水素酵素が、ロドコッカス・エリスロポリス由来のアルコール脱水素酵素である、請求項2の方法。
【請求項4】
アルコール脱水素酵素が、約3から7KU/Lの濃度で存在する、請求項1の方法。
【請求項5】
補助因子リサイクリングシステムが、ギ酸源およびギ酸脱水素酵素、またはグルコース源およびグルコース脱水素酵素を含む、請求項1の方法。
【請求項6】
補助因子リサイクリングシステムが、さらにニコチンアデニンジヌクレオチドを含む、請求項5の方法。
【請求項7】
ニコチンアデニンジヌクレオチドが、約0.7から1g/Lの濃度で存在する、請求項6の方法。
【請求項8】
補助因子リサイクリングシステムが、ギ酸源およびギ酸脱水素酵素を含む、請求項5の方法。
【請求項9】
ギ酸源が、ギ酸ナトリウムおよびギ酸から選択される、請求項8の方法。
【請求項10】
ギ酸源が、ギ酸ナトリウムである、請求項9の方法。
【請求項11】
ギ酸源が、約500mMの濃度で存在する、請求項8の方法。
【請求項12】
ギ酸脱水素酵素が、約2.9から3.8KU/Lの濃度で存在する、請求項8の方法。
【請求項13】
ギ酸脱水素酵素が、約2.9KU/Lの濃度で存在する、請求項12の方法。
【請求項14】
補助因子リサイクリングシステムが、グルコース源およびグルコース脱水素酵素から選択される、請求項5の方法。
【請求項15】
グルコース源が、グルコースである、請求項14の方法。
【請求項16】
グルコース源が、約450から600mMの濃度で存在する、請求項14の方法。
【請求項17】
グルコース脱水素酵素が、グルコース脱水素酵素である、請求項14の方法。
【請求項18】
グルコース脱水素酵素が、約2.1から4.2KU/Lの濃度で存在する、請求項14の方法。
【請求項19】
反応混合物が、リン酸緩衝液を含む、請求項1の方法。
【請求項20】
反応混合物が、ヘプタンである有機溶媒をさらに含む、請求項1の方法。
【請求項21】
反応混合物を、ヘプタンを含む溶媒で抽出すること、前記溶媒を濃縮すること、および式:
【化4】

の化合物を結晶化すること、をさらに含む、請求項1の方法。
【請求項22】
反応混合物を、ヘプタンを含む溶媒で約50から55℃の温度で抽出することを含む、請求項21の方法。
【請求項23】
反応混合物を、ヘプタンを含み、およびさらにメタノール、エタノールまたは酢酸エチルを含む溶媒で抽出することを含む、請求項21の方法。
【請求項24】
溶媒を濃縮する段階が、真空蒸留により約40から45℃の温度で実施される、請求項21の方法。
【請求項25】
化合物を結晶化する段階が、約45℃と約−10℃との間の温度で実施される、請求項21の方法。

【公表番号】特表2008−523808(P2008−523808A)
【公表日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−546838(P2007−546838)
【出願日】平成17年12月12日(2005.12.12)
【国際出願番号】PCT/US2005/045125
【国際公開番号】WO2006/065840
【国際公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【出願人】(390023526)メルク エンド カムパニー インコーポレーテッド (924)
【氏名又は名称原語表記】MERCK & COMPANY INCOPORATED
【Fターム(参考)】