説明

(S)−3−アミノメチル−7−(3−ヒドロキシ−プロポキシ)−3H−ベンゾ[C][1,2]オキサボロール−1−オールの多形体

本発明は、特に、(S)−3−アミノメチル−7−(3−ヒドロキシ−プロポキシ)−3H−ベンゾ[c][1,2]オキサボロール−1−オールの塩酸塩の多形体を提供する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
物質が2種類以上の結晶形態で存在する能力は多形と定義され、これらの異なる結晶形態は「多形修飾体」または「多形体」と名付けられる。一般に、多形は、物質の分子がその構造を変更する能力、または異なる分子間もしくは分子内相互作用、具体的には、異なる多形体の結晶格子の中の異なる原子配列に反映する水素結合を形成する能力によって引き起こされる。
【0002】
物質の異なる多形体は異なるエネルギーの結晶格子を有し、それゆえに、形態、密度、融点、色、安定性、溶解速度、製粉施設、顆粒化、成形化などの固体状態の異なる物理的特性を示し、薬剤において、医薬品形態の製剤、安定性、溶解および生物学的利用能、ならびに、その結果として、医薬品形態の作用に影響を与え得る。
【0003】
薬剤の多形は、異なる学問分野にまたがる専門家チームの研究の目的である(J. Haleblian, W. McCrone, J. Pharm. Sci. 58 (1969) 911; L. Borka, Pharm. Acta Helv. 66 (1991) 16; M. Kuhnert-Brandstatter, Pharmazie 51 (1996) 443; H. G. Brittain, J. Pharm. Sci. 86 (1997) 405; W. H. Streng, DDT 2 (1997) 415; K. Yoshii, Chem. Pharm. Bull. 45 (1997) 338など)。多形をよく知るためには、薬剤開発の全工程を十分観察することが前提条件となる。したがって、固体状態の医薬品形態の生成を決定する際、ならびに投与量、安定性、溶解および予想される作用に関して、全ての固体状態の形態の存在を見つけ出すことが重要であり(市販のいくつかのコンピュータープログラムが見つけられ得る、例えば「シリウス(Cerius)2」プログラム(MSI Inc., USA)のモジュールとしての「多形体」)、ならびにそれらの各々の物理的−化学的特性を決定することが重要である。唯一これらの決定に基づいて、所望の特性を有する医薬品製剤の開発に対して、最も適切な多形体を選択することができる。
【0004】
化合物(S)−3−アミノメチル−7−(3−ヒドロキシ−プロポキシ)−3H−ベンゾ[c][1,2]オキサボロール−1−オールは、その塩酸塩の形態で、米国特許出願第12/142,692号に開示され、以下の化学構造を有する:
【化1】

【0005】
(S)−3−アミノメチル−7−(3−ヒドロキシ−プロポキシ)−3H−ベンゾ[c][1,2]オキサボロール−1−オールは、特に、グラム陰性病原菌に対する抗菌剤としての見込みを示した。この化合物の固形形態への変更は、その物理的および/または化学的安定性を改善することができ、同じ化合物のより不安定な形態を越える重要な利点をもたらす。本発明は、1つ以上のそれらの利点を有利にもたらし、さらに関連する利点をもたらす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願第12/142,692号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】J. Haleblian, W. McCrone, J. Pharm. Sci. 58 (1969) 911
【非特許文献2】L. Borka, Pharm. Acta Helv. 66 (1991) 16
【非特許文献3】M. Kuhnert-Brandstatter, Pharmazie 51 (1996) 443
【非特許文献4】H. G. Brittain, J. Pharm. Sci. 86 (1997) 405
【非特許文献5】W. H. Streng, DDT 2 (1997) 415
【非特許文献6】K. Yoshii, Chem. Pharm. Bull. 45 (1997) 338
【発明の概要】
【0008】
本発明は、特に、(S)−3−アミノメチル−7−(3−ヒドロキシ−プロポキシ)−3H−ベンゾ[c][1,2]オキサボロール−1−オールの塩酸塩の結晶多形体を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1A】多形形態HCl1と称される(S)−3−アミノメチル−7−(3−ヒドロキシ−プロポキシ)−3H−ベンゾ[c][1,2]オキサボロール−1−オールの塩酸塩の粉末X線回折(XRPD)パターンである。
【図1B】図1AのXRPDパターンにおけるピークの2θ値を記載した表である。
【図2A】多形形態HCl2と称される(S)−3−アミノメチル−7−(3−ヒドロキシ−プロポキシ)−3H−ベンゾ[c][1,2]オキサボロール−1−オールの塩酸塩の粉末X線回折(XRPD)パターンである。多形形態HCl2は、ラマン分光法および熱分析を含む追加の分析により、2種類の多形体HCl3およびHCl4の混合物であることが示された。
【図2B】図2AのXRPDパターンにおけるピークの2θ値を記載した表である。
【図3A】多形形態HCl3と称される(S)−3−アミノメチル−7−(3−ヒドロキシ−プロポキシ)−3H−ベンゾ[c][1,2]オキサボロール−1−オールの塩酸塩の粉末X線回折(XRPD)パターンである。
【図3B】図3AのXRPDパターンにおけるピークの2θ値を記載した表である。
【図4A】多形形態HCl4と称される(S)−3−アミノメチル−7−(3−ヒドロキシ−プロポキシ)−3H−ベンゾ[c][1,2]オキサボロール−1−オールの塩酸塩の粉末X線回折(XRPD)パターンである。
【図4B】図4AのXRPDパターンにおけるピークの2θ値を記載した表である。
【図5】(S)−3−アミノメチル−7−(3−ヒドロキシ−プロポキシ)−3H−ベンゾ[c][1,2]オキサボロール−1−オールの遊離塩基形態の、多形形態HCl1およびHCl4との比較を示す図である。
【図6】多形形態HCl4と称される(S)−3−アミノメチル−7−(3−ヒドロキシ−プロポキシ)−3H−ベンゾ[c][1,2]オキサボロール−1−オールの塩酸塩のラマン分光分析のスペクトルである。
【図7】実施例2の方法Aに従って調製した多形形態HCl4の試料を用いて得られた、多形形態HCl4と称される(S)−3−アミノメチル−7−(3−ヒドロキシ−プロポキシ)−3H−ベンゾ[c][1,2]オキサボロール−1−オールの塩酸塩の別の粉末X線回折(XRPD)パターンである。
【図8A】実施例2の方法Bに従って調製した多形形態HCl4の試料を用いて得られた、多形形態HCl4と称される(S)−3−アミノメチル−7−(3−ヒドロキシ−プロポキシ)−3H−ベンゾ[c][1,2]オキサボロール−1−オールの塩酸塩の別の粉末X線回折(XRPD)パターンである。
【図8B】図8AのXRPDパターンにおけるピークの2θ値およびd−間隔値を記載した表である。
【図9】多形形態HCl4と称される(S)−3−アミノメチル−7−(3−ヒドロキシ−プロポキシ)−3H−ベンゾ[c][1,2]オキサボロール−1−オールの塩酸塩の示差走査熱量測定(DCS)のサーモグラムである。
【図10】多形形態HCl4と称される(S)−3−アミノメチル−7−(3−ヒドロキシ−プロポキシ)−3H−ベンゾ[c][1,2]オキサボロール−1−オールの塩酸塩の熱重量分析器(TGA)のサーモグラムである。
【図11】多形形態HCl3と称される(S)−3−アミノメチル−7−(3−ヒドロキシ−プロポキシ)−3H−ベンゾ[c][1,2]オキサボロール−1−オールの塩酸塩のラマン分光分析のスペクトルである。
【図12A】多形形態HCl3と称される(S)−3−アミノメチル−7−(3−ヒドロキシ−プロポキシ)−3H−ベンゾ[c][1,2]オキサボロール−1−オールの塩酸塩の第二の粉末X線回折(XRPD)パターンである。
【図12B】図12AのXRPDパターンにおけるピークの2θ値およびd−間隔値を記載した表である。
【図13】多形形態HCl3と称される(S)−3−アミノメチル−7−(3−ヒドロキシ−プロポキシ)−3H−ベンゾ[c][1,2]オキサボロール−1−オールの塩酸塩の示差走査熱量測定(DCS)のサーモグラムである。
【図14】多形形態HCl3と称される(S)−3−アミノメチル−7−(3−ヒドロキシ−プロポキシ)−3H−ベンゾ[c][1,2]オキサボロール−1−オールの塩酸塩の熱重量分析器(TGA)のサーモグラムである。
【図15】多形形態HCl2と称される(S)−3−アミノメチル−7−(3−ヒドロキシ−プロポキシ)−3H−ベンゾ[c][1,2]オキサボロール−1−オールの塩酸塩のラマン分光分析のスペクトルである。
【図16A】多形形態HCl2と称される(S)−3−アミノメチル−7−(3−ヒドロキシ−プロポキシ)−3H−ベンゾ[c][1,2]オキサボロール−1−オールの塩酸塩の第二の粉末X線回折(XRPD)パターンである。
【図16B】図16AのXRPDパターンにおけるピークの2θ値およびd−間隔値を記載した表である。
【図17】多形形態HCl2と称される(S)−3−アミノメチル−7−(3−ヒドロキシ−プロポキシ)−3H−ベンゾ[c][1,2]オキサボロール−1−オールの塩酸塩のDSCのサーモグラムである。
【図18】多形形態HCl5と称される(S)−3−アミノメチル−7−(3−ヒドロキシ−プロポキシ)−3H−ベンゾ[c][1,2]オキサボロール−1−オールの塩酸塩の新規の多形体のフーリエ変換赤外(FT−IR)分光分析のスペクトルである。
【0010】
である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
I.定義および略語
本明細書で使用される略語は、一般に、化学分野および生物分野内のそれらの従来の意味を有する。
【0012】
以下の略語を使用した:aq.−水性;equiv−当量;Rt−常温;mp−融点;Bpin−ビス(ピナコラト)ジボロン(bis(pinacolato)diboron);O/N−一晩;sat.−飽和;dppf−1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン(1,1’−Bis(diphenylphosphino)ferrocene);USP−米国薬局方;MTBE−メチルtert−ブチルエーテル。
【0013】
本明細書で使用される「本発明の多形体」とは、本明細書で議論される多形体ならびにこれらの多形体の結晶性溶媒和物および結晶性水和物を表す。
【0014】
本発明の化合物は、かかる化合物を構成する1つ以上の原子における不自然な割合の原子同位体も含んでもよい。例えば、これらの化合物は、例えば、トリチウム(H)、ヨウ素−125(125I)または炭素−14(14C)などの放射性同位体で放射標識されてもよい。本発明の化合物の全ての同位体変化は、放射性であろうとなかろうと、本発明の範囲の中に包含されると意図される。
【0015】
「医薬的に許容可能な担体」または「医薬的に許容可能な溶媒」という用語は、本明細書で定義される有効量の活性薬剤の適切な送達をもたらし、この活性薬剤の生物活性の有効性を妨げず、宿主または患者に対して十分に無毒である任意の製剤または担体媒体を表す。代表的な担体には、水、油、植物および鉱物の両方、クリーム基剤、ローション基剤、軟膏基剤などが含まれる。これらの基剤には、懸濁化剤、増粘剤、浸透促進剤などが含まれる。それらの製剤は、化粧および局所医薬品の分野の人々に周知である。担体に関する追加情報は、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 21st Ed.,Lippincott, Williams &Wilkins (2005)の中で見つけることができ、これは参照により本明細書に組み込まれる。
【0016】
「医薬的に許容可能な添加剤」という用語は、薬物製剤分野で知られるまたは使用される、この活性薬剤の生物活性の有効性を過度に妨げず、かつ宿主または患者に対して十分に無毒である保存剤、酸化防止剤、香料、乳化剤、染料剤および賦形剤を表す。局所製剤のための添加剤は当業で周知であり、それらが医薬的に許容可能であり、上皮細胞または上皮細胞の機能に対して有害ではない限り、局所組成物へ加えられてもよい。さらに、それらは、この組成物の安定性の低下を起こすべきではない。例えば、不活性充填剤、抗刺激剤、粘着付与剤、賦形剤、香料、乳白剤、抗酸化剤、ゲル化剤、安定剤、界面活性剤、皮膚軟化剤、着色剤、保存剤、緩衝剤、他の透過促進剤、および局所的または経皮的送達製剤の他の従来の構成成分が、当業で知られている。
【0017】
「賦形剤」という用語は、所望の使用に対して効果的な薬物組成物の製剤化に使用される担体、希釈剤および/または溶媒を意味することが従来知られている。
【0018】
II.序論
特異的な多形形態にある(S)−3−アミノメチル−7−(3−ヒドロキシ−プロポキシ)−3H−ベンゾ[c][1,2]オキサボロール−1−オールの塩酸塩は、1つ以上の利点をもたらすことが判明した。(S)−3−アミノメチル−7−(3−ヒドロキシ−プロポキシ)−3H−ベンゾ[c][1,2]オキサボロール−1−オールの塩酸塩の合成は、本明細書および米国特許出願第12/142,692号(これは参照により組み込まれる)に記載された。
【0019】
本出願に記載される全ての多形体は結晶形態にある。したがって、「多形体」および「結晶多形体」という用語は同等である。
【0020】
さらに、(S)−3−アミノメチル−7−(3−ヒドロキシ−プロポキシ)−3H−ベンゾ[c][1,2]オキサボロール−1−オールの合成中に適用することができる条件の選択により、この塩酸塩は異なる修飾体:多形体HCl1、HCl2、HCl3およびHCl4を生じることが判明した。
【0021】
例示的な実施形態において、本発明は、本発明の多形体を提供する。例示的な実施形態において、本発明は、本明細書記載の多形体を提供する。例示的な実施形態において、本発明は、本明細書記載の多形体の結晶性溶媒和物を提供する。例示的な実施形態において、本発明は、本明細書記載の多形体の結晶性水和物を提供する。例示的な実施形態において、本発明は、多形形態HCl4の多形体の結晶性溶媒和物を提供する。例示的な実施形態において、本発明は、多形形態HCl4の多形体の結晶性水和物を提供する。例示的な実施形態において、本発明は、本発明の2種類の多形体の組み合わせを提供する。例示的な実施形態において、本発明は、本発明の3種類の多形体の組み合わせを提供する。例示的な実施形態において、本発明は、本発明の4種類の多形体の組み合わせを提供する。例示的な実施形態において、本発明は、本明細書記載の2種類の多形体の組み合わせを提供し、ここでこの多形体の1種類は多形形態HCl4である。例示的な実施形態において、本発明は、本発明の3種類の多形体の組み合わせを提供し、ここでこれらの多形体の1種類は多形形態HCl4である。例示的な実施形態において、本発明は、本発明の4種類の多形体の組み合わせを提供し、ここでこれらの多形体の1種類は多形形態HCl4である。
【0022】
(S)−3−アミノメチル−7−(3−ヒドロキシ−プロポキシ)−3H−ベンゾ[c][1,2]オキサボロール−1−オールの塩酸塩である多形形態HCl1についての粉末X線回折(XRPD)データを、実施例5に示す詳細に従って収集した。多形形態HCl1のXRPDパターン、およびその2−シータ(2θ)値を図1Aおよび図1Bに示す。例示的な実施形態において、本発明は、XRPD分析において、図1Aおよび図1Bに示されるピーク±2°2θ、ピーク±1.7°2θ、ピーク±1.5°2θ、ピーク±1.2°2θ、ピーク±1.0°2θ、ピーク±0.9°2θ、ピーク±0.8°2θ、ピーク±0.7°2θ、ピーク±0.6°2θ、ピーク±0.5°2θ、ピーク±0.4°2θ、ピーク±0.3°2θ、ピーク±0.2°2θ、あるいはピーク±0.1°2θのうちの任意の10本、任意の9本、任意の8本、任意の7本、任意の6本、任意の5本、任意の4本、任意の3本、任意の2本、または任意の1本を有する多形形態HCl1を提供する。
【0023】
多形形態HCl2と称される(S)−3−アミノメチル−7−(3−ヒドロキシ−プロポキシ)−3H−ベンゾ[c][1,2]オキサボロール−1−オール・HClの別の多形体のXRPDパターン、およびその2−シータ(2θ)値を図2Aおよび図2Bに示す。追加分析を多形形態HCl2において行った後に、この多形体は多形形態HCl3および多形形態HCl4の混合物であると確定した。
【0024】
多形形態HCl3と称される(S)−3−アミノメチル−7−(3−ヒドロキシ−プロポキシ)−3H−ベンゾ[c][1,2]オキサボロール−1−オール・HClの別の多形体のXRPDパターン、およびその2−シータ(2θ)値を図3Aおよび図3Bに示す。例示的な実施形態において、本発明は、XRPD分析において、図3Aおよび図3Bに示されるピーク±2°2θ、ピーク±1.7°2θ、ピーク±1.5°2θ、ピーク±1.2°2θ、ピーク±1.0°2θ、ピーク±0.9°2θ、ピーク±0.8°2θ、ピーク±0.7°2θ、ピーク±0.6°2θ、ピーク±0.5°2θ、ピーク±0.4°2θ、ピーク±0.3°2θ、ピーク±0.2°2θ、あるいはピーク±0.1°2θのうちの任意の10本、任意の9本、任意の8本、任意の7本、任意の6本、任意の5本、任意の4本、任意の3本、任意の2本、または任意の1本を有する多形形態HCl3を提供する。
【0025】
多形形態HCl4称される(S)−3−アミノメチル−7−(3−ヒドロキシ−プロポキシ)−3H−ベンゾ[c][1,2]オキサボロール−1−オール・HClの別の多形体のXRPDパターン、およびその2−シータ(2θ)値を図4Aおよび図4Bに示す。単結晶形態の選別を含む追加試験は、HCl4が(S)−3−アミノメチル−7−(3−ヒドロキシ−プロポキシ)−3H−ベンゾ[c][1,2]オキサボロール−1−オール・HClの最も安定な多形体であることを確かめる。例示的な実施形態において、本発明は、XRPD分析において、図1Aおよび図1Bに示されるピーク±2°2θ、ピーク±1.7°2θ、ピーク±1.5°2θ、ピーク±1.2°2θ、ピーク±1.0°2θ、ピーク±0.9°2θ、ピーク±0.8°2θ、ピーク±0.7°2θ、ピーク±0.6°2θ、ピーク±0.5°2θ、ピーク±0.4°2θ、ピーク±0.3°2θ、ピーク±0.2°2θ、あるいはピーク±0.1°2θのうちの任意の10本、任意の9本、任意の8本、任意の7本、任意の6本、任意の5本、任意の4本、任意の3本、任意の2本、または任意の1本を有する多形形態HCl4を提供する。例示的な実施形態において、本発明は、XRPD分析において、図4Aおよび図4Bに示されるピーク±2°2θ、ピーク±1.7°2θ、ピーク±1.5°2θ、ピーク±1.2°2θ、ピーク±1.0°2θ、ピーク±0.9°2θ、ピーク±0.8°2θ、ピーク±0.7°2θ、ピーク±0.6°2θ、ピーク±0.5°2θ、ピーク±0.4°2θ、ピーク±0.3°2θ、ピーク±0.2°2θ、あるいはピーク±0.1°2θのうちの任意の10本を有する多形形態HCl4を提供する。例示的な実施形態において、本発明は、XRPD分析において、図4Aおよび図4Bに示されるピーク±1.0°2θのうちの任意の10本を有する多形形態HCl4を提供する。例示的な実施形態において、本発明は、XRPD分析において、図4Aおよび図4Bに示されるピーク±0.5°2θのうちの任意の10本を有する多形形態HCl4を提供する。例示的な実施形態において、本発明は、XRPD分析において、図4Aおよび図4Bに示されるピーク±1.0°2θのうちの任意の8本を有する多形形態HCl4を提供する。例示的な実施形態において、本発明は、XRPD分析に
おいて、図4Aおよび図4Bに示されるピーク±0.5°2θのうちの任意の8本を有する多形形態HCl4を提供する。例示的な実施形態において、本発明は、XRPD分析において、図4Aおよび図4Bに示されるピーク±1.0°2θのうちの任意の5本を有する多形形態HCl4を提供する。例示的な実施形態において、本発明は、XRPD分析において、図4Aおよび図4Bに示されるピーク±1.0°2θのうちの任意の3本を有する多形形態HCl4を提供する。例示的な実施形態において、本発明は、XRPD分析において、図4Aおよび図4Bに示されるピーク±0.5°2θのうちの任意の3本を有する多形形態HCl4を提供する。
【0026】
(S)−3−アミノメチル−7−(3−ヒドロキシ−プロポキシ)−3H−ベンゾ[c][1,2]オキサボロール−1−オールの遊離塩基形態の、多形形態HCl1およびHCl4との比較を図5に示す。多形形態HCl4のラマン分光法(図6)、追加のXRPD分析(図7、8Aおよび8B)、示差走査熱量測定(DCS)(図9)ならびに熱重量分析(TGA)(図10)を実施例4〜8に示し、議論する。これらの分析のための多形形態HCl4を、実施例2の方法AおよびB、ならびに実施例4に従って調製した。
【0027】
例示的な実施形態において、本発明は、X線結晶解析において、本明細書記載の結晶パラメーターと似ている結晶パラメーターを有する多形体を提供する。例示的な実施形態において、本発明は、X線結晶解析において、斜方結晶系を有する多形体を提供する。例示的な実施形態において、本発明は、X線結晶解析において、斜方結晶系を有する多形形態HCl4を提供する。例示的な実施形態において、本発明は、X線結晶解析において、P2空間群を有する多形体を提供する。例示的な実施形態において、本発明は、X線結晶解析において、P2空間群を有する多形形態HCl4を提供する。例示的な実施形態において、本発明は、X線結晶解析において、a=約9.1045(2)Å、b=約10.3107(2)Å、c=約14.5988(3)Å、α=約90.00°、β=約90.00°、γ=約90.00°の結晶サイズを有する多形体を提供する。例示的な実施形態において、本発明は、X線結晶解析において、a=約9.1045(2)Å、b=約10.3107(2)Å、c=約14.5988(3)Å、α=約90.00°、β=約90.00°、γ=約90.00°の結晶サイズを有する多形形態HCl4を提供する。例示的な実施形態において、本発明は、X線結晶解析において、1370.44(5)Åの結晶体積を有する多形体を提供する。例示的な実施形態において、本発明は、X線結晶解析において、1370.44(5)Åの結晶体積を有する多形形態HCl4を提供する。例示的な実施形態において、本発明は、X線結晶解析において、Zおよび計算密度値がそれぞれ約4および約1.326gcm−3である多形体を提供する。例示的な実施形態において、本発明は、X線結晶解析において、Zおよび計算密度値がそれぞれ約4および約1.326gcm−3である多形形態HCl4を提供する。例示的な実施形態において、本発明は、X線結晶解析において、実質的に以下の値の結晶パラメーターを有する多形体を提供する:
結晶系:斜方晶系
空間群:P2
結晶サイズ:a=9.1045(2)Å、b=10.3107(2)Å、c=14.5988(3)Å、α=90.00°、β=90.00°、γ=90.00°
体積:1370.44(5)Å
Z、計算密度:4、1.326gcm−3
【0028】
例示的な実施形態において、本発明は、ラマン分光分析において、Nicolet NXR9650FTラマン分光計を用いて、Nd:YVO4レーザー(λ=1064nm)からの励起で、4cm−1の解像度で得られるフーリエ変換赤外線スペクトルである図6などにある本明細書記載のピークを実質的に有する多形体を提供する。例示的な実施形態において、本発明は、ラマン分光分析において、以下の群から選択される波数(cm−1)を実質的に有するピークのうちの任意の15本、任意の14本、任意の13本、任意の12本、任意の10本、任意の11本、任意の9本、任意の8本、任意の7本、任意の6本、任意の5本、任意の4本、任意の3本、任意の2本、または任意の1本を有する多形体を提供する:3076.4、3054.6、2987.4、2975.5、2954.2、2928.0、2909.8、2896.0、1578.6、1298.2、1291.6、1263.0、1226.8、1068.9、694.9、それぞれ±50波数、それぞれ±45波数、それぞれ±40波数、それぞれ±35波数、それぞれ±30波数、それぞれ±25波数、それぞれ±20波数、それぞれ±15波数、それぞれ±10波数、またはそれぞれ±5波数。関連する具体的な実施形態において、記載するピークの全リスト、またはピークの任意のサブセットは、多形形態HCl4を特徴づけるのに十分である。具体的な実施形態は、上記のリストの10本以上のピークのラマン分光波数(cm−1)を有する多形体を提供する。別の具体的な実施形態は、上記のリストの7本以上のピークの分光波数(cm−1)を有する多形体を提供する。別の具体的な実施形態は、上記のリストの5本以上のピークの分光波数(cm−1)を有する多形体を提供する。さらに別の具体的な実施形態は、上記のリストの4本以上のピークの分光波数(cm−1)を有する多形体を提供する。
【0029】
別の例示的な実施形態において、本発明は、図4A、7または8Aのいずれかに示されるXRPDパターンを実質的に有する多形体を提供する。別の例示的な実施形態において、本発明は、図8Bに記載したピーク、および対応するd−間隔値を実質的に有する多形体を提供する。具体的な実施形態において、以下の群から選択される2θ値を実質的に有するピークのうちの任意の15本、任意の14本、任意の13本、任意の12本、任意の11本、任意の10本、任意の9本、任意の8本、任意の7本、任意の6本、任意の5本、任意の3本、任意の2本、または任意の1本から選択されるXRPDピークを有する多形体を提供する:12.1、14.2、18.2、19.2、20.1、21.0、21.9、22.7、24.3、26.6、27.6、30.9、31.5、34.7、あるいは39.5。より具体的な実施形態において、図8Bに記載したピークの全リスト、またはピークの任意のサブセットを有する多形体を提供する。別の具体的な実施形態において、上記に記載した、および/または図8Aに示されるもしくは図8Bに記載した任意の10本以上のピーク、または任意の7本以上のピーク、または任意の5本以上のピーク、または任意の4本以上のピークのXRPD2θ値を有する多形体を提供する。関連する具体的な実施形態において、この多形体は図8Bに記載した任意の1つ以上のd−間隔を有してもよい。
【0030】
これらの異なる修飾体を、反応条件の適切な選択によって、慎重に生成することができることが判明した。
【0031】
例示的な実施形態において、この多形体を、(S)−3−アミノメチル−7−(3−ヒドロキシ−プロポキシ)−3H−ベンゾ[c][1,2]オキサボロール−1−オール・HClが約11mg/mL以上の濃度を有する溶液の蒸発および/または再結晶によって生成する。例示的な実施形態において、(S)−3−アミノメチル−7−(3−ヒドロキシ−プロポキシ)−3H−ベンゾ[c][1,2]オキサボロール−1−オール・HClの濃度は約15mg/mL以上である。例示的な実施形態において、(S)−3−アミノメチル−7−(3−ヒドロキシ−プロポキシ)−3H−ベンゾ[c][1,2]オキサボロール−1−オール・HClの濃度は約20mg/mL以上である。例示的な実施形態において、(S)−3−アミノメチル−7−(3−ヒドロキシ−プロポキシ)−3H−ベンゾ[c][1,2]オキサボロール−1−オール・HClの濃度は約22mg/mL以上である。例示的な実施形態において、(S)−3−アミノメチル−7−(3−ヒドロキシ−プロポキシ)−3H−ベンゾ[c][1,2]オキサボロール−1−オール・HClの濃度は約11mg/mL〜約30mg/mLである。例示的な実施形態において、上記の段落のいずれかによると、(S)−3−アミノメチル−7−(3−ヒドロキシ−プロポキシ)−3H−ベンゾ[c][1,2]オキサボロール−1−オール・HClの濃度は約15mg/mL〜約50mg/mLである。例示的な実施形態において、上記の段落のいずれかによると、(S)−3−アミノメチル−7−(3−ヒドロキシ−プロポキシ)−3H−ベンゾ[c][1,2]オキサボロール−1−オール・HClの濃度は約15mg/mL〜約500mg/mLである。例示的な実施形態において、この溶液はアルコールを含む。例示的な実施形態において、この溶液はメタノールを含む。例示的な実施形態において、この溶液はエタノールを含む。例示的な実施形態において、この溶液は脂肪族化合物を含む。例示的な実施形態において、この溶液はペンタンを含む。
【0032】
特定の反応条件を選択することによって結晶形態で得ることができるHCl4多形体は、本明細書で述べた1つ以上の利点をもたらすことが判明した。したがって、一態様において、本発明は、(S)−3−アミノメチル−7−(3−ヒドロキシ−プロポキシ)−3H−ベンゾ[c][1,2]オキサボロール−1−オール・HClの多形形態HCl4に関する。(S)−3−アミノメチル−7−(3−ヒドロキシ−プロポキシ)−3H−ベンゾ[c][1,2]オキサボロール−1−オール・HClの多形形態HCl4は、(S)−3−アミノメチル−7−(3−ヒドロキシ−プロポキシ)−3H−ベンゾ[c][1,2]オキサボロール−1−オール・HClの他の多形体と比較すると、安定性の増加を示す。例示的な実施形態において、この安定性は物理的安定性である。例示的な実施形態において、この安定性は化学的安定性である。
【0033】
別の態様によると、本発明は、(S)−3−アミノメチル−7−(3−ヒドロキシ−プロポキシ)−3H−ベンゾ[c][1,2]オキサボロール−1−オール・HClのHCl4多形体の精製型を生成するための工程に関する。
【0034】
別の態様によると、本発明は、疾病に罹患した動物において疾病を治療する方法を提供し、この動物に本明細書記載の治療有効量の多形体を投与し、それによってこの疾病を治療するステップを含む。例示的な実施形態において、この疾病は細菌と関連する。例示的な実施形態において、この細菌はグラム陰性細菌である。例示的な実施形態において、このグラム陰性細菌は、ナイセリア属の種、エシェリキア属の種、シゲラ属の種、サルモネラ属の種、エルシニア属の種、クレブシエラ属の種、プロテウス属の種、エンテロバクター属の種、セラシア属の種、ビブリオ属の種、カンピロバクター属の種、ヘリコバクター属の種、シュードモナス属の種、バクテロイデス属の種、ヘモフィルス属の種、ボルデテラ属の種、レジオネラ属の種、フランシセラ属の種、ブルセラ属の種、パスツレラ属の種、ガルドネレラ属の種、スピロヘータ属の種、クラミジア属の種、リケッチア属の種から成る群から選択される。例示的な実施形態において、この細菌はマイコプラズマ肺炎菌およびウレアプラズマウレアリチカムである。例示的な実施形態において、この疾病は、髄膜炎、淋病、耳炎、外耳炎、毛嚢炎、下痢、尿路感染、敗血症(sepsis)、HAP、菌血症、心内膜炎、胃腸炎、腸チフス(Typhoid fever)、敗血症、心内膜炎、副鼻腔炎、腺ペスト、チフス(enteric fever)、院内感染、皮膚および皮膚組織感染、肺炎、コレラ、慢性胃炎、骨髄炎、熱傷創感染、角膜感染、歯周疾患、えん下肺炎、喉頭蓋炎、敗血症性関節炎、軟性下疳、膣炎、百日咳、ポンティアック熱、ツラレミア、ブルセラ症、梅毒、ライム病、クラミジア、ロッキー山発疹熱、発疹チフス、気管気管支炎、遊走生肺炎(walking pneumonia)、尿道炎、腎盂腎炎、腹腔内感染、発熱性好中球減少、骨盤内感染症、菌血症ならびに敗血症(septicaemia)から成る群から選択される。例示的な実施形態において、この疾病は肺炎である。例示的な実施形態において、この多形体は、(S)−3−アミノメチル−7−(3−ヒドロキシ−プロポキシ)−3H−ベンゾ[c][1,2]オキサボロール−1−オール・HClの多形形態HCl4である。例示的な実施形態において、この多形体は、本明細書記載のX線結晶学的な値と実質的に似ているX線結晶学的な値を有する。例示的な実施形態において、この多形体は、本明細書記載のラマン分光値と実質的に似ているラマン分光値を有する。例示的な実施形態において、この多形体は、本明細書記載の粉末X線回折パターンと実質的に似ている粉末X線回折パターンを有する。
【0035】
本発明のさらなる態様は、以下を含む医薬組成物に関する:a)(S)−3−アミノメチル−7−(3−ヒドロキシ−プロポキシ)−3H−ベンゾ[c][1,2]オキサボロール−1−オールの塩酸塩の多形体およびb)少なくとも1種類の賦形剤または担体。例示的な実施形態において、この多形体は、(S)−3−アミノメチル−7−(3−ヒドロキシ−プロポキシ)−3H−ベンゾ[c][1,2]オキサボロール−1−オール・HClの多形形態HCl4である。例示的な実施形態において、この多形体は、本明細書記載のX線結晶学的な値と実質的に似ているX線結晶学的な値を有する。例示的な実施形態において、この多形体は、本明細書記載のラマン分光値と実質的に似ているラマン分光値を有する。例示的な実施形態において、この多形体は、本明細書記載の粉末X線回折パターンと実質的に似ている粉末X線回折パターンを有する。この医薬組成物は、細菌を含む疾病を治療するのに有用である。例示的な実施形態において、この多形体を本明細書に記載する。例示的な実施形態において、この細菌を本明細書に記載する。例示的な実施形態において、この疾病を本明細書に記載する。
【0036】
本発明のさらなる態様は、細菌性疾患の治療のための医薬組成物の調製に、(S)−3−アミノメチル−7−(3−ヒドロキシ−プロポキシ)−3H−ベンゾ[c][1,2]オキサボロール−1−オール・HClの多形体を使用することに関し、その中で、この細菌のロイシルtRNA合成酵素に対して親和性を示す化合物の使用は、治療的有用性を有し得る。
【0037】
本発明のさらなる態様は、医薬組成物の調製に、(S)−3−アミノメチル−7−(3−ヒドロキシ−プロポキシ)−3H−ベンゾ[c][1,2]オキサボロール−1−オール・HClのHCl4多形体を使用することに関する。
【0038】
具体的には、本発明は、本明細書記載の疾病の治療のための薬剤調製に、(S)−3−アミノメチル−7−(3−ヒドロキシ−プロポキシ)−3H−ベンゾ[c][1,2]オキサボロール−1−オール・HClのHCl4多形体を使用することに関する。例示的な実施形態において、この疾病はグラム陰性細菌と関連する。
【0039】
本発明によると、本明細書に選択される疾病の治療のための薬剤調製に、(S)−3−アミノメチル−7−(3−ヒドロキシ−プロポキシ)−3H−ベンゾ[c][1,2]オキサボロール−1−オール・HClのHCl4多形体を使用することは特に好ましい。
【0040】
本発明のさらなる特徴として、少なくとも1種類の医薬担体に加えて、(S)−3−アミノメチル−7−(3−ヒドロキシ−プロポキシ)−3H−ベンゾ[c][1,2]オキサボロール−1−オール・HClの多形体を有効成分として含む医薬組成物を提供する。医薬品投与について、(S)−3−アミノメチル−7−(3−ヒドロキシ−プロポキシ)−3H−ベンゾ[c][1,2]オキサボロール−1−オール・HClの多形体は、従来の医薬調製物に、個体、液体、軟膏、クリーム、懸濁液またはスプレーの形態で組み入れられてもよい。例えば、この組成物は、経口投与、直腸投与、非経口投与に適した、または鼻孔吸入に適した形態で存在してもよい。好ましい形態には、例えば、カプセル、錠剤、コーティング錠、アンプル剤、坐薬およびスプレー式点鼻薬が含まれる。例えば、タルク、アラビアゴム、乳糖、ゼラチン、ステアリン酸マグネシウム、コーンスターチ、水性もしくは非水性溶媒、ポリビニルピロリドン、脂肪酸の半合成グリセリド、塩化ベンザルコニウム、リン酸ナトリウム、EDTA、ポリソルベート80などの医薬組成物に従来使用されている賦形剤または担体に、この有効成分が取り込まれてもよい。これらの組成物を投薬量単位で有利に製剤化し、各投薬量単位を、有効成分の単回投与を供給するのに適合させる。各投薬量単位は、0.01mg〜100mg、好ましくは0.1〜50mgを都合よく含んでもよい。
【0041】
例示的な実施形態を以下の本明細書に要約する。
【0042】
1つの具体的な実施形態は、XRPDパターン(1)のピークのいずれかを有することによって特徴付けられる(S)−3−アミノメチル−7−(3−ヒドロキシ−プロポキシ)−3H−ベンゾ[c][1,2]オキサボロール−1−オールの塩酸塩の多形体を提供する。
【表1】

【0043】
別の具体的な実施形態は、XRPDパターン1に示される任意の4本のピークを含む多形体を提供する。さらに別の例示的な実施形態は、XRPDパターン1に示される任意の7本のピークを含む多形体を提供する。より具体的な実施形態は、XRPDパターン1に示される任意の10本のピークを含む多形体を提供する。さらに別のより具体的な実施形態は、XRPDパターン1に示される全てのピークを含む多形体を提供する。
【0044】
別の例示的な実施形態は、(S)−3−アミノメチル−7−(3−ヒドロキシ−プロポキシ)−3H−ベンゾ[c][1,2]オキサボロール−1−オールの塩酸塩の多形体を提供し、ここでこの多形体は、表2に記載した2θ値±2°2θ、2θ値±1.7°2θ、2θ値±1.5°2θ、2θ値±1.2°2θ、2θ値±1.0°2θ、2θ値±0.9°2θ、2θ値±0.8°2θ、2θ値±0.7°2θ、2θ値±0.6°2θ、2θ値±0.5°2θ、2θ値±0.4°2θ、2θ値±0.3°2θ、2θ値±0.2°2θ、または2θ値±0.1°2θのいずれかを有することによって特徴付けられる。
【表2】

【0045】
別の例示的な実施形態は、(S)−3−アミノメチル−7−(3−ヒドロキシ−プロポキシ)−3H−ベンゾ[c][1,2]オキサボロール−1−オールの塩酸塩の多形体を提供し、ここでこの多形体は、表3に記載した2θ値±2°2θ、2θ値±1.7°2θ、2θ値±1.5°2θ、2θ値±1.2°2θ、2θ値±1.0°2θ、2θ値±0.9°2θ、2θ値±0.8°2θ、2θ値±0.7°2θ、2θ値±0.6°2θ、2θ値±0.5°2θ、2θ値±0.4°2θ、2θ値±0.3°2θ、2θ値±0.2°2θ、または2θ値±0.1°2θのいずれかを有することによって特徴付けられる。
【表3】

【0046】
さらに別の例示的な実施形態は、X線結晶解析において、実質的に以下の値の結晶パラメーターを有する(S)−3−アミノメチル−7−(3−ヒドロキシ−プロポキシ)−3H−ベンゾ[c][1,2]オキサボロール−1−オールの塩酸塩の多形体を提供する。
【0047】
結晶系:斜方晶系
空間群:P2
結晶サイズ:a=9.1045(2)Å、b=10.3107(2)Å、c=14.5988(3)Å、α=90.00°、β=90.00°、γ=90.00°
体積:1370.44(5)Å
Z、計算密度:4、1.326gcm−3
【0048】
別の例示的な実施形態は、ラマンスペクトル(1)のピークのいずれかを有することによって特徴付けられる(S)−3−アミノメチル−7−(3−ヒドロキシ−プロポキシ)−3H−ベンゾ[c][1,2]オキサボロール−1−オールの塩酸塩の多形体を提供する。
【表4】

【0049】
さらに別の例示的な実施形態は、記載される多形体および少なくとも1つの賦形剤または担体を含む医薬組成物を提供する。別の例示的実施形態は、疾病に罹患した動物において疾病を治療する方法を提供し、本明細書記載の治療有効量の多形体をこの動物に投与するステップを含み、ここで前記疾病は細菌と関連する。
【0050】
さらに別の例示的実施形態は、記載されるように、疾病に罹患した動物において疾病を治療する方法を提供し、ここでこの細菌はグラム陰性細菌である。
【0051】
別の例示的実施形態において、記載されるように、前記疾病に罹患した動物において疾病を治療する方法を提供し、ここでこの細菌は、ナイセリア、エシェリキア属の種、シゲラ属の種、サルモネラ属の種、エルシニア属の種、クレブシエラ属の種、プロテウス属の種、エンテロバクター属の種、セラシア属の種、ビブリオ属の種、カンピロバクター属の種、ヘリコバクター属の種、シュードモナス属の種、バクテロイデス属の種、ヘモフィルス属の種、ボルデテラ属の種、レジオネラ属の種、フランシセラ属の種、ブルセラ属の種、パスツレラ属の種、ガルドネレラ属の種、スピロヘータ属の種、クラミジア属の種、リケッチア属の種から成る群から選択される。
【0052】
さらに別の例示的な実施形態は、記載されるように、前記疾病に罹患した動物において疾病を治療する方法を提供し、ここでこの疾病は、髄膜炎、淋病、耳炎、外耳炎、毛嚢炎、下痢、尿路感染、敗血症(sepsis)、HAP、菌血症、心内膜炎、胃腸炎、腸チフス(Typhoid fever)、敗血症、心内膜炎、副鼻腔炎、腺ペスト、チフス(enteric fever)、院内感染、皮膚および皮膚組織感染、肺炎、コレラ、慢性胃炎、骨髄炎、熱傷創感染、角膜感染、歯周病、えん下肺炎、喉頭蓋炎、敗血症性関節炎、軟性下疳、膣炎、百日咳、ポンティアック熱、ツラレミア、ブルセラ症、梅毒、ライム病、クラミジア、ロッキー山発疹熱、発疹チフス、気管気管支炎、遊走性肺炎、尿道炎、腎盂腎炎、腹腔内感染、発熱性好中球減少、骨盤内感染、菌血症ならびに敗血症(septicaemia)から成る群から選択される。
【0053】
さらに別の例示的な実施形態は、記載されるように、前記疾病に罹患した動物において疾病を治療する方法を提供し、ここでこの疾病は肺炎である。
【0054】
別の例示的な実施形態は、結晶の(S)−3−アミノメチル−7−(3−ヒドロキシ−プロポキシ)−3H−ベンゾ[c][1,2]オキサボロール−1−オール・HCL、形態HCL4を提供する。別の例示的な実施形態は、結晶の(S)−3−アミノメチル−7−(3−ヒドロキシ−プロポキシ)−3H−ベンゾ[c][1,2]オキサボロール−1−オール・HCL、形態HCL3を提供する。別の例示的な実施形態は、結晶の(S)−3−アミノメチル−7−(3−ヒドロキシ−プロポキシ)−3H−ベンゾ[c][1,2]オキサボロール−1−オール・HCL、形態HCL2を提供する。別の例示的な実施形態は、結晶の(S)−3−アミノメチル−7−(3−ヒドロキシ−プロポキシ)−3H−ベンゾ[c][1,2]オキサボロール−1−オール・HCL、形態HCL1を提供する。なお別の例示的な実施形態は、上記の結晶の(S)−3−アミノメチル−7−(3−ヒドロキシ−プロポキシ)−3H−ベンゾ[c][1,2]オキサボロール−1−オール・HCL、形態HCL4、HCL3、HCL2、HCL1を提供する。
【0055】
追加の例示的実施形態を本明細書の以下に要約する。
【0056】
例示的な実施形態において、本発明は表1に記載した°2θ値±0.2°2θのいずれかを基本的に有することにより特徴付けられる結晶多形体である。
【表5】

【0057】
例示的な実施形態において、上記の段落によると、本発明は表1に示される任意の4本のピーク±0.2°2θを含む。
【0058】
例示的な実施形態において、上記の段落によると、本発明は表1に示される任意の7本のピーク±0.2°2θを含む。
【0059】
例示的な実施形態において、上記の段落によると、本発明は表1に示される任意の10本のピーク±0.2°2θを含む。
【0060】
例示的な実施形態において、上記の段落によると、本発明は表1に示される全てのピーク±0.2°2θを含む。
【0061】
例示的な実施形態において、本発明はXRPDパターン1のピーク±0.2°2θのいずれかを基本的に有することにより特徴付けられる(S)−3−アミノメチル−7−(3−ヒドロキシ−プロポキシ)−3H−ベンゾ[c][1,2]オキサボロール−1−オールの塩酸塩の結晶多形体である。
【表6】

【0062】
例示的な実施形態において、本発明は、X線結晶解析において、実質的に以下の値の結晶パラメーターを有する(S)−3−アミノメチル−7−(3−ヒドロキシ−プロポキシ)−3H−ベンゾ[c][1,2]オキサボロール−1−オールの塩酸塩の結晶多形体である。
【0063】
結晶系:斜方晶系
空間群:P2
結晶サイズ:a=9.1045(2)Å、b=10.3107(2)Å、c=14.5988(3)Å、α=90.00°、β=90.00°、γ=90.00°
体積:1370.44(5)Å
Z、計算密度:4、約1.326gcm−3
【0064】
例示的な実施形態において、本発明は、ラマンスペクトル(1)のピーク±50波数(cm−1)のいずれかを有することにより特徴付けられる(S)−3−アミノメチル−7−(3−ヒドロキシ−プロポキシ)−3H−ベンゾ[c][1,2]オキサボロール−1−オールの塩酸塩の結晶多形体である。
【表7】

【0065】
例示的な実施形態において、上記の段落によると、この結晶多形体は約2800〜約3200cm−1の間のピーク±50波数の多重線を有し、かつ約1600〜約600cm−1の間のークの±50波数の別の多重線を有するが、約1800〜約2200cm−1の間のピーク±50波数を基本的に有しない。
【0066】
例示的な実施形態において、上記の段落のいずれかによると、この結晶多形体は約2800〜約3200cm−1の間のピーク±50波数、ピーク±45波数、ピーク±40波数、ピーク±35波数、ピーク±30波数、ピーク±25波数、ピーク±20波数、ピーク±15波数、ピーク±10波数、およびピーク±5波数の多重線を有する。
【0067】
例示的な実施形態において、上記の段落のいずれかによると、この結晶多形体は約1600〜約600cm−1の間のピーク±50波数、ピーク±45波数、ピーク±40波数、ピーク±35波数、ピーク±30波数、ピーク±25波数、ピーク±20波数、ピーク±15波数、ピーク±10波数、およびピーク±5波数の多重線を有する。
【0068】
例示的な実施形態において、上記の段落のいずれかによると、この結晶多形体は約1800〜約2200cm−1の間のピーク±50波数、ピーク±45波数、ピーク±40波数、ピーク±35波数、ピーク±30波数、ピーク±25波数、ピーク±20波数、ピーク±15波数、ピーク±10波数、およびピーク±5波数を基本的に有しない。
【0069】
例示的な実施形態において、本発明は以下を含む医薬組成物を提供する:
a)上記の段落のいずれかに記載の結晶多形体;およびb)少なくとも1つの賦形剤または担体。
【0070】
例示的な実施形態において、本発明は、疾病に罹患した動物において疾病を治療する方法を提供し、上記の段落のいずれかの治療有効量の結晶多形体をこの動物に投与するステップを含み、ここで前記疾病は細菌と関連する。
【0071】
例示的な実施形態において、上記の段落によると、この細菌はグラム陰性細菌である。
【0072】
例示的な実施形態において、上記の段落のいずれかによると、この細菌は、ナイセリア、エシェリキア属の種、シゲラ属の種、サルモネラ属の種、エルシニア属の種、クレブシエラ属の種、プロテウス属の種、エンテロバクター属の種、セラシア属の種、ビブリオ属の種、カンピロバクター属の種、ヘリコバクター属の種、シュードモナス属の種、バクテロイデス属の種、ヘモフィルス属の種、ボルデテラ属の種、レジオネラ属の種、フランシセラ属の種、ブルセラ属の種、パスツレラ属の種、ガルドネレラ属の種、スピロヘータ属の種、クラミジア属の種、リケッチア属の種から成る群から選択される。
【0073】
例示的な実施形態において、上記の段落のいずれかによると、この疾病は、髄膜炎、淋病、耳炎、外耳炎、毛嚢炎、下痢、尿路感染、敗血症(sepsis)、HAP、菌血症、心内膜炎、胃腸炎、腸チフス(Typhoid fever)、敗血症、心内膜炎、副鼻腔炎、腺ペスト、チフス(enteric fever)、院内感染、皮膚および皮膚組織感染、肺炎、コレラ、慢性胃炎、骨髄炎、熱傷創感染、角膜感染、歯周病、えん下肺炎、喉頭蓋炎、敗血症性関節炎、軟性下疳、膣炎、百日咳、ポンティアック熱、ツラレミア、ブルセラ症、梅毒、ライム病、クラミジア、ロッキー山発疹熱、発疹チフス、気管気管支炎、遊走性肺炎、尿道炎、腎盂腎炎、腹腔内感染、発熱性好中球減少、骨盤内感染、菌血症ならびに敗血症(septicaemia)から成る群から選択される。
【0074】
例示的な実施形態において、上記の段落のいずれかによると、この疾病は肺炎である。
【0075】
例示的な実施形態において、本発明は結晶の(S)−3−アミノメチル−7−(3−ヒドロキシ−プロポキシ)−3H−ベンゾ[c][1,2]オキサボロール−1−オール・HCL、形態HCL4である。
【0076】
例示的な実施形態において、本発明は結晶の(S)−3−アミノメチル−7−(3−ヒドロキシ−プロポキシ)−3H−ベンゾ[c][1,2]オキサボロール−1−オール・HCL、形態HCL3である。
【0077】
例示的な実施形態において、本発明は結晶の(S)−3−アミノメチル−7−(3−ヒドロキシ−プロポキシ)−3H−ベンゾ[c][1,2]オキサボロール−1−オール・HCL、形態HCL2である。
【0078】
例示的な実施形態において、本発明は結晶の(S)−3−アミノメチル−7−(3−ヒドロキシ−プロポキシ)−3H−ベンゾ[c][1,2]オキサボロール−1−オール・HCL、形態HCL1である。
【0079】
例示的な実施形態において、本発明は、本明細書記載の結晶の(S)−3−アミノメチル−7−(3−ヒドロキシ−プロポキシ)−3H−ベンゾ[c][1,2]オキサボロール−1−オール・HCL、形態HCL4、HCL3、HCL2、HCL1を調整する方法である。
【0080】
例示的な実施形態において、本発明は、上記の段落のいずれかに記載の結晶の(S)−3−アミノメチル−7−(3−ヒドロキシ−プロポキシ)−3H−ベンゾ[c][1,2]オキサボロール−1−オール・HCL、形態HCL4、HCL3、HCL2、HCL1を調整する方法である。
【0081】
本発明を、次の実施例によってさらに説明する。これらの実施例を、本発明の範囲を定義または制限するようには意図しない。
【実施例】
【0082】
使用する全ての溶媒は市販されており、さらなる精製をすることなく使用した。一般的に、窒素の不活性雰囲気の下、無水溶媒を用いて反応を行った。
【0083】
Waters 717 PlusオートサンプラーおよびWaters 2996光ダイオードアレイ検出器を有するWater600制御システムにおいて、HPLC分析を行った。使用したカラムは、ACE C18、5μm、4.6×150mmであった。95%A(A:水に溶解させた0.1%HPO)から開始し、90%B(B:MeCN)で終わる、6分間にわたる直線勾配を適用し、その後、10分の印まで、90%Bで維持した。その後、3分間にわたって、このカラムを95:5に平衡化し、全実行時間は20分であった。このカラムの温度は常温であり、流速は1.0mL/分であった。ダイオードアレイ検出器を200〜400nmで走査した。ベースラインを差し引く必要のある高純度試料については、99%A(A:水に溶解させた0.1%HPO)から開始し、90%B(B:MeCN)で終わる、15分間にわたる直線勾配を適用した。その後、3分間にわたって、このカラムを99%Aで再び平衡化し、全実行時間は23分であった。このカラムの温度は常温であり、流速は1.0mL/分であった。ダイオードアレイ検出器を200〜400nmで走査した。純度を決定する試料を流す直前に、ブランクのMeOH試料を流した。その後、このブランクを差し引くことにより、ベースラインを差し引いたクロマトグラムを得た。
【0084】
Mancherey-Nagel社のAlugram(登録商標)(シリカゲル60F254)を用いて薄層クロマトグラフィー(TLC)を行い、例によって、UVを用いてスポットを視覚化した。いくつかの場合において、追加の可視化法も使用した。これらの場合において、このTLCプレートを、(約1gのIを10gのシリカゲルに加え、完全に混合することによって生成される)ヨウ素、(約1gのバニリンを100mLの10%HSOに溶解することによって生成される)バニリン、(1.5gKMnOおよび10gKCOを1.25mLのNaOHおよび200mLのHOに溶解することによって生成される)過マンガン酸カリウム、(アルドリッチ社から市販されている)ニンヒドリン、または(25gの(NHMo24・4HO、5gの(NHCe(IV)(NOを450mLのHOおよび50mLの濃縮HSOに完全に混合することによって生成される)マジック染色剤で展開し、化合物を視覚化した。一般的に、Silicycle社の40−63μm(230−400メッシュ)のシリカゲルを用いて、Stillらによって開示される技術と類似の技術に従って、フラシュ・クロマトグラフィーを行った。フラシュ・クロマトグラフィーまたは薄層クロマトグラフィー(TLC)に用いられる一般的な溶媒は、CHCl/MeOH、CHCl/MeOH、EtOAc/MeOHおよびヘキサン/EtOAcの混合物である。Biotage C18カートリッジおよびHO/MeOH勾配(一般的に、5%MeOH/HOから90%MeOH/HOの溶出)を用いるBiotage(登録商標)において、逆相フラシュ・クロマトグラフィーを行った。
【0085】
Waters 2487ダイオードアレイを用いるWaters Prep LC 4000システムまたはWaters LC Module 1 plusのいずれかにおいて、分取クロマトグラフィーを行った。使用したカラムは、Waters×Terra Prep C18、5μm、30×100mm、Phenomenex Luna C18、5μm、21.6×250mm、またはPhenomenex Gemini C18、5μm、100×30mmのいずれかであった。MeCN/HO(0.1%TFA、0.1%AcOH、0.1%HCOHまたは0.1%NHOAcのいずれかを含む水)での範囲の限られた勾配を使用して、約20mL/分の流速で、20〜30分の全実行時間で、化合物を溶出した。
【0086】
使用する出発物質を商業的供給源から入手するかまたは文献の手順に従って調製し、実験データは報告されたデータと一致した。例えば、米国特許出願第12/142,692号ならびに、米国特許公開第20060234981号および同第20070155699号に記載の方法に従って、6−アミノベンゾオ[c][1,2]オキサボロール−1(3H)−オール(C50)を合成することができる。
【0087】
実施例1
(S)−3−アミノメチル−7−(3−ヒドロキシ−プロポキシ)−3H−ベンゾ[c][1,2]オキサボロール−1−オールおよびその塩酸塩多形体の合成
1の3への変換
【化2】

【0088】
窒素下、22Lの三首の丸底フラスコに、870.0gの1、636.0gの2のビス(ピナコラト)ジボロン(bis(pinacolato)diboron)、415.0gのKOAc、94.0gのPdCl(dppf)DCM、および7.5LのTHFを入れた。得られた混合物を、窒素下で、約30分間撹拌した。この混合物を最初の18℃の温度から加熱して、還流した。1時間15分で還流温度(63℃)に達した。この混合物を、一晩、還流させたままにした。約15時間の還流後、混合物の試料を除去し、HPLCにより解析し、反応の完了を調べた。この反応は完了しておらず、それゆえに還流を続けた。さらに約4時間の還流後、HPLCにより反応を完了した(1は≦1%)。
【0089】
この反応混合物を常温(温度約25℃)まで冷却してもよく、150gのセライトを加えた。この混合物を約1時間撹拌した。この反応混合物を、濾紙を有するセラミック漏斗で濾過した。個体を、(濾液が透明で、個体が白または灰色がかった白になるまで)1LのTHFで3回洗浄した。この個体は、大部分、KOAcおよび反応中に形成した他の不溶性塩の副産物であった。所望の産物を濾液に溶解した。
【0090】
ロータバップ(Rotavap)(槽の温度≦45℃)を用いて、ドロドロした濃厚油が残るまで、溶媒をこの濾液から揮散させた。
【0091】
この濃厚油を約600mLの酢酸エチルに溶解した。セライト(180g)を加え、この混合物を撹拌した。撹拌している混合物に、約20〜30分間にわたって、追加の漏斗により8Lのヘキサンを加えた。黒いタール様の物質が沈殿し、濾過効率を高めるセライトに吸着させた。週末の間中この混合物を撹拌し、その後、GF紙を有する漏斗で濾過した。100mLの90/10(体積/体積)のヘキサン/酢酸エチルで、個体を3回洗浄した。
【0092】
槽の温度を40℃より低く保ち、ロータバップを用いて濾液を揮散させ、油を得た。3の収量:960g。HPLC純度は76.8%であった。
【0093】
3の5への変換
【化3】

【0094】
手順:
22Lの三首の丸底フラスコに、86.0gのNaOHおよび2.75LのUSP水を入れた。氷浴で、この溶液を10℃以下に冷却した。追加の漏斗により、4のニトロメタン(384.0g)をゆっくり加え、その間、温度を15℃以下に維持した。4の添加には、約20分かかった。得られた混合物を約10分間撹拌した。3(960g)および2.75LのTHFの溶液を、追加の漏斗により、この混合物にゆっくり加えた。この添加には約1.5時間かかった。この添加の開始の温度は8℃で、この添加の終わりの温度は10℃であった。この添加が完了した時、この混合物を氷槽から取り除き、常温まで温めた。
【0095】
3の出発物質の添加の完了後、約9時間この混合物を撹拌した後、HPLCがこの反応を完了したことを示した(5は≦1%)。この反応混合物を15℃以下に冷却し、4.5LのUSP水、続いて6LのMTBEで急冷した。2MのHCl溶液をこの反応混合物に加え、pHを約pH2に調整した(pH調整には、約1200mLの2MのHCl溶液を必要とした)。水層と有機層が分離するまで、この反応混合物を静置した。この有機層を4LのUSP水で6回洗浄し、ピナコラール不純物を除去した。この有機層を、約500gの硫酸ナトリウムで一晩乾燥させた。この混合物を濾過し、硫酸ナトリウムを除去し、この溶媒を除去して油を得た(ロータバップ温度≦40℃)。未精製5の収量:815g。HPLC純度は42.4%であった。
【0096】
ジクロロメタンに10kgのシリカゲルを充填した6”ガラスカラム(GGC−5)を用いて、未精製物質のクロマトグラフを行った。溶媒の勾配:100%ジクロロメタン(約40L)→95:5ジクロロメタン/MTBE(65L)で、このカラムを溶出した。「有効な」画分を回収し、この溶媒を除去して油を生成させ(ロータバップ温度≦40℃)、710gの琥珀色の油を得た。HPLC純度は55.8%であった。未精製油を500mLのMTBEに溶解した。ヘキサン(500mL)をこの溶液に加え、2日間、常温で、この溶液を撹拌した。この生成物を溶液から沈殿させ、その後、濾過し、50:50のMTBE/ヘキサンで(200mLで3回)洗浄した。40℃の真空オーブンの中で、この生成物を乾燥させた。収量は354gであった。HPLC純度は69%であった。
【0097】
純度を上げるために、354gをMTBEから再結晶させた。5の第一の収穫物の収量は、176gの黄色の固体であった。HPLC純度は98.6%であった。この物質の第二の収穫物を母液から単離した。ジクロロメタンに10kgのシリカゲルを充填した6”ガラスカラムに、約460gの母液を添加した。100%ジクロロメタン(約60L)→97.5:2.5のジクロロメタン/MTBE(60L)で、このカラムを溶出した。「有効な」画分を回収し、この溶媒を除去して油/個体を生成させた。この個体をヘキサンで再びスラリーにし、濾過し、ヘキサンで洗浄した。この生成物を40℃で真空乾燥させた。5の第二の収穫物の収量は155.6gであった。HPLC純度は95.2%であった。
【0098】
7を生成するための5の水素化
【化4】

【0099】
以下のものを25ガル反応器(ReactorR-21)に入れた:331gの5、144gの20%Pd(OH)/C、および20Lの2MのNH/メタノール溶液。この反応の溶媒体積は、25ガロン反応器の最小撹拌体積を基にした。この反応器を加圧し、窒素で3回パージした。この反応器のカバーを経由して冷水を循環させながら、この混合物を35〜40psiのHで水素化した。この反応を、約17時間後のHPLC解析によって完了した。この反応混合物を、カートリッジ(2マイクロン)で濾過してR−20(第二の25ガルガラスライニング反応器)に入れた。その後、R−21を約5Lのメタノールですすぎ、そのすすぎ液を、濾過カートリッジを通してR−20へ移した。この混合物を、真空下(温度≦40℃)で揮散させ、油を得た。この残留物を10LのMTBEで3回滴定し、揮散させ、各回油を得、過剰のNHを除去した。この油を約0.65MのHCl/メタノール溶液に再び溶解した。この溶液をR−21に戻し、この反応器に72gの20%Pd(OH)/C触媒を入れた。この反応器を、窒素で3回パージした。この反応器のカバーを経由して冷水を循環させながら、この混合物を35〜40psiのHで水素化した。この反応を、約3時間後のHPLC解析によって完了した。この反応混合物を、カートリッジ(2マイクロン)で濾過してR−20に入れた。R−21を約5Lのメタノールですすぎ、そのすすいだメタノールを、濾過カートリッジを通してR−20へ送り入れた。この工程の間の様々な点における%Pdについての試料を用いて、Pd除去の有効性を特定し、このバッチが%Pd規格に通ることを確かめた。濾液を25gのチオールシリカで処理し、一晩、常温で撹拌した。この混合物を、2マイクロンの濾過カートリッジで濾過して20Lのガラスカーボイに入れた。
【0100】
ロータバップ(温度≦40℃)を用いて濾液を揮散させ、油を得た。揮散中、結晶が形成し始めた。メタノール(300mL)をこの油に加え、この混合物を、一晩、常温で撹拌した。結晶化生成物の濃厚スラリーを得た。約2LのMTBEをこのスラリーに加え、この混合物を、約2時間、約10〜15℃まで冷却した。この個体を濾過し、750mLのMTBEで3回洗浄し、乾燥させ、この物質を回収してトレイに置いた。この個体をT=40℃で真空乾燥させた。第一の収穫物の量は174.0gであった。HPLC純度は97.9%であった。
【0101】
結晶の第二の収穫物を母液から得た。第二の収穫物の収量は23.8gであった。HPLC純度は87.9%であった。
【0102】
10の結晶化による7のS異性体の単離
【化5】

【0103】
手順:
5Lの三首の丸底フラスコに、196.3gのラセミ体の7の塩酸塩を十分なメタノールに溶解し、完全に溶解させた(約2.5L)。この溶液を撹拌し、チオールシリカ(24g)を加えた。常温で、約3時間撹拌を続けた。この混合物をGF紙で濾過し、シリカを除去した。このシリカを、100mLのMeOHで2回洗浄した。この溶液を、%Pdについて試料抽出した。この濾液を約10〜15℃まで冷却した。温度を≦25℃に維持しながら、2MのNH/メタノール溶液(740mL)をゆっくり加えた。最終混合物のpHは約12であった(リトマス紙)。ロータバップ(温度≦40℃)により、この溶液を揮散させ、濃厚スラリーを得た。揮散残留物を400mLのエタノールSDA−3Aで滴定し、過剰のNHを除去した。エタノールの各添加後、この溶液を揮散させ、濃厚スラリーを得た。EtOH SDA−3A(1200ml)を得られたスラリーに加え、約30分間撹拌した。さらに1500mLのメタノールをこの混合物に加えた。この溶液を30分間撹拌した。この混合物をGF紙で濾過し、不溶性塩を除去し、その後、300mLのMeOHで3回洗浄した。質量平衡のために、塩を回収し、乾燥させた(約64.2g)。ロータバップ(温度≦40℃)により、透明な濾液を揮散させ、個体/スラリーを得た。揮散させた7の遊離塩基型を1850mLのメタノールに溶解した。透明な溶液を得た。
【0104】
400mlのメタノールに108.8gのR−(−)−マンデル酸を溶解した溶液を、7の遊離塩基型の溶液に加えた。温度は約25℃だった。得られた溶液を、一晩、結晶化させた。10の収量を増加させるために、この混合物を静置し、この透明な溶液をロータバップフラスコに移し、揮散させ、元の体積の約半分量を得た。揮散させた溶液を、固定された結晶を保持する元のフラスコに戻し、一晩、この混合物を常温で撹拌した。この溶液を濾過し、300mLのメタノールで3回洗浄し、その後、40℃で真空乾燥させた。10の収量:40.0g。HPLC純度は99.7%であった。
【0105】
18.0gの第二の収穫物および51.9gの第三の収穫物を得た。
【0106】
10の11への変換:
HCl1形態の調製
【化6】

【0107】
手順:
1000mLの丸底フラスコに、500mLの1MのHCl溶液および39.6gの10を入れた。この混合物を約5分間撹拌し、その後、350mlのMTBEを加えた。全ての個体が溶解するまで、得られた混合物を激しく撹拌し、二相混合物を得た。この混合物をGF紙で濾過し、不溶性粒子を除去した。これらの層を分液漏斗で分け、有機層を廃棄した。水層を350mLのMTBEで5回洗浄し、全てのマンデル酸を除去した。この有機層を廃棄した。水層の試料をHPLCにより調べ、マンデル酸の除去を確認した。この水層を凍結乾燥器(FD-1 Virtis Freezemobile 25ES)に入れた。開始温度は19℃であった。約2時間後、この生成物は凍り、温度は約−45℃であった。棚温度を−20℃まで上昇させた。約3日後、この棚温度を0℃まで上昇させた。4時間後、この棚温度を20℃まで上昇させた。さらに4.5時間後、この棚温度を30℃まで上昇させた。30℃の棚温度で約16.5時間置いた後、この生成物を凍結乾燥器から取り出し、ナルゲンボトルに詰めた。11の収量:28.5g。
【0108】
(S)−3−アミノメチル−7−(3−ヒドロキシ−プロポキシ)−3H−ベンゾ[c][1,2]オキサボロール−1−オールの遊離塩基型の調製の工程
35.05gのAmberlyst A26 OHレジン(交換容量:4.4meq./化合物g)を175mLのメタノール/水(95/5、体積/体積)に加え、一晩放置した。その後、このレジンを濾過により回収し、175mLのメタノール/水(95/5、体積/体積)で洗浄した。
【0109】
3.9g量(14.28mmol)の(S)−3−アミノメチル−7−(3−ヒドロキシ−プロポキシ)−3H−ベンゾ[c][1,2]オキサボロール−1−オールの塩酸塩を70mLのメタノール/水(95/5、体積/体積)に溶解した。この溶液を39gのこのレジンと接触させた。このHCl塩およびこのレジンを、1時間接触させたままにして交換し、その後、このレジンを濾過して除いた。
【0110】
(S)−3−アミノメチル−7−(3−ヒドロキシ−プロポキシ)−3H−ベンゾ[c][1,2]オキサボロール−1−オールの遊離塩基型を、ロータリーエバポレーターを用いて、常温(RT)で、真空下、エバポレーションにより、上記の得られた容器から個体として単離した。
【0111】
実施例2
(S)−3−アミノメチル−7−(3−ヒドロキシ−プロポキシ)−3H−ベンゾ[c][1,2]オキサボロール−1−オール・HCl塩形態の調製の工程
HCl2形態の調製
約4mgの(S)−3−アミノメチル−7−(3−ヒドロキシ−プロポキシ)−3H−ベンゾ[c][1,2]オキサボロール−1−オールの遊離塩基型を、0.4mLのメタノール/水(95/5、体積/体積)に溶解した。(S)−3−アミノメチル−7−(3−ヒドロキシ−プロポキシ)−3H−ベンゾ[c][1,2]オキサボロール−1−オールの塩酸に対するモル比が1:1.1であるように、(37%濃縮)塩酸の水溶液を加えた。その後、この溶液を60℃まで温め(10℃/分)、1時間、60℃で保持した。その後、この溶液を20℃/時で5℃まで冷却し、48時間、5℃で熟成させた。その後、この溶媒を常温で、真空下(500ミリバールで17.5時間、その後200ミリバールで72時間)、乾燥するまで蒸発させた。
【0112】
HCl2形態の再結晶
HCl2形態も、HCl2形態のエタノール/水(95/5、体積/体積)からの再結晶により得た。この工程において、約4mg量のHCl2塩を、約1mLのエタノール/水(95/5、体積/体積)に溶解した。その後、この溶液を60℃まで温め(10℃/分)、1時間、60℃で保持した。その後、この溶液を20℃/時で5℃まで冷却し、48時間、5℃で熟成させた。その後、この溶媒を常温で、真空下(500ミリバールで17.5時間、その後200ミリバールで72時間)、乾燥するまで蒸発させた。
【0113】
HCl3形態の調製
約4mgの(S)−3−アミノメチル−7−(3−ヒドロキシ−プロポキシ)−3H−ベンゾ[c][1,2]オキサボロール−1−オールのHCl2形態を、0.4mLのペンタンに溶解した。その後、この溶液を60℃まで温め(10℃/分)、1時間、60℃で保持した。その後、この溶液を20℃/時で5℃まで冷却し、48時間、5℃で熟成させた。その後、この溶媒を常温で、真空下(500ミリバールで17.5時間、その後200ミリバールで72時間)、乾燥するまで蒸発させた。
【0114】
HCl3形態の代替調製
約4mgの(S)−3−アミノメチル−7−(3−ヒドロキシ−プロポキシ)−3H−ベンゾ[c][1,2]オキサボロール−1−オールのHCl2形態を、0.4mLのテトラヒドロフランに溶解した。その後、この溶液を60℃まで温め(10℃/分)、1時間、60℃で保持した。その後、この溶液を20℃/時で5℃まで冷却し、48時間、5℃で熟成させた。その後、この溶媒を常温で、真空下(500ミリバールで17.5時間、その後200ミリバールで72時間)、乾燥するまで蒸発させた。
【0115】
HCl3形態の代替調製
約4mgの(S)−3−アミノメチル−7−(3−ヒドロキシ−プロポキシ)−3H−ベンゾ[c][1,2]オキサボロール−1−オールのHCl2形態を、0.4mLのアセトンに溶解した。その後、この溶液を60℃まで温め(10℃/分)、1時間、60℃で保持した。その後、この溶液を20℃/時で5℃まで冷却し、48時間、5℃で熟成させた。その後、この溶媒を常温で、真空下(500ミリバールで17.5時間、その後200ミリバールで72時間)、乾燥するまで蒸発させた。
【0116】
HCl4形態の調製−方法A
約59mgの(S)−3−アミノメチル−7−(3−ヒドロキシ−プロポキシ)−3H−ベンゾ[c][1,2]オキサボロール−1−オールの遊離塩基型を、2.5mLのメタノール/水(95/5、体積/体積)に溶解した。(S)−3−アミノメチル−7−(3−ヒドロキシ−プロポキシ)−3H−ベンゾ[c][1,2]オキサボロール−1−オールの塩酸に対するモル比が1:1.1であるように、(37%濃縮)塩酸の水溶液を加えた。その後、この系を60℃まで温め(10℃/分)、1時間、60℃で保持した。この溶液を20℃/時で5℃まで冷却し、その後、48時間、5℃で熟成させた。その後、この溶媒を常温で、真空下(200ミリバールで66.5時間、その後1ミリバールで7.3時間)、乾燥するまで蒸発させた。
【0117】
HCl4形態の再結晶−方法A
HCl4形態も、HCl4形態のペンタンからの再結晶により得た。この工程において、約59mg量のHCl4塩形態を、約2.5mLのペンタンに溶解した。その後、この溶液を60℃まで温め(10℃/分)、1時間、60℃で保持した。その後、この溶液を20℃/時で5℃まで冷却し、48時間、5℃で熟成させた。その後、この溶媒を常温で、真空下(200ミリバールで66.5時間、その後1ミリバールで7.3時間)、乾燥するまで蒸発させた。
【0118】
HCl4形態の調製−方法B
イソプロパノール(50.3kg)を、凍結乾燥した(S)−3−アミノメチル−7−(3−ヒドロキシ−プロポキシ)−3H−ベンゾ[c][1,2]オキサボロール−1−オール(2.37kg)と共に透明な反応器に入れた。この混合物を加熱して還流し(約82℃)、30分間にわたって、この反応器に水(5.85kg)を入れた。この反応混合物を55分間、撹拌して還流し、第二の水のアリコート(0.5kg)をこの反応器に入れ、透明な溶液を生成した。この熱い溶液を0.2マイクロンカートリッジ濾過器で濾過して第二の反応器に入れた。この濾液を加熱して還流し、常圧蒸留により、この溶液を元の体液の25%にまで減少させた。加熱を止め、この混合物を、自然に、25℃まで冷却し、その後、12時間撹拌した。この生成物を漏斗濾過により単離し、イソプロパノール(3.5kg)で洗浄し、少なくとも26インチの真空器を備える、40℃での棚乾燥器により、22時間乾燥させた。
【0119】
実施例3
安定性試験
堅く嵩高い物質であるHCl1多形体を、閉鎖型の琥珀色のボトルに入れ、周囲条件下、保存した。4か月後、このボトルを開けると、堅く嵩高い物質は、今度は自由に流れるような粉末であった。XRPDをこの自由に流れるような粉末から(データ)取った。この自由に流れるような粉末のXRPDが、HCl4形態の参考XRPDと類似していることは、この自由に流れるような粉末がHCl4形態にあることを示す。この結果は、最初のHCl1形態が、保存中にHCl4形態に変換したことを示す。この結果は、HCl4がHCl1よりも安定な多形体であることを示す。遊離塩基形態、多形形態HCl1および多形形態HCl4を比較するXRPDデータを図5に提供する。
【0120】
実施例4
多形の形態HCl1、形態HCl2、形態HCl4、および形態HCl5を調製する代替方法は、形態選別法の使用を含む。この選別のインプット物質は、(S)−3−アミノメチル−7−(3−ヒドロキシ−プロポキシ)−3H−ベンゾ[c][1,2]オキサボロール−1−オールの塩酸塩の非溶媒和物形態であった。これは、この選別の中で生成された優勢形態であり、常温で最も安定な形態である。以下に記載した4つの異なる結晶化の方法を用いて、合計で48種類の溶媒/溶媒混合物の中で選別を行った。これらの溶媒には、水、メタノール、1−プロパノール、ニトロメタン、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、アセトン、2−ブタノン、ジクロロメタン、酢酸メチル、4−メチル−2−クロロホルム、酢酸エチル、クロロベンゼン、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、イソプロピルエーテル、トルエン、シクロヘキサン、ヘプタン、1−ブタノール、2−プロパノール、トリフルオロエタノール、炭酸ジメチル、t−ブチルメチルエーテル、酢酸イソプロピル、エタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、シクロヘキサノン、ジメチルホルムアミド、2−メトキシエチルエーテル、メタノール:5体積%HO、アセトニトリル:5体積%HO、アセトン:5体積%HO、テトラヒドロフラン:5体積%HO、2−プロパノール:5体積%HO、メタノール:10体積%HO、アセトニトリル:10体積%HO、アセトン:10体積%HO、テトラヒドロフラン:10体積%HO、ジオキサン:10体積%HO、2−プロパノール:10体積%HO、イソプロパノール+10%ジメチルスルホキシド、アセトニトリル+10%ジメチルスルホキシド、およびn−メチルピロリドンが含まれる。
【0121】
蒸気拡散も、選択した溶媒の中で行った。使用した4種類の結晶化の方法は以下である:
・スラリーの温度サイクル循環熟成
・常温の溶液の急冷
・溶液の常温蒸発
・溶媒/非溶媒の組み合わせの蒸気拡散
【0122】
性質決定:
選別から全ての試料を単離し、ラマン分光法によって分析した。その後、これらの試料を、ラマンスペクトルマッチに基づいてグループ化した。必要に応じて、これらのグループの各々の代表的試料を、追加の分析技術によりさらに分析した(XPRD、DSC、TG−IR、PLMなど)。
【0123】
選別結果
温度サイクル、急冷、および蒸気拡散の試料は、ラマンおよびXRPD分析に基づいて、単一グループ(グル―プA/インプット)を作った。ほとんどの蒸発試料もグループAを生成した。しかし、5つの追加グループ(グル―プB、グル―プC、グル―プD、グル―プE、およびグル―プF)を、ラマン分析に基づいて、蒸発実験および蒸発拡大実験から生成した。これらのグループを、さらなる分析および/または拡大分析のために選択した。
【0124】
グループBは、ニトロメタンからの蒸発実験から生成し、非常に低収量であった(<3mg)。この試料をラマン、XRPD、およびDSCによって分析した。TG−IR(熱重量−赤外線分光法)に対して、試料は不十分であった。6種類の拡大実験を計画し、各々、不定形または油状固形物を生成した。XRPDデータは、既知の形態のいずれとも一致せず、異常に大きい、低角度のピークが存在した。インプットを有するニトロメタンの競合熟成実験(competitive ripening experiment)に、残った種を用いた。1週間後のラマン分析では、グループA(多形形態HCl4)と一致した。
【0125】
グループCを、アセトンおよび2−ブタノンの2つの蒸発実験から生成し、非常に低収量であった(<1mg)。この試料をラマンにより分析し、さらなる分析に対して、試料は不十分であった。アセトンで7種類、2−ブタノンで7種類、合計で14種類の拡大実験を計画した。アセトン実験は、グループA(多形形態HCl4)または不定形/油状固形物のいずれかをもたらした。ほとんどの2−ブタノン実験は新しいグループであるグループEを生成した。グループCの拡大実験は失敗したので、インプットを有するアセトンの競合熟成実験に、残った種を用いた。1週間後のラマン分析では、グループAである多形形態HCl4と一致した。
【0126】
多形形態HCl5と称される新たに同定された多形体であるグループDを、水を20%含むアセトンの、非常にゆっくりした蒸発実験から生成し、よい収量(約20mg)であった。この試料をラマンにより分析し、不安定であるため、グループE(多形形態HCl3)へ変換した。
【0127】
グループEをラマン、XPRD、DSCおよびTG−IRにより分析した。最初に6.4%の水(1.0当量)の損失がTG−IRにより観察され、1週間後、TGの再実験は4.9%の水(0.8当量)の損失を示した。グループD/E形態をアセトン/水の混合物の中で再生成する3種類の試みは失敗し、グループA(多形形態HCl4)をもたらした。
【0128】
グループFを、2−ブタノンのいくつかの蒸発拡大実験から生成し、非常に低収量(<0.5mg)であった。この試料をラマン、XPRD、およびDSCにより分析した。TG−IRに対して、試料は不十分であった。しかし、ラマン、XPRD、およびDSCのより周到な分析は、グループFがグループA(多形形態HCl4)およびE(多形形態HCl3)の混合物であることを強く示差する。
【0129】
単一結晶データは、HCl4多形体が溶媒和されず、以下に示す非環化構造として結晶化されることを確かめた。
【化7】

【0130】
実施例5
粉末X線回折(XRPD)収集情報
ハイスループットのXRPD設定を用いてXRPDパターンを得た。Hi−Star面検出器を備えるBruker GADDS回折計にプレートを記載した。長いd−間隔についてはSilver Behenateを用い、短いd−間隔についてはCorundumを用いて、XRPDプラットフォームを調整した。
【0131】
単色CuKα線を用いて、1.5°および41.5°間の2θ領域において、データ収集を常温で行った。各フレームについて90秒の曝露時間で、各ウェルの回折パターンを回収した。バックグラウンドを差し引くことまたは曲線の平滑化を、XRPDパターンに適用しなかった。
【0132】
XRPD分析中に用いた担体物質はX線にとって透明であり、このバックグラウンドにごくわずかしか寄与しなかった。
【0133】
実施例6
単結晶X線
(S)−3−アミノメチル−7−(3−ヒドロキシ−プロポキシ)−3H−ベンゾ[c][1,2]オキサボロール−1−オールの塩酸塩の2種類の試料を、単結晶構造解析に用いた。共焦点を備えるRigaku Rapid IIにおいて、予備実験およびデータ収集をCuKα線(λ=1.54184Å)で行った。SHELX 97を用いてリナックスPC上で精密化を行った(Sheldrick, G. M. Acta Cryst., 2008, A64,112)。
【0134】
7°<θ<66°の範囲における9176反射線の設定角を用いた最小二乗精密化からデータ収集のためのセル定数および配向マトリックスを得た(CrystalClear: An Integrated Program for the Collection and Processing of Area Detector Data, Rigaku Corporation(出版権), 1997-2002)。この空間群をXPREPプログラム(Bruker, XPREP in SHELXTL v.6.12., Bruker AXS Inc., Madison, WI, USA, 2002)によって決定した。
【0135】
構造解明および精密化
PLATON(Spek, A. L. PLATON. Molecular Graphics Program. Utrecht University, Utrecht, The Netherlands, 2008. Spek, A. L, J. Appl. Cryst. 2003, 36, 7)のCharge Flipping(Oszlanyi G., Suto, A. Acta Cryst, 2004, A60, 134)アルゴリズムを用いて直接法により構造を解明した。
【0136】
散乱因子は、「国際結晶学表」(International Tables for Crystallography, Vol. C, Kluwer Academic Publishers: Dordrecht, The Netherlands, 1992, Tables 4.2.6.8および6.1.1.4)から取った。
【0137】
結果および考察
斜方晶系のセルパラメーターおよび計算した体積は以下のものである:a=約9.1045(2)Å、b=約10.3107(2)Å、c=約14.5988(3)Å、α=約90.00°、β=約90.00°、γ=約90.00°、V=1370.44(5)Å。(S)−3−アミノメチル−7−(3−ヒドロキシ−プロポキシ)−3H−ベンゾ[c][1,2]オキサボロール−1−オールの塩酸塩の結晶構造における非対称単位の式量は、Z=4で273.53amu(非対称単位)−1であり、計算密度は1.326gcm−3となった。空間群をP2であると決定した。0.027(2.7%)のR値によって示されるように、得られた構造の品質は高かった。大抵、0.02〜0.06の範囲のR値は、最も確実に決定された構造に対して引用される(Glusker, Jenny Pickworth; Trueblood, Kenneth N. Crystal Structure Analysis: A Primer,2nd ed.; Oxford University press: New York, 1985; p.87)。
【0138】
(S)−3−アミノメチル−7−(3−ヒドロキシ−プロポキシ)−3H−ベンゾ[c][1,2]オキサボロール−1−オールの塩酸塩の結晶データおよびデータ収集パラメーターを、以下のX線単結晶の表に示す。
【表8】

【0139】
CrystalClear:面検出器のデータの収集および処理のための統合されたプログラム、Rigaku Corporation(出版権), 1997-2002
Flack, H. D. Acta Cryst., 1983 A39,876
Hooft, R. W. W., Straver, L. H., and Spek, A. L. J. Appl. Cryst., 2008, 41, 96
【0140】
実施例7
単結晶試料の粉末X線回折(XRPD)
粉末X線回折(XRPD)分析を、実施例6に記載のX線単結晶試料を用いて行った。粉末X線回折(XRPD)には、120°の2θ範囲を有するCPS(湾曲位置敏感型)検出器を備えるInel XRG−3000回折計を用いた。Cu−Kα線を用いて、約4°2θから始め、0.03°2θの分解能で、リアルタイムでデータを収集した。管の電圧および電流は、それぞれ40kVおよび30mAであった。単色光分光器スリットを、5mm×160μmに設定した。2.5〜40°2θでパターンを表示する。試料を薄壁ガラス毛管に充填することにより、分析用試料を調製した。各毛管を、モーターが付いたゴニオメーターヘッドに取り付け、データ取得中に毛管が回転することを可能にした。これらの試料を300秒間分析した。機器較正を、ケイ素参照標準物を用いて行った。cGMP手順書に従って、この実験のXRPDパターンをSSCI社で収集した。
【0141】
形態HCl4
図7および8Aは、(S)−3−アミノメチル−7−(3−ヒドロキシ−プロポキシ)−3H−ベンゾ[c][1,2]オキサボロール−1−オールの塩酸塩の2種類の異なる調製品について収集した、2種類の異なる実験のXRPDパターンを示す。
【0142】
図7は、実施例2の方法Aに従って調製した多形形態HCl4の試料から収集したXRPDパターンである。
【0143】
実施例2の方法Bに記載したように調製した多形形態HCl4の試料を用いて、図8Aに示した粉末X線回折パターンを得、PANalytical X’Pert Pro回折計を用いて取得した。ゼロバックグラウンドで、ケイ素挿入具を有する試料保持具上で、試料を穏やかにフラットにした。Cu−Kα線源ならびに40kVおよび45mAの発電機の電力を用いて、2〜40°の連続2θ走査範囲を使用した。20秒のステップ時間と、0.017°/ステップの2θステップサイズを使用した。試料を30rpmで回転させた。実験を常温、周囲湿度で行った。図8Bに、図8Aに示す(S)−3−アミノメチル−7−(3−ヒドロキシ−プロポキシ)−3H−ベンゾ[c][1,2]オキサボロール−1−オール多形形態HCl4を特徴づける°2θ±0.2°2θにおけるピークおよびd−間隔値を載せる。例示的な実施形態において、これらのピークの全リスト、またはピークのサブセットは、(S)−3−アミノメチル−7−(3−ヒドロキシ−プロポキシ)−3H−ベンゾ[c][1,2]オキサボロール−1−オール多形形態HCl4を特徴づけるのに十分であり得る。
【0144】
実施例8
示差走査熱量測定
機器:TA Instruments Thermal Analysis System, Model DSC Q100
重要な操作のパラメーター:
モジュール−DSC Standard Cell FC
方法−傾斜
パン:閉鎖型アルミニウム
パージガス:窒素、40mL/分
Cell# FC-00615
方法1:25.00℃での平衡化
方法2:15.00℃/分の傾斜、300.00℃まで。
【0145】
形態HCl4
図9は、(S)−3−アミノメチル−7−(3−ヒドロキシ−プロポキシ)−3H−ベンゾ[c][1,2]オキサボロール−1−オールの塩酸塩の試料のDSCサーモグラムを示す。
【0146】
上記に示したように、TA Instruments Q100示差走査熱量計を用いて、DSCサーモグラムを取得した。実施例2の方法Bで調製した(S)−3−アミノメチル−7−(3−ヒドロキシ−プロポキシ)−3H−ベンゾ[c][1,2]オキサボロール−1−オール多形形態HCl4の試料を、アルミニウムDSCパンの中に直接、正確に計り入れた。手で圧力を加え、(緩い蓋の構造としても知られる)このパンの各部分を押すことにより、このパンの封をした。温度を15℃/分の速度で傾斜を付けた。178.1℃から開始する吸熱反応の推移が測定され、このことは分解事象と関連する。
【0147】
図10は、TA Instruments Q500熱重量分析器を用いて取得したTGAサーモグラムを示す。この試料パンの重さを量り、実施例2の方法Bで調製した(S)−3−アミノメチル−7−(3−ヒドロキシ−プロポキシ)−3H−ベンゾ[c][1,2]オキサボロール−1−オール多形形態HCl4の試料をこのパンに入れた。温度を15℃/分の速度で傾斜を付けた。162〜214℃の間に、6.4%の段階的な重量損失が観察され、このことは逆の化学変換による水損失と関連する。214℃を越えてから、さらなる分解が観察される。
【0148】
形態HCl3
多形HCl3は、水の放出と同時に起こる100℃以下での重量損失を示すという点において、水和結晶形態と一致する特徴を示す。
【0149】
調製方法:
水を20%含むイソプロパノール溶液を、約25mgの多形形態HCl4を含むバイアルに加えた。48時間にわたって、0〜40℃の間で温度を変えながら、得られた混合物を撹拌した。この溶液を濾過により単離し、蒸発させ、乾燥させた。新たに単離した生成物が形態HCl5であることを確かめた。形態HCl5を少なくとも7日間密閉バイアルで保存し、このことは形態HCl3への変換をもたらした。
【0150】
図11は、Nd:YVO4レーザー(λ=1064nm)からの励起で、4cm−1の解像度で、Nicolet NXR 9650 FT−ラマン分光計を用いて記録したFT−ラマンスペクトルを示す。形態HCl3は、以下の波数(cm−1)においてピークを示す:33049.9、2962.2、2941.8、2918.2、1583.3、1297.9、1247.4、1066.5、870.4、686.1、530.5、316.2、228.5、161.4、137.1。例示的な実施形態において、これらのピークの全リスト、またはピークのサブセットは、(S)−3−アミノメチル−7−(3−ヒドロキシ−プロポキシ)−3H−ベンゾ[c][1,2]オキサボロール−1−オール多形形態HCl3を特徴づけるのに十分であり得る。
【0151】
さらに、実施例2で調製した(S)−3−アミノメチル−7−(3−ヒドロキシ−プロポキシ)−3H−ベンゾ[c][1,2]オキサボロール−1−オール多形形態HCl3の粉末X線回折パターンを、PANalytical X’Pert Pro回折計を用いて取得した。ゼロバックグラウンドで、ケイ素挿入具を有する試料保持具上で、試料を穏やかにフラットにした。Cu−Kα線源ならびに40kVおよび45mAの発電機の電力を用いて、2〜40°の連続2θ走査範囲を使用した。20秒のステップ時間と、0.017°/ステップの2θステップサイズを使用した。試料を30rpmで回転させた。実験を常温、周囲湿度で行った。図12Bに、図12AのXRPDパターンに見られる形態HCl3を特徴づける°2θ±0.2°2θにおけるピークおよびd−間隔値(Å)を載せる。例示的な実施形態において、これらのピークの全リスト、またはピークのサブセットは、(S)−3−アミノメチル−7−(3−ヒドロキシ−プロポキシ)−3H−ベンゾ[c][1,2]オキサボロール−1−オール多形形態HCl3を特徴づけるのに十分であり得る。
【0152】
TA Instruments Q100示差走査熱量計を用いて、DSCサーモグラムを取得した。上記のように調製した(S)−3−アミノメチル−7−(3−ヒドロキシ−プロポキシ)−3H−ベンゾ[c][1,2]オキサボロール−1−オール多形形態HCl3の試料を、アルミニウムDSCパンの中に直接、正確に計り入れた。手で圧力を加え、(緩い蓋の構造としても知られる)このパンの各部分を押すことにより、このパンの封をした。温度を15℃/分の速度で傾斜を付けた。75および102℃で最小を示す広範の吸熱反応の推移が測定された。DSCサーモグラムを図13に示す。
【0153】
TA Instruments Q500熱重量分析器を用いて、多形形態HCl3のTGAサーモグラムを取得した。この試料パンの重さを量り、上記のように調製した(S)−3−アミノメチル−7−(3−ヒドロキシ−プロポキシ)−3H−ベンゾ[c][1,2]オキサボロール−1−オール多形形態HCl3の試料をこのパンに入れた。温度を15℃/分の速度で傾斜を付けた。27〜104℃の間に、4.7%の重量損失が観察され、このことは脱水による水損失と関連する。214℃を越えてから、さらなる分解が観察された。TGAサーモグラムを図14に示す。
【0154】
形態HCl2
調製方法:
2−ブタノン(10mL)の溶液を、形態HCl4で飽和した。飽和溶液を20mLのシンチレーションバイアルに移し、実験室のフードの中で、周囲条件下、内容物を蒸発させた。蒸発により、油の存在下、微量の白い沈殿物が形成した。この白い沈殿物を真空濾過により単離し、形態HCl2と一致するpXRDパターンを示した。図15は、Nd:YVO4レーザー(λ=1064nm)からの励起で、4cm−1の解像度で、Nicolet NXR 9650 FT−ラマン分光計を用いて記録したFT−ラマンスペクトルを示す。形態HCl2は、以下の波数(cm−1)においてピークを示す:3051.4、2954.9、2941.2、2910.4、1604.2、1580.8、1453.3、1297.9、1262.8、1247.3、1226.8、1167.6、1068.4、686.7、597.2。例示的な実施形態において、これらのピークの全リスト、またはピークのサブセットは、(S)−3−アミノメチル−7−(3−ヒドロキシ−プロポキシ)−3H−ベンゾ[c][1,2]オキサボロール−1−オール多形形態HCl2を特徴づけるのに十分であり得る。図16Aは、上記のように調製した(S)−3−アミノメチル−7−(3−ヒドロキシ−プロポキシ)−3H−ベンゾ[c][1,2]オキサボロール−1−オール多形形態HCl2の、PANalytical X’Pert Pro回折計を用いて取得した粉末X線回折パターンを示す。ゼロバックグラウンドで、ケイ素挿入具を有する試料保持具上で、試料を穏やかにフラットにした。Cu−Kα線源ならびに40kVおよび45mAの発電機の電力を用いて、2〜40°の連続2θ走査範囲を使用した。20秒のステップ時間と、0.017°/ステップの2θステップサイズを使用した。試料を30rpmで回転させた。実験を常温、周囲湿度で行った。図16Bに、図16Aに示す形態HCl2を特徴づける°2θ±0.2°2θにおけるピークおよびd−間隔値を載せる。例示的な実施形態において、これらのピークの全リスト、またはピークのサブセットは、(S)−3−アミノメチル−7−(3−ヒドロキシ−プロポキシ)−3H−ベンゾ[c][1,2]オキサボロール−1−オール多形形態HCl2を特徴づけるのに十分であり得る。
【0155】
図17は、TA Instruments Q100示差走査熱量計を用いて取得したDSCサーモグラムを示す。上記のように調製した(S)−3−アミノメチル−7−(3−ヒドロキシ−プロポキシ)−3H−ベンゾ[c][1,2]オキサボロール−1−オール多形形態HCl2の試料を、アルミニウムDSCパンの中に直接、正確に計り入れた。手で圧力を加え、(緩い蓋の構造としても知られる)このパンの各部分を押すことにより、このパンの封をした。温度を15℃/分の速度で傾斜を付けた。49.5℃から開始し、31.9J/gのエンタルピーを有する吸熱反応の推移が測定された。135.8℃から開始し、156.4J/gのエンタルピーを有するさらなる吸熱が測定された。
【0156】
形態HCl5
多形HCl5は、常温で保存すると不安定であり、多形HCl3に変化する。
【0157】
調製方法:
水を10%含むイソプロパノール溶液を、約25mgの(S)−3−アミノメチル−7−(3−ヒドロキシ−プロポキシ)−3H−ベンゾ[c][1,2]オキサボロール−1−オール多形形態HCl4を含むバイアルに加えた。48時間にわたって、0〜40℃の間で温度を変えながら、得られた混合物を撹拌した。この溶液を濾過により単離し、蒸発させ、乾燥させた。新たに単離した生成物が新規の結晶形態(形態HCl5)であることを確かめた。
【0158】
図18は、Nd:YVO4レーザー(λ=1064nm)からの励起で、4cm−1の解像度で、Nicolet NXR 9650 FT−ラマン分光計を用いて記録した多形形態HCl5のFT−ラマンスペクトルを示す。形態HCl5は、以下の波数(cm−1)においてピークを示す:2931.0、2917.7、2896.2、1583.8、1474.0、1302.6、1062.0、685.6、546.4、493.3、294.0、262.2、206.8、180.9、140.4。例示的な実施形態において、これらのピークの全リスト、またはピークのサブセットは、(S)−3−アミノメチル−7−(3−ヒドロキシ−プロポキシ)−3H−ベンゾ[c][1,2]オキサボロール−1−オール多形形態HCl5を特徴づけるのに十分であり得る。
【0159】
本発明が、態様の全ての組み合わせを、本明細書記載の全ての他の適切な態様および/または例示的な実施形態で補うことを理解すべきである。
【0160】
本明細書記載の実施例および実施形態は単に例示を目的とし、それに照らして、様々な改変または変更は、当業者に提案され、本出願の要旨および範囲、ならびに添付の特許請求の範囲の中に含まれるべきであることが理解される。本明細書で引用した全ての公表文献、特許、および特許出願は、全ての目的のために、参照により、本明細書にその全体が組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表1に記載の°2θ値±0.2°2θのいずれかを基本的に有することにより特徴付けられる結晶多形体。

【請求項2】
表1に示される任意の4本のピーク±0.2°2θを含む、請求項1に記載の結晶多形体。
【請求項3】
表1に示される任意の7本のピーク±0.2°2θを含む、請求項1または請求項2に記載の結晶多形体。
【請求項4】
表1に示される任意の10本のピーク±0.2°2θを含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の結晶多形体。
【請求項5】
表1に示される全てのピーク±0.2°2θを含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の結晶多形体。
【請求項6】
XRPDパターン1のピーク±0.2°2θのいずれかを基本的に有することにより特徴付けられる(S)−3−アミノメチル−7−(3−ヒドロキシ−プロポキシ)−3H−ベンゾ[c][1,2]オキサボロール−1−オールの塩酸塩の結晶多形体。

【請求項7】
X線結晶解析において、実質的に以下の値の結晶パラメーターを有する(S)−3−アミノメチル−7−(3−ヒドロキシ−プロポキシ)−3H−ベンゾ[c][1,2]オキサボロール−1−オールの塩酸塩の結晶多形体:
結晶系:斜方晶系
空間群:P2
結晶サイズ:a=9.1045(2)Å、b=10.3107(2)Å、c=14.5988(3)Å、α=90.00°、β=90.00°、γ=90.00°
体積:1370.44(5)Å
Z、計算密度:4、1.326gcm−3
【請求項8】
ラマンスペクトル(1)のピーク±50波数(cm−1)のいずれかを有することにより特徴付けられる(S)−3−アミノメチル−7−(3−ヒドロキシ−プロポキシ)−3H−ベンゾ[c][1,2]オキサボロール−1−オールの塩酸塩の結晶多形体。

【請求項9】
約2800〜約3200cm−1の間のピーク±50波数の多重線を有し、かつ約1600〜約600cm−1の間のピーク±50波数の別の多重線を有するが、約1800〜約2200cm−1の間のピーク±50波数を基本的に有しない、請求項8に記載の結晶多形体。
【請求項10】
a)請求項1〜9のいずれか1項に記載の結晶多形体;および
b)少なくとも1種類の賦形剤または担体
を含む医薬組成物。
【請求項11】
疾病に罹患した動物において前記疾病を治療する方法であって、前記動物に、請求項1〜10のいずれか1項に記載の治療有効量の結晶多形体を投与するステップを含み、前記疾病は細菌と関連するものである、前記方法。
【請求項12】
前記細菌がグラム陰性細菌である、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記細菌が、ナイセリア属の種、エシェリキア属の種、シゲラ属の種、サルモネラ属の種、エルシニア属の種、クレブシエラ属の種、プロテウス属の種、エンテロバクター属の種、セラシア属の種、ビブリオ属の種、カンピロバクター属の種、ヘリコバクター属の種、シュードモナス属の種、バクテロイデス属の種、ヘモフィルス属の種、ボルデテラ属の種、レジオネラ属の種、フランシセラ属の種、ブルセラ属の種、パスツレラ属の種、ガルドネレラ属の種、スピロヘータ属の種、クラミジア属の種、リケッチア属の種から成る群から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記疾病が、髄膜炎、淋病、耳炎、外耳炎、毛嚢炎、下痢、尿路感染、敗血症(sepsis)、HAP、菌血症、心内膜炎、胃腸炎、腸チフス、敗血症(supsis)、心内膜炎、副鼻腔炎(sinusitis)、腺ペスト、チフス、院内感染、皮膚および皮膚組織感染、肺炎、コレラ、慢性胃炎、骨髄炎、熱傷創感染、角膜感染、歯周病、えん下肺炎、喉頭蓋炎、敗血症性関節炎、軟性下疳、膣炎、百日咳、ポンティアック熱、ツラレミア、ブルセラ症、梅毒、ライム病、クラミジア、ロッキー山発疹熱、発疹チフス、気管気管支炎、遊走生肺炎、尿道炎、腎盂腎炎、腹腔内感染、発熱性好中球減少、骨盤内感染、菌血症ならびに敗血症(septicaemia)から成る群から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記疾病が肺炎である、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
結晶性(S)−3−アミノメチル−7−(3−ヒドロキシ−プロポキシ)−3H−ベンゾ[c][1,2]オキサボロール−1−オール・HCl、形態HCl4。
【請求項17】
結晶性(S)−3−アミノメチル−7−(3−ヒドロキシ−プロポキシ)−3H−ベンゾ[c][1,2]オキサボロール−1−オール・HCl、形態HCl3。
【請求項18】
結晶性(S)−3−アミノメチル−7−(3−ヒドロキシ−プロポキシ)−3H−ベンゾ[c][1,2]オキサボロール−1−オール・HCl、形態HCl2。
【請求項19】
結晶性(S)−3−アミノメチル−7−(3−ヒドロキシ−プロポキシ)−3H−ベンゾ[c][1,2]オキサボロール−1−オール・HCl、形態HCl1。
【請求項20】
上記の結晶の(S)−3−アミノメチル−7−(3−ヒドロキシ−プロポキシ)−3H−ベンゾ[c][1,2]オキサボロール−1−オール・HCl、形態HCl4、HCl3、HCl2、HCl1を調製する方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12A】
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【図12B】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16A】
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【図16B】
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【図17】
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【図18】
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【公表番号】特表2012−512262(P2012−512262A)
【公表日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−542458(P2011−542458)
【出願日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際出願番号】PCT/US2009/068609
【国際公開番号】WO2010/080558
【国際公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【出願人】(511145753)アナコール ファーマシューティカルズ,インコーポレーテッド (2)
【出願人】(509329523)グラクソスミスクライン エルエルシー (38)
【Fターム(参考)】