説明

1−カルバモイルシクロアルキルカルボン酸化合物、その製法およびその使用法

本発明は、薬学の分野に関連し、より詳しくはシクロアルキルアミノ酸およびオキサゾリジンジオンの製造において有用な、新規なシクロアルキルアミド酸組成物、およびシクロアミド酸および以下の式(I)で示される、シクロアミノ酸の製造方法に関する。
【化1】


【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
シクロアルキルアミド酸化合物、その製法およびその使用法

出願に係るデータ
本件特許出願は、2003年8月12日付で出願された、米国仮出願第60,494,363号に基く利益を請求するものである。
【0002】
技術分野
本発明は、薬学の分野に関連し、より詳しくはシクロアルキルアミノ酸およびオキサゾリジンジオンの製造において有用な、新規なシクロアルキルアミド酸組成物、およびシクロアミド酸およびシクロアミノ酸の製造方法に関する。
【0003】
背景技術
シクロアルキルアミノ酸およびオキサゾリジンジオンは、薬剤の製造において有用な化合物である。例えば、シクロブタンアミノ酸は、ペプチド合成において有用であり、また癌の治療における、ホウ素中性子捕獲療法(BNCT)において使用するのに有用である(Refs. Kabalka, G.W., Yao, M.-L., Tetrahedron Lett., 2003, 1879-1881; Srivastava, R.R., Singhaus, R.R. & Kabalka, G.W., J. Org. Chem., 1999, 64:8495-8500; Srivastava, R.R., Kabalka, G.W., J. Org. Chem., 1997, 62:8730-8734; Srivastava, R.R., Singhaus, R.R. & Kabalka, G.W., J. Org. Chem., 1997, 62:4476-4478)。オキサゾリジンジオンは、様々なアミノ酸誘導体の合成において有用である。当分野においては、高価でなく、しかも取扱いが容易な材料を用いて、これら製品を製造するための、大規模な合成経路の開発に対する要望がある。
当分野において、シクロアルキルアミノ酸の合成については、ほんの僅かな経路しか報告されていない。1937年に、Demanyanovは、シクロブタンジアミドから、塩基加水分解に従ってそのヒダントインに転位させることにより、以下のスキームIに示される化合物の合成を報告した。
【0004】
【化1】

【0005】
(Demyanov, N.A., Tel'nov, S.M., Izv. Akad. Nauk. SSSR, Ser. Khim., 1937, 529および1964年に再掲載された文献(Dvonch, W., Fletcher, H., Alburn, H.E., J. Org. Chem., 1964, 29:2764)を参照のこと)。様々な目標のための、このスキームの現在の変法は、Tanaka, K.-I., Iwabuchi, H., Sawanishi, H., Tetrahedron: Asymmetry, 1995, 6(9):2271に見出すことができる。
シクロブタンアミノ酸の別の合成経路は、以下のスキームIIに示すような、クルチウス転位を経るものである(Haefliger, W., Kloppner, E., Helv. Chim. Acta, 1982, 65:1837)。
【0006】
【化2】

【0007】
エチルシアノアセテートは、1-シアノ-シクロブタンカルボン酸のエチルエステルを製造するために、エチル2-シアノアセテートの反応を含む、環化反応において利用されている(DE 2,353,584;N.S. Zefirov, T.S. Kuznetsova, S.I. Kozhushkov, L.S. Surmina & Z.A. Rashchupkina, J. Org. Chem. USSR (英訳版), 1983, 19:541-548)。この文献では、極めて危険な経路を考えており、また研究的な量での製造に対して実施可能であるに過ぎない。というのは、アジド、例えばジフェニルホスホリルアジド(DPPA)は、爆発性物質として周知であり、一般的にはパイロットプラントでの使用並びに製造には不向きである。
酸アミドのホフマン転位も報告されている。Huang, Lin & Li, J. Chin. Chem. Soc., 1947, 15:33-50; Lin, Li & Huang, Sci. Technol. China, 1948, 1:9; Huang, J. Chin. Chem. Soc., 1948, 15:227; M.L., Izquierdo, I. Arenal, M. Bernabe, E. Alvearez, E.F. Tetrahedron, 1985, 41:215-220; Zitsane, D.R., Ravinya, I.T., Riikure, I.A., Tetere, Z.F., Gudrinietse, E.Yu., Kalei, U.O., Russ. J. Org. Chem., EN, 1999, 35(10):1457-1460; ZORKAE, Zh. Org. Khim. RU, 1999, 35(10):1489-1492。NBS/DBUを使用したホフマン反応についても報告されている(X. Huang, M. Seid, J.W. Keillor, J. Org. Chem., 1997, 62:7495-7496)。
【0008】
発明の開示
本発明の最も広義の局面によれば、以下の式Iで表されるシクロアルキルアミド酸化合物、およびその製薬上許容される塩、塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、光学異性体、エナンチオマー、ジアステレオマーおよびラセミ混合物、エステル、互変異性体、個々の異性体、および異性体混合物を提供するものである:



【0009】
【化3】

【0010】
ここで、R1は、C1-4アルキル基、Hであり;
Xは、場合により部分的にまたは完全にハロゲン化された、かつ、場合により1またはそれ以上のOH、NH2、C1-6、SO2、フェニル、CF3で置換されているC1-2である。
本発明は、また以下の式Iで表されるシクロアルキルアミド酸:
【0011】
【化4】

【0012】
の製造方法であって、以下の諸工程を含むことを特徴とする、該方法にも関連する:
工程a) 以下の式(Ia):
【0013】
【化5】

【0014】
(ここで、R1は、C1-4アルキル基、Hである)で表されるシアノエステルを、Na2CO3、DBU、NaOH、KOH、EtONa、EtOK、K2CO3等の塩基およびジブロモプロパン、ジクロロプロパン、クロロブロモプロパン、1,3-ジトシルプロパン、1,3-ジメシルプロパン等の有機酸でアルキル化して、以下の式(Ib)で表されるシクロアルキルシアノエステルを生成する工程:





【0015】
【化6】

【0016】
Xは、場合により部分的にまたは完全にハロゲン化されており、かつ、場合により1またはそれ以上のOH、NH2、C1-6、SO2、フェニル、CF3で置換されており、
工程b) 適当な塩基を用いて、該工程a)の生成物の塩基加水分解を行い、以下の式(Ic)で表されるシクロアルキルアミド酸化合物を生成する工程:
【0017】
【化7】

【0018】
本発明のもう一つの態様では、Xが0または1である、直ぐ上に記載したシクロアルキルアミド酸の製法に関連する。
本発明の更なる態様においては、上記工程b)のシクロアルキルアミド酸生成物を、場合により塩基および酸化剤で処理して、以下の式(Id)で表されるシクロアルキルアミノ酸化合物を製造することが可能である:
【0019】
【化8】

【0020】
本発明の更なる態様においては、上記工程b)で得た生成物を、更にN-ブロム化剤および有機塩基で処理して、オキサゾリジンジオンを介して、アミノエステルを生成することができる:
【0021】
【化9】

【0022】
ここで、Rはアリル、場合により部分的にまたは完全にハロゲン化され、かつ、場合により1またはそれ以上のOH、NH2、C1-6、SO2、フェニル、CF3で置換されているC1-10である。
本発明の他の態様では、上記式(Ia)で表される他のアルキルシアノエステルを、出発物質として使用することができる。適当なアルキルシアノエステルは、イソプロピルシアノアセテート、メチルシアノアセテート、エチルシアノアセテート、ブチルシアノアセテートを含む。好ましいシアノエステルは、エチルシアノアセテートである。
本発明の別の態様では、H2O2以外の求核添加剤をアミド酸の製造のために使用することができる。適当な求核添加剤は、過炭酸ナトリウムを含む。好ましい求核添加剤はH2O2である。
本発明の他の態様では、該転位のために、酸化剤としてNaOClを使用する。他の適当な酸化剤は、CaOCl、NaOBr、KOClを含む。好ましい酸化剤は、CaOClおよびNaOClである。
【0023】
用語および定義
使用する化学命名法および約定
本明細書に具体的に定義されていない用語には、本明細書の記載並びに内容に照らして、当業者がこれら用語に対して当然与える意味が、付与されているものとする。しかし、逆に指定されていない限り、本明細書および添付の特許請求の範囲において使用されている如く、以下の用語は、指示された意味を持ち、かつ以下の約定が付加される。
用語「本発明の化合物」およびこれに等価な表現は、本明細書に記載されているような一般式で示される化合物を意味し、前後関係において許される場合には、これら化合物の互変異性体、そのプロドラッグ、その塩、特に製薬上許容される塩、およびその溶媒和物並びに水和物をも包含する。一般に、また好ましくは、本発明の化合物および本発明の化合物を表す該一般式は、その安定な化合物のみを含み、また、たとえ不安定な化合物が、言葉本来の意味において、該化合物の一般式に包含されるものと考えられる場合であっても、これらを排除すべきものと理解すべきである。同様に、中間体とは、これら自体が特許請求されているか否かとは無関係に、前後関係において許される場合には、その塩および溶媒和物をも包含するものとする。明確性を担保するために、前後関係において許される場合には、しばしば特定の例が本明細書に示されるが、これらの例は、純粋に例示的なものであり、前後関係において可能な場合には、他の例の排除を意図するものではない。
【0024】
用語「随意のまたは場合により(optional or optionally)」とは、その語の後に記載される事象または状況が、起るかあるいは起らないことを意味し、またその記載は、該事象または状況が発生している例およびこれらが発生していない例を含むことを意味する。例えば、「場合により置換されたシクロアルキル」とは、該シクロアルキル基が置換されていても、置換されていなくてもよいことを意味し、またこの記載は、置換シクロアルキル基および置換基を含まないシクロアルキル基両者を包含することを意味する。
用語「置換された」とは、具体的に指定されているか否かとは無関係に、ある基または部分の1原子上の任意の一つまたはそれ以上の水素原子が、一群の指定された置換基から選択されるもので置き換えられていることを意味するが、該原子の通常の原子価を越えず、かつ該置換が安定な化合物をもたらすことを条件とする。置換基との結合が、あるリング内の2つの原子を連結する結合を横切る場合には、このような置換基は、該リングの任意の原子と結合することができる。ある置換基が、ある原子を介して該化合物の残りに結合している際に、該原子を指定すること無しに、該置換基を列挙している場合には、該置換基は、このような置換基の任意の原子を介して結合することが可能である。一般に、任意の置換基または基が、任意の成分または化合物内に2度以上現れる場合には、各事象におけるその定義は、他のあらゆる事象におけるその定義とは独立である。しかし、置換基および/または変数のこのような組合わせは、このような組合わせが、安定な化合物を与える場合においてのみ可能である。
本明細書に記載する各反応の収率は、理論収率に対する百分率として表される。
【0025】
用語「製薬上許容される塩」とは、確実な医学的判断の範囲内で、不適当な有害性、刺激性、アレルギー応答性等をもたらすことなく、ヒトおよび低級動物の組織と接触状態で使用するのに適した、妥当な利益/リスク比に相応しい、一般的には水溶性または油溶性またはこれら媒体に対する分散性を有し、しかもその意図した用途に対して有効な、本発明の化合物の塩を意味する。この用語は、製薬上許容される酸付加塩および製薬上許容される塩基付加塩を包含する。本発明の化合物は、実際に遊離塩基および塩形状両者において有用であるので、その塩としての使用は、要するに、その塩基としての使用に等価である。適当な塩のリストは、例えばS.M. Birge等, J. Pharm. Sci., 1977, 66:1-19に見出すことができ、この文献の内容全体を本発明の参考とする。
用語「溶媒和物」とは、ある化合物と1またはそれ以上の溶媒分子との物理的な結合、または溶質(例えば、上記式(I)の化合物)および溶媒、例えば水、エタノールまたは酢酸により生成される様々な化学量論的な錯体を意味する。この物理的な結合は、様々な程度の、イオン結合および共有結合を含むことができ、水素結合をも含む。幾つかの例において、該溶媒和物は、例えば1またはそれ以上の溶媒分子が、結晶性個体の結晶格子内に組込まれた場合には、単離することができるであろう。一般に、選択された該溶媒和物は、該溶質の生物学的な活性を妨害しない。溶媒和物は、溶液-相および単離可能な溶媒和物両者を包含する。代表的な溶媒和物は、水和物、エタノレート、メタノレート等を含む。
【0026】
用語「水和物」とは、該溶媒分子がH2Oである、溶媒和物を意味する。
以下において論じるような本発明の化合物は、その遊離塩基および酸、その塩、溶媒和物、およびプロドラッグを含み、また明確に述べあるいは提示することはないが、その構造内には酸化された硫黄原子または四級化された窒素原子、特にその製薬上許容される形状を含むことができる。そのような形状、特にその製薬上許容される形状は、添付する特許請求の範囲によって、本発明の範囲内に含まれる。
用語「異性体」とは、同一の原子数およびその種類、および結果的に同一の分子量を持つが、空間内における該原子の配置または配列に関して異なっている化合物を意味する。この用語は、立体異性体および幾何異性体を包含する。
【0027】
用語「立体異性体」または「光学異性体」とは、少なくとも一つのキラル原子または垂直方向の非対称面を生じる束縛された回転を持つ安定な異性体(例えば、幾つかのビフェニル、アレン、およびスピロ化合物)を意味し、また平面偏光を回転することができる。非対称中心および他の化学的な構造が、立体異性体を生成することのできる本発明の化合物中に存在するので、本発明は、立体異性体およびその混合物をも意図する。本発明の化合物およびその塩は、不斉炭素原子を含み、その結果単一の立体異性体、ラセミ体、およびエナンチオマーとジアステレオマーとの混合物として存在することができる。典型的には、このような化合物は、ラセミ混合物として製造し得る。しかし、所望により、このような化合物を、純粋な立体異性体、即ち個々のエナンチオマーまたはジアステレオマーとして、あるいは立体異性体に富む混合物として製造または単離することができる。以下において更に詳しく論じるが、これら化合物の個々の立体異性体は、所定のキラル中心を含む光学的に活性な出発物質からの合成により、あるいはエナンチオマー生成物の混合物の製造およびこれに引続き行われる分離または分割、例えばジアステレオマー混合物への転化、これに続く分離または再結晶、クロマトグラフィー技術、キラル分割剤の使用、またはキラルクロマトグラフィーカラム上での該エナンチオマーの直接的な分離によって製造される。特定の立体化学的特性を持つ出発物質は、市販品として入手可能であるか、あるいは以下に記載する方法によって製造し、当分野において周知の技術によって分割することができる。
【0028】
用語「エナンチオマー」とは、相互に重ね合わせることのできない、鏡像関係にある一対の立体異性体を意味する。
用語「ジアステレオ異性体」または「ジアステレオマー」とは、相互に鏡像関係にない光学異性体を意味する。
用語「ラセミ混合物」または「ラセミ体」とは、個々のエナンチオマーを等量づつ含む混合物を意味する。
用語「非-ラセミ混合物」とは、個々のエナンチオマーを、等しくない量で含む混合物を意味する。
本発明の化合物の幾つかは、一種以上の互変異性形状で存在することができる。上記の如く、本発明の化合物は、このような互変異性体全てを含む。
ある化合物の生物学的および薬理学的な活性が、該化合物の立体化学的特性に対して敏感であることは、当分野において周知である。従って、例えばエナンチオマーは、しばしば代謝、タンパク質結合等を含む、薬物動力学的な性質、および示される活性の型、該活性の程度、毒性等を含む薬理的な性質における差を包含する、著しく異なる生物学的活性を示す。従って、当業者は、一方のエナンチオマーがより活性であり、あるいは他方のエナンチオマーに対して量的に勝っている場合、または該他方のエナンチオマーから分離された場合に、有利な効果を示す可能性があることを理解するであろう。更に、当業者は、この開示および従来の知見から、本発明の化合物のエナンチオマーを分離し、これに富む生成物を得、あるいはこれを選択的に製造する方法を熟知しているはずである。
【0029】
かくして、ラセミ型の薬物を使用できるが、このものの効果は、しばしばエナンチオマー的に純粋な薬物を等量で投与した場合よりも低く、事実幾つかの場合、一方のエナンチオマーは薬理的に不活性であり、また単なる希釈剤として機能するに過ぎない。例えば、イブプロフェンは、以前ラセミ体として投与されていたが、このイブプロフェンのS-異性体のみが、抗-炎症剤として有効であることが明らかにされている(しかし、イブプロフェンの場合、R-異性体は不活性であるものの、これはインビボにてそのS-異性体に転化され、従って該薬物のラセミ型の作用の迅速性は、その純粋なS-異性体よりも劣っている)。更に、エナンチオマーの薬理的な活性は、明確な生物学的活性を含む可能性がある。例えば、S-ペニシラミンは、慢性関節炎の治療薬であり、一方R-ペニシラミンは有毒である。実際に、幾つかの精製されたエナンチオマーは、そのラセミ体に勝る利点を持つ。というのは、精製された個々の異性体が、そのラセミ混合物と比較して、より速い経皮透過速度を持つことが報告されているからである。これについては、米国特許第5,114,946号および4,818,541号を参照のこと。
このように、一方のエナンチオマーが、薬理的により活性であり、毒性が低く、あるいは他方のエナンチオマーよりも身体内で好ましい性質を持つ場合、このエナンチオマーは、治療上の観点から、優先的に投与するのにより有益である。このように、治療中の患者は、該薬物の低い全投薬量、または恐らく有害であるか、あるいは一方のエナンチオマーの阻害剤である、他方のエナンチオマーのより低い用量による投薬を受けることになる。
【0030】
純粋なエナンチオマーまたは所定のエナンチオマーに富む(ee)またはエナンチオマーに関して純粋な混合物の製造は、多くの方法、即ち(a) エナンチオマーの分離または分割、または(b) 当業者には公知のエナンチオマー選択的合成法、またはこれらの組み合わせの一つまたはそれ以上によって達成される。これらの分割法は、一般にキラル体の識別に基いており、また例えばキラル体の固定相を用いたクロマトグラフィー、エナンチオマー選択的ホスト-ゲスト錯形成、キラル助剤を用いた合成または分割、エナンチオマー選択的合成法、酵素を用いたまたは用いない速度論的分割、または一時的なエナンチオマー選択的結晶化方法を包含する。このような方法は、一般にキラル分離技術:実際の方法(Chiral Separation Techniques: A Practical Approach) (第2版), G. Subramanian(編), Wiley-VCH, 2000; T.E. Beesley & R.P.W. Scott, キラルクロマトグラフィー(Chiral Chromatography), John Wiley & Sons, 1999;およびSatinder Ahuja, クロマトグラフィーによるキラル分離(Chiral Separations by Chromatography), Am. Chem. Soc., 2000。更に、エナンチオマー過剰量または純エナンチオマーを定量する、同様に周知の方法があり、これは例えばGC、HPLC、CE、またはNMR法、および絶対配置および配座の割振り、例えばCD ORD、X-線結晶解析法、またはNMR法を含む。
一般に、化合物の名称または構造において、その特定の立体化学的特徴または異性体の形状が具体的に示されていない場合には、個々の幾何異性体または立体異性体またはラセミ体もしくは非-ラセミ体混合物の何れであれ、互変異性体形状および異性体形状およびその混合物全てを含むことを意図している。
【0031】
一般的な合成法
本発明は、以下の一般式Iで表されるシクロアルキルアミド酸の組成物を提供し、またその製法を提供する:
【0032】
【化10】

【0033】
該一般式Iにおいて、XおよびR1は、上記定義通りである。
本発明は、また式(I)で表される化合物の製造方法を提供する。本発明の化合物の製造において使用する中間体は、市販品として入手できるか、あるいは当業者に公知の方法によって容易に製造される。最適な反応条件および反応時間は、使用する特定の試薬に応じて変えることができる。特に述べない限り、溶媒、温度、圧力およびその他の反応条件は、当業者が容易に選択できるものである。具体的な手順は、実施例部分において与えられる。典型的には、反応の進行を、所望により薄層クロマトグラフィー(TLC)によって追跡することができ、また中間体および生成物は、シリカゲル上でのクロマトグラフィーおよび/または再結晶によって精製することができる。
【0034】
工程a) シアノエステルのアルキル化
本発明の方法の工程a)は、以下の式(Ia):
【0035】
【化11】

【0036】
(ここで、R1は、C1-C 4アルキル基、Hである)で表される化合物と、塩基、例えばNa2CO3、DBU、NaOH、KOH、EtONa、EtOK、またはK2CO3およびシクロアルキル化剤、例えば1,3-ジブロモプロパン、1,3-ジクロロプロパン、1-クロロ-3-ブロモプロパン、1-ブロモ-3-クロロプロパン、1,3-ジトシルプロパン、または1,3-ジメシルプロパンと反応させて、以下の式(Ib)で表されるシクロアルキルシアノエステルを生成する工程を含む:
【0037】
【化12】

【0038】
式(Ia)のアルキルシアノエステルは、DE 2,353,584;N.S. Zefirov, T.S. Kuznetsova, S.I. Kozhushkov, L.S. Surmina & Z.A. Rashchupkina, J. Org. Chem. USSR (英訳版), 1983、19:541-548に記載されているようにして製造できる。この文献の内容全体を、本発明の参考とする。アルキルシアノエステルは、またアルドリッチおよび/またはデグッサ(Aldrich & DeGussa)社から市販品として入手することもできる。
式Iの多くのアルキルシアノエステルは、本発明の方法において使用でき、その例は、メチルシアノエステル、プロピルシアノエステル、イソプロピルシアノエステル、n-ブチルシアノエステルおよびt-ブチルシアノエステルを含む。式(Ia)のアルキルシアノエステルの内好ましい化合物は、エチルシアノエステルである。
このアルキル化反応は、0〜100℃なる範囲の温度にて、0.5〜36時間なる範囲の反応時間に渡り行うことができる。
工程a)に対する好ましい反応条件は、以下の通り、60℃にて5時間である。
【0039】
工程b) シアノエステルの塩基加水分解
本発明の方法の工程b)は、適当な塩基を用いて、該工程a)の生成物の塩基加水分解を行い、以下の式(Ic)で表されるシクロアルキルアミド酸化合物を生成する工程を含む:






【0040】
【化13】

【0041】
ここで、R1は、C1-C 4アルキル基、Hであり、有機溶媒および塩基中で、式(Ib)の化合物を生成する。
本発明の方法の工程b)は、適当な塩基を用いて、該工程a)の生成物について、塩基加水分解を行い、上記式(Ib)で表されるシクロアルキルアミド酸化合物を製造することを含む。適当な塩基は、NaOH、KOH、Ca(OH)2を含む。好ましい塩基は、NaOHである。
この工程b)の反応は、-10〜50℃なる範囲の温度にて、10〜600分なる範囲の反応時間に渡り行うことができる。
この工程b)に関する好ましい反応条件は、以下の通りである:45℃にて30分間撹拌し、次いで0-25℃にてH2O2を添加し、更に2時間撹拌する。
【0042】
本発明の更なる態様において、該工程b)の生成物を、連続する改良ホフマン転位-分子内環化および開環反応において、NBS、ジアザビシクロウンデセン(DBU)およびベンジルアルコールで処理して、アミノエステルとすることが可能である。あるいはまた、以下のブロム化試薬を使用することもできる。即ち、1,3-ジブロモ-5,5-ジメチルヒダントイン、n-ブロモアセタミド、1-ブロモ-3-クロロ-5,5-ジメチルヒダントイン、3-ブロモ-4,4-ジメチル-2-オキサゾリジノン、1-ブロモ-5,5-ジメチルヒダントイン、3-ブロモ-5,5-ジメチルヒダントイン、ジブロモイソシアヌル酸、n-ブロモアセタミド一水和物、n-ブロモカプロラクタム、n-ブロモフタルイミド、3-ブロモ-1-クロロ-5,5-ジメチルヒダントイン、ジブロモイソシアヌル酸、カリウム塩、n-ブロモグルタルイミド、1,3-ジブロモ-5-エチル-5-メチルヒダントイン、1-ブロモ-3,5-ジメチル-5-エチルヒダントイン、1,3-ジブロモヒダントイン、1,3-ジブロモ-5-イソプロピル-5-メチルヒダントイン、ジブロモシアノアセタミド、3-ブロモ-5-メチル-5-フェニル-イミダゾリジン-2,4-ジオン。
あるいはまた、アミノエステルを製造するために、以下の試薬を用いることも可能である:MeOH、EtOH、PrOH、i-PrOH、BuOH、i-BuOH、およびPhCH2OH。
アミノエステルを製造するための好ましい条件は、30℃以下の温度にてDBUを添加し、次いで45℃にてNBSを添加し、かつ45℃にて20分間撹拌することである。
【0043】
合成例
本発明をより一層十分に理解するために、以下の実施例を提示する。これらの実施例は、本発明の態様を例示するためのものであり、また本発明を何等限定するものではない。というのは、当業者には理解されるように、特定の試薬または条件は、個々の化合物に応じて変更できるからである。使用する出発物質は、市販品として入手できるか、あるいは当業者が市販品として入手できる材料から容易に製造できるものである。
【0044】
実施例1:エチルシアノアセテートからのシクロブタンアミド酸の合成

【0045】
【化14】

【0046】
シアノエステル11:窒素雰囲気下で、1,3-ジブロモプロパン(20.2g、0.10M、0.2当量)を、K2CO3(165.9g、1.2M、2.4当量)をTHF(540mL)およびDMSO(60mL)に分散させた懸濁液に、周囲温度にて添加した。この撹拌した混合物を、60℃に加熱し、エチルシアノアセテート(56.5g、0.50M、1当量)と1,3-ジブロモプロパン(100.8g、0.50M、1当量)との1:1混合物を、8時間に渡り添加ロートを介して、徐々に添加した。この反応混合物を60℃にて5時間撹拌し、周囲温度まで冷却し、次いで5LのH2Oで急冷した。有機相を分離し、減圧下で濃縮し、蒸留して、78-85℃/11mmの画分を得たが、これがシアノエステル11(38g、収率50%)であった。1H NMR (CDCl3, 400 MHz): δ:4.27 (q, J=7.2Hz, 2H), 2.78-2.68 (m, 2H), 2.68-2.57 (m, 2H), 2.31-2.21 (m, 1H), 2.21-2.10 (m, 1H), 1.30 (t, J=7.2Hz, 3H); 13C NMR (CDCl3, 100 MHz): δ:168.7, 120.3, 62.8, 39.6, 31.2, 17.2, 14.0; MS(EI): 154 (M++1)。
アミド酸12:シアノエステル11(4.60g、30mM、1当量)および5N NaOH (12mL、60mM、2当量)を、100mLの丸底フラスコに添加した。この撹拌した混合物を、45℃にて30分間加熱し、得られた均一な溶液を、周囲温度まで冷却した。水浴により温度を約25℃に維持しつつ、30%のH2O2(6mL、約60mM、2当量)を、1時間に渡り、徐々に添加した。この混合物を30分間撹拌し、濃塩酸でpH=3.0の酸性にした。得られたこのスラリーを濾過して、無色個体として、3.09gのアミド酸12(72%の収率)を得た。1H NMR (DMSO, 400 MHz): δ:7.25 (s, 1H), 6.95 (s, 1H), 2.40-2.25 (m, 4H), 1.81-1.65 (m, 2H); 13C NMR (DMSO, 100 MHz): δ:175.5, 174.5, 54.4, 29.9, 16.4; MS(EI): 142 (M-1)。
【0047】
実施例2:シクロブタンアミド酸からのシクロブタンアミノ酸の合成
アミノ酸双性イオン14:アミド酸12(1.43g、10.0mM、1当量)を、水-氷浴を用いて、0℃にて、N2雰囲気下で、1N NaOH水性溶液(10mL、10.0mM、1当量)に徐々に添加した。NaOCl溶液(アルドリッチケミカル社(Aldrich Chem. Co.)から入手した10-13%溶液、9.0mL、約15.0mM、1.5当量)を、これに徐々に添加し、得られた混合物を、5℃にて1時間撹拌した。10NのNaOH溶液(2.0mL、20mM、2当量)を、これに徐々に添加して、その温度を20℃以下に維持し、次いでこの混合物を15-25℃にて3時間撹拌した。LC-MSは、この反応が完了したことを示した。H2O(3mL)中のNa2S2O3-5H2O溶液(2.48g、10mM、1当量)で15℃に急冷した後、この反応混合物を1時間撹拌し、12Nの水性HCl溶液でpH=7.0に中和した。トルエンと共に共沸することによって、減圧下で、揮発性物質を除去し、約9gの白色固体を得た。この固体をメタノールで抽出し(3×30mL)、メタノールを蒸発させた後に2.0gの粗生成物を得た。1H NMRアッセイは、この固体が0.81gのアミノ酸10(収率70%)を含み、残部が無機塩であることを示した。1Hおよび13C NMRデータ両者を比較したところ、スミトモケミカル社(Sumitomo Chemical, Inc.)から入手した真正のサンプルのものと同一であることが分かった。
【0048】
実施例3:アミド酸からのオキサゾリジンジオンの生成および反応
【0049】
【化15】

【0050】
アミノエステル14:アミド酸12(143mg、1.00mM、1当量)、ベンジルアルコール(324mg、3.00mM、3当量)および1,4-ジオキサン(5mL)を、N2雰囲気下で50mL容量の丸底フラスコに添加した。撹拌したこの溶液に、DBU(304mg、2.00mM、2当量)を加え、一方で水浴でその温度を30℃以下に維持した。水浴を取外し、NBS(178mg、1.00mM、1当量)を、一度に加えた。内温は、約45℃まで上昇した。5分後に、更にNBS(178mg、1.00mM、1当量)を添加し、この反応混合物を、加熱マントルの助けによって、45℃にて更に120分間撹拌した。溶媒の1,4-ジオキサンを減圧下で除去した。得られた残渣を酢酸エチル(30mL)に溶解し、次いでH2O(2×10mL)で洗浄し、1N HCl(2×10mL)で抽出した。併合した水性HCl相を、固形のNa2CO3で中和して、pH=10とし、得られた混合物を酢酸エチルで抽出した(2×15mL)。無水Na2SO4による乾燥および減圧下での溶媒の除去後、オイル(280mg)を得た。1H NMRアッセイは、このものが92mgのアミノエステル14(収率45%)を含み、残部がベンジルアルコールであることを示した。1H NMR (CD3OD, 400 MHz): 1.90-2.00 (m, 2H), 2.01-2.11 (m, 2H), 2.46-2.56 (m, 2H), 5.20 (s, 2H), 7.20-7.40 (m, 5H) ppm; MS(EI): 206 (M++1)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式Iで表されるシクロアルキルアミド酸化合物、またはその製薬上許容される塩、エステル、異性体または互変異性体:
【化1】

ここで、R1は、C1-4アルキル基、Hであり;
Xは、場合により部分的にまたは完全にハロゲン化された、かつ、場合により1またはそれ以上のOH、NH2、C1-6、SO2、フェニル、CF3で置換されているC1である。
【請求項2】
以下の式Iで表されるシクロアルキルアミド酸:
【化2】

の製造方法であって、以下の諸工程を含むことを特徴とする、該方法:
工程a) 以下の式(Ia):
【化3】

(ここで、R1は、C1-4アルキル基、Hである)、で表されるシアノエステルを、塩基および有機酸でアルキル化して、以下の式(Ib)で表されるシクロアルキルシアノエステルを生成する工程:
【化4】

工程b) 適当な塩基を用いて、該工程a)の生成物の塩基加水分解を行い、以下の式(Ic)で表されるシクロアルキルアミド酸化合物を生成する工程:
【化5】

【請求項3】
該工程a)の塩基が、Na2CO3、DBU、NaOH、KOH、EtONa、EtOK、またはK2CO3から選択される、請求項2記載の方法。
【請求項4】
該工程a)の有機酸が、ジブロモプロパン、ジクロロプロパン、クロロブロモプロパン、1,3-ジトシルプロパン、または1,3-ジメシルプロパンから選択される、請求項2記載の方法。
【請求項5】
Xが0または1である、請求項2記載の方法。
【請求項6】
Xが、場合により部分的にまたは完全にハロゲン化され、かつ、場合により1またはそれ以上のOH、NH2、C1-6、SO2、フェニル、CF3で置換されている、請求項2記載の方法。
【請求項7】
上記工程b)のシクロアルキルアミド酸生成物を、更に塩基および酸化剤で処理して、以下の式(Id)で表されるシクロアルキルアミノ酸化合物を製造する、請求項2記載の方法:
【化6】

【請求項8】
上記工程b)で得た生成物を、更にN-ブロム化剤および有機塩基で処理して、オキサゾリジンジオンを介して、アミノエステルを生成する、請求項7記載の方法:
【化7】

ここで、Rはアリル、場合により部分的にまたは完全にハロゲン化され、かつ、場合により1またはそれ以上のOH、NH2、C1-6、SO2、フェニル、CF3で置換されているC1-10である。
【請求項9】
出発物質として使用する、上記式(Ia)のアルキルシアノエステルが、イソプロピルシアノアセテート、メチルシアノアセテート、エチルシアノアセテート、ブチルシアノエステルからなるリストから選択され、好ましいシアノエステルが、エチルシアノアセテートである、請求項7記載の方法。
【請求項10】
求核添加剤がH2O2または過炭酸ナトリウムである、請求項7記載の方法。
【請求項11】
該酸化剤が、CaOCl、NaOBr、またはKOClからなるリストから選択される、請求項7記載の方法。
【請求項12】
以下の諸工程を含むことを特徴とするシクロブタンアミノ酸の製造方法:
【化8】

1,3-ジブロモプロパンを、THF及びDMSOに分散させたK2CO3の懸濁液中に、周囲温度にて添加することによって、エチルシアノアセテート(10)をアルキル化する工程;
NaOHおよびH2O2を用いて、シアノエステル生成物(11)の塩基加水分解を行って、アミド酸(12)を製造する工程;および
アミノ酸(12)を、NaOHで処理して、アミノ酸13を製造する工程。

【公表番号】特表2007−501848(P2007−501848A)
【公表日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−523368(P2006−523368)
【出願日】平成16年8月12日(2004.8.12)
【国際出願番号】PCT/US2004/026150
【国際公開番号】WO2005/019158
【国際公開日】平成17年3月3日(2005.3.3)
【出願人】(503385923)ベーリンガー インゲルハイム インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (976)
【Fターム(参考)】