説明

1−メチレンテトラリン重合体及びその製造方法

【課題】
新規なメチレンテトラリン重合体を提供することを目的とする。
【解決手段】
下記式(1)で表される繰り返し単位からなる、1−メチレンテトラリン重合体。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1−メチレンテトラリン重合体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1には、重合開始剤としてトリフルオロボラン・ジエチルエーテル(BFOEt)を用いたカチオン重合反応、重合開始剤としてn−ブチルリチウム(n−BuLi)を用いたアニオン重合反応、又は、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を用いたラジカル重合反応により製造された1−メチレンインダン重合体が記載されている。一方、1−メチレンテトラリンの重合例については記載されていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Journal of Polymer Science: Part A: Polymer Chemistry, Vol. 29, 1779−1787(1991)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、新規な1−メチレンテトラリン重合体、及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち本発明は、下記式(1)で表される繰り返し単位からなる、1−メチレンテトラリン重合体を提供する。
【化1】

【0006】
本発明はまた、sec−ブチルリチウム、リチウムナフタレン及びカリウムナフタレンからなる群より選ばれる少なくとも1種の重合開始剤を用いて、1−メチレンテトラリンを重合する工程を備える、1−メチレンテトラリン重合体の製造方法を提供する。このような製造方法によれば、1−メチレンテトラリンのリビングアニオン重合が進行し、分子量分布が狭い1−メチレンテトラリン重合体を得ることができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、新規な1−メチレンテトラリン重合体及びその製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】合成例1で得られた1−メチレンテトラリンのH−NMRスペクトルを示す図である。
【図2】合成例1で得られた1−メチレンテトラリンの13C−NMRスペクトルを示す図である。
【図3】実施例1で得られた1−メチレンテトラリン重合体のH−NMRスペクトルを示す図である。
【図4】実施例1で得られた1−メチレンテトラリン重合体の13C−NMRスペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の好適な一実施形態について説明する。
【0010】
本実施形態に係る1−メチレンテトラリン重合体は、下記式(1)で表される繰り返し単位からなる重合体である。
【0011】
【化2】

【0012】
本実施形態に係る1−メチレンテトラリン重合体における重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnの比Mw/Mnは、例えば、1.5以下とすることができる。また、1.2以下としてもよい。ここで比Mw/Mnは、分子量分布を表し、比Mw/Mnが小さいことは分子量分布が狭いことを示す。
【0013】
なお、本実施形態に係る1−メチレンテトラリン重合体は、末端のいずれか一方に重合開始剤由来の部分構造を有していてもよい。また、末端のいずれか一方または両末端に重合停止剤由来の部分構造を有していてもよい。
【0014】
本実施形態に係る1−メチレンテトラリン重合体の重量平均分子量Mwは、例えば、2000以上とすることができ、10000以上としてもよい。また、数平均分子量Mnは、2000以上とすることができ、10000以上としてもよい。1−メチレンテトラリン重合体の平均分子量が上記下限値より大きいと、成型性が良好となる点で好ましい。
【0015】
また、本実施形態に係る1−メチレンテトラリン重合体の重量平均分子量Mwは、1000000以下とすることができ、500000以下としてもよい。また、数平均分子量Mnは、1000000以下とすることができ、500000以下としてもよい。1−メチレンテトラリン重合体の平均分子量が上記上限値より小さいと、溶剤への溶解性が良好となる点で好ましい。
【0016】
本実施形態において、重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnは、RALLS−GPC法(Right Angle Laser Light Scattering GPC)により測定された値を示す。なお、上記以外の方法で測定された重量平均分子量Mw、数平均分子量Mn、分子量分布(Mw/Mn)が、上記数値範囲外であっても、上記の方法で測定された値が上記数値範囲内であればよい。なお、RALLS−GPC法としては、実施例に記載の方法が好適である。
【0017】
本実施形態に係る1−メチレンテトラリン重合体は、例えば、以下に示す製造方法により得ることができる。
【0018】
1−メチレンテトラリン重合体は、重合開始剤を用いて1−メチレンテトラリンを重合することにより得ることができる。より具体的には、例えば、重合開始剤及び第一の溶媒を含有する第一の溶液と、1−メチレンテトラリン及び第二の溶媒を含有する第二の溶液とを混合して、1−メチレンテトラリンを重合させることにより、1−メチレンテトラリン重合体を製造することができる。なお、上記混合は、第二の溶液を第一の溶液に添加することにより行うことが好ましい。
【0019】
本実施形態に係る1−メチレンテトラリン重合体の製造は、高真空下、又は、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下で行うことができ、このような条件下とするための公知の方法を適用して行うことができる。例えば、10〜1mmHgの高真空下又は不活性ガス雰囲気下、ブレークシール法を用いて1−メチレンテトラリンを重合することにより、1−メチレンテトラリン重合体を製造することができる。なお、ブレークシール法を適用するにあたり、本発明では、反応容器を全てガラスで溶接し、高真空下或いは不活性ガス下で反応させた。
【0020】
重合開始剤としては、sec−ブチルリチウム、リチウムナフタレン、カリウムナフタレン等が挙げられる。このような重合開始剤によれば、1−メチレンテトラリンのリビングアニオン重合が進行し、分子量分布が狭い1−メチレンテトラリン重合体が得られる。
【0021】
第二の溶液を第一の溶液に添加する際、第一の溶液の温度は、例えば、−90〜0℃とすることができ、−78〜−40℃とすることもできる。また、第二の溶液を第一の溶液に添加したのち、例えば、−90〜−20℃で重合することができ、−78〜−40℃で重合することもできる。重合の温度を上記範囲内とすることで、得られる重合体の分子量分布が容易に制御され、分子量分布が一層狭い1−メチレンテトラリン重合体を得ることができる。
【0022】
第一の溶媒としては、n−ヘプタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン等が挙げられ、これらは1種を単独で、又は複数を混合して用いることができる。また第一の溶液中、重合開始剤の濃度は、例えば、0.01〜20質量%とすることができ、0.1〜15質量%とすることもできる。
【0023】
第二の溶媒としては、テトラヒドロフラン(THF)、ジエチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル等が挙げられ、これらは1種を単独で、又は複数を混合して用いることができる。また第二の溶液中、1−メチレンテトラリンの濃度は、例えば、0.1〜70質量%とすることができ、5〜50質量%とすることもできる。
【0024】
1−メチレンテトラリンの使用量A(モル)と重合開始剤の使用量B(モル)の比A/Bは、例えば、1〜10000とすることができる。また、1〜500としてもよい。
【0025】
第一の溶液と第二の溶液とを混合することにより、1−メチレンテトラリンのリビングアニオン重合が進行し、上記式(1)で表される繰り返し単位からなる重合鎖(以下、場合により「1−メチレンテトラリン重合鎖」と称する。)を含有する第三の溶液が得られる。
【0026】
リビングアニオン重合により生じる1−メチレンテトラリン重合鎖は、少なくとも一方の末端に、活性部位としてカルボアニオンを有すると考えられる。そのため、例えば、第三の溶液と重合停止剤とを混合することにより、上記式(1)で表される繰り返し単位からなる1−メチレンテトラリン重合体が得られる。なお、重合停止剤としては、プロトン性溶媒、エポキシド化合物、カルボニル化合物、サルトン化合物等が挙げられる。プロトン性溶媒としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール等のアルコール類;水;塩酸、酢酸等の酸を含有する溶液;等が挙げられる。エポキシド化合物としては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド等が挙げられる。カルボニル化合物としては、C=O結合を有している化合物であればよく、二酸化炭素、アセトン、酢酸エチル、γ−ブチロラクトン等が挙げられる。サルトン化合物としては、プロパンサルトン等が挙げられる。
【0027】
本実施形態に係る1−メチレンテトラリン重合体は、光学特性を有し、例えば光学材料として好適に用いることができる。
【0028】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【実施例】
【0029】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0030】
下記実施例、比較例で得られた重合体の物性値は、以下に示す方法により求めた。
(1)数平均分子量Mnの計算値
重合体の末端に存すると考えられる重合開始剤及び重合停止剤由来の部分構造の分子量と、モノマーの使用量(モル)と重合開始剤の使用量(モル)の比(モノマーの使用量/重合開始剤の使用量)を基に算出した重合鎖の分子量を、合計した値を、数平均分子量の計算値とした。
(2)重量平均分子量Mw、数平均分子量Mn
重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnを、Right Angle Laser Light Scattering GPC(RALLS−GPC)を用いて測定した。
より具体的には、屈折率計、散乱強度計及び粘度計を検出器として有するViscotek Model 302 Triple Detector Array(旭テクネイオン(株)製)を使用し、流量は1.0ml/min、カラムオーブンを30℃に設定して測定を行った。流出溶媒にはTHFを用い、分析カラムはTOSOH G5000HXL+G4000 HXL+G3000 HXLを使用した。
(3)分子量分布
上記(2)により得られた重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnの比Mw/Mnを、分子量分布を示す値とした。
(4)核磁気共鳴分光法(NMR)
BLUKER製GPX(300MHz)を用い、ケミカルシフトはCDClH:7.26ppm、13C:77.1ppm)を基準として、NMRスペクトルを求めた。
【0031】
(合成例:1−メチレンテトラリンの合成)
反応滴下口、ガス導入管を備え、スターラーバーを含む500ml三口フラスコを窒素置換し、メチルトリフェニルホスホニウムブロミド(32.0g、89.7mmol、東京化成工業(株)製)とカリウムtert−ブトキシド、(14.3g、127mmol、東京化成工業(株)製)及び脱水テトラヒドロフラン200ml(関東化学(株)製)を加えると系は明るい黄色に変化し、これを30分間攪拌した。系を0℃に冷却した後、脱水テトラヒドロフラン(100ml)に溶解させた1−テトラロン(10.1g、69.2mmol、東京化成工業(株)製)を0℃で30分かけて滴下すると、系は黄褐色に変化した。滴下終了後に系を室温に戻した後に10時間攪拌し、水3mlを加え反応を停止した。反応溶液中に析出した白色固体をシリカゲルを充填した桐山漏斗を用いた吸引ろ過によりろ別し、ろ液を濃縮後に300mlのヘキサンに注ぎ込んだ。その際生じた白色沈殿を再びシリカゲルを充填した桐山漏斗を用いた吸引ろ過によりろ別し、そのろ液をロータリーエバポレーターを用いて減圧濃縮した。その後、ヘキサンを展開溶媒としたシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、CaH存在下から減圧蒸留(bp.=74−76℃/3mmHg)することで、無色透明液体の1−メチレンテトラリン9.30g(収率90%(対1−テトラロン、モル%))を得た。
【0032】
得られた1−メチレンテトラリンについて、H−NMRスペクトル、13C−NMRスペクトル及び赤外線吸収スペクトルを測定し分子構造を決定した。NMRの測定結果を以下に示す。また、1−メチレンテトラリンのH−NMRスペクトル及び13C−NMRスペクトルを図1及び図2にそれぞれ示す。図1のスペクトルにおけるa〜gのピーク、図2における1〜11のピークは、それぞれ同図に示す化学式において、同じ記号が付された水素、炭素に帰属するものである。
【0033】
H NMR(300MHz,CDCl
δ=1.89(m,2H,−CHCHCH),2.55(t,2H,=CCH),2.85(t,2H,=CCHCHCH),4.95(s,1H,trans−CH=),5.48(s,1H,cis−CH=),7.11−7.20(m,3H,H,H,H),7.64(m,1H,H).
13C NMR(75MHz,CDCl
δ=23.9(−CHCHCH),30.5(=CCHCHCH),33.3(CH=CCH),107.9(CH=),124.3(C),126.0,127.7,129.3(C,C,C),134.8(C),137.4(C),143.5(CH=C).
【0034】
(実施例1:1−メチレンテトラリン重合体の製造)
1−メチレンテトラリンのアニオン重合をパイレックス(登録商標)製反応容器を用いて、ブレークシール法にて実施した。
具体的には、パイレックス(登録商標)製反応容器にブレークシールによって封じられたsec−ブチルリチウム6.8mg(0.106mmol)を含むヘプタン溶液2.0ml(関東化学(株)製)のアンプル、1−メチレンテトラリン979mg(6.79mmol)とテトラヒドロフラン(THF)3.4mlを含むアンプルを溶接した。その後、反応容器を高真空ライン(10−6mmHg)に接続して、高真空下で脱気とベーキングを2回繰り返し、反応容器を溶封した。次いで、sec−ブチルリチウム溶液が収容されているブレークシールを割り、反応容器にsec−ブチルリチウム溶液を移したのち、−78℃に冷却した。
sec−ブチルリチウム溶液を含む反応溶液を激しく攪拌し、同じく−78℃に冷却した1−メチレンテトラリンとTHFを含むブレークシールを割り、反応溶液に添加し、そのまま18時間反応させた。なお、1−メチレンテトラリンとTHFを含む溶液を加えた際、瞬時に溶液の色が薄い黄色から濃赤色に変化し、反応系の粘度の上昇が見られた。
重合終了後、反応容器を開封し、重合停止剤であるメタノール5mlを添加し、重合を停止した。
その反応溶液を200mlのメタノールに注ぎ込んだところ、白色の固体が沈殿した。その固体を桐山ろうとおよび桐山ろ紙を用いた減圧ろ過によってろ別した後に、20mlのベンゼンに溶解させ、凍結乾燥を行うことで1−メチレンテトラリン重合体724mgを得た。ポリマー収率は仕込んだ1−メチレンテトラリンに対して74質量%であった。得られたポリマーについて、上述の方法で構造と物性値を求めた。得られた物性値は、表1に示す通りであり、Mnの実測値は7000であった。また、分子量分布を示すMw/Mnは1.09と小さく、分子量分布の狭い重合体が得られた。
【0035】
実施例1で得られた1−メチレンテトラリン重合体のH−NMRスペクトルを図3に、13C−NMRスペクトルを図4に、それぞれ示す。
図3におけるa〜hのピーク、図4における1〜11のピークはそれぞれ同図に示す化学式において、同じ記号が付された水素及び炭素に帰属するものである。
図3および図4より、1−メチレンテトラリンのエキソメチレン部位の2重結合に由来するシグナルが消失していることから、エキソメチレン部位にて反応が進行してポリマーが生成し、カルド構造を有するポリマーが生成していることが確認された。
【0036】
(実施例2)
sec−ブチルリチウムの使用量を5.5mg(0.0863mmol)とし、1−メチレンテトラリンの使用量を1.3g(9.06mmol)とし、反応時間を24時間に変更したこと以外は、実施例1と同様にアニオン重合を行い、1−メチレンテトラリン重合体を得た。ポリマー収率は、51質量%であった。得られた1−メチレンテトラリン重合体について、上述した方法で構造と物性値を求めた。得られた物性値は、表1に示す通りであり、Mnの実測値は9700であった。また、分子量分布を示すMw/Mnは1.15と小さく、分子量分布の狭い重合体が得られた。
【0037】
また、実施例2で得られた1−メチレンテトラリン重合体について、実施例1と同条件で核磁気共鳴測定を行ったところ、図3及び図4に示すH−NMRスペクトル及び13C−NMRスペクトルと同様のスペクトルが得られ、1−メチレン部位にて反応が進行して、カルド構造を有する1−メチレンテトラリン重合体が生成したことが確認された。
【0038】
(実施例3)
sec−ブチルリチウムの使用量を5.4mg(0.0848mmol)とし、1−メチレンテトラリンの使用量を2.2g(15.13mmol)とし、反応時間を24時間に変更したこと以外は、実施例1と同様にアニオン重合を行い、1−メチレンテトラリン重合体を得た。ポリマー収率は、60質量%であった。得られた1−メチレンテトラリン重合体について、上述した方法で構造と物性値を求めた。得られた物性値は、表1に示す通りであり、Mnの実測値は17500であった。また、分子量分布を示すMw/Mnは1.08と小さく、分子量分布の狭い重合体が得られた。
【0039】
また、実施例3で得られた1−メチレンテトラリン重合体について、実施例1と同条件で核磁気共鳴測定を行ったところ、図3及び図4に示すH−NMRスペクトル及び13C−NMRスペクトルと同様のスペクトルが得られ、1−メチレン部位にて反応が進行して、カルド構造を有する1−メチレンテトラリン重合体が生成したことが確認された。
【0040】
(実施例4)
sec−ブチルリチウムの使用量を9.4mg(0.147mmol)とし、1−メチレンテトラリンの使用量を1.1g(7.66mmol)とし、反応時間を48時間に変更したこと以外は、実施例1と同様にアニオン重合を行い、1−メチレンテトラリン重合体を得た。ポリマー収率は、80質量%であった。得られた1−メチレンテトラリン重合体について、上述した方法で構造と物性値を求めた。得られた物性値は、表1に示す通りであり、Mnの実測値は6200であった。また、分子量分布を示すMw/Mnは1.19と小さく、分子量分布の狭い重合体が得られた。
【0041】
また、実施例4で得られた1−メチレンテトラリン重合体について、実施例1と同条件で核磁気共鳴測定を行ったところ、図3及び図4に示すH−NMRスペクトル及び13C−NMRスペクトルと同様のスペクトルが得られ、1−メチレン部位にて反応が進行して、カルド構造を有する1−メチレンテトラリン重合体が生成したことが確認された。
【0042】
(実施例5)
sec−ブチルリチウムの使用量を7.2mg(0.113mmol)とし、1−メチレンテトラリンの使用量を1.0g(6.95mmol)とし、反応温度を−95℃、反応時間を12時間に変更したこと以外は、実施例1と同様にアニオン重合を行い、1−メチレンテトラリン重合体を得た。ポリマー収率は、38質量%であった。得られた1−メチレンテトラリン重合体について、上述した方法で構造と物性値を求めた。得られた物性値は、表1に示す通りであり、Mnの実測値は3800であった。また、分子量分布を示すMw/Mnは1.05と小さく、分子量分布の狭い重合体が得られた。
【0043】
また、実施例5で得られた1−メチレンテトラリン重合体について、実施例1と同条件で核磁気共鳴測定を行ったところ、図3及び図4に示すH−NMRスペクトル及び13C−NMRスペクトルと同様のスペクトルが得られ、1−メチレン部位にて反応が進行して、カルド構造を有する1−メチレンテトラリン重合体が生成したことが確認された。
【0044】
(実施例6)
sec−ブチルリチウムにかえてリチウムナフタレン36mg(0.267mmol)を使用し、1−メチレンテトラリンの使用量を1.4g(9.77mmol)とし、反応時間を24時間に変更したこと以外は、実施例1と同様にアニオン重合を行い、1−メチレンテトラリン重合体を得た。ポリマー収率は、67質量%であった。得られた1−メチレンテトラリン重合体について、上述した方法で構造と物性値を求めた。得られた物性値は、表1に示す通りであり、Mnの実測値は17200であった。また、分子量分布を示すMw/Mnは1.12と小さく、分子量分布の狭い重合体が得られた。
【0045】
また、実施例6で得られた1−メチレンテトラリン重合体について、実施例1と同条件で核磁気共鳴測定を行ったところ、図3及び図4に示すH−NMRスペクトル及び13C−NMRスペクトルと同様のスペクトルが得られ、1−メチレン部位にて反応が進行して、カルド構造を有する1−メチレンテトラリン重合体が生成したことが確認された。
【0046】
(実施例7)
sec−ブチルリチウムにかえてカリウムナフタレン33mg(0.198mmol)を使用し、1−メチレンテトラリンの使用量を1.4g(9.9mmol)とし、反応時間を24時間に変更したこと以外は、実施例1と同様にアニオン重合を行い、1−メチレンテトラリン重合体を得た。ポリマー収率は、11質量%であった。得られた1−メチレンテトラリン重合体について、上述した方法で構造と物性値を求めた。得られた物性値は、表1に示す通りであり、Mnの実測値は1900であった。また、分子量分布を示すMw/Mnは1.05と小さく、分子量分布の狭い重合体が得られた。
【0047】
また、実施例7で得られた1−メチレンテトラリン重合体について、実施例1と同条件で核磁気共鳴測定を行ったところ、図3及び図4に示すH−NMRスペクトル及び13C−NMRスペクトルと同様のスペクトルが得られ、1−メチレン部位にて反応が進行して、カルド構造を有する1−メチレンテトラリン重合体が生成したことが確認された。
【0048】
【表1】

【0049】
表1に示すように何れの実施例の場合も、その分子量は数平均分子量Mnの計算値と近いものであった。また、Mw/Mnも1.15〜1.05と小さく、これらの結果から、制御された分子量を有しかつ分子量分布の狭いポリマーが良好な収率で得られることが判った。
【0050】
なお、表1中、s−BuLiはsec−ブチルリチウムを示し、LiNaphはリチウムナフタレンを示し、KNaphはカリウムナフタレンを示し、MTは1−メチレンテトラリンを示し、M/Iは1−メチレンテトラリンの使用量(モル)と重合開始剤の使用量(モル)の比を示し、Mnの計算値は上記「(1)数平均分子量Mnの計算値」で得られる値を示し、MnのRALLSは上記「(2)重量平均分子量Mw、数平均分子量Mn」で得られる数平均分子量Mnの値を示し、Mw/Mnは上記「(3)分子量分布」で得られる比Mw/Mnを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される繰り返し単位からなる、1−メチレンテトラリン重合体。
【化1】

【請求項2】
sec−ブチルリチウム、リチウムナフタレン及びカリウムナフタレンからなる群より選ばれる少なくとも1種の重合開始剤を用いて、1−メチレンテトラリンを重合する工程を備える、1−メチレンテトラリン重合体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−168674(P2011−168674A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−32781(P2010−32781)
【出願日】平成22年2月17日(2010.2.17)
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【出願人】(000004444)JX日鉱日石エネルギー株式会社 (1,898)
【Fターム(参考)】