1軸または多軸配向ナノファイバー集積体の製造方法及び製造装置
【課題】エレクトロスピニング法により、均一に配向したナノファイバー集積体を製造すると共に、エレクトロスピニング法により、直接多軸配向ナノファイバー集積体を製造する方法を提供する。
【解決手段】ニードル型電極が先端に取り付けられたシリンジ1、ガラスプレート3の両端にコレクター電極であるアルミテープ4を接着させたコレクター2、ニードル型電極とアルミテープ間に電圧を印加するための高圧直流電源5、コレクター電極の一方に電圧を印加する直流電源7を有するナノファイバー集積体製造装置を用い、ニードル型電極とコレクター電極間に高圧直流電源5により高圧電源をかけ、かつコレクター電極間に電位差を持たせた状態でシリンジ内に充填された紡糸溶液を一定量ずつ放出する。2軸配向させるには、前記方法で1軸配向ナノファイバー集積体を被集積体上に堆積させ、被集積体を90°回転させて、引き続きナノファイバーの堆積を行なう。
【解決手段】ニードル型電極が先端に取り付けられたシリンジ1、ガラスプレート3の両端にコレクター電極であるアルミテープ4を接着させたコレクター2、ニードル型電極とアルミテープ間に電圧を印加するための高圧直流電源5、コレクター電極の一方に電圧を印加する直流電源7を有するナノファイバー集積体製造装置を用い、ニードル型電極とコレクター電極間に高圧直流電源5により高圧電源をかけ、かつコレクター電極間に電位差を持たせた状態でシリンジ内に充填された紡糸溶液を一定量ずつ放出する。2軸配向させるには、前記方法で1軸配向ナノファイバー集積体を被集積体上に堆積させ、被集積体を90°回転させて、引き続きナノファイバーの堆積を行なう。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレクトロスピニング法により、1軸または多軸に配向されたナノファイバー集積体を製造する方法およびその装置、前記方法により製造された1軸または多軸に配向されたナノファイバーからなる集積体、およびこの集積体を用いたフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
単繊維直径がナノオーダーのナノファイバーを製造する方法として、エレクトロスピニング法は広く知られた方法である(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。エレクトロスピニング法によるナノファイバーの製造を、図19を参照しつつ簡単に説明する。先ず溶剤で溶解したまたは溶融した各種生体高分子やポリマー(以下、単に「高分子」ということもある。)溶液をシリンジ11に充填する。そして、シリンジ11に装着されているニードル型電極(図示せず)と、ナノ繊維を堆積させるコレクター電極12との間に、高圧直流電源13から数kV〜数十kVの直流高電圧を印加して、ニードル型電極とコレクター電極との間に強い電界場を発生させる。この環境下で、ニードル型電極から紡糸溶液14をコレクター電極12に向けて放出すると、高分子を溶解していた溶剤等は電界場中で瞬間的に蒸発し、高分子は凝固しながらクーロン力で延伸され、ナノオーダーのファイバーが、室温、大気圧下というおだやかな条件で形成される。このとき、高分子溶液の場合、スプレーがノズルから直進するストレートジェットと呼ばれる部分とスプレーが広がるブレイクポイントと呼ばれる部分が存在する。ストレートジェットが長いほど繊維構造が形成されやすい。繊維構造が形成されるときはブレイクポイントから液滴が広がるのではなく、繊維が螺旋を描くように基板上にデポジットされる報告もなされている。こうして形成されたナノファイバーは、コレクター電極上にランダムに繊維が交錯した状態で堆積され、不織布状のウエブが得られる。エレクトロスプレーの際のスプレー条件を変えることにより、ナノ〜ミクロンスケールのファイバーが形成され、またファイバー以外にも、ナノパーティクルや薄膜の形成も可能である。さらに、紡糸溶液も高分子担体溶液に限られず、高分子/高分子や高分子/無機などのブレンド溶液も用いることができるため、マテリアルのハイブリッド化はもちろんのこと、ナノパーティクル/ナノファイバーコンポジットのように薄膜の積層構造制御も可能となる。
【0003】
ナノファイバーにおいては、ナノ構造による特異な機能発現が期待できる。例えば、ナノファイバーは、同一体積での表面積が通常の繊維に比べ非常に大きいことから、従来の繊維が持つポリマー固有の性質の他に、吸着特性や接着特性などの新機能が発現し、従来にない新素材の開発が期待できる。そのほか、可視光に対して透明であること、ナノオーダーで空孔サイズを制御できること、高度な分子組織化が可能なこと、生体がナノファイバーを異物として感じず生体適合性が良いこと等が挙げられる。
【0004】
エレクトロスピニング法でナノファイバーを製造する場合、上記従来の方法によれば堆積されるナノファイバーの向きを制御することはできない。このため、得られたウエブは、繊維がランダムに交錯して網目が形成されたウエブしか製造できない。このため、エレクトロスピニング法において、形成される繊維の配向を制御しようとする試みもなされている。例えば、1軸配向したナノファイバーを得るため、コレクター電極として、同電位とされた複数の導電体と複数の非導電体とを交互に格子状に配置したものを用いる方法(特許文献3参照)、接地により同電位とされた2枚の板状の導電性シリコンまたは金を離間して設ける方法(非特許文献1参照)、リング状の2枚のディスクを用いる方法(非特許文献2参照)などが報告されている。また、ナノファイバーを複数軸に配向させる方法として、コレクター電極として、絶縁性基板上に放射状に伸びる複数の電極を設ける方法(非特許文献3参照)が報告されている。また、非特許文献1には、既に形成された1軸配向したファイバーを3D格子のように層と層を重ねることができたとの記載はあるが、エレクトロスピニングにより直接2軸配向を含む多軸配向ナノファイバー集積体を形成したことについての記載はない。
【0005】
【特許文献1】特開2002−249966
【特許文献2】特開2004−68161
【特許文献3】特開2006−283241
【非特許文献1】Nano Letteres 3,1167−1171(2003)
【非特許文献2】Polymer 46,611−614(2005)
【非特許文献3】Adv.Mater,16,No.4,361−366(2004)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のとおり、ナノファイバーを1軸または多軸に配向させる技術はいくつか報告されているが、特許文献3に記載の、導電体と非導電体からなる格子状のコレクター電極を用いる方法では、ナノファイバーは導電体上に導電体に沿って配向するもので、非導電体上にはランダムに配向したナノファイバーが堆積し、ウエブ面が均一に1軸配向されないという問題がある。また、非特許文献1に記載の、コレクター電極として、接地により同電位とされた2枚の板状の導電性シリコンまたは金を離間して設ける方法においては、ナノファイバーを電極と直交する方向に1軸配向させることはできるが、配向状態が十分に行われているとまではいえないという問題がある。さらに、コレクター電極として、絶縁性基板上に放射状に伸びる複数の電極を設ける方法においては、複数の方向に配向したナノファイバーからなるウエブが形成されるものの、ナノファイバーは層毎に異なる方向に配向されたものでなく、厚み方向の制御ができないという問題がある。
【0007】
したがって、本発明は、上記従来のエレクトロスピニング法における問題点が改善された、より強く1軸に配向したナノファイバー集積体を製造する方法、エレクトロスピニングにより直接かつ層毎に異なる方向に配向、堆積したナノファイバーの積層体からなる多軸配向ナノファイバー集積体を製造する方法、これらの方法を実施するために用いられる装置、さらには1軸または多軸に配向されたナノファイバー集積体および該集積体からなるフィルタを提供することである。
【0008】
本発明者らは、これらの課題を解決するため鋭意研究を行ったところ、コレクターとして、絶縁板を用い、その両端部に平行に2個のコレクター電極を設け、この2個のコレクター電極に電位差、具体的には電圧差を与えることにより、配向制御性に優れ、また多軸配向のナノファイバー集積体をエレクトロスピニング法により直接かつ容易に形成することができることを見出して、本発明を成したものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明は、エレクトロスピニング法によってコレクター表面上またはコレクター上に配置された被集積体上に、配向制御されたナノファイバーを集積する方法において、コレクターとして、絶縁体を挟んで離間して平行に2枚のコレクター電極が設けられ、かつ該2枚のコレクター電極に電位差が形成されたものを用いることを特徴とする配向制御されたナノファイバーを集積する方法に関する。
【0010】
また、本発明は、エレクトロスピニング法によって多軸に配向されたナノファイバーを集積する方法において、絶縁体を挟んで離間して平行に2枚のコレクター電極が設けられ、該コレクター電極間に電位差が付与されたコレクター上に、被集積体を載置してエレクトロスピニングを行った後、該被集積体を一定角度回転させて、再度エレクトロスピニングを行うことを特徴とする多軸に配向されたナノファイバーを集積する方法に関する。
【0011】
また、本発明は、シリンジ、シリンジに装着されているニードル型電極、ニードル型電極に離間対向して設けられたコレクター電極、およびニードル型電極とコレクター電極間に直流高圧電圧を印加する高圧直流電源からなるエレクトロスピニング装置において、コレクター電極が絶縁体を挟んで離間して平行に設けられており、該電極の一方の電極と他方の電極とに電位差を与えるための電位差付与手段が設けられていることを特徴とするエレクトロスピニング装置に関する。
【0012】
また、本発明は、上記各方法により形成された、1軸または多軸配向ナノファイバー集積体に関する。
【0013】
また、本発明は、上記方法により、被集積体上に堆積された多軸配向ナノファイバー集積体からなるフィルタに関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明においては、エレクトロスピニング法を用いて1軸配向ナノファイバー集積体を形成する方法において、コレクターとして、絶縁体を挟んで離間して平行に2枚のコレクター電極の設けたものを用い、かつ該コレクター電極に電位差を形成した状態でエレクトロスピニングを行うことにより、正確に1軸方向に配向したナノファイバー集積体を形成することができ、しかもこの集積体のファイバー間隙は、堆積時間を制御することにより容易に調整することができる。また、ファイバー径も、紡糸に使用する高分子の重合度、印加電圧、紡糸溶液の高分子濃度、使用溶剤、流量などのエレクトロスピニング条件を適宜制御することにより、容易に制御することができる。
【0015】
また、本発明のエレクトロスピニング装置においては、2枚のコレクター電極に電位差が設けられていることから、正確に一軸配向したナノファイバー集積体を作製することができる。
また、本発明の多軸ナノファイバー集積体から形成されたフィルタは、ナノファイバーの堆積時間、堆積回数などの制御により、適宜の微細孔径に形成されたフィルタであり、特に、微小物のろ過に適したフィルタとして有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を、図を参照しつつ更に詳細に説明する。
図1は、本発明の1軸または多軸配向ナノファイバー集積体を製造するために用いられる装置の一態様を示す概要図である。図1において、エレクトロスピニング装置は、ニードル型電極が先端に取り付けられたシリンジ1、ガラスプレート3の両端に導電性であるアルミテープ4が貼り付けられたコレクター2、およびニードル型電極とアルミテープ間に電圧を印加するための高圧直流電源5からなっている。ニードル型電極には、高圧直流電源5の正極が接続され、放出される溶液が正極に帯電される。また該高圧直流電源5の負極は接地されている。一方コレクターの電極の一方には、直流電源7により1kVの電圧がかけられており、他方のコレクター電極は接地されている。シリンジ1内にはナノファイバーの原料となる高分子などの溶液(紡糸溶液6)が充填されており、シリンジから一定量が放出される。一定量の放出は、キャピラリーを構成するシリンジ内のプランジャーを一定速度で押動することにより行うことができる。なお、上記装置においては、高圧力流電源5の負極は接地されているが、コレクター電極間に電位差を付与する方法はこのような方法に限られず、高圧力流電源5の負極を直接コレクター電極に接続し、その接続を一方のコレクター電極は直接接続とし、他方のコレクター電極は、他の電源あるいは抵抗などの適宜の電位差付与手段を設けて接続するようにするなど、適宜の方法、手段がとられてよい。
【0017】
このときエレクトロスピニングは次のようにして起こる。ニードル型電極に例えば数千ボルト程度の高電圧が印加されると、シリンジ、ニードル型電極などを有するキャピラリー先端の液滴表面に基板電極と反対符号の電荷をもつ帯電粒子が集まる。液体表面に蓄積された電荷と電場の相互作用によって、キャピラリー先端ではメニスカスが半円球状に盛り上がる。より高い電場の下では、キャピラリー先端で電界集中の効果により強力な電界が発生し、液体表面に荷電を持つイオンが集まりテイラーコーンと呼ばれる円錐状のメニスカスが形成される。電場をさらに大きくし、重力と電気的反発力の和が表面張力を上回ると、液体の一部がテイラーコーンから飛び出し、液滴あるいはジェットとして噴出を始める。噴出された液滴あるいはジェットは、強く帯電しており、電場により導電性基板へ引き寄せられる。その時、ジェットは静電気力の反発によりスプレーとなる(クーロン爆発)。場合によっては液滴内部での静電気力反発によってさらに分解して細かい液滴あるいはジェットを形成する。形成された液滴のサイズは極めて小さく、表面積が体積よりも非常に小さいため、極めて短時間のうちに溶媒が蒸発する。通常、溶媒は噴出中に蒸発するので、コレクター上には乾燥した溶質分子がデポジットされる。本発明においては、ナノファイバーは正に帯電しており、2枚のコレクター電極に直行する方向に一軸方向に配向した状態で堆積する。エレクトロスピニング法により形成される繊維の直径は、溶液の粘度、使用される高分子の種類、その重合度、溶液の組成、印加電圧、流量などによって異なり、溶液の粘度が高い場合、高分子の重合度が大きい場合、印加電圧が低い場合、流量が多い場合は、通常繊維系が太くなる。
【0018】
前記したとおり、本発明においては、コレクター上の2個の電極には電位差が設けられている、これにより、両電極の電位を同電位とした場合に比べ、ナノファイバーがコレクター電極に引付けられる力が増大し、ナノファイバーの配向度が増大するという効果が得られる。この電位差は、通常0Vを超え10kV程度までの範囲とされればよいが、100v〜10kV程度であることが好ましい。
【0019】
図1の装置においてコレクターを構成する部材として記載されたガラスプレート3は、コレクター材料の一例として例示されたものであり、平行に設けられた2個のコレクター電極間に絶縁領域を形成できるものであればその材料はどのようなものでもよい。このような2個のコレクター電極間に絶縁領域を形成できる材料としては、ポリマー板、シリコンウエハ、石英、セラミックスなどの板状物のような無機材料からなる絶縁性基板など任意のものが挙げられる。なお、コレクターはブロック体などで形成されてもよく、特に板状に限られるものではない。
【0020】
また、コレクター電極として、図1の装置においてはアルミテープが用いられているが、アルミニウム以外の材料、例えば金、白金、導電性シリコン、導電性カーボンなど任意のものでよい。またコレクター電極は、絶縁性の板の上に一体に設けられてもよいし、絶縁性の板と別体の板として設けられてもよい。また、その形成方法も、導電性箔あるいは導電性板を絶縁部材上に貼り付けたものでもよいし、蒸着など他の方法によってもよい。絶縁部材がシリコン基板である場合には、イオンプレーティングなどの不純物の打ち込みにより導電性とされたものでもよい。
【0021】
エレクトロスピニングにおいては、溶媒の蒸発が必要とされることから、一般的には湿度が低い方が好ましく、通常50%RH以下で行うことが好ましい。しかし、本発明のエレクトロスピニング法がこれに限定されるものではない。また温度も特に限定されるものではないが、溶媒の蒸発は常温でも速やかに起こることから、一般的には、紡糸雰囲気を昇温させるあるいは冷やす必要はないが、紡糸条件によっては室温より低温で、あるいは室温より高温で行ってもよい。
【0022】
本発明において、紡糸に使用される高分子は、従来エレクトロスピニング法により紡糸可能であることが知られた何れのものであってもよい。このような高分子としては、例えば、ポリイミド、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキシド、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、アクリロニトリル−メタクリレート共重合体、ポリ(メタ)アクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン66、ナイロン4,6、ポリカプロラクタム、アラミド、ポリエーテルウレタン、ポリビニルアルコール、セルロース、酢酸セルロース、酢酸セルロースブチレート、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリペプチド、タンパク質、コールタールピッチ、石油ピッチ、導電性高分子など溶剤に溶解する種々の高分子が挙げられる。
【0023】
例えば、ポリイミドを用いる場合、該ポリイミドは溶剤に溶解できるものであればよく特に限定されるものではない。このようなポリイミドの例としては、例えば、下記構造式で記載されるポリイミドが挙げられる。なお、これらは何れも公知のポリマーである。フッ素基を含んだ含フッ素ポリイミドおよびスルホン酸基を含んだスルホン化ポリイミドは、本発明において好ましく用いることができる。フッ素基を含んだ含フッ素ポリイミドとしては、例えば6FDA系ポリイミドなどが、またスルホン酸基を含んだスルホン化ポリイミドとしては、例えばNTDA系ポリイミドなどが挙げられる。なお、6FDA系ポリイミドは、ポリイミド合成原料として、2、2−ビス(3、4−カルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンを用いたポリイミドであり、NTDA系ポリイミドは、合成原料として、1,4,5,8−ナフトテトラカルボン酸を用いたポリイミドである。
【0024】
【化1】
【0025】
上記の例は、単に本発明を実施する際に用いられる高分子の一例を示したにすぎないもので、本発明で使用される高分子が、上記特定のポリイミドに限られるものではないし、またさらには高分子がポリイミドに限られるものでもない。
【0026】
これら高分子(溶質)を溶解して紡糸溶液を形成するために用いられる溶媒としては、アセトン、クロロホルム、エタノール、イソプロパノール、メタノール、トルエン、テトラヒドロフラン、水、ベンゼン、トルエン、キシレン、ベンジルアルコール、1,4−ジオキサン、プロパノール、四塩化炭素、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、塩化メチレン、フェノール、ピリジン、トリクロロエタン、酢酸などの揮発性の比較的高いもの、またN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、1−メチル−2−ピロリドン(NMP)、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジメチルカーボネート(DMC)、アセトニトリル(AN)、N−メチルモルホリン−N−オキシド、ブチレンカーボネート(BC)、1,4−ブチロラクトン(BL)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジエチルエーテル(DEE)、1,2−ジメトキシエタン(DME)、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI)、1,3−ジオキソラン(DOL)、エチルメチルカーボネート(EMC)、メチルホルマート(MF)、3−メチルオキサゾリジン−2−オン(MO)、メチルプロピオネート(MP)、2−メチルテトラヒドロフラン(MeTHF)、スルホラン(SL)などの揮発性が相対的に低いものが挙げられる。これらの溶媒は、用いられる高分子の溶解性を考慮して、適宜のものを選択して用いることができる。またこれら溶媒は、1種単独で用いられてもよいし、必要に応じ2種以上が併用されてもよい。さらに、紡糸溶液の電気特性を改善するために、水、水酸化ナトリウム溶液、塩化リチウム溶液などの電解質が添加されてもよい。
【0027】
紡糸溶液には、前記高分子を単独で、あるいは2種以上の高分子を併用してもよく、更には、ポリマー以外の有機物あるいは無機物粉末が添加されてもよい。またポリマーはエマルジョン形態であってもよい。紡糸溶液としては、上記の高分子に限られず、金属、セラミックスなどの無機物を主成分としたゾル,ゲルを用いてもよい。これら金属、セラミックスなどの無機物を主成分としたゾル,ゲルを用いてナノファイバーからなる集積体、例えばウエブが形成される場合、焼結により無機系繊維からなるウエブを形成することができる。
【0028】
また、2軸配向など多軸配向ナノファイバー集積体を形成する場合、上記1軸配向ナノファイバー集積体を製造し、その製造過程で、ナノファイバーが堆積される被集積体を、例えば90℃回転させることにより、引き続きナノファイバーの堆積を行えばよい。必要であればこの操作を繰り返すことにより、例えば図2に示すような2層などの多層の集積体が得られる。回転角度を変えることにより、任意の交差角度を有する2軸軸配向ナノファイバー集積体を形成することができるし、必要であれば、角度を1方向のみの変更とするのでなく、2種以上逐次変更させることにより、3軸配向以上の多軸配向ナノファイバー集積体を製造することもできる。また、集積角度を変更した後、再度最初の角度に戻し、必要であれば再度集積角度を変更することにより、3層以上の多層の集積体を得ることもできる。
【0029】
被集積体としては、フィルム、板、布など集積面を有するものであればいずれも特に問題なく使用できる。また、集積体を被集積体とともに利用するような場合には、これが用いられる用途に応じ適宜の被集積体を選択して用いればよい。例えば、ナノファイバー集積体が被集積体と共にフィルタとして用いる場合には、被集積体として、布、濾紙、多孔性膜などフィルタ材として従来使用されているような素材が好ましく用いられる。
【実施例】
【0030】
以下、合成例、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれによって何ら限定されるものではない。
なお、合成例における化合物の物性は、次の装置を用いて測定した。
【0031】
〔核磁気共鳴(NMR)測定〕
イミド化反応が確実に進行したことを確認するために、得られたポリイミドをd−DMSOに溶解させ、1HNMRにより測定を行った。積算は32回とした。測定に使用した装置は、日本電子(株)製AL400である。
【0032】
〔ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)測定〕
ポリマーの重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)を求めるために、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)を用いた。標準物質としてはポリスチレンを用いた。測定装置は、Shodex製RI−101であり、カラムはSchodex製KF−805Lである。
【0033】
[合成例1]
(含フッ素ポリイミドの合成)
<ポリアミック酸の合成>
1000mL三口フラスコに、2、2−ジアミノジフェニルヘキサフルオロプロパン(6FAP)35.00064g(0.10472モル)を入れ、230ccの蒸留N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)を入れて完全に溶解させた。この後、2、2−ビス(3、4−カルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(6FDA)46.5190g(0.10472モル)、およびDMAc405ccを更に加え、溶解させて溶液とした。この溶液を室温で1晩以上攪拌して、ポリアミック酸を得た。
【0034】
<イミド化>
上記で得られたポリアミック酸溶液に、54.10g(0.5299モル)の無水酢酸を滴下し、次いでトリエチルアミンを滴下し、24時間攪拌を行った。得られたポリマー溶液をメタノールにゆっくり滴下し、下記式で示される粒状のポリイミド(6FDA−p−6FAP)を得た。得られたポリイミドの1H−NMRスペクトル図を図3に示す。また重量平均分子量(Mw)は、4.2×105であり、Mw/Mnは2.0であった。
【0035】
【化2】
【0036】
[合成例2]
合成例1において、2、2−ジアミノジフェニルヘキサフルオロプロパン(6FAP)を11.79241g(0.03528モル)、2、2−ビス(3、4−カルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(6FDA)を15.67396g(0.03528モル)、無水酢酸を90.89g(0.8903モル)、DMAcを212cc用いることを除き、合成例1と同様にして、ポリイミドを合成した。得られたポリイミド(6FDA−p−6FAP)のGPCによるポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)は、3.2×105であり、Mw/Mnは2.0であった。
【0037】
[合成例3]
合成例1において、DMAcを628cc、無水酢酸を53.46g(0.5236モル)用いることを除き合成例1と同様にして、ポリイミドを合成した。得られたポリイミド(6FDA−6FAP)の重量平均分子量(Mw)は、1.2×105であり、Mw/Mnは2.0であった。
【0038】
[実施例1]
図1の装置を用い、1軸配向ポリイミド(6FDA−p−6FAP)ナノファイバー集積体を製造した。ニードル型電極とコレクターとの距離は10cm、コレクターのガラス基板の大きさは100×70mm、アルミ電極の間の距離は30mm、アルミ電極の幅は10mm、印加電圧15kV、アルミ電極の一方の電極には電源7により1kVのプラス電圧を印加、また他方の電極はアースし、紡糸溶液の流量0.12mL/hとし、コレクター中央部に濾紙を置き、エレクトロスピニングを行った。紡糸溶液としては、合成例1で得られた重量平均分子量(Mw)42万のポリイミド(6FDA−6FAP)のN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)14重量%溶液を用いた。エレクトロスピニング時間を1、3、5、10、15、30分と変化させて、濾紙上にナノファイバーを堆積した。
【0039】
作製したナノファイバーを150℃で10時間真空乾燥した後、サンプルを白金コーティングし、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察を行った。SEM写真を図4に示す。図4から明らかなように、得られたナノファイバー集積体は、強く1軸方向に配向したものであった。なおSEM写真の倍率は、1分堆積が1000倍、3分堆積が3000倍、5分堆積が7000倍、10分堆積が10,000倍、15分および30分堆積が20,000倍である。SEM像からナノファイバーの直径およびファイバー間隙を算出したところ、ナノファイバーの平均直径は468nmであった。また、平均ファイバー間隙は表1(図5参照)に示すとおりであった。なお、図5において、図中の範囲を示す線は、測定された間隙の大きさ範囲を示すものである。
【0040】
【表1】
【0041】
[実施例2]
実施例1と同じ装置を用い、同じ紡糸溶液、同じエレクトロスピニング条件で、濾紙上にナノファイバーを1分間堆積した。1分の堆積時間経過後、濾紙を90°回転させて、引き続き1分間ナノファイバーの堆積を行なった。同様の堆積操作を、各々3分、5分、10分、15分、30分と時間を変えて行って、6種の2軸配向ナノファイバー集積体を形成した。
【0042】
実施例1同様、作製したナノファイバー集積体を150℃で10時間真空乾燥した後、サンプルを白金コーティングし、SEMによる観察を行った。SEM写真を図6に示す。図6のSEM写真から、得られた2軸配向ナノファイバー集積体は、強く2軸方向に配向していることが分かる。図6のナノファイバーの直径は実施例1と同様のものであった。SEM写真から、孔の一辺の平均長さ、孔の平均面積、多孔度を算出した。結果を表2(孔の一辺の長さについては図7参照)に示す。
【0043】
【表2】
【0044】
[実施例3]
実施例1と同じ装置を用い、同じ紡糸溶液、同じエレクトロスピニング条件で、濾紙上にナノファイバーを30分間堆積させた。濾紙を90°回転させて、引き続き30分間堆積させた。この走査を繰り返し、1層につき30分積層させたものを4層重ねた構造体を作成した。SEM写真を図8(a)に示す。図8(a)のSEM写真から、得られた4層からなる2軸配向集積体は、強く2軸方向に配向していることが分かる。
【0045】
[実施例4]
実施例1と同じ装置を用い、同じ紡糸溶液、同じエレクトロスピニング条件で、濾紙上にナノファイバーを15分間堆積させた。濾紙を90°回転させて、引き続き15分間堆積させた。この走査を繰り返し、1層につき15分積層させたものを8層重ねた構造体を作成した。SEM写真を図8(b)に示す。図8(b)のSEM写真から、得られた8層からなる2軸配向集積体は、強く2軸方向に配向していることが分かる。
【0046】
[比較例1]
コレクターとして、ガラスプレートの両端に導電性であるアルミテープを接着させたコレクター2に代えて、アルミ箔を用いた導電性基板を用いることを除き実施例1と同様にして、120分エレクトロスピニングを行った。SEM写真を図8(c)に示す。図8(c)のSEM写真から、従来の方法で得られたナノファイバー集積体は、全く配向していないことが分かる。
【0047】
[実施例5および比較例2]
(純水透過実験による透過性能評価)
実施例3、4、比較例1で作製したナノファイバー集積体を70%メタノール水溶液に一晩浸漬させた。透過性評価には、図9に示す装置を用いた。この図9の装置により透過性能を評価する場合、リザーバー8にミリポア水を入れて恒温槽の温度を25℃とし、セル9の下面部分に、前記メタノール水溶液で塗れ処理を行ったサンプル10を設置した後、窒素ガスを導入し、圧力を0.02MPaで一定とした。サンプルを透過した純水の重量を30秒ごとに計量し、流量が一定となった時の値を記録した。得られた透過流量から純水透過係数Lpを計算した。このときの純水透過係数の単位は、ml/h/mmHg/m2とした。
【0048】
【数1】
【0049】
純水透過実験の結果から求めた純水透過係数Lpを図10に示す。構造制御されていない比較例1の不織布状のナノファイバー集積体と比較し、構造制御された実施例3および4の集積体では、Lpの値は減少した。これは、図8から、見かけの孔径が減少していることが主な要因であると考えられる。
【0050】
(デキストラン透過実験による孔径評価)
<デキストラン水溶液の調整>
デキストランは、公称分子量8500−11500、35000−45000、64000−76000、100000−200000のものを使用し、これらを等重量比で混合し、全体で1.0g/Lとなるようにミリポア水で調整し、原液とした。
【0051】
<デキストラン透過実験>
純水透過実験に引き続き、純水透過実験を行ったサンプルを用い、リザーバーのミリポア水を捨て、デキストラン水溶液を入れて恒温槽の温度を25℃とし、窒素ガスを導入し圧力を0.02MPaで一定とした。流量が一定となったところで、サンプルを透過した溶液を採取した。
【0052】
<ゲルろ過クロマトグラフィー(GFC)測定>
GFCを用いて、デキストランの阻止率を求めた。GFCの検出器は示唆屈折計であり、溶液の濃度を直接求めることはできないが、カラムに打ち込む溶液量を一定とすることで原液とサンプルを透過した溶液との強度比が濃度比と同一であると見なし、阻止率を求めた。
【0053】
デキストラン透過実験の結果(デキストラン阻止率)を図11に示す。純水透過実験と同様に、デキストラン透過実験においても、構造制御されていない比較例1の不織布状のナノファイバー集積体と、構造制御された実施例3および4のナノファイバー集積体で違いが見られた。比較例1のナノファイバー集積体では、どの分子量においてもデキストランは全く阻止されなかったのに対し、実施例3および4のナノファイバー集積体では、分子量10万から30万において、わずかではあるがデキストランを阻止することができた。これは構造制御により見かけの孔径が減少したこと、さらに孔径のバラツキが減少したことが主な要因であると考えられる。なお、分子量30万のデキストランの直径は計算上218nmである。
【0054】
実施例3および4のナノファイバー集積体の見かけの孔径を、SEM写真から算出した。結果を表3に示す。どちらもデキストランよりも孔径は小さく、通常であれば分子篩によりデキストランは阻止されると考えられる。しかし、実際のデキストラン阻止率は非常に小さい値となった。これは透過実験の際に、水圧によりナノファイバーが押し広げられ、集積体の構造が乱れたためと考えられる。
【0055】
【表3】
【0056】
[実施例6]
実施例1において、ポリイミドの濃度を17重量%とし、紡糸溶液の溶剤として、DMAcに代えて、NMPおよびDMFを用いることを除き、実施例1と同様にしてエレクトロスピニングを行った。
また、実施例1において、合成例1で得られたポリイミドに代えて、合成例2および3で得られたポリイミドを用い、ポリイミドの濃度を17重量%とし、かつ各々のポリイミドの溶剤としてDMAc、NMPおよびDMFを用いて実施例1と同様にしてエレクトロスピニングを行った。
これらにより得られたナノファイバーの平均径を図12に示す。
【0057】
[実施例7]
実施例1において、合成例3で得られたポリイミドの17重量%の溶液を用い、その溶媒としてとしてDMAc、NMPおよびDMFを用い、かつ紡糸溶液の流量を0.12、0.24、0.36、0.60、0.96mL/hの条件として、エレクトロスピニングを行った。これらにより得られたナノファイバーの平均径を図13に示す。
【0058】
[実施例8]
実施例1において、合成例3で得られたポリイミドの17重量%の溶液を用い、その溶媒としてDMAc、NMPおよびDMFを用い、かつ印加電圧を10、15、20kVとして、エレクトロスピニングを行った。これらにより得られたナノファイバーの平均径を図14に示す。
【0059】
[実施例9]
実施例1において、合成例3で得られたポリイミドの溶液を用い、その溶媒としてDMAc、NMPおよびDMFを用い、かつポリマー濃度を17、18、19重量%として、エレクトロスピニングを行った。これらにより得られたナノファイバーの平均径を図15に示す。
【0060】
[実施例10]
実施例1と同じ装置を用い、紡糸溶液として、先に構造式で示した6FDA−p−APPSのDMF15重量%溶液を用い、堆積時間を各15分とすることを除き、実施例1と同様にして2軸配向ナノファイバー集積体を作製した。得られた集積体のSEM写真を図16に示す。図16から、6FDA−p−APPSのDMFを用いた場合にも、良好な配向性を有する2軸配向ナノファイバー集積体が作製されていることが分かる。
【0061】
[実施例11]
実施例1と同じ装置を用い、紡糸溶液として、先に構造式で示した6FDA−p−APPSのDMF15重量%溶液を用い、実施例1と同じエレクトロスピニング条件で、濾紙上にナノファイバーを15分間堆積させた。次いで、濾紙を60°回転させて、引き続き同条件で15分間ナノファイバーの堆積を行った。その後、さらに濾紙を同方向に60°回転させて15分間ナノファイバーを堆積させて、3軸配向ナノファイバー集積体を作製した。得られた集積体のSEM写真を図17に示す。図17のSEM写真から、得られた集積体は、3軸方向に良好に配向していることが分かる。
【0062】
[実施例12]
実施例1と同じ装置を用い、紡糸溶液として、先に構造式で示した6FDA−p−FAP−b−3MPA(n:m=70:70)のDMF15重量%溶液を用い、堆積時間を各15分とすることを除き、実施例1と同様にして2軸配向ナノファイバー集積体を作製した。得られた集積体のSEM写真を図18に示す。図18から、6FDA−p−APPSのDMFを用いた場合にも、良好な配向性を有する2軸配向ナノファイバー集積体が作製されていることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明により得られた1軸または多軸配向ナノファイバー集積体は、リチウム電池など各種電池のセパレータや電解質膜、フィルタ、医療用絆創膏、医療用バリヤウエブ、医療用組織培養支持体、センサ、得られた集積体を炭化することにより電極材などの広範囲の材料として使用することができ、特にフィルタとして好ましく用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の2軸配向ナノファイバーウエブ製造装置の一態様の概要図である。
【図2】本発明の2軸配向ナノファイバー多層集積体製造を示す概念図である。
【図3】合成例1で合成された6FDA−p−6FAPの1HNMRスペクトル図である。
【図4】図面代用写真であり、本発明の実施例1で得られた1軸配向ナノファイバー集積体のSEM写真である。
【図5】1軸配向ナノファイバー集積体のファイバー間隙の大きさを、堆積時間との関係で示す図である。
【図6】図面代用写真であり、本発明の6種の2軸配向ナノファイバー集積体のSEM写真である。
【図7】2軸配向ナノファイバー集積体の孔の一辺の長さを、堆積時間との関係で示す図である。
【図8】図面代用写真であり、(a)は、本発明の4層構造の2軸配向ナノファイバー集積体のSEM写真であり、(b)は、本発明の8層構造の2軸配向ナノファイバー集積体のSEM写真であり、(c)は従来法による配向していないナノファイバー集積体のSEM写真である。
【図9】透過性能評価実験で用いられた装置の概略図である。
【図10】純水透過実験の結果から求めた純水透過係数Lpの値を示す図である。
【図11】デキストラン透過実験の結果から求めたデキストラン阻止率を示す図である。
【図12】実施例6で得られた1軸配向ナノファイバー集積体の平均径を示す図である。
【図13】実施例7で得られた1軸配向ナノファイバー集積体の平均径を示す図である。
【図14】実施例8で得られた1軸配向ナノファイバー集積体の平均径を示す図である。
【図15】実施例9で得られた1軸配向ナノファイバー集積体の平均径を示す図である。
【図16】図面代用写真であり、実施例10で得られた2軸配向ナノファイバー集積体のSEM写真である。
【図17】図面代用写真であり、実施例11で得られた3軸配向ナノファイバー集積体のSEM写真である。
【図18】図面代用写真であり、実施例12で得られた2軸配向ナノファイバー集積体のSEM写真である。
【図19】従来のエレクトロスピニング装置の概略図である。
【符号の説明】
【0065】
1、11 シリンジ
2 コレクター
3 ガラスプレート
4 アルミテープ
5、13 高圧直流電源
6、14 紡糸溶液
7 直流電源
8 リザーバー
9 セル
10 サンプル
12 コレクター電極
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレクトロスピニング法により、1軸または多軸に配向されたナノファイバー集積体を製造する方法およびその装置、前記方法により製造された1軸または多軸に配向されたナノファイバーからなる集積体、およびこの集積体を用いたフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
単繊維直径がナノオーダーのナノファイバーを製造する方法として、エレクトロスピニング法は広く知られた方法である(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。エレクトロスピニング法によるナノファイバーの製造を、図19を参照しつつ簡単に説明する。先ず溶剤で溶解したまたは溶融した各種生体高分子やポリマー(以下、単に「高分子」ということもある。)溶液をシリンジ11に充填する。そして、シリンジ11に装着されているニードル型電極(図示せず)と、ナノ繊維を堆積させるコレクター電極12との間に、高圧直流電源13から数kV〜数十kVの直流高電圧を印加して、ニードル型電極とコレクター電極との間に強い電界場を発生させる。この環境下で、ニードル型電極から紡糸溶液14をコレクター電極12に向けて放出すると、高分子を溶解していた溶剤等は電界場中で瞬間的に蒸発し、高分子は凝固しながらクーロン力で延伸され、ナノオーダーのファイバーが、室温、大気圧下というおだやかな条件で形成される。このとき、高分子溶液の場合、スプレーがノズルから直進するストレートジェットと呼ばれる部分とスプレーが広がるブレイクポイントと呼ばれる部分が存在する。ストレートジェットが長いほど繊維構造が形成されやすい。繊維構造が形成されるときはブレイクポイントから液滴が広がるのではなく、繊維が螺旋を描くように基板上にデポジットされる報告もなされている。こうして形成されたナノファイバーは、コレクター電極上にランダムに繊維が交錯した状態で堆積され、不織布状のウエブが得られる。エレクトロスプレーの際のスプレー条件を変えることにより、ナノ〜ミクロンスケールのファイバーが形成され、またファイバー以外にも、ナノパーティクルや薄膜の形成も可能である。さらに、紡糸溶液も高分子担体溶液に限られず、高分子/高分子や高分子/無機などのブレンド溶液も用いることができるため、マテリアルのハイブリッド化はもちろんのこと、ナノパーティクル/ナノファイバーコンポジットのように薄膜の積層構造制御も可能となる。
【0003】
ナノファイバーにおいては、ナノ構造による特異な機能発現が期待できる。例えば、ナノファイバーは、同一体積での表面積が通常の繊維に比べ非常に大きいことから、従来の繊維が持つポリマー固有の性質の他に、吸着特性や接着特性などの新機能が発現し、従来にない新素材の開発が期待できる。そのほか、可視光に対して透明であること、ナノオーダーで空孔サイズを制御できること、高度な分子組織化が可能なこと、生体がナノファイバーを異物として感じず生体適合性が良いこと等が挙げられる。
【0004】
エレクトロスピニング法でナノファイバーを製造する場合、上記従来の方法によれば堆積されるナノファイバーの向きを制御することはできない。このため、得られたウエブは、繊維がランダムに交錯して網目が形成されたウエブしか製造できない。このため、エレクトロスピニング法において、形成される繊維の配向を制御しようとする試みもなされている。例えば、1軸配向したナノファイバーを得るため、コレクター電極として、同電位とされた複数の導電体と複数の非導電体とを交互に格子状に配置したものを用いる方法(特許文献3参照)、接地により同電位とされた2枚の板状の導電性シリコンまたは金を離間して設ける方法(非特許文献1参照)、リング状の2枚のディスクを用いる方法(非特許文献2参照)などが報告されている。また、ナノファイバーを複数軸に配向させる方法として、コレクター電極として、絶縁性基板上に放射状に伸びる複数の電極を設ける方法(非特許文献3参照)が報告されている。また、非特許文献1には、既に形成された1軸配向したファイバーを3D格子のように層と層を重ねることができたとの記載はあるが、エレクトロスピニングにより直接2軸配向を含む多軸配向ナノファイバー集積体を形成したことについての記載はない。
【0005】
【特許文献1】特開2002−249966
【特許文献2】特開2004−68161
【特許文献3】特開2006−283241
【非特許文献1】Nano Letteres 3,1167−1171(2003)
【非特許文献2】Polymer 46,611−614(2005)
【非特許文献3】Adv.Mater,16,No.4,361−366(2004)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のとおり、ナノファイバーを1軸または多軸に配向させる技術はいくつか報告されているが、特許文献3に記載の、導電体と非導電体からなる格子状のコレクター電極を用いる方法では、ナノファイバーは導電体上に導電体に沿って配向するもので、非導電体上にはランダムに配向したナノファイバーが堆積し、ウエブ面が均一に1軸配向されないという問題がある。また、非特許文献1に記載の、コレクター電極として、接地により同電位とされた2枚の板状の導電性シリコンまたは金を離間して設ける方法においては、ナノファイバーを電極と直交する方向に1軸配向させることはできるが、配向状態が十分に行われているとまではいえないという問題がある。さらに、コレクター電極として、絶縁性基板上に放射状に伸びる複数の電極を設ける方法においては、複数の方向に配向したナノファイバーからなるウエブが形成されるものの、ナノファイバーは層毎に異なる方向に配向されたものでなく、厚み方向の制御ができないという問題がある。
【0007】
したがって、本発明は、上記従来のエレクトロスピニング法における問題点が改善された、より強く1軸に配向したナノファイバー集積体を製造する方法、エレクトロスピニングにより直接かつ層毎に異なる方向に配向、堆積したナノファイバーの積層体からなる多軸配向ナノファイバー集積体を製造する方法、これらの方法を実施するために用いられる装置、さらには1軸または多軸に配向されたナノファイバー集積体および該集積体からなるフィルタを提供することである。
【0008】
本発明者らは、これらの課題を解決するため鋭意研究を行ったところ、コレクターとして、絶縁板を用い、その両端部に平行に2個のコレクター電極を設け、この2個のコレクター電極に電位差、具体的には電圧差を与えることにより、配向制御性に優れ、また多軸配向のナノファイバー集積体をエレクトロスピニング法により直接かつ容易に形成することができることを見出して、本発明を成したものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明は、エレクトロスピニング法によってコレクター表面上またはコレクター上に配置された被集積体上に、配向制御されたナノファイバーを集積する方法において、コレクターとして、絶縁体を挟んで離間して平行に2枚のコレクター電極が設けられ、かつ該2枚のコレクター電極に電位差が形成されたものを用いることを特徴とする配向制御されたナノファイバーを集積する方法に関する。
【0010】
また、本発明は、エレクトロスピニング法によって多軸に配向されたナノファイバーを集積する方法において、絶縁体を挟んで離間して平行に2枚のコレクター電極が設けられ、該コレクター電極間に電位差が付与されたコレクター上に、被集積体を載置してエレクトロスピニングを行った後、該被集積体を一定角度回転させて、再度エレクトロスピニングを行うことを特徴とする多軸に配向されたナノファイバーを集積する方法に関する。
【0011】
また、本発明は、シリンジ、シリンジに装着されているニードル型電極、ニードル型電極に離間対向して設けられたコレクター電極、およびニードル型電極とコレクター電極間に直流高圧電圧を印加する高圧直流電源からなるエレクトロスピニング装置において、コレクター電極が絶縁体を挟んで離間して平行に設けられており、該電極の一方の電極と他方の電極とに電位差を与えるための電位差付与手段が設けられていることを特徴とするエレクトロスピニング装置に関する。
【0012】
また、本発明は、上記各方法により形成された、1軸または多軸配向ナノファイバー集積体に関する。
【0013】
また、本発明は、上記方法により、被集積体上に堆積された多軸配向ナノファイバー集積体からなるフィルタに関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明においては、エレクトロスピニング法を用いて1軸配向ナノファイバー集積体を形成する方法において、コレクターとして、絶縁体を挟んで離間して平行に2枚のコレクター電極の設けたものを用い、かつ該コレクター電極に電位差を形成した状態でエレクトロスピニングを行うことにより、正確に1軸方向に配向したナノファイバー集積体を形成することができ、しかもこの集積体のファイバー間隙は、堆積時間を制御することにより容易に調整することができる。また、ファイバー径も、紡糸に使用する高分子の重合度、印加電圧、紡糸溶液の高分子濃度、使用溶剤、流量などのエレクトロスピニング条件を適宜制御することにより、容易に制御することができる。
【0015】
また、本発明のエレクトロスピニング装置においては、2枚のコレクター電極に電位差が設けられていることから、正確に一軸配向したナノファイバー集積体を作製することができる。
また、本発明の多軸ナノファイバー集積体から形成されたフィルタは、ナノファイバーの堆積時間、堆積回数などの制御により、適宜の微細孔径に形成されたフィルタであり、特に、微小物のろ過に適したフィルタとして有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を、図を参照しつつ更に詳細に説明する。
図1は、本発明の1軸または多軸配向ナノファイバー集積体を製造するために用いられる装置の一態様を示す概要図である。図1において、エレクトロスピニング装置は、ニードル型電極が先端に取り付けられたシリンジ1、ガラスプレート3の両端に導電性であるアルミテープ4が貼り付けられたコレクター2、およびニードル型電極とアルミテープ間に電圧を印加するための高圧直流電源5からなっている。ニードル型電極には、高圧直流電源5の正極が接続され、放出される溶液が正極に帯電される。また該高圧直流電源5の負極は接地されている。一方コレクターの電極の一方には、直流電源7により1kVの電圧がかけられており、他方のコレクター電極は接地されている。シリンジ1内にはナノファイバーの原料となる高分子などの溶液(紡糸溶液6)が充填されており、シリンジから一定量が放出される。一定量の放出は、キャピラリーを構成するシリンジ内のプランジャーを一定速度で押動することにより行うことができる。なお、上記装置においては、高圧力流電源5の負極は接地されているが、コレクター電極間に電位差を付与する方法はこのような方法に限られず、高圧力流電源5の負極を直接コレクター電極に接続し、その接続を一方のコレクター電極は直接接続とし、他方のコレクター電極は、他の電源あるいは抵抗などの適宜の電位差付与手段を設けて接続するようにするなど、適宜の方法、手段がとられてよい。
【0017】
このときエレクトロスピニングは次のようにして起こる。ニードル型電極に例えば数千ボルト程度の高電圧が印加されると、シリンジ、ニードル型電極などを有するキャピラリー先端の液滴表面に基板電極と反対符号の電荷をもつ帯電粒子が集まる。液体表面に蓄積された電荷と電場の相互作用によって、キャピラリー先端ではメニスカスが半円球状に盛り上がる。より高い電場の下では、キャピラリー先端で電界集中の効果により強力な電界が発生し、液体表面に荷電を持つイオンが集まりテイラーコーンと呼ばれる円錐状のメニスカスが形成される。電場をさらに大きくし、重力と電気的反発力の和が表面張力を上回ると、液体の一部がテイラーコーンから飛び出し、液滴あるいはジェットとして噴出を始める。噴出された液滴あるいはジェットは、強く帯電しており、電場により導電性基板へ引き寄せられる。その時、ジェットは静電気力の反発によりスプレーとなる(クーロン爆発)。場合によっては液滴内部での静電気力反発によってさらに分解して細かい液滴あるいはジェットを形成する。形成された液滴のサイズは極めて小さく、表面積が体積よりも非常に小さいため、極めて短時間のうちに溶媒が蒸発する。通常、溶媒は噴出中に蒸発するので、コレクター上には乾燥した溶質分子がデポジットされる。本発明においては、ナノファイバーは正に帯電しており、2枚のコレクター電極に直行する方向に一軸方向に配向した状態で堆積する。エレクトロスピニング法により形成される繊維の直径は、溶液の粘度、使用される高分子の種類、その重合度、溶液の組成、印加電圧、流量などによって異なり、溶液の粘度が高い場合、高分子の重合度が大きい場合、印加電圧が低い場合、流量が多い場合は、通常繊維系が太くなる。
【0018】
前記したとおり、本発明においては、コレクター上の2個の電極には電位差が設けられている、これにより、両電極の電位を同電位とした場合に比べ、ナノファイバーがコレクター電極に引付けられる力が増大し、ナノファイバーの配向度が増大するという効果が得られる。この電位差は、通常0Vを超え10kV程度までの範囲とされればよいが、100v〜10kV程度であることが好ましい。
【0019】
図1の装置においてコレクターを構成する部材として記載されたガラスプレート3は、コレクター材料の一例として例示されたものであり、平行に設けられた2個のコレクター電極間に絶縁領域を形成できるものであればその材料はどのようなものでもよい。このような2個のコレクター電極間に絶縁領域を形成できる材料としては、ポリマー板、シリコンウエハ、石英、セラミックスなどの板状物のような無機材料からなる絶縁性基板など任意のものが挙げられる。なお、コレクターはブロック体などで形成されてもよく、特に板状に限られるものではない。
【0020】
また、コレクター電極として、図1の装置においてはアルミテープが用いられているが、アルミニウム以外の材料、例えば金、白金、導電性シリコン、導電性カーボンなど任意のものでよい。またコレクター電極は、絶縁性の板の上に一体に設けられてもよいし、絶縁性の板と別体の板として設けられてもよい。また、その形成方法も、導電性箔あるいは導電性板を絶縁部材上に貼り付けたものでもよいし、蒸着など他の方法によってもよい。絶縁部材がシリコン基板である場合には、イオンプレーティングなどの不純物の打ち込みにより導電性とされたものでもよい。
【0021】
エレクトロスピニングにおいては、溶媒の蒸発が必要とされることから、一般的には湿度が低い方が好ましく、通常50%RH以下で行うことが好ましい。しかし、本発明のエレクトロスピニング法がこれに限定されるものではない。また温度も特に限定されるものではないが、溶媒の蒸発は常温でも速やかに起こることから、一般的には、紡糸雰囲気を昇温させるあるいは冷やす必要はないが、紡糸条件によっては室温より低温で、あるいは室温より高温で行ってもよい。
【0022】
本発明において、紡糸に使用される高分子は、従来エレクトロスピニング法により紡糸可能であることが知られた何れのものであってもよい。このような高分子としては、例えば、ポリイミド、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキシド、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、アクリロニトリル−メタクリレート共重合体、ポリ(メタ)アクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン66、ナイロン4,6、ポリカプロラクタム、アラミド、ポリエーテルウレタン、ポリビニルアルコール、セルロース、酢酸セルロース、酢酸セルロースブチレート、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリペプチド、タンパク質、コールタールピッチ、石油ピッチ、導電性高分子など溶剤に溶解する種々の高分子が挙げられる。
【0023】
例えば、ポリイミドを用いる場合、該ポリイミドは溶剤に溶解できるものであればよく特に限定されるものではない。このようなポリイミドの例としては、例えば、下記構造式で記載されるポリイミドが挙げられる。なお、これらは何れも公知のポリマーである。フッ素基を含んだ含フッ素ポリイミドおよびスルホン酸基を含んだスルホン化ポリイミドは、本発明において好ましく用いることができる。フッ素基を含んだ含フッ素ポリイミドとしては、例えば6FDA系ポリイミドなどが、またスルホン酸基を含んだスルホン化ポリイミドとしては、例えばNTDA系ポリイミドなどが挙げられる。なお、6FDA系ポリイミドは、ポリイミド合成原料として、2、2−ビス(3、4−カルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンを用いたポリイミドであり、NTDA系ポリイミドは、合成原料として、1,4,5,8−ナフトテトラカルボン酸を用いたポリイミドである。
【0024】
【化1】
【0025】
上記の例は、単に本発明を実施する際に用いられる高分子の一例を示したにすぎないもので、本発明で使用される高分子が、上記特定のポリイミドに限られるものではないし、またさらには高分子がポリイミドに限られるものでもない。
【0026】
これら高分子(溶質)を溶解して紡糸溶液を形成するために用いられる溶媒としては、アセトン、クロロホルム、エタノール、イソプロパノール、メタノール、トルエン、テトラヒドロフラン、水、ベンゼン、トルエン、キシレン、ベンジルアルコール、1,4−ジオキサン、プロパノール、四塩化炭素、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、塩化メチレン、フェノール、ピリジン、トリクロロエタン、酢酸などの揮発性の比較的高いもの、またN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、1−メチル−2−ピロリドン(NMP)、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジメチルカーボネート(DMC)、アセトニトリル(AN)、N−メチルモルホリン−N−オキシド、ブチレンカーボネート(BC)、1,4−ブチロラクトン(BL)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジエチルエーテル(DEE)、1,2−ジメトキシエタン(DME)、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI)、1,3−ジオキソラン(DOL)、エチルメチルカーボネート(EMC)、メチルホルマート(MF)、3−メチルオキサゾリジン−2−オン(MO)、メチルプロピオネート(MP)、2−メチルテトラヒドロフラン(MeTHF)、スルホラン(SL)などの揮発性が相対的に低いものが挙げられる。これらの溶媒は、用いられる高分子の溶解性を考慮して、適宜のものを選択して用いることができる。またこれら溶媒は、1種単独で用いられてもよいし、必要に応じ2種以上が併用されてもよい。さらに、紡糸溶液の電気特性を改善するために、水、水酸化ナトリウム溶液、塩化リチウム溶液などの電解質が添加されてもよい。
【0027】
紡糸溶液には、前記高分子を単独で、あるいは2種以上の高分子を併用してもよく、更には、ポリマー以外の有機物あるいは無機物粉末が添加されてもよい。またポリマーはエマルジョン形態であってもよい。紡糸溶液としては、上記の高分子に限られず、金属、セラミックスなどの無機物を主成分としたゾル,ゲルを用いてもよい。これら金属、セラミックスなどの無機物を主成分としたゾル,ゲルを用いてナノファイバーからなる集積体、例えばウエブが形成される場合、焼結により無機系繊維からなるウエブを形成することができる。
【0028】
また、2軸配向など多軸配向ナノファイバー集積体を形成する場合、上記1軸配向ナノファイバー集積体を製造し、その製造過程で、ナノファイバーが堆積される被集積体を、例えば90℃回転させることにより、引き続きナノファイバーの堆積を行えばよい。必要であればこの操作を繰り返すことにより、例えば図2に示すような2層などの多層の集積体が得られる。回転角度を変えることにより、任意の交差角度を有する2軸軸配向ナノファイバー集積体を形成することができるし、必要であれば、角度を1方向のみの変更とするのでなく、2種以上逐次変更させることにより、3軸配向以上の多軸配向ナノファイバー集積体を製造することもできる。また、集積角度を変更した後、再度最初の角度に戻し、必要であれば再度集積角度を変更することにより、3層以上の多層の集積体を得ることもできる。
【0029】
被集積体としては、フィルム、板、布など集積面を有するものであればいずれも特に問題なく使用できる。また、集積体を被集積体とともに利用するような場合には、これが用いられる用途に応じ適宜の被集積体を選択して用いればよい。例えば、ナノファイバー集積体が被集積体と共にフィルタとして用いる場合には、被集積体として、布、濾紙、多孔性膜などフィルタ材として従来使用されているような素材が好ましく用いられる。
【実施例】
【0030】
以下、合成例、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれによって何ら限定されるものではない。
なお、合成例における化合物の物性は、次の装置を用いて測定した。
【0031】
〔核磁気共鳴(NMR)測定〕
イミド化反応が確実に進行したことを確認するために、得られたポリイミドをd−DMSOに溶解させ、1HNMRにより測定を行った。積算は32回とした。測定に使用した装置は、日本電子(株)製AL400である。
【0032】
〔ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)測定〕
ポリマーの重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)を求めるために、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)を用いた。標準物質としてはポリスチレンを用いた。測定装置は、Shodex製RI−101であり、カラムはSchodex製KF−805Lである。
【0033】
[合成例1]
(含フッ素ポリイミドの合成)
<ポリアミック酸の合成>
1000mL三口フラスコに、2、2−ジアミノジフェニルヘキサフルオロプロパン(6FAP)35.00064g(0.10472モル)を入れ、230ccの蒸留N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)を入れて完全に溶解させた。この後、2、2−ビス(3、4−カルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(6FDA)46.5190g(0.10472モル)、およびDMAc405ccを更に加え、溶解させて溶液とした。この溶液を室温で1晩以上攪拌して、ポリアミック酸を得た。
【0034】
<イミド化>
上記で得られたポリアミック酸溶液に、54.10g(0.5299モル)の無水酢酸を滴下し、次いでトリエチルアミンを滴下し、24時間攪拌を行った。得られたポリマー溶液をメタノールにゆっくり滴下し、下記式で示される粒状のポリイミド(6FDA−p−6FAP)を得た。得られたポリイミドの1H−NMRスペクトル図を図3に示す。また重量平均分子量(Mw)は、4.2×105であり、Mw/Mnは2.0であった。
【0035】
【化2】
【0036】
[合成例2]
合成例1において、2、2−ジアミノジフェニルヘキサフルオロプロパン(6FAP)を11.79241g(0.03528モル)、2、2−ビス(3、4−カルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(6FDA)を15.67396g(0.03528モル)、無水酢酸を90.89g(0.8903モル)、DMAcを212cc用いることを除き、合成例1と同様にして、ポリイミドを合成した。得られたポリイミド(6FDA−p−6FAP)のGPCによるポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)は、3.2×105であり、Mw/Mnは2.0であった。
【0037】
[合成例3]
合成例1において、DMAcを628cc、無水酢酸を53.46g(0.5236モル)用いることを除き合成例1と同様にして、ポリイミドを合成した。得られたポリイミド(6FDA−6FAP)の重量平均分子量(Mw)は、1.2×105であり、Mw/Mnは2.0であった。
【0038】
[実施例1]
図1の装置を用い、1軸配向ポリイミド(6FDA−p−6FAP)ナノファイバー集積体を製造した。ニードル型電極とコレクターとの距離は10cm、コレクターのガラス基板の大きさは100×70mm、アルミ電極の間の距離は30mm、アルミ電極の幅は10mm、印加電圧15kV、アルミ電極の一方の電極には電源7により1kVのプラス電圧を印加、また他方の電極はアースし、紡糸溶液の流量0.12mL/hとし、コレクター中央部に濾紙を置き、エレクトロスピニングを行った。紡糸溶液としては、合成例1で得られた重量平均分子量(Mw)42万のポリイミド(6FDA−6FAP)のN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)14重量%溶液を用いた。エレクトロスピニング時間を1、3、5、10、15、30分と変化させて、濾紙上にナノファイバーを堆積した。
【0039】
作製したナノファイバーを150℃で10時間真空乾燥した後、サンプルを白金コーティングし、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察を行った。SEM写真を図4に示す。図4から明らかなように、得られたナノファイバー集積体は、強く1軸方向に配向したものであった。なおSEM写真の倍率は、1分堆積が1000倍、3分堆積が3000倍、5分堆積が7000倍、10分堆積が10,000倍、15分および30分堆積が20,000倍である。SEM像からナノファイバーの直径およびファイバー間隙を算出したところ、ナノファイバーの平均直径は468nmであった。また、平均ファイバー間隙は表1(図5参照)に示すとおりであった。なお、図5において、図中の範囲を示す線は、測定された間隙の大きさ範囲を示すものである。
【0040】
【表1】
【0041】
[実施例2]
実施例1と同じ装置を用い、同じ紡糸溶液、同じエレクトロスピニング条件で、濾紙上にナノファイバーを1分間堆積した。1分の堆積時間経過後、濾紙を90°回転させて、引き続き1分間ナノファイバーの堆積を行なった。同様の堆積操作を、各々3分、5分、10分、15分、30分と時間を変えて行って、6種の2軸配向ナノファイバー集積体を形成した。
【0042】
実施例1同様、作製したナノファイバー集積体を150℃で10時間真空乾燥した後、サンプルを白金コーティングし、SEMによる観察を行った。SEM写真を図6に示す。図6のSEM写真から、得られた2軸配向ナノファイバー集積体は、強く2軸方向に配向していることが分かる。図6のナノファイバーの直径は実施例1と同様のものであった。SEM写真から、孔の一辺の平均長さ、孔の平均面積、多孔度を算出した。結果を表2(孔の一辺の長さについては図7参照)に示す。
【0043】
【表2】
【0044】
[実施例3]
実施例1と同じ装置を用い、同じ紡糸溶液、同じエレクトロスピニング条件で、濾紙上にナノファイバーを30分間堆積させた。濾紙を90°回転させて、引き続き30分間堆積させた。この走査を繰り返し、1層につき30分積層させたものを4層重ねた構造体を作成した。SEM写真を図8(a)に示す。図8(a)のSEM写真から、得られた4層からなる2軸配向集積体は、強く2軸方向に配向していることが分かる。
【0045】
[実施例4]
実施例1と同じ装置を用い、同じ紡糸溶液、同じエレクトロスピニング条件で、濾紙上にナノファイバーを15分間堆積させた。濾紙を90°回転させて、引き続き15分間堆積させた。この走査を繰り返し、1層につき15分積層させたものを8層重ねた構造体を作成した。SEM写真を図8(b)に示す。図8(b)のSEM写真から、得られた8層からなる2軸配向集積体は、強く2軸方向に配向していることが分かる。
【0046】
[比較例1]
コレクターとして、ガラスプレートの両端に導電性であるアルミテープを接着させたコレクター2に代えて、アルミ箔を用いた導電性基板を用いることを除き実施例1と同様にして、120分エレクトロスピニングを行った。SEM写真を図8(c)に示す。図8(c)のSEM写真から、従来の方法で得られたナノファイバー集積体は、全く配向していないことが分かる。
【0047】
[実施例5および比較例2]
(純水透過実験による透過性能評価)
実施例3、4、比較例1で作製したナノファイバー集積体を70%メタノール水溶液に一晩浸漬させた。透過性評価には、図9に示す装置を用いた。この図9の装置により透過性能を評価する場合、リザーバー8にミリポア水を入れて恒温槽の温度を25℃とし、セル9の下面部分に、前記メタノール水溶液で塗れ処理を行ったサンプル10を設置した後、窒素ガスを導入し、圧力を0.02MPaで一定とした。サンプルを透過した純水の重量を30秒ごとに計量し、流量が一定となった時の値を記録した。得られた透過流量から純水透過係数Lpを計算した。このときの純水透過係数の単位は、ml/h/mmHg/m2とした。
【0048】
【数1】
【0049】
純水透過実験の結果から求めた純水透過係数Lpを図10に示す。構造制御されていない比較例1の不織布状のナノファイバー集積体と比較し、構造制御された実施例3および4の集積体では、Lpの値は減少した。これは、図8から、見かけの孔径が減少していることが主な要因であると考えられる。
【0050】
(デキストラン透過実験による孔径評価)
<デキストラン水溶液の調整>
デキストランは、公称分子量8500−11500、35000−45000、64000−76000、100000−200000のものを使用し、これらを等重量比で混合し、全体で1.0g/Lとなるようにミリポア水で調整し、原液とした。
【0051】
<デキストラン透過実験>
純水透過実験に引き続き、純水透過実験を行ったサンプルを用い、リザーバーのミリポア水を捨て、デキストラン水溶液を入れて恒温槽の温度を25℃とし、窒素ガスを導入し圧力を0.02MPaで一定とした。流量が一定となったところで、サンプルを透過した溶液を採取した。
【0052】
<ゲルろ過クロマトグラフィー(GFC)測定>
GFCを用いて、デキストランの阻止率を求めた。GFCの検出器は示唆屈折計であり、溶液の濃度を直接求めることはできないが、カラムに打ち込む溶液量を一定とすることで原液とサンプルを透過した溶液との強度比が濃度比と同一であると見なし、阻止率を求めた。
【0053】
デキストラン透過実験の結果(デキストラン阻止率)を図11に示す。純水透過実験と同様に、デキストラン透過実験においても、構造制御されていない比較例1の不織布状のナノファイバー集積体と、構造制御された実施例3および4のナノファイバー集積体で違いが見られた。比較例1のナノファイバー集積体では、どの分子量においてもデキストランは全く阻止されなかったのに対し、実施例3および4のナノファイバー集積体では、分子量10万から30万において、わずかではあるがデキストランを阻止することができた。これは構造制御により見かけの孔径が減少したこと、さらに孔径のバラツキが減少したことが主な要因であると考えられる。なお、分子量30万のデキストランの直径は計算上218nmである。
【0054】
実施例3および4のナノファイバー集積体の見かけの孔径を、SEM写真から算出した。結果を表3に示す。どちらもデキストランよりも孔径は小さく、通常であれば分子篩によりデキストランは阻止されると考えられる。しかし、実際のデキストラン阻止率は非常に小さい値となった。これは透過実験の際に、水圧によりナノファイバーが押し広げられ、集積体の構造が乱れたためと考えられる。
【0055】
【表3】
【0056】
[実施例6]
実施例1において、ポリイミドの濃度を17重量%とし、紡糸溶液の溶剤として、DMAcに代えて、NMPおよびDMFを用いることを除き、実施例1と同様にしてエレクトロスピニングを行った。
また、実施例1において、合成例1で得られたポリイミドに代えて、合成例2および3で得られたポリイミドを用い、ポリイミドの濃度を17重量%とし、かつ各々のポリイミドの溶剤としてDMAc、NMPおよびDMFを用いて実施例1と同様にしてエレクトロスピニングを行った。
これらにより得られたナノファイバーの平均径を図12に示す。
【0057】
[実施例7]
実施例1において、合成例3で得られたポリイミドの17重量%の溶液を用い、その溶媒としてとしてDMAc、NMPおよびDMFを用い、かつ紡糸溶液の流量を0.12、0.24、0.36、0.60、0.96mL/hの条件として、エレクトロスピニングを行った。これらにより得られたナノファイバーの平均径を図13に示す。
【0058】
[実施例8]
実施例1において、合成例3で得られたポリイミドの17重量%の溶液を用い、その溶媒としてDMAc、NMPおよびDMFを用い、かつ印加電圧を10、15、20kVとして、エレクトロスピニングを行った。これらにより得られたナノファイバーの平均径を図14に示す。
【0059】
[実施例9]
実施例1において、合成例3で得られたポリイミドの溶液を用い、その溶媒としてDMAc、NMPおよびDMFを用い、かつポリマー濃度を17、18、19重量%として、エレクトロスピニングを行った。これらにより得られたナノファイバーの平均径を図15に示す。
【0060】
[実施例10]
実施例1と同じ装置を用い、紡糸溶液として、先に構造式で示した6FDA−p−APPSのDMF15重量%溶液を用い、堆積時間を各15分とすることを除き、実施例1と同様にして2軸配向ナノファイバー集積体を作製した。得られた集積体のSEM写真を図16に示す。図16から、6FDA−p−APPSのDMFを用いた場合にも、良好な配向性を有する2軸配向ナノファイバー集積体が作製されていることが分かる。
【0061】
[実施例11]
実施例1と同じ装置を用い、紡糸溶液として、先に構造式で示した6FDA−p−APPSのDMF15重量%溶液を用い、実施例1と同じエレクトロスピニング条件で、濾紙上にナノファイバーを15分間堆積させた。次いで、濾紙を60°回転させて、引き続き同条件で15分間ナノファイバーの堆積を行った。その後、さらに濾紙を同方向に60°回転させて15分間ナノファイバーを堆積させて、3軸配向ナノファイバー集積体を作製した。得られた集積体のSEM写真を図17に示す。図17のSEM写真から、得られた集積体は、3軸方向に良好に配向していることが分かる。
【0062】
[実施例12]
実施例1と同じ装置を用い、紡糸溶液として、先に構造式で示した6FDA−p−FAP−b−3MPA(n:m=70:70)のDMF15重量%溶液を用い、堆積時間を各15分とすることを除き、実施例1と同様にして2軸配向ナノファイバー集積体を作製した。得られた集積体のSEM写真を図18に示す。図18から、6FDA−p−APPSのDMFを用いた場合にも、良好な配向性を有する2軸配向ナノファイバー集積体が作製されていることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明により得られた1軸または多軸配向ナノファイバー集積体は、リチウム電池など各種電池のセパレータや電解質膜、フィルタ、医療用絆創膏、医療用バリヤウエブ、医療用組織培養支持体、センサ、得られた集積体を炭化することにより電極材などの広範囲の材料として使用することができ、特にフィルタとして好ましく用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の2軸配向ナノファイバーウエブ製造装置の一態様の概要図である。
【図2】本発明の2軸配向ナノファイバー多層集積体製造を示す概念図である。
【図3】合成例1で合成された6FDA−p−6FAPの1HNMRスペクトル図である。
【図4】図面代用写真であり、本発明の実施例1で得られた1軸配向ナノファイバー集積体のSEM写真である。
【図5】1軸配向ナノファイバー集積体のファイバー間隙の大きさを、堆積時間との関係で示す図である。
【図6】図面代用写真であり、本発明の6種の2軸配向ナノファイバー集積体のSEM写真である。
【図7】2軸配向ナノファイバー集積体の孔の一辺の長さを、堆積時間との関係で示す図である。
【図8】図面代用写真であり、(a)は、本発明の4層構造の2軸配向ナノファイバー集積体のSEM写真であり、(b)は、本発明の8層構造の2軸配向ナノファイバー集積体のSEM写真であり、(c)は従来法による配向していないナノファイバー集積体のSEM写真である。
【図9】透過性能評価実験で用いられた装置の概略図である。
【図10】純水透過実験の結果から求めた純水透過係数Lpの値を示す図である。
【図11】デキストラン透過実験の結果から求めたデキストラン阻止率を示す図である。
【図12】実施例6で得られた1軸配向ナノファイバー集積体の平均径を示す図である。
【図13】実施例7で得られた1軸配向ナノファイバー集積体の平均径を示す図である。
【図14】実施例8で得られた1軸配向ナノファイバー集積体の平均径を示す図である。
【図15】実施例9で得られた1軸配向ナノファイバー集積体の平均径を示す図である。
【図16】図面代用写真であり、実施例10で得られた2軸配向ナノファイバー集積体のSEM写真である。
【図17】図面代用写真であり、実施例11で得られた3軸配向ナノファイバー集積体のSEM写真である。
【図18】図面代用写真であり、実施例12で得られた2軸配向ナノファイバー集積体のSEM写真である。
【図19】従来のエレクトロスピニング装置の概略図である。
【符号の説明】
【0065】
1、11 シリンジ
2 コレクター
3 ガラスプレート
4 アルミテープ
5、13 高圧直流電源
6、14 紡糸溶液
7 直流電源
8 リザーバー
9 セル
10 サンプル
12 コレクター電極
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレクトロスピニング法によってコレクター表面上またはコレクター上に配置された被集積体上に、配向制御されたナノファイバーを集積する方法において、コレクターとして、絶縁体を挟んで離間して平行に2枚のコレクター電極が設けられ、かつ該2枚のコレクター電極に電位差が形成されたものを用いることを特徴とする配向制御されたナノファイバーを集積する方法。
【請求項2】
エレクトロスピニング法によって多軸に配向されたナノファイバーを集積する方法において、絶縁体を挟んで離間して平行に2枚のコレクター電極が設けられ、該コレクター電極間に電位差が付与されたコレクター上に、被集積体を載置してエレクトロスピニングを行った後、該被集積体を一定角度回転させて、再度エレクトロスピニングを行うことを特徴とする多軸に配向されたナノファイバーを集積する方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の配向制御されたナノファイバーを堆積する方法において、前記2枚のコレクター電極の電位差が0を超え10kVまでの範囲であることを特徴とする配向制御されたナノファイバーを集積する方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の配向制御されたナノファイバーを集積する方法において、コレクター電極がアルミニウムからなることを特徴とする配向制御されたナノファイバーを集積する方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載された配向制御されたナノファイバーを集積する方法において、紡糸用高分子がポリイミドであることを特徴とする配向制御されたナノファイバーを集積する方法。
【請求項6】
請求項5に記載の配向制御されたナノファイバーを集積する方法において、前記ポリイミドが、フッ素基を含んだ含フッ素ポリイミドあるいはスルホン酸基を含んだスルホン化ポリイミドであることを特徴とする配向制御されたナノファイバーを集積する方法。
【請求項7】
シリンジ、シリンジに装着されているニードル型電極、ニードル型電極に離間、対向して設けられたコレクター電極、およびニードル型電極とコレクター電極間に直流高圧電圧を印加する高圧直流電源からなるエレクトロスピニング装置において、コレクター電極が絶縁体を挟んで離間して平行に設けられており、該電極の一方の電極と他方の電極とに電位差を与えるための電位差付与手段が設けられていることを特徴とするエレクトロスピニング装置。
【請求項8】
請求項7記載のエレクトロスピニング装置において、電位差付与手段が直流電源であることを特徴とするエレクトロスピニング装置。
【請求項9】
請求項1〜6のいずれかの方法により堆積された1軸または多軸に配向したナノファイバー集積体。
【請求項10】
請求項2に記載の方法により被集積体上に形成された多軸配向ナノファイバー集積体からなるフィルタ。
【請求項1】
エレクトロスピニング法によってコレクター表面上またはコレクター上に配置された被集積体上に、配向制御されたナノファイバーを集積する方法において、コレクターとして、絶縁体を挟んで離間して平行に2枚のコレクター電極が設けられ、かつ該2枚のコレクター電極に電位差が形成されたものを用いることを特徴とする配向制御されたナノファイバーを集積する方法。
【請求項2】
エレクトロスピニング法によって多軸に配向されたナノファイバーを集積する方法において、絶縁体を挟んで離間して平行に2枚のコレクター電極が設けられ、該コレクター電極間に電位差が付与されたコレクター上に、被集積体を載置してエレクトロスピニングを行った後、該被集積体を一定角度回転させて、再度エレクトロスピニングを行うことを特徴とする多軸に配向されたナノファイバーを集積する方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の配向制御されたナノファイバーを堆積する方法において、前記2枚のコレクター電極の電位差が0を超え10kVまでの範囲であることを特徴とする配向制御されたナノファイバーを集積する方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の配向制御されたナノファイバーを集積する方法において、コレクター電極がアルミニウムからなることを特徴とする配向制御されたナノファイバーを集積する方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載された配向制御されたナノファイバーを集積する方法において、紡糸用高分子がポリイミドであることを特徴とする配向制御されたナノファイバーを集積する方法。
【請求項6】
請求項5に記載の配向制御されたナノファイバーを集積する方法において、前記ポリイミドが、フッ素基を含んだ含フッ素ポリイミドあるいはスルホン酸基を含んだスルホン化ポリイミドであることを特徴とする配向制御されたナノファイバーを集積する方法。
【請求項7】
シリンジ、シリンジに装着されているニードル型電極、ニードル型電極に離間、対向して設けられたコレクター電極、およびニードル型電極とコレクター電極間に直流高圧電圧を印加する高圧直流電源からなるエレクトロスピニング装置において、コレクター電極が絶縁体を挟んで離間して平行に設けられており、該電極の一方の電極と他方の電極とに電位差を与えるための電位差付与手段が設けられていることを特徴とするエレクトロスピニング装置。
【請求項8】
請求項7記載のエレクトロスピニング装置において、電位差付与手段が直流電源であることを特徴とするエレクトロスピニング装置。
【請求項9】
請求項1〜6のいずれかの方法により堆積された1軸または多軸に配向したナノファイバー集積体。
【請求項10】
請求項2に記載の方法により被集積体上に形成された多軸配向ナノファイバー集積体からなるフィルタ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図5】
【図7】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図19】
【図4】
【図6】
【図8】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図5】
【図7】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図19】
【図4】
【図6】
【図8】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2008−274487(P2008−274487A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−120086(P2007−120086)
【出願日】平成19年4月27日(2007.4.27)
【出願人】(305027401)公立大学法人首都大学東京 (385)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年4月27日(2007.4.27)
【出願人】(305027401)公立大学法人首都大学東京 (385)
【Fターム(参考)】
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