説明

1,2−ポリブタジエン及びその製造方法、非架橋成形用1,2−ポリブタジエン、改質剤、架橋ゴム、並びに加硫用ゴムの反応助剤

【課題】高温成形時に金型汚染、熱劣化が起こらず、物性の経時変化の改善された1,2−ポリブタジエンを提供する。
【解決手段】本発明の1,2−ポリブタジエンは、ブタジエンの結合単位における1,2結合含有量が70重量%以上であり、融点が50〜140℃の範囲にあり、スリットダイレオメーターにより剪断速度5113sec-1で測定した粘度ηが、120℃では400〜1200poiseの範囲にあり、150℃では300〜1000poiseの範囲にあり、180℃では200〜800poiseの範囲にあり、且つ全ハロゲン含有量が30ppm以下である。これを高温で成形すると、金型汚染、熱劣化及び時間の経過とともに物性が変化する問題が改良され、成形性、透明性、力学強度特性、耐ウエットスキッド性等の特性に優れ、熱可塑性エラストマーとしての用途に好適に使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1,2−ポリブタジエン及び熱可塑性エラストマー組成物並びに重合体組成物に関し、更に詳しくは、高温成形時に金型汚染、熱劣化、物性の経時変化の改善された1,2−ポリブタジエン及び、成形性、透明性、力学強度、耐ウェットスキッド性に優れるエラストマー組成物に関する。本発明の1,2−ポリブタジエンは工業部品や履き物等の各種成形品や、各種シート、フィルム等を成形するための熱可塑性エラストマーとして、更には電子線架橋樹脂、樹脂やゴム等の改質材、加硫用ゴム等として用いられる。また、1,2−ポリブタジエンを含有する熱可塑性エラストマー組成物は、工業部品や履き物等の各種成形品や、各種シート、フィルム、チューブ等として用いられる。
【背景技術】
【0002】
適度に結晶化度を制御できる1,2−ポリブタジエンは、結晶性に富んだ領域と非晶性部とからなる構造を有するため、熱可塑性エラストマーとしての機能だけでなく、分子中に化学反応性に富んだ炭素−炭素二重結合を有しているため、従来の加硫ゴムや架橋密度を高めた熱硬化性樹脂の機能も有する。また、この1,2−ポリブタジエンは、加工性に優れることから、他の樹脂や熱可塑性エラストマーの改質材、医療用高分子材料として応用されている。
【0003】
従来、結晶化度の制御された1,2−ポリブタジエンは、コバルト塩のホスフィン錯体とトリアルキルアルミニウムと水からなる触媒(下記特許文献1)、コバルト化合物、トリアルキルアルミニウムと水、及びトリフェニルホスフィン誘導体からなる触媒(下記特許文献2)により得られている。これらの触媒系では、塩化メチレンに代表されるハロゲン化炭化水素溶媒では高い重合活性を示し、炭化水素溶媒では重合活性が低下するので、ハロゲン化炭化水素溶媒を用いて重合が行われる。
【0004】
【特許文献1】特公昭44−32425号公報
【特許文献2】特公昭61−27402号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ハロゲン化炭化水素溶媒を用いて製造された1,2−ポリブタジエンは、その中に残留する溶媒に起因して塩素等のハロゲンを相当量含有しているため、高温成形時に、例えば塩化水素等のハロゲン化水素が発生し、金型が錆びたり、1,2−ポリブタジエンが熱劣化する問題、時間の経過とともに物性が変化する問題が生じる。
【0006】
更に、1,2−ポリブタジエンには、熱可塑性エラストマーとしてのより優れた特性が求められている。
【0007】
本発明の目的は、高温成形時に金型汚染、熱劣化が起こらず、物性の経時変化の改善された1,2−ポリブタジエン、及び成形性、透明性、力学強度、耐ウエットスキッド性に優れる熱可塑性エラストマー組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するため、鋭意検討した結果、本発明を完成するに至った。即ち、請求項1記載の発明の1,2−ポリブタジエンは、ブタジエンの結合単位における1,2結合含有量が70重量%以上であり、融点が50〜140℃の範囲にあり、スリットダイレオメーターにより剪断速度5113sec-1で測定した粘度ηが、120℃では400〜1200poiseの範囲にあり、150℃では300〜1000poiseの範囲にあり、180℃では200〜800poiseの範囲にあり、且つ全ハロゲン含有量が30ppm以下であることを特徴とする。
【0009】
請求項1記載の発明の1,2−ポリブタジエンのブタジエン結合単位における1,2結合含有量は、熱可塑性エラストマーとしての性質に大きな関連があり、70重量%以上、好ましくは80重量%以上である。
【0010】
また、上記1,2−ポリブタジエンは、結晶性を有し、その融点は50〜140℃、好ましくは60〜130℃の範囲にある。融点がこの範囲にあることにより、熱可塑性エラストマーとして引張強度、引裂強度等の力学強度と柔軟性のバランスに優れる。
【0011】
請求項1記載の発明の1,2−ポリブタジエンは、スリットダイレオメーターにより、剪断速度5113sec-1で測定した粘度ηが、上記の各温度でそれぞれの粘度範囲内にあるが、各温度における粘度ηが、上記の各下限粘度未満では力学強度に劣るため好ましくなく、また、各上限粘度を越えると加工性、成形性が劣り好ましくない。尚、スリットダイレオメーターにより粘度ηを測定する方法は、実施例の項で詳しく記載する。
【0012】
請求項1記載の発明の1,2−ポリブタジエンは、全ハロゲン量が30ppm以下である。通常、ポリマー中のハロゲン量は蛍光X線による定量分析によって測定されるが、この方法では30ppmが測定限度下限値である。本発明の1,2−ポリブタジエンに残留する全ハロゲン値がこのように僅かであることにより、射出成形等の高温成形時に、金型汚染、熱劣化が起こらず、物性の経時変化等の問題が改善され、加工性及び成形性が良好であり、成形品の物性が長期間維持される。
【0013】
本発明の1,2−ポリブタジエンは、ブタジエン以外の共役ジエンが共重合していてもよい。ブタジエン以外の共役ジエンとしては、1,3−ペンタジエン、高級アルキル基で置換された1,3−ブタジエン誘導体、2−アルキル置換−1,3−ブタジエン等が挙げられる。このうち、高級アルキル基で置換された1,3−ブタジエン誘導体としては、1−ペンチル−1,3−ブタジエン、1−ヘキシル−1,3−ブタジエン、1−ヘプチル−1,3−ブタジエン、1−オクチル−1,3−ブタジエン等が挙げられる。
【0014】
また、2−アルキル置換−1,3−ブタジエンとしては、2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)、2−エチル−1,3−ブタジエン、2−プロピル−1,3−ブタジエン、2−イソプロピル−1,3−ブタジエン、2−ブチル−1,3−ブタジエン、2−イソブチル−1,3−ブタジエン、2−アミル−1,3−ブタジエン、2−イソアミル−1,3−ブタジエン、2−ヘキシル−1,3−ブタジエン、2−シクロヘキシル−1,3−ブタジエン、2−イソヘキシル−1,3−ブタジエン、2−ヘプチル−1,3−ブタジエン、2−イソヘプチル−1,3−ブタジエン、2−オクチル−1,3−ブタジエン、2−イソオクチル−1,3−ブタジエン等が挙げられる。
【0015】
これらの共役ジエンのうち、ブタジエンと共重合される好ましい共役ジエンとしては、イソプレン、1,3−ペンタジエンが挙げられる。
【0016】
重合に供される単量体成分中のブタジエンの含有量は50モル%以上、特には70モル%以上が好ましい。ブタジエン以外の共役ジエンがあまり多く共重合していると、得られる1,2−ポリブタジエンの融点や粘度が上記範囲外となる場合がある。
【0017】
本発明の1,2−ポリブタジエンは、コバルト化合物及びアルミノオキサンを含有する触媒の存在下に、ブタジエンを重合して得られる。
【0018】
上記コバルト化合物としては、好ましくは炭素数4以上のコバルトの有機酸塩を挙げることができる。このコバルトの有機酸塩としては、酪酸塩、ヘキサン酸塩、ヘプチル酸塩、2−エチルヘキシル酸等のオクチル酸塩、デカン酸塩や、ステアリン酸、オレイン酸、エルカ酸等の高級脂肪酸の塩、安息香酸塩、トリル酸塩、キシリル酸塩、エチル安息香酸等のアルキル、アラルキル、アリル置換安息香酸塩やナフトエ酸塩、アルキル、アラルキルもしくはアリル置換ナフトエ酸塩等が挙げられる。これらのうち、2−エチルヘキシル酸のいわゆるオクチル酸塩や、ステアリン酸塩、安息香酸塩が、溶媒である炭化水素への溶解性が優れるために好ましい。
【0019】
上記アルミノオキサンとしては、例えば下記一般式(I)又は一般式(II)で表されるものを挙げることができる。
【0020】
【化2】

【化3】

【0021】
この一般式(I)あるいは(II)で表されるアルミノオキサンにおいて、Rはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の炭化水素基であり、好ましくはメチル基、エチル基であり、特に好ましくはメチル基である。尚、一般式(I)において、両末端のRは同一又は異なっていてもよい。また、mは、2以上、好ましくは5以上、更に好ましくは10〜100の整数である。アルミノオキサンの具体例としては、メチルアルミノオキサン、エチルアルミノオキサン、プロピルアルミノオキサン、ブチルアルミノオキサン等を挙げることができ、メチルアルミノオキサンが特に好ましい。
【0022】
重合触媒は、上記コバルト化合物とアルミノオキサン以外に、ホスフィン化合物を含有することが極めて好ましい。ホスフィン化合物は、重合触媒の活性化、ビニル結合構造及び結晶性の制御に有効な成分であり、好ましくは下記一般式(III)で表される有機リン化合物を挙げることができる。
【0023】
【化4】

一般式(III)中、Arは下記で示される基を示す。
【0024】
【化5】

(上記基において、R、R、Rは、同一又は異なって、水素原子、炭素数が好ましくは1〜6のアルキル基、ハロゲン原子、炭素数が好ましくは1〜6のアルコキシ基又は炭素数が好ましくは6〜12のアリール基を表す。)
【0025】
また、一般式(III)中、Rはシクロアルキル基、アルキル置換シクロアルキル基を示し、nは0〜3の整数である。
【0026】
一般式(III)で表されるホスフィン化合物としては、具体的に、トリ−(3−メチルフェニル)ホスフィン、トリ−(3−エチルフェニル)ホスフィン、トリ−(3,5−ジメチルフェニル)ホスフィン、トリ−(3,4−ジメチルフェニル)ホスフィン、トリ−(3−イソプロピルフェニル)ホスフィン、トリ−(3−t−ブチルフェニル)ホスフィン、トリ−(3,5−ジエチルフェニル)ホスフィン、トリ−(3−メチル−5−エチルフェニル)ホスフィン)、トリ−(3−フェニルフェニル)ホスフィン、トリ−(3,4,5−トリメチルフェニル)ホスフィン、トリ−(4−メトキシ−3,5−ジメチルフェニル)ホスフィン、トリ−(4−エトキシ−3,5−ジエチルフェニル)ホスフィン、トリ−(4−ブトキシ−3,5−ジブチルフェニル)ホスフィン、トリ(p−メトキシフェニルホスフィン)、トリシクロヘキシルホスフィン、ジシクロヘキシルフェニルホスフィン、トリベンジルホスフィン、トリ(4−メチルフェニルホスフィン)、トリ(4−エチルフェニルホスフィン)等が挙げられる。これらのうち、特に好ましいものとしては、トリフェニルホスフィン、トリ−(3−メチルフェニル)ホスフィン、トリ−(4−メトキシ−3,5−ジメチルフェニル)ホスフィン等が挙げられる。
【0027】
また、コバルト化合物として、下記一般式(IV)で表されるものを用いることができる。
【0028】
【化6】

【0029】
上記一般式(IV)で表される化合物は、塩化コバルトに対し前記一般式(III)においてn=3であるホスフィン化合物を配位子に持つ錯体である。このコバルト化合物の使用に際しては、あらかじめ合成したものを使用してもよいし、あるいは重合系中に塩化コバルトとホスフィン化合物を接触させる方法で使用してもよい。錯体中のホスフィン化合物を種々選択することにより、得られる1,2−ポリブタジエンの1,2結合の量、結晶化度の制御を行なうことができる。
【0030】
上記一般式(IV)で表されるコバルト化合物の具体例としては、コバルトビス(トリフェニルホスフィン)ジクロライド、コバルトビス〔トリス(3−メチルフェニルホスフィン)〕ジクロライド、コバルトビス〔トリス(3−エチルフェニルホスフィン)〕ジクロライド、コバルトビス〔トリス(4−メチルフェニルホスフィン)〕ジクロライド、コバルトビス〔トリス(3,5−ジメチルフェニルホスフィン)〕ジクロライド、コバルトビス〔トリス(3,4−ジメチルフェニルホスフィン)〕ジクロライド、コバルトビス〔トリス(3−イソプロピルフェニルホスフィン)〕ジクロライド、コバルトビス〔トリス(3−t−ブチルフェニルホスフィン)〕ジクロライド、コバルトビス〔トリス(3,5−ジエチルフェニルホスフィン)〕ジクロライド、コバルトビス〔トリス(3−メチル−5−エチルフェニルホスフィン)〕ジクロライド、コバルトビス〔トリス(3−フェニルフェニルホスフィン)〕ジクロライド、コバルトビス〔トリス(3,4,5−トリメチルフェニルホスフィン)〕ジクロライド、コバルトビス〔トリス(4−メトキシ−3,5−ジメチルフェニルホスフィン)〕ジクロライド、コバルトビス〔トリス(4−エトキシ−3,5−ジエチルフェニルホスフィン)〕ジクロライド、コバルトビス〔トリス(4−ブトキシ−3,5−ジブチルフェニルホスフィン)〕ジクロライド、コバルトビス〔トリス(4−メトキシフェニルホスフィン)〕ジクロライド、コバルトビス〔トリス(3−メトキシフェニルホスフィン)〕ジクロライド、コバルトビス〔トリス(4−ドデシルフェニルホスフィン)〕ジクロライド、コバルトビス〔トリス(4−エチルフェニルホスフィン)〕ジクロライド等を使用することができる。
【0031】
これらのうち、特に好ましいものとしては、コバルトビス(トリフェニルホスフィン)ジクロライド、コバルトビス〔トリス(3−メチルフェニルホスフィン)〕ジクロライド、コバルトビス〔トリス(3,5−ジメチルフェニルホスフィン)〕ジクロライド、コバルトビス〔トリス(4−メトキシ−3,5−ジメチルフェニルホスフィン)〕ジクロライド等が挙げられる。
【0032】
触媒の使用量は、ブタジエンの単独重合の場合は、ブタジエン1モル当たり、共重合する場合は、ブタジエンとブタジエン以外の共役ジエンとの合計量1モル当たり、コバルト化合物を、コバルト原子換算で0.001〜1ミリモル、好ましくは0.01〜0.5ミリモル使用する。また、ホスフィン化合物の使用量は、コバルト原子に対するリン原子の比(P/Co)として、通常、0.1〜50、好ましくは0.5〜20、更に好ましくは1〜20である。更に、アルミノオキサンの使用量は、コバルト化合物のコバルト原子に対するアルミニウム原子の比(Al/Co)として、通常、4〜10、好ましくは10〜10である。
【0033】
尚、一般式(IV)で表される錯体を用いる場合は、ホスフィン化合物の使用量がコバルト原子に対するリン原子の比(P/Co)が2であるとし、アルミノオキサンの使用量は、上記の記載に従う。
【0034】
重合溶媒として用いられる不活性有機溶媒としては、例えばベンゼン、トルエン、キシレン、クメン等の芳香族炭化水素、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ブタン等の脂肪族炭化水素、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン等の脂環族炭化水素及びこれらの混合物が挙げられる。
【0035】
重合温度は、通常、−50〜120℃で、好ましくは−20〜100℃である。重合反応は、複数基直列に連結した連続式重合が好ましい。尚、溶媒中の単量体濃度は、通常、5〜50重量%、好ましくは10〜35重量%である。また、重合体を製造するために、本発明の触媒及び重合体を失活させないために、重合系内に酸素、水あるいは炭酸ガス等の失活作用のある化合物の混入を極力なくすような配慮が必要である。重合反応が所望の段階まで進行したら反応混合物をアルコール、その他の重合停止剤、老化防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等を添加し、次いで通常の方法に従って生成重合体を分離、洗浄、乾燥して本発明の1,2−ポリブタジエンを得ることができる。
【0036】
本発明の1,2−ポリブタジエンは、単独で、架橋を行わない状態でも十分な強度が得られるため、射出成形、押し出し成形等工業部品やフィルム用途等の非架橋成形用途に好適である。
【0037】
また、架橋反応性にも優れるため、架橋ゴム用途や加硫用ゴムの反応助剤用途等にも好適に用いられる。その際、加工方法としては特に制限はなく、通常の樹脂、ゴム加工時に用いられるロール、ニーダー、バンバリーミキサー、スクリュー押出機、フィーダールーダー押出機等を用いた溶融混練り等による混合が可能である。
【0038】
また、本発明の1,2−ポリブタジエンは、他の熱可塑性エラストマーや樹脂の改質剤として好適に用いられる。
【0039】
請求項2記載の発明のエラストマー組成物は、芳香族ビニル系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、塩ビ系熱可塑性エラストマー及びフッ素系熱可塑性エラストマーから選ばれる熱可塑性エラストマーと、上記1,2−ポリブタジエンと、を含有することを特徴とする。
【0040】
上記芳香族ビニル系熱可塑性エラストマーとしては、ポリスチレン−ポリブタジエンブロック共重合体、ポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレンブロック共重合体、ポリスチレン−ポリ(スチレン−ブタジエン)−ポリスチレンブロック共重合体、ポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレン共重合体、スチレンの一部又は全部をαメチレンで置換した上記ブロック共重合体等の芳香族ビニル化合物と共役ジオレフィンのブロック共重合体、これらブロック共重合体の水素化物等が挙げられ、好ましくはポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレンブロック共重合体が用いられる。
【0041】
上記ポリエステル系熱可塑性エラストマーとしては、ハードセグメントとしてポリブチレンテレフタレートを、ソフトセグメントとしてポリテトラメチレンエーテルグリコールを使用したマルチブロックポリマー等が挙げられる。上記ポリアミド系熱可塑性エラストマーとしては、ハードセグメントとしてナイロンを、ソフトセグメントとしてポリエステル又はポリオールを使用したブロックポリマー等が挙げられる。
【0042】
上記熱可塑性エラストマーと上記1,2−ポリブタジエンの配合割合は、請求項3に示すように、上記熱可塑性エラストマー50〜99重量部及び上記1,2−ポリブタジエン1〜50重量部とすることができる。上記1,2−ポリブタジエンの含有量が1重量部未満であると成形外観が劣り、50重量部を越えると使用する熱可塑性エラストマー自体の特性が失われるので好ましくない。
【0043】
請求項6記載の発明のエラストマー組成物は、ポリオレフィン系重合体と上記1,2−ポリブタジエンと、を含有することを特徴とする。上記ポリオレフィン系重合体は熱可塑性のものであれば特に限定されず、樹脂でもエラストマーでもよい。また、このポリオレフィン系重合体としては、請求項8に示すように、エチレン成分、プロピレン成分及びブチレン成分のうちの少なくとも一種を含有するものが好ましく用いられる。これらの例としてはポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンプロピレン共重合体(EPR、EPDM)、ポリブチレン、ポリイソブチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。これらのうち、ポリエチレン、ポリプロピレン、結晶性エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体が好ましく用いられる。
【0044】
上記ポリオレフィン重合体と上記1,2−ポリブタジエンの配合割合は、請求項7に示すように、上記ポリオレフィン重合体70〜99重量部及び上記1,2−ポリブタジエン1〜20重量部とすることができる。上記1,2−ポリブタジエンの含有量が1重量部未満であるとポリオレフィン重合体の成形品の耐傷付き性が劣り、20重量部を越えると使用するポリオレフィン重合体自体の特性が失われるので好ましくない。
【実施例】
【0045】
以下に、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明の主旨を越えない限り、これらにより本発明が限定されるものではない。尚、特に断りがない限り実施例及び比較例中の部及び%は重量基準である。
【0046】
また、実施例及び比較例における各種の測定は、以下の方法により行った。
(1)評価方法
〔1〕粘度
粘度は、構造の概要が図1に示されているスリットダイレオメーターを用いて測定した。即ち、ダイの部分に2本の圧力センサー(P1,P2)、スリットダイ、シリンダー(Barrel)圧力センサー(Pin)が取り付けられているスリットダイレオメーターを使用した。
所定温度に保ったシリンダーに重合体を充填し、プランジャー(Plunger)の速度を5000cm/min(このとき、剪断歪み速度は5113sec−1)で押し出したときの粘度の値を測定した。
図1において、シリンダーの径は15mm、スリットダイの横断面h×Mは1mm×12mm、長さは54mm、ホッパーの角度aは90度である。
〔2〕1,2結合含有量
ポリブタジエンの結合単位における1,2結合含有量は、D.Moreroらによる赤外吸収スペクトル法(Chem.e.Ind.,41,758(1959))によって求めた。
〔3〕融点
融点は、DSC(示差走査熱量計)を用い、ASTM3418に準じて測定した。
〔4〕結晶化度
結晶化度はJIS K7112に準拠し、密度測定により求めた。その際、結晶化度100%の1,2−ポリブタジエンの密度は、G.Natta(J.Polymer.Sci.,20,25(1956))の0.963を用い、結晶化度0%の1,2−ポリブタジエンの密度はX線解析により無定形であることが確認されたもの(特公昭44−32425、特公昭4−32426)の密度0.892を用いた。
〔5〕ハロゲン含有量
蛍光X線法により測定した。
【0047】
〔6〕力学強度;引張強度(TB)、引張伸び(EB)
下記に示す成形条件にて射出成形した成形品を用い、JIS K6301に準拠して測定した。
(成形条件)
成形機:インラインスクリュータイプ射出成形機
金型:2×70×150mmのダイレクトゲートの平板
成形温度:150℃
射出圧力:660kg/cm
フローコントロール:中位
インジェクション:10秒
冷却:50秒
金型温度:30℃
【0048】
〔7〕耐ウエットスキッド性
上記〔6〕と同様に射出成形した成形品から、内径50mm、外径70mmの試料を作製し、JSR型WSR試験機を用いて測定した。
(測定条件)
路面:完全に水で濡れた磁気タイル(水量約180cc/分で測定)
試料回転数:600回転
接触圧力:3kg/cm
接触時間:0.02秒
結果を下記式で算出されるA値で表示した。この値が大きい方が耐ウエットスキッド性が良好となる。
A=(路面と試料の接触時のトルク値)÷(接触時の荷重)
【0049】
〔8〕成形品外観評価
上記〔6〕で射出成形した成形品表面のフローマーク、肌荒れ、ブラッシュイング、シルバーストリーク、ブルーイング等を目視観察し、下記の3段階で評価した。
〇:優れている。
△:使用できないこともないが、上記特性に劣る。
×:使用に耐えず不可。
【0050】
〔9〕平行光線透過率
下記に示す成形条件にてフィルム成膜したフィルムを用い、JIS K6714に準拠して測定した。
(成形条件)
押出機:50mmφ押出機
スクリュー:形状 メータリングタイプ、L/D 28、圧縮比 2.0
ダイ:口径 75mmφ、リップ間隙 0.7mm
押出温度:150℃
樹脂圧力:155kg/mm
吐出量:31kg/hr
ブロー比:4.8
引取速度:15m/min
フィルム厚さ:50μm
【0051】
〔10〕透湿度
上記〔9〕と同様に成膜したフィルムを用い、JIS Z0208に準拠して測定した。
〔11〕ガス透過率
上記〔9〕と同様に成膜したフィルムを用い、ASTM D1434に準拠して酸素、エチレンオキシド透過率を測定した。
〔12〕熱安定性
熱安定性は、ラボプラストミルを用いて下記条件で測定されたトルクの立ち上がり時間を安定時間として評価した。ここで、トルクの立ち上がり時間は、トルクカーブの立ち上がり部分に、ベースラインに対して30度の直線を引き、時間軸との交点で示される時間として定義される。
(測定条件)
ミキサー:容量 100cc、 ブレード形状 ローラ形
測定温度:170℃
回転数 :60rpm
充填率 :80%
【0052】
〔13〕加工性、加硫物の評価
下記処方に従って、加硫促進剤と硫黄を除く重合体等を予めバンバリーミキサーにて、冷却水温70℃の条件下で5分間混練した後、ロールにて加硫促進剤と硫黄を加え、未加硫配合物を得た。得られた未加硫配合物を160℃で20分間プレス加硫し、加硫物を得た。
(配合処方)
重合体 100 重量部
亜鉛華1号 3
ステアリン酸 1
ジベンゾチアジルジスルフィド 1.5
テトラメチルチウラムジスルフィド 0.55
硫黄 1.6
加硫物の評価はJIS K6301により行った。
加工性の評価は、下記の2段階評価により行った。
〇:溶融性、ロール巻き付き性及びロール離れ性に優れる。
×:溶融性、ロール巻き付き性及び/又はロール離れ性に劣る。
【0053】
〔14〕耐傷付き性評価
150×150×2(mm)形状の成形品の表面に電子線を照射し(加速電圧150kV、放射線量30Mrad)、爪でスクラッチした。その評価は下記の3段階評価により行った。
○:傷が付かない。
△:僅かに傷跡が見える。
×:傷が容易に付く。
【0054】
(2)1,2−ポリブタジエンの評価
実施例1(重合体Aの合成)
内容積20Lの撹拌機を装備した縦型反応器を3基直列に連結した装置を用いて、連続重合により合成した。第1反応器の底部付近から、シクロヘキサン/n−ヘプタン(重量比:80/20)混合溶媒を270mL/分、1,3−ブタジエンを43g/分、メチルアルミノオキサンのトルエン溶液を1mL/分、コバルトビス〔トリス(4−メチルフェニルホスフィン)〕ジクロライドのトルエン溶液を1mL/分供給し、40℃で重合を行った。このとき、Co原子/1,3−ブタジエンのモル比は1/63000であり、Al/Coの原子比は38/1であった。第1反応器の滞留時間(重合時間)は1時間であり、転化率は58%であった。
【0055】
第1反応器の頂部付近から抜き出された重合溶液を第2反応器の底部付近に供給し、1時間重合を行った。第2反応器で、転化率は76%となった。更に第2反応器の頂部付近から抜き出された重合溶液を第3反応器の底部付近に供給し、1時間重合を行った。第3反応器で、転化率は85%となった。
【0056】
第3反応器の頂部付近から抜き出した重合溶液を搬送するパイプに、停止剤として2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾールを含む少量のエタノールを注入することによって、重合反応の停止を行った。次いで、170℃、250Torrに設定したデボラチライザー(直脱仕上げ設備)に供給し、脱溶し、ペレタイザーによりペレット化し、重合体Aを得た。
【0057】
実施例2(重合体Bの合成)
重合温度を60℃とする以外は、重合体Aと同様に行い、重合体Bを転化率85%で得た。
【0058】
実施例3(重合体Cの合成)
混合溶媒を260mL/分、1,3−ブタジエンを47.5g/分供給し、重合温度を80℃、Co原子/1,3−ブタジエンのモル比を1/73000、Al/Coの原子比を44/1とする以外は、重合体Aと同様に行い、重合体Cを転化率75%で得た。
【0059】
実施例4(重合体Dの合成)
重合温度を70℃、Co原子/1,3−ブタジエンのモル比を1/73000、Al/Coの原子比を44/1とする以外は、重合体Aと同様に行い、重合体Dを転化率80%で得た。
【0060】
実施例5(重合体Eの合成)
重合温度を60℃、Co原子/1,3−ブタジエンのモル比を1/70000、Al/Coの原子比を42/1とする以外は、重合体Aと同様に行い、重合体Eを転化率85%で得た。
【0061】
実施例6(重合体Fの合成)
重合温度を70℃、Co原子/1,3−ブタジエンのモル比を1/73000、Al/Coの原子比を44/1(実施例4と同一条件)とする以外は、重合体Aと同様に行い、重合体Fを転化率75%で得た。
【0062】
実施例7(重合体Gの合成)
重合温度を30℃とする以外は、重合体Aと同様に行い、重合体Gを転化率85%で得た。
【0063】
比較例1(重合体Hの合成)
重合温度を100℃とする以外は、重合体Aと同様に行い、重合体Hを転化率65%で得た。
【0064】
比較例2(重合体Iの合成)
重合温度を65℃とする以外は、重合体Aと同様に行い、重合体Iを転化率85%で得た。
【0065】
比較例3(重合体Jの合成)
混合溶媒を250mL/分、1,3−ブタジエンを53g/分で供給し、かつ重合温度を60℃、Co原子/1,3−ブタジエンのモル比を1/70000、Al/Coの原子比を42/1とする以外は、重合体Aと同様に行い、重合体Jを転化率85%で得た。
【0066】
上記重合体A〜Jについて、粘度、1,2結合含有量、融点、結晶化度、全ハロゲン量、引張強度、引張伸び、耐ウェットスキッド性及び成形品外観について測定した。その結果を表1に示す。
【0067】
【表1】

【0068】
ハロゲン添加重合体の調製
上記重合体A、B及びCにハロゲン換算で100ppm含まれるように、従来より1,2−ポリブタジエンを製造するための重合溶媒として用いられる塩化メチレンを添加したものをそれぞれ重合体K、L及びMとした。
【0069】
実施例8〜10、比較例4〜6
重合体A〜C及びK〜Mについて、ハロゲン含有による熱安定性の影響を上記〔12〕の方法で確認した。その結果を表2に示す。
【0070】
【表2】

【0071】
実施例11〜17
次に、重合体A〜Gについてフィルム物性を調べるため、平行光線透過率、透湿度、ガス透過率を測定した。その結果を表3に示す。
【0072】
【表3】

【0073】
実施例18〜21、比較例7〜9
重合体A,C,E,F,,H,I,Jについて、上記〔13〕の方法によって加硫物を得て、加工性及び加硫物の評価を行った。その結果を表4に示す。
【0074】
【表4】

【0075】
試験結果
表1より、比較例1では、1,2結合含有量が本発明の範囲外にあり、結晶化度も小さく、成形品外観も劣っていた。比較例2では、粘度(120℃及び150℃)が本発明の範囲外にあり、引張強度及び引張伸びにおいて、実施例に比べ劣っていた。比較例3では、粘度(120℃、150℃及び180℃)が本発明の範囲外にあり、引張伸び及び成形品外観において劣っていた。一方、実施例1〜7の重合体A〜Gは、すべてにおいて1,2結合含有量が70%を越えており、120℃、150℃及び180℃における粘度もすべてにおいて本発明の範囲内にあった。引張伸びにおいては600〜780%という高い数値を示し、成形品外観も優れていた。全ハロゲン量についても分析装置の検出限界(30ppm)以下であり、触媒による影響もほとんどなかった。
【0076】
表2の結果から、ハロゲンが100ppm含まれると、混練中に重合体が劣化して、トルクの立ち上がり時間(安定時間)が短くなり、熱安定性に劣ることが分かる。
【0077】
表3の結果から、本発明の1,2−ポリブタジエンは、透明性、透湿性に優れ、酸素、エチレンオキシドのガス透過性にも優れていることが分かる。
【0078】
表4の結果から、比較例7では、加硫物の伸び及び反発弾性には優れるが、300%引張応力、引張強さ、硬さ及び引裂強さが劣っていた。比較例8においても、加硫物の伸び、引裂強さ及び反発弾性が劣っていた。比較例6では、加工性においてロール作業性が著しく悪かった。一方、実施例18〜21では、いずれも加硫が可能で、補強剤がなくても高硬度で、優れた強度を有する加硫物が得られた。特に実施例18及び実施例20では、300%引張応力、引張強さ、硬さ、圧縮永久歪み及び引裂強さにおいて、優れた物性を示した。
【0079】
(3)熱可塑性エラストマー組成物の評価
実施例22〜23、比較例10〜14
重合体A、B、H、I、J及びKと、スチレンブタジエンブロックポリマー(SBS;商品名「TR2827」、JSR社製)をそれぞれ重量比30/70としてブレンドし(表5参照)、各組成物を調製した。各熱可塑性エラストマー組成物の評価は上記〔8〕により行った。重合体を全く含まないSBSのみ(比較例10)のものについても評価した。その結果を表5に示す。
【0080】
【表5】

【0081】
試験結果
表5より、比較例11は重合体Hの1,2結合含有量が本発明の範囲外にあるため、比較例12及び13は重合体I及びJの粘度が本発明の範囲外にあるため、成形品外観は十分ではない。比較例14はハロゲンを含み、熱安定性が悪いので、成形品外観は十分ではない。更に、1,2−ポリブタジエンを全く含まない比較例10は成形外観が著しく劣る。一方、実施例22及び23は、いずれも30重量部の重合体(各々A及びB)を含むので、成形外観は改良されることが分かる。
【0082】
(4)重合体組成物の評価
実施例24〜25、比較例15〜19
重合体A、B、H、I、J及びKと、低密度ポリエチレン(LDPE;商品名「ノバテックYF30」、日本ポリケム社製)をそれぞれ重量比30/70としてブレンドし(表6参照)、各組成物を調製した。各重合体組成物の評価は上記〔14〕により行った。重合体を全く含まないLDPEのみ(比較例15)のものについても評価した。その結果を表6に示す。
【0083】
【表6】

【0084】
試験結果
表6より、比較例16は重合体Hの1,2結合含有量が本発明の範囲外にあるため、耐傷付き性が著しく劣る。比較例17及び18は重合体I及びJの粘度が本発明の範囲外にあるため、比較例19はハロゲンを含み、熱安定性が悪いため、耐傷付き性が十分ではない。更に、1,2−ポリブタジエンを全く含まない比較例15は耐傷付き性が著しく劣る。一方、実施例24及び25は、いずれも30重量部の重合体(各々A及びB)を含むので、耐傷付き性は改良されることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明の1,2−ポリブタジエンは、高温成形時の、金型汚染、熱劣化及び時間の経過とともに物性が変化する問題が改良され、成形性、透明性、力学強度特性、耐ウエットスキッド性等の特性に優れ、熱可塑性エラストマーとしての用途、例えば工業部品や履き物等の各種成形品や、各種シート、フィルム等の用途に好適に使用される。また、その成形温度は約150℃と熱可塑性エラストマーのなかでは低く、エネルギー的にも優位である。また、本発明の1,2−ポリブタジエンは、硫黄加硫が可能であり、パーオキサイド架橋活性の高さ、フィラーや薬品の充填性に優れるため、加硫用ゴムとして、また他の加硫用ゴムの反応助剤として利用することができる。
また、本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、成形性や成形外観に優れ、本発明の重合体組成物は耐傷付き性に優れた性質を有する。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】スリットダイレオメーターの概略断面図である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1,2−ポリブタジエン及びその製造方法、非架橋成形用1,2−ポリブタジエン、改質剤、架橋ゴム、並びに加硫用ゴムの反応助剤に関し、更に詳しくは、高温成形時に金型汚染、熱劣化、物性の経時変化の改善された1,2−ポリブタジエン及び、成形性、透明性、力学強度、耐ウェットスキッド性に優れるエラストマー組成物が得られる1,2−ポリブタジエン及びその製造方法、非架橋成形用1,2−ポリブタジエン、改質剤、架橋ゴム、並びに加硫用ゴムの反応助剤に関する。本発明の1,2−ポリブタジエンは工業部品や履き物等の各種成形品や、各種シート、フィルム等を成形するための熱可塑性エラストマーとして、更には電子線架橋樹脂、樹脂やゴム等の改質材、加硫用ゴム等として用いられる。また、1,2−ポリブタジエンを含有する熱可塑性エラストマー組成物は、工業部品や履き物等の各種成形品や、各種シート、フィルム、チューブ等として用いられる。
【背景技術】
【0002】
適度に結晶化度を制御できる1,2−ポリブタジエンは、結晶性に富んだ領域と非晶性部とからなる構造を有するため、熱可塑性エラストマーとしての機能だけでなく、分子中に化学反応性に富んだ炭素−炭素二重結合を有しているため、従来の加硫ゴムや架橋密度を高めた熱硬化性樹脂の機能も有する。また、この1,2−ポリブタジエンは、加工性に優れることから、他の樹脂や熱可塑性エラストマーの改質材、医療用高分子材料として応用されている。
【0003】
従来、結晶化度の制御された1,2−ポリブタジエンは、コバルト塩のホスフィン錯体とトリアルキルアルミニウムと水からなる触媒(下記特許文献1)、コバルト化合物、トリアルキルアルミニウムと水、及びトリフェニルホスフィン誘導体からなる触媒(下記特許文献2)により得られている。これらの触媒系では、塩化メチレンに代表されるハロゲン化炭化水素溶媒では高い重合活性を示し、炭化水素溶媒では重合活性が低下するので、ハロゲン化炭化水素溶媒を用いて重合が行われる。
【0004】
【特許文献1】特公昭44−32425号公報
【特許文献2】特公昭61−27402号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ハロゲン化炭化水素溶媒を用いて製造された1,2−ポリブタジエンは、その中に残留する溶媒に起因して塩素等のハロゲンを相当量含有しているため、高温成形時に、例えば塩化水素等のハロゲン化水素が発生し、金型が錆びたり、1,2−ポリブタジエンが熱劣化する問題、時間の経過とともに物性が変化する問題が生じる。
【0006】
更に、1,2−ポリブタジエンには、熱可塑性エラストマーとしてのより優れた特性が求められている。
【0007】
本発明の目的は、高温成形時に金型汚染、熱劣化が起こらず、物性の経時変化の改善された1,2−ポリブタジエン、及び成形性、透明性、力学強度、耐ウエットスキッド性に優れる熱可塑性エラストマー組成物が得られる1,2−ポリブタジエン及びその製造方法、非架橋成形用1,2−ポリブタジエン、改質剤、架橋ゴム、並びに加硫用ゴムの反応助剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するため、鋭意検討した結果、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明は、以下に示す通りである。
〔1〕ブタジエンの結合単位における1,2結合含有量が70重量%以上であり、融点が50〜140℃の範囲にあり、スリットダイレオメーターにより剪断速度5113sec-1で測定した粘度ηが、120℃では400〜1200poiseの範囲にあり、150℃では300〜1000poiseの範囲にあり、180℃では200〜800poiseの範囲にあり、且つ全ハロゲン含有量が30ppm以下であることを特徴とする1,2−ポリブタジエン。
〔2〕ブタジエンと、ブタジエン以外の共役ジエンとの共重合体である上記〔1〕記載の1,2−ポリブタジエン。
〔3〕ブタジエンの結合単位における1,2結合含有量が70重量%以上であり、融点が50〜140℃の範囲にあり、スリットダイレオメーターにより剪断速度5113sec-1で測定した粘度ηが、120℃では400〜1200poiseの範囲にあり、150℃では300〜1000poiseの範囲にあり、180℃では200〜800poiseの範囲にあり、且つ全ハロゲン含有量が30ppm以下であることを特徴とする非架橋成形用1,2−ポリブタジエン。
〔4〕上記〔1〕又は〔2〕記載の1,2−ポリブタジエンの製造方法であって、コバルト化合物及びアルミノオキサンを含有する触媒の存在下に、ブタジエン又はブタジエンとブタジエン以外の共役ジエンとを重合することを特徴とする1,2−ポリブタジエンの製造方法。
〔5〕上記コバルト化合物は、下記一般式(IV)で表される化合物である上記〔4〕記載の1,2−ポリブタジエンの製造方法。
【化1】

〔6〕上記〔1〕又は〔2〕記載の1,2−ポリブタジエンを含有することを特徴とする熱可塑性エラストマー又は樹脂の改質剤。
〔7〕上記〔1〕又は〔2〕記載の1,2−ポリブタジエンを架橋することにより得られることを特徴とする架橋ゴム。
〔8〕上記〔1〕又は〔2〕記載の1,2−ポリブタジエンを含有することを特徴とする加硫用ゴムの反応助剤。
【発明の効果】
【0010】
本発明の1,2−ポリブタジエンは、高温成形時の、金型汚染、熱劣化及び時間の経過とともに物性が変化する問題が改良され、成形性、透明性、力学強度特性、耐ウエットスキッド性等の特性に優れる。また、本発明の1,2−ポリブタジエンは、架橋反応性にも優れる。
本発明の非架橋成形用1,2−ポリブタジエンは、上記作用効果に加え、単独で、架橋を行わない状態でも十分な強度が得られる。
本発明の1,2−ポリブタジエンの製造方法は、上記構成を有することにより、上記作用効果を奏する1,2−ポリブタジエンを製造することができる。
本発明の熱可塑性エラストマー又は樹脂の改質剤は、熱可塑性エラストマー又は樹脂の改質に好適に使用できる。
本発明の架橋ゴム及び加硫用ゴムの反応助剤は、架橋反応性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
発明の1,2−ポリブタジエンのブタジエン結合単位における1,2結合含有量は、熱可塑性エラストマーとしての性質に大きな関連があり、70重量%以上、好ましくは80重量%以上である。
【0012】
また、上記1,2−ポリブタジエンは、結晶性を有し、その融点は50〜140℃、好ましくは60〜130℃の範囲にある。融点がこの範囲にあることにより、熱可塑性エラストマーとして引張強度、引裂強度等の力学強度と柔軟性のバランスに優れる。
【0013】
発明の1,2−ポリブタジエンは、スリットダイレオメーターにより、剪断速度5113sec-1で測定した粘度ηが、上記の各温度でそれぞれの粘度範囲内にあるが、各温度における粘度ηが、上記の各下限粘度未満では力学強度に劣るため好ましくなく、また、各上限粘度を越えると加工性、成形性が劣り好ましくない。尚、スリットダイレオメーターにより粘度ηを測定する方法は、実施例の項で詳しく記載する。
【0014】
発明の1,2−ポリブタジエンは、全ハロゲン量が30ppm以下である。通常、ポリマー中のハロゲン量は蛍光X線による定量分析によって測定されるが、この方法では30ppmが測定限度下限値である。本発明の1,2−ポリブタジエンに残留する全ハロゲン値がこのように僅かであることにより、射出成形等の高温成形時に、金型汚染、熱劣化が起こらず、物性の経時変化等の問題が改善され、加工性及び成形性が良好であり、成形品の物性が長期間維持される。
【0015】
本発明の1,2−ポリブタジエンは、ブタジエン以外の共役ジエンが共重合していてもよい。ブタジエン以外の共役ジエンとしては、1,3−ペンタジエン、高級アルキル基で置換された1,3−ブタジエン誘導体、2−アルキル置換−1,3−ブタジエン等が挙げられる。このうち、高級アルキル基で置換された1,3−ブタジエン誘導体としては、1−ペンチル−1,3−ブタジエン、1−ヘキシル−1,3−ブタジエン、1−ヘプチル−1,3−ブタジエン、1−オクチル−1,3−ブタジエン等が挙げられる。
【0016】
また、2−アルキル置換−1,3−ブタジエンとしては、2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)、2−エチル−1,3−ブタジエン、2−プロピル−1,3−ブタジエン、2−イソプロピル−1,3−ブタジエン、2−ブチル−1,3−ブタジエン、2−イソブチル−1,3−ブタジエン、2−アミル−1,3−ブタジエン、2−イソアミル−1,3−ブタジエン、2−ヘキシル−1,3−ブタジエン、2−シクロヘキシル−1,3−ブタジエン、2−イソヘキシル−1,3−ブタジエン、2−ヘプチル−1,3−ブタジエン、2−イソヘプチル−1,3−ブタジエン、2−オクチル−1,3−ブタジエン、2−イソオクチル−1,3−ブタジエン等が挙げられる。
【0017】
これらの共役ジエンのうち、ブタジエンと共重合される好ましい共役ジエンとしては、イソプレン、1,3−ペンタジエンが挙げられる。
【0018】
重合に供される単量体成分中のブタジエンの含有量は50モル%以上、特には70モル%以上が好ましい。ブタジエン以外の共役ジエンがあまり多く共重合していると、得られる1,2−ポリブタジエンの融点や粘度が上記範囲外となる場合がある。
【0019】
本発明の1,2−ポリブタジエンは、コバルト化合物及びアルミノオキサンを含有する触媒の存在下に、ブタジエンを重合して得られる。
【0020】
上記コバルト化合物としては、好ましくは炭素数4以上のコバルトの有機酸塩を挙げることができる。このコバルトの有機酸塩としては、酪酸塩、ヘキサン酸塩、ヘプチル酸塩、2−エチルヘキシル酸等のオクチル酸塩、デカン酸塩や、ステアリン酸、オレイン酸、エルカ酸等の高級脂肪酸の塩、安息香酸塩、トリル酸塩、キシリル酸塩、エチル安息香酸等のアルキル、アラルキル、アリル置換安息香酸塩やナフトエ酸塩、アルキル、アラルキルもしくはアリル置換ナフトエ酸塩等が挙げられる。これらのうち、2−エチルヘキシル酸のいわゆるオクチル酸塩や、ステアリン酸塩、安息香酸塩が、溶媒である炭化水素への溶解性が優れるために好ましい。
【0021】
上記アルミノオキサンとしては、例えば下記一般式(I)又は一般式(II)で表されるものを挙げることができる。
【0022】
【化2】

【化3】

【0023】
この一般式(I)あるいは(II)で表されるアルミノオキサンにおいて、Rはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の炭化水素基であり、好ましくはメチル基、エチル基であり、特に好ましくはメチル基である。尚、一般式(I)において、両末端のRは同一又は異なっていてもよい。また、mは、2以上、好ましくは5以上、更に好ましくは10〜100の整数である。アルミノオキサンの具体例としては、メチルアルミノオキサン、エチルアルミノオキサン、プロピルアルミノオキサン、ブチルアルミノオキサン等を挙げることができ、メチルアルミノオキサンが特に好ましい。
【0024】
重合触媒は、上記コバルト化合物とアルミノオキサン以外に、ホスフィン化合物を含有することが極めて好ましい。ホスフィン化合物は、重合触媒の活性化、ビニル結合構造及び結晶性の制御に有効な成分であり、好ましくは下記一般式(III)で表される有機リン化合物を挙げることができる。
【0025】
【化4】

一般式(III)中、Arは下記で示される基を示す。
【0026】
【化5】

(上記基において、R、R、Rは、同一又は異なって、水素原子、炭素数が好ましくは1〜6のアルキル基、ハロゲン原子、炭素数が好ましくは1〜6のアルコキシ基又は炭素数が好ましくは6〜12のアリール基を表す。)
【0027】
また、一般式(III)中、Rはシクロアルキル基、アルキル置換シクロアルキル基を示し、nは0〜3の整数である。
【0028】
一般式(III)で表されるホスフィン化合物としては、具体的に、トリ−(3−メチルフェニル)ホスフィン、トリ−(3−エチルフェニル)ホスフィン、トリ−(3,5−ジメチルフェニル)ホスフィン、トリ−(3,4−ジメチルフェニル)ホスフィン、トリ−(3−イソプロピルフェニル)ホスフィン、トリ−(3−t−ブチルフェニル)ホスフィン、トリ−(3,5−ジエチルフェニル)ホスフィン、トリ−(3−メチル−5−エチルフェニル)ホスフィン)、トリ−(3−フェニルフェニル)ホスフィン、トリ−(3,4,5−トリメチルフェニル)ホスフィン、トリ−(4−メトキシ−3,5−ジメチルフェニル)ホスフィン、トリ−(4−エトキシ−3,5−ジエチルフェニル)ホスフィン、トリ−(4−ブトキシ−3,5−ジブチルフェニル)ホスフィン、トリ(p−メトキシフェニルホスフィン)、トリシクロヘキシルホスフィン、ジシクロヘキシルフェニルホスフィン、トリベンジルホスフィン、トリ(4−メチルフェニルホスフィン)、トリ(4−エチルフェニルホスフィン)等が挙げられる。これらのうち、特に好ましいものとしては、トリフェニルホスフィン、トリ−(3−メチルフェニル)ホスフィン、トリ−(4−メトキシ−3,5−ジメチルフェニル)ホスフィン等が挙げられる。
【0029】
また、コバルト化合物として、下記一般式(IV)で表されるものを用いることができる。
【0030】
【化6】

【0031】
上記一般式(IV)で表される化合物は、塩化コバルトに対し前記一般式(III)においてn=3であるホスフィン化合物を配位子に持つ錯体である。このコバルト化合物の使用に際しては、あらかじめ合成したものを使用してもよいし、あるいは重合系中に塩化コバルトとホスフィン化合物を接触させる方法で使用してもよい。錯体中のホスフィン化合物を種々選択することにより、得られる1,2−ポリブタジエンの1,2結合の量、結晶化度の制御を行なうことができる。
【0032】
上記一般式(IV)で表されるコバルト化合物の具体例としては、コバルトビス(トリフェニルホスフィン)ジクロライド、コバルトビス〔トリス(3−メチルフェニルホスフィン)〕ジクロライド、コバルトビス〔トリス(3−エチルフェニルホスフィン)〕ジクロライド、コバルトビス〔トリス(4−メチルフェニルホスフィン)〕ジクロライド、コバルトビス〔トリス(3,5−ジメチルフェニルホスフィン)〕ジクロライド、コバルトビス〔トリス(3,4−ジメチルフェニルホスフィン)〕ジクロライド、コバルトビス〔トリス(3−イソプロピルフェニルホスフィン)〕ジクロライド、コバルトビス〔トリス(3−t−ブチルフェニルホスフィン)〕ジクロライド、コバルトビス〔トリス(3,5−ジエチルフェニルホスフィン)〕ジクロライド、コバルトビス〔トリス(3−メチル−5−エチルフェニルホスフィン)〕ジクロライド、コバルトビス〔トリス(3−フェニルフェニルホスフィン)〕ジクロライド、コバルトビス〔トリス(3,4,5−トリメチルフェニルホスフィン)〕ジクロライド、コバルトビス〔トリス(4−メトキシ−3,5−ジメチルフェニルホスフィン)〕ジクロライド、コバルトビス〔トリス(4−エトキシ−3,5−ジエチルフェニルホスフィン)〕ジクロライド、コバルトビス〔トリス(4−ブトキシ−3,5−ジブチルフェニルホスフィン)〕ジクロライド、コバルトビス〔トリス(4−メトキシフェニルホスフィン)〕ジクロライド、コバルトビス〔トリス(3−メトキシフェニルホスフィン)〕ジクロライド、コバルトビス〔トリス(4−ドデシルフェニルホスフィン)〕ジクロライド、コバルトビス〔トリス(4−エチルフェニルホスフィン)〕ジクロライド等を使用することができる。
【0033】
これらのうち、特に好ましいものとしては、コバルトビス(トリフェニルホスフィン)ジクロライド、コバルトビス〔トリス(3−メチルフェニルホスフィン)〕ジクロライド、コバルトビス〔トリス(3,5−ジメチルフェニルホスフィン)〕ジクロライド、コバルトビス〔トリス(4−メトキシ−3,5−ジメチルフェニルホスフィン)〕ジクロライド等が挙げられる。
【0034】
触媒の使用量は、ブタジエンの単独重合の場合は、ブタジエン1モル当たり、共重合する場合は、ブタジエンとブタジエン以外の共役ジエンとの合計量1モル当たり、コバルト化合物を、コバルト原子換算で0.001〜1ミリモル、好ましくは0.01〜0.5ミリモル使用する。また、ホスフィン化合物の使用量は、コバルト原子に対するリン原子の比(P/Co)として、通常、0.1〜50、好ましくは0.5〜20、更に好ましくは1〜20である。更に、アルミノオキサンの使用量は、コバルト化合物のコバルト原子に対するアルミニウム原子の比(Al/Co)として、通常、4〜10、好ましくは10〜10である。
【0035】
尚、一般式(IV)で表される錯体を用いる場合は、ホスフィン化合物の使用量がコバルト原子に対するリン原子の比(P/Co)が2であるとし、アルミノオキサンの使用量は、上記の記載に従う。
【0036】
重合溶媒として用いられる不活性有機溶媒としては、例えばベンゼン、トルエン、キシレン、クメン等の芳香族炭化水素、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ブタン等の脂肪族炭化水素、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン等の脂環族炭化水素及びこれらの混合物が挙げられる。
【0037】
重合温度は、通常、−50〜120℃で、好ましくは−20〜100℃である。重合反応は、複数基直列に連結した連続式重合が好ましい。尚、溶媒中の単量体濃度は、通常、5〜50重量%、好ましくは10〜35重量%である。また、重合体を製造するために、本発明の触媒及び重合体を失活させないために、重合系内に酸素、水あるいは炭酸ガス等の失活作用のある化合物の混入を極力なくすような配慮が必要である。重合反応が所望の段階まで進行したら反応混合物をアルコール、その他の重合停止剤、老化防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等を添加し、次いで通常の方法に従って生成重合体を分離、洗浄、乾燥して本発明の1,2−ポリブタジエンを得ることができる。
【0038】
本発明の1,2−ポリブタジエンは、単独で、架橋を行わない状態でも十分な強度が得られるため、射出成形、押し出し成形等工業部品やフィルム用途等の非架橋成形用途に好適である。
【0039】
また、架橋反応性にも優れるため、架橋ゴム用途や加硫用ゴムの反応助剤用途等にも好適に用いられる。その際、加工方法としては特に制限はなく、通常の樹脂、ゴム加工時に用いられるロール、ニーダー、バンバリーミキサー、スクリュー押出機、フィーダールーダー押出機等を用いた溶融混練り等による混合が可能である。
【0040】
また、本発明の1,2−ポリブタジエンは、他の熱可塑性エラストマーや樹脂の改質剤として好適に用いられる。
【0041】
本発明の1,2−ポリブタジエンを含有するエラストマー組成物は、芳香族ビニル系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、塩ビ系熱可塑性エラストマー及びフッ素系熱可塑性エラストマーから選ばれる熱可塑性エラストマーと、上記1,2−ポリブタジエンと、を含有するエラストマー組成物が挙げられる
【0042】
上記芳香族ビニル系熱可塑性エラストマーとしては、ポリスチレン−ポリブタジエンブロック共重合体、ポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレンブロック共重合体、ポリスチレン−ポリ(スチレン−ブタジエン)−ポリスチレンブロック共重合体、ポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレン共重合体、スチレンの一部又は全部をαメチレンで置換した上記ブロック共重合体等の芳香族ビニル化合物と共役ジオレフィンのブロック共重合体、これらブロック共重合体の水素化物等が挙げられ、好ましくはポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレンブロック共重合体が用いられる。
【0043】
上記ポリエステル系熱可塑性エラストマーとしては、ハードセグメントとしてポリブチレンテレフタレートを、ソフトセグメントとしてポリテトラメチレンエーテルグリコールを使用したマルチブロックポリマー等が挙げられる。上記ポリアミド系熱可塑性エラストマーとしては、ハードセグメントとしてナイロンを、ソフトセグメントとしてポリエステル又はポリオールを使用したブロックポリマー等が挙げられる。
【0044】
上記熱可塑性エラストマーと上記1,2−ポリブタジエンの配合割合は、上記熱可塑性エラストマー50〜99重量部及び上記1,2−ポリブタジエン1〜50重量部とすることができる。上記1,2−ポリブタジエンの含有量が1重量部未満であると成形外観が劣り、50重量部を越えると使用する熱可塑性エラストマー自体の特性が失われるので好ましくない。
【0045】
上記エラストマー組成物は、ポリオレフィン系重合体と上記1,2−ポリブタジエンと、を含有することを特徴とする。上記ポリオレフィン系重合体は熱可塑性のものであれば特に限定されず、樹脂でもエラストマーでもよい。また、このポリオレフィン系重合体としては、エチレン成分、プロピレン成分及びブチレン成分のうちの少なくとも一種を含有するものが好ましく用いられる。これらの例としてはポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンプロピレン共重合体(EPR、EPDM)、ポリブチレン、ポリイソブチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。これらのうち、ポリエチレン、ポリプロピレン、結晶性エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体が好ましく用いられる。
【0046】
上記ポリオレフィン重合体と上記1,2−ポリブタジエンの配合割合は、上記ポリオレフィン重合体70〜99重量部及び上記1,2−ポリブタジエン1〜20重量部とすることができる。上記1,2−ポリブタジエンの含有量が1重量部未満であるとポリオレフィン重合体の成形品の耐傷付き性が劣り、20重量部を越えると使用するポリオレフィン重合体自体の特性が失われるので好ましくない。
【実施例】
【0047】
以下に、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明の主旨を越えない限り、これらにより本発明が限定されるものではない。尚、特に断りがない限り実施例及び比較例中の部及び%は重量基準である。
【0048】
また、実施例及び比較例における各種の測定は、以下の方法により行った。
(1)評価方法
〔1〕粘度
粘度は、構造の概要が図1に示されているスリットダイレオメーターを用いて測定した。即ち、ダイの部分に2本の圧力センサー(P1,P2)、スリットダイ、シリンダー(Barrel)圧力センサー(Pin)が取り付けられているスリットダイレオメーターを使用した。
所定温度に保ったシリンダーに重合体を充填し、プランジャー(Plunger)の速度を5000cm/min(このとき、剪断歪み速度は5113sec−1)で押し出したときの粘度の値を測定した。
図1において、シリンダーの径は15mm、スリットダイの横断面h×Mは1mm×12mm、長さは54mm、ホッパーの角度aは90度である。
〔2〕1,2結合含有量
ポリブタジエンの結合単位における1,2結合含有量は、D.Moreroらによる赤外吸収スペクトル法(Chem.e.Ind.,41,758(1959))によって求めた。
〔3〕融点
融点は、DSC(示差走査熱量計)を用い、ASTM3418に準じて測定した。
〔4〕結晶化度
結晶化度はJIS K7112に準拠し、密度測定により求めた。その際、結晶化度100%の1,2−ポリブタジエンの密度は、G.Natta(J.Polymer.Sci.,20,25(1956))の0.963を用い、結晶化度0%の1,2−ポリブタジエンの密度はX線解析により無定形であることが確認されたもの(特公昭44−32425、特公昭4−32426)の密度0.892を用いた。
〔5〕ハロゲン含有量
蛍光X線法により測定した。
【0049】
〔6〕力学強度;引張強度(TB)、引張伸び(EB)
下記に示す成形条件にて射出成形した成形品を用い、JIS K6301に準拠して測定した。
(成形条件)
成形機:インラインスクリュータイプ射出成形機
金型:2×70×150mmのダイレクトゲートの平板
成形温度:150℃
射出圧力:660kg/cm
フローコントロール:中位
インジェクション:10秒
冷却:50秒
金型温度:30℃
【0050】
〔7〕耐ウエットスキッド性
上記〔6〕と同様に射出成形した成形品から、内径50mm、外径70mmの試料を作製し、JSR型WSR試験機を用いて測定した。
(測定条件)
路面:完全に水で濡れた磁気タイル(水量約180cc/分で測定)
試料回転数:600回転
接触圧力:3kg/cm
接触時間:0.02秒
結果を下記式で算出されるA値で表示した。この値が大きい方が耐ウエットスキッド性が良好となる。
A=(路面と試料の接触時のトルク値)÷(接触時の荷重)
【0051】
〔8〕成形品外観評価
上記〔6〕で射出成形した成形品表面のフローマーク、肌荒れ、ブラッシュイング、シルバーストリーク、ブルーイング等を目視観察し、下記の3段階で評価した。
〇:優れている。
△:使用できないこともないが、上記特性に劣る。
×:使用に耐えず不可。
【0052】
〔9〕平行光線透過率
下記に示す成形条件にてフィルム成膜したフィルムを用い、JIS K6714に準拠して測定した。
(成形条件)
押出機:50mmφ押出機
スクリュー:形状 メータリングタイプ、L/D 28、圧縮比 2.0
ダイ:口径 75mmφ、リップ間隙 0.7mm
押出温度:150℃
樹脂圧力:155kg/mm
吐出量:31kg/hr
ブロー比:4.8
引取速度:15m/min
フィルム厚さ:50μm
【0053】
〔10〕透湿度
上記〔9〕と同様に成膜したフィルムを用い、JIS Z0208に準拠して測定した。
〔11〕ガス透過率
上記〔9〕と同様に成膜したフィルムを用い、ASTM D1434に準拠して酸素、エチレンオキシド透過率を測定した。
〔12〕熱安定性
熱安定性は、ラボプラストミルを用いて下記条件で測定されたトルクの立ち上がり時間を安定時間として評価した。ここで、トルクの立ち上がり時間は、トルクカーブの立ち上がり部分に、ベースラインに対して30度の直線を引き、時間軸との交点で示される時間として定義される。
(測定条件)
ミキサー:容量 100cc、 ブレード形状 ローラ形
測定温度:170℃
回転数 :60rpm
充填率 :80%
【0054】
〔13〕加工性、加硫物の評価
下記処方に従って、加硫促進剤と硫黄を除く重合体等を予めバンバリーミキサーにて、冷却水温70℃の条件下で5分間混練した後、ロールにて加硫促進剤と硫黄を加え、未加硫配合物を得た。得られた未加硫配合物を160℃で20分間プレス加硫し、加硫物を得た。
(配合処方)
重合体 100重量部
亜鉛華1号 3
ステアリン酸 1
ジベンゾチアジルジスルフィド 1.5
テトラメチルチウラムジスルフィド 0.55
硫黄 1.6
加硫物の評価はJIS K6301により行った。
加工性の評価は、下記の2段階評価により行った。
〇:溶融性、ロール巻き付き性及びロール離れ性に優れる。
×:溶融性、ロール巻き付き性及び/又はロール離れ性に劣る。
【0055】
〔14〕耐傷付き性評価
150×150×2(mm)形状の成形品の表面に電子線を照射し(加速電圧150kV、放射線量30Mrad)、爪でスクラッチした。その評価は下記の3段階評価により行った。
○:傷が付かない。
△:僅かに傷跡が見える。
×:傷が容易に付く。
【0056】
(2)1,2−ポリブタジエンの評価
実施例1(重合体Aの合成)
内容積20Lの撹拌機を装備した縦型反応器を3基直列に連結した装置を用いて、連続重合により合成した。第1反応器の底部付近から、シクロヘキサン/n−ヘプタン(重量比:80/20)混合溶媒を270mL/分、1,3−ブタジエンを43g/分、メチルアルミノオキサンのトルエン溶液を1mL/分、コバルトビス〔トリス(4−メチルフェニルホスフィン)〕ジクロライドのトルエン溶液を1mL/分供給し、40℃で重合を行った。このとき、Co原子/1,3−ブタジエンのモル比は1/63000であり、Al/Coの原子比は38/1であった。第1反応器の滞留時間(重合時間)は1時間であり、転化率は58%であった。
【0057】
第1反応器の頂部付近から抜き出された重合溶液を第2反応器の底部付近に供給し、1時間重合を行った。第2反応器で、転化率は76%となった。更に第2反応器の頂部付近から抜き出された重合溶液を第3反応器の底部付近に供給し、1時間重合を行った。第3反応器で、転化率は85%となった。
【0058】
第3反応器の頂部付近から抜き出した重合溶液を搬送するパイプに、停止剤として2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾールを含む少量のエタノールを注入することによって、重合反応の停止を行った。次いで、170℃、250Torrに設定したデボラチライザー(直脱仕上げ設備)に供給し、脱溶し、ペレタイザーによりペレット化し、重合体Aを得た。
【0059】
実施例2(重合体Bの合成)
重合温度を60℃とする以外は、重合体Aと同様に行い、重合体Bを転化率85%で得た。
【0060】
実施例3(重合体Cの合成)
混合溶媒を260mL/分、1,3−ブタジエンを47.5g/分供給し、重合温度を80℃、Co原子/1,3−ブタジエンのモル比を1/73000、Al/Coの原子比を44/1とする以外は、重合体Aと同様に行い、重合体Cを転化率75%で得た。
【0061】
実施例4(重合体Dの合成)
重合温度を70℃、Co原子/1,3−ブタジエンのモル比を1/73000、Al/Coの原子比を44/1とする以外は、重合体Aと同様に行い、重合体Dを転化率80%で得た。
【0062】
実施例5(重合体Eの合成)
重合温度を60℃、Co原子/1,3−ブタジエンのモル比を1/70000、Al/Coの原子比を42/1とする以外は、重合体Aと同様に行い、重合体Eを転化率85%で得た。
【0063】
実施例6(重合体Fの合成)
重合温度を70℃、Co原子/1,3−ブタジエンのモル比を1/73000、Al/Coの原子比を44/1(実施例4と同一条件)とする以外は、重合体Aと同様に行い、重合体Fを転化率75%で得た。
【0064】
実施例7(重合体Gの合成)
重合温度を30℃とする以外は、重合体Aと同様に行い、重合体Gを転化率85%で得た。
【0065】
比較例1(重合体Hの合成)
重合温度を100℃とする以外は、重合体Aと同様に行い、重合体Hを転化率65%で得た。
【0066】
比較例2(重合体Iの合成)
重合温度を65℃とする以外は、重合体Aと同様に行い、重合体Iを転化率85%で得た。
【0067】
比較例3(重合体Jの合成)
混合溶媒を250mL/分、1,3−ブタジエンを53g/分で供給し、かつ重合温度を60℃、Co原子/1,3−ブタジエンのモル比を1/70000、Al/Coの原子比を42/1とする以外は、重合体Aと同様に行い、重合体Jを転化率85%で得た。
【0068】
上記重合体A〜Jについて、粘度、1,2結合含有量、融点、結晶化度、全ハロゲン量、引張強度、引張伸び、耐ウェットスキッド性及び成形品外観について測定した。その結果を表1に示す。
【0069】
【表1】

【0070】
ハロゲン添加重合体の調製
上記重合体A、B及びCにハロゲン換算で100ppm含まれるように、従来より1,2−ポリブタジエンを製造するための重合溶媒として用いられる塩化メチレンを添加したものをそれぞれ重合体K、L及びMとした。
【0071】
実施例8〜10、比較例4〜6
重合体A〜C及びK〜Mについて、ハロゲン含有による熱安定性の影響を上記〔12〕の方法で確認した。その結果を表2に示す。
【0072】
【表2】

【0073】
実施例11〜17
次に、重合体A〜Gについてフィルム物性を調べるため、平行光線透過率、透湿度、ガス透過率を測定した。その結果を表3に示す。
【0074】
【表3】

【0075】
実施例18〜21、比較例7〜9
重合体A,C,E,F,H,I,Jについて、上記〔13〕の方法によって加硫物を得て、加工性及び加硫物の評価を行った。その結果を表4に示す。
【0076】
【表4】

【0077】
試験結果
表1より、比較例1では、1,2結合含有量が本発明の範囲外にあり、結晶化度も小さく、成形品外観も劣っていた。比較例2では、粘度(120℃及び150℃)が本発明の範囲外にあり、引張強度及び引張伸びにおいて、実施例に比べ劣っていた。比較例3では、粘度(120℃、150℃及び180℃)が本発明の範囲外にあり、引張伸び及び成形品外観において劣っていた。一方、実施例1〜7の重合体A〜Gは、すべてにおいて1,2結合含有量が70%を越えており、120℃、150℃及び180℃における粘度もすべてにおいて本発明の範囲内にあった。引張伸びにおいては600〜780%という高い数値を示し、成形品外観も優れていた。全ハロゲン量についても分析装置の検出限界(30ppm)以下であり、触媒による影響もほとんどなかった。
【0078】
表2の結果から、ハロゲンが100ppm含まれると、混練中に重合体が劣化して、トルクの立ち上がり時間(安定時間)が短くなり、熱安定性に劣ることが分かる。
【0079】
表3の結果から、本発明の1,2−ポリブタジエンは、透明性、透湿性に優れ、酸素、エチレンオキシドのガス透過性にも優れていることが分かる。
【0080】
表4の結果から、比較例7では、加硫物の伸び及び反発弾性には優れるが、300%引張応力、引張強さ、硬さ及び引裂強さが劣っていた。比較例8においても、加硫物の伸び、引裂強さ及び反発弾性が劣っていた。比較例6では、加工性においてロール作業性が著しく悪かった。一方、実施例18〜21では、いずれも加硫が可能で、補強剤がなくても高硬度で、優れた強度を有する加硫物が得られた。特に実施例18及び実施例20では、300%引張応力、引張強さ、硬さ、圧縮永久歪み及び引裂強さにおいて、優れた物性を示した。
【0081】
(3)熱可塑性エラストマー組成物の評価
実施例22〜23、比較例10〜14
重合体A、B、H、I、J及びKと、スチレンブタジエンブロックポリマー(SBS;商品名「TR2827」、JSR社製)をそれぞれ重量比30/70としてブレンドし(表5参照)、各組成物を調製した。各熱可塑性エラストマー組成物の評価は上記〔8〕により行った。重合体を全く含まないSBSのみ(比較例10)のものについても評価した。その結果を表5に示す。
【0082】
【表5】

【0083】
試験結果
表5より、比較例11は重合体Hの1,2結合含有量が本発明の範囲外にあるため、比較例12及び13は重合体I及びJの粘度が本発明の範囲外にあるため、成形品外観は十分ではない。比較例14はハロゲンを含み、熱安定性が悪いので、成形品外観は十分ではない。更に、1,2−ポリブタジエンを全く含まない比較例10は成形外観が著しく劣る。一方、実施例22及び23は、いずれも30重量部の重合体(各々A及びB)を含むので、成形外観は改良されることが分かる。
【0084】
(4)重合体組成物の評価
実施例24〜25、比較例15〜19
重合体A、B、H、I、J及びKと、低密度ポリエチレン(LDPE;商品名「ノバテックYF30」、日本ポリケム社製)をそれぞれ重量比30/70としてブレンドし(表6参照)、各組成物を調製した。各重合体組成物の評価は上記〔14〕により行った。重合体を全く含まないLDPEのみ(比較例15)のものについても評価した。その結果を表6に示す。
【0085】
【表6】

【0086】
試験結果
表6より、比較例16は重合体Hの1,2結合含有量が本発明の範囲外にあるため、耐傷付き性が著しく劣る。比較例17及び18は重合体I及びJの粘度が本発明の範囲外にあるため、比較例19はハロゲンを含み、熱安定性が悪いため、耐傷付き性が十分ではない。更に、1,2−ポリブタジエンを全く含まない比較例15は耐傷付き性が著しく劣る。一方、実施例24及び25は、いずれも30重量部の重合体(各々A及びB)を含むので、耐傷付き性は改良されることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明の1,2−ポリブタジエンは、高温成形時の、金型汚染、熱劣化及び時間の経過とともに物性が変化する問題が改良され、成形性、透明性、力学強度特性、耐ウエットスキッド性等の特性に優れ、熱可塑性エラストマーとしての用途、例えば工業部品や履き物等の各種成形品や、各種シート、フィルム等の用途に好適に使用される。また、その成形温度は約150℃と熱可塑性エラストマーのなかでは低く、エネルギー的にも優位である。また、本発明の1,2−ポリブタジエンは、硫黄加硫が可能であり、パーオキサイド架橋活性の高さ、フィラーや薬品の充填性に優れるため、加硫用ゴムとして、また他の加硫用ゴムの反応助剤として利用することができる。
また、本発明の1,2−ポリブタジエンを含有する熱可塑性エラストマー組成物は、成形性や成形外観に優れ、本発明の重合体組成物は耐傷付き性に優れた性質を有する。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】スリットダイレオメーターの概略断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブタジエンの結合単位における1,2結合含有量が70重量%以上であり、融点が50〜140℃の範囲にあり、スリットダイレオメーターにより剪断速度5113sec-1で測定した粘度ηが、120℃では400〜1200poiseの範囲にあり、150℃では300〜1000poiseの範囲にあり、180℃では200〜800poiseの範囲にあり、且つ全ハロゲン含有量が30ppm以下であることを特徴とする1,2−ポリブタジエン。
【請求項2】
ブタジエンと、ブタジエン以外の共役ジエンとの共重合体である請求項1記載の1,2−ポリブタジエン。
【請求項3】
ブタジエンの結合単位における1,2結合含有量が70重量%以上であり、融点が50〜140℃の範囲にあり、スリットダイレオメーターにより剪断速度5113sec-1で測定した粘度ηが、120℃では400〜1200poiseの範囲にあり、150℃では300〜1000poiseの範囲にあり、180℃では200〜800poiseの範囲にあり、且つ全ハロゲン含有量が30ppm以下であることを特徴とする非架橋成形用1,2−ポリブタジエン。
【請求項4】
請求項1又は2記載の1,2−ポリブタジエンの製造方法であって、コバルト化合物及びアルミノオキサンを含有する触媒の存在下に、ブタジエン又はブタジエンとブタジエン以外の共役ジエンとを重合することを特徴とする1,2−ポリブタジエンの製造方法。
【請求項5】
上記コバルト化合物は、下記一般式(IV)で表される化合物である請求項4記載の1,2−ポリブタジエンの製造方法。
【化1】

【請求項6】
請求項1又は2記載の1,2−ポリブタジエンを含有することを特徴とする熱可塑性エラストマー又は樹脂の改質剤。
【請求項7】
請求項1又は2記載の1,2−ポリブタジエンを架橋することにより得られることを特徴とする架橋ゴム。
【請求項8】
請求項1又は2記載の1,2−ポリブタジエンを含有することを特徴とする加硫用ゴムの反応助剤。

【図1】
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【公開番号】特開2006−89759(P2006−89759A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−363754(P2005−363754)
【出願日】平成17年12月16日(2005.12.16)
【分割の表示】特願2002−515960(P2002−515960)の分割
【原出願日】平成12年7月27日(2000.7.27)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】