1,3,5−トリフェニルベンゼン誘導体を含む有機エレクトロルミネッセンス素子
【課題】1,3,5−トリフェニルベンゼン誘導体を用いた新規な有機エレクトロルミネッセンス素子の提供。
【解決手段】下記一般式(1)で示される1,3,5−トリフェニルベンゼン誘導体を含有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
〔式中、Ar1は、ピリジル基である。〕
【解決手段】下記一般式(1)で示される1,3,5−トリフェニルベンゼン誘導体を含有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
〔式中、Ar1は、ピリジル基である。〕
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1,3,5−トリフェニルベンゼン誘導体を含む有機エレクトロルミネッセンス素子に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL素子は、電極から注入されたホールと電極の再結合によって生成した励起エネルギーが発光過程を経て基底状態に緩和されることにより自発光する。しかしながら、ホールと電子の再結合によって生成する励起状態には一重項励起状態と三重項励起状態の2種類がそれぞれ1対3の割合で存在する。これまでの多くは一重項励起状態からの発光を利用した蛍光材料が発光材料に利用されていたため、内部量子効率が最大で25%であるので、この時取り出し効率を20%とすると、最大外部量子効率は5%が理論限界であった。
【0003】
近年、イリジウムやプラチナなどの重原子効果を利用した錯体化合物を用い三重項励起状態からの発光、すなわちリン光発光を用いることにより発光効率の向上が報告されるようになった(例えば、非特許文献1)。一重項励起状態に加え、三重項励起状態からの発光を利用することで最大内部量子効率は理論上100%に到達することが可能で、リン光材料は発光材料として注目を浴びている。
【0004】
例えば緑色材料として、下記式
【化1】
に示すトリス(2−フェニルピリジナト)イリジウム(III)[Ir(ppy)3]が広く利用されている。
【0005】
また安達らによる非特許文献2などにより青色発光材料である下記式
【化2】
で示すビス[2−(4,6−ジフルオロフェニル)ピリジル−N,C2′]イリジウム(III)ピコリレート(FIrpic)が注目を浴びるようになり、それ以降FIrpicを用いた有機EL素子の高効率化検討および新規な青色リン光錯体探索研究が盛んに行われるようになった。
【0006】
その結果最近ではS.R.Forrestらによる非特許文献3では下記式
【化3】
で示すトリス[1−(4−(トリフルオロメチル)フェニル)−1H−ピラゾラート,N,C2′]イリジウム(III)(Irtfmppz3)やM.E.Thompsonらによる非特許文献4では下記式
【化4】
で示すビス[2−(4′,6′−ジフルオロフェニル)ピリジナト−N,C2′]テトラキス(1−ピラゾリル)ボレート(Fir6)が開発された。
【0007】
これら発光材料を効率よく発光させるにはホールと電子の注入バランスを整えて、発光層の中で十分にこれらのキャリアーの結合が行えるようにホール輸送剤や電子輸送剤などを選択しなければならない。
特に青色リン光材料についてはエネルギーギャップが大きいためにワイドギャップ化されたホール輸送剤や電子輸送剤が必要になってくる。現在これらリン光材料については、電子輸送材料に従来から使用されているAlq3〔トリス(8−キノリノラト)アルミニウム〕やBAlq2〔ビス(2−メチル−8−キノリノラト)アルミニウムp−フェニルフェノラート〕等が使用されているが、リン光材料に使用するには十分なエネルギーギャップを持ち合わせていないため新規なワイドギャップな電子輸送材料の開発が必要である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】M.A.Baldo, S.Lamansky, P.E.Burrows, M.E.Thompson, S.R.Forrest APPLIED PHYSICS LETTER 1999 75(1) 4−7
【非特許文献2】Appl.Phys.Lett.,79, 2082(2001)
【非特許文献3】J.Appl.Phys.90 5048(2001)
【非特許文献4】4Polyhedron 23 (2004) 419−428
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、1,3,5−トリフェニルベンゼン誘導体を用いた新規な有機エレクトロルミネッセンス素子を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1は、下記一般式(1)で示される1,3,5−トリフェニルベンゼン誘導体を含有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子に関する。
【化5】
〔式中、Ar1は、ピリジル基である。〕
本発明の第2は、前記1,3,5−トリフェニルベンゼン誘導体を電子輸送材料として使用したことを特徴とする請求項1記載の有機エレクトロルミネッセンス素子に関する。
【0011】
本発明化合物の合成方法の1つを下記反応式で示す。
【化6】
(式中、XはBrなどのハロゲンであり、Ar1はピリジル基である。)
【0012】
本発明における代表的な化合物を下記に示す。
【化7】
【0013】
また本発明のその他の化合物例を以下に示す。
【化8】
【発明の効果】
【0014】
本発明により、1,3,5−トリフェニルベンゼン誘導体を含有する有機エレクトロルミネッセンス素子を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】1,3,5−トリ〔p−(3−ピリジル)フェニル〕ベンゼン(TpPyPhB)の1HNMRを示す。
【図2】1,3,5−トリ〔m−(3−ピリジル)フェニル〕ベンゼン(TmPyPhB)の1HNMRを示す。
【図3】1,3,5−トリ〔m−(4−ピリジル)フェニル〕ベンゼン(Tm4PyPhB)の1HNMRを示す。
【図4】1,3,5−トリ〔m−(2−ピリジル)フェニル〕ベンゼン(Tm2PyPhB)の1HNMRを示す。
【図5】1,3,5−トリ〔m−(4−ピリジル)フェニル〕ベンゼン(Tm4PyPhB)の蒸着膜および1,3,5−トリ〔p−(3−ピリジル)フェニル〕ベンゼン(TpPyPhB)の蒸着膜の吸収および蛍光スペクトルである。
【図6】1,3,5−トリ〔m−(3−ピリジル)フェニル〕ベンゼン(TmPyPhB)の蒸着膜、1,3,5−トリ〔m−(2−ピリジル)フェニル〕ベンゼン(Tm2PyPhB)の蒸着膜および1,3,5−トリ〔m−(4−ピリジル)フェニル〕ベンゼン(Tm4PyPhB)の蒸着膜の吸収スペクトルである。
【図7】1,3,5−トリ〔m−(3−ピリジル)フェニル〕ベンゼン(TmPyPhB)の蒸着膜、1,3,5−トリ〔m−(2−ピリジル)フェニル〕ベンゼン(Tm2PyPhB)の蒸着膜および1,3,5−トリ〔m−(4−ピリジル)フェニル〕ベンゼン(Tm4PyPhB)の蒸着膜の蛍光スペクトルである。
【図8】3−(p−ビフェニル)−4−(p−エチルフェニル)−5−(p−t−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール(TAZ)を用いた対象例の青色リン光素子、1,3,5−トリ〔m−(4−ピリジル)フェニル〕ベンゼン(Tm4PyPhB)を用いた実施例1の青色リン光素子、1,3,5−トリ〔m−(2−ピリジル)フェニル〕ベンゼン(Tm2PyPhB)を用いた実施例2の青色リン光素子および1,3,5−トリ〔m−(3−ピリジル)フェニル〕ベンゼン(TmPyPhB)を用いた実施例3の青色リン光素子、それぞれの電流密度−電圧特性を示すグラフである。
【図9】3−(p−ビフェニル)−4−(p−エチルフェニル)−5−(p−t−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール(TAZ)を用いた対象例の青色リン光素子、1,3,5−トリ〔m−(4−ピリジル)フェニル〕ベンゼン(Tm4PyPhB)を用いた実施例1の青色リン光素子、1,3,5−トリ〔m−(2−ピリジル)フェニル〕ベンゼン(Tm2PyPhB)を用いた実施例2の青色リン光素子および1,3,5−トリ〔m−(3−ピリジル)フェニル〕ベンゼン(TmPyPhB)を用いた実施例3の青色リン光素子、それぞれの輝度−電圧特性を示すグラフである。
【図10】3−(p−ビフェニル)−4−(p−エチルフェニル)−5−(p−t−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール(TAZ)を用いた対象例の青色リン光素子、1,3,5−トリ〔m−(4−ピリジル)フェニル〕ベンゼン(Tm4PyPhB)を用いた実施例1の青色リン光素子、1,3,5−トリ〔m−(2−ピリジル)フェニル〕ベンゼン(Tm2PyPhB)を用いた実施例2の青色リン光素子および1,3,5−トリ〔m−(3−ピリジル)フェニル〕ベンゼン(TmPyPhB)を用いた実施例3の青色リン光素子、それぞれの視感効率−輝度特性を示すグラフである。
【図11】3−(p−ビフェニル)−4−(p−エチルフェニル)−5−(p−t−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール(TAZ)を用いた対象例の青色リン光素子、1,3,5−トリ〔m−(4−ピリジル)フェニル〕ベンゼン(Tm4PyPhB)を用いた実施例1の青色リン光素子、1,3,5−トリ〔m−(2−ピリジル)フェニル〕ベンゼン(Tm2PyPhB)を用いた実施例2の青色リン光素子および1,3,5−トリ〔m−(3−ピリジル)フェニル〕ベンゼン(TmPyPhB)を用いた実施例3の青色リン光素子、それぞれの外部量子効率−輝度特性を示すグラフである。
【実施例】
【0016】
以下に合成例、実施例を示すが、本発明はこれにより何ら限定されるものではない。
【0017】
合成例1
(1)1,3,5−トリス(p−ブロモフェニル)ベンゼン(TpBrPhB)の合成
【化9】
四つ口フラスコに4−ブロモアセトフェノン(4−bromoacetophenone)(5.97g、30mmol)と無水エタノール(60mL)を入れて、窒素気流下0℃まで冷やした。激しく撹拌しながら、ゆっくりテトラクロロシラン(10.2g、60mmol)を滴下し、さらに1時間同温で反応させ、室温に戻した。その後、さらに24時間反応させ1,3,5−トリス(p−ブロモフェニル)ベンゼン(TpBrPhB)を得た。反応終了後、反応溶液を水に注ぎ、クロロホルムで抽出し、飽和食塩水で洗浄した。無水硫酸マグネシウムで脱水し、溶媒をエバポレーターで除去した。
THF/n−ヘキサンによる再結晶を行い、白い固体を得た。収率:78.6mol%。
構造確認は1HNMRで行った。
【0018】
(2)1,3,5−トリ〔p−(3−ピリジル)フェニル〕ベンゼン(TpPyPhB)の合成
【化10】
四つ口フラスコに1,3,5−トリス(p−ブロモフェニル)ベンゼン{1,3,5−tris(p−bromophenyl)benzene}(1.09g,2.0mmol)、3−〔4,4,5,5−テトラメチル−(1,3,2)ジオキサボロラン−2−イル〕ピリジン{3−(4,4,5,5−Tetramethyl−[1,3,2]dioxaborolan−2−yl)−pyridine}(1.44g,7.0mmol)、Pd(PPh3)4(404mg、0.35mmol)、トルエン/エタノール(5/1、100mL)と2MK2CO3(30mL)を入れて、窒素気流下90℃で24時間反応させ、1,3,5−トリ〔p−(3−ピリジル)フェニル〕ベンゼン(TpPyPhB)を得た。反応終了後、反応溶液を水に注ぎ、トルエンで抽出し、飽和食塩水で洗浄した。無水硫酸マグネシウムで脱水し、溶媒をエバポレーターで除去した。
精製はカラムクロマトグラフィー法(展開溶媒:クロロホルム/メタノール=15/1)を行い、アセトン/n−ヘキサンにより再結晶を行い、白い固体を得た。収率:70.0mol%。
構造確認は1HNMRで行った。電気化学的特性および熱特性を後記表1に示す。
【0019】
合成例2
(1)1,3,5−トリ〔m−(3−ピリジル)フェニル〕ベンゼン(TmPyPhB)の合成
【化11】
四つ口フラスコに1,3,5−トリス(m−ブロモフェニル)ベンゼン{1,3,5−tris(m−bromophenyl)benzene}(1.09g、2.0mmol)、3−(4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボロラン−2−イル)−ピリジン(4,4,5,5−Tetramethyl−[1,3,2]dioxaborolan−2−yl)−pyridine(1.44g、7.0mmol)、Pd(PPh3)4(416mg、0.36mmol)、トルエン/エタノール(4/1、100mL)と2MK2CO3(30mL)を入れて、窒素気流下90℃で24時間反応させ、1,3,5−トリ〔m−(3−ピリジル)フェニル〕ベンゼン(TmPyPhB)を得た。反応終了後、反応溶液を水に注ぎ、トルエンで抽出し、飽和食塩水で洗浄した。無水硫酸マグネシウムで脱水し、溶媒をエバポレーターで除去した。
精製はカラムクロマトグラフィー法(展開溶媒:クロロホルム/メタノール=20/1)を行い、白い固体を得た。収率:84.6mol%。
構造確認は1HNMRで行った。電気化学的特性および熱特性を後記表1に示す。
【0020】
合成例3
(1)1,3,5−トリ〔m−(4−ピリジル)フェニル〕ベンゼン(Tm4PyPhB)の合成
【化12】
四つ口フラスコに1,3,5−トリス(m−ブロモフェニル)ベンゼン{1,3,5−tris(m−bromophenyl)benzene}(1.63g,3.0mmol)、4−(4,4,5,5、−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボロラニル)−ピリジン{4−(4,4,5,5−Tetramethyl−[1,3,2]dioxaborolanyl)−pyridine}(2.15g,10.5mmol)、Pd(PPh3)4(600mg、0.52mmol)、トルエン/エタノール(4/1、100mL)と2MK2CO3(30mL)を入れて、窒素気流下90℃で24時間反応させ、1,3,5−トリ〔m−(4−ピリジル)フェニル〕ベンゼン(Tm4PyPhB)を得た。反応終了後、反応溶液を水に注ぎ、クロロホルムで抽出し、飽和食塩水で洗浄した。無水硫酸マグネシウムで脱水し、溶媒をエバポレーターで除去した。
精製はカラムクロマトグラフィー法(展開溶媒:クロロホルム/メタノール=20/1)を行い、白い固体を得た。収率:72.5mol%。さらに、昇華精製を行い、無色の固体を得た。
構造確認は1HNMRで行った。電気化学的特性および熱特性を後記表1に示す。
【0021】
合成例4
(1)2−{3−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボラン−2−イル)フェニル}ピリジン(PyPhDOB)の合成
【化13】
四つ口フラスコに2−(3−クロロフェニル)−ピリジン(CPhPy)(4.67g、24.6mmol)、ビス(ピナコラート)ジボロン{bis(pinacolato)diboron}(6.88g、27.1mmol)、酢酸カリュウム(3.62g,36.9mmol)、ビス(ジベンジリデンアセトンパラジュウム)(0)〔bis(dibenzylideneacetone)palladium(0)〕(424mg、0.738mmol)、トリシクロヘキシルホスフィン(tricyclohexylphosphine)(497mg、1.77mmol)と無水1,4−ジオキサン(150mL)を入れて、窒素気流下80℃で48時間反応させた。TLCで確認した結果、反応はあまり進まなかったため、ビス(ピナコラート)ジボロン{bis(pinacolato)diboron}(3.12g、12.3mmol)、酢酸カリウム(3.62g、36.9mmol)、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0){bis(dibenzylideneacetone)palladium(0)}(424mg、0.738mmol)とトリシクロヘキシルホスフィン(tricyclohexylphosphine)(497mg、1.77mmol)を追加し、さらに同温で48時間反応させ、2−{3−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボラン−2−イル)フェニル}ピリジン(PyPhDOB)を得た。その後、反応溶液に水を注ぎ、トルエンで抽出し、飽和食塩水で洗浄した。無水硫酸マグネシウムで脱水し、溶媒をエバポレーターで除去した。
精製はカラムクロマトグラフィー法(展開溶媒:n−ヘキサン/酢酸エチル=6/1)を行い、無色の結晶を得た。収率:39.8mol%。
構造確認は1HNMRで行った。
【0022】
(2)1,3,5−トリ{m−(2−ピリジル)フェニル}ベンゼン(Tm2PyPhB)の合成
【化14】
四つ口フラスコに1,3,5−トリブロモベンゼン(1,3,5−tribromobenzene)(0.933g、2.96mmol)、PyPhDOB(2.75g、9.78mmol)、Pd(PPh3)4(513mg、0.444mmol)、トルエン/エタノール(4/1,100mL)と2MK2CO3(30mL)を入れて、窒素気流下90℃で24時間反応させ、1,3,5−トリ{m−(2−ピリジル)フェニル}ベンゼン(Tm2PyPhB)を得た。反応終了後、反応溶液を水に注ぎ、トルエンで抽出し、飽和食塩水で洗浄した。無水硫酸マグネシウムで脱水し、溶媒をエバポレーターで除去した。
精製はカラムクロマトグラフィー法(展開溶媒:クロロホルム/酢酸エチル=9/1)を行い、n−ヘキサンによる再結晶を行い白色の粉末を得た。収率:85.4mol%。
構造確認は1HNMRで行った。電気化学的特性および熱特性を後記表1に示す。
【0023】
【表1】
Tg:二次転移温度、Tm:融点、Td:分解温度、Eg:エネルギーギャップ、IP:イオン化ポテンシャル、Ea:エレクトロアフィニティ(電子親和力)、n.d.:検出されず。
Tg(ガラス転移温度)については、DSC(Diffirential Scanning Calorimeter 示差熱量計)中にサンプルを加え、溶融させたものを急冷し、2〜3回繰り返すとガラス転移を表すカーブがチャート上に現れるので、そのカーブを接線で結び、その交点の温度をTgとして採用する。
Tm(融点)は、同じくDSCにサンプルを加え、昇温していくと吸熱カーブが現れるのでその極大のところとの温度を読んで、その温度をTmとする。
Td(分解温度)は、DTA(Differential thermal analyzer 示差熱分析装置)にサンプルを加え、加熱していくとサンプルが熱によって分解し、重量が減少しだす。その減少を開始しだしたところの温度を読んで、その温度をTdとする。
エネルギーギャップ(Eg)については、蒸着機で作成した薄膜を紫外−可視吸光度計で薄膜の吸収曲線を測定する。その薄膜の短波長側の立ち上がりの所に接線を引き、求まった交点の波長を次の式に代入し目的の値を求める。それによって得た値がEgになる。
Eg=1240÷nm
例えば接線を引いて求めた値が470nmだったとしたらこの時のEgの値は
Eg=1240÷470=2.63(eV)
と言うことになる。
Ip(イオン化ポテンシャル)は、イオン化ポテンシャル測定装置(例えば理研計器AC−1)を使用して測定し、測定するサンプルがイオン化を開始しだしたところの電圧(eV)の値を読む。
Ea(電子親和力)は、IpからEgを引いた値である。
本明細書における波長に対する強度(intensity a.u.)の測定は、浜松ホトニクス社製ストリークカメラを用いて、クライオスタット中で4.2kにおいて測定した。
【0024】
実施例1〜3
素子構造(青色リン光素子):
○:ITO/TPDPES(20nm)/3DTAPBP(20nm)/4CzPBP:Firpic(11wt%)(30nm)/TAZ(30nm)/LiF(0.5nm)/Al(100nm);(対象例)
◇:ITO/TPDPES(20nm)/3DTAPBP(20nm)/4CzPBP:Firpic(11wt%)(30nm)/Tm4PyPhB(30nm)/LiF(0.5nm)/Al(100nm);(実施例1)
△:ITO/TPDPES(20nm)/3DTAPBP(20nm)/4CzPBP:Firpic(11wt%)(30nm)/Tm2PyPhB(30nm)/LiF(0.5nm)/Al(100nm);(実施例2)
□:ITO/TPDPES(20nm)/3DTAPBP(20nm)/4CzPBP:Firpic(11wt%)(30nm)/TmPyPhB(30nm)/LiF(0.5nm)/Al(100nm);(実施例3)
TPDPESは、ポリ〔オキシ−1,4−フェニルスルホニル−1,4−フェニレンオキシ−1,3−フェニレン(フェニルイミノ)(1,1′−ビフェニル)−4,4′−ジイル(フェニルイミノ)−1,3−フェニレン〕
3DTAPBPは、p,p′−〔N,N′−テトラ(p−トルイル)ジアニリノ−o,o′−ビフェニル〕
FIrpicは、ビス〔2−(4,6−ジフルオロフェニル)ピリジル−N,C2′〕イリジウム(III)ピコリレート
4CzPBPは、p,p′−(N:カルバゾリルフェニル)−o,o′−ビフェニル
TAZは、3−(p−ビフェニル)−4−(p−エチルフェニル)−5−(p−tert−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール
この素子では、α−NPDをホール輸送層に、本発明のTPPBを電子輸送層に使用している。これら素子の物性は図13〜16に示す。
【0025】
実施例4〜5
TmPyPhB、TmPyPhTAZおよびTpPyPhBをそれぞれ電子輸送層として有機EL素子へ応用
素子構造:
ITO/α−NPD(50nm)/Alq3(40nm)/TpPyPhB(30nm)/LiF(0.5nm)/Al(100nm);(実施例4)
ITO/α−NPD(50nm)/Alq3(40nm)/TmPyPhB(30nm)/LiF(0.5nm)/Al(100nm);(実施例5)
同じフェニル中心骨格を有するTmPyPhB、TpPyPhBとTmiQPhBを電子輸送層として用いた素子の電流注入は似ていることであり、中にTmPyPhBは一番低電圧駆動である。
これら素子の物性データを表2〜4に示す。
【0026】
【表2】
Turn on voltage Max.は、最大発光開始電圧
Max.P.E.は、最大視感効率
Max.C.E.は、最大電流効率
Max.Q.E.は、最大外部量子効率
【表3】
PE:視感効率、QE:外部量子効率
【0027】
【表4】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1,3,5−トリフェニルベンゼン誘導体を含む有機エレクトロルミネッセンス素子に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL素子は、電極から注入されたホールと電極の再結合によって生成した励起エネルギーが発光過程を経て基底状態に緩和されることにより自発光する。しかしながら、ホールと電子の再結合によって生成する励起状態には一重項励起状態と三重項励起状態の2種類がそれぞれ1対3の割合で存在する。これまでの多くは一重項励起状態からの発光を利用した蛍光材料が発光材料に利用されていたため、内部量子効率が最大で25%であるので、この時取り出し効率を20%とすると、最大外部量子効率は5%が理論限界であった。
【0003】
近年、イリジウムやプラチナなどの重原子効果を利用した錯体化合物を用い三重項励起状態からの発光、すなわちリン光発光を用いることにより発光効率の向上が報告されるようになった(例えば、非特許文献1)。一重項励起状態に加え、三重項励起状態からの発光を利用することで最大内部量子効率は理論上100%に到達することが可能で、リン光材料は発光材料として注目を浴びている。
【0004】
例えば緑色材料として、下記式
【化1】
に示すトリス(2−フェニルピリジナト)イリジウム(III)[Ir(ppy)3]が広く利用されている。
【0005】
また安達らによる非特許文献2などにより青色発光材料である下記式
【化2】
で示すビス[2−(4,6−ジフルオロフェニル)ピリジル−N,C2′]イリジウム(III)ピコリレート(FIrpic)が注目を浴びるようになり、それ以降FIrpicを用いた有機EL素子の高効率化検討および新規な青色リン光錯体探索研究が盛んに行われるようになった。
【0006】
その結果最近ではS.R.Forrestらによる非特許文献3では下記式
【化3】
で示すトリス[1−(4−(トリフルオロメチル)フェニル)−1H−ピラゾラート,N,C2′]イリジウム(III)(Irtfmppz3)やM.E.Thompsonらによる非特許文献4では下記式
【化4】
で示すビス[2−(4′,6′−ジフルオロフェニル)ピリジナト−N,C2′]テトラキス(1−ピラゾリル)ボレート(Fir6)が開発された。
【0007】
これら発光材料を効率よく発光させるにはホールと電子の注入バランスを整えて、発光層の中で十分にこれらのキャリアーの結合が行えるようにホール輸送剤や電子輸送剤などを選択しなければならない。
特に青色リン光材料についてはエネルギーギャップが大きいためにワイドギャップ化されたホール輸送剤や電子輸送剤が必要になってくる。現在これらリン光材料については、電子輸送材料に従来から使用されているAlq3〔トリス(8−キノリノラト)アルミニウム〕やBAlq2〔ビス(2−メチル−8−キノリノラト)アルミニウムp−フェニルフェノラート〕等が使用されているが、リン光材料に使用するには十分なエネルギーギャップを持ち合わせていないため新規なワイドギャップな電子輸送材料の開発が必要である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】M.A.Baldo, S.Lamansky, P.E.Burrows, M.E.Thompson, S.R.Forrest APPLIED PHYSICS LETTER 1999 75(1) 4−7
【非特許文献2】Appl.Phys.Lett.,79, 2082(2001)
【非特許文献3】J.Appl.Phys.90 5048(2001)
【非特許文献4】4Polyhedron 23 (2004) 419−428
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、1,3,5−トリフェニルベンゼン誘導体を用いた新規な有機エレクトロルミネッセンス素子を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1は、下記一般式(1)で示される1,3,5−トリフェニルベンゼン誘導体を含有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子に関する。
【化5】
〔式中、Ar1は、ピリジル基である。〕
本発明の第2は、前記1,3,5−トリフェニルベンゼン誘導体を電子輸送材料として使用したことを特徴とする請求項1記載の有機エレクトロルミネッセンス素子に関する。
【0011】
本発明化合物の合成方法の1つを下記反応式で示す。
【化6】
(式中、XはBrなどのハロゲンであり、Ar1はピリジル基である。)
【0012】
本発明における代表的な化合物を下記に示す。
【化7】
【0013】
また本発明のその他の化合物例を以下に示す。
【化8】
【発明の効果】
【0014】
本発明により、1,3,5−トリフェニルベンゼン誘導体を含有する有機エレクトロルミネッセンス素子を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】1,3,5−トリ〔p−(3−ピリジル)フェニル〕ベンゼン(TpPyPhB)の1HNMRを示す。
【図2】1,3,5−トリ〔m−(3−ピリジル)フェニル〕ベンゼン(TmPyPhB)の1HNMRを示す。
【図3】1,3,5−トリ〔m−(4−ピリジル)フェニル〕ベンゼン(Tm4PyPhB)の1HNMRを示す。
【図4】1,3,5−トリ〔m−(2−ピリジル)フェニル〕ベンゼン(Tm2PyPhB)の1HNMRを示す。
【図5】1,3,5−トリ〔m−(4−ピリジル)フェニル〕ベンゼン(Tm4PyPhB)の蒸着膜および1,3,5−トリ〔p−(3−ピリジル)フェニル〕ベンゼン(TpPyPhB)の蒸着膜の吸収および蛍光スペクトルである。
【図6】1,3,5−トリ〔m−(3−ピリジル)フェニル〕ベンゼン(TmPyPhB)の蒸着膜、1,3,5−トリ〔m−(2−ピリジル)フェニル〕ベンゼン(Tm2PyPhB)の蒸着膜および1,3,5−トリ〔m−(4−ピリジル)フェニル〕ベンゼン(Tm4PyPhB)の蒸着膜の吸収スペクトルである。
【図7】1,3,5−トリ〔m−(3−ピリジル)フェニル〕ベンゼン(TmPyPhB)の蒸着膜、1,3,5−トリ〔m−(2−ピリジル)フェニル〕ベンゼン(Tm2PyPhB)の蒸着膜および1,3,5−トリ〔m−(4−ピリジル)フェニル〕ベンゼン(Tm4PyPhB)の蒸着膜の蛍光スペクトルである。
【図8】3−(p−ビフェニル)−4−(p−エチルフェニル)−5−(p−t−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール(TAZ)を用いた対象例の青色リン光素子、1,3,5−トリ〔m−(4−ピリジル)フェニル〕ベンゼン(Tm4PyPhB)を用いた実施例1の青色リン光素子、1,3,5−トリ〔m−(2−ピリジル)フェニル〕ベンゼン(Tm2PyPhB)を用いた実施例2の青色リン光素子および1,3,5−トリ〔m−(3−ピリジル)フェニル〕ベンゼン(TmPyPhB)を用いた実施例3の青色リン光素子、それぞれの電流密度−電圧特性を示すグラフである。
【図9】3−(p−ビフェニル)−4−(p−エチルフェニル)−5−(p−t−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール(TAZ)を用いた対象例の青色リン光素子、1,3,5−トリ〔m−(4−ピリジル)フェニル〕ベンゼン(Tm4PyPhB)を用いた実施例1の青色リン光素子、1,3,5−トリ〔m−(2−ピリジル)フェニル〕ベンゼン(Tm2PyPhB)を用いた実施例2の青色リン光素子および1,3,5−トリ〔m−(3−ピリジル)フェニル〕ベンゼン(TmPyPhB)を用いた実施例3の青色リン光素子、それぞれの輝度−電圧特性を示すグラフである。
【図10】3−(p−ビフェニル)−4−(p−エチルフェニル)−5−(p−t−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール(TAZ)を用いた対象例の青色リン光素子、1,3,5−トリ〔m−(4−ピリジル)フェニル〕ベンゼン(Tm4PyPhB)を用いた実施例1の青色リン光素子、1,3,5−トリ〔m−(2−ピリジル)フェニル〕ベンゼン(Tm2PyPhB)を用いた実施例2の青色リン光素子および1,3,5−トリ〔m−(3−ピリジル)フェニル〕ベンゼン(TmPyPhB)を用いた実施例3の青色リン光素子、それぞれの視感効率−輝度特性を示すグラフである。
【図11】3−(p−ビフェニル)−4−(p−エチルフェニル)−5−(p−t−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール(TAZ)を用いた対象例の青色リン光素子、1,3,5−トリ〔m−(4−ピリジル)フェニル〕ベンゼン(Tm4PyPhB)を用いた実施例1の青色リン光素子、1,3,5−トリ〔m−(2−ピリジル)フェニル〕ベンゼン(Tm2PyPhB)を用いた実施例2の青色リン光素子および1,3,5−トリ〔m−(3−ピリジル)フェニル〕ベンゼン(TmPyPhB)を用いた実施例3の青色リン光素子、それぞれの外部量子効率−輝度特性を示すグラフである。
【実施例】
【0016】
以下に合成例、実施例を示すが、本発明はこれにより何ら限定されるものではない。
【0017】
合成例1
(1)1,3,5−トリス(p−ブロモフェニル)ベンゼン(TpBrPhB)の合成
【化9】
四つ口フラスコに4−ブロモアセトフェノン(4−bromoacetophenone)(5.97g、30mmol)と無水エタノール(60mL)を入れて、窒素気流下0℃まで冷やした。激しく撹拌しながら、ゆっくりテトラクロロシラン(10.2g、60mmol)を滴下し、さらに1時間同温で反応させ、室温に戻した。その後、さらに24時間反応させ1,3,5−トリス(p−ブロモフェニル)ベンゼン(TpBrPhB)を得た。反応終了後、反応溶液を水に注ぎ、クロロホルムで抽出し、飽和食塩水で洗浄した。無水硫酸マグネシウムで脱水し、溶媒をエバポレーターで除去した。
THF/n−ヘキサンによる再結晶を行い、白い固体を得た。収率:78.6mol%。
構造確認は1HNMRで行った。
【0018】
(2)1,3,5−トリ〔p−(3−ピリジル)フェニル〕ベンゼン(TpPyPhB)の合成
【化10】
四つ口フラスコに1,3,5−トリス(p−ブロモフェニル)ベンゼン{1,3,5−tris(p−bromophenyl)benzene}(1.09g,2.0mmol)、3−〔4,4,5,5−テトラメチル−(1,3,2)ジオキサボロラン−2−イル〕ピリジン{3−(4,4,5,5−Tetramethyl−[1,3,2]dioxaborolan−2−yl)−pyridine}(1.44g,7.0mmol)、Pd(PPh3)4(404mg、0.35mmol)、トルエン/エタノール(5/1、100mL)と2MK2CO3(30mL)を入れて、窒素気流下90℃で24時間反応させ、1,3,5−トリ〔p−(3−ピリジル)フェニル〕ベンゼン(TpPyPhB)を得た。反応終了後、反応溶液を水に注ぎ、トルエンで抽出し、飽和食塩水で洗浄した。無水硫酸マグネシウムで脱水し、溶媒をエバポレーターで除去した。
精製はカラムクロマトグラフィー法(展開溶媒:クロロホルム/メタノール=15/1)を行い、アセトン/n−ヘキサンにより再結晶を行い、白い固体を得た。収率:70.0mol%。
構造確認は1HNMRで行った。電気化学的特性および熱特性を後記表1に示す。
【0019】
合成例2
(1)1,3,5−トリ〔m−(3−ピリジル)フェニル〕ベンゼン(TmPyPhB)の合成
【化11】
四つ口フラスコに1,3,5−トリス(m−ブロモフェニル)ベンゼン{1,3,5−tris(m−bromophenyl)benzene}(1.09g、2.0mmol)、3−(4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボロラン−2−イル)−ピリジン(4,4,5,5−Tetramethyl−[1,3,2]dioxaborolan−2−yl)−pyridine(1.44g、7.0mmol)、Pd(PPh3)4(416mg、0.36mmol)、トルエン/エタノール(4/1、100mL)と2MK2CO3(30mL)を入れて、窒素気流下90℃で24時間反応させ、1,3,5−トリ〔m−(3−ピリジル)フェニル〕ベンゼン(TmPyPhB)を得た。反応終了後、反応溶液を水に注ぎ、トルエンで抽出し、飽和食塩水で洗浄した。無水硫酸マグネシウムで脱水し、溶媒をエバポレーターで除去した。
精製はカラムクロマトグラフィー法(展開溶媒:クロロホルム/メタノール=20/1)を行い、白い固体を得た。収率:84.6mol%。
構造確認は1HNMRで行った。電気化学的特性および熱特性を後記表1に示す。
【0020】
合成例3
(1)1,3,5−トリ〔m−(4−ピリジル)フェニル〕ベンゼン(Tm4PyPhB)の合成
【化12】
四つ口フラスコに1,3,5−トリス(m−ブロモフェニル)ベンゼン{1,3,5−tris(m−bromophenyl)benzene}(1.63g,3.0mmol)、4−(4,4,5,5、−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボロラニル)−ピリジン{4−(4,4,5,5−Tetramethyl−[1,3,2]dioxaborolanyl)−pyridine}(2.15g,10.5mmol)、Pd(PPh3)4(600mg、0.52mmol)、トルエン/エタノール(4/1、100mL)と2MK2CO3(30mL)を入れて、窒素気流下90℃で24時間反応させ、1,3,5−トリ〔m−(4−ピリジル)フェニル〕ベンゼン(Tm4PyPhB)を得た。反応終了後、反応溶液を水に注ぎ、クロロホルムで抽出し、飽和食塩水で洗浄した。無水硫酸マグネシウムで脱水し、溶媒をエバポレーターで除去した。
精製はカラムクロマトグラフィー法(展開溶媒:クロロホルム/メタノール=20/1)を行い、白い固体を得た。収率:72.5mol%。さらに、昇華精製を行い、無色の固体を得た。
構造確認は1HNMRで行った。電気化学的特性および熱特性を後記表1に示す。
【0021】
合成例4
(1)2−{3−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボラン−2−イル)フェニル}ピリジン(PyPhDOB)の合成
【化13】
四つ口フラスコに2−(3−クロロフェニル)−ピリジン(CPhPy)(4.67g、24.6mmol)、ビス(ピナコラート)ジボロン{bis(pinacolato)diboron}(6.88g、27.1mmol)、酢酸カリュウム(3.62g,36.9mmol)、ビス(ジベンジリデンアセトンパラジュウム)(0)〔bis(dibenzylideneacetone)palladium(0)〕(424mg、0.738mmol)、トリシクロヘキシルホスフィン(tricyclohexylphosphine)(497mg、1.77mmol)と無水1,4−ジオキサン(150mL)を入れて、窒素気流下80℃で48時間反応させた。TLCで確認した結果、反応はあまり進まなかったため、ビス(ピナコラート)ジボロン{bis(pinacolato)diboron}(3.12g、12.3mmol)、酢酸カリウム(3.62g、36.9mmol)、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0){bis(dibenzylideneacetone)palladium(0)}(424mg、0.738mmol)とトリシクロヘキシルホスフィン(tricyclohexylphosphine)(497mg、1.77mmol)を追加し、さらに同温で48時間反応させ、2−{3−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボラン−2−イル)フェニル}ピリジン(PyPhDOB)を得た。その後、反応溶液に水を注ぎ、トルエンで抽出し、飽和食塩水で洗浄した。無水硫酸マグネシウムで脱水し、溶媒をエバポレーターで除去した。
精製はカラムクロマトグラフィー法(展開溶媒:n−ヘキサン/酢酸エチル=6/1)を行い、無色の結晶を得た。収率:39.8mol%。
構造確認は1HNMRで行った。
【0022】
(2)1,3,5−トリ{m−(2−ピリジル)フェニル}ベンゼン(Tm2PyPhB)の合成
【化14】
四つ口フラスコに1,3,5−トリブロモベンゼン(1,3,5−tribromobenzene)(0.933g、2.96mmol)、PyPhDOB(2.75g、9.78mmol)、Pd(PPh3)4(513mg、0.444mmol)、トルエン/エタノール(4/1,100mL)と2MK2CO3(30mL)を入れて、窒素気流下90℃で24時間反応させ、1,3,5−トリ{m−(2−ピリジル)フェニル}ベンゼン(Tm2PyPhB)を得た。反応終了後、反応溶液を水に注ぎ、トルエンで抽出し、飽和食塩水で洗浄した。無水硫酸マグネシウムで脱水し、溶媒をエバポレーターで除去した。
精製はカラムクロマトグラフィー法(展開溶媒:クロロホルム/酢酸エチル=9/1)を行い、n−ヘキサンによる再結晶を行い白色の粉末を得た。収率:85.4mol%。
構造確認は1HNMRで行った。電気化学的特性および熱特性を後記表1に示す。
【0023】
【表1】
Tg:二次転移温度、Tm:融点、Td:分解温度、Eg:エネルギーギャップ、IP:イオン化ポテンシャル、Ea:エレクトロアフィニティ(電子親和力)、n.d.:検出されず。
Tg(ガラス転移温度)については、DSC(Diffirential Scanning Calorimeter 示差熱量計)中にサンプルを加え、溶融させたものを急冷し、2〜3回繰り返すとガラス転移を表すカーブがチャート上に現れるので、そのカーブを接線で結び、その交点の温度をTgとして採用する。
Tm(融点)は、同じくDSCにサンプルを加え、昇温していくと吸熱カーブが現れるのでその極大のところとの温度を読んで、その温度をTmとする。
Td(分解温度)は、DTA(Differential thermal analyzer 示差熱分析装置)にサンプルを加え、加熱していくとサンプルが熱によって分解し、重量が減少しだす。その減少を開始しだしたところの温度を読んで、その温度をTdとする。
エネルギーギャップ(Eg)については、蒸着機で作成した薄膜を紫外−可視吸光度計で薄膜の吸収曲線を測定する。その薄膜の短波長側の立ち上がりの所に接線を引き、求まった交点の波長を次の式に代入し目的の値を求める。それによって得た値がEgになる。
Eg=1240÷nm
例えば接線を引いて求めた値が470nmだったとしたらこの時のEgの値は
Eg=1240÷470=2.63(eV)
と言うことになる。
Ip(イオン化ポテンシャル)は、イオン化ポテンシャル測定装置(例えば理研計器AC−1)を使用して測定し、測定するサンプルがイオン化を開始しだしたところの電圧(eV)の値を読む。
Ea(電子親和力)は、IpからEgを引いた値である。
本明細書における波長に対する強度(intensity a.u.)の測定は、浜松ホトニクス社製ストリークカメラを用いて、クライオスタット中で4.2kにおいて測定した。
【0024】
実施例1〜3
素子構造(青色リン光素子):
○:ITO/TPDPES(20nm)/3DTAPBP(20nm)/4CzPBP:Firpic(11wt%)(30nm)/TAZ(30nm)/LiF(0.5nm)/Al(100nm);(対象例)
◇:ITO/TPDPES(20nm)/3DTAPBP(20nm)/4CzPBP:Firpic(11wt%)(30nm)/Tm4PyPhB(30nm)/LiF(0.5nm)/Al(100nm);(実施例1)
△:ITO/TPDPES(20nm)/3DTAPBP(20nm)/4CzPBP:Firpic(11wt%)(30nm)/Tm2PyPhB(30nm)/LiF(0.5nm)/Al(100nm);(実施例2)
□:ITO/TPDPES(20nm)/3DTAPBP(20nm)/4CzPBP:Firpic(11wt%)(30nm)/TmPyPhB(30nm)/LiF(0.5nm)/Al(100nm);(実施例3)
TPDPESは、ポリ〔オキシ−1,4−フェニルスルホニル−1,4−フェニレンオキシ−1,3−フェニレン(フェニルイミノ)(1,1′−ビフェニル)−4,4′−ジイル(フェニルイミノ)−1,3−フェニレン〕
3DTAPBPは、p,p′−〔N,N′−テトラ(p−トルイル)ジアニリノ−o,o′−ビフェニル〕
FIrpicは、ビス〔2−(4,6−ジフルオロフェニル)ピリジル−N,C2′〕イリジウム(III)ピコリレート
4CzPBPは、p,p′−(N:カルバゾリルフェニル)−o,o′−ビフェニル
TAZは、3−(p−ビフェニル)−4−(p−エチルフェニル)−5−(p−tert−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール
この素子では、α−NPDをホール輸送層に、本発明のTPPBを電子輸送層に使用している。これら素子の物性は図13〜16に示す。
【0025】
実施例4〜5
TmPyPhB、TmPyPhTAZおよびTpPyPhBをそれぞれ電子輸送層として有機EL素子へ応用
素子構造:
ITO/α−NPD(50nm)/Alq3(40nm)/TpPyPhB(30nm)/LiF(0.5nm)/Al(100nm);(実施例4)
ITO/α−NPD(50nm)/Alq3(40nm)/TmPyPhB(30nm)/LiF(0.5nm)/Al(100nm);(実施例5)
同じフェニル中心骨格を有するTmPyPhB、TpPyPhBとTmiQPhBを電子輸送層として用いた素子の電流注入は似ていることであり、中にTmPyPhBは一番低電圧駆動である。
これら素子の物性データを表2〜4に示す。
【0026】
【表2】
Turn on voltage Max.は、最大発光開始電圧
Max.P.E.は、最大視感効率
Max.C.E.は、最大電流効率
Max.Q.E.は、最大外部量子効率
【表3】
PE:視感効率、QE:外部量子効率
【0027】
【表4】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で示される1,3,5−トリフェニルベンゼン誘導体を含有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【化15】
〔式中、Ar1は、ピリジル基である。〕
【請求項2】
前記1,3,5−トリフェニルベンゼン誘導体を電子輸送材料として使用したことを特徴とする請求項1記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項1】
下記一般式(1)で示される1,3,5−トリフェニルベンゼン誘導体を含有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【化15】
〔式中、Ar1は、ピリジル基である。〕
【請求項2】
前記1,3,5−トリフェニルベンゼン誘導体を電子輸送材料として使用したことを特徴とする請求項1記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−74711(P2012−74711A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−233311(P2011−233311)
【出願日】平成23年10月24日(2011.10.24)
【分割の表示】特願2005−200908(P2005−200908)の分割
【原出願日】平成17年7月8日(2005.7.8)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国などの委託成果にかかる特許出願(平成15年度新エネルギー・産業技術総合開発機構「高効率有機デバイスの開発」委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受けるもの)
【出願人】(394013644)ケミプロ化成株式会社 (63)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月24日(2011.10.24)
【分割の表示】特願2005−200908(P2005−200908)の分割
【原出願日】平成17年7月8日(2005.7.8)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国などの委託成果にかかる特許出願(平成15年度新エネルギー・産業技術総合開発機構「高効率有機デバイスの開発」委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受けるもの)
【出願人】(394013644)ケミプロ化成株式会社 (63)
【Fターム(参考)】
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