説明

1,4−ジオキサン分解菌の培養及び馴養方法、1,4−ジオキサン分解菌固定化担体の製造方法、廃水処理方法及び装置

【課題】活性を低下させることなく高速で増殖させることができ、良好な分解性能を発揮できる、廃水中の1,4−ジオキサン分解菌の培養方法と装置の提供。
【解決手段】1,4−ジオキサン分解菌を含む種汚泥を、有機物として1,4−ジオキサンのみを含む無機培地で培養した後、寒天培地で1,4−ジオキサン分解菌のコロニーを形成させて単離する単離工程と、単離した1,4−ジオキサン分解菌のコロニーを、1,4−ジオキサン以外の有機物を含む有機物培地で培養する培養工程と、を備えた方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は1,4−ジオキサン分解菌の培養及び馴養方法、1,4−ジオキサン分解菌固定化担体の製造方法、廃水処理方法及び装置に係り、特に、廃水中の1,4−ジオキサンを唯一の炭素源として分解除去する1,4−ジオキサン分解菌の培養及び馴養方法、1,4−ジオキサン分解菌固定化担体の製造方法、廃水処理方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
1,4-ジオキサンは一般的に溶剤等として使用されており、市販のポリオキシアルキルエーテルのような洗剤中にも含まれている。このため、1,4-ジオキサンを製造する工程からの廃水中、或いはポリエチレン系の製品を製造する工程や使用する工程からの廃水中に1,4-ジオキサンが含まれる。しかし、1,4−ジオキサンは水溶性の難分解物質であるため、各工場や下水処理場における生物処理や固液分離処理ではほとんど分解できず、水環境に対する汚染が懸念されている。
【0003】
一方、環境庁の行う指定化学物質の環境汚染調査において、1,4−ジオキサンは広い範囲で検出されており、特に、河川や湖沼等の水環境中での汚染が報告されている。また、地下水から高濃度のジオキサンが検出された例も報告されている。
【0004】
そして、平成16年4月の水道法の改正に伴い、飲料水基準として1,4−ジオキサンの規制値を0.05mg/Lとする内容が導入された。このようなことから、水環境中の1,4−ジオキサンを分解除去する必要性が高まっている。
【0005】
廃水中の1,4−ジオキサンを分解除去する方法としては、例えば、オゾン処理を主として、過酸化水素処理及び紫外線処理を併用し、OHラジカルの形成を促進する促進酸化法が提案されている(例えば、特許文献1〜3)。
【0006】
また、金属触媒下で過酸化水素水を添加して、OHラジカルを形成させるフェントン酸化法なども知られている。
【特許文献1】特開2001−029966号公報
【特許文献2】特開2001−121163号公報
【特許文献3】特開2000−202466号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1〜3のようなオゾン処理法やフェントン酸化法では、電力消費や薬品使用量が多く、ランニングコストがかかるという問題があった。
【0008】
一方、生物学的処理は、上記方法に比べてランニングコストが低くすることはできるが、1,4−ジオキサンは極めて分解し難い物質であるため、通常の生物学的処理では分解除去できなかった。
【0009】
そこで本願発明者らは、1,4−ジオキサンを効率的に分解する微生物(1,4−ジオキサン分解菌)に着目し、これを利用した生物学的処理を試みている。しかしながら、1,4−ジオキサン分解菌は極めて増殖が遅く、培養が困難であることが問題であった。
【0010】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、活性を低下させることなく高速で増殖させることができ、良好な1,4−ジオキサン分解性能を発揮できる1,4−ジオキサン分解菌の培養方法、及び1,4−ジオキサン分解菌の固定化担体を用いた廃水処理方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の請求項1は前記目的を達成するために、廃水中の1,4−ジオキサンを優先的に分解する1,4−ジオキサン分解菌の培養方法であって、前記1,4−ジオキサン分解菌を含む種汚泥を、有機物として1,4−ジオキサンのみを含む無機培地で培養した後、寒天培地で前記1,4−ジオキサン分解菌のコロニーを形成させて単離する単離工程と、前記単離した1,4−ジオキサン分解菌のコロニーを、前記1,4−ジオキサン以外の有機物を含む有機物培地で培養する培養工程と、を備えたことを特徴とする1,4−ジオキサン分解菌の培養方法を提供する。
【0012】
1,4−ジオキサンを唯一の炭素原として分解する1,4−ジオキサン分解菌は、THF(テトラヒドロフラン)の在下においてのみ1,4−ジオキサンを分解することで知られている(非特許文献Zenlcer,M.J.etal,(2000)Mineralization of 1,4-dioxixan in the presence of a structural along Biodegradation 11 p239-246 参照)。しかし、この1,4−ジオキサン分解菌の増殖速度は極めて遅いため、他の微生物の方が優先化しやすかった。また、菌数に対して1,4-ジオキサンを与えすぎても1,4−ジオキサン分解菌の分解速度が追いつかず、増殖しにくかった。
【0013】
本願発明者らは、上記1,4−ジオキサン分解菌に1,4−ジオキサン以外の有機物(具体的にはペプトン、肉エキス、グリセリン、カジトン、酵母エキス等の易分解性の有機物)を与えると、増殖速度が高くなることを見出した。
【0014】
本発明はこのような知見に基づいてなされたもので、請求項1によれば、1,4−ジオキサン分解菌の単離工程は、有機物として1,4−ジオキサンのみを含む無機培地で行うようにし、1,4−ジオキサン分解菌の培養工程は、上記1,4−ジオキサン以外の有機物(以下、単に「有機物」という)を含む有機物培地で行うようにした。
【0015】
これにより、1,4−ジオキサン分解菌以外の他の微生物の増殖が優先化するのを抑制し、1,4−ジオキサン分解菌を効率的に増殖させることができる。なお、1,4−ジオキサン分解菌を含む種汚泥としては、例えば、活性汚泥、土壌、廃水中に含まれる汚泥等が含まれる。なお、寒天培地としては、特に限定されないが、液体の無機培地に寒天を添加したものが好ましい。
【0016】
請求項2は請求項1において、前記培養工程の後に、前記有機物培地に1,4−ジオキサンを添加する1,4−ジオキサン添加工程を備えたことを特徴とする。
【0017】
1,4−ジオキサン分解菌は、有機物を与えることにより高速で増殖させることはできるが、有機物のみを与え続けると1,4−ジオキサン分解菌の活性が低下する。
【0018】
請求項2によれば、有機物を与えてある程度増殖させた1,4−ジオキサン分解菌に、1,4−ジオキサンを与えることにより、1,4−ジオキサン分解菌の活性を維持又は向上させることができる。
【0019】
請求項3は請求項2において、前記1,4−ジオキサン分解菌の菌数が1×10cells/mL以上となるまで、前記培養工程を行った後、前記1,4−ジオキサン添加工程を行うことを特徴とする。
【0020】
これにより、活性の高い1,4−ジオキサン分解菌を高速で培養することができる。
【0021】
請求項4は請求項2又は3において、前記1,4−ジオキサンの添加量は、前記有機物培地に対して1〜500mg/Lであることを特徴とする。
【0022】
請求項4によれば、1,4−ジオキサンの添加量を上記範囲とするので、1,4−ジオキサン分解菌の増殖を妨げることなく、活性を維持又は向上させることができる。なお、1,4−ジオキサンの添加量は、10〜200mg/Lであることがより好ましい。
【0023】
本発明の請求項5は前記目的を達成するために、廃水中の1,4−ジオキサンを優先的に分解する1,4−ジオキサン分解菌の培養方法であって、前記1,4−ジオキサン分解菌を含む種汚泥を、有機物として1,4−ジオキサンのみを含む無機培地で培養した後、寒天培地で前記1,4−ジオキサン分解菌のコロニーを形成させて単離する単離工程と、前記単離した1,4−ジオキサン分解菌のコロニーを、前記1,4−ジオキサンと、該1,4−ジオキサン以外の有機物とを含む有機物培地で培養する培養工程と、を備えたことを特徴とする1,4−ジオキサン分解菌の培養方法を提供する。
【0024】
請求項5によれば、単離した1,4−ジオキサン分解菌のコロニーを、有機物と1,4−ジオキサンをともに含む培地で培養するので、1,4−ジオキサン分解菌の活性を維持しつつ、高速で増殖させることができる。
【0025】
請求項6は請求項5において、前記有機物培地における前記1,4−ジオキサンの含有量は、1〜500mg/Lであることを特徴とする。
【0026】
このように、有機物培地における前記1,4−ジオキサンの含有量を上記範囲とすることで、1,4−ジオキサン分解菌の活性を維持し、かつより効率的に増殖させることができる。
【0027】
請求項7は請求項1〜6の何れか1項において、前記1,4−ジオキサン以外の有機物は、ペプトン、肉エキス、グリセリン、カジトン、酵母エキス等の易分解性の有機物であることを特徴とする。
【0028】
本発明の請求項8は前記目的を達成するために、廃水中の1,4−ジオキサンを優先的に分解する1,4−ジオキサン分解菌を固定化した1,4−ジオキサン分解菌固定化担体の製造方法であって、請求項1〜7の何れか1項に記載の培養方法により培養した1,4−ジオキサン分解菌を、担体材料に固定化することを特徴とする1,4−ジオキサン分解菌固定化担体の製造方法を提供する。
【0029】
本発明の請求項9は前記目的を達成するために、廃水中の1,4−ジオキサンを優先的に分解する1,4−ジオキサン分解菌を固定化した1,4−ジオキサン分解菌固定化担体の製造方法であって、有機物として前記1,4−ジオキサンのみを含む無機培地で培養した後、寒天培地で単離した1,4−ジオキサン分解菌のコロニーを、担体材料に固定化することを特徴とする1,4−ジオキサン分解菌固定化担体の製造方法を提供する。
【0030】
請求項8又は9によれば、高速で増殖させた活性の高い1,4−ジオキサン分解菌、又は単離した1,4−ジオキサン分解菌を担体材料に固定化する。これにより、上記1,4−ジオキサン分解菌を処理槽内に安定かつ高密度に投入できる。なお、担体材料としては、高分子ゲルやプラスチック材料等が挙げられる。
【0031】
請求項10は請求項8又は9において、前記1,4−ジオキサン分解菌固定化担体は、高分子ゲル内に1,4−ジオキサン分解菌を包括固定した包括固定化担体であることを特徴とする。
【0032】
請求項11は、請求項8〜10の何れか1項に記載の1,4−ジオキサン分解菌固定化担体の製造方法により製造したことを特徴とする1,4−ジオキサン分解菌固定化担体を提供する。
【0033】
請求項10又は11によれば、1,4−ジオキサン分解菌を高分子ゲル内に安定に固定できるだけでなく、処理槽内に高密度に投入できる。
【0034】
本発明の請求項12は前記目的を達成するために、廃水中の1,4−ジオキサンを優先的に分解する1,4−ジオキサン分解菌固定化担体の馴養方法であって、請求項8〜10の何れか1項に記載の製造方法で製造した1,4−ジオキサン分解菌固定化担体を、前記1,4−ジオキサン以外の有機物を含む水で馴養する第1の工程と、前記第1の工程の後、前記有機物を含む水に前記1,4−ジオキサンを添加する第2の工程と、を備えたことを特徴とする1,4−ジオキサン分解菌固定化担体の馴養方法を提供する。
【0035】
請求項12によれば、第1の工程では、主に、固定化担体内の1,4−ジオキサン分解菌の菌数を増加させ、第2の工程では、主に、1,4−ジオキサン分解活性を高めることができる。また、第1の工程において、有機物を与えることによって1,4−ジオキサン分解活性が低下しても、第2の工程において1,4−ジオキサンを添加することにより1,4−ジオキサン分解活性を補うことができる。
【0036】
なお、1,4−ジオキサンとしては、1,4−ジオキサンを含有する廃水も含まれる。
【0037】
請求項13は請求項12において、前記1,4−ジオキサン以外の有機物は、ペプトン、肉エキス、グリセリン、カジトン、酵母エキス等の易分解性の有機物であることを特徴とする。
【0038】
本発明の請求項14は前記目的を達成するために、廃水中の1,4−ジオキサンを分解除去する廃水処理方法であって、請求項1〜7の何れか1項に記載の培養方法により培養した1,4−ジオキサン分解菌を廃水に投入し、前記廃水中の1,4−ジオキサンを分解除去する廃水処理方法を提供する。
【0039】
本発明の請求項15は前記目的を達成するために、廃水中の1,4−ジオキサンを分解除去する廃水処理方法であって、請求項8〜10の何れか1項に記載の製造方法で製造した1,4−ジオキサン分解菌固定化担体を廃水に投入し、前記廃水中の1,4−ジオキサンを分解除去する廃水処理方法を提供する。
【0040】
請求項14又は15によれば、十分に増殖させ、かつ活性を付与した1,4−ジオキサン分解菌、又はその固定化担体を用いることにより、廃水中に投入後すぐに1,4−ジオキサンを分解除去することができる。
【0041】
本発明の請求項16は前記目的を達成するために、廃水中の1,4−ジオキサンを分解除去する廃水処理方法であって、請求項8〜10の何れか1項に記載の製造方法で製造した1,4−ジオキサン分解菌固定化担体を、前記1,4−ジオキサンを含有する廃水に投入する工程と、前記廃水に前記1,4−ジオキサン以外の有機物を添加することにより前記1,4−ジオキサン分解菌を培養する工程と、を備えたことを特徴とする廃水処理方法を提供する。
【0042】
請求項16によれば、1,4−ジオキサン分解菌固定化担体を用いた廃水処理において、有機物を添加する工程を設けたので、1,4−ジオキサン分解菌固定化担体の分解活性が低下した場合でも、担体内の1,4−ジオキサン分解菌を増殖させることができる。
【0043】
請求項17は請求項16において、前記有機物の添加量は、前記廃水に対して1〜100mg/Lとすることを特徴とする。
【0044】
請求項17によれば、廃水中に上記範囲を満たすように有機物を添加することにより、固定化担体内で1,4−ジオキサン分解菌を増殖させることができ、1,4−ジオキサン分解活性を向上することができる。
【0045】
請求項18は請求項16又は17において、前記有機物を添加することにより前記1,4−ジオキサン分解菌を培養する工程の後に、前記廃水に1,4−ジオキサンを添加する1,4−ジオキサン添加工程を備えたことを特徴とする。
【0046】
請求項18によれば、固定化担体内の1,4−ジオキサン分解菌の活性を高めることができ、分解活性を維持又は向上させることができる。
【0047】
請求項19は請求項14〜18の何れか1項において、前記1,4−ジオキサン以外の有機物は、ペプトン、肉エキス、グリセリン、カジトン、酵母エキス等の易分解性の有機物であることを特徴とする。
【0048】
本発明の請求項20は前記目的を達成するために、廃水中の1,4−ジオキサンを分解除去する廃水処理装置であって、前記廃水と、1,4−ジオキサン分解菌を含む包括固定化担体とを接触させることにより、前記廃水中の1,4−ジオキサンを分解処理する処理槽と、前記処理槽内の廃水の1,4−ジオキサン濃度を測定する濃度測定手段と、前記処理槽内に1,4−ジオキサン以外の有機物の添加量を調整する有機物添加量調整手段と、前記濃度測定手段の測定結果に基づいて、有機物添加量調整手段を制御する制御手段と、を備えたことを特徴とする廃水処理装置を提供する。
【発明の効果】
【0049】
本発明によれば、活性を低下させることなく高速で増殖させることができ、良好な1,4−ジオキサン分解性能を発揮できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0050】
以下、添付図面により本発明に係る1,4−ジオキサン分解菌の培養及び馴養方法、1,4−ジオキサン分解菌固定化担体の製造方法、廃水処理方法及び装置の好ましい実施の形態について詳説する。
【0051】
まず、1,4−ジオキサン分解菌の単離・培養工程について説明する。
【0052】
本発明における1,4−ジオキサン分解菌は増殖速度が極めて小さいため、単離工程において他の微生物が混入し、優先的に増殖しないようにする必要がある。そして、培養工程では、単離した1,4−ジオキサン分解菌の増殖を促すために、1,4−ジオキサン分解菌に有機物を与えることが重要である。
【0053】
このため、単離工程では、有機物として1,4−ジオキサンのみを含む無機培地を使用し、培養工程では1,4−ジオキサン以外の有機物を主に含む有機培地を使用する。以下、本実施形態では、培地とは、ゲル化した培地だけでなく、液体状の培養液も含むものとする。
【0054】
単離工程では、まず、無機培地に、濃度が10〜100mg/Lとなるよう1,4−ジオキサンを添加した培地100〜500mLに、1,4−ジオキサン分解菌を含む種汚泥(ジオキサンを含む廃水の廃水処理工程から採取した汚泥)を約500〜20000mg/L添加し、集積培養する。集積培養は、20〜30℃の条件下で、約1〜3ヶ月間行うことが好ましい。
【0055】
なお、1,4−ジオキサン分解菌の存在については、培地中の1,4−ジオキサン濃度変化を測定することにより確認できる。1,4−ジオキサン濃度の減少率が50%を超えた段階で、集積培養を終了することが好ましい。培地中の1,4−ジオキサン濃度は、公知の方法により測定できる(安部明美(1997)環境化学 vol.7 No1 p95-100)。
【0056】
集積培養を終了した後、上記無機培地に寒天を10〜15%添加した平板培地で、20〜35℃恒温下にて静置培養する。静置培養後、コロニーが形成されたことを確認することで、1,4−ジオキサン分解菌を単離することができる。
【0057】
1,4−ジオキサン分解菌を含む種汚泥としては、1,4−ジオキサンを含有する土壌であれば特に限定されないが、埋め立て処分場から採取した土壌、1,4−ジオキサンを使用する工場や廃水処理場の活性汚泥等が使用できる。
【0058】
無機培地を構成する無機物質としては、特に限定されないが、無機塩類(例えば、KHPO、(NHSO、MgSO・7HO、FeCl、CaCl、NaCl)が好ましい。
【0059】
培養工程では、上記のように単離した1,4−ジオキサン分解菌を、有機物を主成分とする有機培地で培養する。
【0060】
上記有機物としては、CGY培地、具体的には、ペプトン、肉エキス、グリセリン、カジトン、酵母エキス等の易分解性の有機物が好ましい。なお、上記有機物には、1,4−ジオキサンが含まれてもよい。
【0061】
培養は、1,4−ジオキサン分解菌の活性が約27℃で最も高いことから、培養温度は27℃が好ましく、水温としては約15〜35℃が好ましく、20〜30℃がより好ましい。培養時間は、約5〜30日間が好ましい。
【0062】
1,4−ジオキサン分解菌は、菌数が少ないうちに過剰に1,4−ジオキサンが与えられると増殖しにくく、一方、1,4−ジオキサンが全く与えられないと1,4−ジオキサン分解活性が低下する。
【0063】
このため、培養初期には1,4−ジオキサン以外の有機物を与え、1,4−ジオキサン分解菌の菌数がある程度増加した培養中期、後期において、1,4−ジオキサンを与えることが好ましい。すなわち、1,4−ジオキサン以外の有機物は、主に、1,4−ジオキサン分解菌の増殖を促すように機能し、1,4−ジオキサンは、主に、1,4−ジオキサン分解菌の分解活性を維持又は向上させるように機能する。
【0064】
1,4−ジオキサンの添加は、1,4−ジオキサン分解菌の菌数が1×10cells/mL以上となったときに行うことが好ましい。
【0065】
1,4−ジオキサンの添加量は、有機培地に対して1〜500mg/L以上であり、10〜200mg/L以上とすることが好ましい。
【0066】
これは、1,4−ジオキサンが1mg/L未満であると、1,4−ジオキサン分解菌の分解活性を復活させる効果が小さくなるためである。また、1,4−ジオキサンが200mg/L以上になると分解活性がそれ以上変わらなくなり、1000mg/Lとしても200mg/Lのときと同等であるためである。
【0067】
また、培地を無害な状態で廃棄するために、培地中の1,4−ジオキサン濃度をできるだけ低くする必要がある。このため、1,4−ジオキサンの添加は、1,4−ジオキサン分解菌の菌数や活性の程度に応じて、少量ずつ行うのが好ましい。
【0068】
なお、培養初期から、1,4−ジオキサンを有機培地に含有させてもよい。この場合、1,4−ジオキサンの含有量は、上記と同様にすることができる。
【0069】
培養した1,4−ジオキサン分解菌は、そのまま処理槽内の1,4−ジオキサンを含む廃水に投入して使用することもできるが、より高密度に廃水中に投入するために、1,4−ジオキサン分解菌を担体材料に固定化したものを使用することが好ましい。
【0070】
以下、1,4−ジオキサン分解菌を固定化する方法について説明する。
【0071】
1,4−ジオキサン分解菌の固定化方法としては、主に、付着固定化方法と包括固定化方法とがあるが、付着固定化方法では菌を担体材料に安定に付着させ難いため、包括固定化方法を採用することが好ましい。
【0072】
付着固定化担体は、プラスチック等の担体材料に1,4−ジオキサン分解菌を付着させたものである。付着用の担体材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等の球状、角状、円筒状のものや、発砲体や網状のものが好ましい。付着固定化担体の大きさは、球相当径で1〜10mmであることが好ましい。また、粒径が1mm未満のグラニュール状のものも使用できる。
【0073】
包括固定化担体は、高分子ゲル内に1,4−ジオキサン分解菌を包括固定したペレット状のものである。
【0074】
図1は、包括固定化担体の製造方法の流れを説明する図である。図1に示すように、まず、モノマー材料、プレポリマー材料等の固定化材料と、1,4−ジオキサン分解菌とを混合し、pHを中性付近(6.5〜8.5)に調整した混合液を調製する。次いで、前記混合液に過硫酸カリウム等の重合開始剤を添加して攪拌した後、直ちにシート形状又はブロック形状にゲル化させる(重合させる)。重合温度は、15〜40℃が好ましく、20〜30℃がより好ましい。重合時間は1〜60分が好ましく、10〜60分がより好ましい。そして、ゲル化させたシート又はブロックを所定のサイズ(例えば、略3mm角の立方体状)に切断し、本発明に係る包括固定化担体を得ることができる。
【0075】
上記モノマー材料としては、特に限定されないが、アクリルアミド、メチレンビスアクリルアミド、トリアクリルフォルマール等が好ましく使用できる。
【0076】
プレポリマー材料としては、特に限定されないが、ポリエチレングリコールジアクリレートやポリエチレングリコールメタアクリレート、及びこれらの誘導体を好ましく使用できる。
【0077】
包括固定化担体の形状は、特に限定されることはなく、角状、筒状等の任意の形状を採ることができる。また、包括固定化型担体の大きさは、球相当径として1〜10mmであることが好ましい。包括固定化担体の製造方法は、上記した方法に限らず、チューブ成形法、滴下造粒法等を採用することもできる。
【0078】
次に、1,4−ジオキサン分解菌固定化担体の馴養方法、及び廃水処理方法について説明する。
【0079】
なお、1,4−ジオキサン分解菌を包括固定化した包括固定化担体を使用する例で説明するが、これに限定されず、付着固定化担体を使用する場合や、直接1,4−ジオキサン分解菌を使用する場合にも適用できる。
【0080】
処理槽内に包括固定化担体を投入した直後は、包括固定化担体の1,4−ジオキサン分解性能は低いことが多い。1,4−ジオキサンの分解活性を定常運転のレベルまで短時間で向上させるために、馴養運転を行うことが好ましい。
【0081】
馴養運転は、廃水中に上述した有機物(ペプトン、肉エキス、…等)を添加することにより行うことが好ましく、有機物を添加して菌数を増やした後、1,4−ジオキサンを添加して分解活性を向上させることがより好ましい。
【0082】
有機物の添加量は、廃水に対して1〜100mg/Lであることが好ましく、1〜10mg/Lであることがより好ましい。
【0083】
図2は、本発明に係る1,4−ジオキサン分解菌の包括固定化担体を用いた廃水処理装置の概略構成を説明する図である。
【0084】
図2に示すように、廃水処理装置10は、主に、本発明に係る包括固定化担体12が充填され、原水中の1,4−ジオキサンを分解する処理槽14と、該処理槽14内に上記原水を導入する導入配管16と、処理槽14内から処理水を排出する排出配管18と、を備えている。
【0085】
処理槽14内には、包括固定化担体12が排出配管18から系外へ漏れ出さないようにするためにスクリーン20が設けられている。
【0086】
また、廃水中の1,4−ジオキサン濃度を測定する濃度測定手段22と、有機物を処理槽14内に添加するための有機物貯留タンク24と、制御手段26とが設けられている。
【0087】
濃度測定手段22は、廃水中の1,4−ジオキサン濃度を測定し、測定結果は制御手段26に出力される。制御手段26は、測定結果に基づいてバルブ28(有機物添加量調整手段)の開度を調節し、有機物を適切な量だけ処理槽14内に添加できるようになっている。なお、濃度測定手段22としては、公知のものが使用できる(特別な方法であれば記載下さい)。
【0088】
1,4−ジオキサン分解菌の包括固定化担体12の処理槽14内での充填率は、5〜30%とすることが好ましい。
【0089】
このような構成により、1,4−ジオキサンを含む原水は、導入配管16から処理槽14内に導入される。処理槽14内の原水は、包括固定化担体12の作用により1,4−ジオキサンが分解除去され、排出配管18から排出される。
【0090】
馴養運転では、濃度測定手段22により、処理槽14内の廃水中の1,4−ジオキサン濃度が測定される。このとき、1,4−ジオキサン濃度の減少率が小さく、分解活性が低いと判断されると、制御手段26によりバルブ28の開度が調節され、有機物が処理槽14内に添加される。
【0091】
1,4−ジオキサン分解菌の活性が約27℃で最も高いことから、馴養温度は27℃が好ましく、水温としては約15〜35℃が好ましく、20〜30℃がより好ましい。馴養は、1,4−ジオキサンの分解速度が定常運転レベルになるまで行うことが好ましい。
【0092】
このようにして馴養した包括固定化担体を使用することにより、廃水中の1,4−ジオキサンの分解性能を定常運転のレベルまで短時間で高められるとともに、高い分解性能を維持することができる。
【0093】
定常運転は、上述の馴養運転と同様の温度範囲で行うことができる。廃水中のpHは、特に限定しないが、中性付近とすることが好ましい。
【0094】
これにより、1,4−ジオキサン分解活性を早期に立ち上げることができ、定常運転においても高い分解活性を維持できる。
【0095】
図3は、本発明における廃水処理装置の別態様を説明する図である。なお、図2と同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0096】
図3の廃水処理装置10’は、更に1,4−ジオキサンを貯留するタンク30と、1,4−ジオキサンの添加量を調節するバルブ34とを備え、制御手段26の代わりに有機物と1,4−ジオキサンの添加量を制御する制御手段32を備えた以外は図2とほぼ同様に構成される。
【0097】
制御手段32は、濃度測定手段22での測定結果に基づいて、バルブ28、34の開度を調節し、有機物や1,4−ジオキサンを適切な量だけ処理槽14内に添加できるようになっている。
【0098】
これにより、有機物を添加して処理槽14内の1,4−ジオキサン分解菌の菌数を増やした後、更に1,4−ジオキサンを添加して分解活性を向上させることができる。したがって、1,4−ジオキサン分解活性を早期に立ち上げることができ、定常運転においても高い分解活性を維持できる。
【0099】
なお、馴養運転だけでなく、定常運転において1,4−ジオキサン分解活性が低下したときにも、上記の方法が適用できる。
【0100】
以上のように、本発明の1,4−ジオキサン分解菌の培養及び馴養方法、1,4−ジオキサン分解菌固定化担体の製造方法、廃水処理方法を適用することにより、これまで生物学的な分解が困難であった1,4−ジオキサンを生物学的に分解除去することができる。具体的には、処理槽1mあたりの1,4−ジオキサンの分解速度を、1日あたり10g以上、即ち10g/m/日以上の高速処理が可能となる。
【0101】
以上、本発明に係る1,4−ジオキサン分解菌の培養及び馴養方法、1,4−ジオキサン分解菌固定化担体の製造方法、廃水処理方法及び装置の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、各種の態様が採り得る。
【0102】
上記実施形態では、単離した1,4−ジオキサン分解菌をある一定レベルの菌数になるまで培養した後、包括固定化担体として使用する例について説明したが、これに限定されない。たとえば、単離した1,4−ジオキサン分解菌を十分に培養しないで包括固定化担体にした場合でも、該包括固定化担体を上記のように馴養することで1,4−ジオキサンの分解性能を短時間で高めることができる。要は、単離した1,4−ジオキサン自体又はその固定化担体を定常運転で使用するまでの間に、少なくとも1,4−ジオキサン以外の有機物を与えて1,4−ジオキサン分解菌を増殖させ、かつ1,4−ジオキサンを与えて分解活性を維持又は向上させるようにすればよい。
【0103】
上記実施形態では、包括固定化担体を作製後、1,4−ジオキサンを含む廃水で馴養した後、同じ処理槽内で引き続き定常運転する例について説明したが、これに限定されず、他の処理槽内で馴養した後、定常運転を行っている別の処理槽に移して使用することもできる。
【0104】
上記実施形態では、培養工程、包括固定化担体、廃水処理工程(馴養運転、定常運転)についてそれぞれ説明したが、これらの工程は個別に行ってもよいし、任意に組み合わせて行ってもよい。特に、培養工程では、1,4−ジオキサン分解菌を人工的に培養し、馴養工程では、廃水の性質や運転条件に1,4−ジオキサン分解菌又はその包括固定化担体を適用させる上で、図4のブロック図に示すように、上記全ての工程を行うことが好ましい。
【実施例】
【0105】
[実施例1]
化学工場の廃水処理場の活性汚泥を採取し、表1に示す液体の無機培地に、1,4−ジオキサンを100mg/Lとなるように添加した培地を用いて集積培養を行った。なお、表1の無機培地のpHは7.0であった。
【0106】
【表1】

【0107】
集積培養を26℃で約6ヶ月間行なった後、培養液中の1,4−ジオキサン濃度を測定したところ、1,4−ジオキサン濃度の低下を確認し、これにより、1,4−ジオキサン分解菌の活性を確認した。
【0108】
次いで、表1に示す液体の無機培地に寒天を15%添加して常温で固めて平板培地とし、1,4−ジオキサン分解菌の単離操作を行った。そして、数種類のコロニーが形成され、1,4−ジオキサン分解菌を単離することができた。
【0109】
さらに、このコロニーを1Lの三角フラスコに入れ、無機培地500mLを注入し、1,4−ジオキサンを50mg/Lとなるように添加した。その後、26℃で1ヶ月間培養し、1,4−ジオキサン分解菌の菌培養液を得た。
【0110】
このように単離・培養した1,4−ジオキサン分解菌を、1.2×10cells/mLとなるように表3に示す各組成の培地に添加し、培養試験を行った。培養条件としては、300mLの三角フラスコに表3に示す各培地(液体)を100mL注入し、27℃に保温して浸とう培養した。培養開始後5日後に培養液中の菌数濃度を測定した。なお、表2は、CGY培地(有機物培地)の組成を示す。この結果を図5に示す。
【0111】
【表2】

【0112】
【表3】

【0113】
図5に示すように、培養開始後5日後の1,4−ジオキサン分解菌の菌数は、試験1では9.1×10cells/mLであり、試験2では4.2×10cells/mLであり、試験3では4.0×10cells/mLであった。このように、培地に有機物を添加して培養することにより、1,4−ジオキサン分解菌を高速で培養できることがわかった。
【0114】
次に、試験1、2及び3で培養した1,4−ジオキサン分解菌の1,4−ジオキサン分解活性について評価した。
【0115】
培養した1,4−ジオキサン分解菌を遠心濃縮機により沈殿させて回収した。この1,4−ジオキサン分解菌を用いて、1,4−ジオキサン分解試験を行った。
【0116】
試験では、200mLの三角フラスコに、1,4−ジオキサンを100mg/L含む無機培地を50mL注入した。これを3系用意し、試験1、2、3でそれぞれ培養した1,4−ジオキサン分解菌を1×10cells/mLとなるように各系に注入した。
【0117】
次いで、上記の3系について、27℃の恒温室内で5日間浸とう培養を行った。その後、各系において残留する1,4−ジオキサン濃度を測定し、以下の式より1,4−ジオキサン除去率を求めた。
【0118】
1,4−ジオキサン除去率(%)=(試験前の1,4−ジオキサン濃度−試験後の1,4−ジオキサン濃度)/(試験前の1,4−ジオキサン濃度)×100
この結果を表4に示す。
【0119】
【表4】

【0120】
表4に示すように、1,4−ジオキサンと有機物をいずれも添加して培養した試験2が、1,4−ジオキサン分解菌が最も増殖することができ、1,4−ジオキサンの分解活性も高いことがわかった。
【0121】
[実施例2]
1,4−ジオキサン分解菌を培養した菌培養液50mLを用いて、以下の組成に基づいて3種類の包括固定化担体を作製した。
【0122】
(包括固定化担体の組成)
1,4−ジオキサン分解菌の菌数:2×10cells/mL
固定化材料:アクリルアミド 15質量%
重合促進剤:NNN’N’テトラメチルエチレンジアミン 0.5質量%
重合開始剤:過硫酸カリウム 0.25質量%
上記のように、1,4−ジオキサン分解菌を固定化材料(アクリルアミド液)に添加及び混合して懸濁液を調製した。次いで、懸濁液に過硫酸カリウム、NNN’N’テトラメチルエチレンジアミンを添加して、重合温度10℃、重合時間5分でゲル化(重合)させた。そして、ゲル化させた担体を約3mm径の球状に成形してペレット化し、これにより本例の包括固定化担体を作製した。
【0123】
このようにして作製した各包括固定化担体について、表4に示す各廃水で馴養を行った。馴養運転は、水温27℃、滞留時間1日とし、30日間行った。その後、31日目に、各包括固定化担体を表1の無機培地に1,4−ジオキサンを100mg/L添加した廃水に移し変えて、定常運転を行った。このときの1,4−ジオキサン除去率を測定し、1,4−ジオキサン分解菌の処理性能を評価した。なお、1,4-ジオキサン濃度は、GC/MS法により測定した。この結果を表5に示す。
【0124】
【表5】

【0125】
表5に示すように、有機物を含み、かつ1,4−ジオキサンを添加した廃水中で馴養した試験4の包括固定化担体は、定常運転において1,4−ジオキサン除去率が95%と最も高かった。また、有機物は添加せず、1,4−ジオキサンを添加した廃水中で馴養した試験3の包括固定化担体でも、1,4−ジオキサン除去率が52%と比較的良好であった。
【0126】
一方、1,4−ジオキサンを含まない廃水で馴養した試験5の包括固定化担体は、定常運転において1,4−ジオキサン除去率が5%と最も低かった。
【0127】
引き続き定常運転を行い、40日目には試験5の包括固定化担体は1,4−ジオキサン除去率が95%まで上昇し、試験3の包括固定化担体は1,4−ジオキサン除去率が70%まで上昇した。
【0128】
以上から、馴養運転で有機物と1,4−ジオキサンの双方を与えた試験4の包括固定化担体が、最も処理性能の立ち上がりが早く、かつ高い分解活性を示すことがわかった。また、馴養運転で有機物を与えた試験3の包括固定化担体の方が、馴養運転で有機物を与えなかった試験5の包括固定化担体よりも高い分解活性(処理性能)を示すことがわかった。
【0129】
このように、本発明を適用することにより、1,4−ジオキサンの分解性能の立ち上がりを早くできるとともに、高い分解活性を示すことがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0130】
【図1】本発明に係る包括固定化担体の製造方法の流れを説明する図である。
【図2】本発明に係る廃水処理装置の概略構成を説明する図である。
【図3】本発明に係る廃水処理装置の別態様を説明する図である。
【図4】本発明における工程を示すブロック図である。
【図5】本実施例における培養試験の結果を示すグラフ図である。
【符号の説明】
【0131】
10…廃水処理装置、12…包括固定化担体、14…処理槽、16…導入配管、18…排出配管、20…スクリーン、22…1,4−ジオキサン濃度測定手段、24…有機物貯留タンク、26、32…制御手段、28、34…バルブ、34…1,4−ジオキサン貯留タンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃水中の1,4−ジオキサンを優先的に分解する1,4−ジオキサン分解菌の培養方法であって、
前記1,4−ジオキサン分解菌を含む種汚泥を、有機物として1,4−ジオキサンのみを含む無機培地で培養した後、寒天培地で前記1,4−ジオキサン分解菌のコロニーを形成させて単離する単離工程と、
前記単離した1,4−ジオキサン分解菌のコロニーを、前記1,4−ジオキサン以外の有機物を含む有機物培地で培養する培養工程と、
を備えたことを特徴とする1,4−ジオキサン分解菌の培養方法。
【請求項2】
前記培養工程の後に、前記有機物培地に1,4−ジオキサンを添加する1,4−ジオキサン添加工程を備えたことを特徴とする請求項1に記載の1,4−ジオキサン分解菌の培養方法。
【請求項3】
前記1,4−ジオキサン分解菌の菌数が1×10cells/mL以上となるまで、前記培養工程を行った後、前記1,4−ジオキサン添加工程を行うことを特徴とする請求項2に記載の1,4−ジオキサン分解菌の培養方法。
【請求項4】
前記1,4−ジオキサンの添加量は、前記有機物培地に対して1〜500mg/Lであることを特徴とする請求項2又は3に記載の1,4−ジオキサン分解菌の培養方法。
【請求項5】
廃水中の1,4−ジオキサンを優先的に分解する1,4−ジオキサン分解菌の培養方法であって、
前記1,4−ジオキサン分解菌を含む種汚泥を、有機物として1,4−ジオキサンのみを含む無機培地で培養した後、寒天培地で前記1,4−ジオキサン分解菌のコロニーを形成させて単離する単離工程と、
前記単離した1,4−ジオキサン分解菌のコロニーを、前記1,4−ジオキサンと、該1,4−ジオキサン以外の有機物とを含む有機物培地で培養する培養工程と、
を備えたことを特徴とする1,4−ジオキサン分解菌の培養方法。
【請求項6】
前記有機物培地における前記1,4−ジオキサンの含有量は、1〜500mg/Lであることを特徴とする請求項5に記載の1,4−ジオキサン分解菌の培養方法。
【請求項7】
前記1,4−ジオキサン以外の有機物は、ペプトン、肉エキス、グリセリン、カジトン、酵母エキス等の易分解性の有機物であることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の1,4−ジオキサン分解菌の培養方法。
【請求項8】
廃水中の1,4−ジオキサンを優先的に分解する1,4−ジオキサン分解菌を固定化した1,4−ジオキサン分解菌固定化担体の製造方法であって、
請求項1〜7の何れか1項に記載の培養方法により培養した1,4−ジオキサン分解菌を、担体材料に固定化することを特徴とする1,4−ジオキサン分解菌固定化担体の製造方法。
【請求項9】
廃水中の1,4−ジオキサンを優先的に分解する1,4−ジオキサン分解菌を固定化した1,4−ジオキサン分解菌固定化担体の製造方法であって、
有機物として前記1,4−ジオキサンのみを含む無機培地で培養した後、寒天培地で単離した1,4−ジオキサン分解菌のコロニーを、担体材料に固定化することを特徴とする1,4−ジオキサン分解菌固定化担体の製造方法。
【請求項10】
前記1,4−ジオキサン分解菌固定化担体は、高分子ゲル内に1,4−ジオキサン分解菌を包括固定した包括固定化担体であることを特徴とする請求項8又は9に記載の1,4−ジオキサン分解菌固定化担体の製造方法。
【請求項11】
請求項8〜10の何れか1項に記載の1,4−ジオキサン分解菌固定化担体の製造方法により製造したことを特徴とする1,4−ジオキサン分解菌固定化担体。
【請求項12】
廃水中の1,4−ジオキサンを優先的に分解する1,4−ジオキサン分解菌固定化担体の馴養方法であって、
請求項8〜10の何れか1項に記載の製造方法で製造した1,4−ジオキサン分解菌固定化担体を、前記1,4−ジオキサン以外の有機物を含む水で馴養する第1の工程と、
前記第1の工程の後、前記有機物を含む水に前記1,4−ジオキサンを添加する第2の工程と、
を備えたことを特徴とする1,4−ジオキサン分解菌固定化担体の馴養方法。
【請求項13】
前記1,4−ジオキサン以外の有機物は、ペプトン、肉エキス、グリセリン、カジトン、酵母エキス等の易分解性の有機物であることを特徴とする請求項12に記載の1,4−ジオキサン分解菌固定化担体の馴養方法。
【請求項14】
廃水中の1,4−ジオキサンを分解除去する廃水処理方法であって、
請求項1〜7の何れか1項に記載の培養方法により培養した1,4−ジオキサン分解菌を廃水に投入し、前記廃水中の1,4−ジオキサンを分解除去する廃水処理方法。
【請求項15】
廃水中の1,4−ジオキサンを分解除去する廃水処理方法であって、
請求項8〜10の何れか1項に記載の製造方法で製造した1,4−ジオキサン分解菌固定化担体を廃水に投入し、前記廃水中の1,4−ジオキサンを分解除去する廃水処理方法。
【請求項16】
廃水中の1,4−ジオキサンを分解除去する廃水処理方法であって、
請求項8〜10の何れか1項に記載の製造方法で製造した1,4−ジオキサン分解菌固定化担体を、前記1,4−ジオキサンを含有する廃水に投入する工程と、
前記廃水に前記1,4−ジオキサン以外の有機物を添加することにより前記1,4−ジオキサン分解菌を培養する工程と、
を備えたことを特徴とする廃水処理方法。
【請求項17】
前記有機物の添加量は、前記廃水に対して1〜100mg/Lとすることを特徴とする請求項16に記載の廃水処理方法。
【請求項18】
前記有機物を添加することにより前記1,4−ジオキサン分解菌を培養する工程の後に、前記廃水に1,4−ジオキサンを添加する1,4−ジオキサン添加工程を備えたことを特徴とする請求項16又は17に記載の廃水処理方法。
【請求項19】
前記1,4−ジオキサン以外の有機物は、ペプトン、肉エキス、グリセリン、カジトン、酵母エキス等の易分解性の有機物であることを特徴とする請求項14〜18の何れか1項に記載の廃水処理方法。
【請求項20】
廃水中の1,4−ジオキサンを分解除去する廃水処理装置であって、
前記廃水と、1,4−ジオキサン分解菌を含む包括固定化担体とを接触させることにより、前記廃水中の1,4−ジオキサンを分解処理する処理槽と、
前記処理槽内の廃水の1,4−ジオキサン濃度を測定する濃度測定手段と、
前記処理槽内に1,4−ジオキサン以外の有機物の添加量を調整する有機物添加量調整手段と、
前記濃度測定手段の測定結果に基づいて、有機物添加量調整手段を制御する制御手段と、
を備えたことを特徴とする廃水処理装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2008−306939(P2008−306939A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−155128(P2007−155128)
【出願日】平成19年6月12日(2007.6.12)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【Fターム(参考)】