説明

1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンの製造方法

【課題】 優れた光学特性、高透明性や耐熱性、電気特性、機械特性等を有する樹脂の原料となる1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンの工業的に有利な製造法を提供する。
【解決手段】 安価なテトラヒドロインデンの脱水素反応により得られるインデン混合物を用いてジシクロペンタジエンおよび/またはシクロペンタジエンとを反応原料としてディールス・アルダー反応を行い、次いでその反応混合物を蒸留精製して1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンを製造する。またインデン混合物中のインダンをディールス・アルダー反応時の溶媒として利用し、ディールス・アルダー反応生成物から回収されるインダン留分を再度脱水素反応することでインデン混合物として再利用する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電気絶縁材料、電子部品、光学材料、医療用器材などに用いられる環状オレフィン(コ)ポリマ−の原料として有用な1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】環状オレフィン( コ) ポリマ−は、優れた光学特性、高透明性や耐熱性、電気特性、機械特性等を有するポリマ−として注目されている。その原料としてノルボルネン類やテトラシクロドデセン類、また1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン等の環状オレフィンは有用であり、これらの環状オレフィンは有機金属錯体触媒を用いて重合される。
【0003】その重合方法は大別して2つあげることができる。ひとつは、チーグラー触媒やメタロセン触媒を用いる付加型重合で、環状オレフィンのオレフィン部位での単独重合または低級α−オレフィンとの共重合を行うものである。もうひとつは、メタセシス重合触媒系を用いる開環メタセシス重合であり、また得られる重合物を更に水素化あるいは環化して水素化物を得る場合もあり、何れも光学特性や電気特性等に優れた樹脂が得られることが知られている。
【0004】従来、ノルボルネン類はオレフィン類とシクロペンタジエンおよび/またはジシクロペンタジエンとを、またテトラシクロドデセン類は、オレフィン類とシクロペンタジエンおよび/またはジシクロペンタジエンとノルボルネン類とを加熱し、ディ−ルス・アルダ−反応させることにより製造されている。また、1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンを製造する方法としては、インデンとシクロペンタジエンおよび/またはジシクロペンタジエンとをディールス・アルダー反応させる方法が、特表2000−506183号公報、特開平2−255715号公報、特開平2−185520号公報、特開2000−26331号公報等に開示されている。
【0005】ここで、1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンの合成原料となるインデンは高温石炭タール中に約1%程度含まれており精密蒸留により得ている。なお、オレフィン製造における熱分解残油中にもインデンは含まれているが、これからの採取は行われていない。さらに、インデンを合成により製造する方法としては、テトラヒドロインデンの脱水素反応を行う方法があり、コバルト・モリブデン酸化物触媒の存在下で脱水素反応を行う方法が、米国特許4,292,455号、米国特許4,291,181号、特開2000−63298号、特開2000−63299号等に開示されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】上記のように、従来、環状オレフィンである1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンは、工業的に各種精製方法により精製された高純度なインデンを原料に用い、シクロペンタジエンおよび/またはジシクロペンタジエンと加熱しディールス・アルダー反応させて製造するのが一般的であり、原料に制限があり製造コストが高く、高価にならざるをえなかった。
【0007】また、高純度のインデンを得ようとする場合、粗インデン中に通常含まれており沸点がインデンと近接するインダンを除去するため、理論段数の高い蒸留塔による精密蒸留を行わなければならない。このとき、インデンは熱的に重合しやすく、蒸留中に重合反応等によりインデンが減少する等の問題がある。さらに、インデンとシクロペンタジエンおよび/またはジシクロペンタジエンのディールス・アルダー反応を溶媒非存在下で行った場合、シクロペンタジエンの3量体や4量体等(以下、シクロペンタジエン多量体と称する)が生成して反応液の粘度が上昇し、反応器等のファウリングの原因となったり、反応熱の除去が不充分となるなどの問題が生じるため、溶媒を用いて反応を行う必要があった。
【0008】本発明の課題は、高純度のインデンを使用することなく、また溶媒を用いる必要がなく、製造コストが低く工業的に有利な1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンの製造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、工業的に実施されている各種の製造プロセスにおいて多量に副生する安価なテトラヒドロインデンの脱水素反応により得られるインデン混合物をそのまま使用し、シクロペンタジエンおよび/またはジシクロペンタジエンとのディールス・アルダー反応を行うことにより、高純度のインデンを得るため蒸留精製する必要がなく、しかもインデン混合物中のインダンが反応溶媒として機能するため新たに溶媒を添加する必要がなく、1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンを安価に製造することができることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0010】すなわち、本発明の請求項1は、テトラヒドロインデンの脱水素反応により得られるインデン混合物とシクロペンタジエンおよび/またはジシクロペンタジエンとを反応原料としてディールス・アルダー反応を行い、次いでその反応混合物の蒸留精製を行うことを特徴とする1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンの製造方法である。
【0011】本発明の請求項2は、請求項1に記載の製造方法において、前記ディールス・アルダー反応において、反応原料中のシクロペンタジエンのモル数の1/2倍量とジシクロペンタジエンのモル数の合計を1としてインデンをその1〜100倍モルの割合とし、反応温度100〜350℃、反応圧力0.1〜20MPa、滞留時間0.1〜360分の条件下で反応させることを特徴とする。
【0012】本発明の請求項3は、請求項1または請求項2に記載の製造方法において、前記テトラヒドロインデンの脱水素反応により得られるインデン混合物中のインダン含有量が20質量%以上70質量%以下であることを特徴とする。
【0013】本発明の請求項4は、請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法において、前記ディールス・アルダー反応の結果得られる反応混合物から、インダンを主として含む留分を回収し、該留分を用いて脱水素反応を行うことによりインデン混合物を得ることを特徴とする。
【0014】
【発明の実施の形態】以下、本発明について具体的に説明する。本発明の出発原料であるテトラヒドロインデンは、ブタジエンとシクロペンタジエンおよび/またはジシクロペンタジエンとのディールス・アルダー反応により目的生産することができる。このディールス・アルダー反応は、1モルのブタジエンと1/2モルのジシクロペンタジエンあるいは1モルのシクロペンタジエンが加熱により付加反応して進行する。反応は酸触媒等を用いて促進することができるが、通常は加熱だけで十分であり、反応温度は70〜270℃で行う。
【0015】さらには、各種商業的なディールスアルダー反応における副生成物を利用することができる。例えば、EPDM用の第三として大量生産されているエチリデンノルボルネンの中間体であるビニルノルボルネンは、ブタジエンとシクロペンタジエンおよび/またはジシクロペンタジエンとのディールス・アルダー反応で得られている。そして、この反応粗生成物からビニルノルボルネンを蒸留回収した残分中にテトラヒドロインデンが含まれている。ビニルノルボルネンの生産時以外にもテトラヒドロインデンとテトラヒドロインデン以外の成分を含む副生成物が得られる場合もあり、この副生成物も原料とすることができる。しかし、テトラヒドロインデンの純度は50%以上が好ましく、またこれらを精留することにより90%以上にして用いることが更に好ましい。さらには、ビニルノルボルネンは100℃程度に加熱することにより、ニッケルおよびモリブデンの酸化物を含む固体触媒の存在下において容易にテトラヒドロインデンに異性化する。
【0016】従って、ビニルノルボルネンも本発明のインデン製造のための原料として用いることができる。すなわち、ビニルノルボルネンをテトラヒドロインデンに異性化させ、これを原料として用いることもできるし、また反応中にテトラヒドロインデンに異性化するなら、あらかじめ異性化させることなくビニルノルボルネンを直接脱水素の反応系内に供給し、これを原料とすることもできる。したがって、本発明の方法においてはテトラヒドロインデンとビニルノルボルネンの混合物を原料とすることもできる。
【0017】(脱水素反応)テトラヒドロインデンからインデンを製造する方法には、テトラヒドロインデンを一旦インダンにしたのちインダンをインデンにする二段階の脱水素反応を経る方法と、テトラヒドロインデンを直接一段階でインデンに脱水素する方法とがあり、どちらの方法も採用することができる。しかし、二段階で脱水素する方法に比べ、一段階でインデンに脱水素する方法ではテトラヒドロインデンに対して生成するインデンの収率が低いため、二段階で脱水素する方法が好ましい。テトラヒドロインデンから二段階の脱水素反応でインデンを製造する方法は、第一工程および第二工程からなり、第一工程はテトラヒドロインデンを脱水素することにより主としてインダンを得る工程であり、第二工程は第一工程から得られる反応生成物を脱水素することによりインデンを得る工程である。
【0018】(第一工程)二段階からなる脱水素反応の第一工程においてはテトラヒドロインデンを脱水素することにより主としてインダンを得ることを目的とするが、生成したインダンがさらに脱水素したインデンも副生する。しかし、インデン濃度が高くなるとコーキングによる脱水素触媒の活性低下が激しくなり、長時間の連続運転が困難になる。従って生成物中のインデン濃度は10%以下、好ましくは5%以下がよい。
【0019】また第一工程においては、インダンを製造すると同時に、テトラヒドロインデンの転化率を高くする必要がある。すなわち生成物中の未反応テトラヒドロインデンは次の第二工程の反応において、逆ディールス・アルダー反応によりシクロペンタジエンとブタジエンに分解するため、収率が低下し、またこれが原因となって脱水素触媒の活性が低下する。したがって第一工程てはテトラヒドロインデンの転化率を高くすることが好ましい。
【0020】なお、第一工程からの生成物を蒸留することによりテトラヒドロインデン含有量を低減させて、第二工程に供給することも可能である。しかしながら、生成物中のテトラヒドロインデン、インダン、インデン等は沸点が近接する化合物であるため、生成物からテトラヒドロインデンのみを選択的に蒸留により除去して含有量を低減させることは、工業的にはかなり困難である。したがって、好ましくは第一工程からの生成物は、ガス分離程度の処理のみを行って、蒸留等による分離精製を行うことなく第二工程へ供給する。このため、第一工程においてテトラヒドロインデンの転化率を高くし、その結果としてテトラヒドロインデン含有量の低い生成物を第一工程から得て、これを第二工程へ供給するのが好ましい。このような観点から、第一工程においてテトラヒドロインデンの転化率は70%以上であることが好ましく、更に好ましくは80%以上である。
【0021】上記の条件を満たすために、反応温度は、触媒と原料との接触時間や原料と希釈剤の希釈モル比などに応じて適宜に選択する。脱水素反応は強い吸熱反応であるため、反応温度は高温の方が有利である。反応温度は400〜600℃、好ましくは450〜520℃の範囲である。400℃よりも低い温度では脱水素反応がほとんど進行せず、600℃を超えると原料であるテトラヒドロインデンの分解やインデン濃度の増加などが生じるため好ましくない。
【0022】反応圧力は原料あるいは生成物が気化し得る範囲であれば特に制限はないが、脱水素反応は平衡反応でモル数の増える反応であるから、反応圧力は低い方が有利である。通常は常圧以下から10kg/cm2 、好ましくは常圧以下から2kg/cm2 の範囲である。
【0023】原料と触媒との接触時間は0.005〜20秒、好ましくは0.01〜10秒、更に好ましくは0.1〜3秒の範囲である。接触時間が0.005秒より短いと反応率が低いため好ましくない。また、20秒より長いと、生成したインデンが重合し選択率が低下するばかりでなく、重合生成物により反応器およびその下流の熱交換器が閉塞することがある。
【0024】ここで、反応系内で発生した水素を除去して反応を促進する目的で、ベンゼン、テトラリン、ニトロベンゼン、桂皮酸、ベンゾフェノンなどの水素受容体を添加できる。また、二酸化炭素あるいは少量の酸素を反応流中に通じることにより、生じた水素を除くこともできる。
【0025】また前述のようにテトラヒドロインデンの脱水素反応によりインダンの他、インデンも一部副生する。生成したインデンは重合性が高いため、反応槽内をインデン濃度の高い状態で高温に保持すると、その一部が重合あるいは二量化して損失となる。これを避けるためには、不活性ガス、例えば窒素、水素、ヘリウム、アルゴン、スチーム、メタン等や、ベンゼン、トルエン、キシレン等の脱水素反応に不活性な炭化水素ガスを同伴させて原料濃度を希釈することが有効である。経済性および取扱いの容易さからスチームを使用することが好ましい。希釈倍率に特に制限はないが、原料に対するモル比が1以上であれば十分である。更に好ましくはモル比20以上である。
【0026】反応形式は固定床、移動床、流動床のいずれでもよいが、原料のテトラヒドロインデンは気相で触媒と接触させる。脱水素反応を液相で行うと、原料あるいは生成物の重合や二量化により収率が低下するほかに、触媒表面におけるカーボンの析出により触媒寿命が著しく低下するので好ましくない。
【0027】そして第一工程で生成したインダンを主成分とするガスは、速やかに冷却液化される。必要に応じ、上記ガスを炭化水素等の吸収液に通して回収してもよい。また、場合によっては冷却することなく、そのまま第二工程における反応槽に導入してもよい。なお、第一工程で生成したインダンを主成分とするガスには、インデン、未反応テトラヒドロインデンおよびテトラヒドロインデンの1分子水素付加物(分子量がテトラヒドロインデンレンよりも2だけ大きい化合物)の他、ブタジエン、シクロペンタジエン、ベンゼン、トルエン、キシレン、ジシクロペンタジエン等も僅かに含まれる。
【0028】希釈剤にスチームを用いた場合には、水と油分の混合物が得られるので、静置分離槽等の適宜の分離手段により水と油分を分離した後、油分を回収する。回収された油分はそのまま第二工程の原料とすることができる。また油分から、必要に応じて蒸留により目的生成物であるインダンを高純度に回収してもよい。蒸留する場合、生成物中のインデンは熱重合し易く、重合物による蒸留装置の閉塞等を招く懸念があるので、減圧蒸留等の低温による回収方法を利用することが必要である。例えば、減圧蒸留により回収する場合は、蒸留釜の温度が140℃以下になるような減圧度で蒸留を行う。また、反応生成物の液にBHTあるいはTBC等の重合防止剤を加えて蒸留することもできる。
【0029】第一工程で用いる脱水素触媒は、炭化水素の脱水素用触媒として公知の触媒であればいずれも用いることができる。例えば、ニッケル、モリブデン、コバルト、クロム、鉄、白金、パラジウム、ルテニウム等の金属、それらの酸化物もしくは硫化物、またはこれらの混合物のいずれかを含む触媒を用いることができる。好ましい触媒は、白金またはパラジウムを含むもの、またはニッケル、モリブデン、コバルトおよびクロムのいずれかの金属の酸化物を含むものである。更に好ましくは、ニッケルおよびモリブデンの酸化物を含む触媒、またはコバルトおよびモリブデンの酸化物を含む触媒である。上記金属成分は、適宜の担体に担持して用いることができる。触媒担体はアルミナ、シリカ、シリカアルミナ等から適宜に選択することができるが、通常はアルミナ担体を用いる。
【0030】ここで金属成分の担持量は、例えばニッケルおよびモリブデンの酸化物を含む触媒の場合は、酸化ニッケルとして0.5〜10質量%および酸化モリブデンとして3〜20質量%の範囲であり、好ましくは酸化ニッケル1〜5質量%および酸化モリブデン5〜16質量%の範囲である。またコバルトおよびモリブデンを含む触媒の場合は、酸化コバルトとして1〜5質量%および酸化モリブデンとして3〜20質量%の範囲であり、好ましくは酸化コバルト3〜5質量%および酸化モリブデン10〜14質量%を含む触媒を利用することができる。ここで、市販の触媒としては、例えば炭化水素の水素添加や脱硫に用いられる酸化ニッケルおよび酸化モリブデンを含むアルミナ担体触媒、または酸化コバルトおよび酸化モリブデンを含むアルミナ担体触媒を用いることができる。また、触媒には、触媒のコーキングを防止する目的でナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム等のアルカリ金属、アルカリ土類金属を含ませてもよい。
【0031】触媒は、使用する前に、硫化処理または水素等の還元剤による還元処理等の前処理を適宜に行うことができる。白金やパラジウムを含む触媒の場合には、使用前に水素等の還元剤により前処理を行うことが好ましい。触媒を長時間使用するとコーキング等により次第に反応活性が低下することがある。このような場合には、例えば500℃程度の高温で空気等によりデコーキングを行うことにより、初期の反応活性を回復することができる。
【0032】脱水素反応には、これまで述べてきた水素を分子として引き抜く単純脱水素反応と分子状酸素を水素受容体として水素を引き抜く酸化脱水素反応とがある。酸化脱水素反応では水素と水素受容体との反応熱が生じるため、単純脱水素反応のように400〜600℃の高温を必要とせず、反応温度を下げることができる。それに、希釈気体であり熱媒体である大量の水蒸気を必要としない(あるいは減少できる)ため、反応熱を有効に利用できるなどの利点がある。さらには、平衡論的制約がないため平衡定数も大きくなり高転化率がえられるなどプロセス上の利点が多い。酸化脱水素触媒としてこれまで述べてきた単純脱水素触媒がそのまま使用でき、酸化脱水素触媒としては、例えば、Cr23 −Fe23 −K2O系などの遷移金属酸化物、シリカアルミナなどの固体酸、Pd−KBr/α−Al23 触媒、ポリアクリロニトリル熱分解物等が挙げられる。水素受容体である分子状酸素としては空気あるいは純酸素が使用でき、さらに、これらは不活性気体と共に用いることもできる。
【0033】(第二工程)二段階からなる脱水素反応の第二工程においては、第一工程から得られる反応生成物を脱水素することにより主としてインデンを得ることを目的とする。第二工程においては、インダンを主として含む反応生成物を原料とする。好ましい原料は、インダンを主とし、テトラヒドロインデンが30質量%以下、更に好ましくは20質量%以下であり、またインデンが10質量%以下、更に好ましくは5質量%以下のものである。前記第一工程から得られるインダンを含む反応生成物から、蒸留などの適宜の分離手段により高純度のインダンを得て、第二工程の原料とすることもできる。上記分離手段として工業的には蒸留が考えられるが、前述のようにテトラヒドロインデン、インダン、インデン等は沸点が近接しているため、蒸留によって高純度のインダンを工業的に得ることは困難である。したがって、好ましくは、前記第一工程からの生成物をそのまま第二工程の原料とする。前記第一工程における反応条件を満足する脱水素反応の反応生成物は、本発明の第二工程の原料として好ましいものである。
【0034】第二工程における反応生成物にインダンが残存していてもよい。残存したインダンは次のディールス・アルダー反応において反応することなくそのまま存在し、ディールス・アルダー反応生成物から蒸留により回収でき、第二工程の原料として再使用できる。さらに、残存したインダンは分離精製することなく次のディールス・アルダー反応における反応溶媒としても利用することができる。ここで、インダンの転化率が低くインデンの生成量が少ないと次のディールス・アルダー反応による1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンの生成量が少なくなり経済的にも不利である。また、インダンの転化率が高くインデンの生成量が多い場合は、生成したインデンの重合による触媒の活性低下が激しくなり経済的にも不利となる。従って、生成物中のインダン濃度は20質量%以上〜70質量%以下、好ましくは30質量%以上〜70質量%以下、より好ましくは40質量%以上〜60質量%以下がよい。
【0035】第二工程における反応生成物中のテトラヒドロインデンについては、次のディールス・アルダー反応においてシクロペンタジエンと反応し副生成物となるため、生成物中のテトラヒドロインデン濃度は5質量%以下、好ましくは1質量%以下がよい。
【0036】第二工程の反応温度は、触媒と原料の接触時間や原料と希釈剤との希釈モル比などに応じて適宜に選択する。脱水素反応は、強い吸熱反応であるため反応温度は高温の方が有利である。反応温度は、500〜650℃、好ましくは550〜600℃の範囲である。500℃よりも低い温度では脱水素反応がほとんど進行せず、650℃を超えると反応生成物の分解などが生じるため好ましくない。さらに、反応時間と共に触媒活性が低下する場合には、反応温度を徐々に上昇させることが好ましい。
【0037】反応圧力は原料あるいは生成物が気化し得る範囲であれば特に制限はないが、脱水素反応は平衡反応でモル数の増える反応であるから、反応圧力は低い方が有利である。通常は常圧以下から10kg/cm2 、好ましくは常圧以下から2kg/cm2 の範囲である。
【0038】原料と触媒との接触時間は0.005〜20秒、好ましくは0.01〜10秒、更に好ましくは0.1〜3秒の範囲である。接触時間が0.005秒より短いと反応率が低いため好ましくない。また、20秒より長いと、生成したインデンが重合し選択率が低下するばかりでなく、重合生成物により反応器およびその下流の熱交換器が閉塞することがある。
【0039】ここで第一工程と同様に、反応系内で発生した水素を除去して反応を促進する目的で、ベンゼン、テトラリン、ニトロベンゼン、桂皮酸、ベンゾフェノンなどの水素受容体を添加したり、また、窒素、二酸化炭素あるいは少量の酸素を反応流中に通じて生じた水素を除くこともできる。
【0040】反応希釈剤、反応形式、反応圧力、原料と触媒との接触時間、触媒の賦活法等は第一工程における条件と同一にすることができる。すなわち、生成するインデンの重合性が高いため、反応槽内をインデン濃度の高い状態で高温に保持すると、生成したインデンの一部が重合あるいは二量化して損失となる。これを避けるためには、不活性ガス、例えば窒素、水素、ヘリウム、アルゴン、スチーム、メタン等や、ベンゼン、トルエン、キシレン等の脱水素反応に不活性な炭化水素ガスを同伴させて原料濃度を希釈することが有効である。経済性および取扱いの容易さからスチームを使用することが好ましい。希釈倍率に特に制限はないが、原料に対するモル比が1以上であれば十分である。更に好ましくはモル比20以上である。
【0041】反応形式は固定床、移動床、流動床のいずれでもよいが、原料は気相で触媒と接触させる。脱水素反応を液相で行うと、原料あるいは生成物の重合や二量化により収率が低下するほかに、触媒表面におけるカーボンの析出により触媒寿命が著しく低下するので好ましくない。
【0042】第二工程で生成したインデンを主成分とするガスは、急速に冷却液化される。必要に応じ、上記ガスを炭化水素等の吸収液に通して回収してもよい。なお、第二工程で生成したインデンを主成分とするガスには、インデンの他、未反応インダン、ブタジエン、シクロペンタジエン、テトラヒドロインデン、ベンゼン、トルエン、キシレン、ジシクロペンタジエン等も僅かに含まれる。
【0043】希釈剤にスチームを用いた場合には、水と油分の混合物が得られるので、静置分離槽等の適宜の分離手段により水と油分を分離した後、必要に応じて蒸留により高純度の目的生成物を回収することができる。インデンは熱的に不安定なので、減圧蒸留等の高温を用いない方法で回収することが必要である。例えば、減圧蒸留により回収する場合は、蒸留釜の温度が140℃以下になるような減圧度で蒸留を行うことにより、インデンの熱重合による損失を低減することができる。また、反応液にBHTあるいはTBC等の重合防止剤を加えて蒸留することにより重合による損失を低減することもできる。
【0044】第二工程において用いる脱水素触媒としては、炭化水素の脱水素触媒として公知のものを用いることができる。例えば、ニッケル、モリブデン、コバルト、クロム、鉄、ルテニウム、白金、パラジウム等の金属、それらの酸化物もしくは硫化物、またはこれらの混合物等を含む触媒である。より具体的には、ニッケル、モリブデン、コバルト、クロム、鉄のいずれかの酸化物を含む触媒、あるいはルテニウム、白金またはパラジウム等の触媒である。更に具体的には、ニッケルおよびモリブデンの酸化物を含む触媒、コバルトおよびモリブデンの酸化物を含む触媒、酸化クロムを含む触媒あるいはルテニウムを含む触媒である。金属成分は、適宜に担体に担持させて用いることができる。触媒担体としてはアルミナ、シリカ、シリカアルミナ等を適宜選択することができるが、通常はアルミナ担体を用いる。
【0045】ここで金属成分の担持量は、例えばニッケルおよびモリブデンの酸化物を含む触媒、またはコバルトおよびモリブデンの酸化物を含む触媒の場合には、第一工程の反応に使用される触媒と同一の担持量を採用することができる。すなわち、ニッケルおよびモリブデンの酸化物を含む触媒の場合は、酸化ニッケルとして0.5〜10質量%および酸化モリブデンとして3〜20質量%を含む触媒を利用することができる。更に好ましくは酸化ニッケル1〜5質量%および酸化モリブデン5〜16質量%を含む担持触媒を用いる。ここで、市販の触媒としては、例えば炭化水素の水素添加や脱硫に用いられる酸化ニッケルおよび酸化モリブデンを含むアルミナ担体触媒を用いることができる。なお、第一工程と同一の触媒を用いることもできる。また、触媒には、触媒のコーキングを防止する目的でナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム等のアルカリ金属、アルカリ土類金属を含ませてもよい。
【0046】触媒は、使用する前に、硫化処理または水素等の還元剤による還元処理等の前処理を適宜に行うことができる。白金やパラジウムを含む触媒の場合には、使用前に水素等の還元剤により前処理を行うことが好ましい。触媒を長時間使用するとコーキング等により次第に反応活性が低下することがある。このような場合には、例えば500℃程度の高温て空気等によりデコーキングを行うことにより初期の反応活性を回復することができる。
【0047】脱水素反応には、これまで述べてきた水素を分子として引き抜く単純脱水素反応と分子状酸素を水素受容体として水素を引き抜く酸化脱水素反応とがある。酸化脱水素反応では水素と水素受容体との反応熱が生じるため、単純脱水素反応のように500〜650℃の高温を必要とせず、反応温度を下げることができる。それに、希釈気体であり熱媒体である大量の水蒸気を必要としない(あるいは減少できる)ため、反応熱を有効に利用できるなどの利点がある。さらには、平衡論的制約がないため平衡定数も大きくなり高転化率がえられるなどプロセス上の利点が多い。酸化脱水素触媒としても、これまで述べてきた単純脱水素触媒がそのまま使用でき、酸化脱水素触媒としては、例えば、Cr23 −Fe23 −K2 O系などの遷移金属酸化物、シリカアルミナなどの固体酸、Pd−KBr/α−Al23 触媒、ポリアクリロニトリル熱分解物等が挙げられる。水素受容体である分子状酸素としては空気あるいは純酸素が使用でき、さらに、これらは不活性気体と共に用いることもできる。
【0048】(ディールス・アルダー反応)ディールス・アルダー反応においてはテトラヒドロインデンの脱水素反応により得られたインデンとシクロペンタジエンおよび/またはジシクロペンタジエンとの反応により1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンを得ることを目的とする。
【0049】インデン混合物中のインダンはディールス・アルダー反応時に必要な溶媒となる。インデン混合物を分離精製することなく用いることで、ディールス・アルダー反応のため新たに溶媒を添加する必要がない。インデン混合物中のインダン含有量としては、20〜70質量%が好ましい。インダンが20質量%より少ない場合は、シクロペンタジエン多量体が生成し反応液の粘度が上昇し、反応器等のファウリングの原因となったり、反応熱の除去が不充分となるなどの問題が生じるため好ましくない。インダンが70質量%より多い場合は、インデン量が少ないため1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンの生成量が少なくなるので好ましくない。
【0050】また、ディールス・アルダー反応生成物から1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンを得る際、軽質留分としてインダンを多く含む留分が回収される。このインダン留分は、ディールス・アルダー反応の溶媒として再度利用できるほか、再度脱水素反応させることでインデン混合物となり再利用できる。
【0051】ディールス・アルダー反応生成物からインダンを蒸留により回収する時、回収インダン留分中にはインダンと沸点の近い未反応のジシクロペンタジエンが含まれる。ジシクロペンタジエンを含むインダンの脱水素反応において、残存ジシクロペンタジエンはシクロペンタジエンに分解するだけであり、インダンの脱水素反応には影響を及ぼさない。しかし、回収インダン留分中のジシクロペンタジエン濃度が10%以上では、次の脱水素反応が経済的にも不利となる。従って、回収インダン留分中のジシクロペンタジエン濃度は10質量%以下、好ましくは5質量%以下がよい。
【0052】本発明では、ディールス・アルダー反応の反応原料として、シクロペンタジエンおよび/またはジシクロペンタジエンを使用するが、特にジシクロペンタジエンは、ナフサ等の熱分解油から回収され工業的に大量かつ安価に得られるので好ましい。シクロペンタジエンはジシクロペンタジエンの分解(シクロペンタジエンの2量化によるジシクロペンタジエンの生成と平衡)により生成し、ジシクロペンタジエン中にシクロペンタジエンが含まれていてもよい。ジシクロペンタジエンは市販のものを使用することができ、純度70%以上のものを使用することができる。通常は純度95%程度のものが好適に用いられる。もちろん純度95%を超えるものも使用することができる。またジシクロペンタジエン中のエンド体含有量は80%以上であることが好ましい。さらに、石油留分の熱分解油のうち、シクロペンタジエンおよび/またはジシクロペンタジエンを含み、主として炭素数5のオレフィンまたはジオレフィンからなる留分を使用することもできる。
【0053】本発明においては、上記のテトラヒドロインデンの脱水素反応により得られるインデン混合物とシクロペンタジエンおよび/またはジシクロペンタジエンとを反応原料として、加熱によりディールス・アルダー反応を行う。本反応は主として、反応原料中のジシクロペンタジエンの熱分解により生成するシクロペンタジエンが、インデンと付加反応することによって進行する。
【0054】ディールス・アルダー反応は、通常100〜350℃の範囲で行い、好ましくは150〜300℃、更に好ましくは180〜280℃の温度で行う。100℃よりも低温では反応が遅くなるため好ましくなく、350℃よりも高温ではシクロペンタジエンの3量体および4量体等(以下、シクロペンタジエン多量体と称する。)や1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンに更にシクロペンタジエンが付加した化合物などの重質物(以下、シクロペンタジエン付加重質物と称する)の生成量が多くなるため好ましくない。
【0055】反応時間(滞留時間)は、通常、0.1〜360分、好ましくは10〜300分の範囲で行う。0.1分未満では反応原料の転化率が低くなり、360分を超えるとシクロペンタジエン多量体やシクロペンタジエン付加重質物の生成量が多くなりいずれも好ましくないまた、反応速度を大きくするため加圧下で反応を行うことが好ましい。圧力としては0.1〜20MPa、好ましくは0.1〜10MPa、更に好ましくは0.1〜5MPaである。0.1MPa未満では反応の進行が遅くなり、20MPaを超えると反応の進行がそれ以上速くならずに反応器の耐圧性能等が過大になるなど経済的に不利になりいずれも好ましくない。
【0056】反応原料におけるインデンとシクロペンタジエンおよび/またはジシクロペンタジエンの量は、シクロペンタジエンのモル数の1/2とジシクロペンタジエンのモル数の合計値を1として、インデンをその1〜100倍モルの割合、好ましくは5〜70倍モル、更に好ましくは10〜50倍モルの量になるように調整する。ジシクロペンタジエン量が上記範囲よりも少ない場合は、1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンの収量が少なくなるため好ましくなく、上記範囲よりも多い場合はシクロペンタジエン多量体やシクロペンタジエン付加重質物などの生成量が増えるため好ましくない。また、シクロペンタジエンまたはジシクロペンタジエンを上記範囲内で連続的または継続的に反応系中に供給することができ、そうすることによってシクロペンタジエン多量体やシクロペンタジエン付加重質物などの生成を抑えることができるため好ましい。
【0057】上記ディールス・アルダー反応では、テトラヒドロインデンの脱水素反応により得られるインデン混合物中にインダンが含まれるため、インデン混合物をそのままディールス・アルダー反応に供することにより、インダンを溶媒として利用することができるが、適当な溶媒を添加することもできる。例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン類、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の炭化水素化合物、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール化合物、テトラヒドロフラン、エチルエーテル、プロピルエーテル、1,4−ジオキサン等のエーテル化合物、酢酸エチル、酢酸プロピル等のエステル類、塩化メチレン、クロロホルム等の含ハロゲン化合物、N−メチルピロリドン等の含窒素化合物等を使用することができる。
【0058】上記のディールス・アルダー反応は、バッチ式、セミバッチ式、連続式いずれの形式で行ってもよい。連続式で行う場合の反応器としては、完全混合型、ピストンフロ−型等いずれの反応器であってもよく特に制限されない。ピストンフロ−型反応器としては、ノリタケカンパニ−(株)製「スタティックミキサ−」、住友重機械工業(株)製「スル−ザ−ミキサ−」、櫻製作所(株)製「スケヤミキサ−」などの市販品があげられる。反応器は一つでもよいが、二つ以上用いてもよく、完全混合型反応器やピストンフロ−型反応器を直列または並列に組み合わせて使用することができる。
【0059】また上記ディールス・アルダー反応は、酸化防止剤、重合禁止剤等の添加剤の存在下に行うことができる。添加剤としては、例えば、ハイドロキノン、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、4−tert−ブチルカテコール、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾ−ル、4−メトキシフェノ−ル等のフェノ−ル系化合物、N,N−ジメチルヒドロキシルアミン、N,N−ジエチルヒドロキシルアミン等のヒドロキシルアミン化合物などが好適に用いられる。その添加量は、反応器中に供給される反応原料の全量に対して、通常10〜10000ppm、好ましくは50〜5000ppmの範囲である。また反応終了後に、1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンに対しても50〜5000ppmの範囲で好ましく添加することができる。
【0060】上記のディールス・アルダー反応により得られる反応混合物には、目的とする1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン以外に、未反応のインデン、未反応のシクロペンタジエンおよびジシクロペンタジエン、インダン、溶媒を使用した場合にはその溶媒、さらにはシクロペンタジエン多量体およびシクロペンタジエン付加重質物などの副成生物も含まれている。
【0061】得られたディールスアルダー反応混合物は次に精製工程に供され、未反応の原料、溶媒、副生物等が除去されて、1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンが得られる。精製は蒸留により行うのが工業的に最も好ましい。蒸留は常圧、減圧のいずれでも行うことができるが減圧下で行うことが好ましい。蒸留塔の塔底温度は、300℃を超えない温度、好ましくは250℃を超えない温度、より好ましくは200℃を超えない温度で、減圧条件を設定することが望ましい。前記温度範囲外では、1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンが熱的に比較的不安定なため一部熱分解を起こして収率が低下し、またシクロペンタジエン多量体やシクロペンタジエン付加重質物などの分解反応や重合反応が進行するため好ましくない。また蒸留はバッチ式、セミバッチ式および連続式のいずれの方式で行ってもよい。蒸留塔の数は1つでも複数でもよく特に制限はない。
【0062】精製工程で回収された未反応のインデン、未反応のシクロペンタジエンおよびジシクロペンタジエン、インダン、および反応溶媒等は、ディールス・アルダー反応に再使用することができる。また、シクロペンタジエン多量体およびシクロペンタジエン付加重質物なども、加熱により分解してシクロペンタジエンおよび/またはジシクロペンタジエンを生成することから、反応原料として再使用することもできる。
【0063】蒸留により留出した1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンに、熱分解によって生成したシクロペンタジエン、ジシクロペンタジエンおよびインデン等の軽質留分が含まれている場合は、必要に応じて適宜に再蒸留し、軽質留分を留出させて1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンを精製することもできる。この時回収される軽質留分がインデンを高濃度で含有している場合、蒸留により高純度インデンを取り出すことが可能であり、またディールス・アルダー反応に再使用することもできる。
【0064】また、1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンとシクロペンタジエン3量体は沸点が近いため、蒸留条件によっては1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンにシクロペンタジエン3量体が含まれる場合がある。シクロペンタジエン3量体は下記式(1)および式(2)で示される2種類の成分の混合物で、何れも環状オレフィン部位を2個有しているため、重合を行うときに架橋成分となり得る。
【0065】
【化1】


【0066】
【化2】


【0067】よって、1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンを開環メタセシス重合または付加型重合させて熱可塑性重合体を製造する場合には、架橋反応を防ぐため極力シクロペンタジエン3量体を混入させないようにすることが好ましく、含有量は5000ppm以下にすることが好ましい。
【0068】一方、反応射出成形法(RIM)などにより架橋重合体を製造する場合はこの限りでなく、必要に応じて1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンに適宜シクロペンタジエン3量体を含有させることができる。
【0069】(重合反応)以上のようにして製造される1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンは、公知の方法により重合することができる。開環メタセシス重合を行なう場合は、例えば、特開平9−183832号公報、特開平8−151435号公報、特開平5−43663号公報、特開平1−172422号公報、特開平1−172421号公報、特開平1−168725号公報、特開平1−168724号公報、特開昭60−26024号公報などで開示されているような方法で行うことができる。
【0070】具体的には、(a)遷移金属化合物触媒成分からなるメタセシス重合触媒と(b)金属化合物助触媒成分から成る活性化剤の2成分の触媒系を用いる方法である。メタセシス重合触媒(a)は、周期律表第IVB、VB、VIB、VIIB、またはVIII族の遷移金属の化合物であり、これら遷移金属のハロゲン化物、オキシハロゲン化物、アルコキシハロゲン化物、アルコキシド、カルボン酸塩、(オキシ)アセチルアセトネート、カルボニル錯体、アセトニトリル錯体、ヒドリド錯体、これらの誘導体、これらのホスフィン化合物等の錯化剤による錯化物が挙げられる。活性化剤(b)としては、周期律表第IA、IIA、IIB、IIIA、またはIVA族の金属の化合物で、少なくとも一つの金属元素−炭素結合または金属元素−水素結合を有するものであり、例えば、Al、Sn、Li、Na、Mg、Zn、Cd、Bなどの有機化合物が挙げられる。また、メタセシス重合活性を高めるために、(a)、(b)両成分の他に、脂肪族第三級アミン、芳香族第三級アミン、分子状酸素、アルコール、エーテル、過酸化物、カルボン酸、酸無水物、酸クロリド、エステル、ケトン、含窒素化合物、含硫黄化合物、含ハロゲン化合物、分子状ヨウ素、その他ルイス酸等を加えることができる。更に分子量を制御するためにエチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、スチレン、1−ヘキセン、4−メチルペンテン、1−オクテン、ヘキサジエンなどのオレフィンを添加してもよい。
【0071】また、その他の触媒として周期律表第IVB、VB、VIB、VIIB、またはVIII族の遷移金属のカルベン錯体やメタラシクロブテン錯体も使用することができる。上記の触媒系を用いて、1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンを単独で、またはノルボルネン類、ジシクロペンタジエン類、テトラシクロドデセン類などのノルボルネン環を有する多環の環状オレフィン類や単環の環状オレフィン類、環状ジオレフィン類の少なくとも1種類以上と混合して重合することにより、環状オレフィン重合体を得ることができる。
【0072】開環メタセシス重合により得られる重合体は、主鎖にオレフィン構造を含むものであり、オレフィンの一部あるいは全部を水素化して水素化重合物とすることによって、耐熱劣化性や耐光性を改善することができる。水素化反応の触媒としては、ニッケル、パラジウム、白金などの貴金属をアルミナ、ケイソウ土等の担体に担持・分散させた不均一系触媒が使用される。また均一系の水素化触媒として、遷移金属化合物とアルキル金属化合物の組み合わせからなる触媒、例えば、酢酸コバルト/トリエチルアルミニウム系、ニッケルアセチルアセトナート/トリイソブチルアルミニウム系、チタノセンジクロリド/n−ブチルリチウム系、ジルコノセンジクロリド/sec−ブチルリチウム系、テトラブトキシチタネート/ジメチルマグネシウム系、その他、ウィルキンソン錯体のクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(I)等も使用することができる。水素圧力は0.1〜20MPa、温度は0〜200℃で行われる。また重合体の分子内に芳香環を有する場合は、芳香環の一部あるいは全部を同時に核水素化することもできる。
【0073】また、反応射出成形法(RIM)、すなわち、メタセシス重合性環状オレフィンおよびメタセシス重合触媒からなるモノマー液(A)と、メタセシス重合性環状オレフィンと活性化剤からなるモノマー液(B)とを混合し、直ちに金型に注入して金型内において重合架橋させる架橋重合体成形物の製造において、1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンをモノマー液に用いることができる。
【0074】一方、1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンの単独での付加型重合、あるいは低級α−オレフィンとの付加型共重合は、メタロセン触媒やチーグラー触媒を用いて行なうことができる。メタロセン触媒を用いる場合は、例えば特開平3−45612号公報、特開平2−173112号公報、特開平4−63807号公報、特開昭64−106号公報、特開昭61−221206号公報などに開示されている方法で行うことができる。具体的には、周期律表のIVB、VB、またはVIB族から成る遷移金属化合物成分(c)と有機アルミニウムオキシ化合物成分(b)からなる触媒系を用いる方法である。遷移金属化合物成分(c)は、少なくとも2個のシクロアルカジエニル基またはその置換体、あるいはそれらが炭化水素基、シリレン基または置換シリレン基を介して結合した多座配位性化合物を配位子とした化合物が挙げられる。有機アルミニウムオキシ化合物成分(d)は、下記の一般式(3)および/または一般式(4)で表される化合物であり、式中の炭化水素基Rは具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などである。
【0075】
【化3】


【0076】
【化4】


【0077】また、チーグラー触媒を用いる場合は、例えば特開平9−176396号公報、特開昭62−252406号公報、特開昭62−252407号公報などに開示されている方法で行うことができる。具体的には、チタン化合物またはバナジウム化合物と有機アルミニウム化合物とから形成される触媒系を用いて、1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンとエチレン等のα−オレフィンとを共重合体させることができる。
【0078】1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンの付加重合を行う場合にも、前述のように他の種類のオレフィン化合物、たとえばノルボルネン類、ジシクロペンタジエン類およびテトラシクロドデセン類と共重合することが可能である。
【0079】
【実施例】以下、本発明について実施例および比較例を挙げてより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定を受けるものではない。なお以下に記載の%は特に言及しない限り質量%である。
【0080】<実施例1>(テトラヒドロインデンの脱水素反応)
まず第1工程として、次のようにしてテトラヒドロインデンの1段目の脱水素反応を行った。酸化ニッケル/酸化モリブデン触媒(酸化ニッケル1.5%、三酸化モリブデン7.4%およびアルミナ担体;商品名:CDS−DM5CT、触媒化成工業(株)製)を16〜20メッシュの粒度にそろえ、連続流通式反応管に110ml充填して触媒層を調製した。テトラヒドロインデンと水を予熱管を経由して触媒層に通して反応温度450℃、常圧下で脱水素反応を行った。テトラヒドロインデン(純度99.4%)の流量は100ml/h、水の流量は300ml/hとして、テトラヒドロインデンの触媒との接触時間は0.38秒であった。反応ガスを常温まで冷却して液化させ、有機層(反応液)と水とに分離した後、有機層をガスクロマトグラフィー(GC)により分析した。通油開始6、22、28時間後の流出油の分析結果を表1に示す。
【0081】次に第2工程として、次のようにして2段目の脱水素反応を行った。酸化ニッケル/酸化モリブデン触媒(酸化ニッケル1.5%、三酸化モリブデン7.4%およびアルミナ担体;商品名:CDS−DM5CT、触媒化成工業(株)製)を16〜20メッシュの粒度にそろえ、連続流通式反応管に110ml充填して触媒層を調製した。第一工程で得られた有機層と水を予熱管を経由して触媒層に通して反応温度550〜570℃、常圧下で脱水素反応を行った。第一工程で得られた有機層の流量を100ml/h、水の流量を300ml/hとして、触媒との接触時間は0.34秒であった。反応ガスを常温まで冷却して液化させ、有機層(反応液)と水とに分離した後、有機層をガスクロマトグラフィー(GC)により分析した。通油開始6、22、28時間後の流出油の分析結果を併せて表1に示す。
【0082】
【表1】


【0083】(ディールス・アルダー反応)上記の脱水素反応第二工程で得られた有機層(インデン混合物:テトラヒドロインデン1.1%、インダン56.9%、インデン32.9%)2828g、純度95%のジシクロペンタジエン529gを混合したもの(モル比:インデン/ジシクロペンタジエン=2)を反応原料として、電磁誘導式攪拌器を備えた5リットルのオートクレーブに導入して圧力を0.1MPaに維持しながら、反応温度180℃で4時間ディールス・アルダー反応を行った。得られた反応液の組成は、ガスクロマトグラフィー(GC)による分析の結果、シクロペンタジエン0.5%、テトラヒドロインデン0.8%、ジシクロペンタジエン11.2%、インダン39.2%、インデン10.2%、1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン22.6%であった。
【0084】(精製)上記のディールス・アルダー反応で得られた反応液を、圧力0.13kPa、還流比5の条件下でバッチによる減圧蒸留を行い、103〜105℃の1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン留分580gを得た。
【0085】<実施例2>実施例1のディールス・アルダー反応で得られた反応液を減圧蒸留して、シクロペンタジエン0.1%、テトラヒドロインデン0.3%、ジシクロペンタジエン3.7%、インダン79.6%、インデン12.9%からなるインダン留分487gを得た。このインダン留分を原料として脱水素反応を行った。酸化ニッケル/酸化モリブデン触媒(酸化ニッケル1.5%、三酸化モリブデン7.4%およびアルミナ担体;商品名:CDS−DM5CT、触媒化成工業(株)製)を16〜20メッシュの粒度にそろえ連続流通式反応管に11ml充填して触媒層を調製した。インダン留分と水を予熱管を経由して触媒層に通して反応温度550℃、常圧下で脱水素反応を行った。インダン留分の流量は10ml/h、水の流量は30ml/hとして、触媒との接触時間は0.34秒であった。反応ガスを常温まで冷却して液化させ、有機層(反応液)と水とに分離した後、有機層をガスクロマトグラフィー(GC)により分析した。通油開始1,2、3時間後の流出油の分析結果を表2に示す。
【0086】
【表2】


【0087】<実施例3>実施例1の脱水素反応第二工程で得られた有機層(インデン混合物:テトラヒドロインデン1.1%、インダン56.9%、インデン32.9%)1000g当たり、純度95%のジシクロペンタジエン46gを混合したもの(モル比:インデン/ジシクロペンタジエン=8)を反応原料として用いた。電磁誘導式攪拌器を備えた50mlオートクレーブに反応原料を連続的に導入し、圧力5.0MPa、応温度230℃、空間速度は4h-1として、反応混合物を連続的に抜き出しながら、5時間ディールス・アルダー反応を行った。反応混合物は圧力0.07kPaおよび還流比10の条件下でバッチ形式の減圧蒸留を行い、88〜92℃の1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン留分75gを得た。この留分にはガスクロマトグラフィー(GC)による分析の結果、前記式(1)の化合物が2700ppmおよび前記式(2)の化合物が1300ppm含まれていた。
【0088】<重合実施例1>撹拌羽根を取付けた2リットルの三つ口フラスコに、窒素雰囲気下で乾燥したトルエンを1000ml導入した。このフラスコにジクロロエトキシオキソバナジウム1mmolと、実施例3で得られた1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン留分10gを加えた。この溶液を撹拌しながら、エチレンと窒素の混合ガス(モル比:エチレン/窒素=1/5)を200リットル/hの流量で溶液中にバブリングした。ここに更にエチルアルミニウムセスキクロリド10mmolを滴下して重合を開始し、5℃で20分間重合を行った。メタノール30mlを加えて重合を停止し、重合混合物を2リットルのメタノールに注ぎ共重合体を析出させた。析出した共重合体をろ過後に減圧乾燥し、240℃で厚さ1mmのプレスシートを作成したところ、均質の透明なシートが得られ何らゲル状のものは観測されなかった。
【0089】<重合実施例2>実施例3で合成した1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン留分20g、ノルボルネン2.5g、ジシクロペンタジエン2.5gおよびトルエン200mlを十分に乾燥した500mlオートクレーブに導入した。これにトリエチルアルミニウム3mmolを加え、更に四塩化チタン0.7mmolとトリエチルアミン7mmolを加えて30℃で6時間開環重合を行った。重合混合物をアセトンとイソプロピルアルコールの混合液に注入することによりポリマーを沈澱させ、得られたポリマーを再びトルエンに溶解し再沈澱の操作を2度繰返し、減圧乾燥を行って開環共重合ポリマーを得た。次に200mlのオートクレーブに0.5%パラジウムカーボン0.4g、トルエン100mlおよび開環重合したポリマー4gを加えた。温度20℃、水素ガス圧力5.0MPaで1時間水素化反応を行った。反応終了後、触媒をろ過し、メタノール中に再沈澱した。得られた共重合体を減圧乾燥し、350℃で厚さ1mmのプレスシートを作成したところ、均質の透明なシートが得られ、何らゲル状のものは観測されなかった。
【0090】<比較例1>実施例1の脱水素反応第二工程で得られた有機層(インデン混合物:テトラヒドロインデン1.1%、インダン56.9%、インデン32.9%)1000g当たり、純度95%のジシクロペンタジエン750gを混合したもの(モル比:インデン/ジシクロペンタジエン=0.5)を反応原料とした以外は、実施例3と同様にディールス・アルダー反応を行った。反応混合物は圧力0.07kPaおよび還流比10の条件下で減圧蒸留を行い、88〜92℃の1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン留分125gを得た。この留分にはガスクロマトグラフィー(GC)による分析の結果、前記式(1)の化合物が27300ppmおよび前記式(2)の化合物が10200ppm含まれていた。
【0091】<重合比較例1>比較例1で得られた1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン留分を使用した以外は重合実施例1と同様にエチレンとの共重合を行い、プレスシートを作成した。シートにはゲルの存在が確認され、このゲルを切り出してホットプレート上で300℃まで加熱したが溶融しなかった。
【0092】<重合比較例2>比較例1で得られた1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン留分を使用した以外は、重合実施例2と同様に開環重合および水素化反応を行ってポリマーを得た。これを用いて作成したプレスシートにはゲル状のものが観測された。
【0093】<重合実施例3>比較例1で得られた1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンを、反応射出成形法(RIM)に用い架橋重合体を製造した。まず下記の組成割合で、(A)溶液:メタセシス重合性環状オレフィンとメタセシス重合触媒からなるモノマー液、(B)溶液:メタセシス重合性環状オレフィンと活性化剤からなるモノマー液をそれぞれ窒素雰囲気下で調製した。
【0094】
(A)溶液:純度99%ジシクロペンタジエン 14.0g 1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン 6.0g エチレンプロピレンジエンターポリマー(三井化学(株)製) 20mg ジエチレングリコールジメチルエーテル 15mg WC104 29mg 4−ノニルフェノール 37mg 4, 4−メチレンビス( 2,6−ジ−tert−ブチルフェノール) 400mg(B)溶液:純度99%ジシクロペンタジエン 14.0g 1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン 6.0g ジエチレングリコールジメチルエーテル 222mg トリイソブチルアルミニウム( 1.0Mトルエン溶液) 128mg
【0095】次いで窒素雰囲気下で、(A)液および(B)液を100mlフラスコ内に注ぎ5秒間撹拌した。この混合液を直ちに30℃のステンレス製金型(直径90mm)に注いだ。そのまま30分間放置した後に金型から取り出したところ、架橋重合体成形物が得られた。
【0096】<比較例2>脱水素反応第二工程で反応温度を650℃とする以外は実施例1と同様に脱水素反応を行った結果、テトラヒドロインデン0.1%、インダン11.4%、インデン78.6%の有機層(インデン混合物)が得られた。この有機層1000g当たり、純度95%のジシクロペンタジエン447gを混合したもの(モル比:インデン/ジシクロペンタジエン=2)を反応原料とする以外は実施例3と同様にディールスアルダー反応を行った。しかし、反応開始3時間後に反応器がファウリングを起こしたため反応を中止した。
【0097】
【発明の効果】本発明の方法によれば、安価なテトラヒドロインデンの脱水素反応により得られたインデン混合物とシクロペンタジエンおよび/またはジシクロペンタジエンのディールス・アルダー反応により1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンを工業的に有利に製造することができるという顕著な効果を奏する。また、本発明の1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンを重合の原料として用いると、実質的にゲルの発生を防止することができ、光学特性および成形加工性に優れた重合体を安価に製造することができるという顕著な効果を奏する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 テトラヒドロインデンの脱水素反応により得られるインデン混合物とシクロペンタジエンおよび/またはジシクロペンタジエンとを反応原料としてディールス・アルダー反応を行い、次いでその反応混合物の蒸留精製を行うことを特徴とする1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンの製造方法。
【請求項2】 前記ディールス・アルダー反応において、反応原料中のシクロペンタジエンのモル数の1/2倍量とジシクロペンタジエンのモル数の合計を1としてインデンをその1〜100倍モルの割合とし、反応温度100〜350℃、反応圧力0.1〜20MPa、滞留時間0.1〜360分の条件下で反応させることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】 前記テトラヒドロインデンの脱水素反応により得られるインデン混合物中のインダン含有量が20質量%以上70質量%以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】 前記ディールス・アルダー反応の結果得られる反応混合物から、インダンを主として含む留分を回収し、該留分を用いて脱水素反応を行うことによりインデン混合物を得ることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。

【公開番号】特開2003−81889(P2003−81889A)
【公開日】平成15年3月19日(2003.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−274793(P2001−274793)
【出願日】平成13年9月11日(2001.9.11)
【出願人】(000231682)新日本石油化学株式会社 (33)
【Fターム(参考)】