説明

1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン組成物の製造方法

【課題】 各種重合の原料として用いた場合に、得られる樹脂の光学的性質を実質的に低下させることのない、1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン組成物の製造方法を提供する。
【解決手段】 シクロペンタジエンおよび/またはジシクロペンタジエンと、シクロペンタジエン基準で2〜50倍モルのインデンを加熱反応させた後、蒸留精製することからなる、2種のシクロペンタジエンの3量体の合計含有量が100〜5,000ppmである1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンの組成物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン組成物の製造方法に関する。詳しくは、シクロペンタジエンの3量体を含有する1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン組成物の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンに代表される環状オレフィンは、近年優れた光学特性、耐熱性及び吸油性等を有する樹脂の原料として非常に有用であることが知られている。この環状オレフィンは有機金属錯体触媒を用いて重合されるが、その重合方法は大別して2つあげることができる。一つはメタセシス開環重合で、もう一方はチーグラー触媒、メタロセン触媒を用いるこれらの環状オレフィンのオレフィン部位での単独重合、あるいは低級α−オレフィンとの共重合である。1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンは、従来よりインデンとシクロペンタジエンとの付加反応生成物として合成されており、得られた1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンを前述のとおりポリマー原料として用いる方法が提案されている。例えば、特開平5−97719号公報では1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンとエチレンをバナジウム触媒あるいはメタロセン触媒の存在下エチレン等のオレフィンと共重合し光学的に優れた樹脂を製造している。また、特開平7−53680号公報では1,4−メタノ−1,1a,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンを開環重合し、更に水素化あるいは環化することで光学的に優れた樹脂を製造している。
【0003】一般にインデンとシクロペンタジエンのディールスアルダー反応では1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンのほか、シクロペンタジエンの三量体等が副生する。1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンはシクロペンタジエンの三量体と沸点差が殆ど無く、シクロペンタジエンの三量体は上記の重合反応では架橋成分となり、ゲル化をおこし、光学的性質を低下させていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、メタセシス開環重合や、環状オレフィンのオレフィン部位での単独重合、あるいは低級α−オレフィンとの共重合において、得られる樹脂の光学的性質が実質的に低下しない、1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン組成物の製造方法を提供するにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明の第1は、シクロペンタジエンおよび/またはジシクロペンタジエンとシクロペンタジエン基準で2〜50倍モルのインデンを加熱反応させ、得られる反応物混合物を精留し、常圧換算で250〜300℃の範囲に含まれる成分を主とする留分を回収することからなる、下記式〔II〕および式〔III〕で表されるシクロペンタジエンの3量体の合計含有量が100〜5,000ppmである、下記式〔I〕で表される1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンの組成物の製造方法に関するものである。
【0006】
【化4】


【化5】


【化6】


【0007】本発明の第2は、本発明の第1において、シクロペンタジエンの3量体のうち、式〔III〕で表されるシクロペンタジエンの3量体の含有量が100〜3,000ppmである式〔I〕で表される1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンの組成物の製造方法に関する。本発明の第3は、本発明の第1において、シクロペンタジエンおよび/またはジシクロペンタジエン、およびインデンを混合し加熱・反応する際、反応に不活性な炭化水素系溶剤を使用することを特徴とする式〔I〕で表される1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンの組成物の製造方法に関する。本発明の第4は、本発明の第3において、シクロペンタジエンおよび/またはジシクロペンタジエン、およびインデン、および反応に不活性な炭化水素系溶剤の合計重量に対するジシクロペンタジエン換算の重量の比が0.02〜0.20である式〔I〕で表される1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンの組成物の製造方法に関する。本発明の第5は、本発明の第3において、反応における温度が100〜350℃、圧力が常圧〜10MPa および滞留時間が0.01〜100時間である式〔I〕で表される1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンの組成物の製造方法に関する。本発明の第6は、本発明の第3において、未反応シクロペンタジエンまたはジシクロペンタジエン、インデンおよび反応に不活性な炭化水素系溶剤を循環・再利用することを特徴とする式〔I〕で表される1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンの組成物の製造方法に関する。以下、本発明について具体的に説明する。
【0008】本発明における式〔I〕で表される1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンの組成物は、シクロペンタジエンおよび/またはジシクロペンタジエン、およびインデンのディールス−アルダー反応型の熱付加反応を行なうことによって合成される。またシクロペンタジエンを使用する場合には、あらかじめジシクロペンタジエンを熱分解蒸留したものを用いる。ジシクロペンタジエンは容易に熱分解してシクロペンタジエンを生成する。従って反応系中でジシクロペンタジエンが熱分解するならば、反応原料にジシクロペンタジエンもまた採用することができる。使用することができるジシクロペンタジエンは市販のものを使用することが望ましく、その純度は90%以上であることが望ましい。ジシクロペンタジエン不純物は主としてテトラヒドロメチルインデンのほか、C5〜C9の鎖状または環状ジエン化合物とシクロペンタジエンとの付加物が多く、これらの量が多いと重質の副生成物が多くなる。
【0009】本発明に使用することができるインデンは、その純度は30%以上であることが好ましく、より好ましくは純度は60%以上、更に好ましくは純度は90%以上である。不純物としてベンゾニトリル、ベンゾインデン、ジアルキルベンゼンなどを含有してもよい。
【0010】シクロペンタジエンおよびジシクロペンタジエンは、昇圧機およびポンプにて反応系に供給されるが、もう一方の原料であるインデンとあらかじめ混合しておいても、別に供給してもよい。ただし別に供給すると原料タンクおよびポンプが2台必要になるため、あらかじめ混合しておく方が好ましい。
【0011】その混合比率はモル比でインデン/シクロペンタジエン(ジシクロペンタジエンはシクロペンタジエンに換算する)=2〜1000であり、好ましくは2〜100、より好ましくは2〜20である。インデン量が多いと反応は重質分の収量は比較的少なくなるが、未反応インデンが多くなるため得策ではない。シクロペンタジエンまたはジシクロペンタジエンの量が多いと、化合物2または3で代表される重質分が多く生成し、原料の有効利用率が低下する。
【0012】本発明における組成物を製造する際には溶媒を使用してもよい。その使用目的は各成分濃度を低減させ、副生成物である重質分を減少させるためにある。具体的には炭素数6〜13の炭化水素が適当で、これらの中でも汎用性のあるノルマルヘキサン、イソヘキサン、ノルマルヘプタン、イソヘプタン、ノルマルオクタン、ノルマルノネン、ノルマルデカン、ノルマルウンデカン、ノルマルドデカン、ノルマルトリドデカン、イソオクタン、イソノネン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼン、ジエチルベンゼン、トリエチルベンゼン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサンが好ましく使用される。これらの二種類以上を混合して使用してもよい。
【0013】溶媒を使用する際には、ジシクロペンタジエン、インデン、1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンの各沸点と5℃以上の沸点差があるものが好ましく、またこのような溶媒を使用する際はあらかじめインデンと、あるいはインデンとシクロペンタジエンおよびジシクロペンタジエンと混合しておくことが好ましい。
【0014】これらを原料として、および必要により溶媒を用いて1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンの合成を行うのであるが、反応形式等の製造方法については特に限定されない。本発明における反応および蒸留精製の操作はバッチ式、流通系連続式のいずれの場合においても達成することができるが、工業的には流通系連続式を選択することが好ましい。反応器に関しては完全混合型反応器、ピストンフロー型反応器いずれも使用できる。その市販品として(株)ノリタケカンパニー製「スタティックミキサー」、住友重機械工業(株)製「スルーザーミキサー」、(株)櫻製作所製「スケヤミキサー」などがあげられる。反応は一段または多段で行なうことができ、完全混合型反応器、ピストンフロー型反応器を並列または直列で組み合わせて用いることができる。
【0015】反応温度は、100〜350℃である。とくにジシクロペンタジエンを原料に用いる場合は、反応温度は100℃以上であることが好ましく、更に好ましくは、反応温度は150℃以上である。また反応温度が350℃よりも高いと式〔II〕および〔III〕で表される重質分が多く生成するようになる。シクロペンタジエンを原料に用いる場合は、反応温度は100〜350℃が好ましい。バッチ式反応器での反応条件は、反応時間0.01〜100hであり、好ましくは0.05〜5hであり、より好ましくは0.1〜3hである。反応圧力は常圧から10,000kPa である。連続式反応器での反応条件は、空間速度0.01〜100h-1であり、好ましくは0.05〜50h-1であり、より好ましくは0.1〜10h-1である。空間速度が100h-1を超えた場合には、未反応物が多くなり不適当である。反応圧力は常圧から10,000kPa である。
【0016】反応器から抜き出された反応混合物は精製工程に導かれる。精製には、一般的にクロマト分離、結晶分離、蒸留分離などの方法があるが、蒸留分離が好ましく、バッチ式蒸留でも連続式蒸留でもよい。バッチ式蒸留の場合、残存シクロペンタジエン、溶媒(使用した場合)、ジシクロペンタジエン、インデンの各成分を分離する方法と3〜4成分同時に分離する方法がある。蒸留塔には分離効率をあげるため、各種充填物を充填したり、還流を行うことができる。理論段数については各蒸留塔において、1〜100段であり、好ましくは2〜50段、より好ましくは3〜30段である。還流比は蒸留塔の分離状態をみて決定されるものであるが、1〜50が適当である。
【0017】初めに各成分を分離する方法として、残存シクロペンタジエンが分離され、蒸留条件は圧力0.01〜1000kPa、温度20〜200℃で任意に選ばれる。次に溶媒(使用した場合)、残存ジシクロペンタジエン、インデンを分離する。蒸留条件は温度30〜150℃、圧力は10kPa 以下が適当である。更に目的成分である1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンの蒸留条件は、温度50〜200℃、圧力1kPa 以下で分離する。釜残からは反応副生成物である重質物が得られる。次に2〜3成分同時に分離する方法として、残存シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、インデンの3成分同時に分離する。蒸留条件は温度30〜150℃、圧力は10kPa 以下が適当である。1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンの蒸留条件は、温度50〜200℃、圧力1kPa 以下で分離する。
【0018】連続式の蒸留の場合は少なくとも2本以上の蒸留塔を含むプロセスであることが好ましい。蒸留塔が2本の場合は第1塔で、塔頂からシクロペンタジエン、溶媒(使用した場合)、残存ジシクロペンタジエン、インデンを回収し、塔底の混合物を第2塔に送り、第2塔の塔頂で目的物の1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンを得る。溶媒を用いた場合は、これも回収する必要がある。塔底からは重質物が得られる。この場合第1塔での蒸留条件はジシクロペンタジエン、インデンが残存している場合は温度30〜150℃、圧力は10kPa 以下が適当であり、残存していない場合は蒸留条件は1〜100kPa、温度20〜140℃である。第2塔では温度50〜200℃、圧力1kPa 以下である。ジシクロペンタジエン、インデンが残存しない場合は、蒸留条件は1〜100kPa、温度20〜140℃でシクロペンタジエン、使用した場合は溶媒が回収されるが、ジシクロペンタジエンに含まれる不純物がある場合には、温度30〜150℃、圧力は10kPa 以下の条件で除去する操作を加えておくことが好ましい。そうすることにより1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンの純度を高く保つことができる。
【0019】蒸留塔が3本の場合は第1塔で、塔頂から主としてシクロペンタジエンを分離する。蒸留条件は圧力0.1〜1MPa、温度0〜100℃で任意に選ばれる。塔底から得られた混合物は第2塔に送られ、第2塔の塔頂では、溶媒(使用した場合)、場合によっては残存ジシクロペンタジエン、インデンを同時に回収する。ジシクロペンタジエン、インデンが残存している場合、温度30〜150℃、圧力は10kPa 以下が適当であり、残存していない場合は蒸留条件は1〜100kPa、温度20〜140℃である。第2塔の塔底から得られる混合物は第3塔に送られ、第3塔の塔頂から温度50〜200℃、圧力1kPa 以下の条件で1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンを分離精製する。ジシクロペンタジエンが残存しない場合は、蒸留条件は1〜100kPa、温度20〜140℃で溶媒(使用した場合)が回収されるが、ジシクロペンタジエンに含まれる不純物がある場合には、温度30〜150℃、圧力は10kPa 以下の条件で除去する操作を加えておくことが好ましい。かくすることにより1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンの純度を高く保つことができる。
【0020】蒸留塔を4本使用場合は第1塔では、塔頂からシクロペンタジエンが分離される。蒸留条件は圧力0.1から1MPa、温度0〜100℃で任意に選ばれる。この塔底から得られた混合物はボトムは第2塔に導かれ、塔頂から、溶媒(使用した場合)を同時に回収する。蒸留条件は1〜100kPa、温度20から140℃である。この塔底から得られた混合物は第3塔に導かれ、ジシクロペンタジエン、インデンを主成分とした混合物が分離される。蒸留条件は温度30〜150℃、圧力は10kPa 以下が適当である。第3塔の塔底から得られた混合物は第4塔に導かれ、温度50〜200℃、圧力1kPa 以下で1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンが分離され、塔底からは反応副生成物である重質物が得られる。
【0021】蒸留塔を4本使用する場合の別の方法は、第1塔の塔頂からシクロペンタジエンを分離する。蒸留条件は圧力0.1から1MPa、温度0〜100℃で任意に選ばれる。この塔底から得られた混合物はボトムは第2塔に導かれ、塔頂から溶媒(使用した場合)、ジシクロペンタジエン、インデンを同時に回収する。蒸留条件は10kPa 以下で、温度30から150℃である。この塔頂から得られた混合物を第3塔に導き、塔頂から溶媒(使用した場合)を分離し、塔底からジシクロペンタジエン、インデンを分離する。第3塔の蒸留条件は圧力1〜100kPa、温度20〜140℃が適当である。第2塔の塔底から得られた混合物は第4塔に導かれ、温度50〜200℃、圧力1kPa 以下で1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンが塔頂から分離され、塔底からは反応副生成物である重質物が得られる。
【0022】バッチ式にしても連続式にしても、1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンが高温で分解するため、最高温度は200℃以下に保ち、蒸留を行うことが肝要である。また、溶媒を使用した場合は、各溶媒により沸点が異なるため、蒸留塔と蒸留条件も異なる。おのおのの蒸留塔には分離効率をあげるため、各種充填物を充填したり、還流を行うことができる。理論段数については各蒸留塔において、1〜100段であり、好ましくは2〜50段、より好ましくは3〜30段である。還流比は各蒸留塔の分離状態をみて決定されるものであるが、1〜50が適当である。上述の製造方法を採用することにより、式〔II〕または〔III〕で表されるシクロペンタジエン3量体の含有量が低減された1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンが得られる。
【0023】ここで、シクロペンタジエンの3量体は式〔II〕で表されるノルボルネン型のオレフィン構造とシクロペンテン型のオレフィン構造を有するジオレフィン化合物と、式〔III〕で表されるノルボルネン型のオレフィン構造を2組有するジオレフィン化合物であり、メタセシス開環重合のみならず、環状オレフィンのオレフィン部位での単独重合や低級α−オレフィンとの共重合の際に得られる樹脂の光学的性質を低下させることがある。前述のように本発明の製法を採用することにより、式〔II〕または式〔III〕で表されるシクロペンタジエン3量体の合計の含有量は5,000ppm以下、好ましくは4,000ppm以下、より好ましくは3,000ppm以下の範囲とすることが可能である。式〔III〕の含有量については本発明の製法の採用により 3,000ppm以下で、好ましくは2,500ppm以下、より好ましくは 2,000ppm以下とすることができる。式〔II〕または式〔III〕の化合物の含有量を上記範囲とすることにより、得られた化合物1で表される1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンは、メタセシス開環重合のみならず、環状オレフィンのオレフィン部位での単独重合あるいは低級α−オレフィンとの共重合の際にこの原料を用いてもゲル化を起こすことが少なく、実質的な樹脂の光学的性質の低下が少ない。式〔II〕と式〔III〕の化合物の合計量を100ppm未満とすることは、重合用単量体としてより好ましく使用できるが、蒸留精製を行なう際に負担がかかり、蒸留塔の段数、還流量が多大になるなどしてその製造上経済的に好ましくない。
【0024】蒸留により分離した未反応シクロペンタジエン、溶媒(使用する場合)、ジシクロペンタジエン、インデンは、リサイクル使用することが好ましく、経済的に安価で製造することができる。1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンは、エンド体、エキソ体の異性体混合物で、エンド体とエキソ体とのモル比が80/20〜60/40である。
【0025】また本反応においては酸化防止剤、重合禁止剤を加えることができる。例えば、ハイドロキノン、2,6−ジ−tert−ブチルフェノル、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、4−メトキシフェノール等のフェノール系化合物、N,N−ジメチルヒドロキシルアミン、N,N−ジエチルヒドロキシルアミン等のヒドロキシルアミン化合物などが好適に添加される。その添加量は、反応器中に供給される反応原料全量に対して、通常10〜10,000ppm、好ましくは50〜 5,000ppmの範囲である。
【0026】以上のようにして製造される本発明の1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンは、前記の公知の方法により重合することができる。メタセシス重合を行なう場合では、例えば、特開平9−183832号公報、特開平8−151435号公報、特開平5−043663号公報、特開平1−172422号公報、特開平1−172421号公報、特開平1−168725号公報、特開平1−168724号公報、特開昭60−026024号公報などで開示されているような方法で行うことができる。具体的には、(a)遷移金属化合物触媒成分と、(b)金属化合物助触媒成分から成る触媒を用いる方法である。
【0027】(a)遷移金属化合物触媒成分は、周期律表第IVB、VB、VIB、VIIB または VIII族の遷移金属の化合物であり、これら遷移金属のハロゲン化物、オキシハロゲン化物、アルコキシハロゲン化物、アルコキシド、カルボン酸塩、(オキシ)アセチルアセトネート、カルボニル錯体、アセトニトリル錯体、ヒドリド錯体、これらの誘導体、これらのホスフィン化合物 等の錯化剤による錯化物が挙げられる。
(b)金属化合物助触媒成分としては、周期律表第IA、IIA、IIB、IIIA または IVA族金属の化合物で少なくとも一つの金属元素−炭素結合、または金属元素−水素結合を有するものであり、例えば、Al、Sn、Li、Na、Mg、Zn、Cd、Bなどの有機化合物が挙げられる。また、メタセシス重合活性を高めるために、(a)、(b)両成分の他に、脂肪族第三級アミン、芳香族第三級アミン、分子状酸素、アルコール、エーテル、過酸化物、カルボン酸、酸無水物、酸クロリド、エステル、ケトン、含窒素化合物、含硫黄化合物、含ハロゲン化合物、分子状ヨウ素、その他ルイス酸等を加えることができる。
【0028】一方、テトラシクロドデセンのオレフィン部位での単独重合、あるいは低級α−オレフィンとの共重合は、メタロセン触媒を含むチーグラー触媒を用いて行なうことができ、メタロセン触媒を用いる場合は例えば、特開平3−045612号公報、特開平2−173112号公報、特開平4−063807号公報、特開昭64−000106号公報、特開昭61−221206号公報などに開示されている方法で行うことができる。具体的には、(c)周期律表のIVB、VB またはVIB族からなる遷移金属の化合物成分と、(d)有機アルミニウムオキシ化合物成分からなる触媒を用いる方法である。
【0029】(c)の遷移金属化合物成分は、周期律表のIVB、VB またはVIB族の遷移金属の化合物であり、少なくとも2個のシクロアルカジエニル基またはその置換体を多座配位性化合物、あるいはそれらシクロアルカジエニル基またはその置換体が炭化水素基またはシリレン基あるいは置換シリレン基を介して結合した多座配位性化合物を配位子とした化合物が挙げられる。
(d)有機アルミニウムオキシ化合物成分は、下記式〔IV〕および下記式〔V〕で表される化合物である。式中のRは炭化水素基で具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などであり、mは2以上の整数を示す。
【0030】
【化7】


【化8】


【0031】また、チーグラー触媒としてはチタン、バナジウム化合物が触媒に用いられており、例えば特開平9−176396号公報、特開昭62−252406号公報、特開昭62−252407号公報などに記載の、炭化水素溶媒に可溶性のバナジウム化合物および有機アルミニウム化合物から形成される触媒を用いる方法によって、エチレンのようなα−オレフィンと環状オレフィンの共重合体が合成される。
【0032】なお開環重合を行った際は、得られるポリマーはオレフィンを含むことがあり、そのため耐熱劣化性や耐光性を改善するために、オレフィンの一部あるいは全部を水素化することができる。水素添加反応はニッケル、パラジウム、白金などの貴金属を無機担体に担持、分散させたものが使用される。また均一系の水素化触媒も用いることができる。水素圧力は0.1〜20MPa、温度は0〜200℃で行われる。
【0033】
【発明の実施の形態】以下、本発明を実施例により更に詳しく説明する。なお、以下に記載の%は特に言及しない限り重量%である。
【実施例】<実施例1>インデン(純度94.2%)、ジシクロペンタジエン(純度94.7%)、メチルシクロヘキサンを重量比44/6/50で混合し、50mlオートクレーブに連続的に導入し、圧力を5,000kPa に維持しながら連続的に反応生成物を抜き出す方法を用いた。反応温度は230℃とし、空間速度は4h-1として5時間反応を行った。反応生成物は0.07kPa および還流比10の条件下で精製し、88〜92℃の留分72gを得た。ガスクロマトグラフィーによる分析の結果、1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンの純度は99.6%であった。なおこの留分には、式〔II〕の化合物2,600ppmおよび式〔III〕の化合物1,200ppmが含まれていた。
【0034】撹拌羽を取り付けた2リットルなす型フラスコに、窒素雰囲気下で乾燥したトルエンを1,000ml導入した。このフラスコに更にジクロロエトキシオキソバナジウム(1mmol)と、先に合成した、式〔II〕の化合物を2,600ppm、式〔III〕の化合物を1,200ppm含む1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン(10g)を加えた。この溶液を撹拌しながら、エチレンと窒素の混合ガス(モル比:エチレン/窒素=1:5)を、溶液に200リットル/hの流量でバブリングを行った。ここに更にエチルアルミニウムセスキクロリド(10mmol)を滴下して重合を開始し、5℃で20分間重合を行った。メタノールを30ml加えて重合を停止し、反応混合物を2リットルのメタノールに注ぎ、共重合体を析出させた。共重合体を真空乾燥し、240℃で厚さ1mmのプレスシートを作製した。均質の透明なシートが得られ、なんらゲル状のものは観測されなかった。
【0035】<比較例1>インデン、ジシクロペンタジエンおよびノルマルヘキサンを重量比32/18/50で混合した原料を用いること以外は、実施例1と同様に実験を行った。更に反応生成物を0.07kPa および還流比10の条件下で精留し、88〜92℃の留分118gを得た。ガスクロマトグラフィーによる分析の結果、1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンの純度は96.2%であった。なおこの留分には、式〔II〕の化合物27,100ppmおよび式〔III〕の化合物10,100ppmが含まれていた。また上記で得られた1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン組成物を用いた以外は実施例1と同様にエチレンとの共重合を行い、プレスシートを作製した。シートにはゲルの存在が確認された。またこのゲルを切り出してホットプレート上で300℃まで加熱したが、溶融しなかった。
【0036】<実施例2>実施例1で合成した、式〔II〕の化合物2,600ppmおよび式〔III〕の化合物1,200ppmを含む1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン組成物(20g)、ノルボルネン(2.5g)、ジシクロペンタジエン(2.5g)およびトルエン(200ml)を十分に乾燥した500mlオートクレーブに導入した。これにトリエチルアルミニウム(3mmol)を加え、更に四塩化チタン(0.7mmol)とトリエチルアミン(7mmol)を加え、30℃で6時間開環重合を行った。反応物をアセトンとイソプロピルアルコールの混合物に注入することによりポリマーを沈澱させ、得られたポリマーを再びトルエンに溶解し、再沈澱の操作を2度繰り返し、減圧乾燥を行ってポリマー(21g)を得た。200mlのオートクレーブに0.5%のパラジウムカーボン(0.4g)、トルエン(100ml)を導入し、更に開環重合したポリマー(4g)を加えた。20℃で、水素圧力を5MPa として、1時間水素化を行った。反応終了後、触媒をろ過し、メタノールを用いて再沈澱を行った。得られた共重合体を真空乾燥し、350℃で厚さ1mmのプレスシートを作製した。均質の透明なシートが得られ、なんらゲル状のものは観測されなかった。
【0037】<比較例2>比較例1で使用した、式〔II〕の化合物27,100ppmおよび式〔III〕の化合物10,100ppmを含む1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンの組成物を使用すること以外は、実施例2と同様にして重合および水素化を行い、ポリマーを得た。これを用いて作製したプレスシートにはゲル状のものが見られた。
【0038】
【発明の効果】本発明の製造方法により得られる1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンは、シクロペンタジエンの3量体の含有量が少なく、その結果、得られた1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンを用いて重合を行う場合には、樹脂に実質的にゲルの発生を防止することができ、樹脂の光学的性質の低下が少ない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 シクロペンタジエンおよび/またはジシクロペンタジエンと、シクロペンタジエン基準で2〜50倍モルのインデンを加熱反応させ、得られる反応物混合物を精留し、常圧換算で250〜300℃の範囲に含まれる成分を主とする留分を回収することからなる、下記式〔II〕および式〔III〕で表されるシクロペンタジエンの3量体の合計含有量が100〜5,000ppmである、下記式〔I〕で表される1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンの組成物の製造方法。
【化1】


【化2】


【化3】


【請求項2】 シクロペンタジエンの3量体のうち、前記式〔III〕で表されるシクロペンタジエンの3量体の含有量が100〜3,000ppmである特許請求の範囲第1項に記載の製造方法。
【請求項3】 シクロペンタジエンおよび/またはジシクロペンタジエン、およびインデンを混合し加熱・反応する際、反応に不活性な炭化水素系溶剤を使用することを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】 シクロペンタジエンおよび/またはジシクロペンタジエン、およびインデン、および反応に不活性な炭化水素系溶剤の合計重量に対するジシクロペンタジエン換算の重量の比が0.02〜0.20である請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】 前記反応における温度が100〜350℃、圧力が常圧〜10MPa および滞留時間が0.01〜100時間である請求項3に記載の製造方法。
【請求項6】 未反応シクロペンタジエンまたはジシクロペンタジエン、インデンおよび反応に不活性な炭化水素系溶剤を循環・再利用することを特徴とする請求項3に記載の製造方法。

【公開番号】特開2000−26331(P2000−26331A)
【公開日】平成12年1月25日(2000.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平10−204269
【出願日】平成10年7月6日(1998.7.6)
【出願人】(000231682)日本石油化学株式会社 (33)
【Fターム(参考)】