説明

1,6−ヘキサンジオールをオリゴ−およびポリエステルの水素化によって製造する方法

本発明は、DCLをジオールまたはジオール混合物でエステル化することによって得られるオリゴ−およびポリエステルを水素化する方法に関し、この場合この水素化は、触媒の存在で実施され、この触媒の前駆物質は、酸化銅、酸化アルミニウムおよびランタン、鉄、タングステン、モリブデン、チタンまたはジルコニウムの酸化物の少なくとも1つを含有するものとし、ならびに主要成分としてアジピン酸および6−ヒドロキシカプロン酸のオリゴ−およびポリエステルを含有するエステル混合物を接触水素化し、およびDCLをジオールでエステル化することによって1,6−ヘキサンジオールを製造する方法に関し、この場合には、殊に1,6−ヘキサンジオールまたはジオール混合物が取得される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジカルボン酸溶液(DCL)をジオールまたはジオール混合物でエステル化することによって得られるオリゴ−およびポリエステルを水素化する方法に関し、この場合この水素化は、触媒の存在で実施され、この触媒の前駆物質は、酸化銅、酸化アルミニウムおよびランタン、鉄、タングステン、モリブデン、チタンまたはジルコニウムの酸化物の少なくとも1つを含有し、ならびに1,6−ヘキサンジオールを、主要成分としてアジピン酸および6−ヒドロキシカプロン酸のオリゴ−およびポリエステルを含有するエステル混合物を接触水素化し、およびDCLをジオールでエステル化することによって製造する方法に関し、この場合には、殊に1,6−ヘキサンジオールまたはジオール混合物が取得される。
【0002】
主にポリエステル−およびポリウレタンの分野に使用される、需要のあるモノマー単位である1,6−ヘキサンジオールには、多大な要求が存在する。
【0003】
H.−J. Arpeは、Industrielle organische Chemie,第6版 2007,WILEY−VCH−Verlag,第267頁,終わりから2番目の段落において、アジピン酸のエステル化ならびに1,6−ヘキサンジオールへのジエステルの接触水素化を記載している。
【0004】
WO 2004/085356の記載から、モノアルコールとしてのアジピン酸およびメタノールから製造されたアジピン酸ジメチルエステルを水素化し、1,6−ヘキサンジオールに変えることは、公知である。使用される固定床触媒は、銅、酸化アルミニウムおよび酸化ランタンを含有する。水素化は、240℃/200バールで行なわれた。実施例2によれば、98〜99%のエステル変換率が達成された。水素化生産物は、57質量%または62質量%の1,6−ヘキサンジオール含量を構成した。62質量%は、ほぼ96%の1,6−ヘキサンジオール収率に相当する。アジピン酸の価格および水素化生産物からの大量のメタノールの費用の掛かる分離のために、純粋なアジピン酸を使用することは、不利である。更に、ジメチルエーテルの形成によってメタノール損失が生じる。アジピン酸および6−ヒドロキシカプロン酸のオリゴ−および/またはポリエステルの水素化は、記載されていない。
【0005】
純粋なアジピン酸の代わりに、既にジカルボン酸溶液(DCL)は、1,6−ヘキサンジオールを製造するための出発生成物として使用された。このジカルボン酸溶液は、空気でのシクロヘキサンの酸化の際に廃棄物生成物として得られ、酸化された混合物を水で抽出することによってシクロヘキサノンおよびシクロヘキサノールを生じた。
【0006】
シクロヘキサノールおよびシクロヘキサノンを製造するための生産プラントを組み込んだシステムおよび1,6−ヘキサンジオールを製造するための出発生成物としてのDCL廃棄物生成物の利用は、純粋なアジピン酸と比較して有利な原料費を生じる。更に、前記のシステムおよび利用は、廃棄物生成物を環境保護的に利用することである。
【0007】
ドイツ連邦共和国特許第19607954号明細書の実施例には、脱水されたジカルボン酸をメタノールでエステル化し、エステル混合物を易揮発性物質の分離後に、銅、酸化亜鉛および酸化アルミニウムを含有する触媒の存在で水素化し、1,6−ヘキサンジオールおよびメタノールに変えることが記載されている。220℃および220バールでエステル変換率は、99.5%であり、1,6−ヘキサンジオールの選択率は、99%を上廻る。
【0008】
分離されかつ返送されなければならないメタノールの使用、および水素化の経過中に減少する、水素化触媒の側方圧縮強さは、不利である。
【0009】
ジオール、殊にα,ω−ジオールをエステル化アルコールとして使用することは、モノアルコールと比較して有利である。エステル化アルコールの損失は、減少し、水素化生産物の後処理は、簡易化される。
【0010】
欧州特許出願公開第922688号明細書には、アジピン酸および1,6−ヘキサンジオールから製造されたオリゴエステルの水素化が記載されている。水素化は、酸化マンガンおよび酸化アルミニウム、および第VI副族の金属の酸化物の少なくとも1つを含有する、酸化亜鉛不含の銅触媒の存在で行なわれた。実施例2に記載の水素化は、230℃および300バールで実施された。水素化生産物の1,6−ヘキサンジオール含量は、97.1%であった。オリゴエステルを製造するための出発生成物としてのDCLの使用は、欧州特許出願公開第922688号明細書に記載されていない。
【0011】
これまでに記載された公知技術水準は、純粋なアジピン酸およびモノアルコールから製造されたアジピン酸ジエステル、DCLおよびモノアルコール、およびアジピン酸および純粋な1,6−ヘキサンジオールから製造されたオリゴエステルおよびポリエステルが約96〜99%の高い収率で1,6−ヘキサンジオールに水素化されうることを示す。この場合、水素のためには、銅および酸化亜鉛、銅および酸化アルミニウムまたは銅、酸化アルミニウムおよび酸化亜鉛ベースの触媒が使用された。
【0012】
また、DCLおよび1,6−ヘキサンジオールまたはジオール混合物から出発して製造されたオリゴエステルおよび/またはポリエステルを触媒反応により水素化し、1,6−ヘキサンジオールに変えることは、既に公知である。この変法は、1,6−ヘキサンジオール目的生成物またはプロセスからの主に1,6−ヘキサンジオールを含有するジオール混合物がジカルボン酸をエステル化するための方法に使用されうるという原理的な利点を有する。しかし、オリゴエステルおよびポリエステルの水素化に使用される触媒および/または意図される1,6−ヘキサンジオールの収量は、不満足なものである。
【0013】
即ち、米国特許第3524892号明細書の記載から、シクロヘキサンを空気で酸化し、シクロヘキサノンとシクロヘキサノールと未反応のシクロヘキサンとアジピン酸と6−ヒドロキシカプロン酸とからなる混合物に変え、この酸化による反応生成物を水で抽出することは、公知である。相分離によって、有機相と水相が得られる。有機相は、主にシクロヘキサン、シクロヘキサノールおよびシクロヘキサノンからなり、少なくとも部分的に酸化工程に返送される。水相は、主にアジピン酸および6−ヒドロキシカプロン酸を含有する。この水相は、脱水され、1,6−ヘキサンジオールと反応され、オリゴエステルに変わる。オリゴエステルは、260〜275℃および275〜330バールで亜クロム酸銅触媒の存在で水素化され、主要生成物としての1,6−ヘキサンジオールに変わる。
【0014】
亜クロム酸銅のように、このクロム含量のために毒性であり、かつ水素化の運転の際および使用された触媒およびクロム含量の副生成物の廃棄の際に高い費用を必要とする触媒の使用は、不利である。更に、高い水素化温度および高い水素化圧力は、強化された副生成物の形成をまねく、触媒活性の不足を記録に残す。前記方法による1,6−ヘキサンジオールの収量は、記載されていない。
【0015】
欧州特許出願公開第661255号明細書には、DCLを1,6−ヘキサンジオールで、または水素化の際に得られるジオール混合物でエステル化することによって製造されたエステル混合物の水素化が記載されている。水素化は、非連続的に250〜300℃および150〜300バールで行なわれた。触媒として、銅および酸化亜鉛を含有する懸濁液触媒が使用された。実施例において、280℃および280バールで水素化が行なわれた。1,6−ヘキサンジオールの収量、エステルの変換率または触媒の消費量についての数値は、記載されていない。
【0016】
高い水素化温度、高い水素化圧力および水素化生産物からの懸濁された水素化触媒の困難な除去は、不利である。
【0017】
特開2005−008586号公報は、欧州特許出願公開第661255号明細書とは、特に固定床触媒が使用されることによって区別される。固定床触媒として、前記公報の第11頁段落[0018]に記載されているように、CuO/ZnO触媒、CuO/ZnO/Al23触媒、CuO/SiO2触媒、CuO/ZrO2触媒およびCuO/Cr23触媒が使用される。これは、例えば既に高い収量で、純粋なアジピン酸とモノアルコールとから製造されたアジピン酸エステル、DCLとモノアルコールとのエステル、および純粋なアジピン酸と1,6−ヘキサンジオールとから製造されたオリゴエステルおよびポリエステルの水素化のために使用されるような触媒である。190〜250℃および1〜10MPaで水素化が行なわれた。圧力の上昇は、前記公報の第13頁段落[0022]に記載されているように、反応結果の改善を全く生じない。
【0018】
前記公報の第15頁段落[0026]に、オリゴエステル/ポリエステル混合物の製造は、次のように記載されている:シクロヘキサノールおよびシクロヘキサノンが取り除かれた、シクロヘキサンの液相酸化による生成物は、苛性ソーダ水溶液で精製された。この場合に除去された、ナトリウムカルボキシレートの水溶液は、硫酸で酸性にされた。遊離されたカルボン酸は、メチル−イソブチルケトンで抽出された。なかんずく、次の生成物、例えばシクロヘキサノール、1,2−シクロ−ヘキサンジオールおよび1,4−シクロ−ヘキサンジオール、シクロヘキサノン、シクロヘキサンジオンならびに低級アルコールが除去されたので、もはや酸化後および水での抽出後に得られたDCLに相当しない、抽出剤の除去後に得られたカルボン酸混合物は、1,6−ヘキサンジオール、1,5−ペンタンジオールおよび一価アルコール、例えばペンタノールおよびブタノールからなる混合物でエステル化された。
【0019】
特開2005−008586号公報の欠点は、実施例1〜5(実施例1〜3および5CuO/ZnO、実施例4CuO/SiO2、触媒として)により、84〜91%だけの変換率の際に単に84〜89%の1,6−ヘキサンジオール収率が達成されたことである。更に、記載された1,6−ヘキサンジオール収率は、水素化が低級モノアルコール、例えばメタノールの存在で実施された場合にのみ達成される。低級モノアルコールを全く使用しない場合には、前記公報の第12頁段落[0019]の最後の3行の記載と同様に、1,6−ヘキサンジオールの収率は、僅かである。
【0020】
DCLをジオールまたはジオール混合物でエステル化する場合には、異なる組成のオリゴマーエステルが生じる。このオリゴマーエステルの水素化は、相応する触媒に対して高度な要求が課されている。それというのも、この触媒は、毒化されてはならず、それにも拘わらず高い活性および選択性を示さなければならないからである。従って、公知技術水準から出発して、モノマーのエステルの水素化の際に純粋なアジピン酸と低級アルコール、例えばメタノールとの反応によって製造された触媒が、複合体のDCLからジオールまたはジオール混合物でのエステル化によって製造されたエステルの水素化も最終製品の同様に良好な収率および純度で行なうことは、自明なことではない。
【0021】
従って、DCLをジオール混合物で触媒の存在でエステル化することによって得られるオリゴエステルおよびポリエステルを水素化する方法を提供するという課題が課された。この場合、水素化に使用される触媒は、高い水素化活性を有し、実際に完全なオリゴエステルおよび/またはポリエステルの変換率が高い1,6−ヘキサンジオール収率および選択性の際に達成されるはずである。更に、触媒は、高い有効寿命を不変の変換率および殆ど減少されない側面圧縮強さを可能にするはずである。更に、この触媒は、1,6−ヘキサンジオールの精製を本質的に複雑にする副成分を全く形成しないはずである。最終的に、この触媒は、この触媒を用いての作業およびこの触媒の廃棄を困難にする毒性成分を全く含有することがないはずである。
【0022】
この課題は、ジカルボン酸溶液をジオールまたはジオール混合物でエステル化することによって得られるオリゴエステルおよび/またはポリエステルを水素化する方法によって解決され、この場合この水素化は、その前駆体が1つの方法により製造可能である触媒成形体を用いて、
(i)酸化銅、酸化アルミニウム、およびランタン、タングステン、モリブデン、チタン、ジルコニウムまたは鉄の酸化物の少なくとも1つを含む酸化物材料を準備し、
(ii)前記の酸化物材料に粉末状または金属の銅、銅薄片、粉末状のセメント、黒鉛またはこれらの混合物を添加し、
(iii)(ii)から生じる混合物を変形し、成形体に変えることにより、実施され、
その際、酸化物材料は、活性成分の銅、成分のアルミニウムおよび成分のランタン、タングステン、モリブデン、チタンまたはジルコニウムの酸化物の少なくとも1つを同時に、または順次に沈殿させ、引続き乾燥し、か焼し、変形後に工程(iii)により触媒成形体を再びか焼することによって得られる。
【0023】
本発明は、水素のための特殊な触媒前駆体の成形体を使用することにより、DCLのオリゴエステルおよびポリエステルを水素化し、ジオールに変える方法に関し、この場合触媒前駆体の成形体は、酸化銅および酸化アルミニウムと共に、ランタン、タングステン、モリブデン、チタン、ジルコニウムまたは鉄の酸化物の少なくとも1つならびに金属銅、銅小板、粉末状セメント、黒鉛または混合物を含有する。DCLは、グリセリン、トリメチロールプロパン、プロパングリコール、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオールまたはこれらのジオールの混合物の群から選択されたジオールによりエステル化される。好ましいのは、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオールまたはこれらのジオールの混合物である。DCLを1,6−ヘキサンジオールを用いてエステル化し、オリゴエステルおよび/またはポリエステルに変えることは、好ましい。
【0024】
ランタン、タングステン、モリブデン、チタンまたはジルコニウムの酸化物の中から、酸化ランタンは、好ましい。
【0025】
酸化鉄は、酸化鉄(III)を意味する。
【0026】
好ましい実施態様において、本発明による成形体は、完全触媒、含浸触媒、シェル触媒および沈殿触媒として使用される。
【0027】
本発明による方法で使用される、水素化のための触媒は、活性成分の銅、成分のアルミニウムおよび成分のランタン、タングステン、モリブデン、チタンまたはジルコニウムの酸化物の少なくとも1つが有利にソーダ溶液で同時にかまたは順次に沈殿され、引続き乾燥、か焼、タブレット化および再度か焼されることを示す。
【0028】
殊に、次の沈殿法がこれに該当する:
A)銅塩溶液、アルミニウム塩溶液およびランタン、タングステン、モリブデン、チタンまたはジルコニウムの少なくとも1つの塩の溶液、または銅塩、アルミニウム塩およびランタン、タングステン、モリブデン、チタンまたはジルコニウムの少なくとも1つの塩の溶液を、同時にかまたは順次にソーダ溶液で沈殿させる。沈殿した材料は、引続き乾燥され、および場合によってはか焼される。
B)銅塩溶液およびランタン、タングステン、モリブデン、チタンまたはジルコニウムの少なくとも1つの塩の溶液、または銅塩およびランタン、タングステン、モリブデン、チタンまたはジルコニウムの少なくとも1つの塩を含有する溶液を、予め完成させた酸化アルミニウム担体上に沈殿させる。これは、水性懸濁液中の粉末としての特に好ましい実施態様である。しかし、担持材料は、球体、ストランド、砕石またはタブレットとして存在していてもよい。
B1)1つの実施態様(I)において、銅塩溶液およびランタン、タングステン、モリブデン、チタンまたはジルコニウムの少なくとも1つの塩の溶液、または銅塩およびランタン、タングステン、モリブデン、チタンまたはジルコニウムの少なくとも1つの塩を含有する溶液を、有利にソーダ溶液で沈殿させる。装入物として、担持材料の酸化アルミニウムの水性懸濁液が使用される。
【0029】
A)またはB)から生じる沈殿された沈殿物は、例えばドイツ連邦共和国特許出願第19809418.3号の記載と同様に、常法で濾過され、特にアルカリ金属不含になるように洗浄される。
【0030】
A)からの最終製品ならびにB)からの最終製品は、50〜150℃の温度、特に120℃で乾燥され、引続き場合によっては特に2時間、一般に200〜600℃、殊に300〜500℃でか焼される。
【0031】
A)および/またはB)のための出発物質として、原理的に施与時に使用される溶剤中で可溶性の全てのCu(I)塩および/またはCu(II)塩、例えば硝酸塩、炭酸塩、酢酸塩、蓚酸塩またはアンモニウム錯体、類似のアルミニウム塩およびランタン、タングステン、モリブデン、チタンまたはジルコニウムの塩が使用されてよい。A)およびB)に記載の方法にとって特に有利には、硝酸銅が使用される。
【0032】
本発明による方法において、上記の乾燥された、場合によりか焼された粉末は、有利にタブレット、リング状物、リング状タブレット、押出品、ハネカム体または類似の成形体に加工される。
【0033】
このために、全体的に公知技術水準から適当な方法が考えられる。
【0034】
酸化物材料の組成は、一般にそれぞれ上記の酸化物成分の総和の全質量に対して酸化銅含量が40〜90質量%の範囲内にあり、ランタン、タングステン、モリブデン、チタンまたはジルコニウムの酸化物含量が0〜50質量%の範囲内にあり、および酸化アルミニウム含量が50質量%までの範囲内にあるような状態にされており、この場合これら3つの酸化物は、一緒になってか焼後に酸化物材料の少なくとも80質量%であり、その際、セメントは、上記の意味において酸化物材料に分類されない。
【0035】
従って、1つの好ましい実施態様において、本発明は、酸化物材料がそれぞれか焼後の酸化物材料の全質量に対して
(a)50≦x≦80質量%、特に55≦x≦75質量%の範囲内の含量を有する酸化銅、
(b)15≦y≦35質量%、特に20≦y≦30質量%の範囲内の含量を有する酸化アルミニウムおよび
(c)2≦z≦20質量%、特に3≦z≦15質量%の範囲内の含量を有する、ランタン、タングステン、モリブデン、チタンまたはジルコニウムの少なくとも1つの酸化物、但し、この場合には、80≦x+y+z≦100、殊に95≦x+y+z≦100が当てはまるものとし、を含むことによって特徴付けられる上記したような方法に関する。
【0036】
本発明による方法および水素化に使用される触媒は、ランタン、タングステン、モリブデン、チタンまたはジルコニウムを添加することによって沈殿の際に、触媒として使用される成形体の高い安定性を生じることを示す。
【0037】
一般に酸化物材料には、粉末状銅、銅小板または粉末状セメントまたは黒鉛、またはこれらの混合物がそれぞれ酸化物材料の全質量に対して1〜40質量%の範囲内、有利に2〜20質量%の範囲内、特に有利に3〜10質量%の範囲内で添加される。
【0038】
セメントとしては、特に粘土セメントが使用される。特に有利には、粘土セメントは、本質的に酸化アルミニウムおよび酸化カルシウムからなり、殊に有利には、粘土セメントは、酸化アルミニウム約75〜85質量%および酸化カルシウム約15〜25質量%からなる。更に、酸化マグネシウム/酸化アルミニウム、酸化カルシウム/酸化珪素および酸化カルシウム/酸化アルミニウム/酸化鉄を基礎とするセメントが使用されてよい。
【0039】
殊に、酸化物材料は、酸化物材料の全質量に対して最大10質量%、有利に最大5質量%の含量で、元素Re、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、PdおよびPtからなる群から選択される少なくとも1つの他の成分を有することができる。
【0040】
更に、本発明による方法の好ましい実施態様において、酸化物材料には、成形体への変形前に銅粉末、銅薄片またはセメント粉末、またはこれらの混合物以外に黒鉛が添加される。特に、成形体への変形がよりいっそう良好に実施されうるように黒鉛は、添加される。好ましい実施態様において、黒鉛は、酸化物材料の全質量に対して0.5〜5質量%が添加される。この場合、黒鉛が酸化物材料に銅粉末、銅薄片またはセメント粉末、またはこれらの混合物の前または後に、または銅粉末、銅薄片またはセメント粉末、またはこれらの混合物と同時に添加するかどうかは、些細なことである。
【0041】
それに応じて、また、本発明は、酸化物材料または(ii)から生じる混合物に黒鉛が酸化物材料の全質量に対して0.5〜5質量%の範囲内の含量で添加されることによって特徴付けられる、上記したような方法に関する。
【0042】
1つの好ましい実施態様において、本発明による方法で水素化のための触媒前駆体として、それぞれか焼後の酸化物材料の全質量に対して
(a)50≦x≦80質量%、特に55≦x≦75質量%の範囲内の含量を有する酸化銅、
(b)15≦y≦35質量%、特に20≦y≦30質量%の範囲内の含量を有する酸化アルミニウムおよび
(c)2≦z≦20質量%、特に3≦z≦15質量%の範囲内の含量を有する、ランタン、タングステン、モリブデン、チタンまたはジルコニウムの少なくとも1つの酸化物、但し、この場合には、80≦x+y+z≦100、殊に95≦x+y+z≦100が当てはまるものとし、
酸化物材料の全質量に対して1〜40質量%の範囲内の含量を有する、金属銅粉末、銅小板またはセメント粉末、またはこれらの混合物、および
酸化物材料の全質量に対して0.5〜5質量%の含量を有する黒鉛を含む酸化物材料を含有する成形体が使用されてもよく、
この場合酸化物材料、金属銅粉末、銅小板またはセメント粉末、またはこれらの混合物および黒鉛からの割合の総和は、成形体の少なくとも95質量%になる。
【0043】
銅粉末、銅小板またはセメント粉末、またはこれらの混合物および場合によっては黒鉛を酸化物材料に添加した後、変形に続いて得られる成形体は、場合によっては一般に0.5〜10時間、有利に0.5〜2時間の時間に亘って少なくとも1回か焼される。この少なくとも1回のか焼工程における温度は、一般に200〜600℃の範囲内、有利に250〜500℃の範囲内、特に有利に270〜400℃の範囲内にある。
【0044】
セメント粉末を用いる成形の場合には、か焼前に得られる成形体を水で湿潤させ、引続き乾燥させることは、好ましい。
【0045】
もう1つの実施態様において、得られた成形体は、沸騰水および/または蒸気を用いてなお処理されてもよく、その後にこの成形体は、水素化に使用される。
【0046】
酸化物の形での触媒としての使用の場合、成形体は、水素化溶液の装入前に還元性ガス、例えば水素、特に水素−不活性ガス混合物、殊に水素/窒素混合物で100〜500℃の範囲内、有利に150〜350℃の範囲内、殊に180〜200℃の範囲内の温度で予め還元される。この場合、有利には、1〜100体積%の範囲内、特に有利に1〜50体積%の範囲内の水素含量を有する混合物が使用される。
1つの好ましい実施態様において、本発明による成形体は、触媒としての使用前に自体公知の方法で還元性媒体での処理によって活性化される。活性化は、予め還元炉内で行なわれるかまたは反応器内への取付け後に行なわれる。反応器が予め還元炉内で活性化されている場合には、前記成形体は、反応器内に取り付けられ、直接に水素圧力下で水素化溶液が装入される。
【0047】
更に、本方法の対象は、次の工程:
a)シクロヘキサノールとシクロヘキサノンと6個までの炭素原子を有するカルボン酸とからなる混合物への酸素または酸素含有ガスでのシクロヘキサンの酸化、
b)a)で得られた反応混合物と水との反応および液状の二相反応混合物からのDCLの除去、
c)アルコールでのb)から得られたDCLのエステル化、
d)c)から得られたエステル混合物の接触水素化および
e)1,6−ヘキサンジオールへのd)から得られた水素化生産物の蒸留を含む、1,6−ヘキサンジオールを製造する方法であり、この方法は、
c)におけるエステル化が2〜12個の炭素原子を有する少なくとも1つのジオールで実施され、および
c)で得られたエステル化混合物が液相中で触媒成形体の存在で工程d)により水素化され、このエステル化混合物の前駆体が
(i)酸化銅、酸化アルミニウム、およびランタン、タングステン、モリブデン、チタン、ジルコニウムまたは鉄の酸化物の少なくとも1つを含有する酸化物材料を準備し、
(ii)粉末状の金属銅、銅小板、粉末状セメント、黒鉛または混合物を工程i)からの酸化物材料に添加し、および
(iii)(ii)から生じる混合物を成形し、成形体に変えることによって得られる。
【0048】
1,6−ヘキサンジオールを製造するための前記の本発明による方法ならびにオリゴエステルおよび/またはポリエステルを水素化するための本発明による方法は、出発物質として、シクロヘキサンノールおよびシクロヘキサンへのシクロヘキサンの酸化の際に(Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry,第6版、第10卷,第282頁,図2参照)副生成物として生じるカルボン酸の水溶液を使用し、以下、ジカルボン酸溶液(DCL)と呼ばれる。このジカルボン酸溶液は、(無水で質量%で計算して)一般にアジピン酸10〜40%、6−ヒドロキシカプロン酸10〜60%、グルタル酸1〜10%、5−ヒドロキシ吉草酸1〜10%、5−ホルミル吉草酸0.5〜5%、1,2−シクロヘキサンジオール1〜5%、1,4−シクロヘキサンジオール1〜5%、蟻酸2〜10%ならびに個別含量が一般に5%を上廻らない、多数の他のモノカルボン酸およびジカルボン酸、エステル、オキソ化合物およびオキサ化合物を含有する。例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、蓚酸、マロン酸、ジヒドロムコン酸、コハク酸、4−ヒドロキシ酪酸、γ−ブチロラクトンおよびカプロラクトンがモノカルボ酸およびジカルボン酸、エステル、オキソ化合物およびオキサ化合物として挙げられる。
【0049】
DCLの正確な分析により、さらなる内容物質として、1,4−シクロヘキサンジオンおよび4−ヒドロキシシクロヘキサノンが0.01〜2質量%の量でもたらされた。
【0050】
DCLは、一般に20〜80質量%の含水量を有する水溶液である。
【0051】
DCLの内容物質の中から、アジピン酸、5−ホルミル吉草酸、6−ヒドロキシカプロン酸、ジヒドロムコン酸およびカプロラクトンは、水素化によって1,6−ヘキサンジオールに変換されることができる。純粋な1,6−ヘキサンジオールを得るために、全ての別の成分は、処理工程c)〜e)中に除去されなければならない。
【0052】
アルデヒド、例えば5−ホルミル吉草酸およびケトン、例えば1,4−シクロヘキサンジオンおよび4−ヒドロキシシクロヘキサノンは、ジオールでの後のエステル化の際にアセタールおよびケタールを形成することができる。それによって、5−ホルミル吉草酸は、アセタールのさらなる反応によって1,6−ヘキサンジオールの製造のために失われうる。アセタールまたはケタールの形成によって、それぞれ結合されたアルコールは、全体的または部分的に失われうる。
【0053】
従って、DCLの組成に応じて、含有されているアルデヒドおよびケトンをエステル化工程c)前に接触水素化し、アルコールに変えることは、好ましい。
【0054】
シクロヘキサン酸化を脱過酸化触媒、例えばナフテン酸コバルトの不在で実施した場合には、DCLは、例えばドイツ連邦共和国特許出願公開第1951250号明細書および欧州特許出願公開第847979号明細書に記載された6−ヒドロペルオキシカプロン酸を含有する。脱過酸化触媒の存在で酸化を行った場合には、6−ヒドロペルオキシカプロン酸は、微少量でのみ含有されている。
【0055】
シクロヘキサン酸化を触媒なしに実施した場合には、生成された6−ヒドロペルオキシカプロン酸は、5−ホルミル吉草酸と全く同様に6−ヒドロキシカプロン酸に水素化されなければならない。この水素化は、本発明による方法の工程c)の前に行なわれる。
場合によっては本発明による方法の工程c)の前に行なわれる水素化は、1つの場合にヒドロペルオキシ基を水素化し、別の場合にアルデヒド基を水素化しなければならないので、2つの化合物の最適な水素化条件は、区別される。
【0056】
【化1】

【0057】
ヒドロペルオキシカプロン酸は、純粋に熱的にではあるが、水素化の場合よりも僅かに選択的に6−ヒドロキシカプロン酸に変換されうるので、この6−ヒドロキシカプロン酸は、ドイツ連邦共和国特許出願公開第1951250号明細書の記載により、パラジウム触媒、ロジウム触媒または白金触媒の存在で15〜130℃、特に50〜100℃、即ち中位の温度で水素化される。
【0058】
ケト基およびアルデヒド基は、ドイツ連邦共和国特許出願公開第1951250号明細書中の6−ヒドロペルオキシカプロン酸水素化の条件下で水素化されない。このために、より高い温度および圧力が必要とされる。
【0059】
場合により本発明による方法の工程c)の前に実施される、DCLの水素化は、1個の反応器中、または2個の順次に接続された反応器中で実施されてよい。2個の反応器を使用する場合には、2個の反応器は、同一の触媒または2つの異なる触媒を含有していてよい。この場合、2個の反応器は、水素化温度および水素分圧で区別されてよい。
【0060】
更に、場合により本発明による方法の工程c)の前に実施される水素化を、1つの触媒だけが充填されている反応器中で、反応器中の水素化温度が望ましい温度範囲内で上昇するように実施することは、可能である。
【0061】
場合により本発明による方法の工程c)の前で実施される水素化は、10〜200℃、有利に30〜180℃、特に有利に50〜170℃で行なわれる。この場合、水素分圧は、1〜100バール、有利に10〜80バール、特に有利に30〜60バールである。
【0062】
場合により本発明による方法の工程c)の前に実施される接触水素化には、周期律表の第7〜12族の少なくとも1つの金属、例えばルテニウム、パラジウム、ロジウム、ニッケル、コバルト、鉄、レニウム、白金、イリジウム、銅、オスミウムおよび亜鉛を含有する触媒が使用される。
【0063】
更に、担体を全く含有せず、かつ金属、金属酸化物またはこれらの混合物からなる、いわゆる非担持触媒が好適である。この場合には、鉄非担持触媒および殊にコバルト非担持触媒が好ましい。
【0064】
この場合、好ましいのは、金属のパラジウム、ルテニウム、ニッケル、コバルト、ルテニウムおよび銅である。前記金属は、金属の形ならびにこの化合物、例えば酸化物および硫化物の形で使用されてよい。
【0065】
前記の金属または金属化合物は、担体なしで使用されてよい。しかし、好ましくは、前記の金属または金属化合物は、担体上、例えばTiO2、Al23、ZrO2、SiO2、HfO2、炭素、ゼオライトまたはこれらの混合物上に施される。前記の担持触媒は、多種多様の完成形、例えばストランド、タブレットまたはリング状物で使用されてよい。
【0066】
銅、ニッケルおよびコバルトは、有利にラニーニッケル、ラニー銅またはラニーコバルトの形で使用されてよい。また、ラニー触媒は、全ての公知の完成形で、例えばタブレット、ストランドまたはグラニュールとして使用されてよい。適したラニー銅触媒は、例えばWO 99/03801に記載されたラニー銅ナゲットである。
【0067】
更に、場合により本発明による方法の工程c)の前に実施される水素化に特に好適であるのは、二酸化チタン成形体上に担持されたルテニウムを含有する触媒であり、この場合二酸化チタン成形体は、市販の二酸化チタンを処理することによって成形前または成形後に、本発明による方法で使用される、二酸化チタンが難溶性である酸0.1〜30質量%を用いて得られる。この場合、ルテニウムは、純粋な材料の形ならびにその化合物、例えば酸化物または硫化物の形で使用されてよい。
【0068】
触媒活性ルテニウムは、自体公知の方法により、有利に担持材料としての予め完成されたTiO2上に施される。
【0069】
ルテニウムを含有する触媒中での使用に好適な二酸化チタン担体は、ドイツ連邦共和国特許第19738464号明細書の記載に相応して市販の二酸化チタンを処理することによって成形前または成形後に、二酸化チタンが難溶性である酸を二酸化チタンに対して0.1〜30質量%用いて得ることができる。好ましくは、アナターゼ変態の二酸化チタンが使用される。この種の酸としては、例えば蟻酸、燐酸、硝酸、酢酸またはステアリン酸が適している。
【0070】
活性成分のルテニウムは、ルテニウム溶液の形で、こうして得られた二酸化チタン担体上に1回または数回の含浸工程で施されうる。引続き、含浸された担体は、乾燥され、場合によってはか焼される。しかし、ルテニウムをルテニウム塩溶液から、有利に炭酸ナトリウムを用いて、粉末として水性懸濁液中に存在する二酸化チタン上に沈殿させることも可能である。沈殿した沈殿物は、洗浄され、乾燥され、場合によりか焼され、および変形される。更に、揮発性ルテニウム化合物、例えばルテニウムアセチルアセトネートまたはルテニウムカルボニルは、気相中に変換されてよく、自体公知の方法で担体上に施されてよい(化学蒸着)。
【0071】
こうして得られた、担持された触媒は、公知の全ての完成形で存在することができる。例は、ストランド、タブレットまたはグラニュールである。ルテニウム触媒前駆体は、その使用前に水素含有ガスでの処理によって、有利に100℃を上廻る温度で還元される。好ましくは、触媒は、その使用前に本発明による方法において0〜50℃の温度、有利に室温で酸素含有ガス混合物、有利に空気窒素混合物で不動態化される。また、触媒を酸化物の形で水素化反応器中に取り付けることができ、および反応条件下で還元することができる。
【0072】
本発明による特に好ましい触媒は、触媒活性金属と担体とからなる触媒の全質量に対して0.1〜10質量%、有利に2〜6質量%のルテニウム含量を有する。本発明による触媒は、触媒の全質量に対して0.01〜1質量%の硫黄含量を有することができる(硫黄測定:クーロメトリー)。
【0073】
この場合、ルテニウム表面積は、1〜20m2/g、有利に5〜15m2/gであり、BET表面積(DIN 66131により測定した)は、5〜500m2/g、有利に50〜200m2/gである。
【0074】
本発明による方法の工程c)の前の水素化において場合により使用される触媒は、0.1〜1ml/gの細孔容積を有する。更に、触媒は、1〜100Nの切削硬さを示す。
【0075】
場合により本発明による方法の工程c)の前で使用される水素化触媒は、反応混合物中に懸濁されてよい。この水素化触媒は、好ましくは水素化反応器中に固定配置することができる。水素化は、非連続的または有利に連続的に実施されてよい。この場合、反応混合物は、液相モードまたは細流モードで触媒上に通過させることができる。
【0076】
しかし、DCL中に含有されたカルボン酸の本発明による方法の工程c)によるエステル化には、ポリオール、ジオール、特に2〜12個の炭素原子を有するα,ω−ジオールまたは前記ジオールの混合物が適している。この種の多価アルコールの例は、グリセリン、トリメチロールプロパン、プロピレングリコール、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオールまたはこれらのジオールの混合物である。好ましいのは、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオールまたはこれらのジオールの混合物である。特に好ましいのは、1,6−ヘキサンジオールであり、それというのも、このエステル化アルコールは、水素化の目的生成物に相当するからである。
【0077】
更に、純粋な1,6−ヘキサンジオールの代わりに、本発明による方法の工程c)によるDCLのエステル化のための水素化生産物の一部分および蒸留による後処理のための主要量を使用し、1,6−ヘキサンジオールを生じることは、好ましい。この場合、エステル化のための水素化生産物と1,6−ヘキサンジオール取得のための水素化生産物との質量比は、2.5:1〜0.8:1、有利に1.5:1〜0.9:1である。水素化生産物は、一般的に1,6−ヘキサンジオール60〜90質量%、1,5−ペンタンジオール2〜10質量%、1,4−ブタンジオール、1,2−シクロヘキサンジオールおよび1,4−シクロヘキサンジオール(それぞれ5質量%未満)、さらに1,6−ヘキサンジオールに対して、モノアルコール、例えばn−ブタノール、n−ペンタノールおよびn−ヘキサノール5質量%まで、およびオリゴマーまたはポリマーの高沸点物1〜10質量%を含有する。
【0078】
低沸点物と高沸点物との蒸留による分離後に水素化生産物の一部分を本発明による方法の工程c)におけるDCLのエステル化のために使用することは、特に好ましい。この場合、低沸点物および高沸点物とは、水素化生産物中に含有されているジオールより低い沸点または高い沸点を有する化合物であると理解すべきである。
【0079】
DCLには、本発明による方法の工程c)でのエステル化のために、ジオール、殊にα,ω−ジオール、例えば1,6−ヘキサンジオールまたはジオールからの混合物が添加される。ジオール混合物として、水素化生産物の部分量または法沸点物および低沸点物の分離後の水素化生産物の部分量が使用されてよい。この場合、DCLとジオールとの質量比は、1:0.2〜1:0.8、有利に1:0.3〜1:0.7、特に有利に1:0.4〜1:0.6である。
【0080】
本発明による方法の工程b)による水の除去および工程c)によるエステル化は、有利に1つの処理工程で実施される。このために、攪拌型反応器、流動管および/または塔が使用されてよい。好ましくは、水の除去およびエステル化は、載置された蒸留塔を有する少なくとも1つの反応器中で行なわれる。カルボン酸のエステル化および水の完全な除去の際に完全な変換を達成するために、載置された塔を有する、2〜6個、有利に3〜5個の順次に接続された反応器を用いて作業される。
【0081】
本発明による方法の工程c)でDCLのオリゴエステルおよび/またはポリエステルを生じるエステル化反応は、触媒の添加なしに進行することができる。しかし、反応速度を高めるために、触媒をエステル化に添加してもよい。これは、均一に溶解された触媒であってもよいし、不均一な触媒であってもよい。
【0082】
エステル化のための均一な触媒としては、例示的に硫酸、燐酸、塩酸、スルホン酸、例えばp−トルエンスルホン酸、ヘテロポリ酸、例えばタングストリン酸またはルイス酸、例えばアルミニウム化合物、バナジウム化合物、チタン化合物、ホウ素化合物が挙げられる。好ましいのは、鉱酸、殊に硫酸である。均一な触媒とカルボン酸との質量比は、一般的に0.0001〜0.5、有利に0.001〜0.3である。
【0083】
不均一な触媒としては、酸性または超酸性の物質、例えば酸性金属酸化物および超酸性金属酸化物、例えばSiO2、Al23、SnO2、ZrO2、層状珪酸塩またはゼオライトであり、これらの全ては、酸強度の強化のために、鉱酸エステル、例えばスルフェートまたはホスフェートでドーピングされていてよく、またはスルホン酸基またはカルボン酸基を有する有機イオン交換体が適している。固体の触媒は、固定床として配置されていてもよいし、懸濁液として使用されてもよい。
【0084】
好ましくは、触媒なしにエステル化が行なわれる。
【0085】
載置された塔を有する反応器中での塔底温度は、200〜250℃である。エステル化および水の除去は、0.1〜5バール、有利に0.5〜3バール、特に有利に1バールの圧力で実施されてよい。全ての攪拌釜上で計算した滞留時間は、0.5〜12時間、有利に1〜11時間、特に有利に2〜10時間である。
【0086】
載置された塔の塔頂生成物として、DCL中に含有されかつエステル化の際に生じた水が得られる。更に、塔頂生成物は、有機副生成物、例えば低級モノカルボン酸、例えば蟻酸を含有することができる。
【0087】
最後の反応器から得られた塔底生成物としては、オリゴエステルとポリエステルとからなる混合物が生じ、この混合物は、DCL中に含有されたカルボン酸、シクロジオールおよび添加されたジオールから形成される。更に、塔底生成物中には、未反応のジオールが含有されている。この混合物は、引続く接触水素化のために本発明による方法の工程d)で使用される。
【0088】
カルボン酸混合物中に存在する遊離カルボキシル基の変換が完全であることは、エステル化後に測定される酸価(mg KOH/g)で確認される。この酸価は、触媒としての場合により添加された酸に関連して1〜20mg KOH/g、有利に2〜15mg KOH/g、特に有利に5〜10mg KOH/gである。
【0089】
エステル化のために溶解した酸を触媒として使用した場合には、エステル混合物は、有利に塩基で中和され、この場合には、触媒の酸1当量当たり塩基1〜1.5当量が添加される。塩基としては、一般的にアルカリ金属酸化物またはアルカリ土類金属酸化物、アルカリ金属炭酸塩またはアルカリ土類金属炭酸塩、アルカリ金属水酸化物またはアルカリ土類金属水酸化物、またはアルカリ金属アルコラートまたはアルカリ土類金属アルコラート、またはアミンが物質で使用されるか、またはエステル化アルコール中に溶解して使用される。
【0090】
オリゴエステル混合物および/またはポリエステル混合物の水素化ならびに本発明による方法の工程d)での水素化は、触媒により液相中で固定配置されたかまたは懸濁された、有利に固定配置された触媒の存在で行なわれる。使用される温度は、100〜350℃、有利に120〜300℃、特に有利に140℃〜280℃であり、および圧力は、30〜350バール、有利に40〜320バール、特に有利に50〜300バールである。触媒負荷量は、0.2〜1.5kg オリゴエステル/kg 触媒×hである。
【0091】
オリゴエステル混合物および/またはポリエステル混合物の水素化ならびに本発明による方法の工程d)での水素化は、原則的に1つの反応器中だけで実施されてよい。しかし、前記方法は、欠点を有する:エステル水素化は、強い発熱性であり、そのためになお高い温度で実施されなければならない。即ち、米国特許第3524892号明細書による水素化温度は、260〜270℃であり、この場合DCLから製造されたオリゴエステルの水素化は、酸化バリウムによってドーピングされた亜クロム酸銅の存在で行なわれた。反応器からの安全な熱導出のためには、高い費用を掛けなければならない。
【0092】
従って、オリゴエステル混合物および/またはポリエステル混合物の水素化ならびに本発明による方法の工程d)での水素化は、有利に少なくとも2つの順次に接続された反応器中で実施される。固定床触媒を使用する場合には、水素化の供給原料を液相モードまたは細流モードで触媒上に通過させることができる。液相モードでの作業の場合には、水素ガスは、液状反応混合物が注入される反応器中に導入され、この場合水素は、上昇するガスパール中で触媒床を通過する。細流モードでの作業の場合、液状エステル混合物は、水素圧下にある反応器中で該反応器内に配置された触媒床上を流動し、この場合触媒上には、薄手の液体被膜が形成される。
【0093】
特に好ましい実施態様によれば、複数の反応器が使用され、この場合第1の反応器中で、エステルの主要な部分は、80〜98%、有利に90〜95%が変換されるまで水素化される。第1の反応器は、有利に熱交換器により熱を除去するために液体循環で運転され、下流にある反応器は、有利に変換を完結させるための循環なしに直接の通過で運転される。この方法は、循環法と呼ばれる。
【0094】
オリゴエステル混合物および/またはポリエステル混合物の水素化ならびに本発明による方法の工程d)での水素化は、非連続的に、有利には連続的に行なうことができる。
【0095】
オリゴエステル混合物および/またはポリエステル混合物の水素化ならびに本発明による方法の工程d)での水素化は、一般的にエステル化の際に生じる、過剰のジオールを含有するエステル混合物を用いて、付加的な溶剤なしに実施される。しかし、反応条件下で不活性の溶剤の存在で作業することも好ましい。溶剤としては、例えばエステル化に使用される全てのジオール、さらにテトラヒドロフラン、ジオキサンおよび1〜6個の炭素原子を有するモノアルコール、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、n−ブタノール、n−ヘキサノールまたは記載された化合物の混合物がこれに該当する。この場合、溶剤量は、エステル混合物に対して5〜50質量%、有利に10〜30質量%である。
【0096】
好ましくは、オリゴエステル混合物および/またはポリエステル混合物の水素化ならびに本発明による方法の工程d)での水素化は、溶剤なしで実施される。
【0097】
また、エステル化の際に生じるエステル混合物に塩基を供給することは、好ましい。好ましくは、リチウムアルコラート、ナトリウムアルコラートおよびカリウムアルコラート、特に有利にナトリウムアルコラートが使用される。この場合、塩基の量は、エステル混合物に対して20〜180ppm、有利に30〜90ppmである。1mg KOH/gを上廻る残留酸価を有するエステル混合物の場合、残留する酸は、取るに足らない量でのみ中和される。添加された塩基は、水素化の場合に別の方法で生じうる副生成物、例えばヘキサノールまたはエーテル化合物の形成を抑制するために使用される。
【0098】
オリゴエステル混合物および/またはポリエステル混合物の水素化ならびに本発明による方法の工程d)での水素化は、酸化銅、酸化アルミニウム、およびランタン、タングステン、モリブデン、チタン、ジルコニウムまたは鉄の酸化物の少なくとも1つと共に、なお金属銅、銅小板、粉末状セメント、黒鉛または混合物を含有する触媒前駆体の成形体の存在で、ジオールを有するDCSのオリゴエステルおよびポリエステルを水素化するための方法に既述されたように行なわれる。触媒およびその製造は、WO 2004/085356、WO 2006/005505およびWO 2007/006719に記載されている。
【0099】
この成形体は、触媒としての使用前に自体公知の方法で還元性媒体での処理によって活性化される。活性化は、予め還元炉内で行なわれるかまたは反応器内への取付け後に行なわれる。触媒前駆体が予め還元炉内で活性化されている場合には、前記前駆体は、反応器内に取り付けられ、直接に水素圧力下で水素化溶液が装入される。
【0100】
オリゴエステル混合物および/またはポリエステル混合物の水素化ならびに本発明による方法の工程d)での水素化の場合、高いオリゴエステル変換率およびポリエステル変換率が達成される。変換率は、本発明による触媒の存在で90%を上廻り、有利に95%を上廻り、特に有利に99%を上廻る。未反応のオリゴエステルおよびポリエステルは、1,6−ヘキサンジオールに比べて高沸点物であり、蒸留の際に塔底生成物として生じる。
【0101】
好ましくは、ジオールからの混合物である、本発明による方法の工程e)に記載の水素化生産物の一部分は、純粋な1,6−ヘキサンジオールの代わりにDCLのエステル化のために使用される。前記方法の利点は、別のジオール、例えば1,5−ペンタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、但し、これらの幾つかは副生成物を構成するものとし、が1,6−ヘキサンジオールの代替となることである。それによって、副反応を生じる1,6−ヘキサンジオールの損失は、本質的に減少される。
【0102】
水素化生産物は、第1の塔中でジオールの1,6−ヘキサンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジオールと比較して高沸点物および低沸点物を含有しない。この塔は、1〜30個の理論段を有する。使用される塔底温度は、120〜250℃であり、および圧力は、5〜500ミリバールである。
【0103】
塔底生成物は、1,6−ヘキサンジオール75〜95質量%、1,5−ペンタンジオール3〜10質量%、1,4−ブタンジオール、1,2−シクロヘキサンジオールおよび1,4−シクロヘキサンジオール(それぞれ5質量%未満)、さらに1,6−HDOに対して、モノアルコール、例えばn−ブタノール、n−ペンタノールおよびn−ヘキサノール5質量%まで、および高沸点成分5質量%未満を含有する。塔底生成物中には、未反応のオリゴエステルおよびポリエステルが含有されている。オリゴエステルの変換率およびポリエステルの変換率は、97%以上になるまでであるので、塔底生成物は、1,6−ヘキサンジオールに水素化可能な生成物3%以下を含有する。従って、この水素化可能な生成物は、廃棄されてよい。
【0104】
取得された留出物は、第2の塔内に導入され、この塔内で1,6−ヘキサンジオールは、精製される。この場合、97%を上廻る1,6−ヘキサンジオールの純度が達成される。
【0105】
本発明による方法の工程c)によるエステル化の特に好ましい実施態様において、高沸点物および低沸点物を含有しない水素化生産物の一部分は、工程c)においてエステル化に返送される。この変法は、プロセス中の生成物流が縮小されるという付加的な利点を有する。
【0106】
それによって、本発明による方法は、経済的に廃棄物生成物から純粋な1,6−ヘキサンジオールを取得することを可能にする。
【0107】
本発明による触媒が供給原料としてのオリゴエステルの使用および1〜20の残留酸価の際に長い反応時間(例:900時間)に亘って高い側面圧縮強さ、ひいては高い機械的強度と関連した、高い活性を保持するであろうことは、予測することができなかった。
【0108】
その上、本発明により95%以上で、公知技術水準よりも明らかに高い1,6−ヘキサンジオール収率が達成される。
【実施例】
【0109】
実施例
ジオール混合物でのエステル化、引続く水素化および後処理による、ジカルボン酸溶液(DCL)からの1,6−ヘキサンジオール(1,6−HDO)の製造
1.ジカルボン酸−粗製ヘキサンジオール混合物の配合
使用されるジカルボン酸溶液を、空気でのシクロヘキサンの酸化に由来する反応生産物を水で抽出することによって得た。
【0110】
粗製1,6−ヘキサンジオール混合物を、オリゴエステルおよびポリエステルの水素化による水素化生産物(4a/b参照)から高沸点物および低沸点物(ジオールと比較して)を蒸留により分離することによって製造した。
【0111】
部分的にオリゴマーの形で、なかんずくアジピン酸(ADS、21質量%)、6−ヒドロキシカプロン酸(HCS、18質量%)および水(45質量%)を含有する、DCL750kg(酸価:267mg KOH/g)に、粗製1,6−ヘキサンジオール混合物337kgを添加した。粗製1,6−HDO装入物は、なかんずく1,6−ヘキサンジオール(約80質量%)、1,5−ペンタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジオールおよび1,2−シクロヘキサンジオールを含有する。生じた水溶液(DCL−HDO混合物)は、1,6−HDO(23質量%)、ADS(15質量%)および主要成分としてのHCS(12.0質量%)(部分的にオリゴマーの形)を含有していた。
【0112】
2.オリゴマーのエステル混合物の製造
工程1のDCL−HDO混合物を連続的に蒸発器(脱水工程、150℃、環境圧力)中に260g/時間の処理量で計量供給した。この場合、水および低沸点成分を流去した(98g/時間)。引続き、塔底生産物を5段の攪拌釜カスケード中に移し(174g/時間、220℃、1〜1.4バール(絶対圧力))、このカスケード中でエステル化を殆ど完全な変換率になるまで行なった(SZ10mg未満 KOH/g、変換率98%)。エステルカスケード中で同様に低沸点成分を留去し(12g/時間)、この低沸点成分を脱水工程に返送した。塔底生産物として、元来供給されたカルボン酸誘導体およびジオールからなるエステルを主に含有するオリゴマー混合物を得た(162g/時間、質量収率62%、全ての供給原料に対して)。
【0113】
3.オリゴマーのエステル混合物の水素化
工程2のオリゴマーのエステルにナトリウムメチラート60ppmを添加し、引続き連続的にCu触媒上で水素化した。触媒をWO 2007/6719の実施例3により製造し、および活性化した。
【0114】
反応システムは、主要反応器(管状反応器、400ml、触媒600g)および後方反応器(管状反応器、100ml、触媒150g)から構成されていた。水素化供給原料を細流モードで固定配置された触媒上に通過させた。水素化の際に発生する熱を導出するために、液体循環路を備えた主要反応器を運転し、後方反応器を直接の通過で運転した。水素化反応器を240℃/H2 255バールで900時間運転した。240g/時間の供給量(触媒負荷量=0.60kgl-1-1、主要反応器)で98%の変換率を達成した。引続き、水素化生産物を容器中で環境圧力に放圧し、および環境温度に冷却した。1,6−ヘキサンジオール72質量%を含有する生産物が得られた。水素化は、1,6−HDOに対して95%を上廻る収率で進行した(収率は、水素化によって1,6−HDOを生じうる、DCL中に存在するC6成分に関連する;6−ヒドロキシカプロン酸、6−オキソカプロン酸(5−ホルミル吉草酸)、アジピン酸およびジヒドロムコン酸)。触媒を取り外し、引続き分析した。取り外した触媒は、31Nの側面圧縮強さ(元来の触媒:48N)を有していた。
【0115】
1,6−ヘキサンジオールの含量をGC1回当たり次の通り算出した:DB−5(Agilent J&W)、30m×0.2mm×1μm;温度プロフィール:60℃(5分間)→220℃(16℃/分、10分間)→260℃(20℃/分、21分間)→290℃(20℃/分、10分間)。ジエチレングリコールジメチルエーテル(DEGDME)を内部標準として使用した。tR(DEGDME)=8.8分間、tR(1,6−HDO)=11.8分間。
【0116】
4a 水素化生産物からの高沸点物および低沸点物の除去
載置された塔を備えた蒸留器(DN50、取付け物1m、織物パッキング750m2/m3)中で工程3からの水素化生産物(917g)を蒸留によって分離した。1バールおよび塔底温度150℃で低沸点物(25g)を取り出した。引続き圧力を150ミリバールに減少させ、塔底温度を225℃にまで上昇させた。取得された留出物の30%を塔頂部から塔に返送し、主要な部分を捕集した。留出物840gが生じた(なかんずく1,6−HDO79質量%、1,5−PDO9質量%を含有していた)。高沸点物は、塔底部中に蓄積された(41g、4.5質量%)。捕集された留出物の一部分を粗製1,6−HDO装入物としてのSCLと配合し(工程1参照)、この場合別の部分は、精留部に移される。
【0117】
4b 精留
高沸点物の除去による粗製1,6−HDO装入物を50ミリバールで分別蒸留した(返送比10:1、塔頂部での取出し約50g/時間)。別の低沸点ジオール(1,5−ペンタンジオールを含む)の分離後、97%を上廻る純度を有する1,6−HDOを得ることができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジカルボン酸溶液をジオールまたはジオール混合物でエステル化することによって得られるオリゴエステルおよび/またはポリエステルを水素化する方法であって、この場合この水素化は、その前駆体が1つの方法により製造可能である触媒成形体を用いて、
(i)酸化銅、酸化アルミニウム、およびランタン、タングステン、モリブデン、チタン、ジルコニウムまたは鉄の酸化物の少なくとも1つを含む酸化物材料を準備し、
(ii)前記の酸化物材料に粉末状の金属銅、銅小片、粉末状のセメント、黒鉛またはこれらの混合物を添加し、
(iii)(ii)から生じる混合物を変形して成形体に変えることにより、実施され、
その際、酸化物材料は、活性成分の銅、成分のアルミニウムおよび成分のランタン、タングステン、モリブデン、チタンまたはジルコニウムの酸化物の少なくとも1つを同時に、または順次に沈殿させ、引続き乾燥し、か焼し、変形後に工程(iii)により触媒成形体を再びか焼することによって得られる、ジカルボン酸溶液をジオールまたはジオール混合物でエステル化することによって得られるオリゴエステルおよび/またはポリエステルを水素化する方法。
【請求項2】
ジカルボン酸溶液をジオールまたはジオール混合物でエステル化することによって得られるオリゴエステルおよび/またはポリエステルを水素化する方法であって、この場合この水素化は、その前駆体が1つの方法により製造可能である触媒成形体を用いて、
(i)酸化銅、酸化アルミニウム、およびランタン、タングステン、モリブデン、チタン、ジルコニウムまたは鉄の酸化物の少なくとも1つを含む酸化物材料を準備し、
(ii)前記の酸化物材料に粉末状の金属銅、銅小片、粉末状のセメント、黒鉛またはこれらの混合物を添加し、
(iii)(ii)から生じる混合物を変形して成形体に変えることにより、実施され、
その際、酸化物材料は、活性成分の銅、成分のアルミニウムおよび成分のランタン、タングステン、モリブデン、チタンまたはジルコニウムの酸化物の少なくとも1つを同時に、または順次に沈殿させ、引続き乾燥し、か焼し、タブレット化後に工程(iii)により触媒成形体を再びか焼することによって得られる、ジカルボン酸溶液をジオールまたはジオール混合物でエステル化することによって得られるオリゴエステルおよび/またはポリエステルを水素化する方法。
【請求項3】
酸化物材料は、それぞれか焼後の酸化物材料の全質量に対して、
(a)50≦x≦80質量%、特に55≦x≦75質量%の範囲内の含量を有する酸化銅、
(b)15≦y≦35質量%、特に20≦y≦30質量%の範囲内の含量を有する酸化アルミニウムおよび
(c)2≦z≦20質量%、特に3≦z≦15質量%の範囲内の含量を有する、ランタン、タングステン、モリブデン、チタンまたはジルコニウムの酸化物の少なくとも1つを含み、但し、この場合には、80≦x+y+z≦100、殊に95≦x+y+z≦100が当てはまるものとし、その際、セメントは、上記の意味における酸化物材料には分類されない、請求項1または2のいずれか1項に記載の方法。
【請求項4】
添加によって粉末状金属銅、銅小板、粉末状セメントまたは黒鉛、またはこれらの混合物は、第1のか焼後の酸化物材料の全質量に対して0.5〜40質量%の範囲内の割合である、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
エステル化に使用されるジオールを1,6−ヘキサンジオール、酸化物材料から選択するか、または(ii)から生じる混合物は、黒鉛を第1のか焼後の酸化物材料の全質量に対して0.5〜5質量%の範囲内の割合で含有する、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
工程(iii)から得られる成形体をなお沸騰水および/または蒸気で処理する、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
次の工程:
a)シクロヘキサノールとシクロヘキサノンと6個までの炭素原子を有するカルボン酸とからなる混合物への酸素または酸素含有ガスでのシクロヘキサンの酸化、
b)a)で得られた反応混合物と水との反応および液状の二相反応混合物からのジカルボン酸溶液の除去、
c)アルコールでのb)から得られたジカルボン酸溶液のエステル化、
d)c)から得られたエステル混合物の接触水素化および
e)d)から得られた水素化生産物の蒸留を含む、1,6−ヘキサンジオールを製造する方法であって、
c)におけるエステル化を2〜12個の炭素原子を有する少なくとも1つのジオールで実施し、および
c)で得られたエステル化混合物を液相中で触媒成形体の存在で水素化し、このエステル化混合物の前駆体を、
(i)酸化銅、酸化アルミニウム、およびランタン、タングステン、モリブデン、チタン、ジルコニウムまたは鉄の酸化物の少なくとも1つを含有する第1のか焼後の酸化物材料を準備し、
(ii)粉末状の金属銅、銅小板、粉末状セメント、黒鉛または混合物を工程i)からの酸化物材料に添加し、
(iii)(ii)から生じる混合物を成形し、成形体に変え、および
(iv)工程(iii)で得られた成形体に第2のか焼を行なうことによって得る、1,6−ヘキサンジオールを製造する方法。
【請求項8】
工程(a)に記載されたシクロヘキサン酸化を触媒の存在で実施する、請求項7記載の方法。
【請求項9】
工程(b)で得られた水相を10〜200℃の範囲内の温度および1〜100バールの圧力で接触水素化する、請求項7または8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
工程(c)におけるエステル化を1,6−ヘキサンジオールを用いて実施する、請求項7から9までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
工程c)におけるエステル化のために、2〜12個の炭素原子を有する少なくとも1つのジオールの代わりに工程(e)において取得された水素化生産物の一部分を使用する、請求項7から10までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
工程c)におけるエステル化のために、工程(e)において取得された水素化生産物の一部分を使用し、その際、全ての水素化生産物から予め高沸点物および低沸点物を除去した、請求項7から11までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
工程d)における水素化に使用されるエステル混合物は、1〜20mg KOH/gの酸価を有する、請求項7から12までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
工程d)におけるエステル混合物の接触水素化を液相中で少なくとも2個の反応器中で実施し、その際第1の反応器を熱導出および液体の返送のために運転し、第2の反応器を液体の返送なしに直接の通過で変換を完結させるために運転する、請求項7から13までのいずれか1項に記載の方法。

【公表番号】特表2012−523386(P2012−523386A)
【公表日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−503963(P2012−503963)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【国際出願番号】PCT/EP2010/054114
【国際公開番号】WO2010/115759
【国際公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】