説明

1,7−ビス(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1E−ヘプタン−3,5−ジオール、及び、その製造方法

【課題】微量でも無色を示す抗酸化活性を有する新規な1,7−ビス(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1E−ヘプタン−3,5−ジオールを提供する。
【解決手段】次の式(1)
【化1】


で示される1,7−ビス(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1E−ヘプタン−3,5−ジオールを提供する。前記1,7−ビス(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1E−ヘプタン−3,5−ジオールは、屋久島産ウコン根茎から分離されたジアポルテ属糸状真菌(1.微生物の識別の表示:CLO−13、2.受託番号:NITE P−789、3.受領日:2009年7月31日)でクルクミンを微生物変換することにより、無色代謝産物として得ることができる。この化合物は、クルクミンと同様の抗酸化能を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲食品、化粧品、医薬品等の分野において用いられる抗酸化活性を有する新規な1,7−ビス(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1E−ヘプタン−3,5−ジオール、及び、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、活性酸素が老化、疾病等の人体に様々な悪影響を及ぼすことが明らかになってきたので、抗酸化活性物質の飲食品、化粧品、医薬品等の分野への応用技術に注目が集まっている。
【0003】
一方、ウコン(Curcuma longa L.、ショウガ科)根茎に含有されるクルクミンは、抗酸化活性等の様々な生理活性を有しているので、飲食品、化粧品、医薬品等の分野において注目されている。
【0004】
一般的に、天然有機化合物の誘導反応には化学的手法が用いられているが、既に、化学的手法によって製造された数多くのクルクミン誘導体(特許文献1,2)が報告されている。しかしながら、化学的手法による天然有機化合物の製造においては、その天然有機化合物の製造に用いられる種々の有機溶剤、試薬等の物質が環境に悪影響を及ぼすところ、水、栄養素及び無機塩のみを用いる微生物変換反応おいては、有機溶剤、試薬等の物質が環境へ悪影響を及ぼすことはないので、微生物変換反応は、その特異な反応性と合わせて、近年注目を集めている。
【0005】
ウコンの根茎に含有されるクルクミンは、微量でも黄色を示すので、皮膚化粧品等には用いることが難しく、そのために、その応用分野に制限がある、という問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−255061号公報
【特許文献2】特開2002−155009号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Uehara,S.,Yasuda,I.,Akiyama,K.,Morita,H.,Takeya,K.,Itokawa,K.,Chemical & Pharmaceutical Bulletin、35巻8号、3298−3304頁、1987年
【非特許文献2】Kikuzaki,H.,Usuguchi,J.,Nakatani,N.,Chemical & Pharmaceutical Bulletin、39巻1号、120−122頁、1991年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、かかる問題を解決することを目的としている。
【0009】
即ち、本発明は、無色を示す抗酸化活性を有する新規な1,7−ビス(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1E−ヘプタン−3,5−ジオール、及び、その製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載された発明は、上記目的を達成するために、次の式(1)
【化1】

で示される1,7−ビス(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1E−ヘプタン−3,5−ジオールである。
【0011】
請求項2に記載された発明は、
(イ)ウコン根茎の小片を滅菌した後オートミール麦芽エキス寒天(CMMA)培地上において生育させた糸状菌コロニーを分離してジアポルテ(Diaporthe)属を得る工程、
(ロ)前記ジアポルテ属を液体培地中において培養する工程、
(ハ)前記ジアポルテ属を培養した液体培地にクルクミンのメタノール溶液を添加して、さらに、回転振とう培養する工程、
(ニ)前記回転振とう培養した菌体を含む全培養液を、ホモジネーターで粉砕した後、水−クロロホルム系の溶剤で分配操作してクロロホルム移行部を得る工程、
(ホ)前記クロロホルム移行部を減圧下においてその溶媒を留去する工程、及び、
(ヘ)前記クロロホルム移行部をシリカゲルカラムクロマトグラフィーを用いて分離精製することにより1,7−ビス(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1E−ヘプタン−3,5−ジオールを得る工程
を順次有することを特徴とする1,7−ビス(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1E−ヘプタン−3,5−ジオールの製造方法である。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載された発明によれば、微量でも無色を示す抗酸化活性を有する新規な1,7−ビス(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1E−ヘプタン−3,5−ジオールを提供することができる。
【0013】
請求項2に記載された発明によれば、水、栄養素及び無機塩のみを用いる微生物変換反応によって、ネオヘキサヒドロクルクミンを製造するので、有機溶剤、試薬等の物質が環境へ悪影響を及ぼすこと無く、微量でも無色を示す抗酸化活性を有する新規な1,7−ビス(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1E−ヘプタン−3,5−ジオールの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】ウコン内生菌(ジアポルテ属糸状真菌)によるクルクミン培養液のクロロホルム移行部を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で解析して得たクロマトグラムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明者らは、ウコン根茎から内生菌としてジアポルテ(Diaporthe)属糸状真菌(1.微生物の識別の表示:CLO−13、2.受託番号:NITE P−789、3.受領日:2009年7月31日)を分離して、そのジアポルテ属糸状真菌によるクルクミンの変換反応を試みたところ、前記ジアポルテ属糸状真菌が、クルクミンを次の一般式(1)
【化2】

で表される無色を示す抗酸化活性を有する新規な1,7−ビス(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1E−ヘプタン−3,5−ジオールに変換することを突き止めて本発明を完成するに至った。
【0016】
本発明者らは、屋久島産ウコン根茎の小片を、水道水で表面洗浄した後、75%エタノール水溶液で1分間、5.3%次亜塩素酸ナトリウム水溶液で5分間、さらに、75%エタノール水溶液で0.5分間表面滅菌した。次に、クリーンベンチ内で自然乾燥させ、滅菌したカッターで両端を切り落とした後、縦に2つに分割し、クロラムフェニコール(0.05mg/ml)を含むオートミール麦芽エキス寒天(CMMA)培地上に置いた。CMMA培地上に生育してきた糸状菌コロニーの分離操作を繰り返し行い、今回用いた糸状菌を得た。本糸状菌を、ポテト−デキストロース−観点(PDA)培地上で生育させたところ、白色の菌糸が前記培養地の表面に成長してきた後、それらの菌糸の一部が黄色に変色した。その際、培地部分(裏面)は、ところどころ黒色化したが、前記菌による胞子の形成は確認されなかった。そこで、本発明者らは、分類学上の位置づけを決定するために、国際塩基配列データベース(DDBJ/GenBank/EMBL)の相同性検索プログラムFASTAを使用して、同塩基配列を比較検索したところ、Diaporthe viticola(EF155490)と98%のシミラリティを示すことが明らかになった。そして、さらに系統樹解析を行った結果、(Diaporthe)属糸状真菌(1.微生物の識別の表示:CLO−13、2.受託番号:NITE P−789、3.受領日:2009年7月31日)であることが判明した。
【0017】
ウコン(Curcuma longa L.、ショウガ科)根茎から抽出されたされたクルクミンは、抗酸化活性等の様々な生理活性を有しているので、飲食品、化粧品、医薬品等の分野において使用されているが、前記クルクミンは、微量でも黄色を示すので、その使用分野が制限され、そのために、その使用量は増加していない。
【0018】
本発明の新規な1,7−ビス(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1E−ヘプタン−3,5−ジオールは、無色を示し、しかも、抗酸化活性を有しているので、化粧品、食品、医薬等の分野において用いることができ、そのために、1,7−ビス(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1E−ヘプタン−3,5−ジオールの使用量の拡大が期待される。
【0019】
本発明の1,7−ビス(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1E−ヘプタン−3,5−ジオールは、
(イ)ウコン根茎の小片を滅菌した後オートミール麦芽エキス寒天(CMMA)培地上に置いて生育させた状菌コロニーを分離してジアポルテ(Diaporthe)属を得る工程、
(ロ)前記ジアポルテ属を液体培地中において培養する工程、
(ハ)前記ジアポルテ属を培養した液体培地にクルクミンのメタノール溶液を添加して、さらに、回転振とう培養する工程、
(ニ)前記回転振とう培養した菌体を含む全培養液を、ホモジネーターで粉砕した後、水−クロロホルム系の溶剤で分配操作してクロロホルム移行部を得る工程、
(ホ)前記クロロホルム移行部を減圧下においてその溶媒を留去する工程、及び、
(ヘ)前記クロロホルム移行部をシリカゲルカラムクロマトグラフィーを用いて分離精製することによりネオヘキサヒドロクルクミンを得る工程
を順次経て製造される。
【0020】
本発明の新規な1,7−ビス(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1E−ヘプタン−3,5−ジオールは、無色を示す抗酸化活性剤として有用である。それ故、本発明の新規な1,7−ビス(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1E−ヘプタン−3,5−ジオールは、これを皮膚化粧料、頭髪化粧料、又は、食品に0.01〜10重量%の割合で配合することができる。
【実施例】
【0021】
(実施例1)
1.ウコン根茎から植物内生菌の分離
屋久島産ウコン根茎の小片を、水道水で表面洗浄した後、75%エタノール水溶液で1分間、5.3%次亜塩素酸ナトリウム水溶液で5分間、さらに、75%エタノール水溶液で0.5分間表面滅菌した。この滅菌したウコン根茎の小片をクリーンベンチ内で自然乾燥させ、滅菌したカッターで両端を切り落とした後、縦に2つに分割し、これらをクロラムフェニコール(0.05mg/ml)を含むオートミール麦芽エキス寒天(CMMA)培地上に置いた。前記CMMA培地上に生育してきた白色の糸状真菌コロニーの分離操作を繰り返し行って糸状真菌を得た。このようにして得た糸状真菌は、リボソームDNA内のITS領域の塩基配列解析により、ジアポルテ(Diaporthe)属糸状真菌(1.微生物の識別の表示:CLO−13、2.受託番号:NITE P−789、3.受領日:2009年7月31日)であることが判明した。
【0022】
2.クルクミンのジアポルテ属糸状真菌変換
前記ウコン根茎の小片から得たジアポルテ属糸状真菌を2%グルコース−酵母抽出物−ペプトン液体培地(200ml)中において28℃で7日間培養した後、前記液体培地にクルクミンのメタノール溶液10ml(クルクミン含有量20mg)を添加して、さらに、48時間(2日間)回転振とう(90rpm)培養を行った。この回転振とう培養を行ったジアポルテ属糸状真菌体を含む培養液全量をホモジネーションした後、水−クロロホルム系で分配操作してクロロホルム層を形成し、このクロロホルム層を減圧下に保持して、クロロホルム移行部(38mg)を得た。次に、前記クロロホルム移行部をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[シリカゲル60(230−400メッシュ、メルク社製)、ヘキサン:クロロホルム:エタノール=1:9:05]、高速液体クロマトグラフィ−(HPLC)[分離条件;固定相Capcell Pak C18 UG120(4.6mm×250mm、資生堂社製)、移動層;アセトニトリル:水=22:78、流速;1.0ml/min、カラム温度;40℃、及び、示差屈折率(RI)検知器]を用いた分離精製を行い、1,7−ビス(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1E−ヘプタン−3,5−ジオール(5.4mg,収率27%)を得た。
【0023】
図1は、ウコン内生菌(ジアポルテ属糸状真菌)によるクルクミン培養液のクロロホルム移行部を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で解析して得たクロマトグラムを示す。前記HPLCの分析条件は、次に示すものとした。
【0024】
高速液体クロマトグラフィー(HPLC)の分析条件
固定相;固定相Capcell Pak C18 UG120(4.6mm×250mm、資生堂社製
移動層;A(水),B(アセトニトリル)
A:B=80:20→A:B=30:70(30分、リニアグラジエント)
流速;1.0ml/min
カラム温度:40℃
検出波長;260nm
【0025】
図1に示されているように、前記ウコン内生菌[ジアポルテ属糸状真菌(1.微生物の識別の表示:CLO−13、2.受託番号:NITE P−789、3.受領日:2009年7月31日]によるクルクミン培養液のクロロホルム移行部からは、ネオヘキサクルクミン(下記に示す化学構造解析によって1,7−ビス(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1E−ヘプタン−3,5−ジオールであることが判明した。)が主として生成しているが、前記クロロホルム移行部には、次の式(2)で示されるテトラヒドクルクミン(特許文献1を参照。)、次の式(3)で示される(3S,5S)−1,7−ビス(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)ヘプタン−3,5−ジオール(非特許文献1を参照。)、及び、次の式(4)で示される(3S,5R)−1,7−ビス(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)ヘプタン−3,5−ジオール(非特許文献2を参照。)を副生していることがわかる。
【0026】
【化3】

【0027】
【化4】

【0028】
【化5】

【0029】
3.前記ネオヘキサクルクミンの化学構造解析
前記ネオヘキサヒドロクルクミンは、負の旋光性[α]D−4.3°(エタノール中)を示し、高分解能負高速原子衝突質量分析(neg.FAB−MS)スペクトルから分子組成C21266 が判明した。また、赤外線吸収(IR)スペクトルより、ヒドロキシル基(3350cm-1)及び芳香環(1599,1516cm-1)の存在、及び紫外線吸収(UV)スペクトルから芳香環[269nm(ε=15,000),288nm(sh),302nm(sh),313nm(sh)]の存在が確認された。さらに、炭素−13核磁気共鳴(13C−NMR)スペクトルにおいて21個の炭素シグナルが観測され、さらに、分極移動による無歪シグナル増感法(DEPT)スペクトルから、6個の4級炭素、10個の3級炭素、3個の2級炭素及び2個のメトキシル炭素の存在が確認された。一方、プロトン核磁気共鳴(1H−HMR)、1H−1H2次元相関(1H−1H COSY)及び1H−13H2次元相関(HMQC)スペクトルの解析から、1位に二置換トランス二重結合、3位と5位にそれぞれヒドロキシル基を有する7個の炭素鎖の両端に、2個の三置換芳香環の存在が確認された。これらの事実は、1H−13Hロングレンジ2次元相関(HMBC)スペクトルの解析からもよく支持された。
【0030】
以上のことから、前記ネオヘキサヒドロクルクミンは、次の式(5)
【化6】

で示される1,7−ビス(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1E−ヘプタン−3,5−ジオールであることが判明した。
【0031】
4.前記1,7−ビス(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1E−ヘプタン− 3,5−ジオールの物理化学データ
(1)無色結晶粉末、融点157−158℃(再結晶溶媒:酢酸エチル)
(2)比旋光度:[α]D−4.3°(EtOH中、24℃)
(3)赤外吸収スペクトル:IR(KBr)cm-1:3350,1599,1516.
紫外吸収スペクトル:UVλmax(EtOH)nm(ε):269(15,00 0)、288(sh),302(sh),313(sh)
(4)1H −及び13C−核磁気共鳴スペクトル(NMR):次の表1に示される。
(5)Neg.FAB−MSm/z:373[M−H]-
(6)高分解能neg.FAB−MSm/z:C21256の計算質量数:373.1 652.
(7)高分解能neg.FAB−MSm/z:C21256の観測質量数:373.1 663.
【0032】
【表1】

【0033】
5.前記1,7−ビス(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1E−ヘプタン− 3,5−ジオールの抗酸化活性
前記1,7−ビス(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1E−ヘプタン−3,5−ジオールの抗酸化活性抗酸化活性の評価法は以下の通りである。
【0034】
(1)中性ラジカル(DPPH;1,1−diphenyl−2−picrylhydrazyl)の消去活性
適当量の被検物質をエタノール(600μl)に溶解した後、250mM酢酸緩衝液(pH5.5,600μl)を加え、30℃で5分間保持した。保温後、250mM DPPHエタノール溶液(300μl)を加え、30℃で被検物質によるラジカル除去反応を行った。30分後、この反応液を517nmで吸光度測定を行った(A)。さらに過剰のDPPHを除去するために3mg/mlのBHT(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール)エタノール溶液を15μl加え、30℃で30分間保持した後、再び517nmで吸光度測定を行った(B)。ラジカル消去活性は、次の数式
【数1】

により求めた。なお、コントロールとは、被検物質無添加で行って得られた吸光度である。
【0035】
(2)ラット肝細胞のミクロソーム及びミトコンドリアの脂質酸化阻害活性
ラット肝細胞のミクロソーム画分及びミトコンドリア画分の脂質酸化阻害活性試験は、Haraguchiら、[プランタ メディカ(Planta Medica)、62巻、217頁から221頁、1996年]の方法により行った。
【0036】
1)ミクロソーム
調製したミクロソーム懸濁液(蛋白質含量2.0mg、900μl)に適当量の被検物質を添加した後、100μlの1mM NADPHを加え37℃で15分間放置した。そして、90μlの2%BHTを加えた後、2mlの15%w/vTCA(トリクロロ酢酸)/0.375%TBA(チオバルビツール酸)/0.25NHCl溶液を加え、100℃で15分間反応させた。この反応液を遠心分離し、その上澄みについて535nmで吸光度測定を行った。コントロール(被検物質無添加)に対するTBA比は、過酸化阻害率として示した。
【0037】
2)ミトコンドリア
調製したミクロソーム懸濁液(蛋白質含量2.0mg、900μl)に適当量の被検物質を添加した後、100μlの1mM NADHを加え37℃で5分間放置した。そして、前記ミクロソーム懸濁液に90μlの2%BHTを加えた後、2mlの15%w/vTCA(トリクロロ酢酸)、0.375%TBA(チオバルビツール酸)、及び、0.25NHCl溶液を加えて、これらを100℃で15分間反応させた。この反応液を遠心分離し、その上澄みについて535nmで吸光度測定を行った。コントロール(被検物質無添加)に対するTBA比を過酸化阻害率として示した。
【0038】
測定結果は、次の表2に示される。
【0039】
【表2】

【0040】
表2から、前記1,7−ビス(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1E−ヘプタン−3,5−ジオールネオヘキサヒドロクルクミンがクルクミンと同等の抗酸化活性を示すことが明らかになった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の式(1)
【化1】

で示される1,7−ビス(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1E−ヘプタン−3,5−ジオール。
【請求項2】
(イ)ウコン根茎の小片を滅菌した後オートミール麦芽エキス寒天(CMMA)培地上に置いて生育させた状菌コロニーを分離してジアポルテ(Diaporthe)属を得る工程、
(ロ)前記ジアポルテ属を液体培地中において培養する工程、
(ハ)前記ジアポルテ属を培養した液体培地にクルクミンのメタノール溶液を添加して、さらに、回転振とう培養する工程、
(ニ)前記回転振とう培養した菌体を含む全培養液を、ホモジネーターで粉砕した後、水−クロロホルム系の溶剤で分配操作してクロロホルム移行部を得る工程、
(ホ)前記クロロホルム移行部を減圧下においてその溶媒を留去する工程、及び、
(ヘ)前記クロロホルム移行部をシリカゲルカラムクロマトグラフィーを用いて分離精製することによりネオヘキサヒドロクルクミンを得る工程
を順次有することを特徴とする1,7−ビス(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−1E−ヘプタン−3,5−ジオールの製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−51953(P2011−51953A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−204226(P2009−204226)
【出願日】平成21年9月4日(2009.9.4)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成21年3月5日 社団法人日本薬学会第129年会組織委員会発行の「日本薬学会第129年会 要旨集2」に発表
【出願人】(501105381)株式会社老舗恵命堂 (1)
【Fターム(参考)】