説明

11(IB)族−13(IIIA)族−16(VIA)族の元素の、2成分、3成分、4成分もしくは5成分系合金を推積させるための電気メッキ用添加剤

本発明は、薄膜太陽電池に有用な基質に、11(IB)族金属/2成分もしくは3成分系11(IB)族−13(IIIA)族/3成分、4成分もしくは5成分系11(IB)族−13(IIIA)族−16(VIA)族合金を堆積するための電気メッキ用添加物に関する。添加物は一般式(A)を有する。


式中、XおよびXは同一もしくは異なっていてもよく、アリーレンおよびヘテロアリーレンよりなる群から選ばれる。FGとFGは同一もしくは異なっていてもよく、−S(O)OH、−S(O)OH、−COOH、−P(O)OH、第1級、第2級、第3級アミノ基およびそれらの塩およびエステルよりなる群から選ばれる。Rはアルキレン、アリーレンまたはヘテロアリーレンよりなる群から選ばれる、mおよびnは1〜5の整数である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄膜太陽電池に有用な基質上に、IB族金属/2成分もしくは3成分系IB族−IIIA族/3成分、4成分もしくは5成分系IB族−IIIA族−VIA族合金を堆積させるための電気メッキ用添加剤に関する。さらに、本発明はこれらの添加物の調製法および金属メッキ用組成物へのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽エネルギーの光電変換が、近い将来、できるだけ早く、世界のエネルギー供給の主な根源にならなければならないことがますます広く認識されている。
光電気産業は、参考地域単位として平方キロメーターを有する太陽光モジュールを製造する主産業になるだろう。シリコンまたは薄膜の(a−シリカ、μc−シリカ、CIGSまたはCdTe)のいずれかに基づく、すべての成熟した技術が本目的の達成を目指している。そのためのキーポイントは、変換効率を維持し、あるいは好ましくは増加しつつ、低いモジュール生産コストで加工できる、広い領域を開発することである。Cu(In,Ga,Al)(S,Se)黄銅鉱吸収材同士に基づく結合はすでに高変換効率と前工業レベルにおいて効率的モジュールの広域生産との適合性を有することが示されている(ディ・リンコットら、ソーラーエネルギー77(2004)725−737)。
【0003】
WO00/62347によれば、太陽電池はフレキシブルでかつ帯状の支持体の上に配置された吸収層を備えている。吸収層は、少なくとも部分的に銅の成分、インジウムとガリウムの群からの少なくとも1元素、およびセレンと硫黄の群からの少なくとも1元素を備えそして少なくとも部分的にp型として具体化されている。吸収層はメッキのやり方で少なくとも部分的に支持体上に堆積される。吸収層の成分はお互いとの関係で化学量論的比率にある。吸収層は支持体に堆積された後熱処理される。
米国特許7,026,258B2は、薄膜CIGSの製造法に関し、それは次の工程からなる:CuInSeに近い化学量論層を基質上に電気化学的に堆積し;そしてCISを再結晶化させるに十分な力のパルスを持つ光源から上記層を速やかにアニールする。電着された元素は予備混合される。したがって、堆積工程の後、上記速やかなアニール間の急激な温度上昇を支える均質マトリックスが得られる。
これらすべての工程はIB−IIIA−VIA族金属合金、特に銅、インジウムおよびセレンを含んでなる合金の調製に関係する。
【0004】
電気化学的方法によって金属の薄層を被膜することは今日よく知られ、特に銅のメッキにおいて頻繁に用いられる技術である。このような金属の電着と同様に非電気的堆積は装飾産業における種々の目的のために、腐食に対する保護のために、また電気産業のために発展しておりそして成熟段階に達している。
しかしながら、上記元素を堆積させるための先行技術の方法はインジウムに対する堆積銅の比率が全基質表面を通じて一定でないという欠点を有している。特に、例えば10×10cmの大きさの基質上に稼働太陽モジュールを製造するには銅−インジウム原子比率の変動があまりにも大きすぎる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
それ故、本発明の目的は、IB族金属/IIIA族金属原子比が小さい標準偏差だけで変化する、IB族金属/2成分もしくは3成分系IB族−IIIA族/3成分、4成分もしくは5成分系IB族−IIIA族−VIA族合金を均一に堆積させるために用いられる金属メッキ用組成物を提供することである。さらには、その金属メッキ用組成物の使用が上記金属比率ならびにメッキ配合(arrangement)における流体力学、電位および電流密度条件によって惹き起こされる全平方質量分布における不均一性を回避しなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
これらの目的は、金属メッキ用組成物に加えられる下記式(A)を持つ新しい添加剤によって達成される。
【0007】
【化1】

【0008】
ここで、XおよびXは同一もしくは異なっていてもよくそしてアリーレンおよびヘテロアリーレンよりなる群から選ばれる;
FGおよびFGは同一もしくは異なってもよくそして−S(O)OH,−S(O)OH,−COOH、−P(O)OHおよび第1級、第2級および第3級アミノ基およびこれらの塩およびエステルよりなる群から選ばれる、
Rはアルキレン、アリーレンまたはヘテロアリーレンよりなる群から選ばれる、そして
nおよびmは1〜5の整数である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施例2(本発明に依らない)に記載の先行技術電解質から得られた金属被膜のCu/In原子比のXRF表面スキャンとプロットを示している。Cu/In原子比はほぼ16%の標準偏差で変化する。堆積は15×15cmのモリブデン被膜フロートガラス材に施された(中央にプロットされた測定領域10×10cm)。このCu/In原子比における変化は15×15cmの基質サイズの稼動太陽電池を製造するには大きすぎる。
【図2】実施例2(本発明に依らない)から得られた全層厚のXRF表面スキャンとプロットを示している。合金堆積の全層厚は8%より大きい標準偏差で変化している。流体力学、電位および電流密度低下によって引き起こされる不均一性は明らかに見て取れる。堆積は15×15cmのモリブデン被膜フロートガラス材に施された(中央にプロットされた測定領域10×10cm)。
【図3】本発明による実施例1で得られた全層厚のXRF表面スキャンとプロットを示している。全層厚は7%より小さい標準偏差で変化する。堆積は15×15cmのモリブデン被膜フロートガラス材に施された(中央にプロットされた測定領域10×10cm)。流体力学によって引き起こされた僅かな不均一性のみが見て取れる。
【図4】本発明による実施例1で得られたCu/In原子比のXRF表面スキャンとプロットを示している。Cu/In原子比は3%より小さい標準偏差で変化している。原子比のそのような変化は太陽電池の工業的製造にとって適している。推積は15×15cmのモリブデン被膜フロートガラス材に施された(中央にプロットされた測定領域10×10cm)。
【図5】Mo回転ディスク電極(RDE)(破線/正方形−先行技術電解質:流体力学からの化学量論〔Cu/In比〕に依存;実線/三角形−流体力学からの化学量論〔Cu/In比〕から独立;電位−1.1V vs.Ag/AgCl;化学量論〔Cu/In比〕は適切にpH調節された溶液によってグレー領域の中に移動できる)のレビッチ座標(R.G.コンプトン、C.E.バンクス、Understanding Voltammetry;World Scientific Publishing Co.Pte.Ltd(2007))中のプロットを示している。図5のωは電池浴中の流体力学条件の尺度である回転アノードの回転頻度を示している。レビッチの式によればωの平方根はファラデーの法則による堆積材の尺度であるRDEの電流密度に直接関連している。
【図6】図6aは外部供給全電流密度に関して、局所電気化学電位がモリブデン被膜フロートガラスへの電気的接触に対する距離に依存することを示している。図6bは外部供給全電流密度に関して、局所全電流密度がモリブデン被膜フロートガラスへの電気的接触に対する距離に依存することを示している。
【図7】図7aと7bは発明(実施例1)による電解質挙動と同様にモリブデン被膜フロートガラス上にa)適用された電位およびb)適用された電流密度に関しての電着されたClSe前駆体の化学量論(Cu/In比)を示している。両曲線の水平領域は均一合金組成物が本発明による添加剤を使用して得られうる範囲を示している。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のメッキ用組成物中の一般式(A)の添加剤を用いることは、その添加剤が合金組成物に重要な影響を与えるという点で合金組成物の調節を非常に容易にする。上記添加剤は好ましくは合金メッキ用組成物に使用されるが、一緒になってサンドイッチ層を形成する単一層を調製するのに用いられるこれらのメッキ用組成物にもまた有利に使用される。
添加剤は好ましくは次の群から選ばれる:
【0011】
【化2】

【0012】
ここでAr、Ar、Het、Het、R、mおよびnは前記の定義と同様の意味を有する。
【0013】
ここで使用される「アリーレン」という語は、フェニレン、ベンジレン、ナフチレン、アントラセニレン、アダマンチレン、フェナントラシレン、フルオランセニレン、クリセニレン、ピレニレン、ビフェニリレン、ピセニレンなど、例えばインダニレン、1,2,3,4−テトラヒドロナフタニレン、フルオレニレンなどのような溶融ベンゾ−C5−8シクロアルキレンラジカルを含むモノまたはポリ芳香族二価ラジカルを意味する。
好ましくは、ArおよびArはフェニレンまたはナフチレンラジカルを表す。
【0014】
ここでは、「ヘテロアリル」は、例えばピリジレン、ピラジニレン、ピリミジニレン、ピリダジニレン、トリアジニレン、トリアゾリレン、イミダゾリレン、ピラゾリレン、チアゾリレン、イソチアゾリレン、オキサゾリレン、ピロリレン、フリレン、チエニレン、インドリレン、インダゾリレン、ベンゾフリレン、ベンゾチエニレン、キノリレン、キナゾリニレン、キノキサリニリレン、カルバゾリレン、フェノキサジニレン、フェノチアジニレン、キサンテニレン、プリニレン、ベンゾチエニレン、ナフトチエニレン、チアンテレニレン、ピラニレン、イソベンゾフラニレン、クロメニレン、フェノキサチイニレン、インドリジニレン、キノリジニレン、イソキノリレン、フタラジニレン、ナフチリジニレン、シンノリニレン、プテリジニレン、カルボリニレン、アクリジニレン、ペリミジニレン、フェナントロリニレン、フェナジニレン、フェノチアジニレン、イミダゾリニレン、イミダゾリジニレン、ピラゾリニレン、ピラゾリジニレン、ピロリニレン、ピロリジニレンなど、これらの異性体になりうるものすべてを含む、窒素、酸素、硫黄およびリンよりなる群から独立して各々選ばれる一つまたはそれ以上のヘテロ原子を含むモノ-またはポリヘテロ芳香族二価のラジカルを意味する。
好ましくは、HetおよびHetはピリジレンおよびキノリニレンを含む窒素含有モノ−およびポリ−ヘテロ環化合物から選ばれる。
【0015】
基FGおよびFGはAr、Ar、HetおよびHetラジカルの置換基であって、−S(O)OH、−S(O)OH、−COOH、−P(O)OH、第1級、第2級および第3級アミノ基、これらの塩およびエステルよりなる群から選ばれる。
このような塩はナトリウム、カリウムおよびカルシウムの塩のごときアルカリ金属およびアルカリ土類金属の塩を含む。
好適なエステルはアルキルエステル、特に、C1−6アルキルエステルである。ここで、C1−6アルキルエステルは、例えばメチル、エチル、プロピル、n−ブチル、1−メチルエチル、2−メチルプロピル、1,1−ジメチルエチル、2−メチルブチル、n−ペンチル、ジメチルプロピル、n−ヘキシル、2−メチルペンチル、3−メチルペンチルなどのような1から6の炭素原子を有する一価の直鎖および分岐鎖飽和炭化水素ラジカルを意味する。
好適なアンモニウム塩はアンモニウム(NH)およびテトラ−n−ブチルまたはテトラ−n−メチルアンモニウム塩のようなテトラ−n−アルキルアンモニウムを含む。
【0016】
Rはここで上記に定義したとおりアリーレンまたはヘテロアリーレン基である。さらに、Rは直鎖状または分岐鎖状アルキレン基から選ぶことができる。アルキレン基は1〜20の炭素原子を持ちそして上記したC1−6アルキル基から誘導されるアルキレン基を包含する。“C1−20アルキレン”は、同様に、例えばヘプチレン、エチルへキシレン、オクチレン、ノニレン、デシレン、ドデシレン、オクタデシレン等の如き7〜20の炭素原子を持つその高級同族基を包含する。
【0017】
本発明の特に好ましい添加剤は下記に示される:
【0018】
【化3】

【0019】
ここで、n’は2〜12、好ましくは2〜8である。
1つの特に好ましい添加剤は、
【0020】
【化4】

【0021】
である。
【0022】
一般式(A)の本発明による添加剤は、下記イソチオシアネート類:
【0023】
【化5】

【0024】
ここで、X、X、FG、FG、mおよびnは上記に定義したとおりである、
を、式HN−R−NH、ここでRは上記に定義した通りである、のジアミン化合物と反応させる工程、
あるいは
下記アミン化合物類:
【0025】
【化6】

【0026】
ここで、Ar、Ar、FG、FG、mおよびnは上記に定義したとおりである、
を、式SCN−R−NCS、ここでRは上記に定義した通りである、のビスイソシアネート化合物と反応させる工程、を有する方法によって製造することができる。
【0027】
同様に、本発明による浴中に含有される一般式I〜IIIの添加剤は、相当するイソチオシアネート類とジアミン類との反応で、またはビス−イソチオシアネート類と相当するアミン類との反応によって得ることができる。反応は下記例示反応スキームによって表すことができる。
【0028】
【化7】

【0029】
これらの製造は、水性、アルコール性あるいはクロロハロゲン化媒体中周囲温度もしくは比較的高温で実施される。
【0030】
本発明の1つの実施態様では、金属メッキ用組成物はIB族メッキ用種とIIIA族メッキ用種、および任意にVIA族メッキ用種を含有する。
IB族メッキ用種は好ましくは銅を含有し、IIIA族メッキ用種はガリウムとインジウムとを含有しそしてVIA族メッキ用種はセレンと硫黄を含有する。
本発明の他の態様によれば、金属メッキ用組成物は、IB族メッキ用種として銅を、IIIA族メッキ用種としてガリウムおよび/またはインジウムを、そしてVIA族メッキ用種としてセレンおよび/または硫黄を含有する。
好ましくは、銅、インジウムおよびセレンメッキ用種は、銅:インジウム:セレン=1:0.1〜50:0.01〜40、および最も好ましくは1:1〜5:0.05〜2のモル比で組成物中に含有される。
【0031】
下記の種が本発明による金属メッキ用組成物中に用いるための特に好ましいメッキ用種である:
(i) 銅メッキ用種
(ii) 銅とインジウムメッキ用種
(iii) 銅、インジウムとガリウムメッキ用種
(iv) 銅、インジウムとセレンメッキ用種
(v) 銅、インジウムと硫黄メッキ用種
(vi) 銅、インジウム、ガリウムとセレンメッキ用種
(vii) 銅、インジウム、ガリウムと硫黄メッキ用種および
(viii) 銅、インジウム、ガリウム、セレンと硫黄メッキ用種
一般に、本発明による金属メッキ用種組成物は、IB族メッキ用種特に銅を、0.5〜200mmol/l、好ましくは1〜100mmol/l、最も好ましくは3〜20mmol/lの量で(単独でまたはIIIA族および任意にVIA族メッキ用種と組合せて)含有する。
【0032】
IIIA族とVIA族メッキ用種のための適切な量は、メッキ用種銅、インジウムおよびセレンのために例示された上記モル比から計算することができる。
好ましくは、銅メッキ用種は硫酸銅、スルファミン酸銅またはメタンスルファミン酸銅でありそしてインジウムメッキ用種はスルファミン酸インジウムまたはメタンスルファミン酸インジウムである。本発明のさらに好ましい態様では、セレンメッキ用種が亜セレン酸を含んでなる。
【0033】
本発明による金属メッキ用組成物は、好ましくは、これに限定されないが、例えば、シトレートおよびタートレート錯形成剤の1種またはそれ以上の錯形成剤を含んでなる。
錯形成剤は、0.001〜2mol/l、好ましくは0.005〜1mol/l、最も好ましくは0.02〜0.5mol/lの量で含有される。
好ましくは、組成物はさらに緩衝系を包含する。
緩衝系は、組成物が好ましくは約1〜約6のpH値、さらに好ましくは約1.8〜約5のpH値、最も好ましくは約2.5〜約4のpH値を持つような量で含有される。
さらに好ましくは、組成物は、さらに、少なくとも1種の湿潤剤を含んでなる。
【0034】
銅−インジウム−セレン合金の如き望ましい合金を堆積させるために、基質は好ましくは金属メッキ用組成物と、約15℃〜約80℃、好ましくは20〜35℃の温度で接触せしめられてそのような合金を生成する。
本発明による層を製造するために、そのような層を受け取る基質表面は金属化前に予備洗滌に通常付される。基質は、表面から、グリース、汚れ、ダストあるいは酸化物を除去するために、出願人によって開発された湿式化学方法であるいは他の洗滌用薬品で、メッキ前に処理される。標準予備洗滌方法は第1表に記載されている。
【0035】
【表1】

【0036】
Uniclean(登録商標)399は、カーボネート、シリケート類、ホスフェート類、テンサイド類(tensides)および生分解性キレート化剤を含有する、弱アルカリ性、弱起泡性洗滌剤である。この浴剤は、あらゆる金属について、鉱物油、つや出しや研磨の残渣および顔料不純物を除去するため設計されている。
Uniclean(登録商標)260は、カソード脱脂またはアノード脱脂へ使用するため、電気伝導性を持つ弱アルカリ性水酸化ナトリウム電解質洗滌剤である。
Uniclean(登録商標)675は、万能用の酸性活性化剤である。この洗滌剤は硫酸水素ナトリウムおよびフッ化ナトリウムを含有している。
基質を洗滌した後、銅−インジウム−セレン合金の如き所望の合金が基質上に堆積される。
【0037】
好ましい作業条件は下記のとおりである:
温度:20〜35℃
pH:2.5〜3.8
電流密度:0.3〜2A/dm
流体力学的/電解質流量:0〜10m/h
堆積速度:1〜20分
堆積層の厚み:0.2〜3μm
堆積は直流メッキによってあるいは2つのカソード電位を持つパルスメッキ(定電位管理)によって実施することができる。一般に、次の電位がパルスメッキに用いられる:−0.5〜−2V(Ag/AgCl電極に対して測定された電位)、パルス時間はミリ秒の数10分の1〜数秒に亘る。アノードとして、ユニプレート基準不活性アノードの如き不活性アノードが用いられる。
添加剤濃度は1〜500ppm、好ましくは5〜100ppm、最も好ましくは10〜50ppmの範囲にある。
【0038】
本発明による金属メッキ用組成物中にそのような添加剤を用いると、IB族金属/IIIA族金属の原子比が小さな標準偏差だけで変動する被覆基質の調製が可能となる。かくして、XRF表面プロットによって得られる、IB族金属対IIIA族金属の比は、4%より小さい、好ましくは2%より小さい標準偏差で変化する。
【実施例】
【0039】
本発明は下記実施例によりさらに説明される。
【0040】
本発明の添加剤の一般的合成法1
0.2molのイソチオシアネート、0.1molのジアミンおよび300mLのメタノールを反応フラスコに加えそして反応が完結するまで65℃で24時間反応を進めた。反応溶液を次いで0℃に冷却しそして生成する固形物を濾別しそしてメタノールで洗滌した。
残渣をメタノールから再結晶化させると白色固体が得られた。
【0041】
【表2】

【0042】
本発明の添加剤の一般的合成法2
0.2molのアミン、0.1molのジイソチオシアネートおよび300mLのメタノールを反応フラスコに添加し、そして反応が完結するまで65℃で24時間反応を進めた。反応溶液を次いで0℃に冷却しそして生成する固体を濾別しそしてメタノールで洗滌した。
残渣をメタノールから再結晶化させると白色固体が得られた。
【0043】
【表3】

【0044】
実施例1
15×15cmのモリブデンフロートガラス材を第1表に記載の処理剤を用いて予備洗滌した。
【0045】
次に、金属メッキ用溶液を調製した。その組成を下記に示す:
1M スルファミン酸
1M 水酸化ナトリウム
0.3M 酒石酸ジナトリウム
1mM セレン(IV)−二酸化物
20mM スルファミン酸インジウム
9mM スルファミン酸銅
40mg/l 式IVによる添加剤
20μl/l Lutensit TC−CS40(テンサイド)
上記基質をこの金属メッキ用溶液中に浸漬しそしてCu/In/Se合金が下記作業条件を用いて基質上に電気分解的に堆積された:
温度:25℃
pH:〜3.2
直流電流:電流密度 1.3A/dm
高流体力学的/電解質流量最大10m/h、穴ノズル配列−1.5μm太陽電池吸収に〜3分の高堆積速度について必要とされる。
不活性アノード(ユニプレート基準不活性アノード)
【0046】
実施例2(本発明によらない)
15×15cmのモリブデンフロートガラス材を実施例1に上記した如き方法で予備洗滌した。
さらに、金属メッキ用溶液を調製した。その組成は下記に示すとおりである:
1M スルファミン酸
1M 水酸化ナトリウム
16mM クエン酸−3−ナトリウム
12mM セレン(IV)−二酸化物
50mM スルファミン酸インジウム
3mM スルファミン酸銅
20μl/l Lutensit TC−CS40(テンサイド)
上記基質がこの金属メッキ用溶液中に浸漬されそしてCu/In/Se合金が下記作業条件を用いて基質上に電気分解的に堆積された:
温度:25℃
pH:〜2.3
2つのカソード電位を持つパルスメッキ(定電位管理):0.9sについて−0.75v/0.1sについて−1.1v(Ag/AgCl電極に対して測定された電位)
流体力学的/電解質流量最大600l/h、穴ノズル配列
1.5μm太陽電池吸収に〜15分の速度
不活性アノード(ユニプレート基準不活性アノード)
【0047】
実施例3
15×15cmのモリブデンフロートガラス材を実施例1に上記した如き方法で予備洗滌した。
さらに、金属メッキ用溶液を調製した。その組成は下記に示すとおりである:
1M メタンスルホン酸
1M 水酸化ナトリウム
13.6mM クエン酸−3−ナトリウム
6mM セレン(IV)−二酸化物
50mM 水酸化インジウム
50mM 水酸化ガリウム(又は硫酸塩もしくは塩化物として)
3mM 酸化銅
40mg/l 式IVによる添加剤
20μl/l CUD50(テンサイド)
上記基質がこの金属メッキ用溶液中に浸漬されそしてCu/In/Se合金が下記作業条件を用いて基質上に電気分解的に堆積された:
温度:25℃
pH:〜1.5
2つのカソード電位を持つパルスメッキ(定電位管理):0.9sについて−0.75v/0.1sについて−1.1v(Ag/AgCl電極に対して測定された電位)
流体力学的/電解質流量最大600l/h、穴ノズル配列
1.5μm太陽電池吸収について〜15分の速度
不活性アノード(ユニプレート基準不活性アノード)
【0048】
結果と評価
実施例1〜2で得られた合金をXRF表面スキャンに付した。
【0049】
XRF(蛍光x−線)分析は非破壊的方法である。使用した装置(米国のテルモ−フィッシャ−サイエンティフィック社の MicroXR 1200SV)は30×30cmのx−y−テーブルを有する。それは備え付けられたタングステン管を有している。加速電圧は47keVである。それは多毛管を備えている(φ3mil:〜76μm)。シリコンドリフト検知器(SDD)は163.3eV(Mn−KαのFWHM)の解像度を有しそして冷却されたペルチエ(Peltier)である。試料は空気に曝露されるが、特別な幾何学的構造と減圧されたビームと検知管のために、アルミニウムまでの元素を測定することが可能である。
400nmのモリブデン被覆フロートガラス上に堆積された薄い合金フィルム(1〜2μm)の分析は複雑な仕事である。純粋な元素標準を用いた校正は不十分である。独自に作成した2成分、3成分、4成分または5成分の標準が必要であった。それらはICP−OES/ICP−MSによって交差分析された。
【0050】
結果として、Cu/In原子比と全平方質量分布とは全基質表面を通して決定することができそして該当する点は実施例1と2で得られた合金については図1と4に示されている。図1は本発明による添加剤が金属メッキ用浴に含有されていない、実施例2で得られた合金のCu/In原子比を示している。Cu/In原子比がほぼ16%の標準偏差で変化していることは図1から明らかである。Cu/In原子比におけるそのような変化は大きすぎるため10×10cmの基質サイズ(15×15cm基質の切り離した中心部−不均質による影響を電気的接触で直接避けるため)で作動する太陽電池を製造することはできない。
【0051】
図4は本発明による実施例1で得られた合金のXRF表面スキャンから得られたCu/In原子比の対応するプロットを示している。Cu/In原子比が3%より小さい標準偏差で変化していることは図4から明らかである。
Cu/In原子比のこのような変化は、10×10cm基質サイズで作動する太陽電池を製造するために受け入れられる。
XRF表面スキャンに基づいて、実施例1と2で得られた合金についての全平方質量(mg/cm)がプロットされ、図2(実施例2)と図3(実施例1)に示されている。
【0052】
図2から、実施例2(本発明の添加剤は含有されていない)で得られた合金の全層厚は8%を超える標準偏差で変化していることが明らかである。
一方、実施例1(本発明による)で得られた合金の全層厚は7%より小さい標準偏差で変化している。Mo基質内の、流体力学的条件と電位低下により起こされる不均一性は実施例2の合金におけるよりも遥かに著しく小さい。
【0053】
図5は、用いられた回転ディスク電極の回転速度を変えた結果として、実施例1と2による金属メッキ用浴を用いて得られた合金のCu/In比を示している。特に、回転速度(ω)の平方根は電池浴内の流体力学的条件の指標である。図5は、本発明(実施例1)による添加剤を含有するメッキ浴が用いられるとき、Cu/In比は流体力学的条件に依存しないことを裏付けている。一方、そのような添加剤が存在しないとき(実施例2におけるように)には、Cu/In比はメッキ浴中に存在する回転速度と流体力学的条件とに依存している。
図5は、また、メッキ浴のpHを変化させることによって実施例1(本発明の添加剤を含む)で得られたCu/In比を変化させることを可能にすることを示している。比較的低いpHは比較的低いCu/In比に、そして比較的高いpHは比較的高いCu/In比に、それぞれ対応している。
【0054】
図6aと6bは、外部印加全電流密度の結果としてa)局部電気化学電位およびb)局部電流密度の変化を示している。これらの値は、電気的接触に対して異なる距離で、モリブデン被膜フロートガラス基質上で直接測定される。図6aと6bに示される曲線は、先行技術のメッキ浴がCu−In−Se合金の堆積のために用いられるとき、Cu/In比が電気的接触からの距離が増加するにつれかなり増加することを説明している(図1と3参照)。In(Cuよりも低い量)は、比較的低い電位の結果として、Cuと比較したとき比較的低い含量で堆積される。本発明による添加剤は、この影響を相殺し(図3と4参照)そして流体力学的条件における不均質性の均衡を図る(図5参照)ことを可能とする。
図6aと6bに示される曲線は、本願で用いられた基質にとって代表的なものである。従って、同じ効果が工業的規模で用いられる基質サイズでも起こるであろう。
【0055】
最後に、図7aと7bは、本発明(実施例1)による、モリブデン被膜フロートガラスへのa)印加電位とb)印加電流密度ならびに電解質挙動に依存する、電着ClSe前駆体の化学量論(Cu/In比)を示している。2つの曲線における水平部分は、一定の合金組成が本発明による添加剤を用いて達成される操作領域を示している。
【0056】
実施例4
式IVによる本発明の添加剤を、下記組成を持つ低酸銅浴中での銅の堆積のために用いた。
35g/l 硫酸
35g/l 硫酸銅・5水和物
100ppm 塩化物
100ppm プロピレングリコール
20mg/l 式IVによる添加剤
黄銅基質が全電流1.5Aを用いて、殻電池中で銅により堆積された。堆積時間は300sであった。
均一且つ光沢のある堆積が式IVによる添加剤を用いて得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(A)の添加剤。
【化1】

ここで、XおよびXは同一もしくは異なっていてもよくそしてアリーレンおよびヘテロアリーレンよりなる群から選ばれる;
FGおよびFGは同一もしくは異なっていてもよくそして−S(O)OH、−S(O)OH、−COOH、−P(O)OH、および
第1級、第2級および第3級アミノ基、これらの塩およびエステルよりなる群から選ばれる;
Rはアルキレン、アリーレンまたはヘテロアリーレンよりなる群から選ばれる;そして
nおよびmは1〜5の整数である。
【請求項2】
一般式(I)〜(III)の化合物よりなる群から選ばれる請求項1による添加剤。
【化2】

ここで、ArおよびArは同一もしくは異なっていてもよくそして独立にアリーレン基を示し、
HetおよびHetは同一もしくは異なっていてもよくそしてヘテロアリーレン基を示し、および
そしてFG、FG、mおよびnは請求項1におけると同じ定義である。
【請求項3】
ArおよびArがフェニレンまたはナフチレン基を示す請求項2による添加剤。
【請求項4】
HetおよびHetがピリジレンまたはキノリニレン基を示す請求項1による添加剤。
【請求項5】
下記式を持つ請求項3による添加剤。
【化3】

ここで、n’は2〜12である。
【請求項6】
請求項1による添加剤を製造する方法であって、下記イソチオシアネート:
【化4】

ここで、X、X 、FG1、FG2、mおよびnは請求項1と同じ定義である、
を、式HN−R−NH、ここでRは請求項1と同じ定義である、ジアミン化合物と反応させるか、あるいは
下記アミン化合物:
【化5】

ここで、Ar、Ar2、FG1、FG2、mおよびnは請求項1と同じ定義である、
を、式SCN−R−NCS,ここでRは請求項1と同じ定義である、のビスイソシアネートと反応させる、工程からなる上記方法。
【請求項7】
請求項1〜6による添加剤およびIB族メッキ用種を含有してなる金属メッキ用組成物。
【請求項8】
IIIA族メッキ用種をさらに含有する請求項7による金属メッキ用組成物。
【請求項9】
VIA族メッキ用種をさらに含有する請求項8による金属メッキ用組成物。
【請求項10】
IB族メッキ用種が銅を含有してなり、IIIA族メッキ用種がガリウムおよび/またはインジウムを含有してなりそしてVIA族メッキ用種がセレンおよび/または硫黄を含有してなる請求項7〜9による金属メッキ用組成物。
【請求項11】
(i) 銅メッキ用種、
(ii) 銅およびインジウムメッキ用種、
(iii) 銅、インジウムおよびガリウムメッキ用種、
(iv) 銅、インジウムおよびセレンメッキ用種、
(v) 銅、インジウムおよび硫黄メッキ用種、
(vi) 銅、インジウム、ガリウムおよびセレンメッキ用種、
(vii) 銅、インジウム、ガリウムおよび硫黄メッキ用種
および
(viii) 銅、インジウム、ガリウム、セレンおよび硫黄メッキ用種
から選ばれるメッキ用種を含有してなる請求項10による金属メッキ用組成物。
【請求項12】
銅およびインジウムメッキ用種が銅:インジウムのモル比1:0.1〜50で組成物に含有されておりそして銅とセレンメッキ用種が銅:セレンのモル比1:0.01〜40で組成物に含有されている、請求項11による金属メッキ用組成物。
【請求項13】
銅とインジウムメッキ用種が銅:インジウムのモル比1:1〜5で組成物に含有されておりそして銅とセレンメッキ用種が銅:セレンのモル比1:0.05〜2で組成物に含有されている請求項12による金属メッキ用組成物。
【請求項14】
銅メッキ用種が硫酸銅、スルファミン酸銅およびメタンスルホン酸銅から選ばれそしてインジウムメッキ用種がスルファミン酸インジウムおよびメタンスルホン酸インジウムから選ばれる請求項10または11による金属メッキ用組成物。
【請求項15】
IB族金属/2成分もしくは3成分系IB族−IIIA族/3成分、4成分もしくは5成分系IB族−IIIA族−VIA族合金で基質を被覆する方法であって、下記工程:
(i)被覆される基質を予備洗滌し、そして
(ii)予備洗滌された基質を、請求項7〜20による金属用メッキ用組成物と約15℃〜約80℃で接触せしめてIB族金属/2成分もしくは3成分系IB族−IIIA族/3成分、4成分もしくは5成分系IB族−IIIA族−VIA族合金で被覆された基質を得る、
からなる上記方法。
【請求項16】
請求項15による方法で得られうる被覆基質。
【請求項17】
XRF表面プロットにより得られたIB族金属対IIIA族金属比が4%より小さい標準偏差で変化する請求項16による被覆基質。
【請求項18】
請求項16または17による基質を含有してなる薄膜太陽電池。

【図6】
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【図7】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2011−524945(P2011−524945A)
【公表日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−510899(P2011−510899)
【出願日】平成21年5月29日(2009.5.29)
【国際出願番号】PCT/EP2009/003885
【国際公開番号】WO2009/144036
【国際公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【出願人】(503037583)アトテック・ドイチュラント・ゲーエムベーハー (55)
【氏名又は名称原語表記】ATOTECH DEUTSCHLAND GMBH
【Fターム(参考)】