説明

2’−デオキシグアノシンから2−クロロ−2’−デオキシアデノシンを調製する方法

【課題】2−クロロ−2’−デオキシアデノシンの製造方法を提供する。
【解決手段】保護された2’−デオキシグアノシン(1)の6−オキソ基を、芳香族求核置換(SAr)反応のための6−脱離基に変換し、次いで2−アミノ基を2−クロロ基に置換し、次いで6−脱離基を6−アミノ基に置換し、最後に保護基を除去して2−クロロ−2’−デオキシアデノシンを生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2−ハロ−6−アミノプリンを調製する方法に関し、より詳しくは、2−クロロ−2’−デオキシアデノシンを調製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
2−クロロ−2’−デオキシアデノシン(CldAdo、クラドリビン)のリンパ選択的毒性、及びそのリンパ腫に対する化学療法薬としての可能性が、カーソンら(Carson et al.)によって報告されている。この有力な、2’−デオキシアデノシン(dAdo)のデアミナーゼ抵抗性アナローグは現在、ヘアリー細胞白血病に対する一般的な治療薬である2,3。それは、慢性リンパ性白血病4,5、緩慢性非ホジキンリンパ腫、及びヴァルデンストレームマクログロブリン血症に対しても顕著な活性を有する。現在、多発性硬化症、全身性エリテマトーデスに関連した糸球体腎炎、並びに他のリウマチ様および免疫障害のクラドリビンによる治療に関する研究が進んでいる。クラドリビンはヌクレオシド系プロドラッグであり、デオキシシチジン・キナーゼによって、CldAMP、次いでCldADP及び活性なCldATPへと逐次リン酸化される1a,10a。クラドリビンはミトコンドリア内の2’−デオキシグアノシン(dGuo)キナーゼの良好な基質でもあり10、ミトコンドリアに直接作用してプログラム化された細胞死を誘発することが、緩慢性のリンパ性悪性腫瘍に対する(アポトーシスによる)高い活性と、増殖性細胞とに関連している11,12
【0003】
クラドリビンの製造に関して種々の方法が公表されている。ヴェナー(Venner)は、1960年に、天然に存在する2’−デオキシヌクレオシドのフィッシャー−ヘルフェリッヒ(Fischer−Helferich)合成について報告しており13、2−クロロ−2’−デオキシアデノシンを2’−デオキシ(グアノシンおよびイノシン)の中間体として用いている。イケハラ(Ikehara)およびタダ(Tada)も、dAdoおよびCldAdoを[8,2’−アンヒドロ−9−(β−D−アラビノフラノシル)−2−クロロ−8−チオアデニンの脱硫により得られた]中間体として合成している14
【0004】
CldAdoを目的化合物とする合成では、プリン環のC6位の脱離基がC2位のそれよりもSAr置換反応に対する反応性がより高いことを利用している。ロビンスおよびロビンス(Robins and Robins)は15、2,6−ジクロロプリンと、1,3,5−トリ−O−アセチル−2−デオキシ−α−D−リボフラノースとの溶融カップリングを用いた。9−(3,5−ジ−O−アセチル−2−デオキシ−α−D−エリトロ−ペントフラノシル)−2,6−ジクロロプリンアノマーは、分別結晶により得られた。C6位における選択的なアンモニア分解およびそれに伴う脱保護により、6−アミノ−2−クロロ−9−(2−デオキシ−α−D−エリトロ−ペントフラノシル)プリンが得られた。薬理学的に活性なβ−アノマー(クラドリビン)は、同様なカップリング、クロマトグラフィーによるアノマーの分離およびアンモニア分解により調製された16
【0005】
ハロプリンのナトリウム塩およびアナローグと、塩化2−デオキシ−3,5−ジ−O−p−トルオイル−α−D−エリトロ−ペントフラノシルとの立体選択的グリコシル化では、主にワルデン反転を経てβ−ヌクレオシドアノマーが生成され17,18、アンモニア分解/脱保護によりClaAdoが得られた19。ナトリウム塩のグリコシル化は通常、良好なアノマー選択性を示すが、少量のαアノマー及び>10%のN7位への位置異性体が通常生成される20,21。このため分離が必要になり、目的とするN9位の生成物の収率の低下を招く。カーソンら(Carson et al.)は、2−デオキシ糖のチミジンから2−クロロアデニン(ClAde)への酵素による転移について報告した。ホリー(Holy)及び共同研究者らは、大腸菌のある菌株の細胞が、2’−デオキシウリジンから2−クロロ−6−[(ジメチルアミノメチレン)アミノ]プリンへのグリコシル転移を起こしてCldAdoの誘導体を生成することに言及した22。ごく最近、バライ(Barai)、ミハイロプーロ(Mikhailopulo)および共同研究者らは23、2,6−ジアミノ−9−(3−デオキシ−β−D−エリトロ−ペントフラノシル)プリンの大腸菌を介したグリコシル転移合成24および該化合物の3’−デオキシグアノシンへの酵素的脱アミノ化24について述べた。彼らは、2’−デオキシグアノシンからClAdeへのグリコシル転移について報告し、CldAdoの収率が(ClAdeに対して)81%であったと主張している23。しかし、3:1の比率でdGuo/ClAdeを用いており、そのため、CldAdoの収率はdGuoに対して<27%であった。
【0006】
サンパスら(Sampath et al.)は近年、2−アミノ−2’−デオキシアデノシンを出発物質として使用し、無保護のヌクレオシドについて最初にジアゾ化/クロロ−脱ジアゾ化反応を行って2−アミノ基を6−クロロ基に置換する2−クロロ−2’−デオキシアデノシンの製造方法を示した(米国特許第6,596,858B2号)。しかし、この方法では種々の不純物が生じることから精製を徹底して行う必要があり、その結果、全収率はわずか27%になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、CldAdoを、より高収率で、より高いコスト効率で、及びより精製された形態で得ることのできる方法を用いて製造することに対して、大きな必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、(a)式(1)を有する化合物(式中、Rは保護基を表す)の6−オキソ基を、SAr置換反応に対して適当な反応性を有する6位の脱離基に変換する工程と、(b)ジアゾ化/クロロ−脱ジアゾ化反応により、2−アミノ基を2−クロロ基に置換する工程と、(c)6位の脱離基を6−アミノ基に置換する工程と、(d)保護基Rを除去して2−クロロ−2’−デオキシアデノシンを生成する工程とを含む2−クロロ−2’−デオキシアデノシン(CldAdo)の製造方法である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】天然に存在する2’−デオキシグアノシンの保護形態からの2−クロロ−2’−デオキシアデノシンの化学合成を示す図。
【図2】2−アミノプリンヌクレオシドから2−ハロプリンヌクレオシドへのジアゾ化/ハロ−脱ジアゾ化変換反応を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に従うと、溶融およびナトリウム塩のグリコシル化手法による混合物の分離を避けることができ、且つ位置および立体化学的に純粋な2−クロロ−2’−デオキシアデノシン(クラドリビン、またはCldAdo)の合成が、天然に存在するヌクレオシドである2’−デオキシグアノシン(dGuo)を出発化合物とする変換により達成される24
【0011】
本発明に係る2’−デオキシグアノシン(dGuo)からのCldAdoの製造方法は、アシル、シリル、アミド、及びヌクレオシド/ヌクレオチド/核酸の化学および保護戦略の分野で有用である他の誘導体を含むが、それらに限定されないdGuoの保護形態から出発する。dGuoの保護形態を得る方法は、当技術分野において周知である25,26,27,28,29,30。CldAdoの効率的な合成のために好ましい出発物質は、下記の化学構造で定義される。
【0012】
【化1】

(式中、Rは任意の好適な保護基を表し、好ましくは、RはAc又はBzを表す。)
目的のCldAdo化合物を得るために、保護されたdGuo誘導体が、C6位において官能基化を行って置換され得る基を生じる薬品の組み合わせで処理され、次に、2−アミノ官能基の2−クロロ基への変換が行われ、次に、6位の官能基が置換されて6−アミノ基(又は6−アミノ基に変換することが可能で、その後6−アミノ基に変換される6位の置換基)が得られ、それと同時に、又はその後に、得られた6−アミノ−2−クロロプリン誘導体の脱保護が行われる。例えば、2−アミノ部分を保護することなく置換可能である適当な6−(置換オキシ)脱離基への6−オキソ官能基の変換、2−アミノ官能基のジアゾ化/クロロ−脱ジアゾ化による2−アミノ官能基の2−クロロ官能基への変換、及び2−クロロ−6−(置換)プリン誘導体の選択的なC6位のアンモニア分解とそれに伴う糖の脱保護とにより、dGuoからCldAdo(4)(図1)が合成される。この反応経路は、β−アノマーの立体化学およびN9位異性体の純度の両方が保持される点で有利である。
【0013】
6−オキソ基の官能基化は、2−アミノ部分を保護することなく、2−クロロ基よりもSAr置換反応に対する反応性の高い6−(置換オキシ)脱離基に6−オキソ基を変換することにより達成される。C6−オキシ基の官能基化についての2種類の好ましい方法として、C6−オキシ基のアルキルスルホニル化またはアリールスルホニル化、及びC6位におけるクロロ脱酸素化が挙げられる。
【0014】
C6−オキシ基のアルキルスルホニル化またはアリールスルホニル化は、保護されたdGuo誘導体を、例えば式R’SO−Xを有するスルホニル化合物(式中、Xはハロゲン(塩化物等)、イミダゾリド、トリアゾリド又はテトラゾリドを表し、R’はアルキル、(フルオロアルキルを含むが、それに限定されない)置換アルキル、シクロアルキル、アリール又は置換アリールを表す。)を含む(アルキル又は任意の置換アルキル若しくはシクロアルキル)スルホニル、ホスホリル、若しくはホスホニル試薬、又は(アリール又は任意の置換アリール)スルホニル、ホスホリル若しくはホスホニル試薬で処理して、6−オキソ基を6−O−(アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、アリール又は置換アリール)スルホニル基に変換することにより達成され得る。好ましい実施形態においては、3’,5’−ジ−O−(アセチル又はベンゾイル)−2’−デオキシグアノシン(1)が塩化(2,4,6−トリイソプロピル又は4−メチル)ベンゼンスルホニルで処理され、6−O−アリールスルホニル誘導体2又は2’bが高収率で得られる。他の好ましい実施形態においては、1がTiPBS−Clで処理されて6−O−TiPBS誘導体2a又は2bが得られるか、又はTsClで処理されて6−O−Ts誘導体2’bが得られる。
【0015】
使用することが可能ないくつかのdGuoのアシル保護6−O−スルホニル誘導体が当技術分野において知られている28,29,30。ハタら(Hata et al.)29による一般法により、3’,5’−ジ−O−アセチル−2’−デオキシグアノシン31(1a)又はその3’,5’−ジ−O−ベンゾイルアナローグ1b31がTiPBS−Cl/EtN/DMAP/CHClで処理されると、6−O−TiPBS誘導体2a32(91%)又は2b(86%)がそれぞれ得られた。同様に、1bがTsCl/EtN/DMAP/CHClで処理されると、6−O−Ts誘導体2’b(89%)が得られた。次の工程で、C6位においてスルホナートの置換を効率よく起こさせるためには、立体的に阻害されたアリールスルホニル誘導体を用いる必要がある。より安価な6−O−トシル誘導体を用いると、最終段階において、アンモニアがスルホニル基の硫黄とC6との両方を攻撃することから、収率が低下する(3’bから4が収率43%で得られる)。それに対して、6−O−TiPBS誘導体のアンモニア分解では、阻害された硫黄原子への攻撃が最小限しか起こらず、アンモニア分解がC6位で効率よく進行した。そうしたアリールスルホナート誘導体の両方のタイプ(特に6−O−Ts)について、より低い温度(−20〜0℃)では、硫黄への求核攻撃が進行する割合が増加して6−オキソプリン誘導体が得られ、その結果、収率が低下する。しかし、6−O−TiPBS化合物が、圧力管中、80℃でNH/MeOH/CHClにより処理されると、C6位への求核攻撃が圧倒的に有利に進み、CldAdo(4)が高収率で得られた。
【0016】
あるいは、6−オキソ基は、C6位でのクロロ脱酸素化により、6−クロロ脱離基に置換され得る。塩素は、プリンヌクレオシドのC6位において最も頻繁に使用されている脱離基である。dGuoからCldAdoを製造する方法は、上述したdGuoの保護形態から出発し、生成する2−アミノ−6−クロロプリン誘導体において置換反応に供することが可能な6−クロロ基に6−オキソ官能基を変換することが可能な化学物質の組み合わせによる誘導体の処理を含む。1のC6位での脱酸素塩素化により、2−アミノ−6−クロロプリン誘導体5が優れた収率で生成される。好ましい実施形態においては、保護されたdGuo誘導体は、可溶性塩化物の供給源である塩化ホスホリル、有機塩基、及びアセトニトリル又は他の相溶性の溶媒で処理され、6−オキソ官能基を6−クロロ基に変換する。
【0017】
POClによるグアノシン33(Guo)及びdGuo34誘導体の脱酸素塩素化に関する最初の研究では、2−アミノ−6−クロロプリン誘導体が中程度の収率(Guo)、及び低い(dGuo)収率でしか得られなかったが、改良された方法が報告されている26a,35,36。酸に対して敏感な2’−デオキシ誘導体1は、POCl/N,N−ジメチルアニリン/BTEA−Cl/MeCN/△26a,36により脱酸素塩素化され、6−クロロ誘導体5a(90%)及び5b(85%)が、注意深く管理された条件下において高収率で得られた。
【0018】
6−オキソ基を6−(置換オキシ)脱離基に変換する工程に続いて、ジアゾ化/ハロ−脱ジアゾ化反応により、2−アミノ基が2−クロロ基に置換される。非水条件下でのジアゾ化/ハロ−脱ジアゾ化法により、プリンヌクレオシド誘導体のアミノ基を塩素、臭素、又はヨウ素に置換するための改良された方法が開示されている27。これらの温和なジアゾ化/ハロ−脱ジアゾ化法は、dAdo誘導体のC6位、並びに2−アミノ−6−クロロプリンヌクレオシドのC2位に対しても適用され得る。本発明に従って、それぞれ6−O−(アルキル、シクロアルキル又はアリール)スルホニル基を含むdGuoの保護形態を、C2位でのジアゾ化/クロロ−脱ジアゾ化を行って2−クロロ基を生じる試薬で処理することにより、dGuoからCldAdoが製造される。また、C2位でのジアゾ化/クロロ−脱ジアゾ化を行って、保護された2アミノ−6−クロロプリン誘導体を、それぞれ対応する2,6−ジクロロプリン誘導体を生じる試薬で処理することによっても、CldAdoが製造される。
【0019】
C2位でのジアゾ化/クロロ−脱ジアゾ化を行って2−クロロ基を生じる試薬は、ハロゲン化物供給源(金属塩化物、金属塩化物塩、塩化アシル、塩化スルホニル、及び塩化シリル、テトラアルキル及びアリールアンモニウム塩化物塩を含むがそれに限定されないアルキル又はアリール置換アンモニウム塩化物塩等)、及び亜硝酸供給源(亜硝酸金属、亜硝酸金属塩、亜硝酸tert−ブチル、亜硝酸ペンチル、亜硝酸イソアミル等の有機亜硝酸、亜硝酸ベンジルトリメチルアンモニウム等の複合4級アンモニウム亜硝酸塩(complex quaternary ammonium nitrite)等)を含む。
【0020】
本発明の好ましい実施形態においては、CldAdoは、dGuoから容易に得られる6−O−(2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルホニル)(TiPBS)又は6−クロロ誘導体の塩化アセチル及び亜硝酸ベンジルトリエチルアンモニウム(BTEA−NO)を介したジアゾ化/クロロ−脱ジアゾ化を用いて合成される。2、2’b、又は5の非水性ジアゾ化/クロロ−脱ジアゾ化(塩化アセチル/亜硝酸ベンジルトリエチルアンモニウム)により、2−クロロプリン誘導体3、3’b、6がそれぞれ得られた。非水性ジアゾ化/クロロ−脱ジアゾ化に関するこの新しい手法27(AcCl/BTEA−NO/CHCl/−5〜0℃)は、2、2’b及び5における2−アミノ基の塩素への置換に有効であり、3a(89%)、3b(90%)、3’b(87%)、6a(95%)、及び6b(91%)が得られた。
【0021】
9−(2,3,5−トリ−O−アセチル−β−D−リボフラノシル)−2−アミノ−6−クロロプリン26,33(7)(図2)の効率的なジアゾ化/クロロ−脱ジアゾ化を、TMS−Cl(9当量)及び亜硝酸ベンジルトリエチルアンモニウム(BETA−NO)(3当量)により、CHCl中、及び室温で行った。この方法は速く(<30分)、目的の9−(2,3,5−トリ−O−アセチル−β−D−リボフラノシル)−2,6−ジクロロプリン27,37(8)(83%、クロマトグラフィーを行わず)が、白色の結晶性固体として得られた。0℃でも同様の収率が得られた。TMS−Cl(3.5当量)、BTEA−NO(1.5当量)を粉末にしたNaNO(5当量)と共に用いると、8(86%)が1時間以内に得られた。それに対して、Cl/TBN/CuClを用いた激しい発熱反応である7についての他の非水性ジアゾ化/クロロ−脱ジアゾ化法では、7の結晶化の前にコロイド状物のろ過による除去が必要であった35
【0022】
化合物7は、TMS−Brと亜硝酸tert−ブチル(TBN)とによって効率的なジアゾ化/ブロモ−脱ジアゾ化を起こした。亜硝酸アニオンとTMS−Brとの間での酸化還元相互作用が競合的に起こることから、NaNOを使用することは不可能であった。2−ブロモ−6−クロロプリンヌクレオシド327,37(85%、クロマトグラフィーを行わず)が、TMS−Br(9当量)/TBN(20当量)/CHBr/室温にて、1時間以内に結晶性固体として得られた。
【0023】
NOCl/CHCl又はNOBr/CHBrが、(MeSiX又はAcCl)及び(TBN又はBTEA−NO)から生成すると思われる。これらの手法により、保護された(2又は6)−アミノプリンヌクレオシドはもとより、酸に対して敏感な2’−デオキシヌクレオシドについても効率的にジアゾ化/ハロ−脱ジアゾ化を行うことが可能になる。この反応はコスト効率が高く、室温またはそれより低い温度で、慣用の試薬ならびに標準的な実験設備および条件で進行する。
【0024】
2−アミノ基の2−クロロ基への置換に続き、それぞれ6−O−(アルキル、シクロアルキルもしくはアリール)スルホニル又はホスホリル基および2−クロロ基を有するdGuoの保護形態を、該6−O−(アルキル、シクロアルキル又はアリール)スルホニル又はホスホリル基との置換反応を起こし、その結果生成する6−アミノ−2−クロロプリン誘導体の6−アミノ基(又は6−アミノ基に変換することが可能であり、全体として該置換基を6−アミノ基に変換することになる置換基)を生じる化学物質と反応させる。好ましい実施形態においては、工程(b)の生成物と、アミノ基に変換することが可能な窒素供給源とを該窒素供給源と相溶性である溶媒中で反応させ、6位の脱離基の選択的なアンモニア分解により6位の脱離基を6−アミノ基に置換することによって、該6位の脱離基を6−アミノ基に置換する。前記窒素供給源は、アンモニア、アジド、ヒドラジン、ベンジルアミン、又は相溶性のあるアンモニウム塩からなる群から選択される。溶媒は、メタノール、エタノール、高級アルコール、又は1,2−ジメトシキエタン、テトラヒドロフラン、若しくはDMF等の非プロトン性溶媒等の前記窒素供給源と相溶性である任意の溶媒でもよい。
【0025】
他の好ましい実施形態においては、それぞれの6−O−(アルキル、シクロアルキル、又はアリール)スルホニル脱離基を、相溶性のある非プロトン性溶媒中でアンモニアと反応させて6−アミノ−2−クロロプリン誘導体を生成し、次いで(必要ならば)脱保護によりCldAdoを得る。さらに好ましい実施形態においては、9−(3,5−ジ−O−アシル−β−D−エリトロ−ペントフラノシル−6−O−(アルキル、シクロアルキル、又はアリール)スルホニル−2−クロロプリンを、メタノール又は他の使用可能な溶媒中アンモニアで処理して、CldAdoを得る。
【0026】
さらに、保護された2,6−ジクロロプリンの誘導体を、6−クロロ基の選択的置換を起こす試薬で処理して、その結果生成する6−アミノ−2−クロロプリン誘導体の6−アミノ基に(又は6−アミノ基に変換可能な置換基に変換し、その後該置換基を6−アミノ基に)変換する試薬で処理する。さらに好ましい実施形態においては、9−(3,5−ジ−O−アシル−β−D−エリトロ−ペントフラノシル)−2,6−ジクロロプリンを、メタノール又は他の相溶性の溶媒中においてアンモニアで処理してCldAdoを得る。
【0027】
C6位(3におけるアリールスルホナート又は6における塩化物)における選択的なアンモニア分解およびそれに伴う糖成分の脱保護により、CldAdo(4)(1からの全収率64〜75%)が得られる。具体的には、阻害されたアリールスルホナート(3からの場合)又は塩化物(6からの場合)のC6位での置換およびそれに伴う糖エステルの分解は、80℃でNH/MeOH/CHClにより行われる。クラドリビン(4)は、3a(81%)、3b(83%)、6a(87%)、及び6b(94%)からは高い収率で得られたが、6−O−トシル誘導体3’b(43%)からは中程度の収率でしか得られなかった。
【0028】
保護基Rは、当技術分野で周知の塩基性試薬を用いて、該塩基性試薬と相溶性の溶媒中での脱アシル化により除去されて、保護基Rが除去されて2−クロロ−2’−デオキシアデノシンが生成される。前記塩基性試薬は、アンモニア、金属アルコキシド、金属水酸化物、及び金属炭酸塩からなる群から選択される。溶媒は、メタノール、エタノール、1,2−ジメトキシエタン/HO、又はテトラヒドロフラン/HO等の前記塩基性試薬と相溶性である任意の溶媒でもよい。
【0029】
保護基Rの除去は、6−(置換オキシ)脱離基のアンモニア分解による6−アミノ基への置換と同時に、又はその後で起こりうることに注意すべきである。6−(置換オキシ)脱離基の6−アミノ基への置換および保護基Rの除去の両方の工程が、窒素供給源と相溶性である溶媒中で該窒素供給源を用いて達成される。前記窒素供給源がアンモニアである場合、メタノール又はエタノール等のプロトン性溶媒中では、両方の工程が同時に進行する。しかし、前記窒素供給源が無水アンモニアである場合、1,2−ジメトキシエタン、又はテトラヒドロフラン等の無水溶媒中では、6−(置換オキシ)脱離基の6−アミノ基への置換工程のみが進行する。この場合、保護基Rの除去は別の工程で行う必要があり、それが望ましい場合もある。
【0030】
本発明の最も好ましい実施形態においては、臨床薬クラドリビン(2−クロロ−2’−デオキシアデノシン、CldAdo、4)の合成が、容易に入手可能である3’,5’−ジ−O−アセチル−2’−デオキシグアノシン(1a)又はそのジベンゾイルアナローグ(1b)から3工程で達成された。2−アミノ基の置換は、AcCl/BTEA−NOを用いたジアゾ化/クロロ−脱ジアゾ化により、高い収率で進行した。3a及び3b(6−OTiPBS)又は6(6−Cl)の選択的アンモニア分解およびそれに伴う脱アシル化により、4が得られた(全収率64〜75%)。3’b(6−OTs)のアンモニア分解は困難であり、4は低い全収率(33%)でしか得られなかった。1の脱酸素塩素化を用いた反応経路は、6−O−TiPBS中間体を経由する反応経路に比べて、全体的に10%以下(〜10%)の割合で効率的であった。
【実施例】
【0031】
化合物4の融点は、ホットステージ装置により測定した。UVスペクトルはMeOH溶液を用いて測定した。H NMRスペクトルは、特に記載のない限り300MHzでCDCl溶液を用いて記録した。一次分裂がより複雑であるべき場合、又はピークが十分に分離していない場合、「見かけの」ピーク形状を引用符付きで示す。質量スペクトル(MS)は、特に記載のない限りFAB法(グリセロール)により測定した。化学薬剤および溶媒は、試薬用の品質のものを使用した。CHCl及びMeCNは、CaH上での還流および蒸留によって乾燥した。CHClは、P上で乾燥した後に蒸留した。AcCl、POCl及びN,N−ジメチルアニリンは、使用前に新たに蒸留した。亜硝酸ベンジルトリエチルアンモニウム(BTEA−NO)は、BTEA−Clからのイオン交換[Dowex1×2(NO)]により調製した。カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、230〜400メッシュ)は、CHCl/MeOHにより行った。化合物1a及び1bは記載の方法により調製した31
【0032】
方法1(ヌクレオシド/TiPBS−Cl/DMAP/EtN/CHCl)は1a→2aについて、方法2(ヌクレオシド/AcCl/BTEA−NO/CHCl)は2a→3aについて、方法3(ヌクレオシド/N,N−ジメチルアニリン/POCl/BTEA−Cl/MeCN)は1a→5aについて、そして方法4(ヌクレオシド/NH/MeOH/△)は3a→4について記載されている。等しいモル比の他のヌクレオシドについて行った同様な反応により、記載された生成物および量を得た。
【0033】
参考例1
9−(3,5−ジ−O−アセチル−2−デオキシ−β−D−エリトロ−ペントフラノシル)−2−アミノ−6−O−(2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルホニル)プリン(2a)の調製。方法1。EtN(1.25mL、910mg、9.0mmol)を、1a(1.67g、4.8mmol)、TiPBS−Cl(2.73g、9.0mmol)、及びDMAP(72mg、0.6mmol)の無水CHCl(70mL)溶液に、N雰囲気下で撹拌しながら加えた。撹拌を24時間続けて揮発分を留去した。オレンジ色の残渣をクロマトグラフィー(CHCl/MeOH)に供して、2a32(2.67g、91%)を、わずかに黄色を帯びた泡状物として得た。泡状物のUVの吸収極大238nm、291nm、極小264nm;H NMR(500MHz)δ1.26〜1.32(m,18H)、2.08(s,3H)、2.14(s,3H)、2.54(ddd,J=4.7,9.0,14.0Hz,1H)、2.91〜2.99(m,2H)、4.22〜4.37(m,3H)、4.43〜4.47(m,2H)、4.97(br s,2H)、5.41〜5.42(「d」,1H)、6.26〜6.29(m,1H)、7.21(s,2H)、7.84(s,1H);LRMS m/z 618(MH[C2940S]=618);HRMS m/z 640.2413(MNa[C2939SNa]=640.2417)。
【0034】
参考例2
2−アミノ−9−(3,5−ジ−O−ベンゾイル−2−デオキシ−β−D−エリトロ−ペントフラノシル)−6−O−(2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルホニル)プリン(2b)の調製。方法1を用いて1b(950mg、2.0mmol)を処理することにより、2b(1.27g、86%)を白色の泡状固体として得た。泡状固体のUVの吸収極大289nm、極小264nm;H NMR δ1.29〜1.32(m,18H)、2.76(ddd,J=2.1,6.0,14.3Hz,1H)、2.96(「五重線」,J=6.8Hz,1H)、3.15〜3.25(m,1H)、4.34(「五重線」,J=6.8Hz,2H)、4.65〜4.74(m,2H)、4.85〜4.90(m,1H)、5.00(br s,2H)、5.84〜5.86(「d」,1H)、6.38〜6.43(m,1H)、7.30(s,2H)、7.44〜7.55(m,4H)、7.58〜7.69(m,2H)、7.85(s,1H)、8.04(d,J=7.1Hz,2H)、8.11(d,J=7.1Hz,2H);LRMS m/z 742(MH[C3944S)=742)、764(MNa[C3943SNa)=764);HRMS m/z 764.2730(MNa[C3943SNa)=764.2730)。
【0035】
参考例3
2−アミノ−9−(3,5−ジ−O−ベンゾイル−2−デオキシ−β−D−エリトロ−ペントフラノシル)−6−O−(4−メチルベンゼンスルホニル)プリン(2’b)の調製。EtN(700μL、506mg、5.0mmol)を、1b(1.43g、3.0mmol)、TsCl(858mg、4.5mmol)、及びDMAP(36mg、0.3mmol)の無水CHCl(45mL)溶液に、N雰囲気下で撹拌しながら加えた。撹拌を15時間続けて揮発分を留去した。わずかに黄色を帯びた残渣をクロマトグラフィー(CHCl/MeOH)に供して、2’b(1.68g、89%)を白色の泡状固体として得た。泡状固体のUVの吸収極大300nm;H NMR(DMSO−d)δ2.43(s,3H)、2.73(ddd,J=2.1,8.4,14.4Hz,1H)、3.17〜3.27(「五重線」,J=7.2Hz,1H)、4.52〜4.65(m,3H)、5.76〜5.78(「d」,1H)、6.37〜6.41(m,1H)、6.95(br s,2H)、7.47〜7.73(m,8H)、7.95(d,J=7.8Hz,2H)、8.03〜8.11(m,4H)、8.30(s,1H);LRMS m/z 630(MH[C3128S]=630)、m/z 652(MNa[C3127SNa]=652);HRMS m/z 652.1467(MNa[C3127SNa]=652.1478)。
【0036】
参考例4
9−(3,5−ジ−O−アセチル−2−デオキシ−β−D−エリトロ−ペントフラノシル)−2−クロロ−6−O−(2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルホニル)プリン(3a)の調製。方法2。AcCl(200μL、220mg、2.8mmol)の無水CHCl溶液(12mL)を、N雰囲気下、NaCl/氷/HO浴(−5〜0℃)中で15分間冷却した。BTEA−NO(520mg、2.2mmol)を無水CHCl(8mL)に溶解し、この溶液をすぐに、冷却した前記AcCl/CHCl溶液に撹拌しながら滴下した。2a(288mg、0.5mmol)の無水CHCl溶液(5mL)を冷却した前記溶液に滴下し、撹拌を5分間続けた(TLC、CHCl/MeOH、95:5より、2aが1つの生成物へと完全に変換されたことが示された)。反応混合物を、冷却(氷/HO浴)した飽和NaHCO/HO(100mL)/CHCl(100mL)混合物に、激しく撹拌しながら速やかに滴下した。層を分離し、有機層を冷却した(0℃)HO(2×100mL)で洗浄し、1時間乾燥(MgSO)した。揮発分を留去し、残渣をクロマトグラフィー(CHCl/MeOH)に供して、3a(267mg、89%)を白色の泡状固体として得た。泡状固体のUVの吸収極大240、266nm、極小255nm;H NMR(500MHz)δ1.24〜1.31(m,18H)、2.08(s,3H)、2.13(s,3H)、2.67(ddd,J=2.5,7.0,15.5Hz,1H)、2.76〜2.81(m,1H)、2.90〜2.96(「五重線」,J=7.0Hz,1H)、4.28〜4.33(「五重線」,J=7.0Hz,2H)、4.35〜4.39(m,3H)、5.38〜5.39(「d」,1H)、6.42〜6.45(m,1H)、7.22(s,2H)、8.23(s,1H);LRMS m/z 637(MH[C2938ClNS)=637);HRMS m/z 659.1902(MNa[C2937ClNSNa)=659.1918)。
【0037】
参考例5
9−(3,5−ジ−O−ベンゾイル−2−デオキシ−β−D−エリトロ−ペントフラノシル)−2−クロロ−6−O−(2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルホニル)プリン(3b)の調製。方法2を用いて2b(1.20g、1.6mmol)を処理することにより、3b(1.10g、90%)を黄色の泡状固体として得た。泡状固体のUVの吸収極大230、266nm、極小255nm;H NMR δ1.22〜1.34(m,18H)、2.92〜3.00(m,3H)、4.30〜4.34(m,2H)、4.68〜4.77(m,3H)、5.80〜5.82(「d」,1H)、6.54〜6.57(m,1H)、7.42〜7.64(m,8H)、8.00(d,J=8.4Hz,2H)、8.10(d,J=8.4Hz,2H)、8.26(s,1H);HRMS m/z 783.2224(MNa[C3941ClNSNa]=783.2231)。
【0038】
参考例6
9−(3,5−ジ−O−ベンゾイル−2−デオキシ−β−D−エリトロ−ペントフラノシル)−2−クロロ−6−O−(4−メチルベンゼンスルホニル)プリン(3’b)の調製。方法2を用いて2’b(1.45g、2.3mmol)を処理することにより、3’b(1.30g、87%)を、わずかに黄色を帯びた泡状物として得た。泡状物のUVの吸収極大267nm、極小255nm;H NMR(DMSO−d)δ2.45(s,3H)、2.86(ddd,J=3.4,6.2,14.0Hz,1H)、3.21〜3.30(「五重線」,J=7.0Hz,1H)、4.55〜4.67(m,3H)、5.82〜5.84(m,1H)、6.56〜6.61(m,1H)、7.42〜7.72(m,8H)、7.88(d,J=7.8Hz,2H)、8.04〜8.07(m,4H)、8.88(s,1H);HRMS m/z 671.0983(MNa[C3125ClNSNa)=671.0979。
【0039】
実施例1
9−(3,5−ジ−O−アセチル−2−デオキシ−β−D−エリトロ−ペントフラノシル)−2−アミノ−6−クロロプリン(5a)の調製。方法3。1a(540mg、1.54mmol)、BTEA−Cl(710mg、3.1mmol)、N,N−ジメチルアニリン(215μL、206mg、1.7mmol)、及びPOCl(720μL、1.2g、7.7mmol)をMeCN(6mL)に溶解した混合物を、予め加熱した油浴(85℃)中で10分間撹拌した。揮発分をフラッシュ蒸留により(減圧下)速やかに留去後、黄色の泡状物を溶解(CHCl、15mL)し、砕いた氷とともに15分間激しく撹拌した。層を分離し、水層を抽出(CHCl、3×5mL)した。ひとまとめにした有機層に砕いた氷を時々加え、洗浄[(氷−HO(3×5mL)、5%NaHCO/HO(pHが約7になるまで))した後、乾燥(MgSO)した。揮発分を留去後、残渣をクロマトグラフィー(CHCl/MeOH)に供して、5a36,38(517mg、90%)を白色の泡状固体として得た。泡状固体のUVの吸収極大248nm、310nm、極小268nm;H NMR(500MHz,DMSO−d)δ2.02(s,3H)、2.08(s,3H)、2.49〜2.52(m,1H)、3.04〜3.06(m,1H)、4.20〜4.29(m,3H)、5.32〜5.34(「d」,1H)、6.23〜6.26(m,1H);7.03(br s,2H)、8.35(s,1H);H NMR δ2.03(s,3H)、2.08(s,3H)、2.51(ddd,J=2.7,5.9,14.2Hz,1H)、2.85〜2.94(「五重線」,J=7.1Hz,1H)、4.28〜4.42(m,3H)、5.35〜5.37(m,1H)、6.21〜6.26(m,1H)、7.89(s,1H);HRMS(EI) m/z 369.0844(M[C1416ClN]=369.0840)。
【0040】
実施例2
2−アミノ−9−(3,5−ジ−O−ベンゾイル−2−デオキシ−β−D−エリトロ−ペントフラノシル)−6−クロロプリン(5b)の調製。方法3を用いて1b(2.38g、5mmol)を処理することにより、5b(2.10g、85%)を、わずかに黄色を帯びた泡状固体として得た。このUVの吸収極大、310nm;H NMR(DMSO−d)δ2.69〜2.78(「ddd」,1H)、3.20〜3.24(「五重線」,J=7.2Hz,1H)、4.56〜4.67(m,3H)、5.77〜5.79(「d」,1H)、6.39〜6.44(m,1H)、7.02(br s,2H)、7.48〜7.71(m,6H)、7.96(d,J=8.4Hz,2H)、8.06(d,J=8.7Hz,2H)、8.37(s,1H);LRMS m/z 494(MH[C2421ClN]=494);HRMS m/z 516.1042(MNa[C2420ClNNa]=516.1051)。
【0041】
実施例3
9−(3,5−ジ−O−アセチル−2−デオキシ−β−D−エリトロ−ペントフラノシル)−2,6−ジクロロプリン(6a)の調製。方法2を用いて5a(265mg、0.7mmol)を処理することにより、6a39(266mg、95%)を白色の泡状固体として得た。泡状固体のUVの吸収極大274nm、極小232nm;H NMR(500MHz)δ2.12(s,3H)、2.15(s,3H)、2.73(dddd,J=2.4,5.9,14.2Hz,1H)、2.83〜2.86(m,1H)、4.38〜4.39(m,3H)、5.41〜5.42(「d」,1H)、6.45〜6.50(m,1H)、8.33(s,1H);HRMS m/z 411.0230(MNa[C1414ClNa]=411.0239)。
【0042】
実施例4
9−(3,5−ジ−O−ベンゾイル−2−デオキシ−β−D−エリトロ−ペントフラノシル)−2,6−ジクロロプリン(6b)の調製。方法2を用いて5b(407mg、0.8mmol)を処理することにより、6b(386mg、91%)を、わずかに黄色を帯びた泡状固体として得た。泡状固体のUVの吸収極大274nm、極小257nm;H NMR(500MHz,DMSO−d)δ2.87(ddd,J=3.5,8.0,17.5Hz,1H)、3.25〜3.31(m,1H)、4.57〜4.71(m,3H)、5.83〜5.85(「d」,1H)、6.59〜6.62(m,1H)、7.46〜7.72(m,6H)、7.91(d,J=7.5Hz,2H)、8.09(d,J=7.5Hz,2H)、8.96(s,1H);HRMS m/z 535.0562(MNa[C2418ClNa]=535.0552)。
【0043】
実施例5
2−クロロ−2’−デオキシアデノシン(クラドリビン、4)の調製。方法4。NH/MeOH(12mL、0℃で飽和)を、圧力管内の3a(159mg、0.25mmol)のCHCl溶液(8mL)に加えた。管を封止し、予め80℃に加熱した油浴中に速やかに浸した。加熱(80℃)を7時間続けて揮発分を留去した。残渣を溶解(HO、2mL)した後、溶液をDowex1×2(OH、20mL)のカラムに通し、フラスコをすすいで(HO、5mL)カラムに通した。溶出液のpHが中性になるまでカラムを洗浄(HO)した後、MeOH/HO(1:1)をカラムに通した。UV吸収を有するフラクションを集めて揮発分を留去した。EtOH(3×10mL)を加えて留去し、残渣を乾燥(減圧下)して4(58mg、81%)を得た。白色粉末をMeOHから再結晶(2度回収、回収率84%)して、融点>300℃(約220℃で結晶がゆっくりと褐色に変色)の4を得た。又は、白色粉末をHOから再結晶(2度回収、回収率72%)して、融点>300℃(融点の文献値:210〜215℃で軟化16、その後分解;>300℃18,21;232℃)の4を得た。UV、H NMR、およびMSのデータは、文献に記載の値21,22と一致した。元素分析:C1012ClNの計算値:C、42.04;H、4.23;N、24.51。実測値:C、41.85;H、4.40;N、24.46。
【0044】
方法4を用いて3b(83%)、3’b(43%)、6a(87%)、又は6b(94%)を処理することにより、4を白色、TLC上で均一、且つ分光学的データが同一の粉末として得た。
【0045】
参考例7
9−(2,3,5−トリ−O−アセチル−β−D−リボフラノシル)−2,6−ジクロロプリン(8)の調製。
【0046】
方法A。TMS−Cl(1.14mL、978mg、9.0mmol)を、7(428mg、1.0mmol)のCHCl溶液(30mL)に、N雰囲気下で撹拌しながら滴下した。BTEA−NO(714mg、3.0mmol)のCHCl溶液(10mL)を滴下(1滴/2秒)し、溶液を室温で30分間撹拌した(TLC)。溶液を希釈(CHCl、200mL)して洗浄(5%NaHCO/HO、5×100mL)した。ひとまとめにした水層を抽出(CHCl、2×100mL)し、ひとまとめにした有機層を乾燥(MgSO)してろ過した。揮発分を留去後、EtOを加えて黄色油状物から留去(3×25mL)し、残渣を再結晶(EtOH)して、8(373mg、83%)を報告27された通りの融点、UV、H NMR、及びMSを有する淡黄色結晶として得た。
【0047】
方法B。TMS−Cl(444μL、280mg、3.50mmol)を、7(428mg、1.0mmol)及び粉末のNaNO(345mg、5.0mmol)のCHCl溶液(25mL)に、N雰囲気下で撹拌しながら滴下した。BTEA−NO(357mg、1.5mmol)のCHCl溶液(25mL)を滴下(1滴/秒)し、溶液を室温で1時間撹拌した(TLC)。混合物を15分間冷却し、冷却した飽和NaHCO/HO(200mL)/CHCl(200mL)混合物に、激しく撹拌しながら滴下した。水層を抽出(CHCl、100mL)し、ひとまとめにした有機層を洗浄(HO、100mL)した後、乾燥(MgSO)した。揮発分を留去後、黄色油状物を再結晶(BuOH)して8(384mg、85%)を淡黄色結晶として得た。
【0048】
方法C。AcCl/CHCl溶液(1M、2.5mL、2.5mmol)を、N雰囲気下で無水CHCl(10mL)に加え、溶液を15分間冷却した。BTEA−NO(535.5mg、2.25mmol)のCHCl溶液(5mL)を、該冷却したAcCl/CHCl溶液に撹拌しながら滴下(1滴/2秒)した。冷却した7(214mg、0.5mmol)の無水CHCl溶液(5mL)を、該冷却したAcCl/CHCl/BETA−NOCl溶液に撹拌しながら滴下した(TLC、ヘキサン/EtOAc、3:7)。速やかに処理して再結晶(方法Bと同様)し、8(187mg、84%)を淡黄色結晶として得た。
【0049】
注:
1(a) Carson, D. A.; Wasson, D. B.; Kaye, J.; Ullman, B.; Martin, D. W., Jr.; Robins, R. K.; Montgomery, J. A. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1980, 77, 6865-6869.
(b) Carson, D. A.; Wasson, D. B.; Taetle, R.; Yu, A. Blood 1983, 62, 737-743.
2Piro, L.D., Carrera, C.J.; Carson, D. A.; Beutler, E. N. Engl. J. Med. 1990, 322, 1117-1121.
3Jehn, U.; Bartl, R.; Dietzfelbinger, H.; Vehling-Kaiser, U.; Wolf-Hornung, B.; Hill, W.; Heinemann, V. Ann. Hematol. 1999, 78, 139-144.
4Piro, L. D.; Carrera, C. J.; Beutler, E., Carson, D. A. Blood 1988, 72, 1069-1073.
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
2−クロロ−2’−デオキシアデノシンの製造方法であって、
(a)次式を有する化合物の6−オキソ基を芳香族求核置換(SAr)反応のための6−脱離基に変換する工程と、
【化1】

(式中、Rは保護基を表す)
(b)ジアゾ化/クロロ−脱ジアゾ化反応により、2−アミノ基を2−クロロ基に置換する工程と、
(c)6−脱離基を6−アミノ基に置換する工程と、
(d)保護基Rを除去して2−クロロ−2’−デオキシアデノシンを生成する工程と
を有し、かつ、
前記6−脱離基は、(アルキル又は任意の置換アルキル若しくはシクロアルキル)スルホニル、ホスホリル又はホスホニル基、および(アリール又は任意の置換アリール)スルホニル、ホスホリル又はホスホニル基からなる群から選択される6−(置換オキシ)基を除く脱離基である方法。
【請求項2】
前記6−脱離基は6−ハロ基である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記6−脱離基は6−クロロ基である請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記保護基はアシルまたはシリルから選択される請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記6−脱離基はアンモニアを用いて6−アミノ基に置換される請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−116782(P2011−116782A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−51093(P2011−51093)
【出願日】平成23年3月9日(2011.3.9)
【分割の表示】特願2005−501990(P2005−501990)の分割
【原出願日】平成15年9月25日(2003.9.25)
【出願人】(505110284)ブリガム ヤング ユニバーシティー (2)
【氏名又は名称原語表記】BRIGHAM YOUNG UNIVERSITY
【Fターム(参考)】