説明

2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸及びその製造方法

【課題】2-メチル-2-プロペニルスルホン酸(IBSA)の含有量が30ppm以下の2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(ATBS)の製造方法を提供する。
【解決手段】(第1工程)アクリロニトリル(AN)と発煙硫酸とを90分以上混合して、これらの混合液を製造する工程と、(第2工程)製造した混合液と、イソブチレンとを、40〜70℃で90〜180分接触させて、ATBSのANスラリー液を得る工程と、(第3工程) 前記スラリー液を固液分離してATBSの粗体ケーキを得、次いで粗体ケーキの2倍以上の質量のANで粗体ケーキを洗浄する工程と、(第4工程)洗浄した粗体ケーキを、80〜130℃で、30〜300分乾燥する工程と、を含む、ATBSの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、他のモノマーと共重合させた場合に高分子量のポリマーを与える、高純度の2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(以下、ATBSと略記する場合がある。)、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ATBSは、下記式(2)で示される化合物である。
【0003】
【化1】

【0004】
ATBSは、アクリル繊維の改質剤として、分散剤や凝集剤のモノマー原料として、又は化粧品の増粘剤用のモノマー原料として、更には原油の掘削用の薬剤や原油の高次回収用に使用される薬剤製造用のモノマー原料等として広い分野で使用されている。
【0005】
これらの用途に用いられる、上記ATBSを原料モノマーとして製造されるポリマーは特に高分子量であることが要求される。即ち、上記用途のポリマー製造に使用されるATBSは、重合を阻害する物質の含有量を極力低下させることが求められると共に、安定した品質であることが求められる。
【0006】
ATBSは、通常アクリロニトリル、硫酸、イソブチレンを付加反応させることにより製造され、その性状は常態においては白色針状結晶であって、融点は185℃である。
【0007】
上記付加反応において、アクリロニトリル、硫酸、イソブチレンの3成分はそれぞれ等モルで反応するが、アクリロニトリルは反応媒体の役割も担うため、硫酸及びイソブチレンと比較して大過剰に用いられる。
【0008】
ATBSは、アクリロニトリルに難溶性であるので、反応後得られる反応生成物はアクリロニトリル中にATBSが析出したスラリー状である。通常ATBSの製造においては、このスラリーからATBSを分離して、これを次の精製工程で精製することが行われている。精製方法としては、アクリロニトリルで洗浄する方法がある。(例えば特許文献1)。
【0009】
又、粗ATBSをメタノールで再結晶する方法(例えば特許文献2)、陰イオン交換樹脂を用いて精製する方法(例えば特許文献3)、アクリロニトリルの存在下にATBSの水溶液を蒸留して水を除去してATBSのアクリルニトリル分散液を得た後、ATBSを分散液から濾別する方法(例えば特許文献4)等が知られている。
【0010】
しかし、重合を阻害する物質が何であるかについては明確な結論はなく、従って従来は十分にATBSを精製することにより、上記要請に応える方法が採用されている。上記十分に精製する方法は、重合を阻害する物質を特定出来ていないことから、その阻害する特定物質を除去することに特化されたものではなく、一般的により純度を高める通常の方法が採用されているに過ぎない。従って、場合により過剰に精製される場合もあり、得られるATBSの不純物濃度に関する品質の安定化は困難である。
【特許文献1】特公昭50-30059号 (例1)
【特許文献2】特開2004−359591号 (請求項1)
【特許文献3】特開2004−143078号 (請求項1)
【特許文献4】特開2004−277363号 (請求項1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明者は、上記問題を解決するために種々検討した結果、第1に、反応副生物である下記式(1)
【0012】
【化2】

【0013】
で示される2−メチル−2−プロペニル−1−スルホン酸(IBSAと略記する場合がある。)や、下記式(3)
【0014】
【化3】

【0015】
で示される2−メチリデン−1,3−プロピレンジスルホン酸(IBDSAと略記する場合がある。) は、重合の連鎖移動作用を有し、ATBS中のこれらの化合物の含有量が増加すると、ATBSを共重合して得られる共重合体の分子量が高くならないことを見出した。特に、IBSAの含有量のバラツキは、ATBSを共重合して得られる共重合体及びその中和塩の分子量のバラツキになり、その結果、共重合体の品質の安定化が図れないことを見出した。
【0016】
これらの化合物の存在は、従来知られている。しかし、どのような製造条件において、これら化合物が増減するか等の製造工程におけるこれら化合物の挙動については知られていない。
【0017】
本発明者は、反応工程、固液分離工程、固体精製行程、固体乾燥工程からなるIBSAの製造に際し、これら各工程における上記IBSA、IBDSAの挙動に付、詳細に検討した。
【0018】
検討に際しては、先ず、分析機器を用いるIBSA、IBDSAの定量方法を検討した。その結果、これら化合物の定量には、キャピラリー電気泳動分析、イオンクロマトグラフィー分析、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析が有効であることを確認した。特に、HPLC分析が有効で、上記化合物はHPLCの分析条件を詳細に設定することにより簡単に定量できることを見出した。
【0019】
次に、HPLC分析を用いて、ATBS中のIBSAを定量すると共に、このATBSの共重合体を製造し、その粘度を測定した。その結果、ATBSの共重合体を従来の共重合体よりも一層高い分子量のものとするためには、ATBS中のIBSA含有量を30質量ppm以下にすることが必要であることが判明した。
【0020】
本発明は上記検討の結果完成するに至ったもので、その目的とするところは、重合を阻害するIBSAの含有率が30質量ppm以下のATBS、及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記目的を達成する本発明は下記のものである。
【0022】
〔1〕 下記式(1)
【0023】
【化4】

【0024】
で示される2−メチル−2−プロペニル−1−スルホン酸の含有量が30質量ppm以下であることを特徴とする下記式(2)
【0025】
【化5】

【0026】
で示される2−アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸。
【0027】
〔2〕 下記第1〜第4工程
(第1工程) アクリロニトリルと発煙硫酸とを90分以上混合して、アクリロニトリルと発煙硫酸との混合液を製造する工程と、
(第2工程) 第1工程で製造する混合液と、イソブチレンとを、40〜70℃で90〜180分接触させて、下記式(2)
【0028】
【化6】

【0029】
で示される2−アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸のアクリロニトリルスラリー液を得る工程と、
(第3工程) 第2工程で得られるスラリー液を固液分離して2−アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸の粗体ケーキを得、次いで粗体ケーキの2倍以上の質量のアクリロニトリルで粗体ケーキを洗浄する工程と、
(第4工程) 第3工程で得られる洗浄した粗体ケーキを、80〜130℃で、30〜300分乾燥する工程と、
を含むことを特徴とする2−メチル−2−プロペニル−1−スルホン酸の含有量が30質量ppm以下である2−アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸の製造方法。
【発明の効果】
【0030】
本発明のATBSは、IBSAの含有率が30質量ppm以下である。従って、このATBSを共重合して得られる共重合体は、従来の共重合体と比較し分子量が高い。このATBSを共重合して得られる共重合体は分子量が高いので、この共重合体を例えば凝集剤や増粘剤として使用する場合、その添加量を少なくしても同等の作用を発現でき、その結果コスト削減を達成できる。更に、製造ロット毎の分子量のバラツキが少ない。
本発明のATBSの製造方法によれば、第1工程で過剰の三酸化硫黄を可及的に減少させ、第3工程で2倍以上のアクリロニトリルで粗体ケーキを洗浄した後、加熱乾燥させてIBSAを分解除去することにより、簡単にIBSAの含有率が30質量ppm以下のATBSを製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(ATBS)
本発明のATBSは、2−メチル−2−プロペニル−1−スルホン酸(IBSA)の含有量が30質量ppm以下である。好ましくは、IBSAの含有量は、20質量ppm以下である。ATBSの含有量が、30ppmを超える場合は、ATBSを共重合して得られる共重合体の分子量が、十分大きくならず、例えば、化粧品の増粘剤用、原油の掘削用の薬剤や原油の高次回収用に使用される薬剤等の高分子量の重合体の製造には使用し難くなる。この様な分子量としては、通常平均分子量が100万以上のものである。
【0032】
IBSAの含有量の下限は、特に制限が無く、可能な限り少ないことが好ましい。IBSAの含有量の測定は、HPLC分析による。
【0033】
本発明者は、IBSAが連鎖移動作用を有することを以下の実験により確認した。
【0034】
即ち、アクリルアミド及びATBSの水溶液に、IBSAをその添加量を変化させて添加した。このモノマー水溶液を重合させることにより、共重合体を得た。この共重合体を水に溶解し、この水溶液の粘度を測定した結果を図1に示した。
【0035】
実験は、以下の手順で行った。先ず、ATBS40gを水60gに溶解し、48質量%のNaOH水溶液を添加してpHを8に調整した。これに水を加えて35質量%濃度に調整した。40質量%のアクリルアミド水溶液55.6gを加え、更に水5.2gを加えて、モノマー濃度を35質量%にした。この溶液にIBSAをATBSに対して所定量添加して、モノマー溶液を得た。その後、このモノマー水溶液に窒素を吹込むと共に、液温を30℃に調整した後、過硫酸アンモニウム0.7g、亜硫酸ナトリウム0.7g、銅イオンを10ppm(質量基準)含む塩化銅水溶液0.6g、ジアゾ系ラジカル重合開始剤としてV−50(商品名 和光純薬工業株式会社製)の10質量%水溶液0.7gを加えた。2時間後に反応を終了して共重合体を取出した。
【0036】
この共重合体1.15gを水393gに溶解した後、食塩23.4gを添加し、粘度測定用試料液(共重合体濃度0.25質量%)を得た。粘度測定は以下の条件で行った。
粘度計:ブルックフィールド社製デジタル粘度計
ローター回転速度:60rpm
測定温度:25℃
【0037】
図1から、IBSAの添加量が増加するにつれて、試料液の粘度の低下が起り、得られる共重合ポリマーの平均分子量が低下することが分る。このデータから、IBSAが、連鎖移動剤として作用することが確認された。
【0038】
更に、市販のATBSにおいても、IBSA含有量が40質量ppm以下のものは出回っておらず、ATBSが高い重合性を維持し、これを重合させる場合に高い分子量の共重合体が得られるためには、IBSAが30ppm(質量基準)以下である必要があることが確認された。
【0039】
ATBSの製造方法
以下、IBSAの含有量が30質量ppm以下の本発明IBSAの製造方法につき、説明する。
【0040】
本製造方法は、下記の第1工程〜第4工程を含む。
【0041】
(第1工程)
第1工程においては、アクリロニトリルと発煙硫酸とを混合してこれらの混合液を製造する。アクリロニトリルの配合量は、後述するイソブチレン1モルに対し、7〜30倍モルが好ましく、10〜20倍モルがより好ましい。発煙硫酸の添加量は、後述するイソブチレンと略等モルである。このような割合の混合液を用いて反応させることにより、後述するようにアクリロニトリル中に生成したIBSAが分散したスラリーが得られる。
【0042】
発煙硫酸とアクリロニトリルとを混合すると、アクリロニトリル中の水分が発煙硫酸中の三酸化硫黄と反応して除かれる。発煙硫酸の混合量は、水分が除かれた後に残留する三酸化硫黄の過剰量が0.6質量%以下となるようにするのが好ましく、0.3質量%以下がより好ましく、0.2質量%以下が特に好ましい。
【0043】
図2は、アクリロニトリルと発煙硫酸とイソブチレンとを反応させてATBSを製造する際の、三酸化硫黄過剰量とIBSAの副生濃度との関係を示す。図2から、SOが過剰に供給されると、IBSAの濃度が増加することが分る。
【0044】
アクリロニトリルと発煙硫酸との混合時間(連続製造の場合は混合槽(本実施例の場合は第1反応槽)における滞留時間)は、90分以上で、90〜360分がより好ましく、120〜180分が特に好ましい。混合時間が90分未満の場合は、十分にアクリロニトリル中の水分が除去されず、混合液中に未反応の水分と、三酸化硫黄とが残留し、最終製品中のIBSA含有量が30質量ppmを超えることになる。
【0045】
図3は、アクリロニトリルと発煙硫酸とイソブチレンとを反応させてATBSを製造する際の、アクリロニトリルと三酸化硫黄との混合時間とIBSAの副生濃度との関係を示す。この図3から、アクリロニトリル中の水分を十分に除去するためには、混合時間は90分以上、好ましくは120分以上を要することが分る。
【0046】
混合温度は、−15〜0℃が好ましく、−10〜−5℃がより好ましい。混合温度が0℃を超える場合は、製品の着色やアクリロニトリルポリマーの発生と同ポリマーの製品への混入が生じやすい。
【0047】
混合には、攪拌機を用いることが好ましい。
【0048】
(第2工程)
第2工程においては、上記製造した混合液にイソブチレンを接触させる。接触方法としては、混合液中にイソブチレンを吹込む方法が例示される。反応温度は40〜70℃で、50〜60℃が好ましい。反応時間は90〜180分で、100〜160分が好ましい。混合液にイソブチレンを接触させることにより、反応が進行してATBSが生成し、アクリロニトリル中にATBSの固体粒子が分散した、固形分濃度15〜25質量%のスラリー液が得られる。このスラリー中には、通常6000〜12000質量ppm程度の副生IBSAが含まれている。
【0049】
(第3工程)
第3工程においては、上記スラリー液を固液分離し、ATBSの粗体ケーキを得る。固液分離は、濾過、遠心分離等の任意の分離方法を採用できる。次いで、分離した粗体ケーキをアクリロニトリルで洗浄する。洗浄に用いるアクリロニトリル量は、粗体ケーキの2質量倍以上で、3〜10質量倍が好ましい。
【0050】
図4は、上記第3工程で得られた粗体ケーキをアクリロニトリルで洗浄する場合の、アクリロニトリルの使用量と洗浄後のケーキに含有されるIBSA濃度との関係を示す。この図4から、粗体ケーキの洗浄には、粗体ケーキの2質量倍以上のアクリロニトリルを用いることにより、洗浄後のケーキ中のIBSA濃度を100質量ppm以下に出来ることが分る。
【0051】
(第4工程)
第4工程においては、第3工程で得た洗浄後のケーキを80〜130℃で、好ましくは90〜120℃で加熱し、乾燥させる。乾燥時間は30〜300分で、好ましくは50〜200分である。
【0052】
加熱乾燥させることにより、IBSAが分解され、その結果IBSA含有量が30質量ppm以下のATBSが製造される。
【0053】
図5は、4000質量ppmのIBSAを含む粗体ケーキを加熱乾燥した場合の、乾燥時間と粗体ケーキ中のIBSA濃度との関係を示す。乾燥時間を長くすることにより、粗体ケーキ中のIBSA濃度が大きく減少していくことが分る。
【0054】
第4工程においては、第3工程でIBSA濃度100質量ppm程度のIBSAを含む洗浄後のケーキを上記条件で加熱乾燥することにより、IBSA濃度が30質量ppm以下の本発明ATBSケーキを得ることが出来る。
【0055】
上記ATBSの製造においては、ATBSをバッチ式で製造しても、連続式で製造しても良い。
【実施例】
【0056】
以下、実施例により、本発明を具体的に説明する。各実施例で示す濃度はHPLCにより定量した濃度である。
HPLC条件;Waters社製 高速液体クロマトグラフ
カラム; Waters社製 X−bridge Shield RP18 (カラムサイズ: 4.6mm(内径)x150mm(長さ))
溶離液;0.03質量%トリフルオロ酢酸水/アセトニトリル(90/10(容量基準))
溶離液流量;0.8ml/min
検出波長;200nm
実施例で示す共重合体の粘度は、次の方法により得られたATBSとアクリルアミドとの共重合体について、UL粘度測定装置を用いて測定した測定値である。
【0057】
実験は、以下の手順で行った。先ず、ATBS40gを水60gに溶解し、48質量%のNaOH水溶液を添加してpHを8に調整した。これに水を加えて35質量%濃度に調整した。40質量%のアクリルアミド水溶液55.6gを加え、更に水5.2gを加えて、モノマー濃度を35質量%にした。このモノマー水溶液に窒素を吹込むと共に、液温を30℃に調整した後、過硫酸アンモニウム0.7g、亜硫酸ナトリウム0.7g、銅イオンを10ppm(質量基準)含む塩化銅水溶液0.6g、ジアゾ系ラジカル重合開始剤としてV−50(商品名 和光純薬工業株式会社製)の10質量%水溶液0.7gを加えた。2時間後に反応を終了して共重合体を取出した。
【0058】
この共重合体1.15gを水393gに溶解した後、食塩23.4gを添加し、粘度測定用試料液(共重合体濃度0.25質量%)を得た。粘度測定は以下の条件で行った。
粘度計:ブルックフィールド社製デジタル粘度計
ローター回転速度:60rpm
測定温度:25℃
【0059】
実施例1
図6に示す連続製造装置を用いて、ATBSを製造した。図6中、100はATBSの連続製造装置である。2は不図示の攪拌装置を有する第1反応槽で、その外面はジャケット4が形成されている。前記ジャケット4には、第1温度調整機6から調温流体が供給され、これにより第1反応槽2内の温度が調整される。この第1反応槽2には、アクリロニトリル8と、発煙硫酸10とが連続的に供給され、不図示の攪拌装置により攪拌されてこれらの混合液が連続的に製造される。この混合により、アクリロニトリル中の水分が発煙硫酸中の三酸化硫黄と反応して硫酸になり、水分は除去される。
【0060】
第1反応槽2で製造された混合液は、第2反応槽12に送られる。第2反応槽12の外面にはジャケット14が形成され、第2温度調整機16から供給される調温流体により、第2反応槽12内の温度が調整される。
【0061】
前記第2反応槽に送られた混合液には、イソブチレン18が供給される。第2反応槽12内では、前記第1反応槽2から送られた混合液と、イソブチレンとが反応し、ATBSが生成するが、このATBSは過剰に供給されて溶媒として作用させているアクリロニトリルに懸濁してスラリー液を形成する。このスラリー液は、第2反応槽12に取付けられている取出し管20を通して外部に連続的に取出され、不図示の第3工程に送られ、ここでスラリー液は固液分離され、得られた粗体ケーキはアクリロニトリルで洗浄される。
次いで、洗浄されたケーキは第4工程で加熱乾燥される。
【0062】
上記のようにして製造された本発明のATBSケーキをHPLC分析し、IBSA濃度を求めた。結果を表1に示した。
【0063】
実施例2〜4
表1に示す条件以外は、実施例1と同様に操作した。結果を表1に示した。
【0064】
比較例1〜5
表2に示す条件以外は、実施例1と同様に操作した。結果を表2に示した。
【0065】
【表1】

【0066】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】IBSAの添加量と、共重合ポリマーの粘度との関係を示すグラフである。
【図2】SO過剰量とIBSA濃度との関係を示すグラフである。
【図3】第1反応槽中の発煙硫酸とアクリロニトリルとの滞留時間と、IBSA濃度との関係を示すグラフである。
【図4】粗体ケーキの洗浄溶媒量とIBSAとの関係を示すグラフである。
【図5】洗浄したケーキの乾燥時間と、IBSA濃度との関係を示すグラフである。
【図6】本発明のATBSの製造方法に用いる製造装置の一例を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0068】
2 第1反応槽
4、14 ジャケット
6、16 温度調整機
8 アクリロニトリル
10 発煙硫酸
12 第2反応槽
18 イソブチレン
20 取出し管
100 連続製造装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)
【化1】

で示される2−メチル−2−プロペニル−1−スルホン酸の含有量が30質量ppm以下であることを特徴とする下記式(2)
【化2】


で示される2−アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸。
【請求項2】
下記第1〜第4工程
(第1工程) アクリロニトリルと発煙硫酸とを90分以上混合して、アクリロニトリルと発煙硫酸との混合液を製造する工程と、
(第2工程) 第1工程で製造する混合液と、イソブチレンとを、40〜70℃で90〜180分接触させて、下記式(2)
【化3】

で示される2−アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸のアクリロニトリルスラリー液を得る工程と、
(第3工程) 第2工程で得られるスラリー液を固液分離して2−アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸の粗体ケーキを得、次いで粗体ケーキの2倍以上の質量のアクリロニトリルで粗体ケーキを洗浄する工程と、
(第4工程) 第3工程で得られる洗浄した粗体ケーキを、80〜130℃で、30〜300分乾燥する工程と、
を含むことを特徴とする2−メチル−2−プロペニル−1−スルホン酸の含有量が30質量ppm以下である2−アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−161486(P2009−161486A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−1236(P2008−1236)
【出願日】平成20年1月8日(2008.1.8)
【出願人】(000003034)東亞合成株式会社 (548)
【Fターム(参考)】