説明

2−アセチルアミノメチル−4−(4−フルオロベンジル)モルホリンの精製方法

【課題】2−アセチルアミノメチル−4−(4−フルオロベンジル)モルホリンを、高収率、高純度で得、得られた2−アセチルアミノメチル−4−(4−フルオロベンジル)モルホリンを使用して高純度の4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ−N−〔[4−(4−フルオロベンジル)−2−モルホリニル]メチル〕ベンズアミドクエン酸塩2水和物を製造する方法を提供する。
【解決手段】2−アセチルアミノメチル−4−(4−フルオロベンジル)モルホリンを、エステル溶媒を少なくとも50容量%以上含む有機溶媒で再結晶することを特徴とする2−アセチルアミノメチル−4−(4−フルオロベンジル)モルホリンの精製方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた消化管運動促進作用効果を示す治療剤として有用な4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ−N−〔[4−(4−フルオロベンジル)−2−モルホリニル]メチル〕ベンズアミドクエン酸塩2水和物の原料となる2−アセチルアミノメチル−4−(4−フルオロベンジル)モルホリンの新規な精製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ−N−〔[4−(4−フルオロベンジル)−2−モルホリニル]メチル〕ベンズアミドクエン酸塩2水和物(以下、単に「クエン酸塩2水和物」とする場合もある)は、メトクロプラミドのようなドーパミンD2受容体遮断作用を有することがない。そのため、該クエン酸塩2水和物は、中枢神経系、および内分泌系の副作用を発現することがなく、優れた消化管運動促進作用の効果を示す治療薬として有用である。
【0003】
このような治療薬として有用なクエン酸塩は、非常に高純度のものが望まれている。従来、このクエン酸塩2水和物は、
下記式(1)
【0004】
【化1】

【0005】
で示される2−アセチルアミノメチル−4−(4−フルオロベンジル)モルホリンを出発原料として、下記式(4)
【0006】
【化2】

【0007】
で示される4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ−N−〔[4−(4−フルオロベンジル)−2−モルホリニル]メチル〕ベンズアミドを経由して製造されている。当然のことながら、高純度の該クエン酸を製造するためには、原料となる上記式(1)で示される2−アセチルアミノメチル−4−(4−フルオロベンジル)モルホリンも、高純度のものを使用することが好ましい。この2−アセチルアミノメチル−4−(4−フルオロベンジル)モルホリンは、以下の方法により製造されている。
【0008】
具体的には、2−アセチルアミノメチルモルホリンと4−フルオロベンジルクロリドとを反応させる方法である。この方法は、先ず、2−アセチルアミノメチルモルホリン、4−フルオロベンジルクロリド、無水炭酸カリウム、ヨウ化カリウム、およびメチルエチルケトンを含む混合物を17時間加熱還流し、不溶物をろ過し、得られたろ液を減圧濃縮する。次いで、残渣にクロロホルムと水を加えて溶媒抽出し、有機層を飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を留去した後、残渣をトルエンから再結晶して製造する方法(第一製造方法)である(特許文献1参照)。
【0009】
また、コストや反応のし易さなどの理由から、通常は、2−(4−フルオロベンジルアミノ)エタノールとN−(2,3−エポキシプロピル)フタルイミドとを反応させる方法が工業的に採用されている。具体的には、以下の反応式で示される合成方法である。
【0010】
【化3】

【0011】
この方法は、先ず、2−(4−フルオロベンジルアミノ)エタノールとN−(2,3−エポキシプロピル)フタルイミドを、無溶媒で80℃、3時間反応させる。次いで、反応液に徐々に濃硫酸を加えた後、150℃で2時間加熱する。得られた溶液を冷却し、水酸化ナトリウム水溶液で中和後、クロロホルムで抽出操作を行い、有機層を水および飽和食塩水で洗浄した後に、無水硫酸マグネシウムで乾燥する。ここで2−(アミノメチル)−4−(4−フルオロベンジル)モルホリンを製造することができるが、より純度の高いものとするために、次に、アセチル化の反応を行う。そのため、先ず、得られた上記有機層に無水酢酸を加え、室温で2時間反応させた後、氷水、水酸化ナトリウム水溶液を順次加え、室温でしばらく撹拌する。次いで、有機層を分離した後、洗浄、乾燥後、溶媒留去し、残渣をトルエンにより再結晶する方法(第二製造方法)により、2−アセチルアミノメチル−4−(4−フルオロベンジル)モルホリンを合成することができる(特許文献1、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特公平3−54937号公報
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】ケミカル・パーマシューティカル・ブレティン、44(8)、1484-1492(1996)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上記の通り、特許文献1、非特許文献1に記載の方法に従えば、2−アセチルアミノメチル−4−(4−フルオロベンジル)モルホリンを効率よく製造することができ、トルエンで再結晶化しているため、まずまずの純度のものが得られる。
【0015】
しかしながら、本発明者の検討によると、2−(アミノメチル)−4−(4−フルオロベンジル)モルホリンを上記第二製造方法により製造した場合、ある特定の不純物(単に特定不純物とする場合もある)が、高速液クロマトグラフィー(HPLC)分析によると0.1〜1.0%程度含まれる場合があることが判明した(以下、本発明において、純度、特定不純物の割合(%)は、HPLCで測定した際の面積%の値である。)。
【0016】
この特定不純物は、2−(アミノメチル)−4−(4−フルオロベンジル)モルホリンと構造が類似しているものと考えられ、上記程度の含有量であるが、2−(アミノメチル)−4−(4−フルオロベンジル)モルホリン中に残存することにより以下の点で問題になる場合があった。つまり、該特定不純物を含む2−(アミノメチル)−4−(4−フルオロベンジル)モルホリンを原料として、中間体である2−(アミノメチル)−4−(4−フルオロベンジル)モルホリン、上記式(4)で示される4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ−N−〔[4−(4−フルオロベンジル)−2−モルホリニル]メチル〕ベンズアミド、および原薬である4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ−N−〔[4−(4−フルオロベンジル)−2−モルホリニル]メチル〕ベンズアミドクエン酸塩2水和物を製造した場合、これら中間体、および原薬中に、該特定不純物由来の不純物が残存することが分かった。そのため、従来の方法においては、中間体、および原薬から該不純物を低減しなければならず、最終的に得られるクエン酸塩2水和物の収率が低下するおそれがあり、改善の余地があった。
【0017】
したがって、本発明の目的は、2−アセチルアミノメチル−4−(4−フルオロベンジル)モルホリンを高純度にする精製方法を提供することにある。さらには、高純度化した2−アセチルアミノメチル−4−(4−フルオロベンジル)モルホリンを使用して、高純度の2−(アミノメチル)−4−(4−フルオロベンジル)モルホリン、4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ−N−〔[4−(4−フルオロベンジル)−2−モルホリニル]メチル〕ベンズアミド、および4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ−N−〔[4−(4−フルオロベンジル)−2−モルホリニル]メチル〕ベンズアミドクエン酸塩2水和物を製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明者は、上記課題を解決するため、鋭意研究を行った。特に、2−アセチルアミノメチル−4−(4−フルオロベンジル)モルホリンの精製方法について検討を行った。その結果、2−アセチルアミノメチル−4−(4−フルオロベンジル)モルホリンを、エステル溶媒を50容量%以上含む有機溶媒で再結晶することにより、純度の高い2−アセチルアミノメチル−4−(4−フルオロベンジル)モルホリンを効率よく製造できることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0019】
即ち、本発明は、
下記式(1)
【0020】
【化4】

【0021】
で示される2−アセチルアミノメチル−4−(4−フルオロベンジル)モルホリンを、エステル溶媒を50容量%以上含む有機溶媒で再結晶することを特徴とする2−アセチルアミノメチル−4−(4−フルオロベンジル)モルホリンの精製方法である。
【0022】
さらに、本発明によれば、高純度の2−アセチルアミノメチル−4−(4−フルオロベンジル)モルホリンを得ることができる。そのため、本発明の方法により得られた2−アセチルアミノメチル−4−(4−フルオロベンジル)モルホリンは、公知の方法により脱アセチル化することにより、高純度の2−(アミノメチル)−4−(4−フルオロベンジル)モルホリンとすることができる。
【0023】
また、上記方法により得られた2−(アミノメチル)−4−(4−フルオロベンジル)モルホリンは、高純度であるため、下記式(3)
【0024】
【化5】

【0025】
で示される4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ安息香酸と反応させて、
下記式(4)
【0026】
【化6】

【0027】
で示される4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ−N−〔[4−(4−フルオロベンジル)−2−モルホリニル]メチル〕ベンズアミドの製造に好適に使用することができる。
【0028】
さらに、得られた4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ−N−〔[4−(4−フルオロベンジル)−2−モルホリニル]メチル〕ベンズアミドは、高純度であるため、クエン酸水溶液とを反応させて、
下記式(5)
【0029】
【化7】

【0030】
で示される4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ−N−〔[4−(4−フルオロベンジル)−2−モルホリニル]メチル〕ベンズアミドクエン酸塩2水和物の製造に好適に使用することができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、2−アセチルアミノメチル−4−(4−フルオロベンジル)モルホリンを効率よく、高収率、かつ高純度で得ることができる。特に、2−(アミノメチル)−4−(4−フルオロベンジル)モルホリン、4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ−N−〔[4−(4−フルオロベンジル)−2−モルホリニル]メチル〕ベンズアミド、および4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ−N−〔[4−(4−フルオロベンジル)−2−モルホリニル]メチル〕ベンズアミドクエン酸塩2水和物に含まれる不純物の原因となる物質(特定不純物)を効率よく低減することができる。
【0032】
そのため、本発明により得られた2−アセチルアミノメチル−4−(4−フルオロベンジル)モルホリンは、2−(アミノメチル)−4−(4−フルオロベンジル)モルホリン、4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ−N−〔[4−(4−フルオロベンジル)−2−モルホリニル]メチル〕ベンズアミド、および4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ−N−〔[4−(4−フルオロベンジル)−2−モルホリニル]メチル〕ベンズアミドクエン酸塩2水和物の原料として好適に使用できる。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明は、2−アセチルアミノメチル−4−(4−フルオロベンジル)モルホリンを特定の有機溶媒、即ち、エステル溶媒を少なくとも50容量%以上含む有機溶媒により再結晶するものである。先ず、再結晶の対象となる2−アセチルアミノメチル−4−(4−フルオロベンジル)モルホリンについて説明する。
【0034】
(再結晶する2−アセチルアミノメチル−4−(4−フルオロベンジル)モルホリン)
本発明において、再結晶する2−アセチルアミノメチル−4−(4−フルオロベンジル)モルホリン(以下、単に「粗体」とする場合もある)は、特に制限されるものではなく、上記第一製造方法、および第二製造方法で製造することができる。中でも、本発明の精製方法によれば、上記第二製造方法、つまり、2−(4−フルオロベンジルアミノ)エタノールとN−(2,3−エポキシプロピル)フタルイミドとを反応させる第二製造方法により得られる2−アセチルアミノメチル−4−(4−フルオロベンジル)モルホリンを再結晶の対象とすることが好ましい。
【0035】
この第二製造方法により製造された2−アセチルアミノメチル−4−(4−フルオロベンジル)モルホリンは、原料物質、およびその製造方法に起因するものと考えられるが、2−アセチルアミノメチル−4−(4−フルオロベンジル)モルホリンと構造が類似した化合物(不純物)を含むものと考えられる。上記の通り、第二製造方法では、モルホリン環を形成して2−アセチルアミノメチル−4−(4−フルオロベンジル)モルホリンを合成する反応である。そのため、2−アセチルアミノメチル−4−(4−フルオロベンジル)モルホリンに対して、アセチルアミノメチル基の結合位置、およびフルオロ基の結合位置が異なる特定不純物が生成するものと考えられる。そして、結合の位置は様々な組み合わせが考えられるため、構造の類似した不純物が複数存在するようになると考えられる。実際、本発明者等の検討によれば、下記の実施例で詳述するHPLCの分析条件によると、少なくとも3つの特定不純物が検出された。具体的には、下記のHPLCの分析条件によると、2−アセチルアミノメチル−4−(4−フルオロベンジル)モルホリンが20分付近に現れ、その前、17分付近(以下、この不純物を特定不純物(1)とする場合もある。)、22分付近(以下、この不純物を特定不純物(2)とする場合もある)、39分付近(以下、この不純物を特定不純物(3)とする場合もある)に特定不純物が確認できる。
【0036】
これら特定不純物は、推定ではあるが、何れもアセチルアミノ基を含む化合物であると考えられ、脱アセチル化の反応、4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ−N−〔[4−(4−フルオロベンジル)−2−モルホリニル]メチル〕ベンズアミドの合成反応、および4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ−N−〔[4−(4−フルオロベンジル)−2−モルホリニル]メチル〕ベンズアミドクエン酸塩2水和物の合成反応を行うと、各々の反応において、該特定不純物に由来する不純物が確認された。本発明は、このような特定不純物を含む2−アセチルアミノメチル−4−(4−フルオロベンジル)モルホリン(粗体)の精製に特に適している。
【0037】
なお、本発明の精製方法は、2−アセチルアミノメチル−4−(4−フルオロベンジル)モルホリンの純度を効率よく高めることができる。そのため、当然のことであるが、上記第一製造方法(2−アセチルアミノメチルモルホリンと4−フルオロベンジルクロリドとを反応させる方法)で製造した2−アセチルアミノメチル−4−(4−フルオロベンジル)モルホリンの再結晶にも適用できる。
【0038】
本発明において、再結晶の対象となる2−アセチルアミノメチル−4−(4−フルオロベンジル)モルホリン(粗体)は、特に制限されるものではないが、HPLCによる測定で純度が90〜99%のものであることが好ましい。
【0039】
この範囲の純度の粗体を再結晶することにより、効率よく高純度の2−アセチルアミノメチル−4−(4−フルオロベンジル)モルホリンを得ることができる。特に、第二製造法により粗体を製造した場合には、2−アセチルアミノメチル−4−(4−フルオロベンジル)モルホリンの純度を93〜99%とすることができる。また、該第二製造方法によれば、特に、モルホリン基、およびアセチルアミノ基を有すると考えられる不純物(特定不純物(特定不純物(1)、特定不純物(2)、および特定不純物(3)の合計量))を0.1〜1%の範囲とすることができるが、本発明は、このような純度の粗体を高純度化にするのに特に適している。
【0040】
本発明は、上記のような粗体を、エステル溶媒を50容量%以上含む有機溶媒で再結晶することを最大の特徴とする。次に、この有機溶媒について説明する。
【0041】
(有機溶媒)
本発明においては、上記粗体を、エステル溶媒を50容量%以上含む有機溶媒で再結晶する。先ず、このエステル溶媒について説明する。
【0042】
(エステル溶媒)
本発明で使用するエステル溶媒は、試薬或いは工業原料が何ら制限無く使用できる。エステル溶媒を50容量%以上含む有機溶媒を使用することにより、高純度の2−アセチルアミノメチル−4−(4−フルオロベンジル)モルホリンを得ることができる。これらエステル溶媒は、炭素数1〜5のギ酸エステル、炭素数1〜8の酢酸エステル、炭素数1〜5のプロピオン酸エステル、炭素数1〜5の酪酸エステル、炭素数1〜5のステアリン酸エステル、炭素数1〜8の安息香酸エステル、炭素数5〜6のラクトンなどである。これらの中でも、取り扱いの容易性や溶媒の効果を考慮すると、炭素数1〜8の酢酸エステルが好ましい。なお、上記エステル溶媒の炭素数は、エステル基のカルボニルの炭素を除いた数である。
【0043】
これらエステル溶媒を具体的に例示すると、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、ギ酸ブチル、ギ酸イソブチル、ギ酸ペンチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸ペンチル、酢酸イソペンチル、酢酸3−メトキシブチル、酢酸sec−ヘキシル、酢酸2−エチルブチル、酢酸2−エチルヘキシル、酢酸シクロヘキシル、酢酸ベンジル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル、プロピオン酸イソペンチル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸ブチル、酪酸イソペンチル、ステアリン酸メチル、ステアリン酸エチル、ステアリン酸プロピル、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸ペンチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸ブチル、安息香酸イソペンチル、安息香酸ベンジル、γ−ブチロラクトン、ε−カプロラクトンなどが挙げられる。中でも、ギ酸エステル、酢酸エステルの有機溶媒が好ましく、さらに、酢酸エステルの中でも、毒性が低い点、比較的沸点が低く、除去が容易である点、および得られる2−アセチルアミノメチル−4−(4−フルオロベンジル)モルホリンの高純度化といった点から、炭素数1〜4の酢酸エステルを使用することが好ましく、具体的には、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチルを使用することが好ましい。
【0044】
本発明において、上記粗体を再結晶する溶媒は、エステル溶媒を50容量%以上含む有機溶媒である。エステル溶媒を少なくとも50容量%以上含むものであれば、他の有機溶媒、即ち、エステル溶媒以外の有機溶媒(以下、単に「他の有機溶媒」とする場合もある)を最大で50容量%含むこともできる。他の有機溶媒は、エステル溶媒と相分離することなく、混合可能なものであることが好ましい。このような他の有機溶媒を使用することにより、2−アセチルアミノメチル−4−(4−フルオロベンジル)モルホリンの収率を高めることができる。次に、他の有機溶媒について説明する。
【0045】
(他の有機溶媒)
本発明において、上記他の有機溶媒(エステル溶媒以外の有機溶媒)は、試薬或いは工業原料が何ら制限無く使用できる。具体的には、アルコール溶媒、ケトン溶媒、エーテル溶媒、炭化水素溶媒、およびハロゲン化炭化水素溶媒から選ばれる少なくとも1種の有機溶媒であることが好ましい。中でも、高純度化、高収率化の観点から、アルコール溶媒、エーテル溶媒、および脂肪族炭化水素溶媒から選ばれる少なくとも1種類の有機溶媒であることが好ましい。特に、炭素数1〜4の鎖状アルコール溶媒、炭素数4〜8の鎖状エーテル溶媒、および炭素数5〜8の脂肪族炭化水素溶媒から選ばれる少なくとも1種の有機溶媒であることが好ましい。
【0046】
上記他の有機溶媒を具体的に例示すると、アルコール溶媒;メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノールなど、エーテル溶媒;ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフランなど、脂肪族炭化水素類;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタンなどが挙げられる。この他の有機溶媒は、粗体を溶解させる際に、エステル溶媒と混合してもよいし、一旦、粗体をエステル溶媒で溶解させた後、追加して使用することもできる。
【0047】
次に、有機溶媒の配合割合について説明する。
【0048】
(有機溶媒の配合割合)
本発明においては、エステル溶媒が50容量%以上となる有機溶媒を上記粗体の再結晶溶媒として使用する。エステル溶媒を少なくとも50容量%以上含むものであれば、他の有機溶媒、即ち、エステル溶媒以外の有機溶媒を最大で50容量%含むこともできる。そのため、上記粗体を再結晶する有機溶媒は、エステル溶媒を50容量%以上100容量%以下、エステル溶媒以外の有機溶媒(他の有機溶媒)を0容量%以上50容量%以下の範囲で含むものである。
【0049】
上記粗体を再結晶する有機溶媒において、エステル溶媒の割合が50容量%未満の場合には、2−アセチルアミノメチル−4−(4−フルオロベンジル)モルホリンを高純度化することができない。粗体を高純度化し、さらに、モルホリン残基を有する不純物(特定不純物(特定不純物(1)、特定不純物(2)、および特定不純物(3))をより低減するためには、エステル溶媒を60容量%以上含む有機溶媒を使用することが好ましく、さらに70容量%以上含む有機溶媒を使用することが好ましい。なお、この有機溶媒において、エステル溶媒の使用量の上限は、上記の通り、100容量%である。エステル溶媒のみ(エステル溶媒100容量%)の有機溶媒を使用する場合には、高純度の2−アセチルアミノメチル−4−(4−フルオロベンジル)モルホリンを得ることができ、再結晶に使用した有機溶媒の回収が容易となり、さらに有機溶媒の使用量を低減することもできる。
【0050】
また、本発明において、他の有機溶媒を使用する場合、他の有機溶媒の配合量は、エステル溶媒の種類に応じて適宜決定すればよい。中でも、2−アセチルアミノメチル−4−(4−フルオロベンジル)モルホリンの純度、および特に収率等を考慮すると、上記粗体を再結晶する有機溶媒を100容量%として、好ましくは、エステル溶媒を50容量%以上99容量%以下、他の有機溶媒を1容量%以上50容量%以下、より好ましくは、エステル溶媒を60容量%以上95容量%以下、他の有機溶媒5容量%以上40容量%以下含む溶媒を使用することが好ましい。この範囲とすることにより、収率を向上することができる。
【0051】
次に、上記有機溶媒を使用した粗体の再結晶方法について説明する。
【0052】
(再結晶方法)
本発明においては、上記有機溶媒を使用して、上記粗体を再結晶する。再結晶する方法は、特に制限されるものではなく、公知の方法を採用することができる。
【0053】
本発明において、上記粗体を溶解させる有機溶媒の使用量(エステル溶媒のみの場合はエステル溶媒の使用量、エステル溶媒と他の有機溶媒との混合溶媒の場合は混合溶媒の使用量)は、上記粗体を十分に溶解させる量を使用すれば特に制限されるものではなく、粗体に含まれる不純物、使用する有機溶媒の種類、組み合わせ、その配合割合、および晶析条件(溶解時の温度)等に応じて適宜決定してやればよい。中でも、得られる2−アセチルアミノメチル−4−(4−フルオロベンジル)モルホリンの純度と収率等を考慮すると、上記有機溶媒の使用量は、上記粗体1gに対して、好ましくは0.5ml以上30ml以下、さらに好ましくは1.0ml以上25ml以下である。特に、エステル溶媒のみを有機溶媒として使用した場合は、その使用量をより低減することができる。この場合、エステル溶媒の使用量は、上記粗体1gに対して、好ましくは0.5ml以上10ml以下であり、より好ましくは1.0ml以上7.0ml以下であり、さらに好ましくは1.0ml以上5.0ml以下である。本発明によれば、上記使用量の範囲でも、十分に精製された2−アセチルアミノメチル−4−(4−フルオロベンジル)モルホリンを得ることができる。
【0054】
本発明は、上記粗体を上記有機溶媒に溶解させて、得られた溶液から2−アセチルアミノメチル−4−(4−フルオロベンジル)モルホリンを晶析させて再結晶する。再結晶する方法を具体的に示せば、上記粗体を上記有機溶媒に溶解させ、得られた溶液から有機溶媒を留去して濃度を調節し、2−アセチルアミノメチル−4−(4−フルオロベンジル)モルホリンを結晶化させる方法が挙げられる(この場合、有機溶媒の使用量は、粗体を溶解させるのに使用した量を指す。)。また、上記粗体と上記有機溶媒とを混合し、加温することにより該粗体を溶解させた後、得られた溶液を冷却して2−アセチルアミノメチル−4−(4−フルオロベンジル)モルホリンを結晶化させる方法を採用することもできる。なお、何れの方法においても、粗体が様々な不純物を含み、完全に溶解しない場合には、その不純物をろ過して再結晶すればよい。また、何れの方法においても、2−アセチルアミノメチル−4−(4−フルオロベンジル)モルホリンを結晶化させる際、種結晶を投入して結晶化させることもできる。
【0055】
上記方法の中でも、後者の方法を採用することにより、有機溶媒量を低減させることができ、効率よく、高純度の2−アセチルアミノメチル−4−(4−フルオロベンジル)モルホリンを高収率で得ることができる。次に、この粗体と有機溶媒とを混合し、加温することにより該粗体を溶解させた後、得られた溶液を冷却する方法について説明する。
【0056】
上記粗体を上記有機溶媒に溶解させる際の温度は、使用する有機溶媒の種類、量、配合割合等に応じて適宜決定すればよいが、30℃以上、有機溶媒の還流温度以下であることが好ましい。中でも、有機溶媒の使用量をより低減するためには、有機溶媒の還流温度で上記粗体を溶解させることが好ましい。
【0057】
また、粗体を溶解して得られた溶液を冷却する際の冷却速度は、あまり速いと純度が低下する傾向にあり、あまり遅いと効率的ではないため、好ましくは1℃/時間以上100℃/時間以下であり、より好ましくは5℃/時間以上50℃/時間以下であり、特に好ましくは5℃/時間以上30℃/時間以下である。
【0058】
また、冷却時の到達温度はあまり高いと収率が低下する傾向にあり、あまり低いと純度が低下する傾向にあるため、通常、−5℃以上50℃以下とすることが好ましく、さらに0℃以上30℃以下とすることが好ましく、特に0℃以上10℃以下とすることが好ましい。
【0059】
以上のような方法で結晶化させた2−アセチルアミノメチル−4−(4−フルオロベンジル)モルホリンは、ろ過や遠心分離などにより固液分離し、自然乾燥、送風乾燥、真空乾燥などにより乾燥することにより単離してやればよい。
【0060】
得られたアセチルアミノメチル−4−(4−フルオロベンジル)モルホリンは、非常に純度の高いものであり、条件の最適化を行えば、HPLC純度で99.5%以上のものとすることができる。さらに、特に、第一製造方法で得られた粗体を上記方法で再結晶することにより、特定不純物を低減することができる。この特定不純物(特定不純物(1)、特定不純物(2)、および特定不純物(3)の合計量)は、条件の最適化を行えば、0.07%以下とすることができる。
【0061】
以上の通り、本発明によれば、非常に高純度のアセチルアミノメチル−4−(4−フルオロベンジル)モルホリンを得ることができる。特に、第二製造方法により製造したアセチルアミノメチル−4−(4−フルオロベンジル)モルホリンであっても、特定不純物の含有量をより低減することができる。そのため、得られたアセチルアミノメチル−4−(4−フルオロベンジル)モルホリンは、2−(アミノメチル)−4−(4−フルオロベンジル)モルホリン、4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ−N−〔[4−(4−フルオロベンジル)−2−モルホリニル]メチル〕ベンズアミド、および4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ−N−〔[4−(4−フルオロベンジル)−2−モルホリニル]メチル〕ベンズアミドクエン酸塩2水和物の原料に好適に使用できる。次に、上記再結晶方法で得られた2−アセチルアミノメチル−4−(4−フルオロベンジル)モルホリンから2−(アミノメチル)−4−(4−フルオロベンジル)モルホリンを製造する方法について説明する。
【0062】
(2−(アミノメチル)−4−(4−フルオロベンジル)モルホリンの製造方法)
本発明の精製方法により得られた2−アセチルアミノメチル−4−(4−フルオロベンジル)モルホリンは、公知の方法で脱アセチル化を行うことにより、2−(アミノメチル)−4−(4−フルオロベンジル)モルホリンを製造することができる。具体的には、特許文献1に記載の方法に従い、加水分解反応を行うことにより、製造することができる。具体的な方法を説明すると、先ず、得られた2−アセチルアミノメチル−4−(4−フルオロベンジル)モルホリンを酸、例えば、10質量%の塩酸に溶解させて、加熱還流することによりアセチル基を脱保護する。そして、得られた2−アミノメチル−4−(4−フルオロベンジル)モルホリンの溶液をアルカリ溶液、例えば、水酸化ナトリウム水溶液で中和後、クロロホルムで抽出する。その後、有機層(クロロホルム溶液)を洗浄、乾燥させ、2−アミノメチル−4−(4−フルオロベンジル)モルホリンのクロロホルム溶液を得ることができる。本発明においては、該クロロホルム溶液から2−アミノメチル−4−(4−フルオロベンジル)モルホリンを取り出し、精製した後、次の反応に使用することもできるが、このクロロホルム溶液をそのまま次の反応に使用することもできる。
【0063】
次に、上記方法で得られた2−(アミノメチル)−4−(4−フルオロベンジル)モルホリンから4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ−N−〔[4−(4−フルオロベンジル)−2−モルホリニル]メチル〕ベンズアミドを製造する方法について説明する。
【0064】
(4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ−N−〔[4−(4−フルオロベンジル)−2−モルホリニル]メチル〕ベンズアミドの製造方法)
本発明においては、上記方法で得られた2−アミノメチル−4−(4−フルオロベンジル)モルホリンと、4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ安息香酸と反応させることにより、4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ−N−〔[4−(4−フルオロベンジル)−2−モルホリニル]メチル〕ベンズアミドを製造することができる。この反応は、公知の方法、例えば、特許文献1に記載の方法を採用することができる。
【0065】
具体的な方法を説明すると、先ず、上記方法で得られた2−アミノメチル−4−(4−フルオロベンジル)モルホリンのクロロホルム溶液0℃以下に冷却する。別に4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ安息香酸とクロロ炭酸ベンジルとをクロロホルム中、0℃以下の低温下で混合して、混合酸無水物を合成する。この混合酸無水物のクロロホルム溶液を2−アミノメチル−4−(4−フルオロベンジル)モルホリンのクロロホルム溶液に滴下し、4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ−N−〔[4−(4−フルオロベンジル)−2−モルホリニル]メチル〕ベンズアミドを合成する。得られた4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ−N−〔[4−(4−フルオロベンジル)−2−モルホリニル]メチル〕ベンズアミドのクロロホルム溶液は、中和後、洗浄、乾燥、溶媒留去を行った後、エタノール溶媒で再結晶することにより、4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ−N−〔[4−(4−フルオロベンジル)−2−モルホリニル]メチル〕ベンズアミドを製造することができる。なお、溶媒留去を行った後の粗4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ−N−〔[4−(4−フルオロベンジル)−2−モルホリニル]メチル〕ベンズアミドをN,N’−ジメチルホルムアミドと水の混合溶媒で再結晶すると、特定不純物由来の不純物をこの時点でより一層低減することもできる。
【0066】
次に、上記方法で得られた4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ−N−〔[4−(4−フルオロベンジル)−2−モルホリニル]メチル〕ベンズアミドから4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ−N−〔[4−(4−フルオロベンジル)−2−モルホリニル]メチル〕ベンズアミドクエン酸塩2水和物を製造する方法について説明する。
【0067】
(4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ−N−〔[4−(4−フルオロベンジル)−2−モルホリニル]メチル〕ベンズアミドクエン酸塩2水和物の製造方法)
本発明においては、上記方法で得られた4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ−N−〔[4−(4−フルオロベンジル)−2−モルホリニル]メチル〕ベンズアミドとクエン酸水溶液とを反応させることにより、4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ−N−〔[4−(4−フルオロベンジル)−2−モルホリニル]メチル〕ベンズアミドクエン酸塩2水和物を製造することができる。この反応は、公知の方法、例えば、特許文献1に記載の方法を採用することができる。
【0068】
具体的な方法を説明すると、得られた4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ−N−〔[4−(4−フルオロベンジル)−2−モルホリニル]メチル〕ベンズアミドを、メタノール、エタノール、またはイソプロパノールなどのアルコールと、4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ−N−〔[4−(4−フルオロベンジル)−2−モルホリニル]メチル〕ベンズアミドに対して3〜20倍のクエン酸水和物を含む水溶液とに溶解させ、得られた水溶液を冷却することにより、4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ−N−〔[4−(4−フルオロベンジル)−2−モルホリニル]メチル〕ベンズアミドクエン酸塩2水和物を結晶として取り出すことができる。
【0069】
このように得られた結晶は、公知の方法、例えば、ろ過や遠心分離などにより固液分離し、自然乾燥、送風乾燥、真空乾燥などにより乾燥することにより単離することができる。
【0070】
得られた4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ−N−〔[4−(4−フルオロベンジル)−2−モルホリニル]メチル〕ベンズアミドクエン酸塩2水和物は、原料とする2−アセチルアミノメチル−4−(4−フルオロベンジル)モルホリンの純度が高いものを使用するため、非常に純度の高いものとなる。特に、特定不純物の含有量が少ない2−アセチルアミノメチル−4−(4−フルオロベンジル)モルホリンを原料として使用するため、得られた4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ−N−〔[4−(4−フルオロベンジル)−2−モルホリニル]メチル〕ベンズアミドクエン酸塩2水和物は、該特定不純物由来の不純物量が少なく、簡単精製方法で高純度のものとすることができる。
【実施例】
【0071】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何等制限されることはない。
【0072】
まず、各化合物におけるHLPCの測定条件について説明する。
【0073】
(1)2−アセチルアミノメチル−4−(4−フルオロベンジル)モルホリン、および2−(アミノメチル)−4−(4−フルオロベンジル)モルホリンの分析条件
(HPLCの測定条件)
装置:WATERS社製 型式2695−2489
検出器:紫外吸光光度計(測定波長:220nm)
カラム:株式会社ワイエムシィ社製 商品名 YMC−Pack ODS−A、内径4.6mm、長さ15cm(粒子径5μm、細孔径12nm)
カラム温度:40℃ 一定温度
サンプル温度:25℃ 一定温度
移動相A:りん酸二水素カリウム5.44gを水200mlに溶かし、りん酸を加えてpH4.2に調整する。
移動相B:りん酸二水素カリウム2.72gを水1000mlに溶かし、アセトニトリル1000mlを加え、りん酸を加えてpH4.2に調整する。
移動相の送液:移動相A、および移動相Bの混合比を表1に示すように変化させて濃度勾配制御し、サンプルを分析した。移動相A、移動相Bの合計流量は1.0ml/分とした。
【0074】
【表1】

【0075】
(上記HPLC分析による結果)
2−アセチルアミノメチル−4−(4−フルオロベンジル)モルホリン 20分
特定不純物(1):17分
特定不純物(2):22分
特定不純物(3):39分
に確認された。
【0076】
2−(アミノメチル)−4−(4−フルオロベンジル)モルホリン 16分
特定不純物(1)由来の不純物:12分
特定不純物(2)由来の不純物:19分
特定不純物(3)由来の不純物:38分
に確認された。
【0077】
(2)4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ−N−〔[4−(4−フルオロベンジル)−2−モルホリニル]メチル〕ベンズアミド、および4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ−N−〔[4−(4−フルオロベンジル)−2−モルホリニル]メチル〕ベンズアミドクエン酸塩2水和物の分析条件
(HPLC分析条件)
装置:WATERS社製 型式2695−2489
検出器:紫外吸光光度計(測定波長:274nm)
カラム:株式会社ワイエムシィ社製 商品名 YMC−Pack ODS−A、内径4.6mm、長さ15cm(粒子径5μm、細孔径12nm)
カラム温度:40℃ 一定温度
サンプル温度:25℃ 一定温度
移動相A:りん酸二水素カリウム4.9gを水1800mlに溶かし、10質量%りん酸を加えてpH3.8に調整する。
移動相B:りん酸二水素カリウム2.2gを水800mlに溶かし、アセトニトリル1200mlを加え、10質量%りん酸を加えてpH3.8に調整する。
移動相の送液:移動相A及び移動相Bの混合比を表2に示すように変化させて濃度勾配制御し、サンプルを分析した。移動相A、移動相Bの合計流量は1.2ml/分とした。
【0078】
【表2】

【0079】
(上記HPLC分析による結果)
4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ−N−〔[4−(4−フルオロベンジル)−2−モルホリニル]メチル〕ベンズアミド、および4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ−N−〔[4−(4−フルオロベンジル)−2−モルホリニル]メチル〕ベンズアミドクエン酸塩2水和物:23分
特定不純物(1)由来の不純物:17分
特定不純物(2)由来の不純物:30分
特定不純物(3)由来の不純物:40分
に確認された。
【0080】
製造例1
2−(4−フルオロベンジルアミノ)エタノール33.8g(0.20mol)とN−(2,3−エポキシプロピル)フタルイミド41.4g(0.20mol)を混合し、80℃で3時間撹拌した。その後、濃硫酸107.8g(1.1mol)を少しずつ滴下し、滴下終了後、150℃で2時間加熱した。反応終了後、室温に冷却し、反応液を氷水にあけ48質量%水酸化ナトリウム水溶液で中和後、クロロホルムで3回抽出した。抽出に使用したクロロホルムを全てあわせ、水で洗浄した後、乾燥し、無水酢酸20.4g(0.20mol)を加え、室温で2時間撹拌した。反応液を水で洗浄した後、20質量%水酸化ナトリウム水溶液で中和し、さらに水で洗浄した。クロロホルム留去後、固体の2−(アセチルアミノメチル)−4−(4−フルオロベンゾイル)モルホリン(粗体)44.0gを得た。HPLCで純度を測定すると2−(アセチルアミノメチル)−4−(4−フルオロベンゾイル)モルホリンが95.4%、特定不純物(1)が0.180%、特定不純物(2)が0.173%、特定不純物(3)が0.183%であった。
実施例1
製造例1で得た粗2−(アセチルアミノメチル)−4−(4−フルオロベンゾイル)モルホリン(粗体)10gをジムロート還流管と温度計を備えた3つ口フラスコに仕込み、酢酸エチルを50mL加え、次いでジイソプロピルエーテル25mlを加え、有機溶媒(酢酸エチル50mLとイソプロピルエーテル25mlの混合溶媒)が還流する温度で該粗体を溶解させた後、系内を15℃/時間で5℃まで冷却し、結晶化させた。得られた結晶をろ過し、真空で12時間乾燥させ、2−(アセチルアミノメチル)−4−(4−フルオロベンゾイル)モルホリンの白色結晶9.14g(収率91.4%)を得た。HPLCにより純度を確認したところ、純度は99.87%、特定不純物(1)が0.021%、特定不純物(2)が0.011%、特定不純物(3)が0.014%であった。
【0081】
実施例2〜13
実施例1で使用した有機溶媒を表3に示す配合割合、組成、使用量に代えた以外は実施例1と同様の方法で精製を行った。その結果を表3に示した。
【0082】
【表3】

【0083】
実施例14
実施例1で得た2−(アセチルアミノメチル)−4−(4−フルオロベンゾイル)モルホリン9g(0.034mol)をクロロホルム27mlに溶解させ、濃塩酸10.6g(0.102mol)加え、100℃で6時間撹拌した。反応後の溶液を20質量%水酸化ナトリウム水溶液、水の順で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した。その後、クロロホルムを留去し、2−アミノメチル−4−(4−フルオロベンジル)モルホリン7.47g(収率98.0%)を得た。HPLCにより純度を確認したところ、純度は99.88%、特定不純物(1)由来の不純物が0.022%、特定不純物(2)由来の不純物が0.011%、特定不純物(3)由来の不純物が0.014%であった。
【0084】
実施例15
実施例14で得た2−アミノメチル−4−(4−フルオロベンジル)モルホリン7.47gをクロロホルム30mlに溶解させ、−5℃に冷却した。別に4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ安息香酸7.18gをクロロホルム140mlに溶解させ、−5℃に冷却し、クロロ炭酸ベンジルを、該温度が0℃を超えないように滴下した。滴下後、−5℃で30分間撹拌し、得られた混合酸無水物の溶液を2−アミノメチル−4−(4−フルオロベンジル)モルホリンのクロロホルム溶液に、0℃を超えないように滴下した。滴下後、−5℃で30分間撹拌した後、室温に昇温させ、10質量%水酸化ナトリウム水溶液で中和し、水洗を2回行い、クロロホルムを留去した。得られた固体をエタノールで再結晶し、4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ−N−〔[4−(4−フルオロベンジル)−2−モルホリニル]メチル〕ベンズアミド12.65g得た。HPLCにより純度を確認したところ、純度は99.90%、特定不純物(1)由来の不純物が0.020%、特定不純物(2)由来の不純物が0.011%、特定不純物(3)由来の不純物が0.013%であった。
【0085】
実施例16
実施例15で得た4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ−N−〔[4−(4−フルオロベンジル)−2−モルホリニル]メチル〕ベンズアミド12gにエタノール120ml、水120ml、クエン酸一水和物17.9g加え、加熱溶解した後に、冷却し、結晶を析出させ、結晶をろ過した。結晶を十分に水洗後、乾燥し、4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ−N−〔[4−(4−フルオロベンジル)−2−モルホリニル]メチル〕ベンズアミドクエン酸塩2水和物16.8gを得た。HPLCにより純度を確認したところ、純度は99.90%、特定不純物(1)由来の不純物が0.020%、特定不純物(2)由来の不純物が0.011%、特定不純物(3)由来の不純物が0.014%であった。
【0086】
比較例1〜4
実施例1で使用した有機溶媒を表4に示す配合割合、組成、使用量に代えた以外は実施例1と同様の方法で精製を行った。その結果を表4に示した。
【0087】
【表4】

【0088】
比較例5
比較例1で得た2−(アセチルアミノメチル)−4−(4−フルオロベンゾイル)モルホリンを使用した以外は、実施例7と同様の方法により、2−アミノメチル−4−(4−フルオロベンジル)モルホリン7.40g(収率97.1%)を得た。HPLCにより純度を確認したところ、純度は99.11%、特定不純物(1)由来の不純物が0.100%、特定不純物(2)由来の不純物が0.098%、特定不純物(3)由来の不純物が0.152%であった。
【0089】
比較例6
比較例5で得た2−アミノメチル−4−(4−フルオロベンジル)モルホリン使用した以外は、実施例8と同様の方法により、4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ−N−〔[4−(4−フルオロベンジル)−2−モルホリニル]メチル〕ベンズアミド12.8g得た。HPLCにより純度を確認したところ、純度は99.11%、特定不純物(1)由来の不純物が0.103%、特定不純物(2)由来の不純物が0.098%、特定不純物(3)由来の不純物が0.153%であった。
【0090】
比較例7
比較例6で得た4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ−N−〔[4−(4−フルオロベンジル)−2−モルホリニル]メチル〕ベンズアミドを使用した以外は、実施例9と同様の方法により、4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ−N−〔[4−(4−フルオロベンジル)−2−モルホリニル]メチル〕ベンズアミドクエン酸塩2水和物16.7gを得た。HPLCにより純度を確認したところ、純度は99.11%、特定不純物(1)由来の不純物が0.103%、特定不純物(2)由来の不純物が0.099%、特定不純物(3)由来の不純物が0.153%であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)
【化1】

で示される2−アセチルアミノメチル−4−(4−フルオロベンジル)モルホリンを、エステル溶媒を50容量%以上含む有機溶媒で再結晶することを特徴とする2−アセチルアミノメチル−4−(4−フルオロベンジル)モルホリンの精製方法。
【請求項2】
請求項1に記載の精製方法により2−アセチルアミノメチル−4−(4−フルオロベンジル)モルホリンを精製した後、得られた2−アセチルアミノメチル−4−(4−フルオロベンジル)モルホリンを脱アセチル化することにより、
下記式(2)
【化2】

で示される2−(アミノメチル)−4−(4−フルオロベンジル)モルホリンを製造する方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法により2−(アミノメチル)−4−(4−フルオロベンジル)モルホリンを製造した後、得られた2−(アミノメチル)−4−(4−フルオロベンジル)モルホリンと
下記式(3)
【化3】

で示される4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ安息香酸とを反応させて、
下記式(4)
【化4】


で示される4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ−N−〔[4−(4−フルオロベンジル)−2−モルホリニル]メチル〕ベンズアミドを製造する方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法により4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ−N−〔[4−(4−フルオロベンジル)−2−モルホリニル]メチル〕ベンズアミドを製造した後、得られた4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ−N−〔[4−(4−フルオロベンジル)−2−モルホリニル]メチル〕ベンズアミドとクエン酸水溶液とを反応させて、
下記式(5)
【化5】

で示される4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ−N−〔[4−(4−フルオロベンジル)−2−モルホリニル]メチル〕ベンズアミドクエン酸塩2水和物を製造する方法。

【公開番号】特開2011−16750(P2011−16750A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−161445(P2009−161445)
【出願日】平成21年7月8日(2009.7.8)
【出願人】(000003182)株式会社トクヤマ (839)
【Fターム(参考)】