説明

2−アリール−3−(アミノアリール)−3−(ヒドロキシアリール)フタルイミジン化合物及びその製造方法

下式:


[式中、R1は、ヒドロカルビル基、ニトロ基、及びハロゲン原子からなる群より独立に選択され;“a”は0-4の整数であり;Ar1及びAr2は、各々独立に芳香族基である]を有する2-アリール-3-(アミノアリール)-3-(ヒドロキシアリール)フタルイミジンの化合物及びその製造方法が開示される。2-アリール-3-(アミノアリール)-3-(ヒドロキシアリール)フタルイミジン化合物は、別の有用なモノマー及びポリマーの調製に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、一般的に2-アリール-3-(アミノアリール)-3-(ヒドロキシアリール)フタルイミジン化合物及びこれら化合物の調製方法に関する。更にまた、本明細書は、これらの化合物から誘導される構造単位を含むポリマーに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリマーは、現代の商業においては重要な物質である。商業的意義を有する多様なポリマー、例えばポリカーボネート、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエステル等が製造されてきた。これらのポリマーの多くは、化学的に同一な二つの反応性官能基を有するモノマー(単官能性モノマー)から調製されてきた。二官能性モノマー、すなわち化学的に異なる二つの反応性官能基を有するモノマーから調製されるポリマーもまた既知である。こうした二官能性モノマーの例には、アミノフェノール、アミノカルボン酸、ヒドロキシカルボン酸、無水物基及びヒドロキシ基を有する化合物等が含まれる。二官能性モノマーは、二官能性モノマーの一方のみまたは他方のタイプの反応性官能基を有する単官能性モノマーから調製されるポリマーの望ましい特性の幾つかの組み合わせを有するポリマーの調製のために有用となりうる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ポリマー物理特性の望ましい組み合わせ、例えば高温安定性、所定の化学品との反応に対する耐性;高温安定性及び液晶挙動を備えうるポリマーの調製のために使用可能な二官能性モノマーが、依然として求められている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、新規な2-アリール-3-(アミノアリール)-3-(ヒドロキシアリール)フタルイミジン化合物及びその調製方法を提供する。これらの新規化合物は、2-アリール-3-(アミノアリール)-3-(ヒドロキシアリール)フタルイミジン化合物から誘導される構造単位及びこれより誘導される官能性モノマーを含むモノマー及びポリマーの調製に有用である。
【0005】
一実施態様は、下式:
【化1】

[式中、R1は、ヒドロカルビル基、ニトロ基、及びハロゲン原子からなる群より独立に選択され;“a”は0-4の整数であり;Ar1及びAr2は、各々独立に芳香族基である]
を有する2-アリール-3-(アミノアリール)-3-(ヒドロキシアリール)フタルイミジン化合物に関する。明確には、“a”が4未満である場合、アリール環上の未置換の各炭素は、化学的略記として許容される通り水素原子に結合している。以下の更なる構造も同様である。
【0006】
別の実施態様では、2-アリール-3-(アミノアリール)-3-(ヒドロキシアリール)フタルイミジン化合物の調製方法は、前駆体化合物を芳香族第一級アミンと酸性触媒の存在下で反応させる工程を含み、前記芳香族第一級アミンが式Ar1-NH2 (式中、Ar1は芳香族基である)を有する。前記前駆体化合物は、フェノールフタレイン化合物、2-アリール-3,3-ビス(ヒドロキシアリール)フタルイミジン化合物、及びこれらの混合物からなる群より選択される
【0007】
更に別の実施態様では、2-フェニル-3-(アミノフェニル)-3-(ヒドロキシフェニル)フタルイミジン化合物の調製方法は、前駆体化合物をアニリンと酸性触媒の存在下で反応させる工程を含み、前記前駆体化合物はフェノールフタレイン、2-フェニル-3,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フタルイミジン、及びこれらの混合物からなる群より選択される。
【0008】
更に別の実施態様では、下式:
【化2】

[式中、R1は、ヒドロカルビル基、ニトロ基、及びハロゲン原子からなる群より独立に選択され;“a”は0-4の整数であり;Ar1及びAr2は、各々独立に芳香族基である]
を有する少なくとも1つの2-アリール-3-(アミノアリール)-3-(ヒドロキシアリール)フタルイミジンから誘導される構造単位を含むポリマーが提供される。
【0009】
本発明は、以下の、本明細書の様々な特徴の詳細な説明及びここに含まれる実施例を参照していっそう容易に理解されよう。
【0010】
以下の詳細な説明及び請求項においては、以下の意味を有すると定義すべき多数の用語に言及が成される:単数形”a”、“an”、及び“the”には、内容的に明確に否定のない限りは複数の指示対象が含まれる。“任意の”もしくは“任意に”は、これに続く出来事もしくは状況が起こっても起こらなくても良いこと、並びにその説明が前記出来事が起こる場合と起こらない場合とを含むことを意味する。“ヒドロカルビル基”なる語は、脂肪族基、芳香族基、または環状脂肪族基を意味する。“式”及び“構造”は、本明細書中では相互変換可能に使用される。
【0011】
“脂肪族基”なる語は、環状ではない直鎖状もしくは分枝状の原子の列を含む、少なくとも1の原子価を有する有機基を意味する。脂肪族基は少なくとも1つの炭素原子を含む。脂肪族基を形成する原子の列は、ヘテロ原子、例えば窒素、硫黄、ケイ素、セレン、及び酸素を更に含むか、または炭素及び水素のみを含んでも良い。”環状ではない直鎖状もしくは分枝状の原子の列”は、広範な官能基、例えばアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ハロアルキル基、共役ジエニル基、アルコール基、エーテル基、アルデヒド基、ケトン基、カルボン酸基、アシル基(例えばカルボン酸誘導体、例えばエステル及びアミド)、アミン基、ニトロ基等を含むことを企図する。例えば、適当な脂肪族基は、4-メチルペント-1-イル基であって、これはメチル基を含むC6脂肪族基である。同様に、4-ニトロブト-1-イル基はニトロ官能基を含むC4脂肪族基である。別の適当な脂肪族基には、同一でも相違してもよい1つ以上のハロゲン原子を含むハロアルキル基が含まれる。適当なハロゲン原子には、例えばフッ素、塩素、臭素、及びヨウ素が含まれる。1つ以上のハロゲン原子を含む脂肪族基には、ハロゲン化アルキル、トリフルオロメチル、ブロモジフルオロメチル、クロロジフルオロメチル、ヘキサフルオロイソプロピリデン、クロロメチル;ジフルオロビニリデン;トリクロロメチル、ブロモジクロロメチル、ブロモエチル、2-ブロモトリメチレン(例えば、-CH2CHBrCH2-)等が含まれる。適当な脂肪族基の更なる例には、アルキル、アミノカルボニル(-CONH2)、カルボニル、ジシアノイソプロピリデン(-CH2C(CN)2CH2-)、メチル(-CH3)、メチレン(-CH2-)、エチル、エチレン、ホルミル、(-CHO)、ヘキシル、ヘキサメチレン、ヒドロキシメチル(-CH2OH)、メルカプトメチル(-CH2SH)、メチルチオ(-SCH3), メチルチオメチル(-CH2SCH3)、メトキシ、メトキシカルボニル(CH3OCO-)、ニトロメチル(-CH2NO2)、チオカルボニル、トリメチルシリル((CH3)3Si-)、t-ブチルジメチルシリル、トリメチルオキシシリルプロピル((CH3O)3SiCH2CH2CH2-)、ビニル、ビニリデン等が含まれる。更に例を挙げれば、C1 - C10脂肪族基は少なくとも1つの
、10を超えない炭素原子を含む。
【0012】
“芳香族基” なる語はまた、本明細書中では時に“アリール 基”を意味する。芳香族基またはアリール基は、少なくとも1つの芳香族基を含む少なくとも一の原子価を有する原子の列を意味する。芳香族基は、ヘテロ原子、例えば窒素、硫黄、セレン、ケイ素、及び酸素を更に含むか、または炭素及び水素のみを含んでも良い。本明細書中では、“芳香族基”とはフェニル、ピリジル、フラニル、チエニル、ナフチル、フェニレン、及びビフェニル基を含むがこれらに限定されない。芳香族基は、フェニル基(n=1)、チエニル基(n=1)、フラニル基(n=1)、ナフチル基(n=2)、アズレニル基(n=2)、アントラセニル基(n=3)等に示されるとおり、常に4n+2の“非局在化”電子(ここで“n”は1以上の整数である)を有する環状構造である。芳香族基はまた、非芳香族成分を含んでも良い。例えば、ベンジル基は、フェニル環(芳香族基)及びメチレン基(非芳香族成分)を含む芳香族基である。同様に、テトラヒドロナフチル基は、非芳香族成分-(CH2)4-に縮合した芳香族基(C6H3)を含む芳香族基である。“芳香族基”は、広範な官能性基、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ハロアルキル基、ハロ芳香族基、共役ジエニル基、アルコール基、エーテル基、アルデヒド基、ケトン基、カルボン酸基、アシル基(例えばカルボン酸誘導体、例えばエステル及びアミド)、アミン基、ニトロ基等を包含しうる。例えば、4-メチルフェニル基はメチルアルキル基を含むC7芳香族基である。同様に、2-ニトロフェニル基は、ニトロ官能基を含むC6芳香族基である。適当な芳香族基は、ハロゲン化 芳香族基、例えばトリフルオロメチルフェニル、ヘキサフルオロイソプロピリデンビス(4-フェン-1-イルオキシ)(-OPhC(CF3)2PhO-)、クロロメチルフェニル;3-トリフルオロビニル-2-チエニル;3-トリクロロメチルフェン-1-イル(3-CCl3Ph-)、 4(3-ブロモプロプ-1-イル)フェン-1-イル(BrCH2CH2CH2Ph-)等を含んでよい。芳香族基の更なる例には、4-アリルオキシフェン-1-オキシ、4-アミノフェン-1-イル(H2NPh-)、3-アミノカルボニルフェン-1-イル(NH2COPh-)、4-ベンゾイルフェン-1-イル、ジシアノイソプロピリデンビス(4-
フェン-1-イルオキシ)(-OPhC(CN)2PhO-)、3-メチルフェン-1-イル、メチレンビス(フェン-4-イルオキシ)(-OPhCH2PhO-)、2-エチルフェン-1-イル、フェニルエテニル、3-ホルミル-2-チエニル、2-ヘキシル-5-フラニル;ヘキサメチレン-1,6-ビス(フェン-4-イルオキシ)(-OPh(CH2)6PhO-);4-ヒドロキシメチルフェン-1-イル(4-HOCH2Ph-)、4-メルカプトメチルフェン-1-イル(4-HSCH2Ph-)、4-メチルチオフェン-1-イル(4-CH3SPh-)、3-メトキシフェン-1-イル、2-メトキシカルボニルフェン-1-イルオキシ(メチルサリチル)、2-ニトロメチルフェン-1-イル、3-トリメチルシリルフェン-1-イル、4-t-ブチルジメチルシリルフェニル-1-イル、4-ビニルフェン-1-イル、ビニリデンビス(フェニル)等が含まれる。“C3-C10芳香族基”なる語には、少なくとも3つであって10以下の炭素原子を含む芳香族基が含まれる。芳香族基1-イミダゾリル(C3H2N2-)はC3芳香族基を表わす。ベンジル基(C7H8-)はC7芳香族基を表わす。
【0013】
“環状脂肪族基”なる語は、少なくとも1の原子価を有し、且つ環状であるが芳香族ではない原子の列を含む基を意味する。 本明細書中に定義される通り”環状脂肪族基”は、芳香族基を含まず、一つ以上の非環状成分を更に含んでよい。例えば、シクロヘキシルメチル基(C6H11CH2-)は、シクロヘキシル環(原子の列が環状であるが芳香族ではない)及びメチレン基(非環状成分)を含む環状脂肪族基である。環状脂肪族基は、ヘテロ原子、例えば窒素、硫黄、セレン、ケイ素、及び酸素を更に含むか、または炭素及び水素のみを含んでも良い。更に、環状脂肪族基は広範な官能基、例えばアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ハロアルキル基、共役ジエニル基、アルコール基、エーテル基、アルデヒド基、ケトン基、カルボン酸基、アシル基(例えばカルボン酸誘導体、例えばエステル及びアミド)、アミン基、ニトロ基等を包含しうる。例えば、4-メチルシクロペント-1-イル基は、メチル基を含むC6環状脂肪族基であって、前記メチル基がアルキル基である官能基である。同様に、2-ニトロシクロブト-1-イル基は、ニトロ基を含むC4環状脂肪族基であって、前記ニトロ基が官能基である。適当な環状脂肪族基は同一でも相違してもよい一つ以上のハロゲン原子を更に含んでよい。適当なハロゲン原子には、例えばフッ素、塩素、臭素、及びヨウ素が含まれる。一つ以上のハロゲン原子を含む適当な環状脂肪族基には、2-トリフルオロメチルシクロヘクス-1-イル、4-ブロモジフルオロメチルシクロオクト-1-イル、2-クロロジフルオロメチルシクロヘクス-1-イル、ヘキサフルオロイソプロピリデン2,2-ビス(シクロヘクス-4-イル)(-C6H10C(CF3)2C6H10-)、2-クロロメチルシクロヘクス-1-イル;3-ジフルオロメチレンシクロヘクス-1-イル;4-トリクロロメチルシクロヘクス-1-イルオキシ、4-ブロモジクロロメチルシクロヘクス-1-イルチオ、2-ブロモエチルシクロペント-1-イル、2-ブロモプロピルシクロヘクス-1-イルオキシ(例えばCH3CHBrCH2C6H10-)等が含まれる。環状脂肪族基の更なる例には、4-アリルオキシシクロヘクス-1-イル、4-アミノシクロヘクス-1-イル(H2NC6H10-)、4-アミノカルボニルシクロペント-1-イル(NH2COC5H8-)、4-アセチルオキシシクロヘクス-1-イル、2,2-ジシアノイソプロピリデンビス(シクロヘクス-4-イルオキシ)(-OC6H10C(CN)2C6H10O-)、3-メチルシクロヘクス-1-イル、メチレンビス(シクロヘクス-4-イルオキシ)(-OC6H10CH2C6H10O-)、1-エチルシクロブト-1-イル、シクロプロピルエテニル、3-ホルミル-2-テトラヒドロフラニル、2-ヘキシル-5-テトラヒドロフラニル;ヘキサメチレン-1,6-ビス(シクロヘクス-4-イルオキシ) (-O C6H10(CH2)6C6H10O-); 4-ヒドロキシメチルシクロヘクス-1-イル(4-HOCH2C6H10-)、4-メルカプトメチルシクロヘクス-1-イル(4-HSCH2C6H10-), 4-メチルチオシクロヘクス-1-イル(すなわち4-CH3SC6H10-)、4-メトキシシクロヘクス-1-イル、2-メトキシカルボニルシクロヘクス-1-イルオキシ(2-CH3OCOC6H10O-)、4-ニトロメチルシクロヘクス-1-イル(NO2CH2C6H10-)、3-トリメチルシリルシクロヘクス-1-イル、2-t-ブチルジメチルシリルシクロペント-1-イル、4-トリメトキシシリルエチルシクロヘクス-1-イル((CH3O)3SiCH2CH2C6H10-)、4-ビニルシクロヘキセン-1-イル、ビニリデンビス(シクロヘキシル)等が含まれる。
【0014】
本明細書中に開示の通り、特記のない限り、“2-アリール-3,3-ビス(ヒドロキシアリール)フタルイミジン”(AHP)なる語には、オルト、パラ、及びパラ、パラの異性体が含まれるが、これらは一般的にヒドロキシアリール基中のOH官能性の位置を意味する。本明細書中に開示の通り、特記のない限り、“2-フェニル-3,3-ビス(ヒドロキシフェニル)フタルイミジン”(PPPBP)なる語には、オルト、パラ、及びパラ、パラの異性体が含まれる。本明細書中に開示の通り、“2-アリール-3-(アミノアリール)-3-(ヒドロキシアリール)フタルイミジン” (AAHP)なる語には、パラ、パラの異性体が含まれるが、これは特記のない限り、OH及びNH2官能基の位置を意味する。本明細書中に開示の通り、“2-フェニル-3-(4-アミノフェニル)-3-(4-ヒドロキシフェニル)フタルイミジン”なる語は、略称“AP”と相互変換可能に使用される。
【0015】
本明細書中に開示の通り、AAHPs、AHPs、またはフェノールフタレイン化合物についての構造/式においては、“(R1)a”中の下付き文字“a”がゼロである場合には、これは全ての置換基R1が水素原子である構造を示す。R1が水素原子以外である場合には、下付き文字“a”は0乃至4の値を取りうるが、“a” の値が0である場合は、置換基R1として水素原子のみを有する構造を示す。
【0016】
AAHP化合物は下記の一般式(I):
【化3】

[式中、R1は、ヒドロカルビル基、ニトロ基、及びハロゲン原子からなる群より独立に選択され;“a”は0-4の整数であり;Ar1及びAr2は、各々独立に芳香族基である]
を有する。一実施態様では、式(I)を有するAAHP化合物には、式中Ar1及びAr2が各々独立に単環式芳香族基であるものが含まれる。別の実施態様では、Ar1及びAr2はアリール基である。更に別の実施態様では、Ar1及びAr2が各々独立に単環式芳香族基であって、“a”が0である。更に別の実施態様では、2-アリール-3-(アミノアリール)-3-(ヒドロキシアリール)フタルイミジンは下式(II):
【化4】

[式中、R1は、ヒドロカルビル基、ニトロ基、及びハロゲン原子からなる群より独立に選択され;“a”は0-4の整数である]
を有する。更に別の実施態様では、2-アリール-3-(アミノアリール)-3-(ヒドロキシアリール)フタルイミジンの例は、構造(II)を有し、ここでR1は水素原子であり、“a”は4であって、2-フェニル-3-(4-アミノフェニル)-3-(4-ヒドロキシフェニル)フタルイミジン (“AP”と略記)とも呼称される。
【0017】
2-アリール-3-(アミノアリール)-3-(ヒドロキシアリール)フタルイミジン(AAHPs)は、前駆体化合物を、一般式(III):
Ar2-NH2 (III)
[式中、Ar2は芳香族基である]
を有する第一級芳香族アミンと反応させることによって調製される。適当な第一級 芳香族アミンには、アニリン並びに、一つ以上のC1-C12脂肪族基、一つ以上のC3-C12環状脂肪族基、あるいは一つ以上の芳香族基によって置換されたアニリン類が含まれる。
【0018】
前駆体化合物は、下式(IV):
【化5】

[式中、Ar1、R1、及び“a”は式(I)について既述した通りである]
を有するフェノールフタレイン化合物を包含可能である。フェノールフタレイン化合物は、例えば式(V):
【化6】

[式中、R1及び“a”は式(VI):
Ar1-OH (VI)
(式中、Ar1は芳香族基である)
の芳香族ヒドロキシ化合物について既述した通りである]
のフタル酸無水物化合物の環アルキル化反応による方法で調製可能である。
【0019】
触媒が、一般的にフェノールフタレイン化合物の生成のために使用される。触媒は、ルイス酸、例えば塩化亜鉛、塩化アルミニウム、塩化第二鉄、三フッ化ホウ素等であってよい。式(V)の無水フタル酸の非限定的な例には、無水フタル酸、ハロゲン化無水フタル酸、例えば3-クロロ無水フタル酸、4-クロロ無水フタル酸、3,4-ジクロロ無水フタル酸、トリクロロ無水フタル酸、テトラクロロ無水フタル酸、フルオロ無水フタル酸、ジフルオロ無水フタル酸、トリフルオロ無水フタル酸、テトラフルオロ無水フタル酸等;アルコキシ置換無水フタル酸、ニトロ無水フタル酸等が含まれる。無水フタル酸は、市販品を容易に入手可能であるために無水フタル酸化合物の代表例である。式(VI)の芳香族ヒドロキシ化合物は、親化合物であるフェノール並びに無水フタル酸化合物とのアルキル化反応を起こしうるあらゆる置換フェノールによって例示される。置換芳香族ヒドロキシ化合物の数例には、クレゾール(オルト、メタ、パラ異性体)及びキシレノール(様々な異性体)が含まれる。
【0020】
本明細書中に開示されたAAHP 化合物の調製に使用可能なフェノールフタレイン化合物の例には、下式(VII):
【化7】

を有する親フェノールフタレインが含まれる。
【0021】
AAHP 化合物の調製のために適当な前駆体化合物はまた、下式(VIII):
【化8】

[式中、R1、“a”、Ar1、及びAr2は既述の通りである]
の2-アリール-3,3-ビス(ヒドロキシアリール)フタルイミジンであってよい。一実施態様では、2-アリール-3,3-ビス(ヒドロキシアリール)フタルイミジンは下式(IX):
【化9】

[式中、R1、“a”、及びAr2は既述の通りである]
のものである。別の実施態様では、2-アリール-3,3-ビス(ヒドロキシアリール)フタルイミジン前駆体には、様々な量の対応するオルト、パラ-AHP、例えば一般式(X):
【化10】

[式中、R1、“a”、及びAr2は式(IX)について既述の通りである]
の化合物が含まれる。2-フェニル-3,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フタルイミジン (パラ、パラ-PPPBP)は、代表的な2-アリール-3,3-ビス(ヒドロキシアリール)フタルイミジンである。パラ、パラ-PPPBPはまた、前駆体化合物として対応するオルト、パラ-異性体を含んでよい。
【0022】
芳香族第一級アミンとAHP化合物との反応は、同様の反応を起こしうる別のジヒドロキシ芳香族化合物に拡張可能である。この反応は、ジヒドロキシ芳香族化合物中のヒドロキシフェニル基が酸性触媒の存在下でアミノアリール基に交換される、トランスアリール反応であると見なしてよい。こうしたトランスアリール化反応を起こしうるジヒドロキシ芳香族化合物の非限定的な例には、下式(XI)-(XIII):
【化11A】

【化11B】

の化合物が含まれる。
【0023】
トランスアリール化反応から製造される生成物には、一方または両方のヒドロキシフェニル基がアミノアリール基、すなわち-NHAr2に交換された構造が含まれる。
【0024】
AAHP化合物の生成に使用される適当な酸性触媒には、有機アミンと酸との塩が含まれる。酸は無機酸、有機酸、または前記酸の組み合わせからなる群より選択される。無機酸の例には、塩酸、硫酸、リン酸等が含まれる。有機酸の例には、スルホン酸、例えばメタスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸等;及びカルボン酸、例えば蟻酸、安息香酸等が含まれる。ポリマー性酸性触媒、例えばスルホン酸基を含むものもまた使用可能である。ポリマー性酸性触媒の例には、スルホン酸基を含むカチオン交換樹脂が含まれる。固体酸性触媒、例えば酸性シリカ、酸性アルミナ、及びモンモリロナイトもまた使用可能である。
【0025】
酸性触媒の生成に必要とされる有機アミンは、第一級アミン、第二級アミン、第三級アミン、あるいは前記アミンのあらゆる組み合わせであってよい。一つ以上の塩基性窒素原子を環の一部として有する有機アミン、例えばピリジン化合物もまた使用可能である。適当なアミンの更なる例には、アミン窒素に結合した脂肪族及び芳香族基のあらゆる組み合わせを有する、第一級、第二級、第三級アミンが含まれる。アミン塩触媒の適当な例には、第一級、第二級、第三級アミンの塩酸塩が含まれる。一実施態様では、上記式(III)(式中、R1は芳香族基である)のアミンの塩酸塩が使用可能である。別の実施態様では、上記式(II)のAAHPsの調製のための出発物質としても作用する第一級芳香族アミンの酸性塩が好ましい。アニリンは、AAHP化合物生成のための酸性触媒の調製に使用される代表的な有機アミンである。
【0026】
酸性触媒は、予め生成した塩として反応器中に導入される。別の実施態様では、触媒を、先ず式(III)のアミンを反応器中に仕込み、次いで前記アミンに適切な酸を添加することによって、反応器内で原位置発生させる。例えば、約1/3乃至約1重量部の酸、例えば無機酸を、式(III)のアミンに添加して酸性塩触媒を発生させることができる。塩酸は無機酸の代表例である。塩化水素ガスもまた使用可能である。一実施態様では、約0.1乃至約0.3重量部の塩化水素ガスが、有機アミン、例えばアリールアミンを仕込んだ反応器に導入される。こうして生成したアリールアミン塩酸塩は、本願発明において触媒として適切に使用可能である。一般的に、酸性触媒のレベルが比較的に高ければ、AAHP化合物の生成には有利である。溶媒は、酸性触媒、例えばアリールアミン塩酸塩を生成させるために任意に使用可能である。溶媒はその後(必要に応じて)除去可能であり、式(III)のヒドロカルビルアミンが添加可能であり、次いで式(IV)及び/または(VIII)の前駆体化合物が添加される。
【0027】
前駆体がフェノールフタレイン化合物である場合には、所望の生成物(I)を生成させる反応は式(VIII)を有する生成物の中間体生成を伴って進行する。反応の進行は、液体クロマトグラフィーによって追うことができ、ここではフェノールフタレイン化合物の消失並びに中間体 (VIII)及び最終生成物(I)の生成が観察可能である。反応温度及び反応時間を調整して生成物(I)の生成を促進することができる。フェノールフタレイン化合物とヒドロカルビルアミンとの酸性触媒の存在下での反応は、縮合反応によって進行して式(VIII)を有する中間体生成物及び副生成物の水を生成する。水は単なる蒸留によって反応器から除去することができる。あるいはまた、適当な有機溶媒を使用することによって水を共沸混合物として除去することもできる。第二工程において、中間体生成物はより多くのヒドロカルビルアミンと酸性触媒の存在下で反応して式(I)を有する所望の生成物を生成させる。第二工程では、芳香族ヒドロキシ化合物が副生成物として生成する。一実施態様では、芳香族 ヒドロキシ化合物を反応中に除去して順方向の反応を促進することができる。別の実施態様では、反応混合物を、水または芳香族ヒドロキシ化合物副生成物を除去することなく還流させることができる。フェノールフタレインに対して過剰なアリールアミンは、順方向での反応の進行を維持するために使用して良い。温度は、生成物の生成を促進させるように選択することができる。一般的に、所与の圧力下であれば、比較的に高温がAAHP化合物の生成を促す。反応は、準大気圧、大気圧、または大気圧超の圧力にて実行することができる。一実施態様では、少なくとも100℃の温度を使用してAAHP化合物を生成させることができる。こうして所望のAAHP化合物を、有機アミン化合物及び/または芳香族ヒドロキシ化合物の単離について当業者に知られた技術によって、反応混合物から単離することができる。
【0028】
式(VIII)に示されるパラ、パラ-2-アリール-3,3-ビス(ヒドロキシアリール)フタルイミジン(AHP化合物)は、AAHP化合物の調製における中間体として製造され、これら自体がポリマー、例えばポリカーボネートの調整のためのモノマーとして有益である。然るに、AAHP化合物を製造するための反応条件は、AHP化合物とAAHP化合物との両方を有用な生成物として製造するために変更または最適化することができる。
【0029】
AAHP生成物を含む反応混合物は、対応するAHP副生成物を更に含む。いずれの生成物も、パラ、パラ及びオルト、パラ異性体の混合物として存在しうる。一般的に、AAHP及びAHP化合物のパラ、パラ異性体は、対応するオルト、パラ異性体に対して優位を占める。
【0030】
一実施態様では、反応混合物をまず無機酸水溶液、例えば塩酸水溶液でクエンチする。AAHP生成物及びAHP副生成物を含む固体混合物が生成し、これを濾過して水と有機溶媒との混合物に溶解させるが、ここで有機溶媒は前記固体混合物を少なくとも部分的に溶解させることができる。生成した溶液を、その後、AAHP化合物にNH2基を介して結合することのできる酸性物質と接触させる。スルホン酸基を有するカチオン交換樹脂を使用して、AHP化合物からAAHP化合物を分離することができる。AAHPを少なくとも部分的に溶解することができる、あらゆる極性溶媒を使用することができる。更にまた、これらの溶媒は少なくとも部分的に水と混和性であっても、あるいは水と完全に混和性であっても良い。適当な有機溶媒は、ヒドロキシ基、ケトンカルボニル基、カルボン酸基、エステル基、スルホキシド基、ニトリル基、エーテル基、及びニトロ基からなる群より選択される少なくとも1つの官能基を含む。一実施態様では、適当な有機溶媒は、有機ヒドロキシ化合物、有機ケトン、有機アミド、有機スルホキシド、有機エーテル、及び有機ニトリルからなる群より選択される少なくとも1つの要素を含む。これらの溶媒カテゴリーのそれぞれが、1つ以上の官能基を含んで良く、これは別の官能基と同一でも相違しても良い。例えばエタノール、エチレングリコール、及び2-エトキシエタノールを、個別にまたは適当な有機溶媒としてのあらゆる相対割合で使用して良い。
【0031】
一実施態様では、少なくとも1つのヒドロキシ基を有する脂肪族アルコールを、有機溶媒として使用することができる。適切な有機ヒドロキシ化合物には、少なくとも1つのヒドロキシ基を有する脂肪族、環状脂肪族、及び芳香族のヒドロキシ化合物が含まれる。脂肪族ヒドロキシ化合物には、直鎖状及び分枝状の脂肪族モノ-ヒドロキシ化合物が含まれ、その非限定的例にはメタノール、エタノール、イソプロパノール、n-ブタノール、sec-ブタノール、iso-ブタノール、tert-ブタノール等が含まれる。これらの化合物の混合物もまた使用可能である。脂肪族ジヒドロキシ化合物、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール等に例示されるグリコールもまた使用して良い。芳香族ヒドロキシ化合物の非限定的な例には、フェノール、オルト-クレゾール、ベンジルアルコール等が含まれる。環状脂肪族ヒドロキシ化合物の数例としては、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、シクロヘキサンジオール等がある。一実施態様では、適当な有機ヒドロキシ化合物には、メタノール、イソプロパノール、またはメタノールとイソプロパノールとのあらゆる組み合わせが含まれる。メタノールは、AAHP化合物、例えば2-フェニル-3-(4-アミノフェニル)-3-(4-ヒドロキシフェニル)フタルイミジン(AP)の単離に使用可能な有機溶媒の代表例である。
【0032】
有機溶媒としての使用に適当な有機ケトンには、アセトン、2-ブタノン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソプロピルケトン等が含まれる。一実施態様では、前記有機溶媒はアセトンを含む。適当な有機アミドには、ホルムアミド、アセトアミド等が含まれる。有機溶媒として使用可能な有機スルホキシドには、ジメチルスルホキシド、メチルエチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド等が含まれる。有機ニトリルの非限定的な例には、脂肪族ニトリル、例えばアセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、ヘキサンジニトリル等が含まれる。使用して良い有機ニトロ化合物の例には、ニトロメタン、ニトロエタン等が含まれる。
【0033】
一実施例では、有機溶媒は、メタノール、エタノール、イソプロパノール、sec-ブタノール、フェノール、アセトン、ブタノン、ホルムアミド、またはジメチルスルホキシドである。
【0034】
結合AAHP化合物を有するカチオン交換樹脂を、その後、酸水溶液とAAHP化合物を少なくとも部分的に溶解させることができる有機溶媒とを含む混合物で処理する。酸水溶液の例には、無機酸、例えば塩酸、リン酸等の水溶液が含まれる。有機溶媒の例には、上述のものが含まれる。脂肪族アルコール、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール等は、有用な有機溶媒である。酸性混合物は、遊離のAAHP化合物を放出する。AAHPのパラ、パラ異性体は、その後、結晶化等の技術を使用して純粋形態で単離することができる。
【0035】
本明細書中に開示されるAAHP化合物は、NH2基またはOH基を適当な反応物と選択的に反応させることによって多様な官能性物質を製造するために有用である。NH2基の選択的な反応によって遊離のOH基を有する官能性物質がもたらされ、OH基の選択的な反応によって遊離のNH2基を有する官能性物質がもたらされる。例えば、下式(XIV):
【化12】

に示されるAPと無水物、例えば無水フタル酸との反応により、下式(XV):
【化13】

の官能性物質がもたらされる。
【0036】
順に、この官能性物質は、多くの異なるタイプのポリマーの調製に使用可能である。
【0037】
AAHP化合物は、様々なポリマーの製造にも有用である。このポリマーは、ホモポリマー、ランダムコポリマー、及びブロックコポリマーであってよい。これらは、NH2及び芳香族ヒドロキシ(OH)官能基の存在のために、これらの官能基から誘導される構造単位を1つ以上含む様々なポリマーの製造のためのモノマーまたはコモノマーとして適当なものである。こうした構造単位の例には、下式 (XVI) - (XX):
【化14】

が含まれる。
【0038】
本明細書中に開示されるAAHP化合物を使用して製造可能なポリマーの非限定的な例には、以下に限定されるものではないが、ポリエステルアミド、ポリエステルウレタン、ポリカーボネートアミド等が含まれる。
【0039】
本発明は、以下の非限定的実施例を参照してより詳細に説明されるが、これらは例示を企図するものであって限定的ではない。
【実施例】
【0040】
(実施例1)
本実施例は、2-フェニル-3-(4-ヒドロキシフェニル)-3-(4-アミノフェニル)フタルイミジンモノマーを、フェノールフタレイン及びアニリンを出発物質として、またアニリン塩酸塩を触媒として調製するために使用される操作を説明する。
【0041】
オーバーヘッドスターラー、ディーン・スターク装置、及び温度計の鞘を取り付けた500ミリリットルの四つ口丸底フラスコに、アニリン(83グラム、0.88モル)、フェノールフタレイン(40.5グラム、0.127モル)、及びアニリン塩酸塩(33グラム、0.25モル)を仕込んだ。得られた混合物を窒素雰囲中で48時間に亘って加熱還流させた(反応物の温度は180-185℃であった)。その後、反応物を120-125℃に冷却し、5重量%の塩酸水溶液で処理した。得られた混合物を、内部温度を約50℃に維持しつつ更に2、3時間に亘って撹拌した後、周囲温度に冷却して濾過した。濾過ケークを、洗浄水が中性(pHが約7)になるまで水で(100ミリリットルで5回)よく洗った。濾過ケークからの過剰な水を吸引して除去し、固体を一定重量になるまで 100-120℃にて乾燥させた。かくして得られた生成物を、高圧液体クロマトグラフィ(HPLC)によって分析したところ、約16重量%のAPを含むことが判明した。
【0042】
約100グラムの粗製生成物を、水酸化ナトリウム水溶液に溶解させ、5グラムの活性炭と共に約15分間に亘って撹拌し、濾過した。濾液を、塩酸水溶液(7-10重量%の溶解HClを含む)に撹拌しつつ添加し、該混合物のpHを3.5-4に調節した。更に30分間撹拌し、pHが約3.5-4のままであることを確認した後、該混合物を濾過し、濾過ケークを一定重量になるまで乾燥させた。かくして得られた物質を、アセトン及び水をそれぞれ80:20(体積/体積)含む、6体積(固体物質の体積に対して、乾燥ベースで)の溶媒中に溶解させた。この溶液を40-45℃に加熱し、10グラム(乾燥ベース)の2%架橋スルホン化ポリスチレン-ジビニルベンゼンイオン交換樹脂を充填したカラムに、6-7の重量毎時空間速度(すなわち毎時約60-70グラムの溶液供給)でポンプ注入した。流出液中のAPのレベルは、HPLCを使用して観察する。一般的に、供給溶液を、流出液がおよそ75ppmのAPを有するようになるまでカラムにポンプ注入した。ポンプ注入を停止し、カラム中に残った液体を排出させた。次いで、アセトン、濃塩酸、及び水をそれぞれ90:10:10(体積/体積)含む溶媒混合物を調製し、カラムにポンプ注入した。その後、アセトン及び水をそれぞれ80:20(体積/体積)含む溶媒混合物を、流出液がおよそ75ppmのAPを有するようになるまでカラムにポンプ注入した。流出液を合わせたものを、塩基性物質、例えば水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、または重炭酸ナトリウムを含む水性塩基で中和した。全混合物を濃縮して溶媒を除去した。残留固体残渣をHPLCによって分析したところ、およそ50重量%のAPを含んでいた。この物質の一部を、重量比86:9:5の溶媒(A)、(B)、及び(C)からなる移動相を使用する予備HPLCにかけたが、ここでは溶媒(A)が0.02重量%のリン酸水溶液であり、溶媒(B)がメタノールであり、また溶媒(C)がアセトニトリルである。約40℃のカラムオーブン温度、1ミリリットル/分の流速、及び270ナノメートルの検出波長を、予備HPLCに用いた。所望のAPを含む溶出液を回収し、濃縮して、APの純粋試料を提供した。APの化学的同一性を、プロトン核磁気共鳴(NMR)スペクトルによって確立させた。図を参照すると、プロトン核磁気共鳴スペクトルは
、AP中に存在する様々なタイプのプロトンに帰属するピークを示す。帰属は、図中の数(1から10まで)として示される。二次元の炭素-プロトン相関分光法を用いて、NH2基及びフェノール性OH基がAP中の各フェニル環のパラ位に位置することが立証され、然るに単離された物質がパラ、パラ-AP異性体であることが確認された。
【0043】
(実施例2)
この実施例は、2-フェニル-3-(4-ヒドロキシフェニル)-3-(4-アミノフェニル)フタルイミジン (AP)モノマーを、2-フェニル-3,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フタルイミジン及びアニリンを出発物質として、またアニリン塩酸塩を触媒として調製するために使用される操作を説明する。
【0044】
アニリン(83グラム;0.88モル)、パラ、パラ-PPPBP(50グラム、0.127モル)、及びアニリン塩酸塩(33グラム;0.25モル)を使用し、実施例1に上述したようにして粗製反応生成物が得られた。粗製生成物は、HPLCで測定して約16重量%のAPを含んでいた。純粋パラ、パラ-APの単離が、実施例1について記載したものと同様の操作を使用して達成された。
【0045】
この詳細な説明には、本発明を開示するため、並びにいかなる当業者も本発明を実施し且つ利用することができるように、最良の形態を含む例が使用されている。本発明の特許可能な範囲は特許請求の範囲によって決定され、また当業者に想到されうる別の例も含んで良い。こうした別の例は、特許請求の範囲の文字通りの用語に矛盾しない構造的要素を有するか、あるいは請求の範囲の文字通りの用語と同等の構造的要素を有して僅かな差異を伴うならば、特許請求の範囲内であることを企図する。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】2-フェニル-3-(4-ヒドロキシフェニル)-3-(4-アミノフェニル)フタルイミジンのプロトン核磁気共鳴スペクトルを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下式:
【化1】

[式中、R1は、ヒドロカルビル基、ニトロ基、及びハロゲン原子からなる群より独立に選択され;“a”は0-4の整数であり;Ar1及びAr2は、各々独立に芳香族基である]
を有する2-アリール-3-(アミノアリール)-3-(ヒドロキシアリール)フタルイミジン。
【請求項2】
Ar1及びAr2が各々独立に単環式芳香族基である、請求項1に記載の2-アリール-3-(アミノアリール)-3-(ヒドロキシアリール)フタルイミジン。
【請求項3】
Ar1及びAr2がフェニレン基である、請求項2に記載の2-アリール-3-(アミノアリール)-3-(ヒドロキシアリール)フタルイミジン。
【請求項4】
“a”が0である、請求項2に記載の2-アリール-3-(アミノアリール)-3-(ヒドロキシアリール)フタルイミジン。
【請求項5】
下式:
【化2】

[式中、R1は、ヒドロカルビル基、ニトロ基、及びハロゲン原子からなる群より独立に選択され;“a”は0-4の整数である]
を有する2-アリール-3-(アミノアリール)-3-(ヒドロキシアリール)フタルイミジン。
【請求項6】
“a”が0である、請求項5に記載の2-アリール-3-(アミノアリール)-3-(ヒドロキシアリール)フタルイミジン。
【請求項7】
前駆体化合物を芳香族第一級アミンと酸性触媒の存在下で反応させる工程を含み、前記芳香族第一級アミンが式Ar1-NH2 (式中、Ar1は芳香族基である)を有し;前記前駆体化合物がフェノールフタレイン化合物及び2-アリール-3,3-ビス(ヒドロキシアリール)フタルイミジンからなる群より選択される少なくとも1つの要素である、2-アリール-3-(アミノアリール)-3-(ヒドロキシアリール)フタルイミジンの調製方法。
【請求項8】
酸性触媒が、有機アミンと酸との塩を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
酸が、無機酸、有機酸、及び前記酸の組み合わせからなる群より選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
芳香族第一級アミンが、アニリンまたは置換アニリンを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前駆体化合物が、下式:
【化3】

[式中、R1は、水素原子、ヒドロカルビル基、ニトロ基、及びハロゲン原子からなる群より独立に選択され;“a”は1-4の整数であり;Ar1は芳香族基である]
を有するフェノールフタレイン化合物である、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前駆体化合物が、フェノールフタレインである、請求項7に記載の方法。
【請求項13】
前駆体が、下式:
【化4】

[式中、R1は、ヒドロカルビル基、ニトロ基、及びハロゲン原子からなる群より独立に選択され;“a”は0-4の整数であり;Ar1及びAr2は、各々独立に芳香族基である]
を有する2-アリール-3,3-ビス(ヒドロキシアリール)フタルイミジンである、請求項7の方法。
【請求項14】
2-アリール-3,3-ビス(ヒドロキシアリール)フタルイミジンが、2-フェニル-3,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フタルイミジンである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
芳香族第一級アミンが、アニリンである、請求項7に記載の方法。
【請求項16】
式[Ar1]-OH (式中、Ar1が芳香族基である)を有する副生成物を除去する工程を更に含む、請求項7に記載の方法。
【請求項17】
前駆体化合物をアニリンと酸性触媒の存在下で反応させて2-フェニル-3-(4-アミノフェニル)-3-(4-ヒドロキシフェニル)フタルイミジンを生成させる工程を含み、前記前駆体化合物がフェノールフタレイン及び2-フェニル-3,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フタルイミジンからなる群より選択される、2-フェニル-3-(4-アミノフェニル)-3-(4-ヒドロキシフェニル)フタルイミジンの調製方法。
【請求項18】
酸性触媒が、アニリンと酸とを接触させることにより原位置形成される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
酸性触媒が、アニリン塩酸塩である、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前駆体化合物が、2-フェニル-3-(4-ヒドロキシフェニル)-3-(2-ヒドロキシフェニル)フタルイミジンである、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
下式:
【化5】

[式中、R1は、水素原子、ヒドロカルビル基、ニトロ基、及びハロゲン原子からなる群より独立に選択され;“a”は0-4の整数であり;Ar1及びAr2は、各々独立に芳香族基である]
を有する少なくとも1つの2-アリール-3-(アミノアリール)-3-(ヒドロキシアリール)フタルイミジンから誘導される構造単位を含むポリマー。

【図1】
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【公表番号】特表2009−517475(P2009−517475A)
【公表日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−543387(P2008−543387)
【出願日】平成18年11月28日(2006.11.28)
【国際出願番号】PCT/US2006/045519
【国際公開番号】WO2007/064630
【国際公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】