説明

2−アルキルアルカン−1,2−ジオール類の製造方法

【課題】消泡剤、界面活性剤、洗剤ビルダー等に使用することができる2−アルキルアルカン−1,2−ジオール類を高純度、高収率で製造する方法を提供。
【解決手段】1−オレフィン類を二量化してビニリデンオレフィン類を得た後に、酸化することで、式(I)


(nは4〜30の整数)のエポキサイド類を製造し、エーテル類、炭化水素類及びアルコール類から選ばれる少なくとも一種と、水和触媒とを添加して反応を行った後、水和触媒を中和又はろ過により除去、該溶媒を留去した後、真空蒸留する式(II)


の2−アルキルアルカン−1,2−ジオール類の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は特定の2−アルキルアルカン−1,2−ジオール類の製造方法に関し、さらに詳しくは、消泡剤、界面活性剤、洗剤ビルダーなどに適した2−アルキルアルカン−1,2−ジオール類を高純度、好収率で製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、2−アルキルアルカン−1,2−ジオール類を始めとする比較的分子量の高いジオール類は消泡剤、界面活性剤、洗剤ビルダーとして使用され、特に、消泡剤として、例えば製紙、発酵、食品の製造工程において作業性を阻害する多量の泡を除去するために使用されるなど、幅広く用いられている。
工業的には、1−オクテンや1−デセンを有機アルミニウム化合物で二量化して得られたビニリデンオレフィン類を、過酸化水素/ギ酸でジヒドロキシル化して製造されているが、この方法では反応系を均一相とするために人体に有害なギ酸を多量に用いる必要がある。文献的に、特許文献1には、ジオール類を有効成分とする消泡剤が開示されている。それによると、分子量の低いジオール類については、相当するエポキシ化合物を酸またはアルカリ触媒の存在下で水を反応させて得られる。しかし、比較的分子量の高いジオール類については、例えば、オクテン、デセンの二量体に対し、人体に有害なギ酸を多量に酸化反応に用いる必要があり、また、反応終了後、多量のギ酸を留去させる操作が要る。また、生成物が1,2−ジオールのギ酸エステルで得られるため、加水分解工程が必要で煩雑な操作となる。さらに、エポキシ化合物を水と反応させる方法を採用すると、エポキシ化合物同士で開環重合(副反応)を起こしやすく、1,2−ジオールの収率が低いという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公昭60−41968号公報(第2頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、このような状況下でなされたもので、特定の構造を有する2−アルキルアルカン−1,2−ジオール類を高純度、好収率で製造する方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、反応系にエーテル、炭化水素及びアルコールからなる群から選ばれた少なくとも一種(以下、相溶化剤という)を使用することにより、その目的に適合し得ることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち、本発明の要旨は下記のとおりである。
1.1−オレフィン類をメタロセン錯体/有機アルミニウム化合物またはメタロセン錯体/ボレート化合物を触媒として用いて二量化してビニリデンオレフィン類を得た後に該ビニリデンオレフィン類を酸化することで、下記一般式(I)
【化1】

(式中、nは4〜30の整数を示す。)
で表される2−アルキルアルカン−1,2−エポキサイド類を製造し、
次いで、反応容器に、前記一般式(I)で表される2−アルキルアルカン−1,2−エポキサイド類と、エーテル類、炭化水素類及びアルコール類からなる群から選ばれる少なくとも一種と、水和触媒とを添加して4〜100時間かけて水和反応を行い、
反応終了後、前記水和触媒を中和又はろ過により除去し、前記のエーテル類、炭化水素類及びアルコール類を留去した後、真空蒸留することを特徴とする下記一般式(II)
【化2】

(式中、nは前記に同じである。)
で表される2−アルキルアルカン−1,2−ジオール類の製造方法。
2.前記水和反応が、反応温度10〜100℃で4〜24時間の条件で行われる、上記1に記載の2−アルキルアルカン−1,2−ジオール類の製造方法。
3.前記のエーテル類、炭化水素類及びアルコール類の沸点が常圧換算で、20〜200℃の範囲である、上記1又は2に記載の2−アルキルアルカン−1,2−ジオール類の製造方法。
4.前記の水和反応における2−アルキルアルカン−1,2−エポキサイド類と前記のエーテル類、炭化水素類及びアルコール類からなる群から選ばれる少なくとも一種との仕込み質量比が1:1〜1:1,000の範囲である、上記1〜3のいずれかに記載の2−アルキルアルカン−1,2−ジオール類の製造方法。
5.前記のエーテル類、炭化水素類及びアルコール類からなる群から選ばれる少なくとも一種がトルエンである、上記1〜4のいずれかに記載の2−アルキルアルカン−1,2−ジオール類の製造方法。
6.前記水和触媒が、無機酸及び/又は酸型イオン交換樹脂である、上記1〜5のいずれかに記載の2−アルキルアルカン−1,2−ジオール類の製造方法。
7.前記酸型イオン交換樹脂の酸性発現官能基が、スルホン酸(SO3H)基又はカルボン酸(COOH)基である、上記6に記載の2−アルキルアルカン−1,2−ジオール類の製造方法。
8.得られた2−アルキルアルカン−1,2−ジオール類の純度が92〜95質量%である、上記1〜7のいずれかに記載の2−アルキルアルカン−1,2−ジオール類の製造方法。
9.2−アルキルアルカン−1,2−ジオール類の収率が78〜84%である、上記1〜8のいずれかに記載の2−アルキルアルカン−1,2−ジオール類の製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、特定の構造を有する2−アルキルアルカン−1,2−ジオール類を高純度、好収率で製造する方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明は、1−オレフィン類をメタロセン錯体/有機アルミニウム化合物またはメタロセン錯体/ボレート化合物を触媒として用いて二量化してビニリデンオレフィン類を得た後に該ビニリデンオレフィン類を酸化することで、前記一般式(I)で表される2−アルキルアルカン−1,2−エポキサイド類を製造し、次いで、反応容器に、前記一般式(I)で表される2−アルキルアルカン−1,2−エポキサイド類と、エーテル類、炭化水素類及びアルコール類からなる群から選ばれる少なくとも一種と、水和触媒とを添加して4〜100時間かけて水和反応を行い、反応終了後、前記水和触媒を中和又はろ過により除去し、前記のエーテル類、炭化水素類及びアルコール類を留去した後、真空蒸留する前記一般式(II)で表される2−アルキルアルカン−1,2−ジオール類の製造方法である。
前記一般式(I)、(II)において、nは4〜30であり、好ましくは4〜18である。
まず、前記一般式(I)の2−アルキルアルカン−1,2−エポキサイド類の前駆体であるビニリデンオレフィン類(以下、二量体ということもある。)は、例えば、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセンなどの1−オレフィン類の二量化によって得られる。その二量化反応には触媒として、メタロセン錯体/有機アルミニウム化合物、メタロセン錯体/ボレート化合物が使用される。
【0008】
上記の主触媒のメタロセン錯体として、ジルコノセンジクロライド、ビス(ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド、ビス(インデニル)ジルコニウムジクロライド、ビス(テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロライド等の炭素共役五員環構造を有する周期律表第4族金属錯体を挙げることができ、またそれらのジルコニウムをチタニウム、ハフニウムに置換したもの、クロライドをアルキル、1,3−ジケトン、β−ケトエステル、トリフルオロメタンスルホネートに置換したものも挙げることができる。
【0009】
助触媒の有機アルミニウム化合物として、メチルアルモキサン、イソブチルアルモキサン、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリオクチルアルミニウムなどを挙げることができる。また、助触媒のボレート化合物として、テトラフェニル硼酸トリエチルアンモニウム、テトラフェニル硼酸トリ(n−ブチル)アンモニウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸トリ(n−ブチル)アンモニウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸トリフェニルアンモニウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸アニリニウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸メチルアニリニウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸ジメチルアニリニウム、テトラキス(ペンタフルオロ)硼酸ピリジニウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)硼酸トリメチルスルホニウム、トリス(ペンタフルオロフェニル)(p−トリフルオロメチルテトラフルオロフェニル)硼酸ジメチルアニリニウム、トリス(ペンタフルオロフェニル)(p−トリフルオロメチルテトラフルオロフェニル)硼酸トリエチルアンモニウム、トリス(ペンタフルオロフェニル)(p−トリフルオロメチルテトラフルオロフェニル)硼酸ピリジニウム、トリス(ペンタフルオロフェニル)(p−トリフルオロメチルテトラフルオロフェニル)硼酸トリフェニルホスホニウム、トリス(ペンタフルオロフェニル)(2,3,5,6−テトラフルオロピリジニル)硼酸ジメチルアニリニウム、トリス(ペンタフルオロフェニル)(2,3,5,6−テトラフルオロピリジニル)硼酸トリエチルアンモニウム、トリス(ペンタフルオロフェニル)(2,3,5,6−テトラフルオロピリジニル)硼酸ピリジニウム、トリス(ペンタフルオロフェニル)(2,3,5,6−テトラフルオロピリジニル)硼酸トリフェニルホスホニウム、テトラフェニル硼酸フェロセニウム、テトラフェニル硼酸銀、テトラフェニル硼酸トリエチルなどを挙げることができる。
【0010】
二量化反応は、通常、常圧で、原料1−オレフィンに対し、上記組成の触媒液を添加し、80℃以下の温度で10〜60時間攪拌することによって行うことができる。反応後、塩化水素水で失活させ、生成物を真空蒸留すると、二量体が高純度、好収率で得られる。
【0011】
次いで、前記一般式(II)で表される2−アルキルアルカン−1,2−ジオール類の原料である2−アルキルアルカン−1,2−エポキサイド類の製造方法について説明する。一般的には、前記の二量体を過酸化水素で酸化して製造する。すなわち、過酸化水素含量が20〜80質量%の過酸化水素水溶液を使用し、過酸化水素/二量体(モル比)1以上の仕込み比で反応を行う。例えば、二量体をトルエン、ヘプタンなど溶媒に溶解させ、これに20〜80質量%過酸化水素水と少量の硫酸、ギ酸を混合してから、温度50〜100℃で5〜48時間攪拌を行う。生成物を水に注ぎ、有機相を水洗してから、再び、前記の過酸化水素水と少量の硫酸、ギ酸を有機相に配合し、温度50〜100℃で5〜48時間攪拌を続ける。有機相は水洗を行い、乾燥操作を経てから、溶媒を減圧留去し、濃縮液体(2−アルキルアルカン−1,2−エポキサイド類)を得る。その他にも、酸化剤として、有機過酸化物、酸素等が使用される方法も採用できる(特許第3040888号公報、特開平5−320150号公報、特開平5−255292号公報、特開平6−172335、特開2002−220382号公報参照)。
【0012】
最後に、2−アルキルアルカン−1,2−エポキサイド類(以下、エポキサイド類ともいう。)を水和反応させて2−アルキルアルカン−1,2−ジオール類(以下、ジオール類ともいう。)を製造する方法について説明する。
水和反応において、触媒は必ずしも必要はないが、水和触媒を添加することで水和の反応速度が増大する。アルカリよりも酸の共存下で、著しく反応が促進される。水和触媒として、無機酸及び/又は酸型イオン交換樹脂が使用される。無機酸を触媒として使用する場合、これを水で希釈して用いる。水は、反応試薬であり、かつ、酸触媒の酸性質を調節する役目を果たす。このような均一な酸を用いた時は、アルカリによる中和処理の操作が必要となる。該無機酸として、硫酸、塩酸、燐酸、硝酸、過塩素酸などが挙げられる。中でも、エポキシ類に対して付加しジオール類エステルを生成しない点から、硫酸が好ましい。なお、これらの無機酸を用いる場合は、多量の水で希釈して用いるのが好ましい。
【0013】
水和触媒として、酸型イオン交換樹脂を使用する場合、これに水を吸着させて水和反応を行う。イオン交換樹脂には、スルホン酸基またはカルボン酸基を含有するイオン交換樹脂が用いられる。水和反応終了後、イオン交換樹脂はろ過操作により容易に触媒を除去できるので、精製工程を簡略にすることができる。
【0014】
エポキサイド類の水による水和反応の際に、エポキサイド同士で開環重合を起し、高沸点化合物の生成等の副反応を起し易い。副反応を少なく抑える為に、相溶化剤を加える。相溶化剤はエポキサイド類と反応し難いものが好ましい。
このような性質を有する相溶化剤として、アルコール類、エーテル類、スルホキサイド類、エステル類、アミド類、炭化水素類が選ばれる。アルコール類には、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノールなどが、エーテル類には、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテルなどが、スルホキサイド類には、ジメチルスルホキサイドなどが、エステル類には、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどが、アミドには、N−メチルピロリドンなどが、炭化水素類には、ヘキサン、ヘプタン、ノナン、デカン、ベンゼン、トルエンなどが挙げられる。これらの内、エーテル類、炭化水素類又はアルコール類が好ましい。また、相溶化剤は、その沸点が常圧換算で、20〜200℃の範囲のものがさらに好ましい。20℃未満であると、反応熱により反応系が突沸を起こす可能性があり、200℃を超えると、生成エポキサイド類から相溶化剤の除去が難しい場合があり好ましくない。上記相溶化剤は一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。また、その使用量については、好ましくはエポキサイド類1質量部に対して1〜1,000質量部、より好ましくは10〜100質量部である。相溶化剤の量が1質量部未満であると、効果が充分でない場合があり、1,000質量部を超えると、水和反応が遅くなるだけでなく相溶化剤の回収に費用がかかる恐れがあり経済的でない。
【0015】
反応条件について述べると、水和触媒に無機酸を使用する場合、例えば、エポキサイド類1質量部に対して通常0.001〜0.1質量部の濃硫酸を水で希釈して0.01〜5質量%の濃度とするのがよい。相溶化剤は、前記の量を使用する。反応圧力は通常、常圧、反応温度は通常10〜120℃、好ましくは20〜80℃、反応時間は通常4〜100時間、好ましくは8〜48時間である。反応終了後、アルカリ水溶液で酸を中和し、相溶化剤を減圧で留去する。その残液について適当な抽出溶媒を使用して抽出処理を行った後、抽出液から抽出溶媒を減圧で留去した後、真空蒸留して目的物であるジオール類を得ることができる。
【0016】
水和触媒に酸型イオン交換樹脂を使用する場合、酸型イオン交換樹脂はエポキサイド類100質量部対して通常0.01〜10質量部使用し、使用する際、水をエポキサイド類の10〜1,000倍モル吸着させる。相溶化剤は前記の量を使用する。反応圧力は通常、常圧、反応温度は通常10〜100℃、好ましくは20〜80℃、反応時間は通常4〜100時間、好ましくは4〜24時間である。反応終了後、酸型イオン交換樹脂をろ別し、ろ液から相溶化剤を減圧で留去した後、真空蒸留して目的物であるジオール類を得ることができる。このように、水和触媒として酸型イオン交換樹脂を使用すると、無機酸と比較して、反応後の中和処理及び抽出処理を省くことができる。
【実施例】
【0017】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
【0018】
〔参考例1〕前駆体の製造(メタロセン錯体を用いた1−デセンの二量化)
窒素置換した5Lの三つ口フラスコに、1−デセン(3.0kg)、ジルコノセンジクロライド(メタロセン錯体:0.9g,3ミリモル)およびメチルアルモキサン(アルベマール社製、8ミリモル[Al換算])を順次添加し、室温(20℃)で攪拌を行った。反応液は黄色から赤褐色に変化した。反応48時間後、メタノールで反応を停止させ、続いて塩酸水溶液を反応液に添加し、有機相を洗浄した。次に有機相を真空蒸留し、沸点120〜125℃/27Paの留分(デセン二量体)2.5kgを得た。この留分をガスクロマトグラフィーで分析したところ、二量体の濃度は99質量%であり、二量体中のビニリデンオレフィン比率は97%であった。
【0019】
〔参考例2〕出発物質の製造(2−オクチルドデカン−1,2−エポキサイドの合成)
内容積2Lの三つ口フラスコに、参考例1で調製したデセン二量体300gとトルエン500mLを加えた。温度70℃に保った混合物に、30質量%濃度の過酸化水素150g、濃硫酸0.5gおよびギ酸20gを添加した。同温度で1.5時間攪拌を行った後、反応物を水500mLに注ぎ、更に有機相を水洗した。有機相は再びフラスコに移し、30質量%濃度の過酸化水素150g、濃硫酸0.5gおよびギ酸20gを添加した。そして、温度70℃で1.5時間攪拌を続けた後、分液して有機相を取出し、水洗・乾燥処理を施した。そして、溶媒のトルエンを減圧留去し、濃縮液体302gを得た。この濃縮物をガスクロマトグラフィーで分析したところ、2−オクチルドデカン−1,2−エポサイドの含有率は94質量%であった。
【0020】
〔実施例1〕2−オクチルドデカン−1,2−ジオールの合成
内容積1Lの三つ口フラスコに、参考例2で調製した2−オクチルドデカン−1,2−エポキサイド)100g(0.34モル)とトルエン400mLを添加し、更に水10gを含有させたスルホン酸型イオン交換樹脂(AMBERLYST 15(H)WET;ICN Pharmaceuticals,Inc社製;輸入販売元、和光純薬工業社)20g添加した。この反応混合物を室温(20℃)にて20時間攪拌を行った。そして、反応液からイオン交換樹脂をろ別し、ろ液はエバポレータでトルエンを留去させ、濃縮液を得た。
続いて、この濃縮液を真空蒸留したところ、沸点154〜159℃/27Paのジオール留分が88g(収率84%:原料含有率で除算した値)得られた。また、ガスクロマトグラフィーを用いて、ジオール留分に含まれる2−オクチルドデカン−1,2−ジオール含有率を測定し、純度95質量%を算出した。
【0021】
〔比較例1〕2−オクチルドデカン−1,2−ジオールの合成
実施例1において、トルエン400mLを添加せず、2−オクチルドデカン−1,2−エポキサイド100g(0.34モル)に対し、水10gを含有させたスルホン酸型イオン交換樹脂20gを配合した混合系で反応を行った。その後、イオン交換樹脂をろ別した。次にろ別液を真空蒸留し沸点154〜159℃/27Paのジオール留分25g(収率24%:原料含有率で除算した値、純度94質量%)を得た。反応物の大半は蒸留残さ液として残った。
【0022】
〔実施例2〕2−オクチルドデカン−1,2−ジオールの合成
内容積1Lの三つ口フラスコに、参考例2で調製した2−オクチルドデカン−1,2−エポキシドデカン100g(0.34モル)とテトラヒドロフラン400mLを添加し、更に1質量%硫酸水溶液50mL添加した。この反応混合物を室温(20℃)にて20時間攪拌を行った。その後、反応液は10質量%炭酸カリウム水溶液で中和処理してから、エバポレータでテトラヒドロフランを留去させn−ヘキサンで抽出を行った。そして抽出液からn−ヘキサンを留去し濃縮液を得た。
続いて、この濃縮液を真空蒸留したところ、沸点154〜159℃/27Paのジオール留分が83g(収率78%:原料含有率で除算した値)得られた。また、2−オクチルドデカン−1,2−ジオールの純度は93質量%であった。
【0023】
〔比較例2〕2−オクチルドデカン−1,2−ジオールの合成
実施例2において、テトラヒドロフラン400mLを添加せず、2−オクチルドデカン−1,2−エポキサイド100g[0.34モル]に対し、1質量%硫酸水溶液50mLを配合した混合系で反応を行った。そして静置し反応液を分液した。次に水洗した有機相を乾燥後、真空蒸留し沸点154〜159℃/27Paのジオール留分28g(収率27%:原料含有率で除算した値、純度93質量%)を得た。反応物の大半は蒸留残さ液として残った。
【0024】
〔実施例3〕2−デシルテトラデカン−1,2−ジオールの合成
実施例1において、2−オクチルドデカン−1,2−エポキサイド100g(0.34モル:純度94質量%)を用いるところ、参考例1および2に準じて調製した2−デシルテトラデカン−1,2−エポキサイド100g(0.27モル:純度92質量%)に代えた以外は、実施例1と同様に操作し、濃縮液を得た。続いて、この濃縮液を真空蒸留したところ、沸点181〜189℃/12Paのジオール留分84g(収率83%:原料含有率で除算した値、純度92質量%)を得た。
以上、実施例、比較例の結果を第1表に纏めた。
【0025】
【表1】

【0026】
〔比較例3〕2−オクチルドデカン−1,2−ジオールの合成
内容積500mLの三つ口フラスコに、参考例1で調製したデセン二量体(純度97質量%)を70g(0.25モル)とギ酸300mLを添加した。そして得られた混合物を室温で攪拌しながら、30質量%過酸化水素水35g(0.31モル)を加え、40℃に保ち、12時間攪拌を行った後、これに更に30質量%過酸化水素水7g(0.06モル)を加え、再び、12時間攪拌を継続した。反応後、蟻酸をロータリエバポレータにて減圧留去した。次に、残留分にNaOHを溶解させたエタノール溶液を加えて1時間還流処理させてから、エタノールを除去した。そして残液を中和し、乾燥処理を経た後、有機相を真空蒸留した。沸点154〜159℃/27Paのジオール留分57g(収率72%:原料含有率で除算した値、純度質量87%)を得た。
このように、直接ジオールを得る方法は反応操作が煩雑な上に得られたジオールの純度はよくなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1−オレフィン類をメタロセン錯体/有機アルミニウム化合物またはメタロセン錯体/ボレート化合物を触媒として用いて二量化してビニリデンオレフィン類を得た後に該ビニリデンオレフィン類を酸化することで、下記一般式(I)
【化1】

(式中、nは4〜30の整数を示す。)
で表される2−アルキルアルカン−1,2−エポキサイド類を製造し、
次いで、反応容器に、前記一般式(I)で表される2−アルキルアルカン−1,2−エポキサイド類と、エーテル類、炭化水素類及びアルコール類からなる群から選ばれる少なくとも一種と、水和触媒とを添加して4〜100時間かけて水和反応を行い、
反応終了後、前記水和触媒を中和又はろ過により除去し、前記のエーテル類、炭化水素類及びアルコール類を留去した後、真空蒸留することを特徴とする下記一般式(II)
【化2】

(式中、nは前記に同じである。)
で表される2−アルキルアルカン−1,2−ジオール類の製造方法。
【請求項2】
前記水和反応が、反応温度10〜100℃で4〜24時間の条件で行われる、請求項1に記載の2−アルキルアルカン−1,2−ジオール類の製造方法。
【請求項3】
前記のエーテル類、炭化水素類及びアルコール類の沸点が常圧換算で、20〜200℃の範囲である、請求項1又は2に記載の2−アルキルアルカン−1,2−ジオール類の製造方法。
【請求項4】
前記の水和反応における2−アルキルアルカン−1,2−エポキサイド類と前記のエーテル類、炭化水素類及びアルコール類からなる群から選ばれる少なくとも一種との仕込み質量比が1:1〜1:1,000の範囲である、請求項1〜3のいずれかに記載の2−アルキルアルカン−1,2−ジオール類の製造方法。
【請求項5】
前記のエーテル類、炭化水素類及びアルコール類からなる群から選ばれる少なくとも一種がトルエンである、請求項1〜4のいずれかに記載の2−アルキルアルカン−1,2−ジオール類の製造方法。
【請求項6】
前記水和触媒が、無機酸及び/又は酸型イオン交換樹脂である、請求項1〜5のいずれかに記載の2−アルキルアルカン−1,2−ジオール類の製造方法。
【請求項7】
前記酸型イオン交換樹脂の酸性発現官能基が、スルホン酸(SO3H)基又はカルボン酸(COOH)基である、請求項6に記載の2−アルキルアルカン−1,2−ジオール類の製造方法。
【請求項8】
得られた2−アルキルアルカン−1,2−ジオール類の純度が92〜95質量%である、請求項1〜7のいずれかに記載の2−アルキルアルカン−1,2−ジオール類の製造方法。
【請求項9】
2−アルキルアルカン−1,2−ジオール類の収率が78〜84%である、請求項1〜8のいずれかに記載の2−アルキルアルカン−1,2−ジオール類の製造方法。

【公開番号】特開2010−106039(P2010−106039A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−4346(P2010−4346)
【出願日】平成22年1月12日(2010.1.12)
【分割の表示】特願2003−129257(P2003−129257)の分割
【原出願日】平成15年5月7日(2003.5.7)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【Fターム(参考)】