説明

2−シアノ−10−(2−メチル−3−(メチルアミノ)−プロピル)フェノチアジンまたはその製薬上受容できる塩の医薬としての使用

本発明は2−シアノ−10−(2−メチル−3−(メチルアミノ)プロピル)フェノチアジンまたは本化合物の製薬上受容できる塩を、睡眠障害、不安障害、気分障害、混合型不安−うつ障害、急性および慢性の精神病状態、薬物中毒および禁断症状、抗精神病薬により誘導される錐体路外事象、または、急性もしくは慢性精神病状態における症候性局面の、単独治療用もしくは他の抗精神病薬と組み合わせた、治療を目的とした医薬品を製造するために使用することに関している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は睡眠障害の治療用医薬品を製造するための、2−シアノ−10−(2−メチル−3−(メチルアミノ)−プロピル)フェノチアジンの使用についてのものである。
【0002】
本発明は、2−シアノ−10−(2−メチル−3−(メチルアミノ)プロピル)フェノチアジンまたは本化合物の製薬上受容できる塩を、睡眠障害、不安障害(全般性不安、パニック障害、広場恐怖症を伴うまたは伴わない外傷後ストレス症状、全身状態による不安障害、不安気分を伴う適応障害、急性ストレス症状、非特異的不安障害、軽い不安、物質誘導性不安障害、等)、気分障害(主要鬱エピソード、躁エピソード、混合型エピソード、双極性障害、非特異的気分障害、非特異的うつ障害)、混合型不安−うつ障害、急性および慢性の精神病状態(統合失調症、統合失調症型障害、統合失調情動障害、妄想障害、軽い精神障害、物質誘導性精神障害、非特異的精神障害、全身性医学的症状からくる精神障害)、行動障害(興奮、攻撃性、等)、薬物依存および禁断症状(ニコチン、アルコール、ベンゾジアゼピン、コカイン、カンナビス、幻覚発現物質、アンフェタミン)、抗精神病薬により誘導される錐体路外事象(予防および/または治療処置)、または、急性もしくは慢性精神病状態における症候性局面の、単独治療用もしくは他の抗精神病薬と組み合わせて、治療を目的とした医薬品を製造するために、使用することに関する。
【背景技術】
【0003】
従来技術である、1959年、GB805886から、10−フェノチアジンから誘導された生成物が、自律神経系の阻害剤として使用できることが知られていた。2−シアノ−10−(2−メチル−3−(メチルアミノ)プロピル)フェノチアジン(I)の製造方法は、GB805886に記載されている。
【化1】

【0004】
G. D. Mellinger(Arch. Gen. Psychiatry, 1985, 42, 225-232)の研究によれば、全人口の約30〜35%が、睡眠障害に罹患している。
この疾患は、今日では、主に、催眠性ベンゾジアゼピンもしくは関連するベンゾジアゼピン、H1抗ヒスタミン剤、または、鎮静性神経抑制剤を用いて治療されている。ヒスタミンH3型の受容体または5−HT2a型のセロトニン受容体に作用する分子が開発中である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
より特定すれば、本発明は、睡眠障害の治療用医薬品を製造するための、2−シアノ−10−(2−メチル−3−(メチルアミノ)−プロピル)フェノチアジンまたは本化合物の製薬上受容できる塩の使用に関している。
【0006】
2−シアノ−10−(2−メチル−3−(メチルアミノ)−プロピル)フェノチアジン(I)は、5−HT2a/D2に関して非常に良好な親和性の比を有し、および、ムスカリン性M1受容体に対して他のムスカリン性M2およびM3受容体に比べて、優れた選択性を有するという、受容体に関する有利な結合特性を示すことが見出された。これらの結果により、2−シアノ−10−(2−メチル−3−(メチルアミノ)−プロピル)フェノチアジンが、特に、より少ない錐体路外効果およびより少ない抗コリン性効果を伴った、非常に優れた許容特性を有することを確認することができた。このことは、Can. J. Psychiatry, 2002, 47 (1), 27-38によれば、抗精神病薬により治療中の錐体路外事象の発現リスクが、5−HT2a受容体への結合度に対して、および、5−HT2a/D2親和性の比に対して、反比例していることによる。さらに、2−シアノ−10−(2−メチル−3−(メチルアミノ)−プロピル)フェノチアジンは、不安障害におけるその役割が最近良く立証されている5−HT2c受容体に高い親和性を示すものである
【0007】
ヒト由来の中枢性神経伝達物質の様々な膜受容体に対する結合性の試験結果を表1に示す。
【表1】

これらの優れた結果により、副作用が現存の製品と比較すると減少するであろうと述べることができる。
【0008】
生成物の鎮静作用は、マウスを用いた行動解析試験(actimetry test)により測定した。行動解析器(actinometer)は、それぞれに動物を入れている6個の透明ケージから構成された機器である。光電子セルによりケージの中での動作を検出できる(ビームを遮断することにより)。自発的な行動活性を10分間記録する。結果は、平均値として、および、対照群バッチに対する活動性のパーセントとして表示される。結果を表2に示した。
【表2】

【0009】
製薬上受容できる塩として、特に挙げられるのは、例えば、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩もしくはリン酸塩である無機酸との付加塩、または、例えば、酢酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩、シュウ酸塩、安息香酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、メタンスルホン酸塩、イセチオン酸塩、テオフィリン酢酸塩、サリチル酸塩、フェノールフタリネート、メチレンビス(β−ヒドロキシナフトエ酸塩)である有機酸との付加塩、または、それらの誘導体の置換による誘導体である。
【0010】
この医薬品は、2−シアノ−10−(2−メチル−3−(メチルアミノ)プロピル)フェノチアジン(I)、または、製薬上受容できる酸との本化合物の製薬上受容できる塩を、純粋な形態で、または、不活性または生理的に活性であっていい、他の製薬上適合できる生成物と組み合わせた組成物の形態で構成される。本発明の医薬品は、経口的または非経口的に用いることができる。
【0011】
本発明は、2−シアノ−10−(2−メチル−3−(メチルアミノ)−プロピル)フェノチアジン(I)または本化合物の製薬上受容できる塩の、医薬組成物を製造するための使用に関する。
【0012】
錠剤、ピル剤、粉剤(カシェット、ゼラチンカプセル)、または顆粒剤を、経口投与用の固形組成物として使用できる。これらの組成物において、本発明の活性成分と、1またはそれ以上の不活性希釈剤、例えばデンプン、セルロース、蔗糖、乳糖またはシリカとを、アルゴン気流下で混合する。これらの組成物は、また、希釈剤以外の物質、例えば、1またはそれ以上の、ステアリン酸マグネシウムもしくはタルクのような滑沢剤、着色剤、被覆剤(ドラギー(dragees))または光滑剤を含有することもできる。
【0013】
水、エタノール、グリセロール、植物油または液体パラフィンのような不活性希釈剤を含有する、製薬上受容できる溶液、懸濁液、乳濁液、およびシロップやエリキシールは、経口投与用の液体組成物として用いることができる。それらの組成物は、希釈剤以外の物質、例えば、湿潤剤、甘味剤、増量剤、矯味矯臭剤または安定剤を含有することができる。
【0014】
非経口投与用の無菌組成物は、好ましくは、懸濁液、乳濁液、または、水性もしくは非水性溶液である。水、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油、特にオリーブ油、注射用有機エステル、例えば、オレイン酸エチル、または他の適切な有機溶媒を、溶媒または媒体(vehicle)として使用できる。これらの組成物は、また、補助剤、
特に、湿潤剤、等張化剤、乳化剤、分散剤および安定剤を含有することができる。無菌化は様々な方法、例えば、無菌的濾過により、組成物中に殺菌剤を組み入れることにより、放射線照射により、または、加熱により行うことができる。これらは、使用時に、無菌水または他の注射用無菌溶媒に溶解できる、無菌の固形組成物の形態でも製造することができる。
【0015】
投与量は、所望の効果、治療の期間、および用いる投与経路に依存し;一般に、成人では、活性物質を10〜300mgの範囲で含有する投与単位を用いて、経口で、一日当たり、10〜300mgの投与量である。
【0016】
一般に、医師は、年齢、体重、および、治療する患者に特異的な他の全ての因子によって、適切な投与量を決定することができる。
【0017】
以下の実施例は、本発明の医薬品を例示する:
【0018】
実施例A
活性生成物を用量で25mg含有する錠剤は、通常の技術で製造される。それらの錠剤は以下の組成を有する:
生成物 25mg
乳糖 60mg
コムギデンプン 45mg
水和性シリカ 4.5mg
アルギン酸 2.25mg
タルク 0.75mg
ステアリン酸マグネシウム 0.90mg
【0019】
実施例B
活性生成物を1g含有する注射用溶液が製造される。この溶液は、以下の組成を有する:
生成物 1g
アスコルビン酸 0.1g
モノチオグリセロール 0.3g
ポリエチレングリコール400 0.02g
注射用水で100mLとする。
【0020】
本発明は、また、2−シアノ−10−(2−メチル−3−(メチルアミノ)−プロピル)フェノチアジン(I)およびその製薬上受容できる塩と、1またはそれ以上の適合し製薬上受容できる希釈剤および/または補助剤とを混合させることからなる、睡眠障害の治療に用いる医薬品の製造方法にも関している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
睡眠障害の治療用医薬品を製造するための2−シアノ−10−(2−メチル−3−(メチルアミノ)プロピル)フェノチアジン(I)およびその製薬上受容できる塩の使用。
【請求項2】
不安障害の治療用医薬品を製造するための2−シアノ−10−(2−メチル−3−(メチルアミノ)プロピル)フェノチアジン(I)およびその製薬上受容できる塩の使用。
【請求項3】
気分障害の治療用医薬品を製造するための2−シアノ−10−(2−メチル−3−(メチルアミノ)プロピル)フェノチアジン(I)およびその製薬上受容できる塩の使用。
【請求項4】
混合型不安−うつ障害の治療用医薬品を製造するための2−シアノ−10−(2−メチル−3−(メチルアミノ)プロピル)フェノチアジン(I)およびその製薬上受容できる塩の使用。
【請求項5】
急性および慢性精神病状態の治療用医薬品を製造するための2−シアノ−10−(2−メチル−3−(メチルアミノ)プロピル)フェノチアジン(I)およびその製薬上受容できる塩の使用。
【請求項6】
薬物中毒および禁断症状の治療用医薬品を製造するための2−シアノ−10−(2−メチル−3−(メチルアミノ)プロピル)フェノチアジン(I)およびその製薬上受容できる塩の使用。
【請求項7】
抗精神病薬により誘導される錐体路外事象の治療用医薬品を製造するための2−シアノ−10−(2−メチル−3−(メチルアミノ)プロピル)フェノチアジン(I)およびその製薬上受容できる塩の使用。
【請求項8】
単独治療用としての、または他の抗精神病薬と組み合わせた急性もしくは慢性精神病状態における症候性局面の治療用医薬品を製造するための2−シアノ−10−(2−メチル−3−(メチルアミノ)プロピル)フェノチアジン(I)およびその製薬上受容できる塩の使用。
【請求項9】
2−シアノ−10−(2−メチル−3−(メチルアミノ)プロピル)フェノチアジン(I)またはその製薬上受容できる塩を10〜300mg含有する医薬品を製造するための、請求項1〜8のいずれかの使用。
【請求項10】
2−シアノ−10−(2−メチル−3−(メチルアミノ)プロピル)フェノチアジン(I)または該化合物の製薬上受容できる塩と、1またはそれ以上の適合し製薬上受容できる希釈剤および/または補助剤とを混合することを特徴とする、睡眠障害の治療に用いる医薬品の製造方法。

【公表番号】特表2007−525419(P2007−525419A)
【公表日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−503382(P2006−503382)
【出願日】平成16年2月6日(2004.2.6)
【国際出願番号】PCT/US2004/003480
【国際公開番号】WO2004/071512
【国際公開日】平成16年8月26日(2004.8.26)
【出願人】(500137976)アベンティス・ファーマスーティカルズ・インコーポレイテツド (76)
【Fターム(参考)】