説明

2−シクロペンタデセノンの製造方法

【課題】 2−シクロペンタデセノンを短い反応工程数で、しかも、温和な製造条件で、収率良く製造する技術を提供すること。また、上記方法で得た2−シクロペンタデセノンからムスコンを製造する方法を提供すること。
【解決手段】 下記式1で表される2-置換シクロペンタデカノンを酸の存在下で脱離反応させる。用いる有機酸としてはフッ素原子を有してもよい炭素数が2〜4の有機酸、フッ素原子を有してもよい炭素数が1〜3のアルカンスルホン酸、アリールスルホン酸が好ましい。用いる無機酸としては硫酸、塩酸、硝酸などの鉱酸が好ましい。
式1


(式中、Rは−SOを示し、Rはメチル基、トリル基を示す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2−シクロペンタデカノンの製造方法に関する。さらに詳細には、本発明は、下記式1で表される2-置換シクロペンタデカノンを酸の存在下で反応させることを特徴とする2−シクロペンタデセノンの製造方法、及びその方法で得た2−シクロペンタデセノンからムスコンを製造する方法に関する。
式1

(式中、Rは−SOを示し、Rはメチル基、トリル基を示す。)
【背景技術】
【0002】
麝香様香気成分は古くから使用されており、その特徴ある香気への憧れからであろうか、多用されているところである。近年、麝香様香気成分として大量に消費されてきたニトロムスクなどの代替品について、使用規制を含めた安全面・環境面での厳しい評価が下されて来ている。この結果、消費者の本物志向の拡大ともあいまって、生物分解性の高いとされる構造を持つ物質、即ち大環状ケトン等への利用が急速に図られてきている。特に、天然に存在し、かつムスク系香気物質の代表格であるムスコンの安価な供給が望まれている。
【0003】
これまでにもムスコンを工業的に製造しようとする多くの試みがなされてきた。特に2−シクロペンタデセノンを中間体とする、ムスコンの製法は古くから検討されており、2−シクロペンタデセノンの簡便で安価な合成法を開発することは、ムスコンの工業的な製造上、極めて重要である。
2−シクロペンタデセノンの製法としては、例えば、直鎖アルカン二酸のジエステル化物をアシロイン縮合反応により分子内環化する製法が知られている(特許文献1、2)。これらの方法は、反応工程数が多く、煩雑であるという欠点がある。
【0004】
その点を解決する方法として、液相で酸触媒としてリン酸類または固体酸類を用い2−ヒドロキシシクロアルカノンを脱水させてシクロアルケノンを製造する技術が報告されている(特許文献3)。この方法は反応工程数が短く、その点で有利であるが、生産効率がそれほど良いということができないのであり、更なる改善策が求められている。
【0005】
【特許文献1】特開昭61−56146号公報
【特許文献2】特開平5−155802号公報
【特許文献3】特開2002−220361号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記のような実情において、本発明の課題は、2−シクロペンタデセノンを短い反応工程数で製造する技術を提供することにある。また、温和な製造条件で、収率良く2−シクロペンタデセノンを製造する技術を提供することにある。また、本発明の課題は上記方法で得た2−シクロペンタデセノンを基にムスコンを製造する方法を提供することでもある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記目的を達成するため鋭意研究する途中、2−メタンスルホニルオキシシクロペンタデカノンに着目し、いろいろと工夫するなか、意外にも、その2−メタンスルホニルオキシシクロペンタデカノンを酸の存在下脱離反応させると、温和な反応条件でも収率良く2−シクロペンタデセノンを得ることが出来、しかも極めて選択的に得ることが出来るという知見を得た。この知見を基に更に研究を重ね、ついに本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下の各発明を包含する。
【0008】
請求項1の発明は、下記式1で表される2-置換シクロペンタデカノンを酸の存在下で脱離反応させることを特徴とする2−シクロペンタデセノンの製造方法。
式1

(式中、Rは−SOを示し、Rはメチル基、トリル基を示す。)
請求項2の発明は、請求項1の発明において、上記式1で表される2-置換シクロペンタデカノンを、シクロペンタデカノンからワンポットで合成することを特徴とし、請求項3の発明は、同じく、上記式1で表される2-置換シクロペンタデカノンを2−ヒドロキシシクロペンタデカノンからワンポットで合成することを特徴とする。なお、本発明は、シクロペンタデカノンからワンポットで上記式1で表される2-置換シクロペンタデカノンを製造する発明を包含する。
【0009】
請求項4の発明は、請求項3の発明において、2-ヒドロキシシクロペンタデカノンを、ペンタデカンニ酸のジアルキルエステルを縮合させて得ることを特徴とする発明である。
請求項5の発明は、上記請求項1〜4記載のいずれかの方法で得た2−シクロペンタデセノンをメチル化することを特徴とするムスコンの製造方法である。なお、本発明は2−シクロペンタデセノンをアルキル化する発明も含む。ここでアルキルは、炭素数が1〜4までのアルキル基を意味する。
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の2-置換シクロペンタデカノンは上記式1で表される。
式中、Rは−SOを示し、Rはメチル基、トリル基を示す。
Rはメタンスルホニル基あるいはトルエンスルホニル基でもある。
【0011】
本発明では、上記2-置換シクロペンタデカノンからワンポットで2−シクロペンタデセノンを得ることに特徴がある。すなわち、酸を含む反応溶媒中に上記2-置換シクロペンタデカノンを加え、酸の共存下反応させ、上記2-置換シクロペンタデカノンの置換基を脱離させて2−シクロペンタデセノンを得ることができる。ここで、ワンポットで化学物質を得るとは、出発原料を含めて反応に必要な化学物質の種類及び量を反応容器内に加え、反応させ、目指す化学物質を調製できることを意味する。
【0012】
共存させる酸は本発明の課題を達成できる酸であれば特に制限されないのであるが、有機酸としてはフッ素原子を有してもよい炭素数が2〜4の有機酸、フッ素原子を有してもよい炭素数が1〜3のアルカンスルホン酸、アリールスルホン酸が好ましい。その中では、フッ素原子を有してもよい酢酸、フッ素原子を有してもよい炭素数が1〜2のアルカンスルホン酸、トルエンスルホン酸がより好ましい。無機酸としては硫酸、塩酸、リン酸、硝酸などの鉱酸が好ましい。ルイス酸としてはスカンジウムトリフルオロメタンスルホナート(Sc(OTf))、塩化アルミニウム、三フッ化ホウ素が好ましい。より具体的に説明すると、好ましい酸としてトリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、硫酸、塩酸、酢酸、Sc(OTf)などが収率、作業性等の総合的な観点から好ましい。特に、トリフルオロメタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、硫酸、Sc(OTf)が好ましい。なお、複数の酸を使用することもできる。
共存させる酸の量も本発明の目的を達成できる程度の量であれば特に制限されないのであり、用いる2-置換シクロペンタデカノンの種類や量、用いる酸の種類により変動するので一概に規定できないが、その酸の使用量の一例として、2-置換シクロペンタデカノンに対して、0.1当量〜5当量とすると好ましい効果が得られる。
【0013】
本発明では、用いる溶媒は本発明の課題を達成できる溶媒であれば特に制限されないのであるが、具体的にはペンタン、ヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、ニトロベンゼン、ニトロメタン、アセトン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジシクロペンチルエーテル、シクロペンチルエチルエーテル(CPME)、ジクロロメタン、クロロホルム、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド(DMF)を例示することができる。これらの中では、特に、ペンタン、ヘキサン、ジクロロメタン、DMF、酢酸が好ましい。なお、複数の溶媒を利用することもできる。
【0014】
本発明では、少なくとも上記2-置換シクロペンタデカノン、酸、溶媒を容器内にて攪拌することによりワンポットで2−シクロペンタデセノンを製造するのであるが、上記2-置換シクロペンタデカノン、酸、溶媒を容器内に加える順番は特に制限されない。
攪拌するときの温度は特に制限されないが、室温から用いる溶媒の沸点よりも数度高めの温度まですることができる。
反応時間は、用いる2-置換シクロペンタデカノン、酸、溶媒の種類や量により変動するが、通常0.5〜48時間程度で十分である。
【0015】
上記反応液をそのまま常法により処理して、2−シクロペンタデセノンを収率良く得ることができる。また、上記反応液を必要に応じて常法の精製処理を施してもよい。
本発明では、上記2-置換シクロペンタデカノンからワンポットで2−シクロペンタデセノンを得ることができるので有利であるが、さらに2−シクロペンタデセノンには副生物の量が極めて微量であり、その点でも有利である。
【0016】
上記2-置換シクロペンタデカノンを得る方法はいろいろある。たとえば、シクロペンタデカノンからワンポットで合成することができる。
すなわち、シクロペンタデカノンをメタンスルホン酸あるいはトルエンスルホン酸と溶媒中にて反応させて、2-置換シクロペンタデカノンを得ることができる。
メタンスルホン酸あるいはトルエンスルホン酸の配合量はシクロペンタデカノンとほぼ当量とすることが好ましいが、例えば2.5当量以内など、多めに配合しておいてもよい。
【0017】
上記溶媒中には他の二種類の化合物を共存させておくことが必要である。その二種類の化合物は、ハロゲン化ベンゼンと有機過酸類である。前者の中ではヨードベンゼンが特に好ましい。後者としてはm−過安息香酸、過安息香酸、過酢酸が挙げられるが、m−過安息香酸が特に好ましい。
前者の配合量は0.05から0.4当量以内ならば反応が進行するが、0.07から0.2当量が望ましい。ヨードベンゼンの配合量も同様である。後者の過酸類は1〜2.5等量以内が好ましいが、多少多めに配合してもよい。
また、用いる溶媒としては、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、アセトニトリル、ベンゼン、CPMEが挙げられるが、特に、ジクロロメタンが好ましい。
反応条件は特に制限されないのであるが、一例として、反応温度は0℃から40℃までの間でよいが、10〜25℃が望ましく、反応時間を1〜10時間程度とすることが望ましい。
【0018】
上記2-置換シクロペンタデカノンを得る方法であって、上記と異なる方法に、2−ヒドロキシシクロペンタデカノンからワンポットで合成する方法がある。
すなわち、シクロペンタデカノンをハロゲン化メタンスルホニルあるいはハロゲン化トルエンスルホニルと、塩基を含む溶媒中にて反応させて、2-置換シクロペンタデカノンを得ることができる。 ハロゲン化メタンスルホニルあるいはハロゲン化トルエンスルホニルの配合量はシクロペンタデカノンとほぼ当量とすることが好ましいが、例えば1.5当量以内など、多少多めに配合しておいてもよい。
【0019】
用いる塩基及び溶媒は特に制限されないのであるが、具体的には用いる塩基として、トリエチルアミン、ピリジン、コリジン、ジメチルアミノピリジンがあり、用いる溶媒として、ジクロロメタン、クロロホルム、ヘキサン、ペンタン、ベンゼン、トリエチルアミン、ピリジン、DMF、アセトニトリル、テトラハイドロフラン、CPME、ジエチルエーテルが挙げられるが、特にジクロロメタン、トリエチルアミン、ピリジン、アセトニトリル、ベンゼンが望ましい。
反応条件は特に制限されないのであるが、一例として、反応温度を5℃から30℃、反応時間を1〜6時間程度とすることが望ましい。
【0020】
上記2-置換シクロペンタデカノンを得る方法であって、上記と異なる方法に、ペンタデカンニ酸のジアルキルエステルを環化反応させて得ることもできる。
例えば、上記ジアルキルエスエルをナトリウム存在下アシロイン環化反応をおこなえば、容易に2-置換シクロペンタデカノンを得ることができる。
この場合、塩化トリメチルシリルを加えると収率は更に向上する。
【0021】
ペンタデカンニ酸のジアルキルエステルは、ペンタデカンニ酸を公知の方法でジエステル化して製造することができる。たとえば、ペンタデカンニ酸をp−トルエンスルホン酸含有メタノール中にて水を除去しながらジエステル化してペンタデカンニ酸のジメチルエステルを製造することができる。
【0022】
かくして製造された2−シクロペンタデセノンを出発原料として公知の反応を利用してムスコンを製造することができる。本発明で製造される2−シクロペンタデセノンは本質的に純粋な(E)体であるから、とくに(E)体と(Z)体との分離精製処理をする操作が不要となり、容易に(R)−ムスコンを製造できるので有利である。例えば、銅試薬、グリニアル試薬の存在下にマイケル反応によりムスコンを製造することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明により、2−シクロペンタデセノンを短い工程で、簡単に収率良く合成することができる。つまり、2−シクロペンタデセノンをワンポットで、容易に入手できる酸を用い、温和な条件で収率良く製造することができる。しかも、製造される2−シクロペンタデセノンは本質的に純粋な(E)体であり、本発明により、(R)体のムスコンを効率よく安価に製造することができる。なお、従来法の脱離反応では分離困難な3−シクロペンタデセノンがかなりの生成比で副生するので、本発明は極めて実用的な発明である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明を実施例を用いて具体的に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではなく、また、本発明の範囲を逸脱しない範囲で変化させることは可能である。
なお、下記に記載する処方においては、特に言及しない限り、%は質量%、部は質量部を意味するものとする。
【0025】
(実施例1) 2−シクロペンタデセノンの調製
5mLバイアル瓶に2−メタンスルホニルシクロペンタデカノン160mg(0.5mmol:1eq.)をジクロロメタン1mLに溶かし、溶液(0.5M)を得た。そこにトリフルオロメタンスルホン酸0.045mL(0.5mmol:1eq.)を加え、室温で攪拌を開始した。1時間後、薄層クロマトグラフィー(TLC)上により原料が消失したことを確認後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液3mLを加え反応を停止した。反応液に酢酸エチル3mLを加え抽出処理した。この操作を2回繰り返した。集めた有機層を水3mL,飽和食塩水3mLで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥処理した後、目皿吸引ろ過後、溶媒を留去し、粗生成物を得た。シリカゲルろ過(SiO:3g、ヘキサン/酢酸エチル=70/30容量比)し、黄色液体103mg(収率92%))を得た。
NMRにより構造決定した結果、(E)−2−シクロペンタデセノンのみであった。
調製した化合物の分析データは下記のとおりであった。



【0026】
実施例2〜6 2−シクロペンタデセノンの調製
表1記載の酸を表1記載の量だけ用い、表1記載の時間反応させ、それ以外は実施例1と同様に操作し、2−シクロペンタデセノンを得た。収率は表1のとおりであった。
NMRにより構造決定した結果、(E)−2−シクロペンタデセノンのみであった。

表1

【0027】
実施例7〜9 2−シクロペンタデセノンの調製
表2記載の酸を表2記載の量だけ用い、ヘキサン溶媒を用い、表2記載の時間反応させ、それ以外は実施例1と同様に操作し、2−シクロペンタデセノンを得た。収率は表2のとおりであった。
NMRにより構造決定した結果、(E)−2−シクロペンタデセノンのみであった。
表2

【0028】
(実施例10) 2−シクロペンタデセノンの調製
5mLバイアル瓶に2−トルエンスルホニルオキシシクロペンタデカノン77mg(0.2mmol:1eq.)をジクロロメタン0.4mLに溶かし、溶液(0.5M)を得た。そこにトリフルオロメタンスルホン酸0.01mL(0.2mmol:1eq.)を加え、室温で攪拌を開始した。2時間後、TLC上により原料が消失したことを確認後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液3mLを加え反応を停止した。反応液に酢酸エチル3mLを加え抽出処理した。この操作を2回繰り返した。集めた有機層を水3mL,飽和食塩水3mLで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥処理した後、目皿吸引ろ過後、溶媒を留去し、粗生成物を得た。シリカゲルろ過(SiO:3g、ヘキサン/酢酸エチル=70/30容量比)し、黄色液体(E)−2−シクロペンタデセノン36.7mg(収率55%))を得た。
【0029】
実施例11〜12 2−シクロペンタデセノンの調製
表3記載の酸を表3記載の量だけ用い、表3記載の時間反応させ、それ以外は実施例10と同様に操作し、2−シクロペンタデセノンを得た。収率は表3のとおりであった。
NMRにより構造決定した結果、E−体のみであった。
表3

【0030】
(比較例1)
窒素ガス雰囲気下、10mLナスフラスコに2−メタンスルホニルオキシシクロペンタデカノン155.4mg(0.4880mmol:1.0eq.)を加え、o−キシレン1.0mL(0.49M)で溶解させた後、トリエチルアミン0.21mL(1.507mmol:3.1eq.)を加え、還流(144℃)温度で反応を開始した。6時間後、TLCで反応が進行したことを確認後、室温まで冷却した。5%塩酸水溶液0.5mLを加え、エーテル2mLを加え抽出処理した。この操作を3回繰り返した。集めた有機層を,飽和食塩水3mL、水3mLで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。吸引ろ過し、溶媒をエバポレーターで留去し、粗生成物146.8mgを得た。その後、粗生成物をカラムクロマトグラフィー(SiO:1.5g、ヘキサン/酢酸エチル=95/5容量比)で精製した結果、黄色液体の生成物((E)−2−シクロペンタデセノン、(E)−3−シクロペンタデセノン、(Z)−3−シクロペンタデセノンの混合物)99.4mgを得た。生成物のガスクロマトグラフィーにより、(E)−2−シクロペンタデセノン74.8mg(収率69%)と3−シクロペンタデセノンの(E)体と(Z)体との混合物19.2mg(収率18%)を得た。
【0031】
(比較例2)
窒素ガス雰囲気下、10mLナスフラスコに2−メタンスルホニルオキシシクロペンタデカノン218.34mg(0.6855mmol:1.0eq.)を加え、DMF1.40mL(0.49M)で溶解させた後、炭酸リチウム157.9mg(2.137mmol:3.1eq.)を加え、還流(150℃)温度で反応を開始した。2時間後、TLCで反応が進行したことを確認後、室温まで冷却した。5%硝酸水溶液15mLを加え、エーテル2mLを加え抽出処理した。この操作以降、比較例1と同様に操作し、粗生成物195.8mgを得た。その後、粗生成物をカラムクロマトグラフィー(SiO:6g、ヘキサン/酢酸エチル=95/5容量比)で精製した結果、黄色液体の生成物90.1mgを得た。生成物のガスクロマトグラフィー分析より、(E)−2−シクロペンタデセノン54.2mg(収率36%)と3−シクロペンタデセノンの(E)体と(Z)体との混合物31.5mg(収率21%)を得た。
【0032】
(比較例3)
窒素ガス雰囲気下、2−ブロモシクロペンタデカノン1.39g(4.58mmol:1eq.)をジメチルホルムアミド(DMF)9.2mLに溶かし、溶液(0.5M)を得た。そこに炭酸リチウム854mg(11.6mmol:2.5eq.)を加え、還流(150℃)温度で反応を開始した。2.5時間後、TLC上により原料が消失したことを確認後、室温まで冷却した。5%硝酸水溶液15mLを加え中和し、酢酸エチル3mLを加え抽出処理した。この操作を3回繰り返した。集めた有機層を水15mL,飽和食塩水15mLで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥処理した後、目皿吸引ろ過後、溶媒を留去し、粗生成物1.45gを得た。カラムクロマトグラフィー(SiO:60g、ヘキサン/酢酸エチル=98/2容量比)で単離した結果、2−シクロペンタデセノン576mg(収率56%)と3−シクロペンタデセノンの(E)体と(Z)体との混合物19.2mg(収率18%)を得た。
【0033】
(実施例13) ムスコンの調製
窒素雰囲気下50mL二口フラスコに塩化銅100mg(0.5wt/wt)を加え、エチルエーテル3.6mL(0.25M)を入れた。ヨウ化メチルマグネシウム9mL(9mmol:1eq.)を加え、0℃にて攪拌を開始した。エチルエーテル9mL(0.1M)に溶かした2−シクロペンタデセノン200mg(0.9mmol:1eq.)を滴下漏斗を用いて4時間かけて滴下した。2時間後、冷却した10%塩酸水溶液10mLを加え、エチルエーテル3mLで抽出処理した。エチルエーテル抽出処理を2回繰り返した。集めた有機層を水3mL,飽和食塩水3mLで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥処理した後、目皿吸引ろ過後、溶媒を留去し、粗生成物294mgを得た。カラムクロマトグラフィー(SiO:3g、ヘキサン/酢酸エチル=70/30容量比)処理し、無色透明のdlムスコン172.9mg(収率81%)を得た。
調製した化合物の分析データは下記のとおりであった。


NMR

【0034】
実施例14 2−メタンスルホニルオキシシクロペンタデカノンの調製
アルゴン雰囲気下、20mLナスフラスコにシクロペンタデカノン91.1mg(0.4060mmol, 1 eq)を加え、ジクロロメタン 1.0 mL,(0.40M)で溶解させた後、ヨードベンゼン 0.009 mL (16.5 mg, 0.0807mmol, 0.2 eq)とメタンスルホン酸 51.9μL( 76.9mg, 0.7997 mmol, 2.0 eq)とm-クロロ過安息香酸 (純度 73%) (201.5 mg, 0.8524 mmol, 2.1 eq)を加えて室温で撹拌を行った。4時間後、TLCで反応が進行したことを確認した。
飽和炭酸水素ナトリウム水溶液 2 mLを加えた後、ジクロロメタン2 mL で抽出処理した。この抽出操作を2回繰り返した。集めた有機相を、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液 3 mL、飽和食塩水 3 mL、水 3 mLで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。吸引ろ過し、溶媒をエバポレーターで留去し、粗生成物 0.162 gを得た。その後、粗生成物をカラムクロマトグラフィー (SiO2 : 4.8 g, ヘキサン :酢酸エチル= 95 : 5容量比)で精製した結果、無臭の白色液体の2−メタンスルホニルオキシシクロペンタデカノン78.2 mg, (収率61%)および(E)−2−シクロペンタデセノン1.7 mg (収率 2%)、2−ヒドロキシシクロペンタデカノン 2.6 mg (収率 3%)を得た。
調製した化合物の分析データは下記のとおりであった。


【0035】
実施例15 アシロイン縮合
窒素ガス雰囲気下、三口フラスコにトルエン360mLを仕込み、金属ナトリウム18.5g(0.804 ml,4.2eq.)400mmol:4.2eq.)を加え、加熱を開始した。100℃で金属ナトリウムが溶融してきたら、注意しながら攪拌(251rpm)を開始した。金属ナトリウムが分散してきたら、ペンタデカンニ酸のジメチルエステル57.62g(0.192mol)をトルエン100mLに溶解し、これのMeSiCl87.3g(0.804 ml,4.2eq)を混合したものを内温100で5時間かけて滴下した。滴下終了後、2時間熟成し、GCにて未反応物質の消失を確認した(未反応1.4%)。50℃以下に冷却し、メタノールを5mL入れ、金属ナトリウムを分解した、30分攪拌後、水150mL,p−トルエンスルホン酸11g(0,058mol,0.3eq.)を加え、2.5時間還流させる。このときの内温は約70℃であった。GCで分解を確認したら、冷却し、水100mLを加え、50〜60℃で分液した。次に飽和重曹水100mLで洗浄しついで水200mL,100mLで水洗した。無水硫酸ナトリウム20gで、脱水ろ過、ケーキ洗浄し(トルエン50mL)、減圧濃縮乾固した。得られたアシロイン体は42.52で、GC純度は91.11%であった。これより、取出し収率93.5%、取出し純収率は85.2%であった。
2−ヒドロキシシクロペンタデカノン



実施例16 2−メタンスルホニルオキシシクロペンタデカノンの調製(1mL, 0.5mL)
132mg. 0.5mmol,1eq)
10mLナスフラスコに2−ヒドロキシシクロペンタデカノン132mg、(0.5mmol,1eq、純度91%)をジクロロメタン1mL(0.5M)溶液とした。ピリジン0.08mL(1mmol11 eq)、塩化メタンスルホニル0.13mL(1mmol2 eq)を加え、攪拌を開始した。20℃で5時間反応後、TLC上でゲbb量の消失を確認し、10%塩酸水溶液(4mL)を加え、反応を停止した。
ジクロロメタン5mLで抽出処理した。この抽出操作を2回繰り返した。集めた有機相を水5mL、飽和食塩水5mLで洗浄し無水硫酸ナトリウムで乾燥した。これを、目皿吸引ろ過後、溶媒を留去、粗成生物186.7mgを得た。カラムクロマトグラフィー(SiO:4.8g、ヘキサン/酢酸エチル=95/5容量比)で単離した結果、白黄色固体2−メタンスルホニルオキシシクロペンタデカノン129mg(収率81%)を得た。





【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式1で表される2-置換シクロペンタデカノンを酸の存在下で脱離反応させることを特徴とする2−シクロペンタデセノンの製造方法。
式1

(式中、Rは−SOを示し、Rはメチル基、トリル基を示す。)
【請求項2】
請求項1記載の式1で表される2-置換シクロペンタデカノンをシクロペンタデカノンからワンポットで合成することを特徴とする請求項1記載の2−シクロペンタデセノンの製造方法。
【請求項3】
請求項1記載の式1で表される2-置換シクロペンタデカノンを2−ヒドロキシシクロペンタデカノンからワンポットで合成することを特徴とする請求項1記載の2−シクロペンタデセノンの製造方法。
【請求項4】
請求項3記載の2−ヒドロキシシクロペンタデカノンを、ペンタデカンニ酸のジアルキルエステルを縮合させて得ることを特徴とする請求項3記載の2−シクロペンタデセノンの製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4記載のいずれかの方法で得た2−シクロペンタデセノンをメチル化することを特徴とするムスコンの製造方法。

【公開番号】特開2008−100951(P2008−100951A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−285550(P2006−285550)
【出願日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【出願人】(391019991)川口薬品株式会社 (1)
【出願人】(304023318)国立大学法人静岡大学 (416)
【Fターム(参考)】