説明

2サイクルエンジン、2サイクルエンジンを製造するための砂中子、および2サイクルエンジンの作動方法

【課題】構成が簡潔で、排ガス値が小さい2サイクルエンジンを提供する。
【解決手段】2サイクルエンジン(1)はシリンダ長手軸線(24)に対し平行に延在している4つのセクター(34,35,36,37)に分割可能である。第1のセクター(34)は第1の掃気通路(11,13)の掃気窓(12,14)を有している。第1のセクターに境を接している第2のセクター(35)は排気口(8)を有している。第2のセクター(35)に境を接している第3のセクター(36)は第2の掃気通路(11,13)の掃気窓(12,14)を有している。第1のセクター(34)と第3のセクター(36)との間に配置されている第4のセクター(37)はクランクケース(4)への取り込み口(9)とを有している。第1および第2の掃気通路(11,13)は、シリンダ(2)内で、該シリンダ(2)とクランクケース(4)との間の分離面(29)に対し間隔をもって、境を接する1つの共通のセクター(35,37)で案内されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2サイクルエンジン、2サイクルエンジンを製造するための砂中子、および2サイクルエンジンの作動方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1からは、互いに対向し合う掃気通路を有する2サイクルエンジンが知られている。これらの掃気通路はクランクケース内でクランク軸の周囲に案内されている。シリンダ内では、掃気通路は互いに対向し合うシリンダ側面によって、燃焼室から出ている排気口の下方へ案内されている。両掃気通路をクランクケース内で案内するため、掃気通路を互いに分離させ且つクランクケース内部空間からも分離させる別個の挿入部材が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】欧州特許第1135585B号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、構成が簡潔で、排ガス値が小さい2サイクルエンジンを提供することである。本発明の他の課題は、2サイクルエンジンをわずかな製造公差で簡単に製造できる、2サイクルエンジンを製造するための砂中子を提供することである。さらに本発明の課題は、小さな排ガス値を達成させる2サイクルエンジンの作動方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題は、2サイクルエンジンに関しては、請求項1の構成を備えた2サイクルエンジン、請求項20の構成を備えた2サイクルエンジン、または請求項21の構成を備えた2サイクルエンジンによって解決される。
【0006】
砂中子に関しては、請求項17の構成を備えた砂中子によって解決される。
【0007】
作動方法に関しては、請求項19の構成を備えた方法によって解決される。
【0008】
本発明の提案にしたがって、掃気通路を燃焼室の周囲に特に螺旋状に案内することにより、2サイクルエンジンの小さな排ガス値を達成できることが明らかになった。両掃気通路がそのクランクケース側端部において一緒に案内されていれば、2サイクルエンジンの製造を容易にすることができる。これにより、掃気通路の一部分のために1つの共通の部分を形成することができる。特に2サイクルエンジンをダイカスト方式で製造する場合、共通の部分のための砂中子または1つの共通のスライダのみを設ければよい。
【0009】
有利には、両掃気通路は、シリンダとクランクケースとの間の分離面内で合流している。シリンダ内で掃気通路を切り離した通路として実施することができる。分離面内には、両掃気通路のための共通の開口部が設けられ、この共通の開口部において両掃気通路はクランクケースへ移行する。従って、クランクケース内には、両掃気通路のためにただ1つの通路を形成すればよい。これはクランクケースの製造を容易にさせる。しかし、両掃気通路はすでにシリンダ内で合流していてもよい。この場合には、掃気通路はシリンダ内のみに形成され、クランクケースには移行しない。両掃気通路がシリンダ内で合流していることにより、シリンダをダイカスト方式で製造する場合には、両掃気通路に共通の1つの中子を使用することができる。これによってシリンダの製造時の精度が向上する。2つの個々の砂中子を互いに位置決めする際に生じる不正確が避けられる。
【0010】
有利には、掃気通路の半径方向外側にある外壁と、掃気通路の半径方向内側にある内壁とは、掃気通路の長さの少なくとも一部分にわたって、シリンダ長手軸線に対し同心に延在している円セグメントとして形成されている。これにより掃気通路の内壁と外壁とはシリンダボアに対し同心に延在し、その結果内壁と外壁との間および内壁とシリンダボアの壁との間にコンスタントな間隔が生じる。これによりシリンダ内での材料集積を回避することができる。シリンダを全体的にコンパクトに、軽量に構成することができる。同心配置による材料集積が回避されることにより、ダイカスト方式でのシリンダの製造が容易になる。さらに、シリンダ長手軸線に同心に位置している円セグメントによって掃気通路を画成することにより、2サイクルエンジンの排ガス値を決定する掃気通路内での良好な流動特性を得ることができる。この場合、有利には、内壁と外壁とは掃気通路の長さの大部分にわたってとリンダ長手軸線に対し同心に形成される円セグメントとして延在する。有利には、内壁と外壁とは、掃気窓に境を接している部分でのみ円セグメントとは異なっている。この領域での掃気通路の延在態様は、有利には、完全な燃焼室掃気のために好ましい流入角度が生じるように選定されている。
【0011】
本発明によれば、クランクケースは、シリンダ長手軸線に対し平行に延在している分離面を有する2つの半シェルから形成されている。この場合、分離面はクランク軸の回転軸線に対し特に垂直に延在している。合目的には、掃気通路はクランクケース内において該クランクケースの分離面内に延在している。これにより、掃気通路は、製造時に、クランク軸の回転軸線に平行に引っ張り可能なスライダによって形成させることができる。この場合、掃気通路はクランクケースに一体成形された壁部分によってクランクケース内部空間から切り離されていてよい。掃気通路をクランクケース内部空間から仕切るための別個の部材は必要ない。これにより製造、組み立てが容易になる。必要する個別部品数は減少する。クランクケース内の掃気通路が、クランクケース内に形成された凹部と、シリンダに配置され、分離面を経てクランクケース内へ突出しているカラーとから形成されていても、簡潔な構成が得られる。これにより、付加的な部材を必要とせずに、クランクケース内への掃気通路の延長を簡単に達成することができる。
【0012】
有利には、シリンダは4つの掃気窓を有し、そのうち2つの掃気窓は2サイクルエンジンの第1のセクター内に配置され、2つの掃気窓は第3のセクター内に配置されている。有利には、2つの掃気窓は第2のセクターで合流し、2つの掃気窓は第4のセクターで合流している。有利には、取り込み口に近い両掃気通路が取り込み口の下方で、そして排気口に近い両掃気通路が排気口の下方で案内される。掃気通路が取り込み口と排気口の下方で案内されていることにより、クランク軸の軸線方向における2サイクルエンジンの構造幅が狭くなる。クランク軸軸線の領域でシリンダ足部を幅狭に構成することができる。掃気通路がシリンダ長手軸線に対しほぼ平行にクランクケースへ案内されている2サイクルエンジンの場合、シリンダ、シリンダ足部、クランクケースには、クランクアームの横に掃気通路用の構造幅を確保しなければならない。掃気通路を取り込み口と排気口の下方で案内すれば、この構造幅を設ける必要がない。
【0013】
しかし、4つのすべての掃気通路が第4のセクターで、すなわち取り込み口側で合流していてもよい。これにより、クランクケース内には、4つのすべ他の掃気通路のためにただ1つの部分のみを形成すればよい。有利には、4つのすべての掃気通路は第2のセクターで合流している。4つのすべての掃気通路が排気口の下方で案内されていることにより、2サイクルエンジンの取り込み口側には十分な構造空間が提供される。これにより、好ましい組み込み状況が生じる。掃気通路を排気口の下方で案内すると、燃焼室の掃気が改善されることが明らかになった。
【0014】
本発明によれば、掃気窓が1つのセクターに開口している2つのは異なる通路長さを有している。すべての掃気通路を1つの共通のセクターで案内すると、このセクターに対する個々の掃気通路の間隔が異なるので、異なる通路長さが生じる。2つの掃気通路が排気口へ案内され、2つの掃気通路が取り込み口へ案内されている2サイクルエンジンの場合、個々の掃気通路の異なる構成により、意識的に異なる通路長さを生じさせることができ、従って燃焼室の掃気が改善される。有利には、取り込み口に近い掃気窓に開口している掃気通路は、排気口に近い掃気窓に開口している掃気通路よりも長い。有利には、1つのセクター内に配置される2つの掃気窓は異なる制御時間を有している。この場合、特に、より長い掃気通路の掃気窓はより短い掃気通路の掃気窓の手前で、有利には排気口に近い掃気窓の手前で開口している。取り込み口に近い掃気通路のほうが長い2サイクルエンジンの場合には、該取り込み口に近い掃気通路の層は対応的により長く継続する。これを相殺するため、取り込み口に近い掃気通路はより早く開口する。これにより、両掃気通路を互いに連通させている連通領域での渦の発生も避けられる。掃気通路の均一な掃気を達成できる。
【0015】
有利には、掃気窓が1つのセクターに開口している2つの掃気通路は1つの共通の通路に合流している。これにより、まず、1つのセクター内に並設されている両掃気通路を合流させ、次に、シリンダの各側で案内されている両通路をクランクケースの上方で1つの共通の部分に合流させることができる。これにより、2サイクルエンジンの4つのすべての掃気通路を1つの共通の通路でクランクケースに開口させることができる。有利には、掃気通路はシリンダとクランクケースとの分離面に対し間隔をもって1つの共通の通路に合流している。この場合、合目的には、掃気通路は、該掃気通路の掃気窓が配置されているセクター内で合流している。従って、掃気通路はすでに掃気窓後方でわずかな間隔で合流し、その結果掃気通路はかなりの長さにわたって共通の通路として実施されている。
【0016】
本発明によれば、2サイクルエンジンは掃気予備蓄積空気を供給するための供給通路を有している。有利には、供給通路はシリンダに開口している。この場合、ピストンはピストンポケットを有し、該ピストンポケットは供給通路を取り込み口に近い掃気窓と連通させ、他方前記排気口に近い掃気窓はピストンを介してクランクケース内部空間と連通している。従って、取り込み口に近い掃気通路のみが直接供給通路と連通している。互いに並設されている両掃気通路が互いに連通していることにより、排気口に近い掃気通路は取り込み口に近い掃気通路を介して掃気予備蓄積空気によって充填される。これにより、掃気通路の均一な充填と掃気とが達成される。クランクケース内部空間との連通により完全な掃気が可能である。
【0017】
掃気通路を掃気予備蓄積空気を供給するための供給通路と連通させる場合、両掃気通路の長さが異なっていると、不均一な掃気が生じることがある。これを回避するため、本発明によれば、ピストンの少なくとも1つの位置で1つの掃気窓は完全に閉鎖しており、他方隣接している掃気窓はすでにピストンポケットを介して供給通路と連通している。その際、特に、掃気窓は、より長い掃気通路に配置されている供給通路とすでに連通している。掃気通路を排気口の下方で案内する場合、特に、排気口に近い掃気窓はまだ閉鎖しており、他方取り込み口に近い掃気窓はすでに供給通路と連通している。掃気通路の均一な掃気を達成するため、本発明によれば、特に、ピストンポケットは上縁を有し、該上縁の、ピストン底部に対する間隔はピストンの周方向に変化している。これにより、ピストンポケットと連通すべき掃気窓が2つの場合は、1つの掃気窓う、特により長い掃気通路に付設されているほうの掃気窓をまず掃気することができる。ピストンポケットの上縁を整合的に配置することにより、両掃気通路が合流するときに掃気予備蓄積空気の均整のとれたフロントが生じる。
【0018】
しかし、ピストンポケット連通しているのが1つの掃気通路のみであれば、ピストンポケットの上縁を傾斜させること、または、ずらすことも有利である。ピストンポケットの上縁が均整のとれたものでないこと、特にシリンダ長手軸線に対し傾斜していることにより、周方向における1つの掃気通路の内部の長さの差を保証することができる。従って、1つの掃気通路が排気口の下方で案内されている場合、取り込み口に隣接して配置されている掃気通路の領域がまず供給通路と連通することができる。これにより、掃気通路内での掃気予備蓄積空気の均整のとれたフロントを達成できる。掃気通路内での薄の形成を回避できるので、掃気通路の良好な完全な掃気が生じる。
【0019】
燃焼室の良好な掃気を達成するため、本発明によれば、シリンダ足部での連通開口部がクランク軸軸線に対し平行に延在する幅広面とこれに対し垂直に延在する幅狭面とを有するように、少なくとも1つの掃気通路がシリンダ内で案内され、流動方向に対し垂直な横断面における幅広面の長さが掃気窓側で減少し、流動方向に対し垂直な横断面における幅狭面の長さが掃気窓側で増大している。公知の掃気通路は、シリンダのまわりで案内する場合にねじられる。通路をねじる代わりに、本発明によれば、幅広面を連続的に狭くし、幅狭面を連続的に拡げる。このようにして、掃気窓において掃気通路の他の形状を達成させる。
【0020】
本発明による掃気通路の構成により、掃気通路内での流動剥離を回避できる。これは、掃気通路内での外径と内径との差を本発明による構成によって少なくできることによって達成される。掃気空気予備蓄積型エンジンの場合、これによって排ガス値を改善できる。というのは、掃気予備蓄積空気と燃料空気混合気との混合を十分回避できるからである。
【0021】
この場合、有利には、流動方向に対し垂直に延在するように掃気窓に隣接して位置する横断面において、幅広面の長さが幅狭面の長さよりも小さい。もしシリンダ足部において幅広面が幅狭面よりも幅広で、従って掃気通路がその横断面においてクランク軸の回転軸線の方向に縦長に形成されていれば、掃気通路は掃気窓に隣接してクランク軸の回転軸線に対し横方向に向けられる。シリンダ足部での連通開口部と掃気通路との間の移行部を流動に好ましいようにするため、本発明によれば、幅広面の長さと幅狭面の長さとの積は、流動方向に対し垂直な掃気通路の各横断面ごとにほぼ等しい。
【0022】
2サイクルエンジンを製造するための砂中子に対しては、本発明によれば、砂中子は、互いに対向する2つのセクター内に配置される少なくとも2つの掃気通路を形成させる部分を有している。
【0023】
互いに対向し合っているセクター内に配置される少なくとも2つの掃気通路を形成させるためにただ1つの砂中子が使用されることにより、掃気通路相互の位置は砂中子によって決定される。互いに対向し合って配置される掃気通路の形成のために互いに別個に形成される砂中子を位置決めする際に生じるような公差はない。有利には、すべての掃気通路を形成させるために1つの砂中子が設けられている。
【0024】
有利には、砂中子は少なくとも1つの結合部分を有し、該結合部分は、互いに対向しているセクター内に配置されている掃気通路をその燃焼室側端部において形成させる部分を互いに結合させている。この結合部分は、完成したシリンダのシリンダボアの領域に配置されている。この領域に配置される結合部分により、砂中子の安定性を高めることができる。というのは、砂中子は、クランクケース側のその端部と掃気窓側のその端部との双方において、互いに対向し合っている両掃気通路を互いに結合させるからである。
【0025】
2サイクルエンジンの作動方法に対しては、すなわち該2サイクルエンジンが、シリンダ内に形成されている燃焼室を備え、該燃焼室がシリンダ内を往復動可能に支持されているピストンによって画成され、該ピストンがクランクケース内に回転可能に支持されているクランク軸を駆動し、クランクケースがピストンの少なくとも1つの位置において少なくとも2つの掃気通路を介して燃焼室と連通し、掃気通路がピストンによって制御されるそれぞれ1つの掃気窓でもって燃焼室に開口し、2サイクルエンジンがクランクケースに通じる取り込み口と燃焼室から出ている排気口とを有し、2サイクルエンジンがシリンダ長手軸線に対し平行に延在している4つのセクターに分割可能であり、第1のセクターが掃気通路の2つの掃気窓を有し、第1のセクターに境を接している第2のセクターが排気口を有し、他の側で第1のセクターに境を接している第4のセクターが取り込み口を有し、両掃気通路が1つの共通の通路に合流し、シリンダに開口して掃気予備蓄積空気を供給するための供給通路が設けられ、ピストンがピストンポケットを有している前記2サイクルエンジンの作動方法に対しては本発明によれば、ピストンの上死点範囲で、取り込み口に近い掃気通路の掃気窓をピストンポケットを介して供給通路と連通させて、取り込み口に近い掃気通路に掃気予備蓄積空気を供給し、取り込み口に近い掃気通路を介して掃気予備蓄積空気を排気口に近い掃気通路に供給する。
【0026】
互いに連通している両掃気通路の一方の掃気通路のみに掃気予備蓄積空気を供給することにより、両掃気通路の良好な均一な掃気を達成できる。掃気通路の連通領域で発生することのある渦は回避される。
【0027】
シリンダ内に形成されている燃焼室を備えた2サイクルエンジンに対しては、すなわち該燃焼室がシリンダ内を往復動可能に支持されているピストンによって画成され、該ピストンがクランクケース内に回転可能に支持されているクランク軸を駆動し、クランクケースがピストンの少なくとも1つの位置において少なくとも2つの掃気通路を介して燃焼室と連通し、掃気通路がピストンによって制御されるそれぞれ1つの掃気窓でもって燃焼室に開口し、2サイクルエンジンがクランクケースに通じる取り込み口と燃焼室から出ている排気口とを有し、2サイクルエンジンがシリンダ長手軸線に対し平行に延在している4つのセクターに分割可能であり、第1のセクターが掃気通路の2つの掃気窓を有し、第1のセクターに境を接している第2のセクターが排気口を有し、他の側で第1のセクターに境を接している第4のセクターが取り込み口を有し、掃気通路が1つの共通の通路に合流し、シリンダに開口して掃気予備蓄積空気を供給するための供給通路が設けられ、ピストンがピストンポケットを有している前記2サイクルエンジンに対しては、本発明によれば、ピストンポケットは、取り込み口に近い掃気通路の掃気窓の領域に配置され、排気口に近い掃気通路の掃気窓の領域には延在していない。
【0028】
2サイクルエンジンをこのように構成することにより、取り込み口に近い掃気通路を介しての排気口に近い掃気通路の掃気を簡単に達成できる。
【0029】
また、シリンダ内に形成されている燃焼室を備えた2サイクルエンジン、すなわち該燃焼室がシリンダ内を往復動可能に支持されているピストンによって画成され、該ピストンがクランクケース内に回転可能に支持されているクランク軸を駆動し、クランクケースがピストンの少なくとも1つの位置において少なくとも2つの掃気通路を介して燃焼室と連通し、掃気通路がピストンによって制御されるそれぞれ1つの掃気窓でもって燃焼室に開口し、2サイクルエンジンがクランクケースに通じる取り込み口と燃焼室から出ている排気口とを有し、2サイクルエンジンがシリンダ長手軸線を含み且つ排気口を分割している中心面を有し、掃気通路の掃気窓が中心面の片側に配置され、2サイクルエンジンが掃気予備蓄積空気を供給するための供給通路を有している2サイクルエンジンに対しては、本発明によれば、両掃気通路は1つの共通の通路に合流し、ピストンの下降行程時に掃気窓は順次前記燃焼室に対し開口する。
【0030】
両掃気通路の異なる制御時間により、該掃気通路の均一な掃気を達成できる。また、異なる制御時間により、掃気通路の異なる長さによる掃気通路内での異なる圧力状態を補償することが可能になり、従って両掃気通路を互いに連通させている領域での渦を回避することが可能になる。
【0031】
本発明によれば、ピストンは平坦なピストン底部を有し、掃気窓の燃焼室屋根側の制御エッジは、ピストンの下死点で、ピストン底部に対し異なる間隔を有している。これにより、両掃気通路の異なる制御時間を簡単に実現することができる。有利には、ピストンの下死点で、ピストン底部に対する取り込み口に近い掃気通路の制御エッジの間隔は、排気口に近い掃気通路の制御エッジの間隔よりも大きい。これにより、取り込み口に近い掃気通路を排気口に近い掃気通路の前に開口させる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
次に、本発明の実施形態を図面を用いて説明する。
【図1】2サイクルエンジンの断面図である。
【図2】図1の2サイクルエンジンのシリンダのシリンダ足部の図である。
【図3】図1の2サイクルエンジンの図である。
【図4】図1の2サイクルエンジンの掃気通路の斜視図である。
【図5】図1の2サイクルエンジンの掃気通路の1実施形態の側面図である。
【図6】2サイクルエンジンの1実施形態の図である。
【図7】図6の2サイクルエンジンのクランクケースの半シェルの斜視図である。
【図8】2サイクルエンジンのシリンダの斜視図である。
【図9】図8のシリンダの側面図である。
【図10】図9の線X−Xによる断面図である。
【図11】図8ないし図10のシリンダの掃気通路の側面図である。
【図12】図11の線XII−XIIの方向に見た側面図である。
【図13】図11の矢印XIII方向に見た掃気通路の平面図である。
【図14】掃気通路の1実施形態の斜視図である。
【図15】掃気通路の1実施形態の斜視図である。
【図16】掃気通路の1実施形態の斜視図である。
【図17】シリンダへの入口部の横断面狭隘部をも併せて示した掃気通路の1実施形態の斜視図である。
【図18】シリンダへの入口部の横断面狭隘部をも併せて示した掃気通路の1実施形態の斜視図である。
【図19】シリンダへの入口部の横断面狭隘部をも併せて示した掃気通路の1実施形態の斜視図である。
【図20】シリンダへの入口部の横断面狭隘部をも併せて示した掃気通路の1実施形態の斜視図である。
【図21】排気口の中心を通る断面で示した2サイクルエンジンの1実施形態の斜視図である。
【図22】排気口の中心から外れた断面で示した図21の2サイクルエンジンの図である。
【図23】2サイクルエンジンのシリンダの斜視図である。
【図24】図23のシリンダの掃気通路を形成するための砂中子の斜視図である。
【図25】図24の砂中子の側面図である。
【図26】図23のシリンダの側面図である。
【図27】図26の線XXVII−XXVIIによる断面図である。
【図28】図26の線XXVIII−XXVIIIによる断面図である。
【図29】図26の線XXIX−XXIXによる断面図である。
【図30】図26の線XXX−XXXによる断面図である。
【図31】図26の線XXXI−XXXIによる断面図である。
【図32】図26の線XXXII−XXXIIによる断面図である。
【図33】2サイクルエンジンのシリンダの側面図である。
【図34】図33の矢印XXXIVの方向に見た側面図である。
【図35】図33の矢印XXXVの方向に見た側面図である。
【図36】2サイクルエンジンの他の実施形態の断面図である。
【図37】2サイクルエンジンの他の実施形態の断面図である。
【図38】2サイクルエンジンの他の実施形態の断面図である。
【図39】2サイクルエンジンの他の実施形態の断面図である。
【図40】ピストンの1実施形態の斜視図である。
【図41】ピストンの1実施形態の側面図である。
【図42】ピストンの1実施形態の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1には2サイクルエンジン1が図示されている。2サイクルエンジン1はシリンダ2を有し、シリンダ2内には燃焼室3が形成されている。2サイクルエンジン1は特にパワーチェーンソー、研磨切断機等の手で操縦される作業機内に配置され、作業機の工具を駆動するために用いる。燃焼室3は、シリンダ2内をシリンダ長手軸線24の方向に往復動するように支持されているピストン5によって画成されている。ピストン5は、連接棒6を介して、クランクケース4内で回転軸線26のまわりに回転可能に支持されているクランク軸7を回転駆動する。燃焼室3は、ピストン5が図1に図示した下死点にあるときに、全部で4個の掃気通路11,13を介してクランクケース内部空間42と流動接続する。シリンダ2には、混合気通路15が混合気取り込み口9でもって開口している。2サイクルエンジン1は中心面48(図1の切断面である)に関し左右対称に形成されている。シリンダ2には、混合気取り込み口9に隣接している掃気通路13の掃気窓14の下方で、燃料をほとんど含んでいない掃気予備蓄積空気を案内している供給通路16が開口している。供給通路16はシリンダ2の接続フランジ77の領域で2つの枝に分岐し、それぞれの枝は供給通路取り込み口10でもって掃気窓14のクランクケース4側に開口している。
【0034】
燃焼室3からは排気口8が出ている。排気口8に隣接している掃気通路11は掃気窓12でもって燃焼室3に開口している。
【0035】
混合気通路15と供給通路16とはエアフィルタ22と連通している。混合気通路15は気化器17を介してエアフィルタ22と連通している。気化器17内では、エアフィルタ22を通じて吸い込まれた燃焼空気に燃料が供給される。気化器17内にはスロットルバルブ18とその上流側にあるチョークバルブ19とが回動可能に支持されている。供給通路16は供給通路部材20を介してエアフィルタ22と連通している。供給通路部材20内には、2サイクルエンジン1に供給される掃気予備蓄積空気の量を制御するコントロールバルブ21が回動可能に支持されている。コントロールバルブ21の位置はスロットルバルブ18の位置に連動している。混合気通路15と供給通路16とは、気化器17または供給通路部材20と接続フランジ77との間に位置するように、1つの共通の接続部材58内に形成されている。
【0036】
図3も示しているように、シリンダ2は分離面29においてクランクケース4と結合されている。図3が示すように、クランクケース4は2つのクランクケースシェル45と46を有し、これらのクランクケースシェル45と46は分離面47において互いに結合されている。分離面47はクランク軸7の回転軸線26に対して垂直に且つ分離面29に対して垂直に延在している。本実施形態では、分離面47は中心面48内にある。しかし、分離面47は中心面48に対し平行にずらして配置されていてもよい。
【0037】
図1ないし図3が示すように、排気口に近い掃気通路11はシリンダ2内で該シリンダ2のまわりを螺旋状に延在するように排気気口8の下で案内されている。シリンダ足部25には掃気通路11がそれぞれ開口部27でもって開口している。両開口部27はシリンダ足部25で互いに結合されて1つの共通の開口部を形成している。両掃気通路11はクランクケース4内で1つの共通の部分40で案内され、該共通の部分40は連通開口部43でもってクランクケース内部空間42に開口している。共通の部分40には、排気口に近い両掃気通路11の間の分離部は設けられていない。これによって共通の部分40を簡単に製造することができる。
【0038】
混合気取り込み口に近い掃気通路13は混合気取り込み口9の下で合流している。混合気取り込み口に近い掃気通路13はシリンダ2のまわりを螺旋状に延在するように混合気取り込み口9の下で案内されている。それぞれの掃気通路13は開口部28でもってシリンダ足部25に開口している。両開口部28はシリンダ足部25で互いに結合されて1つの共通の開口部を形成している。混合気取り込み口に近い両掃気通路13はクランクケース4内で1つの共通の部分41で案内され、該共通の部分41は両クランクケースシェル45と46の間にある分離面47内に延在し、且つ連通開口部44でもってクランクケース内部空間42に開口している。
【0039】
図2が示すように、排気口8と混合気取り込み口9とは互いにシリンダ2の反対側に配置されている。排気口8と混合気取り込み口9との間には、シリンダ2の内周にそれぞれ1つの掃気窓12と掃気窓14とが位置している。シリンダ2は、シリンダ長手軸線24に対し平行に延在し且つそれぞれシリンダ長手軸線24を含んでいる4つの仮想の分割面30,31,32,33によって4つの仮想のセクター34,35,36,37に分割することができる。第1のセクター34は2つの掃気窓12,14を含んでいる。図2のシリンダ2を下から見た図では、反時計回りで第1のセクター34に、排気口8を含んでいる第2のセクター35が接続している。第2のセクター35には第3のセクター36が接続し、第3のセクター36は中心面48に関し第1のセクター34に対し対称に形成されている。第3のセクター36と第1のセクター34との間には第4のセクター37が配置され、第4のセクター37は分割面30と31によって画成されている。排気口8と混合気取り込み口9と掃気通路12,14とはそれぞれ完全にセクター34,35,36,37内に配置され、分割面30,31,32,33によって切断されない。
【0040】
第1のセクター34内に配置されている掃気通路11は、移行部38において仮想の分割面33を通って第1のセクター34から第2のセクター35へ移行している。対応的に、第3のセクター36に開口しているは気口に近い掃気通路11は、移行部38において分割面32を通って第3のセクター36から第2のセクター35へ移行している。図1が示すように、各移行部38は、分割面29に対し、シリンダ長手軸線24に対し平行に測った間隔aを有している。従って、掃気通路11は分割面29の上方において、排気口8を含んでいる第2のセクター35に侵入している。掃気通路11は分割面29内においてシリンダ2の外周のまわりをめぐるように案内されておらず、シリンダ2内を螺旋状に延在している。対応的に、混合気取り込み口に近い両掃気通路13は、第1のセクター34または第3のセクター36から移行部39において分割面30または分割面31を通って第4のセクター37へ移行している。図1に示したように、移行部39は、分割面29に対し、シリンダ長手軸線24に対し平行に測った間隔bを有している。混合気取り込み口に近い掃気通路13も分割面29の上方において第4のセクター37へ侵入している。
【0041】
掃気通路を螺旋状に案内することににより、好ましい流動特性が生じる。掃気通路11,13をこのように案内することによって、2サイクルエンジン1の排ガス値を著しく改善できることが明らかになった。さらに、掃気通路11,13を螺旋状に案内することにより、シリンダ2での材料集積が回避され、その結果2サイクルエンジン1の軽量化が可能になる。掃気通路がクランクケース4内で混合気取り込み口9および排気口8の下方で案内されていることにより、シリンダ足部25を回転軸線26の方向において幅狭に形成することができる。混合気取り込み口9および排気口8の下方では、シリンダ足部25に、開口部27と28のために十分な構造空間が提供されねばならない。しかしながら、混合気取り込み口9と排気口8の配置に基づき、この領域には十分な構造空間がある。これによって2サイクルエンジン1をコンパクトに且つ幅狭に実施することができる。
【0042】
2サイクルエンジン1の作動時、ピストン5の上死点範囲で燃料空気混合気が混合気取り込み口9を通じてクランクケース内部空間42内へ吸い込まれる。ピストン5のこの位置で供給通路取り込み口10はピストン5の外周に配置されているピストンポケット23を介して掃気窓12と14に連通している。この場合、ピストン5は、第1のセクター34においても第3のセクター36においても、この領域に配置される掃気窓12,14のためのピストンポケット23をそれぞれ有している。ピストンポケット23を介して掃気通路11と13には供給通路16からの掃気予備蓄積空気が予備蓄積される。ピストン5の下降行程時に、燃料空気混合気がクランクケース42内で圧縮される。掃気窓12と13がピストン5によって開口すると、燃焼室3内にまず掃気予備蓄積空気が掃気通路11と13から侵入し、その前のサイクルの排ガスを燃焼室3から排気口8を通じて掃気する。次に、新鮮な混合気がクランクケース内部空間42から燃焼室3内へ流れてくる。ピストン5の上昇行程時に燃料空気混合気が燃焼室3内で圧縮され、ピストン5の上死点範囲で、図示していない点火プラグによって点火される。点火によってピストン5はクランクケース4の方向へ加速される。排気口8が開くと、排ガスを排気口8から排流することができる。残ガスは、掃気窓12と14が開いたときに、流入してくる掃気予備蓄積空気によって掃気される。続いて次のサイクルのための新鮮な混合気が流れてくる。
【0043】
掃気予備蓄積空気を予備蓄積する際、掃気窓12と14からクランクケース4の方向で空気が掃気通路11と13を貫流する。この場合、有利には、掃気通路11,13は、掃気予備蓄積空気がクランクケース4内へ侵入しないように構成されている。混合気がクランクケース4から燃焼室3内へ溢流する際、混合気は掃気通路11,13を反対方向に貫流する。2サイクルエンジン1の通常の非常に高い回転数で掃気通路が掃気予備蓄積空気で十分に充填され、同時に十分な量の燃料空気混合気が燃焼室3内へ供給されるようにするため、掃気通路11,13は流動に好ましいように構成されている。さらに掃気通路11,13は、該掃気通路11,13での流動の剥離が回避されるように構成されている。これにより、掃気通路11,13に流入する掃気予備蓄積空気は掃気通路11,13の全横断面を掃気する。これにより燃焼室3内での新鮮な混合気と排ガスとの良好な分離が行われる。
【0044】
掃気通路11,13の構成が図4に図示されている。ここでは掃気通路11,13の輪郭のみを示した。流動に好ましい案内は、たとえば混合気取り込み口に近い掃気通路13の例で示されている。排気口に近い掃気通路11は対応的に構成されている。図4が示すように、掃気通路は開口部28で縦長の横断面を有している。この場合、開口部28は回転軸線(図1)の方向に向けられている。掃気通路13は開口部28に、長さcの幅広面53を有している。幅広面53は回転軸線26に平行に測ったものである。これに対し垂直に掃気通路13は長さdの幅狭面54を有している。長さdは長さcよりもかなり短い。
【0045】
図4には、掃気通路13内に流動方向59が記載されている。さらに、流動方向59に対し垂直に配置される複数個の横断面55,56が記載されている。図4が示すように、幅狭面54の長さdは開口部28から掃気窓14のほうへ連続的に増大し、他方幅広面53の長さcは連続的に減少している。開口部28と掃気窓14との間にある横断面55での幅広面53の長さeは、幅狭面54の長さfよりもいくぶん小さい。掃気窓14に隣接している横断面56では、幅広面53は幅狭面54の長さhよりもかなり小さな長さgを有している。幅広面53はいくぶんシリンダ長手軸線24(図1)の方向にある。開口部28から掃気窓4への一様な移行を達成するため、各横断面55,56の幅広面c,e,gと幅狭面54の長さd,f,hとの積は一定である。掃気通路13は、開口部28と横断面56との間にして掃気窓14に隣接している位置で、幅広面53の長さと幅狭面54の長さとが等しいような横断面を有している。
【0046】
2サイクルエンジン1の良好なマッチングを達成するため、掃気通路11の長さと掃気通路13の長さとは異なっていてよい。これは図5に図示されている。ここでは2つの排気口に近い掃気通路61が設けられ、これらの掃気通路61はそれぞれ長さkを有している。混合気取り込み口に近い2つの掃気通路63は長さiを有し、長さiは排気口に近い掃気通路61の長さkよりもかなり小さい。排気口に近い掃気通路61は、連通開口部62でもって、図5では概略で示したクランクケース内部空間42に開口している。連通開口部62は、シリンダ長手軸線24の方向に見て、クランク軸7の回転軸線26の下方に配置されている。混合気取り込み口に近い掃気通路63は、回転軸線26の上方に配置されている連通開口部64でもってクランクケース内部空間42に開口している。高回転数に対しては短い掃気通路63が好ましく、他方高いトルクを達成するには長い掃気通路61が有利であることが明らかになった。短い掃気通路と長い掃気通路との組み合わせによって総じて2サイクルエンジン1の良好な回転特性を達成できる。さらに、掃気通路61,63の長さを適当に整合させることにより、予備蓄積される掃気予備蓄積空気の量と配分とを調整することができる。
【0047】
図1が示しているように、掃気通路11と13はクランクケース4内でクランクケース内部空間42に対し間隔をもって案内されている。前記共通の部分40と41は、クランクケース4に一体成形されている細条部49または50によってクランクケース内部空間42から仕切られている。この場合、それぞれ1つの細条部49,50の一部分はクランクケースシェル45に一体成形され、細条部49,50の他の部分はクランクケースシェル46に一体成形されている。しかし、細条部49,50全体をクランクケースシェル45または46に一体成形してもよい。
【0048】
図6には、2サイクルエンジン70の他の実施形態が図示されている。2サイクルエンジン70の構成は実質的に図1の2サイクルエンジン1の構成に対応している。同一の部材には同一の符号を付した。2サイクルエンジン70は、掃気窓12でもって燃焼室3に開口している排気口に近い2つの掃気通路71と、掃気窓14でもって燃焼室3に開口している混合気取り込み口に近い2つの掃気通路73とを有している。燃焼室3は2サイクルエンジン70のシリンダ72内に形成されている。図6が示すように、すべての掃気通路71,73は混合気取り込み口9の下方に案内されている。互いに隣接し合っている2つの掃気通路71,73はそれぞれすでにシリンダ72内で1つの共通の通路51に合流している。図6に図示した共通の通路51は第1のセクター34(図2)から第4のセクター37へ延在している。シリンダ72の反対側(図示せず)では、鏡対称に形成された通路51が第3のセクター36から第4のセクター37へ延在している。共通の通路51はシリンダ72内で螺旋状に混合気取り込み口9の下方に案内されている。クランクケース4内では、すべての通路71,73が、すなわち両通路51が、連通開口部69でもってクランクケース内部空間42に開口している1つの共通の部分52で案内されている。両通路51をクランクケース4内で分離して案内してもよい。この場合、分離部として、たとえば両クランクケースシェル45,46の間に配置されているパッキンを用いることができる。
【0049】
図7は第2のクランクケースシェル46の構成を示している。クランクケース4を中央で分割した場合、第1のクランクケースシェル45はこれに対し対称に形成される。クランクケースシェル46は挿入部分74を有し、挿入部分74には前記共通の部分52が形成されている。挿入部分74には、共通の部分52をクランクケース内部空間から仕切っている細条部75の一部分が一体成形されている。挿入部分74に形成されている領域は、クランクケースシェル46と一体に形成されていてもよい。クランクケース4は有利には鋳造方式で製造される。クランクケース4内の掃気通路71,73が共通の部分52で案内されていることにより、共通の部分52の形成のために補助的なスライダ等を必要とせずに、クランクケースシェル45,46をクランク軸の回転軸線26の方向へ脱型することができる。対応的に、図1の2サイクルエンジン1の共通の部分40と41をクランクケースシェル45と46と一体に簡単に製造することができる。この簡単な製造は、クランクケース4内の通路51をクランクケースシェル45と46の間に配置される前記パッキンによって互いに仕切ることによっても得られる。
【0050】
図8ないし図10はシリンダ82の実施形態を示している。シリンダ82は、接続部材58(図1)との結合のための接続フランジ57を有している。接続フランジ57には、混合気通路15と、2つの枝に分割されている2つの供給通路16とが開口している。シリンダ82内では、該シリンダ82の各側で、それぞれ1つの排気口に近い掃気通路81と混合気取り込み口に近い掃気通路83とが案内されている。シリンダ82の共通のセクター内に配置されている掃気通路81と83は、1つの共通の通路95に合流している。掃気通路81と83は、掃気窓12,14に境を接している領域で、仕切り壁86によって互いに仕切られている。仕切り壁86は分離面29の上方に間隔sをもって終わっている。この間隔sは仕切り壁86の長さよりも大きく、その結果掃気通路81と83はその長さの大部分にわたって一緒に案内されている。
【0051】
シリンダ82には、掃気通路81と83のシリンダ内部空間側の内側輪郭が形成されている。掃気通路81と83は外面に開口するようにシリンダ82に形成されている。シリンダ82は各シリンダ側に接続フランジ85を有し、接続フランジ85には図9と図10に図示したカバー84を配置することができる。各カバー84は、互いに隣接し合って配置されている両掃気通路81と83および共通の通路95を閉鎖している。
【0052】
図10が示すように、シリンダ82には、シリンダ82の各側の共通の通路95を互いに仕切っている壁65が一体成形されている。壁65は分離面29で終わっている。この分離面29内で共通の通路95が合流している。共通の通路95が排気口9の下方でシリンダ足部25を通ってクランクケース4へ移行していることにより、図10に図示したシリンダ足部25の幅zは、図9に図示したシリンダ足部25の長さyよりもかなり小さい。なお、長さyはクランク軸7の回転軸線26に対し垂直に測ったものであり、幅zは該回転軸線26に平行に測ったものである。
【0053】
図11ないし図16は掃気通路81と83の構成を示すもので、図11ないし図13は第1の構成を、図14ないし図16は第2の構成を示している。図11ないし図13に図示した掃気通路81と83の構成では、掃気通路81と83はその長さの短い部分にわたってのみ分離している。図12が示すように、排気口に近い掃気通路81は長さtを有し、これは混合気取り込み口に近い掃気通路83の長さmよりもいくぶん短い。共通の通路95は、クランクケース4内で案内されている両通路95の共通の部分96とともに長さnを有し、これは混合気取り込み口に近い掃気通路83の長さmのほぼ10%ないしほぼ70%である。共通の部分96の長さoは有利には混合気取り込み口に近い掃気通路83の長さmのほぼ5%ないしほぼ70%である。共通の部分96は連通開口部97でもってクランクケース内部空間42に開口している。
【0054】
特に図11と図12が示しているように、共通の通路95は分離面29に境を接している部分98を有し、この部分98で、共通の通路95を画成している壁が分離面29に対しほぼ垂直に延在し、または、分離面29に対しわずかに開口している。これにより、掃気通路81,83のこの部分98はシリンダ82をダイカスト方式で製造する場合にスライダを用いて形成することができる。
【0055】
図14ないし図16に図示した掃気通路81と83の構成では、掃気通路81と83は分離面29まで螺旋状に実施されている。掃気通路81,83はシリンダボアの周囲にほぼ同心に案内されている。
【0056】
図17ないし図20は掃気通路81と83の他の実施形態を示している。図17に図示した掃気通路91と93は、開口部28(図10)に対し縮小した横断面をもつ開口部28’でもって、クランクケースに開口している。このため、開口部28’の領域に傾斜した壁78が設けられている。これらの壁78は、掃気通路81と83の互いに対向し合っている内側の側壁98に配置されている。壁78によって、共通の通路95の有効流動横断面積は小さくなり、よって2サイクルエンジンのスループットが小さくなる。また壁78によって、排気量の異なる2サイクルエンジンに対し掃気通路81,83の1つの構成を設けることが可能である。内燃エンジンの排気量に対する掃気通路81,83の有効流動横断面積の整合は、壁78のサイズを適当に選定することによって行うことができる。壁78は、下から、すなわち分離面29側からシリンダ82へ押し込まれる挿入部材に設けることができる。これにより、異なる排気量の2サイクルエンジンのために掃気通路81と83を製造するためには掃気通路の幾何学的形態のみが必要である。すべての掃気通路を製造するには、ダイカスト方式で製造する際にそれぞれ同じ中子、特に砂中子を使用することができる。これによって製造が簡単になる。
【0057】
図18に図示した実施形態では、掃気通路81と83の共通の通路95は開口部28”でもってクランクケースに開口し、該開口部28”の流動横断面積は壁79によって狭くなっている。壁79は、分離面29に対し傾斜するように、内側の側壁89に対向している外側の側壁90に配置されている。側壁90は混合気取り込み口に近い掃気通路83を画成している。壁78と79は、図17および図18に図示したように、分離面に対し傾斜して実施されていてよい。しかし、図17の壁78を分離面29に対し垂直に内側の側壁89に沿って設けてもよい。
【0058】
図19に図示した実施形態では、開口部28”’の流動横断面積を縮小する壁80が設けられている。壁80は共通の通路95の半径方向外側の外壁94に配置され、壁78と79と同様に分離面29に対し傾斜して配置してよい。壁80も、外壁94と交わるまで分離面29に対し垂直に上方へ案内されていてもよい。
【0059】
図20に図示した実施形態では、共通の通路95の内壁92に壁78が設けられ、開口部28””の流動横断面積を縮小させている。壁92も分離面29に対し傾斜して延在していてよい。また、掃気通路81,83の流動横断面積の整合を他の処置によって行うようにしてもよい。
【0060】
図21と図22は、シリンダ82を含んでいる2サイクルエンジンに実質的に対応している2サイクルエンジン100を示している。2サイクルエンジン100はシリンダ102を有し、シリンダ102には、クランクケース104内へ突出して周回するように延在しているカラー103が一体成形されている。カラー103は分離面29を越えてクランクケース104内へ突出している。掃気通路81と83の共通の通路95はシリンダ102内で螺旋状に排気口8の下方で案内されている。この場合、共通の通路95は、図2に図示した分割面32に対応しているシリンダ102の仮想の分割面32と移行部88において交差している。移行部88は分離面29に対し間隔pをもっている。
【0061】
シリンダ102内では、それぞれシリンダ片側で合流している掃気通路81と83の2つの共通の部分95が壁65によって分離されている。クランクケース104内では、シリンダ両側の共通の通路95が合流している。この領域で共通の通路95はカラー103によってクランクケース内部空間42側で分離されている。クランクケース104には凹部105が形成され、凹部105で共通の通路95の共通の部分106が案内されている。クランクケース104内で案内されている掃気通路81と83の部分の、シリンダ102のカラー103とクランクケース104のおうぶ105との間の画成部は、簡潔な構成を生じさせている。図22は、シリンダ102の、中心面に対し回転させて配置した断面を示している。ここでは、カラー95の移行部と、カラー95の壁65での案内とが示されている。
【0062】
図23はシリンダ112の1実施形態を示し、その分離面119はクランク軸7の回転軸線26の高さで延在している。掃気通路91と93は完全にシリンダ112内に形成され、図示していないクランクケー部材へ移行していない。図23が示すように、混合気取り込み口に近い掃気通路93と排気口に近い掃気通路91とが設けられ、掃気通路91は、移行部88の手前で、排気口8を含んでいるシリンダ112の第2のセクター35に合流している。移行部88は分離面119に対し間隔qで配置され、その結果掃気通路91と93は分離面119の上方において排気口8の領域で案内されている。排気口8の下方で、両シリンダ半部分の共通の通路95が1つの共通の部分116に合流している。掃気通路91と93は1つの共通の連通開口部117においてクランクケース内部空間42に開口している。
【0063】
図24と図25はシリンダ112を製造するための砂中子107を示している。砂中子107はすべての掃気通路91と93を形成させ、一体に形成されている。図24と図25が示すように、砂中子107は、排気口に近い掃気通路91を形成させる2つの部分110と、混合気取り込み口に近い掃気通路93を形成させる2つの部分111とを有している。両部分110は、掃気窓を形成する領域において結合部分108を介して互いに結合されている。第2の結合部分109は、掃気通路93の掃気窓を形成させる両部分111の領域の間に設けられている。砂中子107は、掃気通路91と93の共通の部分95を形成させる2つの部分113を有している。両部分113は、共通の通路95の共通の部分114を形成させる部分114を介して互いに結合されている。砂中子107を簡単に製造できるようにするため、砂中子107の部分11の、図25に図示した内側の側壁115と外側の側壁118とは、互いに平行に案内されている。側壁115と118は、完成したシリンダのシリンダ長手軸線24に対し角度α(数度の大きさ)だけ傾斜している。角度αは、砂中子107の取り出しを保証する。
【0064】
砂中子107の取り出しを可能にするため、部分110と111の互いに対向し合っている側壁120が互いに離間する方向に傾斜しているように構成してもよい。この場合側壁120は、砂中子107を製造するための型をシリンダ長手軸線24の方向に引張る際に側壁120にアンダーカットが生じないように、互いに離間して延在している。結合部分108と109も、砂中子107を取り出すために第1の型半部分をシリンダ長手軸線24の方向において下方へ引張ることができ、第2の型半部分をシリンダ長手軸線4の方向において上方へ引張ることができ、しかもアンダーカットが生じないようにこれが可能であるように配置されている。有利には、砂中子107の、シリンダ長手軸線24に対しほぼ平行に延在している面に、取り出し傾斜部が設けられている。
【0065】
図26ないし図32は、掃気通路91と93の延在態様をシリンダ112の複数の断面で示したものである。図27はシリンダ足部25の断面図である。この領域では、共通の通路95の共通の部分116が連通開口部117でもってクランクケース内部空間に開口している。図27が示すように、連通開口部117は第2のセクター35内に配置され、第2のセクター35内には排気口8(図32)も配置されている。図27と図28が示すように、共通の部分116の、シリンダ長手軸線24に関し半径方向外側にある外壁170は、半径方向に延在している。外壁170は、シリンダ長手軸線24上に中心がある円の円セグメントとして形成されている。図28が示すように、共通の部分116の、半径方向内側にある内壁171は、シリンダ長手軸線24に対し同心に位置する円の円セグメントとして実施されている。
【0066】
図29は、共通の部分116が2つの共通の通路95に分割されている高さでのシリンダ112の断面図である。この高さで両通路95は薄い壁部分によって互いに仕切られている。共通の通路95の、半径方向外側にある外壁172は、円セグメントとしてシリンダ長手軸線24に対し同心に形成されている。共通の通路95の半径方向内側にある内壁173もシリンダ長手軸線24に同心の円セグメントである。これにより、共通の通路95の幅全体にわたってシリンダボアに対する内壁173の間隔は一定である。図29に図示した断面図の場合、共通の通路95はほぼ完全に第2のセクター35内に配置されている。
【0067】
図30は、共通の部分95が第2のセクター35から第1のセクター34または第3のセクター36平行している高さでのシリンダ112の断面図である。仮想の分割面32と33はこの断面高さで共通の通路95と交わっている。図30が示しているように、半径方向外側にある外壁172と半径方向内側にある内壁173とは、図30に示した断面高さにおいてもシリンダ長手軸線24に同心の円上に延在している。これにより、シリンダボアに対する内壁173および外壁172の間隔は一定である。これにより、共通の通路95とシリンダボアとの間の死空間を回避できる。掃気通路をシリンダボアのまわりに狭い間隔で案内することができる。
【0068】
図31は、共通の通路95が完全に第1のセクター34または第3のセクター36に配置されているシリンダ112の断面図である。この断面高さでも、内壁173と外壁172はシリンダ長手軸線24に対し同心の円上に延在している。
【0069】
図32は、掃気通路91と93の掃気窓下方の断面図である。図31の断面高さと図32の断面高さとの間で共通の通路95は掃気通路91と93に分割されている。掃気通路91はそれぞれ外壁174と内壁175とを有している。掃気通路93はそれぞれ、内側にある内壁177と、シリンダボアとは逆の側の外壁176とを有している。排気口に近い掃気通路91の内壁175と外壁174とは、シリンダ長手軸線24に対し同心の円の円セグメントとして形成されている。混合気取り込み口に近い掃気通路93の内壁177と外壁176とは、掃気窓内に望ましい流入角を実現できるように、円セグメントとはわずかに異なっている。
【0070】
図27ないし図32が示すように、掃気通路を螺旋状に且つシリンダ長手軸線24に対し同心に配置することによって、シリンダ112のコンパクトな構成が生じる。シリンダ112を鋳造方式で製造する際に鋳造品質に悪影響を与える材料集積は回避される。同時に均一な流動案内が達成されて、2サイクルエンジンは小さな排ガス値を有するに至る。
【0071】
シリンダ122の他の実施形態が図33ないし図35に図示されている。シリンダ122も、クランク軸7の回転軸線26の高さで延在している分離面119を有している。シリンダ122は、排気口に近い2つの掃気通路121と、混合気取り込み口に近い2つの掃気通路123とを有し、これらの掃気通路は完全にシリンダ122内に形成されている。掃気通路121と123は1つの共通の通路124に合流している。共通の通路124は、分離面119に対し間隔rを有する移行部128で仮想の分割面32と交わっている。両共通の通路124は排気口8の下方で1つの共通の部分125で合流している。4つの掃気通路121と123はすべて1つの共通の連通開口部126においてクランクケース内部空間42に開口している。
【0072】
図36に図示した2サイクルエンジン130の実施形態では、掃気窓132でもって燃焼室3に開口している、排気口に近い2つの掃気通路131と、掃気窓134でもって燃焼室3に開口している、混合気取り込み口に近い2つの掃気通路133とが設けられている。互いに隣接し合っているそれぞれ2つの掃気通路131と133は、2サイクルエンジン130のシリンダ142内において1つの共通の通路138に合流している。互いに対向し合っている掃気通路131と133の共通の通路138は、排気口8の下方で、連通開口部97でもってクランクケース内部空間42に開口している1つの共通の部分96で合流している。
【0073】
この場合、掃気通路131は掃気通路133よりも短く形成されている。排気口に近い掃気通路131は長さuを有し、これは混合気取り込み口に近い掃気通路133の長さvよりも小さい。掃気通路131と133の長さu,vが異なっているために、共通の通路138の領域に渦が生じる。このような渦が発生するのは、掃気予備蓄積空気が供給通路16から掃気通路131または133内で共通の通路138までに到達するために必要な時間が異なっているためである。これを回避するため、本発明によれば、掃気窓132と134は異なる制御時間を有している。掃気窓132は制御エッジ135を有し、制御エッジ135は、ピストン5の下降行程時に最初に開口する掃気窓132のエッジである。掃気窓134は対応する制御エッジ136を有している。制御エッジ135と136はシリンダ長手軸線24に平行に互いに間隔lを有している。
【0074】
シリンダ142は、該シリンダ142をクランクケース4とは逆の側で画成している燃焼室屋根部141を有している。ピストン5は、燃焼室3を画成するピストン底部139を有している。図25に図示したピストン5の下死点で、制御エッジ135はピストン底部139に対し間隔wを有し、これはピストン5の前記位置での制御エッジ136とピストン底部139との間隔xよりも小さい。これにより、混合気取り込み口に近い掃気通路134は、最初に燃焼室3に対し開口する。
【0075】
掃気窓132,134が開口すると、燃焼室3から掃気通路131と133内へ圧力波が侵入する。掃気窓134が掃気窓132の手前で燃焼室3に対し開口するので、掃気通路131が燃焼室3に対し開口する以前に、圧力波は混合気取り込み口に近い掃気通路133内ですでに特定の距離を進むことができる。これにより、両掃気通路内の圧力波がほぼ同時に共通の通路138の領域に到達することが達成される。これにより、掃気通路に対する異なる制御時間が設定されているにもかかわらず、掃気予備蓄積空気が掃気通路131と133からほぼ同時に燃焼室3内へ流入することが達成される。掃気通路131と133の制御時間が異なっていることにより、もし望ましければ、同時でない流入も達成できる。
【0076】
図37には2サイクルエンジン140の1実施形態が図示されており、その構成は実質的に図6に図示した2サイクルエンジン70の構成に対応している。2サイクルエンジン140は、長さの一部分にわたってシリンダ72内で案内されている掃気通路71と73を有している。シリンダ72内には、該シリンダ72内で燃焼室3を画成しているピストン145が往復動可能に支持されている。ピストン145はクランクケース内部空間42に対し閉じているピストンポケット143を有し、ピストンポケット143は混合気取り込み口に近い掃気通路73の掃気窓14の領域に配置されている。ピストン145の上死点の範囲でピストンポケット143を介して掃気予備蓄積空気が供給通路16から混合気取り込み口に近い掃気通路73内へ供給される。排気口に近い掃気通路71はピストン145のどの位置でもピストンポケット143と連通していない。これにより、掃気窓14に供給される掃気予備蓄積空気は、図37に図示した矢印146の方向において掃気通路73から掃気通路71へ流動する。
【0077】
ピストン145内には、排気口に近い掃気通路12の領域にピストン窓144が配置されている。ピストン窓144は、ピストン145の上死点範囲で掃気窓71をクランクケース内部空間42と連通させる。これにより、掃気通路71を掃気通路73からの掃気予備蓄積空気で完全に掃気することができる。掃気通路73を介して掃気予備蓄積空気は共通の通路51内へも供給される。2サイクルエンジン140の作動時に、掃気予備特積空気は供給通路16から掃気窓14を介して掃気通路73内へ供給され、そして矢印146の方向において共通の通路51を介して掃気通路71内へ供給される。最後のサイクルから出る、まだ掃気通路71内にあった残混合気は、掃気窓12とピストン窓144とを介してクランクケース内部空間42内へ押し出され、その結果掃気通路71は完全に掃気される。
【0078】
図38には、中心面157の互いに反対側に配置される2つの掃気通路153が形成されているシリンダ152を有する2サイクルエンジン150が図示されている。2つの掃気通路153は、それぞれ1つの掃気窓154でもって、シリンダ152内に形成されている燃焼室3に開口している。掃気通路153は混合気取り込み口9の領域で案内され、シリンダ152を螺旋状に取り囲んでいる。シリンダ足部25の領域で掃気通路153はクランクケース4に移行している。この場合、掃気通路153はシリンダ152とクランクケース4との間の分離面29で合流している。クランクケース4内で両掃気通路153は共通の部分156で案内されており、共通の部分156は連通開口部155でもってクランクケース内部空間42に開口している。
【0079】
図39に図示した2サイクルエンジン160の実施形態では、シリンダ162内に、中心面157の互いに反対側に配置される2つの掃気通路163が形成され、これらの掃気通路163はそれぞれ掃気窓164でもって燃焼室3に開口している。これらの掃気通路163は排気口8の下方で分離面29内で合流している。両掃気通路163は、クランクケース4内で、連通開口部165でもってクランクケース内部空間42に開口している共通の部分166で案内されている。図38と図39に図示した2サイクルエンジン150と160は、その他の点では前記の実施形態に対応している。たとえば、2サイクルエンジン150と160が図1に図示した2サイクルエンジン1と異なっているのは、シリンダの片側にそれぞれ1つの掃気通路のみが配置され、この掃気通路が排気口の下方か取り込み口の下方かのいずれかで案内されている点である。
【0080】
図40は、掃気空気予備蓄積で作動する2サイクルエンジン、たとえば図示した2サイクルエンジン1,70,100,130,150または160に使用可能なピストン185を示している。この場合、2サイクルエンジンはシリンダの各側に1つの掃気通路を有し、または、シリンダの各側に2つの掃気通路を有し、すなわち全部4つの掃気通路を有している。
【0081】
ピストン185は左右対称に配置される2つのピストンポケット183を有し、そのうち図40では、1つのピストンポケットが見て取れる。ピストンポケット183とピストン底部187との間には、軽量化のためのポケット190が配置されている。図40が示すように、ピストンポケット183はピストン底部187側の上縁186を有し、上縁186は直線状に延在せずに、ピストン周方向に一部分において螺旋状に延在している。図40には、掃気窓12と14および供給通路16の連通開口部が図示されている。また図40が示すように、上縁186は排気口に近い掃気窓12の領域においてピストン底部187に対し間隔188を有し、混合気取り込み口に近い掃気窓14の領域においてピストン底部187に対し間隔189を有している。なお、間隔188,189はシリンダ長手軸線に平行に測った間隔である。
【0082】
上縁186は、ピストン185の側面図で見て、排気口に近い掃気窓12の領域においてシリンダ長手軸線に対し傾斜して延在している。混合気取り込み口に近い掃気窓14の利用域においては、上縁186の短い部分のみが傾斜して延在している。上縁186は、混合気取り込み口に近い掃気窓14の領域において、図40に図示したシリンダ長手軸線24に対し実質的に垂直に延在している。間隔189が間隔188よりも小さいことにより、まず混合気取り込み口に近い掃気窓14がピストンポケット183および供給通路16と連通する。
【0083】
掃気窓12が図40に図示した位置にあるとき、排気口に近い掃気窓12はピストンポケット183に対しまだ閉鎖されている。ピストン185の更なる上昇行程時にはじめて、排気口に近い掃気窓12もピストンポケット183と連通する。図40に図示したピストンポケット83の構成は、特に、混合気取り込み口に近い掃気窓14に開口している掃気通路が排気口に近い掃気窓12に開口している掃気窓よりも長い場合に有利であり、すなわち特に、すべての掃気通路が2サイクルエンジンの排気口の下方で案内されている場合に有利である。上縁186が傾斜して延在していることにより、ピストンポケット183に対する掃気窓12の急激な開口ではなく、穏やかな開口が生じる。
【0084】
図41と図42は、互いに鏡対称に形成された2つのピストンポケット193を有するピストン195の1実施形態を示している。ピストンポケット193は、ピストン底部197側にある上縁196を有している。上縁196はシリンダ長手軸線24に対し実質的に垂直に延在している。しかしピストンポケット193は、混合気取り込み口に近い掃気窓14(図42)に隣接して、上縁196がピストン底部197の方向にずらして配置されている部分201を有している。部分201の領域での上縁196の間隔199は、排気口に近い掃気窓12の領域における上縁196の間隔198よりもかなり短い。部分201は周方向において有利には掃気窓14の一部分にわたって延在し、掃気窓14の全長にわたって延在していない。ピストン195が図42に図示した位置にあるとき、掃気窓14を部分201を介してすでに供給通路16と連通しており、他方掃気窓12はピストンポケット193に対しまだ閉鎖されている。ピストンポケット193とピストン底部197との間には、軽量化のためのポケット200が設けられている。図41および図42に図示したピストンポケット193の構成でも、掃気窓14に開口している掃気通路が掃気窓12に開口している掃気通路よりも長いような2サイクルエンジン、たとえば排気口の下方に掃気通路が案内されているような2サイクルエンジンにおいて特に有利である。
【0085】
掃気通路の図示した形状は、掃気空気予備蓄積方式で作動する2サイクルエンジンでも、掃気空気予備蓄積方式で作動しない2サイクルエンジンでも有利である。掃気空気予備蓄積方式で作動する2サイクルエンジンでも、掃気空気予備蓄積方式で作動しない2サイクルエンジンでも排ガス値は小さい。良好な流動特性と小さな排ガス値とは、特に図27ないし図32に図示したように掃気通路をシリンダ長手軸線に対し同心に配置した場合も得られる。このようにシリンダ長手軸線24に対し同心の円セグメントとして掃気通路の内壁および外壁を構成することは、図示したすべてのシリンダに対して有利である。
【符号の説明】
【0086】
1,70,100,130,140,150,160 2サイクルエンジン
2,72,82,102,112,122,142,152,162 シリンダ
4,104 クランクケース
5,145,185,195 ピストン
7 クランク軸
8 排気口
11,13,61,63,71,73,81,83,91,93,121,123,131,133,153,163 掃気通路
12,14,132,134,154,164 掃気窓
29,119 分離面
34 第1のセクター
35 第2のセクター
36 第3のセクター
37 第4のセクター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダ(2,72,82,102,112,122,142,152,162)内に形成されている燃焼室(3)を備え、該燃焼室(3)が前記シリンダ(2,72,82,102,112,122,142,152,162)内を往復動可能に支持されているピストン(5,145,185,195)によって画成され、該ピストン(5,145,185,195)がクランクケース(4,104)内に回転可能に支持されているクランク軸(7)を駆動し、前記クランクケース(4,104)が前記ピストン(5,145,185,195)の少なくとも1つの位置において少なくとも2つの掃気通路(11,13,61,63,71,73,81,83,91,93,121,123,131,133,153,163)を介して前記燃焼室(3)と連通し、前記掃気通路(11,13,61,63,71,73,81,83,91,93,121,123,131,133,153,163)が前記ピストン(5,145,185,195)によって制御されるそれぞれ1つの掃気窓(12,14,132,134,154,164)でもって前記燃焼室(3)に開口し、2サイクルエンジン(1,70,100,130,140,150,160)が前記クランクケース(4,104)に通じる取り込み口(9)と前記燃焼室(3)から出ている排気口(8)とを有し、前記2サイクルエンジン(1,70,100,130,140,150,160)がシリンダ長手軸線(24)に対し平行に延在している4つのセクター(34,35,36,37)に分割可能であり、第1のセクター(34)が第1の掃気通路(11,13,61,63,71,73,81,83,91,93,121,123,131,133,153,163)の掃気窓(12,14,132,134,154,164)を有し、前記第1のセクターに境を接している第2のセクター(35)が前記排気口(8)を有し、前記第2のセクター(35)に境を接している第3のセクター(36)が第2の掃気通路(11,13,61,63,71,73,81,83,91,93,121,123,131,133,153,163)の掃気窓(12,14,132,134,154,164)を有し、前記第1のセクター(34)と前記第3のセクター(36)との間に配置されている第4のセクター(37)が前記クランクケース(4,104)への前記取り込み口(9)とを有し、第1および第2の掃気通路(11,13,61,63,71,73,81,83,91,93,121,123,131,133,153,163)が、前記シリンダ(2,72,82,102,112,122,142,152,162)内で、該シリンダ(2,72,82,102,112,122,142,152,162)と前記クランクケース(4,104)との間の分離面(29,119)に対し間隔(a,b,p,q,r)をもって、境を接する1つの共通のセクター(35,37)で案内されている2サイクルエンジン。
【請求項2】
両掃気通路(11,13,61,63,71,73,81,83,91,93,121,123,131,133,153,163)が1つの共通の部分(40,41,52,96,106,116,125,156,166)を有し、該共通の部分において前記両掃気通路(11,13,61,63,71,73,81,83,91,93,121,123,131,133,153,163)が一緒に案内され、前記両掃気通路(11,13,61,63,71,73,81,83,91,93,121,123,131,133,153,163)が、前記共通の部分(40,41,52,96,106,116,125,156,166)を、その前記クランクケース(4,104)側端部に有していることを特徴とする、請求項1に記載の2サイクルエンジン。
【請求項3】
前記両掃気通路(11,13,61,63,71,73,81,83,131,133,153,163)が、前記シリンダ(2,72,82,102,142,152,162)と前記クランクケース(4,104)との間の前記分離面(29)内で合流していることを特徴とする、請求項2に記載の2サイクルエンジン。
【請求項4】
前記両掃気通路(91,93,121,123)が前記シリンダ(112,122)内で合流していることを特徴とする、請求項2に記載の2サイクルエンジン。
【請求項5】
前記掃気通路(11,13,61,63,71,73,81,83,91,93,121,123131,133,153,163)の半径方向外側にある外壁(94,170,172,174,176)と、前記掃気通路(11,13,61,63,71,73,81,83,91,93,121,123131,133,153,163)の半径方向内側にある内壁(92,171,173,175,177)とが、前記掃気通路(11,13,61,63,71,73,81,83,91,93,121,123131,133,153,163)の長さの少なくとも一部分にわたって、前記シリンダ長手軸線(24)に対し同心に延在している円セグメントとして形成されていることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか一つに記載の2サイクルエンジン。
【請求項6】
前記クランクケース(4,104)が、前記シリンダ長手軸線(24)に対し平行に延在している分離面(47)を有する2つの半シェル(45,46)から形成されていること、前記掃気通路(11,13,61,63,71,73,81,83,131,133,153,163)が前記クランクケース(4,104)内において該クランクケース(4,104)の前記分離面(47)内に延在していることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか一つに記載の2サイクルエンジン。
【請求項7】
前記クランクケース(104)内の前記掃気通路(12,14)が、前記クランクケース(104)内に形成された凹部(105)と、前記シリンダ(102)に配置され、前記分離面(29)を経て前記クランクケース(104)内へ突出しているカラー(103)とから形成されていることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか一つに記載の2サイクルエンジン。
【請求項8】
前記シリンダ(2,72,82,102,112,122,142)が4つの掃気窓(12,14,132,134)を有し、そのうち2つの掃気窓(12,14,132,134)が前記2サイクルエンジン(1,70,100,130,140)の前記第1のセクター(34)内に配置され、2つの掃気窓(12,14,132,134)が前記第3のセクター(36)内に配置されていることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか一つに記載の2サイクルエンジン。
【請求項9】
2つの掃気窓(11,13,61,63)が前記第2のセクター(35)で合流し、2つの掃気窓(11,13,61,63)が前記第4のセクター(37)で合流していることを特徴とする、請求項8に記載の2サイクルエンジン。
【請求項10】
4つのすべての掃気通路(71,73)が1つのセクター(37,35)で合流していることを特徴とする、請求項8に記載の2サイクルエンジン。
【請求項11】
前記掃気窓(12,14,132,134)が1つのセクター(34,36)に開口している2つの掃気通路(61,63,71,73,81,83,91,93,121,123,131,133)が異なる通路長さ(i,k,m,t,u,v)を有し、前記取り込み口に近い掃気窓(14,134)に開口している掃気通路(83,93,123,133)が、前記排気口に近い掃気窓(12,132)に開口している掃気通路(81,91,212,131)よりも長く、1つのセクター(34,36)内に配置される2つの掃気窓(132,134)が異なる制御時間を有し、より長い掃気通路(133)の前記掃気窓(134)がより短い掃気通路(131)の前記掃気窓(132)の手前で開口していることを特徴とする、請求項8から10までのいずれか一つに記載の2サイクルエンジン。
【請求項12】
前記掃気窓(12,14,132,134)が1つのセクター(34,36)に開口している2つの掃気通路(71,73,81,83,91,93,121,123,131,133)が1つの共通の通路(51,95,124)に合流し、前記掃気通路(71,73,81,83,91,93,121,123,131,133)が前記シリンダ(72,82,102,112,122,142)と前記クランクケース(4,104)との前記分離面(29)に対し間隔(s)をもって1つの共通の通路(51,95,124)に合流し、前記掃気通路(71,73,81,83,91,93,121,123,131,133)は、該掃気通路(71,73,81,83,91,93,121,123,131,133)の前記掃気窓(12,14,132,134)が配置されている前記セクター(34,35)内で合流していることを特徴とする、請求項8から11までのいずれか一つに記載の2サイクルエンジン。
【請求項13】
前記2サイクルエンジン(140)が掃気予備蓄積空気を供給するように前記シリンダ(142)に開口している供給通路(16)を有し、前記ピストン(145)がピストンポケット(143)を有し、該ピストンポケット(143)が前記供給通路(16)を前記取り込み口に近い掃気窓(14)と連通させ、他方前記排気口に近い掃気窓(12)が前記ピストン(145)を介して前記クランクケース内部空間(42)と連通していることを特徴とする、請求項8から12までのいずれか一つに記載の2サイクルエンジン。
【請求項14】
前記2サイクルエンジン(1,70,100,130)が掃気予備蓄積空気を供給するように前記シリンダ(2,72,82,102,142)に開口している供給通路(16)を有し、前記ピストン(185,195)がピストンポケット(183,193)を有し、該ピストンポケット(183,193)が前記供給通路(16)を前記掃気窓(12,14;132,134)と連通させ、前記ピストン(185,195)の少なくとも1つの位置で1つの掃気窓(12,132)が完全に閉鎖しており、他方隣接している掃気窓(14,134)がすでに前記ピストンポケット(183,193)を介して前記供給通路(16)と連通していることを特徴とする、請求項8から13までのいずれか一つに記載の2サイクルエンジン。
【請求項15】
前記2サイクルエンジン(1,70,100,130,150,160)が掃気予備蓄積空気を供給するように前記シリンダ(2,72,82,102,142,152,162)に開口している供給通路(16)を有し、前記ピストン(185,195)がピストンポケット(183,193)を有し、該ピストンポケット(183,193)が前記供給通路(16)を前記掃気窓(12,14;132,134;154,164)と連通させ、前記ピストンポケット(182,193)が上縁(186,196)を有し、該上縁の、前記ピストン底部(187,197)に対する間隔(188,189,198,199)が前記ピストン(185,195)の周方向に変化していることを特徴とする、請求項1から14までのいずれか一つに記載の2サイクルエンジン。
【請求項16】
前記シリンダ足部(25)での前記連通開口部(27,28)がクランク軸軸線(26)に対し平行に延在する幅広面(53)とこれに対し垂直に延在する幅狭面(54)とを有するように、少なくとも1つの掃気通路(11,13,61,63)が前記シリンダ(2)内で案内されていること、流動方向(59)に対し垂直な横断面(55,56)における前記幅広面(53)の長さ(c,e,g)が前記掃気窓(12,14)側で減少し、前記流動方向(59)に対し垂直な前記横断面(55,56)における前記幅狭面(54)の長さ(d,f,h)が前記掃気窓(12,14)側で増大し、流動方向(59)に対し垂直に延在するように前記掃気窓(14)に隣接して位置する前記横断面(56)において、前記幅広面(53)の長さ(g)が前記幅狭面(54)の長さ(h)よりも小さく、前記幅広面(53)の長さ(c,e,g)と前記幅狭面(54)の長さ(d,f,h)との積が、前記流動方向(59)に対し垂直な前記掃気通路(13)の各横断面(55,56)ごとにほぼ等しいことを特徴とする、請求項1から15までのいずれか一つに記載の2サイクルエンジン。
【請求項17】
請求項1から16までのいずれか一つに記載の2サイクルエンジンを製造するための砂中子において、
砂中子(107)は、互いに対向する2つのセクター(34,36)内に配置される少なくとも2つの掃気通路(91,93)を形成させる部分(110,111)を有している砂中子。
【請求項18】
前記砂中子(107)が少なくとも1つの結合部分(108,109)を有し、該結合部分(108,109)が、互いに対向している前記セクター(34,36)内に配置されている前記掃気通路(91,93)をその燃焼室側端部において形成させる部分(110,111)を互いに結合させていることを特徴とする、請求項17に記載の砂中子。
【請求項19】
2サイクルエンジンの作動方法であって、該2サイクルエンジンが、シリンダ(2)内に形成されている燃焼室(3)を備え、該燃焼室(3)が前記シリンダ(2)内を往復動可能に支持されているピストン(145)によって画成され、該ピストン(145)がクランクケース(4)内に回転可能に支持されているクランク軸(7)を駆動し、前記クランクケース(4)が前記ピストン(145)の少なくとも1つの位置において少なくとも2つの掃気通路(71,73)を介して前記燃焼室(3)と連通し、前記掃気通路(71,73)が前記ピストン(145)によって制御されるそれぞれ1つの掃気窓(13,14)でもって前記燃焼室(3)に開口し、2サイクルエンジン(140)が前記クランクケース(4)に通じる取り込み口(9)と前記燃焼室(3)から出ている排気口(8)とを有し、前記2サイクルエンジン(140)がシリンダ長手軸線に対し平行に延在している4つのセクター(34,35,36,37)に分割可能であり、第1のセクター(34)が掃気通路(71,73)の2つの掃気窓(13,14)を有し、前記第1のセクターに境を接している第2のセクター(35)が前記排気口(8)を有し、他の側で前記第1のセクター(34)に境を接している第4のセクター(37)が取り込み口(9)を有し、両掃気通路(71,73)が1つの共通の通路(51)に合流し、前記シリンダ(2)に開口して掃気予備蓄積空気を供給するための供給通路(16)が設けられ、前記ピストン(145)がピストンポケット(143)を有している前記2サイクルエンジンの作動方法において、
前記ピストン(145)の上死点範囲で、前記取り込み口に近い掃気通路(73)の前記掃気窓(14)を前記ピストンポケット(143)を介して前記供給通路(16)と連通させて、前記取り込み口に近い掃気通路(73)に掃気予備蓄積空気を供給すること、
前記取り込み口に近い掃気通路(73)を介して掃気予備蓄積空気を前記排気口に近い掃気通路(71)に供給すること、
を特徴とする作動方法。
【請求項20】
シリンダ(2)内に形成されている燃焼室(3)を備え、該燃焼室(3)が前記シリンダ(2)内を往復動可能に支持されているピストン(145)によって画成され、該ピストン(145)がクランクケース(4)内に回転可能に支持されているクランク軸(26)を駆動し、前記クランクケース(4)が前記ピストン(145)の少なくとも1つの位置において少なくとも2つの掃気通路(71,73)を介して前記燃焼室(3)と連通し、前記掃気通路(71,73)が前記ピストン(145)によって制御されるそれぞれ1つの掃気窓(13,14)でもって前記燃焼室(3)に開口し、2サイクルエンジン(140)が前記クランクケース(4)に通じる取り込み口(9)と前記燃焼室(3)から出ている排気口(8)とを有し、前記2サイクルエンジン(140)がシリンダ長手軸線(24)に対し平行に延在している4つのセクター(34,35,36,37)に分割可能であり、第1のセクター(34)が掃気通路(71,73)の2つの掃気窓(13,14)を有し、前記第1のセクター(34)に境を接している第2のセクター(35)が前記排気口(8)を有し、他の側で前記第1のセクター(34)に境を接している第4のセクター(37)が前記取り込み口(9)を有し、前記掃気通路(71,73)が1つの共通の通路(51)に合流し、前記シリンダ(2)に開口して掃気予備蓄積空気を供給するための供給通路(16)が設けられ、前記ピストン(145)がピストンポケット(143)を有している前記2サイクルエンジンにおいて、
前記ピストンポケット(143)が、前記取り込み口に近い掃気通路(73)の前記掃気窓(14)の領域に配置され、前記排気口に近い掃気通路(71)の前記掃気窓(13)の領域には延在していないことを特徴とする2サイクルエンジン。
【請求項21】
シリンダ(142)内に形成されている燃焼室(3)を備え、該燃焼室(3)が前記シリンダ(142)内を往復動可能に支持されているピストン(5,185,195)によって画成され、該ピストン(5,185,195)がクランクケース(4)内に回転可能に支持されているクランク軸(7)を駆動し、前記クランクケース(4)が前記ピストン(5,185,195)の少なくとも1つの位置において少なくとも2つの掃気通路(131,133)を介して前記燃焼室(3)と連通し、前記掃気通路(131,133)が前記ピストン(5,185,195)によって制御されるそれぞれ1つの掃気窓(132,134)でもって前記燃焼室(3)に開口し、2サイクルエンジン(130)が前記クランクケース(4)に通じる取り込み口(9)と前記燃焼室(3)から出ている排気口(8)とを有し、前記2サイクルエンジン(130)がシリンダ長手軸線(24)を含み且つ前記排気口(8)を分割している中心面(137)を有し、前記掃気通路(131,133)の前記掃気窓(132,134)が前記中心面(137)の片側に配置され、前記2サイクルエンジン(130)が掃気予備蓄積空気を供給するための供給通路(16)を有している2サイクルエンジンにおいて、
前記両掃気通路(131,133)が1つの共通の通路(138)に合流していること、
前記ピストン(5,185,195)の下降行程時に前記掃気窓(132,134)が順次前記燃焼室(3)に対し開口すること、
を特徴とする2サイクルエンジン。
【請求項22】
前記ピストン(5,185,195)が平坦なピストン底部(139,187,197)を有していること、前記掃気窓(135,136)の燃焼室屋根側の制御エッジ(135,136)が、前記ピストン(5,185,195)の下死点で、前記ピストン底部(139)に対し異なる間隔を有し、前記ピストン(5,185,195)の下死点で、前記ピストン底部(139,185,195)に対する前記取り込み口に近い掃気通路(133)の前記制御エッジ(136)の間隔(x)が、前記排気口に近い掃気通路(135)の前記制御エッジ(135)の間隔(w)よりも大きいことを特徴とする、請求項21に記載の2サイクルエンジン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【公開番号】特開2011−127608(P2011−127608A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−281583(P2010−281583)
【出願日】平成22年12月17日(2010.12.17)
【出願人】(598052609)アンドレアス シュティール アクチエンゲゼルシャフト ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト (95)
【Fターム(参考)】