説明

2台給気ファンを備えた空気調和装置

【課題】
制作費の安価であって保守も簡便で、且つ、1台のファン駆動モータやファンが故障した場合でも、空気調和装置を連続して駆動させ、その間に故障したファンの補修が可能であり、オフピーク時には省エネルギーが可能な2台給気ファンを備えた空気調和装置を提供する。
【解決手段】
1台の空気調和装置は少なくとも独立駆動する2台以上のファンモータ及びファンを備え、通常運転時は2台又はどちらか1台のファンモータ及びファンを駆動するとともに、各ファンの下流の供給口には風圧により自動的に開口し風圧が無い場合には閉じる供給ダンパをそれぞれ配置し、いずれかのファンが停止した異常運転時には対応するファンの供給ダンパを自動的に閉じる2台給気ファンを備えた空気調和装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気を調和する空調システムに係り、特に、ファンが故障する事故があった場合に、これに対処するための2台給気ファンを備えた空気調和装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近時、コンピュータシステムの大型化に伴い、作業量も多くコンピュータシステムがダウンする事故が多く、その中でも、ファンモータの故障やファンの不具合が発生している。
コンピュータシステムがダウンするのを防ぐために、電源に関しては、例えば、特許文献1に開示されているように、商用電源の他にバックアップの無停電電源装置を配備したりしているが、ファン駆動モータの故障やファンの不具合が生じる事故も多かった。
【0003】
このため、近時の大型の空気調和装置、例えば、大型のコンピュータルームでの空気調和装置は台数も多く、そのバックアップ用の空気調和装置の台数も多くしなければならず、そのために、大きなスペースも必要となり、経費が多額になるといった問題点があった。特に、通常運転時の空気調和装置とは別に同じ規格の予備の空気調和装置を待機させる形式、所謂、完全バックアップ方式では二台の独立駆動される空気調和装置の全体のサイズ、スペースをコンパクトにするのに限界があった。
このため、複数台の空気調和装置を配備し、複数台の空気調和装置と並列して、バックアップ用の予備の空気調和装置を配備して、複数台の空気調和装置のどれかが故障して送風が停止、あるは、冷房できなくなった場合には、その空気調和装置の背後の空気調和装置を稼働する空調システムが開発されている。
更に、本出願人らによって、特許文献2に示されるように、空気調和装置において、独立駆動する二台以上のファンモータ及び給気ファン並びに二台以上のコイルを備え、ファンモータは回転制御するためのインバータを備え、通常運転時は全てのファンモータを駆動するとともに全てのコイルを稼働し、どれか1台ファンが停止した異常運転時には、駆動しているファンモータの回転数をインバータにより高めるとともにコイルへの熱媒体の供給量を調整し、又は、どれか1台のコイルの稼働が停止した異常運転時には、稼働しているコイルへの熱媒体の供給量を調整して、通常運転時の空気調和状態とほぼ同等の状態に維持する空調システムを提供している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−269811号公報
【特許文献2】特開2007−232312号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前述した特許文献2の空気調和装置(システム)も、バックアップのために2台給気ファンを備えた空気調和装置ではあるが、電算室用として開発したものであるため、暖房用コイルは配置しておらず、電算室用であるため、通常運転時の空気調和状態とほぼ同等の状態に維持しなければならず、熱交換機であるコイルも二台備え、そのためのファンモータ回転制御するためのインバータもそれぞれ備える必要があった。すなわち、1台ファンが停止した異常運転時には駆動しているファンモータの回転数をインバータにより高めるとともにコイルへの熱媒体の供給量を調整する必要があり、又は、1台のコイルの稼働が停止した異常運転時には、稼働しているコイルへの熱媒体の供給量を調整する必要があった。
このため、通常の居室の空気調和装置では、暖房システムが必要であるが暖房コイルが配置されておらず、また、高価な冷却コイルを2台設けることや、駆動モータを制御するためのインバータを必要とすること、駆動モータへの複雑な制御手段を必要とする等の問題点があった。
本発明は、上述した問題点に鑑みてなされたもので、暖房も可能な通常の空気調和装置においても、制作費が安価であって保守も簡便で、1台のファン駆動モータやファンが故障した場合でも、空気調和装置を連続して駆動させ、且つ、その間に故障したファンの補修が可能であり、オフピーク時には省エネルギーが可能な2台給気ファンを備えた空気調和装置を提供するすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、1台の空気調和装置が少なくとも独立駆動する2台以上のファンモータ及び給気ファンを備え、通常運転時は2台又はどちらか1台のファンモータ及び給気ファンを駆動するとともに、各給気ファンの下流の供給口には風圧により自動的に開口し風圧が無い場合には閉じる供給ダンパをそれぞれ配置し、いずれかの給気ファンが停止した異常運転時には対応する給気ファンの供給ダンパを自動的に閉じる2台給気ファンを備えた空気調和装置である。
請求項2の発明は、前記供給ダンパが、重り又はバネを用いて開閉を風圧により自動的に制御するようにした請求項1に記載の2台給気ファンを備えた空気調和装置である。
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2において、前記給気ファンの回転軸は送風室の枠体の外側に配置したモータにより駆動される2台給気ファンを備えた空気調和装置である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、1台の空気調和装置に2台のファン駆動モータ及び給気ファンを配備したもので、一方のファン駆動モータが故障したりファンに不具合が生じても、他方のファン駆動モータ及び給気ファンを稼働させて、通常運転時或いはほぼ通常運転時の約70%程度の空気調和状態に維持することができ、かつ、空気調和装置を正常な他のファン駆動モータ及び給気ファンで連続して駆動させることができるので、その間に故障した給気ファンの補修が可能である。
また、オフピーク時には、一方のファン駆動モータ及び給気ファンを停止させ、1台のファン駆動モータ及び給気ファンを最も適正な状態で効率良く稼働させることができるので省エネルギーが可能となる。
さらに、各給気ファンの下流の供給口には風圧により自動的に開口し風圧が無い場合には閉じる供給ダンパをそれぞれ配置し、いずれかの給気ファンが停止した異常運転時には、対応する給気ファンの供給ダンパが自動的に閉じるようにしたので、複雑な制御系を必要とせず装置の製作費が安価で保守も簡便である。
また、基本的には空気調和装置の1台だけでバックアップ空気調和装置を配備する必要がなく制作費用を安価にすることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施例の空気調和装置の全体の概略を示す正面図、
【図2】図1のファン室側からの側面図、
【図3】図1の給気ダンパ部分の部分断面における上方からの平面図、
【図4】本発明の実施例の2ファン→1ファン空気割合を示すグラフの図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の好適な2台給気ファンを備えた空気調和装置の実施例を図面に沿って説明する。
図1は空気調和装置1の全体の概略を示す正面図で、図2はファン室側からの側面図、図3は図1の平面図である。図1乃至図3において、空気調和装置1は、主に図1の右側の熱交換(コイル)室2と左側ファン室3からなっており、両室はファン室3の振動を熱交換室2に伝わるのを遮るために、連結キャンバス4で気密に連結されている。
【0010】
熱交換(コイル)室2は、還気口21が還気ダクト(図示せず)に連結されていて、この還気口21で居室等からの還気RAを取り入れ、プレフィルター付きのフィルター22、冷房用の冷却コイル23、暖房用の加熱コイル24、加湿を調整する水気化式加湿器25の順に通過させて空気調和する。
この空気調和された空気はファン室3に導入されるが、ファン室3は2台の給気ファンであるプラグファン5a,5bのために隔壁31で仕切られて、それぞれのプラグファン室32a,32bが形成され、このそれぞれの室内にプラグファン5a,5bとこれらの給気ファンからの吹き出された空気を案内するが渦巻き状の空気案内板51a,51bが配置されており、これらのプラグファン5a,5bに対応して、ファン室3のファン室枠体33の外側のモータ架台34a,34bを直結し、且つ、おのおののプラグファン5a,5bは、互いに独立して駆動可能な駆動モータ6a,6bが接続されている。
【0011】
なお、駆動モータ6a,6bをファン室3のファン室枠体33の外側に設けたのは、駆動モータ6a,6bを気密にファン室枠体33の外側の適所にモータ架台34a,34bに据え付けてあるが、プラグファン5a,5bに交換作業や修理作業、及びメンテナンスが容易にでき、また、駆動モータ6a,6b自体の保守が容易であるのと、駆動モータ6a,6bの発熱による空気を、ファン室3の外側に放出するためである。
また、プラグファン5a,5bは駆動モータ6a,6bに直結させたので、従来のようなベルトや軸受けを必要としないので伝動ロスが少なく、軸動力を軽減するとともに、ベルト交換に関わる時間、材料費、メンテナンスコストを不要としている。
前記プラグファン5a,5bに対応して、ファンの下流には居室に調和された給気SAを給気ダクト(図示さず)に連結する共通の供給口35が設けられ、また、ファンの下流側で供給口35の下流側の中間位置には、それぞれの稼働時のプラグファン5a,5bの風圧により自動的に開口し、風圧が無い場合には閉じる供給ダンパ7a,7bが配置されている。
【0012】
この供給ダンパ7a,7bは、特に、図2に示すように、ダンパ羽根71がその面の縁近傍に配置した回動軸72を中心に回動可能に軸支されており、ダンパ羽根71の数は風量によって数は変わるが本実施例では3枚である。そして、ダンパ羽根71自体は自重で水平位置になるようにしてあるが、中央のダンパ羽根71は回動軸72の延長上には重り74が回動腕73の適所に調整可能に固定されている。
この重り74は、ダンパ羽根71の自重による回動度合いを調整するためのもので、図2の右側の点線の状態のように、ファンからの風圧が無い場合には、ダンパ羽根71自体の重さの下向きの力(図矢印)によりダンパ羽根71自体も反時計方向に回転し、複数のダンパ羽根71はリンク75により連動して同じように水平状態に近づき、供給ダンパ7a,7bを閉じた状態に維持する。
逆に、プラグファン5a,5bが稼働され風圧が生じると、図2の左側の実線の状態のように、ダンパ羽根71の面が風圧を受け、ダンパ羽根の自重での下向の力に抗して、供給ダンパ7a,7bのダンパ羽根71が時計方向に回動して自動的に開口するが、この際にダンパ羽根71の自重が余り重すぎると開口負荷が大きすぎるので、重り74は、その際の回動度合いが適当になるように、すなわち、ダンパ羽根71の回動が軽くなるように、下向きの加重を調整可能となるように取り付けられている。そして、供給ダンパ7a,7bが自動開口されて給気SAを居室に供給する。したがって、この供給ダンパ7a,7bは、ダンパ入れ替えの手間間もなく、別途に動力を必要としない省エネルギータイプのものである。なお、ダンパ羽根71の回動方向の反時計方向及び時計方向については、ダンパの自動開閉が可能であれば逆方向であっても勿論構わない。
【0013】
以上の構成による本発明の実施例の作動を説明する。
(1)2ファン稼働の正常運転時
夏場や冬場の空気調和装置の稼働ピーク時、或いは日中の稼働ピーク時には、2台の駆動モータ6a,6b及びプラグファン5a,5bは通常の回転で、送風を最大にして空気調和した給気SAを居室に供給する。
【0014】
(2)1ファン稼働の正常運転時
春、秋等或いは朝夕のオフピーク時には、どちらか1台の駆動モータ6a,6b及びプラグファン5a,5bの稼働を停止する。これは、例えば、温度センサーを用いて制御すれば良いが、この場合には図4の2ファンと1ファンの送風割合のグラフから明らかなように、2台の駆動モータ6a,6b及びプラグファン5a,5bをフル稼働させ状態(100%)に比べて、1台だけの稼働でも2台稼働時の約70%の風量が得られることを利用したもので、1台だけの稼働であるから省エネルギーに寄与する。
なお、この場合には、停止して駆動モータ6a,6b及びプラグファン5a,5b側の供給ダンパ7a,7bは自動的に閉鎖する。
なお、空調負荷は建物の使用状況、在室人員、外気状態などに大きく左右され、年間(シーズン)だけでなく、日間(デイリー)の大部分がオフピーク運転で賄える。本実施例では、駆動モータ6a,6b及びプラグファン5a,5bのどちらかの片方を停止するだけで、図4のグラフのように、送風性能約70%で冷房加熱能力約80%を確保でき、しかも、インバータやVAV等の施設を必要とせず、運転ロスも軽減できる。
【0015】
(3)故障の運転時
上述したように、駆動モータ6a,6b及びプラグファン5a,5bの一方だけでも、2台稼働時に比べて約70%の送風が得られるので、万が一、一方の1台の駆動モータ6a,6bが故障等で停止しても、他方の駆動モータ6a,6b及びプラグファン5a,5bでバックアップ運転が可能となり、又、停止した駆動モータ6a,6b側の給気ダンパ7a,7bが閉じる。したがって、従来のようにバックアップ機を用意する必要がないので、常に最低限の風量が確保できるので、スペース的にも有利でありバックアップスペースの無い現場でも採用可能であり、サービス性の低下等で大きな損害を来すこともない。
しかも、互いの両駆動モータ6a,6b及びプラグファン5a,5bが独立構造で、かつ、どちらか一方の駆動モータ6a,6b及びプラグファン5a,5bを停止しても最低限の風量が確保できることから、他方の駆動モータ6a,6b及びプラグファン5a,5bのメンテナンス、修理、交換が容易に行うことができ、これまで不可能であって空調中のメンテナンスを行うことができる。
もっとも、故障し停止した駆動モータ6a,6b側の供給ダンパ7a,7bは自動的に閉じて、バックアップ運転に切り替わるが、本実施例では、メンテナンス対象のプラグファン5a,5bのインレットコーン等の吸い込み口には、特段封鎖手段を設けていないので、メンテナンス作業に当たっては、一旦2台駆動モータ6a,6bを停止してメンテナンス対象の吸い込み口に蓋をする必要がある。
【0016】
以上のように、本発明の実施例によれば、1台の空気調和装置1に2台の駆動モータ6a,6b及びプラグファン5a,5bを配備したので、一方のファン駆動モータ6a,6bが故障したりプラグファン5a,5bに不具合が生じても、他方の駆動モータ6a,6b及びプラグファン5a,5bを稼働させて、通常運転時或いはほぼ通常運転時の約70%程度の空気調和状態に維持することができ、かつ、空気調和装置を正常な他の駆動モータ6a,6b及びプラグファン5a,5bで連続して駆動させることができるので、その間に故障したファンの補修が可能である。
また、オフピーク時には、一方の駆動モータ6a,6b及びプラグファン5a,5bを停止させ、1台の駆動モータ6a,6b及びプラグファン5a,5bを最も適正な状態で効率良く稼働させることができるので省エネルギーが可能なる。
さらに、各プラグファン5a,5bの下流の供給口35には風圧により自動的に開口し風圧が無い場合には閉じる供給ダンパ7a,7bをそれぞれ配置し、いずれかのプラグファン5a,5bが停止した異常運転時には、対応する駆動モータ6a,6b及びプラグファン5a,5bの供給ダンパ7a,7bが自動的に閉じるようにしたので、複雑な制御系を必要とせず装置の製作費も安価で保守が簡便である。
また、基本的には空気調和装置1の1台だけでバックアップ空気調和装置を配備する必要がなく制作費用を安価にすることが出来る。
【0017】
なお、本発明の特徴を損うものでなければ、上記の実施例に限定されるものでないことは勿論であり、例えば、2台の駆動モータ6a,6b及びプラグファン5a,5bの向きを平行にして配置したが、2台のモータ及びプラグファンを対向して設けも良いことは勿論である。また、自動開閉の供給ダンパ7a,7bには重り74を用いたが、バネを用いたものでもよく、他に磁力等を用いたものでもよく、要は、無動力で風圧により自動的に開口し風圧が無い場合には閉じる構成のもであれば良い。また、給気ファンとして、プラグファン5a,5bを用いたが、同じ性能を有するものであれば、他形式のファンを用いてもよい。
【符号の説明】
【0018】
1・・空気調和装置、
2・・熱交換室、21・・還気口、22・・フィルター、
23・・冷却コイル、24・・加熱コイル、25・・水気化式加湿器、
3・・ファン室、31・・隔壁、32a,32b・・プラグファン室(給気ファン)、
33・・ファン室枠体、
34a,34b・・モータ架台、35・・供給口
4・・連結キャンバス、
5a,5b・・プラグファン、51a,51b・・空気案内板
6a,6b・・駆動モータ、
7a,7b・・供給ダンパ、71・・ダンパ羽根、72・・回動軸、
73・・回動腕、74・・重り、75・・リンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1台の空気調和装置は少なくとも独立駆動する2台以上のファンモータ及び給気ファンを備え、通常運転時は2台又はどちらか1台のファンモータ及び給気ファンを駆動するとともに、各給気ファンの下流の供給口には風圧により自動的に開口し風圧が無い場合には閉じる供給ダンパをそれぞれ配置し、いずれかの給気ファンが停止した異常運転時には対応する給気ファンの供給ダンパを自動的に閉じることを特徴とする2台給気ファンを備えた空気調和装置。
【請求項2】
前記供給ダンパは、重り又はバネを用いて開閉を風圧により自動的に制御することを特徴とする請求項1に記載の2台給気ファンを備えた空気調和装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2において、前記給気ファンの回転軸は送風室の枠体の外側に配置したモータにより駆動されることを特徴とする2台給気ファンを備えた空気調和装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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