説明

2層遮光層を用いた食品容器用インモールドラベル

【課題】ラベルの遮光層に含まれる金属成分の問題を解決することができる食品容器用インモールドラベルを提供する。
【解決手段】2層遮光層を用いた食品容器用インモールドラベルは、インモールドラベルの用紙1と、用紙1の表面の印刷済面2と、印刷済面2にコーティングされたオーバプリントニス層3と、用紙1裏面に遮光層と、接着ニス層5を設けた食品容器用インモールドラベルにおいて、遮光層は補色の関係にあるインキを用いた2層(4B,4G)により形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷等を施して食品容器のラベルとして使用可能な遮光層を備えた食品容器用インモールドラベルに関する。さらに詳しく言えば補色の関係にあるインキを用いた2層により遮光層を形成した2層遮光層を用いた食品容器用インモールドラベルに関する。
【背景技術】
【0002】
インジェクション成形及びブロー成形等において、成形時の金型の中にラベルを挿入して成形と同時に絵柄付けを行うインモールドラベルで、内容物が光により変質してしまうのを防止するために、インモールドラベルに遮光性を与える提案(特許文献1〜4)が数多くなされ、実施されている。
【0003】
図3は、従来のインモールドラベルの一例を示す断面図である。なおこの構成は下記特許文献のそれぞれに対応するものではない。
用紙11の表面には絵柄印刷層12が印刷されており、その表面にオーバプリントニス層13が形成されている。用紙11の裏面、容器側に遮光層14がコート(遮光用ベタ印刷)され、さらに遮光用ベタ印刷で使用するインキ等は容器成形時の樹脂とは直接接着しないので容器成形樹脂とインキとを接着させる接着ニスが使用される。よって、ラベルを容器等に接着するための接着ニス層15が設けられている。接着ニスは大日精化や東洋インキなどから一般に市販されている。接着ニス層15は遮光用ベタ印刷と合わせてグラビア印刷およびコートで塗布されることが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−91027号公報
【特許文献2】特開平11−105067号公報
【特許文献3】特開平11−105203号公報
【特許文献4】特開2000−25844号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来遮光に使用するインキは、カーボンブラックや酸化鉄を用いて黒っぽい色にすることが多かった。
カーボンブラックは昨今発癌性が指摘されており、遮光層に含まれる酸化鉄や銀インキは、食品容器を射出成形する会社や食品会社で用いられる金属探知器の使用を妨げるなどの問題点があった。すなわち、事故で混入した金属と、遮光層の金属の区別がつかなくなるのである。
【0006】
そのようなカーボンブラックや酸化鉄を用いない遮光層として、通常、褐色系なら褐色の1度刷りまたは2度刷りや、緑色系なら同じく緑色の1度刷りまたは2度刷りで対応するのが一般的であった。このような遮光層を使用した場合の問題点を着色フィルムの光透過率を示すグラフ(図4)を参照して以下説明する。
ア.一般に遮光を考える時、褐色系は主に赤と黄のインキを混合したものがベースとなるためピ−クから650nm以上の波長領域の光は比較的透過しやすくなる。
また緑色系は主に藍と黄のインキを混合したものがベースとなるため、500〜550nmおよび750〜800nm付近の波長領域の光は比較的透過しやすくなる。
イ.これら藍・赤・黄または透明黄の3色を混合すると黒っぽい色となり遮光性は上がるが100%を混合状態とした場合、個々の色は平均33%付近となるため濃度が不足しその分遮光性は低下する。
【0007】
本発明の目的は、遮光層に含まれる金属成分および発癌性物質の問題を解決することができる2層遮光層を用いた食品容器用インモールドラベルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明による請求項1記載の2層遮光層を用いた食品容器用インモールドラベルは、
インモールドラベルの用紙と、前記用紙の表面の印刷済面と、前記印刷済面にコーティングされたオーバプリントニス層と、前記用紙裏面に遮光層と、接着ニス層を設けた食品容器用インモールドラベルにおいて、
前記遮光層は補色の関係にあるインキを用いた2層により形成したことを特徴とする。
【0009】
請求項2記載の2層遮光層を用いた食品容器用インモールドラベルは、請求項1記載の2層遮光層を用いた食品容器用インモールドラベルにおいて、
第1の層が褐色系のインキを用いた層であり、第2の層が緑色系のインキを用いた層であることを特徴とする。
請求項3記載の2層遮光層を用いた食品容器用インモールドラベルは、請求項2記載の2層遮光層を用いた食品容器用インモールドラベルにおいて、
前記用紙は合成紙または紙であって、
前記2層遮光層の内、少なくとも容器側の層を緑色系の層としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の2層遮光層を用いた食品容器用インモールドラベルは、以上のように構成されているから、全体として透過率は黒色層と同様に作用し(請求項1,2)、ラベルの表面(印刷層側)から見ると褐色層が透けて見えやすく、容器の内側からは緑色層が透けて見えやすくなる(請求項3の場合)。
これにより容器内の食品の内容により、透けて見える層の色を変えて需要者の色覚に訴えることができる。
【0011】
遮光層にカーボンや酸化鉄を使用しないので、発癌性の危険が無く、金属探知機が使用出来る(異物対策)等のメリットがある。
【0012】
本発明によるラベルは、インジェクション成形及びブロー成形等において、成形時の金型の中にラベルを挿入して成形と同時に絵柄付けを行うインモールドラベルで、特に内容物が光により変質してしまう様なもの(たとえば抹茶プリン,フルーツデザートなど)の食品容器用のラベルとして使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明による食品容器用インモールドラベルの拡大断面図である。
【図2A】本発明による食品容器用インモールドラベルの実施例1の透過率を他社製品と比較して示したグラフである。
【図2B】本発明による食品容器用インモールドラベルの実施例2の透過率を他社製品と比較して示したグラフである。
【図3】従来の食品容器用インモールドラベルの拡大断面図である。
【図4】着色フィルムの光透過率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下図面等を参照して本発明による食品容器用インモールドラベルの実施形態を詳細に説明する。
図1は、本発明による食品容器用インモールドラベルの拡大断面図である。
インモールドラベルの用紙1として、合成紙(ポリプロピレン)または紙を使用する。
この用紙1の表面に食品の内容を表す絵柄が印刷され絵柄印刷層2が形成される。この実施形態では印刷はオフセット印刷で行われたが、グラビア印刷,フレキソ(凸版)印刷で行うこともできる。この絵柄印刷層2の表面に、透明なオーバプリントニス層3がコーティングされる。
用紙1の裏面に遮光層4B,4Gがコーティングされる。遮光層4B,4Gのインキの組成は、ウレタン系またはウレタン系と塩酢ビを主原料にした樹脂であり、それに接着ニス層5を設ける。
なお、遮光層のインキの樹脂成分をオレフィン系樹脂とし、これにシリカ系添加剤を加えると、接着ニス層5を省略することができる。
【0015】
グラビアインキは一般に樹脂と顔料及びそれらの粘度調整を行う溶剤によって構成されており、遮光等に用いられるインキの場合は成形時の熱に対する耐熱性からその樹脂はウレタン系またはウレタン系と塩酢ビのものが使用される。
遮光用ベタ印刷のインキの中に接着ニスをブレンドしても上手く溶解しないし、溶解出来るものを見つけたとしても色が淡くなって遮光性が低下することが知られている。
本発明では、遮光層4Bは主に赤と黄の耐熱性顔料を混合したものをベースとした褐色系の遮光層で、遮光層4Gは主に藍と黄の耐熱性顔料を混合したものをベースとした緑色系の遮光層である。遮光層4Gの上に接着ニス層5がコートされる。
遮光用インキとして、カーボンを使用しないため発癌性の危険が無いようにすることができるとともに、酸化鉄や、銀インキ(組成はアルミペースト)を使用しないので、金属探知機が使用できる(異物対策)。
【0016】
なお、この実施形態においては、印刷の順序は用紙1に先ず遮光層4B,4Gを印刷し、ついで絵柄の印刷を行い絵柄印刷層2を形成し、透明なオーバプリントニス層3がコーティングされる。
本発明によるインモールドラベルの透過率特性を他社製品と比較するために、2種類の厚みが異なる用紙を用意して、それぞれに前述の印刷を同様に行った。
【0017】
(実施例1)
用紙の厚みt1a=55μm
絵柄印刷層の厚みを含むオーバプリントニス層厚みt3 ≒2μm
遮光層の厚みt4B≒1μm
遮光層の厚みt4G≒1μm
接着ニス層の厚みt5 =1〜5μm

(実施例2)
用紙の厚みt1a=70μm
絵柄印刷層の厚みを含むオーバプリントニス層厚みt3 ≒2μm
遮光層の厚みt4B≒1μm
遮光層の厚みt4G≒1μm
接着ニス層の厚みt5 =1〜5μm
【0018】
他社(A社,B社)の遮光層付きインモールドラベル2種類を準備した。
(A社製品)
用紙の厚みt11a =100μm
絵柄印刷層の厚みを含むオーバプリントニス層厚みt13a =不明 材質不詳
遮光層の厚みt14a = 不明 材質不詳
接着ニス層の厚みt15a = 不明 材質不詳

(B社製品)
用紙の厚みt11b =100μm
絵柄印刷層の厚みを含むオーバプリントニス層厚みt13b =不明 材質不詳
遮光層の厚みt14b = 不明 材質不詳
接着ニス層の厚みt15b = 不明 材質不詳
【0019】
実施例1と他のA社およびB社の製品との比較を図2Aに示し、実施例2と他のA社およびB社の製品との比較を図2Bに示す。
各図において外部からの光がインモールドラベルと容器を透過して内部の食品に到達して劣化を惹起する可視光領域(400nm〜700nm)では何れも0.02%を越えることはなく近紫外領域(314nm〜400nm)からさらに波長の短い領域250nmに至る紫外領域で透過率はいずれも略0と成っており、商品陳列時に外部からの入射光が内部に達することによって発生する内容物の品質劣化はほぼ完全に阻止できる。
【0020】
以上詳しく説明した実施形態につき本発明の範囲内で種々の変形を施すことができる。
4Gの層を容器側にする実施例を示したが、4G層と4B層は逆でも良い。その他、食品に対応して、暖色系を外側(ラベル表面側)にして、容器側をその補色となる層とする等、数多くの組み合わせが考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0021】
特に内容物が前記領域の光成分により変質してしまう様なもの(たとえば抹茶プリン,フルーツデザートなど)の食品容器用インモールドラベルとして印刷業界や食品業界で広く利用できる。
【符号の説明】
【0022】
1,11 用紙
2,12 絵柄印刷層
3,13 オーバプリントニス層
4B,4G,14 遮光層
5,15 接着ニス層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インモールドラベルの用紙と、前記用紙の表面の印刷済面と、前記印刷済面にコーティングされたオーバプリントニス層と、前記用紙裏面に遮光層と、接着ニス層を設けた食品容器用インモールドラベルにおいて、
前記遮光層は補色の関係にあるインキを用いた2層により形成したことを特徴とする2層遮光層を用いた食品容器用インモールドラベル。
【請求項2】
請求項1記載の2層遮光層を用いた食品容器用インモールドラベルにおいて、
第1の層が褐色系のインキを用いた層であり、第2の層が緑色系のインキを用いた層であることを特徴とする2層遮光層を用いた食品容器用インモールドラベル。
【請求項3】
請求項2記載の2層遮光層を用いた食品容器用インモールドラベルにおいて、
前記用紙は合成紙または紙であって、
前記2層遮光層の内、少なくとも容器側の層を緑色系の層としたことを特徴とする2層遮光層を用いた食品容器用インモールドラベル。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図2A】
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【図2B】
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【公開番号】特開2010−208667(P2010−208667A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−57408(P2009−57408)
【出願日】平成21年3月11日(2009.3.11)
【出願人】(000239563)福島印刷工業株式会社 (10)
【Fターム(参考)】