説明

2成分混合容器ユニット

【課題】混合用の容器を別途用意する必要がなく、反応性を有する2成分を容易かつ安全に混合・押出しすることができるとともに、使用時の廃材の減量化を実現することのできる2成分混合容器ユニットを提供する。
【解決手段】容器を、2枚のフィルム材料を袋状に形成してなるパウチ1と、このパウチ1の一端部に貼着されたスパウト2と、前記パウチ1の一端部と反対側に位置する他端部の間の中間部に配設されるとともに、このパウチ1を表側および裏側から挟み込んで2枚のフィルム部材を密着させて該パウチ1の内部を2室に区画する仕切り部材(クリップ3)と、から構成し、これら各室にそれぞれ、第1の成分および第2の成分を充填・封入する。この容器ユニットは、手などで圧力を加えて揉むだけで、内容物の混合を容易に行なうことができる。また、カートリッジやガン等を使用することなく、内容物を簡単に押出すことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着剤およびシーリング材等、使用直前に混合する必要のある2つの成分を、使用前にはこれらを離間させて保管するとともに、使用時にはこれらを容易に混合・押出しすることのできる2成分混合容器ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
シリコーンシーラント等のシーリング材をはじめとする接着剤(主に、エマルション形や溶剤形等の1液式)は、一般に、樹脂の射出成形体からなるカートリッジ内に収容された状態で流通に共され、使用(施工)に際しては、コーキングガン等と称されて市販されている押出器を用いて、所要量ずつ押し出しながら使用される(例えば、特許文献1等を参照。)。
【0003】
これに対して、本出願人らは、従来のカートリッジに比して、空の容器の処理が容易でその処理コストを大幅に削減することができ、しかも、使用に際しては従来と同等の作業性のもとに内容物を押出すことのできる容器(スパウト付きパウチ:図2)と、このようなパウチの内容物を押出すのに適した押出器を既に提案している(特許文献2〜5を参照)。
【0004】
一方、屋外や強固な接着力が要求される場所には、エポキシ樹脂系やウレタン樹脂系等の反応形の接着剤やシーリング材が使用されることがある。これら2液式の接着剤は、穴や溝に注入する場合、別々の容器(チューブ等)に保管された主剤と硬化剤(あるいはA液,B液)と呼称される2成分を容器から取り出して混合した後、空のカートリッジに充填して前出のコーキングガン等により押出すか、あるいは、別の容器に移し替えてグリスポンプ等で押出すかして施工されている(例えば、特許文献6〜7等を参照。)。
【0005】
【特許文献1】特開平5−139402号公報
【特許文献2】特開2002−200712号公報
【特許文献3】特開2003−160181号公報
【特許文献4】特開2003−160182号公報
【特許文献5】特開2006−51969号公報
【特許文献6】特開平11−147548号公報
【特許文献7】特開2003−290694号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、以上のような2成分からなる接着剤等は、主剤および硬化剤を、定められた適切な比率で使用直前に混合する必要がある。しかしながら、これらを十分に混練するには、別途かく拌用の容器を用意する必要があり、施工現場で余分な手間とゴミ(廃材)が発生してしまう。
【0007】
また、反応形の接着剤は、2成分を混合後、時間とともに粘度が上昇するため、カートリッジ等の押出し用の容器に充填するのが徐々に難しくなるとともに、これを避けるため、作業者によっては混練不十分になってしまう恐れもある。
【0008】
また更に、反応形の接着剤を混合する時は、発生するガス(蒸気)が有害なため、換気に注意する必要があり、接着剤が皮膚に直接触れると、皮膚障害を起こす場合もある。
【0009】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、混合用の容器を別途用意する必要がなく、反応性を有する2成分を容易かつ安全に混合・押出しすることができるとともに、使用時の廃材の減量化を実現することのできる2成分混合容器ユニットを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、2枚のフィルム材料を袋状に形成してなるパウチと、このパウチの一端部に貼着されたスパウトと、前記パウチの一端部と反対側に位置する他端部の間の中間部に配設されるとともに、このパウチを表側および裏側から挟み込んで前記2枚のフィルム部材を密着させて該パウチの内部を2室に区画する仕切り部材と、からなることを特徴とする2成分混合容器ユニットである。
【0011】
本発明は、使用直前に混合することを前提とした2つの成分を隔離して貯蔵する容器において、この容器を、直接押出し作業に用いることの可能なスパウト付きパウチで構成するとともに、パウチの外面の略中央部に、このパウチを表裏から挟み込むことによりその内部を区画することのできる仕切り部材を配設することによって、所期の目的を達成しようとするものである。
【0012】
すなわち、請求項1に記載の発明によれば、スパウトを有するパウチの一端部と反対側に位置する他端部の間の中間部に、このパウチを表裏側から挟み込んで2枚のフィルム部材を密着させる仕切り部材を配設することにより、スパウト付きパウチの内部が2室に区画される。従って、本発明における2成分混合容器ユニットは、反応性を有する2つの成分を、使用前まで、隔離した状態で保管することができる。
【0013】
また、この2成分混合容器ユニットは、その仕切り部材を取り外し、パウチに手などで圧力を加えて揉むだけで、内部に充填された2つの成分の混合作業を開始することができる。しかも、これら内容物は空気に触れる機会が少なく、かつ、作業者の皮膚に直接触れることもない。従って、本発明の2成分混合容器ユニットによれば、人体対して有害性を有する成分であっても、安全かつ容易に取り扱うことが可能になる。
【0014】
また、この2成分混合容器ユニットを、接着剤およびシーリング材の混合施工に用いた場合、混合用の容器や押出し用のカートリッジ等、使用後に施工現場でゴミとなる廃材を削減することができるとともに、その内容物の押出しには、特別な装置等も必要ない。従って、本発明の2成分混合容器ユニットは、低コストでかつ環境にも優しい施工を実現できる。
【0015】
ここで、前記パウチが、透明なフィルムから形成されている構成を好適に採用することができる。(請求項2)
【0016】
この構成によれば、スパウト付きパウチ内で混合作業中の内容物の状態を、目視で確認することができるようになる。特に、主剤と硬化剤の混ざり具合を確認するために、意図的に異なる着色がなされているエポキシ樹脂系接着剤の場合などは、内容物の色の変化により混合作業の終了を容易に確認することができる、というメリットが生まれる。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明の2成分混合容器ユニットによれば、混合用の容器や特殊な装置を別途用意する必要がなく、反応性を有する2成分を容易かつ安全に混合・押出しすることが可能になる。
【0018】
また、本発明の2成分混合容器ユニットによれば、内容物の混合時にも有害な成分に触れることなく、使用(施工)現場における廃材の減量化および施工作業のコストダウンを達成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を参照しつつこの発明を実施するための形態について説明する。
図1は、本発明の実施形態における2成分混合容器ユニットの構成を表す斜視図である。なお、従来例と同様の機能を有する構成部材には、同じ符号を付記する。
【0020】
本実施形態における2成分混合容器ユニットに用いられる容器は、主剤と硬化剤からなるエポキシ樹脂系接着剤を混合・施工するためのものであり、従来例である図2と同様、その一端部(底部)が船底形の袋体に形成されたパウチ1と、このパウチ1の一方の端面に貼着されたスパウト(押出口基体)2とからなるスパウト付きパウチ10として形成されている。
【0021】
パウチ1は、透明あるいは半透明なフィルム素材から構成されており、柔軟性を有する。なお、本実施形態においては、単層の樹脂フィルムからなるシンプルな構成を例示したが、封入される内容物の硬化や変質を防ぐために、各種のガスの侵入を防ぐ性質が求められる場合は、このフィルム素材を、数種類のフィルムをラミネートした複合素材(積層フィルム等)で構成しても良い。また、本発明におけるパウチ1の形状としては、押出器(ガン)等を用いて内容物を余すところなく押し出せる形状であれば任意とすることができるが、なかでも、船底形パウチやスタンディングパウチ等が、容器の取り扱い性および作業性の点において好ましい。
【0022】
また、スパウト2は、外周面に雄ねじが形成された筒体2aの一端に、フランジ部2bが形成された構造を有し、このフランジ部2bの一面(裏面)が、前記のパウチ1の端面に対して貼着される。なお、使用時には、このスパウト2の外周面に設けられた雄ねじに、後述する押出し用ノズル等が取り付けられる。
【0023】
本実施形態における2成分混合容器ユニットの特徴は、スパウト2が貼着されたパウチ1の一端部と反対側の他端部の間の略中央部に、このパウチ1を表側および裏側から挟み込む仕切り部材(クリップ3)が配設されている点である。
【0024】
このクリップ3は、パウチ1の幅より長いパイプ状の係合部材3aと、係合部材3aとほぼ同等の長さで、かつ、この係合部材3aをぴったりと嵌め入れることのできる爪部3b,3bを有する係合基体3cとからなり、爪部3b,3bの内周面は、係合部材3aの外周面に沿った形状に形成されている。
【0025】
また、このクリップ3は、パウチ1を構成する2枚のフィルム部材を密着させ、このパウチ1の内部を2室(A室,B室)に区画しているとともに、これら各A室およびB室には、エポキシ樹脂系接着剤の第1成分(主剤:A液)および第2成分(硬化剤:B液)が、それぞれ所定量充填・封入されている。
【0026】
以上の構成により、本実施形態における2成分混合容器ユニットは、反応性を有する2つの成分(A液,B液)を、使用前まで、隔離した状態で保管することが可能になる。
【0027】
次に、この2成分混合容器ユニットを用いた接着剤およびシーリング材の混合施工方法について説明する。
本実施形態における2成分混合容器ユニットは、配合比が1:1(重量比)のエポキシ樹脂系接着剤のA液とB液をそれぞれ、スパウト付きパウチ10に設けられたA室とB室に充填・封かんしたものである。なお、この接着剤の混合施工には、パウチ1のスパウト(押出口基体)2の外周に形成された雄ねじに取り付けることのできる押出し用ノズル(図示省略)を使用する。
【0028】
これらを混合・施工する方法は、先ず、クリップ3を開放して取り外した後、手揉みにより第1成分Aと第2成分Bの混合を開始する。この時、一般的なエポキシ樹脂系接着剤は、第1成分(A液)と第2成分(B液)が意図的に異なる色に着色されていることから、パウチ1内の内容物の色の変化により、混合作業の終了を容易に確認することができる。
【0029】
なお、これらを混合する手段は、特に「手」に限定されるものではなく、その他の器具等を用いても良い。また、夏場などの高温時に、接着剤が加速度的に反応して熱膨張により容器(パウチ)が破裂する恐れがある場合は、パウチのスパウト部に予め穴を開けておいても良い。
【0030】
内容物の混合が完了した後は、スパウト2の開口に別途用意した押出し用ノズル等を突き刺して穴を開け、ノズルの先端を施工対象箇所の幅(目地幅等)に合わせてカットした後、このノズルをスパウト2外周の雄ねじに装着する。そして、パウチ1の胴体部を手で絞りながら、内容物を押出すことにより、接着剤およびシーリング材等を、所定位置に所要量ずつ押出すことができる。なお、この時、パウチ1の圧迫(圧縮)は、作業者の手で行なっても良いし、専用の器具(例えばガン)等により行なっても良い。
【0031】
以上の方法により、この実施形態における2成分混合容器ユニットは、2成分を混合するための容器等を別途用意する必要がなく、容器に手などで圧力を加えて揉むだけで、これらの混合を容易に行なうことができる。
【0032】
また、混合後の容器内の内容物は、カートリッジ,ガンやグリスポンプ等の特別な装置を使用することなく、このパウチに圧力を加えるだけで、簡単に押出すことができるとともに、内容物は空気に触れる機会が少なく、かつ、作業者の皮膚に直接触れることもない。従って、本実施形態における2成分混合容器ユニットは、人体対して有害性を有する成分であっても、安全かつ容易に取り扱うことが可能で、しかも、使用(施工)現場における廃材を削減することができる。
【0033】
なお、本実施形態においては、パウチ1を、透明なフィルムを用いて形成した例を示したが、これらの内容物が光や熱あるいは各種のガス等に影響を受ける成分の場合は、パウチを内容物の硬化や変質を防ぐ複合素材(ラミネートフィルムなど)で構成しても良い。また、冬季などの低温下において接着剤等を加温する必要がある場合は、このパウチごと加温すれば良い。
【0034】
また、本実施形態においては、パウチを2室に区画する仕切り部材の例としてクリップ3を挙げたが、本発明における仕切り部材の形状は、この例に限定されるものではなく、パウチを構成するフィルム部材を幅方向に挟み込んで密着させる形状であれば、クリップ,ピンチ等、どのような構成であっても良い。
【0035】
本発明は、例示したような接着剤やシーリング材等のみならず、反応性を有する2成分を混合・押出しする作業を行なう容器ユニットに、広く適用でき得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の実施形態における2成分混合容器ユニットの外観斜視図である。
【図2】従来の単体容器(スパウト付きパウチ)の外観斜視図である。
【符号の説明】
【0037】
1 パウチ
2 スパウト
2a 筒体 2b フランジ部
3 クリップ
3a 係合部材 3b 爪部 3c 係合基体
10 スパウト付きパウチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2枚のフィルム材料を袋状に形成してなるパウチと、このパウチの一端部に貼着されたスパウトと、前記パウチの一端部と反対側に位置する他端部の間の中間部に配設されるとともに、このパウチを表側および裏側から挟み込んで前記2枚のフィルム部材を密着させて該パウチの内部を2室に区画する仕切り部材と、からなる2成分混合容器ユニット。
【請求項2】
前記パウチが、透明なフィルムから形成されていることを特徴とする請求項1に記載の2成分混合容器ユニット。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−261655(P2007−261655A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−91636(P2006−91636)
【出願日】平成18年3月29日(2006.3.29)
【出願人】(000107000)シャープ化学工業株式会社 (12)
【出願人】(390004709)カイト化学工業株式会社 (15)
【出願人】(597005288)吾嬬ゴム工業株式会社 (6)
【Fターム(参考)】