説明

2次元複屈折測定装置

【課題】簡易な構成により安価でかつ高速な動作を実現する2次元複屈折測定装置を提供すること。
【解決手段】2次元複屈折測定装置は、CCDカメラ7を備えた偏光顕微鏡と、この偏光顕微鏡の光学系の光路に配置される液晶位相変調器3と、この液晶位相変調器3を駆動する駆動回路8と、この駆動回路8を制御することにより液晶位相変調器3にて位相をπ/2ずつ4回シフトさせる4ステップ位相シフトを行いながら試料4について4枚の偏光干渉画像をCCDカメラ7から取得し、それら4枚の偏光干渉画像の組合せから試料4の複屈折分布特性を示す位相分布画像を生成するPC9とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば光ディスクの残留歪による微小な複屈折の分布やプランクトンなどの生体が持つ微小な複屈折の分布を測定する2次元複屈折測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の第1の複屈折測定方法として、偏光顕微鏡にベレックコンペンセータを組み合わせて被測定媒体を透過した光の複屈折を測定する方法がある。これは、観察者が手作業で測定する方法である。
【0003】
これに対して、従来の第2の複屈折測定方法として、電子的に任意に偏光状態を変化させる素子を液晶で実現して複屈折を観察する方法が提案されている。その手法と応用例が非特許文献1に記載されている。
【0004】
一方、従来の第3の複屈折測定方法として、高感度、高精度な複屈折計測のために位相シフト干渉を用いる方法がある。この位相シフト干渉法を導入して高感度化を図るに際し、ピエゾアクチュエータによる機械的動作を利用する製品が市販されている。その手法が非特許文献2に記載されている。
【0005】
従来の第4の複屈折測定方法として、偏光干渉計と液晶位相シフタを用いた位相シフト干渉法を利用して微細な線の幅を計測するシステムが提案されている。その手法が非特許文献3に記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】M.Shribak and R.Oldebourg: 「Techniques for fast and sensitive measurements of two-dimensional birefringence distribution: Applied Optics, Vol.42, No.16(2003), pp.3009-3017」
【非特許文献2】島田竜太郎:「特集:高精度複屈折測定と偏光測定の最新動向:O Plus E、2007年1月号、pp.30-35」
【非特許文献3】M.Totzeck and H.J.Tiziani: 「Phase-shifting polarization interferometry for microstructure linewidth measurement: Optics Letters, Vol.24, No.5(1999), pp.294-296」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記第1の複屈折測定方法では、手動で作業を行う必要があり、測定精度の点でも限界がある。また、上記第2の複屈折測定方法(非特許文献1)では、大がかりな装置と複雑なデータ処理が必要である。
【0008】
また、上記第3の複屈折測定方法(非特許文献2)では、位相シフト干渉法を導入して高感度化を図っているが、ピエゾ素子を用いた機械的な動作を必要とするため、駆動電圧、速度、ヒステリシス等の点において問題がある。
【0009】
また、上記第4の複屈折測定方法(非特許文献3)では、位相シフトのために液晶セルを導入し、機械的動作を必要とせずに複屈折測定を行うが、微細構造を検出することを目的としているため、複屈折の定量的な測定には向かない。液晶位相シフタの変化量は少なくとも2λ以上が必要となり、厚い液晶層が必要となることから、応答速度の点においても問題がある。また、この第4の複屈折測定方法では、8個ものデータを扱うため、処理するデータ量が多く、メモリの規模を大きくする必要があり、高速化の点で不利である。
【0010】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、簡易な構成により安価でかつ高速な動作を実現する2次元複屈折測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様による2次元複屈折測定装置は、撮像装置を備えた偏光顕微鏡と、前記偏光顕微鏡の光学系の光路に配置される液晶位相変調器と、前記液晶位相変調器を駆動する駆動回路と、前記駆動回路を制御することにより前記液晶位相変調器にて位相をπ/2ずつ4回シフトさせる4ステップ位相シフトを行いながら試料について4枚の偏光干渉画像を前記撮像装置から取得し、それら4枚の偏光干渉画像の組合せから前記試料の複屈折分布特性を示す位相分布画像を生成する情報処理装置とを具備することを特徴とする。
【0012】
上記2次元複屈折測定装置において、前記液晶位相変調器は、ベンド配向モードを用いて位相シフトを行う液晶位相シフタであってもよい。
【0013】
また、上記2次元複屈折測定装置において、前記情報処理装置は、前記液晶位相変調器にて4ステップ位相シフトを通常ビデオレートの4倍以上の速度で行いながら前記試料の複屈折分布特性を示す位相分布画像を繰り返し生成するリアルタイム測定を行うものであってもよい。
【0014】
また、上記2次元複屈折測定装置において、前記情報処理装置は、前記試料の設置角度を変えた場合の前記試料の任意の部位の複屈折の大小関係もしくは正負を測定するものであってもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、簡易な構成により安価でかつ高速な動作を実現する2次元複屈折測定装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係る2次元複屈折測定装置の構成の一例を示す図。
【図2】図1中のPCに備えられる2次元複屈折測定機能の機能構成の一例を示すブロック図。
【図3】2つの偏光板の偏光方向と液晶位相変調器の光軸方向との関係を示す概念図。
【図4】2次元複屈折測定機能による動作の一例を示すフローチャート。
【図5】液晶位相変調器での4ステップ位相シフトを行うことによりCCDカメラから得られる4つの画像の例を示す図。
【図6】4つの画像から位相分布を計算して得られる位相分布画像の例を示す図。
【図7】図6中の破線で示した2つの部分の位相分布プロファイルの例をそれぞれ示す図。
【図8】複屈折の正負を判別できる2つの位相分布画像の例を示す図。
【図9】複屈折の正負を判別できない従来の2つの位相分布画像の例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
【0018】
図1は、本発明の一実施形態に係る2次元複屈折測定装置の構成の一例を示す図である。
【0019】
図1に示される2次元複屈折測定装置には、光源1、偏光板2、液晶位相変調器3、試料4、対物レンズ5、偏光板6、CCDカメラ7、駆動回路8、パーソナルコンピュータ9(以下、「PC9」と称す。)が含まれる。
【0020】
この2次元複屈折測定装置においては、液晶位相変調器3以外の光学系(光源1、偏光板2、対物レンズ5、偏光板6など)については、市販の偏光顕微鏡を利用可能である。すなわち、本実施形態の2次元複屈折測定装置は、市販の偏光顕微鏡の光学系の光路に液晶位相変調器3を配置し、撮像装置としてのCCDカメラ7、液晶位相変調器3を駆動する駆動回路8、および情報処理装置としてのPC9を設けた構成となっている。PC9は、図示されていないが各種の入力設定を行うための入力装置や、測定結果などを表示する表示装置、測定結果などを記憶する記憶装置を備えている。
【0021】
光源1から発せられた光は、偏光板2を透過すると、液晶位相変調器3に入射される。液晶位相変調器3において一方の偏光に適当な位相変調が加えられた後、光は試料4に入射される。試料4を通過した光は、複屈折の情報を含み、対物レンズ5によってCCDカメラ7の受光センサに結像されるが、その途中で偏光板6によって偏光の干渉による強度変化の情報が得られるようになっている。
【0022】
液晶位相変調器3は、OCB(Optically Compensated Bend)液晶セルとして知られるベンド配向モードを有する薄型液晶セル(以下、「ベンド配向セル」と称す。)を用いて位相シフトを行う液晶位相シフタである。ベンド配向セルは、駆動回路8から与えられる電圧に応じて位相シフト量を変化させる。
【0023】
駆動回路8は、PC9のアナログ出力インタフェース回路として機能し、PC9からの制御信号に従って液晶位相変調器3に印加する駆動電圧を順次切替えることができるようになっている。駆動電圧は、最大10V程度あれば、問題なく液晶位相変調器3を駆動することができる。
【0024】
PC9は、駆動回路8を制御することにより液晶位相変調器3にて位相をπ/2ずつ4回シフトさせる4ステップ位相シフトを行いながら試料4について4枚の偏光干渉画像をCCDカメラ7から取得し、それら4枚の偏光干渉画像の組合せから試料4の2次元の複屈折分布特性を示す位相分布画像などを生成する2次元複屈折測定機能を有する。
【0025】
例えばPC9は図2に示されるような2次元複屈折測定機能10を有しており、入力設定処理部11、位相シフト駆動処理部12、画像取得処理部13、計算処理部14、出力処理部15などの各種機能が備えられている。入力設定処理部11は、入力装置からの入力操作に応じて各種パラメータの設定などを行う機能である。位相シフト駆動処理部12は、液晶位相変調器3を駆動回路8に駆動させるための制御信号を生成する機能である。画像取得処理部13は、4ステップ位相シフト駆動を通じて得られる4枚の偏光干渉画像をCCDカメラ7から順次取得する機能である。計算処理部14は、CCDカメラ7から取得した4枚の偏光干渉画像の組合せから試料4の複屈折分布(位相分布)を計算する機能である。出力処理部15は、計算処理部14により計算された試料4の複屈折分布(位相分布)の画像やプロファイルなどの測定結果を表示装置や記憶装置に出力する機能である。
【0026】
ここで、液晶位相変調器3に適用される4ステップ位相シフト法について、より詳細に説明する。
【0027】
偏光顕微鏡で観察される画像(2次元光強度分布)は、(1)式で表される。
【数1】

【0028】
ここでδ(x,y)は、観察試料の位相分布すなわち測定目標である。ここでは透明な試料を想定しているため光強度は原理的には定数であるが、通常は何らかの雑音成分が含まれてしまうためにI’やI”のように不均一な分布やバイアスを含んだ信号を観測することになる。例えば、光源の強度分布、レンズや窓材のよごれ、CCDセンサー感度の不均一、不要な光の進入などが原因になることが考えられる。
【0029】
そこで、簡単な手続きの追加によって前述の雑音の影響を取り除き、測定精度を飛躍的に改善する4ステップ位相シフト法を採用する。すなわち、均一な位相シフトφを導入するために位相シフタを光学系に挿入し、φ=0,π/2,2π,3π/2と変化させて4つのデータI1〜I4を取得する。このとき、取得データは(1)式の位相部分にφが加算されて(2)式のようになる。
【数2】

【0030】
従って、位相シフト量φの値を0,π/2,2π,3π/2とした場合に測定される四つのデータは以下のように表される。
【数3】

【0031】
これらを利用して、(7)式のような計算を行うと、雑音が含まれているI’,I”はいずれも消去されtanδのみが残るが、更にδは(8)式のような簡単な計算で求めることができる。
【数4】

【0032】
【数5】

【0033】
なお、本手法は、光源やその他の光学素子、CCDセンサーが高精度なものでなくても、また何らかの予期しない固定した外乱が入っても結果には全く影響しない。すなわち、高価なパーツを使わなくても高精度な測定が行える優れた手法であるといえる。また、この手法が適用されるキーデバイスとなる位相変調器についても、極めて取り扱いが簡単で安価な液晶位相変調器3が使用されるため、以下のような効果がある。
【0034】
・安価で簡単なシステムでありながら高精度な測定システムが実現可能
・位相変調器の駆動が容易で高速、特殊な駆動装置は不要
・データ処理が簡単で、通常のPCで高速動作が可能
また、液晶位相変調器3に備えられるベンド配向セルは、ネマティック液晶材料を用いるものの中では最も高速な動作をすることが知られている。このようなベンド配向セルを備えた液晶位相変調器3を用いることにより、ネマティック液晶の使い易さと材料の多様性を維持しながら、ビデオ画像で観察可能な程度の速度にて、試料4の複屈折分布をリアルタイムで観察や測定を行うことが可能となる。例えば液晶位相変調器3にて4ステップ位相シフトを通常ビデオレート(30フレーム/秒)の4倍以上の速度で行いながら、試料4の複屈折分布特性を示す位相分布画像を繰り返し生成することにより、十分なリアルタイム測定を行うことができる。このようなベンド配向セルの動作の高速性は、アンラッピング処理などを必要としない弱位相物体の測定、例えば海洋プランクトンの筋肉の複屈折の測定において特に性能が発揮される。
【0035】
なお、偏光板2,6は、図3に示されるように、互いに偏光方向が直交するように設置され、液晶位相変調器3は、その光軸方向が偏光板2,6の偏光方向とそれぞれ45°の角度を成すように設置される。これにより、偏光板2を透過した光は、液晶位相変調器3の光軸に平行な光とそれに直交する偏光に分離して伝搬することになり、先の平行な偏光の成分のみが位相変調を受ける。
【0036】
このとき測定される試料の複屈折は、位相変調を受けた偏光に平行な方向に大きな(正の)複屈折を有する場合に、正のデータが得られる。一方、液晶位相変調器3の光軸に垂直な方向に大きな複屈折を有する場合には、負のデータが得られる。このような方向依存性を利用することにより、試料4の設置角度を変えた場合の試料4の任意の部位の複屈折の大小関係もしくは正負を測定することができる。すなわち、複屈折の絶対値だけでなく、大小関係や正負も簡単に調べることができる。なお、その具体例については後で説明する。
【0037】
次に、図4のフローチャートを参照しつつ、図5〜図7の画像等を参照しながら、PC9の2次元複屈折測定機能10による動作を説明する。
【0038】
はじめに、液晶位相変調器3のベンド配向セルにて高速応答するベンド配向状態を得るために、駆動回路8により10V程度の電圧を液晶位相変調器3に数十秒程度印加する(ステップS1)。液晶位相変調器3のベンド配向セルが一度ベンド配向状態に転移すれば、動作中に初期状態に戻る心配は無い。
【0039】
次に、あらかじめキャリブレーションした駆動電圧V1,V2,V3,V4により液晶位相変調器3の位相シフト量φがそれぞれ0,π/2,2π,3π/2と変化するように駆動し、図5(a),(b),(c),(d)に示すような4つの画像データI1〜I4を順次取得する(ステップS2〜S5)。
【0040】
その後、前述の(7),(8)式に基づき、4つの画像データI1〜I4から位相分布を計算し、その計算結果を位相分布画像や位相分布プロファイルの形にして表示装置等に出力させる(ステップS6)。
【0041】
位相分布は原理的には試料の複屈折と厚み分布の両者の情報を含んでいる。このため、試料4をプレパラートのように厚みが一定となるようにしておくことにより、複屈折のみを抽出することができる。画像データ取得から位相計算の一連の処理は、ベンド配向モードの高速性を利用してビデオレート程度まで高速化することにより、リアルタイムでの複屈画像計測が可能になる。特に生きたままで動き回る生体試料等の計測には極めて有用である。
【0042】
4つの画像データI1〜I4から位相分布を計算して得られた位相分布画像を図6に示す。また、図6中の破線で示した(a)部,(b)部の位相分布プロファイルをそれぞれ図7(a),(b)に示す。画像の白黒のコントラストは、位相の定量的な分布を表しており、画像の2本の太い筋肉部分が大きな複屈折を示していることがはっきりわかる。特に図4(b)は、太い筋肉の両側に見える黒い点の部分の断面における位相分布をピックアップしたものである。黒い部分は負の複屈折に対応して負の位相分布を示している。これは、横方向に伸びた足の付け根の筋肉の複屈折が明確に測定されている様子を表している。
【0043】
ここで、位相分布画像から複屈折の正負を判別する手法について、具体例を用いて説明する。
【0044】
海洋プランクトンの観察例を図8(a),(b)に示す。同図には、それぞれ、体の長手方向に走る2本の太い筋肉の複屈折が画像化されている。図8(a)では試料が縦置きにされており、白い筋すなわち正の複屈折が生じていることが分る。同じ試料を横置きにすると、図8(b)のように2本の筋が黒い筋に変化し、負の複屈折を示す。本測定装置では、(縦方向の値)−(横方向の値)の差が複屈折として測定されるため、これらの変化は妥当な結果である。このように、試料の配置角度を変えた場合に、複屈折の差のみでなく複屈折の正負や大小関係も区別できるという特徴がある。図8(a),(b)の両者を比較すると、筋肉の長手方向が横方向より大きい複屈折を有することが分る。
【0045】
図8(a),(b)との比較のため、一般の偏光顕微鏡写真の例を図9(a),(b)に示す。一般の偏光顕微鏡観察では、複屈折の符号は区別できないため、試料を横置きにしても同じ画像が観察され、両者の区別がつかないことが分る。
【0046】
以上説明したように、本実施形態に係る2次元複屈折測定装置は、位相シフト干渉法を用いているので極めて高精度の複屈折の測定を行うことができ、キーデバイスである位相変調器として液晶位相変調器を用いているため、設置や駆動が極めて簡単になり、小型・低価格でコンパクトな2次元複屈折測定装置を実現することができる。
【0047】
また、上記液晶位相変調器は小型・コンパクトであり、大掛かりな駆動装置も必要としないため、様々な形態の顕微鏡システムあるいは小型の光学系に組み込んで、様々な測定対象へ特化した性能を持つ2次元複屈折測定装置を容易に構築することができる。
【0048】
また、上記液晶位相変調器は、その高速性に大きな特徴を有する。従来の技術では、強誘電性液晶などの特殊な材料を用いて更に高速な位相変調器も実現されているものの、価格も含めた材料の多様性の点ではネマティック液晶には及ばない。また、ビデオレート程度での測定速度は十分可能であるため、動きがある測定対象であってもリアルタイムでの測定が可能である。
【0049】
また、上記液晶位相変調器は、位相シフトにベンド配向モードを用いているため、高速位相変調が可能であり、生物などの動き回る試料のリアルタイム計測が可能となる。
【0050】
また、上記液晶位相変調器に備えられる薄型液晶セル(OCB液晶セル)は、小型・軽量で低電圧・低電力での駆動が可能となるため、顕微鏡システムに容易に組み込むことが可能となり、また特別な駆動装置を必要とせずにPCのインタフェース回路による動作が可能となる。また、液晶セルの厚みが少なくて済むため、一層の高速化が可能となる。
【0051】
また、上記液晶位相変調器は、既存の偏光顕微鏡に容易に組み込んで、ビデオレートでの複屈折測定が可能となることから、生きている微小な生物あるいは生きている生体サンプルの微細構造の複屈折測定に有用である。
【0052】
また、上記液晶位相変調器の駆動には、4ステップ位相シフトを適用しているため、位相シフト量は2π程度で十分であり、処理するデータ数が比較的少なく、高速化の点で有利であり、PCのメモリも小規模で済む。
【0053】
また、上記液晶位相変調器は、上述したような様々な特徴を有するため、それらの特徴を利用して測定対象に応じた多様なシステム開発を容易に行うことができる。
【0054】
なお、上記実施形態で述べたPC9の機能や処理手順は、コンピュータプログラムとして、コンピュータにより読み取り可能な記憶媒体(例えば磁気ディスク,光ディスク,半導体メモリ)に記憶させておき、必要に応じてそれをプロセッサにより読み出して実行するようにしてもよい。また、このようなコンピュータプログラムは、通信媒体を介してあるコンピュータから他のコンピュータに伝送することにより配布することも可能である。
【0055】
本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0056】
1…光源、2…偏光板、3…液晶位相変調器、4…試料、5…対物レンズ、6…偏光板、7…CCDカメラ、8…駆動回路、9…パーソナルコンピュータ(PC)、10…2次元複屈折測定機能、11…入力設定処理部、12…位相シフト駆動処理部、13…画像取得処理部、14…計算処理部、15…出力処理部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像装置を備えた偏光顕微鏡と、
前記偏光顕微鏡の光学系の光路に配置される液晶位相変調器と、
前記液晶位相変調器を駆動する駆動回路と、
前記駆動回路を制御することにより前記液晶位相変調器にて位相をπ/2ずつ4回シフトさせる4ステップ位相シフトを行いながら試料について4枚の偏光干渉画像を前記撮像装置から取得し、それら4枚の偏光干渉画像の組合せから前記試料の複屈折分布特性を示す位相分布画像を生成する情報処理装置と
を具備することを特徴とする2次元複屈折測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の2次元複屈折測定装置において、前記液晶位相変調器は、ベンド配向モードを用いて位相シフトを行う液晶位相シフタであることを特徴とする2次元複屈折測定装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の2次元複屈折測定装置において、前記情報処理装置は、前記液晶位相変調器にて4ステップ位相シフトを通常ビデオレートの4倍以上の速度で行いながら前記試料の複屈折分布特性を示す位相分布画像を繰り返し生成するリアルタイム測定を行うことを特徴とする2次元複屈折測定装置。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の2次元複屈折測定装置において、前記情報処理装置は、前記試料の設置角度を変えた場合の前記試料の任意の部位の複屈折の大小関係もしくは正負を測定することを特徴とする2次元複屈折測定装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2011−33406(P2011−33406A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−178232(P2009−178232)
【出願日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【出願人】(306024148)公立大学法人秋田県立大学 (74)
【Fターム(参考)】