説明

2次元CADドキュメントに対する表示優先度

各CAD画像要素に対し3つの値、すなわち要素優先度、レベル優先度、およびモデル参照優先度が設定される。さらに、CAD画像要素を包含するCADプロジェクトに関し、個々の優先度乗数値を、要素、レベル、およびモデルに対し、プロジェクト全体にわたって設定し、要素優先度乗数、レベル優先度乗数、およびモデル参照優先度乗数を生成したりすることができる。一旦、優先度値と優先度乗数値がデフォルト値またはユーザのいずれかによって設定されると、この値は各CAD画像要素に対する画像深度を計算するために使用される。この画像深度値は、例えばz−バッファに格納され、画像内に置かれる順番にかかわらず、CAD画像要素に対する表示優先度を設定するために使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的にはコンピュータ支援設計ドキュメント、特に2次元コンピュータ支援設計ドキュメントにおける要素の表示順序に関する。
【背景技術】
【0002】
建築家、エンジニア、デザイナー、プランナー等によって作成されるコンピュータ支援設計(CAD)図面は、ファイルに格納される膨大な量のデータを必要とする。CADソフトウェアは、膨大な量のデータにアクセスするためのAPI(アプリケーションプログラミングインタフェース)を含む。例えば、米国ペンシルバニア州エクストンのベントレーシステムズ社(Bentley Systems,Inc.,Exton,Pennsylvania U.S.A.)によって開発されたMicroStation(マイクロステーション)(登録商標)製品のようなアプリケーションは、このようなCADソフトウェアの典型的なものであり、建築、エンジニアリング、建設、および事業部門(AECO:Architecture,Engineering,Construction,and Operations)市場において使用することができる。
【0003】
エンジニアリングの状況において使用される典型的なCADプロジェクト(project)は、多くのファイルに格納される。各ファイルは通常、1つまたは複数のエンジニアリングモデルを含み、各エンジニアリングモデルは通常、エンジニアリング領域(例えば、構造的、電気的、機械的、および配管工事的な領域)を表現している。さらに、各エンジニアリングモデルは、それぞれの設計の、複雑で精密な性質を集合的に表現する多くの要素を含む。モデル(model)における各アイテムは、少なくとも1つの要素、または要素の集合体によって表現される。例えば、構造設計図は、フロアプランに対する柱と梁のレイアウトを保有し得るが、内部的には、線分、正方形、長方形、および補助的な特性により表現される。この例では、個々の梁要素は、線分、正方形、および長方形の集合であってよい。フロアプランの構成は、より複雑であり、そして構造的な表現を正確に提供するためには多くのレベルの要素を必要とする場合がある。
【0004】
公知のCADソフトウェアでは、2次元設計画像に最後に追加された要素は通常、他の既存要素の上に表示される。すなわち、両方の要素が画像内で同じ2次元空間を占める場合、最後の追加要素は、それ以前に描かれたすべての要素を覆い隠す。これは一般的にはペインターズアルゴリズム(painter’s algorithm)と呼ばれる。絵画におけるように、表面に塗られた最後の絵の具はそれ以前に塗られた絵の具を覆い隠す。ペインターズアルゴリズムは、要素が描かれる順序に従って、画像内の要素の上書きを定義する。
【0005】
多くのCADおよび他のグラフィックプログラムでは、ユーザが要素を並べ替えることができる。ユーザは要素を選択し、「最背面に送る(send−to−back:センド−トウ−バック)」または「最前面に持ってくる(bring−to−front:ブリング−トウ−フロント)」の処理をその要素に対し行うことができる。これらの処理により、要素が描かれる順序を並べ替える。したがって、この並べ替えにより、特定画像内において当該要素のその他の要素に対する可視性が変更される。この再順序付けは、記憶装置において物理的に要素を並べ替えることにより、または別の「分類順(sort order:ソート・オーダー)」リストを保存することにより実現することができる。
【0006】
上述の手法は、特定の要素の相対的順序(例えば、「この要素」は「その要素」の前にある)を指定することに対してはうまく処理するが、ユーザが要素タイプまたは要素グループに対する相対的な優先度を指定することに対しては、体系的な方法を提供するものではない。また、ペインターズアルゴリズムでは、順序変更に直面したとき、要素の適正な順序付けを維持することは困難である。例えば、ある要素の複製を作成する場合、ユーザが、古い要素またはその近傍の他の要素に対する、新しい要素の相対的優先度を指定する、予測可能な方法はない。通常、ユーザがある要素を複写しそれを当該画像内の他の場所で、または別の画像内で使用したい場合、複写された要素はリストの終わりに、したがって他のすべての要素の上に置かれる。この要素を所望の位置に移動するためには並べ替え操作を実行しなければならない。同様に、ユーザがテキストラベルのようなあるタイプの要素を優先させる場合、ユーザは通常、画像構築の際、適切な瞬間に忘れずに当該要素の配置を決定(place:プレース)しなければならない。さもなければ、ユーザは、要素タイプの各インスタンスすなわち発生順(instance)を並び替えなければならない。
【0007】
更に、いくつかのCADプログラムはレベル(level)(「レイヤ(layer)」とも呼ばれる)システムを提供し、これにより画像は、レベルの集合上で要素から構築することができる。例えば、建築図面において、構造的、電気的、および配管工事的な分野(disciplines:ディサプリン)のそれぞれは、画像内に独自の一組のレベルを有する。従って、ユーザは、複雑さを低減するために、限定的なサブセットのレベルを調べることができる。レベルは、通常、要素の属性として導入されるので、レベルは、表示順序には関与しない。しかし、ユーザは、1つのレベルにあるすべての要素が別のレベルにあるすべての要素の前面に現われるように、要素表示をレベルに基づいてソートすなわち分類(sort)したい場合がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、従来の解決法の欠点を克服する、表示の優先度を設定するための改善された方法およびシステムが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の例示的な実施形態では、2次元CAD画像内の表示優先度を決定するためのシステム、方法、およびコンピュータプログラム製品につき開示する。
【0010】
本発明の例示的な実施形態では、各CAD要素に対し3つの値、すなわち要素優先度、レベル優先度、およびモデル参照優先度が利用可能である。さらに、CAD画像要素を包含するCADプロジェクトに関し、個々の優先度乗数値を、要素、レベル、およびモデル参照に対し、プロジェクト全体にわたって設定し、要素優先度乗数、レベル優先度乗数、およびモデル参照優先度乗数を生成したりすることができる。一旦、優先度値と優先度乗数値がデフォルト値またはユーザのいずれかにより設定されると、これらの値は各CAD画像要素に対する画像深度を計算するために使用される。この画像深度値は、例えばz−バッファにおいて使用され、そしてCAD画像要素が画像内に配置される順番にかかわらず、CAD画像要素に対する相対的表示優先度を決定する。
【0011】
本発明の別の実施形態では、2次元CAD画像内の画像深度を設定するためのシステムが提供される。本システムは、少なくとも1つの2次元CAD画像を含むCADプロジェクトに対し、要素優先度乗数値、レベル優先度乗数値、およびモデル参照優先度乗数値のそれぞれを設定するための手段を含む。このCAD画像は複数のCAD画像要素を含んでいる。さらに、このシステムは、各CAD画像要素に対する要素優先度値、各レベルに対するレベル優先度値、および各モデル参照に対するモデル参照優先度値のそれぞれを設定する手段と、要素優先度値、レベル優先度値、モデル参照優先度値、要素優先度乗数値、レベル優先度乗数値、およびモデル参照優先度乗数値の組合せに基づいて、CAD画像要素に対する画像深度を決定するための手段と、CAD画像要素をCAD画像内の他のCAD画像要素に対して相対的に配置するために、画像深度を使用する手段とを含んでいる。
【0012】
例示的な方法によれば、複数の要素に対する要素優先度値が定義される。該要素優先度値はそれぞれの要素の属性として記憶される。少なくとも2つの要素が画像内に置かれる。画像内での要素の先行順位は、要素、レベル、およびモデル参照優先度値と、要素、レベル、およびモデル参照優先度乗数値との数学的な結合又は組合せ(combination:コンビネーション)に基づいて決定される。
【0013】
本発明のさらなる特徴と利点、および本発明の様々な実施形態の構成と動作につき、以下、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
本発明の上記、および他の特徴と利点は、以下の本発明の好ましい実施形態の詳細な説明から明らかになる。添附図面に例示されているように、ここでは同一の参照番号は通常、同一の要素、機能的に類似の要素、および/または構造的に類似の要素を示す。参照番号における一番左の桁は、要素が最初に出現する図を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
定義
ここで使用されるように、以下の用語は次の意味を持つものとする。
【0016】
コンピュータとは、構造化入力を受け取り、決められた規則に従って構造化入力を処理し、そして該処理結果を出力として生成することができる任意の装置を言う。コンピュータの例としては、コンピュータ、汎用コンピュータ、スーパーコンピュータ、メインフレーム、スーパーミニコンピュータ、ミニコンピュータ、ワークステーション、マイクロコンピュータ、サーバー、インタラクティブテレビ、コンピュータとインタラクティブテレビのハイブリッド結合、およびコンピュータおよび/またはソフトウェアをエミュレートする特殊用途ハードウェアが挙げられる。コンピュータは、単一プロセッサ、または並列および/または非並列に動作することができるマルチプロセッサーを有してもよい。コンピュータとは、また、コンピュータ間で情報の送受信を行う、ネットワークを介して相互に接続された2つ以上のコンピュータを指す。このようなコンピュータの例としては、ネットワークによってリンクされたコンピュータを介して情報を処理する分散型コンピュータシステムが挙げられる。コンピュータはまた、個人用デジタル情報処理端末(PDA)であってもよい。
【0017】
コンピュータ読取り可能な媒体とは、コンピュータによりアクセス可能なデータを記憶するために使用される任意の記憶装置を指す。コンピュータ読取り可能な媒体の例としては、磁気ハードディスク、フロッピディスク、CD−ROM、CD−RWおよびDVDのような光ディスク、磁気テープ、メモリチップ、および電子メールの送受信またはネットワークへのアクセスの際に使用されるようなコンピュータ読取り可能な電子データを搬送する搬送波が挙げられる。
【0018】
入力装置とは、付随ソフトウェアドライバを備えていて、コンピュータシステムと対話するとともにコンピュータに入力と命令を供給し、かつ、特に表示装置上でカーソルを移動するために使用される装置を言う。入力装置の例としては、コンピュータマウス、キーボード、コンピュータ描画タブレット、ジョイスティック、およびマイクロホンが挙げられる。
【0019】
ソフトウェアとは、コンピュータを作動させるための決められた規則(rules:ルール)を指す。ソフトウェアの例としては、ソフトウェア、コードセグメント、命令、コンピュータプログラム、およびプログラム論理が挙げられる。
【0020】
コンピュータシステムとは、コンピュータを作動させるためのソフトウェアを実現するコンピュータ読取り可能な媒体を含むコンピュータを有するシステムを指す。
【0021】
ネットワークとは、通信設備により結合された多数のコンピュータとその関連装置を指す。ネットワークは、ケーブルのような恒久的な接続手段、または電話または他の通信リンクを介してなされる一時的な接続手段を含んでいる。ネットワークは、2つ以上のコンピュータ間の通信と情報の交換を可能にするインフラストラクチャである。ネットワークの例としては、ローカルエリアネットワーク(LAN)、広域ネットワーク(WAN)、イーサーネット、イントラネット、インターネットのような相互接続ネットワーク、無線または衛星通信、およびネットワークの組合せが挙げられる。
【0022】
<本発明の実施形態の詳細な説明>
以下、本発明の好ましい実施形態について、詳細に説明する。特定の例示的な実施形態について説明するが、これは説明の便宜上のためのみに行われるということを理解されたい。当業者であれば、本発明の精神および範囲から逸脱することなく他の要素および構成を使用することができるということを、認識するであろう。
【0023】
本発明の例示的な実施形態は表示装置と入力装置を有するコンピュータシステム上で動作するが、CADソフトウェアまたはCAD描画表示ソフトウェアの一部であってもよく、あるいはこれらソフトウェアと協働してもよい。このコンピュータシステムはスタンドアロン型であってもよいし、あるいは他のコンピュータシステムとネットワーク化されてもよい。CAD画像およびソフトウェアは、コンピュータシステムのコンピュータ読取り可能な媒体に、またはネットワーク上のコンピュータシステムに格納することができる。
【0024】
表示優先度値は、CDA画像内の要素を表示する際に、これらCAD画像内の要素の相対先行順位を決定するために使用することができる。表示優先度値は、要素の属性および他の判断基準に基づく値とすることができる。表示優先度値に基づいたZ−バッファ手法を使用して、CAD画像内の要素間の相対先行順位を築くことができる。この手法は、要素を描画する順番に依存しないという利点を有する。また、要素グループ(例えば、CAD用語における「レベル」、「レイヤ」、または「モデル」)は、付随の優先度値を有することができる。要素の要素優先度属性、その要素のレベルのレベル優先度、およびその要素のモデル参照のモデル参照優先度を、組合せ(“結合させ”ともいう。)(combine:コンバイン)て、要素の表示優先度を決定することができる。これにより、要素表示優先度を、追加的に、予測可能に、制御することができる。
【0025】
図1に、3つの要素、すなわち星形104、正方形106、および円形108の図形を有する2次元CAD画像102の例示的な実施形態を示す。x軸を線110で示し、およびy軸を線112で示してある。ここで重要なことは、この画像を意図的に2次元画像としたので、これら要素に関して記憶されたz軸値は存在しないことに留意することである。しかし、プレゼンテーションのためには、画像内の要素の相対先行順位(最前面から最後面までの位置)を制御することが望ましい。1つの手法は、それぞれの要素を3次元に変換して、各要素のz値を記憶することであろう。しかし、これは多くの望ましくない副作用を有していて、たいていの場合は受け入れない。相対先行順位を築くためにこれら要素を3次元に変換するよりむしろ、表示優先度を、各要素に対する表示時に計算する。表示優先度は、これら要素の属性に基づき計算することができる。表示優先度は、数学関数として計算してもよいし、あるいはコンピュータ機能(function:ファンクション)により実行されるアルゴリズムにより計算してもよい。コンピュータ機能は、ソフトウェアなどのコンピュータ読取り可能なコードでよい。
【0026】
図1では、星形の図形すなわち星図形104は最も低い計算表示優先度を有する。したがって、星図形104は後方に表示され、正方形の図形すなわち正方図形106と円108の両者により覆い隠される。正方図形106は、次に低い計算表示優先度を有する。したがって、正方図形106は、星図形104の上であるが円形の図形すなわち円図形108の下に存在する。円図形108は、図面内で最も高い計算表示優先度を有する要素である。したがって、円図形108は、星図形104と正方図形106の両者の上に表示される。
【0027】
図2に、図1の2次元CAD画像102の仮想的な、様式化された分解図を示す。図2は、第3軸202に沿った計算表示優先度値を示す。表示優先度軸に沿った星図形104、正方図形106、および円図形108の順序付けも示している。表示優先度軸に対する要素の相対的な位置を、星図形104に対しては線204、正方図形106に対しては線206、円図形108に対しては線208で示している。
【0028】
上述したように、要素の要素優先度属性、その要素のレベルのレベル優先度、およびその要素のモデル参照のモデル参照優先度を組合せて、要素の表示優先度を決定することができる。要素に対する要素優先度は、入力装置を介してユーザが定義してもよいし、あるいはデフォルトで設定してもよい。要素優先度はそれぞれの要素の属性として扱われる。要素が生成される際、その要素の要素優先度は、色、線幅などのようなその要素の他の属性と共に決定される。要素表示優先度を要素の属性として定義することにより、これら要素を複写する際、要素の要素表示優先度を定義する方法がユーザに提供される。
【0029】
また、ユーザは、要素グループに対する優先度を指定することができる。既に説明したように、CAD画像を、複数のレベルから構成することができる。レベルは通常、論理的に関連する要素を含み、1つまたは複数の要素を含むことができる。各レベルにはレベル優先度を割り当てることができる。したがって、ユーザは、様々なレベルに対し、画像の深度における出現順序を指定することができる。
【0030】
CADプロジェクトは、通常、複数のモデルから構成される。1つのモデルは、1つのレベルより高いレベルの、コンテンツの論理的な1つのグループである(モデルはレベルを包含する)。モデルは通常、プロジェクトをより小さな個々の編集可能な部分に再分割するために使用される。モデルは単一のCADファイルに格納してもよいし、あるいは、MicroStation V8(商品名)のDGN(登録商標)ファイルのように、単一のCADファイルが複数のモデルを含んでいてもよい。CAD画像は、多数のモデル(「XREF」とも呼ばれる)を参照して構成することができる。実際、同一モデルを、多数のモデル参照により、様々なサイズ、配向(orientation:オリエンテーション)、位置で2回以上参照し得る。各モデル参照にはモデル参照表示優先度を割り当てることができる。
【0031】
CAD画像内のすべての要素に対し、要素優先度、レベル優先度、およびモデル参照優先度を決定することができる。これら3つの優先度は、要素に対する最終の表示優先度を決定するために、様々な組合せ(結合ともいう)重み(combining weight:コンバイニング ウエイト)を使用して組合せることができる。要素は、要素が描かれる順序に従ってではなく、その要素の計算表示優先度に従って画像内に表示される。例えば、図1に示す図では、円図形108は星図形104より以前に描かれるかもしれない。しかし、円図形108はより高い計算表示優先度を有するので、星図形104の上に表示される。したがって、画像内で要素がいかなる順番で描かれようとも、要素はその計算表示優先度に従って表示される。2つの要素が同一の計算表示優先度値を有する場合、ペインターズアルゴリズムにおけるように、一般的には最後に描かれたものが上に現われる。
【0032】
図3と図4は、本発明による方法の例示的な実施形態のフローチャートを示す図である。本方法は、上記要素優先度、レベル優先度、およびモデル参照優先度に基づき、画像内の要素の表示優先度を決定する。要素に対する表示優先度はまた、要素の他の属性またはその状況に基づいて計算してもよい。例えば、表示優先度を決定する際、図のタイプ、コスト、作成時間、著者を使用してもよい。
【0033】
CADプロジェクトをブロック302において作成する際、あるいは後の設計段階中、3つの優先度のそれぞれに対し、要素優先度乗数330、モデル参照優先度乗数331、およびレベル優先度乗数332のような組合せ重みを、ブロック304において設定することができる。この乗数はCAD画像に対して一定であるが、プロジェクト全般に適用してもよい。組合せ重みは、関連する優先度と何らかの方法で組合せた定数であってもよい。組合せ重みは、当該要素の表示優先度を決定する際、個々の優先度の相対的影響度を決定するために用いることができる。
【0034】
乗数330、331、332は、各優先度値の相対的影響度を決定する。例えば、表示優先度を決定する際にユーザがレベル優先度を使用することを全く望まない場合、レベル優先度乗数332をゼロに設定することができる。
【0035】
ブロック306では、デフォルトの要素優先度333、レベル優先度334、モデル参照優先度335を設定することができる。これらのデフォルトの優先度を、プロジェクトに対し予め定義することができる。要素、レベル、およびモデル参照に対する乗数およびデフォルトの優先度を、プロジェクトマネージャまたは管理者により設定することができる。通常、CAD画像は、定義済みの設計基準に従って作成される。設計基準を、CADソフトウェアの設定ファイル内に定義することができる。管理者は、何を最優先に表示すべきかに関するプロジェクト全体の規則に基づき、乗数とデフォルトの優先度を設定することができる。ユーザにもまた、乗数と優先度の設定または修正を行うことを認めてもよい。
【0036】
ブロック408では、表示時に、CAD画像内の要素に対する先行順位を決定することができる。表示すべきCAD画像内の各要素に対する表示優先度を、先行順位を決定するために使用することができる。ブロック410では、画像に対する表示優先度を決定するために、先ず、要素に対する要素優先度乗数、レベル優先度乗数、およびモデル参照乗数を決定する。これらの乗数は、CAD画像内のすべての要素に対し一定である。これらの乗数は、また、プロジェクト全体に対し一定であってもよい。
【0037】
ブロック412では、表示優先度を計算する必要があるさらなる要素が画像内に存在するかどうかを決定する。表示優先度を計算する必要がある要素が存在する場合、本プロセスはブロック414へ進む。ブロック414において、次の要素をCADファイルから検索する。
【0038】
ブロック416において、当該要素に対する要素優先度を決定する。上述のように、要素優先度はこの要素の属性であってもよい。したがって、その要素優先度を決定するために、要素の属性を調べてもよい。
【0039】
ブロック418では、要素に対するレベル優先度を決定する。レベル優先度は要素のレベルに依存する。レベルは要素の属性であってもよく、要素の属性を調べることにより取得することができる。一旦、要素のレベルが決定されると、当該レベルに対するレベル優先度を決定することができる。これは、例えば、レベルをレベル優先度にマッピングするマッピングプロセスを使用して行うことができる。
【0040】
ブロック420において、要素に対するモデル参照優先度を決定する。これは、要素に対するモデル参照をモデル参照優先度値へマッピングするマッピングプロセスを使用して行うことができる。
【0041】
次に、ブロック422において、要素に対する表示優先度を計算する。表示優先度は、要素優先度、レベル優先度、およびモデル参照優先度の関数であってよい。例えば、要素の要素優先度乗数330、モデル参照優先度乗数331、レベル優先度乗数332、要素優先度333、モデル参照優先度334、およびレベル優先度335を組み合わせて要素に対する表示優先度を決定することができる。例示的な実施形態では、表示優先度は次式により決定することができる。
【0042】
=(Pelement × celement)+(Plevel × clevel)+(Pmodel × cmodel)(1)
ここで、Pは表示優先度であり、Pelementは要素優先度であり、celementは要素優先度乗数であり、Plevelはレベル優先度であり、clevelはレベル優先度乗数であり、Pmodelはモデル参照優先度であり、cmodelはモデル参照優先度乗数である。一般的には、P=f(Pelement,Plevel,Pmodel)である。要素の他の属性および状況をこの関数に使用してもよい。
【0043】
一旦、要素に対する表示優先度が計算されると、ブロック424において、当該要素を表示することができる。画像深度において要素を順序づける表示優先度を使用することにより、要素はCAD画像内に表示される。次に、本プロセスは、ブロック412に戻り、計算表示優先度を必要とする要素がなくなるまでCAD画像内の各要素に対し繰り返される。その後、ブロック426において、本プロセスは終了する。
【0044】
例示的な実施形態では、z−バッファは、CAD画像要素の表示優先度を格納するために使用することができる。計算表示優先度に基づいて要素を表示するため、公知のz−バッファリング技術を使用することができる。表示優先度レベルの数は、z−バッファの大きさによってのみ制限される。z−バッファが224ビットの大きさの場合、3つの定数に対するデフォルト値は、例えばcelement=1、clevel=256、cmodel=32768である。
【0045】
本発明の様々な実施形態を説明したが、これらは、限定するためではなく、単なる一例として提示されたということに留意されたい。したがって、本発明の広がりと範囲は上述した例示的な実施形態のいかなるものによっても限定されるべきではなく、むしろ、特許請求範囲およびそれらと同等のものによってのみ定義されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明による2次元CAD画像の例示的な実施形態を示す。
【図2】図1のCAD画像の分解斜視図を示す。
【図3】本発明の方法の例示的な実施形態のフローチャートを示す。
【図4】本発明の方法の例示的な実施形態のフローチャートを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
CAD画像内の少なくとも2つの要素に対し、要素優先度、レベル優先度、およびモデル参照優先度を決定し、
前記要素に対する表示優先度を、それぞれの要素に対する前記要素優先度、前記レベル優先度、および前記モデル参照優先度の関数として決定し、
前記表示優先度に基づいて前記要素の先行順位を決定し、および
該先行順位にある程度基づいて、前記CAD画像内に前記要素を表示する
ことを含む方法。
【請求項2】
前記表示優先度の決定には、さらに、
要素優先度乗数、レベル優先度乗数、およびモデル参照優先度乗数を決定し、および
前記要素優先度、前記レベル優先度および前記モデル参照優先度と、前記要素優先度乗数、前記レベル優先度乗数および前記モデル参照優先度乗数とを組合せる
ことを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
さらに、前記要素に対するレベル属性を決定し、および
該レベル属性に基づいて前記レベル優先度を取得する
ことを含む請求項1に記載の方法。
【請求項4】
さらに、低い表示優先度を有する要素の上に、より高い表示優先度を有する要素を表示することを含む請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記表示優先度の決定は、数学関数に基づいて行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
さらに、前記要素優先度、前記レベル優先度、および前記モデル参照優先度を定義するユーザ入力を受信することを含む請求項1に記載の方法。
【請求項7】
さらに、前記要素優先度乗数、前記レベル優先度乗数、および前記モデル参照優先度乗数を定義するユーザ入力を受信することを含む請求項1に記載の方法。
【請求項8】
2次元コンピュータ支援設計(CAD)画像内の画像深度を設定する方法であって、
少なくとも1つの2次元CAD画像を包含していて、該CAD画像が複数のCAD画像要素を含むCADプロジェクトに対し、要素優先度乗数値、レベル優先度乗数値、およびモデル参照優先度乗数値のそれぞれを決定する工程と、
CAD画像要素に対し、要素優先度値、レベル優先度値、およびモデル参照優先度値のそれぞれを決定する工程と、
前記要素優先度値、前記レベル優先度値、前記モデル参照優先度値、前記要素優先度乗数値、前記レベル優先度乗数値、および前記モデル参照優先度乗数値の組合せに基づいて、前記CAD画像要素に対する画像深度を決定する工程と、
前記画像深度を使用して前記CAD画像内の他のCAD画像要素に対して相対的に前記CAD画像要素を配置する工程と
を含む方法。
【請求項9】
さらに、前記CAD画像に対し、z−バッファに前記CAD画像要素の前記画像深度を記憶する工程を含む請求項8に記載の方法。
【請求項10】
さらに、前記要素優先度値、前記レベル優先度値、前記モデル参照優先度値、前記要素優先度乗数値、前記レベル優先度乗数値、および前記モデル参照優先度乗数値の少なくとも1つに関するユーザ入力を受信する工程を含む請求項8に記載の方法。
【請求項11】
さらに、デフォルトの要素優先度乗数値1、デフォルトのレベル優先度乗数値2およびデフォルトのモデル参照優先度乗数値216を設定する工程を含み、z−バッファは224ビットの大きさを有する請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記画像深度を決定する工程は、前記要素優先度値と前記要素優先度乗数との積、前記レベル優先度値と前記レベル優先度乗数との積、および前記モデル参照優先度値と前記モデル参照優先度乗数との積の和を計算することを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
2次元コンピュータ支援設計(CAD)画像内の画像深度を設定するシステムであって、
少なくとも1つの2次元CAD画像を包含していて、前記CAD画像が複数のCAD画像要素を含むCADプロジェクトに対して、要素優先度乗数値、レベル優先度乗数値、およびモデル参照優先度乗数値のそれぞれを設定する手段と、
前記CAD画像要素に対し、要素優先度値、レベル優先度値、およびモデル参照優先度値のそれぞれを設定する手段と、
前記要素優先度値、前記レベル優先度値、前記モデル参照優先度値、前記要素優先度乗数値、前記レベル優先度乗数値、および前記モデル参照優先度乗数値の組合せに基づいて前記CAD画像要素に対する画像深度を決定する手段と、
前記画像深度を使用して前記CAD画像内の他のCAD画像要素に対して相対的に前記CAD画像要素を配置する手段と、
を含むシステム。
【請求項14】
さらに、前記CAD画像に対し、z−バッファに前記CAD画像要素の前記画像深度を記憶する手段を含む請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
さらに、前記要素優先度値、前記レベル優先度値、前記モデル参照優先度値、前記要素優先度乗数値、前記レベル優先度乗数値、および前記モデル参照優先度乗数値の少なくとも1つに関するユーザ入力を受信する手段を含む請求項13に記載のシステム。
【請求項16】
さらに、デフォルトの要素優先度乗数値1、デフォルトのレベル優先度乗数値2、およびデフォルトのモデル参照優先度乗数値216を設定する手段を含み、z−バッファは224ビットの大きさを有する、当該手段を含む請求項13に記載のシステム。
【請求項17】
CAD画像内の少なくとも2つの要素に対し、要素優先度、レベル優先度、およびモデル参照優先度を決定する手順、
前記要素に対する表示優先度を、それぞれの要素に対する前記要素優先度、前記レベル優先度、および前記モデル参照優先度の関数として決定する手順、
前記表示優先度に基づいて前記要素の先行順位を決定する手順、および
前記先行順位に一部分基づいて前記CAD画像内に前記要素を表示する手順
をコンピュータに実行させるコンピュータ読取り可能なプログラムコードを記憶するコンピュータ使用可能な情報記憶媒体。
【請求項18】
さらに、要素優先度乗数、レベル優先度乗数、およびモデル参照優先度乗数を決定する手順、および
前記要素優先度、前記レベル優先度および前記モデル参照優先度と、前記要素優先度乗数、前記レベル優先度乗数および前記モデル参照優先度乗数とを組合せるする手順
をコンピュータに実行させるコンピュータ読取り可能なプログラムコードを含む請求項17に記載のコンピュータ使用可能な情報記憶媒体。
【請求項19】
さらに、前記要素に対するレベル属性を決定する手順、および
前記レベル属性に基づいて前記レベル優先度を取得するする手順
をコンピュータに実行させるコンピュータ読取り可能なプログラムコードを含む、請求項17に記載のコンピュータ使用可能な情報記憶媒体。
【請求項20】
さらに、各要素に割り当てられる要素優先度を定義する手順、および
前記要素の属性として前記要素優先度を記憶する手順
をコンピュータに実行させるコンピュータ読取り可能なプログラムコードを含む、請求項17に記載のコンピュータ使用可能な情報記憶媒体。
【請求項21】
さらに、前記要素優先度、前記レベル優先度、および前記モデル参照優先度の少なくとも1つを定義するユーザ入力を受信する手順をコンピュータに実行させるコンピュータ読取り可能なプログラムコードを含む、請求項17に記載のコンピュータ使用可能な情報記憶媒体。
【請求項22】
さらに、低い表示優先度を有する要素の上に、高い表示優先度を有する要素を表示する手順をコンピュータに実行させるコンピュータ読取り可能なプログラムコードを含む、請求項17に記載のコンピュータ使用可能な情報記憶媒体。
【請求項23】
さらに、z−バッファに前記表示優先度値を記憶する手順をコンピュータに実行させるコンピュータ読取り可能なプログラムコードを含む、請求項17に記載のコンピュータ使用可能な情報記憶媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−518194(P2007−518194A)
【公表日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−549543(P2006−549543)
【出願日】平成17年1月12日(2005.1.12)
【国際出願番号】PCT/US2005/000889
【国際公開番号】WO2005/070162
【国際公開日】平成17年8月4日(2005.8.4)
【出願人】(506240997)ベントレー システムズ インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】