説明

2次電子・反射電子検出装置及び2次電子・反射電子検出装置を有する走査電子顕微鏡

【課題】本発明は2次電子・反射電子検出装置及び2次電子・反射電子検出装置を有する走査電子顕微鏡に関し、2次電子信号と反射電子信号を選択的に検出することを目的としている。
【解決手段】電子顕微鏡の試料から発生する2次電子又は反射電子を検出する2次電子・反射電子検出装置であって、コロナリング31と2次電子を受けるシンチレータ32とライトパイプ33よりなる2次電子検出部30と、反射電子を受けるシンチレータと該シンチレータの発生光を案内する所定の長さのライトガイド21よりなる反射電子検出部20と、前記ライトガイド21と前記ライトパイプ33とを接合する接合部34と、2次電子又は反射電子を受けた前記何れかのシンチレータからの光を受ける光電子増倍管35と、を有して構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は2次電子・反射電子検出装置及び2次電子・反射電子検出装置を有する走査電子顕微鏡に関し、更に詳しくは2次電子と反射電子を選択的に検出することができる2次電子・反射電子検出装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
図8は走査電子顕微鏡(SEM)の構成概念図である。電子銃1から出射された電子ビームEBは、コンデンサレンズ2で集束された後、絞り3により不要な成分を除去された後、偏向器4を通過する。この時、偏向器4は試料6上を2次元方向に電子ビームが走査するように偏向する。偏向器4の下段に配置される対物レンズ5は、試料6上に電子ビームを細く絞って照射する。なお、絞り3は、対物レンズ5の内部にあってもよい。
【0003】
このように試料6上を電子ビームEBが照射(走査)すると、試料6の表面からは各種の信号が発生する。7は試料6から発生する2次電子e1を検出する2次電子検出器である。該2次電子検出器7は、高電圧が印加されるコロナリングと、高電圧が印加された該コロナリングにより形成される電界によって引き寄せられた2次電子を受けて、その2次電子信号を対応する光(光信号)に変換するシンチレータとを備えている。8は電子ビームEBの通過穴を備え、試料6表面から放出される反射電子e2を検出する反射電子検出器である。該反射電子検出器8は、反射電子を受けて該反射電子を対応する光(光信号)に変換するシンチレータを備えている。
【0004】
2次電子検出器7において上記光信号は光電子増倍管(PMT:図示せず)により電気信号に変換される。一方、反射電子検出器8において上記光信号は光電子増倍管(図示せず)により電気信号に変換される。これら双方の光電子増倍管により電気信号に変換された2次電子信号と反射電子信号とは続く電気的処理回路により処理された後、2次電子像又は反射電子像として選択的にCRT又はLCD等の表示装置によって表示される。この場合において、2次電子検出器7は、高真空の状態で用いられるのに対し、反射電子検出器8は比較的低真空の状態で用いられる。
【0005】
ここで、2次電子と反射電子とを選択的に検出する際には、2次電子検出器の先端もしくはその近傍に正または負の電圧をかけることのできる電極を設け、電極にかける電圧により試料より生じた純粋な2次電子信号と反射電子により生じた二次的な2次電子信号を区別するようにした技術が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0006】
また、反射電子検出器としては、一方の表面に電子照射を受けて光を発生する電子→光変換膜を設けると共に対向する裏面に発生した光を所望の方向に反射させる反射箔を設けた検知板と、該反射箔で反射した光を受けてその表面での全反射により伝播させる光伝播体と、該光伝播体の端部にあって伝播光を検知する光検知器とを具備した反射電子検知器が知られている(例えば特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平6−267484号公報(段落009〜0012、図1,図2)
【特許文献2】実開昭55−89256号公報(第4頁第2行〜第5頁第2行、第2図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来のSEMに備えられた2次電子検出器と反射電子検出器は、2次電子検出器と反射電子検出器がそれぞれ独立に存在し、検出部に繋がる増幅器もそれぞれ独立に存在する。このように、検出部と増幅部が各々独立にあるため、各々の制御とユーザの操作が複雑となる。更に、部品構成と部品数が2系統必要なため、コストが高くなるという問題がある。
【0008】
2次電子検出系は、2次電子を受けて発光するシンチレータと、例えば10kvの電圧が印加されるコロナリングと、ライトガイドと、それに続くPMTとからなる2次電子検出器と、該PMTの出力を増幅する増幅器から構成されている。
【0009】
また、反射電子検出系は、
1)反射電子を受けて発光するシンチレータと、それに続くPMTと、該PMTの出力を増幅する増幅器からなるもの、
2)反射電子を検出する半導体検出器(PNジャンクション)と、該半導体検出器の出力を増幅する高利得増幅器とからなるもの、
3)反射電子を受けて電気信号を発生するマルチチャネルプレート(MCP)とそれ専用の高利得増幅器とからなるもの、
とがある。現在は2)が主流となっている。
【0010】
その理由は、1)は光の伝達からシンチレータとライトガイドが厚く太くなり、高分解能の短WD(ワークディスタンス:対物レンズから試料までの距離)が実現できない。
2)は小型化でき、高感度で短WD化が可能である。しかし、小型のため長WDでは感度が低下するという問題がある。一方、大口径化して感度を向上させると応答速度が低下し、スロースキャンの画像しか得られない。
3)はコストと反射電子像を受けるMCPの寿命が制限されるという問題がある。
【0011】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであって、2次電子像と反射電子像を簡単な構成で選択的に得ることができる2次電子・反射電子検出装置及び2次電子・反射電子検出装置を有する走査電子顕微鏡を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(1)請求項1記載の発明は、試料から発生する2次電子又は反射電子を検出する2次電子・反射電子検出装置であって、所定の電圧が印加されて2次電子を引き寄せるコロナリングと該2次電子を受けるシンチレータと該2次電子に基づき該シンチレータから発生する光を案内するライトパイプよりなる2次電子検出部と、反射電子を受けるシンチレータと該反射電子に基づき該シンチレータから発生する光を導くライトガイドよりなる反射電子検出部と、前記ライトガイドと前記ライトパイプとを接合する接合部と、2次電子又は反射電子を受けた前記何れかのシンチレータからの光を受ける光電子像倍管と、を有することを特徴とする。
【0013】
(2)請求項2記載の発明は、前記ライトガイドは、1次電子線が通過するための穴が設けられていると共に臨界角以下に曲げられたアクリル板から構成され、該アクリル板の表面及び裏面にはアルミニウムコーティングが施されていることを特徴とする。
【0014】
(3)請求項3記載の発明は、前記接合部では、固定リングにより前記ライトガイドの接続端部と前記ライトパイプとが接合され、接着により固定されていることを特徴とする。
【0015】
(4)請求項4記載の発明は、請求項1乃至3何れか記載の2次電子・反射電子検出装置を試料室内部に備えた走査電子顕微鏡であることを特徴とする。
(5)請求項5記載の発明は、前記試料室内部の真空度を測定する真空度検出器を備え、該真空度検出器による検出値が所定の閾値よりも低真空である場合には、前記コロナリングに所定電圧が印加されず、これにより前記2次電子・反射電子検出装置は反射電子検出装置として動作し、該真空検出器による検出値が所定の閾値よりも高真空である場合には、前記コロナリングに所定電圧が印加され、これにより前記2次電子・反射電子検出装置は2次電子検出装置として動作することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
(1)請求項1記載の発明によれば、2次電子検出部と反射電子検出部の出力を選択的にPMTで検出することが可能になり、2次電子像と反射電子像とを簡単な構成で得ることができる。
【0017】
(2)請求項2記載の発明によれば、反射電子を入射して発光したシンチレータの光信号を減衰することなくPMTまで導くことができる。
(3)請求項3記載の発明によれば、反射電子の光信号と2次電子の光信号とを効率よくPMTに導くことができる。
【0018】
(4)請求項4記載の発明によれば、前記したような特徴を持つ走査電子顕微鏡を実現することができ、2次電子像と反射電子像とを選択的に観察することが可能となる。
(5)請求項5記載の発明によれば、真空度検出器の出力に応じて、2次電子像を観察するか反射電子像を観察するかを決めることができる。その場合において、今2次電子像を観察しているのか、反射電子像を観察しているのかをディスプレイ上に表示することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
[実施の形態1]
図1は、本発明の一実施の形態を示す構成図である。図において、図8と同一のものは、同一の符号を付して示す。図において、6は試料、EBは電子ビームである。1次電子線としての電子ビームEBが試料6に照射されると、該試料6からは2次電子e1と反射電子e2が放出される。2次電子e1と反射電子e2は1次電子ビームEBが入ってきた方と逆方向に向かって放出される。2次電子e1は、0〜50eVのエネルギーを有し、反射電子e2は略1次電子線の電子ビームのエネルギーを有している。
【0020】
20は、1次電子線の電子ビームの通過穴45を備え、試料6からの反射電子e2を検出する反射電子検出部である。該反射電子検出部20において、21は反射電子e2が衝突して発光するシンチレータ(図示せず)の発生光を所定の場所まで案内するライトガイドである。
【0021】
30は試料6からの2次電子e1を検出する2次電子検出部である。2次電子検出部30において、31は2次電子e1を引きつけて加速するために例えば10kVの電圧が印加されるコロナリング、32は該コロナリング31に接触して配置され、入射された2次電子e1が衝突することにより発光するシンチレータ、33は該シンチレータ32からの発生光(光信号)を導くライトパイプ、34はライトガイド21とライトパイプ33を接合する接合部、35は光信号を受けてその光信号を電気信号に変換する光電子増倍管(PMT)である。該シンチレータ32の表面には、コロナリング31に印加された電圧が均一になるように、更にシンチレータ32の発生光がライトパイプ33に十分届くようにアルミニウム蒸着膜が付けられている。
【0022】
前記反射電子e2による発光光(光信号)を案内するライトガイド21はその一端でライトパイプ33と接合される。該ライトガイド21の材料としては、例えばアクリル板が用いられる。また、別の材料として、YAG(イットリューム・アルミニウム・ガーネット),YAP(イットリューム・アルミニウム・リン),プラスチック等を使用することができる。ここで、シンチレータ32とライトガイド21が一体化されている構成を用いることができる。
【0023】
34はその接合部である。40はPMT35の出力を増幅するプリアンプ、41は該プリアンプ40の出力を受けるメインアンプである。プリアンプ40は、PMT35からの電流信号を電圧信号に変換する電流/電圧変換抵抗R1と、アンプU1と、アンプU1の入出力間に接続された帰還抵抗R2と、分圧抵抗R3,R4とで構成される。
【0024】
ここで、分圧抵抗R3,R4の値としてこの識別記号をそのまま用いるとすると、プリアンプ40のゲインは、1+(R3/R4)で与えられる。41はプリアンプ40の出力を受けて、パワーを供給するメインアンプである。該メインアンプ41はアンプU2から構成されており、ここではバッファアンプとして機能している。
【0025】
図2はライトガイド21の構成例を示す図である。図1と同一のものは、同一の符号を付して示す。図において、21がライトガイドである。該ライトガイド21としては、例えばアクリル板が用いられる。21aは該ライトガイド21内に形成されたシンチレータである。該シンチレータ21aは、電子ビームEBの通過用の穴45に対してドーナツ状に形成されている。該ライトガイド21は、例えばアクリル板を臨界角(例えば可視光の臨界角はナトリウムD線の場合で42°)以内の39°と35°に曲げて構成されている。
【0026】
曲げ角を臨界角以内に抑えているので、光がライトガイドの外部に漏れることはない。アクリル板の表面等には、反射電子/2次電子の帯電除去(シンチレータ発光伝達漏れの防止を含む)のため、接続端部より例えば15mmまで、表面,裏面,側面にアルミニウム(AL)コーティングされている。このため、試料のワークディスタンス(WD)が5mm〜50mm以上において、反射電子と2次電子による帯電を防ぐことができる。この実施の形態によれば、ライトガイドとしてアクリル板を用いることができる。ここで、別の材料として、シンチレータとライトガイドが一体化されたYAG,YAP又はプラスチックからなるシンチレータと同形状の板材に形成して用いてもよい。
【0027】
また、ライトガイド21とライトパイプ33の接合部をコロナリング31の位置からPMT35側に配置することにより、帯電による微小放電を防止することができる。2次電子検出部30のコロナリング31を現状径のままとすることで、ライトガイドアルミニウム蒸着面からコロナリング31の10kV表面までの空間距離を8mm確保することができる。更に沿面距離20mmを確保することができる。これにより、コロナリング31からライトガイド21への微小放電を避けることができる。
【0028】
また、ライトガイド接続端部とライトパイプ33は、固定リングを取り付け後、接着固定するようにする。図3は本発明の接合部34の構成例を示す図である。図1と同一のものは、同一の符号を付して示す。図において、21は反射電子の光信号を伝達するライトガイド、33は2次電子の光信号を伝達するライトパイプである。37は接合部34に設けられた固定リングである。該固定リング37でライトガイド21とライトパイプ33とを接合した後、接着固定する。固定リング37は、接着補強のために用いられる。38は、ライトガイド21をライトパイプ33の中に挿入するための切り込みである。この実施の形態によれば、ライトガイド接続端部とライトパイプ間を確実に固定することが可能となる。このように構成された装置の動作を説明すれば、以下通りである。
【0029】
SEMで導電性試料を観察する場合、分解能が良いことから2次電子検出が多用されている。非導電性試料は、表面に導電性蒸着膜をコーティングした後、2次電子像を観察するのが通常の方法である。これを便宜上HIVC(High Vacuum)と呼ぶことにする。一方、非導電性試料を数Pa〜300Pa等の低真空で、2次電子ではなく反射電子を用いて試料帯電の無い像観察ができる。これを便宜上LOVC(Low Vacuum)と呼ぶことにする。
【0030】
本発明に係る2次電子・反射電子検出装置は、HIVCとLOVC機能を備えたSEMの試料室内で使用され、2次電子検出器部30(シンチレータ32と10kVに印加されるコロナリング31とライトパイプで構成)と、反射電子検出部20(ライトガイド21と該ライトガイド21内に設けられたシンチレータ21aで構成)が接合部34で一体に接合され、それに続くPMT35と該PMT35に続くアンプ部40,41は各々の像観察で共用される。そして、メインアンプ41の出力は信号処理部(図示せず)に送られ、ディスプレイ(図示せず)で表示できるように処理される。
【0031】
本発明にかかる2次電子・反射電子検出装置は、HIVC時に2次電子検出部30のコロナリング31に10kV(所定電圧)が印加される。そして、シンチレータ32からの光信号はライトパイプ33を介してPMT35に入力し、該PMT35で電気信号に変換され、2次電子信号としてプリアンプ40に送られる。
【0032】
一方、LOVC時は、2次電子検出部30のコロナリング31に印加される電圧がオフになる。そして、反射電子検出部20のシンチレータ21aからの光信号が一体化されたライトガイド21を通じてPMT35に送られ、反射電子信号として電気信号に変換され、反射電子信号としてプリアンプ40に送られる。
【0033】
この実施の形態によれば、コロナリング31への所定電圧の印加/不印加により、2次電子検出部30と反射電子検出部20の出力を選択的にPMT35で検出することが可能になり、2次電子像と反射電子像を簡単な構成で選択的に得ることができる。
【0034】
HIVCとLOVCの機能を有するSEM(図8参照)の試料室にピラニー管等を用いた真空度検出器を設け、試料室内の真空度を検出する。この真空度検出器は、HIVC時は10-2Paより高真空(低圧力)を検出し、LOVC時は、それより圧力の高い数Pa〜300Paを検出することができるようになっている。
【0035】
SEM(例えば図8参照)の制御部は、前記真空度検出器で検出した真空度が10-2Paより高真空であった場合、2次電子検出部30のコロナリング31へ10kVの電圧を印加する。この結果、図1に示す装置は2次電子検出装置として働き、2次電子検出部30の出力がPMT35へ入力され、該PMT35で電気信号に変換され、続くアンプ部に入力される。このアンプ部40,41の出力がSEMの信号処理系に入力され、付属のディスプレイに2次電子像として表示される。
【0036】
SEM(例えば図8参照)の制御部は、前記真空度検出器で検出した真空度が数Pa〜300Paであった場合、2次電子検出部30のコロナリング31へ印加されている印加電圧10kVをオフにする。試料室を数Pa〜300Paの真空度にする場合は、例えば試料室に設けられたニードル弁を開く。この結果、試料室内の圧力は上昇して真空度は下がり、図1に示す装置は反射電子検出装置として働き、反射電子検出部20の出力がPMT35へ入力され、該PMT35で電気信号に変換され、続くアンプ部に入力される。このアンプ部40,41の出力がSEMの信号処理系に入力され、付属のディスプレイに反射電子像として表示される。
【0037】
このように、この実施の形態によれば、真空度検出器の出力に応じて、2次電子像又は反射電子像を自動的に選択表示できる。その場合において、今2次電子像を観察しているのか、反射電子像を観察しているのかをディスプレイ上に表示することも可能となる。
【0038】
上述の実施の形態では、真空度検出器の出力に応じて、自動的に反射電子検出装置又は2次電子検出装置として動作させる場合を例にとって説明した。しかしながら、本発明はこれに限るものではなく、SEMに付属のボタンを切替えることにより、2次電子像観察モードか又は反射電子像観察モードかを手動により切り替えるようにすることができる。その場合、試料室の真空度が予め分かっている必要がある。つまり、真空度が10-2Paより高真空の場合には、オペレータがSEM付属の2次電子像観察モードのボタンを押し、真空度が数Pa〜300Paの場合には、反射電子観察モードのボタンを押すようにする。この結果、SEMの制御部は、押されたボタンの種類によって、2次電子像又は反射電子像を検出してディスプレイにその画像を表示することができる。
【0039】
HIVCからLOVCへの変換、又はLOVCからHIVCへの変換は、試料室の真空度の調整と2次電子検出部20のコロナリング31への10kVの印加をオンにするかオフにするかを切り替えることで容易に行なうことができる。
【0040】
そして、試料室に取り付けられた本発明に係る2次電子・反射電子検出装置により検出される2次電子信号と反射電子信号の強度によって、それぞれでPMTへ印加する電圧を調整することにより、最適化された画像を観察することができるようになる。
【0041】
その最適化の方法として、制御のリンクデータを備えることもある。例えば、
1)SEMの集束レンズの励磁電流制御によって試料の照射電流が可変できる。
2)試料と対物レンズ間の距離、即ちWDを可変することにより2次電子と反射電子信号強度が変わるので、PMTの印加電圧を最適化することができる。
3)電子ビームの加速電圧を可変することによって、2次電子と反射電子信号強度が変わるので、PMTの印加電圧を最適化することができる。
【0042】
また、加速電圧可変、WD可変によりSEMの解像度(電子ビーム径)が変化するため、観察できる倍率を2次電子像と反射電子像で上限値をそれぞれ設定することもある。
[実施の形態2]
2次電子検出部30のシンチレータ32は、試料6より発生した2次電子(エネルギー:0.2〜50eV)がシンチレータ32(φ25mm)に接した外周に取り付けられたコロナリング31(10kVが印加されている)の10kVの電界で加速される軌道を飛行してシンチレータ(φ25mm)の中心部に略5mm径に集束される。そのため、その後のライトパイプ33、PMT35で光伝達漏れが殆ど皆無である。
【0043】
しかしながら、反射電子検出部20のシンチレータ21aは、図2にその断面を示したように、シンチレータ21aで発光した反射電子信号がシンチレータライトガイド21(厚さ2mm、表面と裏面をアルミニウム蒸着で鏡面仕上げ)表面と裏面の鏡面間を散乱しながら、ライトパイプ33に導かれる。そして、その後のPMT35に光伝達される。この間における光伝達漏れが予測される項目は次の通りである。
1)厚さ方向の漏れの対策処置は、シンチレータライトガイド21(厚さ2mm、表面と裏面をアルミニウム蒸着で鏡面仕上げ)内で光漏れが生じる。その対策は、厚さ方向の漏れの対策処置は、シンチレータライトガイド21を表面研磨仕上げし、表面と裏面をアルミニウム蒸着で鏡面仕上げする。ライトガイド21の曲げはアクリル材料の臨界角42°未満に抑える。
【0044】
また、ライトガイド21を曲げずに2次電子検出部30を傾ける方法もある。図4は本発明の他の実施の形態を示す構成図である。図1と同一のものは、同一の符号を付して示す。図において、21は反射電子の光信号を伝達するためのライトガイド、31は2次電子を検出するためのコロナリング、33は2次電子の光信号を伝達するためのライトパイプ、36は2次電子検出器カバー、35は光信号を受けて電気信号に変換するPMTである。
【0045】
この実施の形態は、反射電子の光信号を伝達するライトガイド21を直線状にしている。ライトガイド21を直線状にすると、光の漏れが少なくなり、効率よく反射電子信号をPMT35に導くことができる。ライトガイド21を直線状にすることにより、2次電子検出器30を傾ける必要がある。図では、傾いたライトパイプ33に、直線状にライトガイド21が挿入され、接合部34を形成していることが分かる。
【0046】
ライトガイド21の側面方向の漏れの対策処置は、端面(外周)を鏡面仕上げし、その表面をアルミニウム蒸着で鏡面仕上げする。更に光線漏れの対策として、反射電子検出用のシンチレータの構成は、図5に示すようにアクリル材料の臨界角42°未満になるように、円形、楕円形、しゃもじ形にする。図5は反射電子検出器のシンチレータの構成例を示す図である。50はシンチレータ塗布面であり、この例では円状の塗布面を示している。51は電子ビームが通過するための穴である。
【0047】
次に、反射電子検出部のライトガイド21と2次電子検出部のライトパイプ33の接合部34の構成について説明する。図6は本発明の接合部の他の構成例を示す図である。34が接合部である。図のAは接合部34の断面形状を示している。51は反射電子光信号の入射領域、52は2次電子光信号の入射領域である。これから、ライトガイド21は四角柱であることが分かる。円形の方が好ましいが、コストを削減するために四角柱としている。反射電子検出部ライトガイド21と2次電子検出部ライトパイプ33の接合は直角面で行ない、光伝達漏れをなくする。
【0048】
反射電子検出部ライトガイド21の表面と裏面は鏡面仕上げ後、アルミニウムコーティングで鏡面を造る。2次電子検出部30とライトガイド21は一体で作製し、コロナリング31と反対側に位置するライトパイプ33の部分は円錐台形状としている。円錐の傾きは、アクリルの臨界角である42°よりも小さくする。円錐台形部39は、図に示すように円錐面を含めて線部を鏡面仕上げ後、アルミニウムコーティングで鏡面を造っている。
【0049】
図7は本発明に係る走査電子顕微鏡の構成概念図である。図8と同一のものは、同一の符号を付して示す。1は電子銃、EBは電子ビーム、2はコンデンサレンズ、3は絞り、4は偏向器、5は対物レンズ、6は試料である。10は試料6の上部に設けられた本発明に係る2次電子・反射電子検出装置である。該2次電子・反射電子検出装置10の内部構成は、図1又は図4に示すような構成となっている。
【0050】
電子ビームEBを試料6に照射すると、該試料6からは反射電子e2と2次電子e1が放出される。反射電子e2と2次電子e1は本発明に係る2次電子・反射電子検出装置10に入力され、シンチレータにより光信号に変換され、該光信号はPMTにより電気信号に変換される。この電気信号は、SEMの内部にある信号処理部で信号処理がなされ、SEMに付属のディスプレイ(図示せず)上に、反射電子像又は2次電子像が選択的に表示される。
【0051】
なお、2次電子像を観察する場合、検出される信号に反射電子信号が微小ながら含まれる可能性がある。しかしながら、その割合は十分低いものであり、2次電子像を正確に表示することが可能となる。
【0052】
即ち、各実施の形態において、例えば2kV以上の加速電圧とされた電子ビームを試料に照射して、検出された2次電子に基づき2次電子像を観察する時に、2次電子信号に反射電子信号が混入する比率は、1/30程度となる。このように、混入される反射電子信号量に対して、検出される2次電子信号量は30倍程多いので、2次電子像として実質上問題はない。
【0053】
以上、説明したように、本発明によれば2次電子検出部と反射電子検出部からの出力を選択的に検出することが可能になり、2次電子像と反射電子像を簡単な構成で選択的に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の一実施の形態を示す構成図である。
【図2】ライトガイドの構成例を示す図である。
【図3】本発明の接合部の構成例を示す図である。
【図4】本発明の他の実施の形態を示す構成図である。
【図5】反射電子検出器の構成例を示す図である。
【図6】本発明の接合部の他の構成例を示す図である。
【図7】本発明に係る走査電子顕微鏡の構成概念図である。
【図8】走査電子顕微鏡の構成概念図である。
【符号の説明】
【0055】
20 反射電子検出器
21 ライトガイド
30 2次電子検出器
31 コロナリング
32 シンチレータ
33 ライトパイプ
34 接合部
35 PMT
40 プリアンプ
41 メインアンプ
45 EB通過穴
e1 2次電子
e2 反射電子
U1 アンプ
U2 アンプ
R1 抵抗
R2 抵抗
R3 抵抗
R4 抵抗

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料から発生する2次電子又は反射電子を検出する2次電子・反射電子検出装置であって、
所定の電圧が印加されて2次電子を引き寄せるコロナリングと該2次電子を受けるシンチレータと該2次電子に基づき該シンチレータから発生する光を案内するライトパイプよりなる2次電子検出部と、
反射電子を受けるシンチレータと該反射電子に基づき該シンチレータから発生する光を導くライトガイドよりなる反射電子検出部と、
前記ライトガイドと前記ライトパイプとを接合する接合部と、
2次電子又は反射電子を受けた前記何れかのシンチレータからの光を受ける光電子像倍管と、
を有する2次電子・反射電子検出装置。
【請求項2】
前記ライトガイドは、1次電子線が通過するための穴が設けられていると共に臨界角以下に曲げられたアクリル板から構成され、該アクリル板の表面及び裏面にはアルミニウムコーティングが施されていることを特徴とする請求項1記載の2次電子・反射電子検出装置。
【請求項3】
前記接合部では、固定リングにより前記ライトガイドの接続端部と前記ライトパイプとが接合され、接着により固定されていることを特徴とする請求項1又は2記載の2次電子・反射電子検出装置。
【請求項4】
請求項1乃至3何れか記載の2次電子・反射電子検出装置を試料室内部に備えた走査電子顕微鏡。
【請求項5】
前記試料室内部の真空度を測定する真空度検出器を備え、
該真空度検出器による検出値が所定の閾値よりも低真空である場合には、前記コロナリングに所定電圧が印加されず、これにより前記2次電子・反射電子検出装置は反射電子検出装置として動作し、
該真空検出器による検出値が所定の閾値よりも高真空である場合には、前記コロナリングに所定電圧が印加され、これにより前記2次電子・反射電子検出装置は2次電子検出装置として動作することを特徴とする請求項4記載の走査電子顕微鏡。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−205891(P2009−205891A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−45694(P2008−45694)
【出願日】平成20年2月27日(2008.2.27)
【出願人】(000004271)日本電子株式会社 (811)
【Fターム(参考)】