説明

2段スイッチ装置

【課題】第1のプッシュスイッチをオンさせるために押しボタンを押したときに、クリック感が確実に得られる2段スイッチ装置を提供する。
【解決手段】2段スイッチ装置1は、第1のプッシュスイッチ11と、第2のプッシュスイッチ12と、レバー4と、押しボタン3と、保持部(ストッパ)21,22を備えている。レバー4は、第1のプッシュスイッチ11のキートップ11Kを押下する第1の突起部45T、及び第2のプッシュスイッチ12のキートップを押下する第2の突起部46を備えている。押しボタン3は、レバー4の第2の突起部46よりも第1の突起部45Tに近い当接部45Aを押下する。保持部21,22は、レバー4を保持する。レバー4は、板状であり、その中心部にコの字形の溝47に囲まれたヒンジ45を備えている。ヒンジ45は、その中間部に当接部45Aを備えている。また、ヒンジ45は、その先端部に第1の突起部45Tを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押しボタンの押下量に応じて、2つのプッシュスイッチの一方または両方をオンさせる2段スイッチ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、遠隔制御装置などの携帯電子機器には、操作ボタンを押すことで、複数のプッシュスイッチを順次押し込んで動作させる多段スイッチを備えたものがあった(特許文献1参照。)。例えば、2段スイッチの場合は、第1のプッシュスイッチの押しボタンを押す突出部、及び第2のプッシュスイッチの押しボタンを押す突出部がそれぞれ両端付近に設けられた「てこ」と、2つの突出部の中点よりも一方の突出部に近い位置に設けられた「操作ボタン」と、を備えている。ユーザが最初に操作ボタンを軽く押すと、操作ボタンに近い方の突出部が第1のプッシュスイッチの押しボタンを押し込んで、第1のプッシュスイッチをオンさせる。ユーザがさらに操作ボタンを強く押すと、操作ボタンから離れた方の突出部が第2のプッシュスイッチの押しボタンを押し込んで、第2のプッシュスイッチもオンさせる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭62−84120号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
遠隔制御装置などの携帯電子機器に特許文献1に記載の2段スイッチを設ける場合、てこを浮動状態に配置するために、シーソーのように、てこの中心付近の両側を保持する構成の保持部を設けて、この保持部でてこを保持するのが好ましい。また、てこ自体の強度を高めるために、てこを板状に形成して、第1のプッシュスイッチの押しボタン全体に対向させるのが好ましい。
【0005】
しかし、このような形状にすると、第1のプッシュスイッチをオンさせるために、操作ボタンを押したときにクリック感が得られない。そのため、ユーザは、第1のプッシュスイッチをオンさせることができたか否かを感触では把握できないという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、第1のプッシュスイッチをオンさせるために操作ボタンを押したときに、クリック感が確実に得られる2段スイッチ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の2段スイッチ装置は、第1のプッシュスイッチと、第2のプッシュスイッチと、レバーと、押しボタンと、保持部と、を備えている。第2のプッシュスイッチは、第1のプッシュスイッチに近接して配置される。レバーは、第1のプッシュスイッチのキートップを押下する第1の突起部、及び第2のプッシュスイッチのキートップを押下する第2の突起部を備えている。押しボタンは、レバーの第2の突起部よりも前記第1の突起部に近い当接部を押下する。保持部は、レバーを保持する。また、レバーは、板状であり、その中心部にコの字形の溝に囲まれたヒンジを備えている。ヒンジは、その中間部に当接部を備えている。また、ヒンジは、その先端部に第1の突起部を備えている。
【0008】
レバーを板状に形成し、第1の突起部を当接部の近傍に設け、保持部でレバーを保持する構成の場合、ユーザが押しボタンを押下すると、レバーを介して第1のプッシュスイッチのキートップが押下される。このとき、レバーの当接部から第1の当接部までの距離が短いと、押しボタンを押下したときのレバー全体のたわみ量が小さくなる。そのため、第1のプッシュスイッチをオンさせるために押しボタンを押しても、レバーはほとんど振動せず、キートップを押下したときの振動(クリック感)が押しボタンに伝わりにくく、ユーザはクリック感をほとんど感じない。
【0009】
この発明では、上記のような構成のレバーに対して、レバーの中心部にコの字形の溝に囲まれたヒンジを設けている。また、ユーザが押しボタンを押下するとヒンジの中間部に当接し、ヒンジが押しボタンに押下されて屈曲し、ヒンジの先端の突起部が第1のプッシュスイッチのキートップを押下するように構成する。ヒンジは、コの字状の溝に囲まれているので、押しボタンが押下されると、ヒンジのたわみ量が大きくなる。そのため、ヒンジの先端の突起部がキートップを押下したときの振動がヒンジに伝わると、ヒンジが振動し、さらに、ヒンジを押下している押しボタンに振動が伝わって、押しボタンが振動する。つまり、第1のプッシュスイッチのキートップを押下したときのクリック感(振動)は、キートップからヒンジを介して押しボタンに伝わる。したがって、ユーザは、第1のプッシュスイッチをオンさせるために2段スイッチ装置の押しボタンを押すと、クリック感を感じることができ、第1のプッシュスイッチをオンさせることができたことを感触で把握できる。また、ヒンジは、第三種てことして機能するので、押しボタンが強い力で押下されたとしても、その力よりも弱い力でプッシュスイッチのキートップが押下される。したがって、プッシュスイッチのキートップに加わる力が軽減され、プッシュスイッチの寿命を延ばすことができる。
【0010】
上記発明において、レバーは、それぞれ、弾性を有する2つのアームを備えている。保持部は、押しボタンの周縁に形成され、向かい合って配置された2つのストッパを備えている。2つのストッパには、それぞれ、アームの先端部を掛止する掛止部と、アームの先端部を掛止部まで案内する案内溝と、が形成されている。
【0011】
本発明では、押しボタンの周縁に形成したストッパにレバーのアームを取り付けるので、例えば、2段スイッチを密集させて設けたために部品の間隔が狭くなっても、レバーを容易に取り付けることができる。また、レバーのアームの先端部を、ストッパに形成した案内溝を通過させて掛止部に掛止させるので、アームの先端部を掛止部に直接取り付ける場合と比較して、容易に取り付けることができる。
【0012】
上記発明において、2つのアームの先端がドーム型に形成されている。
【0013】
この構成では、アームの先端部を案内溝に挿入する際に、ドーム型の先端部が案内溝の壁面に当接すると、壁面上を滑るので、アームの先端を容易に掛止部に挿入できる。したがって、例えば、2段スイッチを密集させて設けたために部品の間隔が狭くなっても、レバーを容易に取り付けることができる。また、アームの先端部を掛止部に挿入後に、押しボタンを押下したときに、ドーム型の先端部が掛止部に当接しながら滑るので、レバーをスムーズに移動させることができる。
【0014】
上記発明において、レバーは、2つのアームの隣りにそれぞれ掛止片を備えている。掛止片は、その先端部が案内溝に挿入され、第1の突起部が第1のプッシュスイッチのキートップを押下するときに、案内溝の壁面に当接する。
【0015】
この発明では、第1のプッシュスイッチのキートップを押下するときに、掛止片が案内溝の壁面に当接する。そのため、押しボタンが押下されたときに、キートップに加わる力を抑制することができ、プッシュスイッチのキートップが強い力で押下されて劣化するのを防止できる。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、第1のプッシュスイッチをオンさせるために操作ボタンを押したときに、クリック感が確実に得られる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係る2段スイッチ装置を適用した遠隔制御装置の斜視外観図である。
【図2】(A)は、図1に示す2段スイッチ装置のA−A矢視断面図である。(B)は、図1に示す2段スイッチ装置のB−B矢視断面図である。
【図3】(A)は、レバーの、キートップを押下する面を示す平面図である。(B)は、レバーの、キートップを押下する面側の斜視図である。(C)は、レバーの、押しボタンに押下される面側の斜視図である。
【図4】レバーの取り付け方法を説明するための図である。(A)は、第1のストッパにレバーを取り付ける位置を示す斜視図である。(B)は、第2のストッパの形状を示す斜視図である。(C)は、第1のストッパにレバーを取り付けた状態を示す正面図である。(D)は、第1のストッパと第2のストッパにレバーを取り付けた状態を示す正面図である。(E)は、第1のストッパと第2のストッパにレバーを取り付けた状態を示す斜視図である。
【図5】隣接する2つの2段スイッチにおいてレバーの取り付け方法を説明するための図である。(A)は、第1のストッパにレバーを取り付ける位置を示す斜視図である。(B)は、第1のストッパにレバーを取り付けた状態を示す正面図である。(C)は、第1のストッパと第2のストッパにレバーを取り付けた状態を示す正面図である。
【図6】(A),(D),(G)は、図1に示す2段スイッチ装置のB−B矢視断面図において、一方の2段スイッチのみを示した図である。(B),(E)は、図1に示す2段スイッチ装置のC−C矢視断面図である。(C),(F)は、図1に示す2段スイッチ装置のD−D矢視断面図である。また、(A)〜(C)は、押しボタンを押下していない状態を示す。(D)〜(F)は、押しボタンを押下して、1つのプッシュスイッチのキートップを押下した状態を示す。(G)は、押しボタンを押下して、2つのプッシュスイッチのキートップを押下した状態を示す。
【図7】第1のストッパと第2のストッパにレバーを取り付けた状態を示す正面図である。(A)は、1つのプッシュスイッチを押下するときの、支点、力点、及び作用点を説明するための図である。(B)は、2つ目のプッシュスイッチを押下するときの、支点、力点、及び作用点を説明するための図である。(C)は、レバーの中心線上に突起部を設けた場合に、2つ目のプッシュスイッチを押下するときの、支点、力点、及び作用点を説明するための図である。(D)は、(B)に示した突起部と、(C)に示した突起部と、を重ねた図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1に示すように、本発明の2段スイッチ装置は、例えば、携帯電子機器の一例である遠隔制御装置(テレコン装置)101に用いることができる。遠隔制御装置101は、複数の押しボタンのいずれかを押下して、ホイスト式クレーンやタワークレーンなどの制御対象機器を無線で遠隔操作する装置である。
【0019】
遠隔制御装置101は、筐体2の表面(操作面)に複数の押しボタン111〜122を備えている。このうち押しボタン114〜119が、本発明の2段スイッチ装置により構成されている。
【0020】
2段スイッチ装置は、押しボタンの押下量に応じて1つまたは2つのプッシュスイッチのキートップを押下する機構を備えている。図2(A)には、2つのプッシュスイッチ11,12を押下する2段スイッチ装置1を示している。
【0021】
図2(A)に示すように、2段スイッチ装置1は、筐体2に取り付けられた押しボタン3、レバー4、第1のプッシュスイッチ11、及び第2のプッシュスイッチ12を備えている。
【0022】
第2のプッシュスイッチ12は、第1のプッシュスイッチ11に近接して配置されている。
【0023】
筐体2は、プリント基板10に取り付けられたプッシュスイッチ11,12の各キートップ11K,12Kに対向して配置されている。
【0024】
押しボタン3は、筐体2に形成された円形の孔2Hに、弾性体であるエラストマー2Eを介して取り付けられている。押しボタン3の先端部は、レバー4に当接している。押しボタン3は、レバー4を介してプッシュスイッチ11,12のキートップ11K,12Kを押下するためのボタンである。
【0025】
レバー4は、押しボタン3と2つのプッシュスイッチ11,12との間に配置されている。レバー4は、押しボタン3が押下されると、押しボタン3とともに移動し、押しボタン3の押下量に応じて第1のプッシュスイッチ11のキートップ11Kを押下するか、または第1のプッシュスイッチ11のキートップ11Kと、第2のプッシュスイッチ12のキートップ12Kと、を押下する。
【0026】
図1に示した遠隔制御装置101では、押しボタン116と押しボタン119が、それぞれ、図2(A)に示した2段スイッチ装置1により構成されている。
【0027】
次に、2段スイッチ装置1Bは、2つの2段スイッチが第2のプッシュスイッチを共用する構成であり、同時に押すことがなく近接した2つの2段スイッチに適用できる。遠隔制御装置101では、押しボタン114,115と、押しボタン117,118と、が2段スイッチ装置1Bにより構成されている。
【0028】
2段スイッチ装置1Bでは、上記のように2つの2段スイッチが第2のプッシュスイッチを共用する構成なので、使用するプッシュスイッチの占有面積を減らして2段スイッチを小型化することができ、複数の2段スイッチ装置を密集させることができる。
【0029】
図2(B)に示すように、2段スイッチ装置1Bは、図2(A)に示した2段スイッチ装置1の構成に加えて、押しボタン3B、レバー4B、及び第3のプッシュスイッチ11Bを備えている。
【0030】
第2のプッシュスイッチ12は、第1のプッシュスイッチ11に近接して配置される。第3のプッシュスイッチ11Bは、第2のプッシュスイッチ12に近接して配置される。
【0031】
図3(A)、図3(B)に示すように、レバー4は矩形の板状であり、周囲にアーム41,43、掛止片42,44、及び突起部46が形成されている。
【0032】
具体的には、図3(A)に示すように、レバー4の中心線CLと直交する直線(第1の直線)SL1に沿って延出し、中心線CLに対して線対称に2つのアーム41とアーム43が設けられている。アーム41とアーム43は弾性を有しており、階段状に湾曲している。アーム41の先端部41Dとアーム43の先端部43Dは、それぞれ矩形状の板面と垂直な方向を向き、ドーム型に形成されている。
【0033】
掛止片42,44は、2つのアーム41,43の中点4Sに対して点対称に形成されている。すなわち、掛止片42は、中点4Sに対してアーム41を時計回りに回転させた位置に設けられている。また、掛止片44は、中点4Sに対してアーム43を時計回りに回転させた位置に設けられている。
【0034】
突起部46は、第2の突起部または第3の突起部に相当し、レバー4の中心線CLの右側に設けた、中心線CLと平行な直線SL2上であって、直線SL1から距離L1離れた位置に形成されている。突起部46を設けている位置は、中点4Sに対して中心線CLを時計回りに回転させた位置と言える。
【0035】
このように、アーム41(43)に対する掛止片42(44)の位置関係が、レバー4の中心線CLに対する突起部46の位置関係と同様である。
【0036】
レバー4の中心部には、コの字状の溝47に囲まれ、レバー4との接続部45Nから延出するヒンジ45が形成されている。ヒンジ45の先端には、突起部45Tが形成されている。突起部45Tは、第1の突起部または第4の突起部に相当する。図3(C)に示すように、ヒンジ45の中間部には、周囲よりも隆起した当接部45Aを備えている。当接部45Aには、図2(A),図2(B)に示したように、押しボタン3の先端部が当接する。
【0037】
すなわち、第1の押しボタン3は、第1のレバー4の第2の突起部46よりも第1の突起部45Tに近い部分である第1の当接部45Aを押下する。第2の押しボタン3Bは、第2のレバー4Bの第3の突起部46Bよりも第4の突起部45BTに近い部分である第2の当接部45BAを押下する。
【0038】
2段スイッチ装置1または2段スイッチ装置1Bにおいて、レバー4の取り付けは、以下のようにする。
【0039】
図4(A)に示すように、筐体2には、押しボタン3の周縁(孔2Hの周縁)に、レバー4の保持部である2つのストッパ21,22が形成されている。2つのストッパ21,22は、向かい合って配置された対向面21Mと対向面22Mをそれぞれ有している。対向面21Mには、L字溝210が形成されている。L字溝210は、ストッパ21の側縁に形成された開口部211Kから、押しボタン3が押下される押下方向3Pと直交する方向に延びる案内溝である横溝211と、横溝211の終端側から押しボタン3の押下方向3Pの方向に延びる掛止部である縦溝212と、を有する。押しボタン3の中央部(先端部)には、ヒンジ45の当接部45Aを押下する突起部3Tが形成されている。
【0040】
レバー4において、アーム41,43の端部の厚みt1は、横溝211,221の幅W1よりも小さい。また、掛止片42,44の端部の厚みt2は、横溝211,221の幅W1よりも小さい。また、アーム41の先端部41Dは、掛止片42の一方の面42Mよりも突出し、アーム43の先端部43Dは、掛止片44の一方の面44Mよりも突出している。このような構成にすることで、後述するように、レバー4をストッパ21,22のL字溝210,220に容易に取り付けることができる。
【0041】
図4(B)に示すように、ストッパ22の対向面22Mには、L字溝220が形成されている。L字溝220は、ストッパ22の側縁に形成された開口部221Kから、押しボタン3が押下される押下方向3Pと直交する方向に延びる案内溝である横溝221と、横溝221の終端側から押しボタン3の押下方向3Pの方向に延びる掛止部である縦溝222と、を有する。
【0042】
L字溝210とL字溝220は、押しボタン3の中心点3Cに対して点対称に形成されている。すなわち、図4(D)に示すように、L字溝210では、押しボタン3の中心点3Cに対して縦溝212を時計回りに回転させた位置に横溝211が形成されている。また、L字溝220では、中心点3Cに対して縦溝222を時計回りに回転させた位置に横溝221が形成されている。
【0043】
また、突起部46は、中点4Sに対して中心線CLを時計回りに回転させた位置に設けていると言える。したがって、中心線CLに対する突起部46の位置関係は、L字溝210(220)の縦溝212(222)に対する横溝211(221)の位置関係と同様である。
【0044】
上記のように、L字溝210とL字溝220は点対称に形成されているので、レバー4は、押しボタン3に対向させ、回転させてストッパ21,22に取り付ける。すなわち、図4(C)に示すように、レバー4を傾けた状態で押しボタン3に対向させ、ストッパ21のL字溝210にアーム41と掛止片42を挿入する。具体的には、アーム41をL字溝210の縦溝212に挿入し、掛止片42をL字溝210の横溝211に挿入する。続いて、図4(D)に示すように、レバー4を反時計回りに回転させながらストッパ22のL字溝220に、レバー4のアーム43と掛止片44を挿入する。具体的には、アーム43をL字溝220の縦溝222に挿入し、掛止片44をL字溝220の横溝221に挿入する。2つの横溝211,221には、それぞれ開口部211K,221Kが設けられているので、これら開口部からアームや掛止片を挿入することができ、レバー4を容易に取り付けることができる。
【0045】
アーム41,43の先端部41D、43Dは、前記のようにドーム型に形成されているので、アームの先端部をL字溝に挿入する際に、先端部を滑らせながらL字溝に挿入することができる。したがって、レバー4を容易に取り付けることができる。
【0046】
なお、レバー4を取り付ける際には、先に一方のL字溝にアームと掛止片を挿入せずに、レバー4を回転させながら、2つのL字溝に同時にアームと掛止片を挿入させて、取り付けることも可能である。
【0047】
図4(D)と図4(E)に示すように、レバー4をストッパ21とストッパ22に取り付けた状態では、アーム41の先端部41Dは、縦溝212の終端に当接し、アーム43の先端部43Dは、縦溝222の終端に当接する。これにより、レバー4は、押しボタン3により押下されても、簡単には外れない構成となっている。
【0048】
2段スイッチ装置1Bの他方の2段スイッチにおいて、レバー4Bの取り付けは、以下のようにする。
【0049】
図5(A)に示すように、ストッパ21Bに形成したL字溝210Bにレバー4Bのアーム41Bと掛止片42Bを挿入する。そして、図5(B)に示すように、レバー4Bを反時計回りに回転させながらストッパ22BのL字溝220B(案内溝と掛止部に相当)に、レバー4Bのアーム43Bと掛止片44Bを挿入する。
【0050】
このとき、中心線CLBに対する突起部46Bの位置関係は、L字溝210B(220B)の縦溝212B(222B)に対する横溝211B(221B)の位置関係と同様であり、レバー4Bを反時計回りに回転させながら取り付ける。そのため、突起部46Bが突起部46に当たることなく、レバー4Bをストッパ21B,22Bに取り付けることができる。
【0051】
これにより、図5(C)に示すように、隣接する2つの押しボタンに対してそれぞれレバー4とレバー4Bを取り付けることができる。
【0052】
このように、レバー4は、ストッパ21,22に、容易に取り付けることができる。また、ストッパ21,22に取り付けたレバー4は、取り付ける場合とは逆に、時計回りに回転させることで、容易に取り外すことができる。レバー4Bも同様である。
【0053】
図5(C)に点線で示すように、2段スイッチ装置1Bは、レバー4を取り付けた状態では、第1のレバー4におけるヒンジ45の第1の突起部45Tが第1のプッシュスイッチ11のキートップ11Kを押下するように対向して配置される。レバー4Bを取り付けた状態では、第2のレバー4Bにおけるヒンジ45Bの第4の突起部45BTが第3のプッシュスイッチ11Bのキートップ11BKを押下するように対向して配置される。
【0054】
また、第1のレバー4と、第2のレバー4Bと、は、第2のプッシュスイッチであるプッシュスイッチ12のキートップ上で重ならない形状に形成されている。すなわち、第1のレバー4の中心線CLが第2のレバー4Bの中心線CLBと重なり、第2の突起部46と第3の突起部46Bが、第2のプッシュスイッチのキートップ12Kを共に押下できるように、キートップ12Kに対向して配置されている。そのため、前記のように、2つの2段スイッチ装置で押下するプッシュスイッチ12を共用できる。これにより、2つの2段スイッチ装置を密集して設けることができ、また部品点数を削減できる。
【0055】
なお、図示していないが、プッシュスイッチ12のキートップ12Kを押下するように、さらに複数のレバーを配置することも可能である。例えば、図5(C)において、キートップ12Kの上側と下側に、さらに2つのレバーを追加して、キートップ12Kに対して4つのレバーを十字形に配置し、4つのレバーの各突起部がプッシュスイッチ12のキートップ12Kを押下するように対向して配置することが可能である。この場合、4つの2段スイッチ装置で、1つの第2のプッシュスイッチ12を共用することができ、4つの2段スイッチ装置を密集して設けることができる。また、部品点数を削減できる。
【0056】
次に、2段スイッチ装置1Bにおいて、押しボタン3を押し下げたときの各部の状態を説明する。
【0057】
図6(A)に示すように、押しボタン3が押下されていない状態では、押しボタン3の突起部3Tが当接部45Aに当接している。
【0058】
このとき、図6(B)に示すように、アーム41の先端部41Dは、ストッパ21に形成されたL字溝210の縦溝212の終端に当接し、アーム43の先端部42Dがストッパ22に形成されたL字溝220の縦溝222の終端に当接している。また、図6(C)に示すように、掛止片42,44は、L字溝210,220に挿入されており、掛止片42,44の押しボタン3と対向する面の端部が、それぞれL字溝210,220の横溝211,221の上面(壁面)に当接している。
【0059】
このように、レバー4は、押しボタン3とストッパ21,22に保持されている。
【0060】
図6(D)に示すように、押しボタン3が第1の深さD1まで押下されると、押しボタン3の突起部3Tがヒンジ45の当接部45Aを押下する。ヒンジ45は、押しボタン3に押下されると、押しボタン3とともに移動し、プッシュスイッチ11のキートップ11Kを突起部45Tで押下し、プッシュスイッチ11をオン状態にする。
【0061】
このとき、図6(E)に示すように、押しボタン3の突起部3Tがヒンジ45を押下したときには、アーム41,43が湾曲して、その先端部41D,43Dが縦溝212,222の終端面を滑りながら奥側に移動する。
【0062】
また、図6(F)に示すように、レバー4の掛止片42がストッパ21に形成された横溝211の下面に当接し、レバー4の掛止片44が、ストッパ22に形成された横溝221の下面に当接する。
【0063】
ユーザが押しボタン3を押下したときには、押しボタン3の突起部3Tが当接部45Aに当接し、ヒンジ45の突起部45Tがキートップ11Kを押下する。
【0064】
ここで、図6(D)、図7(A)に示すように、当接部45Aから突起部45Tまでの距離が短いので、仮に、レバー4にヒンジ45とコの字状の溝47を設けていない場合には、押しボタン3を押下したときのレバー4全体のたわみ量が小さくなる。そのため、ユーザが第1のプッシュスイッチ11をオンさせるために2段スイッチ装置1の押しボタン3を押しても、レバー4はほとんど振動せず、キートップ11Kを押したときのクリック感が押しボタン3に伝わりにくく、ユーザはクリック感をほとんど感じない。
【0065】
これに対して、本発明のように、レバー4にコの字状の溝47に囲まれたヒンジ45を設けることで、押しボタン3を押下したときに、ヒンジ45のたわみ量を大きくすることができる。これにより、ヒンジ45の突起部45Tがキートップ11Kを押下すると、キートップ11Kの振動が伝わってヒンジ45が振動し、さらにヒンジ45を押下している押しボタン3に振動が伝わって、押しボタン3が振動する。つまり、プッシュスイッチ11のキートップ11Kを押下したときのクリック感(振動)は、キートップ11Kからヒンジ45を介して押しボタン3に伝わる。したがって、ユーザは、第1のプッシュスイッチ11をオンさせるために2段スイッチ装置1の押しボタン3を押すと、クリック感を感じることができ、第1のプッシュスイッチ11をオンさせることができたことを感触で把握できる。
【0066】
図7(A)に示すように、ヒンジ45は、押しボタン3が押下されたときには、押しボタン3の突起部3Tが当接する当接部45Aが力点、ヒンジ45の接続部45Nが支点、ヒンジ45の突起部45Tが作用点となる。つまり、ヒンジ45が第三種てことして機能する。第三種てこは、力点よりも作用点の方が支点からの距離が長いので、力点に加えた力よりも弱い力が作用点に働く。そのため、押しボタンが強い力で押下されたとしても、その力よりも弱い力でプッシュスイッチのキートップを押下する。したがって、押しボタン3が押下されたときにレバー4を介してプッシュスイッチ11のキートップ11Kに加わる力を軽減でき、プッシュスイッチ11の寿命を延ばすことができる。
【0067】
図6(G)に示すように、押しボタン3がさらに第2の深さD2(>D1)まで押下されると、押しボタン3の突起部3Tが引き続きレバー4の当接部45Aに当接する。レバー4は、プッシュスイッチ11のキートップ11Kを突起部45Tで押下し、プッシュスイッチ12のキートップ12Kを突起部46で押下する。
【0068】
このとき、アーム41,43と掛止片42,44は、状態がほとんど変わらず、図6(E)と図6(F)に示した状態である。すなわち、掛止片42は横溝211の下面に当接し、掛止片44は横溝221の下面に当接しており、レバー4は、ストッパ21,22に保持されている。
【0069】
図6(G)、図7(B)に示すように、当接部45Aから突起部46までの距離は、当接部45Aから突起部45Tまでの距離と比べて長く、押しボタン3を押下したときのレバー4全体のたわみ量も大きい。そのため、ユーザが第2のプッシュスイッチ12をオンさせるために2段スイッチ装置1の押しボタン3を押したときには、レバー4は振動し、キートップ12Kを押したときのクリック感が押しボタン3に伝わる。
【0070】
このように、ユーザが押しボタン3をさらに押下したときには、プッシュスイッチ12のキートップ12Kを押下したときの振動(クリック感)がキートップ12Kから突起部46を介してヒンジ45に伝わる。したがって、ユーザは、第2のプッシュスイッチ12をオンさせるために2段スイッチ装置1の押しボタンをより強く押したときも、クリック感を感じることができ、第2のプッシュスイッチ12をオンさせることができたことを感触で把握できる。
【0071】
また、2段スイッチ装置1はこのような構成なので、押しボタン3が強い力で押下されても、プッシュスイッチ11のキートップ11Kやプッシュスイッチ12のキートップ12Kに加わる力を制限でき、プッシュスイッチ11,12の寿命を延ばすことができる。また、レバー4は、プリント基板10にも当接していないので、押しボタン3が押下された際に、プリント基板10に強い力が加わることが無い。
【0072】
押しボタン3が第2の深さD2まで押下されたときには、図7(B)に示すように、掛止片42のL字溝210との当接部と、掛止片44のL字溝220との当接部と、を結ぶ直線45Kを回動軸としてレバー4は回動する。このとき、ヒンジ45の当接部45Aが力点となり、直線45K上の点が支点となり、突起部46が作用点となる。つまり、この場合もヒンジ45が第三種てことして機能する。そのため、押しボタンが強い力で押下されたとしても、その力よりも弱い力でプッシュスイッチ12のキートップ12Kが押下される。したがって、押しボタンが押下された時にレバー4を介してプッシュスイッチのキートップに加わる力は軽減され、プッシュスイッチの寿命を延ばすことができる。
【0073】
図7(B)に示したように、アーム41(43)に対する掛止片42(44)の位置関係が、レバー4の中心線CLに対する突起部46の位置関係と同様であり、レバー4の中心線CLから外れた位置に突起部46が形成されている。この構成では、図7(C)に示すようにレバー4の中心線CL上に突起部46Bを設けた場合と比較して、第三種てこの支点から作用点までの距離を長くすることができる。すなわち、図7(D)に示すように、直線45Kと突起部46との距離L2は、直線45Kと突起部46Xとの距離L3よりも長くなる。そのため、押しボタンが押下されたときにプッシュスイッチ12のキートップ12Kが押下される力をより弱くすることができ、プッシュスイッチ12の延命に寄与する。
【0074】
なお、2段スイッチ装置1Bにおいて、押しボタン3Bを押し下げたときには、押しボタン3を押し下げたときと同様に動作する。そのため、説明は省略する。
【符号の説明】
【0075】
1…2段スイッチ装置 1B…段スイッチ装置 2…筐体 3,3B…押しボタン 4,4B…レバー 10…プリント基板 11,11B,12…プッシュスイッチ 11K,11BK,12K…キートップ 21,22,21B,22B…ストッパ 41,41B,43,43B…アーム 42,42B,44,44B…掛止片 45,45B…ヒンジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のプッシュスイッチと、
前記第1のプッシュスイッチに近接して配置される第2のプッシュスイッチと、
前記第1のプッシュスイッチのキートップを押下する第1の突起部、及び前記第2のプッシュスイッチのキートップを押下する第2の突起部を備えたレバーと、
前記レバーの前記第2の突起部よりも前記第1の突起部に近い当接部を押下する押しボタンと、
前記レバーを保持する保持部と、
を備え、
前記レバーは、板状であり、その中心部にコの字形の溝に囲まれたヒンジを備え、
前記ヒンジは、
その中間部に前記当接部を備え、
その先端部に前記第1の突起部を備えた2段スイッチ装置。
【請求項2】
前記レバーは、それぞれ、弾性を有する2つのアームを備え、
前記保持部は、前記押しボタンの周縁に形成され、向かい合って配置された2つのストッパを備え、
前記2つのストッパには、それぞれ、前記アームの先端部を掛止する掛止部と、前記アームの先端部を前記掛止部まで案内する案内溝と、が形成された、請求項1に記載の2段スイッチ装置。
【請求項3】
前記2つのアームは、その先端がドーム型に形成された、請求項2に記載の2段スイッチ装置。
【請求項4】
前記レバーは、前記2つのアームの隣りにそれぞれ掛止片を備え、
前記掛止片は、その先端部が前記案内溝に挿入され、前記第1の突起部が前記第1のプッシュスイッチのキートップを押下するときに、前記案内溝の壁面に当接する、請求項2または3に記載の2段スイッチ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−45677(P2013−45677A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−183439(P2011−183439)
【出願日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【出願人】(500081059)金陵電機株式会社 (2)
【Fターム(参考)】