説明

2液系プラスチゾル組成物およびその使用方法

2種類の液状組成物(LA)及び(LB)とからなる2液系プラスチゾル組成物で、(LA)及び(LB)を混合後の組成物のゲル化時間が1時間以下(30℃測定時)であることを特徴とする2液系プラスチゾル組成物であれば、常温で1時間以下、好ましくは数分以下でゲル化して実用上十分な性能を発現できる新規な材料を提供することができる。 (LA)は、アクリル系重合体微粒子(A)及び、常温では(A)に対して実質的に非溶解性な分散媒(B)(ただし(B)は加熱時に(A)に対して溶解性であってよい)、(LB)は(A)に対して常温で十分に高い溶解性を有する有機溶媒(C)を使用することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は熱可塑性重合体微粒子を可塑剤に分散させてなるプラスチゾル組成物のうち2液系の組成物に関する。更に詳しくは、2液混合後のゲル化速度がきわめて速く、加熱をせずに十分なゲル化状態が得られるプラスチゾル組成物、及び該プラスチゾル組成物の使用、及びこれを用いた物品等に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂の微粒子を可塑剤中に分散してなるプラスチゾルは、常温では高い流動性を有するため塗布や注型などの作業が容易であり、かつ加熱により短時間でゲル化して塗膜や成形体を与える。この特性を活かして様々な産業分野で広く使用されており、その代表的なものは塩化ビニル系樹脂を用いた塩化ビニル系プラスチゾル(以下塩ビゾルと略)とアクリル系樹脂を用いたアクリル系プラスチゾル(以下アクリルゾルと略)が挙げられる。
【0003】
さらに、これらのプラスチゾルでは、加熱ゲル化後の塗膜に高強度が要求され、例えば、特許文献1(特開2002−30194号公報)には、塗膜強度と常温でのポットライフを両立させるために、高分子量のアクリル単量体を配合したアクリルゾルが開示されている。
【0004】
しかし近年ではプラスチゾルを加工する製造ラインの効率化・設備革新などに伴い、従来のプラスチゾルのゲル化速度を大幅に上回る、きわめてゲル化速度の速い材料が求められている。例えば、従来のプラスチゾルはポットライフの点から、常温では数日から数ヶ月に及ぶ長期間のゲル化速度を有していたのに対して、近年の産業界からの要請は常温で数分〜1時間以下でゲル化するという極めて速いゲル化性能へと変化しつつある。特許文献1記載の高分子量アクリル単量体を用いた場合では、常温で1時間以下でゲル化させることができず、製造ラインの効率化には限界がある。
【0005】
こうした産業上の要請に対して、従来の技術範囲ではこのような極めて速いゲル化速度を有する材料を提供することができず、新しい材料の開発が求められていた。
【0006】
【特許文献1】特開2002−30194号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって本発明が解決しようとする課題は、常温で1時間以下、好ましくは数分以下でゲル化して実用上十分な性能を発現できる新規な材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで本発明者らは上記課題に対して鋭意検討を行い、熱可塑性重合体の微粒子を分散させたプラスチゾル組成物と、この重合体に対して高い溶解性を有する有機溶媒とを併用することで、極めて速いゲル化速度を実現できることを見出し、本発明に至った。
【0009】
すなわち本発明の主旨とするところは、2種類の液状組成物(LA)及び(LB)とからなる2液系プラスチゾル組成物で、(LA)及び(LB)を混合後の組成物のゲル化時間が1時間以下(30℃測定時)であることを特徴とする2液系プラスチゾル組成物及び、該プラスチゾル組成物を使用直前に混合して吐出し、任意の基材に被着させる2液系プラスチゾル組成物の使用方法に関するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、2液系プラスチゾルを用いることで、室温での貯蔵安定性と混合後の速やかなゲル化性を発現することが可能となる。
また更に、ゲル化させる有機溶剤として反応性官能基を有するものを用いることで速やかなゲル化性と、加熱時の揮発性低減の両立が可能となる。
よって本発明の工業的意義および地球環境保全にもたらす効果は著大である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。
まず本発明における用語の定義であるが、本発明で「ゲル化時間」という場合、以下の手法によって測定された時間を意味する。一般に材料の動的粘弾性測定において損失弾性率G”と貯蔵弾性率G’の比、すなわちG”/G’(=tanδ)が1となる時点をもってゲル化点と定義できるため、本発明においては2液系プラスチゾルを混合した直後(この時点でのtanδは1よりも大である)から経時的に動的粘弾性の測定を開始し、tanδが初めて1となるのに要した時間をもって「ゲル化時間」と定義する。
なおゲル化速度があまりに速すぎて動的粘弾性の測定が間に合わない場合には、混合後10分後、5分後など一定時間経過後に動的粘弾性を測定し、その時点でのtanδが1以下であれば、その試料のゲル化時間は10分以下、5分以下、という具合に上限値をもって定めることができる。
また、本発明におけるゲル化時間は、30℃での測定値を用いる。
【0012】
本発明では、ゲル化時間が1時間以下という極めて速いゲル化速度を実現するために、プラスチゾルを2液化して用いることを必須としている。1液のプラスチゾルは塩ビゾルやアクリルゾルなど従来技術により多数が公知であるが、この場合には貯蔵時のポットライフが重視されているためゲル化速度は遅く、常温では通常数ヶ月、速くても数日程度を要するため、1時間以下という要請に対して遥かに及ばない。
【0013】
ゲル化時間は混合後1時間以下であることが必須である。好ましくは10分以下、更に好ましくは3分以下である。この理由は当然のことながらゲル化速度がそのまま製品の生産速度に反映されるためであり、10分以下の場合にはライン生産をしている製品についても使用することができるし、3分以下の場合にはライン速度を現状の速度から低下させることが多くの場合不必要となるためである。
【0014】
2液系プラスチゾルの各々の液状組成物(LA)及び(LB)の好ましい組み合わせについて、以下に順に説明する。
【0015】
まず液状組成物(LA)は、熱可塑性重合体微粒子、特にアクリル系重合体微粒子(A)を、常温では該微粒子(A)に対して実質的に非溶解性な分散媒(B)に分散させた液状組成物であることが好ましい。ただし分散媒(B)は、常温よりも十分に高い任意の温度に加熱した際には、重合体微粒子(A)に対して溶解性を有するものであって良い。
【0016】
なおここで常温とは、本材料を使用する室内の雰囲気温度全般を広く意味するが、一般的には25℃を代表値とし、季節的変動を考慮すると40℃程度を上限とする。本明細書中では25℃での測定値をもって常温での物性と扱う。
【0017】
アクリル系重合体微粒子を用いることが好ましい理由は、プラスチゾル分野において最も一般的である塩化ビニル系重合体に比べて、アクリル系重合体の方が分子間の凝集力が弱く、より少ない熱的エネルギーにより溶解・ゲル化できるため、すなわちゲル化速度をより速く設計することができるためである。
【0018】
分散媒(B)が重合体微粒子(A)に対して少なくとも常温では非溶解性であることが好ましい理由は、2液の材料を混合する前の時点においては、十分に長いポットライフが要求されるためであり、分散媒が重合体微粒子に対して溶解性を有する場合には貯蔵中にゲル化が進行し、使用ができなくなるためである。本発明において、実質的に非溶解性とは、重合体微粒子(A)と分散媒(B)とを後述する所定の量比で混合して得られる液状組成物(LA)を、常温で5日間保存した場合の増粘率が50%以下である状態を言う。なお分散媒が非溶解性であるのは少なくとも常温においてのみで良く、常温よりも十分に高い温度に加熱した場合には重合体微粒子に対して溶解性を有していても構わない。
【0019】
次に液状組成物(LB)については、常温においてアクリル系重合体微粒子(A)に対して常温で十分に高い溶解性を有する有機溶媒(C)を必須成分とするものであることが好ましい。有機溶媒(C)が重合体微粒子を常温において迅速に溶解することができない場合、1時間以下というゲル化速度を発現させることができないためである。本発明における、常温で十分に高い溶解性とは、重合体微粒子(A)と有機溶媒(C)とを後述する所定の量比で混合した場合、常温において1時間以下でゲル化する状態を言う。
【0020】
アクリル系重合体微粒子(A)としては特に限定せず、任意のアルキルメタクリレート及び/又はアルキルアクリレートの単独及び/または共重合体や、必要に応じて各種のコモノマーを共重合したものを広く用いることが可能である。使用可能なモノマーの具体例については後述する。
【0021】
アクリル系重合体微粒子(A)の粒子構造は特に限定せず、均一構造、コア/シェル構造、グラディエント構造、その他の異相構造など広く利用することが可能である。また、これら2種類以上の構造の粒子を併用することもできる。ただし2液を混合する前のポットライフについて長期間を要求される場合には、コア/シェル構造を有することが好ましい。これは、コア重合体により高い溶解性を発現し、シェル重合体において貯蔵中のポットライフを発現するという、機能分担によって高性能化しやすい為である。また、ゲル化速度をさらに高めるために、コア/シェル構造の粒子とゲル化性の高い均一構造粒子を併用することも出来る。
【0022】
アクリル系重合体微粒子(A)の製造方法は特に限定せず、乳化重合法、ソープフリー重合法、縣濁重合法、微細縣濁重合法、分散重合法、等が挙げられ、中でも好ましくは乳化重合法あるいはソープフリー重合法であり、この場合にはコアシェル構造など粒子の構造を制御することが容易である。例えば、乳化重合法を適用する場合、各種公知の乳化剤が使用できる。具体的には、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0023】
アクリル系重合体微粒子(A)を得るために使用可能なモノマーの例を以下に列挙する。ただし、これらに限定されるものではない。
【0024】
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート等の直鎖アルキルアルコールの(メタ)アクリレート類、あるいはシクロヘキシル(メタ)アクリレート等の環式アルキルアルコールの(メタ)アクリレート類。
【0025】
メタクリル酸、アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、2−メタクリロイルオキシエチルコハク酸、2−メタクリロイルオキシエチルマレイン酸、2−メタクリロイルオキシエチルフタル酸、2−メタクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸等のカルボキシル基含有モノマー、アリルスルホン酸等のスルホン酸基含有モノマー、2−(メタ)アクリロイキシエチルアシッドフォスフェート等のリン酸基含有(メタ)アクリレートなどの酸基含有モノマー類。
【0026】
2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のヒドロキシル基含有(メタ)アクリレート類、アセトアセトキエチル(メタ)アクリレート等のカルボニル基含有(メタ)アクリレート類、N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有(メタ)アクリレート類などの各種官能基含有モノマー類。
【0027】
(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート類などの多官能モノマー類。
【0028】
アクリルアミド及びその誘導体として例えばジアセトンアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−エトキシメチルアクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド等、さらにはスチレン及びその誘導体、酢酸ビニル、ウレタン変性アクリレート類、エポキシ変性アクリレート類、シリコーン変性アクリレート類などの特殊モノマー類。
【0029】
ところで、本発明の2液系プラスチゾル組成物は混合によって常温でも迅速にゲル化が進行し、実用上十分なレベルの弾性率を得ることができるものだが、用途によっては更に弾性率や強度などの機械的特性を付与したいという要請もある。
【0030】
またゲル化後の材料中に揮発性の有機溶剤が含まれる場合、大気中へ放出される揮発性有機化合物(VOC)の量が増加するため、環境面への適合性という点を考慮するとできるだけVOC量を低減したいという要請もある。
【0031】
以上のような理由により、2液系プラスチゾル組成物に含まれる有機溶媒(C)は、初期においては重合体微粒子を迅速に溶解できる良溶媒であるが、後期においては揮発せずに材料中にとどまることが好まれる。
【0032】
こうした要求をも満足するために、本発明で用いる有機溶媒(C)はラジカル重合性の二重結合を有する化合物、エポキシ基もしくは水酸基を含有する化合物、または、重合体に対して溶解性の高い可塑剤を用いることが好ましい。あるいは、これらを併用することも可能である。
【0033】
なかでも、ラジカル重合性の二重結合を有する化合物を用いる場合、ラジカル重合性であることによって、種々の開始剤系の選択により任意の条件で重合させて高分子量化し、揮発性を抑制することが可能となるし、またゲル化後の成形物の弾性率や強度など機械的特性を向上させることが可能となるため好ましい。
【0034】
またラジカル重合性の二重結合を有する化合物は、概してアクリル系重合体微粒子に対する溶解度が高く、これを液状組成物(LB)中に含有することにより、極めて迅速なゲル化速度を実現することが可能となり好ましい。
【0035】
またこの場合、液状組成物(LA)及び(LB)のいずれかにラジカル重合開始剤を含有することが好ましい。ラジカル重合開始剤の種類や量は特に限定しないが、有機溶媒(C)としてのラジカル重合性の二重結合を有する化合物100質量部に対して、0.1〜5質量部、好ましくは0.5〜2質量部の範囲で使用するのが望ましい。また分解速度すなわち10時間半減期温度も任意に選択することができる。
【0036】
ただし、2液を混合する前のポットライフが長期間要求される場合でかつラジカル重合開始剤を液状組成物(LB)中に配合する場合、その10時間半減期温度は要求されるポットライフに応じて適正に選ぶ必要があり、10時間半減期温度が過度に低いものを用いると液状組成物(LB)単独でのポットライフが短くなるため注意を要する。
【0037】
また、ラジカル重合開始剤を液状組成物(LA)中に配合する場合には、ラジカル重合開始剤の種類によってはアクリル系重合体微粒子に対して高い溶解性を有する場合もあり、この場合には液状組成物(LA)単独でのポットライフが短くなるため注意を要する。
【0038】
ラジカル重合開始剤の例として以下に列挙するがこれに限定されるものではない。
【0039】
ラウロイルパーオキサイド(10時間半減期温度=62℃)、ステアロイルパーオキサイド(10時間半減期温度=62℃)、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(10時間半減期温度=65℃)、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(10時間半減期温度=70℃)、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(10時間半減期温度=72℃)、ベンゾイルパーオキサイド(10時間半減期温度=73℃)、ジ−t−ブチルパーオキシ−2−メチルシクロヘキサン(10時間半減期温度=83℃)、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(10時間半減期温度=87℃)、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン(10時間半減期温度=87℃)、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(10時間半減期温度=90℃)、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン(10時間半減期温度=91℃)、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン(10時間半減期温度=95℃)、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルカーボネート(10時間半減期温度=95℃)、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート(10時間半減期温度=97℃)、t−ブチルパーオキシラウレート(10時間半減期温度=98℃)、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート(10時間半減期温度=99℃)、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルカーボネート(10時間半減期温度=99℃)、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート(10時間半減期温度=99℃)、t−ペンチルパーオキシベンゾエート(10時間半減期温度=100℃)、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン(10時間半減期温度=103℃)、t−ブチルパーオキシベンゾエート(10時間半減期温度=104℃)、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート(10時間半減期温度=105℃)、ジクミルパーオキサイド(10時間半減期温度=116℃)等の有機過酸化物;2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(10時間半減期温度=51℃)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(10時間半減期温度=65℃)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)(10時間半減期温度=67℃)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カーボニトリル)(10時間半減期温度=88℃)等のアゾ化合物等の開始剤。
【0040】
有機溶媒(C)として使用可能なラジカル重合性の二重結合を有する化合物は特に限定しないが、好ましくは、(1)分子量が200以下であること、(2)酸素原子などのヘテロ原子を多く有すること、(3)エポキシ基や水酸基など反応性の高い官能基を有すること、の条件を満足する化合物、特にメタクリレート乃至アクリレート類が好ましい。上記(1)から(3)の条件のいずれかを満たす場合、アクリル系重合体微粒子に対する溶解度がきわめて高く、ゲル化時間は1時間よりも大幅に短縮できる可能性が高いためである。また(3)の条件を満足する場合、プラスチゾル組成物中にこれらの官能基を反応する化合物を更に配合することにより、これらを反応させてより一層分子量を上げることができ、結果的にVOCの更なる低減やゲル化物の更なる機械的特性の向上に寄与できるためである。さらに、これらのラジカル重合性化合物を2種類以上併用することも出来る。
【0041】
上記(1)から(3)の条件のいずれかを満足する、きわめて好ましい有機溶媒(C)の例を以下に列挙する。
【0042】
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、メタクリル酸アリル、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート。
【0043】
有機溶媒(C)としてラジカル重合性の二重結合を有する化合物を用いる場合、2液を混合していったんゲル化させた後、更に加熱を加えることが可能であれば極めて好ましい。例として、製造ラインの前半において本材料をいったんゲル化をさせておき、ライン通過に要する最低限の機械的特性を付与させておき、製造ラインの後半において改めて加熱を行うことで高い材料強度を得ることが出来る。
【0044】
有機溶媒(C)として使用可能なエポキシ基もしくは水酸基を含有する化合物としては、グリシドール等の水酸基とエポキシ基を含有する化合物、メチルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル等のエポキシ基を含有する化合物、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール等の水酸基を含有する化合物等が挙げられる。
【0045】
本発明では、有機溶媒(C)として各種の可塑剤を用いることも好ましい。この理由は、現在市販されている可塑剤類の多くはアクリル系重合体微粒子(A)に対して十分に高い相溶性を有するものであり、2液を混合した際に迅速にゲル化させるだけの溶解力を有しており、なおかつ揮発性が十分に低いためにゲル化後の製品中に残存していてもVOC抑制に有効だからである。
【0046】
有機溶媒(C)として使用可能な可塑剤の種類は特に限定しないが、好ましい可塑剤の例としては、(1)酸素原子などのヘテロ原子を多く有すること(中でも好ましくはエーテル結合を多く有すること)、(2)嵩高い置換基が少ないこと(例えば分岐アルキル鎖よりも直鎖アルキル鎖のほうが好ましい)、(3)できるだけ低分子量であること、である。好ましい可塑剤の具体的な例としては、安息香酸エステル系、リン酸エステル系、であり、中でもエチレングリコールエーテル単位などのアルキレングリコールエーテル単位を有するものが挙げられる。さらに、これらの可塑剤を2種類以上併用することも出来る。
【0047】
本発明では、分散媒(B)として各種の可塑剤を用いることが好ましい。この理由は、揮発性が十分に低いためにゲル化後の成形品からVOCとして大気中へ揮発することが抑制できるためである。また重合体微粒子と十分に相溶する可塑剤を選択すれば、ゲル化後の成形品に柔軟性や伸度を付与することができ、用途によっては好ましいためである。
【0048】
分散媒(B)として使用可能な可塑剤の種類は特に限定しないが、常温においてアクリル系重合体微粒子(A)に対して十分に非溶解性であることが好ましく、更に好ましくは加熱後にはアクリル系重合体微粒子(A)に対して十分に相溶性であるものである。具体的には、ジイソノニルフタレート、ジオクチルフタレート、ジデシルフタレート等のフタレート系。ジオクチルサクシネート、ジオクチルセバケート等のニ塩基酸エステル系、トリオクチルトリメリテート等のトリメリテート系、フェニルアルキルスルフォネート、等が挙げられる。さらに、これらの可塑剤を2種類以上併用することも出来る。
【0049】
本発明の液状組成物(LA)において、アクリル系重合体微粒子(A)と分散媒(B)の配合比は特に限定されるものではないが、液状組成物(LA)の取り扱い性等を考慮してアクリル系重合体微粒子(A)100質量部に対して、好ましくは60質量部以上、より好ましくは80質量部以上配合するのが望ましい。一方、分散媒(B)の量が過度に多くなると、液状組成物(LA)と液状組成物(LB)とを混合しても目的とするゲル化時間を達成できなくなる場合があり、上限として、好ましくはアクリル系重合体微粒子(A)100質量部に対して200質量部以下、より好ましくは150質量部以下配合するのが望ましい。
【0050】
液状組成物(LA)と液状組成物(LB)の混合比は、液状組成物(LA)と液状組成物(LB)のそれぞれの組成、目的とするゲル化速度に応じて適宜適切な混合比とすれば良く、また、液状組成物(LB)の必須成分となる有機溶媒(C)の種類によって一概に限定することはできないが、概ね、アクリル系重合体微粒子(A)100質量部に対して、有機溶媒(C)は好ましくは10質量部以上、より好ましくは20質量部以上となるように混合するのが望ましい。上限については、必要以上に使用するとプラスチゾル本来の特性が損なわれる場合があるため、アクリル系重合体微粒子(A)100質量部に対して、有機溶媒(C)は好ましくは500質量部以下、より好ましくは200質量部以下となるように混合するのが望ましい。
【0051】
本発明の2液プラスチゾル組成物では、液状組成物(LA)乃至(LB)の少なくとも1つにエポキシ樹脂を含有することが好ましい。この理由として、1つにはエポキシ樹脂の有する高い接着力により本材料を無機材料に強固に接着させることができるためである。エポキシ樹脂の例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、多官能エポキシ樹脂、可撓性エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、高分子型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂等、公知のエポキシ系樹脂が広く利用可能であり、特に限定されない。
【0052】
またこの場合、必要に応じてエポキシ樹脂用の硬化剤を(LA)乃至(LB)のいずれかに配合することが可能である。エポキシ樹脂用硬化剤の例を以下に列挙するが、これらに限定されるものではない。
【0053】
脂肪族ポリアミン、ポリアミノアミド(ポリアミド樹脂)、芳香族ジアミン、脂環族ジアミン、イミダゾール、3級アミン、等のアミン系化合物。無水マレイン酸や無水フタル酸等の酸無水物系化合物。その他、フェノール樹脂、アミノ樹脂、メルカプタン系化合物、ジシアンジアミド、ルイス酸錯化合物、マイクロカプセル型、等。中でもジシアンジアミドやマイクロカプセル型など潜在性を有する硬化剤は、混合前のポットライフの点から好ましい。
【0054】
本発明では必要に応じてさらに炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、マイクロバルーン、コロイダルシリカ粉末、パーライト、クレー、マイカ粉、珪砂、珪藻土、カオリン、タルク、ベントナイト、ガラス粉末、酸化アルミニウム、フライアッシュ、シラスバルーンなどの充填材を配合しても良い。充填材を配合する目的や種類、量などは任意である。
【0055】
本発明では更に必要に応じて、酸化チタン、カーボンブラック等の顔料、さらにミネラルターペン、ミネラルスピリット等の希釈剤、さらに消泡剤、防黴剤、防臭剤、抗菌剤、界面活性剤、滑剤、紫外線吸収剤、香料、発泡剤、レベリング剤、ブロックイソシアネート等の接着剤およびその硬化剤、等を自由に配合することが可能である。
【0056】
本発明の2液系プラスチゾル組成物は、これを構成する液状組成物(LA)乃至(LB)を使用の直前に混合し、任意の基材に被着させることによって使用することが好ましい。混合の方法は特に限定しないが、インラインで容易に混合できるスタティックミキサーや、2液用の各種スプレー等が挙げられる。
【0057】
基材としては特に限定しないが、無機基材に対する付着を目的として使用することが好ましく、各種の鋼板、アルミニウム板、ステンレス板、鉄板、亜鉛メッキ板、クロムメッキ板、ブリキ板などの金属板や、コンクリート、モルタル、石膏ボード、陶磁器タイル、セラミック板、スレート板などの無機建材などが挙げられる。
【0058】
これらの無機基材に対しては、特にエポキシ樹脂を配合した場合に高い接着性を付与することができる。
【0059】
具体的な用途としては、各種の接着剤、シーリング剤、コーティング剤、制振剤、防音剤、バッキング剤、等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0060】
以下に、本発明を実施例を用いて説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお以下の記載で「部」は質量部のことを意味するものとする。
【0061】
[重合体(A1)の調製]
温度計、窒素ガス導入管、攪拌棒、滴下漏斗、冷却管を装備した500mlの4つ口フラスコに純水100gを入れ、30分間十分に窒素ガスを通気し、純水中の溶存酸素を置換した。窒素ガス通気を停止した後、200rpmで攪拌しながら80℃に昇温した。内温が80℃に達した時点で、過硫酸カリウム0.30gを添加し、引き続き、第1滴下としてモノマー(メチルメタクリレート30g、n−ブチルメタクリレート20g)と連鎖移動剤(n−オクチルメルカプタンをモノマー100gに対して0.01g)と乳化剤(ジオクチルスルホコハク酸ナトリウムをモノマー100gに対して0.5g)を均一に溶解した混合液を20g/hrの速度で滴下した。引き続き、第2滴下としてモノマー(メチルメタクリレート45g、n−ブチルメタクリレート5g)と連鎖移動剤(n−オクチルメルカプタンをモノマー100gに対して0.01g)と乳化剤(ジオクチルスルホコハク酸ナトリウムをモノマー100gに対して0.5g)を均一に溶解した混合液を20g/hrの速度で滴下した。滴下終了後、引き続き80℃にて1時間攪拌を継続して、重合体ラテックスを得た。
【0062】
得られた重合体ラテックスを室温まで冷却した後、スプレードライヤー(大河原化工機(株)L8型)を用いて、入口温度150℃、出口温度65℃、アトマイザ回転数25000rpmにて噴霧乾燥し、重合体微粒子(A1)を得た。
【0063】
[重合体(A2)の調製]
温度計、窒素ガス導入管、攪拌棒、滴下漏斗、冷却管を装備した500mlの4つ口フラスコに純水100gを入れ、30分間十分に窒素ガスを通気し、純水中の溶存酸素を置換した。窒素ガス通気を停止した後、200rpmで攪拌しながら80℃に昇温した。内温が80℃に達した時点で、過硫酸カリウム0.30gを添加し、引き続き、第1滴下としてモノマー(メチルメタクリレート42g、n−ブチルメタクリレート28g)と乳化剤(ジオクチルスルホコハク酸ナトリウムをモノマー100gに対して0.5g)を均一に溶解した混合液を20g/hrの速度で滴下した。引き続き、第2滴下としてモノマー(メチルメタクリレート28.5g、メタクリル酸1.5g)と乳化剤(ジオクチルスルホコハク酸ナトリウムをモノマー100gに対して0.5g)を均一に溶解した混合液を20g/hrの速度で滴下した。滴下終了後、引き続き80℃にて1時間攪拌を継続して、重合体ラテックスを得た。
【0064】
得られた重合体ラテックスを室温まで冷却した後、スプレードライヤー(大河原化工機(株)L8型)を用いて、入口温度150℃、出口温度65℃、アトマイザ回転数25000rpmにて噴霧乾燥し、重合体微粒子(A2)を得た。
【0065】
[重合体(A3)の調製]
温度計、窒素ガス導入管、攪拌棒、滴下漏斗、冷却管を装備した500mlの4つ口フラスコに純水100gを入れ、30分間十分に窒素ガスを通気し、純水中の溶存酸素を置換した。窒素ガス通気を停止した後、200rpmで攪拌しながら80℃に昇温した。内温が80℃に達した時点で、過硫酸カリウム0.30gを添加し、引き続き、第1滴下としてモノマー(メチルメタクリレート85g、n−ブチルアクリレート15g)と連鎖移動剤(n−オクチルメルカプタンをモノマー100gに対して0.005g)と乳化剤(ジオクチルスルホコハク酸ナトリウムをモノマー100gに対して0.5g)を均一に溶解した混合液を20g/hrの速度で滴下した。滴下終了後、引き続き80℃にて1時間攪拌を継続して、重合体ラテックスを得た。
【0066】
得られた重合体ラテックスを室温まで冷却した後、スプレードライヤー(大河原化工機(株)L8型)を用いて、入口温度190℃、出口温度85℃、アトマイザ回転数25000rpmにて噴霧乾燥し、重合体微粒子(A3)を得た。
【0067】


【0068】
表中の略号は、下記を意味する。
MMA:メチルメタクリレート
nBMA:n−ブチルメタクリレート
MAA:メタクリル酸
nBA:n−ブチルアクリレート
【0069】
[液状組成物(LA1)の調製]
重合体微粒子(A1)100部あたり、分散媒として可塑剤であるジイソノニルフタレート100部を投入し、真空ミキサー((株)シンキー製ARV−200)にて脱泡攪拌(10秒間大気圧で混合した後、2.67kPa(20mmHg)に減圧して50秒間混合)を行い、液状組成物(LA1)を得た。
【0070】
[液状組成物(LA2)〜(LA4)の調製]
液状組成物(LA1)と同様にして液状組成物(LA2)〜(LA4)を調製した。ただし重合体微粒子、分散媒として表2に記載の組成に変更した。ミキサーによる撹拌条件などは液状組成物(LA1)の場合と同一である。
【0071】

【0072】
表中の略号は、下記を意味する。
DINP:ジイソノニルフタレート
ATBC:アセチルトリブチルシトレート
GMA:グリシジルメタクリレート
【0073】
[液状組成物(LB1)の調製]
有機溶剤として、グリシジルメタクリレート100部と2−ヒドロキシエチルアクリレート100部、更にラジカル重合開始剤としてt−ペンチルペルオキシベンゾエート(化薬アクゾ(株)製「KD−1」)2.0部を投入し、真空ミキサー((株)シンキー製ARV−200)にて脱泡攪拌(10秒間大気圧で混合した後、2.67kPa(20mmHg)に減圧して50秒間混合)を行い、液状組成物(LB1)を得た。
【0074】
[液状組成物(LB2)〜(LB11)の調製]
液状組成物(LB1)と同様にして液状組成物(LB2)〜(LB11)を調製した。ただし有機溶剤、ラジカル重合開始剤として表3に記載の組成に変更した。ミキサーによる撹拌条件などは液状組成物(LB1)の場合と同一である。
【0075】


【0076】
表中の略号は、下記を意味する。
GMA:グリシジルメタクリレート
nBA:n−ブチルアクリレート
HEA:2−ヒドロキシエチルアクリレート
HEMA:2−ヒドロキシエチルメタクリレート
HPMA:2−ヒドロキシプロピルメタクリレート
THFMA:テトラヒドロフルフリルメタクリレート
EHMA:2−エチルヘキシルメタクリレート
PEG−A:メトキシポリエチレングリコールアクリレート(分子量482)
DOP:ジ−2−エチルヘキシルフタレート
KD−1:t−ペンチルパーオキシベンゾエート
AN:t−ペンチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート
BPO:ベンゾイルパーオキサイド
【0077】
得られたプラスチゾル組成物は以下に示す項目について評価を行った。評価方法の具体的内容を以下に示す。
【0078】
[粘度]
(LA)液状組成物を調製してから1時間後に、Brookfield型粘度計(東機産業(株)製、BH型粘度計、7号ロータ)を用いて、測定温度25℃、回転数2rpmにおいて粘度を測定した。
(LB)液状組成物を調製してから1時間後に、Brookfield型粘度計(東機産業(株)製、BL型粘度計、BLアダプター)を用いて、測定温度25℃、回転数30rpmにおいて粘度を測定した。
【0079】
[貯蔵安定性]
液状組成物を25℃の恒温室にて保温し、5日後に取り出して再び粘度を測定した。液状組成物の増粘率を以下のようにして計算し貯蔵安定性を評価した。
【0080】
{(貯蔵後の粘度/初期の粘度)−1}×100(%)
◎:20%未満
○:20%以上50%未満
△:50%以上
×:粘度測定不能(ゲル化)
【0081】
[ゲル化時間]
液状組成物を30℃に調整し、(LA):(LB)=2:1となるようにスタティックミキサーで混練しながら、キュラストメーター(日合商事株式会社、キュラストメーターWP型)に10gをチャージした。すぐに測定を開始し、tanδ<1となるまでの時間をゲル化時間とした。
【0082】
測定条件:ダイス=φ40mm、ダイス温度=30℃、振幅角=±1°。
◎:10分以下
○:60分以下
×:60分を超える。
【0083】
[実施例1]
液状組成物として、(LA1)及び(LB1)を30℃に調整し、(LA1)/(LB1)=2/1となるようにスタティックミキサーで混練しながらキュラストメーターにチャージし、ゲル化時間を測定した。ゲル化時間は2.0分で、良好なゲル化性を示した。
【0084】
[実施例2〜13、比較例1、2]
液状組成物として表4に示した組成物を用いて、ゲル化時間を測定した。測定結果を表4に示す。
【0085】
[比較例3]
液状組成物(LA4)として、重合体微粒子(A1)100部及び、分散媒としてグリシジルメタクリレート100部を用いて、液状組成物を調製した。しかしながら、このプラスチゾルは混練直後から増粘を始め、すぐにゲル化し、貯蔵安定性が不良であった。
【0086】

【0087】
[各例の考察]
以下に各実施例および比較例について考察する。
【0088】
[実施例1〜7]
実施例1〜7は(LA)の重合体粒子(A)としてコアシェル構造の(A1)、分散媒(B)としてジイソノニルフタレート、(LB)の有機溶媒(C)としてラジカル重合性の二重結合を有するアクリル系モノマー及びラジカル重合開始剤を用いた例である。これらの2液を混合すると良好なゲル化性能を示した。
【0089】
[実施例8]
実施例8は(LA)の重合体粒子(A)としてコアシェル構造の(A1)、分散媒(B)としてジイソノニルフタレート、(LB)の有機溶媒(C)として水酸基及びエポキシ基を含有するグリシドールを用いた例である。これらの2液を混合すると良好なゲル化性能を示した。
【0090】
[実施例9、10]
実施例9、10は(LA)の重合体粒子(A)としてコアシェル構造の(A2)、分散媒(B)としてアセチルトリブチルシトレート、(LB)の有機溶媒(C)としてラジカル重合性の二重結合を有するアクリル系モノマー及びラジカル重合開始剤を用いた例である。これらの2液を混合すると良好なゲル化性能を示した。
【0091】
[実施例11〜13]
実施例11〜13は(LA)の重合体粒子(A)としてコアシェル構造の(A1)及び均一構造の(A3)を併用し、分散媒(B)としてジイソノニルフタレート、(LB)の有機溶媒(C)としてラジカル重合性の二重結合を有するアクリル系モノマー及びラジカル重合開始剤を用いた例である。これらの2液を混合すると良好なゲル化性能を示した。
【0092】
<比較例1>
実施例8は(LA)の重合体粒子(A)としてコアシェル構造の(A1)、分散媒(B)としてジイソノニルフタレート、(LB)としてジ−2−エチルヘキシルフタレートを用いた例である。これらの2液を混合しても60分以下でゲル化できず、ゲル化性能は不充分であった。
【0093】
<比較例2>
実施例8は(LA)の重合体粒子(A)としてコアシェル構造の(A2)、分散媒(B)としてジイソノニルフタレート、(LB)として特開2002−30194号公報で開示されているラジカル重合性の二重結合を有するアクリル系モノマー及びラジカル重合開始剤としてベンゾイルパーオキサイドを用いた例である。これらの2液を混合しても60分以下でゲル化できず、ゲル化性能は不充分であった。
【0094】
<比較例3>
比較例3は、(LA)の重合体粒子(A)としてコアシェル構造の(A2)、分散媒(B)としてグリシジルメタクリレートを用いた例である。この場合は、液状組成物(LA4)の貯蔵安定性が悪く、本発明の目的に合致しない。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明の2液系プラスチゾルによれば、室温での貯蔵安定性と混合後の速やかなゲル化性を発現することが可能であり、様々な産業分野で広く利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2種類の液状組成物(LA)及び(LB)とからなる2液系プラスチゾル組成物で、(LA)及び(LB)を混合後の組成物のゲル化時間が1時間以下(30℃測定時)であることを特徴とする2液系プラスチゾル組成物。
【請求項2】
(LA)及び(LB)がそれぞれ以下に示す液状組成物であることを特徴とする請求項1記載の2液系プラスチゾル組成物。
(LA):アクリル系重合体微粒子(A)及び、常温では(A)に対して実質的に非溶解性な分散媒(B)(ただし(B)は加熱時に(A)に対して溶解性であってよい)、を必須成分とする分散状の液状組成物
(LB):(A)に対して常温で十分に高い溶解性を有する有機溶媒(C)、を必須成分とする液状組成物
【請求項3】
有機溶媒(C)がラジカル重合性の二重結合を有する化合物であり、液状組成物(LA)及び(LB)のいずれかにラジカル重合開始剤を含有することを特徴とする請求項2記載の2液系プラスチゾル組成物。
【請求項4】
有機溶媒(C)が可塑剤であること特徴とする請求項2記載の2液系プラスチゾル組成物。
【請求項5】
有機溶媒(C)がエポキシ基もしくは水酸基を含有することを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1項記載の2液系プラスチゾル組成物。
【請求項6】
(LA)及び(LB)の少なくとも1つにエポキシ樹脂を含有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の2液系プラスチゾル組成物。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項記載の液状組成物(LA)及び(LB)を使用直前に混合して吐出し、任意の基材に被着させる2液系プラスチゾル組成物の使用方法。
【請求項8】
無機物に対して接着させて使用する請求項1乃至6のいずれか1項記載の2液系プラスチゾル組成物の使用。

【国際公開番号】WO2005/010095
【国際公開日】平成17年2月3日(2005.2.3)
【発行日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−512057(P2005−512057)
【国際出願番号】PCT/JP2004/010668
【国際出願日】平成16年7月27日(2004.7.27)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】