説明

2芯平行ケーブル

【課題】ケーブル外径を小さくすると共に可撓性や屈曲性を向上し、かつ、減衰量を良くする。
【解決手段】2芯平行ケーブル1は、中心導体3の外周を絶縁層5で被覆してなる絶縁線7と、平行に並べた2本の前記絶縁線7の外周に素線9を1重に横巻きした1重横巻シールド11と、この1重横巻シールド11の外周にスパイラル状に巻き付けた銅を表面に蒸着したポリエステルテープまたは、銅箔テープからなる金属テープ体13と、この金属テープ体13の外周を被覆したフッ素樹脂もしくはポリエステルテープからなる外被15と、で構成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、2芯平行ケーブルに関し、特にシールド特性や減衰量などの電気特性及び可撓性や屈曲性などの機械特性に優れた2芯平行ケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話やデジタルカメラ、ノートパソコンなどの電気機器のメインボード側とLCD(液晶ディスプレー)側を繋ぐ配線材としては、FPC(フレキシブルプリント基板)や極細同軸ケーブル、極細の2芯平行ケーブル(Twinax)などが用いられている。これら配線材の一般的な特性としては次のことがいえる。
【0003】
FPCは、極細同軸ケーブルより安価であるが、遮蔽シールドされてないものが多く、信号用回路の断面積が小さいために、シールド特性や減衰量などの電気特性が極細同軸ケーブルよりも劣っている。2芯平行ケーブルは、平行に並べた2芯の信号線に遮蔽シールドを施した平行ケーブルであり、高速伝送に適しているといわれており、極細同軸ケーブルに代わるケーブルとして将来的に多くの使用が予想される。
【0004】
また、携帯電話のLCD画面のようにあまり高解像度でない場合は、信号は比較的低速(数10MHz)で伝送される。一方、ノートパソコンのLCD画面のように解像度が高い場合は、信号は高速伝送(数100MHz〜GHz)される必要がある。そのために、信号の伝送速度が遅い携帯電話にはFPCが用いられ、高速信号を必要とするノートパソコンには極細同軸ケーブルや2芯平行ケーブルが用いられる傾向にある。
【0005】
図6〜図8を参照するに、従来の2芯平行ケーブルとしては、代表例として3つのタイプがある。すなわち、図6の2芯平行ケーブル101は、中心導体103の外周を絶縁体105で被覆してなる絶縁線107と、平行に並べた2本の前記絶縁線107の外周に設けた金属編組シールド109と、この金属編組シールド109の外周を被覆した外被111と、で構成されている。なお、前記金属編組シールド109は外部導体113(シールド層)となる。
【0006】
図7の2芯平行ケーブル115は、中心導体103の外周を絶縁体105で被覆してなる絶縁線107と、平行に並べた2本の前記絶縁線107の外周に2重に横巻きした2重横巻シールド119と、この2重横巻シールド119の外周を被覆した外被111と、で構成されている。なお、前記2重横巻シールド119は外部導体113(シールド層)となり、2本の前記絶縁線107の外周に第1素線121で1重に横巻きした第1横巻シールド123と、この第1横巻シールド123の外周に当該第1横巻シールド123の巻き方向と反対方向に第2素線125で1重に横巻きした第2横巻シールド127と、で構成されている。
【0007】
図8の2芯平行ケーブル129は、中心導体103の外周を絶縁体105で被覆してなる絶縁線107と、平行に並べた2本の前記絶縁線107の外周に素線117で1重に横巻きした1重横巻シールド131と、この1重横巻シールド131の外周を被覆した外被111と、で構成されている。なお、前記1重横巻シールド131は外部導体113(シールド層)となる。
【0008】
特許文献1では、図6の2芯平行ケーブル101の構造とは異なるが、金属編組シールドの外周に金属テープを取り巻いて2重構造の外部導体を構成している。なお、外被は金属テープの外周に施されている。
【0009】
特許文献2では、図7の2芯平行ケーブル115と同様の構造であり、さらに必要に応じて、2重横巻シールドの外周に金属テープ等を巻き付けると記載されている。
【0010】
特許文献3では、前述した特許文献1とほとんど同じであるが、外部導体として用いている金属編組シールドの接点同士を熱接合により固着してシールド特性を向上するという点が特許文献1と異なるものである。
【0011】
特許文献4では、図8の2芯平行ケーブル129の構造とは異なるが、1重横巻シールドの外周に金属テープを螺旋状に巻き付け、前記金属テープの外周を難燃ポリオレフィンからなる外被で被覆している。このケーブルは電気的特性を損なうことなく難燃性を実現することを目的としている。
【特許文献1】特開2001−195924号公報
【特許文献2】特開2004−63418号公報
【特許文献3】特開2005−285696号公報
【特許文献4】特開2006−351229号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところで、図6〜図8の従来の2芯平行ケーブル101、115、129における周波数に対する減衰量(作動)の測定結果は、図9のグラフに示されている。このグラフから分かるように、外部導体113の構造が図8の1重横巻シールド131のときの減衰量は、図6の金属編組シールド109や図7の2重横巻シールド119のときの減衰量に比べて著しく劣っている。例えば、周波数が3GHzの場合においては、図8の1重横巻シールド131の減衰量は、図6の金属編組シールド109や図7の2重横巻シールド119のときに比べて約2倍の値となっている。
【0013】
したがって、外部導体113の構造が図6の金属編組シールド109や図7の2重横巻シールド119の場合は、いずれもシールド特性や減衰量などの電気特性は良いが、ケーブル径が太くなり、可撓性や屈曲性などの機械特性が悪いという問題点があった。
【0014】
一方、外部導体113の構造が図8の1重横巻シールド131の場合は、ケーブル径を細くできるという利点があるが、金属編組シールド109や2重横巻シールド119の場合よりも減衰量の電気特性が悪いという問題点があった。
【0015】
上記の点をさらに考慮すると、遮蔽特性の点からは、外部導体113の構造を金属編組シールド109もしくは2重横巻シールド119にすることが好ましい。しかし、ノートパソコンや携帯電話などの電気機器が小型化するのに伴い、メインボードとLCD画面側を接続するヒンジのサイズも縮小する傾向にあるので、前記ヒンジの内部を通過する配線材には細いケーブルが要求される。そのために、外部導体113の構造が1重横巻シールド131の場合は、ケーブル径を細くでき、シールド本数が少ないために可撓性も向上し、かつ屈曲性も良いので、1重横巻シールド131の2芯平行ケーブル129が用いられると考えられる。その反面、上述したように電気特性が悪いという問題点は解決しなければならない課題である。
【0016】
この発明は、ケーブル外径を小さくすると共に可撓性や屈曲性を向上し、かつ、減衰量を良く(小さく)することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記の課題を解決するために、この発明の2芯平行ケーブルは、中心導体の外周を絶縁体で被覆してなる絶縁線と、平行に並べた2本の前記絶縁線の外周に素線を1重に横巻きした1重横巻シールドと、この1重横巻シールドの外周にスパイラル状に巻き付けた銅を表面に蒸着したポリエステルテープまたは、銅箔テープからなる金属テープ体と、この金属テープ体の外周を被覆したフッ素樹脂もしくはポリエステルテープからなる外被と、で構成されていることを特徴とするものである。
【0018】
この発明の2芯平行ケーブルは、中心導体の外周を絶縁体で被覆してなる絶縁線と、平行に並べた2本の前記絶縁線の外周に素線を1重に横巻きした1重横巻シールドと、この1重横巻シールドの各素線同士の隙間を埋め込むように塗布した銀ペースト状の導電性塗布材と、この導電性塗布材の外周を被覆したフッ素樹脂もしくはポリエステルテープからなる外被と、で構成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0019】
以上のごとき課題を解決するための手段から理解されるように、この発明によれば、シールドするための外部導体が1重横巻シールドの外周に銅を表面に蒸着したポリエステルテープからなる金属テープ体を巻いた構成であるので、前記金属テープ体を薄くすることでケーブル外径を小さくすることができると共に、可撓性や屈曲性の機械特性を向上することができ、かつ、減衰量を良くして電気特性を向上することができる。
【0020】
また、この発明によれば、シールドするための外部導体が1重横巻シールドの各素線同士の隙間を埋め込むように銀ペースト状の導電性塗布材で塗布した構成であるので、ケーブル外径を小さくすることができると共に、可撓性や屈曲性の機械特性を向上することができ、かつ、減衰量を良くして電気特性を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0022】
図1及び図2を参照するに、第1の実施の形態に係る2芯平行ケーブル1は、中心導体3の外周を絶縁体5で被覆してなる絶縁線7と、平行に並べた2本の前記絶縁線7の外周に素線9を1重に横巻きした1重横巻シールド11と、この1重横巻シールド11の外周にスパイラル状に巻き付けた金属テープ体13と、この金属テープ体13の外周を被覆したフッ素樹脂もしくはポリエステルテープからなる外被15と、で構成されている。したがって、上記の1重横巻シールド11と金属テープ体13は2重構造の外部導体17(シールド層)を構成している。
【0023】
なお、中心導体3の直径は、例えば30μm〜90μm(AWG40〜50)である。ちなみに、AWGはAmerican Wire Gaugeの略であり、導体の太さ、断面積、抵抗などを示すために用いられているものである。また、中心導体3の絶縁体5としては、例えばフッ素樹脂が用いられている。
【0024】
また、1重横巻シールド11の素線9としては、この実施の形態では線径が例えば20μm〜50μmの丸形状であるが、平角形状あるいはその他の断面形状の導体でも良く、前記素線9の巻き方としては一方向例えばS方向もしくはZ方向へ構造である。
【0025】
また、金属テープ体13は、PET(ポリエステル)テープの表面に銅(Cu)を蒸着して構成されるCu蒸着PETテープ、もしくは銅(Cu)箔であることが望ましい。なお、この実施の形態では、Cu箔の厚さは、例えば5μm程度である。
【0026】
また、外被15がフッ素樹脂であることで表面を滑らかにすることができ、耐熱性に優れる。また、ポリエステル樹脂(PETテープ)を巻くことでケーブル外径を細くすることが可能である。
【0027】
次に、この発明の第2の実施の形態に係る2芯平行ケーブル19について図面を参照して説明する。なお、前述した第1の実施の形態の2芯平行ケーブル1と異なる点を主として説明し、第1の実施の形態と同様の部材は同符号を付して詳細な説明は省略する。
【0028】
図3及び図4を参照するに、2芯平行ケーブル19が前述した第1の実施の形態の2芯平行ケーブル1と異なる点は、外部導体17の構造にある。すなわち、この外部導体17は、平行に並べた2本の前記絶縁線7の外周に素線9を1重に横巻きした1重横巻シールド11と、この1重横巻シールド11の外周の各素線9同士の隙間を埋め込むように塗布した銀ペースト状の導電性塗布材21と、で構成されている。他の絶縁線7と外被15の構成は第1の実施の形態と同様である。
【0029】
次に、上記の第1の実施の形態の2芯平行ケーブル1を実施例1とし、第2の実施の形態の2芯平行ケーブル19を実施例2とし、前述した図10の2芯平行ケーブル101を従来例1とし、図11の2芯平行ケーブル115を従来例2とし、図12の2芯平行ケーブル129を従来例3として、実際に各ケーブルを試作し、周波数に対する減衰量(差動)を測定することで評価した。その結果は、図5のグラフに示す通りである。
【0030】
なお、実施例1の場合は、外部導体17が1重横巻シールド11の外周にCuテープ13を巻いたものであり、実施例2の場合は、外部導体17が1重横巻シールド11にAgペースト21を塗布したものである。
【0031】
この図5のグラフから分かるように、実施例1及び実施例2の2芯平行ケーブル1、19の両方とも図8の従来例3の1重横巻シールド131のみの2芯平行ケーブル129に比べて減衰量が改善している。
【0032】
また、1重横巻シールド11にCuテープ13を巻いた実施例1の2芯平行ケーブル1は、2重横巻シールドした従来例2のケーブル115とほとんど減衰量が変わらないということが分かった。
【0033】
また、実施例1のCuテープ13の厚さが5μm程度であるため、ケーブル断面積は1重横巻シールド131のみの従来例3の場合とほとんど変わらないので、ケーブル径を細くできる。実施例2の場合もAgペースト21の層厚を薄くできるので、ケーブル径を細くできる。
【0034】
また、図5のグラフにおいて、周波数が3GHzの場合では、図8の1重横巻シールド131のみの従来例3の減衰量と比較すると、実施例1(1重横巻シールド11+Cuテープ13)の減衰量は、従来例3より50%減少している。また、実施例2(1重横巻シールド11+Agペースト21)の減衰量は、従来例3より30%減少している。
【0035】
以上のように、1重横巻シールド11の外周にCuテープ13を横巻きする外部導体17、もしくは、1重横巻シールド11の横巻素線9の隙間にAgペースト21を塗り込む外部導体17を採用したので、減衰量を大幅に改善することができた。特に、Cuテープ13を巻いたものは2重横巻きの場合とほとんど同じ減衰量であった。
【0036】
以上のように、第1及び第2の実施の形態の2芯平行ケーブル1、19は、ケーブル外径を小さくすることができると共に可撓性や屈曲性を向上することができ、かつ、シールド特性や減衰量を良く(小さく)することができる。すなわち、機械特性及び電気特性に優れた2芯平行ケーブルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】この発明の第1の実施の形態の2芯平行ケーブルの断面図である。
【図2】図1の2芯平行ケーブルの斜視図である。
【図3】この発明の第2の実施の形態の2芯平行ケーブルの断面図である。
【図4】図3の2芯平行ケーブルの斜視図である。
【図5】この発明の実施の形態の実施例及び従来例の各2芯平行ケーブルにおける減衰量を示すグラフである。
【図6】従来の2芯平行ケーブルの断面図である。
【図7】従来の2芯平行ケーブルの断面図である。
【図8】従来の2芯平行ケーブルの断面図である。
【図9】図6〜図8の従来の2芯平行ケーブルにおける減衰量を示すグラフである。
【符号の説明】
【0038】
1 2芯平行ケーブル
3 中心導体
5 絶縁層
7 絶縁線
9 素線
11 1重横巻シールド
13 金属テープ体
15 外被
17 外部導体
19 2芯平行ケーブル
21 銀ペースト状の導電性塗布材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心導体の外周を絶縁体で被覆してなる絶縁線と、平行に並べた2本の前記絶縁線の外周に素線を1重に横巻きした1重横巻シールドと、この1重横巻シールドの外周にスパイラル状に巻き付けた銅を表面に蒸着したポリエステルテープからなる金属テープ体と、この金属テープ体の外周を被覆したフッ素樹脂もしくはポリエステルテープからなる外被と、で構成されていることを特徴とする2芯平行ケーブル。
【請求項2】
中心導体の外周を絶縁体で被覆してなる絶縁線と、平行に並べた2本の前記絶縁線の外周に素線を1重に横巻きした1重横巻シールドと、この1重横巻シールドの各素線同士の隙間を埋め込むように塗布した銀ペースト状の導電性塗布材と、この導電性塗布材の外周を被覆したフッ素樹脂もしくはポリエステルテープからなる外被と、で構成されていることを特徴とする2芯平行ケーブル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−164039(P2009−164039A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−2178(P2008−2178)
【出願日】平成20年1月9日(2008.1.9)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】