説明

2軸駆動機構及びダイボンダ

【課題】水平駆動軸のトルクを大きくせず、昇降軸の高速化を実現できるZ軸を含む2軸駆動機構及びそれを用いたダイボンダを提供する。
【解決手段】処理部と、前記処理部を第1のリニアガイド53に沿って昇降する第1の可動部51と第1の固定部52とを備える第1のリニアモータと、前記処理部を前記昇降する方向とは垂直な水平方向に移動させる第2の可動部41と第2の固定部42とを備える第2のリニアモータと、前記第1の可動部を前記第1のリニアガイド43を介して連結し、前記第2の可動部を直接的又は間接的に連結する連結部61と、前記第1の可動部、前記第2の可動部及び前記連結部を一体となって前記水平方向に移動させる第2のリニアガイドと、前記第1の固定部と前記第2の固定部を前記水平方向に所定の長さで互いに平行に固定する支持体62aとを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、昇降軸を含む2軸駆動機構及びダイボンダに係わり、特に昇降軸を含む2軸駆動機構であるボンディングヘッドの高速化を図り、生産性の高いダイボンダに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造装置の一つに半導体チップ(ダイ)をリードフレームなどの基板にボンディングするダイボンダがある。ダイボンダでは、ボンディングヘッドでダイを真空吸着し、高速で上昇し、水平移動し、下降して基板に実装する。その場合、上昇、下降させるのが昇降(Z)駆動軸である。
【0003】
昨今、ダイボンダの高精度、高速化の要求が高く、特にボンディングの心臓部であるボンディングヘッドの高速化の要求が高い。
【0004】
この要求に答える技術として特許文献1に記載のものがある。一般的に装置を高速化すると、高速移動物体による振動が大きくなり、この振動によって装置が目的とする精度を得るのが困難になる。特許文献1では、この振動を反動吸収装置で低減し、精度を維持し高速化を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−263825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のようなボールネジを用いたサーボモータ駆動では高速化の限界がある。そこで、高速化に適しているリニアモータによる駆動を検討に入った。単に、リニアモータ駆動を採用すると、図7に示すように、Z軸駆動のZ軸リニアモータの固定子及び可動子が共に水平、例えば、後述するY方向のY駆動軸の負荷なってしまう。Y駆動軸のトルクを大きくすると消費電力が大きくなり、Z軸駆動のリニアモータの固定子及び可動子の重量を小さくすると、Z軸のトルクが小さくなってしまい所定の高速化を実現できない。
【0007】
従って、本発明の目的は、水平駆動軸のトルクを大きくせず、昇降軸の高速化を実現できるZ軸を含む2軸駆動機構及びそれを用いたダイボンダを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記の目的を達成するために、少なくとも以下の特徴を有する。
本発明は、処理部と、前記処理部を第1のリニアガイドに沿って昇降する第1の可動部と第1の固定部とを備える第1のリニアモータと、前記処理部を前記昇降する方向とは垂直な水平方向に移動させる第2の可動部と第2の固定部を備える第2のリニアモータと、前記第1の可動部を前記第1のリニアガイドを介して連結し、前記第2の可動部を直接的又は間接的に連結する連結部と、前記第1の可動部、前記第2の可動部及び前記連結部を一体となって前記水平方向に移動させる第2のリニアガイドと、前記第1の固定部と前記第2の固定部を前記水平方向に所定の長さで互いに平行に固定する支持体と、を有することを第1の特徴とする。
【0009】
また、本発明は、前記第1の可動部と前記第2可動部とは互いに平行又は垂直に設けることを第2の特徴とする。
さらに、本発明は、前記第2のリニアガイドを前記第2の固定部に下部に設けられた前記支持体に設けたことを第3の特徴とする。
【0010】
また、本発明は、前記第2のリニアガイドを前記連結部の上部の前記支持体に設けたことを第4の特徴とする。
さらに、本発明は、前記第1の可動部に前記昇降する方向にN極、S極交互に複数組設けられた電磁石は、前記水平方向の所定に領域に設けられている
ことを第5の特徴とする。
【0011】
また、本発明は、前記第1の固定部又は第2の固定部と前記連結部との間に第3のリニアガイドを設けたことを第6の特徴とする。
さらに、本発明は、第1乃至第6の特徴に記載の2軸駆動機構の前記処理部によって基板に処理することを第7の特徴とする。
【0012】
また、本発明は、前記処理部はダイをウェハからピックアップし基板にボンディングするボンディングヘッド又は前記基板にダイ接着剤を塗布するニードルであることを第8の特徴とする。
さらに、本発明は、第5の特徴に記載の前記所定に領域は、前記ピックアップする領域及び前記ボンディングする領域であることを第9の特徴とする。
【0013】
また、本発明は、前記処理部を前記昇降する方向を回転軸として回転させる回転手段を前記第1の可動部に設けたことを第10の特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、水平駆動軸のトルクを大きくせず、昇降軸の高速化を実現できるZ軸を含む2軸駆動機構及びそれを用いたダイボンダを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態であるダイボンダを上から見た概念図である。
【図2】図1に示すZY駆動軸のボンディングヘッドが存在する位置おけるA−A断面図である。
【図3】図2に示すZY駆動軸をBの方向から見た矢視図である。
【図4】所定の位置でボンディングヘッドを昇降できる左右の固定磁石部の構成例を模式的に示す図である。
【図5】第2の実施形態であるZY駆動軸60Bの基本構成を示す図である。
【図6】第3の実施形態であるZY駆動軸60Cの基本構成を示す図である。
【図7】Z軸が負荷となる2軸駆動機構を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面に基づき、本発明の実施形態を説明する。
図1は、本発明の一実施形態であるダイボンダ10を上から見た概念図である。ダイボンダは大別してウェハ供給部1と、ワーク供給・搬送部2と、ダイボンディング部3とを有する。
【0017】
ウェハ供給部1は、ウェハカセットリフタ11とピックアップ装置12とを有する。ウェハカセットリフタ11はウェハリングが充填されたウェハカセット(図示せず)を有し,順次ウェハリングをピックアップ装置12に供給する。ピックアップ装置12は、所望するダイをウェハリングからピックアップできるように、ウェハリングを移動する。
【0018】
ワーク供給・搬送部2はスタックローダ21と、フレームフィーダ22と、アンローダ23とを有し、ワーク(リードフレーム等の基板)を矢印方向に搬送する。スタックローダ21は、ダイを接着するワークをフレームフィーダ22に供給する。フレームフィーダ22は、ワークをフレームフィーダ22上の2箇所の処理位置を介してアンローダ23に搬送する。アンローダ23は、搬送されたワークを保管する。
ダイボンディング部3はプリフォーム部(ダイペースト塗布装置)31とボンディングヘッド部32とを有する。プリフォーム部31はフレームフィーダ22により搬送されてきたワーク、例えばリードフレームにニードルでダイ接着剤を塗布する。ボンディングヘッド部32は、ピックアップ装置12からダイをピックアップして上昇し、ダイをフレームフィーダ22上のボンディングポイントまで移動させる。そして、ボンディングヘッド部32はボンディングポイントでダイを下降させ、ダイ接着剤が塗布されたワーク上にダイをボンディングする。
【0019】
ボンディングヘッド部32は、ボンディングヘッド35(図2参照)をZ(高さ)方向に昇降させ、Y方向に移動させるZY駆動軸60と、X方向に移動させX駆動軸70とを有する。ZY駆動軸60は、Y方向、即ちボンディングヘッドをウェハリングホルダ12内のピックアップ位置とボンディングポイントとの間を往復するY駆動軸40と、ダイをウェハからピックアップする又は基板にボンディングするために昇降させるZ駆動軸50とを有する。X駆動軸70は、ZY駆動軸60全体をワークを搬送する方向であるX方向に移動させる。X駆動軸70は、ボールネジをサーボモータで駆動する構成でもよいし、ZY駆動軸60の構成で説明するリニアモータで駆動する構成でもよい。
【0020】
以下、図を用いて本発明の特徴であるZY駆動軸60の実施形態を説明する。図2、図3は第1の実施形態であるZY駆動軸60Aの基本構成を示す図である。図2は、ZY駆動軸60Aのボンディングヘッド35が存在する図1に示す位置おけるA−A断面図である。図3は、図2に示すZY駆動軸60AをBの方向から見た矢視図である。
【0021】
第1の実施形態であるZY駆動軸60Aは、Y駆動軸40と、Z駆動軸50と、Y駆動軸40のY軸可動部41とZ駆動軸50とのX軸可動部51を連結する連結部61と、処理部であるボンディングヘッド35と、ボンディングヘッド35をZ軸中心に回転させる回転駆動部80と、これら全体を支える横L字状の支持体62とを有する。なお、以下の説明を分かり易くするために、支持体62に固定されている部分は斜線で、Y軸可動部41、X軸可動部51及び連結部61と一体になって移動する部分を白抜きで示している。また、支持体62は上部支持体62aと、側部支持体62bと、下部支持体62cとを有する。
【0022】
Y駆動軸40は、N極とS極の電磁石が交互にY方向に多数配列された上下の固定電磁石部47u、47d(以後、全体又は位置を指定しないときは単に47とする)を有する逆コの字状のY軸固定部42と、前記配列方向に少なくとも1組のN極とS極の電磁石を有し、逆コの字状の凹部に挿入され凹部内を移動するY軸可動部41と、Y軸可動部41を支持する連結部61と、連結部61に固定され、下部の支持体62cとの間に設けられたY軸リニアガイド43を備えるY軸ガイド部44とを有する。Y軸固定部42は、Y軸可動部41が所定の範囲移動できるように図1の破線で示すY駆動軸40略全域に亘って設けられている。また、Y軸リニアガイド43は、Y方向に伸びる2つのリニアレール43aとリニアレール上を移動するリニアスライダ43bを有する。
【0023】
Z駆動軸50は、Y駆動軸40と同様に、N極とS極の電磁石が交互にZ方向に多数配列された左右の固定電磁石部57h、57m(図4参照、以後、全体又は位置を指定しないときは単に57とする)を有する逆Uの字状のZ軸固定部52と、Z軸固定部52の配列方向に少なくとも1組のN極とS極の電磁石を上部に有し、逆Uの字状の凹部に挿入され凹部内を移動するZ軸可動部51と、Z軸可動部51と連結部61との間にY軸リニアガイド43と同様な構造を有するZ軸リニアガイド53とを有する。Z軸リニアガイド53は、連結部61に固定されZ方向に伸びる2つのリニアレール53aとZ軸可動部51に固定されリニアレール上を移動するリニアスライダ53bを有する。
【0024】
Z軸可動部51は連結部61を介してY軸可動部41と繋がっており、Y軸可動部41がY方向に移動するとZ軸可動部51も共にY方向に移動する。そして移動先の所定の位置でZ軸可動部51(ボンディングヘッド35)が昇降できるようにする必要がある。
【0025】
図4に、所定の位置でボンディングヘッドを昇降できる左右の固定磁石部57(57h、57m)の構成例を模式的に示す図である。本実施例では、少なくとも、ボンディング領域及びピックアップ領域にY方向に細長いN極、S極を交互に設けている。細長いN極、S極は短く分割して設けてもよい。勿論、Y方向の全域に亘って、Y方向に細長いN極、S極を交互に設けてもよい。
【0026】
ボンディングヘッド35は、Z軸可動部51の先端に回転駆動部80によって歯車35bを介して回転可能に設けられ、自身先端にダイ吸着用のコレット35aを有している。また、回転駆動部80は、Z軸可動部51に固定されたモータ81で歯車82、35bを介してボンディングヘッド35の回転姿勢を制御する。
【0027】
以上説明したように、本実施形態のZY駆動軸60Aによれば、Z軸固定部52は略全域に設けられているが、図7に示す構成と比べ、重量体であるZ軸固定部52自体は移動しないので、Y方向の移動に対する負荷が大幅に低減され、水平駆動軸のトルクを大きくせず、昇降軸の高速化を実現できる。
【0028】
図5は第2の実施形態であるZY駆動軸60Bの基本構成を示す図である。図5において基本的には第1の実施形態と同じ構成又は機能を有するものは同一符号を付している。
ZY駆動軸60Bの第1の実施形態であるZY駆動軸60Aと異なる点は、第1に、Y軸可動部41のY方向の移動を可能とするY軸リニアガイド43を支持するY軸ガイド部44が、下部支持体62cから上部支持体62aに移動している点である。第2に、Z軸固定部52がU字状からI字状になり、固定磁石部57h、57mが片側の固定磁石部57のみとなっている点である。
その他の点は第1の実施形態60Aと基本的に同じである。
【0029】
図6は第3の実施形態であるZY駆動軸60Cの基本構成を示す図である。図面の符号については図5と同様である。ZY駆動軸60Cの第2の実施形態であるZY駆動軸60Bと異なる点は、第1に、Y軸固定部42を第2の実施形態のZ軸固定部52と同様にI字状にし、Y軸の固定磁石部を片側の47のみとした点である。第2に、Y軸可動部41と連結部61に固定するY軸可動部固定部45を設けた点である。第3に、Y方向の移動時の左右の揺れを防止するために、Y軸固定部42と連結部61との間にリニアガイド46を設けた点である。
【0030】
なお、このような移動を安定させるリニアガイド46を第1の実施形態、第2の実施形態において、Y軸固定部42又はZ軸固定部52と連結部61との間に設けてもよい。
その他の点は第2の実施形態60Bと基本的に同じである。なお、第3の実施形態に、第1の実施形態の逆コの字状のY駆動軸40を用いてもよい。
【0031】
以上説明した第2、第3の実施形態においても、第1の実施形態同様に、図7に示す構成と比べ、重量体であるZ軸固定部52自体は移動しないので、Y方向の移動に対する負荷が大幅に低減され、水平駆動軸のトルクを大きくせず、昇降軸の高速化を実現できる。
【0032】
以上の説明では、何かを処理する処理部としてボンディングヘッドの例で説明した。基本的には、昇降軸を有する必要とする2軸駆動機構と必要とする処理部に適用可能である。例えば、ダイボンダでは基板にダイ接着剤を塗布するニードルに適用可能である。
【0033】
以上のように本発明の実施形態について説明したが、上述の説明に基づいて当業者にとって種々の代替例、修正又は変形が可能であり、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲で前述の種々の代替例、修正又は変形を包含するものである。
【符号の説明】
【0034】
1:ウェハ供給部 2:ワーク供給・搬送部
3:ダイボンディング部 10:ダイボンダ
32:ボンディングヘッド部 35:ボンディングヘッド
40:Y駆動軸 41:Y軸可動部
42:Y軸固定部 43:Y軸リニアガイド
44:Y軸ガイド 45:Y軸可動部固定部
46:リニアガイド 47、47d、47u:固定電磁石
50:Z駆動軸 51:Z軸可動部
52:Z軸固定部 53:Z軸リニアガイド
57、57h、57m:固定電磁石
60、60A、60B、60C:ZY駆動軸
61:連結部
62、62a、62b、62c:支持体
70:X駆動軸 80:回転駆動部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理部と、
前記処理部を第1のリニアガイドに沿って昇降する第1の可動部と第1の固定部とを備える第1のリニアモータと、
前記処理部を前記昇降する方向とは垂直な水平方向に移動させる第2の可動部と第2の固定部とを備える第2のリニアモータと、
前記第1の可動部を前記第1のリニアガイドを介して連結し、前記第2の可動部を直接的又は間接的に連結する連結部と、
前記第1の可動部、前記第2の可動部及び前記連結部を一体となって前記水平方向に移動させる第2のリニアガイドと、
前記第1の固定部と前記第2の固定部を前記水平方向に所定の長さで互いに平行に固定する支持体とを、
を有することを特徴とする2軸駆動機構。
【請求項2】
前記第1の可動部と前記第2可動部とは互いに平行又は垂直に設けたことを特徴とする請求項1に記載の2軸駆動機構。
【請求項3】
前記第2のリニアガイドを前記第2の固定部に下部に設けられた前記支持体に設けたことを特徴とする請求項1に記載の2軸駆動機構。
【請求項4】
前記第2のリニアガイドを前記連結部の上部の前記支持体に設けたことを特徴とする請求項1に記載の2軸駆動機構。
【請求項5】
前記第1の可動部に前記昇降する方向にN極、S極交互に複数組設けられた電磁石は、前記水平方向の所定に領域に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の2軸駆動機構。
【請求項6】
前記第1の固定部又は第2の固定部と前記連結部との間に第3のリニアガイドを設けたことを特徴とする請求項1に記載の2軸駆動機構。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載の2軸駆動機構を備え、前記処理部によって基板に処理することを特徴とするダイボンダ。
【請求項8】
前記処理部はダイをウェハからピックアップし前記基板にボンディングするボンディングヘッドであることを特徴とする請求項7に記載のダイボンダ。
【請求項9】
請求項5に記載の前記所定に領域は、前記ピックアップする領域及び前記ボンディングする領域であることを特徴とする請求項8に記載のダイボンダ。
【請求項10】
前記処理部は、前記基板にダイ接着剤を塗布するニードルであることを特徴とする請求項7に記載のダイボンダ。
【請求項11】
前記処理部を前記昇降する方向を回転軸として回転させる回転手段を前記第1の可動部に設けたことを特徴とする請求項7に記載のダイボンダ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate